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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-03-18
(45)【発行日】2025-03-27
(54)【発明の名称】炭化珪素半導体装置
(51)【国際特許分類】
   H10D 30/66 20250101AFI20250319BHJP
   H10D 8/50 20250101ALI20250319BHJP
   H10D 8/60 20250101ALI20250319BHJP
   H10D 30/01 20250101ALI20250319BHJP
   H10D 62/10 20250101ALI20250319BHJP
   H10D 64/64 20250101ALI20250319BHJP
   H10D 84/80 20250101ALI20250319BHJP
   H10D 84/83 20250101ALI20250319BHJP
【FI】
H10D30/66 103B
H10D8/50 C
H10D8/50 F
H10D8/60 D
H10D8/60 F
H10D8/60 M
H10D30/01 301C
H10D30/01 301E
H10D30/66 101F
H10D30/66 101H
H10D30/66 101T
H10D30/66 102G
H10D30/66 102S
H10D30/66 103Q
H10D30/66 201A
H10D62/10 101G
H10D62/10 101V
H10D64/64 Z
H10D84/80 101A
H10D84/80 203A
H10D84/80 203D
H10D84/83 E
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2022561313
(86)(22)【出願日】2021-09-27
(86)【国際出願番号】 JP2021035306
(87)【国際公開番号】W WO2022102262
(87)【国際公開日】2022-05-19
【審査請求日】2024-03-21
(31)【優先権主張番号】P 2020187492
(32)【優先日】2020-11-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】内田 光亮
【審査官】上田 智志
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-170778(JP,A)
【文献】特開2016-6854(JP,A)
【文献】国際公開第2019/124378(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H10D 8/50、8/60、
30/01、30/66、
62/10、
64/64、
84/80、84/83
(57)【特許請求の範囲】
【請求項7】
前記第2ショットキーバリアダイオードの立ち上がり電圧は、前記第2埋込領域と前記第1半導体領域との間のpn接合を含むダイオードの立ち上がり電圧よりも低い請求項3から請求項6のいずれか1項に記載の炭化珪素半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、炭化珪素半導体装置に関する。
【0002】
本出願は、2020年11月10日出願の日本出願第2020-187492号に基づく優先権を主張し、前記日本出願に記載された全ての記載内容を援用するものである。
【背景技術】
【0003】
炭化珪素半導体装置の一つとして、素子領域にトランジスタが設けられ、ガードリング領域にショットキーバリアダイオードが設けられた炭化珪素半導体装置が開示されている(たとえば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】日本国特開2014-170778号公報
【発明の概要】
【0005】
本開示の炭化珪素半導体装置は、第1主面と、前記第1主面と反対側の第2主面とを有する炭化珪素基板を備え、前記炭化珪素基板は、前記第1主面に垂直な方向から平面視したときに、複数のトランジスタを含む素子領域と、前記素子領域を囲み、第1ショットキーバリアダイオードを含む終端領域と、を有し、前記炭化珪素基板は、前記第2主面をなし、第1導電型を有する第1半導体領域と、前記第1主面と前記第2主面との間に位置する第1面と、前記第1面に設けられ、前記第1導電型と異なる第2導電型を有する第2半導体領域と、を有し、前記第2半導体領域は、前記終端領域に設けられ、第1開口が形成された第1埋込領域を有し、前記第1ショットキーバリアダイオードは、前記第1主面に設けられ、前記第1主面に垂直な方向から平面視したときに、前記第1開口と重なる第1ショットキー電極を有する。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1図1は、実施形態に係るMOSFETのレイアウトの概要を示す図である。
図2図2は、図1中の領域Aを拡大して示す図である。
図3図3は、図1中の領域Bを拡大して示す図である。
図4図4は、実施形態に係る炭化珪素半導体装置の構成を示す断面図(その1)である。
図5図5は、実施形態に係る炭化珪素半導体装置の構成を示す断面図(その2)である。
図6図6は、実施形態に係る炭化珪素半導体装置の構成を示す断面図(その3)である。
図7図7は、実施形態に係る炭化珪素半導体装置の構成を示す断面図(その4)である。
図8図8は、素子領域内の第1面の構成を示す図である。
図9図9は、終端領域内の第1面の構成を示す図である。
図10図10は、実施形態に係る炭化珪素半導体装置の製造方法を示す断面図(その1)である。
図11図11は、実施形態に係る炭化珪素半導体装置の製造方法を示す断面図(その2)である。
図12図12は、実施形態に係る炭化珪素半導体装置の製造方法を示す断面図(その3)である。
図13図13は、実施形態に係る炭化珪素半導体装置の製造方法を示す断面図(その4)である。
図14図14は、実施形態に係る炭化珪素半導体装置の製造方法を示す断面図(その5)である。
図15図15は、実施形態に係る炭化珪素半導体装置の製造方法を示す断面図(その6)である。
