(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-03-18
(45)【発行日】2025-03-27
(54)【発明の名称】車両制御装置
(51)【国際特許分類】
B60W 30/08 20120101AFI20250319BHJP
B60W 40/02 20060101ALI20250319BHJP
G08G 1/16 20060101ALI20250319BHJP
【FI】
B60W30/08
B60W40/02
G08G1/16 C
(21)【出願番号】P 2022015002
(22)【出願日】2022-02-02
【審査請求日】2024-05-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 元太
【審査官】齊藤 彬
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-222302(JP,A)
【文献】特開平08-156722(JP,A)
【文献】特開2000-011300(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0066329(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60W 30/08
B60W 40/02
G08G 1/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
自車両の周辺状況を放射状に認識する認識部と、
前記認識部の認識結果に基づいて、前記自車両の車両制御を行う運転制御部とを備え、
前記運転制御部は、
前記認識部の認識結果が、前記自車両の走行経路に沿った認識エリア内に障害物が存在することを示す場合、前記障害物までの距離を所定の距離に保つ第1運転態様によって車両制御を行い、
前記認識部の認識結果が、放射方向のうち、所定方向において前記認識エリアの間の、準認識エリアに障害物が存在することを示す場合、前記所定方向において前記認識エリアと、前記準認識エリアとの境界位置のうち、前記自車両から遠い前記境界位置までの距離を前記障害物までの距離として、前記自車両から遠い前記境界位置までの距離を前記所定の距離に保つ第2運転態様によって車両制御を行う、
ことを特徴とする車両制御装置。
【請求項2】
前記運転制御部は、前記認識エリアの間に、複数の前記準認識エリアが存在する場合、複数の前記準認識エリアのうち、前記自車両から最も近い前記準認識エリア以外の前記準認識エリアを前記認識エリアとして、前記自車両の車両制御を行う、
請求項1に記載の車両制御装置。
【請求項3】
前記運転制御部は、前記認識エリアの頂点の座標に基づいて、前記認識エリアを極座標に変換し、極座標に変換された前記認識エリアの間の前記準認識エリアと、前記認識部の認識結果とに基づいて、前記準認識エリアに障害物が存在するか否かを判定する、
請求項1又は2に記載の車両制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、車両を自動的走行させる自動運転について研究、及び実用化が進められている。従来、自動運転において、車両前方に予め認識エリアを設定し、認識エリア内において検出した障害物までの距離に応じて速度制御を行う技術が知られている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示の技術では、車両の向きによっては、認識エリアに走行経路以外の領域が含まれてしまい、車両の走行に影響しない障害物を検出して速度制御してしまう場合があった。特に、特許文献1に開示の技術では、曲線領域の内側において、必要以上に障害物を検出して速度制御してしまう場合があった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成する車両制御装置は、自車両の周辺状況を放射状に認識する認識部と、前記認識部の認識結果に基づいて、前記自車両の車両制御を行う運転制御部とを備え、前記運転制御部は、前記認識部の認識結果が、前記自車両の走行経路に沿った認識エリア内に障害物が存在することを示す場合、前記障害物までの距離を所定の距離に保つ第1運転態様によって車両制御を行い、前記認識部の認識結果が、放射方向のうち、所定方向において前記認識エリアの間の、準認識エリアに障害物が存在することを示す場合、前記所定方向において前記認識エリアと、前記準認識エリアとの境界位置のうち、前記自車両から遠い前記境界位置までの距離を前記障害物までの距離として、前記自車両から遠い前記境界位置までの距離を前記所定の距離に保つ第2運転態様によって車両制御を行う、ことを特徴とする。
【0006】
かかる構成によれば、車両制御装置は、準認識エリアに存在する障害物、及び認識エリア外の障害物に基づいて不要な速度制御が行われることを抑制することができる。
