(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-03-18
(45)【発行日】2025-03-27
(54)【発明の名称】光ファイバケーブルおよびコネクタ付きケーブル
(51)【国際特許分類】
G02B 6/44 20060101AFI20250319BHJP
【FI】
G02B6/44 366
G02B6/44 371
G02B6/44 376
G02B6/44 381
G02B6/44 386
(21)【出願番号】P 2022559118
(86)(22)【出願日】2021-10-25
(86)【国際出願番号】 JP2021039283
(87)【国際公開番号】W WO2022092019
(87)【国際公開日】2022-05-05
【審査請求日】2024-04-22
(31)【優先権主張番号】P 2020178870
(32)【優先日】2020-10-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001416
【氏名又は名称】弁理士法人信栄事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 文昭
(72)【発明者】
【氏名】下田 雄紀
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 洋平
(72)【発明者】
【氏名】石川 弘樹
【審査官】奥村 政人
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-177138(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2020/0142144(US,A1)
【文献】国際公開第2020/095958(WO,A1)
【文献】国際公開第2019/088256(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2012/0301092(US,A1)
【文献】中国実用新案第204405908(CN,U)
【文献】特開2002-303769(JP,A)
【文献】特開2015-102576(JP,A)
【文献】特開2020-076915(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 6/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の光ファイバリボンと、
前記複数の光ファイバリボンの周囲を被覆する外被と、
を備えており、
前記光ファイバリボンは複数の光ファイバ心線を有しており、前記複数の光ファイバ心線が長手方向に直交する方向に並列に配列された状態で、一部または全ての前記光ファイバ心線間において、隣接する光ファイバ心線間が連結された状態の連結部と、隣接する光ファイバ心線間が連結されていない状態の非連結部とが、前記光ファイバ心線の長手方向に間欠的に設けられており、
前記光ファイバ心線は、ガラスファイバと前記ガラスファイバの周囲を覆う被覆部とを有しており、
前記外被の外径に対する内径の割合は0.75以上であり、
光ファイバケーブルの長手方向に直交する断面における前記外被より内側の光ファイバリボン収容部の面積に対する前記光ファイバリボン収容部に収容された前記断面におけるガラスの面積の割合は15%以上25%以下であり、
前記光ファイバケーブル内に実装された前記光ファイバ心線の数は3000心以上であり、前記外被の外径は50mm以下であ
り、
前記断面における前記外被より内側の前記光ファイバリボン収容部の面積に対する前記光ファイバリボン収容部に収容された前記断面における前記光ファイバリボンの面積の割合は50%以上65%以下である、光ファイバケーブル。
【請求項2】
前記複数の光ファイバリボンの一部の光ファイバリボンの周囲を覆う第一押さえ部材と、
前記第一押さえ部材の外側に配置された前記複数の光ファイバリボンの残りの光ファイバリボンの周囲を覆う第二押さえ部材と、を備えている、請求項
1に記載の光ファイバケーブル。
【請求項3】
前記第一押さえ部材と当該第一押さえ部材の外側に配置された前記光ファイバリボンとの間の動摩擦係数は0.3以下であり、前記第二押さえ部材と当該第二押さえ部材の内側に配置された前記光ファイバリボンとの間の動摩擦係数は0.3以下である、請求項
2に記載の光ファイバケーブル。
【請求項4】
前記複数の光ファイバリボンの少なくとも一部が束ねられた集合体を複数備えている、請求項1から請求項
3のいずれか一項に記載の光ファイバケーブル。
【請求項5】
0.01mm以上0.2mm以下の厚さを有する複数のチューブを備えており、
前記チューブは、前記集合体の周囲を覆うように形成されている、請求項
4に記載の光ファイバケーブル。
【請求項6】
少なくとも一つのテンションメンバを備えており、
