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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-03-18
(45)【発行日】2025-03-27
(54)【発明の名称】試験カートリッジ
(51)【国際特許分類】
   C12M 1/34 20060101AFI20250319BHJP
   C12M 1/00 20060101ALI20250319BHJP
   C12Q 1/6841 20180101ALN20250319BHJP
   C12Q 1/6876 20180101ALN20250319BHJP
【FI】
C12M1/34 B
C12M1/00 A
C12Q1/6841 Z
C12Q1/6876 Z
【請求項の数】 18
(21)【出願番号】P 2021518616
(86)(22)【出願日】2019-10-04
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-02-07
(86)【国際出願番号】 US2019054887
(87)【国際公開番号】W WO2020073018
(87)【国際公開日】2020-04-09
【審査請求日】2022-10-04
(31)【優先権主張番号】62/741,253
(32)【優先日】2018-10-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】519433090
【氏名又は名称】ファースト ライト ダイアグノスティックス, インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【弁護士】
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】ストラウス, ドン
【審査官】山本 匡子
(56)【参考文献】
【文献】特表2012-503780(JP,A)
【文献】特表2012-503779(JP,A)
【文献】特表2017-501025(JP,A)
【文献】国際公開第2018/111630(WO,A2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 15/00-90
C12N 1/00-5/28
C12M 1/00-3/10
C12Q
G01N
MEDLINE/EMBASE/BIOSIS/CAPLUS(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
個々の細胞標的および分子標的の検出および定量化ならびに抗微生物薬感受性試験を含む検体に対する種々の試験の1つを行うように構成されたカートリッジであって、前記カートリッジが、
検体チャンバー;
前記検体チャンバーと流体連通するか、または流体連通しないかのいずれかを選択することができる複数の分割ウェル;
前記分割ウェルと選択可能に流体連通した複数の試薬ウェルであって、各試薬ウェルが、少なくとも1つの試薬を含有する、複数の試薬ウェル;
複数のイメージングウェルであって、各イメージングウェルが、前記複数の試薬ウェルの対応する1つと流体連通している、複数のイメージングウェル;
前記検体チャンバーと前記複数の分割ウェルとの間、および前記複数の分割ウェルと前記複数の試薬ウェルとの間の流体連通のチャネルを開放および閉鎖するために前記カートリッジの外側から操作可能な、複数の位置に移動できるスライド可能バルブであって、前記スライド可能バルブは、前記スライド可能バルブが前記複数の位置のうちの第1の位置にある場合には、前記検体チャンバーと前記複数の分割ウェルの少なくとも1つの分割ウェルとの間の直接的流体連通を提供し、前記複数の位置のうちの第2の位置にある場合には、前記少なくとも1つの分割ウェルから、対応する試薬ウェルへの接続を提供するチャネルを含む、スライド可能バルブ;および
流体工学モジュールとインターフェース接続して、前記カートリッジ内の圧力をマニピュレートして、前記カートリッジ内の検体を移動するように構成された空気圧ポート
を含み、前記空気圧ポートに印加される圧力または真空が、前記スライド可能バルブの位置と組み合わせて、前記検体および前記少なくとも1つの試薬の分配を制御するように構成される、カートリッジ。
【請求項2】
前記少なくとも1つの試薬が、磁気粒子および標的特異的な標識または非特異的な標識を含む、請求項1に記載のカートリッジ。
【請求項3】
前記磁気粒子が、標的特異的ではない、請求項2に記載のカートリッジ。
【請求項4】
前記磁気粒子が、細菌細胞表面に非特異的に結合することができる、請求項3に記載のカートリッジ。
【請求項5】
前記標的特異的な標識または非特異的な標識のそれぞれが、特定の細菌標的のリボソームRNAのセグメントに相補的な蛍光標識されたオリゴヌクレオチドを含む、請求項2に記載のカートリッジ。
【請求項6】
各イメージングウェルが、検出表面および色素クッションを含む、請求項1に記載のカートリッジ。
【請求項7】
前記色素クッションが、前記検出表面に隣接した密度薬剤および色素を含み、前記少なくとも1つの試薬が、磁気粒子を含み、前記磁気粒子および色素クッションは、前記色素クッションにわたって磁場を印加する際に、前記磁気粒子およびそれに結合した標的が、前記色素クッションを介して前記検出表面に引き寄せられるように構成される、請求項6に記載のカートリッジ。
【請求項8】
前記磁気粒子および前記標的特異的な標識または非特異的な標識が、前記試薬ウェル中への前記検体の送達によって再水和および溶解される凍結乾燥されたビーズとして提供される、請求項2に記載のカートリッジ。
【請求項9】
前記標的特異的な標識または非特異的な標識が、分類群特異的である、請求項2に記載のカートリッジ。
【請求項10】
前記磁気粒子が、微生物細胞に非特異的に結合することができる、請求項2に記載のカートリッジ。
【請求項11】
前記磁気粒子が、細菌細胞表面の特定の特徴または分子に結合するように構成される、請求項2に記載のカートリッジ。
【請求項12】
その中に希釈剤を有する希釈剤リザーバー;および
押すと、前記希釈剤リザーバーから前記希釈剤を分配して、前記検体と混合するように構成されるボタン
をさらに含む、請求項1に記載のカートリッジ。
【請求項13】
前記スライド可能バルブが、
インキュベーション中に前記分割ウェル中の前記検体を保持し、
標識および磁気的なタグ化のために、前記分割ウェルから前記試薬ウェルへと前記検体を送達
するように配置されるように構成される、請求項1に記載のカートリッジ。
【請求項14】
前記スライド可能バルブが、前記第2の位置にあり、各分割ウェルが、対応する試薬ウェルと流体連通している、請求項1に記載のカートリッジ。
【請求項15】
前記カートリッジと関連付けられた患者、試験適用特異的および工場情報を含む識別子をさらに含む、請求項1に記載のカートリッジ。
【請求項16】
分析器の光学システムが、標識され磁気的にタグ化された標的細胞または分子が磁力によって沈着された検出面の近傍の焦点面に焦点を合わせることを可能にする焦点粒子をその中にさらに含む、請求項1に記載のカートリッジ。
【請求項17】
前記カートリッジが、詰まりまたは他のエラーを回避するために、1つの配向でのみ前記カートリッジの分析器のトレイへの挿入を可能にするように、非対称なフットプリントを有する、請求項1に記載のカートリッジ。
【請求項18】
前記分割ウェルの少なくとも1つが、1つまたは複数の抗微生物剤を含有する、請求項1に記載のカートリッジ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、感染を検出するため、感染性病原体を同定するため、および感染に有効な抗微生物処置を決定するために有用なシステム、デバイスおよび方法に関する。
【背景技術】
【0002】
抗生物質耐性細菌によって引き起こされる生命を脅かす感染の流行は、世界的な医療危機を煽っている。この問題は、1つには、従来の診断方法が、感染を処置するための最適な抗微生物処置を決定するのに数日を要するという事実によって悪化される。時間がかかる試験によって引き起こされる遅延は、最適に満たない処置、医学的転帰不良、および抗生物質耐性の伝播を引き起こす強力な広域スペクトル抗生物質の乱用をもたらす。耐性細菌によって引き起こされる感染に起因する死亡率は、急激に増加している。Review on Antimicrobial Resistanceによる2014年報告は、2050年までに、抗微生物薬耐性が毎年1千万人を超える致死率の原因となることを推定している。
【0003】
残念ながら、抗微生物薬感受性試験(AST)法と呼ばれる、有効な標的化された抗生物質を同定するために使用される従来法は、結果を得るのに数日を要する。従来の抗微生物薬感受性試験にそれほど時間かかる1つの理由は、それらの試験が、多数の - 数百万のオーダーの - 精製された病原体細胞を必要とすることである。ペトリ皿中で培養することによってその数の細胞を精製するためには、130年を超える歴史があるコロニー精製法を使用して、1または複数日が必要である。精製された細胞が入手できると、病原体を同定し、どの抗生物質が患者を処置するために有効であるかを決定するのに、1または複数日が必要である。
【0004】
一方で、患者は、感染を引き起こし得る広範な病原体を死滅させる広域スペクトル抗生物質で「経験的に」処置されている。これらの薬物は、広範な病原体を処置することができるが、患者の特定の病原体に対する最適な治療であることは一般になく、感染を効果的に処置することができない可能性がある。広域スペクトル抗生物質の経験的な使用は、抗生物質耐性の伝播も引き起こす。これらの広域作用性の薬物は、疾患原因病原体だけでなく、ヒト身体に存在する数兆個の良性微生物においても耐性を引き起こす。抗生物質耐性の伝播をさらに悪化させるのは、どの患者が実際に感染を有するかを決定する迅速な診断法の非存在下では、未感染の患者が、耐性原因抗生物質によって不必要に処置される頻度が高いという事実である。
【0005】
有効な抗微生物処置をすぐに決定することで、医学的転帰を改善できるだけでなく、医療費を低下させることができる。例えば、一般的な生命を脅かす院内感染、例えば、手術部位感染および人工呼吸器関連肺炎は、米国においてほぼ100億ドルの医療費の原因となっている。入院期間の長さは、これらの感染に帰せられる最大のコストである。症状の開始に近い段階で最適な抗微生物治療で患者を処置することで、患者の回復を顕著に加速することができ、長期にわたる費用のかかる入院期間を低減させることができる。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
感染を有する患者を迅速かつ正確に同定し、これらの患者に対して有効な治療を迅速に実行することで、命を救い、抗微生物薬耐性の伝播を衰えさせることができる。本発明は、今日の方法によって要求される数日間と比較して、感染を有する患者を約30分間で正確に同定することができ、患者の感染に対する標的化された治療を数時間で決定することができるカートリッジデバイスを提供する。症状の開始にかなり近い段階で感染を検出し、有効な標的化された抗微生物剤を同定することによって、本発明は、医学的転帰を劇的に改善し得、耐性原因広域スペクトル抗生物質による経験的処置を最小化し得る。
【0007】
本発明に従うカートリッジは、多数の精製された細胞を生成するための従来法によって必要とされる時間のかかるステップを排除するために使用することができる。カートリッジには、抗微生物薬感受性試験(AST)を実施するための試薬が予めロードされ得る。
【0008】
感染を検出するために、本発明は、細菌、真菌、ウイルスおよび寄生生物を含む広範な病原体を検出、定量化および同定することができる。診断的に情報価値のある毒素、疾患特異的バイオマーカー、ヒトまたは宿主細胞、および宿主-応答バイオマーカーを検出および定量化する本発明の能力は、感染を有する患者を迅速かつ正確に同定するためにも有益である。本発明は、感染の存在について患者検体を最も効果的に評価し、感染性因子を決定するための単一の試験における上記性能の任意の組合せを含み得る。
【0009】
診断的に情報価値のある宿主細胞には、感染に対する炎症応答を示す細胞(例えば、好中球)、病原体が感染した細胞(例えば、ウイルス感染細胞)、または患者検体の品質および解剖学的起源を示す細胞(例えば、扁平上皮細胞)が含まれる。
【0010】
生命を脅かす感染を診断する毒素の例には、その存在がC.difficile感染を示すClostridiodes difficile毒素B、および疾患を示す炭疽感染を示すBacillus anthracis致死毒素(即ち、毒素サブユニット致死因子)が含まれる。感染患者の同定を助け得る宿主因子には、サイトカイン、例えば、IL-4およびIL-6が含まれる。