上記車両制御装置において、前記運転制御部は、前記認識エリアの間に、複数の前記準認識エリアが存在する場合、複数の前記準認識エリアのうち、前記自車両から最も近い前記準認識エリア以外の前記準認識エリアを前記認識エリアとして、前記自車両の車両制御を行ってもよい。
【0007】
かかる構成によれば、車両制御装置は、準認識エリアの特定に係る処理負荷を低減することができる。
上記車両制御装置において、前記運転制御部は、前記認識エリアの頂点の座標に基づいて、前記認識エリアを極座標に変換し、極座標に変換された前記認識エリアの間の前記準認識エリアと、前記認識部の認識結果とに基づいて、前記準認識エリアに障害物が存在するか否かを判定してもよい。
【0008】
かかる構成によれば、車両制御装置が、認識エリア内に障害物が存在するか否かを判定する処理負荷を低減することができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、準認識エリアに存在する障害物、及び認識エリア外の障害物に基づいて不要な速度制御が行われることを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図2】第1制御部および第2制御部の機能構成図である。
【
図5】障害物の判定処理の説明に用いられる図である。
【
図6】自動運転制御装置により実行される処理の一例を示すフローチャートである。
【
図7】複数の準認識エリアの説明に用いられる図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
<実施形態>
以下、図面を参照し、車両制御装置を具体化した実施形態について説明する。実施形態の車両制御装置は、例えば、自動運転車両に適用される。自動運転とは、例えば、車両の操舵又は加減速のうち、一方又は双方を制御して運転制御を実行することである。上述した運転制御には、例えば、ACC(Adaptive Cruise Control System)やTJP(Traffic Jam Pilot)、ALC(Auto Lane Changing)、CMBS(Collision Mitigation Brake System)、LKAS(Lane Keeping Assistance System)等の運転制御が含まれる。また、自動運転車両は、乗員の手動運転による運転制御が実行されてよい。
【0012】
[全体構成]
図1は、実施形態の車両システム1の構成図である。車両システム1が搭載される車両は、例えば、二輪や三輪、四輪等の車両であり、その駆動源は、ディーゼルエンジンやガソリンエンジン等の内燃機関、電動機、或いはこれらの組み合わせである。電動機は、内燃機関に連結された発電機による発電電力、或いは二次電池や燃料電池の放電電力を使用して動作する。以下、車両システム1が搭載される車両を自車両Mと記載する。
【0013】
車両システム1は、例えば、ファインダ10と、車両センサ20と、GNSS(Global Navigation Satellite System)受信機30と、運転操作子80と、自動運転制御装置100と、走行駆動力出力装置200と、ブレーキ装置210と、ステアリング装置220とを備える。これらの装置や機器は、CAN(Controller Area Network)通信線等の多重通信線やシリアル通信線、無線通信網等によって互いに接続される。なお、
図1に示す構成はあくまで一例であり、構成の一部が省略されてもよいし、更に別の構成が追加されてもよい。自動運転制御装置100は、「車両制御装置」の一例である。
【0014】
ファインダ10は、例えば、LIDAR(Light Detection and Ranging)である。ファインダ10は、自車両Mの周辺に光を照射し、散乱光を測定する。ファインダ10は、発光から受光までの時間に基づいて、対象までの距離を検出する。照射される光は、例えば、パルス状のレーザー光である。ファインダ10は、検出結果を自動運転制御装置100に出力する。本実施形態では、ファインダ10が、自車両Mの前方の端部に取り付けられ、自車両Mの前方に放射状に光を照射して、対象までの距離を検出する場合について説明する。
【0015】
車両センサ20は、自車両Mの速度を検出する車速センサ、加速度を検出する加速度センサ、鉛直軸回りの角速度を検出するヨーレートセンサ、自車両Mの向きを検出する方位センサ等を含む。
【0016】
GNSS受信機30は、GNSS衛星から受信した信号に基づいて、自車両Mの位置を特定する。自車両Mの位置は、車両センサ20の出力を利用したINS(Inertial Navigation System)によって特定、又は補完されてもよい。
【0017】
運転操作子80は、例えば、アクセルペダル、ブレーキペダル、シフトレバー、ステアリングホイール、異形ステア、ジョイスティックその他の操作子を含む。運転操作子80には、乗員等による操作量あるいは操作の有無を検出するセンサが取り付けられており、その検出結果は、自動運転制御装置100、もしくは、走行駆動力出力装置200、ブレーキ装置210、及びステアリング装置220のうち一部、又は全部に出力される。