前記複数の光ファイバリボンは、前記テンションメンバを中心として前記テンションメンバの周囲に多層構造で巻き付けられている、請求項1から請求項
5のいずれか一項に記載の光ファイバケーブル。
【請求項7】
請求項1から請求項
6のいずれか一項に記載の光ファイバケーブルと、
前記光ファイバケーブルの少なくとも一つの前記光ファイバリボンの一端に設けられた多心コネクタと、を備えている、コネクタ付きケーブル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、光ファイバケーブルおよびコネクタ付きケーブルに関する。
【0002】
本出願は、2020年10月26日出願の日本出願第2020-178870号に基づく優先権を主張し、前記日本出願に記載された全ての記載内容を援用するものである。
【背景技術】
【0003】
特許文献1は、複数の光ファイバ心線が間欠的に連結された光ファイバリボンと、当該光ファイバリボンを収容するパイプと、を有する光ファイバケーブルを開示している。
【0004】
特許文献2は、複数の光ファイバ心線が間欠的に連結された光ファイバリボンからなるリボンユニットを複数本撚り合わせることにより形成された光ファイバケーブルコアと、当該光ファイバケーブルコアの外周を覆う外被と、を有する光ファイバケーブルを開示している。
【0005】
特許文献3は、複数の光ファイバ心線が間欠的に連結された光ファイバリボンを複数本有するユニットを複数本撚り合わせることにより形成されたケーブルコア部と、当該ケーブルコア部の外周を覆う外被と、を有する光ファイバケーブルを開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】日本国特表2015-517679号公報
【文献】日本国特開2014-016529号公報
【文献】日本国特開2010-008923号公報
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の光ファイバケーブルは、
複数の光ファイバリボンと、
前記複数の光ファイバリボンの周囲を被覆する外被と、
を備えており、
前記光ファイバリボンは複数の光ファイバ心線を有しており、前記複数の光ファイバ心線が長手方向に直交する方向に並列に配列された状態で、一部または全ての前記光ファイバ心線間において、隣接する光ファイバ心線間が連結された状態の連結部と、隣接する光ファイバ心線間が連結されていない状態の非連結部とが、前記光ファイバ心線の長手方向に間欠的に設けられており、
前記光ファイバ心線は、ガラスファイバと前記ガラスファイバの周囲を覆う被覆部とを有しており、
前記外被の外径に対する内径の割合は0.75以上であり、
前記光ファイバケーブルの長手方向に直交する断面における前記外被より内側の光ファイバリボン収容部の面積に対する前記光ファイバリボン収容部に収容された前記断面におけるガラスの面積の割合は15%以上25%以下であり、
前記光ファイバケーブル内に実装された前記光ファイバ心線の数は3000心以上であり、前記外被の外径は50mm以下であり、
前記断面における前記外被より内側の前記光ファイバリボン収容部の面積に対する前記光ファイバリボン収容部に収容された前記断面における前記光ファイバリボンの面積の割合は50%以上65%以下である。
【0008】
また、本開示のコネクタ付きケーブルは、
前記光ファイバケーブルと、
前記光ファイバケーブルの少なくとも一つの前記光ファイバリボンの一端に設けられた多心コネクタと、を備えている。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1A】
図1Aは、第一実施形態に係る光ファイバケーブルの長手方向に直交する断面図である。
【
図2】
図2は、光ファイバリボンの長手方向に直交する断面図である。
【
図3】
図3は、
図2に示した光ファイバリボンを長手方向に示す部分展開図である。
【
図4】
図4は、光ファイバユニットの変形例を示す断面図である。
【
図5A】
図5Aは、第二実施形態に係る光ファイバケーブルの長手方向に直交する断面図である。
【
図6】
図6は、
図1Bおよび
図4に示した光ファイバユニットを成端加工したときの状態を模式的に示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
[本開示が解決しようとする課題]
本開示は、光ファイバ心線を高密度に実装可能であり、耐側圧性を有する光ファイバケーブルおよびコネクタ付きケーブルを提供する。
[本開示の効果]
本開示によれば、光ファイバ心線を高密度に実装可能であり、耐側圧性を有する光ファイバケーブルおよびコネクタ付きケーブルを提供することができる。
[本開示の実施の形態の説明]
まず本開示の実施態様を列記して説明する。
(1)本開示の光ファイバケーブルは、
複数の光ファイバリボンと、
前記複数の光ファイバリボンの周囲を被覆する外被と、