図16図16は、実施形態に係る炭化珪素半導体装置の製造方法を示す断面図(その7)である。
図17図17は、実施形態に係る炭化珪素半導体装置の製造方法を示す断面図(その8)である。
図18図18は、実施形態に係る炭化珪素半導体装置の製造方法を示す断面図(その9)である。
図19図19は、実施形態に係る炭化珪素半導体装置の製造方法を示す断面図(その10)である。
図20図20は、実施形態に係る炭化珪素半導体装置の製造方法を示す断面図(その11)である。
図21図21は、実施形態に係る炭化珪素半導体装置の製造方法を示す断面図(その12)である。
図22図22は、実施形態に係る炭化珪素半導体装置の製造方法を示す断面図(その13)である。
図23図23は、実施形態に係る炭化珪素半導体装置の製造方法を示す断面図(その14)である。
図24図24は、実施形態に係る炭化珪素半導体装置の製造方法を示す断面図(その15)である。
図25図25は、実施形態に係る炭化珪素半導体装置の製造方法を示す断面図(その16)である。
図26図26は、実施形態に係る炭化珪素半導体装置の製造方法を示す断面図(その17)である。
図27図27は、実施形態に係る炭化珪素半導体装置の製造方法を示す断面図(その18)である。
図28図28は、実施形態に係る炭化珪素半導体装置の製造方法を示す断面図(その19)である。
図29図29は、実施形態に係る炭化珪素半導体装置の製造方法を示す断面図(その20)である。
図30図30は、実施形態に係る炭化珪素半導体装置の製造方法を示す断面図(その21)である。
図31図31は、実施形態に係る炭化珪素半導体装置の製造方法を示す断面図(その22)である。
図32図32は、実施形態に係る炭化珪素半導体装置の製造方法を示す断面図(その23)である。
図33図33は、実施形態に係る炭化珪素半導体装置の製造方法を示す断面図(その24)である。
図34図34は、実施形態に係る炭化珪素半導体装置の製造方法を示す断面図(その25)である。
図35図35は、実施形態に係る炭化珪素半導体装置の製造方法を示す断面図(その26)である。
図36図36は、実施形態に係る炭化珪素半導体装置の製造方法を示す断面図(その27)である。
図37図37は、実施形態に係る炭化珪素半導体装置の製造方法を示す断面図(その28)である。
図38図38は、センス構造を含む炭化珪素半導体装置の例を示す断面図である。
図39図39は、センス構造を含む炭化珪素半導体装置の他の例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
[本開示が解決しようとする課題]
従来の炭化珪素半導体装置では、ショットキーバリアダイオードが動作する前に、炭化珪素半導体装置中に寄生しているpn接合を含むダイオードが動作して特性が低下するおそれがある。
【0008】
本開示は、pn接合ダイオードの動作に伴う特性の低下を抑制できる炭化珪素半導体装置を提供することを目的とする。
【0009】
[本開示の効果]
本開示によれば、pn接合ダイオードの動作に伴う特性の低下を抑制できる。
【0010】
実施するための形態について、以下に説明する。
【0011】
[本開示の実施形態の説明]
最初に本開示の実施態様を列記して説明する。以下の説明では、同一または対応する要素には同一の符号を付し、それらについて同じ説明は繰り返さない。本明細書中の結晶学的記載においては、個別方位を[]、集合方位を<>、個別面を()、集合面を{}でそれぞれ示している。また結晶学上の指数が負であることは、通常、”-”(バー)を数字の上に付すことによって表現されるが、本明細書中では数字の前に負の符号を付している。
【0012】
〔1〕 本開示の一態様に係る炭化珪素半導体装置は、第1主面と、前記第1主面と反対側の第2主面とを有する炭化珪素基板を備え、前記炭化珪素基板は、前記第1主面に垂直な方向から平面視したときに、複数のトランジスタを含む素子領域と、前記素子領域を囲み、第1ショットキーバリアダイオードを含む終端領域と、を有し、前記炭化珪素基板は、前記第2主面をなし、第1導電型を有する第1半導体領域と、前記第1主面と前記第2主面との間に位置する第1面と、前記第1面に設けられ、前記第1導電型と異なる第2導電型を有する第2半導体領域と、を有し、前記第2半導体領域は、前記終端領域に設けられ、第1開口が形成された第1埋込領域を有し、前記第1ショットキーバリアダイオードは、前記第1主面に設けられ、前記第1主面に垂直な方向から平面視したときに、前記第1開口と重なる第1ショットキー電極を有する。
【0013】
第1主面に垂直な方向から平面視したときに、第1埋込領域に形成された第1開口と重なるように第1ショットキー電極が設けられている。このため、第1ショットキーバリアダイオードが動作すると、電流が第1開口を通じて流れる。第1開口が形成されていない場合、電流は第1埋込領域を迂回するように流れるのに対し、第1開口が形成されていることで電流経路を短縮できる。そして、電流経路の抵抗の低減により第1ショットキーバリアダイオードを立ち上がりやすくできる。従って、炭化珪素半導体装置中に寄生しているpn接合を含むダイオードよりも早期に第1ショットキーバリアダイオードを動作させ、pn接合ダイオードの動作に伴う特性の低下を抑制できる。
【0014】
〔2〕 〔1〕において、前記第1開口は、矩形状の平面形状を有し、前記第2半導体領域は、前記素子領域に設けられた複数の電界緩和領域を有し、前記第1主面に垂直な方向から平面視したときに、隣り合う前記電界緩和領域の間の距離は、前記第1開口の最も短い辺の長さよりも大きくてもよい。この場合、第1埋込領域における電界集中を緩和し、終端領域の耐圧の低下を抑制できる。
【0015】
〔3〕 〔1〕又は〔2〕において、前記素子領域は、複数の前記トランジスタが配列した活性領域と、前記活性領域の周囲に設けられ、複数の第2ショットキーバリアダイオードを含む非活性領域と、を有し、前記第2半導体領域は、前記非活性領域に設けられ、第2開口が形成された第2埋込領域を有し、前記第2ショットキーバリアダイオードは、前記第1主面に設けられ、前記第1主面に垂直な方向から平面視したときに、前記第2開口と重なる第2ショットキー電極を有してもよい。この場合、非活性領域内におけるpn接合ダイオードの動作に伴う特性の低下を抑制できる。
【0016】