【0018】
自動運転制御装置100は、例えば、第1制御部120と、第2制御部160と、記憶部180とを備える。第1制御部120と第2制御部160とは、それぞれ、例えば、CPU(Central Processing Unit)等のハードウェアプロセッサがプログラム(ソフトウェア)を実行することにより実現される。また、これらの構成要素のうち一部、又は全部は、LSI(Large Scale Integration)やASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field-Programmable Gate Array)、GPU(Graphics Processing Unit)等のハードウェア(回路部;circuitryを含む)によって実現されてもよいし、ソフトウェアとハードウェアの協働によって実現されてもよい。プログラムは、予め自動運転制御装置100のHDD(Hard Disk Drive)やフラッシュメモリ等の記憶装置(非一過性の記憶媒体を備える記憶装置)に格納されていてもよいし、DVDやCD-ROM等の着脱可能な記憶媒体に格納されており、記憶媒体(非一過性の記憶媒体)がドライブ装置に装着されることで自動運転制御装置100のHDDやフラッシュメモリにインストールされてもよい。
【0019】
記憶部180は、上記の各種記憶装置により実現される。また、記憶部180は、例えば、HDD、フラッシュメモリ、EEPROM(Electrically Erasable Programmable Read Only Memory)、ROM(Read Only Memory)、又はRAM(Random Access Memory)等により実現される。記憶部180には、例えば、プログラム、及び走行経路情報181が記憶される。走行経路情報181は、自車両Mを走行させる走行経路RT1の座標を示す情報である。
【0020】
図2に示すように、第1制御部120は、例えば、認識部130と、行動計画生成部150とを備える。行動計画生成部150と、第2制御部160とを組み合わせたものが、「運転制御部」の一例である。
【0021】
認識部130は、対象車両の周辺状況を認識する。例えば、認識部130は、ファインダ10から入力された情報に基づいて、自車両Mの周辺にある物体の位置、速度、加速度、及び進行方向等の状態を認識する。自車両Mの周辺にある物体とは、例えば、周辺車両や物標である。物体の位置は、例えば、自車両Mの代表点を原点とした相対座標上の位置として認識され、制御に使用される。以下、自車両Mの代表点が駆動軸中心であって、自車両Mの駆動軸が、後輪の駆動軸である場合について説明する。物体の位置は、その物体の重心や中心、コーナー等の代表点で表されてもよいし、物体が表現された領域で表されてもよい。物体が車両である場合、物体の「状態」には、物体の加速度やジャーク、或いは車線変更をしている、又は車線変更しようとしているか否か等の行動状態を含んでもよい。
【0022】
行動計画生成部150は、原則的には走行経路情報181を参照し、予め定められた走行経路を走行するように目標軌道を生成する。また、行動計画生成部150は、自車両Mの周辺状況に対応できるように、自車両Mが自動的に(運転者の操作に依らずに)将来走行する目標軌道を生成する。目標軌道は、例えば、速度要素を含んでいる。例えば、目標軌道は、自車両Mの到達すべき地点を順に並べたものとして表現される。以下、自車両Mの到達すべき地点を、「軌道点」と記載する。軌道点は、道なり距離で所定の走行距離ごとの自車両Mの到達すべき地点であり、それとは別に、所定のサンプリング時間ごとの目標速度および目標加速度が、目標軌道の一部として生成される。所定の走行距離とは、例えば、数[m]程度である。所定のサンプリング時間とは、例えば、0コンマ数[sec]程度である。また、軌道点は、所定のサンプリング時間ごとの、そのサンプリング時刻における自車両Mの到達すべき位置であってもよい。この場合、目標速度や目標加速度の情報は軌道点の間隔で表現される。
【0023】
行動計画生成部150は、認識部130の認識結果に基づいて、認識エリア内に障害物が存在するか否かを判定する。認識エリアは、例えば、走行経路情報181に示される全走行経路のうち、自車両Mから所定の距離まで離れた位置までの走行経路において、走行経路の幅方向に所定の距離まで離れた位置までの範囲である。行動計画生成部150が認識エリア内に障害物が存在するか否かを判定する処理の詳細については、後述する。
【0024】
