(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-03-18
(45)【発行日】2025-03-27
(54)【発明の名称】スクロール型圧縮機
(51)【国際特許分類】
F04C 18/02 20060101AFI20250319BHJP
【FI】
F04C18/02 311W
(21)【出願番号】P 2022041208
(22)【出願日】2022-03-16
【審査請求日】2024-06-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】山下 拓郎
(72)【発明者】
【氏名】並木 謙
(72)【発明者】
【氏名】山本 詩織
(72)【発明者】
【氏名】藤原 杏実
【審査官】石黒 雄一
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-65770(JP,A)
【文献】特開2000-18180(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04C 2/00-29/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定スクロールと旋回スクロールとからなる圧縮機構と、
前記圧縮機構を収容するハウジングと、
前記ハウジングの一部であって、前記圧縮機構で圧縮された冷媒が吐出される吐出室と、前記吐出室内の冷媒から分離されたオイルを貯留する貯油室と、を前記固定スクロールとの接合により区画する吐出ハウジングと、
前記固定スクロールと前記吐出ハウジングとの接合面に密着するガスケットと、
前記貯油室内のオイルを前記圧縮機構へ流すオイル通路と、を有するスクロール型圧縮機であって、
前記吐出ハウジング及び前記固定スクロールのうち少なくとも一方は、前記吐出室と前記貯油室とを区画する隔壁を有し、
前記ガスケットは、前記吐出室及び前記貯油室を囲繞しつつ外部に対してシールする環状の第1シール部と、前記隔壁に密着して前記吐出室と前記貯油室との間をシールする第2シール部と、を有し、
前記第2シール部の端部は、前記第1シール部に接続されており、
前記オイル通路は、前記第1シール部に形成されたスリットが前記固定スクロールと前記吐出ハウジングとに閉塞されることで形成されており、
前記オイル通路は、前記第1シール部において周方向に延びつつ、前記第1シール部における前記第2シール部との接続部位において径方向に屈曲していることを特徴とするスクロール型圧縮機。
【請求項2】
前記固定スクロール又は前記吐出ハウジングは、前記ガスケットとの接合面において凹設された溝を有し、
前記溝は、前記オイル通路の一部であって、
前記スリットは、前記溝に対して上流側で連通する上流スリットと、前記溝に対して下流側で連通する下流スリットと、を有し、
前記上流スリット、前記溝及び前記下流スリットにより径方向に屈曲する前記オイル通路を構成し、前記貯油室内のオイルはこの順に通って前記圧縮機構へと流れ、
前記上流スリットに沿って周方向に流れるオイルは、前記溝により径方向に、又は前記周方向の逆向きに流れ方向が変更されることを特徴とする請求項1に記載のスクロール型圧縮機。
【請求項3】
前記上流スリットは分岐され、前記溝に対して異なった位置で連通する第1上流スリットと第2上流スリットとを含み、
前記第2上流スリットから前記溝内に流入するオイルは、前記第1上流スリットから前記溝内、前記下流スリットへと流入するオイルの流れに対し抵抗となることを特徴とする請求項2に記載のスクロール型圧縮機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スクロール型圧縮機に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば特許文献1に開示されているように、スクロール型圧縮機は、固定スクロールと旋回スクロールとからなる圧縮機構を有している。スクロール型圧縮機は、圧縮機構を収容するハウジングを有している。スクロール型圧縮機は、吐出ハウジングを有している。吐出ハウジングは、ハウジングの一部である。吐出ハウジングは、吐出室と、貯油室と、を固定スクロールとの接合により区画する。吐出室には、圧縮機構で圧縮された冷媒が吐出される。貯油室は、吐出室内の冷媒から分離されたオイルを貯留する。スクロール型圧縮機は、ガスケットを有している。ガスケットは、固定スクロールと吐出ハウジングとの接合面に密着する。また、スクロール型圧縮機は、オイル通路を有している。オイル通路は、貯油室内のオイルを圧縮機構へ流す。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、このようなスクロール型圧縮機においては、オイル通路によって貯油室内のオイルを圧縮機構へ安定的に流すためには、オイル通路の絞り量を大きくすることが望まれる。かといって、オイル通路の絞り量を大きくするために、例えば、オイル通路を長くすると、圧縮機自体が大型化してしまう。また、オイル通路の絞り量を大きくするために、例えば、オイル通路の流路断面積を小さくすると、オイル通路に異物が詰まり易くなってしまうため、スクロール型圧縮機の信頼性が低下してしまう虞がある。したがって、スクロール型圧縮機が大型化せずに、スクロール型圧縮機の信頼性を確保した上で、オイル通路において安定した絞り効果を得る手段が望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するスクロール型圧縮機は、固定スクロールと旋回スクロールとからなる圧縮機構と、前記圧縮機構を収容するハウジングと、前記ハウジングの一部であって、前記圧縮機構で圧縮された冷媒が吐出される吐出室と、前記吐出室内の冷媒から分離されたオイルを貯留する貯油室と、を前記固定スクロールとの接合により区画する吐出ハウジングと、前記固定スクロールと前記吐出ハウジングとの接合面に密着するガスケットと、前記貯油室内のオイルを前記圧縮機構へ流すオイル通路と、を有するスクロール型圧縮機であって、前記吐出ハウジング及び前記固定スクロールのうち少なくとも一方は、前記吐出室と前記貯油室とを区画する隔壁を有し、前記ガスケットは、前記吐出室及び前記貯油室を囲繞しつつ外部に対してシールする環状の第1シール部と、前記隔壁に密着して前記吐出室と前記貯油室との間をシールする第2シール部と、を有し、前記第2シール部の端部は、前記第1シール部に接続されており、前記オイル通路は、前記第1シール部に形成されたスリットが前記固定スクロールと前記吐出ハウジングとに閉塞されることで形成されており、前記オイル通路は、前記第1シール部において周方向に延びつつ、前記第1シール部における前記第2シール部との接続部位において径方向に屈曲している。
【0006】
