(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-03-18
(45)【発行日】2025-03-27
(54)【発明の名称】流体機械
(51)【国際特許分類】
F04C 29/02 20060101AFI20250319BHJP
【FI】
F04C29/02 311L
F04C29/02 351C
(21)【出願番号】P 2022036154
(22)【出願日】2022-03-09
【審査請求日】2024-06-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】柏 真太郎
(72)【発明者】
【氏名】正木 大輔
(72)【発明者】
【氏名】福山 了介
(72)【発明者】
【氏名】城丸 勝俊
(72)【発明者】
【氏名】森 達志
(72)【発明者】
【氏名】原田 理恵子
(72)【発明者】
【氏名】吉田 将也
【審査官】大瀬 円
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-323885(JP,A)
【文献】特開2012-162989(JP,A)
【文献】特開2021-021333(JP,A)
【文献】特開2009-030516(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04C 29/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒状のハウジングと、
前記ハウジング内に互いに平行に配置された状態で回転可能に支持される第1回転軸及び第2回転軸と、
前記第1回転軸に固定される駆動ギアと、
前記第2回転軸に固定されるとともに前記駆動ギアと噛合する従動ギアと、を有し、
前記ハウジングは、
前記駆動ギア及び前記従動ギアを収容するとともにオイルが封入されたギア室を内部に区画する筒状の区画壁と、
前記ギア室に開口する開口部、及び前記開口部に連続するとともに前記開口部よりも内径が拡大された拡径部を有し、前記ギア室内の圧力を外部へ抜く圧抜き通路と、を備える流体機械であって、
前記ハウジングは、前記拡径部に接続され、前記開口部の開口とは異なる位置で前記ギア室に開口する分岐通路を備え、
前記分岐通路の前記ギア室側の開口は、前記駆動ギア及び前記従動ギアの回転により前記圧抜き通路内の前記オイルを前記分岐通路に引き込む負圧が発生するよう前記駆動ギア及び前記従動ギアの少なくとも一方の歯に対向させて設けられていることを特徴とする流体機械。
【請求項2】
前記分岐通路の開口は、回転する前記駆動ギア及び前記従動ギアの少なくとも一方の歯の根元と歯の先端との間の部位に対向することを特徴とする請求項1に記載の流体機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体機械に関する。
【背景技術】
【0002】
流体機械は、筒状のハウジングを有している。また、流体機械は、例えば特許文献1のように、第1回転軸及び第2回転軸と、駆動ギアと、従動ギアと、を有している場合がある。第1回転軸及び第2回転軸は、ハウジング内に互いに平行に配置された状態で回転可能に支持されている。駆動ギアは、第1回転軸に固定されている。従動ギアは、第2回転軸に固定されている。従動ギアは、駆動ギアと噛合する。ハウジングは、ギア室を内部に区画する筒状の区画壁を備えている。ギア室は、駆動ギア及び従動ギアを収容する。また、ギア室には、オイルが封入されている。オイルは、駆動ギアと従動ギアとの間の潤滑に寄与する。さらに、ハウジングは、圧抜き通路を備えている。圧抜き通路は、開口部、及び拡径部を有している。開口部は、ギア室に開口する。拡径部は、開口部に連続している。拡径部は、開口部よりも内径が拡大されている。そして、圧抜き通路は、ギア室の圧をハウジングの外部に抜く。これにより、ギア室内が高圧になってしまうことが抑制されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、このような流体機械においては、ギア室内でオイルの泡が発生すると、オイルの泡が、圧抜き通路から外部へ洩れ出す虞がある。ギア室内で発生したオイルの泡が、圧抜き通路から外部へ洩れると、その分だけ、ギア室内に封入されているオイルの量が減少してしまうことになる。すると、駆動ギアと従動ギアとの間が貧潤滑になってしまう虞があるため、流体機械の信頼性が低下してしまう。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決する流体機械は、筒状のハウジングと、前記ハウジング内に互いに平行に配置された状態で回転可能に支持される第1回転軸及び第2回転軸と、前記第1回転軸に固定される駆動ギアと、前記第2回転軸に固定されるとともに前記駆動ギアと噛合する従動ギアと、を有し、前記ハウジングは、前記駆動ギア及び前記従動ギアを収容するとともにオイルが封入されたギア室を内部に区画する筒状の区画壁と、前記ギア室に開口する開口部、及び前記開口部に連続するとともに前記開口部よりも内径が拡大された拡径部を有し、前記ギア室内の圧力を外部へ抜く圧抜き通路と、を備える流体機械であって、前記ハウジングは、前記拡径部に接続され、前記開口部の開口とは異なる位置で前記ギア室に開口する分岐通路を備え、前記分岐通路の前記ギア室側の開口は、前記駆動ギア及び前記従動ギアの回転により前記圧抜き通路内の前記オイルを前記分岐通路に引き込む負圧が発生するよう前記駆動ギア及び前記従動ギアの少なくとも一方の歯に対向させて設けられている。
【0006】
これによれば、ギア室内で発生したオイルの泡が圧抜き通路に流出したとしても、圧抜き通路内のオイルが分岐通路に引き込まれる。そして、分岐通路に引き込まれたオイルが、分岐通路からギア室内に還流する。したがって、ギア室内で発生したオイルの泡が、圧抜き通路から外部へ洩れ出すことが抑制される。よって、ギア室内で発生したオイルの泡が、圧抜き通路から外部へ洩れて、その分だけ、ギア室内に封入されているオイルの量が減少してしまうといった問題が回避され易くなる。その結果、駆動ギアと従動ギアとの間が貧潤滑になってしまうことが抑制されるため、流体機械の信頼性を向上させることができる。