行動計画生成部150は、認識エリア内に障害物が存在しないと判定した場合、自車両Mの速度が一定となるように、走行経路の距離に応じた速度制御を行う。行動計画生成部150は、認識エリア内に障害物が存在すると判定した場合、障害物までの距離を所定の距離に保つ運転態様によって車両制御を行う。詳しくは、行動計画生成部150は、障害物までの距離を、所定の距離に保つような目標軌道を生成し、自車両Mを走行させる。以降の説明において、障害物までの距離を、所定の距離に保つ運転態様を、「第1運転態様」と記載する。したがって、行動計画生成部150は、認識エリア内に障害物が存在すると判定した場合、第1運転態様によって車両制御を行う。
【0025】
また、行動計画生成部150は、認識部130の認識結果に基づいて、準認識エリアに障害物が存在するか否かを判定する。準認識エリアは、例えば、ファインダ10が検出する放射方向のうち、ある所定方向において認識エリアの間の範囲である。行動計画生成部150が準認識エリア内に障害物が存在するか否かを判定する処理の詳細については、後述する。行動計画生成部150は、準認識エリア内に障害物が存在すると判定した場合、所定方向において認識エリアと、準認識エリアとの境界位置のうち、自車両Mから遠い境界位置までの距離を障害物までの距離として、境界位置までの距離を所定の距離に保つ運転態様によって車両制御を行う。詳しくは、行動計画生成部150は、境界位置のうち、自車両Mから遠い境界位置までの距離を、所定の距離に保つような目標軌道を生成し、自車両Mを走行させる。以降の説明において、自車両Mから遠い境界位置までの距離を、所定の距離に保つ運転態様を、「第2運転態様」と記載する。したがって、行動計画生成部150は、準認識エリアに障害物が存在すると判定した場合、第2運転態様によって車両制御を行う。
【0026】
第2制御部160は、行動計画生成部150によって生成された目標軌道を、予定の時刻通りに自車両Mが通過するように、走行駆動力出力装置200、ブレーキ装置210、及びステアリング装置220を制御する。
【0027】
第2制御部160は、例えば、取得部162と、速度制御部164と、操舵制御部166とを備える。取得部162は、行動計画生成部150により生成された目標軌道(つまり、軌道点)の情報を取得し、不図示のメモリに記憶させる。速度制御部164は、メモリに記憶された目標軌道に付随する速度要素に基づいて、走行駆動力出力装置200、又はブレーキ装置210を制御する。操舵制御部166は、メモリに記憶された目標軌道の曲がり具合に応じて、ステアリング装置220を制御する。速度制御部164および操舵制御部166の処理は、例えば、フィードフォワード制御とフィードバック制御との組み合わせにより実現される。一例として、操舵制御部166は、自車両Mの前方の道路の曲率に応じたフィードフォワード制御と、目標軌道からの乖離に基づくフィードバック制御とを組み合わせて実行する。
【0028】
走行駆動力出力装置200は、車両が走行するための走行駆動力(トルク)を駆動輪に出力する。走行駆動力出力装置200は、例えば、内燃機関、電動機、及び変速機等の組み合わせと、これらを制御するECU(Electronic Control Unit)とを備える。ECUは、第2制御部160から入力される情報、或いは運転操作子80から入力される情報に従って、上記の構成を制御する。
【0029】
ブレーキ装置210は、例えば、ブレーキキャリパーと、ブレーキキャリパーに油圧を伝達するシリンダと、シリンダに油圧を発生させる電動モータと、ブレーキECUとを備える。ブレーキECUは、第2制御部160から入力される情報、或いは運転操作子80から入力される情報に従って電動モータを制御し、制動操作に応じたブレーキトルクが各車輪に出力されるようにする。ブレーキ装置210は、運転操作子80に含まれるブレーキペダルの操作によって発生させた油圧を、マスターシリンダを介してシリンダに伝達する機構をバックアップとして備えてよい。なお、ブレーキ装置210は、上記説明した構成に限らず、第2制御部160から入力される情報に従ってアクチュエータを制御して、マスターシリンダの油圧をシリンダに伝達する電子制御式油圧ブレーキ装置であってもよい。
【0030】
ステアリング装置220は、例えば、ステアリングECUと、電動モータとを備える。電動モータは、例えば、ラックアンドピニオン機構に力を作用させて転舵輪の向きを変更する。ステアリングECUは、第2制御部160から入力される情報、或いは運転操作子80から入力される情報に従って、電動モータを駆動し、転舵輪の向きを変更させる。
【0031】
[準認識エリアについて]
以下、準認識エリアの詳細について説明する。
図3に示すように、ファインダ10は、自車両Mの前方のうち、自車両Mの進行方向を中心とした放射角度φの範囲において、放射状に光を照射して、対象までの距離を検出する。上述したように、走行経路情報181には、走行経路RT1の座標が示される。また、認識エリアAR1は、走行経路RT1の幅方向に所定の距離まで離れた位置までの範囲である。したがって、認識部130は、自車両Mの位置と、自車両Mの向きとに基づいて、認識エリアAR1の端部の座標を特定可能である。このことより、認識部130は、ファインダ10の検出に係る放射方向のうち、ある所定方向DD1について、ファインダ10による検出範囲の原点から座標(x1,y1)までの認識エリアAR1と、座標(x2,y2)から座標(x3,y3)までの認識エリアAR1と、認識エリアAR1の間の範囲である準認識エリアUA1とが存在すると、特定可能である。座標(x1,y1)と、座標(x2,y2)とは、認識エリアAR1と準認識エリアUA1との境界位置である。