〔4〕 〔3〕において、複数の前記トランジスタのゲート電極が接続されたゲートパッドを前記第1主面の上方に有し、複数の前記第2ショットキーバリアダイオードが、前記第1主面に垂直な方向から平面視したときに、前記ゲートパッドに沿って配置されていてもよい。この場合、ゲートパッドの下方の第2埋込領域を含むpn接合ダイオードの動作に伴う特性の低下を抑制できる。
【0017】
〔5〕 〔3〕又は〔4〕において、複数の前記トランジスタのゲート電極が接続されたゲートランナーを前記第1主面の上方に有し、複数の前記第2ショットキーバリアダイオードが、前記第1主面に垂直な方向から平面視したときに、前記ゲートランナーに沿って配置されていてもよい。この場合、ゲートランナーの下方の第2埋込領域を含むpn接合ダイオードの動作に伴う特性の低下を抑制できる。
【0018】
〔6〕 〔3〕~〔5〕において、前記非活性領域に設けられたセンス構造を有し、複数の前記第2ショットキーバリアダイオードが、前記第1主面に垂直な方向から平面視したときに、前記センス構造に沿って配置されていてもよい。この場合、センス構造の下方の第2埋込領域を含むpn接合ダイオードの動作に伴う特性の低下を抑制できる。
【0019】
〔7〕 〔3〕~〔6〕において、前記第2ショットキーバリアダイオードの立ち上がり電圧は、前記第2埋込領域と前記第1半導体領域との間のpn接合を含むダイオードの立ち上がり電圧よりも低くてもよい。この場合、pn接合を含むダイオードの動作に伴う特性の低下をより抑制するためである。
【0020】
[本開示の実施形態]
本開示の実施形態は、いわゆる縦型のMOSFET(炭化珪素半導体装置)に関する。図1は、実施形態に係るMOSFETのレイアウトの概要を示す図である。図2は、図1中の領域Aを拡大して示す図である。図3は、図1中の領域Bを拡大して示す図である。
【0021】
まず、本実施形態に係るMOSFET100におけるレイアウトの概要について説明する。図1に示されるように、MOSFET100は、X方向に平行な2辺と、Y方向に平行な2辺とを備えた長方形状の平面形状を有する。MOSFET100は、素子領域120と、終端領域110とを備える。終端領域110は、平面視で素子領域120を囲む。
【0022】
素子領域120内に、ゲートパッド84と、ゲートパッド84に接続されたゲートランナー85とが設けられている。ゲートパッド84及びゲートランナー85は、例えばアルミニウム又はアルミニウム合金等の電気抵抗の低い金属から構成されている。ゲートパッド84は外部からゲート電圧が印加されるように構成されている。
【0023】
ゲートパッド84は、X方向に平行な1辺の近傍でX方向の中央に配置されている。ゲートランナー85は、例えば3本設けられており、そのうちの1本はゲートパッド84から、素子領域120と終端領域110との境界近傍まで-Y方向に延びる。他の1本はゲートパッド84から+X方向に延び、素子領域120と終端領域110との境界近傍で-Y方向に曲がり、素子領域120と終端領域110との境界近傍まで-Y方向に延びる。他の1本はゲートパッド84から-X方向に延び、素子領域120と終端領域110との境界近傍で-Y方向に曲がり、素子領域120と終端領域110との境界近傍まで-Y方向に延びる。
【0024】
詳細は後述するが、素子領域120内に、ゲートランナー85に接続されたゲート電極82を備える複数のトランジスタ21(図3及び図4参照)が設けられている。また、終端領域110内に、トランジスタ21に接続された複数の第1ショットキーバリアダイオード22(図7参照)が設けられ、素子領域120内に、トランジスタ21に接続された複数の第2ショットキーバリアダイオード23(図5参照)が設けられている。
【0025】
図1及び図2に示されるように、終端領域110内に、第1ショットキーバリアダイオード22のショットキー電極111が設けられている。ショットキー電極111は、第1主面1に垂直なZ方向から平面視したときにMOSFET100の外縁に沿って並ぶように配置されている。ショットキー電極111は第1ショットキー電極の一例である。
【0026】
図1及び図3に示されるように、素子領域120は、トランジスタ21が配列した活性領域120Aと、第2ショットキーバリアダイオード23を含む非活性領域120Bとを有する。非活性領域120B内に、ゲートパッド84と、ゲートランナー85と、第2ショットキーバリアダイオード23とが設けられている。第2ショットキーバリアダイオード23はショットキー電極121を有する。ショットキー電極121は、Z方向から平面視したときにゲートパッド84及びゲートランナー85に沿って並ぶように配置されている。ショットキー電極121は、ゲートパッド84を断続的に囲んでいてもよい。ショットキー電極121は、ゲートパッド84の全周を囲む必要はなく、例えば平面形状が矩形状のゲートパッド84の3辺に沿って並ぶように配置されていてもよい。ショットキー電極121は第2ショットキー電極の一例である。
【0027】
ショットキー電極111及び121は、Tiの仕事関数である4.33eVより小さい仕事関数を有する金属から作られていることが好ましい。ショットキー電極111及び121は、炭化珪素の電気親和力に相当する3.7eVよりも大きな仕事関数を有する金属から作られていることが好ましい。ショットキー電極111及び121は、高温での安定性の観点で、1000℃以上の融点を有することが好ましい。ショットキー電極111及び121に含まれる原子の電気陰性度は、炭化珪素に含まれる原子の電気陰性度、すなわちSi及びCの各々の電気陰性度よりも小さい電気陰性度を有することが好ましい。上記のような条件を満たす金属としては、例えば、Hf、Zr、Ta、Mn、Nb及びVがある。ショットキー電極111及び121は、これらの金属元素のいずれかの単体から作られていてもよく、あるいはこれらの金属元素のうち2つ以上を含む合金から作られていてもよい。
【0028】
次に、本実施形態に係るMOSFET100の断面の詳細について説明する。図4図7は、実施形態に係る炭化珪素半導体装置の構成を示す断面図である。図4は、図3中のIV-IV線に沿った断面図に相当する。図5は、図3中のV-V線に沿った断面図に相当する。図6は、図3中のVI-VI線に沿った断面図に相当する。図7は、図2中のVII-VII線に沿った断面図に相当する。図8は、素子領域内の第1面の構成を示す図である。図9は、終端領域内の第1面の構成を示す図である。
