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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-03-18
(45)【発行日】2025-03-27
(54)【発明の名称】車両制御システム
(51)【国際特許分類】
   B60W 40/02 20060101AFI20250319BHJP
   B60W 60/00 20200101ALI20250319BHJP
   G08G 1/16 20060101ALI20250319BHJP
【FI】
B60W40/02
B60W60/00
G08G1/16 C
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2022015003
(22)【出願日】2022-02-02
(65)【公開番号】P2023112958
(43)【公開日】2023-08-15
【審査請求日】2024-05-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 元太
【審査官】齊藤 彬
(56)【参考文献】
【文献】特開2021-172144(JP,A)
【文献】特開2018-180909(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0281783(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60W 40/02
B60W 60/00
G08G 1/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
自車両の周辺状況を認識する認識部と、
前記認識部の認識結果に基づいて、前記自車両を走行させる座標を示した走行経路上を前記自車両に走行させる運転制御部と、
前記自車両の走行経路に基づいて、認識エリアを決定する決定部と、を備え、
前記運転制御部は、
前記認識部の認識結果に基づいて、前記認識エリア内に障害物が存在するか否かを判定し、前記認識エリア内に前記障害物が存在すると判定した場合、前記障害物までの距離を所定の距離に保つ速度制御を行い、
前記決定部は、
前記走行経路の直線領域において、前記直線領域の始端から終端に亘って、前記自車両前方の右方向の端部と、前記自車両前方の左方向の端部とが位置する領域を前記認識エリアとして決定し、
前記走行経路の曲線領域において、前記自車両の駆動輪が後輪の場合、前記自車両前方の幅方向の端部のうち、前記走行経路の外側の端部と、前記自車両の駆動輪のうち、前記走行経路の内側に位置する駆動輪の端部とが位置する領域を前記認識エリアとして決定し、前記自車両の駆動輪が前輪の場合、前記自車両の駆動輪のうち、前記走行経路の外側に位置する駆動輪の端部と、前記自車両前方の幅方向の端部のうち、前記走行経路の内側の端部とが位置する領域を前記認識エリアとして決定する、
ことを特徴とする車両制御システム。
【請求項2】
前記決定部は、前記直線領域では、前記直線領域の始端において、前記自車両前方の左方向の端部を示す第1座標と、前記自車両前方の右方向の端部とが位置する第2座標と、前記直線領域の終端において、前記自車両前方の左方向の端部を示す第3座標と、前記自車両前方の右方向の端部とが位置する第4座標との四つの座標により囲まれる領域を、前記認識エリアとして決定する、
請求項1に記載の車両制御システム。
【請求項3】
前記決定部は、前記走行経路の曲線領域では、
前記自車両の駆動輪が後輪の場合、
前記曲線領域の始端において、前記自車両前方の幅方向の端部のうち、前記走行経路の外側の端部を示す第5座標と、前記曲線領域の始端において、前記自車両の駆動輪のうち、前記走行経路の内側に位置する駆動輪の端部を示す第6座標と、前記曲線領域の曲率が他の位置に比して高い位置を走行する際、前記自車両前方の幅方向の端部のうち、前記走行経路の外側の端部を示す第7座標と、前記曲線領域の曲率が他の位置に比して高い位置を走行する際、前記自車両の駆動輪のうち、前記走行経路の内側に位置する駆動輪の端部を示す第8座標と、前記曲線領域の終端において、前記自車両前方の幅方向の端部のうち、前記走行経路の外側の端部を示す第9座標と、前記曲線領域の終端において、前記自車両の駆動輪のうち、前記走行経路の内側に位置する駆動輪の端部を示す第10座標との六つの座標により囲まれる領域を前記認識エリアとして決定し、
前記自車両の駆動輪が前輪の場合、
前記曲線領域の始端において、前記自車両の駆動輪のうち、前記走行経路の外側に位置する駆動輪の端部を示す第5座標と、前記曲線領域の始端において、前記自車両前方の幅方向の端部のうち、前記走行経路の内側の端部を示す第6座標と、前記曲線領域の曲率が他の位置に比して高い位置を走行する際、前記自車両の駆動輪のうち、前記走行経路の外側に位置する駆動輪の端部を示す第7座標と、前記曲線領域の曲率が他の位置に比して高い位置を走行する際、前記自車両前方の幅方向の端部のうち、前記走行経路の内側の端部を示す第8座標と、前記曲線領域の終端において、前記自車両の駆動輪のうち、前記走行経路の外側に位置する駆動輪の端部を示す第9座標と、前記曲線領域の終端において、前記自車両前方の幅方向の端部のうち、前記走行経路の内側の端部を示す第10座標との六つの座標により囲まれる領域を前記認識エリアとして決定する、
請求項1又は2に記載の車両制御システム。
【請求項4】
前記決定部は、前記認識部による認識範囲のうち、前記直線領域の頂点の座標、及び又は前記曲線領域の頂点の座標の総数が所定数となる範囲において、前記認識エリアを決定する、
請求項1から3のうちいずれか一項に記載の車両制御システム。
【請求項5】
前記運転制御部は、前記直線領域の頂点の座標、及び又は前記曲線領域の頂点の座標に基づいて、前記認識エリアを極座標に変換し、極座標に変換された前記認識エリアと、前記認識部の認識結果とに基づいて、前記認識エリア内に前記障害物が存在するか否かを判定する、
請求項1から4のうちいずれか一項に記載の車両制御システム。
【請求項6】
前記運転制御部は、前記走行経路が示す座標に基づいて前記走行経路の距離を算出し、前記直線領域、及び前記曲線領域において前記自車両の速度を一定に制御する、
請求項1から5のうちいずれか一項に記載の車両制御システム。
【請求項7】
前記運転制御部は、前記認識部の認識結果に基づいて、前記認識エリア内に前記障害物が存在すると判定した場合、前記障害物の近傍に存在する前記直線領域の頂点の座標、又は前記曲線領域の頂点の座標のうち、前記障害物よりも前記自車両に近い頂点の座標を通る線分と、前記走行経路とが交わる位置までの距離を、前記自車両から前記障害物までの距離として、前記自車両を制御する、
請求項1から6のうちいずれか一項に記載の車両制御システム。
【請求項8】
前記運転制御部は、前記認識部の認識結果に基づいて、前記認識エリア内に前記障害物が存在すると判定した場合、前記障害物の近傍に存在する前記直線領域の頂点の座標、又は前記曲線領域の頂点の座標のうち、前記障害物よりも前記自車両から遠い頂点の座標を通る線分と、前記走行経路とが交わる位置までの距離から、当該線分から前記障害物までの距離を差し引いた距離を、前記自車両から前記障害物までの距離として、前記自車両を制御する、
請求項1から7のうちいずれか一項に記載の車両制御システム。
【請求項9】
前記決定部を有する決定装置と、
前記認識部と、前記運転制御部とを有する車両制御装置と、を備える
請求項1から8のうちいずれか一項に記載の車両制御システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両制御システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、車両を自動的走行させる自動運転について研究、及び実用化が進められている。従来、自動運転において、車両前方に予め認識エリアを設定し、認識エリア内において検出した障害物までの距離に応じて速度制御を行う技術が知られている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2001-222320号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示の技術では、車両の向きによっては、認識エリアに走行経路以外の領域が含まれ、走行経路外に存在する障害物を検出して速度制御してしまう場合があった。また、特許文献1に開示の技術では、車両を旋回走行させる場合、認識エリアを旋回量に応じて変化させることで対応する一方で、走行経路毎に認識エリアの旋回量を調整する必要があった。また、特許文献1に開示の技術では、車両の旋回中に検出された障害物までの距離を直線距離によって認識するため、走行経路を走行した場合の車両から障害物までの距離を正確に特定することができず、速度制御を適切に行えない場合があった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成する車両制御システムは、自車両の周辺状況を認識する認識部と、前記認識部の認識結果に基づいて、前記自車両を走行させる座標を示した走行経路上を前記自車両に走行させる運転制御部と、前記自車両の走行経路に基づいて、認識エリアを決定する決定部と、を備え、前記運転制御部は、前記認識部の認識結果に基づいて、前記認識エリア内に障害物が存在するか否かを判定し、前記認識エリア内に前記障害物が存在すると判定した場合、前記障害物までの距離を所定の距離に保つ速度制御を行い、前記決定部は、前記走行経路の直線領域において、前記直線領域の始端から終端に亘って、前記自車両前方の右方向の端部と、前記自車両前方の左方向の端部とが位置する領域を前記認識エリアとして決定し、前記走行経路の曲線領域において、前記自車両の駆動輪が後輪の場合、前記自車両前方の幅方向の端部のうち、前記走行経路の外側の端部と、前記自車両の駆動輪のうち、前記走行経路の内側に位置する駆動輪の端部とが位置する領域を前記認識エリアとして決定し、前記自車両の駆動輪が前輪の場合、前記自車両の駆動輪のうち、前記走行経路の外側に位置する駆動輪の端部と、前記自車両前方の幅方向の端部のうち、前記走行経路の内側の端部とが位置する領域を前記認識エリアとして決定する、ことを特徴とする。
