(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-03-18
(45)【発行日】2025-03-27
(54)【発明の名称】炭化水素製造設備、炭化水素製造システム、炭化水素製造装置の制御器及び炭化水素を製造する方法
(51)【国際特許分類】
C07C 1/00 20060101AFI20250319BHJP
C10L 3/08 20060101ALI20250319BHJP
C07C 9/04 20060101ALI20250319BHJP
C07C 1/12 20060101ALI20250319BHJP
C25B 1/04 20210101ALI20250319BHJP
C25B 9/00 20210101ALI20250319BHJP
C07C 1/04 20060101ALI20250319BHJP
C07B 61/00 20060101ALN20250319BHJP
【FI】
C07C1/00
C10L3/08
C07C9/04
C07C1/12
C25B1/04
C25B9/00 A
C07C1/04
C07B61/00 300
(21)【出願番号】P 2023546951
(86)(22)【出願日】2022-09-06
(86)【国際出願番号】 JP2022033476
(87)【国際公開番号】W WO2023038034
(87)【国際公開日】2023-03-16
【審査請求日】2024-03-07
(31)【優先権主張番号】P 2021148346
(32)【優先日】2021-09-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000000099
【氏名又は名称】株式会社IHI
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100170818
【氏名又は名称】小松 秀輝
(72)【発明者】
【氏名】辻川 順
(72)【発明者】
【氏名】成相 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】稲葉 光亮
【審査官】奥谷 暢子
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-156762(JP,A)
【文献】特開2018-135283(JP,A)
【文献】特開2020-164424(JP,A)
【文献】特開2019-142808(JP,A)
【文献】国際公開第2021/045101(WO,A1)
【文献】国際公開第2020/203087(WO,A1)
【文献】特開2019-108302(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C
C10L
C25B
C07B
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水素及び炭素を含む原料ガスを受け入れて、前記原料ガスを所定の温度まで熱せられた第1触媒を用いて反応させることによって、炭化水素を含む第1中間ガスを発生する第1反応装置と、
前記第1中間ガスを所定の温度まで熱せられた第2触媒を用いて反応させることによって、炭化水素を含む第2中間ガスを発生する第2反応装置と、
前記第1触媒を熱するための熱を前記第1反応装置に供給可能であると共に、前記第2触媒を熱するための熱を前記第2反応装置に供給可能である熱供給器と、
前記熱供給器の動作を制御する制御器と、を備え、
前記制御器は、前記第1反応装置及び前記第2反応装置のそれぞれに熱を供給させる第1制御信号と、前記第1反応装置及び前記第2反応装置の一方にのみ熱を供給させる第2制御信号と、を選択的に前記熱供給器に出力し、
前記制御器は、前記原料ガスが含む前記水素の量に基づいて、前記第1制御信号及び前記第2制御信号のいずれか一方を選択する、炭化水素製造設備。
【請求項2】
前記熱供給器は、
前記第1反応装置及び前記第2反応装置に供給される熱媒が流通する熱媒流路部と、
前記熱媒と熱交換を行う熱制御部と、を有し、
前記熱媒流路部は、
前記第1反応装置に接続された第1熱媒流路と、
前記第1反応装置を前記第2反応装置に接続する第2熱媒流路と、
前記第2反応装置に接続された第3熱媒流路と、を含む、請求項1に記載の炭化水素製造設備。
【請求項3】
前記熱媒流路部は、
前記第2熱媒流路を前記第3熱媒流路に接続する熱媒バイパス流路と、
前記第1制御信号を受けることによって前記熱媒を前記第2反応装置に供給する態様と、前記第2制御信号を受けることによって前記熱媒を前記第2反応装置に供給することなく前記熱媒バイパス流路に供給する態様と、を相互に切り替える熱媒切替部と、を有する、請求項2に記載の炭化水素製造設備。
【請求項4】
前記第1反応装置に接続された第1ガス流路と、
前記第1反応装置を前記第2反応装置に接続する第2ガス流路と、
前記第2反応装置に接続された第3ガス流路と、
前記第2ガス流路を前記第3ガス流路に接続するガスバイパス流路と、
前記第1制御信号を受けることによって前記第1中間ガスを前記第2反応装置に供給する態様と、前記第2制御信号を受けることによって前記第1中間ガスを前記第2反応装置に供給することなく前記ガスバイパス流路に供給する態様と、を相互に切り替えるガス切替部と、をさらに備える、請求項1に記載の炭化水素製造設備。
【請求項5】
前記制御器は、
前記原料ガスが含む前記水素の量に関するデータを得る水素量取得部と、
前記水素の量に関するデータが示す量の前記水素を含む前記原料ガスを受け入れたとき、前記第1反応装置の反応によって生じる熱量及び前記第2反応装置の反応によって生じる熱量を含む反応熱量と、前記第1反応装置の反応及び前記第2反応装置の反応を維持するために要する要求熱量と、を比較する熱量比較部と、
前記反応熱量が前記要求熱量より小さい場合に前記第2制御信号を前記熱供給器に出力する信号出力部と、を有する、請求項1に記載の炭化水素製造設備。
【請求項6】
前記第1反応装置は、互いに並列に接続された少なくとも2個の反応器を含む、請求項1に記載の炭化水素製造設備。
【請求項7】
水素を出力する水素供給設備と、
前記水素及び炭素を含む原料ガスを受け入れて、炭化水素を含むガスを発生する炭化水素製造設備と、を備え、
前記炭化水素製造設備は、
水素及び炭素を含む原料ガスを受け入れて、前記原料ガスを所定の温度まで熱せられた第1触媒を用いて反応させることによって、炭化水素を含む第1中間ガスを発生する第1反応装置と、
前記第1中間ガスを所定の温度まで熱せられた第2触媒を用いて反応させることによって、炭化水素を含む第2中間ガスを発生する第2反応装置と、
前記第1触媒を熱するための熱を前記第1反応装置に供給すると共に、前記第2触媒を熱するための熱を前記第2反応装置に供給する熱供給器と、
前記熱供給器の動作を制御する制御器と、を有し、
前記制御器は、前記第1反応装置及び前記第2反応装置のそれぞれに熱を供給させる第1制御信号と、前記第1反応装置及び前記第2反応装置の一方にのみ熱を供給させる第2制御信号と、を選択的に前記熱供給器に出力し、
前記制御器は、前記原料ガスが含む前記水素の量に基づいて、前記第1制御信号及び前記第2制御信号のいずれか一方を選択する、炭化水素製造システム。
【請求項8】
水素及び炭素を含む原料ガスを受け入れて、前記原料ガスを所定の温度まで熱せられた第1触媒を用いて反応させることによって、炭化水素を含む第1中間ガスを発生する第1反応装置と、前記第1中間ガスを所定の温度まで熱せられた第2触媒を用いて反応させることによって、炭化水素を含む第2中間ガスを発生する第2反応装置と、を含む炭化水素製造装置の制御器であって、
前記原料ガスが含む前記水素の量に関するデータを得る水素量取得部と、
前記水素の量に関するデータが示す量の前記水素を含む前記原料ガスを前記炭化水素製造装置が受け入れたとき、前記第1反応装置の反応によって生じる熱量及び前記第2反応装置の反応によって生じる熱量を含む反応熱量と、前記第1反応装置の反応及び前記第2反応装置の反応を維持するために要する要求熱量と、を比較する熱量比較部と、
前記反応熱量が前記要求熱量より小さい場合に、前記第1触媒を熱するための熱を前記第1反応装置に供給すると共に、前記第2触媒を熱するための熱を前記第2反応装置に供給可能な熱供給器に対して、前記第1反応装置及び前記第2反応装置の一方にのみ熱を供給させる制御信号を出力する信号出力部と、を有する、炭化水素製造装置の制御器。
【請求項9】
水素及び炭素を含む原料ガスを受け入れて、前記原料ガスを所定の温度まで熱せられた第1触媒を用いて反応させることによって、炭化水素を含む第1中間ガスを発生する第1反応装置と、前記第1中間ガスを所定の温度まで熱せられた第2触媒を用いて反応させることによって、炭化水素を含む第2中間ガスを発生する第2反応装置と、を含む炭化水素製造装置を用いて炭化水素を製造する方法であって、
前記原料ガスが含む前記水素の量に関するデータを得るステップと、
前記水素の量に関するデータが示す量の前記水素を含む前記原料ガスを前記炭化水素製造装置が受け入れたとき、前記第1反応装置の反応によって生じる熱量及び前記第2反応装置の反応によって生じる熱量を含む反応熱量と、前記第1反応装置の反応及び前記第2反応装置の反応を維持するために要する要求熱量と、を比較するステップと、
前記反応熱量が前記要求熱量より小さい場合に、前記第1触媒を熱するための熱を前記第1反応装置に供給すると共に、前記第2触媒を熱するための熱を前記第2反応装置に供給する熱供給器に対して、前記第1反応装置及び前記第2反応装置の一方にのみ熱を供給させる制御信号を出力するステップと、を有する、炭化水素を製造する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、炭化水素製造設備、炭化水素製造システム、炭化水素製造装置の制御器及び炭化水素を製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、再生可能エネルギの利用が進んでいる。再生可能エネルギによって発電された電力のうち、余剰の電力を、電力とは別のエネルギ媒体に変換し、当該エネルギ媒体を保存する技術がある。例えば、水電解技術は、余剰の電力によって、エネルギ媒体としての水素を発生させる。水素を貯蔵することで、余剰電力の保存が可能である。貯蔵した水素を単独で使用するための技術にとどまらず、水素を輸送しやすい形又は利用しやすい形に変換する技術の開発も盛んである。
