(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-03-18
(45)【発行日】2025-03-27
(54)【発明の名称】交通監視装置、交通監視システム、交通監視方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
G08G 1/01 20060101AFI20250319BHJP
G08G 1/04 20060101ALI20250319BHJP
G08G 1/056 20060101ALI20250319BHJP
G01B 11/00 20060101ALI20250319BHJP
【FI】
G08G1/01 E
G08G1/04 A
G08G1/056
G01B11/00 G
(21)【出願番号】P 2023503701
(86)(22)【出願日】2022-02-16
(86)【国際出願番号】 JP2022006216
(87)【国際公開番号】W WO2022185922
(87)【国際公開日】2022-09-09
【審査請求日】2023-08-30
(31)【優先権主張番号】P 2021034187
(32)【優先日】2021-03-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004237
【氏名又は名称】日本電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110928
【氏名又は名称】速水 進治
(72)【発明者】
【氏名】高橋 尚武
(72)【発明者】
【氏名】櫻井 均
【審査官】武内 俊之
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-043094(JP,A)
【文献】国際公開第2020/116030(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08G 1/01
G08G 1/04
G08G 1/056
G01B 11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
道路における渋滞の先頭位置を検出する先頭位置検出手段と、
前記検出された先頭位置の移動が予め定められる基準を満たす場合に、当該基準に応じた渋滞情報を出力する出力手段と、を備え
、
前記基準は、前記先頭位置の移動方向が前記道路の走行方向とは反対の方向であることを含む第1基準を含み、
前記出力手段は、前記検出された先頭位置の移動が前記第1基準を満たす場合に、当該第1基準に応じた出力を行う
交通監視装置。
【請求項2】
前記第1基準は、前記先頭位置の移動速度が予め定められた第1閾値よりも速いことをさらに含む
請求項
1に記載の交通監視装置。
【請求項3】
前記基準は、前記先頭位置の移動方向が前記道路の走行方向であることを含む第2基準を
さらに含み、
前記出力手段は、前記検出された先頭位置の移動が前記第2基準を満たす場合に、当該第2基準に応じた出力を行う
請求項1に記載の交通監視装置。
【請求項4】
前記第2基準は、前記先頭位置の移動速度が予め定められた第2閾値よりも遅いことをさらに含む
請求項
3に記載の交通監視装置。
【請求項5】
前記先頭位置検出手段は、
前記道路における車両位置の履歴を示す履歴情報を生成する位置履歴生成手段と、
前記履歴情報に基づいて、前記道路における渋滞の先頭位置を検出する先頭検出手段と、を含む
請求項1から
4のいずれか1項に記載の交通監視装置。
【請求項6】
前記先頭位置検出手段は、前記道路が同じ方向へ走行するための複数の車線を含む場合に、当該道路の各車線における渋滞の先頭位置を検出する
請求項1から
5のいずれか1項に記載の交通監視装置。
【請求項7】
請求項1から
6のいずれか1項に記載の交通監視装置と、
前記道路に敷設され、光信号の反射を抑制する終端処理が一端に施された光ファイバと、
前記光ファイバに光信号を入力するとともに、当該光信号の入力に伴って生じる後方散乱光同士が干渉した光の強度である光干渉強度の変化量を観測するセンシング装置とを備え、
前記先頭位置検出手段は、前記センシング装置によって観測された前記光干渉強度の変化量に基づいて得られる前記道路における車両位置を取得し、当該車両位置に基づいて、前記道路における渋滞の先頭位置を検出する
交通監視システム。
【請求項8】
コンピュータが、
道路における渋滞の先頭位置を検出することと、
前記検出された先頭位置の移動が予め定められる基準を満たす場合に、当該基準に応じた出力を行うこと、とを含
み、
前記基準は、前記先頭位置の移動方向が前記道路の走行方向とは反対の方向であることを含む第1基準を含み、
前記出力を行うことでは、前記検出された先頭位置の移動が前記第1基準を満たす場合に、当該第1基準に応じた出力を行う
交通監視方法。
【請求項9】
コンピュータを、請求項1から
6のいずれか1項に記載の交通監視装置として機能させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、交通監視装置、交通監視システム、交通監視方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に記載の技術では、交通渋滞が生じていないと判定した場合に逆走車両検出処理を行う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、道路に逆走車が走行していると、道路Rを本来の走行方向に走行している車両は、安全のため減速することが多い。そのため、逆走車が原因で渋滞が発生することがある。特許文献1に記載の技術では、逆走車による渋滞を把握することが困難である。そのため、道路の交通状況を正確に把握することが難しい。
【0005】
本発明は、上述の事情に鑑みてなされたもので、道路の交通状況を正確に把握することが可能な交通監視装置、交通監視システム、交通監視方法及びプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明の第1の観点に係る交通監視装置は、
道路における渋滞の先頭位置を検出する先頭位置検出手段と、
前記検出された先頭位置の移動が予め定められる基準を満たす場合に、当該基準に応じた渋滞情報を出力する出力手段と、を備え、
前記基準は、前記先頭位置の移動方向が前記道路の走行方向とは反対の方向であることを含む第1基準を含み、
前記出力手段は、前記検出された先頭位置の移動が前記第1基準を満たす場合に、当該第1基準に応じた出力を行う。
【0007】
本発明の第2の観点に係る交通監視システムは、
上記の交通監視装置と、
前記道路に敷設され、光信号の反射を抑制する終端処理が一端に施された光ファイバと、
