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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-03-18
(45)【発行日】2025-03-27
(54)【発明の名称】壁紙の提供方法
(51)【国際特許分類】
   E04F 13/07 20060101AFI20250319BHJP
   D06N 7/00 20060101ALI20250319BHJP
【FI】
E04F13/07 B
D06N7/00
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2023194309
(22)【出願日】2023-11-15
【審査請求日】2024-01-09
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】TOPPANホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105854
【弁理士】
【氏名又は名称】廣瀬 一
(74)【代理人】
【識別番号】100116012
【弁理士】
【氏名又は名称】宮坂 徹
(72)【発明者】
【氏名】木村 武司
【審査官】眞壁 隆一
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-012363(JP,A)
【文献】特開2016-204991(JP,A)
【文献】特開2020-051151(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2009/0044711(US,A1)
【文献】韓国公開特許第10-2009-0030846(KR,A)
【文献】壁紙 クロス のり付き チャレンジセット (スリット壁紙90cm巾+道具) 30m SP9766 (旧SP2895),[online],2019年03月27日,[2024年3月6日検索],<https://store.shopping.yahoo.co.jp/kabegamiyasan/kbc30-sp0030.html>
【文献】2023-2025 SP,[online],株式会社サンゲツ,2023年06月,K15,[2024年3月6日検索],<https://contents.sangetsu.co.jp/digital_book/sp23/?_gl=1*o5morv*_ga*NDM2NzY1MDc1LjE3MDk2OTM4NzA.*_ga_84EXXWDYNY*MTcwOTY5Mzg3MC4xLjEuMTcwOTY5NDM5NS40MS4wLjA.&_ga=2.45309028.1917794228.1709693870-436765075.1709693870>
【文献】DIY|生のり付きスリット壁紙の貼り方(チャレンジセット編) RESTA,Youtube [online] [video],restachannel / リスタチャンネル DIY教室,2016年04月19日,[2024年3月6日検索],<https://www.youtube.com/watch?v=dtHAbBTreCk>,0:04~8:09
【文献】【楽天市場】破れにくい壁紙 のりなし 53cm×10m _ 1ロール単位 賃貸 はがせる壁紙 クロス 貼り替え お,[online],2023年03月31日,[2024年9月27日検索],<https://item.rakuten.co.jp/kabegamiyahonpo/rkik-yb-green_n/>
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04F 13/07
D06N 1/00- 7/06
D21H 27/00-27/42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
無地調で幅方向寸法一定の壁紙の提供方法であって、
柄合わせ用のマークを含まない無地調の反物状の壁紙原反ロールを生成する工程と、
前記壁紙原反ロールの少なくとも幅方向の一端側を切り落とすことで、当該一端側はその端部まで施工可能な領域であり且つ前記壁紙の前記幅方向寸法以上の幅を有する幅方向寸法一定の壁紙ロールを生成する工程と、