を備えており、
前記光ファイバリボンは複数の光ファイバ心線を有しており、前記複数の光ファイバ心線が長手方向に直交する方向に並列に配列された状態で、一部または全ての前記光ファイバ心線間において、隣接する光ファイバ心線間が連結された状態の連結部と、隣接する光ファイバ心線間が連結されていない状態の非連結部とが、前記光ファイバ心線の長手方向に間欠的に設けられており、
前記光ファイバ心線は、ガラスファイバと前記ガラスファイバの周囲を覆う被覆部とを有しており、
前記外被の外径に対する内径の割合は0.75以上であり、
前記光ファイバケーブルの長手方向に直交する断面における前記外被より内側の光ファイバリボン収容部の面積に対する前記光ファイバリボン収容部に収容された前記断面におけるガラスの面積の割合は15%以上25%以下であり、
前記光ファイバケーブル内に実装された前記光ファイバ心線の数は3000心以上であり、前記外被の外径は50mm以下である。
【0011】
このような構成によれば、外被の外径に対する内径の割合が0.75以上であるので、外被の内側により多くの光ファイバ心線を配置させることができる。また、光ファイバケーブルの長手方向に直交する断面における外被より内側の光ファイバリボン収容部の面積に対する光ファイバリボン収容部に収容された断面におけるガラスの面積の割合が15%以上25%以下であるので、光ファイバケーブルに加わる張力に耐えることができる。なお、「光ファイバリボン収容部」とは、光ファイバケーブルの外被の内側であって、押さえ巻きテープを除く空間を指し、「光ファイバリボン収容部に収容されたガラス」とは、例えば、光ファイバ心線を構成するガラスファイバや、光ファイバケーブル内にテンションメンバとして配置されるガラスの繊維強化プラスチック(GFRP:Glass Fiber Reinforced Practices)を含みうる。なお、光ファイバリボン収容部に配置されるテンションメンバが、ガラスではなく、金属の場合は、対象外とする。
また、光ファイバ心線の数は3000心以上であるので、外被の厚さは薄いものの、光ファイバケーブルに側圧が加わった場合でも、光ファイバケーブル内に高密度で実装された光ファイバ心線により、光ファイバケーブルが潰れたり、キンクができたりするのを抑制することができる。また、光ファイバ心線のガラスファイバ自体がテンションメンバとして機能するので、光ファイバケーブル内に配置されるテンションメンバのサイズを小さくしても、光ファイバケーブルに加わる張力に耐えることができ、さらに、より多くの光ファイバ心線を配置させることができる。したがって、光ファイバ心線を高密度に実装可能であり、耐側圧性を有する光ファイバケーブルを提供することができる。
【0012】
(2)前記断面における前記外被より内側の前記光ファイバリボン収容部の面積に対する前記光ファイバリボン収容部に収容された前記断面における前記光ファイバリボンの面積の割合は50%以上65%以下でもよい。
【0013】
このような構成によれば、光ファイバケーブルに側圧が加わった場合でも、光ファイバリボンを構成する光ファイバ心線が高密度に収容されていることにより、光ファイバケーブルが潰れるのを防ぐことができる。
【0014】
(3)前記複数の光ファイバリボンの一部の光ファイバリボンの周囲を覆う第一押さえ部材と、
前記第一押さえ部材の外側に配置された前記複数の光ファイバリボンの残りの光ファイバリボンの周囲を覆う第二押さえ部材と、を備えてもよい。
【0015】
このような構成によれば、第一押さえ部材の内側に存在する光ファイバリボンと、第一押さえ部材の外側に配置された光ファイバリボンとを容易に判別することができる。
【0016】
(4)前記第一押さえ部材と当該第一押さえ部材の外側に配置された前記光ファイバリボンとの間の動摩擦係数は0.3以下であり、前記第二押さえ部材と当該第二押さえ部材の内側に配置された前記光ファイバリボンとの間の動摩擦係数は0.3以下でもよい。
【0017】
光ファイバケーブル内に実装された光ファイバリボンは、低温度の環境下において、温度収縮により長手方向に移動しやすい。このような構成によれば、温度収縮が起きても、光ファイバリボンが動きやすいため、低温の環境下における伝送損失の増加を抑制することができる。
【0018】
(5)前記複数の光ファイバリボンの少なくとも一部が束ねられた集合体を複数備えてもよい。
【0019】
このような構成によれば、光ファイバケーブル内における光ファイバリボンの判別や取り扱いが容易となる。
【0020】
(6)0.01mm以上0.2mm以下の厚さを有する複数のチューブを備えており、
前記チューブは、前記集合体の周囲を覆うように形成されてもよい。
【0021】