前記光ファイバに光信号を入力するとともに、当該光信号の入力に伴って生じる後方散乱光同士が干渉した光の強度である光干渉強度の変化量を観測するセンシング装置とを備え、
前記先頭位置検出手段は、前記センシング装置によって観測された前記光干渉強度の変化量に基づいて得られる前記道路における車両位置を取得し、当該車両位置に基づいて、前記道路における渋滞の先頭位置を検出する。
【0008】
本発明の第3の観点に係る交通監視方法は、
コンピュータが、
道路における渋滞の先頭位置を検出することと、
前記検出された先頭位置の移動が予め定められる基準を満たす場合に、当該基準に応じた出力を行うこと、とを含み、
前記基準は、前記先頭位置の移動方向が前記道路の走行方向とは反対の方向であることを含む第1基準を含み、
前記出力を行うことでは、前記検出された先頭位置の移動が前記第1基準を満たす場合に、当該第1基準に応じた出力を行う。
【0009】
本発明の第4の観点に係るプログラムは、コンピュータを、上記交通監視装置として機能させるためのものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、広域の交通状況を俯瞰的にリアルタイムで把握することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の一実施の形態に係る交通監視システムの構成及び履歴情報の第1の例を示す図である。
【
図2】
図1に示す履歴情報の第1の例を
図1よりも広い位置及び時間の範囲で示す履歴情報の例である。
【
図3】一実施の形態に係る履歴情報の第2の例を示す図である。
【
図4】
図3に示す履歴情報の第2の例を
図3よりも広い位置及び時間の範囲で示す履歴情報の例である。
【
図5】本発明の一実施の形態に係る交通監視装置の機能的な構成を示す図である。
【
図6】一実施の形態に係る渋滞パターン情報の一例を示す図である。
【
図7】一実施の形態に係る出力部の機能的な構成を示す図である。
【
図8】一実施の形態に係る基準情報の一例を示す図である。
【
図9】本発明の一実施の形態に係る交通監視装置の物理的な構成の一例を示す図である。
【
図10】本発明の一実施の形態に係る交通監視処理の一例を示すフローチャートである。
【
図11】
図10に示す先頭位置検出処理ステップS101の一例を示すフローチャートである。
【
図12】
図10に示す出力処理ステップS102の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の一実施の形態について、図面を参照しつつ説明する。全図を通じて同一の要素には同一の符号を付す。なお、すべての図面において、同様な構成要素には同様の符号を付し、適宜説明を省略する。
【0013】
<一実施の形態に係る交通監視システムの構成>
本発明の一実施の形態に係る交通監視システム100は、
図1に示すように、光ファイバセンシング技術を利用して、道路Rを走行する車両101の交通を監視するためのシステムである。
図1に示す道路Rは、上り方向へ向かうための道路であって、走行車線TLと追越車線OLとを含む。また、車両101は、自動車、二輪車、バス、トラックなどである。
【0014】
なお、道路Rは、典型的には高速道路であるが、一般的なその他の道路であってもよい。また、道路Rに含まれる車線の数は、2つに限られず、1つ以上であればよい。
【0015】
交通監視システム100は、光ファイバOFと、センシング装置102と、交通監視装置103とを備える。
【0016】
光ファイバOFは、道路Rに敷設された光ファイバケーブルである。光ファイバOFは、例えば、一般的に高速道路の路肩部や中央分離帯などに敷設された通信用の多芯光ファイバケーブルのうちの1芯であり、一端にはセンシング装置102が接続され、他端には光信号の反射を抑制する終端処理が施されている。なお、多芯光ファイバケーブルのうちの複数のファイバケーブルが、光ファイバセンシングのための光ファイバOFとして採用されてもよい。
【0017】
センシング装置102は、光ファイバOFに光信号を入力するとともに、当該光信号の入力に伴って生じる後方散乱光同士が干渉した光の強度である光干渉強度の変化量を観測する。
【0018】
詳細には例えば、センシング装置102は、光ファイバOFの一端からパルス波形の光信号を入力する。これにより、光ファイバOFのすべての位置から微弱な後方散乱光と呼ばれる戻り光が生じる。センシング装置102は、当該後方散乱光を観測する。
【0019】
光ファイバOFの周囲で環境変化が生じると、環境変化に伴って光ファイバOFを構成する石英ガラスの構造及び特性パラメータが変化し、当該変化が生じた場所からの後方散乱光の信号品質も変化する。
【0020】
コヒーレンス性が高い光信号を入力し、車両101が道路Rを通行する際の振動が光ファイバOFに伝わると、後方散乱光の位相状態が変化する。この後方散乱光の位相状態の変化は、同時刻に受信する他の後方散乱光との干渉により光強度の変化として観測される。すなわち、センシング装置102は、光ファイバOFに光信号を入力し、振動印加によって生じる光干渉強度の変化量を観測する。
【0021】
振動の発生場所は、光干渉強度の変化量に基づいて求めることができ、光信号を入力してから後方散乱光を観測するまでの往復時間と、光信号の伝搬速度とから算出される。光信号は、光ファイバOFの他端(すなわち、センシング装置102から見て最遠端)からの後方散乱光と、次に入力される光信号とが混在しないように一定の周波数で繰り返し入力される。これにより、光ファイバOFの周辺で生じる振動などの環境変化の推移を正確に、かつ、リアルタイムで観測することができる。
【0022】
このように、光ファイバセンシングとは、光ファイバOFをセンシング媒体として、振動の発生場所などを検出する技術である。当該技術では、通信データの伝送媒体である一般的な光ファイバOFを、線形状のパッシブセンサとして利用することができるので、新たなセンサなどを設置しなくても、広域の交通状況を俯瞰的にリアルタイムで把握することができる。
【0023】
交通監視装置103は、道路Rにおける振動の発生場所を含む観測情報をセンシング装置102から繰り返し取得する。振動の発生場所は、道路Rにおける車両101の位置(車両位置)に対応する。そのため、観測情報は、車両位置を示す位置情報を含む。
【0024】
交通監視装置103は、センシング装置102から繰り返し取得した位置情報に基づいて、車両位置の履歴(すなわち、車両位置の経時的な変化)DHを求める。そして、交通監視装置103は、車両位置の履歴DHに基づいて、道路Rで発生した渋滞を検出する。交通監視装置103は、さらに、当該検出された渋滞の先頭位置の移動に基づいて、渋滞の発生とその原因とを含む渋滞情報を予め定められた装置へ出力する。本実施の形態に係る渋滞の原因は、逆走車、低速車、その他(例えば、事故)である。
【0025】
