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特許7652242利得等化システム、利得等化方法、及びプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-03-18
(45)【発行日】2025-03-27
(54)【発明の名称】利得等化システム、利得等化方法、及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   H04B 10/294 20130101AFI20250319BHJP
   H04J 14/02 20060101ALI20250319BHJP
【FI】
H04B10/294
H04J14/02
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2023508673
(86)(22)【出願日】2022-01-17
(86)【国際出願番号】 JP2022001398
(87)【国際公開番号】W WO2022201778
(87)【国際公開日】2022-09-29
【審査請求日】2023-09-01
(31)【優先権主張番号】P 2021050010
(32)【優先日】2021-03-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004237
【氏名又は名称】日本電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103894
【弁理士】
【氏名又は名称】家入 健
(72)【発明者】
【氏名】河井 元良
【審査官】後澤 瑞征
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/176894(WO,A1)
【文献】特開2008-154123(JP,A)
【文献】特開平11-224967(JP,A)
【文献】特開2001-094534(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 10/294
H04J 14/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力光信号の傾斜を補正する利得等化器を有する第1の経路と、
入力光信号をそのまま透過するスルーファイバを有する第2の経路と、
前記利得等化器を有する第1の経路と、前記スルーファイバを有する第2の経路と、を切り替え可能な光スイッチと、
前記光スイッチの切り替えを制御する制御手段と、を備えた第1利得等化装置と、
入力光信号の傾斜を補正する利得等化器を有する第4の経路を、陸上端局に備えた第2利得等化装置と、
を備え、
前記第4の経路における前記利得等化器は、前記第2の経路が使用されている場合に、前記第2の経路から出力された光信号の傾斜を補正する、
利得等化システム
【請求項2】
前記第1利得等化装置は、入力光信号の傾斜を補正する利得等化器を有する第3の経路をさらに備え、
前記光スイッチは、前記第1の経路、前記第2の経路、及び、前記第3の経路を切り替え可能である、
請求項1に記載の利得等化システム
【請求項3】
前記制御手段は、前記陸上端局からのコマンドに基づき、前記光スイッチの切り替えを制御する、
請求項1または2に記載の利得等化システム
【請求項4】
前記第1利得等化装置は海底に敷設される、
請求項1~3のいずれか1項に記載の利得等化システム
【請求項5】
第1利得等化装置に光ファイバを介して接続された第2利得等化装置が実行する利得等化方法であって、
前記第1利得等化装置は、入力光信号の傾斜を補正する利得等化器を有する第1の経路と入力光信号をそのまま透過するスルーファイバを有する第2の経路とを切り替え可能な光スイッチと、前記光スイッチの切り替えを制御する制御手段と、を備え、
前記第2利得等化装置は、前記光ファイバから出力された入力光信号の傾斜を補正する利得等化器を有する第4の経路を、陸上端局に備え、
前記第4の経路における前記利得等化器が、前記第2の経路が使用されている場合に、前記第2の経路から出力された光信号の傾斜を補正する、
利得等化方法。
【請求項6】
第1利得等化装置に光ファイバを介して接続された第2利得等化装置に備えられたコンピュータに、利得等化処理を実行させるプログラムであって、