【0006】
かかる構成によれば、車両制御システムは、走行経路に応じた認識エリアを決定しつつ、車両の向きや旋回量に関わらず、走行経路上における障害物までの距離を適切に特定し、速度制御を適切に行うことができる。
【0007】
上記車両制御システムにおいて、前記決定部は、前記直線領域では、前記直線領域の始端において、前記自車両前方の左方向の端部を示す第1座標と、前記自車両前方の右方向の端部とが位置する第2座標と、前記直線領域の終端において、前記自車両前方の左方向の端部を示す第3座標と、前記自車両前方の右方向の端部とが位置する第4座標との四つの座標により囲まれる領域を、前記認識エリアとして決定してもよい。
【0008】
かかる構成によれば、決定部は、走行経路の直線領域を認識エリアとする際に、特定すべき座標の数を予め定めることにより、認識エリアの決定にかかる処理の処理負荷を予め定めることができる。
【0009】
上記車両制御システムにおいて、前記決定部は、前記走行経路の曲線領域では、前記自車両の駆動輪が後輪の場合、前記曲線領域の始端において、前記自車両前方の幅方向の端部のうち、前記走行経路の外側の端部を示す第5座標と、前記曲線領域の始端において、前記自車両の駆動輪のうち、前記走行経路の内側に位置する駆動輪の端部を示す第6座標と、前記曲線領域の曲率が他の位置に比して高い位置を走行する際、前記自車両前方の幅方向の端部のうち、前記走行経路の外側の端部を示す第7座標と、前記曲線領域の曲率が他の位置に比して高い位置を走行する際、前記自車両の駆動輪のうち、前記走行経路の内側に位置する駆動輪の端部を示す第8座標と、前記曲線領域の終端において、前記自車両前方の幅方向の端部のうち、前記走行経路の外側の端部を示す第9座標と、前記曲線領域の終端において、前記自車両の駆動輪のうち、前記走行経路の内側に位置する駆動輪の端部を示す第10座標との六つの座標により囲まれる領域を前記認識エリアとして決定し、前記自車両の駆動輪が前輪の場合、前記曲線領域の始端において、前記自車両の駆動輪のうち、前記走行経路の外側に位置する駆動輪の端部を示す第5座標と、前記曲線領域の始端において、前記自車両前方の幅方向の端部のうち、前記走行経路の内側の端部を示す第6座標と、前記曲線領域の曲率が他の位置に比して高い位置を走行する際、前記自車両の駆動輪のうち、前記走行経路の外側に位置する駆動輪の端部を示す第7座標と、前記曲線領域の曲率が他の位置に比して高い位置を走行する際、前記自車両前方の幅方向の端部のうち、前記走行経路の内側の端部を示す第8座標と、前記曲線領域の終端において、前記自車両の駆動輪のうち、前記走行経路の外側に位置する駆動輪の端部を示す第9座標と、前記曲線領域の終端において、前記自車両前方の幅方向の端部のうち、前記走行経路の内側の端部を示す第10座標との六つの座標により囲まれる領域を前記認識エリアとして決定してもよい。
【0010】
かかる構成によれば、決定部は、走行経路の曲線領域を認識エリアとする際に、特定すべき座標の数を予め定めることにより、認識エリアの決定にかかる処理の処理負荷を予め定めることができる。
【0011】
上記車両制御システムにおいて、前記決定部は、前記認識部による認識範囲のうち、前記直線領域の頂点の座標、及び又は前記曲線領域の頂点の座標の総数が所定数となる範囲において、前記認識エリアを決定してもよい。
【0012】
かかる構成によれば、決定部は、走行経路の形状に関わらず、認識エリアの決定に係る処理負荷を一定にすることができる。
上記車両制御システムにおいて、前記運転制御部は、前記直線領域の頂点の座標、及び又は前記曲線領域の頂点の座標に基づいて、前記認識エリアを極座標に変換し、極座標に変換された前記認識エリアと、前記認識部の認識結果とに基づいて、前記認識エリア内に前記障害物が存在するか否かを判定してもよい。
【0013】
かかる構成によれば、運転制御部は、障害物が存在するか否かを判定する処理負荷を低減することができる。
上記車両制御システムにおいて、前記運転制御部は、前記走行経路が示す座標に基づいて前記走行経路の距離を算出し、前記直線領域、及び前記曲線領域において前記自車両の速度を一定に制御してもよい。
【0014】
かかる構成によれば、運転制御部は、直線領域、及び曲線領域において自車両の速度を一定に制御することができる。
上記車両制御システムにおいて、前記運転制御部は、前記認識部の認識結果に基づいて、前記認識エリア内に前記障害物が存在すると判定した場合、前記障害物の近傍に存在する前記直線領域の頂点の座標、又は前記曲線領域の頂点の座標のうち、前記障害物よりも前記自車両に近い頂点の座標を通る線分と、前記走行経路とが交わる位置までの距離を、前記自車両から前記障害物までの距離として、前記自車両を制御してもよい。
【0015】
かかる構成によれば、運転制御部は、障害物よりも近い位置までの距離を、自車両から障害物までの距離として自車両を制御し、障害物との衝突を防止することができる。
上記車両制御システムにおいて、前記運転制御部は、前記認識部の認識結果に基づいて、前記認識エリア内に前記障害物が存在すると判定した場合、前記障害物の近傍に存在する前記直線領域の頂点の座標、又は前記曲線領域の頂点の座標のうち、前記障害物よりも前記自車両から遠い頂点の座標を通る線分と、前記走行経路とが交わる位置までの距離から、当該線分から前記障害物までの距離を差し引いた距離を、前記自車両から前記障害物までの距離として、前記自車両を制御してもよい。
【0016】
かかる構成によれば、運転制御部は、障害物までの距離をより精度高く特定することで、障害物との衝突を防止する。また、運転制御部は、障害物の近傍まで自車両の速度を一定に制御することができる。
【0017】
上記車両制御システムにおいて、前記決定部を有する決定装置と、前記認識部と、前記運転制御部とを有する車両制御装置と、を備える。
かかる構成によれば、車両制御システムは、認識エリアの決定に係る処理と、障害物の存在の有無の判定に係る処理との処理負荷を分散させることができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、走行経路に応じた認識エリアを決定しつつ、車両の向きや旋回量に関わらず、走行経路上における障害物までの距離を適切に特定し、速度制御を適切に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】車両システムの構成の一例を示す図である。
図2】第1制御部および第2制御部の機能構成図である。
図3】認識エリアの決定処理の説明に用いられる図である。
図4】認識エリアの決定処理の説明に用いられる図である。
図5】認識エリアの決定処理の説明に用いられる図である。
図6】認識エリアの決定処理の説明に用いられる図である。
図7】認識エリアの決定処理の説明に用いられる図である。
図8】認識エリアの決定処理の説明に用いられる図である。
図9】障害物の判定処理の説明に用いられる図である。
図10】障害物の判定処理の説明に用いられる図である。
図11】自動運転制御装置により実行される処理の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
<実施形態>
以下、図面を参照し、車両制御システムを具体化した実施形態について説明する。実施形態の車両制御装置は、例えば、自動運転車両に適用される。自動運転とは、例えば、車両の操舵又は加減速のうち、一方又は双方を制御して運転制御を実行することである。上述した運転制御には、例えば、ACC(Adaptive Cruise Control System)やTJP(Traffic Jam Pilot)、ALC(Auto Lane Changing)、CMBS(Collision Mitigation Brake System)、LKAS(Lane Keeping Assistance System)等の運転制御が含まれる。また、自動運転車両は、乗員の手動運転による運転制御が実行されてよい。以下では、左側通行の法規が適用される場合について説明するが、右側通行の法規が適用される場合、左右を逆に読み替えればよい。