前記壁紙ロールを出荷する工程と、
を備え、
前記各工程を一の製造業者の管理下で行うことを特徴とする壁紙の提供方法。
【請求項2】
前記壁紙ロールを生成する工程では、前記壁紙原反ロールの幅方向の両端側それぞれを切り落とすことで、当該両端側はそれぞれその端部まで施工可能な領域であり且つ前記壁紙の前記幅方向寸法と同一幅を有する幅方向寸法一定の壁紙ロールを生成することを特徴とする請求項1に記載の壁紙の提供方法。
【請求項3】
前記無地調は、無地、砂目、布目、ストライプ、および幾何学意匠のうちの少なくとも一つであることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の壁紙の提供方法。
【請求項4】
前記壁紙ロールは、接着剤及び離型紙を有していない壁紙ロールであることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の壁紙の提供方法。
【請求項5】
切り落とした、前記壁紙原反ロールの少なくとも幅方向の一端側の部分を回収し、回収した部分を構成する材料の種類を考慮して前記材料を分別する工程と、
前記分別した材料に対して、再利用できるように所定の処理を施す工程と、を備え、
前記分別する工程及び前記処置の処理を施す工程も、前記一の製造業者の管理下で行うことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の壁紙の提供方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、壁紙の提供方法および壁紙ロールに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、屋内の壁面等への壁紙の施工方法として、重ね貼り施工法が知られている。この重ね貼り施工法は、耳部を備えた壁紙用のシートを用い、2枚のシートの耳部を数cm重ねて位置決めした後に、両方のシートが重なる部分をカッター等の刃物で切断し、両方のシートの不要な部分を取り除いた後、ジョイントローラー等で、壁面等に貼り付ける施工法である(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
また、耳部を有していない壁紙用のシート、つまり、貼着後の壁紙と同一幅のシートを用い、シートを重ねずに、既に貼着された壁紙と新たに貼着するシート同士の小口面を突き合わせて納める突き合わせ工法等も知られている。例えば、無地調(無地、砂目、布目、ストライプ、幾何学意匠等)とされる絵柄意匠壁紙においては、突き合わせ施工も多く用いられている。
【0004】
突き合わせ施工では、施工時の糊塗布直前に糊付け機上にて、壁紙用のシートをおおよそ有効幅にスリットし、スリットされた両端部はその場で廃棄されることとなる。
【0005】
一方、様々な絵柄意匠を有する壁紙の場合、この壁紙用のシートには、隣接する壁紙間で絵柄意匠が連続するように張り合わせるための柄合わせマークが必要となり、この柄合わせマークを有効幅の外側の廃棄する部分に設ける必要がある。そのため、この壁紙用のシートは、有効幅より片側10mm以上広く設計されている。この柄合わせマークは、柄合わせの際にのみ必要であり、張り合わせた後は、不要なものであることから、有効幅の外側の廃棄する部分に設けられている。
【0006】
このように、絵柄意匠を有する壁紙と無地調の壁紙とが共存することから、製造工程の共通化などの目的で、施工時に廃棄することにはなるものの、無地調壁紙の両端部にも余白部分を設けている。
時として、無地調壁紙であっても生産時に僅かながら余白を必要とする場合があるが、この場合でも突き付け施工を行う上では、有効幅外にあたる端部は廃棄されることとなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】実開平2-106500号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