これによれば、オイル通路が、第1シール部において周方向に延びつつ、第1シール部における第2シール部との接続部位において径方向に屈曲していることで、オイル通路を流れるオイルの圧力損失を発生させることができる。よって、オイル通路において安定した絞り効果を得るために、例えば、オイル通路を長くする必要が無く、さらには、オイル通路の流路断面積を小さくする必要も無い。第1シール部における第2シール部との接続部位は、オイル通路を径方向に屈曲させるためのスペースを確保し易い。したがって、第1シール部における第2シール部との接続部位は、オイル通路を径方向に屈曲させるスペースとして好適である。よって、第1シール部における第2シール部との接続部位でオイル通路が径方向に屈曲している構成は、スクロール型圧縮機が大型化せずに、オイル通路において安定した絞り効果を得る構成として好適である。したがって、スクロール型圧縮機が大型化せずに、スクロール型圧縮機の信頼性を確保した上で、オイル通路において安定した絞り効果を得ることができる。
【0007】
上記スクロール型圧縮機において、前記固定スクロール又は前記吐出ハウジングは、前記ガスケットとの接合面において凹設された溝を有し、前記溝は、前記オイル通路の一部であって、前記スリットは、前記溝に対して上流側で連通する上流スリットと、前記溝に対して下流側で連通する下流スリットと、を有し、前記上流スリット、前記溝及び前記下流スリットにより径方向に屈曲する前記オイル通路を構成し、前記貯油室内のオイルはこの順に通って前記圧縮機構へと流れ、前記上流スリットに沿って周方向に流れるオイルは、前記溝により径方向に、又は前記周方向の逆向きに流れ方向が変更されるとよい。
【0008】
これによれば、例えば、上流スリットに沿って周方向に流れるオイルが、スリットの一部により径方向に、又は周方向の逆向きに流れ方向が変更される場合に比べると、ガスケットの製造を容易なものとすることができる。したがって、スクロール型圧縮機の構成を簡素化することができる。
【0009】
上記スクロール型圧縮機において、前記上流スリットは分岐され、前記溝に対して異なった位置で連通する第1上流スリットと第2上流スリットとを含み、前記第2上流スリットから前記溝内に流入するオイルは、前記第1上流スリットから前記溝内、前記下流スリットへと流入するオイルの流れに対し抵抗となるとよい。
【0010】
これによれば、第2上流スリットから溝内に流入するオイルが、第1上流スリットから溝内、下流スリットへと流入するオイルの流れに対し抵抗となることにより、オイル通路を流れるオイルの圧力損失をさらに発生させ易くすることができる。したがって、オイル通路においてさらに安定した絞り効果を得ることができる。
【発明の効果】
【0011】
この発明によれば、スクロール型圧縮機が大型化せずに、スクロール型圧縮機の信頼性を確保した上で、オイル通路において安定した絞り効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】実施形態におけるスクロール型圧縮機の断面図である。
【
図2】スクロール型圧縮機の一部分を示す分解斜視図である。
【
図3】スクロール型圧縮機の一部分を示す分解斜視図である。
【
図4】ガスケットの一部分を拡大して示す平面図である。
【
図5】ガスケット及び固定スクロールの一部分を拡大して示す断面図である。
【
図6】別の実施形態にガスケットの一部分を拡大して示す平面図である。
【
図7】別の実施形態にガスケットの一部分を拡大して示す平面図である。
【
図8】別の実施形態にガスケットの一部分を拡大して示す平面図である。
【
図9】別の実施形態にガスケットの一部分を拡大して示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、スクロール型圧縮機を具体化した一実施形態を
図1~
図5にしたがって説明する。本実施形態のスクロール型圧縮機は、例えば、車両空調装置に用いられる。
<スクロール型圧縮機10の基本構成>
図1に示すように、スクロール型圧縮機10は、筒状のハウジング11を有している。ハウジング11は、モータハウジング12と、軸支ハウジング13と、吐出ハウジング14と、を有している。よって、吐出ハウジング14は、ハウジングの一部である。モータハウジング12、軸支ハウジング13、及び吐出ハウジング14は金属材料製であり、例えば、アルミニウム製である。また、スクロール型圧縮機10は、回転軸15を備えている。回転軸15は、ハウジング11内に収容されている。
【0014】
モータハウジング12は、板状の端壁12aと、筒状の周壁12bと、を有している。周壁12bは、端壁12aの外周部から筒状に延びている。周壁12bの軸方向は、回転軸15の軸方向に一致している。周壁12bの開口端には、雌ねじ孔12cが複数形成されている。なお、
図1では、説明の都合上、雌ねじ孔12cを1つだけ図示している。また、モータハウジング12は、冷媒を吸入する吸入口12hを有している。吸入口12hは、周壁12bにおける端壁12a側に位置する部分に形成されている。吸入口12hは、モータハウジング12内外を連通している。
【0015】
端壁12aの内面には、円筒状のボス部12dが突設されている。回転軸15の軸方向の一方の端部である第1端部は、ボス部12d内に挿入されている。ボス部12dの内周面と回転軸15の第1端部の外周面との間には、転がり軸受16が設けられている。そして、回転軸15の第1端部は、転がり軸受16を介してモータハウジング12に回転可能に支持されている。
【0016】
軸支ハウジング13は、板状の端壁17と、筒状の周壁18と、を有している。周壁18は、端壁17の外周部から筒状に延びている。周壁18の軸方向は、回転軸15の軸方向に一致している。また、軸支ハウジング13は、円環状のフランジ壁19を有している。フランジ壁19は、周壁18の外周面における端壁17とは反対側の端部から回転軸15の径方向外側に向けて延びている。
【0017】
フランジ壁19の外周部には、ボルト挿通孔19aが複数形成されている。各ボルト挿通孔19aは、フランジ壁19を厚み方向に貫通している。フランジ壁19の各ボルト挿通孔19aは、モータハウジング12の各雌ねじ孔12cにそれぞれ連通している。なお、
図1では、説明の都合上、ボルト挿通孔19aを1つだけ図示している。
【0018】
モータハウジング12及び軸支ハウジング13は、ハウジング11内に形成されるモータ室20を区画している。したがって、モータハウジング12は、モータ室20を軸支ハウジング13と共に区画する。モータ室20内には、吸入口12hからの冷媒が吸入される。したがって、モータ室20は、吸入圧領域である。
【0019】
端壁17の中央部には、円孔状の挿通孔17aが形成されている。挿通孔17aは、端壁17を厚み方向に貫通している。挿通孔17aには、回転軸15が挿通されている。回転軸15の軸方向の他方の端部である第2端部側に位置する端面15eは、周壁18の内側に位置している。周壁18の内周面と回転軸15の外周面との間には、転がり軸受21が設けられている。そして、回転軸15は、転がり軸受21を介して軸支ハウジング13に回転可能に支持されている。したがって、軸支ハウジング13は、回転軸15を回転可能に支持する。回転軸15は、ハウジング11に回転可能に支持されている。