前記第1利得等化装置は、入力光信号の傾斜を補正する利得等化器を有する第1の経路と入力光信号をそのまま透過するスルーファイバを有する第2の経路とを切り替え可能な光スイッチと、前記光スイッチの切り替えを制御する制御手段と、を備え、
前記第2利得等化装置は、前記光ファイバから出力された入力光信号の傾斜を補正する利得等化器を有する第4の経路を、陸上端局に備え、
前記利得等化処理は、前記第4の経路における前記利得等化器が、前記第2の経路が使用されている場合に、前記第2の経路から出力された光信号の傾斜を補正する、
プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は利得等化装置及び利得等化方法に関する。特に海底通信システムに用いられる利得等化装置及び利得等化方法に関する。
【背景技術】
【0002】
光海底ケーブルシステムにおいて、長距離に伝送される光信号の伝送品質を確保することが必要である。具体的には、伝送品質を確保するためには、WDM(Wavelength Division Multiplexing)信号(以下、光信号とも呼ぶ)の各信号レベルを一定の範囲内にする必要がある。
【0003】
一方で、海底ケーブルシステムの運用を続けていくと、海底ケーブルの経年劣化などに伴い、光ファイバ自体の経時的な損失増加や、光ファイバが何らかの原因で切断した際に、ケーブルを割り入れていくことから、海底ケーブルシステム全体での光損失が増加する。これにより、中継器に用いられている光アンプへの入力レベルが想定よりも低下し、WDM信号の波長に対する凹凸が大きくなり、傾斜も大きくなる。その結果、必要な伝送品質が得られなくなるという問題点があった。
【0004】
これに対しては、例えば、非特許文献1に記載されているように、光フィルタデバイス(利得等化器)を用いてWDM信号の波長に対する凹凸形状や傾きを補正する方法がある。また、例えば、特許文献1に記載されている等化装置を用いて、傾斜レベルを補償する方法がある。また、利得等化装置を用いたとしても海底ケーブルシステムにおける光損失が増加している場合には、利得等化装置を海底から引き上げて光フィルタを交換する方法や新しい中継器を追加する方法が用いられている。
他の方法としては波長選択スイッチデバイス(WSS;wavelength selective switch)を海底に敷設し、WSSのプロファイルを変更して、WDM信号のレベル差を調整する方法がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】国際公開第2019/167736号
【非特許文献】
【0006】
【文献】Jose Chesnoy著、Undersea Fiber Communication Systems 2nd Edition, 2015年
【発明の概要】
【0007】
しかしながら、上述の方法において、光フィルタを交換するには、海底に敷設している利得等化装置を海底から引き上げることが必要であり、中継器の追加においても敷設済みの海底ケーブルを引き上げる必要があるため、作業における費用が大きいという問題点があった。さらに、特許文献1に記載の等化装置では、複雑な制御が必要であり、光損失も高く、構造が複雑なマトリックススイッチを用いることが前提となっているため、大型化し、消費電力も大きくなるという問題点があった。
また、波長選択スイッチデバイスついては、波長選択スイッチデバイス自体の信頼性が十分でなく、機器内で波長選択スイッチを冗長する必要がある。そのため、波長選択スイッチを用いた利得等化装置は回路が複雑になり、大型で消費電力も大きいという問題点があった。
【0008】
上記課題に鑑み本発明の目的は、信頼性を向上させつつ、消費電力を抑制するとともに、光損失の増加を抑制可能な利得等化装置及び利得等化方法を提供することである。
【0009】
本発明の一態様に係る利得等化装置は、
入力光信号の傾斜を補正する利得等化器を有する第1の経路と、
入力光信号をそのまま透過するスルーファイバを有する第2の経路と、
前記利得等化器を有する第1の経路と、前記スルーファイバを有する第2の経路と、を切り替え可能な光スイッチと、
前記光スイッチの切り替えを制御する制御部と、を備える。
【0010】
本発明の一態様に係る利得等化方法は、
入力光信号に対して、前記入力光信号の傾斜を補正する利得等化処理を実行して出力し、
所定の場合に、前記入力光信号に対する利得等化処理を実行せずにそのまま出力する方法である。