【0007】
上記流体機械において、前記分岐通路の開口は、回転する前記駆動ギア及び前記従動ギアの少なくとも一方の歯の根元と歯の先端との間の部位に対向するとよい。
これによれば、駆動ギア及び従動ギアの回転により圧抜き通路内のオイルを分岐通路に引き込む負圧が発生し易くなる。したがって、ギア室内で発生したオイルの泡が圧抜き通路に流出したとしても、圧抜き通路内のオイルが分岐通路に引き込まれ易くなる。よって、ギア室内で発生したオイルの泡が、圧抜き通路から外部へ洩れ出すことを抑制し易くすることができる。
【発明の効果】
【0008】
この発明によれば、流体機械の信頼性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図7】ロータハウジングの一部を拡大して示す断面図である。
【
図8】分岐通路の開口と従動ギアの歯との位置関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、流体機械を具体化した一実施形態を
図1~
図8にしたがって説明する。本実施形態の流体機械は、燃料ガスである水素と酸化剤ガスである空気に含まれる酸素とを化学反応させて発電を行う燃料電池に水素を供給する燃料電池用水素ポンプとして用いられる。流体機械は、燃料電池車に搭載されている。
【0011】
<流体機械10の基本構成>
図1に示すように、流体機械10は、筒状のハウジング11を有している。ハウジング11は、モータハウジング12、ギアハウジング13、ロータハウジング14、及びカバー部材15を有している。モータハウジング12は、板状の端壁12aと、筒状の周壁12bと、を有している。周壁12bは、端壁12aの外周部から筒状に延びている。ギアハウジング13は、板状の端壁13aと、筒状の周壁13bと、を有している。周壁13bは、端壁13aの外周部から筒状に延びている。ギアハウジング13は、モータハウジング12の周壁12bの開口側の端部に連結されている。ギアハウジング13の端壁13aは、モータハウジング12の周壁12bの開口を閉塞している。そして、モータハウジング12の端壁12a、モータハウジング12の周壁12b、及びギアハウジング13の端壁13aによって、モータ室S1が区画されている。したがって、ハウジング11は、モータ室S1を有している。
【0012】
ロータハウジング14は、板状の端壁14aと、筒状の周壁14bと、を有している。周壁14bは、端壁14aの外周部から筒状に延びている。ロータハウジング14は、ギアハウジング13の周壁13bの開口側の端部に連結されている。ロータハウジング14とギアハウジング13との間は、環状のシール部材13sによりシールされている。ロータハウジング14の端壁14aは、ギアハウジング13の周壁13bの開口を閉塞している。カバー部材15は、板状である。カバー部材15は、ロータハウジング14の周壁14bの開口側の端部に連結されている。カバー部材15は、ロータハウジング14の周壁14bの開口を閉塞している。モータハウジング12の周壁12bの軸方向、ギアハウジング13の周壁13bの軸方向、及びロータハウジング14の周壁14bの軸方向はそれぞれ一致している。
【0013】
流体機械10は、第1回転軸16及び第2回転軸17を有している。第1回転軸16及び第2回転軸17は、ハウジング11内に互いに平行に配置された状態で回転可能に支持されている。第1回転軸16及び第2回転軸17の回転軸線方向は、各周壁12b,13b,14bの軸方向に一致している。
【0014】
流体機械10は、駆動ギア18と、従動ギア19と、を有している。駆動ギア18は、円板状である。駆動ギア18は、第1回転軸16に固定されている。従動ギア19は、円板状である。従動ギア19は、第2回転軸17に固定されている。従動ギア19は、駆動ギア18と噛合する。なお、以下の説明において、駆動ギア18と従動ギア19とが噛合する部分を「噛合部28」と記載する場合がある。
【0015】
流体機械10は、駆動ロータ20と、従動ロータ21と、を有している。駆動ロータ20は、第1回転軸16に設けられている。従動ロータ21は、第2回転軸17に設けられている。従動ロータ21は、駆動ロータ20と噛合する。
【0016】
流体機械10は、電動モータ22を備えている。電動モータ22は、第1回転軸16を回転させる。電動モータ22は、モータ室S1に収容されている。したがって、モータ室S1は、電動モータ22を収容する。電動モータ22は、モータロータ22aと、ステータ22bと、を有している。モータロータ22aは、円筒状である。モータロータ22aは、第1回転軸16に一体回転可能に固定されている。ステータ22bは、円筒状である。ステータ22bは、モータハウジング12の周壁12bの内周面に固定されている。ステータ22bは、モータロータ22aを取り囲んでいる。ステータ22bは、コイル22cを有している。コイル22cは、ステータ22bの図示しないティースに巻回されている。そして、電動モータ22は、コイル22cに電力が供給されることにより駆動する。電動モータ22が駆動すると、モータロータ22aは、第1回転軸16と一体的に回転する。
【0017】
ハウジング11は、ギア室24を有している。ギア室24は、ギアハウジング13の端壁13a、ギアハウジング13の周壁13b、及びロータハウジング14の端壁14aによって区画されている。よって、ギアハウジング13の端壁13a、ギアハウジング13の周壁13b、及びロータハウジング14の端壁14aは、ギア室24を内部に区画する筒状の区画壁29を構成している。したがって、ハウジング11は、区画壁29を備えている。ギア室24は、駆動ギア18及び従動ギア19を収容する。駆動ギア18及び従動ギア19は、互いに噛合した状態でギア室24に収容されている。ギア室24には、オイルが封入されている。オイルは、駆動ギア18と従動ギア19との間の潤滑に寄与する。