図1には、本実施の形態に係る履歴情報105a_1の第1の例を併せて示している。履歴情報105a_1は、時刻T10に位置Xにて事故が発生した場合の、道路Rを走行する各車両101の車両位置の履歴DHを示す。
【0026】
同図に示すように、履歴情報105a_1は、道路Rにおける車両位置と時間との関係によって表される。
図1において、道路Rにおける位置を横軸とし時間を縦軸とする図中の実線は、道路Rを走行する各車両101の車両位置の履歴DHを表す。
【0027】
詳細には、履歴情報105a_1は、事故の発生時T10に事故発生場所Xよりも下流を走行していた車両101が順次、低速走行をして停止するまでの各車両101の車両位置の経時的な変化を示す。例えば、事故発生時T10に先頭を走行していた車両101は、この時刻T10から低速走行を開始し、位置FP0にて停止している。
【0028】
低速走行とは、予め定められた速度(例えば、時速40Km)以下での走行である。
【0029】
図2は、
図1に示す履歴情報105a_1の第1の例を、
図1よりも広い位置及び時間の範囲で示す履歴情報105a_2の例である。
【0030】
ここで、
図1及び2に示す点線L11は、事故が発生した場合の低速走行開始線の例である。
【0031】
低速走行開始線とは、道路Rを走行していた各車両101について低速走行開始点を接続する近似線である。また、低速走行開始点とは、履歴DHを含む図において、車両101が低速走行を開始した時刻と当該時刻における車両位置とによって特定される点である。
【0032】
図2に示す点線の枠FR11は、渋滞の定義に対応する領域を示す枠である。
【0033】
渋滞は、適宜定義されてよいが、例えば、基準速度以下(例えば、時速40Km以下)の車両が、所定時間ΔT以内及び所定距離ΔD以内に所定台数以上の車両がある状態などと定義される。以下では、所定台数が、10台である場合を例に説明する。
【0034】
この定義に照らせば、所定時間ΔTが、枠FR11の縦方向の長さに対応する。所定距離ΔDが、枠FR11の横方向の長さに対応する。基準速度以下の走行又は停止を示す履歴DHが枠FR11の領域内に10本(所定台数に応じた数)以上ある場合に、渋滞が発生している。ここで、枠FR11の領域内にある履歴DHとは、上辺から下辺に至る履歴DHである。
【0035】
時刻T12と時刻T13の時間差が、所定時間ΔTであるとする。時刻T13において、枠FR11の領域上辺から下辺に至る基準速度以下の走行又は停止を示す履歴DHが、時刻T10の後に初めて10本となる。すなわち、時刻T13は、時刻T10の後に初めて渋滞が検出される時である。
【0036】
時刻T14は、事故の復旧作業が終了した時である。そのため、時刻T14以降、先頭の車両101から順に、走行を開始している。
【0037】
点線L12は、事故渋滞での渋滞先頭線の例である。渋滞先頭線とは、渋滞の先頭の位置を接続する近似線である。
【0038】
点線L12で示すように、事故渋滞での渋滞先頭線は、時刻T10~T14の間は位置FP10で一定である。そして、時刻T14以降に、走行方向とは反対の方向に移動する。
【0039】
このように、事故渋滞のような一般的な渋滞では、渋滞の先頭位置は、ある程度の時間以上ほとんど移動しない。すなわち、一般的な渋滞において、渋滞の先頭位置は、渋滞が検出されてから予め定められる時間TTH以上、予め定められる範囲内にある。
【0040】
次に、本実施の形態に係る履歴情報105b_1の第2の例を
図3に示す。履歴情報105b_1は、逆走車106が道路Rを走行している場合の、道路Rを走行する各車両101の車両位置の履歴DHを示す。逆走車106とは、道路Rを逆走する車両である。
【0041】
図3においても、
図1に示す履歴情報105
a_1と同様に、道路Rにおける位置を横軸とし時間を縦軸とする図における実線によって、道路Rを走行する各車両101の車両位置の履歴DHが表される例を示す。
【0042】
詳細には、履歴情報105b_1は、逆走車106より下流を走行していた車両101が順次、急速に減速して低速走行となった後、極めて遅い速度で走行するまでの各車両101の車両位置の経時的な変化を示す。例えば、逆走車106を発見した先頭の車両101が急速に減速して時刻T20に低速走行となった後、極めて遅い速度で走行して、時刻T21に位置FP20にあることを示す。
【0043】
図4は、
図3に示す履歴情報105b_1の第1の例を、
図3よりも広い位置及び時間の範囲で示す履歴情報105b_2の例である。
【0044】
ここで、
図3及び4に示す点線L21は、逆走車106が走行している場合の低速走行開始線の例である。
【0045】
点線RHは、逆走車106の走行履歴である。
【0046】
時刻T22と時刻T23の時間差が、所定時間ΔTであるとする。時刻T23において、枠FR21の領域上辺から下辺に至る基準速度以下の走行を示す履歴DHが、時刻T20の後に初めて10本となる。すなわち、時刻T23は、時刻T20の後に初めて渋滞が検出される時である。
【0047】
時刻T24は、道路Rの走行方向へ走行する先頭の車両101が逆走車106とすれ違った後に加速し、高速走行になった時である。高速走行とは、低速走行よりも速い速度での走行である。
【0048】
点線L22は、逆走車106が走行している場合の渋滞先頭線の例である。
【0049】
点線L22で示すように、時刻T23での渋滞先頭位置は、位置FP20である。時刻T24では、それまで先頭であった車両101が高速走行になって渋滞から抜け出すので、渋滞の先頭位置は、位置FP21となる。
【0050】
時刻T25では、それまで先頭であった車両101が位置FP22で高速走行になって渋滞から抜け出す。FR22を参照すると分かるように、渋滞は継続しており、その先頭位置は、位置FP23となる。
【0051】
このように、逆走車106による渋滞では、渋滞の先頭位置が一定の位置に留まることは殆どなく、道路Rの走行方向とは逆の方向へある程度の速さで移動する。すなわち、逆走車106による渋滞において、渋滞の先頭位置は、渋滞が検出されてから予め定められる時間TTHより短い時間内に、道路Rの走行方向とは逆の方向へ移動し、先頭位置の移動速度は、予め定められる第1閾値よりも速い。
【0052】
ここで、
図1~4を参照して、事故による渋滞、逆走車106による渋滞に対応する車両位置の履歴DHのパターンについて説明した。渋滞は、これら以外に、例えば、低速車によって発生することもある。低速車とは、適宜定められる速度よりも遅い車両であって、道路の清掃車両、一般の車両101などである。
【0053】
低速車による渋滞の場合、渋滞の先頭位置は、渋滞が検出されてから予め定められる時間TTHより短い時間内に、道路Rの走行方向へ移動する。この場合の渋滞の先頭位置の移動速度は、予め定められる第2閾値よりも遅い。
【0054】
<交通監視装置103の機能的な構成>