【0011】
本発明によれば、信頼性を向上させつつ、消費電力を抑制するとともに、光損失の増加を抑制可能な利得等化装置及び利得等化方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】第1の実施形態に係る利得等化装置の構成を示すブロック図である。
図2】第2の実施形態に係る利得等化装置の構成を示すブロック図である。
図3】第3の実施形態に係る利得等化システムの構成を示すブロック図である。
図4】第1~第3の実施形態に係る利得等化装置の制御装置の構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
(第1の実施形態)
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。ただし、本発明が以下の実施形態に限定される訳ではない。また、説明を明確にするため、以下の記載及び図面は、適宜、簡略化されている。
【0014】
図1は、第1の実施形態に係る利得等化装置100の構成を示すブロック図である。利得等化装置100は、利得等化器を有する第1の経路1、スルーファイバを有する第2の経路2、光スイッチ10a、光スイッチ10b、制御部20を備える。説明を簡単にするため、光スイッチ10a、光スイッチ10bを合わせて光スイッチ10とも呼ぶ。利得等化装置100へ入力される光信号の向きを進行方向として図1中に示している。光信号は、光ファイバ101を介して、利得等化装置100へ入力され、光ファイバ102を介して、利得等化装置100から出力される。
【0015】
利得等化装置100は、海底通信システムに用いられる装置であり、海底に敷設される。具体的には、利得等化装置100は、海底ケーブルシステムを構成する複数の中継器の間の少なくともいずれかに挿入される。つまり、利得等化装置100は、中継器からの光信号を入力し、入力された光信号の傾斜レベルを補正し、傾斜レベルが補正された光信号を次の中継器に出力する装置である。なお、中継器とは、海底に敷設され、光信号を増幅する装置である。
【0016】
第1の経路1は、入力光信号の傾斜を補正する利得等化器を有する経路である。利得等化器は、信号の波長、光増幅器(中継器)の配置数と特性、光ファイバの長さ、海底ケーブルの敷設される海底の温度などの条件から、信号の減衰特性を計算し作製される。利得等化器は、WDM信号のレベル差を所定の範囲までに抑えるように設計されている。利得等化器には、公知のデバイスを使用することができる。第1の経路1における光スイッチ10aと利得等化器との間の経路、及び、利得等化器と光スイッチ10bとの間の経路は、光ファイバを用いて構成できる。第1の経路1を通った入力光信号は、利得等化器を通過すると、凹凸形状及び傾斜が補正される。
【0017】
第2の経路2は、入力光信号をそのまま透過するスルーファイバを有する経路である。スルーファイバは、光損失が極めて少ないファイバである。つまり、第2の経路2を通った入力光信号は、スルーファイバを介して、凹凸形状及び傾斜が補正されることなく、光スイッチ10bを介して光ファイバ102にそのまま出力される。
【0018】
光スイッチ10は、利得等化器を有する第1の経路1と、スルーファイバを有する第2の経路2と、を切り替え可能なスイッチである。光スイッチとは、電気信号に変換することなく光信号のまま経路の切り替えが可能なスイッチである。
【0019】
光スイッチ10aは、制御部20の制御に基づき、経路を切り替える。例えば、制御部20から、第1の経路1から第2の経路2に切り替える制御信号が送信されたとき、光スイッチ10aは、第1の経路1から第2の経路2に経路を切り替える。同様に、制御部20から、第2の経路2から第1の経路1に切り替える制御信号が送信されたとき、光スイッチ10aは、第2の経路2から第1の経路1に経路を切り替えてもよい。光スイッチ10は、初期設定として、入力光信号の傾斜を補正する利得等化器を有する第1の経路1と接続されていてもよい。
【0020】