【0021】
[全体構成]
図1は、実施形態の車両システム1の構成図である。車両システム1が搭載される車両は、例えば、二輪や三輪、四輪等の車両であり、その駆動源は、ディーゼルエンジンやガソリンエンジン等の内燃機関、電動機、或いはこれらの組み合わせである。電動機は、内燃機関に連結された発電機による発電電力、或いは二次電池や燃料電池の放電電力を使用して動作する。以下、車両システム1が搭載される車両を自車両Mと記載する。
【0022】
車両システム1は、例えば、ファインダ10と、車両センサ20と、GNSS(Global Navigation Satellite System)受信機30と、運転操作子80と、自動運転制御装置100と、走行駆動力出力装置200と、ブレーキ装置210と、ステアリング装置220とを備える。これらの装置や機器は、CAN(Controller Area Network)通信線等の多重通信線やシリアル通信線、無線通信網等によって互いに接続される。なお、図1に示す構成はあくまで一例であり、構成の一部が省略されてもよいし、更に別の構成が追加されてもよい。
【0023】
ファインダ10は、例えば、LIDAR(Light Detection and Ranging)である。ファインダ10は、自車両Mの周辺に光を照射し、散乱光を測定する。ファインダ10は、発光から受光までの時間に基づいて、対象までの距離を検出する。照射される光は、例えば、パルス状のレーザー光である。ファインダ10は、検出結果を自動運転制御装置100に出力する。本実施形態では、ファインダ10が、自車両Mの前方の端部に取り付けられる場合について説明する。
【0024】
車両センサ20は、自車両Mの速度を検出する車速センサ、加速度を検出する加速度センサ、鉛直軸回りの角速度を検出するヨーレートセンサ、自車両Mの向きを検出する方位センサ等を含む。
【0025】
GNSS受信機30は、GNSS衛星から受信した信号に基づいて、自車両Mの位置を特定する。自車両Mの位置は、車両センサ20の出力を利用したINS(Inertial Navigation System)によって特定、又は補完されてもよい。
【0026】
運転操作子80は、例えば、アクセルペダル、ブレーキペダル、シフトレバー、ステアリングホイール、異形ステア、ジョイスティックその他の操作子を含む。運転操作子80には、乗員等による操作量あるいは操作の有無を検出するセンサが取り付けられている。運転操作子80の検出結果は、自動運転制御装置100、もしくは、走行駆動力出力装置200、ブレーキ装置210、及びステアリング装置220のうち一部、又は全部に出力される。
【0027】
自動運転制御装置100は、例えば、第1制御部120と、第2制御部160と、記憶部180とを備える。第1制御部120と第2制御部160とは、それぞれ、例えば、CPU(Central Processing Unit)等のハードウェアプロセッサがプログラム(ソフトウェア)を実行することにより実現される。また、これらの構成要素のうち一部、又は全部は、LSI(Large Scale Integration)やASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field-Programmable Gate Array)、GPU(Graphics Processing Unit)等のハードウェア(回路部;circuitryを含む)によって実現されてもよいし、ソフトウェアとハードウェアの協働によって実現されてもよい。プログラムは、予め自動運転制御装置100のHDD(Hard Disk Drive)やフラッシュメモリ等の記憶装置(非一過性の記憶媒体を備える記憶装置)に格納されていてもよいし、DVDやCD-ROM等の着脱可能な記憶媒体に格納されており、記憶媒体(非一過性の記憶媒体)がドライブ装置に装着されることで自動運転制御装置100のHDDやフラッシュメモリにインストールされてもよい。
【0028】
記憶部180は、上記の各種記憶装置により実現される。また、記憶部180は、例えば、HDD、フラッシュメモリ、EEPROM(Electrically Erasable Programmable Read Only Memory)、ROM(Read Only Memory)、又はRAM(Random Access Memory)等により実現される。記憶部180には、例えば、プログラム、及び走行経路情報181が記憶される。走行経路情報181は、自車両Mを走行させる走行経路RT1の座標を示す情報である。
【0029】
図2に示すように、第1制御部120は、例えば、認識部130と、決定部140と、行動計画生成部150とを備える。行動計画生成部150と、第2制御部160とを組み合わせたものが、「運転制御部」の一例である。
【0030】
認識部130は、対象車両の周辺状況を認識する。例えば、認識部130は、ファインダ10から入力された情報に基づいて、自車両Mの周辺にある物体の位置、速度、加速度、及び進行方向等の状態を認識する。自車両Mの周辺にある物体とは、例えば、周辺車両や物標である。物体の位置は、例えば、自車両Mの代表点を原点とした相対座標上の位置として認識され、制御に使用される。以下、自車両Mの代表点が駆動軸中心であって、自車両Mの駆動軸が、後輪の駆動軸である場合について説明する。物体の位置は、その物体の重心や中心、コーナー等の代表点で表されてもよいし、物体が表現された領域で表されてもよい。物体が車両である場合、物体の「状態」には、物体の加速度やジャーク、或いは車線変更をしている、又は車線変更しようとしているか否か等の行動状態を含んでもよい。
【0031】
決定部140は、自車両Mの走行経路に基づいて、自車両Mの制御に用いられる認識エリアを決定する。決定部140が認識エリアを決定する処理の詳細については、後述する。
【0032】
行動計画生成部150は、原則的には走行経路情報181を参照し、予め定められた走行経路を走行するように目標軌道を生成する。また、行動計画生成部150は、自車両Mの周辺状況に対応できるように、自車両Mが自動的に(運転者の操作に依らずに)将来走行する目標軌道を生成する。目標軌道は、例えば、速度要素を含んでいる。例えば、目標軌道は、自車両Mの到達すべき地点を順に並べたものとして表現される。以下、自車両Mの到達すべき地点を、「軌道点」と記載する。軌道点は、道なり距離で所定の走行距離ごとの自車両Mの到達すべき地点であり、それとは別に、所定のサンプリング時間ごとの目標速度および目標加速度が、目標軌道の一部として生成される。所定の走行距離とは、例えば、数[m]程度である。所定のサンプリング時間とは、例えば、0コンマ数[sec]程度である。また、軌道点は、所定のサンプリング時間ごとの、そのサンプリング時刻における自車両Mの到達すべき位置であってもよい。この場合、目標速度や目標加速度の情報は軌道点の間隔で表現される。
【0033】
また、行動計画生成部150は、認識部130の認識結果に基づいて、決定部140により決定された認識エリア内に障害物が存在するか否かを判定する。行動計画生成部150が認識エリア内に障害物が存在するか否かを判定する処理の詳細については、後述する。行動計画生成部150は、認識エリア内に障害物が存在すると判定した場合、障害物までの距離を所定の距離に保つ運転態様によって車両制御を行う。詳しくは、行動計画生成部150は、障害物までの距離を、所定の距離に保つような目標軌道を生成し、自車両Mを走行させる。
【0034】
第2制御部160は、行動計画生成部150によって生成された目標軌道を、予定の時刻通りに自車両Mが通過するように、走行駆動力出力装置200、ブレーキ装置210、及びステアリング装置220を制御する。
【0035】
第2制御部160は、例えば、取得部162と、速度制御部164と、操舵制御部166とを備える。取得部162は、行動計画生成部150により生成された目標軌道(つまり、軌道点)の情報を取得し、不図示のメモリに記憶させる。速度制御部164は、メモリに記憶された目標軌道に付随する速度要素に基づいて、走行駆動力出力装置200、又はブレーキ装置210を制御する。操舵制御部166は、メモリに記憶された目標軌道の曲がり具合に応じて、ステアリング装置220を制御する。速度制御部164および操舵制御部166の処理は、例えば、フィードフォワード制御とフィードバック制御との組み合わせにより実現される。一例として、操舵制御部166は、自車両Mの前方の道路の曲率に応じたフィードフォワード制御と、目標軌道からの乖離に基づくフィードバック制御とを組み合わせて実行する。
【0036】
走行駆動力出力装置200は、車両が走行するための走行駆動力(トルク)を駆動輪に出力する。走行駆動力出力装置200は、例えば、内燃機関、電動機、及び変速機等の組み合わせと、これらを制御するECU(Electronic Control Unit)とを備える。ECUは、第2制御部160から入力される情報、或いは運転操作子80から入力される情報に従って、上記の構成を制御する。