本実施の形態に係る交通監視装置103は、入力部110と、先頭位置検出部112と、出力部114と、を備える。
【0055】
入力部110は、ユーザが指示などを入力するためのキーボード、マウス、タッチパネルなどである。
【0056】
先頭位置検出部112は、道路Rおける車両位置をセンシング装置102から取得し、当該車両位置に基づいて、道路Rにおける渋滞の先頭位置を検出する。
【0057】
先頭位置検出部112は、位置履歴生成部112aと、先頭検出部112bとを含む。
【0058】
位置履歴生成部112aは、道路Rおける車両位置を取得し、当該車両位置に基づいて、道路Rにおける車両101の車両位置の履歴DHを示す履歴情報105を生成する。ここで、履歴情報105は、上述の履歴情報105a_1,105a_2,105b_1,105b_2の総称である。また、先頭検出部112bは、車両位置の履歴DHに基づいて、道路Rで発生している渋滞の先頭位置を検出する。
【0059】
詳細には、位置履歴生成部112aは、車両位置取得部112a_1と、履歴生成部112a_2と、第1学習モデル記憶部112a_3とを含む。
【0060】
車両位置取得部112a_1は、道路Rに敷設された光ファイバOFを利用した光ファイバセンシングに基づいて得られる道路Rにおける位置情報を、センシング装置102から取得する。
【0061】
さらに詳細には、車両位置取得部112a_1は、センシング装置102によって観測された光干渉強度の変化量に基づいて得られる道路Rにおける位置情報を、センシング装置102から繰り返し取得する。
【0062】
なお、本実施の形態では位置情報が、光ファイバセンシングに基づいて得られる例により説明するが、CCTVカメラ、交通量計(コイル)などの道路Rに設定される各種のセンサから得られる情報に基づいて取得されてもよい。さらに、位置情報は、ETC(Electronic Toll Collection System)2.0のプローブ情報などに基づいて取得されてもよい。
【0063】
履歴生成部112a_2は、車両位置取得部112a_1によって取得される位置情報に基づいて、道路Rにおける過去から現在までの車両位置の経時的な変化を示す履歴情報105を生成する。
【0064】
詳細には、位置情報は、上述の通り、一定の周波数で入力される光信号に基づいて取得される観測情報に含まれる。そのため、車両位置取得部112a_1によって繰り返し取得される位置情報は、比較的短い時間間隔ではあるものの、離散的な車両位置を示す。
【0065】
履歴生成部112a_2は、離散的な車両位置を入力として、第1学習モデルに従って履歴情報105を生成する。履歴情報105は、
図1~4の線DHに示すように、車両位置の経時的な変化を連続的に示す。
【0066】
なお、履歴生成部112a_2は、離散的な車両位置の近似曲線、近似直線又はこれらの組み合わせを求めることによって、当該求めた近似曲線、近似直線又はこれらの組み合わせを示す履歴情報を生成してもよい。
【0067】
第1学習モデル記憶部112a_3は、履歴生成部112a_2が参照する第1学習モデルを予め格納するための記憶部である。
【0068】
第1学習モデルは、センシング装置102からの観測情報に含まれる位置情報を入力として、履歴情報105を生成する機械学習をした学習済みの学習モデルである。第1学習モデルの学習には、教師あり学習が採用されるとよい。この場合の教師データは、実際に走行した車両101のプローブ情報、車載カメラなどを基に作成されるとよい。
【0069】
また、先頭検出部112bは、位置履歴生成部112aによって生成された履歴情報105に基づいて、道路Rにおける渋滞の先頭位置を検出する。
【0070】
詳細には、先頭検出部112bは、渋滞パターン記憶部112b_1と、渋滞検出部112b_2と、先頭特定部112b_3とを含む。
【0071】
渋滞パターン記憶部112b_1は、渋滞パターンを示す渋滞パターン情報121が格納される記憶部である。渋滞パターンは、渋滞が発生した場合の道路Rにおける車両位置の履歴DHのパターンである。渋滞パターンは、交通監視装置103にて採用される定義に従って定められる。
【0072】
図6は、本実施の形態に係る渋滞パターン情報121の一例を示す。
【0073】
本実施の形態では、上述のように、渋滞は、基準速度以下の車両が、所定時間ΔT以内及び所定距離ΔD以内に所定台数以上の車両がある状態であるとする。また、所定台数は、10台であるとする。ここで、基準速度以下の車両は、停止した車両を含み、例えば平均速度が基準速度以下となるような停止発進を繰り返す車両を含む。
【0074】
図6に示す渋滞パターン情報121は、この定義に従った渋滞パターンを含む例である。この渋滞パターンでは、枠FRの縦方向の長さが所定時間ΔTであり、枠FRの横方向の長さが所定距離ΔDである。そして、枠FRの中には、基準速度以下であることを示す車両位置の履歴DHが10本以上ある。上述した枠FR11,FR21,FR22は、
図6に示す渋滞パターン情報121に含まれる枠FRを適用した例である。
【0075】
車両101の速度(例えば、Km/Hour)は、移動距離を当該移動距離を移動するために要した時間で除した値であるので、車両位置の履歴DHの傾きに表れる。また、車両位置の履歴DHが枠FRの中にあることは、車両位置の履歴DHの上端及び下端が、枠FRの左右の辺ではなく、上辺及び下辺のそれぞれと交わることを意味する。
【0076】
渋滞検出部112b_2は、位置履歴生成部112aによって生成された履歴情報105が示す車両位置の履歴DHと、渋滞パターン情報121によって示される渋滞パターンとに基づいて、道路Rにおける渋滞を検出する。渋滞検出部112b_2は、例えば、車両位置の履歴DHと渋滞パターンとを照合(例えば、パターンマッチング)することによって、道路Rにおける渋滞を検出する。
【0077】
先頭特定部112b_3は、渋滞検出部112b_2によって渋滞が検出された場合に、当該渋滞の先頭位置を特定する。
【0078】
詳細には例えば、渋滞は、現在までの車両位置の履歴DHと渋滞パターンとを照合(例えば、パターンマッチング)し、照合の結果、履歴DHと渋滞パターンとが予め定められた程度に適合する場合、渋滞を検出する。
【0079】
この場合の渋滞の先頭位置は、履歴DHにおいて渋滞パターンと適合する領域のうち、最も走行方向の前方(
図1~4の履歴DHでは右方)に位置する車両101の車両位置として特定される。
【0080】
再び図5を参照する。
出力部114は、先頭位置検出部112によって検出された渋滞の先頭位置の移動が予め定められる基準を満たす場合に、当該基準に応じた渋滞情報を出力する。
【0081】
詳細には、出力部114は、
図7に示すように、特徴検出部114_a1と、基準記憶部114_a2と、判定部114_a3と、判定結果出力部114_a4とを含む。