【0032】
以降の説明において、所定方向DD1において、準認識エリアUA1よりも自車両Mに近い位置に存在する認識エリアAR1を、「第1認識エリアAR1-1」と記載し、準認識エリアUA1よりも自車両Mから遠い位置に存在する認識エリアAR1を、「第2認識エリアAR1-2」と記載する。また、認識エリアAR1外の範囲であって、準認識エリアUA1ではないエリアを、「非認識エリアWA」と記載する。したがって、ファインダ10の放射角度φのうち、所定方向DD1には、第1認識エリアAR1-1と、準認識エリアUA1と、第2認識エリアAR1-2と、非認識エリアWAとが、記載の順に存在する。
【0033】
図3に示す一例では、行動計画生成部150は、認識部130の認識結果に基づいて、準認識エリアUA1に障害物OB1が存在すると判定する。したがって、行動計画生成部150は、第2運転態様によって車両制御を行う。上述したように、第2運転態様によって障害物OB1の位置と仮定される境界位置は、境界位置のうち、自車両Mから遠い境界位置までの距離である。このため、行動計画生成部150は、座標(x1,y1)と、座標(x2,y2)とのうち、座標(x2,y2)までの距離を障害物OB1までの距離と仮定して、第2運転態様によって車両制御を行う。
【0034】
図4に示すように、行動計画生成部150の制御によって、障害物OB1の位置と仮定した境界位置である座標(x2,y2)まで自車両Mが走行すると、ファインダ10の検出範囲には、障害物OB1が含まれなくなる。したがって、行動計画生成部150は、境界位置である座標(x2,y2)の位置以降、障害物OB1の存在に影響されず、他の障害物に基づく第1運転態様、又は速度が一定となるように走行経路RT1の距離に応じた速度制御によって車両制御を行う。
【0035】
[障害物の判定処理]
以下、行動計画生成部150が認識エリアAR1内に障害物OB1が存在するか否かを判定する処理の詳細について説明する。行動計画生成部150は、認識エリアAR1を示す直交座標の範囲を、ファインダ10による検出範囲の原点とした極座標に変換する。
図5に示すように、行動計画生成部150は、認識エリアAR1を示す直交座標の範囲を、次式(1)に基づいて極座標に変換する。行動計画生成部150は、極座標変換により、ファインダ10の検出範囲のうち、認識エリアAR1の範囲を、座標(L
3,θ
3)と、座標(L
4,θ
4)と、ファインダ10による検出範囲の原点とを頂点とした三角形の範囲Sとする。角度θ
3から角度θ
4までの範囲は、ファインダ10による検出範囲のうち、認識エリアAR1の範囲である。距離L
3は、角度θ
3方向における認識エリアAR1の端部までの距離である。距離L
4は、角度θ
4方向における認識エリアAR1の端部までの距離である。
【0036】
S=1/2L3L4sin(θ4-θ3)=1/2(L3L´sin(θ´-θ3)+L4L´sin(θ4-θ´))…(1)
S:極座標系における認識エリアの範囲
θ3:ファインダ10の角度
θ4:ファインダ10の角度(θ4>θ3)
L3:角度θ3方向における認識エリアAR1の端部までの距離
L4:角度θ4方向における認識エリアAR1の端部までの距離
ファインダ10は、検出範囲に存在する物体を所定の分解能において検出する。所定の分解能とは、例えば、0コンマ数[度]~数[度]程度である。行動計画生成部150は、式(1)に基づく次式(2)を用いて、角度θ3から角度θ4まで範囲の角度θ´方向における認識エリアAR1の端部までの距離L´を特定する。
【0037】
L´=L
3L
4sin(θ
4-θ
3)/(L
3sin(θ´-θ
3)+L
4sin(θ
4-θ´))…(2)
θ´:ファインダ10の角度
L´:角度θ´方向における認識エリアAR1の端部までの距離
行動計画生成部150は、認識エリアAR1を示す直交座標の範囲に基づいて、極座標に変換する際、ファインダ10の角度θ´毎に、角度θ´における準認識エリアUA1の範囲を特定する。
図5に示すように、行動計画生成部150は、ファインダ10の角度θ´において、境界位置のうち、自車両Mに近い境界位置である座標(x1,y1)までの距離Lc´を特定する。また、行動計画生成部150は、ファインダ10の角度θ´において、境界位置のうち、自車両Mから遠い境界位置である座標(x2,y2)まで距離Lf´を特定する。
【0038】