【0037】
ブレーキ装置210は、例えば、ブレーキキャリパーと、ブレーキキャリパーに油圧を伝達するシリンダと、シリンダに油圧を発生させる電動モータと、ブレーキECUとを備える。ブレーキECUは、第2制御部160から入力される情報、或いは運転操作子80から入力される情報に従って電動モータを制御し、制動操作に応じたブレーキトルクが各車輪に出力されるようにする。ブレーキ装置210は、運転操作子80に含まれるブレーキペダルの操作によって発生させた油圧を、マスターシリンダを介してシリンダに伝達する機構をバックアップとして備えてよい。なお、ブレーキ装置210は、上記説明した構成に限らず、第2制御部160から入力される情報に従ってアクチュエータを制御して、マスターシリンダの油圧をシリンダに伝達する電子制御式油圧ブレーキ装置であってもよい。
【0038】
ステアリング装置220は、例えば、ステアリングECUと、電動モータとを備える。電動モータは、例えば、ラックアンドピニオン機構に力を作用させて転舵輪の向きを変更する。ステアリングECUは、第2制御部160から入力される情報、或いは運転操作子80から入力される情報に従って、電動モータを駆動し、転舵輪の向きを変更させる。
【0039】
[認識エリアの決定処理]
以下、決定部140が認識結果を決定する処理の詳細について説明する。決定部140は、自車両Mの現在の走行速度vと、障害物検出減速度Aと、停止マージンDと、空走時間Tとに基づいて、検出距離Lを決定する。障害物検出減速度Aは、認識エリア内に障害物が存在することに伴い自車両Mを停止させる際に生じる負の加速度である。障害物検出減速度Aは、例えば、マイナス0コンマ数[m/s]程度である。停止マージンDは、認識エリア内に障害物が存在することに伴い自車両Mを停止させる場合の、自車両Mと障害物との距離である。空走時間Tは、自動運転制御装置100が認識エリア内に障害物が存在すると判定するまでに自車両Mが走行する距離、及び又は自動運転制御装置100が自車両Mの停止制御を開始してから自車両Mが実際に停止するまでに自車両Mが走行する距離である。決定部140は、次式(1)に基づいて、検出距離Lを決定する。なお、検出距離Lと、認識部130が認識可能な距離とは、認識部130が認識可能な距離の方が長い距離である。
【0040】
=(v/2A)+D+vT…(1)
:検出距離
v:走行速度
:障害物検出減速度
:停止マージン
:空走時間
図3に示すように、決定部140は、認識部130により認識される範囲のうち、自車両Mから検出距離Lまでの走行経路RT1を特定する。次に、決定部140は、走行経路RT1のうち、直線の領域を直線領域LNとし、カーブの領域を曲線領域CVとして、特定した検出距離Lまでの走行経路RT1を分割する。図3では、決定部140は、自車両Mから検出距離Lまでの走行経路RT1を、開始位置S1、終着位置E1、及び四つの分割位置DV1~DV4により、直線領域LN1、曲線領域CV1、直線領域LN2、曲線領域CV2、及び直線領域LN3の順に分割する。
【0041】
次に、決定部140は、検出距離Lまでの走行経路RT1が八分割されるように、分割した曲線領域CVを更に二分割以上に分割する。詳しくは、決定部140は、曲線領域CVのうち、他の位置の曲率に比して高い位置を分割位置DVとして曲線領域CVを分割する。図4に示すように、決定部140は、曲線領域CV1を分割位置DV5において曲線領域CV1-1,CV1-2に分割し、曲線領域CV2を、分割位置DV6、及び分割位置DV7において曲線領域CV2-1,CV2-2,CV2-3に分割する。これにより、決定部140は、検出距離Lまでの走行経路RT1を、直線領域LN1、曲線領域CV1-1、曲線領域CV1-2、直線領域LN2、曲線領域CV2-1、曲線領域CV2-2、曲線領域CV2-3、及び直線領域LN3の順に、八つの領域に分割する。
【0042】
次に、決定部140は、走行経路情報181を参照し、開始位置S1、終着位置E1、及び各分割位置DVの座標を特定する。上述したように、走行経路情報181は、走行経路RT1の座標を示す情報である。したがって、決定部140は、走行経路RT1のうち、開始位置S1と、開始位置S1から検出距離Lだけ離れた終着位置E1の座標を、走行経路情報181を参照することにより特定することができる。また、決定部140は、上述した分割位置DVの決定方法に基づいて、各分割位置DVに対応する位置の座標を、走行経路情報181を参照することにより特定することができる。図4に示すように、決定部140は、開始位置S1を開始位置座標(x1,y1)、分割位置DV1を分割位置座標(x2,y2)、分割位置DV5を分割位置座標(x3,y3)、分割位置DV2を分割位置座標(x4,y4)、分割位置DV3を分割位置座標(x5,x5)、分割位置DV6を分割位置座標(x6,y6)、分割位置DV7を分割位置座標(x7,y7)、分割位置DV4を分割位置座標(x8,y8)、及び終着位置E1を終着位置座標(x9,y9)として特定する。
【0043】
次に、決定部140は、開始位置S1、終着位置E1、及び各分割位置DVの座標を自車両Mが通過する際の、自車両Mの先端のうち、自車両Mの幅方向の中心が通過する座標を特定する。以降の説明において、自車両Mの先端のうち、自車両Mの幅方向の中心を、「自車両Mの先端中心」と記載する。
【0044】
まず、決定部140は、開始位置S1、終着位置E1、及び各分割位置DVの座標上に自車両Mの駆動輪の中心が位置する状態から、走行経路RT1上を自車両Mの先端中心から自車両Mの駆動輪の中心までの距離分進行方向の後方へ戻った状態における自車両Mの駆動輪の中心の座標を特定する。そして、決定部140は、特定した座標から直線領域LN、又は曲線領域CVにおける走行経路RT1の接線方向へ、駆動輪の中心から自車両Mの先端中心まで進んだ座標を、自車両Mの先端中心が通過する先端中心座標として特定する。つまり、決定部140は、開始位置S1、終着位置E1、及び各分割位置DVの座標上に自車両Mの駆動輪の中心が位置する状態となるように自車両Mを走行させる時に、開始位置S1、終着位置E1、及び各分割位置DVを通過する際の、自車両Mの先端中心の位置の先端中心座標を特定する。
【0045】
図5に示すように、決定部140は、開始位置S1を自車両Mが通過する際の、自車両Mの先端中心の位置を先端中心座標(x1´,y1´)、分割位置DV1を自車両Mが通過する際の、自車両Mの先端中心の位置を先端中心座標(x2´,y2´)、分割位置DV5を自車両Mが通過する際の、自車両Mの先端中心の位置を先端中心座標(x3´,y3´)、分割位置DV2を自車両Mが通過する際の、自車両Mの先端中心の位置を先端座標(x4´,y4´)、分割位置DV3を自車両Mが通過する際の、自車両Mの先端中心の位置を先端中心座標(x5´,x5´)、分割位置DV6を自車両Mが通過する際の、自車両Mの先端中心の位置を先端中心座標(x6´,y6´)、分割位置DV7を自車両Mが通過する際の、自車両Mの先端中心の位置を先端中心座標(x7´,y7´)、分割位置DV4を自車両Mが通過する際の、自車両Mの先端中心の位置を先端中心座標(x8´,y8´)、及び終着位置E1を自車両Mが通過する際の、自車両Mの先端中心の位置を先端中心座標(x9´,y9´)として特定する。
【0046】
自車両Mの先端中心の位置は、開始位置S1、終着位置E1、及び直線領域LN通過後の分割位置DVにおいて、分割位置DVとほぼ一致する。一方で、自車両Mの先端の位置は、曲線領域CV内の分割位置DVや曲線領域CV通過後の分割位置DVにおいて走行経路RT1よりも外側となる。
【0047】
次に、決定部140は、特定した開始位置座標、分割位置座標、及び終着位置座標を自車両Mが通過する際に、自車両Mの外側の端部が通過する外側座標を特定する。決定部140は、特定した開始位置座標上、分割位置座標上、又は終着位置座標上に、自車両Mの先端中心が位置する状態における、自車両Mの前方の幅方向の端部のうち、自車両Mの外側の端部の位置を、走行経路RT1において自車両Mの外側の端部が通過する外側座標として特定する。具体的には、決定部140は、特定した先端中心座標を自車両Mの先端中心が通過する際の、自車両Mの駆動輪の中心の座標における走行経路RT1の接線と垂直に交わる補助線上であって、自車両Mの先端中心座標から所定距離だけ走行経路RT1の外側の方向に離れた位置を外側座標として特定する。
【0048】