【0020】
スクロール型圧縮機10は、電動モータ22を備えている。電動モータ22は、モータ室20内に収容されている。電動モータ22は、筒状のステータ23と、筒状のロータ24と、を備えている。ロータ24は、ステータ23の内側に配置されている。ロータ24は、回転軸15と一体的に回転する。ステータ23は、ロータ24を取り囲んでいる。ロータ24は、回転軸15に固定されたロータコア24aと、ロータコア24aに設けられた図示しない複数の永久磁石と、を有している。
【0021】
ステータ23は、筒状のステータコア23aと、モータコイル23bと、を有している。ステータコア23aは、モータハウジング12の周壁12bの内周面に固定されている。モータコイル23bは、ステータコア23aに巻回されている。そして、図示しないインバータによって制御された電力がモータコイル23bに供給されることによりロータ24が回転する。これにより、回転軸15がロータ24と一体的に回転する。したがって、電動モータ22は、回転軸15を回転させる。
【0022】
スクロール型圧縮機10は、圧縮機構C1を有している。圧縮機構C1は、固定スクロール25と旋回スクロール26とからなる。したがって、圧縮機構C1は、スクロール式である。旋回スクロール26は、回転軸15の回転に伴い固定スクロール25に対して公転する。ハウジング11は、圧縮機構C1を収容する。
【0023】
図1及び
図2に示すように、固定スクロール25は、固定基板25a、固定渦巻壁25b、及び外周壁25cを有している。固定基板25aは、円板状である。固定基板25aの中央には、吐出ポート25hが形成されている。吐出ポート25hは、円孔状である。吐出ポート25hは、固定基板25aを厚み方向に貫通している。固定渦巻壁25bは、固定基板25aから起立している。外周壁25cは、固定基板25aの外周部から起立している。外周壁25cは、固定渦巻壁25bを囲繞している。
【0024】
図1及び
図3に示すように、固定スクロール25は、第1吐出室形成凹部41及び第1貯油室形成凹部51を有している。第1吐出室形成凹部41及び第1貯油室形成凹部51は、固定基板25aの端面25eに形成されている。固定基板25aの端面25eは、第1環状端面251と、第1接続端面252と、を有している。第1環状端面251は、固定基板25aの外周部に沿って延びる環状である。第1接続端面252は、細長帯状である。第1接続端面252は、第1環状端面251に接続されるとともに第1吐出室形成凹部41と第1貯油室形成凹部51との間で延びている。
【0025】
吐出ポート25hは、第1吐出室形成凹部41の底面に開口している。
図1に示すように、スクロール型圧縮機10は、弁機構25vを備えている。弁機構25vは、第1吐出室形成凹部41の底面に取り付けられている。弁機構25vは、吐出ポート25hを開閉可能に構成されている。
【0026】
旋回スクロール26は、旋回基板26a、及び旋回渦巻壁26bを有している。旋回基板26aは、円板状である。旋回基板26aは、固定基板25aに対向している。旋回渦巻壁26bは、旋回基板26aから固定基板25aに向けて起立している。旋回渦巻壁26bは、固定渦巻壁25bと噛み合っている。旋回スクロール26は、外周壁25cの内側に位置している。旋回スクロール26は、外周壁25cの内側で公転する。固定渦巻壁25bの先端面は、旋回基板26aに接触している。旋回渦巻壁26bの先端面は、固定基板25aに接触している。そして、固定基板25a、固定渦巻壁25b、旋回基板26a、及び旋回渦巻壁26bによって、圧縮室27が区画されている。圧縮室27は、冷媒を圧縮する。
【0027】
旋回基板26aは、円筒状のボス部26cを有している。ボス部26cは、旋回基板26aにおける固定基板25aとは反対側の端面26eから突出している。ボス部26cの軸方向は、回転軸15の軸方向に一致している。また、旋回基板26aは、溝部26dを複数有している。複数の溝部26dは、旋回基板26aの端面26eにおけるボス部26cの周囲にそれぞれ形成されている。複数の溝部26dは、回転軸15の周方向に所定の間隔をあけて配置されている。なお、
図1では、説明の都合上、溝部26dを1つだけ図示している。各溝部26d内には、円環状のリング部材28が嵌着されている。各リング部材28内には、ピン29が挿入されている。各ピン29は、軸支ハウジング13における旋回スクロール26側の端面13eに突設されている。
【0028】
スクロール型圧縮機10は、偏心軸31を備えている。偏心軸31は、回転軸15の端面15eにおける回転軸15の軸線L1に対して偏心した位置から旋回スクロール26に向けて突出している。偏心軸31は、回転軸15に一体形成されている。偏心軸31の軸方向は、回転軸15の軸方向に一致している。偏心軸31は、ボス部26c内に挿入されている。
【0029】
スクロール型圧縮機10は、バランスウェイト32及びブッシュ33を備えている。ブッシュ33は、偏心軸31の外周面に嵌合されている。バランスウェイト32は、ブッシュ33に一体化されている。バランスウェイト32は、ブッシュ33に一体形成されている。バランスウェイト32は、軸支ハウジング13の周壁18内に収容されている。旋回スクロール26は、ブッシュ33及び転がり軸受34を介して偏心軸31と相対回転可能に偏心軸31に支持されている。
【0030】
回転軸15の回転は、偏心軸31、ブッシュ33、及び転がり軸受34を介して旋回スクロール26に伝達される。これにより、旋回スクロール26は自転する。そして、各ピン29と各リング部材28の内周面とが接触することにより、旋回スクロール26の自転が阻止されて、旋回スクロール26の公転運動のみが許容される。これにより、旋回スクロール26は、旋回渦巻壁26bが固定渦巻壁25bに接触しながら公転運動する。そして、旋回スクロール26の公転運動に伴って、圧縮室27の容積が減少することにより、冷媒が圧縮室27で圧縮される。旋回スクロール26は、回転軸15の回転に伴い、外周壁25cの内側で公転する。バランスウェイト32は、旋回スクロール26が公転運動する際に旋回スクロール26に作用する遠心力を相殺する。これにより、旋回スクロール26のアンバランス量が低減される。
【0031】
図1及び
図2に示すように、吐出ハウジング14は、板状の端壁14aと、筒状の周壁14bと、を有している。周壁14bは、端壁14aの外周部から筒状に延びている。周壁14bの軸線方向は、回転軸15の軸線方向に一致している。周壁14bは、固定スクロール25を囲繞している。周壁14bには、ボルト挿通孔14cが複数形成されている。なお、
図1では、説明の都合上、ボルト挿通孔14cを1つだけ図示している。各ボルト挿通孔14cは、フランジ壁19の各ボルト挿通孔19aに連通している。
【0032】