行動計画生成部150は、ファインダ10の検出結果のうち、角度θ´方向における物体までの距離が、特定した認識エリアAR1の端部までの距離L´よりも長い場合、認識エリアAR1内に障害物OB1が存在しない(つまり、非認識エリアWAに存在する)と判定する。また、行動計画生成部150は、ファインダ10の検出結果のうち、角度θ´方向における物体までの距離が、距離L´以下、且つ距離Lf´以上である場合、認識エリアAR1内に障害物OB1が存在すると判定する。また、行動計画生成部150は、ファインダ10の検出結果のうち、角度θ´方向における物体までの距離が、距離Lf´未満、且つ距離Lc´より長い場合、準認識エリアUA1内に障害物OB1が存在すると判定する。また、行動計画生成部150は、ファインダ10の検出結果のうち、角度θ´方向における物体までの距離が、距離Lc´以下の場合、認識エリアAR1内に障害物OB1が存在すると判定する。
【0039】
[動作フロー]
以下、
図6を参照し、自動運転制御装置100により実行される処理を説明する。本フローチャートの処理は、例えば、所定の時間間隔毎に実行される。まず、行動計画生成部150は、認識部130の認識結果に基づいて、自車両Mの周辺に障害物OB1が存在するか否かを判定する(ステップS100)。行動計画生成部150は、障害物OB1が存在すると判定した場合、当該障害物OB1が認識エリアAR1内に存在するか否かを判定する(ステップS102)。行動計画生成部150は、障害物OB1が認識エリアAR1内に存在すると判定した場合、障害物OB1までの距離を、所定の距離に保つ第1運転態様によって速度制御を行う(ステップS104)。
【0040】
行動計画生成部150は、障害物OB1が認識エリアAR1内に存在しないと判定した場合、障害物OB1が準認識エリアUA1内に存在するか否かを判定する(ステップS106)。行動計画生成部150は、障害物OB1が準認識エリアUA1内に存在すると判定した場合、境界位置のうち、自車両Mから遠い境界位置までの距離を、所定の距離に保つ第2運転態様によって速度制御を行う(ステップS108)。行動計画生成部150は、認識エリアAR1内、及び準認識エリアUA1内に存在しないと判定した場合、障害物OB1が非認識エリアWAに存在すると判定し、速度が一定となるように、走行経路RT1の距離に応じた速度制御を行う(ステップS110)。
【0041】
[実施形態の作用効果]
上記実施形態によれば、以下のような作用効果を得ることができる。
(1)車両制御装置としての自動運転制御装置100は、認識部130と、行動計画生成部150と、第2制御部160とを備える。認識部130は、自車両Mの周辺状況を放射状に認識する。行動計画生成部150、及び第2制御部160は、認識部130の認識結果に基づいて、自車両Mの車両制御を行う。また、行動計画生成部150、及び第2制御部160は、認識部130の認識結果が、自車両Mの運転経路に沿った認識エリアAR1内に障害物OB1が存在することを示す場合、障害物OB1までの距離を所定の距離に保つ第1運転態様によって車両制御を行う。また、行動計画生成部150、及び第2制御部160は、認識部130の認識結果が、放射方向のうち、所定方向DD1において認識エリアAR1の間の、準認識エリアUA1に障害物OB1が存在することを示す場合、所定方向DD1において認識エリアAR1と、準認識エリアUA1との境界位置のうち、自車両Mから遠い境界位置までの距離を障害物OB1までの距離として、自車両Mから遠い境界位置までの距離を所定の距離に保つ第2運転態様によって車両制御を行う。
【0042】
ここで、曲線を含む走行経路RT1を自車両Mが走行する場合、ファインダ10は、曲線領域の内側であって、且つ認識エリアAR1外の位置に存在する障害物OB1を検出する場合がある。行動計画生成部150、及び第2制御部160は、障害物OB1の存在に基づいて速度制御すると、自車両Mの走行経路RT1の走行において影響がない障害物OB1の存在により、不要に減速してしまう場合があった。
【0043】
かかる構成によれば、行動計画生成部150は、認識部130により認識された障害物OB1が、認識エリアAR1内、準認識エリアUA1内、又は非認識エリアWAのうち、いずれの位置に存在するかに基づいて、運転態様を異ならせる。したがって、第2制御部160は、準認識エリアUA1に存在する障害物OB1、及び非認識エリアWAの障害物OB1に基づいて不要な速度制御が行われることを抑制することができる。
【0044】
(2)行動計画生成部150、及び第2制御部160は、認識エリアAR1の頂点の座標に基づいて、認識エリアAR1を極座標に変換し、極座標に変換された認識エリアAR1の間の準認識エリアUA1と、認識部130の認識結果とに基づいて、準認識エリアUA1に障害物OB1が存在するか否かを判定する。
【0045】
