(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-03-18
(45)【発行日】2025-03-27
(54)【発明の名称】ポリエステルフィルム
(51)【国際特許分類】
C08J 5/18 20060101AFI20250319BHJP
C08J 7/04 20200101ALI20250319BHJP
C08L 67/00 20060101ALI20250319BHJP
B32B 27/00 20060101ALI20250319BHJP
【FI】
C08J5/18 CFD
C08J7/04 Z
C08L67/00
B32B27/00 L
(21)【出願番号】P 2024101025
(22)【出願日】2024-06-24
【審査請求日】2024-09-13
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000003159
【氏名又は名称】東レ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】不破 拓人
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 維允
(72)【発明者】
【氏名】吉田 頌
(72)【発明者】
【氏名】吉田 昌平
【審査官】大▲わき▼ 弘子
(56)【参考文献】
【文献】特開2024-010650(JP,A)
【文献】特開2013-007054(JP,A)
【文献】特開平06-271750(JP,A)
【文献】特開平07-233312(JP,A)
【文献】国際公開第2019/176692(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08J5/00-5/02、5/12-5/22、
C08K3/00-13/08、C08L1/00-101/14、
B32B1/00-43/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の測定装置および測定条件で熱分解ガスクロマトグラフィー質量分析(熱分解GC/MS)を行った際に、下記構造式1~3のいずれか1つ以上が検出され、
構造式1~3として検出される単位質量当たりのピーク面積値が150~2000a.u./μgであるポリエステルフィルム。
【化1】
【化2】
【化3】
(測定装置)
熱分解炉:PY‐3030iD
GC:7890A
MS:JMS‐Q1050GC
(測定条件)
熱分解温度:600℃
カラム:Ultra ALLOY‐5(MS/HT)
昇温条件:40℃で3分保持し、その後20℃/分で320℃まで昇温し、320℃で18分保持
注入口:300℃
モード:Split(20:1)1.5mL/min cоnstant flоw
イオン化法:EI+
スキャン範囲:m/z 10,000~800,000
スキャン速度:0.5s/scan
【請求項2】
ポリエステルフィルムに含まれるアルカリ金属元素量が1.5質量ppm以上40.0質量ppm以下である請求項
1に記載のポリエステルフィルム。
【請求項3】
上記ポリエステルフィルムに含まれるアルカリ金属元素がナトリウムである請求項1または2に記載のポリエステルフィルム。
【請求項4】
離型用途に用いられる請求項1または2に記載のポリエステルフィルム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガラス転移温度以上での伸びの均一性に優れ、かつ特定波長の励起光に対する発光性に優れるポリエステルフィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
ポリエステルはその加工性の良さから、様々な工業分野に利用されている。また、これらポリエステルをフィルム状に加工した製品は工業用途、光学製品用途、包装用途、磁気記録テープ用途など今日の生活において重要な役割を果たしている。
【0003】
特許文献1では、紫外線の照射を受けると励起して青色光の可視光線を発光する蛍光増白剤を含有する再生資源由来ポリエステルフィルムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
昨今のスマートデバイス、電気自動車、IoTの進化により、各機器に搭載されるCPUなどの電子デバイスが急激に増加し、それに伴い電子デバイスを駆動するために重要な積層セラミックコンデンサー(MLCC)の高品質化が進んでいる。MLCCの一般的な製造方法は、ポリエステルフィルムを基材とし、該基材上に離型層を設けた離型フィルム上に、セラミックグリーンシートと電極を塗工、積層し、乾燥して固めた後、該積層体を離型フィルムから剥離し複数層を積層し、焼成するというものである。MLCCの高品質化に伴い、セラミックグリーンシートと電極を塗工、積層し、乾燥する際にセラミックグリーンシートと電極の塗工位置を正確に把握し、積層できることが求められ、ガラス転移温度以上での伸びの均一性に優れるポリエステルをフィルムが強く求められている。MLCC以外の用途においても同様にガラス転移温度以上での伸びの均一性に優れるポリエステルをフィルムが求められている。
【0006】
しかしながら、特許文献1に開示されているポリエステルフィルムは、A/B/Aの3層を備えた多層構造であって、さらに、B層中に蛍光増白剤を含有するため、蛍光増白剤の分散性にムラが生じ、ガラス転移温度以上での伸びの均一性に不十分な場合がある。
【0007】