【0082】
特徴検出部114_a1は、先頭位置検出部112によって渋滞が検出された車両位置の履歴DHに基づいて、渋滞の先頭位置の移動の特徴を検出する。この移動の特徴は、移動方向と移動の速度とを含む。
【0083】
基準記憶部114_a2は、渋滞の原因を推定するための基準情報124が格納される記憶部である。基準情報124は、渋滞の先頭位置の移動に関連して予め定められる1つ又は複数の基準を含む。
【0084】
図8は、本実施の形態に係る基準情報124の一例を示す。同図に示すように、基準情報124は、第1基準と、第2基準と、と含む。なお、基準情報124は、渋滞の原因を推定するための基準を少なくとも1つ含めばよい。
【0085】
第1基準は、逆走車106による渋滞を推定するための基準であって、移動方向には、道路Rの走行方向の逆方向であることを含み、移動速度には、予め定められる第1閾値よりも速いことを含む。
【0086】
第2基準は、低速車による渋滞を推定するための基準であって、移動方向には、道路Rの走行方向であることを含み、移動速度には、予め定められる第2閾値よりも遅いことを含む。
【0087】
判定部114_a3は、特徴検出部114_a1によって検出された先頭位置の移動の特徴と、基準記憶部114_a2に格納された基準情報124とに基づいて、渋滞の原因を判定する。
【0088】
詳細には例えば、判定部114_a3は、移動の特徴が第1基準を満たす場合に、渋滞の原因が逆走車106であると判定する。判定部114_a3は、移動の特徴が第2基準を満たす場合に、渋滞の原因が低速車であると判定する。判定部114_a3は、移動の特徴が第1基準及び第2基準を満たさない場合に、渋滞の原因が不明であると判定する。
【0089】
判定結果出力部114_a4は、判定部114_a3による判定結果に応じた渋滞情報を出力する。
【0090】
詳細には例えば、判定結果出力部114_a4は、判定部114_a3によって渋滞の原因が逆走車106であると判定された場合に、第1渋滞情報を出力する。第1渋滞情報は、逆走車106を原因とする渋滞が発生していることを示す情報である。
【0091】
また例えば、判定結果出力部114_a4は、判定部114_a3によって渋滞の原因が低速車であると判定された場合に、第2渋滞情報を出力する。第2渋滞情報は、低速車を原因とする渋滞が発生していることを示す情報である。
【0092】
さらに例えば、判定結果出力部114_a4は、判定部114_a3によって渋滞の原因が不明であると判定された場合に、第3渋滞情報を出力する。第3渋滞情報は、原因不明の渋滞が発生していることを示す情報である。
【0093】
なお、判定結果出力部114_a4は、渋滞検出部112b_2によって渋滞が検出されなかった場合に、渋滞が発生していないことを示す渋滞情報を出力してもよい。
【0094】
判定結果出力部114_a4からの渋滞情報の出力先は、交通監視装置103が備える表示部であってもよく、車両101に搭載された運転制御装置であってもよく、予め定められたサーバなどの情報処理装置であってもよい。運転制御装置に出力された場合には、渋滞情報は、車両101の表示部に表示されてもよく、車両101の自動運転や、道路Rを走行する車両101間の通信に利用されてもよい。
【0095】
<交通監視装置103の物理的構成>
ここから、本実施の形態に係る交通監視装置103の物理的構成の例について、図を参照して説明する。
【0096】
交通監視装置103は物理的には、
図9に示すように、バス1010、プロセッサ1020、メモリ1030、ストレージデバイス1040、ネットワークインタフェース1050、ユーザインタフェース1060を有する。
【0097】
バス1010は、プロセッサ1020、メモリ1030、ストレージデバイス1040、ネットワークインタフェース1050、及びユーザインタフェース1060が、相互にデータを送受信するためのデータ伝送路である。ただし、プロセッサ1020などを互いに接続する方法は、バス接続に限定されない。
【0098】
プロセッサ1020は、CPU(Central Processing Unit)やGPU(Graphics Processing Unit)などで実現されるプロセッサである。
【0099】
メモリ1030は、RAM(Random Access Memory)などで実現される主記憶装置である。
【0100】
ストレージデバイス1040は、HDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)、メモリカード、又はROM(Read Only Memory)などで実現される補助記憶装置である。
【0101】
ストレージデバイス1040は、交通監視装置102の記憶部(第1学習モデル記憶部112a_3、渋滞パターン記憶部112b_1、基準記憶部114_a2)や情報を保持する機能を実現する。
【0102】
また、ストレージデバイス1040は、交通監視装置102の各機能部(先頭位置検出部112(位置履歴生成部112a(車両位置取得部112a_1,履歴生成部112a_2),先頭検出部112b(渋滞検出部112b_2,先頭特定部112b_3)),出力部114(特徴検出部114_a1,判定部114_a3,判定結果出力部114_a4))を実現するためのプログラムモジュールを記憶している。プロセッサ1020がこれら各プログラムモジュールをメモリ1030上に読み込んで実行することで、そのプログラムモジュールに対応する各機能部が実現される。
【0103】
ネットワークインタフェース1050は、有線、無線又はこれらを組み合わせて構成されるネットワークに交通監視装置102を接続するためのインタフェースである。本実施の形態に係る交通監視装置102は、ネットワークインタフェース1050を通じてネットワークに接続されることによって、センシング装置102などと通信する。また、本実施の形態に係る交通監視装置102は、ネットワークインタフェース1050を通じてネットワークに接続されることによって、車両101に搭載された運転制御装置、予め定められた情報処理装置などと通信する。
【0104】
ユーザインタフェース1070は、ユーザから情報が入力されるインタフェース及びユーザに情報を提示するインタフェースであり、例えば、入力部105としてのマウス、キーボード、タッチセンサなど、表示部としての液晶ディスプレイなどを含む。
【0105】
このように交通監視装置102の機能は、ソフトウェアプログラムを物理的な各構成要素が協働して実行することによって実現することができる。そのため、本発明は、プログラム(「ソフトウェアプログラム」ともいう。)として実現されてもよく、そのプログラムが記録された非一時的な記憶媒体として実現されてもよい。
【0106】
<本実施の形態に係る交通監視処理>
ここから、本発明の一実施の形態に係る交通監視処理について図を参照して説明する。