光スイッチ10bは、光スイッチ10aと接続している経路と光ファイバ102が接続されるように経路の切り替えを行う。具体的には、光スイッチ10aが光ファイバ101からの入力光信号を第1の経路1に出力しているとき、光スイッチ10bは、第1の経路1と接続しており、第1の経路1からの光信号を光ファイバ102に出力する。光スイッチ10aが第1の経路1から第2の経路2に経路を切り替えたとき、光スイッチ10bも同様に、第1の経路1から第2の経路2に経路を切り替える。光スイッチ10a、光スイッチ10bは、共に制御部20によって切り替えが制御される。これにより、利得等化装置100は、光ファイバ101から入力された光信号を光ファイバ102に出力することができる。なお、上述の説明において、光スイッチ10による第1の経路1から第2の経路2への経路の切り替えについて説明したが、第2の経路2から第1の経路1への経路の切り替えも同様に行うことができる。
【0021】
制御部20は、光スイッチ10の切り替えを制御する。制御部20は、光スイッチ10と有線で接続されていてもよく、無線で接続されていてもよい。制御部20は、光スイッチ10が接続している経路を切り替えるための制御信号を光スイッチ10に送信する。例えば、制御部20の機能は、コンピュータやマイクロコンピュータなどの情報処理装置によって実現される。また、制御部20は、制御回路であってもよい。
【0022】
制御部20は、陸上端局(Trunk局)からのコマンドに基づき、光スイッチの切り替えを制御してもよい。例えば、制御部20は、陸上端局からのコマンド(信号)を図示しない受信部で受信し、受信したコマンドに基づいて光スイッチ10の切り替えを制御してもよい。なお、陸上端局は、測定器を用いて、海底ケーブルシステムの光損失の値を測定してもよい。
【0023】
例えば、利得等化装置100は、海底ケーブルシステムの光損失が増加している場合や利得等化器が故障している場合などに、陸上端局などの外部からのコマンドに基づいて、第1の経路1から第2の経路2へ経路を切り替える。これにより、利得等化装置100は、光損失の増加を抑制することができる。
また、利得等化装置100は、陸上端局などの外部からのコマンドに基づいて、第2の経路2から第1の経路1へ経路を切り替えてもよい。利得等化装置100は、例えば、海底ケーブルシステムの光損失の増加が解消された場合には、第2の経路2から第1の経路1へ経路を切り替えて、第1の経路1を用いることで、光信号の傾斜の補正を行うことができる。
【0024】
また、利得等化装置100は、海底ケーブルシステムの光損失の値を測定可能な測定器(不図示)を備えていてもよい。制御部20は、例えば、測定器が測定した光損失の増加が所定の閾値以上である場合に、自動で光スイッチ10の切り替えを実行してもよい。制御部20は、例えば、測定器が測定した光損失の増加が所定の閾値以上である場合に、第1の経路1から第2の経路2に経路を切り替えてもよい。これにより、利得等化装置100は、光損失の増加を抑制することができる。
【0025】
次に、利得等化装置100の動作について説明する。利得等化装置100は、入力光信号に対して、その傾斜を補正する利得等化処理を実行して出力し、所定の場合に、入力光信号に対する利得等化処理を実行せずにそのまま出力する。このような利得等化方法を用いることによって、海底ケーブルシステムの光損失の増加を抑制することができる。
なお、所定の場合とは、例えば、陸上端局から利得等化処理を実行しない旨のコマンドを受信した場合である。具体的には、陸上端局からの光スイッチの切り替えに関するコマンド(例えば、第1の経路1から第2の経路2への経路の切り替えに関するコマンド)を受信した場合である。また、所定の場合とは入力光信号が所定の条件を充足する場合であってもよく、光損失の増加が所定の閾値以上である場合などであってもよい。
【0026】
以下、図1を用いて、利得等化装置100の動作を詳細に説明する。上り回線と下り回線は、方向が異なるだけで同一構造となる。説明を簡単にするため、下り回線について説明する。図1の矢印の方向を下り方向とする。下り方向に向かって、陸上端局からWDM信号(光信号)が伝送されている。
【0027】
光ファイバ101から利得等化装置100に光信号が入力される。入力された光信号は、制御部20の制御に基づき、光スイッチ10aによって、第1の経路1を通るか、第2の経路2を通るかが決定される。初期の設定では、入力光信号の傾斜を補正する利得等化器を有する第1の経路1を通るように設定されてもよい。
【0028】