そこで、本発明の課題は、ガラス転移温度以上での伸びの均一性に優れるポリエステルフィルムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、本発明のポリエステルフィルムの好ましい一態様は次の構成を有する。
(1)以下の測定装置および測定条件で熱分解ガスクロマトグラフィー質量分析(熱分解GC/MS)を行った際に、下記構造式1~3のいずれか1つ以上が検出され、
構造式1~3として検出される単位質量当たりのピーク面積値が150~2000a.u./μgであるポリエステルフィルム。
【0009】
【0010】
【0011】
【0012】
(測定装置)
熱分解炉:PY‐3030iD
GC:7890A
MS:JMS‐Q1050GC
(測定条件)
熱分解温度:600℃
カラム:Ultra ALLOY‐5(MS/HT)
昇温条件:40℃で3分保持し、その後20℃/分で320℃まで昇温し、320℃で18分保持
注入口:300℃
モード:Split(20:1)1.5mL/min cоnstant flоw
イオン化法:EI+
スキャン範囲:m/z 10,000~800,000
スキャン速度:0.5s/scan
(2)350nm励起光における550nm発光ピーク強度(I550nm)と370nm発光ピーク強度(I370nm)の関係が以下の式(i)を満たすポリエステルフィルム。
(i)5≦(I550nm)/(I370nm)×100≦20
(3)ポリエステルフィルムに含まれるアルカリ金属元素量が1.5質量ppm以上40.0質量ppm以下である(1)または(2)に記載のポリエステルフィルム。
(4)ポリエステルフィルムに含まれるアルカリ金属元素がナトリウムである(1)~(3)のいずれかに記載のポリエステルフィルム。
(5)離型用途に用いられる(1)~(4)のいずれかに記載のポリエステルフィルム。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、ガラス転移温度以上での伸びの均一性に優れるポリエステルフィルムを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に具体例を挙げつつ、本発明の好ましい一態様について詳細に説明する。
【0015】
本発明のポリエステルフィルムは、以下の測定装置および測定条件で熱分解ガスクロマトグラフィー質量分析(熱分解GC/MS)を行った際に、下記構造式1~3のいずれか1つ以上が検出され、構造式1~3として検出される単位質量当たりのピーク面積値が150~2000a.u./μgを満たすことが好ましい。
【0016】
【0017】
【0018】
【0019】
(測定装置)
熱分解炉:PY‐3030iD
GC:7890A
MS:JMS‐Q1050GC
(測定条件)
熱分解温度:600℃
カラム:Ultra ALLOY‐5(MS/HT)
昇温条件:40℃で3分保持し、その後20℃/分で320℃まで昇温し、320℃で18分保持
モード:Split(20:1)1.5mL/min cоnstant flоw
イオン化法:EI+
スキャン範囲:m/z 10.000-800.000
スキャン速度:0.5s/scan
なお、Ultra ALLOY-5(MS/HT)カラムは、フロンティア・ラボ社製のGCキャピラリカラムで、固定相は5% ジフェニルジメチルポリシロキサンである。
【0020】
構造式1~3は共役系を有する成分であり、構造式1~3からなる成分を含有することで、ガラス転移温度以上での伸びの均一性に優れるため、後工程の精度向上につながるポリエステルフィルムが得られる場合がある。これは、構造式1~3は共役系を有する成分であるため、ポリエステルの配向に関わらず延伸性が向上するためであると考える。さらに、構造式1~3からなる成分がポリエステルの分子鎖間に点在することで分子鎖の運動の制限が緩和されるためであると考える。
【0021】
伸びの均一性を制御する観点から、構造式1~3として検出される単位質量当たりのピーク面積値(a.u./μg)が150以上であることが好ましく、500以上であることがより好ましく、1000以上であることが更に好ましい。構造式1~3として検出される単位質量当たりのピーク面積値(a.u./μg)が2000を超えると、共役性を有する成分が点在化することで、ムラが生じポリエステルフィルムのヤング率が低下して破断しやすくなり、伸びの均一性が悪化する場合がある。なお、当該ピーク面積値の詳細な求め方は後述する。
【0022】
構造式1~3として検出される単位質量当たりのピーク面積値(a.u./μg)を150~2000とする達成手段としては、例えば、構造式1~3およびその同位体からなるモノマーや構造式1~3およびその同位体を繰り返し単位あるいは末端に有するオリゴマー、ポリマーを添加する方法が挙げられる。添加する方式としては、特に限定されないが、未延伸シート作製する工程以前に添加することが、構造式1~3からなる成分を効率的に分散させる観点から好ましい。
【0023】
本発明のポリエステルフィルムは、350nm励起光における550nm発光ピーク強度(I550nm)と370nm発光ピーク強度(I370nm)の関係が以下の式(i)を満たすことが好ましい。
(i)5≦(I550nm)/(I370nm)×100≦20