【0029】
図4図7に示されるように、本実施形態に係るMOSFET100は、炭化珪素基板10と、ゲート絶縁膜81と、ゲート電極82と、層間絶縁膜83と、ソース電極60と、ドレイン電極70と、ショットキー電極111と、ショットキー電極121とを主に有している。炭化珪素基板10は、炭化珪素単結晶基板50と、炭化珪素単結晶基板50上にある炭化珪素エピタキシャル層40とを含む。炭化珪素基板10は、第1主面1と、第1主面1と反対側の第2主面2とを有する。炭化珪素エピタキシャル層40は第1主面1を構成し、炭化珪素単結晶基板50は第2主面2を構成する。炭化珪素単結晶基板50及び炭化珪素エピタキシャル層40は、例えばポリタイプ4Hの六方晶炭化珪素から構成されている。炭化珪素単結晶基板50は、例えば窒素(N)などのn型不純物を含みn型(第1導電型)を有する。
【0030】
第1主面1は、{0001}面または{0001}面がオフ方向に8°以下のオフ角だけ傾斜した面である。好ましくは、第1主面1は、(000-1)面または(000-1)面がオフ方向に8°以下のオフ角だけ傾斜した面である。オフ方向は、例えば<11-20>方向であってもよいし、<1-100>方向であってもよい。オフ角は、例えば1°以上であってもよいし、2°以上であってもよい。オフ角は、6°以下であってもよいし、4°以下であってもよい。
【0031】
図3及び図4に示されるように、炭化珪素エピタキシャル層40は、ドリフト領域11と、ボディ領域12と、ソース領域13と、電界緩和領域16と、コンタクト領域18とを主に有する。
【0032】
ドリフト領域11は、例えば窒素またはリン(P)などのドナーが添加されていることでn型を有する。ドリフト領域11は、第1領域11Aと、第2領域11Bとを有する。第1領域11Aと第2領域11Bとの間に第1面11Cがある。第2領域11Bは第1領域11A上に設けられている。ドリフト領域11へのドナーの添加は、イオン注入によってではなく、ドリフト領域11のエピタキシャル成長時の不純物添加によって行われていることが好ましい。ドリフト領域11のドナー濃度は、炭化珪素単結晶基板50のドナー濃度よりも低いことが好ましい。第1領域11A及び第2領域11Bのドナー濃度は、好ましくは1×1015cm-3以上5×1016cm-3以下であり、例えば8×10 cm-3程度である。第1領域11Aと第2領域11Bとの間でドナー濃度が相違していてもよい。ドリフト領域11は第1半導体領域の一例である。
【0033】
ボディ領域12はドリフト領域11上に設けられている。ボディ領域12は、例えばアルミニウム(Al)などのアクセプタが添加されていることでp型(第2導電型)を有する。ボディ領域12のアクセプタ濃度は、例えば1×1018cm-3程度である。
【0034】
ソース領域13は、ボディ領域12によってドリフト領域11から隔てられるようにボディ領域12上に設けられている。ソース領域13は、例えば窒素またはリンなどのドナーが添加されていることでn型を有する。ソース領域13は、第1主面1を構成している。ソース領域13のドナー濃度は、例えば1×1019cm-3程度である。
【0035】
コンタクト領域18は、例えばアルミニウムなどのアクセプタが添加されていることでp型を有する。コンタクト領域18は、第1主面1を構成する。コンタクト領域18は、ソース領域13を貫通し、ボディ領域12に接する。コンタクト領域18のアクセプタ濃度は、例えば1×1018cm-3以上1×1020cm-3以下である。
【0036】
活性領域120A内において、第1主面1には、複数のゲートトレンチ5が設けられている。ゲートトレンチ5は、例えば第1主面1に平行なX方向に延びており、複数のゲートトレンチ5が、第1主面1に平行で、X方向に直交するY方向に並んでいる。ゲートトレンチ5は、ドリフト領域11からなる底面4を有する。ゲートトレンチ5は、コンタクト領域18、ソース領域13及びボディ領域12を貫通して底面4に連なる側面3を有する。底面4は、例えば第2主面2と平行な平面である。底面4を含む平面に対する側面3の角度θ1は、例えば45°以上65°以下である。角度θ1は、例えば50°以上であってもよい。角度θ1は、例えば60°以下であってもよい。側面3は、好ましくは、{0-33-8}面を有する。{0-33-8}面は、優れた移動度が得られる結晶面である。
【0037】
電界緩和領域16は、例えばAlなどのp型不純物を含み、p型の導電型を有する。電界緩和領域16は、第1領域11Aの表面に設けられており、第1面11Cを構成する。電界緩和領域16は、Z方向から平面視したときにY方向で隣り合うゲートトレンチ5の間に設けられている。電界緩和領域16のアクセプタ濃度は、例えば5×1017cm 以上5×1018cm-3以下である。電界緩和領域16は第2半導体領域の一部である。
【0038】
ゲート絶縁膜81は、例えば酸化膜である。ゲート絶縁膜81は、例えば二酸化珪素を含む材料により構成されている。ゲート絶縁膜81は、側面3及び底面4に接する。ゲート絶縁膜81は、底面4においてドリフト領域11と接する。ゲート絶縁膜81は、側面3においてコンタクト領域18、ソース領域13、ボディ領域12及びドリフト領域11の各々と接している。ゲート絶縁膜81は、第1主面1においてソース領域13と接していてもよい。
【0039】
ゲート電極82は、ゲート絶縁膜81上に設けられている。ゲート電極82は、例えば導電性不純物を含むポリシリコン(ポリSi)から構成されている。ゲート電極82は、ゲートトレンチ5の内部に配置されている。ゲート電極82は非活性領域120B内まで延び、ゲートパッド84又はゲートランナー85に接続される。
【0040】
層間絶縁膜83は、ゲート電極82及びゲート絶縁膜81に接して設けられている。層間絶縁膜83は、例えば二酸化珪素を含む材料から構成されている。層間絶縁膜83は、ゲート電極82とソース電極60とを電気的に絶縁している。
【0041】
層間絶縁膜83及びゲート絶縁膜81には、Y方向に一定の間隔でコンタクトホール90が形成されている。コンタクトホール90は、Y方向で隣り合うコンタクトホール90の間にゲートトレンチ5が位置するように設けられている。コンタクトホール90は、X方向に延びる。コンタクトホール90を通じて、ソース領域13及びコンタクト領域18が層間絶縁膜83及びゲート絶縁膜81から露出している。