ここで、認識部130は、認識結果として、ファインダ10の検出結果を行動計画生成部150に出力する場合がある。ファインダ10の検出結果は、ファインダ10の検出方向と、検出した物体までの距離とを示す極座標系によって表される場合がある。かかる構成によれば、行動計画生成部150は、ファインダ10の検出結果を極座標系から直交座標系に逐次変換せずに、予め認識エリアAR1と、準認識エリアUA1とを極座標に変換しておく。これにより、行動計画生成部150は、障害物OB1が、認識エリアAR1内、準認識エリアUA1内、又は非認識エリアWAのうち、いずれの位置に存在するかを判定する処理負荷を低減することができる。
【0046】
上記各実施形態は以下のように変更してもよい。なお、上記実施形態および以下の各別例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせてもよい。
〇上述では、所定方向DD1において、第1認識エリアAR1-1と、第2認識エリアAR1-2との間に、一つの準認識エリアUA1が存在する場合について説明したが、これに限られない。走行経路RT1が複雑な形状をしている場合、所定方向DD1において、準認識エリアUA1は、複数存在してもよい。
図7に示すように、認識部130は、ある所定方向DD1について、ファインダ10による検出範囲の原点から座標(x1,y1)までの第1認識エリアAR1-1と、座標(x1,y1)から座標(x2,y2)までの第1準認識エリアUA1-1と、座標(x2,y2)から座標(x3,y3)までの第2認識エリアAR1-2と、座標(x3,y3)から座標(x4,y4)までの第2準認識エリアUA1-2と、座標(x4,y4)から座標(x5,y5)までの第3認識エリアAR1-3と、座標(x5,y5)より遠い非認識エリアWAとが存在すると特定可能である。
【0047】
行動計画生成部150は、認識エリアAR1の間に、複数の準認識エリアUA1が存在する場合、複数の準認識エリアUA1のうち、自車両Mから最も近い準認識エリアUA1以外の準認識エリアUA1を認識エリアAR1として、自車両Mの車両制御を行う。
図7の一例では、認識エリアAR1の間に、第1準認識エリアUA1-1、及び第2準認識エリアUA1-2の準認識エリアUA1が存在する。この場合、行動計画生成部150は、第1準認識エリアUA1-1、及び第2準認識エリアUA1-2のうち、自車両Mから最も近い第1準認識エリアUA1-1以外の第2準認識エリアUA1-2を認識エリアAR1として、自車両Mの車両制御を行う。
【0048】
ここで、複数の準認識エリアUA1のそれぞれについて、行動計画生成部150が判定を行う場合、準認識エリアUA1の判定に用いる所定方向DD1毎の極座標のデータを特定する必要がある。この場合、行動計画生成部150は、準認識エリアUA1の数が多い程、準認識エリアUA1の特定に係る処理負荷が増加する。かかる構成によれば、行動計画生成部150は、複数の準認識エリアUA1のうち、自車両Mから最も近い準認識エリアUA1に基づいて車両制御することにより、準認識エリアUA1の特定に係る処理負荷を低減することができる。
【0049】
また、複数の準認識エリアUA1のうち、自車両Mから最も近い準認識エリアUA1以外の準認識エリアUA1は、当該準認識エリアUA1に障害物OB1が存在する場合であっても、車両制御に即座に影響しない場合がある。一方で、最も近い準認識エリアUA1以外の準認識エリアUA1に存在する障害物OB1が、自車両Mが近傍に近づくまでの間に認識エリアAR1に移動する場合がある。かかる構成によれば、行動計画生成部150は、最も近い準認識エリアUA1以外の準認識エリアUA1を、認識エリアAR1として扱うため、現在は準認識エリアUA1に存在し、後に認識エリアAR1に移動する障害物OB1についても、即座に適した運転態様によって車両制御を行うことができる。
【0050】
○車両システム1は、自車両Mの周辺に存在する物体までの距離を検出する構成として、ファインダ10に代えて(或いは、加えて)、カメラを備えていてもよい。カメラは、例えば、CCD(Charge Coupled Device)やCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)等の固体撮像素子を利用したデジタルカメラである。カメラは、自車両Mの任意の箇所に取り付けられる。例えば、自車両Mの前方を撮像する場合、カメラは、フロントウインドシールド上部やルームミラー裏面等に取り付けられる。また、自車両Mの後方を撮像する場合、カメラは、リアウィンドシールド上部等に取り付けられる。また、自車両Mの右側方、又は左側方を撮像する場合、カメラは、車体やドアミラーの右側面、又は左側面等に取り付けられる。カメラは、撮像する方向ごとに設けられてもよい。この場合、前方、又は後方を撮像する前方カメラ、後方カメラ等は、右側方、又は左側方を撮像する側方カメラよりも高感度であってもよい。カメラは、例えば、周期的に繰り返し自車両Mの周辺を撮像する。カメラは、ステレオカメラであってもよい。
【0051】