現状、壁紙用のシートの、施工時に廃棄される有効幅外にあたる端部は、端部廃棄物として他の廃棄物と混合され、産業廃棄物として施工業者が持ち帰り廃棄処理を行っている。施工業者は有効幅外にあたる端部廃棄物の材料を理解していないか、塩ビもしくはその他のプラスチックであるかが判別できないか、紙との一体物で分別が不可能であったりするため、端部廃棄物を、施工業者が分別することは不可能であり、その結果、産業廃棄物として廃棄している。
【0009】
そのため、製造から施工までの過程で生じる廃棄物量を削減し、さらに廃棄物を再利用する事の可能な壁紙が望まれていた。
本発明は、上記のような点に着目してなされたものであり、製造から施工までの過程で生じる廃棄物量を削減し、且つ廃棄物を再利用することの容易な壁紙の提供方法及び壁紙ロールを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本願発明の一態様によれば、無地調で幅方向寸法一定の壁紙の提供方法であって、無地調の反物状の壁紙原反ロールを生成する工程と、壁紙原反ロールの少なくとも幅方向の一端側を切り落とすことで、一端側はその端部まで施工可能な領域であり且つ壁紙の幅方向寸法以上の幅を有する幅方向寸法一定の壁紙ロールを生成する工程と、壁紙ロールを出荷する工程と、を備え、壁紙原反ロールを生成する工程では、柄合わせ用のマークを含まない絵柄意匠を有する壁紙原反ロールを生成する、壁紙の提供方法が提供される。
【0011】
ここで言う、柄合わせ用のマークとは、隣接する壁紙間で絵柄意匠が連続するように張り合わせるための、壁紙の長手方向の位置決めを行うためのマークのことをいう。
【0012】
また、本発明の他の態様によれば、幅方向寸法一定の壁紙を切り出すようにした反物状の壁紙ロールであって、幅方向寸法一定であり且つ壁紙の幅以上の幅を有し、少なくとも幅方向の一端側はその端部まで施工可能な領域であり、柄合わせ用のマークを含まない絵柄意匠を有する、壁紙ロールが提供される。
【発明の効果】
【0013】
本発明の一態様によれば、製造から施工までの過程で生じる廃棄物量を削減することができ、且つ廃棄物を再利用することの可能な壁紙の提供方法及び壁紙ロールを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の一実施形態に係る壁紙の一例を模式的に示す平面図である。
図2】壁紙原反ロールの一例を模式的に示す平面図である。
図3】本発明の動作説明に供する説明図である。
図4】枚葉紙の施工方法を説明するための説明図である。
図5】壁紙ロールの他の例を模式的に示す斜視図である
【発明を実施するための形態】
【0015】
次に、本発明の一実施形態について、以下に図面を参照して説明する。
ここで、図面は模式的なものであり、厚みと平面寸法との関係、各層の厚みの比率等は現実のものとは異なる。また、以下に示す実施形態は、本発明の技術的思想を具体化するための構成を例示するものであって、本発明の技術的思想は、構成部品の材質、形状、構造等が下記のものに特定するものでない。本発明の技術的思想は、特許請求の範囲に記載された請求項が規定する技術的範囲内において、種々の変更を加えることができる。
【0016】
また、以下に示す実施形態では、壁紙原反ロール、壁紙ロール、枚葉紙、及び壁紙を、それぞれ次のように定義する。
壁紙原反ロールとは、後述の図3(a)に示すように、後に壁紙となるシートが反物状に巻き取られた状態であり、製造過程で帯状のシートを両端側からつかむため等に用いられる耳部を、幅方向両端それぞれに備えた状態にあるシートが巻き取られてなるロールのことを意味する。
【0017】
壁紙ロールとは、後述の図3(b)に示すように、壁紙原反ロールにおいて、幅方向両端に設けられたスリットライン3の位置で、スリットライン3よりも両端側を切り落とした状態のシートが、反物状に巻き取られてなる、幅が有効幅L1のロールのこと、又は、壁紙原反ロールにおいて、幅方向両端に設けられたスリットライン3のうちの一方の位置でのみスリットライン3よりも端部側を切り落とした状態のシートが、反物状に巻き取られてなる、幅方向一端のみに耳部を備えたシートを巻き取ったロールのことをいう。
【0018】