【0003】
エネルギ媒体は、水素に限られない。例えば、炭化水素及びアンモニアもエネルギ媒体として利用することができる。水素を原料として炭化水素及びアンモニアを製造する技術が注目されている。炭化水素は、原料として水素と二酸化炭素とを用いる。従って、二酸化炭素を有効に活用するという点で有利である。例えば、特許文献1は、水素と二酸化炭素とを用いて、メタンを製造する技術を開示する。特許文献1の装置は、再生可能エネルギを用いた水電解装置を用いて水素を製造する。特許文献1の装置は、負荷の変動が発生した際に反応工程の一部を省略する。その結果、各工程で反応の状態が平衡になるように調整される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
水素を含む原料ガスを用いて、炭化水素を含むガスを生成する場合には、反応を生じさせるための所定のエネルギが必要である。例えば、水素と二酸化炭素とを用いて炭化水素を生成する場合には、反応を生じさせるための触媒を所定の温度に維持する必要がある。原料ガスが十分に供給されている場合には、反応によって生じる熱によって、触媒の温度を維持できる。しかし、原料ガスが十分に供給されない場合には、触媒の温度を維持するためのエネルギを外部から供給する必要がある。
【0006】
再生可能エネルギを利用する太陽光発電及び風力発電では、出力する電力が変動しやすい。従って、再生可能エネルギを利用する発電設備から電力を受けて稼働する水電解装置なども、出力が変動しやすい。その結果、水電解装置が出力する水素の量が十分でない場合には、上述したように外部から反応に要するエネルギを供給する必要がある。従って、全体としてエネルギ効率を向上させにくい状態が生じることがあり得る。
【0007】
本開示は、エネルギ効率を向上させることが可能な炭化水素製造設備、炭化水素製造システム、炭化水素製造装置の制御器及び炭化水素を製造する方法を説明する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示の一形態である炭化水素製造設備は、水素及び炭素を含む原料ガスを受け入れて、原料ガスを所定の温度まで熱せられた第1触媒を用いて反応させることによって、炭化水素を含む第1中間ガスを発生する第1反応装置と、第1中間ガスを所定の温度まで熱せられた第2触媒を用いて反応させることによって、炭化水素を含む第2中間ガスを発生する第2反応装置と、第1触媒を熱するための熱を第1反応装置に供給可能であると共に、第2触媒を熱するための熱を第2反応装置に供給可能である熱供給器と、熱供給器の動作を制御する制御器と、を備える。制御器は、第1反応装置及び第2反応装置のそれぞれに熱を供給させる第1制御信号と、第1反応装置及び第2反応装置の一方にのみ熱を供給させる第2制御信号と、を選択的に熱供給器に出力する。制御器は、原料ガスが含む水素の量に基づいて、第1制御信号及び第2制御信号のいずれか一方を選択する。
【発明の効果】
【0009】
上記の炭化水素製造設備、炭化水素製造システム、炭化水素製造装置の制御器及び炭化水素を製造する方法は、炭化水素を製造する際のエネルギ効率を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、炭化水素製造システムを示す図である。
【
図3】
図3は、コントローラの構成を示す図である。
【
図4】
図4は、コントローラの動作を示すフロー図である。
【
図5】
図5は、実施例の炭化水素製造装置を示す図である。
【
図6】
図6は、変形例の炭化水素製造装置が備える反応装置を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本開示の一形態である炭化水素製造設備は、水素及び炭素を含む原料ガスを受け入れて、原料ガスを所定の温度まで熱せられた第1触媒を用いて反応させることによって、炭化水素を含む第1中間ガスを発生する第1反応装置と、第1中間ガスを所定の温度まで熱せられた第2触媒を用いて反応させることによって、炭化水素を含む第2中間ガスを発生する第2反応装置と、第1触媒を熱するための熱を第1反応装置に供給可能であると共に、第2触媒を熱するための熱を第2反応装置に供給可能である熱供給器と、熱供給器の動作を制御する制御器と、を備える。制御器は、第1反応装置及び第2反応装置のそれぞれに熱を供給させる第1制御信号と、第1反応装置及び第2反応装置の一方にのみ熱を供給させる第2制御信号と、を選択的に熱供給器に出力する。制御器は、原料ガスが含む水素の量に基づいて、第1制御信号及び第2制御信号のいずれか一方を選択する。
【0012】
炭化水素製造設備に供給される水素の量が少ない場合には、反応によって生じる熱量も少なくなる。その結果、反応を生じさせるために要求される温度まで第1触媒及び第2触媒を加熱する必要がある。炭化水素製造設備は、原料ガスが含む水素の量に基づいて、熱媒を第1反応装置及び第2反応装置の両方に供給する態様と、熱媒を第1反応装置及び第2反応装置の一方にのみ供給する態様と、を切り替える。その結果、炭化水素製造設備に供給される水素の量が少ない場合には、熱媒を第1反応装置及び第2反応装置の一方にのみ供給する態様とすることによって、反応を維持するために供給すべき熱量を減らすことができる。従って、炭化水素製造設備は、原料ガスから炭化水素を含むガスを発生させる動作におけるエネルギ効率を向上させることができる。
【0013】
上記の炭化水素製造設備の熱供給器は、第1反応装置及び第2反応装置に供給される熱媒が流通する熱媒流路部と、熱媒と熱交換を行う熱制御部と、を有してもよい。熱媒流路部は、第1反応装置に接続された第1熱媒流路と、第1反応装置を第2反応装置に接続する第2熱媒流路と、第2反応装置に接続された第3熱媒流路と、を含んでもよい。この構成によれば、熱制御部において熱の供給を受けた熱媒は、第1反応装置及び第2反応装置に供給される。その結果、反応に必要な熱量を第1触媒及び第2触媒に提供することができる。
【0014】
上記の炭化水素製造設備の熱媒流路部は、第2熱媒流路を第3熱媒流路に接続する熱媒バイパス流路と、第1制御信号を受けることによって熱媒を第2反応装置に供給する態様と、第2制御信号を受けることによって熱媒を第2反応装置に供給することなく熱媒バイパス流路に供給する態様と、を相互に切り替える熱媒切替部と、を有してもよい。この構成によれば、熱媒を第2反応装置に供給する態様と、熱媒を第2反応装置に供給しない態様と、の切り替えを簡易な構成によって実現できる。
【0015】
上記の炭化水素製造設備は、第1反応装置に接続された第1ガス流路と、第1反応装置を第2反応装置に接続する第2ガス流路と、第2反応装置に接続された第3ガス流路と、第2ガス流路を第3ガス流路に接続するガスバイパス流路と、第1制御信号を受けることによって第1中間ガスを第2反応装置に供給する態様と、第2制御信号を受けることによって第1中間ガスを第2反応装置に供給することなくガスバイパス流路に供給する態様と、を相互に切り替えるガス切替部と、をさらに備えてもよい。この構成によれば、第1中間ガスを第2反応装置に供給する態様と、第1中間ガスを第2反応装置に供給しない態様と、の切り替えを簡易な構成によって実現できる。
【0016】
上記の炭化水素製造設備の制御器は、原料ガスが含む水素の量に関するデータを得る水素量取得部と、水素の量に関するデータが示す量の水素を含む原料ガスを受け入れたとき、第1反応装置の反応によって生じる熱量及び第2反応装置の反応によって生じる熱量を含む反応熱量と、第1反応装置の反応及び第2反応装置の反応を維持するために要する要求熱量と、を比較する熱量比較部と、反応熱量が要求熱量より小さい場合に第2制御信号を熱供給器に出力する信号出力部と、を有してもよい。この制御器によれば、第1反応装置及び第2反応装置の一方にのみ熱を供給させるべき状態を、容易に判断することができる。
【0017】
上記の炭化水素製造設備の第1反応装置は、互いに並列に接続された少なくとも2個の反応器を含んでもよい。この構成によれば、第1中間ガスの発生量を増加させることができる。
【0018】
本開示の別の形態である炭化水素製造システムは、水素を出力する水素供給設備と、水素及び炭素を含む原料ガスを受け入れて、炭化水素を含むガスを発生する炭化水素製造設備と、を備える。炭化水素製造設備は、水素及び炭素を含む原料ガスを受け入れて、原料ガスを所定の温度まで熱せられた第1触媒を用いて反応させることによって、炭化水素を含む第1中間ガスを発生する第1反応装置と、第1中間ガスを所定の温度まで熱せられた第2触媒を用いて反応させることによって、炭化水素を含む第2中間ガスを発生する第2反応装置と、第1触媒を熱するための熱を第1反応装置に供給すると共に、第2触媒を熱するための熱を第2反応装置に供給する熱供給器と、熱供給器の動作を制御する制御器と、を有する。制御器は、第1反応装置及び第2反応装置のそれぞれに熱を供給させる第1制御信号と、第1反応装置及び第2反応装置の一方にのみ熱を供給させる第2制御信号と、を選択的に熱供給器に出力する。制御器は、原料ガスが含む水素の量に基づいて、第1制御信号及び第2制御信号のいずれか一方を選択する。
【0019】
炭化水素製造システムは、上述の炭化水素製造設備を備えている。従って、原料ガスから炭化水素を含むガスを発生させる動作におけるエネルギ効率を向上させることができる。
【0020】