各ボルト挿通孔14cを通過するボルトB1は、フランジ壁19の各ボルト挿通孔19aを通過してモータハウジング12の各雌ねじ孔12cに螺合されている。これにより、軸支ハウジング13がモータハウジング12の周壁12bに連結されるとともに、吐出ハウジング14が軸支ハウジング13のフランジ壁19に連結されている。したがって、モータハウジング12、軸支ハウジング13、及び吐出ハウジング14は、この順序で、回転軸15の軸線方向に並んで配置されている。固定スクロール25は、吐出ハウジング14の端壁14aと軸支ハウジング13とによって挟み込まれている。したがって、吐出ハウジング14は、固定スクロール25に連結されている。
【0033】
図2に示すように、吐出ハウジング14は、第2吐出室形成凹部42及び第2貯油室形成凹部52を有している。第2吐出室形成凹部42及び第2貯油室形成凹部52は、端壁14aの内端面14eに形成されている。第2吐出室形成凹部42は、第1吐出室形成凹部41と略同一形状である。第2貯油室形成凹部52は、第1貯油室形成凹部51と略同一形状である。
【0034】
端壁14aの内端面14eは、第2環状端面141と、第2接続端面142と、を有している。第2環状端面141は、端壁14aの内端面14eの外周部に沿って延びる環状である。第2接続端面142は、細長帯状である。第2接続端面142は、第2環状端面141に接続されるとともに第2吐出室形成凹部42と第2貯油室形成凹部52との間で延びている。
【0035】
図2及び
図3に示すように、第2環状端面141は、第1環状端面251に沿って延びている。第1環状端面251及び第2環状端面141は、固定スクロール25と吐出ハウジング14との接合面である。第2接続端面142は、第1接続端面252に沿って延びている。第1接続端面252及び第2接続端面142は、固定スクロール25と吐出ハウジング14との接合面である。
【0036】
図1に示すように、スクロール型圧縮機10は、吸入通路35を備えている。吸入通路35は、第1溝36と、第1孔37と、第2溝38と、第2孔39と、を有している。第1溝36は、モータハウジング12の周壁12bの内周面の一部に形成されている。第1溝36は、周壁12bの開口端に開口している。第1孔37は、軸支ハウジング13のフランジ壁19の外周部に形成されている。第1孔37は、フランジ壁19を厚み方向に貫通する。第1孔37は、第1溝36に連通している。第2溝38は、吐出ハウジング14の周壁14bの内周面の一部に形成されている。第2溝38は、第1孔37に連通している。第2孔39は、固定スクロール25の外周壁25cに形成されている。第2孔39は、外周壁25cを厚み方向に貫通している。第2孔39は、第2溝38に連通している。第2孔39は、圧縮室27における最外周部分に連通している。
【0037】
モータ室20内の冷媒は、第1溝36、第1孔37、第2溝38、及び第2孔39を通過して、圧縮室27に吸入される。したがって、第1溝36、第1孔37、第2溝38、及び第2孔39は、圧縮室27に吸入される冷媒が流れる吸入圧領域である。圧縮室27に吸入された冷媒は、旋回スクロール26の公転運動により圧縮室27内で圧縮される。このように、圧縮機構C1は、ハウジング11内に吸入された冷媒を圧縮する。
【0038】
<ガスケット70>
図2及び
図3に示すように、スクロール型圧縮機10は、板状のガスケット70を有している。ガスケット70は、金属製の薄板状である。ガスケット70は、環状である。ガスケット70は、吐出ハウジング14の端壁14aと固定基板25aとの間をシールする。
【0039】
ガスケット70は、吐出室連通孔70a及び貯油室連通孔70bを有している。吐出室連通孔70aは、第1吐出室形成凹部41及び第2吐出室形成凹部42と略同一形状である。貯油室連通孔70bは、第1貯油室形成凹部51及び第2貯油室形成凹部52と略同一形状である。
【0040】
ガスケット70は、第1シール部71と、第2シール部72と、を有している。第1シール部71は、環状である。第1シール部71は、第1環状端面251及び第2環状端面141に沿って延びている。第1シール部71は、第1環状端面251と第2環状端面141との間に介在されている。第1シール部71は、第1環状端面251及び第2環状端面141に密着している。第1シール部71は、第1環状端面251と第2環状端面141との間をシールしている。したがって、第1シール部71は、固定スクロール25と吐出ハウジング14との間をシールしている。
【0041】
第2シール部72は、第1シール部71に接続されている。第2シール部72は、細長帯状である。第2シール部72は、第1接続端面252及び第2接続端面142に沿って延びている。第2シール部72は、第1接続端面252と第2接続端面142との間に介在されている。第2シール部72は、第1接続端面252及び第2接続端面142に密着している。したがって、ガスケット70は、固定スクロール25と吐出ハウジング14との接合面に密着する。第2シール部72は、第1接続端面252と第2接続端面142との間をシールしている。したがって、ガスケット70は、固定スクロール25と吐出ハウジング14との間をシールしている。第2シール部72は、吐出室連通孔70aと貯油室連通孔70bとを仕切っている。第2シール部72には、貫通孔73が形成されている。
【0042】
第1シール部71は、第1湾曲部71aと、第2湾曲部71bと、を有している。第1湾曲部71aは、第1シール部71のうち、吐出室連通孔70aを第2シール部72と共に区画する部分である。第2湾曲部71bは、第1シール部71のうち、貯油室連通孔70bを第2シール部72と共に区画する部分である。
【0043】
第1シール部71は、一対の接続部74を有している。一対の接続部74の一方は、第1シール部71において、第1湾曲部71aの第1端部と、第2湾曲部71bの第1端部と、第2シール部72の第1端部とを接続する部分である。一対の接続部74の他方は、第1シール部71において、第1湾曲部71aの第2端部と、第2湾曲部71bの第2端部と、第2シール部72の第2端部とを接続する部分である。したがって、第2シール部72の端部は、第1シール部71に接続されている。
【0044】
図4では、接続部74と第1湾曲部71aとの境界を仮想線L11で示している。また、
図4では、接続部74と第2湾曲部71bとの境界を仮想線L12で示している。さらに、
図4では、接続部74と第2シール部72との境界を仮想線L13で示している。このように、各接続部74は、第1シール部71における第2シール部72との接続部位である。
【0045】
<吐出室40>
図2及び
図3に示すように、第1吐出室形成凹部41と第2吐出室形成凹部42とは、吐出室連通孔70aを介して連通している。そして、第1吐出室形成凹部41及び第2吐出室形成凹部42によって吐出室40が区画形成されている。したがって、スクロール型圧縮機10は、吐出室40を備えている。吐出室40には、圧縮機構C1で圧縮された冷媒が吐出される。
【0046】
<貯油室50>