枚葉紙とは、壁紙ロールにおいて、シートの長さを施工対象物の長さに合わせて切断したシートのことをいう。壁紙ロールが図3(b)に示すように耳部をもたない有効幅L1の幅を有する場合は、この壁紙ロールから得られる枚葉紙は、耳部を持たない有効幅L1を有するシートとなる。壁紙ロールが図5に示すように一方の端部のみに耳部を有する場合は、この壁紙ロールから得られる枚葉紙は、一方の端部のみに耳部を有し、有効幅L1よりも耳部の分だけ幅が広いシートとなる。
【0019】
壁紙とは、図4に示すように、施工対象物に張り合わされた後のシートのことをいい、耳部をもたず、有効幅L1の幅を有するシートのことをいう。
【0020】
<壁紙の構成>
図1は、壁紙1の構成を模式的に示す平面図である。
壁紙1は、幅方向一定寸法であり、幅方向両端の領域まで施工可能な領域であって、有効幅L1は、例えばJIS A 6921で規定される壁紙の有効幅に準じて、920mmに設定される。壁紙1の長手方向の長さは、施工対象物の長さと同等である。
壁紙1は、例えば、基材と、発泡樹脂層と、無地調の印刷層と、表面保護層とがこの順に積層されて形成される。なお、壁紙1の構成は、これに限る物ではなく材料を用いて形成することができる。
【0021】
<壁紙の提供方法>
次に、壁紙1の提供方法を、図2図4を伴って説明する。
(製造工程)
まず、壁紙1の有効幅L1(920mm)と、余裕代αとを考慮した、例えば930mm程度の幅(以下、基材幅L2という。)を有するシート状の基材を用意する。
基材の一方の面に、発泡樹脂層となる発泡剤含有組成物の層を形成し、シート状態にする。
【0022】
次に、発泡剤含有組成物の層の、基材とは逆側の面に、印刷手法を用いて例えば単色を印刷し、無地調の印刷層を形成する。印刷層は、基材の幅方向中央に位置するように印刷され、有効幅L1と余裕代との和に相当する印刷幅L3全体に印刷される。
次に、印刷層の上に、例えばアクリル系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂等を塗布し、表面保護層を形成する。
【0023】
続いて、表面保護層の上に、印刷手法を用いてスリットライン3を印刷する。スリットライン3は例えば水溶性のインクを用いて印刷してよい。
スリットライン3は、基材幅L2を有する基材上に上記各層が積層されて形成された反物状のシートから、有効幅L1の枚葉紙を切り出す際の切断位置を示す線分であって、基材の幅方向中央を起点として、幅方向左右に460mmずつ振り分けた位置に印刷する。
【0024】
続いて加熱することにより、発泡剤含有組成物の層を発泡させて発泡樹脂層を形成し、続いて必要に応じてエンボスロールによって、表面保護層側からエンボス加工を行ってエンボス模様を形成する。このようにして基材の一方の面上に上記各層が積層されて形成されたシートを反物状に巻き取ることによって、図3(a)に示す幅方向寸法一定の壁紙原反ロール10が形成される。この時点では、壁紙原反ロール10は基材幅L2を有する基材に形成された状態であり、壁紙原反ロール10の幅は、有効幅L1よりも広い。
【0025】
なお、壁紙原反ロール10は、隣接する壁紙間で絵柄意匠が連続するように張り合わせるための柄合わせマーク(柄合わせ用のマーク)を持たない。壁紙原反ロール10は、柄合わせマークを含まない絵柄意匠を有する。
【0026】
続いて、基材幅L2を有する壁紙原反ロール10を、そのスリットライン3に沿って切断し、スリットライン3よりも端部側の部材を両端それぞれについて切り落とす。これによって、有効幅L1を有する無地調のシートが、反物状に巻き取られた図3(b)に示す壁紙ロール20を得ることができる。壁紙原反ロール10の両端側部分をスリットライン3から切り落とした後に、スリットライン3が残る場合には、この時点で、水で濡らして適度に絞ったスポンジ等で擦ることで残ったスリットライン3を消去するようにしてもよい。
【0027】
ここで、印刷幅L3は、有効幅L1よりも大きい。そのため壁紙原反ロール10から切り出された壁紙ロール20は、幅方向両端まで全面に発泡樹脂層、印刷層、および表面保護層が形成されており、幅方向両端まで施工可能な有効幅L1を有するシートからなる無地調で幅方向寸法一定の壁紙ロール20が得られる。
なお、ここでは、表面保護層の上に、スリットライン3を印刷しているが、表面保護層を持たない場合には、スリットライン3は、最表層となる印刷層の上に形成すればよい。
【0028】