本開示のさらに別の形態である炭化水素製造装置の制御器は、水素及び炭素を含む原料ガスを受け入れて、原料ガスを所定の温度まで熱せられた第1触媒を用いて反応させることによって、炭化水素を含む第1中間ガスを発生する第1反応装置と、第1中間ガスを所定の温度まで熱せられた第2触媒を用いて反応させることによって、炭化水素を含む第2中間ガスを発生する第2反応装置と、を含む。炭化水素製造装置の制御器は、原料ガスが含む水素の量に関するデータを得る水素量取得部と、水素の量に関するデータが示す量の水素を含む原料ガスを炭化水素製造装置が受け入れたとき、第1反応装置の反応によって生じる熱量及び第2反応装置の反応によって生じる熱量を含む反応熱量と、第1反応装置の反応及び第2反応装置の反応を維持するために要する要求熱量と、を比較する熱量比較部と、反応熱量が要求熱量より小さい場合に、第1触媒を熱するための熱を第1反応装置に供給すると共に、第2触媒を熱するための熱を第2反応装置に供給可能な熱供給器に対して、第1反応装置及び第2反応装置の一方にのみ熱を供給させる制御信号を出力する信号出力部と、を有する。
【0021】
炭化水素製造装置の制御器は、炭化水素製造装置に供給される原料ガスが含む水素の量に基づいて、熱媒を提供する対象を決定できる。従って、炭化水素製造装置の制御器は、炭化水素製造装置が行う原料ガスから炭化水素を含むガスを発生させる動作におけるエネルギ効率を向上させることができる。
【0022】
本開示のさらに別の形態である炭化水素製造装置を用いて炭化水素を製造する方法は、水素及び炭素を含む原料ガスを受け入れて、原料ガスを所定の温度まで熱せられた第1触媒を用いて反応させることによって、炭化水素を含む第1中間ガスを発生する第1反応装置と、第1中間ガスを所定の温度まで熱せられた第2触媒を用いて反応させることによって、炭化水素を含む第2中間ガスを発生する第2反応装置と、を含む。炭化水素製造装置を用いて炭化水素を製造する方法は、原料ガスが含む水素の量に関するデータを得るステップと、水素の量に関するデータが示す量の水素を含む原料ガスを炭化水素製造装置が受け入れたとき、第1反応装置の反応によって生じる熱量及び第2反応装置の反応によって生じる熱量を含む反応熱量と、第1反応装置の反応及び第2反応装置の反応を維持するために要する要求熱量と、を比較するステップと、反応熱量が要求熱量より小さい場合に、第1触媒を熱するための熱を第1反応装置に供給すると共に、第2触媒を熱するための熱を第2反応装置に供給する熱供給器に対して、第1反応装置及び第2反応装置の一方にのみ熱を供給させる制御信号を出力するステップと、を有する。
【0023】
炭化水素を製造する方法は、炭化水素製造装置に供給される原料ガスが含む水素の量に基づいて、熱媒を提供する対象を決定する。従って、炭化水素を製造する方法は、炭化水素製造装置が行う原料ガスから炭化水素を含むガスを発生させる動作におけるエネルギ効率を向上させることができる。
【0024】
以下、図面を参照して本開示の炭化水素製造設備、炭化水素製造システム、炭化水素製造装置の制御器及び炭化水素を製造する方法について詳細に説明する。なお、図面の説明においては、同一の要素同士及び相当する要素同士には、互いに同一の符号を付す。そして、重複する説明を省略する場合がある。
【0025】
図1に示すように、炭化水素製造設備1は、原料ガスの供給を受ける。炭化水素製造設備1は、原料ガスを、触媒を用いて反応させる。その結果、炭化水素製造設備1は、製品ガスを生成する。
【0026】
原料ガスは、水素ガス及び二酸化炭素ガスを含む。原料ガスは、二酸化炭素ガスに代えて、一酸化炭素ガスを含んでもよい。炭化水素製造設備1は、水素ガスを受け入れる入力1aと、二酸化炭素ガスを受け入れる入力1bと、を有してもよい。炭化水素製造設備1は、水素ガスと二酸化炭素ガスとが混合された原料ガスを受け入れる入力を有してもよい。
【0027】
製品ガスは、炭化水素を含む。炭化水素製造設備1は、出力1cから製品ガスを出力する。
【0028】
炭化水素製造設備1は、例えば、水電解装置101(水素供給設備)から水素ガスの供給を受ける。水電解装置101は、電力を受ける。水電解装置101は、水から水素を生成する。水電解装置101が消費する電力は、例えば、電力会社105から購入する。水電解装置101が消費する電力は、再生可能エネルギ設備102から供給される。再生可能エネルギ設備102として、再生可能エネルギである太陽光を利用する太陽光発電設備が挙げられる。再生可能エネルギ設備102として、再生可能エネルギである風力を利用する風力発電設備が挙げられる。太陽光発電設備及び風力発電設備は、再生可能エネルギ設備102の例示である。再生可能エネルギ設備102を構成する発電設備は、そのほかの再生可能エネルギを用いて発電する設備であってもよい。
【0029】
太陽光又は風力を用いた発電では、天候及び時間帯に応じて発電量が変動する。例えば、太陽光発電設備は、そもそも夜間に発電できない。太陽光発電設備は、悪天候時に発電量が大幅に低下する。水電解装置101による水素の製造は、余剰の電力を用いて行われることもある。このような事情から、水電解装置101に供給される電力は、変動しやすいので、結果的に水電解装置101が出力する水素の量も変動しやすくなる。その結果、炭化水素製造設備1に十分な量の水素ガスを供給できないタイミングが生じる。
【0030】
水電解装置101としては、例えば、アルカリ型水電解装置が挙げられる。アルカリ型水電解装置は、運用上の都合から、最低負荷電力が決まっている場合がある。アルカリ型水電解装置には、低負荷の運転に要する電力を供給する必要が生じる。例えば、再生可能エネルギ設備102から電力の供給を受けられない場合には、アルカリ型水電解装置は、蓄電池から電力の供給を受けることがある。また、アルカリ型水電解装置は、電力会社105から購入した電力の供給を受けることもある。
【0031】
炭化水素製造設備1は、さらに水素貯蔵設備103(水素供給設備)から水素ガスの供給を受ける。水素貯蔵設備103に貯蔵される水素は、水電解装置101が出力する余剰の水素であってもよい。水素貯蔵設備103に貯蔵される水素は、外部から輸送された水素であってもよい。
【0032】
炭化水素製造設備1は、二酸化炭素ガスの供給を受ける。二酸化炭素ガスは、例えば、二酸化炭素回収設備104から供給される。炭化水素製造設備1は、入力1bから二酸化炭素ガスを受け入れる。
【0033】
炭化水素製造設備1と、少なくとも水電解装置101又は水素貯蔵設備103の一方を含む構成を、炭化水素製造システム100と称する。炭化水素製造システム100は、水電解装置101又は水素貯蔵設備103の他方、及び、二酸化炭素回収設備104を含んでもよい。要するに、炭化水素製造システム100は、炭化水素製造設備1と、炭化水素製造設備1に原料を供給する設備と、を含んだものを意味する。
【0034】
炭化水素製造設備1は、炭化水素製造装置2と、コントローラ3(制御器)と、を有する。炭化水素製造装置2は、原料ガスから製品ガスを生成する。コントローラ3は、炭化水素製造装置2を制御する。コントローラ3は、炭化水素製造装置2に対して制御信号θを送信可能に接続されていればよい。制御信号θは、有線通信によって送信されてもよい。制御信号θは、無線通信によって送信されてもよい。コントローラ3は、炭化水素製造装置2の近傍に配置されてもよい。コントローラ3は、炭化水素製造装置2から離れて配置されてもよい。コントローラ3の詳細は、後述する。
【0035】
炭化水素製造装置2は、第1反応装置21Sと、第2反応装置22Sと、第3反応装置23Sと、熱供給器24と、を有する。第1反応装置21Sは、1個の反応器21を含む。同様に、第2反応装置22Sも、1個の反応器22を含む。第3反応装置23Sも、1個の反応器23を含む。本開示の反応装置は、1個の反応器を含む。反応装置を構成する反応器の数は、1個に限定されない。反応装置は、少なくとも2個の反応器によって構成されてもよい。反応装置の変形例については、後述する。
【0036】
第1反応装置21S、第2反応装置22S及び第3反応装置23Sは、原料ガスを、触媒を用いて反応させることによって、炭化水素を含むガスを生成する。第1反応装置21S、第2反応装置22S及び第3反応装置23Sは、複数のガス配管によって相互に接続されている。
【0037】
概略的には、第1反応装置21S、第2反応装置22S及び第3反応装置23Sは、この順に直列に接続されている。第1反応装置21Sは、入力1aから水素ガスを受けると共に入力1bから二酸化炭素ガスを受ける。第1反応装置21Sは、結果物として生成した第1中間ガスを第2反応装置22Sに提供する。第2反応装置22Sは、第1中間ガスを受ける。第2反応装置22Sは、第1中間ガスから第2中間ガスを生成する。第2中間ガスは、第1中間ガスよりも炭化水素の割合が多い。第2反応装置22Sは、第2中間ガスを第3反応装置23Sに提供する。第3反応装置23Sは、第2中間ガスを受ける。第3反応装置23Sは、第2中間ガスから製品ガスを生成する。製品ガスは、炭化水素の割合が第2中間ガスよりも多い。最終的に、第3反応装置23Sは、出力1cから製品ガスを外部に提供する。
【0038】
上記のガスの流れは、ガス流路部25によって実現される。ガス流路部25は、第1ガス配管251(第1ガス流路)と、第2ガス配管252(第2ガス流路)と、第3ガス配管253(第3ガス流路)と、第4ガス配管254と、を含む。第1ガス配管251は、入力1a及び入力1bを第1反応装置21Sに接続する。第2ガス配管252は、第1反応装置21Sを第2反応装置22Sに接続する。第3ガス配管253は、第2反応装置22Sを第3反応装置23Sに接続する。第4ガス配管254は、第3反応装置23Sを出力1cに接続する。
【0039】
第1反応装置21S、第2反応装置22S及び第3反応装置23Sは、受け入れ可能なガスの容量などの性能上の相違を有するが、基本的には同様の構造を有する。第1反応装置21Sは、水素ガスと二酸化炭素ガスとを原料として、炭化水素を合成する。二酸化炭素から炭化水素合成物を合成する反応として、式(1)に示されるメタネーションが挙げられる。二酸化炭素から炭化水素合成物を合成する反応として、式(2)に示されるFT合成も挙げられる。
CO2+4H2→CH4+2H2O…(1)
nCO2+3nH2→-(CH2)-n+2nH2O…(2)
【0040】