第1貯油室形成凹部51と第2貯油室形成凹部52とは、貯油室連通孔70bを介して連通している。そして、第1貯油室形成凹部51及び第2貯油室形成凹部52によって貯油室50が区画形成されている。したがって、スクロール型圧縮機10は、貯油室50を備えている。貯油室50は、吐出室40内の冷媒から分離されたオイルを貯留する。吐出室40及び貯油室50は、固定スクロール25と吐出ハウジング14とにより区画されている。吐出ハウジング14は、吐出室40と、貯油室50と、を固定スクロール25との接合により区画する。第1接続端面252を形成する壁、及び第2接続端面142を形成する壁は、吐出室40と貯油室50とを区画する隔壁55である。したがって、吐出ハウジング14及び固定スクロール25は、吐出室40と貯油室50とを区画する隔壁55を有している。
【0047】
第1シール部71は、吐出室40及び貯油室50を囲繞しつつ外部に対してシールする。第2シール部72は、隔壁55に密着して吐出室40と貯油室50との間をシールする。本実施形態のスクロール型圧縮機10は、貯油室50が吐出室40よりも下方に位置するように車両に搭載されている。
【0048】
図1に示すように、スクロール型圧縮機10は、油分離室60を備えている。油分離室60は、吐出ハウジング14の内部に形成されている。油分離室60は、吐出ハウジング14の端壁14aの一部である細長筒状の外筒61内に形成されている。外筒61の第1端は、冷媒を外部へ吐出する吐出口62になっている。吐出口62は、油分離室60に連通している。
【0049】
油分離室60内には、内筒63が嵌め込まれている。内筒63の軸方向は、回転軸15の径方向に一致している。内筒63の第1端は、吐出口62に連通している。内筒63の第2端は、油分離室60内における吐出口62とは反対側に連通している。また、
図1及び
図2に示すように、外筒61には、導入孔64が形成されている。導入孔64は、吐出室40と油分離室60とを連通している。導入孔64は、吐出室40に吐出された冷媒を油分離室60に導入する。
【0050】
吐出ハウジング14には、排油孔65が形成されている。排油孔65の第1端は、油分離室60内における吐出口62とは反対側に連通している。
図2に示すように、排油孔65の第2端は、吐出ハウジング14の第2接続端面142に開口している。排油孔65は、ガスケット70の貫通孔73に連通している。そして、油分離室60は、排油孔65及び貫通孔73を介して第1貯油室形成凹部51に連通している。よって、油分離室60は、排油孔65及び貫通孔73を介して貯油室50に連通している。
【0051】
図1に示すように、圧縮室27内で圧縮されて吐出ポート25hを介して吐出室40内に吐出された冷媒は、導入孔64を介して油分離室60内に導入される。油分離室60内に導入された冷媒は、内筒63の周囲を旋回する。これにより、冷媒に含まれているオイルに遠心力が付与され、油分離室60内でオイルが冷媒から分離される。したがって、油分離室60は、吐出室40に吐出された冷媒に含まれるオイルを分離する。
【0052】
オイルが分離された冷媒は、内筒63内に流入するとともに内筒63内を通過する。そして、内筒63内を通過した冷媒は、吐出口62を介して図示しない外部冷媒回路に流出する。油分離室60内で冷媒から分離されたオイルは、排油孔65に向けて自重により流れる。そして、排油孔65に向けて流れるオイルは、排油孔65及び貫通孔73を介して貯油室50に排出されて、貯油室50に貯留される。
【0053】
<オイル通路80>
図3に示すように、スクロール型圧縮機10は、オイル通路80を有している。オイル通路80は、貯油室50内のオイルを圧縮機構C1へ流す。スクロール型圧縮機10は、スリット81と、溝82と、を有している。スリット81は、ガスケット70に形成されている。スリット81は、第1シール部71に形成されている。スリット81は、ガスケット70の第1シール部71に沿って延びている。スリット81は、ガスケット70を厚み方向に貫通している。オイル通路80は、スリット81が固定スクロール25と吐出ハウジング14とに閉塞されることで形成されている。
【0054】
溝82は、固定基板25aの端面25eに形成されている。したがって、固定スクロール25は、ガスケット70との接合面において凹設された溝82を有している。溝82は、オイル通路80の一部である。溝82は、平面視すると、長円形状の孔である。溝82は、固定基板25aの端面25eにおいて、一対の接続部74の一方と重なる部分に設けられている。よって、溝82は、固定基板25aの端面25eにおいて、一対の接続部74の一方に対応する部分に設けられている。したがって、溝82は、第1シール部71における第2シール部72との接続部位に対応する部分に設けられている。
【0055】
図4に示すように、溝82は、第2シール部72における第1シール部71からの延在方向に一致する方向に延びている。具体的には、溝82は、平面視すると、溝82の長手方向が、第2シール部72における第1シール部71からの延在方向に一致するように、固定基板25aの端面25eに形成されている。溝82の開口は、ガスケット70の接続部74によって閉塞されている。溝82は、オイル通路80のうち、スリット81よりも流路断面積が大きい部分である。
【0056】
図4及び
図5に示すように、スリット81は、上流スリット91と、下流スリット92と、を有している。上流スリット91は、溝82に対して上流側で連通している。下流スリット92は、溝82に対して下流側で連通している。
【0057】
図2及び
図3に示すように、上流スリット91は、第2湾曲部71bの下端部から一対の接続部74の一方に向けて延びている。上流スリット91の第1端は、第2湾曲部71bの下端部に位置している。上流スリット91の第1端は、貯油室50における下方の空間に連通している。
【0058】
図4に示すように、上流スリット91の第2端は、一対の接続部74の一方に位置している。上流スリット91の第2端は、溝82に連通している。具体的には、上流スリット91の第2端は、溝82に対して、溝82の長手方向で第2シール部72とは反対側の部分に連通している。上流スリット91は、平面視すると、溝82の長手方向に対して直交する方向から溝82に対して重なるように延びている。したがって、上流スリット91は、平面視すると、溝82の長手方向に対して交差する方向から溝82に対して重なるように延びている。
【0059】
図2及び
図3に示すように、下流スリット92は、一対の接続部74の一方から第1湾曲部71aに沿って延びるとともに一対の接続部74の他方に向けて延びている。下流スリット92の第1端は、一対の接続部74の一方に位置している。下流スリット92の第2端は、第1湾曲部71aの上部に位置している。具体的には、下流スリット92の第2端は、上流スリット91の第1端に対してガスケット70の周方向で180度以上離れている。
【0060】
図4に示すように、下流スリット92の第1端は、溝82に連通している。具体的には、下流スリット92の第1端は、溝82に対して、溝82の長手方向で第2シール部72側の部分に連通している。下流スリット92は、平面視すると、溝82の長手方向に対して斜めの方向から溝82に対して重なるように延びている。したがって、下流スリット92は、平面視すると、溝82の長手方向に対して交差する方向から溝82に対して重なるように延びている。