(I550nm)/(I370nm)×100が5以上、20以下であることで、ポリエステルフィルムにブラックライトを照射時、構造式1~3からなる成分の可視光領域における発光性が良好となり、外観検査用途に好適に用いられる場合がある。特に離型層や被離型物などの層を設ける場合、透過光の検出が困難となるため、可視光領域における発光性に優れることがより好適に用いられる場合がある。検査用途における検出漏れを防止する観点から(I550nm)/(I370nm)×100は5以上が好ましく、10以上がより好ましく、20以上が更に好ましい。(I550nm)/(I370nm)×100が20を超えると、発光ピーク強度が高く、発光位置が判然としなくなる場合があるため好ましくない場合がある。なお、発光ピーク強度の測定方法は後述する。式(i)を満たすための手段としては、例えば上記構造式1~3およびその同位体からなるモノマーや構造式1~3およびその同位体を繰り返し単位あるいは末端に有するオリゴマー、ポリマーを添加する方法が挙げられる。
【0024】
本発明のポリエステルフィルムに含まれるアルカリ金属元素量は1.5質量ppm以上40.0質量ppm以下であることが好ましい。アルカリ金属元素量が好ましい範囲であることで、ポリエステルフィルムの親水性部と疎水性部が均一に分散することで、構造式1~3からなる成分と疎水部との親和性が高まり、熱による飛散を抑止する場合や、構造式1~3からなる成分の分散性を制御しやすくなり、例えば、離型剤の塗布性に優れる場合がある。ポリエステルフィルムに含まれるアルカリ金属元素量が1.5質量ppm未満であると、構造式1~3からなる成分の分散性にムラが生じるため好ましくない場合がある。ポリエステルフィルムに含まれるアルカリ金属元素量が40.0質量ppmを超えると、共役系を有する成分が点在する場合があり、工程用離型フィルムとして使用した際、被離型物を塗布時に欠陥が生じ、品質安定性の観点から好ましくない場合がある。ポリエステルフィルムに含まれるアルカリ金属元素量はより好ましくは3.0質量ppm以上、30.0質量ppm以下、更に好ましくは6.0質量ppm以上、20.0質量ppm以下である。
【0025】
本発明のポリエステルフィルムに含まれるアルカリ金属元素としては、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウム、フランシウムが好ましく挙げられる。中でも、汎用性とハンドリング性に優れる観点から、ナトリウムがより好ましい。
【0026】
本発明のポリエステルフィルムにアルカリ金属元素を含有させる方法としては、特に限定はなく、ポリエステルフィルムの重合工程あるいは製膜工程にアルカリ金属化合物を添加する方法であってもよいし、アルカリ金属元素を有する水溶液と接触させる方法であってもよい。
【0027】
本発明のポリエステルフィルムとは、ポリエステルを主成分とするフィルムを示すものを意味する。ここでいう主成分とはフィルムの全成分100質量%において、50質量%を超えて含有している成分である。
【0028】
本発明でいうポリエステルとは、ジカルボン酸構成成分とジオール構成成分を有してなるものである。なお、本明細書内において、構成成分とはポリエステルを加水分解することで得ることが可能な最小単位のことを示す。かかるポリエステルを構成するジカルボン酸構成成分としては、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、1,4-ナフタレンジカルボン酸、1,5-ナフタレンジカルボン酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸、1,8-ナフタレンジカルボン酸、4,4’-ジフェニルジカルボン酸、4,4’-ジフェニルエーテルジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸が挙げられる。また、本発明のポリエステルフィルムは、ポリエステルの酸成分100モル%中、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、1,4-ナフタレンジカルボン酸、1,5-ナフタレンジカルボン酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸、1,8-ナフタレンジカルボン酸、4,4’-ジフェニルジカルボン酸、4,4’-ジフェニルエーテルジカルボン酸を合計で95モル%以上含むことが好ましく、99モル%以上含むことがより好ましい。
【0029】
また、かかるポリエステルを構成するジオール構成成分としては、エチレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,2-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール等の脂肪族ジオール類、シクロヘキサンジメタノール、スピログリコールなどの脂環式ジオール類、上述のジオールが複数個連なったものなどが挙げられる。
【0030】
本発明において用いられるポリエステルとしては、機械特性、透明性の観点から、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレン-2,6-ナフタレンジカルボキシレート(PEN)、およびPETのジカルボン酸成分の一部にイソフタル酸やナフタレンジカルボン酸を共重合したもの、PETのジオール成分の一部にシクロヘキサンジメタノールや、スピログリコール、ジエチレングリコールを共重合したポリエステルが好適に用いられ、その中でも特にポリエチレンテレフタレートや、ポリエチレン-2,6-ナフタレンジカルボキシレートが好ましい。すなわち、本発明のポリエステルフィルムは芳香環を有することが好ましく、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、またはポリエチレン-2,6-ナフタレンジカルボキシレート(PEN)のフィルムであることが好ましく、ポリエチレンテレフタレートフィルムであることがより好ましい。また、これらPET、PBT、PENは共重合成分を含んでいてもよい。