メタネーション及びFT合成は、一般的に触媒を使用することで、200℃以上の高温で反応する。高温で活性を有する触媒を使用するため、触媒をあらかじめ熱媒HMを使用して高温状態に予熱する必要がある。熱媒HMとしては、オイル、水蒸気及び溶融塩等が例示できる。反応に要する温度にまで触媒を加熱する場合、熱媒HMによる加熱を採用すると、炭化水素反応器の容量にもよるが数時間から24時間程度の時間を要する。従って、触媒を反応に要する温度にまで昇温した後は、高温状態で維持することが一般的である。
【0041】
図2は、第1反応装置21Sが備える反応器21の内部構造の例示である。反応器21は、シェル211と、複数のチューブ212と、バッファ213と、を有する。シェル211は、反応器21の外殻を構成する。シェル211は、ガス入口211aと、ガス出口211bと、熱媒入口211cと、熱媒出口211dと、を有する。
【0042】
ガス入口211aは、複数のチューブ212によってガス出口211bに接続されている。チューブ212の内部には、触媒CT(第1触媒)が配置されている。チューブ212に配置された触媒CTを、原料ガスが通過するときに、反応が生じる。その結果、炭化水素を含むガスが生成される。熱媒入口211cは、シェル211とチューブ212と隔壁215とによって囲まれた空間を介して熱媒出口211dに接続されている。ガスが流れる領域と熱媒HMが流れる領域とは、チューブ212及び隔壁215によって隔てられている。
【0043】
熱媒HMは、チューブ212の外周面と接触しながら熱媒入口211cから熱媒出口211dへ流れる。熱媒入口211cから熱媒出口211dへ流れる過程において、チューブ212の外周面を介して、熱媒HMと触媒CTとの熱交換が行われる。熱交換は、熱媒HMから触媒CTへ熱が移動する態様を含む。熱交換は、触媒CTから熱媒HMへ熱が移動する態様も含む。熱媒入口211cから、例えば、摂氏300度から摂氏330度のオイルが供給される。熱媒HMから触媒CTへ熱が移動する態様である場合には、熱媒出口211dから排出されるオイルの温度は、熱媒入口211cに流入するオイルの温度よりも下がる。触媒CTから熱媒HMへ熱が移動する態様である場合には、熱媒出口211dから排出されるオイルの温度は、熱媒入口211cに流入するオイルの温度よりも上がる。
【0044】
再び
図1を参照する。熱供給器24は、第1反応装置21S、第2反応装置22S及び第3反応装置23Sのそれぞれに熱媒HMを供給する。第1反応装置21S、第2反応装置22S及び第3反応装置23Sは、反応の状態によって、発生する熱量が増減する。例えば、発生する熱量が少ない場合には、熱媒HMは、第1反応装置21S、第2反応装置22S及び第3反応装置23Sが備えるそれぞれの触媒CTに熱を供給する。例えば、発生する熱量が多い場合には、熱媒HMは、それぞれの触媒CTから熱を奪う。熱媒HMの循環によって、第1反応装置21S、第2反応装置22S及び第3反応装置23Sが備える触媒CTを所定の温度に維持することができる。
【0045】
熱供給器24は、熱制御装置241(熱制御部)と、熱媒流路部242と、を有する。熱供給器24は、熱制御装置241及び熱媒流路部242とは別の部品を含むことを許容する。
【0046】
熱制御装置241は、熱媒HMに対して熱を与える機能と、熱媒HMから熱を奪う機能と、を有する。熱制御装置241は、熱媒HMに対して熱を与える機能のためのヒータ241aを備えてよい。熱制御装置241は、熱媒HMから熱を奪う機能のための熱交換器241bを備えてよい。例えば、熱交換器241bは、冷却器であってもよい。熱制御装置241は、熱媒HMを移動させるためのポンプ241cを備えてもよい。例えば、
図1に示すように、熱媒HMが流れる方向に沿って、熱交換器241b、ポンプ241c及びヒータ241aの順に接続されてもよい。上記の式(1)に示すメタネーション及び式(2)に示すFT反応は、いずれも発熱反応である。反応が始まると、触媒CTの温度が急激に上昇する。従って、発生する熱量を奪って触媒CTの温度が所定の範囲に収まるように温度を制御する必要がある。熱制御装置241は、触媒CTの温度が所定の範囲に収めるための熱制御に用いることもできる。
【0047】
熱媒流路部242は、第1熱媒配管242a(第1熱媒流路)と、第2熱媒配管242b(第2熱媒流路)と、第3熱媒配管242c(第3熱媒流路)と、第4熱媒配管242dと、を有する。これらの配管によって、熱媒HMは閉じた流路を流通する。第1熱媒配管242aは、第1反応装置21Sを熱制御装置241に接続する。第2熱媒配管242bは、第1反応装置21Sを第2反応装置22Sに接続する。第3熱媒配管242cは、第2反応装置22Sを第3反応装置23Sに接続する。第4熱媒配管242dは、熱制御装置241を第3反応装置23Sに接続する。熱媒HMは、第3反応装置23S、第2反応装置22S、第1反応装置21Sの順に流れる。つまり、熱媒HMが流れる方向は、ガスが流れる方向と逆である。
【0048】
炭化水素製造装置2は、基本的に3基の反応装置(反応器)によって製品ガスを生成する。炭化水素製造装置2は、必要に応じて、2基の反応装置によって製品ガスを生成することもできる。
図1の例示では、炭化水素製造装置2は、第1反応装置21S、第2反応装置22S及び第3反応装置23Sによって製品ガスを生成することができる。炭化水素製造装置2は、第1反応装置21S及び第3反応装置23Sによって製品ガスを生成することもできる。炭化水素製造装置2は、製品ガスの生成において、第2反応装置22Sを用いる状態と、第2反応装置22Sを用いない状態と、を選択できる。第2反応装置22Sを用いる状態とは、換言すると、反応が可能な状態に第2反応装置22Sの触媒CT(第2触媒)の温度が維持されている状態をいう。第2反応装置22Sを用いない状態とは、換言すると、反応が可能な状態に第2反応装置22Sの触媒CTの温度が維持されていない状態をいう。
【0049】
第2反応装置22Sの触媒CTの温度は、反応によって発生する熱量と、熱媒HMによって供給される熱量と、によって決まる。また、第2反応装置22Sの触媒CTの温度は、反応によって発生する熱量と、熱媒HMによって奪われる熱量と、によって決まる。例えば、反応により生じる熱量が少なく、且つ、熱媒HMによる熱の供給を止めると、第2反応装置22Sの触媒CTの温度が維持できくなくなる。熱媒HMによる熱の供給を止めると、第2反応装置22Sを用いない状態とすることができる。熱媒流路部242は、第2反応装置22Sへの熱媒HMの供給と供給の停止とを切り替える構成を有する。具体的には、熱媒流路部242は、熱媒バイパス配管242P(熱媒バイパス流路)と、熱媒切替器242S(熱媒切替部)と、を有する。
【0050】
熱媒バイパス配管242Pは、第2熱媒配管242bに第3熱媒配管242cを接続する。具体的には、熱媒バイパス配管242Pの第1端は、第2熱媒配管242bに接続される。熱媒バイパス配管242Pの第2端は、第3熱媒配管242cに接続される。熱媒バイパス配管242Pの第2端には、熱媒切替器242Sが設けられる。熱媒切替器242Sは、第3反応装置23Sから提供された熱媒HMを、第2反応装置22Sに供給する構成と、熱媒バイパス配管242Pへ供給する構成と、を相互に切り替える。熱媒切替器242Sの切り替え動作は、コントローラ3の制御信号θに従う。熱媒切替器242Sは、例えば、
図5に示すように2個のバルブによって構成されてもよい。熱媒HMが熱媒バイパス配管242Pを流れるとき、熱媒HMは第2反応装置22Sには供給されない。
【0051】
炭化水素製造装置2は、熱媒HMをバイパスする構成に加えて、ガスをバイパスする構成を備えてもよい。ガス流路部25は、ガスバイパス配管25P(ガスバイパス流路)と、ガス切替器25S(ガス切替部)と、を有してもよい。
【0052】
ガスバイパス配管25Pは、第2ガス配管252を第3ガス配管253に接続する。具体的には、ガスバイパス配管25Pの第1端は、第2ガス配管252に接続される。ガスバイパス配管25Pの第2端は、第3ガス配管253に接続される。ガスバイパス配管25Pの第1端には、ガス切替器25Sが設けられる。ガス切替器25Sは、第1反応装置21Sが発生した第1中間ガスを、第2反応装置22Sに供給する構成と、ガスバイパス配管25Pに供給する構成と、を相互に切り替える。ガス切替器25Sの切り替え動作は、コントローラ3の制御信号θに従う。例えば、第1中間ガスがガスバイパス配管25Pを流れるとき、第1中間ガスは第2反応装置22Sには供給されない。
【0053】
コントローラ3は、第2反応装置22Sを用いる状態と、第2反応装置22Sを用いない状態と、を相互に切り替えるための制御信号θを出力する。コントローラ3は、第2反応装置22Sを用いる状態とする場合に、第1制御信号θを出力する。コントローラ3は、第2反応装置22Sに熱媒HM及びガスを供給する場合に、第1制御信号θを出力する。コントローラ3は、第2反応装置22Sを用いない状態とする場合に、第2制御信号θを出力する。コントローラ3は、第2反応装置22Sに熱媒HM及びガスを供給しない場合に、第2制御信号θを出力する。
【0054】
コントローラ3は、
図3に示すハードウェア構成を備えるコンピュータによって実現される。コントローラ3は、1又は複数のコンピュータを含む。コンピュータは、プロセッサ31と、主記憶部32と、補助記憶部33と、通信制御部34と、入力装置35と、出力装置36とを有する。コントローラ3は、これらのハードウェアと、プログラム等のソフトウェアとにより構成された1又は複数のコンピュータによって構成される。
【0055】
コントローラ3が複数のコンピュータによって構成される場合には、これらのコンピュータはローカルで接続されてもよい。複数のコンピュータは、インターネット又はイントラネットなどの通信ネットワークを介して互いに接続されてもよい。この接続によって、論理的に1つのコントローラ3が構築される。
【0056】
プロセッサ31は、オペレーティングシステム及びアプリケーション・プログラムなどを実行する。主記憶部32は、ROM(Read Only Memory)およびRAM(Random Access Memory)により構成される。補助記憶部33は、ハードディスクおよびフラッシュメモリなどにより構成される記憶媒体である。補助記憶部33は、一般的に主記憶部32よりも大量のデータを記憶する。通信制御部34は、ネットワークカード又は無線通信モジュールにより構成される。補助記憶部33は、一般的に主記憶部32よりも大量のデータを記憶する。入力装置35は、キーボード、マウス、タッチパネル、および、音声入力用マイクなどにより構成される。出力装置36は、ディスプレイおよびプリンタなどにより構成される。