このような構成によれば、例えば各チューブの色を異ならせることにより光ファイバケーブル内における光ファイバユニットの判別が容易となる。また、光ファイバケーブルの光ファイバリボンを光接続箱やクロージャ等に収納する際、外被を除去した後に露出された光ファイバリボンを保護するために保護チューブを被せる必要がないので、作業性が向上する。また、チューブの厚さは薄いので、チューブを配置したことにより光ファイバリボンの実装可能な空間が減少することを抑制することができる。
【0022】
(7)少なくとも一つのテンションメンバを備えており、
前記複数の光ファイバリボンは、前記テンションメンバを中心として前記テンションメンバの周囲に多層構造で巻き付けられてもよい。
【0023】
このような構成によれば、テンションメンバは複数の光ファイバリボンの略中心に配置されているので、光ファイバケーブルを特定の方向にだけ曲げやすい、と言うことにはならず、全ての方向に同様の力で曲げることができる。
【0024】
(8)本開示のコネクタ付きケーブルは、
前記光ファイバケーブルと、
前記光ファイバケーブルの少なくとも一つの前記光ファイバリボンの一端に設けられた多心コネクタと、を備えている。
【0025】
このような構成によれば、光ファイバケーブルを他の通信部材に接続する作業が容易となる。
【0026】
[本開示の実施形態の詳細]
本開示の光ファイバケーブルおよびコネクタ付きケーブルの具体例を、図面を参照しつつ説明する。なお、本開示はこれらの例示に限定されるものではなく、請求の範囲によって示され、請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0027】
(第一実施形態)
図1Aから
図3を参照して、第一実施形態に係る光ファイバケーブル1の構成について説明する。
図1Aにおいて光ファイバユニット2はハッチングを施してその内部構成を省略し、省略した光ファイバユニット2の内部構造は
図1Bに図示した。
図1Aおよび
図1Bにおいて破線で示す円形の枠は、便宜上、光ファイバユニット2の領域を表示したものであって、実際には枠は存在しない。
【0028】
光ファイバケーブル1は、
図1Aに例示されるように、複数の光ファイバユニット2と外被3を備えている。本例においては、32本の光ファイバユニット2が外被3の内側に実装されている。
【0029】
光ファイバユニット2は、
図1Bに例示されるように、複数の光ファイバリボン21を有している。本例においては、光ファイバユニット2は、18枚の光ファイバリボン21が束ねられた集合体により形成されている。集合体を形成する18枚の光ファイバリボン21は互いに撚り合わされてもよい。
【0030】
光ファイバリボン21は、
図2および
図3に例示されるように、複数の光ファイバ心線211とリボン樹脂212とを有している。
図2および
図3において、光ファイバリボン21は非連結部214を光ファイバ心線211の並列方向に広げた状態で示されている。
複数の光ファイバ心線211は、その長手方向に直交する方向に並列に配列されている。リボン樹脂212は、複数の光ファイバ心線211を一体化するように形成されている。本例においては、12本の光ファイバ心線211が互いに接した状態で並列されており、リボン樹脂212は、並列された複数の光ファイバ心線211の外周を覆うように形成されている。リボン樹脂212は、並列された複数の光ファイバ心線211の片面にのみ塗布されてもよい。リボン樹脂212は、紫外線硬化型樹脂や熱硬化型樹脂などの樹脂からなる。
【0031】
光ファイバ心線211は、例えば、コアとクラッドとからなるガラスファイバ211aと、ガラスファイバ211aの周囲を覆う被覆部211bとを有している。被覆部211bは、紫外線硬化型樹脂などの樹脂からなる1層または複数の被覆層により形成される。光ファイバ心線211としては、例えば、ガラスファイバ211aの直径R1が125μmであり、光ファイバ心線211の直径R2が200μmである光ファイバ心線が使用される。
【0032】
光ファイバリボン21の少なくとも一部の隣接する光ファイバ心線211間には、
図3に例示されるように、当該隣接する光ファイバ心線211間が連結された状態の連結部213と、当該隣接する光ファイバ心線211間が連結されていない状態の非連結部214とが、光ファイバ心線211の長手方向に間欠的に設けられている。本例においては、2心毎に連結部213と非連結部214とが光ファイバ心線211の長手方向に間欠的に設けられている。非連結部214は、例えば、リボン樹脂212の一部を回転刃等で切断することにより形成される。
【0033】
なお、リボン樹脂212は、並列された複数の光ファイバ心線211の外周ではなく、光ファイバ心線211間に塗布することによっても形成されうる。リボン樹脂212が所定の光ファイバ心線211間に塗布されることにより、連結部213と非連結部214とが間欠的に設けられるとともに、各光ファイバ心線211が並列状態で一体化される。
【0034】