この各スリットライン3の位置で端部側が切り落とされた有効幅L1の反物状の壁紙ロール20が、製品として出荷される。
なお、壁紙原反ロール10の長さはそのままで、そのスリットライン3の位置で幅方向両端又はいずれか一端側を切り落としたシートを壁紙ロール20としてもよく、さらにシートの長さをある程度の長さに切断して巻き取ったものを壁紙ロール20としてもよい。
【0029】
(分別工程)
分別工程では、スリットライン3で切り落とした壁紙原反ロール10のシート両端側の部分(以下、耳部ともいう。)を回収し、分別する。
スリットライン3で切り落とした、シート両端側の耳部は、基材上に、発泡樹脂層と、無地調の印刷層と、表面保護層とがこの順に積層された積層体からなり、これら基材や、各層を構成する材料が何であるかを、この壁紙原反ロール10の製造業者は認識している。したがって、材料の種類を考慮してこれらを分別することができる。この分別した材料は、所定の処理を施した後、再利用することができる。例えば、猫用トイレ砂として活用することができる。
【0030】
<施工方法>
施工対象物に壁紙1を施工する際には、施工業者は、図3(c)に示すように、壁紙ロール20のシートを施工対象物の長さに応じて切断し、複数の枚葉紙21を得る。ここで、壁紙ロール20の幅は、有効幅L1である(図3(b))。そのため、長手方向の長さが施工対象物に応じて高さとなるようにして壁紙ロール20のシートを切断すればよい。
【0031】
次に、1枚目の枚葉紙21aを施工対象物に張り付ける。次に、2枚目の枚葉紙21bを、枚葉紙21aの例えば右側に配置し、枚葉紙21aの右側と枚葉紙21bの左側とが突き合うようにして枚葉紙21bを張り付ける(図4)。以後、同様の手順で枚葉紙21を順に貼り合わせる。これにより、施工対象物に対して、複数の枚葉紙21(図4では、3枚)が施工された状態となり、すなわち、有効幅L1を有する壁紙1(1a~1c)が施工対象物に貼付された状態となる。
【0032】
ここで、壁紙ロール20から切り出した枚葉紙21は、その幅方向両端のいずれにも耳部がない。そのため、枚葉紙21を施工対象物に張り付けた後、耳部を除去する工程が不要である。
【0033】
また、壁紙1は無地調であるため、壁紙1a~1c(枚葉紙21)どうしの柄合わせを考慮する必要はない。そのため、枚葉紙21が柄合わせマークを備えていなくても容易に張り付けることができる。
【0034】
<効果>
(1)出荷された壁紙ロール20の幅は有効幅L1であって、耳部をもたない。そのため、施工業者は、壁紙ロール20の長手方向を所定の長さに切断して枚葉紙21を得て、これを施工対象物に張り付ければよく、耳部を切断する処理などを行う必要はない。
【0035】
また、無地調の枚葉紙(壁紙)であるため、柄合わせマークを備えていなくても、枚葉紙21の端部同士を突き合わせて張り付けるだけで、枚葉紙21を容易に張り付けることができる。
【0036】
また、施工業者は、枚葉紙21を得る際も、枚葉紙21を施工対象物に張り付けた後も耳部を切り落とす必要がないため、重ね貼りする際に用いるカットテープを用いる必要がなく、また、耳部が無い分、施工糊の使用料も削減することができる、また、最終的に廃棄していた、スリットライン3の位置できり落とされたシートの一部等、施工に伴い生じる不要な材料を削減することができ、施工に伴い生じる廃棄物の削減を図ることができる。
【0037】
(2)壁紙1(枚葉紙21)は、白色や単色カラー、無地、砂目、布目、地模様や、織物調、塗り調、また、ストライプ、幾何学意匠等の無地調の絵柄意匠を有するため、柄合わせマークを用いて柄合わせをする必要はない。そのため不要な柄合わせマークを備えていない分、材料の削減、また製造工程の簡略化を図ることができる。
【0038】
(3)枚葉紙21は耳部を備えていないため、壁紙原反ロール10を生成する際の、基材および各層の幅方向の余裕代は、有効幅L1の壁紙1を得るために壁紙原反ロール10を生成する工程で必要とする最小幅であればよい。そのため、柄合わせマークを設けること等を目的として耳部を設ける場合に比較して、製造工程で必要な耳部の幅を小さくすることができ、その分、製造時に必要な各種材料を削減することができ、その結果、生産に要する手間やエネルギの削減を図ることができる。