制御部20は、海底ケーブルシステムの光損失が増加している場合、陸上端局からのコマンドを受信し、光スイッチ10の切り替えを制御する。光スイッチ10aは、制御部20の制御に基づき、第1の経路1から第2の経路2に経路を切り替える。ここで、光スイッチ10bも、同様に第1の経路1から第2の経路2に経路を切り替える。光信号は、第2の経路2を通り、光スイッチ10bに入力され、光ファイバ102に出力される。
【0029】
利得等化装置100は、以上の構成を備えることによって、海底ケーブルシステムの光損失が増加したときに、経路を、スルーファイバを有する第2の経路2に切り替えることで、利得等化装置100による光損失の増加を抑制することができる。
【0030】
例えば、利得等化器の光損失は、4dB程度であるが、スルーファイバの損失は極めて小さい。そのため、利得等化装置100は、利得等化器を有する第1の経路1からスルーファイバを有する第2の経路2へ切り替えることで、約4dBの損失増加を補償することが可能になり、海底通信システムの光損失の増加を抑制することができる。
【0031】
また、利得等化装置100は、第1の経路1、第2の経路2、光スイッチ10、制御部20のみで構成されるため、海底通信システム向けの十分に信頼性の高いデバイスで構成することが可能である。そのため、利得等化装置100を修理するために、海底から引き上げる作業や再敷設する費用を抑制することができる。また、利得等化装置100は、光回路及び電気回路の構成を簡素にすることができるため、利得等化装置100の小型化及び低消費電力化が可能になる。本実施形態に係る利得等化装置100は、信頼性を向上させつつ、消費電力を抑制するとともに、光損失の増加を抑制することができる。
【0032】
(第2の実施形態)
図2は、第2の実施形態に係る利得等化装置200の構成を示すブロック図である。利得等化装置200は、利得等化器を有する第1の経路1、スルーファイバを有する第2の経路2、利得等化器を有する第3の経路3、光スイッチ11a、光スイッチ11b、制御部20を備える。利得等化装置200には、光ファイバ101、光ファイバ102が接続されている。なお、光スイッチ11a、光スイッチ11bを合わせて、光スイッチ11とも呼ぶ。第1の実施形態に係る利得等化装置100と同様な構成については、同様の符号を付している。また、第1の実施形態と同様の内容については、適宜詳細な説明を省略する。以下では第1の実施形態との違いを中心に説明する。
【0033】
第3の経路3は、入力光信号の傾斜を補正する利得等化器を有する経路である。例えば、第3の経路3の利得等化器は、第1の経路1の利得等化器と同一であってもよい。この場合、利得等化装置200は、第1の経路1における利得等化器が故障したとしても、第3の経路3に切り替えることで、入力光信号の傾斜を同様に補正することができる。
また、第3の経路3の利得等化器と、第1の経路1の利得等化器とは、異なる利得等化器であってもよい。つまり、第3の経路3の利得等化器は、第1の経路1の利得等化器とは異なる傾斜レベルを補正可能であってもよい。これにより、利得等化装置200は、経路を切り替えることで、必要な傾斜レベルの補正を行うことができる。以下、説明を簡単にするため、第1の経路1及び第3の経路3の利得等化器は同一のものとして説明する。
【0034】
光スイッチ11は、第1の経路1、第2の経路2、及び、第3の経路3を切り替え可能な光スイッチである。光スイッチ11は、第1の実施形態と同様に、制御部20の制御に基づき、経路を切り替える。
【0035】
以下、説明を簡単にするため、初期の設定として、第1の経路1が選択されているとする。利得等化装置200は、海底ケーブルシステムの光損失が増加しているとき、経路を第1の経路1から第3の経路3に切り替えることができる。これにより、利得等化装置200は、例えば、第1の経路1における利得等化器が故障又は不具合を生じ、第1の経路1における光損失が増加している場合に、経路を第3の経路3に切り替えることで、海底ケーブルシステムの光損失の増加を抑制しつつ、光信号の傾斜の補正を継続して行うことができる。
【0036】
また、利得等化装置200は、海底ケーブルシステムの光損失が増加しているとき、経路を第1の経路1から第2の経路2に切り替えることができる。これにより、利得等化装置200は、海底ケーブルシステムの光損失の増加を抑制することができる。
なお、利得等化装置200は、海底ケーブルシステムの光損失が増加しているとき、第3の経路3から第2の経路2に経路を切り替えてもよい。
【0037】