【0057】
補助記憶部33は、予め、プログラムおよび処理に必要なデータを格納している。プログラムは、コントローラ3の各機能要素をコンピュータに実行させる。プログラムによって、例えば、炭化水素を製造する方法に係る処理がコンピュータにおいて実行される。例えば、プログラムは、プロセッサ31又は主記憶部32によって読み込まれ、プロセッサ31、主記憶部32、補助記憶部33、通信制御部34、入力装置35、および出力装置36の少なくとも1つを動作させる。例えば、プログラムは、主記憶部32および補助記憶部33におけるデータの読み出しおよび書き込みを実行する。
【0058】
プログラムは、例えば、CD-ROM、DVD-ROM、半導体メモリなどの有形の記憶媒体に記録された上で提供されてもよい。プログラムは、データ信号として通信ネットワークを介して提供されてもよい。
【0059】
図4は、コントローラ3の動作を示すフロー図である。
図4のフローによれば、第1制御信号θ及び第2制御信号θのいずれを出力するかを選択できる。
【0060】
コントローラ3は、原料ガスが含む水素ガスの量を示すデータ(変数X)を取得する(ステップS101)。水素ガスの量は、例えば体積流量(m
3/s)として扱ってよい。コントローラ3が流量データφ(変数X)を取得する構成は、特に限定はない。例えば、コントローラ3は、流量センサ106(
図1参照)から流量データφを得てもよい。
【0061】
次に、コントローラ3は、熱量を比較する。熱量を比較する動作は、反応熱量を得る動作(ステップS102)と、反応熱量と要求熱量とを比較する動作(ステップS103)と、を含む。コントローラ3は、第2反応装置22Sを用いる状態と、第2反応装置22Sを用いない状態と、を相互に切り替えるための制御信号θを出力する。コントローラ3は、制御信号θの選択を、反応によって発生する熱量と、反応を維持するために必要な熱量(変数Y)と、に基づいて行う。
【0062】
例えば、反応によって発生する熱量が、反応を維持するために必要な熱量(変数Y)未満ではない場合には、原料ガスが十分に供給されている状態である。従って、第2反応装置22Sを停止させる必要はない。反応によって生じる熱量が十分である場合には、反応熱のみで炭化水素反応器の温度を維持できる。この状態は、熱の供給が不要である、いわゆる熱的に自立した状態である。熱的に自立した状態である場合には、炭化水素製造装置2が消費するエネルギは、熱媒HMを循環させるポンプ591(
図5参照)を駆動するためのエネルギ等といった動作動力のみである。
【0063】
例えば、反応によって発生する熱量が、反応を維持するために必要な熱量(変数Y)未満である場合には、原料ガスが十分に供給されていない状態である。このような状況では、反応が起きていない場合があり得る。または、反応量が少ない場合もあり得る。これら場合でも、第2反応装置22Sにおいて反応を生じさせることは可能である。反応を維持するためには、触媒CTの温度を維持する必要がある。つまり、熱を供給する必要がある。熱の供給は、例えば熱媒HMを提供することによって行われる。熱媒HMの提供によれば、わずかな結果物(炭化水素)を得るために、熱を供給し続けることになる。従って、エネルギ効率が低下する傾向にある。
【0064】
特に、式(1)に示すメタネーション及び式(2)に示すFT反応を採用する炭化水素製造装置2は、複数の反応装置を備えることが多い。複数の反応装置を備えた炭化水素製造装置2の規模は、大きい。その結果、温度を維持するための運転にも莫大なエネルギを要する。従って、反応によって発生する熱量が、反応を維持するために必要な熱量(変数Y)未満である場合には、第2反応装置22Sへの熱媒HM及びガスの供給を停止させたほうが、全体してエネルギ効率がよい。そこで、コントローラ3は、第2反応装置22Sへの熱媒HM及びガスの供給を停止する第2制御信号θを選択する。
【0065】
コントローラ3は、反応熱量が要求熱量より小さいか否かを判断する。反応熱量が要求熱量より小さい場合には、触媒CTの温度を維持するために電力が消費されてしまうからである。反応熱量と要求熱量とを用いることによって、熱媒バイパス配管242Pへ熱媒HMを流し始めるタイミングと、ガスバイパス配管25Pへ中間ガスを流し始めるタイミングと、を自動的に制御することができる。
【0066】
コントローラ3が実行する動作の一例を述べる。この例示では、炭化水素としてメタンを製造する場合を想定する。第2反応装置22Sへの熱媒HMの供給と中間ガスの供給を回避する動作(第2制御信号θの出力)は、下記式(3)を満たす場合に実行される。
(X×a÷b×c)[kW]<Y[kW]…(3)
X:水電解装置101の水素製造量[m3/s]
a:供給される水素量に対して生成されるメタン量の割合(例えば0.25)
b:単位モル当たりの体積[m3/mol](例えば0.0224)
c:単位モル当たりの発熱量[kJ/mol](165)
Y:炭化水素製造装置2の低負荷運転時の放熱量[kW]
【0067】
式(3)の左辺において、変数X、変数a及び変数bによって得られる値は、受け入れた水素ガスのすべてがメタンに変化したと仮定した場合に、結果物として得られるメタンの量[mol/s]である。メタンの量について、単位モルあたりの発熱量(変数c)を乗算することによって、反応熱量が得られる(ステップS102)。
【0068】
水素製造量(変数X)は、炭化水素製造設備1が受け入れる水素量であるともいえる。水素製造量の導出は、炭化水素製造設備1の状態、容量及び制御システムなどの要因に応じて、さまざまな手法を採用してよい。いくつかの具体例を例示する。
【0069】
第1の具体例として、水素製造量を、水電解装置101が出力する水素量の平均値として得る例がある。第1の具体例は、局所的な水素製造量の予測を想定していると言える。再生可能エネルギ設備102から水素製造に要する電力を得る場合には、雲又は風の影響により局所的な発電量の低下が生じることがある。そこで、ステップS102、S103が実行されるタイミングを基準として、直近の数分間から数時間に水電解装置101によって製造される水素製造量の平均値を採用してよい。
【0070】
第2の具体例として、水素製造量を、水素貯蔵設備の水素残量から得る例がある。再生可能エネルギ設備102が太陽光発電設備であると想定すると、再生可能エネルギ設備102は、夜間に電力を供給できない。その結果、水素製造量が極端に低下する。つまり、夜間に炭化水素製造設備1を稼働させる場合には、水素貯蔵設備103から水素を供給することになる。従って、水素貯蔵設備103の水素残量は、製品ガスの製造量の制限となる。
【0071】
第3の具体例として、水素製造量を、再生可能エネルギ設備102の発電量から得る例がある。天気予報などから、その日の時間ごとの太陽光発電による発電量を予測する。発電量が予測できれば、電力が供給される水電解装置101の水素製造量を予測できる。第3の具体例では、水素製造量の予測が可能である。従って、実際の運転の開始前に、炭化水素製造設備1の運用計画を決めることができる。
【0072】
炭化水素を生成する反応によって生じる反応熱は、第1反応装置21S、第2反応装置22S及び第3反応装置23Sの内部において、熱媒HMと熱交換される。つまり、除熱される。熱媒HMは、反応熱により昇温される。その結果、炭化水素製造設備1の全体として放熱が発生する。炭化水素製造設備1全体での放熱量(変数Y[kW])は、あらかじめ測定することができる。放熱量を用いることによって、水電解装置101の水素製造量から第1反応装置21S、第2反応装置22S及び第3反応装置23Sが温度を維持できる状態又は温度を維持できない状態のいずれであるかを判断できる。放熱量は、3基の第1反応装置21S、第2反応装置22S及び第3反応装置23Sに対して窒素ガスといった不活性ガスを供給した状態で、触媒の温度を一定に保つ。触媒の温度を保つためには、触媒から放熱によって失われる熱量と同等の熱量を熱媒HMから触媒CTに供給する必要がある。熱媒HMが触媒CTに供給する熱量は、熱媒HMが熱制御装置241のヒータから受ける入熱量と等価であるとみなせる。従って、触媒の温度を一定に保つためにヒータから熱媒HMに与えられる熱量を測定することによって、放熱量を知ることができる。放熱量は、触媒の温度を維持するために供給すべき熱量である。従って、放熱量は反応を維持するための要求熱量である。
【0073】
ステップS103の結果、「反応によって発生する熱量が、反応を維持するために必要な熱量(変数Y)未満である」又は「反応によって発生する熱量が、反応を維持するために必要な熱量(変数Y)未満ではない」の何れかが得られる。
【0074】
コントローラ3は、ステップS103の結果に従って、第1制御信号θ又は第2制御信号θを熱媒切替器242S及びガス切替器25Sに出力する。コントローラ3は、ステップS103の結果が、反応熱量が要求熱量(変数Y)未満ではない場合には(ステップS103:NO)、第1制御信号θを出力する(ステップS104)。コントローラ3は、ステップS103の結果が、反応熱量が要求熱量(変数Y)未満である場合には(ステップS103:YES)、第2制御信号θを出力する(ステップS105)。
【0075】
コントローラ3は、コンピュータがプログラムを実行することによって、上記の動作を実現する。
図1に示すようにコントローラ3は、上記の動作を実現するための機能的構成要素を有する。コントローラ3は、水素量取得部3aと、熱量比較部3bと、信号出力部3cと、を有する。これらの要素が奏する機能は、プロセッサ31によってプログラムが実行されることによって実現する。
【0076】
水素量取得部3aは、炭化水素製造設備1が受け入れ可能な水素の量に関する流量データφ(変数X)を取得する。水素量取得部3aは、ステップS101を実行する。