【0061】
図1及び
図3に示すように、固定基板25aの外周部には、連通路25dが形成されている。連通路25dの第1端は、固定基板25aの端面25eに開口している。そして、連通路25dの第1端は、下流スリット92の第2端に連通している。連通路25dの第2端は、圧縮室27における最外周部分に連通している。したがって、貯油室50と圧縮室27における最外周部分とは、オイル通路80及び連通路25dを介して連通している。
【0062】
本実施形態のスクロール型圧縮機10においては、上流スリット91、溝82及び下流スリット92により径方向に屈曲するオイル通路80を構成し、貯油室50内のオイルはこの順に通って圧縮機構C1へと流れる。オイル通路80は、第1シール部71において周方向に延びつつ、第1シール部71における第2シール部72との接続部位において径方向に屈曲している。
【0063】
<作用>
次に、本実施形態の作用について説明する。
図4に示すように、上流スリット91を流れるオイルは、上流スリット91から溝82に流入する。このとき、上流スリット91は、平面視すると、溝82の長手方向に対して直交する方向から溝82に対して重なるように延びている。したがって、上流スリット91から溝82に流入するオイルは、
図4において矢印A1で示す方向から溝82に流入する。これにより、溝82に流入したオイルは、溝82の内周面に衝突する。
【0064】
溝82に流入したオイルが溝82の内周面に衝突することにより、オイル通路80を流れるオイルの圧力損失が発生する。そして、オイルの流れ方向が、上流スリット91を流れていたオイルの流れ方向に対して、ガスケット70の面に沿って屈曲する。詳細には、
図4において矢印A2で示すように、オイルの流れ方向が、上流スリット91を流れていたオイルの流れ方向(矢印A1の方向)に対して、ガスケット70の面に沿って略90度の角度で屈曲する。このように、上流スリット91に沿って周方向に流れるオイルは、溝82により径方向に流れ方向が変更される。
【0065】
その後、オイルは、下流スリット92に向けて溝82を流れる。このとき、下流スリット92は、平面視すると、溝82の長手方向に対して斜めの方向から溝82に対して重なるように延びている。したがって、溝82を流れるオイルは、下流スリット92に流入する直前で、溝82の内周面に再度衝突する。溝82を流れるオイルが溝82の内周面に再度衝突することにより、オイル通路80を流れるオイルの圧力損失が再度発生する。
【0066】
そして、オイルの流れ方向が、溝82を流れていたオイルの流れ方向に対して、ガスケット70の面に沿って屈曲する。詳細には、
図4において矢印A3で示すように、オイルの流れ方向が、溝82を流れていたオイルの流れ方向(矢印A2の方向)に対して、ガスケット70の面に沿って略90度の角度で屈曲する。その後、オイルは、溝82から下流スリット92に流入する。そして、下流スリット92を流れるオイルは、連通路25dを介して圧縮室27における最外周部分に還流される。
【0067】
このように、溝82は、オイル通路80において、ガスケット70の面に沿って屈曲し、オイル通路80を流れるオイルの圧力損失を発生させる屈曲部として機能している。したがって、オイル通路80は、ガスケット70の面に沿って屈曲し、オイル通路80を流れるオイルの圧力損失を発生させる屈曲部を有している。本実施形態の屈曲部は、溝82によって形成されている。よって、屈曲部は、第1シール部71における第2シール部72との接続部位に対応する部分に設けられている。そして、屈曲部は、第2シール部72における第1シール部71からの延在方向に一致する方向に延びている。
【0068】
<効果>
上記実施形態では以下の効果を得ることができる。
(1)オイル通路80が、第1シール部71において周方向に延びつつ、第1シール部71における第2シール部72との接続部位において径方向に屈曲していることで、オイル通路80を流れるオイルの圧力損失を発生させることができる。よって、オイル通路80において安定した絞り効果を得るために、例えば、オイル通路80を長くする必要が無く、さらには、オイル通路80の流路断面積を小さくする必要も無い。第1シール部71における第2シール部72との接続部位は、オイル通路80を径方向に屈曲させるためのスペースを確保し易い。したがって、第1シール部71における第2シール部72との接続部位は、オイル通路80を径方向に屈曲させるスペースとして好適である。よって、第1シール部71における第2シール部72との接続部位でオイル通路80が径方向に屈曲している構成は、スクロール型圧縮機10が大型化せずに、オイル通路80において安定した絞り効果を得る構成として好適である。したがって、スクロール型圧縮機10が大型化せずに、スクロール型圧縮機10の信頼性を確保した上で、オイル通路80において安定した絞り効果を得ることができる。
【0069】
(2)スリット81は、溝82に対して上流側で連通する上流スリット91と、溝82に対して下流側で連通する下流スリット92と、を有し、上流スリット91、溝82及び下流スリット92により径方向に屈曲するオイル通路80を構成する。上流スリット91に沿って周方向に流れるオイルは、溝82により径方向に流れ方向が変更される。これによれば、例えば、上流スリット91に沿って周方向に流れるオイルが、スリット81の一部により径方向に流れ方向が変更される場合に比べると、ガスケット70の製造を容易なものとすることができる。したがって、スクロール型圧縮機10の構成を簡素化することができる。
【0070】
(3)本実施形態のように、第2シール部72における第1シール部71からの延在方向に一致する方向へ延びる溝82を採用する場合を考える。この場合、第1シール部71における第2シール部72との接続部位に対応する部分に屈曲部として溝82を設けることにより、第2シール部72における第1シール部71からの延在方向に一致する方向へ溝82を延ばし易い。したがって、スペースを有効活用しながら、オイル通路80に屈曲部としての溝82を設けることができるため、スクロール型圧縮機10が大型化せずに、オイル通路80において安定した絞り効果を得ることができる。
【0071】
<変更例>
なお、上記実施形態は、以下のように変更して実施することができる。上記実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
【0072】
<
図6に示す変更例の構成>
○
図6に示すように、上流スリット91が、溝82に対して、溝82の長手方向で第2シール部72側の部分に連通しており、下流スリット92が、溝82に対して、溝82の長手方向で第2シール部72とは反対側の部分に連通していてもよい。この場合であっても、上記実施形態と同様な作用及び効果を奏することができる。したがって、上流スリット91に沿って周方向に流れるオイルは、溝82により径方向に流れ方向が変更される。