【0011】
感染を検出し、感染性病原体を同定および定量化した後、カートリッジ発明および関連の本発明の方法は、どの患者治療が最も有効であるかを決定することができる。この型の分析は、抗微生物薬感受性試験(AST)と呼ばれる。本発明は、数日かかる現行の従来法ではなく、ほんの数時間で患者検体から直接的に正確な結果を得ることができるという点で、抗微生物薬感受性試験のための現行の方法とは異なっている。従来法は、本発明の方法とは異なり、数百万個の精製された病原体細胞を得るために、時間のかかる微生物学的培養ステップを必要とする。対照的に、本発明の新規抗微生物薬感受性試験法は、多数の細胞も細胞精製も必要としないので、時間のかかる培養ステップなしに、患者検体から直接的に有効な治療を迅速に決定することができる。
【0012】
本発明の新規かつ潜在的に医学的にインパクトのある性能および実用性は、患者検体からの直接的な情報価値のある生物学的標的の非拡大デジタルイメージングを使用する単一分子計数および単一細胞計数を可能にするための本発明のカートリッジならびに関連の本発明のシステムおよび方法によって可能にされる。顕微鏡的細胞および超顕微鏡的分子をデジタル的に計数するために複雑で高価な顕微鏡および光学なしの単純かつ低コストのカメラを使用することで、疾患原因毒素および疾患特異的バイオマーカーの迅速、高感度かつ自動化された定量化による、感染の検出が可能になる。病原体細胞を同定しデジタル的に計数するための本発明のシステムおよび方法は、抗微生物剤に対する感受性または耐性を迅速に決定する能力の基礎をなす。本発明の方法は、微生物学的栄養培地中でインキュベートした場合に正常な病原体成長(即ち、細胞分裂による細胞数の増加)をその薬剤が停止させるかどうかを決定することによって、病原体が抗微生物剤に対して感受性であるかどうかを決定する。これは、抗微生物薬を含む培地中でのインキュベーションの前および後に病原体細胞を計数することによって、本発明のカートリッジデバイスにおいて実施することができる。
【0013】
カートリッジは、検体入力のみを必要とし、診療現場から集中型病院および参照実験室までの範囲の種々の現場ですぐに実施可能な結果を提供する種々の試験を自動的かつ同時に実行する機器によって操作可能であり得る。かかる試験は、ユーザーのために実施時間を最小化するための、全ての必要な試薬を予めロードした適用特異的カートリッジ、カートリッジ中への直接的検体入力ならびに全ての処理および分析の完全な自動化、ならびに拡大縮小可能なスループットのために設計された機器の組合せによって可能になる。
【0014】
単一分子および単一細胞を計数するための方法を使用して試験を実施する自動化機器によって操作可能であり得る本発明のカートリッジは、標的分子または細胞を蛍光標識すること、標的を磁気的にタグ化すること、デバイスのイメージング表面上に蛍光標識された磁気標的を沈着させるために磁力を使用すること、拡大なしで(または最小限の拡大を用いて)標的をイメージングすること、およびイメージ分析を使用して標的を計数することを含み得る。
【0015】
本発明は、カートリッジデバイスにおける、上に概説したステップの同時処理を可能にする。単一のランダムアクセス機器は、異なる型の患者検体を含む、異なる診断法適用のための複数の試験カートリッジを、同時に処理することができる。本発明の機器およびカートリッジの自動化された性質により、著しい専門的訓練なしの医療専門家による操作が可能になる。さらに、この機器のための、機器と共に働くように設計された適用特異的カートリッジの潜在的試験メニューの幅は、ベンチトップ空間を低減させて、設備のよりコスト節約的な利用を可能にし、患者近くでの診断試験が、それらが最も大きい影響を有し得る感染の開始に近い段階で、潜在的に命を救う診断情報を臨床医に提供することを可能にする潜在性を提供する。
【0016】
適用特異的カートリッジには、試験試薬が予めロードされ得る。好ましくは、カートリッジは、製造の間に、アセンブルされ得、必要な試験試薬と共に包装され得、ユーザーが、試験される検体(例えば、患者からの呼吸器検体)を添加し、カートリッジを機器中に挿入する必要があるだけの状態で分配され得る。一部の場合には、試験される検体、例えば、血液検体は、予め富化され得る。例えば、血液検体は、分析前に培養による予めの富化を受け得るが、それは、多くの血液感染が、あまりに低い濃度の病原体細胞を有することに起因して、予めの富化なしに直接的に試験することができないからである。
【0017】
カートリッジには、標的細胞または分子を同定および定量化するための蛍光プローブおよび試薬が予めロードされ得る。例えば、FISHベースの方法を使用して細胞を検出するために、カートリッジは、標的細胞を透過処理するための予めロードされた試薬、ハイブリダイゼーション試薬、蛍光標的特異的オリゴヌクレオチドプローブ、および標的結合性磁気粒子を含み得る。ASTカートリッジは、差次的成長後に標的細胞を定量化するためのFISHベースの方法のための試薬に加えて、差次的成長を促進するための微生物学的培地および抗微生物剤を含み得る。
【0018】
本発明の好ましい実施形態では、カートリッジは、抗微生物薬感受性試験のために使用され、検体は、微生物学的細胞の複製または成長を促進するための栄養成長培地を含む別々の部分へと分割される。これらの部分のうち1つまたは複数は、病原体細胞の数および品質を決定するための、成長を促進する温度でのインキュベーション前に直接的に処理および分析される参照またはベースライン部分として使用され得る。これらの部分のうち1つまたは複数は、病原体細胞が生存可能かどうかを確認するために、病原体細胞の成長を促進する温度でインキュベートされ得る。さらに、他の部分は各々、特定の濃度の1つまたは複数の抗微生物剤を含み、病原体細胞複製に対する抗微生物剤の影響を決定するためにインキュベートされる。
【0019】
ユーザーが、検体をカートリッジ中にロードし、結果を受け取る必要があるだけになるように、カートリッジは、その中の検体をマニピュレートし、カートリッジをインキュベートし、必要な処理およびイメージングステップを実施するように動作可能な機器とインターフェース接続し得る。E.coliなどの特定の感染が疑われる場合に、ユーザーが、E.coli特異的試薬(例えば、培地、抗微生物薬およびFISHプローブ)を予めロードした適切なカートリッジを選択することができるように、カートリッジは、特定の微生物のために特異的に選択された成長培地および抗微生物剤を含み得る。全ての必要な試薬を予めロードしたAST特異的カートリッジ、アッセイステップを実施するための別々のステーションおよび機器内でのそれへのランダムアクセスを有する自動機器、ならびに複数のカートリッジおよびアッセイのコンピューター化されたスケジューリングおよびマニピュレーションの組合せを介して、本発明のシステムおよび方法は、検体入力のみを必要とし、診療現場環境においてすぐに実施可能な結果を提供する種々のアッセイを自動的かつ同時に実行することができる。カートリッジおよび関連の機器の自動化された性質により、著しい専門的訓練なしの医療専門家による操作が可能になる。
【0020】
カートリッジには、製造の間に必要な試薬がセットアップされ得、ユーザーが、試験される検体(例えば、患者からの血液検体)を添加し、カートリッジを機器中に挿入する必要があるだけの状態で診療現場設備に分配され得る。本明細書に記載される機器は、実施されているアッセイに従って、アッセイ特異的カートリッジを受け入れ、格納し、ステーション間でアッセイ特異的カートリッジを移動させるために使用されるカルーセルの周囲に位置決めされる、異なるアッセイステップを実施するための種々の異なるステーションを使用する。
【0021】
カートリッジは、検体を受け入れるための検体チャンバー、および異なる抗微生物剤を予めロードしたいくつかの分割またはインキュベーションウェルを含み得る。カートリッジは、複数のイメージングウェルもまた含み得、各イメージングウェルは、単一の分割ウェルに対応する。イメージングウェルは、その差次的成長分析を提供し、特定の標的微生物による患者の感染に対する最も有効な処置を決定するために、種々の薬剤の存在下でのインキュベーション後に標的微生物を処理およびイメージングするための必要な試薬を含み得る。
【0022】
検体チャンバー、分割またはインキュベーションウェル、およびイメージングウェルは、一連のチャネルおよびバルブ、例えば、分割ウェルとイメージングウェルとの間に配置されたスライディングバーを介して、互いに連結され得る。チャネルが、分割ウェルの出口チャネルおよび対応するイメージングウェルの入口チャネルと整列して、それらの間に流体経路を創出することができるように、バーは、垂直チャネルを含み得、水平にスライド可能であり得る。いずれかの方向で水平にスライドされると、バーのチャネルは、これらのウェルと整列しなくなり、それによって、ウェルを隔離し、そこでの流体連通を防止し得る。バルブは、実施されるアッセイステップに依存して、本明細書に記載される機器によって外部からマニピュレートされ得る。
【0023】
カートリッジは、種々の区画間で検体を動かすためにカートリッジ内に圧力勾配を印加するための空気圧供給源への連結のための空気圧または他のインターフェースを含み得る。バルブと連動してマニピュレートされると、空気圧供給源は、カートリッジ内の種々の区画間のチャネルを開放し、次いで、開放チャネルを介して検体流体を指向させるために使用され得る。
【0024】
本発明のカートリッジは、上で概説した本発明のカートリッジデバイス上で異なる試験ステップを実施するための種々の異なるステーションを使用する本明細書に記載される機器によって操作可能であり得る。ステーションは、実施されている試験に従って、適用特異的カートリッジを受け入れ、格納し、ステーション間で適用特異的カートリッジを移動させるために使用されるカルーセルの周囲に位置決めされ得る。ステーションには、カートリッジとインターフェース接続し、その中の検体および試薬をマニピュレートするための流体工学ステーション、カートリッジのイメージングウェルの検出表面上に標的を磁気的に沈着させるための磁気選択ステーション、検体中の沈着した標的を検出するためのイメージングステーション、および使用したカートリッジの処分のための廃棄物ステーションが含まれ得る。
【0025】
好ましい実施形態では、試験は、全てのステップを通じて一定の温度もしくは周期的温度を使用し、または機器の内部が要求される温度で維持され得、カルーセルがインキュベーションステップのための格納ステーションとして働き得るように、改変される。温度は、生理的温度であってもよく、または生理的温度を下回っても上回ってもよい。
【0026】
カートリッジを操作する機器は、試験ステップが、種々の型の試験のために要求される順序およびタイミングで実施され得るように、異なるステーションにアクセスするためにカルーセルを使用することができる。正確なコンピュータースケジューリングおよび機器中の種々のステーションへのコンピューター制御されるアクセスは、さらなるユーザー入力なしに種々の試験の全てのステップを自動的に実施するために使用される。カートリッジを機器中にロードした後で、ユーザーの次のインタラクションは、機器の場所でまたは遠隔で、試験の結果を受け取ることまたは検分することであり得る。試験型に依存して、プラットフォームの自動的分析の報告された結果は、感染の検出;病原体、毒素、バイオマーカーもしくは診断的に情報価値のある宿主細胞の検出、同定および定量化;または抗微生物薬感受性結果およびプロファイルを示し得る。一部の試験適用は、同じ機器実行で、同じカートリッジ中の単一の検体に対して異なる種類の測定を実施する。この場合、複数の型の結果が、単一の試験について報告され得る。
【0027】
カートリッジは、患者、試験適用特異的または工場情報をカートリッジと関連付けるために、ヒトによって読み取られ得るまたは自動化機器によって自動的に読み取られ得る、1つまたは複数のバーコードまたは他の識別子で標識され得る。機器は、結果を報告するための、患者情報を含む、試験されている検体と関連する情報を記録および追跡するために、その入力を使用することもできる。機器は、結果を報告するための、患者情報を含む、試験されている検体と関連する情報を記録および追跡するために、その入力を使用することもできる。
【0028】
本発明のカートリッジを処理するための機器は、プロセッサーおよび非一時的な有形メモリ(tangible memory)を含んでおり、機器内で実施されている試験をスケジューリングおよび制御し、その中のカートリッジを追跡するように動作可能なコンピューターを含み得る。コンピューターは、ユーザーからの情報をもたらしかつ受け取り、結果およびステータス情報を表示するためのユーザーインターフェースを含み得る。コンピューターは、ネットワークに接続され得、試験結果を処理し、接続されたデバイスにネットワークを通じて送るように動作可能であり得る。