【0039】
また、耳部を設けない分、壁紙ロール20を軽量化および小型化することができ、運送効率を向上させることができ、また、環境配慮の観点からも有益である。
【0040】
(4)壁紙原反ロール10から壁紙ロール20を切り出した後、この耳部を持たない壁紙ロール20を出荷しているため、壁紙原反ロール10の耳部に相当する部分、つまり、スリットライン3の位置で切り落としたシートの両端部分は、製造業者側に残る。
【0041】
製造業者は、シートの材料を認識しているため、耳部を分別して再利用することができる。仮に、耳部を施工業者側で切り落とすようにした場合、施工業者側では、耳部の材料を理解していないか、塩ビもしくはその他のプラスチックであるかが判別できないか、紙との一体物で分別が不可能であったりするため、分別することができず、廃棄物として廃棄せざるを得ない。
【0042】
本実施形態に係る壁紙ロール20の場合、製造業者は、耳部の材料を認識しており、的確に分別することができる。そのため、従来、廃棄していた耳部の部分を分別し、再利用することができ、昨今の環境に配慮した壁紙を得ることができる。
【0043】
ちなみに、耳部を備えた壁紙の場合、図2に示す有効幅L1が920mmである仮定すると、印刷幅L3は920mm以上であり、基材幅L2は960mm~980mm程度が必要であり、結果的に、最終的に廃棄する耳部の幅は、左右端合わせて40mm~60mm程度となり、幅方向の5%程度の部分が廃棄されていた。本実施形態に係る壁紙の提供方法によれば、この廃棄される耳部の幅をより小さくすることができる。
【0044】
<変形例>
(1)壁紙1の幅は、必ずしもJIS A 6921に準ずる920mmでなくてもよく、300mm、600mm、1000mm等、任意幅の壁紙1を製造する場合であっても適用することができる。
(2)壁紙ロール20は、耳部を備えていない。そのため、ロール状に巻回された壁紙ロール20の両端に傷がつくことを保護するため、梱包時に厚紙等を耳あてとして壁紙ロール20の両端に配置した状態で梱包するようにしてもよい。
(3)本実施形態では、壁紙ロール20の左右端両方共に耳部を有していない場合について説明したが、図5に示すように、左右端のうちのいずれか一方は耳部を有し、他方は耳部を持たないという構成であってもよい。
【0045】
この場合には、壁紙ロール20を切断して得た枚葉紙21は、幅方向一端側に耳部を有する。そのため、枚葉紙21を施工対象物に貼付する前に耳部を切り落とす工程か枚葉紙21を施工対象物に貼付し、枚葉紙21を重ね貼りした後、一端側については耳部を切り落とす工程が必要である。
【0046】
この場合、壁紙ロール20の一端は耳部を持たないため、両端に耳部を有している場合に比較して、材料の削減やエネルギロスの削減を図り、運送効率を向上させることができると共に、施工時に生じる廃棄物量を削減することができる。また、一方の端部は耳部であるため、壁紙ロール20を立てかけて載置する場合には、耳部のある側が下となるようにして立てかけることによって、施工可能な部分が変形したり傷がついたりすることを抑制することができる。
【符号の説明】
【0047】
1 壁紙
3 スリットライン
10 壁紙原反ロール
20 壁紙ロール
21 枚葉紙
【要約】
【課題】製造から施工までの過程で生じる廃棄物量を削減し、且つ廃棄物を再利用することの可能な壁紙の提供方法を提供する。
【解決手段】無地調の反物状の壁紙原反ロール10を生成し、壁紙原反ロール10の少なくとも幅方向の一端側を切り落とすことで、少なくとも一端側はその端部まで施工可能な領域であり且つ壁紙1の幅方向寸法以上の幅を有する幅方向寸法一定の壁紙ロール20を生成し、この壁紙ロール20を出荷する。壁紙原反ロール10は、柄合わせ用のマークを含まない絵柄意匠を有するように生成する。施工時には、壁紙ロール20の少なくとも一端側は耳部を切り落とす工程が不要であり、その分、施工工程の簡略化を図ることができる。また、少なくとも一端側は製造業者側で耳部を切り落としており、製造業者側は耳部の材料を認識しているため、耳部を容易に分別し再利用することができる。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4
図5