【0077】
熱量比較部3bは、「反応熱量が要求熱量未満である」、又は、「反応熱量が要求熱量未満ではない」の何れかを出力する。熱量比較部3bは、ステップS102及びステップS103を実行する。具体的には、熱量比較部3bは、水素の量に関するデータ(変数X)を用いて、反応熱量を算出する(ステップS102)。熱量比較部3bは、あらかじめ記憶された要求熱量を読み出す。そして、熱量比較部3bは、算出した反応熱量と、読み出した要求熱量と、を比較する(ステップS103)。その結果、熱量比較部3bは、「反応熱量が要求熱量未満である」、又は、「反応熱量が要求熱量未満ではない」の何れかを出力する。
【0078】
信号出力部3cは、熱量比較部3bが出力する結果に基づいて、第1制御信号θ又は第2制御信号θのいずれかを、熱媒流路部242及びガス流路部25に出力する。信号出力部3cは、ステップS104及びステップS105を実行する。
【0079】
<作用効果>
炭化水素製造設備1は、水素及び炭素を含む原料ガスを受け入れて、原料ガスを所定の温度まで熱せられた触媒CTを用いて反応させることによって、炭化水素を含む第1中間ガスを発生する第1反応装置21Sと、第1中間ガスを所定の温度まで熱せられた触媒CTを用いて反応させることによって、炭化水素を含む第2中間ガスを発生する第2反応装置22Sと、触媒CTを熱するための熱を第1反応装置21Sに供給可能であり、触媒CTを熱するための熱を第2反応装置22Sに供給可能である熱供給器24と、熱供給器24の動作を制御するコントローラ3と、を備える。コントローラ3は、第1反応装置21S及び第2反応装置22Sのそれぞれに熱を供給させる第1制御信号θと、第1反応装置21Sにのみ熱を供給させる第2制御信号θと、を選択的に熱供給器24に出力する。コントローラ3は、原料ガスが含む水素の量に基づいて、第1制御信号θ及び第2制御信号θのいずれか一方を選択する。
【0080】
炭化水素製造設備1に供給される水素の量が少ない場合には、反応によって生じる熱量も少なくなる。その結果、反応を生じさせるために要求される温度まで触媒CTを加熱する必要がある。炭化水素製造設備1は、原料ガスが含む水素の量に基づいて、熱媒HMを第1反応装置21S、第2反応装置22S及び第3反応装置23Sに供給する態様と、熱媒HMを第1反応装置21S及び第3反応装置23Sに供給する態様と、を切り替える。その結果、炭化水素製造設備1に供給される水素の量が少ない場合には、熱媒HMを第1反応装置21S及び第3反応装置23Sに供給する態様とする。その結果、第2反応装置22Sの反応を維持するために供給すべき熱量を減らすことができる。従って、炭化水素製造設備1は、原料ガスから炭化水素を含むガスを発生させる動作におけるエネルギ効率を向上させることができる。
【0081】
換言すると、炭化水素製造設備1は、水素、一酸化炭素または二酸化炭素を原料とし、炭化水素を製造する。炭化水素製造設備11は、炭化水素を製造する触媒を有する複数の第1反応装置21S、第2反応装置22S及び第3反応装置23Sを備える。第1反応装置21S、第2反応装置22S及び第3反応装置23Sにバイパスラインである熱媒バイパス配管242P及びガスバイパス配管25Pを設ける。熱媒バイパス配管242P及びガスバイパス配管25Pによって、原料ガスおよび熱媒HMを選択的に流通させないようにする。炭化水素製造設備11は、高温の原料ガス、高温の中間ガス及び熱媒HMの流通する範囲を制限できるので、消費熱量の削減を図ることができる。
【0082】
上記のような構成とすることにより、炭化水素製造設備1は、夜間及び悪天候時に低負荷の状態で水素を作り続けている水電解装置101を使用して、低負荷で炭化水素製造設備11を稼働させることができる。第1反応装置21S、第2反応装置22S及び第3反応装置23Sへのガスの供給及び熱媒HMの供給を回避させる機構を設けることによって、第1反応装置21S、第2反応装置22S及び第3反応装置23Sの温度の維持に必要な電力を低減することができる。
【0083】
炭化水素製造設備11は、原料ガス及び熱媒HMを流通させ、炭化水素製造を行う第1反応装置21S、第2反応装置22S及び第3反応装置23Sの数を、水電解装置101といった水素発生装置から供給される水素の量、水素貯蔵設備が貯蔵する水素の残量、又は、再生可能エネルギ設備102が実際に出力した電力量、再生可能エネルギ設備102が出力するであろう予測の電力量に応じて、自動または手動で切り替える。
【0084】
要するに、上記の炭化水素製造設備11は、炭化水素製造設備11が受け入れ可能な水素の量と炭化水素の製造量とを関連付けることによって、炭化水素を含む製品ガスの製造におけるエネルギ効率を高める。
【0085】
炭化水素製造設備1の熱供給器24は、第1反応装置21S及び第2反応装置22Sと熱交換を行う熱媒HMが流通する熱媒流路部242と、熱媒HMと熱交換を行う熱制御装置241と、を有する。熱媒流路部242は、第1反応装置21Sに接続された第1熱媒配管242aと、第1反応装置21Sを第2反応装置22Sに接続する第2熱媒配管242bと、第2反応装置22Sに接続された第3熱媒配管242cと、を含む。この構成によれば、熱制御装置241で熱の供給を受けた熱媒HMを第1反応装置21S及び第2反応装置22Sに供給する。その結果、反応に必要な熱量を触媒CTに提供することができる。
【0086】
炭化水素製造設備1の熱媒流路部242は、第2熱媒配管242bを第3熱媒配管242cに接続する熱媒バイパス配管242Pと、第1制御信号θを受けることによって熱媒HMを第2反応装置22Sに供給する態様と、第2制御信号θを受けることによって熱媒HMを第2反応装置22Sに供給することなく熱媒バイパス配管242Pに供給する態様と、を相互に切り替える熱媒切替器242Sと、を有する。この構成によれば、熱媒HMを第2反応装置22Sに供給する態様と、熱媒HMを第2反応装置22Sに供給しない態様と、の切り替えを簡易な構成によって実現できる。
【0087】
炭化水素製造設備1は、第1反応装置21Sに接続された第1ガス配管251と、第1反応装置21Sを第2反応装置22Sに接続する第2ガス配管252と、第2反応装置22Sに接続された第3ガス配管253と、第2ガス配管252を第3ガス配管253に接続するガスバイパス配管25Pと、を備える。炭化水素製造設備1は、第1制御信号θを受けることによって第1中間ガスを第2反応装置22Sに供給する態様と、第2制御信号θを受けることによって第1中間ガスを第2反応装置22Sに供給することなくガスバイパス配管25Pに供給する態様と、を相互に切り替えるガス切替器25Sを備える。この構成によれば、第1中間ガスを第2反応装置22Sに供給する態様と、第1中間ガスを第2反応装置22Sに供給しない態様と、の切り替えを簡易な構成によって実現できる。
【0088】
コントローラ3は、原料ガスが含む水素の量に関するデータを得る水素量取得部3aと、水素の量に関するデータが示す量の水素を含む原料ガスを受け入れたとき、第1反応装置21Sの反応によって生じる熱量及び第2反応装置22Sの反応によって生じる熱量を含む反応熱量と、第1反応装置21Sの反応及び第2反応装置22Sの反応を維持するために要する要求熱量と、を比較する熱量比較部3bと、反応熱量が要求熱量より小さい場合に第2制御信号θを熱供給器24に出力する信号出力部3cと、を有する。コントローラ3によれば、第1反応装置21S及び第2反応装置22Sの一方にのみ熱を供給させるべき状態を、容易に判断することができる。
【0089】
炭化水素製造システム100は、水素を出力する水電解装置101と、水素及び炭素を含む原料ガスを受け入れて、炭化水素を含むガスを発生する炭化水素製造設備1と、を備える。炭化水素製造設備1は、原料ガスを受け入れて、所定の温度まで熱せられた触媒CTと原料ガスを反応させることによって、炭化水素を含む第1中間ガスを発生する第1反応装置21Sと、所定の温度まで熱せられた触媒CTと第1中間ガスを反応させることによって、炭化水素を含む第2中間ガスを発生する第2反応装置22Sと、触媒CTを熱するための熱を第1反応装置21Sに供給すると共に、触媒CTを熱するための熱を第2反応装置22Sに供給する熱供給器24と、熱供給器24の動作を制御するコントローラ3と、を有する。コントローラ3は、第1反応装置21S及び第2反応装置22Sのそれぞれに熱を供給させる第1制御信号θと、第1反応装置21S及び第2反応装置22Sの一方にのみ熱を供給させる第2制御信号θと、を選択的に熱供給器24に出力する。コントローラ3は、原料ガスが含む水素の量に基づいて、第1制御信号θ及び第2制御信号θのいずれか一方を選択する。
【0090】
炭化水素製造システム100は、上述の炭化水素製造設備1を備えている。従って、炭化水素製造システム100は、原料ガスから炭化水素を含むガスを発生させる動作におけるエネルギ効率を向上させることができる。
【0091】
炭化水素製造装置2のコントローラ3は、原料ガスが含む水素の量に関するデータを得る水素量取得部3aと、水素の量に関するデータが示す量の水素を含む原料ガスを炭化水素製造装置2が受け入れたとき、第1反応装置21Sの反応によって生じる熱量及び第2反応装置22Sの反応によって生じる熱量を含む反応熱量と、第1反応装置21Sの反応及び第2反応装置22Sの反応を維持するために要する要求熱量と、を比較する熱量比較部3bと、反応熱量が要求熱量より小さい場合に、触媒CTを熱するための熱を第1反応装置21Sに供給すると共に、触媒CTを熱するための熱を第2反応装置22Sに供給する熱供給器24に対して、第1反応装置21S及び第2反応装置22Sの一方にのみ熱を供給させる制御信号θを出力する信号出力部3cと、を有する。
【0092】
炭化水素製造装置2のコントローラ3は、炭化水素製造装置2に供給される原料ガスが含む水素の量に基づいて、熱媒HMを提供する対象を決定できる。従って、炭化水素製造装置2のコントローラ3は、炭化水素製造装置2が行う原料ガスから炭化水素を含むガスを発生させる動作のエネルギ効率を向上させることができる。
【0093】