図6に示すように、決定部140は、先端中心座標(x1´,y1´)を自車両Mの先端中心が通過する際の、自車両Mの前方の幅方向の端部のうち、走行経路RT1の外側の端部の位置を外側座標(x11,y11)、先端中心座標(x2´,y2´)を自車両Mの先端中心が通過する際の、自車両Mの前方の幅方向の端部のうち、走行経路RT1の外側の端部の位置を外側座標(x21,y21)、先端中心座標(x3´,y3´)を自車両Mの先端中心が通過する際の、自車両Mの前方の幅方向の端部のうち、走行経路RT1の外側の端部の位置を外側座標(x31,y31)、先端中心座標(x4´,y4´)を自車両Mの先端中心が通過する際の、自車両Mの前方の幅方向の端部のうち、走行経路RT1の外側の端部の位置を外側座標(x41,y41)、先端中心座標(x5´,y5´)を自車両Mの先端中心が通過する際の、自車両Mの前方の幅方向の端部のうち、走行経路RT1の外側の端部の位置を外側座標(x51,y51)、先端中心座標(x6´,y6´)を自車両Mの先端中心が通過する際の、自車両Mの前方の幅方向の端部のうち、走行経路RT1の外側の端部の位置を外側座標(x61,y61)、先端中心座標(x7´,y7´)を自車両Mの先端中心が通過する際の、自車両Mの前方の幅方向の端部のうち、走行経路RT1の外側の端部の位置を外側座標(x71,y71)、先端中心座標(x8´,y8´)を自車両Mの先端中心が通過する際の、自車両Mの前方の幅方向の端部のうち、走行経路RT1の外側の端部の位置を外側座標(x81,y81)、及び先端中心座標(x9´,y9´)を自車両Mの先端中心が通過する際の、自車両Mの前方の幅方向の端部のうち、走行経路RT1の外側の端部の位置を外側座標(x91,y91)として特定する。
【0049】
自車両Mの前方の幅方向の端部のうち、走行経路RT1の外側の端部の位置は、走行経路RT1を自車両Mが走行する際、自車両Mの最も外側の端部が通過する位置である。自車両Mの最も外側の端部とは、自車両Mの駆動輪が後輪である場合、自車両Mの前方の幅方向の端部のうち、走行経路RT1の外側の端部である。
【0050】
次に、決定部140は、特定した開始位置座標、分割位置座標、及び終着位置座標を自車両Mが通過する際に、自車両Mの内側の端部が通過する内側座標を特定する。決定部140は、特定した開始位置座標上、分割位置座標上、又は終着位置座標上に、自車両Mの駆動輪中心が位置する状態における、自車両Mの後輪の位置のうち、走行経路RT1の内側の端部の位置を、走行経路RT1において自車両Mの内側の端部が通過する内側座標として特定する。具体的には、決定部140は、特定した開始位置座標、分割位置座標、及び終着位置座標を自車両Mの駆動輪中心が通過する際の、自車両Mの駆動輪の中心の座標と走行経路RT1との接線と垂直に交わる補助線上であって、走行経路RT1の内側の方向に所定距離だけ離れた位置を、内側座標として特定する。
【0051】
図7に示すように、決定部140は、先端中心座標(x1´,y1´)を自車両Mの駆動輪中心が通過する際の、自車両Mの後輪の位置のうち、走行経路RT1の内側の端部の位置を内側座標(x12,y12)、先端中心座標(x2´,y2´)を自車両Mの駆動輪中心が通過する際の、自車両Mの後輪の位置のうち、走行経路RT1の内側の端部の位置を内側座標(x22,y22)、先端中心座標(x3´,y3´)を自車両Mの駆動輪中心が通過する際の、自車両Mの後輪の位置のうち、走行経路RT1の内側の端部の位置を内側座標(x32,y32)、先端中心座標(x4´,y4´)を自車両Mの駆動輪中心が通過する際の、自車両Mの後輪の位置のうち、走行経路RT1の内側の端部の位置を内側座標(x42,y42)、先端中心座標(x5´,y5´)を自車両Mの駆動輪中心が通過する際の、自車両Mの後輪の位置のうち、走行経路RT1の内側の端部の位置を内側座標(x52,y52)、先端中心座標(x6´,y6´)を自車両Mの駆動輪中心が通過する際の、自車両Mの後輪の位置のうち、走行経路RT1の内側の端部の位置を内側座標(x62,y62)、先端中心座標(x7´,y7´)を自車両Mの駆動輪中心が通過する際の、自車両Mの後輪の位置のうち、走行経路RT1の内側の端部の位置を内側座標(x72,y72)、先端中心座標(x8´,y8´)を自車両Mの駆動輪中心が通過する際の、自車両Mの後輪の位置のうち、走行経路RT1の内側の端部の位置を内側座標(x82,y82)、及び先端中心座標(x9´,y9´)を自車両Mの駆動輪中心が通過する際の、自車両Mの後輪の位置のうち、走行経路RT1の内側の端部の位置を内側座標(x92,y92)として特定する。
【0052】
外側座標(x11,y11)、外側座標(x41,y41)、及び内側座標(x82,y82)は、「第1座標」の一例であり、内側座標(x12,y12)、内側座標(x42,y42)、及び外側座標(x81,y81)は、「第2座標」の一例であり、外側座標(x21,y21)、内側座標(x52,y52)、及び内側座標(x92,y92)は、「第3座標」の一例であり、内側座標(x22,y22)、外側座標(x51,y51)、及び外側座標(x91,y91)は、「第4座標」の一例である。外側座標(x21,y21)、及び外側座標(x51,y51)は、「第5座標」の一例であり、内側座標(x22,y22)、及び内側座標(x52,y52)は、「第6座標」の一例であり、外側座標(x31,y31)、外側座標(x61,y61)、及び外側座標(x71,y71)は、「第7座標」の一例であり、内側座標(x32,y32)、内側座標(x62,y62)、及び内側座標(x72,y72)は、「第8座標」の一例であり、外側座標(x41,y41)、及び外側座標(x81,y81)は、「第9座標」の一例であり、内側座標(x42,y42)、及び内側座標(x82,y82)は、「第10座標」の一例である。また、以降の説明において、第1座標、及び第2座標と、第3座標、及び第4座標と、第5座標、及び第6座標と、第7座標、及び第8座標と、第9座標、及び第10座標とを、それぞれ「対になる座標」とも記載する。
【0053】
走行経路RT1の内側の端部の位置は、走行経路RT1を自車両Mが走行する際、自車両Mの最も内側の端部が通過する位置である。自車両Mの最も内側の端部とは、自車両Mの駆動輪が後輪である場合、自車両Mの駆動輪のうち、走行経路RT1の内側に位置する駆動輪の端部である。
【0054】
また、走行経路RT1の外側の端部の位置を特定する際に用いる所定距離と、走行経路RT1の内側の端部の位置を特定する際に用いる所定距離とは、一致、又は略一致する距離であって、足し合わせると自車両Mの幅方向の長さよりも長い距離である。
【0055】
図8に示すように、決定部140は、特定した外側座標(x11,y11)、外側座標(x21,y21)、外側座標(x31,y31)、外側座標(x41,y41)、内側座標(x52,y52)、内側座標(x62,y62)、内側座標(x72,y72)、内側座標(x82,y82)、内側座標(x92,y92)、外側座標(x91,y91)、外側座標(x81,y81)、外側座標(x71,y71)、外側座標(x61,y61)、外側座標(x51,y51)、内側座標(x42,y42)、内側座標(x32,y32)、内側座標(x22,y22)、及び外側座標(x91,y91)の、18点の座標に囲まれる領域を、認識エリアAR1として決定する。18点は、「座標の総数の所定数」の一例である。
【0056】
決定部140が決定した認識エリアAR1の幅方向の端部のうち、一方は、自車両Mの前方の幅方向の端部のうち、走行経路RT1の外側の端部が通過する端部であり、他方は、自車両Mの駆動輪のうち、走行経路RT1の内側に位置する駆動輪の端部が通過する端部である。
【0057】
[障害物の判定処理]
以下、行動計画生成部150が認識エリアAR1内に障害物が存在するか否かを判定する処理の詳細について説明する。行動計画生成部150は、認識エリアAR1を示す直交座標の範囲を、ファインダ10による検出範囲の原点とした極座標に変換する。図9に示すように、行動計画生成部150は、認識エリアAR1を示す直交座標の範囲を、次式(2)に基づいて極座標に変換する。行動計画生成部150は、極座標変換により、ファインダ10の検出範囲のうち、認識エリアAR1の範囲を、座標(L,θ)と、座標(L,θ)と、ファインダ10による検出範囲の原点とを頂点とした三角形の範囲Sとする。角度θから角度θまでの範囲は、ファインダ10による検出範囲のうち、認識エリアAR1の範囲である。距離Lは、角度θ方向における認識エリアAR1の端部までの距離である。距離Lは、角度θ方向における認識エリアAR1の端部までの距離である。
【0058】
S=1/2Lsin(θ-θ)=1/2(LL´sin(θ´-θ)+LL´sin(θ-θ´))…(2)
S:極座標系における認識エリアの範囲
θ:ファインダ10の角度
θ:ファインダ10の角度(θ>θ
:角度θ方向における認識エリアAR1の端部までの距離
:角度θ方向における認識エリアAR1の端部までの距離
ファインダ10は、検出範囲に存在する物体を所定の分解能において検出する。所定の分解能とは、例えば、0コンマ数[度]~数[度]程度である。行動計画生成部150は、式(2)に基づく次式(3)を用いて、角度θから角度θまで範囲の角度θ´方向における認識エリアAR1の端部までの距離L´を特定する。
【0059】
L´=Lsin(θ-θ)/(Lsin(θ´-θ)+Lsin(θ-θ´))…(3)
θ´:ファインダ10の角度
L´:角度θ´方向における認識エリアAR1の端部までの距離
