(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-03-18
(45)【発行日】2025-03-27
(54)【発明の名称】光ファイバリボン及び光ファイバケーブル
(51)【国際特許分類】
G02B 6/44 20060101AFI20250319BHJP
【FI】
G02B6/44 371
G02B6/44 361
G02B6/44 331
G02B6/44 301A
G02B6/44 311
(21)【出願番号】P 2022505801
(86)(22)【出願日】2021-01-18
(86)【国際出願番号】 JP2021001471
(87)【国際公開番号】W WO2021181880
(87)【国際公開日】2021-09-16
【審査請求日】2023-11-21
(31)【優先権主張番号】P 2020039645
(32)【優先日】2020-03-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100221992
【氏名又は名称】篠田 真由美
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100136722
【氏名又は名称】▲高▼木 邦夫
(74)【代理人】
【識別番号】100174399
【氏名又は名称】寺澤 正太郎
(72)【発明者】
【氏名】岩口 矩章
(72)【発明者】
【氏名】藤井 隆志
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 文昭
【審査官】山本 元彦
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-026365(JP,A)
【文献】特開2019-045517(JP,A)
【文献】国際公開第2017/082200(WO,A1)
【文献】特開2018-177630(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2006/0084716(US,A1)
【文献】国際公開第2017/065274(WO,A1)
【文献】国際公開第2016/047002(WO,A1)
【文献】特表2001-524223(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 6/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
並列に配置された複数の光ファイバと、前記複数の光ファイバを被覆して連結するリボン用樹脂を含む連結樹脂層と、を有する光ファイバリボンであって、
前記複数の光ファイバ各々の外径が220μm以下であり、
前記複数の光ファイバ各々は、コア及びクラッドを含むガラスファイバと、前記ガラスファイバに接して該ガラスファイバを被覆するプライマリ樹脂層と、前記プライマリ樹脂層を被覆する着色セカンダリ樹脂層と、を備え、
前記着色セカンダリ樹脂層が、光重合開始剤として2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシドと、ビスフェノール骨格を有する多官能モノマーと、シリコーン系滑剤と、を含有する樹脂組成物の硬化物を含み、
前記着色セカンダリ樹脂層に含まれるリンの含有量が0.03質量%以上0.30質量%以下であり、前記着色セカンダリ樹脂層の表面におけるリン-スズ錯体の量が300ppm以上7000ppm以下であ
り、
前記リボン用樹脂が、ウレタン(メタ)アクリレートの硬化物を含む、光ファイバリボン。
【請求項2】
前記リン-スズ錯体の量が、500ppm以上6000ppm以下である、請求項1に記載の光ファイバリボン。
【請求項3】
前記複数の光ファイバのうち隣り合う光ファイバの中心間の平均距離が220μm以上280μm以下である、請求項1又は請求項2に記載の光ファイバリボン。
【請求項4】
前記樹脂組成物が、光重合開始剤として1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトンを更に含有する
、請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の光ファイバリボン。
【請求項5】
前記着色セカンダリ樹脂層のヤング率が、23℃で1200MPa以上である、請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の光ファイバリボン。
【請求項6】
前記光ファイバリボンが、長手方向及び幅方向に間欠的に連結部と非連結部とを有する、請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の光ファイバリボン。
【請求項7】
前記連結樹脂層が、前記複数の光ファイバのうち隣り合う光ファイバを連結する部分に凹みを有する、請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の光ファイバリボン。
【請求項8】
請求項1から請求項7のいずれか一項に記載の光ファイバリボンが、ケーブル内に実装された、光ファイバケーブル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、光ファイバリボン及び光ファイバケーブルに関する。
本出願は、2020年3月9日出願の日本出願第2020-039645号に基づく優先権を主張し、前記日本出願に記載された全ての記載内容を援用するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、光ファイバ心線は、ガラスファイバと該ガラスファイバを覆う被覆樹脂層とからなる光ファイバ素線を識別するために、インク層と呼ばれる薄い着色層を最外層に有している(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
光ファイバを複数本並べて一括被覆層により一体化した光ファイバテープ心線(光ファイバリボン)が知られている。例えば、特許文献2には、光ファイバリボンを収納した光ファイバケーブルの高密度細線化のため、光ファイバの外径が220μm以下の細径の光ファイバを樹脂により連結することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平6-242355号公報
【文献】特開2013-88617号公報
【発明の概要】
【0005】