【0029】
カートリッジを操作するように設計された機器は、必要な試験ステップのパフォーマンスのために、カルーセルと種々のステーションとの間でカートリッジを動かすための機械的コンベアアームを含み得る。好ましい実施形態では、カルーセルおよびステーションは、ステーション内にカートリッジを受容し位置決めするようなサイズにされたスロットを含む。カルーセルの回転は、カルーセルスロットを、適切なステーション中の対応するスロットと整列させることができ、機械的コンベアアームは、カートリッジの側面に接触し、整列されたスロットに沿って選択されたステーション中にカートリッジをスライドさせるように動作可能であり得る。機械的コンベアアームは、カートリッジを握ることを回避し、握り機構と関連する詰まりを低減させる。機械的コンベアアームは、カートリッジに隣接し、その一方の側面に原動力を提供するように動作可能な、2つの回転可能なプロングを含み得る。カルーセルおよびステーションスロットの側面は、カートリッジがスライドされる際の側方ガイダンスを提供することができ、カートリッジを動かすための握り機構の必要を回避する。
【0030】
予めロードしたカートリッジは、製造側での試薬の体積および分配の制御を可能にし得、自動化機器は、試験ステップのパフォーマンスおよびそのタイミングを制御する。したがって、システムおよび方法は、ユーザーエラーの潜在性を大きく低減させることができ、未熟なスタッフが専門的訓練なしに種々の試験を実施し、専用の現場外試験の遅延およびコストなしに、信頼性のあるすぐに実施可能な結果を得ることを可能にする。
【0031】
好ましい実施形態では、適用特異的カートリッジは、病原体の正体に基づいて選択される種々の抗微生物剤および微生物学的成長培地の存在下での検体中の病原体の差次的成長を測定するための微生物特異的抗微生物薬感受性試験カートリッジを含む。本発明によれば、患者検体、例えば、尿、糞便または血液は、最小限の検体調製もしくは培養を伴って、または検体調製もしくは培養を伴わずに、直接的に分析される。本発明に従って処理される検体は、同定され、種々の抗微生物薬または他の処置モダリティに曝露され、最も有効な処置の選択を可能にする。微生物感染は同定され得、適切な処置はほんの数時間で決定され得、適切に標的化された治療の遅延を大きく低減させ、積極的な広域スペクトル抗微生物薬による経験的な処置の必要を回避する。本発明により、医療提供者が、感染患者を適切に処置するために、最初に有効な治療を処方することが可能になる。したがって、本発明は、患者転帰を改善し、抗微生物薬耐性の伝播を低減させる機会を提供する。
【0032】
カートリッジは、検体調製ステップをほとんどまたは全く伴わずに、患者検体、例えば、尿、痰もしくは他の呼吸器検体、血液、糞便、創傷検体または脳脊髄液から直接的に、感染検出、標的同定、および有効な処置の決定を実施するように設計され得る。例えば、尿検体は、数時間で完了する病原体同定(ID)および抗微生物薬感受性試験(AST)のために、カートリッジ試験デバイス中に直接的にピペッティングされる。これは、試験のために純粋な微生物培養物の大きい集団を産生するために1または複数日のコロニー精製を必要とする現行の培養ベースの方法とは対照的である。本発明は、全てカートリッジ試験デバイス内で、微生物もしくは細胞を同定するため、ならびに/または治療感受性および有効性を決定するために、患者検体を受け入れて内部で処理することが可能な試験デバイスおよび機器を提供する。検体中の複数の標的細胞または病原体が同定され得、複数の抗微生物薬または処置に対する感受性が、単一のカートリッジデバイス中で試験され得る。本発明の試験システムおよび方法は、検体マトリックス、可変の接種材料、および検体中の共生微生物の存在に関して頑強である。本発明の試験により、多微生物感染症についての正確な結果も得られる。
【0033】
本発明のカートリッジは、本発明のカートリッジデバイスにおける、検体中に存在する標的細胞の存在および正体を決定するための、検体の直接的処理およびイメージングを可能にし得る。上述のように、処理およびイメージングステップは、カートリッジの外側での検体調製をほとんど~全く必要としないことができるカートリッジ試験デバイス中で、検体により生じ得る。時間のかかる検体調製技術を捨て、標的特異的な識別可能な標識を使用することによって、本発明のシステムおよび方法は、わずか30分間またはそれ未満での、検体中の標的の同定および列挙を可能にする。
【0034】
カートリッジは、感染を引き起こしている病原体を同定するために使用され得る。例えば、本発明のカートリッジは、培養ベースの微生物学的な予めの富化も核酸増幅も必要とせずに、患者検体中の病原体を直接的に同定および定量化するために使用され得る。好ましい方法は、本明細書に記載される機器中のマイクロタイタープレートまたはカートリッジ中で、約30分間で実施することができる、磁気選択と組み合わせた蛍光in situハイブリダイゼーション(FISH)ベースの方法を使用して標識することによって、単一の反応混合物中の標的病原体(複数可)を列挙する。
【0035】
本発明のカートリッジは、診断的抗微生物薬感受性試験(AST)のために、即ち、どの抗微生物薬が患者の検体中の微生物病原体の成長を防止できるかを決定するために、使用され得る。この情報は、どの抗微生物薬をその特定の患者の感染を効果的に処置するために使用すべきかについての情報を、臨床医に提供する。
【0036】
抗微生物薬感受性試験は、段階的プロセスと考えることができる。目的は、抗微生物剤のパネルのどのメンバーが、患者の感染を引き起こしている特定の病原体株に対して有効であるかを決定することである。典型的には、感染が検出されると、病原体の種が最初に同定される。病原体の種を同定することは、その種を処置するために一般に使用され得る抗微生物薬および投薬を選択するために有用である。しかし、感染を引き起こしている特定の病原体株は、抗微生物薬のいずれかに対して耐性になっている場合があるので、その病原体が実際に感受性である潜在的処置を決定するために、抗微生物薬感受性試験を実施する必要がある。
【0037】
種の同定後、患者の検体からの病原体細胞は、種々の濃度の種々の抗微生物薬を含む栄養成長培地を含む一連の液体溶液へと割り振られ、またはアリコート化される。次いで、アリコートは、微生物複製につながる温度(一般には35~37℃)でインキュベートされる。病原体が抗微生物薬に対して感受性である場合、この病原体は正常に複製できる、即ち、病原体細胞の数は、抗微生物薬の非存在下での微生物学的成長培地中と同様に増加する。病原体が抗微生物薬に対して感受性である場合、この病原体は、複製できない、はるかに低い程度までしか複製しない、または形態学的もしくは他の異常を示し、これは、抗微生物剤の有効性を示す。最後に、病原体細胞の複製が、どの抗微生物剤が有効であるかを決定するために、種々のアリコート中で評価される。本発明者らは、一連の抗微生物薬についての病原体の抗微生物薬感受性/耐性結果のセットを、その抗微生物薬感受性プロファイルと呼ぶ。
【0038】
抗微生物薬感受性試験のための従来法および本発明のカートリッジにおけるより迅速な試験のために使用され得る方法は共に、上記ステップに従うが、本発明によって可能にされ得る方法は、病原体の抗微生物薬感受性プロファイルを数時間で決定し、一方で、従来法は数日を要する。本発明の方法を使用する迅速な抗微生物薬感受性試験結果は、高濃度の純粋な細胞を達成するための時間のかかる培養ベースの予めの富化成長なしに患者検体を直接的に試験する、新たな方法の能力から生じる。この富化および精製は、ペトリ皿上でのコロニー精製を使用して行われることが最も一般的である。
【0039】
従来法について、コロニー精製後に回収された細胞は、生化学的、微生物学的、核酸方法またはマトリックス支援レーザー脱離イオン化飛行時間型(MALDI-TOF)質量分析(MS)を使用して最初に同定される。病原体種の正体が既知になると、その種の病原体についての抗微生物薬感受性プロファイルを決定するのに適切な、適切な抗微生物薬および濃度が選択され得る。
【0040】
本発明のカートリッジによって可能にされる方法のいくつかの新規態様は、患者検体から直接的に、抗微生物薬感受性結果を迅速に得ることを可能にする。
【0041】
最初に、患者検体は、一般に、従来の抗微生物薬感受性試験のために必要とされる細胞数よりも数桁少ない細胞を含む。現行の培養-予めの富化依存的方法とは対照的に、カートリッジは、非拡大デジタルイメージングを使用する高感度の単一細胞計数によって少数の病原体細胞を列挙するように操作され得る。さらに、この方法は、少数の個々の細胞を列挙するので、非常にすぐに - わずか数世代の細菌で - 抗微生物薬および成長培地を含むアリコート中で細胞が数を増加させたかどうかを決定することができる。
【0042】
第2に、患者検体は、試料マトリックスと、感染性病原体とは無関係の共生微生物とを含む。従来法のためのガイドライン(例えば、Clinical Laboratories Standards InstituterまたはEuropean Committee on Antimicrobial Susceptibility Testingからのもの)は、ペトリ皿中の寒天ベースの成長培地上でのコロニーのクローン性成長から生じる精製された培養細胞を必要とする。これらの細胞は、単一の微生物種のみを含み、試料マトリックスを含まない。
【0043】
上で論じたように、病原体種の正体は、有効な臨床処置選択肢に到達するために抗微生物薬感受性試験結果を正確に解釈するために、既知でなければならない。これは、従来の最も新興の抗微生物薬感受性試験法が細胞の純粋な培養物をなぜ必要とするかの根底にある重要な理由である。
【0044】
上記のように抗微生物薬感受性プロファイルを決定するために、従来の最も新興の方法は、標的病原体の成長に対する異なる濃度の異なる抗微生物薬の影響を評価する。これらの方法が、抗微生物薬感受性試験結果を解釈するために、同定された細胞の純粋な集団を必要とする理由は、これらの方法が、抗微生物薬含有アリコートにおける成長を評価するために、非特異的方法、例えば、光散乱または顕微鏡法を使用するからである。1つよりも多くの種、例えば、病原体と、ヒトマイクロバイオームの一部である正常微生物の種とが存在した場合 - これは、ほとんどの初代患者検体においてあてはまる - を考慮する。成長が抗微生物薬含有アリコートにおいて観察された場合、疾患原因病原体、または共生種のうち1つもしくは複数が耐性であり、成長することが可能であったかどうかを、成長を検出するための一般的な方法を使用して言うことは不可能である。
【0045】
抗微生物薬の存在下で病原体が成長するかどうかを検出するために非特異的方法を使用することに起因して、精製された病原体細胞を要求する従来法などとは対照的に、本発明のカートリッジにおいて展開される方法は、抗微生物薬中での病原体の成長を評価するために、病原体特異的検出を使用する。疾患原因病原体細胞のみがインキュベーションステップ後に列挙される(いずれの共生微生物も列挙されない)ので、本発明の方法は、1つのまたは多くの共生微生物種を含む非滅菌初代検体において抗微生物薬感受性を直接的に決定するために使用され得る。
【0046】
カートリッジデバイスは、標的細胞または微生物を同定し、別々にまたは同じカートリッジ内で、検体中の標的の抗微生物薬感受性について試験するために、使用され得る。本発明の好ましい実施形態では、試験デバイスは、検体を別々の部分へと内部で分割し、そこで、これらの部分の一部は、差次的成長を決定するためのイメージングの前に、種々の抗微生物剤の存在下でインキュベートされ得る。これらの部分のうち1つまたは複数は、インキュベートされた部分における成長、成長阻害または形態変化を決定するためのベースライン参照を提供するために、直接的に処理およびイメージングされ得る。種々の抗微生物薬中でインキュベートされた部分の成長を定量化することによって、標的の成長を低減または防止することにおける各抗微生物剤の有効性が決定される。標的細胞計数または細胞形態における変化を観察することによって、処置の有効性が決定され得る。
【0047】
本明細書に記載されるカートリッジおよびそれらを操作する機器は、様々なクラスの標的(例えば、ウイルス、ヒト細胞、細菌細胞または真菌細胞)に対する薬剤の有効性を同定および試験すること、ならびにまた、単一のデバイスにおいて複数の異なる標的についてかかる同定および抗微生物薬感受性試験を同時に実施することが可能であり、それによって、異なる試験適用(例えば、血液、尿路、胃腸および呼吸器感染)のために設計された複数の試験デバイスによって典型的には実施される試験を実施する単一の機器の開発を可能にする。したがって、頑強な機能性が、本明細書に記載されるカートリッジおよびそれらを操作する機器によって提供される。