炭化水素を製造する方法は、原料ガスが含む水素の量に関するデータを得るステップS101と、水素の量に関するデータが示す量の水素を含む原料ガスを炭化水素製造装置2が受け入れたとき、第1反応装置21Sの反応によって生じる熱量及び第2反応装置22Sの反応によって生じる熱量を含む反応熱量と、第1反応装置21Sの反応及び第2反応装置22Sの反応を維持するために要する要求熱量と、を比較するステップS103と、反応熱量が要求熱量より小さい場合に、触媒CTを熱するための熱を第1反応装置21S及び第2反応装置22Sに供給可能な熱供給器24に対して、第1反応装置21Sにのみ熱を供給させる制御信号θを出力するステップS105と、を有する。
【0094】
炭化水素を製造する方法は、炭化水素製造装置2に供給される原料ガスが含む水素の量に基づいて、熱媒HMを提供する対象を決定する。従って、炭化水素を製造する方法は、炭化水素製造装置2が行う原料ガスから炭化水素を含むガスを発生させる動作のエネルギ効率を向上させることができる。
【0095】
<実施例>
図5は、炭化水素製造装置5の具体例である。炭化水素製造装置5は、3基の反応器51、反応器52及び反応器53を備えている。反応器51及び反応器52は、熱媒によって熱制御される。原料ガスの予熱のため、反応器51には熱交換器541が設けられる。反応器52には熱交換器542が設けられる。反応器53は、ヒータ5Hによって熱制御される。
【0096】
反応器51は、マスフローコントローラ551、552から提供された原料ガスを、熱交換器541を介して受ける。反応器51には、熱媒を受けるための配管が接続されている。熱媒は、反応器51を回避しない。反応器51は、生成した中間ガスを熱交換器541及び熱交換器571を介してタンク561に出力する。中間ガスは、生成物としてメタンなどの炭化水素と、水とを含む。熱交換器571は、中間ガスを冷却することによって、水を凝縮させる。凝縮によって液化した水は、タンク561に溜まる。タンク561は、水が取り除かれると共に炭化水素を含む中間ガスを反応器52に向けて出力する。
【0097】
反応器52は、タンク561から受けた中間ガスを、熱交換器542を介して受ける。反応器52は、熱交換器572を介して生成した中間ガスをタンク562に出力する。熱交換器572およびタンク562の役割は、上述のとおりである。反応器52に中間ガスを導く配管は、中間ガスを反応器52に導く経路と、反応器52を回避して中間ガスを直接に反応器53に導く経路と、を含む。中間ガスが流れる経路は、2個のバルブ581及びバルブ582によって制御される。バルブ581を閉じると共にバルブ582を開いた場合には、中間ガスは、反応器52に導かれる。一方、バルブ581を開くと共にバルブ582を閉じた場合には、中間ガスは、反応器52を回避して反応器53に導かれる。
【0098】
反応器52には、反応器51と同様に熱媒を受けるための配管が接続されている。反応器52に設けられた熱媒の配管は、熱媒を反応器52に導くための経路と、熱媒を反応器52に導くことなく反応器51へ導く経路と、を含む。熱媒が流れる経路は、2個のバルブ583及びバルブ584によって制御される。バルブ583を閉じると共にバルブ584を開いた場合には、熱媒は、反応器52に導かれる。一方、バルブ583を開くと共にバルブ584を閉じた場合には、熱媒は、反応器52を回避して反応器51に導かれる。バルブ583及びバルブ584の開閉は、コントローラ3が実行するステップS104及びステップS105の動作によって制御できる。その結果、反応器52に熱媒と中間ガスとを流さない動作が可能である。従って、放熱量を削減することができる。
【0099】
反応器53は、反応器51又は反応器52から中間ガスを受ける。反応器53は、生成した中間ガスを熱交換器573を介してタンク563に出力する。熱交換器573およびタンク563の役割は、上述のとおりである。
【0100】
例えば、
図5に示す炭化水素製造装置2の放熱量(変数Y)は、9kWであると仮定する。この仮定において、反応器52に中間ガス及び熱媒を供給しない場合には、1/3程度の熱量の削減が期待できる。夜間又は悪天候時などで水素製造量が少なく、6kWの発熱が期待できない場合には、反応器52に中間ガス及び熱媒を供給しない動作を行う。
【0101】
<変形例>
以上、本開示の炭化水素製造設備、炭化水素製造システム、炭化水素製造装置の制御器及び炭化水素を製造する方法を詳細に説明した。しかし、本開示の炭化水素製造設備、炭化水素製造システム、炭化水素製造装置の制御器及び炭化水素を製造する方法は上記の形態に限定されるものではない。本開示の炭化水素製造設備、炭化水素製造システム、炭化水素製造装置の制御器及び炭化水素を製造する方法は、その要旨を逸脱しない範囲で様々な変形が可能である。
【0102】
例えば、
図1に示す炭化水素製造設備1は、3基の第1反応装置21S、第2反応装置22S及び第3反応装置23Sを備えていた。炭化水素製造設備1は、2基以上の反応装置を備えていればよい。例えば、炭化水素製造設備1は、2基の反応装置を備えていてもよい。炭化水素製造設備1は、4基の反応装置を備えていてもよい。
【0103】
例えば、
図1に示す炭化水素製造設備1は、第2反応装置22Sのみが、中間ガス及び熱媒HMをバイパスさせる構成を備えていた。炭化水素製造設備1は、第1反応装置21Sのみが、中間ガス及び熱媒HMをバイパスさせる構成を備えてもよい。炭化水素製造設備1は、第3反応装置23Sのみが、中間ガス及び熱媒HMをバイパスさせる構成を備えてもよい。例えば、炭化水素製造設備1は、第1反応装置21Sと第2反応装置22Sが中間ガス及び熱媒HMをバイパスさせる構成を備えてもよい。炭化水素製造設備1は、第1反応装置21Sと第3反応装置23Sとが、中間ガス及び熱媒HMをバイパスさせる構成を備えてもよい。炭化水素製造設備1は、第2反応装置22Sと第3反応装置23Sとが、中間ガス及び熱媒HMをバイパスさせる構成を備えてもよい。さらには、炭化水素製造設備1は、第1反応装置21S、第2反応装置22S及び第3反応装置23Sが、中間ガス及び熱媒HMをバイパスさせる構成を備えてもよい。
【0104】
複数の第1反応装置21S、第2反応装置22S及び第3反応装置23Sが中間ガス及び熱媒HMをバイパスさせる構成を備えている場合には、より緻密な制御を行うことが可能である。例えば、第2反応装置22S及び第3反応装置23Sが中間ガス及び熱媒HMをバイパスさせる構成を備える場合には、すべての第1反応装置21S、第2反応装置22S及び第3反応装置23Sに中間ガス及び熱媒HMを供給する態様と、2基の第1反応装置21S及び第2反応装置22Sに中間ガス及び熱媒HMを供給する態様と、1基の第1反応装置21Sに中間ガス及び熱媒HMを供給する態様と、の3つ運転パターンを実現できる。ステップS103では、式(3)の関係を満たすか否かによって、2つの制御信号θのうちの一方を選択していたところ、複数の条件式を用いて3つの運転パターンのいずれかを選択するようにしてもよい。
【0105】
図1に示す炭化水素製造設備1は、熱供給器24として、熱媒HMを流通させる構成を採用した。別の構成として、熱供給器24は、それぞれの第1反応装置21S、第2反応装置22S及び第3反応装置23Sに設けられたヒータであってもよい。この場合には、コントローラ3は、例えば、第2反応装置22Sに設けられたヒータに電流を流す制御信号θと、電流を止める制御信号θと、を出力する。コントローラ3は、式(3)に示す条件を満たす場合に、ヒータに流す電流を止めることによって、エネルギの消費を抑制することができる。
【0106】
熱供給器24は、熱媒HMによる熱供給の構成と、ヒータによる熱供給の構成と、を備えてもよい。例えば、第1反応装置21S及び第2反応装置22Sには、熱媒HMによって熱が供給されてもよい。第3反応装置23Sにはヒータによって熱が供給されてもよい。
【0107】
図1に示す炭化水素製造装置2の第1反応装置21Sは、1個の反応器21によって構成されていた。例えば、
図6に示すように、変形例の炭化水素製造装置2Aは、第1反応装置21Kを備えてもよい、第1反応装置21Kは、第1反応器21aと、第2反応器21bと、を有する。変形例では、原料ガスを受け入れる初段の反応装置が複数の反応器を備える例を説明する。第2反応装置22S及び/又は第3反応装置23Sも、複数の反応器によって構成されてもよい。
【0108】
第1反応装置21Kは、水素ガスを受け入れるガス入力21Kaと、炭素ガスを受け入れるガス入力21Kbと、を有する。ガス入力21Kaには、第1ガス配管251が接続される。ガス入力21Kbにも、第1ガス配管251が接続される。第1反応装置21Kは、発生した中間ガスを第2反応装置22Sに出力するガス出力21Kcを有する。ガス出力21Kcには、第2ガス配管252が接続される。
【0109】
ガス入力21Kaは、第1ガス内部配管21Haに接続されている。第1ガス内部配管21Haは、分岐部分を有している。第1ガス内部配管21Haの第1の出力は、第1反応器21aに接続されている。第1ガス内部配管21Haの第2の出力は、第2反応器21bに接続されている。このような接続構成によって、水素ガスは、第1反応器21a及び第2反応器21bにそれぞれ分配される。ガス入力21Kbは、第2内部配管21Hbに接続されている。第2内部配管21Hbの第1の出力は、第1反応器21aに接続されている。第2内部配管21Hbの第2の出力は、第2反応器21bに接続されている。このような接続構成によって、炭素ガスは、第1反応器21a及び第2反応器21bにそれぞれ分配される。
【0110】
第1反応器21aの出力は、第3内部配管21Hcの入力端に接続されている。第2反応器21bの出力は、第3内部配管21Hcの別の入力端に接続されている。第3内部配管21Hcは、合流部を有する。合流部では、第1反応器21aが発生した中間ガスと、第2反応器21bが発生した中間ガスと、が合流する。合流した中間ガスは、ガス出力21Kcから第2反応装置22Sに送られる。
【0111】