本開示の一態様に係る光ファイバリボンは、並列に配置された複数の光ファイバと、複数の光ファイバを被覆して連結するリボン用樹脂を含む連結樹脂層とを有し、複数の光ファイバ各々の外径が220μm以下であり、複数の光ファイバ各々は、コア及びクラッドを含むガラスファイバと、ガラスファイバに接して該ガラスファイバを被覆するプライマリ樹脂層と、プライマリ樹脂層を被覆する着色セカンダリ樹脂層と、を備え、着色セカンダリ樹脂層が、光重合開始剤として2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシドを含有する樹脂組成物の硬化物を含み、着色セカンダリ樹脂層に含まれるリンの含有量が0.03質量%以上0.30質量%以下であり、着色セカンダリ樹脂層の表面におけるリン-スズ錯体が300ppm以上7000ppm以下である。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図1】
図1は光ファイバの一例を示す概略断面図である。
【
図2】
図2は一実施形態に係る光ファイバリボンを示す概略断面図である。
【
図3】
図3は一実施形態に係る光ファイバリボンを示す概略断面図である。
【
図4】
図4は一実施形態に係る間欠光ファイバリボンの外観を示す平面図である。
【
図5】
図5は一実施形態に係る光ファイバリボンを示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
[本開示が解決しようとする課題]
細径の光ファイバは、光ファイバリボンのボビンへの巻き取り時や光ケーブル化時に、外径が250μmの光ファイバに比べて曲げによる側圧を受け易いため、耐側圧性が弱く、伝送損失が増加し易い。また、細径の光ファイバを用いた光ファイバリボンの場合、光ファイバと、該光ファイバを被覆するリボン用樹脂とが接触する面積が小さくなるため、リボン用樹脂の光ファイバに対する密着性が低いとリボン用樹脂が剥がれ易くなる。一方、リボン用樹脂の光ファイバに対する密着性を高め過ぎると、光ファイバリボンの末端を固定する際に光ファイバを単心分離することが難しくなる。
【0008】
本開示は、細径の光ファイバを用いた場合に、耐剥離性と単心分離性との両立が可能であり、光ケーブルの伝送損失の増加を抑制することができる光ファイバリボンを提供することを目的とする。
【0009】
[本開示の効果]
本開示によれば、細径の光ファイバを用いた場合に、耐剥離性と単心分離性との両立が可能であり、光ケーブルの伝送損失の増加を抑制することができる光ファイバリボンを提供することができる。
【0010】
[本開示の実施形態の説明]
最初に、本開示の実施形態の内容を列記して説明する。本開示の一態様に係る光ファイバリボンは、並列に配置された複数の光ファイバと、複数の光ファイバを被覆して連結するリボン用樹脂を含む連結樹脂層と、を有する光ファイバリボンであって、複数の光ファイバ各々の外径が220μm以下であり、複数の光ファイバ各々は、コア及びクラッドを含むガラスファイバと、ガラスファイバに接して該ガラスファイバを被覆するプライマリ樹脂層と、プライマリ樹脂層を被覆する着色セカンダリ樹脂層と、を備え、着色セカンダリ樹脂層が、光重合開始剤として2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシドを含有する樹脂組成物の硬化物を含み、着色セカンダリ樹脂層に含まれるリンの含有量が0.03質量%以上0.30質量%以下であり、着色セカンダリ樹脂層の表面におけるリン-スズ錯体の量が300ppm以上7000ppm以下である。
【0011】
本実施形態に係る光ファイバリボンは、耐剥離性と単心分離性との両立が可能であり、ケーブル内に高密度に収納する際などに急峻に曲げることが可能であり、ボビン巻き時やケーブル化時における伝送損失の増加を抑制することができる。
【0012】
光ファイバの単心分離性により優れることから、上記リン-スズ錯体の量は、500ppm以上6000ppm以下であることが好ましい。一括融着性に優れる光ファイバリボンを得易いことから、複数の光ファイバのうち隣り合う光ファイバの中心間の平均距離は、220μm以上280μm以下であることが好ましい。
【0013】
着色セカンダリ樹脂層とリボン用樹脂との密着性を調整し易いことから、上記樹脂組成物は、ビスフェノール骨格を有する多官能モノマーを更に含有してよく、シリコーン系滑剤を更に含有してよい。
【0014】
光ファイバの単心分離性により優れることから、上記樹脂組成物は、光重合開始剤として1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトンを更に含有してよい。
【0015】
光ケーブルの伝送損失の増加をより抑制できることから、着色セカンダリ樹脂層のヤング率は、23℃で1200MPa以上であることが好ましい。
【0016】
光ファイバリボンをケーブルに収納する際に変形し易いことから、本実施形態に係る光ファイバリボンは、長手方向及び幅方向に間欠的に連結部と非連結部とを有してもよい。
【0017】
光ファイバリボンをケーブルに収納する際に変形し易いことから、連結樹脂層は、複数の光ファイバのうち隣り合う光ファイバを連結する部分に凹みを有してもよい。
【0018】
本開示の一態様に係る光ファイバケーブルは、上記光ファイバリボンがケーブル内に実装されている。本実施形態に係る光ファイバリボンを備える光ファイバケーブルは、高い側圧特性と低伝送損失とを両立することができる。
【0019】
[本開示の実施形態の詳細]
本開示の実施形態に係る光ファイバリボン及び光ファイバケーブルの具体例を、必要により図面を参照しつつ説明する。本開示はこれらの例示に限定されず、請求の範囲によって示され、請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。以下の説明では、図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。本実施形態において、(メタ)アクリレートとは、アクリレート又はそれに対応するメタクリレートを意味し、(メタ)アクリロイル等の他の類似表現についても同様である。
【0020】
<光ファイバリボン>
本実施形態に係る光ファイバリボンは、並列に配置された複数の光ファイバが、リボン用樹脂により被覆されている。リボン用樹脂は、複数の光ファイバを連結して連結樹脂層を形成する。
【0021】
図1は、光ファイバの一例を示す概略断面図である。光ファイバ10は、コア11及びクラッド12を含むガラスファイバ13と、ガラスファイバ13の外周に設けられたプライマリ樹脂層14及び着色セカンダリ樹脂層15を含む被覆樹脂層16とを備えている。
【0022】
クラッド12はコア11を取り囲んでいる。コア11及びクラッド12は石英ガラス等のガラスを主に含み、例えば、コア11にはゲルマニウムを添加した石英ガラス、又は、純石英ガラスを用いることができ、クラッド12には純石英ガラス、又は、フッ素が添加された石英ガラスを用いることができる。
【0023】