図1Aの外被3は、複数の光ファイバユニット2の周囲を被覆するように形成されている。外被3は、例えば、常温(例えば23℃)におけるヤング率が1500MPa以上である樹脂により形成される。外被3には、引き裂き紐4や複数のテンションメンバ5テンションメンバ5が埋め込まれてもよい。テンションメンバ5は、例えば、アラミドFRP、ガラスFRP、カーボンFRPなどの繊維強化プラスチック(FRP)や金属線などにより形成される。
【0035】
光ファイバケーブル1はさらに、
図1Aに例示されるように、光ファイバユニット2の周囲を覆う押さえ部材を有しうる。本例においては、光ファイバケーブル1は、第一押さえ部材6と第二押さえ部材7を有している。第一押さえ部材6と第二押さえ部材7は、例えば、ポリエステルなどからなる不織布により形成される。第一押さえ部材6は、例えば、ケーブル中心に配置された複数の光ファイバユニット2の周囲に縦添えまたは螺旋状に巻回される。第二押さえ部材7は、例えば、第一押さえ部材6の周囲に配置された複数の光ファイバユニット2の周囲に縦添えまたは螺旋状に巻回される。なお、縦添え巻回されるとは、押さえ部材の長手方向が光ファイバケーブル1の長手方向に平行となり、押さえ部材の幅方向が光ファイバケーブル1の周方向に沿うように押さえ部材が光ファイバユニット2の周囲に巻かれる状態を意味する。
【0036】
このように構成される光ファイバケーブル1において、外被3は、外径ODに対する内径IDの割合(ID/OD)が0.75以上になるように形成されている。例えば、
図1Aの光ファイバケーブル1が外被3の外径ODを29.6mmおよび外被3の内径IDを24.8mmとして作製された場合、外径ODに対する内径IDの割合は約0.84となる。
【0037】
また、光ファイバケーブル1内には3000心以上の光ファイバ心線211が実装される。例えば、
図1Aの光ファイバケーブル1内には6912心の光ファイバ心線211が実装されている。
【0038】
また、光ファイバケーブル1は、外被3より内側の光ファイバリボン収容部S1の断面積に対する光ファイバリボン収容部S1に収容されたガラスの断面積の割合が15%以上25%以下となるように構成されている。断面積とは光ファイバケーブル1の長手方向に直交する断面における面積である。本例においては、
図1Aの光ファイバリボン収容部S1に収容されたガラスは、光ファイバ心線211のガラスファイバ211aであり、光ファイバリボン収容部S1は、外被3より内側の、第一押さえ部材6および第二押さえ部材7の厚み分を除く空間である。
【0039】
図1Aの光ファイバケーブル1が外被3の内径IDを24.8mm、第一押さえ部材6の厚さt1を0.3mm、第二押さえ部材7の厚さt2を0.35mm、光ファイバ心線211のガラスファイバ211aの直径R1を0.125mmとして作製された場合、光ファイバリボン収容部S1の断面積は、外被3の内径IDから第一押さえ部材6の厚さt1および第二押さえ部材7の厚さt2を差し引き、実質的な内径を23.5mmとして計算すると、π×(23.5/2)
2=434 mm
2となる。光ファイバリボン収容部S1に収容されたガラスの断面積は、π×(0.125/2)
2×6912=84.8mm
2となる。したがって、光ファイバリボン収容部S1の断面積に対する光ファイバリボン収容部S1に収容されたガラスの断面積の割合は約20%となる。
【0040】
以上説明したように、本実施形態に係る光ファイバケーブル1においては、外被3の外径ODに対する内径IDの割合が0.75以上であるので、外被3の内側により多くの光ファイバ心線211を配置させることができる。一方、外被3の外径ODに対する内径IDの割合が大きいほど、光ファイバケーブル1に側圧が加わった場合に、光ファイバケーブル1が変形しやすくなる。しかしながら、光ファイバケーブル1内に実装される光ファイバ心線211の数は3000心以上であるので、光ファイバケーブル内に高密度で実装された光ファイバ心線により、光ファイバケーブル1の潰れやキンクを抑制することができる。また、光ファイバリボン収容部S1の断面積に対する光ファイバリボン収容部S1に収容されたガラスの断面積の割合が15%以上25%以下であるので、光ファイバケーブルに加わる張力に耐えることができる。したがって、光ファイバ心線を高密度に実装可能であり、耐側圧性を有する光ファイバケーブルを提供することができる。
【0041】
また、本実施形態においては、光ファイバケーブル1は、複数の光ファイバリボン21が束ねられた集合体により形成された光ファイバユニット2を複数備えている。これにより、光ファイバケーブル1における光ファイバリボン21の判別や取り扱いが容易となる。
【0042】
また、本実施形態においては、光ファイバケーブル1は、第一押さえ部材6と第二押さえ部材7を有している。これにより、3000心以上の多心ケーブルの場合でも、第一押さえ部材6の内側に存在する光ファイバユニット2と、第一押さえ部材6の外側に配置された光ファイバユニット2とを容易に判別することができる。