【0107】
図10は、本実施の形態に係る交通監視処理の一例を示すフローチャートである。
【0108】
交通監視処理は、道路Rの交通を監視するための処理であって、センシング装置102から、例えば一定の時間間隔で繰り返し取得される位置情報を参照して行われる。交通監視処理は、例えば、入力部103からのユーザの開始指示を受け付けると、終了させるための指示を受け付けるまで繰り返し実行される。
【0109】
図10を参照する。
先頭位置検出部112は、道路Rにおける車両位置をセンシング装置102から取得する。そして、先頭位置検出部112は、当該取得した車両位置に基づいて、道路Rにおける渋滞の先頭位置を検出する(ステップS101)。
【0110】
図11は、先頭位置検出処理(ステップS101)の一例を示すフローチャートである。
図11に示すように、位置履歴生成部112aは、位置履歴生成処理を行う(ステップS101a)。
【0111】
位置履歴生成処理(ステップS101a)において、位置履歴生成部112aは、道路Rおける車両101の位置情報をセンシング装置102から取得する。そして、位置履歴生成部112aは、当該位置情報に含まれる車両位置に基づいて、道路Rにおける車両101の車両位置の履歴DHを示す履歴情報105を生成する。
【0112】
ステップS101aにおいて詳細には、車両位置取得部112a_1は、センシング装置102から取得する道路Rにおける位置情報に基づいて、道路Rを通行する車両101の車両位置を取得する(ステップS101a_1)。
【0113】
履歴生成部112a_2は、ステップS101a_1にて取得された車両位置に基づいて、過去から現在までの車両位置の経時的な変化、すなわち車両位置の履歴DHを含む履歴情報105を生成する(ステップS101a_2)。
【0114】
ここで、車両位置は、ステップS101にて比較的短周期で取得することができるため、履歴生成部112a_2は、車両位置の取得周期よりも長い予め定められた時間の車両位置がステップS101a_1にて取得されたときに行われるとよい。
【0115】
次に、先頭検出部112bは、先頭検出処理を行う(ステップS101b)。
【0116】
先頭検出処理において、先頭検出部112bは、ステップS101a_2にて生成された履歴情報105に基づいて、道路Rにおける渋滞の先頭位置を検出する。
【0117】
ステップS101bにおいて、渋滞検出部112b_2は、ステップS101a_2にて生成された履歴情報105と、渋滞パターン記憶部112b_1の渋滞パターン情報121とに基づいて、道路Rにおける渋滞を検出する(ステップS101b_1)。
【0118】
詳細には例えば、渋滞検出部112b_2は、履歴情報105に含まれる車両位置の履歴DHと、渋滞パターン情報121によって示される渋滞パターンとを照合(例えば、パターンマッチング)することによって、両者の類似度を求める。
【0119】
そして、類似度が予め定められた閾値より大きい場合に、渋滞検出部112b_2は、道路Rでの渋滞が検出され、その旨を示す検出情報を先頭特定部112b_3へ出力する。類似度が予め定められた閾値以下である場合に、渋滞検出部112b_2は、道路Rでの渋滞が検出されず、その旨を示す非検出情報を先頭特定部112b_2へ通知する。
【0120】
なお、渋滞が検出されなかった場合、渋滞検出部112b_2は、交通監視処理を終了してもよい。
【0121】
なお、渋滞パターンは、本実施の形態で例示したものに限られず、例えば渋滞に応じて種々のパターンが想定される。そこで、渋滞検出部112b_2は、車両位置の経時的な変化を入力として、学習モデルに基づいて、渋滞を検出してもよい。この場合の学習モデルには、車両位置の経時的な変化を入力として、当該変化と渋滞パターンとの類似度に応じて渋滞が発生しているか否かを示す情報(検出情報及び非検出情報)を生成する機械学習をした学習済みの学習モデルが採用されるとよい。この学習は教師あり学習であればよく、学習モデルは、渋滞パターン記憶部112b_1に代わる記憶部に予め格納されるとよい。
【0122】
また、渋滞検出部112b_2は、渋滞パターンの特徴が車両位置の経時的な変化に含まれるか否かに基づいて、異常事象を検出してもよい。
【0123】
先頭特定部112b_3は、ステップS101b_1にて渋滞が検出されることに応じて渋滞検出部112b_2から検出情報を取得した場合に、当該渋滞の先頭位置を特定する(ステップS101b_2)。
【0124】
詳細には、先頭特定部112b_3は、車両位置の履歴DHと、渋滞バターン記憶部112b_1に格納された渋滞パターン情報121と、に基づいて、各時刻における渋滞の先頭位置を特定する。これにより、先頭特定部112b_3は、渋滞の先頭位置の移動の経時的な変化、すなわち、渋滞の先頭位置の移動の履歴を特定することができる。
【0125】
より詳細には、渋滞の先頭位置の移動の履歴の特定において、例えば、先頭特定部112b_3は、車両位置の履歴DHにおいて渋滞パターン情報121と適合する領域を検出する。先頭特定部112b_3は、例えば、検出した領域のうち、各時刻において最も走行方向の前方(
図1~4の履歴DHでは右方)に位置する車両101の現在位置を、各時刻における渋滞の先頭位置として特定する。これにより、時刻と、当該時刻における道路Rでの先頭位置と、を含む、渋滞の先頭位置の移動の履歴を得ることができる。
【0126】
これにより、先頭特定部112b_3は、ステップS101を終了して、
図10に示す交通監視処理に戻る。
【0127】
再び
図10を参照する。
出力部114は、先頭位置検出処理(ステップS101)にて検出された渋滞の先頭位置の移動が予め定められる基準を満たすか否かを判定し、当該判定の結果に応じた渋滞情報を出力する(ステップS102)。
【0128】
図12は、出力処理(ステップS102)の一例を示すフローチャートである。
図12に示すように、特徴検出部114_a1は、ステップS101b_1にて渋滞が検出された車両位置の履歴DHに基づいて、渋滞の先頭位置の移動の特徴を検出する(ステップS102a)。
【0129】
より詳細には、特徴検出部114_a1は、ステップS101b_2にて特定された先頭位置の移動の履歴に基づいて、先頭位置の移動方向とその移動速度(例えば、Km/Hour)とを求めることによって、先頭位置の移動の特徴を検出する。
【0130】
判定部114_a3は、ステップS102aにて検出された先頭位置の移動の特徴が第1基準を満たすか否かを判定する(ステップS102b)。
【0131】
詳細には、判定部114_a3は、基準記憶部114_a2に格納された基準情報124に含まれる第1基準を取得する。判定部114_a3は、取得した第1基準と、ステップS102aにて検出された先頭位置の移動の特徴と、に基づいて、移動の特徴が第1基準を満たすか否かを判定する。