○車両システム1は、自車両Mの周辺に存在する物体までの距離を検出する構成として、ファインダ10に代えて(或いは、加えて)、レーダ装置を備えていてもよい。レーダ装置は、自車両Mの周辺にミリ波等の電波を放射すると共に、物体によって反射された電波(反射波)を検出して少なくとも物体の距離、及び物体の方位を検出する。レーダ装置は、自車両Mの任意の箇所に取り付けられる。レーダ装置は、FM-CW(Frequency Modulated Continuous Wave)方式によって物体の位置および速度を検出してもよい。
【0052】
○ファインダ10は、水平方向のある一方向をXとし、他方の方向をYとしたX-Yの水平方向の物体の検出に加えて、X-Yの水平方向に対して直交する鉛直方向をZにも物体の検出を行ってもよい。
【0053】
○上述では、ファインダ10が、自車両Mの前方の端部に取り付けられる場合について説明したが、これに限られない。ファインダ10は、自車両Mの前方に存在する物体を検出できれば、自車両Mの任意の箇所に取り付けられてもよい。この場合、認識部130は、ファインダ10が取り付けられる位置に応じて、ファインダ10の検出結果を補正する。詳しくは、認識部130は、自車両Mの先端中心からのずれ量、及び自車両Mの幅方向の中心からのずれ量を打ち消すように、ファインダ10の検出結果を補正する。
【0054】
〇自車両Mは、走行経路情報181に示す走行経路RT1に代えて(或いは、加えて)、ナビゲーション装置により決定された経路を走行してもよい。ナビゲーション装置は、ナビHMI(Human Machine Interface)と、経路決定部と、第1地図情報とを備える。経路決定部は、例えば、GNSS受信機30により特定された自車両Mの位置(或いは入力された任意の位置)から、ナビHMI(Human Machine Interface)を用いて乗員により入力された目的地までの地図上経路を、第1地図情報を参照して決定する。第1地図情報は、例えば、道路を示すリンクと、リンクによって接続されたノードとによって道路形状が表現された情報である。第1地図情報は、道路の曲率やPOI(Point Of Interest)情報等を含んでもよい。地図上経路は、MPU(Map Positioning Unit)に出力される。ナビゲーション装置は、地図上経路に基づいて、ナビHMIを用いた経路案内を行ってもよい。ナビゲーション装置は、例えば、乗員の保有するスマートフォンやタブレット端末等の端末装置の機能によって実現されてもよい。ナビゲーション装置は、自車両Mの外部の機器と通信する通信装置を介してナビゲーションサーバに現在位置と目的地を送信し、ナビゲーションサーバから地図上経路と同等の経路を取得してもよい。
【0055】
MPUは、例えば、推奨車線決定部を含み、HDDやフラッシュメモリ等の記憶装置に第2地図情報を保持している。推奨車線決定部は、ナビゲーション装置から提供された地図上経路を複数のブロックに分割し(例えば、車両進行方向に関して100[m]毎に分割し)、第2地図情報を参照してブロックごとに推奨車線を決定する。推奨車線決定部は、左から何番目の車線を走行するといった決定を行う。推奨車線決定部は、地図上経路に分岐箇所が存在する場合、自車両Mが、分岐先に進行するための合理的な経路を走行できるように、推奨車線を決定する。
【0056】
第2地図情報は、第1地図情報よりも高精度な地図情報である。第2地図情報は、例えば、車線の中央の情報あるいは車線の境界の情報等を含んでいる。また、第2地図情報には、道路情報、交通規制情報、住所情報(住所・郵便番号)、施設情報、電話番号情報等が含まれてよい。第2地図情報は、通信装置が他装置と通信することにより、随時、アップデートされてよい。行動計画生成部150は、MPUにより決定された推奨車線を走行経路RT1として上述した各種処理を実行する。かかる構成によれば、行動計画生成部150、及び第2制御部160は、走行経路情報181により予め定められた走行経路RT1以外の走行経路RT1についても、上述した処理を適応することができる。
【0057】
○自車両Mの位置の特定は、GNSS受信機30に代えて(或いは、加えて)、レンジャーシステムや、SLAM(Simultaneous Localization and Mapping)により実現されてもよい。
【符号の説明】
【0058】
1…車両システム、10…ファインダ、20…車両センサ、30…GNSS受信機、80…運転操作子、100…自動運転制御装置、120…第1制御部、130…認識部、150…行動計画生成部、160…第2制御部、162…取得部、164…速度制御部、166…操舵制御部、180…記憶部、181…走行経路情報、200…走行駆動力出力装置、210…ブレーキ装置、220…ステアリング装置、AR1…認識エリア、AR1-1…第1認識エリア、AR1-2…第2認識エリア、AR1-3…第3認識エリア、DD1…所定方向、M…自車両、OB1…障害物、RT1…走行経路、UA1…準認識エリア、UA1-1…第1準認識エリア、UA1-2…第2準認識エリア、WA…非認識エリア。