【0048】
本発明のカートリッジは、患者検体から直接的に抗微生物薬感受性結果を迅速に得るために使用される。患者検体は、一般に、従来の抗微生物薬感受性試験のために必要とされる細胞数よりも数桁少ない細胞を含む。本発明のカートリッジを使用して、少数の病原体細胞が、現行の培養-予めの富化依存的方法とは対照的に、非拡大デジタルイメージングを使用する高感度の単一細胞計数によって列挙され得る。さらに、少数の個々の細胞が列挙されるので、本発明は、非常にすぐに - わずか数世代の細菌で - 抗微生物薬および成長培地を含むアリコート中で細胞が数を増加させたかどうかを決定することができる。
【0049】
標的が同定されると、抗微生物薬感受性試験は、その標的に適切な抗微生物剤または処置(例えば、処置において一般に使用されるもの、または同定された標的の成長を阻害することが公知のもの)を含み得る。先に述べたように、標的細胞または微生物の同定は、適切な標的特異的治療を決定するために重要であり得る。同定は、本明細書に記載される抗微生物薬感受性試験法において使用されるのと同じ処理およびイメージング技術を使用して実施され得、差次的成長または治療有効性分析に使用されるのと同じ型のカートリッジデバイス、機器および方法を使用して実施され得る。ある特定の実施形態では、同定および治療感受性試験は、同じデバイスにおいて、同じ検体(別々の部分へと分割された)に対して実施され得る。標的同定は、本発明の範囲に入らない他の技術、例えば、標的特異的プライマーを用いた増幅、イムノアッセイ、質量分析、核酸配列決定またはオリゴヌクレオチドプローブアレイ分析を使用して実施することもできる。同定が別々に実施される場合、本発明のカートリッジは、適切な試薬を含む抗微生物薬感受性試験デバイスとして使用され得、同定された病原体に対する抗微生物薬が、本発明に従って使用され得る。
【0050】
種々の抗微生物剤の存在下で差次的成長を検出することは、標的病原体に依存して異なる時間量を必要とし得るが、標準的な抗微生物薬感受性試験技術のために必要とされる日数からは大きく低減される。例えば、尿路感染と一般に関連する微生物の差次的成長は、約4時間またはそれ未満の後に、本発明の技術を使用して尿検体において観察され得る。上述のように、検体中の微生物を同定および定量化することは、30分間またはそれ未満で達成され得、それによって、試験デバイスへの検体の導入後数時間以内に抗微生物薬感受性試験結果が得られる。
【0051】
ある特定の実施形態では、カートリッジデバイスの試験スイートは、症候性感染(例えば、肺炎または尿路感染)についての感染検出ならびに病原体同定(ID)および抗微生物薬感受性試験(AST)のために使用され得る。かかる試験スイートは、ID/AST試験スイートと呼ばれ、IDカートリッジとASTカートリッジの感染特異的ファミリーとを含み得、その各々は、個々の病原体または関連の群の病原体を試験するための適切な抗微生物薬を含む。例えば、尿路感染(UTI)試験スイートは、UTI IDカートリッジとUTI ASTカートリッジのファミリーとを含み得る。
【0052】
かかる感染特異的試験スイート中のIDカートリッジは、感染を検出し、検体中の感染性病原体(複数可)のバイオバーデンまたは濃度を同定および定量化することができる。同じカートリッジは、同じデバイス上で、宿主応答バイオマーカー(例えば、サイトカイン)および炎症細胞(例えば、好中球)、または試料品質の細胞マーカー(例えば、扁平上皮細胞)を含む診断的に情報価値のあるマーカーについて、検体を同時に試験することもできる。同じ検体、カートリッジおよび機器における、病原体、バイオマーカーおよび診断的に情報価値のある宿主細胞の検出および定量化を組み合わせる能力は、本発明のシステムおよび方法の新規かつ潜在的に強力な利点である。
【0053】
IDカートリッジ(または本発明の方法とは別の代替的な同定方法)を使用して感染が検出され、病原体が同定された場合、ASTカートリッジが、AST分析のためのASTカートリッジのファミリーから選択される。分析のために選択されるASTカートリッジは、特定の病原体を処置するために使用され得る適切な抗微生物薬と、特定の病原体を列挙するための適切なFISH試薬とを含む。
【0054】
次いで、本発明のカートリッジを使用して得られた抗微生物薬感受性試験結果は、感染性病原体についての抗微生物薬感受性プロファイルを決定するため、および患者が有効な抗微生物剤で処置され得るように患者に処置決定を伝えるために使用される。
【0055】
標的細胞を特異的に検出および定量化するための本発明のカートリッジ中に取り込まれる検出可能な標識には、標的特異的蛍光オリゴヌクレオチドプローブ(改変ヌクレオチドまたはヌクレオチドアナログを含むプローブを含む)、蛍光抗体、特異的および非特異的リガンド、レクチン、染料、または標的に結合する色素が含まれ得る。ある特定の実施形態では、磁気タグが、標的微生物を磁気的に選択しイメージングする前に、標的微生物に結合する検出可能な標識と組み合わせて使用される。分離は、本明細書に記載される試験デバイス内で生じ得、磁場が、イメージングされる試験デバイス中の検出表面上に標識された微生物を沈着させるために使用され得る。ある特定の実施形態では、参照により本明細書に組み込まれる米国特許第9,643,180号に記載される色素クッション層が、ユーザーによる検体調製ステップを最小化または排除するため、洗浄ステップを排除するため、および背景シグナルを低減させるために、分離およびイメージングステップにおいて使用され得る。その各々が参照により本明細書に組み込まれる米国特許第9,643,180号および米国特許第8,021,848号に記載されるデジタル非拡大イメージング技術は、例えば、単一細胞を含む標識された微生物を定量化するために使用され得る。
【0056】
本発明のカートリッジは、抗微生物薬感受性を決定するための方法を実行するように設計され得る。かかる方法は、好ましくは、症候性感染を有すると疑われる患者から検体を得るステップを含み、検体型は、感染性病原体(複数可)を潜在的に含む。次いで、検体は、カートリッジデバイス中に導入され、複数のアリコートへと分割される。1つのアリコートは、インキュベーション前の病原体細胞のベースライン濃度を決定するために即座に分析される。このアリコートについて、病原体細胞は、蛍光標識され、磁気的にタグ化され、色素クッションを介して引き付けられ、カートリッジ中のイメージングウェルのイメージング表面上に沈着し、イメージングされ、イメージ分析を使用して定量化される。他のアリコートは、全てカートリッジ内で、成長培地および種々の抗微生物剤の存在下で35℃でインキュベートされる。種々の抗微生物薬の存在下での差次的成長の後に、病原体細胞は、蛍光標識され、磁気的にタグ化され、色素クッションを介して引き付けられ、カートリッジ中のイメージングウェルのイメージング表面上に沈着し、イメージングされ、イメージ分析を使用して定量化される。抗微生物薬を含むアリコート中の列挙された病原体細胞の数は、抗微生物薬感受性プロファイルおよびどの抗微生物薬が患者を処置するために有効であるかを決定するために、最初に(インキュベーション前に)列挙された病原体細胞の数と比較される。
【0057】
本発明の方法は、感染を検出するステップ、ならびに検体をカートリッジ中に導入する前に感染性病原体細胞を検出および同定するステップ、ならびに標的細胞または微生物の正体に基づいて複数の異なる抗微生物剤を選択するステップを含み得る。標的病原体の同定は、好ましくは、磁気的にタグ化され蛍光標識された標的を含む複合体が特異的に形成されるように、患者からの第1の検体を、第1の標的に結合できる磁気タグおよび蛍光標識に曝露させるステップを含む。磁場を試験デバイスに印加して、複合体を検出表面に誘引する;検出表面をイメージングして、検出可能な標識を検出および定量化し、ここで、検出可能な標識の存在および濃度は、標的病原体が存在するかどうか、およびその標的病原体がどのくらい存在するかを示す。検出ステップは、約30分未満かかり得る。
【0058】
抗微生物薬感受性試験適用のために設計されたカートリッジについて、標的病原体細胞は、上記のように、差次的成長後に特異的に検出され得る。
【0059】
本発明のカートリッジは、細胞内標的(例えば、毒素、バイオマーカー、宿主-応答因子、ウイルス特異的分子またはウイルス粒子)を検出および定量化するために類似の戦略を使用することができる。標的特異的磁気タグおよび蛍光標識は、好ましくは、かかる標的に結合して、複合体を形成するために使用される。本発明のシステムおよび方法は、イメージングおよびイメージ分析による列挙のために、イメージング表面上にこれらの複合体を沈着させるために使用される。細胞内標的を検出するための標的特異的磁気タグおよび蛍光標識は、好ましくは、標的特異的結合剤(例えば、抗体、アプタマー、受容体、リガンド)にコンジュゲートされた磁気および蛍光粒子である。磁気的にタグ化され蛍光標識された標的複合体の特異的形成は、種々の方法で生じる。磁気タグまたは蛍光標識のいずれかは、標的に特異的に結合するように設計され得る。あるいは、磁気タグおよび蛍光標識は共に、標的に特異的に結合するように設計され得る。いずれの場合にも、磁気的に選択された複合体のイメージングと組み合わせた磁気選択は、検体中の特定の標的の検出および列挙を生じる。磁気タグおよび蛍光標識が標的と関連し得る種々の機構が存在する。
【0060】
磁気タグまたは蛍光標識が標的に非特異的に結合し得る種々の方法が存在する。例えば、種々のカテゴリーの標的にわたって保存された部位に結合する結合性磁気タグまたは蛍光標識は、磁気タグまたは蛍光標識を、その部位に結合する部分(例えば、抗体もしくは他のタンパク質結合パートナー、レクチン、またはリガンド)にコンジュゲートすることによって達成され得る。磁気タグまたは蛍光標識は、一般的な化学的性状またはコロイド性状に起因しても、非特異的に結合し得る。例えば、正に荷電した磁気粒子または蛍光標識は、一般には負に荷電した細菌細胞に非特異的に結合できる。細胞は、種々の色素(例えば、カルコフロール)または蛍光発生色素(例えば、ヨウ化プロピジウム、フルオレセインジアセテート)によって非特異的に標識され得る。染められた蛍光粒子は、それらの化学的性状もしくはコロイド性状のおかげで、またはそれらを上記のものなどの非特異的結合分子にコンジュゲートすることによって、標的細胞に非特異的に結合する蛍光標識として使用され得る。
【0061】
磁気タグまたは蛍光標識はまた、それらが標的に特異的に結合するように、種々の方法で選択され得る。例えば、磁気タグ(またはフルオロフォア)は、標的特異的抗原に結合する抗体にコンジュゲートされ得る。類似の効果のために、磁気タグまたはフルオロフォアは、かかる標的特異的抗体に結合した(または結合し得る)リガンド(例えば、ビオチン)に特異的に結合する分子(例えば、アビジン)にコンジュゲートされ得る。細胞は、それ自体フルオロフォアで標識された標的特異的核酸プローブ(または核酸アナログプローブ)との再会合またはハイブリダイゼーションによっても、特異的に標識され得る。染められた蛍光粒子は、それらを、ある特定の実施形態について記載されるものなどの標的特異的結合分子にコンジュゲートすることによって、標的細胞に特異的に結合する蛍光標識として使用され得、標識およびイメージングステップは、検体部分を、フルオロフォア標識された標的特異的結合分子および磁気粒子に曝露させるステップであって、フルオロフォア標識された標的特異的結合分子および磁気粒子が、標的に結合して複合体を形成する、ステップ;磁場を試験デバイスに印加して、複合体を検出表面に誘引するステップ;ならびに検出表面をイメージングするステップ、を含む。フルオロフォア標識された標的特異的結合分子には、標的細胞に特異的に結合するオリゴヌクレオチドプローブが含まれ得る。曝露およびイメージングステップは、蛍光in situハイブリダイゼーション(FISH)方法論および分析を含み得る。
【0062】
カートリッジおよび関連の方法は、標的の成長を阻害すると決定された抗微生物薬または他の処置を通常は含む、患者の感染を処置するために推奨される抗微生物剤を決定するように動作可能であり得る。標的の成長を阻害する処置の決定は、検体を試験デバイス中に導入した数時間後(例えば、4時間後)に生じ得る。身体検体は、組織検体(例えば、創傷または生検検体)または体液検体であり得る。本発明との使用のために好ましい体液には、呼吸器(例えば、痰気管内吸引物、保護された検体ブラシ、気管支肺胞洗浄液)、血液、尿、糞便、スワブ(例えば、鼻、口腔/咽頭、手術部位、皮膚および軟組織、直腸)および脳脊髄液が含まれるがこれらに限定されない。
【0063】