【0018】
ハウジング11は、ロータ室25を有している。ロータ室25は、ロータハウジング14の端壁14a、ロータハウジング14の周壁14b、及びカバー部材15によって区画されている。ロータ室25は、駆動ロータ20及び従動ロータ21を収容する。駆動ロータ20及び従動ロータ21は、互いに噛合した状態でロータ室25に収容されている。モータ室S1、ギア室24、及びロータ室25は、第1回転軸16の回転軸線方向においてこの順に並んで配置されている。
【0019】
ギアハウジング13の端壁13aには、第1孔31が形成されている。第1孔31は、ギアハウジング13の端壁13aを厚み方向に貫通している。第1孔31は、円孔状である。第1孔31は、第1軸受収容孔31a及び第1シール収容孔31bを含む。第1軸受収容孔31aと第1シール収容孔31bとは互いに連通している。第1軸受収容孔31aは、第1シール収容孔31bよりもギア室24寄りに位置している。第1軸受収容孔31aは、ギアハウジング13の端壁13aにおけるギア室24側の端面13eに開口している。よって、第1軸受収容孔31aは、ギア室24に連通している。第1シール収容孔31bは、第1軸受収容孔31aよりもモータ室S1寄りに位置している。
【0020】
ギアハウジング13の端壁13aには、第2孔32が形成されている。第2孔32は、ギアハウジング13の端壁13aの端面13eに形成された凹部である。第2孔32は、円孔状である。
【0021】
ロータハウジング14の端壁14aには、第3孔33が形成されている。第3孔33は、ロータハウジング14の端壁14aを厚み方向に貫通している。第3孔33は、円孔状である。第3孔33の軸線は、第1孔31の軸線に一致している。第3孔33は、第3軸受収容孔33a及び第3シール収容孔33bを含む。第3軸受収容孔33aと第3シール収容孔33bとは互いに連通している。第3軸受収容孔33aは、第3シール収容孔33bよりもギア室24寄りに位置している。第3軸受収容孔33aは、ロータハウジング14の端壁14aにおけるギア室24側の端面14eに開口している。よって、第3軸受収容孔33aは、ギア室24に連通している。第3シール収容孔33bは、第3軸受収容孔33aよりもロータ室25寄りに位置している。
【0022】
ロータハウジング14の端壁14aには、第4孔34が形成されている。第4孔34は、ロータハウジング14の端壁14aを厚み方向に貫通している。第4孔34は、円孔状である。第4孔34の軸線は、第2孔32の軸線に一致している。第3孔33の軸線と第4孔34の軸線とは互いに平行に延びている。第4孔34は、第4軸受収容孔34a及び第4シール収容孔34bを含む。第4軸受収容孔34aと第4シール収容孔34bとは互いに連通している。第4軸受収容孔34aは、第4シール収容孔34bよりもギア室24寄りに位置している。第4軸受収容孔34aは、ロータハウジング14の端壁14aの端面14eに開口している。よって、第4軸受収容孔34aは、ギア室24に連通している。第4シール収容孔34bは、第4軸受収容孔34aよりもロータ室25寄りに位置している。
【0023】
流体機械10は、第1軸受41を備えている。第1軸受41は、第1軸受収容孔31aに収容されている。第1軸受41は、第1軸受収容孔31aに保持されている。第1軸受41は、例えば、転がり軸受である。第1軸受41は、第1回転軸16を回転可能に支持する。したがって、第1回転軸16は、第1軸受41によってハウジング11に対して支持されている。
【0024】
流体機械10は、第1シール部材41sを備えている。第1シール部材41sは、第1シール収容孔31bに収容されている。第1シール部材41sは、環状である。第1シール部材41sは、ギア室24とモータ室S1とをシールしている。
【0025】
流体機械10は、第2軸受42を備えている。第2軸受42は、第2孔32に収容されている。第2軸受42は、第2孔32に保持されている。第2軸受42は、例えば、転がり軸受である。第2軸受42は、第2回転軸17を回転可能に支持する。したがって、第2回転軸17は、第2軸受42によってハウジング11に対して支持されている。
【0026】
流体機械10は、第3軸受43を備えている。第3軸受43は、第3軸受収容孔33aに収容されている。第3軸受43は、第3軸受収容孔33aに保持されている。第3軸受43は、例えば、転がり軸受である。第3軸受43は、第1回転軸16を回転可能に支持する。したがって、第1回転軸16は、第3軸受43によってハウジング11に対して支持されている。
【0027】
流体機械10は、第3シール部材43sを備えている。第3シール部材43sは、第3シール収容孔33bに収容されている。第3シール部材43sは、環状である。第3シール部材43sは、ギア室24とロータ室25とをシールしている。
【0028】
流体機械10は、第4軸受44を備えている。第4軸受44は、第4軸受収容孔34aに収容されている。第4軸受44は、第4軸受収容孔34aに保持されている。第4軸受44は、例えば、転がり軸受である。第4軸受44は、第2回転軸17を回転可能に支持する。したがって、第2回転軸17は、第4軸受44によってハウジング11に対して支持されている。
【0029】
流体機械10は、第4シール部材44sを備えている。第4シール部材44sは、第4シール収容孔34bに収容されている。第4シール部材44sは、環状である。第4シール部材44sは、ギア室24とロータ室25とをシールしている。
【0030】
モータハウジング12の端壁12aには、軸受部35が形成されている。軸受部35は、モータハウジング12の端壁12aにおけるモータ室S1側の端面から突出する円筒状である。軸受部35の軸線は、第1孔31の軸線に一致している。
【0031】