【0132】
例えば、第1基準が
図8に示すように、走行方向の逆方向という移動方向と、第1閾値よりも速いという移動速度とを含むとする。
【0133】
この場合、判定部114_a3は、先頭位置の移動の特徴に含まれる移動方向が道路Rの走行方向の逆方向であり、かつ、先頭位置の移動の特徴に含まれる移動速度が第1閾値よりも速いときに、第1基準を満たすと判定する。
【0134】
また例えば、判定部114_a3は、先頭位置の移動の特徴に含まれる移動方向が道路Rの走行方向の逆方向ではなく、走行方向であるとき、又は、移動していないとき、第1基準を満たさないと判定する。判定部114_a3は、先頭位置の移動の特徴に含まれる移動速度が第1閾値と同じ又は第1閾値よりも遅いときにも、第1基準を満たさないと判定する。
【0135】
第1基準を満たすと判定された場合(ステップS102b;Yes)、判定結果出力部114_a4は、第1渋滞情報を出力する(ステップS102c)。
【0136】
第1基準を満たさないと判定した場合(ステップS102b;No)、判定部114_a3は、ステップS102aにて検出された先頭位置の移動の特徴が第2基準を満たすか否かを判定する(ステップS102d)。
【0137】
詳細には、判定部114_a3は、基準記憶部114_a2に格納された基準情報124に含まれる第2基準を取得する。判定部114_a3は、取得した第2基準と、ステップS102aにて検出された先頭位置の移動の特徴と、に基づいて、移動の特徴が第2基準を満たすか否かを判定する。
【0138】
例えば、第2基準が
図8に示すように、走行方向という移動方向と、第2閾値よりも遅いという移動速度とを含むとする。
【0139】
この場合、判定部114_a3は、先頭位置の移動の特徴に含まれる移動方向が道路Rの走行方向であり、かつ、先頭位置の移動の特徴に含まれる移動速度が第2閾値よりも遅いときに、第2基準を満たすと判定する。
【0140】
また例えば、判定部114_a3は、先頭位置の移動の特徴に含まれる移動方向が道路Rの走行方向ではなく、走行方向の逆方向であるとき、又は、移動していないとき、第2基準を満たさないと判定する。判定部114_a3は、先頭位置の移動の特徴に含まれる移動速度が第2閾値と同じ又は第2閾値よりも速いときにも、第2基準を満たさないと判定する。
【0141】
第2基準を満たすと判定された場合(ステップS102d;Yes)、判定結果出力部114_a4は、第2渋滞情報を出力する(ステップS102e)。
【0142】
第2基準を満たさないと判定した場合(ステップS102d;No)、判定結果出力部114_a4は、第3渋滞情報を出力する(ステップS102f)。
【0143】
なお、判定部114_a3による判定結果は、例えば交通監視装置103が備える表示部などに表示されてもよい。そして、ユーザは、例えば、交通監視装置103を操作することによって渋滞が発生していると判定された場所の現在の映像を、道路Rに設けられた監視カメラなどから取得して参照してもよい。
【0144】
これにより、判定の結果が正しいか否かを確認することができるので、より正確な渋滞情報を提供することが可能になる。
【0145】
また、原因が不明な渋滞が発生していると判定された場合に、ユーザは、例えば交通監視装置103を操作し、映像を確認して、例えば事故などのより詳細な情報を第3渋滞情報に含めてもよい。
【0146】
これにより、より詳細な渋滞情報を出力することができるので、より正確かつ詳細な渋滞情報を提供することが可能になる。
【0147】
本発明の一実施の形態によれば、道路Rにおける渋滞の先頭位置を検出し、当該検出された先頭位置の移動が予め定められる基準を満たす場合に、当該基準に応じた渋滞情報を出力する。これにより、渋滞の先頭位置の移動に基づいて、渋滞発生時の道路Rの交通状況を把握することができる。従って、道路の交通状況を正確に把握することが可能になる。
【0148】
本実施の形態において、基準は、第1基準を含み、第1の基準は、先頭位置の移動方向が道路Rの走行方向とは反対の方向であることを含む。そして、検出された先頭位置の移動が第1基準を満たす場合に、当該第1基準に応じた出力が行われる。一般的に逆走車106による渋滞では、先頭位置の移動方向が道路Rの走行方向とは反対の方向となることが多い。そのため、先頭位置の移動方向が道路Rの走行方向とは反対の方向であるか否かに基づいた出力を行うことによって、逆走車106を検知することができる。また、渋滞の原因をほぼリアルタイムで推定することもできる。従って、道路の交通状況をより正確に把握することが可能になる。
【0149】
本実施の形態において、第1の基準は、先頭位置の移動速度が予め定められた第1閾値よりも速いことをさらに含む。これにより、逆走車106をより正確に検知することができるとともに、渋滞の原因をほぼリアルタイムでより正確に推定することもできる。従って、道路の交通状況をより一層正確に把握することが可能になる。
【0150】
本実施の形態において、基準は、第2基準を含む。第2の基準は、先頭位置の移動方向が道路Rの走行方向であることを含む。そして、検出された先頭位置の移動が第2基準を満たす場合に、当該第2基準に応じた出力が行われる。一般的に事故による渋滞では、先頭位置は、事故処理が終了するまで一定の位置で移動しないことが多く、先頭位置が走行方向に移動する渋滞は、低速車に起因することが多い。
【0151】
そのため、先頭位置の移動方向が道路Rの走行方向であるか否かに基づいた出力を行うことによって、低速車を検知することができる。また、渋滞の原因をほぼリアルタイムで推定することもできる。従って、道路の交通状況をより正確に把握することが可能になる。
【0152】
本実施の形態において、第2の基準は、先頭位置の移動速度が予め定められた第2閾値よりも遅いことをさらに含む。これにより、低速車をより正確に検知することができるとともに、渋滞の原因をほぼリアルタイムでより正確に推定することもできる。従って、道路の交通状況をより一層正確に把握することが可能になる。
【0153】
本実施の形態では、道路Rにおける車両位置の履歴を示す履歴情報が生成され、当該履歴情報に基づいて、道路Rにおける渋滞の先頭位置を検出する。道路Rにおける車両位置は、広域な道路Rからリアルタイムで取得することができ、道路Rの交通状況を俯瞰的に把握することができる。従って、広域の道路の交通状況をリアルタイムで俯瞰的に把握することが可能になる。
【0154】
本実施の形態では、履歴情報105は、車両位置に基づいて生成され、車両位置は、道路Rに敷設された光ファイバを利用した光ファイバセンシングに基づいて得られるものである。高速道路など、通信用の光ファイバが敷設されている道路も多く、既に敷設された光ファイバを利用して車両位置を取得することができる。
【0155】