【0031】
上記ポリエステルは公知の方法で製造することができ、固有粘度が0.50~0.80dl/gの範囲のポリエステルを用いることが好ましい。より好ましくは0.50~0.75dl/g、更に好ましくは、0.50~0.70dl/gの範囲である。なお、固有粘度の測定は、オルトクロロフェノール中、25℃で測定した溶液粘度から、下式で計算した値を用いる。
ηsp/C=[η]+K[η]2・C
ここで、ηsp=(溶液粘度/溶媒粘度)-1であり、Cは、溶媒100mlあたりの溶解ポリマー質量(g/100ml、通常1.2)、Kはハギンス定数(0.343とする)である。また、溶液粘度、溶媒粘度はオストワルド粘度計を用いて測定する。単位は[dl/g]で示す。
【0032】
本発明のポリエステルフィルムは二軸配向ポリエステルフィルムであることが好ましい。本発明における二軸配向とは、広角X線回折で二軸配向のパターンを示すものを意味する。ポリエステルフィルムは未延伸(未配向)フィルムを、常法により、二次元方向に延伸することで得ることができる。延伸は、逐次二軸延伸または同時二軸延伸のいずれの方法も採ることができる。逐次二軸延伸は、長手方向(縦)及び幅方向(横)に延伸する工程を、縦-横の1回ずつ実施することもできるし、縦-横-縦-横など、2回ずつ実施することもできる。
【0033】
本発明のポリエステルフィルムは、本発明の特性を損なわない範囲で、無機粒子または有機粒子、あるいはその両方を含有しても構わない。無機粒子としては例えば、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸亜鉛、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化セリウム、酸化マグネシウム、硫酸バリウム、硫化亜鉛、リン酸カルシウム、アルミナ(αアルミナ、βアルミナ、γアルミナ、δアルミナ)、マイカ、雲母、雲母チタン、ゼオライト、タルク、クレー、カオリン、フッ化リチウム、フッ化カルシウム、モンモリロナイト、ジルコニア、湿式シリカ、乾式シリカ、コロイダルシリカなどが挙げられる。有機粒子としては例えば、アクリル系樹脂、スチレン系樹脂、シリコーン樹脂、ポリイミド樹脂などを構成成分とする有機粒子、コアシェル型有機粒子などが例示できる。
【0034】
本発明のポリエステルフィルムの厚みは、特に限られるものでは無いが10μm以上300μm以下であることが好ましい。より好ましくは12μm以上100μm以下、更に好ましくは14μm以上50μm以下である。厚みが10μmより薄くなると、剛性が不足し、フィルムの製膜工程においてフィルムの破断頻度が高くなる懸念があり、またMLCCの成形基材として採用する場合、セラミックグリーンシート作製時に、フィルムの破断やフィルムの伸びによる塗工ムラ(膜厚ムラ)を生じる恐れがある。
【0035】
本発明のポリエステルフィルムは、基材が単層であっても、2層や、3層以上であってもよい。2層の場合は、ポリエステルA層およびポリエステルB層からなり、3層の場合は、ポリエステルA層、ポリエステルB層およびポリエステルC層、または、ポリエステルA層、ポリエステルB層およびポリエステルA層の3層からなる積層フィルムとなる。A層/B層/C層の3層からなる積層フィルムの場合または、A層/B層/A層の3層からなる積層フィルムの場合、A層は表面に離型層や被離型物を塗工する面を構成するのに好適な層であり、C層は離型層の反対面を構成するのに好適な層であり、B層は、A層とC層の中間またはA層とA層の中間に位置する層(以下、中間層という場合がある)である。また、中間層にフィルム表面の特性に悪影響を与えない範囲で、製膜工程で発生するフィルムのエッジ部分等の廃棄ルートから発生するプレコンシューマ材料や、他の製膜工程の廃棄ルートから発生するインハウスリサイクル材料を再生処理したリサイクル材料や、ポストコンシューマ材料を混合することもできる。混合割合は、一旦、製品として使用された後に廃棄される離型フィルム等を再生処理したリサイクル材料のみで構成してもよいし、リサイクル材料とその他の原料を適宜混合して使用してもよく、コストメリットを得ることが可能である。
【0036】
次に、本発明のポリエステルフィルムの製造方法について説明するが、本発明は、かかる例によって得られる物のみに限定して解釈されるものではない。
【0037】
本発明に用いられるポリエステルを得る方法としては、常法による重合方法が採用できる。例えば、テレフタル酸等のジカルボン酸成分またはそのエステル形成性誘導体と、エチレングリコール等のジオール成分またはそのエステル形成性誘導体を公知の方法でエステル交換反応あるいはエステル化反応させた後、溶融重合反応を行うことによって得ることができる。また、必要に応じ溶融重合反応で得られたポリエステルを、ポリエステルの融点温度以下にて、固相重合反応を行ってもよい。
【0038】
本発明のポリエステルフィルムは、従来公知の製造方法で得ることが出来るが、延伸、熱処理工程を以下の条件で製造することにより、少なくとも片面を上述の通り好ましい物性を持つ表面とすることができる。
【0039】
本発明のポリエステルフィルムは、構造式1~3からなる成分を含有しているが、含有せしめる方法としては従来公知の方法を用いることができ、なかでも未延伸シート作製する工程以前に添加すると構造式1~3からなる成分を良分散とすることができる場合がある。