【0043】
なお、第一押さえ部材6は、第二押さえ部材7に対向する面が低摩擦となるような材料により形成されうる。第一押さえ部材6は、例えば、その外側に配置された光ファイバユニット2を構成する光ファイバリボン21との間の動摩擦係数が0.3以下となるように形成される。第二押さえ部材7は、第一押さえ部材6に対向する面が低摩擦となるような材料により形成されうる。第二押さえ部材7は、例えば、その内側に配置された光ファイバユニット2を構成する光ファイバリボン21との間の動摩擦係数が0.3以下となるように形成される。光ファイバケーブル1内に実装された光ファイバユニット2は、低温度の環境下において、温度収縮により長手方向に移動しやすい。したがって、低温の環境下における伝送損失の増加を抑制することができる。
なお、動摩擦係数は、ISO規格8295に従い、例えば、シート状にした各押さえ部材と光ファイバリボンとの間で測定することができる。
【0044】
また、本実施形態において、光ファイバケーブル1は、外被3より内側の光ファイバリボン収容部S1の断面積に対する光ファイバリボン収容部S1に収容された光ファイバリボン21の断面積の割合が50%以上65%以下となるように構成されてもよい。
【0045】
図1Aの光ファイバケーブル1において、光ファイバリボン21が光ファイバ心線211の直径R2を200μm、光ファイバリボン21のリボン樹脂212を含めた光ファイバ心線211の直径Tを225μmとして作製された場合、光ファイバリボン21の断面積は、π×(0.225/2)
2×6912=275mm
2となる。したがって、光ファイバリボン収容部S1の断面積に対する光ファイバリボン収容部S1に収容された光ファイバリボン21の断面積の割合は約63%となる。
【0046】
このような構成によれば、光ファイバリボン収容部S1の断面積に対する光ファイバリボン収容部S1に収容された光ファイバリボン21の断面積の割合が50%以上であるので、光ファイバケーブル1に側圧が加わった場合でも、光ファイバリボン21を構成する光ファイバ心線211が高密度に収容されていることにより、光ファイバケーブル1が潰れるのを防ぐことができる。一方、光ファイバリボン収容部S1の断面積に対する光ファイバリボン収容部S1に収容された光ファイバリボン21の断面積の割合が高くなると伝送損失が増加する。しかしながら、光ファイバリボン収容部S1の断面積に対する光ファイバリボン収容部S1に収容された光ファイバリボン21の断面積の割合が65%以下であるので、伝送損失の増加を抑制することができる。
【0047】
また、本実施形態において、光ファイバユニット2は、
図4に例示されるように、光ファイバリボン21の集合体の周囲を覆うチューブ22を有してもよい。チューブ22は、例えば、0.01mm以上0.2mm以下の厚さを有する。このような構成によれば、例えば各チューブ22の色を異ならせることにより光ファイバケーブル1内における光ファイバユニット2の判別が容易となる。また、光ファイバケーブル1の光ファイバユニット2を光接続箱やクロージャ等に収納する際、外被3を除去した後に露出された光ファイバリボン21を保護するために保護チューブを被せる必要がないので、作業性が向上する。また、チューブ22の厚さは薄いので、チューブ22を配置したことにより光ファイバリボン21の実装可能な空間が減少することを抑制することができる。なお、本例においては、全ての光ファイバユニット2がチューブ22に覆われているが、例えば、一部の光ファイバユニット2のみがチューブ22に覆われてもよい。チューブ22の数を少なくすることにより、光ファイバケーブル1内により多くの光ファイバ心線211を実装することができる。
【0048】
(第二実施形態)
図5Aおよび
図5Bを参照して、第二実施形態に係る光ファイバケーブル10の構成について説明する。
図5Aにおいて光ファイバユニット12はハッチングを施してその内部構成を省略し、省略した光ファイバユニット12の内部構造は
図5Bに図示した。
図5Aおよび
図5Bにおいて破線で示す円形の枠は、便宜上、光ファイバユニット12の領域を表示したものであって、実際には枠は存在しない。
【0049】
光ファイバケーブル10は、
図5Aに例示されるように、テンションメンバ11と、複数の光ファイバユニット12と、外被13と、を備えている。本例においては、64本の光ファイバユニット12が外被3の内側に実装されている。
【0050】
テンションメンバ11は、光ファイバケーブル10の中央の位置に光ファイバケーブル10の中心軸方向に沿って配置されている。テンションメンバ11は、例えば、ガラスの繊維強化プラスチック(GFRP)11Aと、GFRP11Aの周囲を覆う被覆部11Bを有している。なお、本例においては、光ファイバケーブル10内には一本のテンションメンバ11が配置されているが、複数のテンションメンバ11がまとまって配置されていてもよい。