流体機械10は、第5軸受45を備えている。第5軸受45は、軸受部35に収容されている。第5軸受45は、軸受部35に保持されている。第5軸受45は、例えば、転がり軸受である。第5軸受45は、第1回転軸16を回転可能に支持する。したがって、第1回転軸16は、第5軸受45によってハウジング11に対して支持されている。
【0032】
第1回転軸16の第1端は、軸受部35の内側に配置されている。そして、第1回転軸16の第1端は、第5軸受45に回転可能に支持されている。第1回転軸16の第2端は、第1孔31、第3孔33を貫通してロータ室25に突出している。第1回転軸16の第2端には、駆動ロータ20が取り付けられている。したがって、第1回転軸16の第2端は、自由端になっている。よって、第1回転軸16は、ハウジング11に片持ち支持されている。
【0033】
第2回転軸17の第1端は、第2孔32内に配置されている。そして、第2回転軸17の第1端は、第2軸受42に回転可能に支持されている。第2回転軸17の第2端は、第4孔34を貫通してロータ室25に突出している。第2回転軸17の第2端には、従動ロータ21が取り付けられている。したがって、第2回転軸17の第2端は、自由端になっている。よって、第2回転軸17は、ハウジング11に片持ち支持されている。
【0034】
図2に示すように、駆動ロータ20及び従動ロータ21は、第1回転軸16及び第2回転軸17の回転軸線方向に直交する断面視が二葉状(瓢箪状)に形成されている。駆動ロータ20は、二条の山歯20aと、両山歯20aの間に形成された谷歯20bと、を有している。従動ロータ21は、二条の山歯21aと、両山歯21aの間に形成された谷歯21bと、を有している。
【0035】
そして、駆動ロータ20及び従動ロータ21は、駆動ロータ20の山歯20aと従動ロータ21の谷歯21bとの噛合、及び駆動ロータ20の谷歯20bと従動ロータ21の山歯21aとの噛合を繰り返しながらロータ室25内を回転可能になっている。駆動ロータ20は、
図2に示す矢印R1の方向に回転し、従動ロータ21は、
図2に示す矢印R2の方向へ回転する。
【0036】
流体機械10は、吸入口26及び吐出口27を備えている。吸入口26及び吐出口27は、ロータハウジング14の周壁14bに形成されている。吸入口26及び吐出口27は、ロータハウジング14の周壁14bにおいて、ロータ室25を挟んで対向する部位にそれぞれ形成されている。吸入口26及び吐出口27は、ロータ室25と外部とを連通する。
【0037】
吸入口26と吐出口27とを結ぶ直線方向Z1は、第1回転軸16及び第2回転軸17の回転軸線L1,L2のそれぞれに対して垂直に交差する。流体機械10は、吐出口27が鉛直方向下向きに開口するように、燃料電池車に搭載されている。したがって、直線方向Z1は、鉛直方向と一致する。流体機械10は、吸入口26が吐出口27よりも鉛直方向上側に位置するように、燃料電池車に搭載されている。
【0038】
電動モータ22の駆動によって第1回転軸16が回転すると、互いに噛合された駆動ギア18及び従動ギア19のギア連結を介して第2回転軸17が第1回転軸16に対して逆回転する。これにより、駆動ロータ20及び従動ロータ21が互いに噛合された状態でそれぞれ逆回転する。流体機械10は、駆動ロータ20及び従動ロータ21の回転によって、吸入口26を介したロータ室25への流体の吸入、及び吐出口27を介したロータ室25からの流体の吐出を行う。
【0039】
<ギアハウジング13の周壁13bの内周面13c>
図3及び
図4に示すように、ギアハウジング13の周壁13bの内周面13cは、第1内周面51と、第2内周面52と、を有している。
図4に示すように、第1内周面51は、駆動ギア18を取り囲むように延びる弧状の湾曲面である。ここで、第1内周面51において最も鉛直方向上方に位置する部位を頂部P1とする。また、第1内周面51において最も鉛直方向下方に位置する部位を底部P2とする。第1内周面51は、上面51aと、下面51bと、接続面51cと、を有している。上面51aは、頂部P1から噛合部28に向けて延びる湾曲面である。下面51bは、底部P2から噛合部28に向けて延びる湾曲面である。接続面51cは、頂部P1と底部P2との間で延びる湾曲面である。接続面51cは、上面51aと下面51bとを接続している。
【0040】
第2内周面52は、従動ギア19を取り囲むように延びる弧状の湾曲面である。ここで、第2内周面52において最も鉛直方向上方に位置する部位を頂部P11とする。また、第2内周面52において最も鉛直方向下方に位置する部位を底部P12とする。第2内周面52は、上面52aと、下面52bと、接続面52cと、を有している。上面52aは、頂部P11から噛合部28に向けて延びる湾曲面である。下面52bは、底部P12から噛合部28に向けて延びる湾曲面である。接続面52cは、頂部P11と底部P12との間で延びる湾曲面である。接続面52cは、上面52aと下面52bとを接続している。
【0041】
ギアハウジング13の周壁13bの内周面13cは、上膨出面53と、下膨出面54と、を有している。上膨出面53は、噛合部28に対して上方に位置している。上膨出面53は、第1内周面51の上面51aと第2内周面52の上面52aとを接続している。上膨出面53は、第1内周面51の上面51a及び第2内周面52の上面52aから噛合部28に向けて凸となる湾曲面である。
【0042】
下膨出面54は、噛合部28に対して下方に位置している。下膨出面54は、第1内周面51の下面51bと第2内周面52の下面52bとを接続している。下膨出面54は、第1内周面51の下面51b及び第2内周面52の下面52bから噛合部28に向けて凸となる湾曲面である。
【0043】
<上壁部55及び下壁部56>
ギアハウジング13は、上壁部55と、下壁部56と、を有している。上壁部55は、ギアハウジング13において、第1内周面51の上面51a、第2内周面52の上面52a、及び上膨出面53によって画定される壁部である。上壁部55は、噛合部28に対して上方に位置するとともに駆動ギア18と従動ギア19との間に配置されている。上壁部55は、噛合部28に対して上方に位置し、且つギア室24内における駆動ギア18と従動ギア19との間の空間を埋めるように配置されている。