行動計画生成部150は、ファインダ10の検出結果のうち、角度θ´方向における物体までの距離が、特定した認識エリアAR1の端部までの距離L´よりも短い場合、認識エリアAR1内に障害物が存在すると判定する。
【0060】
[障害物までの距離]
行動計画生成部150は、認識エリアAR1内に障害物が存在すると判定した場合、自車両Mが走行経路RT1を走行した場合の障害物までの距離を特定する。詳しくは、行動計画生成部150は、認識部130の認識結果に基づいて、認識エリアAR1を構成する直線領域LNの頂点の座標、又は曲線領域CVの頂点の座標のうち、障害物OBの近傍に存在する対になる座標であって、障害物OBよりも自車両Mに近い対になる座標を通る線分を特定する。そして、行動計画生成部150は、特定した線分と、走行経路RT1とが交わる位置を、障害物OBの位置として特定する。
【0061】
図10に示すように、行動計画生成部150は、障害物OBの近傍に存在する対になる座標として、外側座標(x71,y71)、及び内側座標(x72,y72)と、外側座標(x81,y81)、及び内側座標(x82,y82)とを特定する。そして、行動計画生成部150は、特定した対になる座標のうち、障害物OBよりも自車両Mに近い対になる座標として、外側座標(x71,y71)、及び内側座標(x72,y72)を特定する。行動計画生成部150は、特定した外側座標(x71,y71)、及び内側座標(x72,y72)を結ぶ線分LS1と、走行経路RT1とが交わる位置までの走行経路RT1上の距離を、障害物OBまでの距離として特定する。ここで、行動計画生成部150は、上述した処理において、認識エリアAR1を囲む各座標を特定済みである。このため、行動計画生成部150は、上述した処理の結果に基づいて、線分LS1と、走行経路RT1とが交わる位置を特定することができる。また、走行経路情報181に走行経路RT1の座標が示されているため、行動計画生成部150は、線分LS1と、走行経路RT1とが交わる位置までの走行経路RT1上の距離を特定することができる。
【0062】
行動計画生成部150は、走行経路RT1の直線領域LNと、曲線領域CVとにおいて、速度が一定となるように、走行経路RT1の距離に応じた速度制御を行う。そして、行動計画生成部150は、認識エリアAR1内に障害物OBが存在すると判定した場合、特定した障害物OBの距離に基づいて、自車両Mから障害物OBまでの距離を所定の距離に保つような目標軌道を生成し、自車両Mを走行させる。
【0063】
[動作フロー]
以下、図11を参照し、自動運転制御装置100により実行される処理を説明する。本フローチャートの処理は、例えば、所定の時間間隔毎に実行される。まず、決定部140は、検出距離Lを決定する(ステップS100)。次に、決定部140は、走行経路RT1のうち、直線の領域を直線領域LNとし、カーブの領域を曲線領域CVとして、特定した検出距離Lまでの走行経路RT1を分割する(ステップS102)。次に、決定部140は、検出距離Lまでの走行経路RT1が八分割されるように、分割した曲線領域CVを更に二分割以上に分割する(ステップS104)。なお、ステップS102の処理において、走行経路RT1が既に八分割されている場合、決定部140は、ステップS104の処理を実行せず、ステップS102の処理からステップS106の処理に進んでもよい。次に、決定部140は、走行経路情報181を参照し、開始位置S1、終着位置E1、及び各分割位置DVの座標を特定する(ステップS106)。
【0064】
次に、決定部140は、開始位置S1、終着位置E1、及び各分割位置DVを自車両Mが通過する際の、自車両Mの先端中心座標を特定する(ステップS108)。次に、決定部140は、特定した開始位置S1、終着位置E1、及び各分割位置DVを自車両Mの先端中心が通過する際の、自車両Mの前方の幅方向の端部のうち、走行経路RT1の外側の端部の位置を、外側座標として特定する(ステップS110)。次に、決定部140は、特定した開始位置S1、終着位置E1、及び各分割位置DVに自車両Mの駆動輪中心が位置する状態における自車両Mの後輪の位置のうち、走行経路RT1の内側の位置を、内側座標として特定する(ステップS112)。次に、決定部140は、特定した18点の座標に囲まれる領域を、認識エリアAR1として決定する(ステップS114)。
【0065】
次に、行動計画生成部150は、認識エリアAR1を示す直交座標の範囲を、ファインダ10による検出範囲の原点とした極座標の範囲に変換する(ステップS116)。次に、行動計画生成部150は、認識エリアAR1内に障害物OBが存在するか否かを判定する(ステップS118)。行動計画生成部150は、認識部130の認識結果のうち、角度θ´方向における物体までの距離が、特定した認識エリアAR1の端部までの距離L´よりも短い場合、認識エリアAR1内に障害物が存在すると判定する。行動計画生成部150は、認識エリアAR1内に障害物OBが存在すると判定した場合、障害物OBまでの距離を特定する(ステップS120)。次に、行動計画生成部150は、特定した障害物OBまでの距離に基づいて、自車両Mから障害物OBまでの距離を所定の距離に保つような目標軌道を生成し、自車両Mを速度制御する(ステップS122)。行動計画生成部150は、認識エリアAR1内に障害物OBが存在しないと判定した場合、走行経路RT1の距離に基づいて、速度制御を行う(ステップS124)。つまり、行動計画生成部150は、走行経路RT1の直線領域LNと、曲線領域CVとにおいて、速度が一定となるように、走行経路RT1の距離に応じた速度制御を行う。
【0066】
[実施形態の作用効果]
上記実施形態によれば、以下のような作用効果を得ることができる。
(1)車両システム1は、認識部130と、決定部140と、行動計画生成部150と、第2制御部160とを備える。認識部130は、自車両Mの周辺状況を認識する。運転制御部(行動計画生成部150、及び第2制御部160)は、認識部130の認識結果に基づいて、自車両Mを走行させる座標を示した走行経路RT1上を自車両Mに走行させる。決定部140は、自車両Mの走行経路RT1に基づいて、認識エリアAR1を決定する。また、行動計画生成部150、及び第2制御部160は、認識部130の認識結果に基づいて、認識エリアAR1内に障害物OBが存在するか否かを判定し、認識エリアAR1内に障害物OBが存在すると判定した場合、障害物OBまでの距離を所定の距離に保つ速度制御を行う。決定部140は、走行経路RT1の直線領域LNにおいて、直線領域LNの始端から終端に亘って、自車両M前方の右方向の端部と、自車両M前方の左方向の端部とが位置する領域を認識エリアAR1として決定する。また、決定部140は、走行経路RT1の曲線領域CVにおいて、自車両Mの駆動輪が後輪の場合、自車両Mの前方の幅方向の端部のうち、走行経路RT1の外側の端部と、自車両Mの駆動輪のうち、走行経路RT1の内側に位置する駆動輪の端部とが位置する領域を認識エリアAR1として決定する。
【0067】
ここで、曲線領域CVを含む走行経路RT1を自車両Mが走行する場合、自車両Mの前方の幅方向の端部のうち、走行経路RT1の外側の端部は、走行経路RT1の外側に突出する。また、曲線領域CVを含む走行経路RT1を自車両Mが走行する場合、自車両Mの駆動輪のうち、走行経路RT1の内側に位置する駆動輪の端部は、走行経路RT1の内側に突出する。
【0068】
かかる構成によれば、決定部140は、走行経路RT1の形状に応じた認識エリアAR1を決定する。これにより、決定部140は、曲線領域CVにおいて、走行経路RT1の外側や内側に自車両Mが突出する位置を認識エリアAR1内に含め、認識エリアAR1内の障害物OBと自車両Mとが衝突することを抑制することができる。また、決定部140は、走行経路RT1の形状に即さない領域を認識エリアAR1とすることを抑制し、認識エリアAR1外の障害物OBの存在が速度制御に影響することを抑制することができる。また、かかる構成によれば、行動計画生成部150は、自車両Mの向きや旋回量に関わらず、走行経路RT1上における障害物OBまでの距離を適切に特定し、速度制御を適切に行うことができる。
【0069】
(2)決定部140は、直線領域LNでは、直線領域LNの始端において、自車両M前方の左方向の端部を示す第1座標と、自車両M前方の右方向の端部とが位置する第2座標と、直線領域LNの終端において、自車両M前方の左方向の端部を示す第3座標と、自車両M前方の右方向の端部とが位置する第4座標との四つの座標により囲まれる領域を、認識エリアAR1として決定する。
【0070】
かかる構成によれば、決定部140は、走行経路RT1の直線領域LNを認識エリアAR1とする際に、特定すべき座標の数を予め定めることにより、認識エリアAR1の決定に係る処理の処理負荷を予め定めることができる。
【0071】