【0042】
ソース電極60は、第1主面1に接する。ソース電極60は、コンタクトホール90内に設けられたコンタクト電極61と、ソース配線62とを有する。コンタクト電極61は、第1主面1において、ソース領域13及びコンタクト領域18に接している。コンタクト電極61は、例えばニッケルシリサイド(NiSi)を含む材料から構成されている。コンタクト電極61が、チタン(Ti)と、Alと、Siとを含む材料から構成されていてもよい。コンタクト電極61は、ソース領域13及びコンタクト領域18とオーミック接合している。ソース配線62は、例えばAlを含む材料から構成されている。
【0043】
ドレイン電極70は、第2主面2に接する。ドレイン電極70は、第2主面2において炭化珪素単結晶基板50と接している。ドレイン電極70は、ドリフト領域11と電気的に接続されている。ドレイン電極70は、例えばNiSiを含む材料から構成されている。ドレイン電極70がTiと、Alと、Siとを含む材料から構成されていてもよい。ドレイン電極70は、炭化珪素単結晶基板50とオーミック接合している。
【0044】
図3図5及び図6に示されるように、非活性領域120B内において、ショットキー電極121は、Z方向から平面視したときにY方向で隣り合うゲート電極82の間に設けられている。ショットキー電極121はX方向で活性領域120Aとゲートパッド84又はゲートランナー85との間に配置されている。
【0045】
層間絶縁膜83及びゲート絶縁膜81に、ショットキー電極121用のコンタクトホール122が形成されている。また、Z方向から平面視したときにコンタクトホール122と重なるように、コンタクト領域18に開口18Xが形成され、ボディ領域12に開口12Xが形成されている。コンタクトホール122を通じて、第2領域11Bが層間絶縁膜83及びゲート絶縁膜81から露出している。コンタクトホール122内にショットキー電極121が設けられ、ショットキー電極121は第2領域11Bにショットキー接合している。ショットキー電極121はソース配線62に接続される。
【0046】
図5及び図8に示されるように、非活性領域120B内において、電界緩和領域16に開口16Xが形成されている。開口16Xは、例えば矩形状の平面形状を有する。開口16Xに第1領域11Aが露出している。Z方向から平面視したときに、隣り合う電界緩和領域16の間の距離L1は、開口16Xの最も短い辺の長さL3よりも大きくてもよい。図5及び図6に示されるように、ボディ領域12と電界緩和領域16との間に、例えばAlなどのp型不純物を含み、p型の導電型を有する接続領域17が設けられていてもよい。この場合、Z方向から平面視したときにコンタクトホール122と重なるように、接続領域17に開口17Xが形成されている。ショットキー電極121の直下において、第2領域11Bと第1領域11Aとが第1面11Cにて直接接している。電界緩和領域16の非活性領域120B内の部分は第2埋込領域の一例であり、第2半導体領域の一部である。また、開口16Xは第2開口の一例である。
【0047】
層間絶縁膜83に、ゲートパッド84用のコンタクトホール123が形成されている。ゲートパッド84はコンタクトホール123を通じて一部のゲート電極82に接続されている。また、層間絶縁膜83に、ゲートランナー85用のコンタクトホール(図示せず)が形成されており、ゲートランナー85はこのコンタクトホールを通じて一部のゲート電極82に接続されている。各ゲート電極82は、少なくともゲートパッド84又はゲートランナー85のいずれかに接続されている。
【0048】
図2図7及び図9に示されるように、終端領域110内において、層間絶縁膜83及びゲート絶縁膜81に、ショットキー電極111用のコンタクトホール112が形成されている。コンタクトホール112を通じて、第2領域11Bが層間絶縁膜83及びゲート絶縁膜81から露出している。コンタクトホール112内にショットキー電極111が設けられ、ショットキー電極111は第2領域11Bにショットキー接合している。ショットキー電極111はソース配線62に接続される。
【0049】
終端領域110では、第1領域11Aの表面に、埋込領域150と、埋込接合終端拡張(junction termination extension:JTE)領域151と、埋込ガードリング領域152とが設けられている。埋込領域150、埋込JTE領域151及び埋込ガードリング領域152は、例えばAlなどのp型不純物を含み、p型の導電型を有する。埋込領域150のアクセプタ濃度は、例えば5×1017cm-3以上5×1018cm-3以下である。埋込JTE領域151のアクセプタ濃度は、例えば5×1016cm-3以上1×1018cm-3以下である。埋込ガードリング領域152のアクセプタ濃度は、例えば5×1016cm-3以上1×1018cm-3以下である。埋込領域150は第1埋込領域の一例であり、第2半導体領域の一部である。
【0050】
Z方向から平面視したときにコンタクトホール112と重なるように、埋込領域150に開口150Xが形成されている。Z方向から平面視したときに、隣り合う電界緩和領域16の間の距離L1は、開口150Xの最も短い辺の長さL2よりも大きくてもよい。開口150Xに第1領域11Aが露出している。埋込領域150は電界緩和領域16に電気的に接続される。埋込JTE領域151は埋込領域150の外側に設けられ、埋込領域150に接し、埋込領域150に電気的に接続される。埋込ガードリング領域152は埋込JTE領域151の外側に、埋込JTE領域151から離れて設けられている。開口150Xは第1開口の一例である。
【0051】
第2領域11Bの表面に、ジャンクション領域160と、JTE領域161と、ガードリング領域162とが設けられている。ジャンクション領域160、JTE領域161及びガードリング領域162は、例えばAlなどのp型不純物を含み、p型の導電型を有する。ジャンクション領域160のアクセプタ濃度は、例えば5×1016cm-3以上1×1018cm-3以下であり、JTE領域161のアクセプタ濃度は、例えば5×1016cm-3以上1×1018cm-3以下である。ガードリング領域162のアクセプタ濃度は、例えば5×1016cm-3以上1×1018cm-3以下である。