図1において、光ファイバ10の外径は220μm以下であり、140μm以上220μm以下、又は170μm以上220μm以下であってもよい。ガラスファイバ13の外径(D2)は100μmから125μm程度であり、ガラスファイバ13を構成するコア11の直径(D1)は、7μmから15μm程度であってもよい。プライマリ樹脂層14及び着色セカンダリ樹脂層15の各層の厚さは、5μmから50μm程度であってもよい。
【0024】
着色セカンダリ樹脂層15は、例えば、光重合性化合物、光重合開始剤、及び顔料を含有する紫外線硬化性の樹脂組成物を硬化させて形成することができる。上記樹脂組成物は、光重合開始剤として2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド(Omnirad TPO、IGM Resins社製。以下、「TPO」と略記する。)を必須成分として含有し、着色セカンダリ樹脂層15は、光重合開始剤として2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシドを含有する樹脂組成物の硬化物とを含む。
【0025】
リン系光重合開始剤であるTPOは、被覆樹脂層の硬化性を高めるために有効である。一方、リン(P)はスズ(Sn)と錯体(P-Sn錯体)を形成することが知られている。ウレタンの合成触媒としてスズ触媒が用いられることがあり、その場合はウレタン(メタ)アクリレートにスズが残存する。光重合開始剤としてTPOを使用し、光重合性化合物としてウレタン(メタ)アクリレートを使用した場合、TPOに由来するリンと、ウレタン(メタ)アクリレートに混入しているスズとが、セカンダリ樹脂層中でP-Sn錯体を形成する。P-Sn錯体がセカンダリ樹脂層の表面に偏在すると、光ファイバリボンを作製する際のセカンダリ樹脂層とリボン樹脂との界面の密着性が低下し、光ファイバリボンの作製時に剥離が生じ易くなる。
【0026】
これに対して、本実施形態の光ファイバは、着色セカンダリ樹脂層15に含まれるリンの含有量が0.03質量%以上0.30質量%以下であり、着色セカンダリ樹脂層15の表面におけるP-Sn錯体の量が300ppm以上7000ppm以下であることで、着色セカンダリ樹脂層の硬化性と密着性とを両立することができる。
【0027】
上記リンの含有量は、0.05質量%以上0.28質量%以下であってもよく、0.07質量%以上0.27質量%以下であってもよい。スズと錯形成するリンの含有量は、樹脂組成物におけるTPOの配合量により調整することができる。リンの含有量は、ICP発光分析で測定することができる。具体的には、着色セカンダリ樹脂層を形成するための樹脂組成物1gに硫酸20mLと硝酸6mLを添加し10分間加温後、過塩素酸4mLを加えて不溶物がなくなるまで加温する。その後、水で希釈して100mLに定容しICP発光分析で測定する。
【0028】
光ファイバの単心分離性により優れることから、上記P-Sn錯体の量は、400ppm以上6500ppm以下であることが好ましく、500ppm以上6000ppm以下であることがより好ましく、3300ppm以上6000ppm以下であることが更に好ましい。P-Sn錯体の量は、樹脂組成物におけるTPO及びウレタン(メタ)アクリレートの配合量により調整することができる。P-Sn錯体の量は、TOF-SIMSを用いて被覆樹脂層の表面を分析することで測定することができる。なお、本明細書中、P-Sn錯体の量(ppm)は、質量比率である。
【0029】
上記樹脂組成物は、他の光重合開始剤を更に含有してもよい。他の光重合開始剤としては、公知のラジカル光重合開始剤の中から適宜選択して使用することができる。他の光重合開始剤として、例えば、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(Omnirad 184、IGM Resins社製)、2,2-ジメトキシ-2-フェニルアセトフェノン、1-(4-イソプロピルフェニル)-2-ヒドロキシ-2-メチルプロパン-1-オン、ビス(2,6-ジメトキシベンゾイル)-2,4,4-トリメチルペンチルホスフィンオキサイド、2-メチル-1-[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モルホリノ-プロパン-1-オン(Omnirad 907、IGM Resins社製)、及びビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキシド(Omnirad 819、IGM Resins社製)が挙げられる。
【0030】
他の光重合開始剤としては、スズと錯形成しない光重合開始剤が好ましく、Omnirad 184がより好ましい。上記樹脂組成物は、光重合開始剤として、2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシドと、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトンとを併用することで、光ファイバの単心分離性をより向上することができる。
【0031】
着色セカンダリ樹脂層15は、顔料を含むことにより、光ファイバを識別するためのインク層となる着色層を形成する。顔料としては、カーボンブラック、酸化チタン、亜鉛華等の着色顔料、γ-Fe2O3、γ-Fe2O3とγ-Fe3O4の混晶、CrO2、コバルトフェライト、コバルト被着酸化鉄、バリウムフェライト、Fe-Co、Fe-Co-Ni等の磁性粉、MIO、ジンククロメート、ストロンチウムクロメート、トリポリリン酸アルミニウム、亜鉛、アルミナ、ガラス、マイカ等の無機顔料;及びアゾ系顔料、フタロシアニン系顔料、染付レーキ顔料等の有機顔料が挙げられる。顔料には、各種表面改質、複合顔料化等の処理が施されていてもよい。
【0032】
光重合性化合物は、オリゴマー及びモノマーを含んでよい、オリゴマーとしては、例えば、ウレタン(メタ)アクリレート及びエポキシ(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0033】
ウレタン(メタ)アクリレートは、ポリオール化合物、ポリイソシアネート化合物及び水酸基含有(メタ)アクリレート化合物を反応させて得られる化合物であってよい。
【0034】
ポリオール化合物としては、例えば、ポリテトラメチレングリコール、ポリプロピレングリコール、及びビスフェノールA・エチレンオキサイド付加ジオールが挙げられる。ヤング率を調整する観点から、ポリオール化合物の数平均分子量は、300以上8000以下であってもよい。ポリイソシアネート化合物としては、例えば、2,4-トリレンジイソシアネート、2,6-トリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、及びジシクロヘキシルメタン4,4’-ジイソシアナートが挙げられる。水酸基含有(メタ)アクリレート化合物としては、例えば、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールモノ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、及びトリプロピレングリコール(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0035】