(3)決定部140は、走行経路RT1の曲線領域CVでは、自車両Mの駆動輪が後輪の場合、曲線領域CVの始端において、自車両Mの前方の幅方向の端部のうち、走行経路RT1の外側の端部を示す第5座標と、曲線領域CVの始端において、自車両Mの駆動輪のうち、走行経路RT1の内側に位置する駆動輪の端部を示す第6座標と、曲線領域CVの曲率が他の位置に比して高い位置を走行する際、自車両Mの前方の幅方向の端部のうち、走行経路RT1の外側の端部を示す第7座標と、曲線領域CVの曲率が他の位置に比して高い位置を走行する際、自車両Mの駆動輪のうち、走行経路RT1の内側に位置する駆動輪の端部を示す第8座標と、曲線領域CVの終端において、自車両Mの前方の幅方向の端部のうち、走行経路RT1の外側の端部を示す第9座標と、曲線領域CVの終端において、自車両Mの駆動輪のうち、走行経路RT1の内側に位置する駆動輪の端部を示す第10座標との六つの座標により囲まれる領域を認識エリアとして決定する。
【0072】
かかる構成によれば、決定部140は、走行経路RT1の曲線領域CVを認識エリアAR1とする際に、特定すべき座標の数を予め定めることにより、認識エリアAR1の決定に係る処理の処理負荷を予め定めることができる。
【0073】
(4)決定部140は、認識部130による認識範囲のうち、直線領域LNの頂点の座標、及び又は曲線領域CVの頂点の座標の総数が18点となる検出距離Lまでの範囲において、認識エリアAR1を決定する。
【0074】
かかる構成によれば、決定部140は、特定すべき座標の数を予め定めることにより、認識エリアAR1の決定に係る処理の処理負荷を予め定めることができる。
(5)行動計画生成部150は、直線領域LNの頂点の座標、及び又は曲線領域CVの頂点の座標に基づいて、認識エリアAR1を極座標に変換し、極座標に変換された認識エリアAR1と、認識部130の認識結果とに基づいて、認識エリアAR1内に障害物OBが存在するか否かを判定する。
【0075】
ここで、認識部130は、認識結果として、ファインダ10の検出結果を行動計画生成部150に出力する場合がある。ファインダ10の検出結果は、ファインダ10の検出方向と、検出した物体までの距離とを示す極座標系によって表される場合がある。かかる構成によれば、行動計画生成部150は、ファインダ10の検出結果を極座標系から直交座標系に逐次変換せずに、予め認識エリアAR1を極座標に変換しておく。これにより、行動計画生成部150は、認識エリアAR1内に障害物OBが存在するか否かを判定する処理負荷を低減することができる。
【0076】
(6)行動計画生成部150、及び第2制御部160は、走行経路RT1が示す座標に基づいて走行経路RT1の距離を算出し、直線領域LN、及び曲線領域CVにおいて自車両Mの速度を一定に制御する。
【0077】
ここで、従来の技術では、直線領域と、曲線領域とでは、曲線領域の方が短い距離に認識されるため、曲線領域において適切に車両の速度を一定に制御できない場合があった。一方、かかる構成によれば、行動計画生成部150は、走行経路RT1が示す座標に基づいて走行経路RT1の距離を算出するため、直線領域LNと、曲線領域CVとに寄らず、走行経路RT1の距離を適切に特定することができる。したがって、行動計画生成部150、及び第2制御部160は、直線領域LN、及び曲線領域CVにおいて自車両Mの速度を一定に制御することができる。
【0078】
(7)行動計画生成部150、及び第2制御部160は、認識部130の認識結果に基づいて、認識エリアAR1内に障害物OBが存在すると判定した場合、障害物OBの近傍に存在する直線領域LNの頂点の座標、又は曲線領域CVの頂点の座標のうち、自車両Mに近い頂点の座標を通る線分LSと、走行経路RT1とが交わる位置までの走行経路RT1上の距離を、自車両Mから障害物OBまでの距離として、自車両Mを制御する。
【0079】
かかる構成によれば、行動計画生成部150、及び第2制御部160は、障害物OBよりも近い位置を障害物OBの位置とすることで、余裕をもって障害物OBとの衝突を防止することができる。
【0080】
上記各実施形態は以下のように変更してもよい。なお、上記実施形態および以下の各別例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせてもよい。
〇上述では、自車両Mの駆動輪が後輪である場合について説明したが、これに限られない。自車両Mの駆動輪は、前輪であってもよい。この場合、上述の説明のうち、「自車両Mの前方の幅方向の端部のうち、走行経路RT1の外側の端部」を、「自車両Mの駆動輪のうち、走行経路RT1の外側に位置する駆動輪の端部」と読み替えればよい。また、「自車両Mの駆動輪のうち、走行経路RT1の内側に位置する駆動輪の端部」を、「自車両Mの前方の幅方向の端部のうち、走行経路RT1の内側の端部」と読み替えればよい。
【0081】
〇決定部140は、上述した式(1)に基づいて、検出距離Lを決定する場合について説明したが、これに限られない。決定部140は、式(1)に基づいて算出した距離よりも長い距離であれば、検出距離Lをいずれの値に決定してもよい。
【0082】
〇決定部140は、直線領域LNでは、第1座標~第4座標の四つの座標より多い座標により囲まれる領域を、認識エリアAR1として決定してもよい。この場合、決定部140は、直線領域LNにおいて、複数の第3座標と、第3座標に対応する数の第4座標とに囲まれる領域を、認識エリアAR1として決定してもよい。かかる構成によれば、決定部140は、走行経路RT1の形状に、より則した直線領域LNを認識エリアAR1として決定することができる。
【0083】
〇決定部140は、曲線領域CVでは、第5座標~第10座標の六つの座標より多い座標により囲まれる領域を、認識エリアAR1として決定してもよい。この場合、決定部140は、曲線領域CVにおいて、複数の第7座標と、第7座標に対応する数の第8座標とに囲まれる領域を、認識エリアAR1として決定してもよい。かかる構成によれば、決定部140は、走行経路RT1の形状に、より則した曲線領域CVを認識エリアAR1として決定することができる。
【0084】
〇決定部140は、検出距離Lまでの走行経路RT1が八分割されるように、分割位置DVにより走行経路RT1を分割し、18点の座標に囲まれる領域を、認識エリアAR1として決定する場合について説明したが、これに限られない。決定部140は、予め認識エリアAR1を構成する座標の数が定まっていれば、18点より少ない数の座標に囲まれる領域、又は18点より多い数の座標に囲まれる領域を、認識エリアAR1として決定してもよい。かかる構成によれば、決定部140は、特定すべき座標の数を予め定めることにより、認識エリアAR1の決定に係る処理の処理負荷を予め定めることができる。
【0085】
〇行動計画生成部150は、障害物OBの近傍に存在する対になる座標であって、障害物OBよりも自車両Mに近い対になる座標に基づいて、障害物OBまでの距離を特定する場合について説明したが、これに限られない。行動計画生成部150は、障害物OBの近傍に存在する対になる座標であって、障害物OBよりも自車両Mから遠い対になる座標までの走行経路RT1上の距離を、障害物OBまでの距離として特定してもよい。詳しくは、行動計画生成部150は、認識部130の認識結果に基づいて、認識エリアAR1を構成する直線領域LNの頂点の座標、又は曲線領域CVの頂点の座標のうち、障害物OBの近傍に存在する対になる座標であって、障害物OBよりも自車両Mから遠い対になる座標を通る線分を特定する。
【0086】
図10に示すように、行動計画生成部150は、障害物OBの近傍に存在する対になる座標として、外側座標(x71,y71)、及び内側座標(x72,y72)と、外側座標(x81,y81)、及び内側座標(x82,y82)とを特定する。そして、行動計画生成部150は、特定した対になる座標のうち、障害物OBよりも自車両Mから遠い対になる座標として、外側座標(x81,y81)、及び内側座標(x82,y82)を特定する。行動計画生成部150は、特定した外側座標(x81,y81)、及び内側座標(x82,y82)を結ぶ線分LS2と、走行経路RT1とが交わる位置までの走行経路RT1上の距離を特定する。ここで、行動計画生成部150は、上述した処理において、認識エリアAR1を囲む各座標を特定済みである。このため、行動計画生成部150は、上述した処理の結果に基づいて、線分LS2と、走行経路RT1とが交わる位置を特定することができる。また、走行経路情報181に走行経路RT1の座標が示されているため、行動計画生成部150は、線分LS2と、走行経路RT1とが交わる位置までの走行経路RT1上の距離を、障害物OBまでの距離として特定することができる。
【0087】
かかる構成によれば、行動計画生成部150、及び第2制御部160は、障害物OBのより近傍まで自車両Mの速度を一定に制御することができる。また、行動計画生成部150、及び第2制御部160は、自車両Mの速度を一定に制御したまま障害物OBの近傍まで走行した場合、認識部130により認識された障害物OBの存在に基づいて、障害物OBとの衝突を防止することができる。
【0088】