【0044】
下壁部56は、ギアハウジング13において、第1内周面51の下面51b、第2内周面52の下面52b、及び下膨出面54によって画定される壁部である。下壁部56は、噛合部28に対して下方に位置するとともに駆動ギア18と従動ギア19との間に配置されている。下壁部56は、噛合部28に対して下方に位置し、且つギア室24内における駆動ギア18と従動ギア19との間の空間を埋めるように配置されている。
【0045】
<オイル通路60>
区画壁29は、オイル通路60を備えている。
図3に示すように、オイル通路60は、ギアハウジング13の周壁13bの開口端面13fに形成されている。
図3及び
図4に示すように、オイル通路60は、外周通路61と、供給通路62と、排出通路63と、を有している。外周通路61は、ギア室24の周りを取り囲む。外周通路61は、第1周回通路64と、第2周回通路65と、を有している。
【0046】
<第1周回通路64>
第1周回通路64は、第1内周面51の周りを取り囲む。したがって、第1周回通路64は、駆動ギア18の周りを取り囲む。第1周回通路64は、ギアハウジング13の周壁13bの開口端面13fに形成された溝により構成されている。
【0047】
第1周回通路64の第1端は、ギアハウジング13の周壁13bの内部において、上壁部55よりも鉛直方向上方に位置している。第1周回通路64の第1端は、上膨出面53に対して、鉛直方向上方に位置している。
【0048】
第1周回通路64の第2端は、下壁部56の内部に位置している。第1周回通路64の第2端は、下膨出面54に対して、鉛直方向下方に位置している。第1周回通路64の第2端部は、第1内周面51の下面51bに沿って延びている。第1周回通路64の第2端部は、第1周回通路64において最も鉛直方向下方に位置する部位から下壁部56に向かうにつれて下膨出面54に接近するように湾曲している。
【0049】
<第2周回通路65>
第2周回通路65は、第2内周面52の周りを取り囲む。したがって、第2周回通路65は、従動ギア19の周りを取り囲む。第2周回通路65は、ギアハウジング13の周壁13bの開口端面13fに形成された溝により構成されている。
【0050】
第2周回通路65の第1端は、ギアハウジング13の周壁13bの内部において、上壁部55よりも鉛直方向上方に位置している。第1周回通路64の第1端は、上膨出面53に対して、鉛直方向上方に位置している。第1周回通路64の第1端と第2周回通路65の第1端とは、ギアハウジング13の周壁13bの内部において、上壁部55よりも鉛直方向上方で連通している。
【0051】
第2周回通路65の第2端は、下壁部56の内部に位置している。第2周回通路65の第2端は、下膨出面54に対して、鉛直方向下方に位置している。第2周回通路65の第2端部は、第2内周面52の下面52bに沿って延びている。第2周回通路65の第2端部は、第2周回通路65において最も鉛直方向下方に位置する部位から下壁部56に向かうにつれて下膨出面54に接近するように湾曲している。第1周回通路64の第2端と第2周回通路65の第2端とは、下壁部56の内部において、下膨出面54よりも鉛直方向下方で連通している。
【0052】
<供給通路62>
供給通路62は、下壁部56に形成されている。供給通路62は、ギアハウジング13の周壁13bの開口端面13fに形成された溝により構成されている。供給通路62の第1端は、第1周回通路64の第2端と第2周回通路65の第2端との合流位置に接続されている。したがって、供給通路62は、第1周回通路64及び第2周回通路65からの合流位置に接続されている。よって、供給通路62の第1端は、外周通路61に連通している。供給通路62の第2端は、下膨出面54に開口している。そして、供給通路62の第2端は、ギア室24に連通している。よって、供給通路62は、ギア室24と外周通路61とを連通している。そして、供給通路62は、外周通路61からギア室24にオイルを供給させる。供給通路62の第2端は、下膨出面54から噛合部28に向けて開口している。
【0053】
<排出通路63>
排出通路63は、上壁部55に形成されている。排出通路63は、ギアハウジング13の周壁13bの開口端面13fに形成された溝により構成されている。排出通路63の第1端は、第1周回通路64の第1端と第2周回通路65の第1端との分流位置に接続されている。したがって、排出通路63は、第1周回通路64及び第2周回通路65への分流位置に接続されている。よって、排出通路63の第1端は、外周通路61に連通している。排出通路63の第2端は、上膨出面53に開口している。そして、排出通路63の第2端は、ギア室24に連通している。よって、排出通路63は、ギア室24と外周通路61とを連通している。そして、排出通路63は、ギア室24から外周通路61にオイルを排出させる。排出通路63の第2端は、上膨出面53から噛合部28に向けて開口している。
【0054】
供給通路62と排出通路63とは、駆動ギア18と従動ギア19とが噛合する噛合部28を挟んで、互いに対向するようにそれぞれ延設されている。供給通路62は、噛合部28よりも駆動ギア18及び従動ギア19の回転方向の後方側に位置している。排出通路63は、噛合部28よりも駆動ギア18及び従動ギア19の回転方向の前方側に位置している。
【0055】
<緩衝凸部66>
オイル通路60は、緩衝凸部66を備えている。緩衝凸部66は、外周通路61において、第1周回通路64の第2端と第2周回通路65の第2端との合流位置に設けられている。緩衝凸部66は、ギアハウジング13の周壁13bの内部において、下膨出面54よりも鉛直方向下方に位置している。
【0056】