以上のように、利得等化装置200は、第1の経路1、第2の経路2、及び、第3の経路3を切り替えることで、海底ケーブルシステムの光損失の増加を抑制することができる。
【0038】
図2を用いて、利得等化装置200の動作について説明する。上り回線と下り回線は、方向が異なるだけで同一構造となる。説明を簡単にするため、下り回線について説明する。図2の矢印の方向を下り方向とする。下り方向に向かって、陸上端局からWDM信号が伝送されている。
【0039】
光ファイバ101から利得等化装置200に光信号が入力される。入力された光信号は、制御部20の制御に基づき、光スイッチ11aによって、第1の経路1を通るか、第2の経路2を通るか、第3の経路3を通るかが決定される。初期の設定として、光スイッチ11は、入力光信号の傾斜を補正する利得等化器を有する第1の経路1又は第3の経路3と接続されていてもよい。以下、初期の設定として、第1の経路1が選択されているとする。
【0040】
制御部20は、海底ケーブルシステムの光損失が増加している場合、陸上端局からのコマンドを受信し、光スイッチ11の切り替えを制御する。光スイッチ11aは、制御部20の制御に基づき、第1の経路1から第2の経路2又は第3の経路3に経路を切り替える。ここで、光スイッチ11bも、光スイッチ11aと同様に、第1の経路1から第2の経路2又は第3の経路3に経路を切り替える。光信号は、第2の経路2又は第3の経路3を通り、光スイッチ11bを介して、光ファイバ102に出力される。
【0041】
利得等化装置200は、光ファイバ101の経時的な劣化や修理のため、ケーブルの割り入れが生じ、光損失が増加する場合に、WDM信号がスルーファイバを有する第2の経路2を通るように光スイッチ11を切り替えてもよい。また、利得等化装置200は、例えば、第1の経路1における利得等化器によって光損失が増加している場合に、第2の経路2又は第3の経路3を通るように光スイッチ11を切り替えてもよい。
以上のように、利得等化装置200は、第1の経路1、第2の経路2、及び、第3の経路3を切り替えることで、海底ケーブルシステムの光損失の増加を抑制することができる。
【0042】
利得等化装置200は、第1の経路1、第2の経路2、第3の経路3、光スイッチ11、制御部20の単純な構成であり、小型化することができる。また、小型化することで、複雑な制御機構を不要とすることができるため、消費電力を抑制することができる。加えて、利得等化装置200は、単純な構造で構成できるため、故障や不具合の可能性を低減しており、信頼性を向上させることができる。
【0043】
なお、利得等化装置200に、利得等化器を有する経路を新たに追加してもよい。これにより、利得等化装置200の故障や不具合の発生をさらに抑えることができるため、利得等化装置200に係る修理等のための引き上げや再敷設の費用をさらに抑制することができる。
【0044】
(第3の実施形態)
図3は、第3の実施形態に係る利得等化システム1000の構成を示すブロック図である。利得等化システム1000は、利得等化装置200と、利得等化装置300とを備える。利得等化装置200は、第2の実施形態に係る利得等化装置200と構成が同様であるため、同様の符号を付し、適宜詳細な説明を省略する。また、以下では第2の実施形態との違いを中心に説明する。なお、利得等化装置200に代わって、利得等化装置100を用いてもよい。
【0045】
利得等化装置300は、陸上端局に配置されている。利得等化装置300は、入力光信号の傾斜を補正する利得等化器を有する第4の経路4を備える利得等化装置である。利得等化装置300が有する利得等化器は、第1の経路1又は第3の経路3における利得等化器と同一であっても異なっていてもよい。
【0046】
図3より、利得等化装置300には、光ファイバ102から出力された光信号が入力される。なお、光ファイバ102から出力された光信号は、利得等化装置300に入力されるまでに中継器や他の利得等化装置を介していてもよい。
利得等化装置300の第4の経路4における利得等化器は、利得等化装置200の第2の経路2が使用されている場合に、第2の経路2から出力された光信号の傾斜を補正する。
【0047】
例えば、利得等化装置200が第2の経路2を使用しているとき、第1の経路1、第3の経路3に比べて、光損失の増加は抑制されているが、依然として光ファイバ101から入力されている光信号の光損失は生じており、傾斜レベルの補正が必要な場合がある。利得等化装置300が、利得等化装置200から出力された光信号の傾斜を補正することで、伝送品質を確保することができる。