ウレタン(メタ)アクリレートを合成する際の触媒として、有機金属触媒が用いられることがあり、製造性の観点から、有機スズ化合物が使用されることがある。有機スズ化合物としては、例えば、ジブチルスズジラウレート、ジブチルスズジアセテート、ジブチルスズマレート、ジブチルスズビス(メルカプト酢酸2-エチルヘキシル)、ジブチルスズビス(メルカプト酢酸イソオクチル)、及びジブチルスズオキシドが挙げられる。易入手性又は触媒性能の点から、触媒としてジブチルスズジラウレート又はジブチルスズジアセテートを使用することが好ましい。触媒は生産性の観点では多量に使用するほうが望ましいが、樹脂層表面に析出し、リボン樹脂と着色セカンダリ樹脂層との密着力を低下させ易くするため適切な範囲とすることが望ましい。
【0036】
ウレタン(メタ)アクリレート合成時に炭素数5以下の低級アルコールを使用してもよい。低級アルコールとしては、例えば、メタノール、エタノール、1-プロパノール、2-プロパノール、1-ブタノール、2-ブタノール、2-メチル-2-プロパノール、1-ペンタノール、2-ペンタノール、3-ペンタノール、2-メチル-1-ブタノール、3-メチル-1-ブタノール、2-メチル-2-ブタノール、3-メチル-2-ブタノール、及び2,2-ジメチル-1-プロパノールが挙げられる。
【0037】
エポキシ(メタ)アクリレートは、グリシジル基を2以上有するエポキシ化合物に(メタ)アクリロイル基を有する化合物を反応させて得られる化合物である。
【0038】
モノマーとしては、重合性基を1つ有する単官能モノマー、重合性基を2つ以上有する多官能モノマーを用いることができる。モノマーは、2種以上を混合して用いてもよい。
【0039】
単官能モノマーとしては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、s-ブチル(メタ)アクリレート、tert-ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、n-ペンチル(メタ)アクリレート、イソペンチル(メタ)アクリレート、へキシル(メタ)アクリレート、ヘプチル(メタ)アクリレート、イソアミル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n-オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、2-フェノキシエチル(メタ)アクリレート、3-フェノキシベンジルアクリレート、フェノキシジエチレングリコールアクリレート、フェノキシポリエチレングリコールアクリレート、4-tert-ブチルシクロヘキサノールアクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ノニルフェノールポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ノニルフェノールEO変性アクリレート、ノニルフェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリレート系モノマー;(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸ダイマー、カルボキシエチル(メタ)アクリレート、カルボキシペンチル(メタ)アクリレート、ω-カルボキシ-ポリカプロラクトン(メタ)アクリレート等のカルボキシル基含有モノマー;N-アクリロイルモルホリン、N-ビニルピロリドン、N-ビニルカプロラクタム、N-アクリロイルピペリジン、N-メタクリロイルピペリジン、N-アクリロイルピロリジン、3-(3-ピリジル)プロピル(メタ)アクリレート、環状トリメチロールプロパンホルマールアクリレート等の複素環含有(メタ)アクリレート;マレイミド、N-シクロへキシルマレイミド、N-フェニルマレイミド等のマレイミド系モノマー;(メタ)アクリルアミド、N,N-ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジエチル(メタ)アクリルアミド、N-ヘキシル(メタ)アクリルアミド、N-メチル(メタ)アクリルアミド、N-エチル(メタ)アクリルアミド、N-ブチル(メタ)アクリルアミド、N-メチロール(メタ)アクリルアミド、N-メチロールプロパン(メタ)アクリルアミド等のN-置換アミド系モノマー;(メタ)アクリル酸アミノエチル、(メタ)アクリル酸アミノプロピル、(メタ)アクリル酸N,N-ジメチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸tert-ブチルアミノエチル等の(メタ)アクリル酸アミノアルキル系モノマー;N-(メタ)アクリロイルオキシメチレンスクシンイミド、N-(メタ)アクリロイル-6-オキシヘキサメチレンスクシンイミド、N-(メタ)アクリロイル-8-オキシオクタメチレンスクシンイミド等のスクシンイミド系モノマーが挙げられる。
【0040】
多官能モノマーとしては、例えば、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ビスフェノール化合物のアルキレンオキシド付加物のジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9-ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、1,12-ドデカンジオールジ(メタ)アクリレート、1,14-テトラデカンジオールジ(メタ)アクリレート、1,16-ヘキサデカンジオールジ(メタ)アクリレート、1,20-エイコサンジオールジ(メタ)アクリレート、イソペンチルジオールジ(メタ)アクリレート、3-エチル-1,8-オクタンジオールジ(メタ)アクリレート、ビスフェノール化合物のEO付加物ジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールオクタントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンポリエトキシトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンポリプロポキシトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンポリエトキシポリプロポキシトリ(メタ)アクリレート、トリス[(メタ)アクリロイルオキシエチル]イソシアヌレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールポリエトキシテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールポリプロポキシテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、及びカプロラクトン変性トリス[(メタ)アクリロイルオキシエチル]イソシアヌレートが挙げられる。