緩衝凸部66は、一対の湾曲面66Aを備えている。一対の湾曲面66Aは互いに漸次近づくように湾曲する。湾曲面66Aは、第1湾曲面66aと、第2湾曲面66bと、を有している。第1湾曲面66aは、第1周回通路64から供給通路62に供給されるオイルの流入方向を変更する。第2湾曲面66bは、第2周回通路65から供給通路62に供給されるオイルの流入方向を変更する。さらに、緩衝凸部66は、平面66cを有している。平面66cは、供給通路62に対向する。第1周回通路64の第2端と第2周回通路65の第2端との合流位置は少なくとも平面66cによって区画されている。
【0057】
このようにして、緩衝凸部66は、第1周回通路64を流れるオイルと第2周回通路65を流れるオイルとの合流によるオイルの衝突を緩和する。したがって、第1周回通路64の第2端と第2周回通路65の第2端との合流位置における外周通路61には、合流によるオイルの衝突を緩和する緩衝凸部66が形成されている。
【0058】
<オイル供給通路70>
図3に示すように、ハウジング11には、オイル供給通路70が形成されている。オイル供給通路70は、オイル供給孔70aと、第1オイル供給通路71と、第2オイル供給通路72と、を含む。オイル供給孔70aは、ギアハウジング13に形成されている。オイル供給孔70aの第1端は、第1周回通路64の第1端と第2周回通路65の第1端との分流位置に連通している。オイル供給孔70aの第2端は、ギアハウジング13の内部に位置している。
【0059】
第1オイル供給通路71は、ギアハウジング13に形成されている。第1オイル供給通路71の第1端は、オイル供給孔70aの第2端に連通している。第1オイル供給通路71の第2端は、第1孔31に連通している。そして、外周通路61からのオイルが、オイル供給孔70a及び第1オイル供給通路71を介して第1孔31内の第1軸受41に供給される。
【0060】
第2オイル供給通路72は、ギアハウジング13に形成されている。第2オイル供給通路72の第1端は、オイル供給孔70aの第2端に連通している。第2オイル供給通路72の第2端は、第2孔32に連通している。そして、外周通路61からのオイルが、オイル供給孔70a及び第2オイル供給通路72を介して第2孔32内の第2軸受42に供給される。このように、オイル供給通路70は、オイルを外周通路61から第1軸受41及び第2軸受42へ供給する。
【0061】
<凹部75>
図5及び
図6に示すように、流体機械10は、凹部75を備えている。凹部75は、ロータハウジング14の端壁14aの端面14eに形成されている。凹部75は、ロータハウジング14の端壁14aの端面14eにおいて、第1回転軸16の軸方向でギアハウジング13の上壁部55と対向する部分に形成されている。凹部75は、排出通路63に連通している。そして、凹部75には、排出通路63を流れるオイルの一部が流入する。なお、ロータハウジング14の端壁14aの端面14eは、オイル通路60における排出通路63と凹部75とが連通する部分を除く部位の開口を閉塞している。
【0062】
ロータハウジング14の端壁14aには、第3オイル供給通路73及び第4オイル供給通路74が形成されている。第3オイル供給通路73は、凹部75と第3孔33とを接続している。そして、凹部75内のオイルの一部は、第3オイル供給通路73を介して第3孔33内の第3軸受43に供給される。第4オイル供給通路74は、凹部75と第4孔34とを接続している。そして、凹部75内のオイルの一部は、第4オイル供給通路74を介して第4孔34内の第4軸受44に供給される。
【0063】
<圧抜き通路80>
図7に示すように、ハウジング11は、圧抜き通路80を備えている。圧抜き通路80は、ロータハウジング14に形成されている。圧抜き通路80は、開口部81と、拡径部82と、放圧通路83と、を有している。開口部81は、ロータハウジング14に形成される通路である。開口部81は、例えば、円孔状である。開口部81の第1端は、凹部75に連通している。そして、開口部81は、凹部75及び排出通路63を介してギア室24に連通している。したがって、開口部81は、ギア室24に開口している。開口部81の第2端は、ロータハウジング14の内部に位置している。
【0064】
拡径部82は、ロータハウジング14の内部に形成される通路である。拡径部82は、例えば、円孔状である。拡径部82は、開口部81に連続している。拡径部82は、開口部81よりも内径が拡大されている。放圧通路83は、ロータハウジング14に形成されている。放圧通路83の第1端は、拡径部82に連通している。放圧通路83の第2端は、ロータハウジング14の外部へ開放されている。放圧通路83の第2端部には、換気膜83aが設けられている。換気膜83aは、気体を通過させるとともに液体を通過させない膜である。
【0065】
ギア室24内の空気は、排出通路63、凹部75、開口部81、拡径部82、及び放圧通路83を介してハウジング11の外部へ放出される。したがって、圧抜き通路80は、ギア室24内の圧力を外部へ抜く。
【0066】
ロータハウジング14には、還流通路76が形成されている。還流通路76は、拡径部82と第4孔34とを接続している。還流通路76は、拡径部82内のオイルを第4孔34内へ流す。
【0067】
<分岐通路85>
ハウジング11は、分岐通路85を備えている。分岐通路85の第1端は、拡径部82に連通している。したがって、分岐通路85は、拡径部82に接続されている。
図5に示すように、分岐通路85の第2端は、ロータハウジング14の端壁14aの端面14eに開口している。そして、分岐通路85の第2端は、ギア室24に連通している。したがって、分岐通路85は、開口部81の開口とは異なる位置でギア室24に開口する。
【0068】
図8に示すように、分岐通路85のギア室24側の開口は、従動ギア19の歯19aに対向させて設けられている。具体的には、分岐通路85の開口は、回転する従動ギア19の歯19aの根元19eと歯19aの先端19fとの間の部位に対向している。これにより、駆動ギア18及び従動ギア19の回転により圧抜き通路80内のオイルを分岐通路85に引き込む負圧が発生する。したがって、分岐通路85のギア室24側の開口は、駆動ギア18及び従動ギア19の回転により圧抜き通路80内のオイルを分岐通路85に引き込む負圧が発生するよう従動ギア19の歯19aに対向させて設けられている。