【0048】
なお、利得等化装置300は、利得等化装置100及び利得等化装置200と同様に、スルーファイバを有する経路及び光スイッチをさらに備えていてもよい。利得等化装置200の第1の経路1又は第3の経路3が使用されている場合は、傾斜を補正する必要がないため、利得等化装置300は、光ファイバ102から入力される光信号を、スルーファイバを有する経路に出力するようにしてもよい。
【0049】
以上説明したように、第3の実施形態に係る利得等化システム1000では、陸上端局に利得等化器を有する第4の経路4を備えることで、海底に敷設された利得等化装置200によって、光信号の傾斜補正がされていない場合であっても、陸上端局において、光信号の傾斜の補正を行うことができる。これにより、海底ケーブルシステムにおける光信号の伝送品質を確保することができる。
【0050】
図4を用いて、第1~第3の実施形態に係る利得等化装置100、利得等化装置200、利得等化装置300の制御装置のハードウェア構成例を説明する。図4において利得等化装置100、利得等化装置200、利得等化装置300は、プロセッサ111と、メモリ112とを有している。プロセッサ111は、例えば、マイクロプロセッサ、MPU(Micro Processing Unit)、又はCPU(Central Processing Unit)であってもよい。プロセッサ111は、複数のプロセッサを含んでもよい。メモリ112は、揮発性メモリ及び不揮発性メモリの組み合わせによって構成される。メモリ112は、プロセッサ111から離れて配置されたストレージを含んでもよい。この場合、プロセッサ111は、図示されていない入出力インタフェースを介してメモリ112にアクセスしてもよい。
【0051】
また、上述の実施形態における制御装置は、ハードウェア又はソフトウェア、もしくはその両方によって構成され、1つのハードウェア又はソフトウェアから構成してもよいし、複数のハードウェア又はソフトウェアから構成してもよい。上述の実施形態における制御装置の各機能を、コンピュータにより実現してもよい。例えば、メモリ112に実施形態における動作を行うためのプログラムを格納し、各機能を、メモリ112に格納されたプログラムをプロセッサ111で実行することにより実現してもよい。
【0052】
このようなプログラムは、様々なタイプの非一時的なコンピュータ可読媒体(non-transitory computer readable medium)を用いて格納され、コンピュータに供給することができる。非一時的なコンピュータ可読媒体は、様々なタイプの実体のある記録媒体(tangible storage medium)を含む。非一時的なコンピュータ可読媒体の例は、磁気記録媒体(例えばフレキシブルディスク、磁気テープ、ハードディスクドライブ)、光磁気記録媒体(例えば光磁気ディスク)、CD-ROM(Read Only Memory)、CD-R、CD-R/W、半導体メモリ(例えば、マスクROM、PROM(Programmable ROM)、EPROM(Erasable PROM)、フラッシュROM、RAM(random access memory))を含む。また、プログラムは、様々なタイプの一時的なコンピュータ可読媒体によってコンピュータに供給されてもよい。一時的なコンピュータ可読媒体の例は、電気信号、光信号、及び電磁波を含む。一時的なコンピュータ可読媒体は、電線及び光ファイバ等の有線通信路、又は無線通信路を介して、プログラムをコンピュータに供給できる。
【0053】
なお、本発明は上記実施の形態に限られたものではなく、趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更することが可能である。
【0054】
この出願は、2021年3月24日に出願された日本出願特願2021-050010を基礎とする優先権を主張し、その開示の全てをここに取り込む。
【符号の説明】
【0055】
第1の経路 1
第2の経路 2
第3の経路 3
第4の経路 4
光スイッチ 10、10a、10b、11、11a、11b
制御部 20
利得等化装置 100、200、300
光ファイバ 101
光ファイバ 102
プロセッサ 111
メモリ 112
利得等化システム 1000
図1
図2
図3
図4