【0052】
Z方向から平面視したときにコンタクトホール112と重なるように、ジャンクション領域160に開口160Xが形成されている。開口160Xに第2領域11Bが露出している。ジャンクション領域160はコンタクト領域18に電気的に接続される。JTE領域161はジャンクション領域160の外側に設けられ、ジャンクション領域160に接し、ジャンクション領域160に電気的に接続される。ガードリング領域162はJTE領域161の外側に、JTE領域161から離れて設けられている。
【0053】
なお、上記各不純物領域におけるアクセプタの濃度及びドナーの濃度は、例えば走査型静電容量顕微鏡(scanning capacitance microscope:SCM)を用いた測定又は二次イ
オン質量分析(secondary ion mass spectrometry:SIMS)等により測定できる。
【0054】
次に、実施形態に係るMOSFET100の製造方法について説明する。図10図37は、実施形態に係るMOSFET100の製造方法を示す断面図である。図10図13図16図19図22図23図26図29図32及び図35は、図4に示す断面の変化を示す。図11図14図17図20図24図27図30図33及び図36は、図5に示す断面の変化を示す。図12図15図18図21図25図28図31図34及び図37は、図7に示す断面の変化を示す。
【0055】
まず、図10図11及び図12に示されるように、炭化珪素単結晶基板50上にドリフト領域11の第1領域11Aがエピタキシャル成長により形成される。このエピタキシャル成長は、例えば原料ガスとしてシラン(SiH)とプロパン(C)との混合ガスを用い、キャリアガスとして例えば水素ガス(H)を用いた化学気相成長(Chemical Vapor Deposition:CVD)法により行うことができる。また、このときドナーとし
て例えば窒素(N)やリン(P)を導入することが好ましい。
【0056】
次に、図13図14及び図15に示されるように、第1領域11Aの上面に、電界緩和領域16と、埋込領域150と、埋込JTE領域151と、埋込ガードリング領域152とが形成される。具体的には、第1領域11Aの上面にイオン注入が行われる。電界緩和領域16と、埋込領域150と、埋込JTE領域151と、埋込ガードリング領域152とを形成するためのイオン注入においては、例えばアルミニウム(Al)などのアクセプタがイオン注入される。
【0057】
次に、図16図17及び図18に示されるように、第1領域11Aの上に第2領域11Bがエピタキシャル成長により形成される。このエピタキシャル成長は、例えば原料ガスとしてシラン(SiH)とプロパン(C)との混合ガスを用い、キャリアガスとして例えば水素ガス(H)を用いたCVD法により行うことができる。また、このときドナーとして例えば窒素(N)やリン(P)を導入することが好ましい。
【0058】
次に、図19図20及び図21に示されるように、接続領域17と、ボディ領域12と、ソース領域13と、コンタクト領域18と、ジャンクション領域160と、JTE領域161と、ガードリング領域162とが形成される。具体的には、ドリフト領域11の上面にイオン注入が行われる。接続領域17、ボディ領域12、コンタクト領域18、ジャンクション領域160、JTE領域161、ガードリング領域162を形成するためのイオン注入においては、例えばアルミニウム(Al)などのアクセプタがイオン注入される。ソース領域13を形成するためのイオン注入においては、例えばリン(P)などのドナーがイオン注入される。これにより、ドリフト領域11、ボディ領域12及びソース領域13等を有する炭化珪素基板10が形成される。なお、イオン注入に代わり、不純物の添加をともなうにエピタキシャル成長が用いられてもよい。
【0059】
次に、イオン注入により添加された不純物を活性化するための活性化熱処理が行われる。この熱処理の温度は、好ましくは1500℃以上1900℃以下であり、例えば1700℃程度である。熱処理の時間は、例えば30分程度である。熱処理の雰囲気は、好ましくは不活性ガス雰囲気であり、例えばAr雰囲気である。以上のように炭化珪素基板10が準備される。
【0060】
次に、図22に示されるように、炭化珪素基板10にゲートトレンチ5が形成される。例えば、第1主面1上に、ゲートトレンチ5が形成される位置上に開口を有するマスク層(図示せず)が形成される。マスク層を用いて、ソース領域13の一部と、ボディ領域12の一部と、ドリフト領域11の一部とがエッチングにより除去される。エッチングの方法としては、例えば反応性イオンエッチング、特に誘導結合プラズマ反応性イオンエッチングを用いることができる。具体的には、例えば反応ガスとして六フッ化硫黄(SF)またはSFと酸素(O)との混合ガスを用いた誘導結合プラズマ反応性イオンエッチングを用いることができる。エッチングにより、ゲートトレンチ5が形成されるべき領域に、第1主面1に対してほぼ垂直な側部と、側部と連続的に設けられ、かつ第1主面1とほぼ平行な底部とを有する凹部(図示せず)が形成される。
【0061】
次に、凹部において熱エッチングが行われる。熱エッチングは、第1主面1上にマスク層が形成された状態で、例えば、少なくとも1種類以上のハロゲン原子を有する反応性ガスを含む雰囲気中での加熱によって行い得る。少なくとも1種類以上のハロゲン原子は、塩素(Cl)原子及びフッ素(F)原子の少なくともいずれかを含む。当該雰囲気は、例えば、塩素(Cl)、三塩化ホウ素(BCl)、SFまたは四フッ化炭素(CF)を含む。例えば、塩素ガスと酸素ガスとの混合ガスを反応ガスとして用い、熱処理温度を、例えば800℃以上900℃以下として、熱エッチングが行われる。なお、反応ガスは、上述した塩素ガスと酸素ガスとに加えて、キャリアガスを含んでいてもよい。キャリアガスとしては、例えば窒素ガス、アルゴンガスまたはヘリウムガスなどを用いることができる。
【0062】
上記熱エッチングにより、炭化珪素基板10の第1主面1にゲートトレンチ5が形成される。ゲートトレンチ5は、側面3と、底面4とにより規定される。側面3は、ソース領域13と、ボディ領域12と、ドリフト領域11とにより構成される。底面4は、ドリフト領域11の第2領域11Bにより構成される。次に、マスク層が第1主面1から除去される。