【0069】
[実施形態の作用]
次に、本実施形態の作用について説明する。
図4に示すように、駆動ギア18が
図4に示す矢印R3の方向へ回転すると、従動ギア19が
図4に示す矢印R4の方向へ回転する。このように、駆動ギア18及び従動ギア19が回転すると、駆動ギア18及び従動ギア19の噛合によるポンプ作用によってオイルがオイル通路60を循環する。したがって、オイル通路60は、駆動ギア18及び従動ギア19の噛合によるポンプ作用によってオイルを循環させる。
【0070】
具体的には、駆動ギア18及び従動ギア19が回転すると、ギア室24内のオイルは、排出通路63を介して外周通路61に排出される。外周通路61に排出されたオイルは、分流位置において第1周回通路64及び第2周回通路65それぞれに分流される。第1周回通路64及び第2周回通路65それぞれを流れるオイルは、合流位置において合流する。このとき、合流によるオイルの衝突が緩衝凸部66によって緩和される。これにより、オイルの衝突によって泡が発生することが抑制されている。そして、オイルの泡の発生が抑制された状態で、オイルが供給通路62を介してギア室24に供給される。したがって、ギア室24内でオイルの泡が発生してしまうことが抑制されている。
【0071】
駆動ギア18及び従動ギア19の回転により圧抜き通路80内のオイルを分岐通路85に引き込む負圧が発生する。よって、例えば、ギア室24内で発生したオイルの泡が圧抜き通路80に流出したとしても、圧抜き通路80内のオイルが分岐通路85に引き込まれる。そして、分岐通路85に引き込まれたオイルが、分岐通路85からギア室24内に還流する。したがって、ギア室24内で発生したオイルの泡が、圧抜き通路80から外部へ洩れ出すことが抑制されている。
【0072】
[実施形態の効果]
上記実施形態では以下の効果を得ることができる。
(1)分岐通路85のギア室24側の開口は、駆動ギア18及び従動ギア19の回転により圧抜き通路80内のオイルを分岐通路85に引き込む負圧が発生するよう従動ギア19の歯19aに対向させて設けられている。これによれば、ギア室24内で発生したオイルの泡が圧抜き通路80に流出したとしても、圧抜き通路80内のオイルが分岐通路85に引き込まれる。そして、分岐通路85に引き込まれたオイルが、分岐通路85からギア室24内に還流する。したがって、ギア室24内で発生したオイルの泡が、圧抜き通路80から外部へ洩れ出すことが抑制される。よって、ギア室24内で発生したオイルの泡が、圧抜き通路80から外部へ洩れて、その分だけ、ギア室24内に封入されているオイルの量が減少してしまうといった問題が回避され易くなる。その結果、駆動ギア18と従動ギア19との間が貧潤滑になってしまうことが抑制されるため、流体機械10の信頼性を向上させることができる。
【0073】
(2)分岐通路85の開口は、回転する従動ギア19の歯19aの根元19eと歯19aの先端19fとの間の部位に対向する。これによれば、駆動ギア18及び従動ギア19の回転により圧抜き通路80内のオイルを分岐通路85に引き込む負圧が発生し易くなる。したがって、ギア室24内で発生したオイルの泡が圧抜き通路80に流出したとしても、圧抜き通路80内のオイルが分岐通路85に引き込まれ易くなる。よって、ギア室24内で発生したオイルの泡が、圧抜き通路80から外部へ洩れ出すことを抑制し易くすることができる。
【0074】
(3)駆動ギア18及び従動ギア19の噛合によるポンプ作用によってオイルがオイル通路60を循環するため、駆動ギア18及び従動ギア19の潤滑を良好なものとすることができる。駆動ギア18及び従動ギア19が回転すると、ギア室24内のオイルは、排出通路63を介して外周通路61に排出される。外周通路61に排出されたオイルは、分流位置において第1周回通路64及び第2周回通路65それぞれに分流される。第1周回通路64及び第2周回通路65それぞれを流れるオイルは、合流位置において合流する。このとき、合流によるオイルの衝突が緩衝凸部66によって緩和される。これにより、オイルの衝突によって泡が発生することが抑制されている。そして、オイルの泡の発生が抑制された状態で、オイルが供給通路62を介してギア室24に供給される。したがって、ギア室24内でオイルの泡が発生してしまうことが抑制されている。よって、ギア室24内で発生したオイルの泡が、圧抜き通路80から外部へ洩れて、その分だけ、ギア室24内に封入されているオイルの量が減少してしまうといった問題が回避され易くなる。その結果、駆動ギア18と従動ギア19との間が貧潤滑になってしまうことが抑制されるため、流体機械10の信頼性を向上させることができる。
【0075】
(4)湾曲面66Aは、第1周回通路64から供給通路62に供給されるオイルの流入方向を変更する第1湾曲面66aと、第2周回通路65から供給通路62に供給されるオイルの流入方向を変更する第2湾曲面66bと、を有する。これによれば、第1湾曲面66aによって、第1周回通路64から供給通路62に供給されるオイルにおいて損失の少ない流れを作ることができる。また、第2湾曲面66bによって、第2周回通路65から供給通路62に供給されるオイルにおいて損失の少ない流れを作ることができる。
【0076】
(5)緩衝凸部66は、供給通路62に対向する平面66cを有している。これによれば、第1周回通路64及び第2周回通路65それぞれを流れるオイルが合流位置において合流する際のオイルの衝突緩和が促進される。これにより、オイルの衝突によって泡が発生することをさらに抑制し易くすることができる。
【0077】