【0041】
ビスフェノール化合物としては、例えば、ビスフェノールA、ビスフェノールAP、ビスフェノールB、ビスフェノールBP、ビスフェノールC、及びビスフェノールEが挙げられる。多官能モノマーとして、ビスフェノール骨格を有する多官能モノマーを用いることができ、中でも、ビスフェノールA骨格を有する多官能モノマーを用いることが好ましい。ビスフェノールA骨格を有する多官能モノマーの量を調整することで、P-Sn錯体の表面析出量を調整し易くなる。ビスフェノール骨格Aを有する多官能モノマーとして、ビスフェノールA骨格を有するエポキシアクリレートを用いてよい。
【0042】
リボン樹脂との密着性をより高める観点から、着色セカンダリ樹脂層におけるビスフェノール骨格を有する多官能モノマーの含有量は、着色セカンダリ樹脂層を形成するための樹脂組成物の総量を基準として、25質量%以上80質量%以下、30質量%以上75質量%以下、又は40質量%以上70質量%以下であってもよい。
【0043】
樹脂組成物は、シランカップリング剤、無機酸化物粒子、滑剤、光酸発生剤、レベリング剤、消泡剤、酸化防止剤、増感剤等を更に含んでもよい。
【0044】
シランカップリング剤としては、樹脂組成物の硬化の妨げにならなければ、特に限定されない。シランカップリング剤として、例えば、テトラメチルシリケート、テトラエチルシリケート、メルカプトプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリクロロシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス(β-メトキシ-エトキシ)シラン、β-(3,4-エポキシシクロヘキシル)-エチルトリメトキシシラン、ジメトキシジメチルシラン、ジエトキシジメチルシラン、3-アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、N-(β-アミノエチル)-γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-(β-アミノエチル)-γ-アミノプロピルトリメチルジメトキシシラン、N-フェニル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-クロロプロピルトリメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、ビス-[3-(トリエトキシシリル)プロピル]テトラスルフィド、ビス-[3-(トリエトキシシリル)プロピル]ジスルフィド、γ-トリメトキシシリルプロピルジメチルチオカルバミルテトラスルフィド、及びγ-トリメトキシシリルプロピルベンゾチアジルテトラスルフィドが挙げられる。
【0045】
無機酸化物粒子としては特に制限されない。樹脂組成物中での分散性に優れ、ヤング率を調製し易いという観点から、無機酸化物粒子は、二酸化ケイ素(シリカ)、二酸化ジルコニウム(ジルコニア)、酸化アルミニウム(アルミナ)、酸化マグネシウム(マグネシア)、酸化チタン(チタニア)、酸化スズ、及び酸化亜鉛からなる群より選ばれる少なくとも1種を含む粒子であることが好ましい。廉価である、表面処理がし易い、紫外線透過性を有する、硬化物に適度な硬さを付与し易い等の観点から、無機酸化物粒子として、シリカ粒子を用いることがより好ましい。
【0046】
無機酸化物粒子は疎水性であることが好ましい。具体的には、無機酸化物粒子の表面は、シラン化合物で疎水処理されていることが好ましい。ここで疎水処理とは、無機酸化物粒子の表面に疎水性の基を導入することをいう。疎水性の基が導入された無機酸化物粒子は、樹脂組成物中での分散性に優れる。疎水性の基としては、(メタ)アクリロイル基、ビニル基等の紫外線硬化性の反応性基、又は、炭化水素基(例えば、アルキル基)、アリール基(例えば、フェニル基)等の非反応性基であってもよい。無機酸化物粒子が反応性基を有する場合、ヤング率が高い樹脂層を形成し易くなる。
【0047】
反応性基を有するシラン化合物としては、例えば、3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3-アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、8-メタクリロキシオクチルトリメトキシシラン、8-アクリロキシオクチルトリメトキシシラン、7-オクテニルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、及びビニルトリエトキシシラン等のシラン化合物が挙げられる。
【0048】
アルキル基を有するシラン化合物としては、例えば、メチルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、プロピルトリメトキシシラン、ブチルトリメトキシシラン、ペンチルトリメトキシシラン、ヘキシルトリメトキシシラン、オクチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、プロピルトリエトキシシラン、ブチルトリエトキシシラン、ペンチルトリエトキシシラン、ヘキシルトリエトキシシラン、及びオクチルトリエトキシシランが挙げられる。
【0049】
無機酸化物粒子は、樹脂組成物への添加時に、分散媒に分散されていてよい。分散媒に分散された無機酸化物粒子を用いることで、樹脂組成物中に無機酸化物粒子を均一に分散でき、樹脂組成物の保存安定性を向上することができる。分散媒としては、樹脂組成物の硬化を阻害しなければ、特に限定されない。分散媒は、反応性であっても、非反応性であってもよい。
【0050】