【0073】
<
図7に示す変更例の構成>
○
図7に示すように、溝82は、平面視すると、溝82の長手方向が、第2シール部72における第1シール部71からの延在方向に対して直交する方向となるように、固定基板25aの端面25eに形成されていてもよい。要は、溝82は、第2シール部72における第1シール部71からの延在方向に一致する方向へ延びていなくてもよい。
【0074】
この場合、例えば、上流スリット91は、平面視すると、第2シール部72における第1シール部71からの延在方向から溝82に対して重なるように延びている。上流スリット91は、溝82に対して、第2シール部72とは反対側から溝82に対して重なるように延びている。上流スリット91は、溝82に対して、溝82の長手方向で第1湾曲部71a側の部分に連通している。
【0075】
下流スリット92は、平面視すると、第2シール部72における第1シール部71からの延在方向から溝82に対して重なるように延びている。下流スリット92は、溝82に対して、第2シール部72側から溝82に対して重なるように延びている。下流スリット92は、溝82に対して、溝82の長手方向で第2湾曲部71b側の部分に連通している。
【0076】
<
図7に示す変更例の作用>
上流スリット91を流れるオイルは、上流スリット91から溝82に流入する。このとき、上流スリット91は、平面視すると、第2シール部72における第1シール部71からの延在方向から溝82に対して重なるように延びている。すなわち、上流スリット91は、平面視すると、溝82の長手方向に対して直交する方向から溝82に対して重なるように延びている。したがって、上流スリット91から溝82に流入するオイルは、
図7において矢印A11で示す方向から溝82に流入する。これにより、溝82に流入したオイルは、溝82の内周面に衝突する。
【0077】
溝82に流入したオイルが溝82の内周面に衝突することにより、オイル通路80を流れるオイルの圧力損失が発生する。そして、オイルの流れ方向が、上流スリット91を流れていたオイルの流れ方向に対して、ガスケット70の面に沿って屈曲する。詳細には、
図7において矢印A12で示すように、オイルの流れ方向が、上流スリット91を流れていたオイルの流れ方向(矢印A11の方向)に対して、ガスケット70の面に沿って略90度の角度で屈曲する。このように、上流スリット91に沿って周方向に流れるオイルは、溝82により周方向の逆向きに流れ方向が変更される。
【0078】
その後、オイルは、下流スリット92に向けて溝82を流れる。このとき、下流スリット92は、平面視すると、第2シール部72における第1シール部71からの延在方向から溝82に対して重なるように延びている。すなわち、下流スリット92は、平面視すると、溝82の長手方向に対して直交する方向から溝82に対して重なるように延びている。したがって、溝82を流れるオイルは、下流スリット92に流入する直前で、溝82の内周面に再度衝突する。溝82を流れるオイルが溝82の内周面に再度衝突することにより、オイル通路80を流れるオイルの圧力損失が再度発生する。
【0079】
そして、オイルの流れ方向が、溝82を流れていたオイルの流れ方向に対して、ガスケット70の面に沿って屈曲する。詳細には、
図7において矢印A13で示すように、オイルの流れ方向が、溝82を流れていたオイルの流れ方向(矢印A12の方向)に対して、ガスケット70の面に沿って略90度の角度で屈曲する。その後、オイルは、溝82から下流スリット92に流入する。そして、下流スリット92を流れるオイルは、連通路25dを介して圧縮室27における最外周部分に還流される。これによれば、上記実施形態と同様な効果を奏することができる。
【0080】
<
図8に示す変更例の構成>
○
図8に示すように、上流スリット91は分岐され、溝82に対して異なった位置で連通する第1上流スリット91aと第2上流スリット91bとを含んでいてもよい。なお、
図8に示す実施形態では、
図7に示す実施形態と同様に、溝82は、平面視すると、溝82の長手方向が、第2シール部72における第1シール部71からの延在方向に対して直交する方向となるように、固定基板25aの端面25eに形成されている。
【0081】
第1上流スリット91aは、溝82に連通している。第1上流スリット91aは、平面視すると、第2シール部72における第1シール部71からの延在方向から溝82に対して重なるように延びている。第1上流スリット91aは、溝82に対して、第2シール部72とは反対側から溝82に対して重なるように延びている。第1上流スリット91aは、溝82に対して、溝82の長手方向で第1湾曲部71a側の部分に連通している。
【0082】
第2上流スリット91bは、第1上流スリット91aから分岐して溝82に合流している。第2上流スリット91bは、平面視すると、第2シール部72における第1シール部71からの延在方向に対して直交する方向から溝82に対して重なるように延びている。第2上流スリット91bは、溝82に対して、第2湾曲部71b側から溝82に対して重なるように延びている。第2上流スリット91bは、溝82に対して、溝82の長手方向で第2湾曲部71b側の部分に連通している。
【0083】
下流スリット92は、平面視すると、第2シール部72における第1シール部71からの延在方向から溝82に対して重なるように延びている。下流スリット92は、溝82に対して、第2シール部72側から溝82に対して重なるように延びている。下流スリット92は、溝82に対して、溝82の長手方向の中央部に連通している。
【0084】
<
図8に示す変更例の作用>
上流スリット91を流れるオイルは、第1上流スリット91aと第2上流スリット91bとに分岐して流れる。第1上流スリット91aを流れるオイルは、第1上流スリット91aから溝82に流入する。このとき、第1上流スリット91aは、平面視すると、第2シール部72における第1シール部71からの延在方向から溝82に対して重なるように延びている。すなわち、第1上流スリット91aは、平面視すると、溝82の長手方向に対して直交する方向から溝82に対して重なるように延びている。したがって、第1上流スリット91aから溝82に流入するオイルは、
図8において矢印A21で示す方向から溝82に流入する。これにより、溝82に流入したオイルは、溝82の内周面に衝突する。
【0085】
溝82に流入したオイルが溝82の内周面に衝突することにより、オイル通路80を流れるオイルの圧力損失が発生する。そして、オイルの流れ方向が、第1上流スリット91aを流れていたオイルの流れ方向に対して、ガスケット70の面に沿って屈曲する。詳細には、
図8において矢印A22で示すように、オイルの流れ方向が、第1上流スリット91aを流れていたオイルの流れ方向(矢印A21の方向)に対して、ガスケット70の面に沿って略90度の角度で屈曲する。その後、オイルは、下流スリット92に向けて溝82を流れる。このように、第1上流スリット91aに沿って周方向に流れるオイルは、溝82により周方向の逆向きに流れ方向が変更される。