【0063】
次に、図23図24及び図25に示されるように、ゲート絶縁膜81が形成される。例えば炭化珪素基板10を熱酸化することにより、ソース領域13と、ボディ領域12と、ドリフト領域11と、コンタクト領域18と、第2領域11Bと、ジャンクション領域160と、JTE領域161と、ガードリング領域162とに接するゲート絶縁膜81が形成される。具体的には、炭化珪素基板10が、酸素を含む雰囲気中において、例えば1300℃以上1400℃以下の温度で加熱される。これにより、第1主面1と、側面3及び底面4に接するゲート絶縁膜81が形成される。なお、ゲート絶縁膜81が熱酸化により形成された場合、厳密には、炭化珪素基板10の一部がゲート絶縁膜81に取り込まれる。このため、以降の処理では、熱酸化後のゲート絶縁膜81と炭化珪素基板10との間の界面に第1主面1、側面3及び底面4が若干移動したものとする。
【0064】
次に、一酸化窒素(NO)ガス雰囲気中において炭化珪素基板10に対して熱処理(NOアニール)が行われてもよい。NOアニールにおいて、炭化珪素基板10が、例えば1100℃以上1400℃以下の条件下で1時間程度保持される。これにより、ゲート絶縁膜81とボディ領域12との界面領域に窒素原子が導入される。その結果、界面領域における界面準位の形成が抑制されることで、チャネル移動度を向上させることができる。
【0065】
次に、図26図27及び図28に示されるように、ゲート電極82が形成される。ゲート電極82は、ゲート絶縁膜81上に形成される。ゲート電極82は、例えば減圧CVD(Low Pressure - Chemical Vapor Deposition:LP-CVD)法により形成される。ゲート電極82は、ソース領域13と、ボディ領域12と、ドリフト領域11との各々に対面するように形成される。
【0066】
次に、図29図30及び図31に示されるように、層間絶縁膜83が形成される。具体的には、ゲート電極82を覆い、かつゲート絶縁膜81と接するように層間絶縁膜83が形成される。層間絶縁膜83は、例えば、CVD法により形成される。層間絶縁膜83は、例えば二酸化珪素を含む材料から構成される。層間絶縁膜83の一部は、ゲートトレンチ5の内部に形成されてもよい。
【0067】
次に、図32に示されるように、層間絶縁膜83及びゲート絶縁膜81のエッチングが行われることで、層間絶縁膜83及びゲート絶縁膜81にコンタクトホール90が形成される。この結果、ソース領域13及びコンタクト領域18が層間絶縁膜83及びゲート絶縁膜81から露出する。
【0068】
次に、第1主面1においてソース領域13及びコンタクト領域18に接するコンタクト電極61用の金属膜(図示せず)が形成される。コンタクト電極61用の金属膜は、例えばスパッタリング法により形成される。コンタクト電極61用の金属膜は、例えばNiを含む材料から構成される。次に、第2主面2において炭化珪素単結晶基板50に接するドレイン電極70用の金属膜(図示せず)が形成される。ドレイン電極70用の金属膜は、例えばスパッタリング法により形成される。ドレイン電極70用の金属膜は、例えばNiを含む材料から構成される。
【0069】
次に、合金化アニールが実施される。コンタクト電極61用の金属膜及びドレイン電極70用の金属膜が、例えば900℃以上1100℃以下の温度で5分程度保持される。これにより、コンタクト電極61用の金属膜の少なくとも一部及びドレイン電極70用の金属膜の少なくとも一部が、炭化珪素基板10が含む珪素と反応してシリサイド化する。これにより、ソース領域13及びコンタクト領域18とオーミック接合するコンタクト電極61と、炭化珪素単結晶基板50とオーミック接合するドレイン電極70とが形成される。コンタクト電極61が、Tiと、Alと、Siとを含む材料から構成されてもよい。ドレイン電極70が、Tiと、Alと、Siとを含む材料から構成されてもよい。
【0070】
次に、図33及び図34に示されるように、層間絶縁膜83及びゲート絶縁膜81のエッチングが行われることで、層間絶縁膜83及びゲート絶縁膜81にコンタクトホール112及び122が形成される。この結果、第2領域11Bが層間絶縁膜83及びゲート絶縁膜81から露出する。
【0071】
次に、第1主面1において第2領域11Bに接するショットキー電極111及び121が形成される。ショットキー電極111及び121は、例えばスパッタリング法により形成される。ショットキー電極111及び121は、例えばHf、Zr、Ta、Mn、Nb及びVを含む材料から構成される。
【0072】
次に、図35図36及び図37に示されるように、層間絶縁膜83及びゲート絶縁膜81のエッチングが行われることで、層間絶縁膜83及びゲート絶縁膜81にコンタクトホール123が形成される。この結果、ゲート電極82が層間絶縁膜83及びゲート絶縁膜81から露出する。次に、ソース配線62と、ゲートパッド84と、ゲートランナー85とが形成される。ソース配線62、ゲートパッド84及びゲートランナー85は、例えばスパッタリング法による成膜及びRIEにより形成される。ソース配線62、ゲートパッド84及びゲートランナー85は、例えばアルミニウムを含む材料から構成される。コンタクト電極61とソース配線62とを有するソース電極60が形成される。
【0073】
このようにして、実施形態に係るMOSFET100が完成する。
【0074】
本実施形態に係るMOSFET100では、Z方向から平面視したときに、埋込領域150に形成された開口150Xと重なるようにショットキー電極111が設けられている。このため、第1ショットキーバリアダイオード22が動作すると、電流が開口150Xを通じてドレイン電極70に向けて流れる。開口150Xが形成されていない場合、電流は埋込領域150を迂回するように流れるのに対し、開口150Xが形成されていることで電流経路を短縮できる。そして、電流経路の抵抗の低減により第1ショットキーバリアダイオード22を立ち上がりやすくできる。従って、MOSFET100中に寄生しているpn接合を含むダイオードよりも早期に第1ショットキーバリアダイオード22を動作させ、pn接合ダイオードの動作に伴う特性の低下を抑制できる。