【0040】
本発明のポリエステルフィルムは、必要に応じて乾燥した原料を押出機内で加熱溶融し、口金から冷却したキャストドラム上に押し出してシート状に加工する方法(溶融キャスト法)を使用することができる。2層以上のポリエステルフィルムを溶融キャスト法により製造する場合、ポリエステルフィルムを構成する層毎に押出機を用い、各層の原料を溶融せしめ、フィルタにより濾過する。極小さな異物もポリエステルフィルム中に入ると粗大突起欠陥となるため、フィルタには例えば3μm以上の異物を95%以上捕集する高精度のものを用いることが有効である。続いて溶融せしめた原料を合流装置にて溶融状態で積層したのち口金に導き、口金からキャストドラム上に押し出してシート状に加工する方法(共押出法)が用いられる。該シートは、表面温度20℃以上60℃以下に冷却されたドラム上で静電気により密着冷却固化し、未延伸シートを作製することが好ましい。キャストドラムの温度は、より好ましくは20℃以上40℃以下、さらに好ましくは20℃以上30℃以下である。60℃を超えると、キャストドラムにフィルムが貼り付き、未延伸シートを得ることが困難になる場合がある。
【0041】
次いで、未延伸フィルムを二軸延伸する場合の長手方向の延伸条件としては、未延伸フィルムを70℃以上に加熱されたロール群に導き、長手方向に延伸し、20℃以上50℃以下の温度に設定したロール群で冷却することが好ましい。長手方向の延伸における加熱ロール温度の下限についてはシートの延伸性を損なわない限り特に制限はないが、加熱ロール温度は使用するポリエステル樹脂のガラス転移温度を超えることが好ましい。また、長手方向の延伸倍率の好ましい範囲は3倍以上5倍以下である。より好ましい範囲としては3倍以上4倍以下である。長手方向の延伸倍率が3倍以上であると、配向結晶化が進行しフィルム強度を向上することができる。一方で、延伸倍率を5倍以下とすることで延伸に伴うポリエステル樹脂の配向結晶化が過度に進行し脆くなり製膜時の破れが発生することを抑制できる。フィルムの長手方向の延伸方法には、ロール間の速度差を用いる方法が好適に用いられる。この際、フィルムが滑らないようにニップロールでフィルムを固定しながら、複数区間にわけて延伸することも好ましい実施形態である。長手方向の延伸速度は5,000%/分以上100,000%/分以下であることが好ましい。
【0042】
次いで、長手方向に直角な方向(幅方向)の延伸に関しては、フィルムの両端をクリップで把持しながらテンターに導き、70℃以上160℃以下の温度に加熱された雰囲気中にて、長手方向に直角な方向(幅方向)への3倍以上5倍以下の延伸、およびその後、延伸されたフィルムを熱処理し内部の配向構造の安定化を行うことが好ましい。熱処理時にフィルムの受けた熱履歴温度に関しては、後述する示差走査熱量計(DSC)にて測定される融点温度の直下に現れる微小吸熱ピーク(Tmetaと称することがある。)温度にて確認することができるが、テンター装置設定温度としてはポリエステル(融点255℃)が主成分である場合には、テンター内の最高温度が200℃以上250℃以下であるように設定することが好ましく、他の熱可塑性樹脂を主成分とする際は、樹脂融点-55℃以下樹脂融点-5℃以下に設定することが好ましい。熱処理温度を200℃以上とすることで二軸配向ポリエステルフィルムの寸法安定性を向上させることができ、熱処理温度を250℃以下とすることでポリエステルフィルムの融解に伴うフィルム破れの発生を抑制し生産性良く製造することができる。より好ましい範囲としては220℃以上245℃以下である。
【0043】
熱処理時にフィルムの受けた熱履歴温度を表すTmetaの範囲としては、ポリエステル樹脂を主成分とする場合、前述の理由から190℃以上245℃以下であることが好ましい。より好ましい範囲としては210℃以上240℃以下である。
【0044】
更に熱処理した後に寸法安定性を付与することを目的として、1%以上6%以下の範囲で弛緩処理(リラックス処理)を行ってもよい。弛緩処理を1%以上とすることでポリエステルフィルムを高温環境下で用いる場合の寸法安定性を向上でき、6%以下とすることで、ポリエステルフィルムに適度な張力をかけ続け、厚みムラが悪化するのを防ぐことができる。
【0045】
延伸倍率は、長手方向と幅方向それぞれ3倍以上5倍以下とするが、その面積倍率(長手方向の延伸倍率×幅方向の延伸倍率)は9倍以上22倍以下であることが好ましく、9以上20倍以下であることがより好ましい。面積倍率を9倍以上とすることで得られるポリエステルフィルムの分子配向を促進させ耐久性を向上させることができ、面積倍率を22倍以下とすることで延伸時の破れ発生を抑制することができる。また延伸比率(長手方向の延伸倍率/幅方向の延伸倍率)は0.6倍以上1.7倍以下であることが好ましく、0.7倍以上1.5倍以下であることがより好ましく、0.8倍以上1.3倍以下であることが更に好ましい。延伸比率を0.6倍以上1.7倍以下とすることで、得られるポリエステルフィルムの分子配向を制御することができ、ガラス転移温度以上でも均一な伸びを実現することができる。
【0046】
本発明のポリエステルフィルムは、例えば離型用フィルム製造時には、離型剤を塗布し、熱処理にて硬化させる。熱処理と搬送の張力によりポリエステルフィルムには収縮と延伸が生じるため、本発明のポリエステルフィルムは、離型層のムラが少なく、離型用途に好ましく用いることができる。また、本発明のフィルムは少なくとも片面に離型層を設け、当該離型層に被離型層を設けた後の外観検査用途にも好適に用いることができる。例えば