また、光ファイバセンシング技術を利用することで、広域な道路Rからリアルタイムで車両位置を取得し、道路Rの交通状況を俯瞰的に把握することができる。
【0156】
従って、追加的なコストの発生を抑制しつつ、広域の道路の交通状況をリアルタイムで俯瞰的に把握することが可能になる。
【0157】
本発明は、上述の一実施の形態に限定されるものではない。実施の形態は、例えば、以下のように変形されてもよい。
【0158】
(変形例1)
実施の形態では、道路Rにおいて、同じ方向へ走行するための車線TL,OLを区別せずに、車両位置をセンシング装置102から取得し、渋滞の先頭位置を検出する例を説明した。しかし、交通監視装置103は、車線TL,OLごとの車両101の車両位置をセンシング装置102から取得してもよい。
【0159】
例えば、車線TL,OLごとに道路Rの舗装が異なることによって、車両Rが通行する車線TL,OLを識別可能な観測情報を取得できることがある。このような場合、先頭位置検出部112は、車線TL,OLごとの車両101の車両位置をセンシング装置102から取得し、道路Rの各車線における渋滞の先頭位置を検出してもよい。
【0160】
また、出力部114は、前記検出された各車線における先頭位置の移動が予め定められる基準を満たす場合に、当該基準に応じた渋滞情報を出力するとよい。この渋滞情報には、車線ごとの渋滞の発生及びその原因を含めてもよい。
【0161】
一般的に、道路Rが複雑に交差するインターチェンジや、パーキンエリアから道路Rへの合流時に誤って道路Rを逆走してしまうことが多い。そのため、例えば道路Rは左側通行であり、走行方向の右側車線が追越車線OLに設定されている場合、逆走車106は、追越車線OLを逆走してしまうことが多い。
【0162】
車線ごとの渋滞の検出位置を検出することによって、追越車線OLのような逆走車106が発生し易い車線での逆走車106による渋滞を特に監視することができる。これにより、逆走車106による渋滞をより確実に検出して、渋滞情報を提供することができるので、道路Rにおける交通の安全性を向上させることが可能になる。
【0163】
(変形例2)
例えば、第1基準は、渋滞が検出されてから先頭位置が移動を開始するまでの時間に関して定められる閾値TTHを含んでもよい。
【0164】
実施の形態で説明したように、逆走車106による渋滞では、事故などによる渋滞とは異なり、渋滞が検出されてから先頭位置が移動を開始するまでの時間が短い。
【0165】
そのため、履歴DHにおいて渋滞が検出されてから先頭位置が移動を開始するまでの時間が、閾値TTHより短いことをさらに条件に加えて判定することで、逆走車106による渋滞と事故などによる渋滞とをより正確に区別することができる。従って、渋滞の原因をより正確に推定することが可能になる。
【0166】
以上、本発明の実施の形態及び変形例について説明したが、本発明は、これらに限られるものではない。例えば、本発明は、これまで説明した実施の形態及び変形例の一部又は全部を適宜組み合わせた形態、その形態に適宜変更を加えた形態をも含む。
【0167】
上記の実施の形態の一手段または全手段は、以下の付記のようにも記載されうるが、以下に限られない。
【0168】
1.道路における渋滞の先頭位置を検出する先頭位置検出手段と、
前記検出された先頭位置の移動が予め定められる基準を満たす場合に、当該基準に応じた渋滞情報を出力する出力手段と、を備える
交通監視装置。
2.前記基準は、前記先頭位置の移動方向が前記道路の走行方向とは反対の方向であることを含む第1基準を含み、
前記出力手段は、前記検出された先頭位置の移動が前記第1基準を満たす場合に、当該第1基準に応じた出力を行う
上記1に記載の交通監視装置。
3.前記第1基準は、前記先頭位置の移動速度が予め定められた第1閾値よりも速いことをさらに含む
上記2に記載の交通監視装置。
4.前記基準は、前記先頭位置の移動方向が前記道路の走行方向であることを含む第2基準を含み、
前記出力手段は、前記検出された先頭位置の移動が前記第2基準を満たす場合に、当該第2基準に応じた出力を行う
上記1に記載の交通監視装置。
5.前記第2基準は、前記先頭位置の移動速度が予め定められた第2閾値よりも遅いことをさらに含む
上記4に記載の交通監視装置。
6.前記先頭位置検出手段は、
前記道路における車両位置の履歴を示す履歴情報を生成する位置履歴生成手段と、
前記履歴情報に基づいて、前記道路における渋滞の先頭位置を検出する先頭検出手段と、を含む
上記1から5のいずれか1つに記載の交通監視装置。
7.前記位置履歴生成手段は、
前記道路に敷設された光ファイバを利用した光ファイバセンシングに基づいて得られる前記道路における車両位置を取得する車両位置取得手段と、
前記車両位置に基づいて、前記履歴情報を生成する履歴生成手段と、を含む
上記6に記載の交通監視装置。
8.前記先頭位置検出手段は、前記道路が同じ方向へ走行するための複数の車線を含む場合に、当該道路の各車線における渋滞の先頭位置を検出する
上記1から7のいずれか1つに記載の交通監視装置。
9.上記1から8のいずれか1つに記載の交通監視装置と、
前記道路に敷設され、光信号の反射を抑制する終端処理が一端に施された光ファイバと、
前記光ファイバに光信号を入力するとともに、当該光信号の入力に伴って生じる後方散乱光同士が干渉した光の強度である光干渉強度の変化量を観測するセンシング装置とを備え、
前記先頭位置検出手段は、前記センシング装置によって観測された前記光干渉強度の変化量に基づいて得られる前記道路における車両位置を取得し、当該車両位置に基づいて、前記道路における渋滞の先頭位置を検出する
交通監視システム。
10.コンピュータが、
道路における渋滞の先頭位置を検出することと、
前記検出された先頭位置の移動が予め定められる基準を満たす場合に、当該基準に応じた出力を行うこと、とを含む
交通監視方法。
11.コンピュータを、上記1から8のいずれか1項に記載の交通監視装置として機能させるためのプログラム。
【0169】
この出願は、2021年3月4日に出願された日本出願特願2021-034187号を基礎とする優先権を主張し、その開示の全てをここに取り込む。
【符号の説明】
【0170】
100 交通監視システム
101 車両
OF 光ファイバ
102 センシング装置
103 交通監視装置
105,105a_1,105a_2,105b_1,105b_2 履歴情報
106 逆走車
110 入力部
112 先頭位置検出部
112a 位置履歴生成部
112a_1 車両位置取得部
112a_2 履歴生成部
112a_3 第1学習モデル記憶部
112b 先頭検出部
112b_1 渋滞パターン記憶部
112b_2 渋滞検出部
112b_3 先頭特定部
114 出力部
114_a1 特徴検出部
114_a2 基準記憶部
114_a3 判定部
114_a4 判定結果出力部
121 渋滞パターン情報
124 基準情報