【0086】
一方で、第2上流スリット91bを流れるオイルは、第2上流スリット91bから溝82内に流入する。そして、第2上流スリット91bから溝82内に流入したオイルは、溝82内を長手方向の中央部に向けて流れる。ここで、第1上流スリット91aから溝82内に流入して溝82内を流れるオイルと、第2上流スリット91bから溝82内に流入して溝82内を流れるオイルとは、溝82の長手方向の中央部で互いに衝突する。よって、第2上流スリット91bから溝82内に流入するオイルは、第1上流スリット91aから溝82内、下流スリット92へと流入するオイルの流れに対し抵抗となる。
【0087】
そして、溝82の長手方向の中央部で互いに衝突したオイルは、下流スリット92に向けて流れる。すなわち、
図8において矢印A23で示すように、オイルの流れ方向が、溝82の長手方向に流れていたオイルの流れ方向(矢印A22の方向)に対して、ガスケット70の面に沿って略90度の角度で屈曲する。その後、オイルは、溝82から下流スリット92に流入する。そして、下流スリット92を流れるオイルは、連通路25dを介して圧縮室27における最外周部分に還流される。
【0088】
<
図8に示す変更例の効果>
これによれば、第2上流スリット91bから溝82内に流入するオイルが、第1上流スリット91aから溝82内、下流スリット92へと流入するオイルの流れに対し抵抗となる。よって、オイル通路80を流れるオイルの圧力損失をさらに発生させ易くすることができる。したがって、オイル通路80においてさらに安定した絞り効果を得ることができる。
【0089】
<
図9に示す変更例の構成>
○
図9に示すように、第1上流スリット91aが、溝82に対して、溝82の長手方向の中央部に連通しており、下流スリット92が、溝82に対して、溝82の長手方向で第1湾曲部71a側の部分に連通していてもよい。第1上流スリット91aは、
図8に示す実施形態と同様に、平面視すると、第2シール部72における第1シール部71からの延在方向から溝82に対して重なるように延びている。第1上流スリット91aは、溝82に対して、第2シール部72とは反対側から溝82に対して重なるように延びている。下流スリット92は、
図8に示す実施形態と同様に、平面視すると、第2シール部72における第1シール部71からの延在方向から溝82に対して重なるように延びている。下流スリット92は、溝82に対して、第2シール部72側から溝82に対して重なるように延びている。なお、溝82及び第2上流スリット91bそれぞれの構成については、
図8に示す実施形態の構成と同様であるため、その説明を省略する。
【0090】
<
図9に示す変更例の作用>
上流スリット91を流れるオイルは、第1上流スリット91aと第2上流スリット91bとに分岐して流れる。第1上流スリット91aを流れるオイルは、第1上流スリット91aから溝82に流入する。このとき、第1上流スリット91aは、平面視すると、第2シール部72における第1シール部71からの延在方向から溝82に対して重なるように延びている。すなわち、第1上流スリット91aは、平面視すると、溝82の長手方向に対して直交する方向から溝82に対して重なるように延びている。したがって、第1上流スリット91aから溝82に流入するオイルは、
図9において矢印A31で示す方向から溝82に流入する。これにより、溝82に流入したオイルは、溝82の内周面に衝突する。
【0091】
溝82に流入したオイルが溝82の内周面に衝突することにより、オイル通路80を流れるオイルの圧力損失が発生する。そして、オイルの流れ方向が、第1上流スリット91aを流れていたオイルの流れ方向に対して、ガスケット70の面に沿って屈曲する。詳細には、
図9において矢印A32で示すように、オイルの流れ方向が、第1上流スリット91aを流れていたオイルの流れ方向(矢印A31の方向)に対して、ガスケット70の面に沿って略90度の角度で屈曲する。その後、オイルは、下流スリット92に向けて溝82を流れる。
【0092】
一方で、第2上流スリット91bを流れるオイルは、第2上流スリット91bから溝82内に流入する。そして、第2上流スリット91bから溝82内に流入したオイルは、溝82内を長手方向の中央部に向けて流れる。ここで、第1上流スリット91aから溝82内に流入するオイルと、第2上流スリット91bから溝82内に流入して溝82内を流れるオイルとは、溝82の長手方向の中央部で互いに衝突する。よって、第2上流スリット91bから溝82内に流入するオイルは、第1上流スリット91aから溝82内、下流スリット92へと流入するオイルの流れに対し抵抗となる。
【0093】
そして、溝82の長手方向の中央部で互いに衝突したオイルは、下流スリット92に向けて流れる。このとき、下流スリット92は、平面視すると、第2シール部72における第1シール部71からの延在方向から溝82に対して重なるように延びている。すなわち、下流スリット92は、平面視すると、溝82の長手方向に対して直交する方向から溝82に対して重なるように延びている。したがって、溝82を流れるオイルは、下流スリット92に流入する直前で、溝82の内周面に再度衝突する。溝82を流れるオイルが溝82の内周面に再度衝突することにより、オイル通路80を流れるオイルの圧力損失が再度発生する。
【0094】
そして、オイルの流れ方向が、溝82を流れていたオイルの流れ方向に対して、ガスケット70の面に沿って屈曲する。詳細には、
図9において矢印A33で示すように、オイルの流れ方向が、溝82を流れていたオイルの流れ方向(矢印A32の方向)に対して、ガスケット70の面に沿って略90度の角度で屈曲する。その後、オイルは、溝82から下流スリット92に流入する。そして、下流スリット92を流れるオイルは、連通路25dを介して圧縮室27における最外周部分に還流される。これによれば、
図8に示す実施形態と同様な効果を奏することができる。
【0095】
<その他の変更例>
○ 実施形態において、吐出室40と貯油室50とを区画する隔壁55は、吐出ハウジング14及び固定スクロール25のうちの少なくとも一方が有していればよい。
【0096】
○ 実施形態において、固定スクロール25が溝82を有しているのではなく、吐出ハウジング14が溝82を有していてもよい。
○ 実施形態において、スクロール型圧縮機10は、車両空調装置に用いられていたが、これに限らない。要は、スクロール型圧縮機10は、冷媒を圧縮するものであればよく、スクロール型圧縮機10の用途は適宜変更可能である。
【符号の説明】
【0097】
C1…圧縮機構、10…スクロール型圧縮機、11…ハウジング、14…吐出ハウジング、25…固定スクロール、26…旋回スクロール、40…吐出室、50…貯油室、55…隔壁、70…ガスケット、71…第1シール部、72…第2シール部、80…オイル通路、81…スリット、82…溝、91…上流スリット、91a…第1上流スリット、91b…第2上流スリット、92…下流スリット。