、電池の固体電解質製造用支持体であれば、固体電解質の欠陥位置の検出精度が良好なためである。なお、固体電解質は一部に液体やゲル状物を含む半固体電解質も含まれる。
【0047】
<特性の評価方法>
A.熱分解GC/MSによる評価
ポリエステルフィルムより約100μgのサンプリングを行い、凍結粉砕により粉末状の試料を得た後、以下の条件で熱分解GC/MS測定へ供する。
(測定装置)
熱分解炉:PY-3030iD
GC:7890A
MS:JMS-Q1050GC
(測定条件)
熱分解温度:600℃
カラム:“Ultra ALLOY”(登録商標)-5(MS/HT)
昇温条件:40℃で3分保持し、その後20℃/分で320℃まで昇温し、320℃で18分保持
モード:Split(20:1)1.5mL/min cоnstant flоw
イオン化法:EI+
スキャン範囲:m/z 10.000-800.000
スキャン速度:0.5s/scan。
【0048】
(i)単位質量当たりのピーク面積値
得られたクロマトグラムについてピーク強度の最大値を100とした際に、構造式1~3として検出されるピーク面積値の総和を用いた試料の質量で除することで、単位質量当たりのピーク面積値(a.u./μg)を算出する。ここで単位質量当たりのピーク面積値は任意の2箇所でサンプリングした試料の算術平均値とする。
【0049】
B.発光スペクトル測定による評価
ポリエステルフィルムを敷き詰めて、以下の条件で発光スペクトル測定を実施する。なお、測定に当たって各波長の励起光強度で発光強度を規格化する。また分光計の検出感度の波長依存性は補正し、darkcоuntの補正も行う。
(測定条件)
装置:堀場Jobin Yvon社製 Fluorolog3-22
光源:キセノンランプ
検出器:PMT
励起波長:350nm
観測波長:~750nm(2nm間隔)
励起側スリット幅:2nm
観測側スリット幅:2nm
時定数:0.2s
測定モード:Sc/Rc
観測位置:励起光に対して22.5°方向
(i)発光ピーク強度
得られた発光スペクトルから各波長における発光ピーク強度を求める。
【0050】
(ii)発光性
以下の式により算出される値を発光性とする。
発光性=(I550nm)/(I370nm)×100
ここで、I550nmは550nmの発光ピーク強度、I370nmは370nmの発光ピーク強度である。発光性は以下の基準で評価する。
A:15以上
B:10以上15未満
C:5以上10未満
D:5未満
C.ガラス転移温度以上での恒温テンシロンによる評価
ポリエステルフィルムを任意の位置で長手方向および幅方向に長さ150mm×幅10mmの矩形に切り出しサンプルとする。引張試験機(オリエンテック製“テンシロン”(登録商標)UCT-100)を用いて、初期引張チャック間距離50mmとし、引張速度を300mm/分としてポリエステルフィルムの長手方向および幅方向に引張試験を行い、ヤング率と破断伸度を求める。測定は予め100℃に設定した恒温層中にサンプルをセットし、90秒間の予熱の後で、空気下、引張試験を行う。
【0051】
(i)ヤング率
得られた荷重-伸び曲線の立ち上がり部の接線から引張りヤング率を求める。各サンプルについて10回ずつ測定を行い、得られた値の平均値を採用する。
【0052】
(ii)破断伸度
以下の式により算出される値を破断伸度とする。
破断点伸度(%)=100×(L-L0)/L0
ここで、L0は試験前のサンプルの長さ(mm)、Lは破断時のサンプルの長さである。
【0053】
(iii)伸び均一性
伸び均一性を破断伸度の変動係数(標準偏差/平均値)で評価する。各サンプルについて10回ずつ測定を行い、破断伸度の変動係数を算出する。破断伸度の変動係数は値が低いほどバラつきが少なく、後工程の精度向上につながるため好ましい。
【0054】
D.原子吸光分析
アルカリ金属元素は、原子吸光分析法(日立製作所製:偏光ゼーマン原子吸光光度計180-80。フレーム:アセチレン-空気)にて定量を行う。
【0055】
E.各層の厚み
ポリエステルフィルムが積層フィルムである場合、下記の方法にて、各層の厚みを求める。フィルム断面を、フィルム幅方向に平行な方向にミクロトームで切り出す。該断面を走査型電子顕微鏡で5000倍の倍率で観察し、積層各層の厚みを測定する。
【0056】
F.固有粘度(IV)
オルトクロロフェノール100mlに、測定試料(ポリエステル樹脂(原料))を溶解させ(溶液濃度C(測定試料重量/溶液体積)=1.2g/100ml)、その溶液の25℃での粘度を、オストワルド粘度計を用いて測定する。また、同様に溶媒の粘度を測定する。得られた溶液粘度、溶媒粘度を用いて、下記式(1)により、[η]を算出し、得られた値をもって固有粘度(IV)とする。
ηsp/C=[η]+K[η]2・C・・・(1)
(ここで、ηsp=(溶液粘度/溶媒粘度)-1、Kはハギンス定数(0.343とする)である。)
なお、測定試料を溶解させた溶液に無機粒子などの不溶物がある場合は、以下の方法を用いて測定を行う。
(1-1)オルトクロロフェノール100mLに測定試料を溶解させ、溶液濃度が1.2g/100mLよりも濃い溶液を作成する。ここで、オルトクロロフェノールに供した測定試料の重量を測定試料重量とする。
(1-2)次に、不溶物を含む溶液を濾過し、不溶物の重量測定と、濾過後の濾液の体積測定を行う。
(1-3)濾過後の濾液にオルトクロロフェノールを追加して、(測定試料重量(g)-不溶物の重量(g))/(濾過後の濾液の体積(mL)+追加したオルトクロロフェノールの体積(mL))が、1.2g/100mLとなるように調整する。