ある特定の態様では、本発明のカートリッジは、検体中の標的細胞または微生物の治療感受性を決定するように動作可能である。かかるカートリッジは、患者からの体液および標的細胞または微生物を含む検体ならびに機器または機器を受け入れることができる。機器は、好ましくは、検体を試験デバイス内の複数の部分へと分割するように試験デバイスをマニピュレートし;試験デバイス内で複数の異なる治療剤の存在下でこれらの部分をインキュベートし;試験デバイス内でインキュベートされた部分内の標的細胞を蛍光標識および磁気的にタグ化し;磁気的にタグ化され蛍光標識された標的複合体を未結合の蛍光標識から分離し;試験デバイス内でこれらの部分をイメージングして、どの処置(複数可)が標的細胞の複製を阻害するかを決定するために標的複合体を定量化するように動作可能である。
【0064】
システムは、微生物学的適用のために、感染を検出し病原体を同定するために使用され得る、カートリッジ試験デバイスを含み得る。患者検体は、デバイスに添加され得、そこで、患者検体は、複数のアリコートへと分けられ得、その各々は、標識され磁気的にタグ化された標的複合体が形成されるように、磁気タグおよび複数の型の標的特異的な検出可能な標識(例えば、別個のフルオロフォア標識を有する結合分子)と接触され得;磁場を試験デバイスに印加して、複合体を検出表面に誘引する;検出表面をイメージングして、標識された複合体を検出し、特定のアリコート中の、特定の検出可能な標識で標識された複合体の検出は、特定の標的の存在を示す。
【0065】
カートリッジは、抗微生物薬感受性適用のために、検体アリコートを種々の抗微生物剤と接触させ;検体を含むアリコートまたは部分を、標的、磁気タグおよび検出可能な標識による複合体が特異的に形成されるように選択された磁気タグおよび検出可能な標識と接触させ;磁場を試験デバイスに印加して、複合体を検出表面に誘引し;検出表面をイメージングし;イメージ分析を実施して、試験結果を決定するように、機器によって操作可能であり得る。
【0066】
本発明のカートリッジでは、インキュベートされた検体の各々中の同定された標的細胞または微生物の数を検出するステップは、インキュベートされた検体を、標的、磁気タグおよび検出可能な標識による複合体が特異的に形成されるように選択された磁気タグおよび検出可能な標識と接触させるステップ;磁場を複合体に印加して、複合体を検出表面に誘引するステップ;ならびに検出表面をイメージングして、同定された標的の各々の成長に対する治療剤の各々の効果を決定するステップ、を含み得る。
【0067】
複数のアリコートは、抗微生物剤の2倍連続希釈に、または抗微生物薬感受性試験のためのCLSIブレイクポイントに対応する濃度に好ましくは対応する異なる濃度で存在する同じ抗微生物剤と組み合わされ得る。かかる部分の数および抗微生物薬の濃度は、感受性/耐性結果、カテゴリー的(感受性、中間耐性、耐性またはSIR結果)または最小阻害濃度(MIC)結果を得るために選択され得る。特定の微生物病原体種に対する抗微生物薬の適切な濃度は、Clinical Laboratory Standards Institute(CLSI)によって記述されている。
【0068】
本発明に従うカートリッジは、多数の精製された細胞を生成するために従来法によって必要とされる時間のかかるステップを排除するために使用することができる。カートリッジには、抗微生物薬感受性試験(AST)およびFISH試験を実施するための試薬が予めロードされる。本発明のカートリッジは、従来法によって要求される数日間ではなく数時間で、感染を検出し、感染性病原体および有効な抗微生物剤を同定するために使用される。症状の開始にかなり近い段階で感染を検出し、有効な標的化された抗微生物剤を同定することによって、本発明は、医学的転帰を劇的に改善し得、耐性原因広域スペクトル抗生物質による経験的処置を最小化し得る。
【0069】
特に、本発明のカートリッジは、患者検体から直接的に抗微生物薬感受性結果を迅速に得るために使用される。患者検体は、一般に、従来の抗微生物薬感受性試験のために必要とされる細胞数よりも数桁少ない細胞を含む。本発明のカートリッジを使用して、少数の病原体細胞が、現行の培養-予めの富化依存的方法とは対照的に、非拡大デジタルイメージングを使用する高感度の単一細胞計数によって列挙され得る。さらに、少数の個々の細胞が列挙されるので、本発明は、非常にすぐに - わずか数世代の細菌で - 抗微生物薬および成長培地を含むアリコート中で細胞が数を増加させたかどうかを決定することができる。
【0070】
さらに、患者検体は、試料マトリックスと、感染性病原体とは無関係の共生微生物とを含む。従来法のためのガイドライン、例えば、Clinical Laboratories Standards Institute(CLSI)またはEuropean Committee on Antimicrobial Susceptibility Testing(ECAST)からのものは、ペトリ皿中の寒天ベースの成長培地上でのコロニーのクローン性成長から生じる精製された培養細胞を必要とする。これらの細胞は、単一の微生物種のみを含み、試料マトリックスを含まない。
【0071】
上で論じたように、病原体種の正体は、有効な臨床処置選択肢に到達するために抗微生物薬感受性試験結果を正確に解釈するために、既知でなければならない。これは、従来の最も新興の抗微生物薬感受性試験法が細胞の純粋な培養物をなぜ必要とするかの根底にある重要な理由である。抗微生物薬感受性プロファイルを決定するために、従来の最も新興の方法は、標的病原体の成長に対する異なる濃度の異なる抗微生物薬の影響を評価する。これらの方法が、抗微生物薬感受性試験結果を解釈するために、同定された細胞の純粋な集団を必要とする理由は、これらの方法が、抗微生物薬含有アリコートにおける成長を評価するために、非特異的方法、例えば、光散乱または顕微鏡法を使用するからである。1つよりも多くの種、例えば、病原体と、ヒトマイクロバイオームの一部である正常微生物の種とが存在した場合 - これは、ほとんどの初代患者検体においてあてはまる - を考慮する。成長が抗微生物薬含有アリコートにおいて観察された場合、疾患原因病原体、または共生種のうち1つもしくは複数が耐性であり、成長することが可能であったかどうかを、成長を検出するための一般的な方法を使用して言うことは不可能である。
【0072】
抗微生物薬の存在下で病原体が成長するかどうかを検出するために非特異的方法を使用することに起因して、精製された病原体細胞を要求する従来法などとは対照的に、本発明は、種々の抗微生物薬の存在下での病原体の成長を評価するために、病原体特異的検出を使用する。疾患原因病原体細胞のみがインキュベーションステップ後に列挙される(いずれの共生微生物も列挙されない)ので、本発明のカートリッジは、1つのまたは多くの共生微生物種を含む非滅菌初代検体において抗微生物薬感受性を直接的に決定するために使用され得る。
【0073】
本発明に従うカートリッジは、検体が、感染を引き起こすと疑われるのに十分な数の病原体種の細胞を含むかどうかを決定するために、病原体同定のために使用され得る。本発明に従うカートリッジは、1つまたは複数の抗微生物剤のどれが、患者検体中の、感染を引き起こすと疑われる病原体の正常な細胞複製を防止することができるかを決定するために、抗微生物薬感受性試験のために使用され得る。かかる抗微生物剤は、患者の感染を効果的に処置するために、潜在的に使用され得る。
【0074】
単一の検体がカートリッジに添加され得、検体中に存在する標的微生物が種々の薬剤の存在下でインキュベートされるのを可能にするためにウェル間で分割され得るように、カートリッジは、成長培地および種々の抗微生物剤が予めロードされ得る種々の分割またはインキュベーションウェルを含む。インキュベーション後、検体は、種々の抗微生物剤に対する標的微生物の感受性を決定するための差次的成長分析を提供するために、例えば、蛍光in situハイブリダイゼーション(FISH)を使用して、処理およびイメージングされ得る。ASTは、一定の生理的温度でFISHを使用し得る。FISHプロトコールを使用すると、カートリッジは、微生物同定試験または抗生物質感受性試験のために有用である。本開示のカートリッジを使用して研究される臨床的検体は、インキュベートされ、患者の温度と一致した温度で試験が実施され、そうして、患者中の成長している関連の感染性細菌が、カートリッジ中で成長し続ける。
【0075】
カートリッジには、体温を顕著に上回って加熱することなしに病原性細菌が蛍光標識およびイメージングすることができるように、蛍光プローブおよび微生物を化学的に透過処理する試薬が予めロードされる。FISHプロトコールは生理的温度で実施されるので、臨床的検体は、臨床的にミスリードする細菌成長パターンを促進する極度の熱に曝露されない。カートリッジは、いずれの検体調製も必要としない、患者検体、例えば、糞便または尿からの直接的な微生物同定または感受性試験のために設計される。カートリッジおよび関連のリーダー機器は、数時間以内に試験結果を提供し、感染の原因またはどの抗生物質処置が有効であるかを迅速かつ容易に同定する能力を臨床医に与える。
【0076】
本発明の好ましい実施形態では、カートリッジは、抗微生物薬感受性試験のために使用され、検体は、微生物学的細胞の複製または成長を促進する栄養成長培地を含む別々の部分へと分割される。これらの部分のうち1つまたは複数は、病原体細胞の数および品質を決定するための、成長を促進する温度でのインキュベーション前に直接的に処理および分析される参照またはベースライン部分として使用され得る。これらの部分のうち1つまたは複数は、病原体細胞が生存可能かどうかを確認するために、病原体細胞の成長を促進する温度でインキュベートされ得る。さらに、他の部分は各々、特定の濃度の1つまたは複数の抗微生物剤を含み、病原体細胞複製に対する抗微生物剤の影響を決定するためにインキュベートされる。
【0077】
ユーザーが、検体をカートリッジ中にロードし、結果を受け取る必要があるだけになるように、カートリッジは、その中の検体をマニピュレートし、カートリッジをインキュベートし、必要な処理およびイメージングステップを実施するように動作可能な機器とインターフェース接続し得る。E.coliなどの特定の感染が疑われる場合に、ユーザーが、E.coli特異的試薬(例えば、培地、抗微生物薬およびFISHプローブ)を予めロードした適切なカートリッジを選択することができるように、カートリッジは、特定の微生物のために特異的に選択された成長培地および抗微生物剤を含み得る。全ての必要な試薬を予めロードしたAST特異的カートリッジ、アッセイステップを実施するための別々のステーションおよび機器内でのそれへのランダムアクセスを有する自動機器、ならびに複数のカートリッジおよびアッセイのコンピューター化されたスケジューリングおよびマニピュレーションの組合せを介して、本発明のシステムおよび方法は、検体入力のみを必要とし、診療現場環境においてすぐに実施可能な結果を提供する種々のアッセイを自動的かつ同時に実行することができる。カートリッジおよび関連の機器の自動化された性質により、著しい専門的訓練なしの医療専門家による操作が可能になる。
【0078】
カートリッジには、製造の間に必要な試薬がセットアップされ得、ユーザーが、試験される検体(例えば、患者からの血液検体)を添加し、カートリッジを機器中に挿入する必要があるだけの状態で診療現場設備に分配され得る。本明細書に記載される機器は、実施されているアッセイに従って、アッセイ特異的カートリッジを受け入れ、格納し、ステーション間でアッセイ特異的カートリッジを移動させるために使用されるカルーセルの周囲に位置決めされる、異なるアッセイステップを実施するための種々の異なるステーションを使用する。
【0079】
カートリッジは、検体を受け入れるための検体チャンバー、および異なる抗微生物剤を予めロードしたいくつかの分割またはインキュベーションウェルを含み得る。カートリッジは、複数のイメージングウェルもまた含み得、各イメージングウェルは、単一の分割ウェルに対応する。イメージングウェルは、その差次的成長分析を提供し、特定の標的微生物による患者の感染に対する最も有効な処置を決定するために、種々の薬剤の存在下でのインキュベーション後に標的微生物を処理およびイメージングするための必要な試薬を含み得る。
【0080】
検体チャンバー、分割ウェルおよびイメージングウェルは、一連のチャネルおよびバルブ、例えば、分割ウェルとイメージングウェルとの間に配置されたスライディングバーを介して、互いに選択的に連結され得る。チャネルが、分割ウェルの出口チャネルおよび対応するイメージングウェルの入口チャネルと整列して、それらの間に流体経路を創出することができるように、バーは、垂直チャネルを含み得、水平にスライド可能であり得る。いずれかの方向で水平にスライドされると、バーのチャネルは、これらのウェルと整列しなくなり、それによって、ウェルを隔離し、そこでの流体連通を防止し得る。バルブは、実施されるアッセイステップに依存して、本明細書に記載される機器によって外部からマニピュレートされ得る。