反応性の分散媒として、(メタ)アクリロイル化合物、エポキシ化合物等のモノマーを用いてもよい。(メタ)アクリロイル化合物としては、例えば、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、EO変性ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、PO変性ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリテトラメチレングリコールジ(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシ-3-フェノキシプロピルアクリレート、プロピレングリコールジグリシジルエーテルの(メタ)アクリル酸付加物、トリプロピレングリコールジグリシジルエーテルの(メタ)アクリル酸付加物、及びグリセリンジグリシジルエーテルの(メタ)アクリル酸付加物が挙げられる。分散媒として、上述するモノマーで例示する(メタ)アクリロイル化合物を用いてもよい。
【0051】
非反応性の分散媒として、メチルエチルケトン(MEK)、メチルイソブチルケトン(MIBK)等のケトン系溶媒、メタノール(MeOH)、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)等のアルコール系溶媒、又は、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)等のエステル系溶媒を用いてもよい。非反応性の分散媒の場合、ベース樹脂と分散媒に分散された無機酸化物粒子とを混合した後、分散媒の一部を除去して樹脂組成物を調製してもよい。
【0052】
樹脂組成物中での分散性に優れる観点から、無機酸化物粒子の平均一次粒径は、650nm以下であってもよく、600nm以下が好ましく、500nm以下がより好ましく、400nm以下が更に好ましい。硬化後の強度に優れる観点から、無機酸化物粒子の平均一次粒径は、5nm以上が好ましく、10nm以上がより好ましい。平均一次粒径は、例えば、電子顕微鏡写真の画像解析、光散乱法、BET法等によって測定することができる。無機酸化物粒子の一次粒子が分散された分散媒は、一次粒子の粒径が小さい場合は目視で透明に見える。一次粒子の粒径が比較的大きい(40nm以上)場合は、一次粒子が分散された分散媒は白濁して見えるが沈降物は観察されない。
【0053】
無機酸化物粒子の含有量は、樹脂組成物の総量を基準として1質量%以上45質量%以下、2質量%以上40質量%以下、又は3質量%以上35質量%以下であってもよい。無機酸化物粒子の含有量が1質量%以上であると、強靱な硬化物を形成し易くなる。無機酸化物粒子の含有量が45質量%以下であると、無機酸化物粒子が好適に分散された硬化物を形成し易くなる。樹脂組成物の総量と樹脂組成物の硬化物の総量は実質的に同一とすることができる。
【0054】
滑剤としては、例えば、シリコーンオイル等のシリコーン系滑剤が挙げられる。シリコーンオイルは、高分子量シリコーンオイル、又はジメチルシロキサン骨格の一部を有機基に変性した変性シリコーンオイルであってもよい。変性シリコーンオイルとしては、例えば、ポリエーテル変性、アミン変性、エポキシ変性、メルカプト変性、(メタ)アクリル変性、又はカルボキシル変性されたシリコーンオイルが挙げられる。着色セカンダリ樹脂層は、顔料を含まないセカンダリ樹脂層に比べ硬化性が低下し、テープ樹脂層との密着力が上昇し易くなるが、シリコーン系滑剤を含有する樹脂組成物を用いることで、着色セカンダリ樹脂層とリボン樹脂との密着性を調整し易くなる。
【0055】
着色セカンダリ樹脂層におけるシリコーン系滑剤の含有量は、セカンダリ樹脂層用の樹脂組成物の総量を基準として、2質量%以下であることが好ましく、0.1質量%以上1質量%以下であることがより好ましい。シリコーン系滑剤は分子量が小さすぎると析出し易くなり、連結樹脂層又はプライマリ樹脂層との密着性が低下する。シリコーン系滑剤の分子量が大きすぎると樹脂成分と相溶性が低下する。シリコーンオイルの平均分子量は、10000以上100000以下であることが望ましい。
【0056】
光酸発生剤としては、A+B-の構造をしたオニウム塩を用いてもよい。光酸発生剤としては、例えば、UVACURE1590(ダイセル・サイテック製)、CPI-100P、110P、210S(サンアプロ製)等のスルホニウム塩、Omnicat 250(IGM Resins社製)、WPI-113(富士フイルム和光純薬製)、Rp-2074(ローディア・ジャパン製)等のヨードニウム塩が挙げられる。
【0057】
着色セカンダリ樹脂層のヤング率は、23℃で1200MPa以上であることが好ましく、1300MPa以上であることがより好ましく、1400MPa以上であることが更に好ましい。着色セカンダリ樹脂層のヤング率は、23℃で3000MPa以下、2500MPa以下、2000MPa以下、又は1800MPa以下であってもよい。着色セカンダリ樹脂層のヤング率が1200MPa以上であると、耐側圧特性を向上し易く、3000MPa以下であると、適度な破断伸びを有するため、被覆除去時に破壊され難く、被覆除去性に優れる。
【0058】
プライマリ樹脂層14は、光重合性化合物、光重合開始剤、及びシランカップリング剤を含む紫外線硬化性の樹脂組成物を硬化させて形成することができる。重合性化合物、光重合開始剤、及びシランカップリング剤としては、着色セカンダリ樹脂層を形成する樹脂組成物で例示したものから適宜、選択することができる。ただし、プライマリ樹脂層を形成する樹脂組成物は、着色セカンダリ樹脂層を形成する樹脂組成物とは異なる組成を有している。
【0059】
光ファイバにボイドが発生することを抑制する観点から、プライマリ樹脂層のヤング率は、23℃で0.04MPa以上0.8MPa以下であることが好ましく、0.05MPa以上0.7MPa以下であることがより好ましく、0.05MPa以上0.6MPa以下であることが更に好ましい。
【0060】
本開示に適用される光ファイバの特性としては、例えば、波長1310nmにおけるモードフィールド径が8.2μm以上9.6μm以下、ケーブルカットオフ波長1260nm以下で、半径30mmのマンドレルに100回巻き付けた時(巻き数100回あたり)の波長1625nmにおける損失増が0.1dB以下であってもよく、半径15mmのマンドレルに10回巻き付けた時(巻き数10回あたり)の波長1625nmにおける損失増が1.0dB以下であってもよい。
【0061】
図2は一実施形態に係る光ファイバリボンを示す概略断面図である。光ファイバリボン100は、複数の光ファイバ10と、光ファイバ10がリボン用樹脂により(一体的に)被覆されて連結された連結樹脂層40とを有している。
図2では、一例として4本の光ファイバ10が示されているが、その本数は特に限定されるものではない。
【0062】
光ファイバ10は接して並列された状態で一体化されていてもよく、一部又は全部の光ファイバ10が一定間隔をあけて並列された状態で一体化されていてもよい。ただし、一部又は全部の光ファイバ10が一定間隔をあけて並列された状態で一体化される場合は、隣り合う光ファイバ10同士の中心間距離Fの平均は、220μm以上280μm以下であってもよい。中心間距離を220μm以上280μm以下とした場合は、既存のV溝に光ファイバを載せ易く、一括融着性に優れる光ファイバリボンを得ることができる。光ファイバリボン100の厚さTは、光ファイバ10の外径にもよるが、164μm以上285μm以下であってもよい。