(例えば、測定試料重量2.0g/溶液体積100mLの濃厚溶液を作成したときに、該溶液を濾過したときの不溶物の重量が0.2g、濾過後の濾液の体積が99mLであった場合は、オルトクロロフェノールを51mL追加する調整を実施する。((2.0g-0.2g)/(99mL+51mL)=1.2g/100mL))
(1-4)(1-3)で得られた溶液を用いて、25℃での粘度をオストワルド粘度計を用いて測定し、得られた溶液粘度、溶媒粘度を用いて、上記式(1)により、[η]を算出し、得られた値をもって固有粘度(IV)とする。
【0057】
G.ポリエステルフィルムの融点Tm(℃)
測定試料を、JIS K 7121(1987)に基づいた方法により、セイコー電子工業(株)製示差走査熱量測定装置“ロボットDSC-RDC220”を、データ解析にはディスクセッション“SSC/5200”を用いて、下記の要領にて測定を実施する。
【0058】
サンプルパンに試料を5mg秤量し、試料を25℃から300℃まで10℃/分の昇温速度で加熱し、1stRUNの示差走査熱量測定チャートを得る。当該1stRunの示差走査熱量測定チャートの、吸熱ピークのピーク温度を求め、Tm(℃)とする。
【0059】
H.ピンホール評価
チタン酸バリウム(富士チタン工業(株)製商品名HPBT-1)100質量部、ポリビニルブチラール(積水化学(株)製商品名BL-1)10質量部、フタル酸ジブチル5質量部とトルエン-エタノール(質量比30:30)60質量部に、数平均粒径2mmのガラスビーズを加え、ジェットミルにて20時間混合・分散させた後、濾過してペースト状の誘電体ペーストを調製する。得られた誘電体ペーストを、離型フィルムの上に乾燥後の厚みが2μmとなるように、ダイコーターにて塗布し乾燥させ、巻き取り、離型フィルム付きのセラミックグリーンシートを得た。巻き取られたセラミックグリーンシートを、繰り出し、離型フィルムから剥がさない状態にて目視で観察し、ピンホールの有無を確認する。なお観察する面積は幅300mm、長さ500mmとした。離型フィルムの上に成型されたセラミックグリーンシートについて、背面から1000ルクスのバックライトユニットで照らしながら、ピンホールを観察し、以下のように評価する。
A:ピンホールが3個以下。
B:ピンホールが4個以上6個以下。
C:ピンホールが7個以上9個以下。
D:ピンホールが10個以上。
【0060】
I.粒子の粒径
平均粒径は粒子の電子顕微鏡写真によって測定した50体積%の点にあたる粒子の等価球直径により求める。等価球直径とは粒子と同じ体積を有する球の直径である。
【0061】
J.粒子の熱分解温度
理学電気TAS-100にて窒素雰囲気下、昇温速度20℃/minでの熱天秤減量曲線を測定する。10%減量温度を熱分解温度とする。
【実施例】
【0062】
以下、本発明について実施例を挙げて説明するが、本発明は必ずしもこれらに限定されるものではない。
【0063】
[PET-1の製造]
テレフタル酸およびエチレングリコールから、三酸化アンチモン、酢酸マグネシウム・四水塩を触媒として、常法により重合を行い、溶融重合PETを得た。得られた溶融重合PET-1のガラス転移温度は81℃、融点は255℃、固有粘度は0.65、末端カルボキシル基量は20eq./tであった。
【0064】
[粒子Aの製造]
ビニルベンゼンとメタクリル酸から常法により乳化重合を行い、ポリスチレンからなるシード粒子を合成した。該シード粒子とビニルベンゼン、ジビニルベンゼン、メタクリル酸から、過酸化ナトリウムを重合開始剤として、乳化重合を行いジビニルベンゼン・スチレン架橋構造からなる粒子Aを得た。粒子Aの粒径は0.4μm、熱分解温度が400℃であった。
【0065】
[塗剤Aの作製]
付加反応型シリコーン樹脂離型剤(信越化学工業株式会社製商品名KS-847T)100質量部、白金触媒(信越化学工業株式会社製商品名CAT-PL-50T)1質量部を、トルエンを溶媒として固形分1.5質量%となるように調製し、塗剤Aを得た。
【0066】
[誘電体ペーストの作製]
チタン酸バリウム(富士チタン工業(株)製商品名HPBT-1)100質量部、ポリビニルブチラール(積水化学(株)製商品名BL-1)10質量部、フタル酸ジブチル5質量部とトルエン-エタノール(質量比30:30)60質量部に、数平均粒径2mmのガラスビーズを加え、ジェットミルにて20時間混合・分散させた後、濾過してペースト状の誘電体ペーストを作製した。
【0067】
(実施例1)
PET-1を、160℃で2時間真空乾燥後、構造式1~3で表される成分を各0.10質量%、添加撹拌した後、押出機に投入し、280℃で溶融させ、ダイを通して表面温度25℃のキャスティングドラム上に押し出し、未延伸シートを作製した。
【0068】
続いて該シートを加熱したロール群で予熱した後、90℃の温度で長手方向に3.8倍延伸を行った後、25℃の温度のロール群で冷却して一軸延伸フィルムを得た。得られた一軸延伸フィルムのフィルム両端をクリップで把持しながらテンター内の100℃の温度の加熱ゾーンで長手方向に直角な幅方向に4.0倍延伸した。さらに引き続いて、テンター内の熱処理ゾーンで230℃の温度で10秒間の熱固定を施した。次いで、冷却ゾーンで均一に徐冷後、巻き取って、厚さ31μmのポリエステルフィルムを得た。
【0069】
得られたポリエステルフィルムの片面に、塗剤Aを乾燥後の塗布厚みが100nmとなるようにグラビアコート法にて塗布し、離型用フィルムを得た。得られた離型用フィルムに、被離型物として、誘電体ペーストをダイコート法によって乾燥後の厚みが1.0μmとなるように塗布し、乾燥させ、巻き取り、セラミックグリーンシートを得た。各評価結果を表に示す。