【0081】
カートリッジは、種々の区画間で検体を動かすためにカートリッジ内に圧力勾配を印加するための空気圧供給源への連結のための空気圧または他のインターフェースを含み得る。バルブと連動してマニピュレートされると、空気圧供給源は、カートリッジ内の種々の区画間のチャネルを開放し、次いで、開放チャネルを介して検体流体を指向させるために使用され得る。
【0082】
カートリッジを受け入れマニピュレートするための機器は、複数の試験が実施され得るように異なるステーションにランダムにアクセスするためにカルーセルを使用することができる。正確なコンピュータースケジューリングおよび機器中の種々のステーションへのコンピューター制御されるランダムアクセスは、さらなるユーザー入力なしに種々のアッセイの全てのステップを自動的に実施するために使用される。カートリッジを機器中にロードした後で、ユーザーの次のインタラクションは、機器の場所でまたは遠隔で、アッセイの結果を受け取ることまたは検分することであり得る。結果は、処理された検体から得られたイメージのような単純なものであり得、または種々の抗微生物剤についての微生物同定および感受性スコアなどの自動的解釈を含み得る。
【0083】
ステーションは、カートリッジとインターフェース接続し、その中の検体および試薬をマニピュレートするための流体工学モジュール;標的の磁気選択のための磁気プルダウンステーション;使用したカートリッジの処分のための廃棄物ステーション;アッセイされた検体を分析するためのイメージングステーション;種々のアッセイステップのために必要に応じてカートリッジ上の検体および試薬において温度を維持するためのインキュベーションステーション;ならびに使用したカートリッジの処分のための廃棄物ステーションを含み得る。好ましい実施形態では、アッセイは、全てのステップを通じて一定の温度を使用し得、または機器の内部が要求される温度で維持され得、カルーセルがインキュベーションステップのための格納ステーションとして働き得るようにそれを実施するように、改変され得る。
【0084】
機器は、実施されるアッセイおよび任意の所与のカートリッジについてそのアッセイに必要とされるステップを決定するために、カートリッジ上のコードもしくはタグを読み取ることができ、またはユーザーからの入力を受け取ることができる。機器は、結果を報告するための、患者情報を含む、試験されている検体と関連する情報を記録および追跡するために、その入力を使用することもできる。
【0085】
機器は、プロセッサーおよび非一時的な有形メモリを含んでおり、機器内で実施されているアッセイをスケジューリングおよび制御し、その中のカートリッジを追跡するように動作可能なコンピューターを含み得る。コンピューターは、ユーザーからの情報をもたらしかつ受け取り、結果およびステータス情報を表示するためのユーザーインターフェースを含み得る。コンピューターは、ネットワークに接続され得、アッセイ結果を処理し、接続されたデバイスにネットワークを通じて送るように動作可能であり得る。
【0086】
本発明の機器は、必要なアッセイステップのパフォーマンスのために、カルーセルと種々のステーションとの間でカートリッジを動かすための機械的コンベアアームを含み得る。好ましい実施形態では、カルーセルおよびステーションは、ステーション内にカートリッジを受容し位置決めするようなサイズにされたスロットを含む。カルーセルの回転は、カルーセルスロットを、適切なステーション中の対応するスロットと整列させることができ、機械的コンベアアームは、カートリッジの側面に接触し、整列されたスロットに沿って選択されたステーション中にカートリッジをスライドさせるように動作可能であり得る。機械的コンベアアームは、カートリッジを握ることを回避し、握り機構と関連する詰まりを低減させる。機械的コンベアアームは、カートリッジに隣接し、その一方の側面に原動力を提供するように動作可能な、2つの回転可能なプロングを含み得る。カルーセルおよびステーションスロットの側面は、カートリッジがスライドされる際の側方ガイダンスを提供することができ、カートリッジを動かすための握り機構の必要を回避する。
【0087】
予めロードしたカートリッジは、製造側での試薬の体積および分配の制御を可能にし、自動化機器は、アッセイステップのパフォーマンスおよびそのタイミングを制御する。したがって、システムおよび方法は、ユーザーエラーの潜在性を大きく低減させることができ、未熟なスタッフが専門的訓練なしに種々のアッセイを実施し、専用の現場外試験の遅延およびコストなしに、信頼性のあるすぐに実施可能な結果を得ることを可能にする。
【0088】
好ましい実施形態では、アッセイ特異的カートリッジは、検体微生物に基づいて選択される種々の抗微生物剤の存在下での検体微生物の差次的成長を測定するための微生物特異的ASTカートリッジを含む。記載される技術およびシステムの頑強な性質は、がんまたは他の細胞などの非微生物標的についての分析も可能にする。例えば、本発明は、治療有効性、耐性モニタリング(抗微生物薬および他の化学療法薬の両方に関する)および治療選択を決定するために有用である。本発明によれば、患者検体、例えば、尿、糞便または血液は、最小限の検体調製もしくは培養を伴って、または検体調製もしくは培養を伴わずに、直接的に分析される。本発明に従って処理される検体は、同定され、種々の抗微生物薬または他の処置モダリティ(例えば、がん細胞に対する化学療法)に曝露され、最も有効な処置の選択を可能にする。微生物感染は同定され得、適切な処置はほんの数時間で決定され得、適切に標的化された治療の遅延を大きく低減させ、積極的な広域スペクトル抗微生物薬による経験的な処置の必要を回避する。本発明により、医療提供者が、感染患者を適切に処置するために、最初に有効な治療を処方することが可能になる。したがって、本発明は、患者転帰を改善し、抗微生物薬耐性の伝播を低減させる機会を提供する。本発明のシステムおよび方法を使用するがんまたは他の細胞およびその処置の治療有効性のモニタリングは、最も有効な処置の迅速な同定を可能にし、治療耐性の発生に際したタイムリーな介入をさらに可能にする。
【0089】
感染検出、標的同定、および有効な処置の決定は、検体調製ステップをほとんどまたは全く伴わずに、患者検体、例えば、唾液、尿、血液、糞便、スワブまたは脳脊髄液から直接的に達成される。例えば、尿検体は、数時間で完了する同定(ID)および抗微生物薬感受性試験(AST)のために、試験デバイス中に直接的にピペッティングされる。これは、試験のために純粋な微生物培養物の大きい集団を産生するために1または複数日のコロニー精製を必要とする現行の培養ベースの方法とは対照的である。本発明は、全て試験デバイス内で、微生物もしくは細胞を同定するため、ならびに/または治療感受性および有効性を決定するために、患者検体を受け入れて内部で処理することが可能な試験デバイスおよび機器を提供する。検体中の複数の標的細胞または病原体が同定され得、複数の抗微生物薬または処置に対する感受性が、単一のデバイス中で試験され得る。本発明の試験システムおよび方法は、検体マトリックス、可変の接種材料、および検体中の共生微生物の存在に関して頑強である。本発明の試験により、多微生物感染についての正確な結果も得られる。
【0090】
本発明のシステムおよび方法は、種々の治療の感受性および有効性を決定するために、差次的成長、形態または他の観察可能な変化の追跡を可能にする標識された微生物標的細胞のイメージを提供する。検体は、検体中に存在する標的細胞、微生物または病原体の存在および正体を決定するために、直接的に処理およびイメージングされる。上述のように、処理およびイメージングステップは、カートリッジなどの試験デバイス中で、検体により生じ、試験デバイスの外側での検体調製をほとんど~全く必要としない。時間のかかる検体調製技術を捨て、標的特異的な識別可能な標識を使用することによって、本発明のシステムおよび方法は、30分間またはそれ未満での、検体中の標的の同定および列挙を可能にする。
【0091】
検体はまた、イメージング前に、種々の型および種々の濃度の抗微生物剤または他の処置の存在下でインキュベートされ得る。インキュベーションは、処理およびイメージングステップが起こる同じ試験デバイス中で、または異なる試験デバイス中で生じ得る。
【0092】
本発明のシステムおよび方法は、標的細胞または微生物を同定し、(別々にまたは同じデバイス内で)治療有効性または検体中の標的の抗微生物薬感受性について試験するために、使用され得る。本発明の好ましい実施形態では、試験デバイスは、検体を別々の部分へと内部で分割し、そこで、これらの部分の一部は、差次的成長を決定するためのイメージングの前に、種々の抗微生物剤の存在下でインキュベートされ得る。これらの部分のうち1つまたは複数は、インキュベートされた部分における成長、細胞毒性または形態変化を決定するためのベースライン参照を提供するために、直接的に処理およびイメージングされ得る。種々の抗微生物薬または他の治療剤中でインキュベートされた部分の成長を定量化することによって、標的の成長を低減または防止することにおける各抗微生物剤の有効性が決定される。
【0093】
本明細書に記載される試験デバイスおよび機器は、様々なクラスの標的(例えば、ウイルス、ヒト細胞、細菌細胞または真菌細胞)に対する薬剤の有効性を同定および試験することが可能であるだけでなく、以下の説明を介して明らかなように、単一の機器における異なる試験適用(例えば、血液感染および呼吸器感染)のために設計された単一のデバイスおよび複数の試験デバイスにおける複数の異なる標的の選択およびマニピュレーションを介してかかる同定および治療的試験を同時に実施することが可能である。したがって、頑強な機能性が、本明細書に記載される機器および試験デバイスによって提供される。
【0094】
標的が同定されると、分析は、その標的に適切な抗微生物剤または処置(例えば、処置において一般に使用されるもの、または同定された標的の成長を阻害することが公知のもの)に限定され得る。先に述べたように、標的細胞または微生物の同定は、標的特異的治療への選択的曝露を可能にする。このように、初期の同定ステップは、AST前または治療有効性試験が開始される前であることが好ましい。同定は、本明細書に記載されるAST法において使用されるのと同じ処理およびイメージング技術を使用して実施され得、差次的成長または治療有効性分析に使用されるのと同じ型のデバイス、機器および方法を使用して実施され得る。ある特定の実施形態では、同定および治療的試験は、同じデバイスにおいて、同じ検体(別々の部分へと分割された)に対して実施され得る。標的同定は、他の従来技術、例えば、標的特異的プライマーを用いた増幅、イムノアッセイ、質量分析またはオリゴヌクレオチドプローブアレイ分析を使用して実施することもできる。同定が別々に実施される場合、専用の差次的成長分析デバイスが使用され得る。本発明の処理技術および機器と適合性の専用の同定デバイスは、インキュベーションステップまたはリザーバーの必要を捨てることができる。
【0095】
種々の抗微生物剤の存在下での観察可能な差次的成長は、試験細胞または微生物に依存して異なる時間量を必要とするが、標準的なAST技術のために必要とされる日数からは大きく低減される。例えば、尿路感染と一般に関連する微生物の差次的成長は、約4時間またはそれ未満の後に、本発明の技術を使用して尿検体において観察され得る。上述のように、検体中の微生物を同定および定量化することは、30分間またはそれ未満で達成され得、それによって、試験デバイスへの検体の導入後数時間以内にAST結果が得られる。ある特定の実施形態では、技術者が、適切なASTまたは治療有効性分析を実施するために、適切な試験デバイスを選択でき、患者検体をその中に直接的に導入できるように、種々の標的細胞または微生物に特異的な抗微生物剤または他の治療薬のサブセットを含むASTまたは治療有効性試験デバイスが提供される。
【0096】
次いで、本発明のシステムおよび方法を使用して得られたAST結果は、抗微生物薬耐性を同定し、患者に処置決定を伝えるために使用され、ここで、患者は、AST分析において標的の成長または生存度を最も阻害することが見出された抗微生物剤で処置され得る。
【0097】