【0051】
複数の光ファイバユニット12は、テンションメンバ11を中心としてテンションメンバ11の周囲に多層構造で巻き付けられている。光ファイバユニット12は、
図5Bに例示されるように、複数の光ファイバリボン121を有している。本例においては、光ファイバユニット12は、18枚の光ファイバリボン121が束ねられた集合体により形成されている。集合体を形成する18枚の光ファイバリボン121は互いに撚り合わされてもよい。
【0052】
複数の光ファイバリボン121は、
図2および
図3に例示されるように、一部または全ての光ファイバ心線211間において、隣接する光ファイバ心線211間が連結された状態の連結部213と、隣接する光ファイバ心線211間が連結されていない状態の非連結部214とが、光ファイバ心線211の長手方向に間欠的に設けられている。光ファイバリボン121の構成は第一実施形態の光ファイバリボン21の構成と同じであるため、詳細な説明は省略する。
【0053】
外被13は、複数の光ファイバユニット12の周囲を被覆するように形成されている。外被13は、例えば、常温(例えば23℃)におけるヤング率が1500MPa以上である樹脂により形成される。外被13には、引き裂き紐14が埋め込まれてもよい。
【0054】
光ファイバケーブル10はさらに、光ファイバユニット12の周囲を覆う押さえ部材を有しうる。本例においては、光ファイバケーブル10は、第一押さえ部材15と第二押さえ部材16を有している。第一押さえ部材15と第二押さえ部材16は、例えば、ポリエステルの不織布からなる。第一押さえ部材15は、ケーブル中心に配置された複数の光ファイバユニット12の周囲に縦添えまたは螺旋状に巻回されている。第二押さえ部材16は、第一押さえ部材15の周囲に配置された複数の光ファイバユニット12の周囲に縦添えまたは螺旋状に巻回されている。
【0055】
このように構成される光ファイバケーブル10において、外被13は、外径ODと内径IDとの比率(ID/OD)が0.75以上になるように形成されている。例えば、
図5Aの光ファイバケーブル10が外被13の外径ODを40.4mmおよび外被13の内径IDを34.8mmとして作製された場合、外径ODに対する内径IDの割合は約0.86となる。
【0056】
また、光ファイバケーブル10内には、3000心以上の光ファイバ心線211が実装される。例えば、
図5Aの光ファイバケーブル10内には13824心の光ファイバ心線211が実装されている。
【0057】
また、光ファイバケーブル10は、光ファイバリボン収容部S11の断面積に対する光ファイバリボン収容部S11に収容されたガラスの断面積の割合が15%以上25%以下となるように構成されている。本例においては、
図5Aの光ファイバケーブル10内に実装されるガラスには、光ファイバ心線211のガラスファイバ211aに加えてテンションメンバ11を構成するGFRP11Aが含まれる。
図5Aの光ファイバケーブル10が外被13の内径IDを34.8mm、第一押さえ部材15の厚さを0.3mm、第二押さえ部材16の厚さを0.35mm、光ファイバ心線211のガラスファイバ211aの直径R1を0.125mm、GFRP11Aの直径を4mmとして作製された場合、光ファイバリボン収容部S11の断面積は、上記同様、外被3の内径IDから第一押さえ部材15の厚さおよび第二押さえ部材16の厚さを差し引き、実質的な内径を33.5mmとして計算すると、π×(33.5/2)
2=881mm
2となる。光ファイバリボン収容部S11に収容されたガラスの断面積は、π×(0.125/2)
2×13824+π×(4/2)
2=182mm
2となる。したがって、光ファイバリボン収容部S11の断面積に対する光ファイバリボン収容部S11に収容されたガラスの断面積の割合は約21%となる。
【0058】
また、光ファイバケーブル10は、光ファイバリボン収容部S11の断面積に対する光ファイバリボン収容部S11に収容された光ファイバリボン121の断面積の割合が50%以上65%以下となるように構成されうる。
図5Aの光ファイバケーブル10において、光ファイバリボン121が光ファイバ心線211の直径R2を200μm、光ファイバリボン121のリボン樹脂212を含めた光ファイバ心線211の直径Tを225μmとして作製された場合、光ファイバリボン121の断面積は、π×(0.225/2)
2×13824=549.6550mm
2となる。したがって、光ファイバリボン収容部S11の断面積に対する光ファイバリボン収容部S11に収容された光ファイバリボン121の断面積の割合は約62%となる。
【0059】
以上説明したように、本実施形態に係る光ファイバケーブル10においては、第一実施形態の光ファイバケーブル1と同様の効果を有することができる。また、光ファイバ心線211のガラスファイバ211a自体がテンションメンバとして機能するので、光ファイバケーブル10内に配置されるテンションメンバ11のサイズを小さくしても、光ファイバケーブルに加わる張力に耐えることができる。これにより、より多くの光ファイバ心線211を実装させることができる。