【0070】
[PET-2の製造]
実施例1で得られたポリエステルフィルムをグラインダーにて粉砕してフレークにした後、アルカリ金属元素としてナトリウムを含有するアルカリ水溶液に5分間接触させながら攪拌した。フレークを真空乾燥した後、ベント孔付き押出機に投入し、1kPa以下の減圧度に保持し水分を除去しながら混練し、PET-2を得た。PET-2のガラス転移温度は78℃、融点は253℃、固有粘度は0.60、末端カルボキシル基量は37eq./tであった。
【0071】
[PET-3の製造]
実施例1で得られたポリエステルフィルムをグラインダーにて粉砕してフレークにした後、アルカリ金属元素としてナトリウムを含有するアルカリ水溶液に2分間接触させながら攪拌した。フレークを真空乾燥した後、ベント孔付き押出機に投入し、1kPa以下の減圧度に保持し水分を除去しながら混練し、PET-3を得た。PET-3のガラス転移温度は79℃、融点は253℃、固有粘度は0.60、末端カルボキシル基量は38eq./tであった。
【0072】
[PET-4の製造]
PET-1を、160℃で2時間真空乾燥後、押出機に投入し、280℃で溶融させ、ダイを通して表面温度25℃のキャスティングドラム上に押し出し、未延伸シートを作製した。続いて該シートを加熱したロール群で予熱した後、90℃の温度で長手方向に3.8倍延伸を行った後、25℃の温度のロール群で冷却して一軸延伸フィルムを得た。得られた一軸延伸フィルムのフィルム両端をクリップで把持しながらテンター内の100℃の温度の加熱ゾーンで長手方向に直角な幅方向に4.0倍延伸した。さらに引き続いて、テンター内の熱処理ゾーンで230℃の温度で10秒間の熱固定を施した。次いで、冷却ゾーンで均一に徐冷後、巻き取って、厚さ31μmのポリエステルフィルムを得た。該ポリエステルフィルムをグラインダーにて粉砕してフレークとし真空乾燥した後、ベント孔付き押出機に投入し、1kPa以下の減圧度に保持し水分を除去しながら混練し、PET-4を得た。PET-4のガラス転移温度は78℃、融点は253℃、固有粘度は0.60、末端カルボキシル基量は39eq./tであった。
【0073】
[PET-5の製造]
PET-1と粒子Aを用い、PET-5に対して粒子Aが1.0質量%含有するように、ベント孔付き押出機に投入し、1kPa以下の減圧度に保持し水分を除去しながら混練し、PET-5を得た。ガラス転移温度は81℃、融点は255℃、固有粘度は0.61、末端カルボキシル基量は22eq./tであった。
【0074】
[PET-6の製造]
PET-1をPET-5に変更した以外は、PET-4の製造と同様にPET-6を製造した。PET-6のガラス転移温度は79℃、融点は252℃、固有粘度は0.60、末端カルボキシル基量は28eq./tであった。
【0075】
(実施例2~6)
構造式1~3で表される成分の添加量を表に示す通り変更した以外は実施例1と同様にポリエステルフィルムを作製した。
【0076】
(実施例7~12)
PET-1をPET-2に変更した以外は、実施例1~6と同様にポリエステルフィルムを作製した。
【0077】
(実施例13)
PET-1をPET-3に変更した以外は、実施例1と同様にポリエステルフィルムを作製した。
【0078】
(比較例1)
構造式1~3で表される成分を添加しなかったこと以外は、実施例1と同様にポリエステルフィルムを作製した。
【0079】
(比較例2)
PET-1をPET-4に変更した以外は、比較例1と同様にポリエステルフィルムを作製した。
【0080】
(比較例3)
PET-1をPET-5に変更した以外は、比較例1と同様にポリエステルフィルムを作製した。
【0081】
(比較例4)
PET-1をPET-6に変更した以外は、比較例1と同様にポリエステルフィルムを作製した。
【0082】
(比較例5)
構造式1~3で表される成分の添加量を表に示す通り変更した以外は実施例1と同様にポリエステルフィルムを作製した。
【0083】
【0084】
【0085】
【0086】
【0087】
実施例1~13は熱分解GC/MS評価における単位質量当たりのピーク面積値が好ましい範囲内であったことにより、伸び均一性と発光性に優れるポリエステルフィルムが得られた。特に実施例7~13はアルカリ金属元素を有する水溶液と接触したことにより構造式1~3で表される成分が均一に分散したため、離型層の塗布性に優れ、ピンホール評価が優れるものであった。
【0088】
比較例1~4は熱分解GC/MS評価における単位質量当たりのピーク面積値が150未満であったため、伸びの均一性に乏しく、また発光性が劣るものであった。比較例5は熱分解GC/MS評価における単位質量当たりのピーク面積値が2000を超えたため、ポリエステルフィルムが破断しやすく、伸びの均一性にムラが生じるものであった。
【産業上の利用可能性】
【0089】
本発明のポリエステルフィルムはガラス転移温度以上での伸びの均一性に優れるため、離型剤を均一に塗布することができる観点から離型用途に好適に用いることができる。また特定波長の励起光に対して発光性に優れるため、外観検査用途に好適に用いることができる。
【要約】
【課題】ガラス転移温度以上での伸びの均一性に優れるポリエステルフィルムを提供する。
【解決手段】熱分解ガスクロマトグラフィー質量分析(熱分解GC/MS)を行った際に、構造式1~3のいずれか1つ以上が検出され、構造式1~3として検出される単位質量当たりのピーク面積値が150~2000a.u./μgであるポリエステルフィルム。
【選択図】なし