(6)ハウジング11には、オイルを外周通路61から第1軸受41及び第2軸受42へ供給するオイル供給通路70が形成されている。これによれば、オイルを外周通路61からオイル供給通路70を介して第1軸受41及び第2軸受42へ供給することができるため、第1軸受41及び第2軸受42の潤滑を良好なものとすることができる。したがって、流体機械10の信頼性をさらに向上させることができる。
【0078】
(7)供給通路62と排出通路63とは、駆動ギア18と従動ギア19とが噛合する噛合部28を挟んで、互いに対向するようにそれぞれ延設されている。これによれば、駆動ギア18と従動ギア19との噛合部28からのオイルが排出通路63を介して外周通路61に排出され易くなる。そして、外周通路61からのオイルが供給通路62を介して駆動ギア18と従動ギア19との噛合部28へ供給され易くなる。したがって、駆動ギア18及び従動ギア19の噛合によるポンプ作用によってオイルがオイル通路60を循環し易くなるため、駆動ギア18及び従動ギア19の潤滑をさらに良好なものとすることができる。
【0079】
(8)ギアハウジング13は、上壁部55と、下壁部56と、を有している。上壁部55は、噛合部28に対して上方に位置し、且つギア室24内における駆動ギア18と従動ギア19との間の空間を埋めるように配置されている。下壁部56は、噛合部28に対して下方に位置し、且つギア室24内における駆動ギア18と従動ギア19との間の空間を埋めるように配置されている。これによれば、駆動ギア18及び従動ギア19の回転によって撹拌されるギア室24内のオイルがギア室24内で衝突し難くなる。したがって、ギア室24内でオイルの泡が発生してしまうことを抑制することができる。
【0080】
(9)供給通路62は、噛合部28よりも駆動ギア18及び従動ギア19の回転方向の後方側に位置している。排出通路63は、噛合部28よりも駆動ギア18及び従動ギア19の回転方向の前方側に位置している。これによれば、供給通路62からギア室24内に供給されたオイルが、駆動ギア18及び従動ギア19の回転によって、噛合部28から掻き出されて、排出通路63に流入され易くなる。したがって、駆動ギア18及び従動ギア19の噛合によるポンプ作用によってオイルがオイル通路60を循環し易くなる。その結果、駆動ギア18及び従動ギア19の潤滑をさらに良好なものとすることができる。
【0081】
[変更例]
なお、上記実施形態は、以下のように変更して実施することができる。上記実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
【0082】
○ 実施形態において、緩衝凸部66は、一対の湾曲面66Aを備えていない構成であってもよい。
○ 実施形態において、緩衝凸部66は、平面66cを有していない構成であってもよい。
【0083】
○ 実施形態において、オイル通路60は、緩衝凸部66を備えていなくてもよい。
○ 実施形態において、流体機械10は、ハウジング11にオイル供給通路70が形成されていない構成であってもよい。
【0084】
○ 実施形態において、供給通路62と排出通路63とが、駆動ギア18と従動ギア19とが噛合する噛合部28を挟んで、互いに対向するようにそれぞれ延設されていなくてもよい。要は、供給通路62は、外周通路61からギア室24にオイルを供給させる構成であればよい。また、排出通路63は、ギア室24から外周通路61にオイルを排出させる構成であればよい。
【0085】
○ 実施形態において、ギアハウジング13は、上壁部55を有していなくてもよい。
○ 実施形態において、ギアハウジング13は、下壁部56を有していなくてもよい。
○ 実施形態において、供給通路62が、噛合部28よりも駆動ギア18及び従動ギア19の回転方向の前方側に位置するとともに、排出通路63が、噛合部28よりも駆動ギア18及び従動ギア19の回転方向の後方側に位置していてもよい。
【0086】
○ 実施形態において、分岐通路85のギア室24側の開口が、駆動ギア18の歯に対向させて設けられていてもよい。
○ 実施形態において、分岐通路85のギア室24側の開口が、駆動ギア18の歯及び従動ギア19の歯19aに対向させて設けられていてもよい。要は、分岐通路85のギア室24側の開口は、駆動ギア18及び従動ギア19の回転により圧抜き通路80内のオイルを分岐通路85に引き込む負圧が発生するよう駆動ギア18及び従動ギア19の少なくとも一方の歯に対向させて設けられていればよい。
【0087】
○ 実施形態において、分岐通路85の開口が、回転する駆動ギア18の歯の根元と歯の先端との間の部位に対向していてもよい。
○ 実施形態において、分岐通路85の開口が、回転する駆動ギア18の歯の根元と歯の先端との間の部位、及び回転する従動ギア19の歯19aの根元19eと歯19aの先端19fとの間の部位に対向していてもよい。要は、分岐通路85の開口は、回転する駆動ギア18及び従動ギア19の少なくとも一方の歯の根元と歯の先端との間の部位に対向しているとよい。
【0088】
○ 実施形態において、分岐通路85の開口が、回転する従動ギア19の歯19aの根元19eに対向していてもよい。
○ 実施形態において、分岐通路85の開口が、回転する従動ギア19の歯19aの先端19fに対向していてもよい。
【0089】
○ 実施形態において、駆動ロータ20及び従動ロータ21は、第1回転軸16及び第2回転軸17の回転軸線方向に直交する断面視が、例えば、三葉状であったり、四葉状であったりしてもよい。
【0090】
○ 実施形態において、駆動ロータ20及び従動ロータ21が、例えば、ヘリカル形状であってもよい。
○ 実施形態において、流体機械10は、燃料ガスである水素と酸化剤ガスである空気に含まれる酸素とを化学反応させて発電を行う燃料電池に水素を供給する燃料電池用水素ポンプでなくてもよく、その他の用途で用いられるものであってもよい。
【符号の説明】
【0091】
10…流体機械、11…ハウジング、16…第1回転軸、17…第2回転軸、18…駆動ギア、19…従動ギア、19a…歯、19e…根元、19f…先端、24…ギア室、29…区画壁、80…圧抜き通路、81…開口部、82…拡径部、85…分岐通路。