検出可能な標識には、蛍光オリゴヌクレオチドまたは抗体プローブ、特異的および非特異的リガンド、レクチン、染料、ならびに標的に結合する色素が含まれ得る。ある特定の実施形態では、磁気タグが、標的微生物を磁気的に選択しイメージングする前に、標的微生物に結合する検出可能な標識と組み合わせて使用される。分離は、本明細書に記載される試験デバイス内で生じ得、磁場が、イメージングされる試験デバイス中の検出表面上に標識された微生物を沈着させるために使用され得る。ある特定の実施形態では、参照により本明細書に組み込まれる米国特許第9,643,180号に記載される色素クッション層が、背景シグナルを低減させるため、および標識された微生物のより正確な定量化を提供するために、分離およびイメージングステップにおいて使用され得る。参照により本明細書に組み込まれる米国特許第9,643,180号および米国特許第8,021,848号に記載されるデジタル非拡大イメージング技術は、例えば、単一細胞を含む標識された微生物を定量化するために使用され得る。
【0098】
本発明の態様は、検体中の標的の、抗微生物薬感受性または他の処置に対する他の応答を決定するための方法を提供する。かかる方法は、好ましくは、1つまたは複数の型の標的を含むと疑われる組織または体液検体を得るステップを含む。次いで、検体は、全て試験デバイス内で、試験デバイス中に導入され、複数の部分へと分割され、複数の異なる抗微生物剤の存在下でインキュベートされる。これもまた試験デバイス内で、インキュベートされた部分内の標的は、どの抗微生物剤が標的の成長を阻害するかを決定するために、標識およびイメージングされる。
【0099】
本発明の方法は、検体を試験デバイス中に導入する前に標的細胞を同定するステップ、および標的細胞または微生物の正体に基づいて複数の異なる抗微生物剤を選択するステップを含み得る。標的細胞または微生物の同定は、好ましくは、磁気的にタグ化され蛍光標識された標的を含む複合体が特異的に形成されるように、患者からの第1の検体を、第1の標的に結合できる磁気タグおよび蛍光標識に曝露させるステップを含む。磁場を試験デバイスに印加して、複合体を検出表面に誘引する;検出表面をイメージングして、検出可能な標識を検出し、ここで、検出可能な標識の存在は、第1の標的の存在を示す。同定ステップは、約30分未満かかり得る。
【0100】
磁気的にタグ化され蛍光標識された標的複合体の特異的形成は、種々の方法で生じる。磁気タグまたは蛍光標識のいずれかは、標的に特異的に結合するように設計され得る。あるいは、磁気タグおよび蛍光標識は共に、標的に特異的に結合するように設計され得る。いずれの場合にも、磁気的に選択された複合体のイメージングと組み合わせた磁気選択は、検体中の特定の標的の検出および列挙を生じる。磁気タグおよび蛍光標識が標的と関連し得る種々の機構が存在する。
【0101】
磁気タグまたは蛍光標識が標的に非特異的に結合し得る種々の方法が存在する。例えば、種々のカテゴリーの標的(例えば、ペプチドグリカン、LPSまたはグルカン)にわたって保存された部位に結合性磁気粒子(またはフルオロフォア)を結合させることは、磁気粒子(またはフルオロフォア)を、その部位に結合する抗体にコンジュゲートすることによって達成され得る。磁気タグまたは蛍光標識は、一般的な化学的性状に起因しても、非特異的に結合し得る。例えば、正に荷電した磁気粒子またはフルオロフォア標識は、一般には負に荷電した細菌細胞に非特異的に結合できる。細胞は、種々の色素(例えば、カルコフロール)または蛍光発生色素(ヨウ化プロピジウム、フルオレセインジアセテート)によって非特異的に標識され得る。
【0102】
磁気タグまたは蛍光標識はまた、それらが標的に特異的に結合するように、種々の方法で選択され得る。例えば、磁気タグ(またはフルオロフォア)は、標的特異的抗原に結合する抗体にコンジュゲートされ得る。類似の効果のために、磁気タグまたはフルオロフォアは、かかる標的特異的抗体に結合した(または結合し得る)リガンド(例えば、ビオチン)に特異的に結合する分子(例えば、アビジン)にコンジュゲートされ得る。細胞は、それ自体フルオロフォアで標識された標的特異的核酸プローブ(または核酸アナログプローブ)との再会合またはハイブリダイゼーションによっても、特異的に標識され得る。
【0103】
ある特定の実施形態では、標識およびイメージングステップは、検体部分を、標的特異的結合分子、磁気粒子および検出可能な標識に曝露させるステップであって、標的特異的結合分子が、標的、磁気粒子および検出可能な標識を含む複合体を形成する、ステップ;磁場を試験デバイスに印加して、複合体を検出表面に誘引するステップ;ならびに検出表面をイメージングするステップを含む。検出可能な標識には、蛍光マーカーが含まれ得、標的特異的結合分子には、オリゴヌクレオチドプローブが含まれ得る。曝露およびイメージングステップは、蛍光in situハイブリダイゼーション(FISH)分析を含み得る。
【0104】
本発明の方法は、標的の成長を阻害すると決定された抗微生物薬または他の処置を通常は含む、患者のために推奨される抗微生物薬または他の治療を決定するステップを含み得る。標的の成長を阻害する処置の決定は、検体を試験デバイス中に導入した約4時間未満後に生じ得る。身体検体は、組織検体(例えば、患者からの生検)または体液検体であり得る。本発明との使用のために好ましい体液には、呼吸器(例えば、痰気管内吸引物、保護された検体ブラシ、気管支肺胞洗浄液)、血液、尿、糞便、スワブ(例えば、鼻、口腔/咽頭、手術部位、皮膚および軟組織、直腸)および脳脊髄液が含まれるがこれらに限定されない。
【0105】
ある特定の態様では、本発明は、検体中の標的細胞または微生物の治療感受性を決定するためのシステムを提供する。好ましいシステムは、患者からの体液および標的細胞または微生物を含む検体を受け入れるように動作可能な試験デバイスならびに機器を含む。機器は、好ましくは、検体を試験デバイス内の複数の部分へと分割するように試験デバイスをマニピュレートし;試験デバイス内で複数の異なる治療剤の存在下でこれらの部分をインキュベートし;試験デバイス内でインキュベートされた部分内の標的細胞を蛍光標識および磁気的にタグ化し;磁気的にタグ化され蛍光標識された標的複合体を未結合の蛍光標識から分離し;試験デバイス内でこれらの部分をイメージングして、どの処置(複数可)が標的細胞の複製を阻害するかを決定するために標的複合体を定量化するように動作可能である。
【0106】
システムは、患者からの第1の検体を受け入れるように動作可能な第1の試験デバイスをさらに含み得、機器は、患者からの第1の検体を、第1の標的、磁気タグおよび検出可能な標識による複合体が特異的に形成されるように選択された磁気タグおよび検出可能な標識に曝露し;磁場を試験デバイスに印加して、複合体を検出表面に誘引し;検出表面をイメージングして、検出可能な標識を検出するようにさらに動作可能であり得、ここで、検出可能な標識の存在は、第1の標的の存在を示す。
【0107】
機器は、インキュベートされた検体部分を、標的、磁気タグおよび検出可能な標識による複合体が特異的に形成されるように選択された磁気タグおよび検出可能な標識に曝露し;磁場を試験デバイスに印加して、複合体を検出表面に誘引し;検出表面をイメージングするように動作可能であり得る。
【0108】
本発明の態様は、検体中の標的細胞または微生物の治療感受性を決定するための方法を提供する。方法は、機器によって実施される同定アッセイを使用して、患者からの第1の検体中の1つまたは複数の標的を同定するステップ;第1の検体中の同定された標的細胞または微生物に基づいて、1つまたは複数の治療剤を選択するステップ;治療剤の各々の存在下で、機器内で患者からの検体を別々にインキュベートするステップ;機器を使用して、インキュベートされた検体の各々中の、いくつかの標的細胞、CFU、ウイルス負荷、生存標的細胞、または治療有効性(または処置の影響)の他の指標を検出するステップ;および標的の検出された量、形態または他の表現型性状に基づいて、同定された標的の各々について、治療剤(または処置)の各々に対する感受性(または処置の影響)を決定するステップ、を含み得る。
【0109】
同定アッセイは、第1の検体を、標的、磁気タグおよび検出可能な標識による複合体が特異的に形成されるように選択された磁気タグおよび検出可能な標識と接触させるステップ;磁場を複合体に印加して、複合体を検出表面に誘引するステップ;ならびに検出表面をイメージングして、複合体の存在を決定するステップ、を含み得、ここで、複合体の存在は、検体中に存在する標的を同定する。
【0110】
インキュベートされた検体の各々中の同定された標的細胞または微生物の量を検出するステップは、インキュベートされた検体を、標的、磁気タグおよび検出可能な標識による複合体が特異的に形成されるように選択された磁気タグおよび検出可能な標識と接触させるステップ;磁場を複合体に印加して、複合体を検出表面に誘引するステップ;ならびに検出表面をイメージングして、同定された標的の各々の成長に対する治療剤の各々の効果を決定するステップ、を含み得る。
【0111】
複数の部分は、抗微生物薬の2倍連続希釈に好ましくは対応する異なる濃度で存在する同じ抗生物質と組み合わされ得る。この方法で、標的の成長を阻害する抗生物質のレベルを決定することが可能である。かかる部分の数および抗微生物薬の濃度は、感受性/耐性結果、カテゴリー的(感受性、中間耐性、耐性またはSIR結果)または最小阻害濃度(MIC)結果を得るために選択され得る。特定の微生物病原体種に対する抗微生物薬の適切な濃度は、Clinical Laboratory Standards Institute(CLSI)によって記述されている。
【0112】
ある特定の態様では、本発明は、カートリッジを提供する。カートリッジは、インキュベーションウェル;種特異的微生物プローブ;および透過処理剤を含む。微生物を含む検体が混合ウェル中に送達されると、透過処理剤は、微生物中へのプローブの進入を促進するが、検体は、約40℃を下回る温度に維持される。プローブは、特定の細菌種のリボソームRNAのセグメントに相補的な蛍光標識されたオリゴヌクレオチドを含み得る。透過処理剤は、1つまたは複数の界面活性剤(例えば、CHAPSO、SB3-12、TRITON(登録商標) X100)を含み得る。好ましくは、透過処理剤およびプローブは、インキュベーションウェル中への検体の送達によって再水和および溶解される凍結乾燥されたビーズで提供される。
【0113】
一部の実施形態では、カートリッジは、細菌細胞表面に結合する磁気粒子、および透明壁に隣接する色素クッションを含む。磁場が色素クッションにわたって印加される場合、磁場は、色素クッションを介して磁気粒子を透明壁に引き寄せる。色素クッションは、未結合のプローブからの光を吸収する色素をさらに含む密度勾配媒体(例えば、イオジキサノールまたはポリビニルピロリドンコーティングされたコロイドシリカ粒子)の溶液(必要に応じて乾燥されたまたは凍結乾燥された)を含み得る。好ましくは、色素クッションおよび透明壁は、インキュベーションウェルと流体連通したイメージングウェル中に提供される。提供される色素クッションは、検体によって湿らされるまで、カートリッジ内のイメージングウェル中に乾燥されたまたは凍結乾燥された状態で提供され得る。磁気粒子は、細菌細胞表面に結合する化学基(例えば、ジエチルアミンエチルデンプン;デキストラン硫酸;ポリアスパラギン酸;ポリアクリル酸;ポリグルタミン酸;ポリスチレンスルホネート;またはポリジアリルジメチルアミン(poly-diallyldimethylamin))に連結され得、カートリッジには、細菌細胞表面への化学基の結合を促進する化合物がさらに予めロードされ得る。細胞表面への化学基の結合を促進する化合物には、セトリミドが含まれ得る。
【0114】
カートリッジは、互いに平行な複数の対になったイメージングウェル/インキュベーションウェルセットをさらに含み得る。カートリッジは、ユーザーがカートリッジ中に検体をピペッティングすることができる受け入れリザーバーを含み得る。
【0115】
ある特定の実施形態では、カートリッジは、それを通るチャネルを有するガスケットを含むスライド可能ゲートを含む。ゲートが第1の位置に位置決めされる場合、受け入れリザーバーは、少なくとも第1のインキュベーションウェルと流体連通する。ゲートが第2の位置にある場合、受け入れリザーバー、第1のインキュベーションウェルおよび第1のイメージングウェルは全て、互いから密封される。ゲートが第3の位置にある場合、第1のインキュベーションウェルおよび第1のイメージングウェルは、互いに流体連通する。カートリッジは、受け入れリザーバーからの検体をインキュベーションウェル中に分割し、インキュベーションウェルからの液体を対応するイメージングウェル中に引き続いて渡すために、そこからの空気圧を受け入れるように外部機器に連結するためのフィッティングを含み得る。
【0116】