【0063】
リボン用の樹脂組成物は、ウレタン(メタ)アクリレート、モノマー及び光重合開始剤を含むことができる。ウレタン(メタ)アクリレート、モノマー及び光重合開始剤としては、着色セカンダリ樹脂層を形成する樹脂組成物で例示したものから適宜、選択することができる。リボン用樹脂(連結樹脂)はウレタン(メタ)アクリレートの硬化物を含むことで、連結樹脂層の伸縮性を向上することができる。
【0064】
リボン用樹脂は、シリコーン系滑剤を更に含んでもよい。リボン用樹脂がシリコーン系滑剤を含むことで、光ファイバリボン同士の貼り付きを抑制することができ、ケーブル化した際に損失増加を低減し易くなる。
【0065】
リボン用樹脂のヤング率は、光ファイバリボンの耐側圧特性と柔軟性を兼備する観点から、23℃で50MPa以上900MPa以下であってもよく、100MPa以上800MPa以下であってもよい。
【0066】
図3は、光ファイバが一定間隔をあけて並列された状態で一体化された光ファイバリボンの一例を示す概略断面図である。
図3に示す光ファイバリボン100Aは、2本の光ファイバ10がリボン用樹脂により一定の間隔をあけて6組連結されている。リボン用樹脂は、連結樹脂層40を形成している。
【0067】
光ファイバ10が一定間隔をあけて並列されている場合、すなわち隣り合う光ファイバ10が接することなくリボン用樹脂を介して接合されている場合、光ファイバ10同士の中央における連結部の厚さは、150μm以上220μm以下であってもよい。光ファイバリボンをケーブルに収納する際に変形し易いことから、光ファイバリボンは、光ファイバの連結部に凹みを有していてもよい。凹みは、連結部の一方側の面に角度が狭くなる三角形状に形成されていてもよい。
【0068】
本実施形態に係る光ファイバリボンは、長手方向及び幅方向に間欠的に連結部と非連結部とを有してもよい。
図4は、一実施形態に係る光ファイバリボンの外観を示す平面図である。光ファイバリボン100Bは、複数本の光ファイバと、複数の連結部20と、非連結部(分断部)21とを有している。非連結部21は、光ファイバリボンの長手方向に間欠的に形成されている。光ファイバリボン100Bは、2本の光ファイバ10A毎に、連結部20と非連結部21とが長手方向に間欠的に設けられた間欠連結型の光ファイバリボンである。「連結部」とは、隣り合う光ファイバが連結樹脂層を介して一体化している部分をいい、「非連結部」とは、隣り合う光ファイバが連結樹脂層を介して一体化しておらず、光ファイバ間にギャップがある部分をいう。
【0069】
上記構成を有する光ファイバリボンには、2心毎に設けられた連結部20に非連結部21が間欠的に設けられているので、光ファイバリボンを変形し易い。よって、光ファイバリボンを光ファイバケーブルに実装する際に、容易に丸めて実装できるので、高密度実装に適した光ファイバリボンとすることができる。また、非連結部21を起点として連結部20を容易に裂くことができるので、光ファイバリボンにおける光ファイバ10の単心分離が容易になる。
【0070】
間欠連結型の光ファイバリボンは、例えば、特許第5779940号、第5880270号、第5737220号等に記載のスイング刃による製造装置を用いて、製造することができる。
【0071】
<光ファイバケーブル>
本実施形態に係る光ファイバケーブルは、上記の光ファイバリボンがケーブル内に実装されている。光ファイバケーブルとしては、例えば、複数のスロット溝を有するスロット型の光ファイバケーブルが挙げられる。スロット溝内には、上記光ファイバリボンを、各スロット溝における実装密度が25%から65%程度となるように実装することができる。実装密度とは、スロット溝の断面積に対するスロット溝内に実装される光ファイバリボンの断面積の割合を意味する。
【実施例】
【0072】
以下、本開示に係る実施例及び比較例を用いた評価試験の結果を示し、本開示を更に詳細に説明する。なお、本発明はこれら実施例に限定されない。
【0073】
[セカンダリ樹脂層用の樹脂組成物]
(光重合性化合物)
光重合性化合物として、分子量800のポリプロピレングリコール、イソホロンジイソシアネート及び2-ヒドロキシエチルアクリレートの反応物であるウレタンアクリレートと、ビスフェノールA骨格を有するエポキシアクリレートと、イソボルニルアクリレートと、N-ビニルカプロラクタムと、トリプロピレングリコールジアクリレートとを準備した。
【0074】
(光重合開始剤)
光重合開始剤として、2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド(TPO)と、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(Omnirad 184)を準備した。
【0075】
(シリコーン系滑剤)
シリコーン系滑剤として、変性シリコーンオイル(ポリエーテル変性、平均分子量15000)を準備した。
【0076】
(顔料)
顔料として、酸化チタン及び銅フタロシアニンを準備した。
【0077】
(調製例1)
ウレタンアクリレートを40質量部、エポキシアクリレートを25質量部、イソボルニルアクリレートを6.2質量部、N-ビニルカプロラクタムを5質量部、トリプロピレングリコールジアクリレートを15質量部、TPOを0.8質量部、Omnirad184を1.0質量部、シリコーンオイルを1.0質量部、酸化チタンを3.0質量部、及び銅フタロシアニンを3.0質量部混合して、着色セカンダリ樹脂層用の樹脂組成物S1を調製した。
【0078】
(調製例2)
イソボルニルアクリレートの量を5.5質量部に変更し、TPOの量を1.5質量部に変更した以外は調製例1と同様にして、樹脂組成物S2を調製した。
【0079】
(調製例3)
イソボルニルアクリレートの量を5.0質量部に変更し、TPOの量を2.0質量部に変更した以外は調製例1と同様にして、樹脂組成物S3を調製した。
【0080】
(調製例4)
ウレタンアクリレートの量を25質量部に変更し、エポキシアクリレートの量を40質量部に変更し、イソボルニルアクリレートの量を5.0質量部に変更し、TPOの量を2.0質量部に変更した以外は調製例1と同様にして、樹脂組成物S4を調製した。
【0081】
(調製例5)
ウレタンアクリレートの量を15質量部に変更し、エポキシアクリレートの量を50質量部に変更し、イソボルニルアクリレートの量を5.0質量部に変更し、TPOの量を2.0質量部に変更した以外は調製例1と同様にして、樹脂組成物S5を調製した。