〇行動計画生成部150は、障害物OBまでの距離を、より精度高く特定してもよい。この場合、行動計画生成部150は、線分LS2から垂線を伸ばした場合に、垂線が障害物OBに接するまでの長さを、線分LS2から障害物OBまでの最短距離d1として特定する。行動計画生成部150は、線分LS2と、走行経路RT1とが交わる位置までの走行経路RT1上の距離から、最短距離d1を差し引いた距離を、自車両Mから障害物OBまでの距離として特定する。
【0089】
行動計画生成部150は、走行経路RT1の直線領域LNと、曲線領域CVとにおいて、速度が一定となるように、走行経路RT1の距離に応じた速度制御を行う。そして、行動計画生成部150は、認識エリアAR1内に障害物OBが存在すると判定した場合、特定した障害物OBの距離に基づいて、自車両Mから障害物OBまでの距離を所定の距離に保つような目標軌道を生成し、自車両Mを走行させる。
【0090】
かかる構成によれば、行動計画生成部150、及び第2制御部160は、障害物OBまでの距離を精度高く特定することで、障害物OBとの衝突を防止することができる。また、行動計画生成部150、及び第2制御部160は、障害物OBのより近傍まで自車両Mの速度を一定に制御することができる。
【0091】
〇なお、行動計画生成部150は、障害物OBよりも自車両Mから遠い対になる座標に代えて、障害物OBの自車両Mの近傍に存在する対になる座標に基づいて、障害物OBまでの距離をより精度高く特定してもよい。この場合、行動計画生成部150は、線分LS1から垂線を伸ばした場合に、垂線が障害物OBに接するまでの長さを、線分LS1から障害物OBまでの最短距離として特定する。行動計画生成部150は、線分LS1と、走行経路RT1とが交わる位置までの走行経路RT1上の距離に、最短距離を足し合わせた距離を、自車両Mから障害物OBまでの距離として特定する。
【0092】
○車両システム1は、自車両Mの周辺に存在する物体までの距離を検出する構成として、ファインダ10に代えて(或いは、加えて)、カメラを備えていてもよい。カメラは、例えば、CCD(Charge Coupled Device)やCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)等の固体撮像素子を利用したデジタルカメラである。カメラは、自車両Mの任意の箇所に取り付けられる。例えば、自車両Mの前方を撮像する場合、カメラは、フロントウインドシールド上部やルームミラー裏面等に取り付けられる。また、自車両Mの後方を撮像する場合、カメラは、リアウィンドシールド上部等に取り付けられる。また、自車両Mの右側方、又は左側方を撮像する場合、カメラは、車体やドアミラーの右側面、又は左側面等に取り付けられる。カメラは、撮像する方向ごとに設けられてもよい。この場合、前方、又は後方を撮像する前方カメラ、後方カメラ等は、右側方、又は左側方を撮像する側方カメラよりも高感度であってもよい。カメラは、例えば、周期的に繰り返し自車両Mの周辺を撮像する。カメラは、ステレオカメラであってもよい。
【0093】
○車両システム1は、自車両Mの周辺に存在する物体までの距離を検出する構成として、ファインダ10に代えて(或いは、加えて)、レーダ装置を備えていてもよい。レーダ装置は、自車両Mの周辺にミリ波等の電波を放射すると共に、物体によって反射された電波(反射波)を検出して少なくとも物体の距離、及び物体の方位を検出する。レーダ装置は、自車両Mの任意の箇所に取り付けられる。レーダ装置は、FM-CW(Frequency Modulated Continuous Wave)方式によって物体の位置および速度を検出してもよい。
【0094】
○ファインダ10は、水平方向のある一方向をXとし、他方の方向をYとしたX-Yの水平方向の物体の検出に加えて、X-Yの水平方向に対して直交する鉛直方向をZにも物体の検出を行ってもよい。
【0095】
○上述では、ファインダ10が、自車両Mの前方の端部に取り付けられる場合について説明したが、これに限られない。ファインダ10は、自車両Mの前方に存在する物体を検出できれば、自車両Mの任意の箇所に取り付けられてもよい。この場合、認識部130は、ファインダ10が取り付けられる位置に応じて、ファインダ10の検出結果を補正する。詳しくは、認識部130は、自車両Mの先端中心からのずれ量、及び自車両Mの幅方向の中心からのずれ量を打ち消すように、ファインダ10の検出結果を補正する。
【0096】
〇自車両Mは、走行経路情報181に示す走行経路RT1に代えて(或いは、加えて)、ナビゲーション装置により決定された経路を走行してもよい。ナビゲーション装置は、ナビHMI(Human Machine Interface)と、経路決定部と、第1地図情報とを備える。経路決定部は、例えば、GNSS受信機30により特定された自車両Mの位置(或いは入力された任意の位置)から、ナビHMI(Human Machine Interface)を用いて乗員により入力された目的地までの地図上経路を、第1地図情報を参照して決定する。第1地図情報は、例えば、道路を示すリンクと、リンクによって接続されたノードとによって道路形状が表現された情報である。第1地図情報は、道路の曲率やPOI(Point Of Interest)情報等を含んでもよい。地図上経路は、MPU(Map Positioning Unit)に出力される。ナビゲーション装置は、地図上経路に基づいて、ナビHMIを用いた経路案内を行ってもよい。ナビゲーション装置は、例えば、乗員の保有するスマートフォンやタブレット端末等の端末装置の機能によって実現されてもよい。ナビゲーション装置は、自車両Mの外部の機器と通信する通信装置を介してナビゲーションサーバに現在位置と目的地を送信し、ナビゲーションサーバから地図上経路と同等の経路を取得してもよい。
【0097】
MPUは、例えば、推奨車線決定部を含み、HDDやフラッシュメモリ等の記憶装置に第2地図情報を保持している。推奨車線決定部は、ナビゲーション装置から提供された地図上経路を複数のブロックに分割し(例えば、車両進行方向に関して100[m]毎に分割し)、第2地図情報を参照してブロックごとに推奨車線を決定する。推奨車線決定部は、左から何番目の車線を走行するといった決定を行う。推奨車線決定部は、地図上経路に分岐箇所が存在する場合、自車両Mが、分岐先に進行するための合理的な経路を走行できるように、推奨車線を決定する。
【0098】
第2地図情報は、第1地図情報よりも高精度な地図情報である。第2地図情報は、例えば、車線の中央の情報あるいは車線の境界の情報等を含んでいる。また、第2地図情報には、道路情報、交通規制情報、住所情報(住所・郵便番号)、施設情報、電話番号情報等が含まれてよい。第2地図情報は、通信装置が他装置と通信することにより、随時、アップデートされてよい。行動計画生成部150は、MPUにより決定された推奨車線を走行経路RT1として上述した各種処理を実行する。かかる構成によれば、行動計画生成部150、及び第2制御部160は、走行経路情報181により予め定められた走行経路RT1以外の走行経路RT1についても、上述した処理を適応することができる。
【0099】
○決定部140が認識エリアAR1を決定する処理と、行動計画生成部150が認識エリアAR1内に障害物OBが存在するか否かを判定する処理とは、別体の装置により実行されてもよい。詳しくは、自動運転制御装置100は、決定部140を備える制御部を有する決定装置と、認識部130、及び行動計画生成部150とを備える第1制御部120と、第2制御部160とを備える車両制御装置とにより構成されてもよい。かかる構成によれば、車両システム1は、認識エリアAR1の決定に係る処理と、障害物OBの存在の有無の判定に係る処理との処理負荷を分散させることができる。
【0100】
○自車両Mの位置の特定は、GNSS受信機30に代えて(或いは、加えて)、レンジャーシステムや、SLAM(Simultaneous Localization and Mapping)により実現されてもよい。
【符号の説明】
【0101】
1…車両システム、10…ファインダ、20…車両センサ、30…GNSS受信機、80…運転操作子、100…自動運転制御装置、120…第1制御部、130…認識部、140…決定部、150…行動計画生成部、160…第2制御部、162…取得部、164…速度制御部、166…操舵制御部、180…記憶部、181…走行経路情報、200…走行駆動力出力装置、210…ブレーキ装置、220…ステアリング装置、A…障害物検出減速度、AR1…認識エリア、CV,CV1,CV1-1,CV1-2,CV2,CV2-1,CV2-2,CV2-3…曲線領域、D…停止マージン、DV,DV1,DV2,DV3,DV4,DV5,DV6,DV7…分割位置、E1…終着位置、ECU…ブレーキ、ECU…ステアリング、HMI…ナビ、L…検出距離、LN,LN1,LN2,LN3…直線領域、LS,LS1,LS2…線分、M…自車両、OB…障害物、RT1…走行経路、T…空走時間、v…走行速度。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
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図9
図10
図11