第1反応装置21Kは、熱媒を第1反応器21a及び第2反応器21bのそれぞれに供給する構成を備えている。第1反応装置21Kは、熱媒入力21Kdと、熱媒出力21Keと、を有する。熱媒入力21Kdは、第2反応装置22Sから流出した熱媒、又は、第3反応装置23Sから流出した後に第2反応装置22Sを経由しなかった熱媒を受ける。熱媒入力21Kdには、第1熱媒内部配管21Jaが接続されている。第1熱媒内部配管21Jaは、第1反応器21aに接続されている。第1熱媒内部配管21Jaは、第2反応器21bにも接続されている。この構成によって、第1反応器21a及び第2反応器21bは、それぞれ熱媒を受けることができる。第1反応器21aには、第2熱媒内部配管21Jbが接続されている。第2反応器21bにも、第2熱媒内部配管21Jbが接続されている。第2熱媒内部配管21Jbは、熱媒出力21Keに接続されている。第2熱媒内部配管21Jbは、第1反応器21a及び第2反応器21bから流出した熱媒を受ける。第2熱媒内部配管21Jbは、熱媒出力21Keに導く。
【0112】
このような接続構成は、第1反応器21a及び第2反応器21bを互いに並列に接続したものであると言える。複数の反応器によって構成された反応装置は、発生する中間ガスの量を増大させることができる。並列に接続される反応器の数は、2個に限定されない。要求される中間ガスの量に応じて、反応装置を構成する反応器の数は、適宜選択してよい。
【0113】
本技術は、再生可能エネルギの有効活用に資するため、国連が主導する持続可能な開発目標(SDGs)の目標7「エネルギーをみんなにそしてクリーンに」に貢献する。さらに、二酸化炭素を材料として製品を製造する技術であり、二酸化炭素の排出抑制に資するため国連が主導する持続可能な開発目標(SDGs)の目標13「気候変動及びその影響を軽減するための緊急対策を講じる」にも貢献する。
【0114】
[付記]
本開示は、以下の構成を含む。
【0115】
本開示の炭化水素製造設備は、[1]「水素及び炭素を含む原料ガスを受け入れて、前記原料ガスを所定の温度まで熱せられた第1触媒を用いて反応させることによって、炭化水素を含む第1中間ガスを発生する第1反応装置と、前記第1中間ガスを所定の温度まで熱せられた第2触媒を用いて反応させることによって、炭化水素を含む第2中間ガスを発生する第2反応装置と、前記第1触媒を熱するための熱を前記第1反応装置に供給可能であると共に、前記第2触媒を熱するための熱を前記第2反応装置に供給可能である熱供給器と、前記熱供給器の動作を制御する制御器と、を備え、前記制御器は、前記第1反応装置及び前記第2反応装置のそれぞれに熱を供給させる第1制御信号と、前記第1反応装置及び前記第2反応装置の一方にのみ熱を供給させる第2制御信号と、を選択的に前記熱供給器に出力し、前記制御器は、前記原料ガスが含む前記水素の量に基づいて、前記第1制御信号及び前記第2制御信号のいずれか一方を選択する、炭化水素製造設備。」である。
【0116】
本開示の炭化水素製造設備は、[2]「前記熱供給器は、前記第1反応装置及び前記第2反応装置に供給される熱媒が流通する熱媒流路部と、前記熱媒と熱交換を行う熱制御部と、を有し、前記熱媒流路部は、前記第1反応装置に接続された第1熱媒流路と、前記第1反応装置を前記第2反応装置に接続する第2熱媒流路と、前記第2反応装置に接続された第3熱媒流路と、を含む、上記[1]に記載の炭化水素製造設備。」である。
【0117】
本開示の炭化水素製造設備は、[3]「前記熱媒流路部は、前記第2熱媒流路を前記第3熱媒流路に接続する熱媒バイパス流路と、前記第1制御信号を受けることによって前記熱媒を前記第2反応装置に供給する態様と、前記第2制御信号を受けることによって前記熱媒を前記第2反応装置に供給することなく前記熱媒バイパス流路に供給する態様と、を相互に切り替える熱媒切替部と、を有する、上記[2]に記載の炭化水素製造設備。」である。
【0118】
本開示の炭化水素製造設備は、[4]「前記第1反応装置に接続された第1ガス流路と、前記第1反応装置を前記第2反応装置に接続する第2ガス流路と、前記第2反応装置に接続された第3ガス流路と、前記第2ガス流路を前記第3ガス流路に接続するガスバイパス流路と、前記第1制御信号を受けることによって前記第1中間ガスを前記第2反応装置に供給する態様と、前記第2制御信号を受けることによって前記第1中間ガスを前記第2反応装置に供給することなく前記ガスバイパス流路に供給する態様と、を相互に切り替えるガス切替部と、をさらに備える、上記[1]~[3]の何れか一項に記載の炭化水素製造設備。」である。
【0119】
本開示の炭化水素製造設備は、[5]「前記制御器は、前記原料ガスが含む前記水素の量に関するデータを得る水素量取得部と、前記水素の量に関するデータが示す量の前記水素を含む前記原料ガスを受け入れたとき、前記第1反応装置の反応によって生じる熱量及び前記第2反応装置の反応によって生じる熱量を含む反応熱量と、前記第1反応装置の反応及び前記第2反応装置の反応を維持するために要する要求熱量と、を比較する熱量比較部と、前記反応熱量が前記要求熱量より小さい場合に前記第2制御信号を前記熱供給器に出力する信号出力部と、を有する、上記[1]~[4]の何れか一項に記載の炭化水素製造設備。」である。
【0120】
本開示の炭化水素製造設備は、[6]「前記第1反応装置は、互いに並列に接続された少なくとも2個の反応器を含む、上記[1]~[5]の何れか一項に記載の炭化水素製造設備。」である。
【0121】
本開示の炭化水素製造システムは、[7]「水素を出力する水素供給設備と、前記水素及び炭素を含む原料ガスを受け入れて、炭化水素を含むガスを発生する炭化水素製造設備と、を備え、前記炭化水素製造設備は、水素及び炭素を含む原料ガスを受け入れて、前記原料ガスを所定の温度まで熱せられた第1触媒を用いて反応させることによって、炭化水素を含む第1中間ガスを発生する第1反応装置と、前記第1中間ガスを所定の温度まで熱せられた第2触媒を用いて反応させることによって、炭化水素を含む第2中間ガスを発生する第2反応装置と、前記第1触媒を熱するための熱を前記第1反応装置に供給すると共に、前記第2触媒を熱するための熱を前記第2反応装置に供給する熱供給器と、前記熱供給器の動作を制御する制御器と、を有し、前記制御器は、前記第1反応装置及び前記第2反応装置のそれぞれに熱を供給させる第1制御信号と、前記第1反応装置及び前記第2反応装置の一方にのみ熱を供給させる第2制御信号と、を選択的に前記熱供給器に出力し、前記制御器は、前記原料ガスが含む前記水素の量に基づいて、前記第1制御信号及び前記第2制御信号のいずれか一方を選択する、炭化水素製造システム。」である。
【0122】
本開示の炭化水素製造装置の制御器は、[8]「水素及び炭素を含む原料ガスを受け入れて、前記原料ガスを所定の温度まで熱せられた第1触媒を用いて反応させることによって、炭化水素を含む第1中間ガスを発生する第1反応装置と、前記第1中間ガスを所定の温度まで熱せられた第2触媒を用いて反応させることによって、炭化水素を含む第2中間ガスを発生する第2反応装置と、を含む炭化水素製造装置の制御器であって、前記原料ガスが含む前記水素の量に関するデータを得る水素量取得部と、前記水素の量に関するデータが示す量の前記水素を含む前記原料ガスを前記炭化水素製造装置が受け入れたとき、前記第1反応装置の反応によって生じる熱量及び前記第2反応装置の反応によって生じる熱量を含む反応熱量と、前記第1反応装置の反応及び前記第2反応装置の反応を維持するために要する要求熱量と、を比較する熱量比較部と、前記反応熱量が前記要求熱量より小さい場合に、前記第1触媒を熱するための熱を前記第1反応装置に供給すると共に、前記第2触媒を熱するための熱を前記第2反応装置に供給可能な熱供給器に対して、前記第1反応装置及び前記第2反応装置の一方にのみ熱を供給させる制御信号を出力する信号出力部と、を有する、炭化水素製造装置の制御器。」である。
【0123】
本開示の炭化水素を製造する方法は、[9]「水素及び炭素を含む原料ガスを受け入れて、前記原料ガスを所定の温度まで熱せられた第1触媒を用いて反応させることによって、炭化水素を含む第1中間ガスを発生する第1反応装置と、前記第1中間ガスを所定の温度まで熱せられた第2触媒を用いて反応させることによって、炭化水素を含む第2中間ガスを発生する第2反応装置と、を含む炭化水素製造装置を用いて炭化水素を製造する方法であって、前記原料ガスが含む前記水素の量に関するデータを得るステップと、前記水素の量に関するデータが示す量の前記水素を含む前記原料ガスを前記炭化水素製造装置が受け入れたとき、前記第1反応装置の反応によって生じる熱量及び前記第2反応装置の反応によって生じる熱量を含む反応熱量と、前記第1反応装置の反応及び前記第2反応装置の反応を維持するために要する要求熱量と、を比較するステップと、前記反応熱量が前記要求熱量より小さい場合に、前記第1触媒を熱するための熱を前記第1反応装置に供給すると共に、前記第2触媒を熱するための熱を前記第2反応装置に供給する熱供給器に対して、前記第1反応装置及び前記第2反応装置の一方にのみ熱を供給させる制御信号を出力するステップと、を有する、炭化水素を製造する方法。」である。
【符号の説明】
【0124】
1 炭化水素製造設備
2 炭化水素製造装置
3 コントローラ(制御器)
5 炭化水素製造装置
21,22,23,51,52,53 反応器
21S 第1反応装置
22S 第2反応装置
23S 第3反応装置
24 熱供給器
241 熱制御装置(熱制御部)
25 ガス流路部
25P ガスバイパス配管(ガスバイパス流路)
25S ガス切替器(ガス切替部)
100 炭化水素製造システム
101 水電解装置(水素供給設備)
102 再生可能エネルギ設備
103 水素貯蔵設備(水素供給設備)
104 二酸化炭素回収設備
106 流量センサ
242a 第1熱媒配管(第1熱媒流路)
242b 第2熱媒配管(第2熱媒流路)
242c 第3熱媒配管(第3熱媒流路)
242d 第4熱媒配管
242 熱媒流路部
242P 熱媒バイパス配管(熱媒バイパス流路)
242S 熱媒切替器(熱媒切替部)
251 第1ガス配管(第1ガス流路)
252 第2ガス配管(第2ガス流路)
253 第3ガス配管(第3ガス流路)
254 第4ガス配管
CT 触媒
HM 熱媒
θ 制御信号