【0075】
Z方向から平面視したときに、活性領域120A内で隣り合う電界緩和領域16の間の距離L1が開口150Xの最も短い辺の長さL2よりも大きいことで、埋込領域150における電界集中を緩和し、終端領域110の耐圧の低下を抑制できる。
【0076】
非活性領域120B内に第2ショットキーバリアダイオード23が設けられ、Z方向から平面視したときに、電界緩和領域16に形成された開口16Xと重なるように第2ショットキーバリアダイオード23のショットキー電極121が設けられている。このため、非活性領域120B内におけるpn接合ダイオードの動作に伴う特性の低下を抑制できる。
【0077】
複数の第2ショットキーバリアダイオード23が、Z方向から平面視したときに、ゲートパッド84に沿って配置されていることで、ゲートパッド84の下方の電界緩和領域16を含むpn接合ダイオードの動作に伴う特性の低下を抑制できる。また、複数の第2ショットキーバリアダイオード23が、Z方向から平面視したときに、ゲートランナー85に沿って配置されていることで、ゲートランナー85の下方の電界緩和領域16を含むpn接合ダイオードの動作に伴う特性の低下を抑制できる。
【0078】
第2ショットキーバリアダイオード23の立ち上がり電圧は、電界緩和領域16の非活性領域120B内の部分とドリフト領域11との間のpn接合を含むダイオードの立ち上がり電圧よりも低いことが好ましい。pn接合を含むダイオードの動作に伴う特性の低下をより抑制するためである。
【0079】
なお、非活性領域120B内にセンス構造が設けられていてもよく、この場合、複数の第2ショットキーバリアダイオード23が、Z方向から平面視したときに、センス構造に沿って配置されていてもよい。図38は、センス構造を含む炭化珪素半導体装置の例を示す断面図である。図39は、センス構造を含む炭化珪素半導体装置の他の例を示す断面図である。
【0080】
図38に示す例では、センス構造24に沿って第2ショットキーバリアダイオード23が配置されている。センス構造24は、第2領域11Bの表面に形成されたn型領域31を含む。n型領域31は、例えば窒素またはリンなどのドナーが添加されていることでn型を有する。n型領域31は、第1主面1を構成している。n型領域31のドナー濃度は、例えば1×1018cm-3以上1×1020cm-3以下である。層間絶縁膜83及びゲート絶縁膜81に、n型領域31を露出するコンタクトホール124及び125が形成されている。センス構造24は、コンタクトホール124を通じてn型領域31にオーミック接合する端子86と、コンタクトホール125を通じてn型領域31にオーミック接合する端子87とを有する。このセンス構造24では、温度に応じて変化するn型領域31の電気抵抗を端子86及び87を通じて測定することで炭化珪素半導体装置の温度を測定できる。
【0081】
図39に示す例では、センス構造25に沿って第2ショットキーバリアダイオード23が配置されている。センス構造25は、第2領域11Bの表面に形成されたp型領域32と、n型領域33とを含む。p型領域32は、例えばアルミニウムなどのアクセプタが添加されていることでp型を有する。p型領域32は、第1主面1を構成している。p型領域32のアクセプタ濃度は、例えば1×1018cm-3以上1×1020cm-3以下である。n型領域33は、例えば窒素またはリンなどのドナーが添加されていることでn型を有する。n型領域33は、第1主面1を構成している。n型領域33のドナー濃度は、例えば1×1018cm-3以上1×1020cm-3以下である。層間絶縁膜83及びゲート絶縁膜81に、p型領域32を露出するコンタクトホール126と、n型領域33を露出するコンタクトホール127とが形成されている。センス構造25は、コンタクトホール126を通じてp型領域32にオーミック接合する端子88と、コンタクトホール127を通じてn型領域33にオーミック接合する端子89とを有する。このセンス構造25では、温度に応じて変化するp型領域32とn型領域33とを含むダイオードの電気抵抗を端子88及び89を通じて測定することで炭化珪素半導体装置の温度を測定できる。
【0082】
複数の第2ショットキーバリアダイオード23が、Z方向から平面視したときに、センス構造24及び25に沿って配置されていることで、センス構造24及び25の下方の電界緩和領域16を含むpn接合ダイオードの動作に伴う特性の低下を抑制できる。
【0083】
以上、実施形態について詳述したが、特定の実施形態に限定されるものではなく、請求の範囲に記載された範囲内において、種々の変形及び変更が可能である。
【符号の説明】
【0084】
1 第1主面
2 第2主面
3 側面
4 底面
5 ゲートトレンチ
10 炭化珪素基板
11 ドリフト領域(第1半導体領域の一例)
11A 第1領域
11B 第2領域
11C 第1面
12 ボディ領域
12X、16X、17X、18X、150X、160X 開口
13 ソース領域
16 電界緩和領域(第2半導体領域の一部)
17 接続領域
18 コンタクト領域
21 トランジスタ
22 第1ショットキーバリアダイオード
23 第2ショットキーバリアダイオード
24、25 センス構造
31、33 n型領域
32 p型領域
40 炭化珪素エピタキシャル層
50 炭化珪素単結晶基板
60 ソース電極
61 コンタクト電極
62 ソース配線
70 ドレイン電極
81 ゲート絶縁膜
82 ゲート電極
83 層間絶縁膜
84 ゲートパッド
85 ゲートランナー
86、87、88、89 端子
90 コンタクトホール
100 MOSFET
110 終端領域
111 ショットキー電極
112 コンタクトホール
120 素子領域
120A 活性領域
120B 非活性領域
121 ショットキー電極
122、123、124、125、126、127 コンタクトホール
150 埋込領域(第2半導体領域の一部)
151 埋込JTE領域
152 埋込ガードリング領域
160 ジャンクション領域
161 JTE領域
162 ガードリング領域
A、B 領域
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25
図26
図27
図28
図29
図30
図31
図32
図33
図34
図35
図36
図37
図38
図39