【0060】
また、本実施形態においては、複数の光ファイバユニット12は、テンションメンバ11を中心としてテンションメンバ11の周囲に多層構造で巻き付けられている。これにより、テンションメンバ11は複数の光ファイバケーブルの中心に配置されているので、光ファイバケーブル10を特定の方向にだけ曲げやすい、と言うことにはならず、全ての方向に同様の力で曲げることができる。
【0061】
なお、本実施形態において、光ファイバユニット12は、
図4に例示されるように、光ファイバリボン121の集合体の周囲を覆うチューブ22を有してもよい。
【0062】
以上、本開示を詳細にまた特定の実施態様を参照して説明したが、本開示の精神と範囲を逸脱することなく様々な変更や修正を加えることができることは当業者にとって明らかである。また、上記説明した構成部材の数、位置、形状等は上記実施の形態に限定されず、本開示を実施する上で好適な数、位置、形状等に変更することができる。
【0063】
上記の第一実施形態の光ファイバケーブル1は、
図6に例示されるように、コネクタ付きケーブル30として形成されてもよい。すなわち、コネクタ付きケーブル30は、光ファイバケーブル1と、光ファイバケーブル1の少なくとも一つの光ファイバユニット2の一端に設けられた多心コネクタ31とを備えている。
図6では、光ファイバユニット2に多心コネクタ31が連結されている。光ファイバユニット2をあらかじめ多心コネクタ31に連結させることにより、光ファイバケーブル1を光接続する際の施工性を容易なものとすることができる。各光ファイバユニット2に対して複数の多心コネクタが連結されていてもよい。同様に、第二実施形態の光ファイバケーブル10は、
図6に例示されるように、コネクタ付きケーブル30として形成されてもよい。
【0064】
上記の第一実施形態において、光ファイバユニット2は、チューブ22の代わりに、複数の光ファイバリボン21の集合体の周囲に巻き付けられたバンドル材を有してもよい。この場合でも、各バンドル材の色を異ならせることにより光ファイバケーブル1内における光ファイバユニット2の判別が容易となる。同様に第二実施形態において、光ファイバユニット12は、チューブ22の代わりに、複数の光ファイバリボン121の集合体の周囲に巻き付けられたバンドル材を有してもよい。
【0065】
上記の第一実施形態において、集合体を形成する複数の光ファイバリボン21は撚り合わされているが、複数の光ファイバリボン21は撚り合わされずに集合体を形成してもよい。同様に第二実施形態において、集合体を形成する複数の光ファイバリボン121は撚り合わされているが、複数の光ファイバリボン121は撚り合わされずに集合体を形成してもよい。
【0066】
上記の第一実施形態において、第一押さえ部材6と第二押さえ部材7は、吸水性を有してもよい。同様に第二実施形態において、第一押さえ部材15と第二押さえ部材16は、吸水性を有してもよい。第一押さえ部材6,15と第二押さえ部材7,16は、例えば、ポリエステル等からなる基布に吸水性のパウダーを付着させることにより形成されうる。これにより、第一押さえ部材6,15と第二押さえ部材7,16の内部に水が浸入することを抑制することができる。
【0067】
上記の第一実施形態および第二実施形態において、光ファイバリボン21および光ファイバリボン121は、12本の光ファイバ心線211が互いに接した状態で並列されているが、光ファイバ心線211の数および隣接する光ファイバ心線211同士の接触状態は、
図2および
図3の構造に限定されず、適宜変更することができる。
【0068】
上記の第一実施形態において、複数の光ファイバユニット2は、光ファイバケーブル1の長手方向に沿って撚り合わされてもよい。同様に第二実施形態において、複数の光ファイバユニット12は、光ファイバケーブル10の長手方向に沿って撚り合わされてもよい。
【符号の説明】
【0069】
1:光ファイバケーブル
2:光ファイバユニット
3:外被
4:引き裂き紐
5:テンションメンバ
6:第一押さえ部材
7:第二押さえ部材
10:光ファイバケーブル
11:テンションメンバ
11A:GFRP
11B:被覆部
12:光ファイバユニット
13:外被
14:引き裂き紐
15:第一押さえ部材
16:第二押さえ部材
21:光ファイバリボン
22:チューブ
30:ケーブル
31:多心コネクタ
121:光ファイバリボン
211:光ファイバ心線
211a:ガラスファイバ
211b:被覆部
212:リボン樹脂
213:連結部
214:非連結部
ID:内径
OD:外径
R1:ガラスファイバの直径
R2:光ファイバ心線の直径
S1:光ファイバリボン収容部
S11:光ファイバリボン収容部
T:リボン樹脂を含めた光ファイバ心線の直径