【0082】
(調製例6)
ウレタンアクリレートの量を7.5質量部に変更し、エポキシアクリレートの量を60質量部に変更し、イソボルニルアクリレートの量を2.5質量部に変更し、TPOの量を2.0質量部に変更した以外は調製例1と同様にして、樹脂組成物S6を調製した。
【0083】
(調製例7)
ウレタンアクリレートの量を7.5質量部に変更し、エポキシアクリレートの量を60質量部に変更し、イソボルニルアクリレートの量を2.0質量部に変更し、TPOの量を2.5質量部に変更した以外は調製例1と同様にして、樹脂組成物S7を調製した。
【0084】
(調製例8)
ウレタンアクリレートの量を7.5質量部に変更し、エポキシアクリレートの量を60質量部に変更し、イソボルニルアクリレートの量を1.5質量部に変更し、TPOの量を3.0質量部に変更した以外は調製例1と同様にして、樹脂組成物S8を調製した。
【0085】
(調製例9)
イソボルニルアクリレートの量を6.8質量部に変更し、TPOの量を0.25質量部に変更した以外は調製例1と同様にして、樹脂組成物S9を調製した。
【0086】
(調製例10)
ウレタンアクリレートの量を7.0質量部に変更し、エポキシアクリレートの量を60質量部に変更し、イソボルニルアクリレートの量を1.0質量部に変更し、TPOの量を4.0質量部に変更した以外は調製例1と同様にして、樹脂組成物S10を調製した。
【0087】
[プライマリ樹脂層用の樹脂組成物]
分子量2000のポリプロピレングリコール、2,4-トリレンジイソシアネート、2-ヒドロキシエチルアクリレート及びメタノールの反応物であるウレタンアクリレートを75質量部、ノニルフェノールEO変性アクリレートを12質量部、N-ビニルカプロラクタムを6質量部、1,6-ヘキサンジオールジアクリレートを2質量部、TPOを1質量部、及びγ-メルカプトプロピルトリメトキシシランを1質量部混合して、プライマリ樹脂層用の樹脂組成物を調製した。
【0088】
[リボン用の樹脂組成物]
分子量1000のポリプロピレングリコール、2,4-トリレンジイソシアネート及び2-ヒドロキシエチルアクリレートの反応物であるウレタンアクリレートを70質量部、2-フェノキシエチルアクリレートを10質量部、トリプロピレングリコールジアクリレートを13質量部、N-ビニルカプロラクタムを5質量部、TPOを1質量部、及びOmnirad 184を1質量部混合して、リボン用の樹脂組成物を調製した。
【0089】
[光ファイバの作製]
コア及びクラッドから構成される直径125μmのガラスファイバの外周に、プライマリ樹脂層用の樹脂組成物と、セカンダリ樹脂層用の樹脂組成物とを塗布し、その後、紫外線を照射させることで樹脂組成物を硬化させ、厚さ20μmのプライマリ樹脂層とその外周に17.5μmの着色セカンダリ樹脂層を形成して、外径200μmの光ファイバを作製した。線速は1500m/分とした。
【0090】
[光ファイバリボンの作製]
12本の着色光ファイバの周囲に、リボン用の樹脂組成物を被覆した後、紫外線を照射して硬化して連結樹脂層を形成し、
図5に示す光ファイバリボンを作製した。
図5は、作製された光ファイバリボン100Cを示す模式断面図である。光ファイバ10は、リボン用樹脂により一定の間隔で連結されている。光ファイバ同士の連結部の厚さは180μmから220μm、隣り合う光ファイバの中心間距離は255μm、光ファイバリボンの厚さは230μm±15μm、光ファイバリボンの幅は3.05mm±0.05mmであった。
【0091】
[評価]
光ファイバ及び光ファイバリボンについて、以下の評価を行った。実施例で作製した光ファイバ及び光ファイバリボンの評価結果を表1に、比較例で作製した光ファイバ及び光ファイバリボンの評価結果を表2に示す。
【0092】
(ヤング率)
プライマリ樹脂層のヤング率は、23℃でのPullout Modulus(POM)法により測定した。光ファイバの2箇所を2つのチャック装置で固定し、2つのチャック装置の間の被覆樹脂層(プライマリ樹脂層及びセカンダリ樹脂層)部分を除去し、次いで、一方のチャック装置を固定し、他方のチャック装置を固定したチャック装置の反対方向に緩やかに移動させた。光ファイバにおける移動させるチャック装置に挟まれている部分の長さをL、チャックの移動量をZ、プライマリ樹脂層の外径をDp、ガラスファイバの外径をDf、プライマリ樹脂層のポアソン比をn、チャック装置の移動時の荷重をWとした場合、下記式からプライマリ樹脂層のヤング率を求めた。プライマリ樹脂層のヤング率は、0.6MPaであった。
ヤング率(MPa)=((1+n)W/πLZ)×ln(Dp/Df)
【0093】
着色セカンダリ樹脂層のヤング率は、光ファイバを溶剤(エタノール:アセトン=3:7)に浸してガラスファイバを抜き取って得られるパイプ状の被覆樹脂層(長さ:50mm以上)を用いて23℃での引張試験(標線間距離:25mm)を行い、2.5%割線値から求めた。
【0094】
(P-Sn錯体の量)
着色セカンダリ樹脂層の表面を、TOF-SIMSで分析した。使用装置をTRIFT V nanoTOF、イオン種Au+、加速電圧30kVとした。光ファイバの側方からイオンビームを照射して測定した。+337(m/z)のピークの値(リン-スズ錯体の量を表す)と+59(m/z)のピークの値(炭化水素の量を表す)の比(+337のピークの値/+59のピークの値)をppmで表しP-Sn錯体の量とした。
【0095】
(単心分離)
1mの光ファイバリボンを85℃、85%の環境で60日間保管した。光ファイバリボンの末端数cmを単心に口出しし、光ファイバリボンの長手方向に分離した。光ファイバリボンの端心にリボン用樹脂が残り易いが、リボン用樹脂が切断することなく1mを剥がせた場合を「A」、リボン用樹脂の切断回数が5回以内で1mを剥がせた場合を「B」、リボン用樹脂の切断回数が6回以上の場合、リボン用樹脂が剥がせない場合又は剥がせたとしても着色層に剥がれが生じた場合を「C」と評価した。
【0096】
(耐剥離性)
光ファイバリボンを幅方向に10回圧縮した後、心こぼれしなかった場合を「OK」と、心こぼれした場合を「NG」と評価した。
【0097】
(ケーブル損失特性)
光ファイバケーブルを23℃の環境下に静置し、信号光の波長が1.55μmの時の伝送損失の値を測定した。測定値を以下の基準に従い評価した。
A:伝送損失が0.25dB/km以下。
B:伝送損失が0.25dB/km超0.3dB/km以下。
C:伝送損失が0.3dB/km超。
【0098】
【0099】
【符号の説明】
【0100】
10,10A 光ファイバ
11 コア
12 クラッド
13 ガラスファイバ
14 プライマリ樹脂層
15 着色セカンダリ樹脂層
16 被覆樹脂層
20 連結部
21 非連結部
40 連結樹脂層
100,100A,100B,100C 光ファイバリボン