好ましい実施形態では、プローブは、特定の細菌種のリボソームRNAのセグメントに相補的な蛍光標識されたオリゴヌクレオチドを含む。必要に応じて、カートリッジは、セグメントから1~30塩基以内の場所でリボソームRNAに結合する少なくとも1つのヘルパープローブオリゴヌクレオチドもまた含む。好ましくは、蛍光標識されたオリゴヌクレオチドは、10塩基長と18塩基長との間であり、少なくとも1つのコンフォメーション拘束された核酸を含む。カートリッジの好ましい実施形態では、試薬組成物、プローブ、ヘルパープローブおよび化合物は、カートリッジ中への検体の送達によって再水和および溶解される凍結乾燥されたビーズとして提供され;色素クッションは、未結合のプローブからの光を吸収する色素をさらに含む密度勾配媒体の溶液を含み;クッションは、検体によって湿らされるまで、カートリッジ内のイメージングウェル中に乾燥されたまたは凍結乾燥された状態で提供される。
【図面の簡単な説明】
【0117】
図1図1は、本開示のカートリッジを示す。
【0118】
図2図2は、カートリッジと共に使用するための機器を示す。
【0119】
図3図3は、機器内のハードウェアを示す。
【0120】
図4図4は、カートリッジ中への検体の移入を示す。
【0121】
図5図5は、機器のローディングトレイを示す。
【0122】
図6図6は、微小生物を同定するための方法を図示する。
【0123】
図7図7は、微生物同定方法のステップを示す。
【0124】
図8図8は、透過処理剤を例示する。
【0125】
図9図9は、種特異的プローブを示す。
【0126】
図10図10は、rRNAの二次構造を示す。
【0127】
図11図11は、微生物結合性磁気粒子を示す。
【0128】
図12図12は、未結合プローブから分離されている磁気粒子が結合した細胞を示す。
【0129】
図13図13は、生理的温度でのFISHに関するワークフローを図示する。
【0130】
図14図14は、E.coli ATCC 19138の検出限界(LoD)が示されることを示す。ブランク上限(LoB)はアッセイ当たり89CFUであり、LoDはアッセイ当たり284CFUであった。尿1ml当たり9,467CFUのLoDに対応する。
【0131】
図15図15は、P.aeruginosa ATCC 9721の検出限界(LoD)が示されることを示す。ブランク上限(LoB)はアッセイ当たり104CFUであり、LoDはアッセイ当たり506CFUであった。尿1ml当たり16,867CFUのLoDに対応する。
【0132】
図16図16は、K.pneumoniae ATCC 700603の検出限界(LoD)が示されることを示す。ブランク上限(LoB)はアッセイ当たり109CFUであり、LoDはアッセイ当たり319CFUであった。尿1ml当たり10,633CFUのLoDに対応する。
【0133】
図17-1】図17は、実施例において使用されるプローブ配列の表である。
図17-2】同上。
【0134】
図18図18は、インプット細胞のパーセンテージを示す。
【0135】
図19図19は、4種の追加の細菌に関する包含性の結果を与える表である。
【0136】
図20図20は、実施例において使用されるプローブ配列を示す表である。
【0137】
図21図21は、試験される細菌の種および株を示す。
【0138】
図22図22は、実施例において使用されるプローブ配列を示す表である。
【0139】
図23図23は、E.coliの特異的検出および8種のチャレンジ細菌の検出がないことを示す。
【0140】
図24図24は、E.coliの特異的検出および8種の追加のチャレンジ細菌の検出がないことを示す。
【0141】
図25図25は、獲得した画像全体のうちの一部を示す。
【0142】
図26図26は、実施例4において使用したプローブ配列の表である。
【0143】
図27図27は、ニトロフラントインを用いるBIUR0017について示す。
【0144】
図28図28は、セファゾリンを用いるBIUR047について示す。
【0145】
図29図29は、シプロフロキサシンを用いるBIUR057について示す。
【0146】
図30図30は、トリメトプリム/スルファメトキサゾールを用いるBIUR052について示す。
【0147】
図31図31は、実施例6において使用したプローブ配列の表である。
【0148】
図32図32は、さらに、セフタジジム(CAZ)に対して試験した細菌について、独占的な糸状菌の存在が(目視で容易に識別することができるように、左側(正常細菌)と右側(糸状菌)を比較されたい)、差し迫った細胞死の指標として得られたことを示す。
【0149】
図33図33は、MICを得るためにどのような方法を使用することができるかを示す。
【0150】
図34図34は、試験した全ての株にわたって全体的性能を示す。
【0151】
図35図35は、実施例7において使用したプローブ配列の表である。
【0152】
図37図37は、4つの複製の平均成長倍率を示す。
【0153】
図39図39は、4つの複製の平均成長倍率を示す。
【0154】
図36図36は、Multipath(商標) UTI-ASTカートリッジを示す。
【0155】
図37図37は、試験された抗生物質濃度を示す表である。
【0156】
図38図38は、実施例8において使用したオリゴヌクレオチドの表である。
【0157】
図39図39は、BIUR0067の結果を示す。
【0158】
図40図40は、BIUR0084の結果を示す。
【0159】
図41図41は、新規AST方法により得られた結果を比較する。
【0160】
図42図42は、標準的ブロスと比較したE.coli BAA-2469(塗りつぶしの丸)に関する全ての接種レベルに関して上記の新規の4時間の方法により得られたMICを示す。
【0161】
図41図41は、全ての生物、抗生物質および接種レベルに対する全体的な本質的一致(essential agreement)およびカテゴリー一致(categorical agreement)のまとめである。
【0162】
図42図42は、従来のBMD方法と比較した、本明細書に記載の新たな方法を使用して得られた様々な接種レベルに対するMICの結果を示す。
【0163】
図43図43は、得られた様々な接種レベルに対するMICの結果のまとめである。
【0164】
図44図44は、実施例9において使用したプローブ配列の表である。
図45
図46
【0165】
図47図47は、E.coli BAA-2469に関するデータを示す。
【0166】
図48図48は、オフターゲット微生物(Micrococcus luteus、Acinetobacter baumannii、Corynebacterium minutissimum)の標準的BMDの様々な接種レベルとのE.coliの一致を示す。
【0167】
図49図49は、オフターゲット微生物(K.pneumoniae)の標準的BMDの様々な接種レベルとのE.coliの一致を示す。
【0168】
図50図50は、実施例10において使用したプローブ配列の表である。
【0169】
図51図51は、感受性E.coli株のMICを示す。
【0170】
図52図52は、ラクタム系抗生物質であるメロペネムに関する同様の結果を示す。
【0171】
図51図51は、K.pneumonaieの、カルバペネム加水分解B-ラクタマーゼ耐性株の存在下で、E.coliに関するイミペネムのMICを決定するための新規の迅速AST法とBMD方法との比較である。
【0172】
図52図52は、E.coliのMICが、K.pneumonaieの、カルバペネム加水分解B-ラクタマーゼ耐性株の様々な接種に関する上記方法と一致しており、一方標準的BMDは一致していないことを示す。
【0173】
図53図53は、実施例11において使用したプローブ配列の表である。
【0174】
図54図54は、MICを示す。
【0175】
図55図55は、5種の抗生物質全てについて得られた結果をまとめる。標準BMDに対する100%の本質的一致と100%のカテゴリー一致が、新規AST法を使用して、15種の培養陰性臨床尿試料にわたって観察された。
【0176】
図56図56は、決定したMICを示す。
【0177】
図57図57は、試験から得られた結果を示す。
【0178】
図58図58は、実施例12において使用したプローブ配列の表である。
【0179】
図59図59は、S.aureusの細胞(左のパネル)およびTSB培地のみ(右のパネル)を示す。
【0180】
図60図60は、第2の感受性または耐性細菌の存在にかかわらず、新規の4.5時間のAST法によって標的細菌に関して決定した全てのMICが、各標的細菌(第2の細菌の非存在下で決定した)に関するゴールドスタンダードBMD方法に対して認められた2倍の忍容性範囲内であった(本質的一致と称される)ことを示す。
【0181】
図61図61は、感受性と耐性のカテゴリーでの決定を示す。
【0182】
図61図61は、実施例において使用したシプロフロキサシン感受性および耐性株を示す。
【0183】
図62図62は、実施例13において使用したプローブ配列の表の最初の半分である。
【0184】
図63図63は、実施例13において使用したプローブ配列の表の第2の半分である。
【0185】
図64図64は、2種の標的生物に関する多微生物感染症に対する本質的一致を示す。以下に見られるように、上記AST法によって、標準的BMDに対する100%の本質的一致が得られる。
【0186】
図65図65は、2種の標的生物に関する多微生物感染症に対するカテゴリー一致を示す。以下に見られるように、上記AST法によって、標準的BMDに対する100%のカテゴリー一致が得られる。
【0187】
図66図66は、標的病原体が、それらの種特異的DNAオリゴヌクレオチドFISHプローブを含有するウェルにおいてのみ検出されることを示す。
【0188】
図67図67は、標的病原体が、それらの種特異的DNAオリゴヌクレオチドFISHプローブを含有するウェルにおいてのみ検出されることを示す。
【0189】
図68図68は、標的病原体が、それらの種特異的DNAオリゴヌクレオチドFISHプローブを含有するウェルにおいてのみ検出されることを示す。
【0190】
図69図69は、表「実施例14の表A」であり、標的病原体が検出され、一方、他の非標的病原体が検出されなかったことを示す。
【0191】
図70図70は、表「実施例14の表B」であり、実施例14において使用したプローブ配列を示す。
【発明を実施するための形態】
【0192】
本発明は、自動化機器と連動して、検体中の標的微生物の抗微生物薬感受性試験(AST)分析を自動的に実施するための、ユーザーによる検体調製をほとんどまたは全く必要としないカートリッジを提供する。標的細胞、例えばがん細胞もまた同定され得、種々の処置の治療有効性が本発明のシステムおよび方法を使用して評価され得る。検体中の細胞または微生物は、種々の抗微生物剤の存在下での差次的成長について分析され得、または細胞生存度、形態、ウイルス負荷、細胞機能性、もしくは治療有効性の他の尺度に対する治療剤の効果は、本明細書に記載されるシステムおよび方法を使用して決定され得る。検体マニピュレーション、インキュベーション、処理および分析ステップは、尿路感染の一般的な原因についての尿分析の場合、標的細胞同定については約30分間足らずで、AST分析については約4時間半足らずで、単一の試験デバイス内で実施される。分析時間は、分析されている標的に基づいて(例えば、標的の成長速度に依存して)および試験されている治療剤に基づいて変動し得る。システムおよび方法は、検体中の標的を正確かつすぐに定量化するために、非拡大デジタルイメージングおよびイメージ分析を使用して特定の標的を検出する。
【0193】
本発明の実施形態は、ユーザーによる細胞精製ステップを必要としない試験を可能にする。無関係なステップを低減させ、ある特定の場合には単一細胞またはコロニー形成単位(CFU)を定量化することが可能なイメージング方法およびイメージ分析を使用することによって、標的細胞または微生物同定およびAST分析についての患者検体から直接的にすぐに実施可能な結果は、従来技術を用いた場合の複数日間と比較して、ほんの数時間で得られる。試験デバイスは、検体を分割するステップ、異なる抗微生物剤または他の処置の存在下で培養するステップ、ならびに得られた検体部分を処理およびイメージングして、差次的成長を測定し試験された抗微生物剤の有効性を決定するステップの各々を実施するために、機器によって自動的にマニピュレートされ得る。
【0194】
本発明の好ましい実施形態では、カートリッジは、抗微生物薬感受性試験のために使用され、検体は、微生物学的細胞の複製または成長を促進する栄養成長培地を含む別々の部分へと分割される。これらの部分のうち1つまたは複数は、病原体細胞の数および品質を決定するための、成長を促進する温度でのインキュベーション前に直接的に処理および分析される参照またはベースライン部分として使用され得る。これらの部分のうち1つまたは複数は、病原体細胞が生存可能かどうかを確認するために、病原体細胞の成長を促進する温度でインキュベートされ得る。さらに、他の部分は各々、特定の濃度の1つまたは複数の抗微生物剤を含み、病原体細胞複製に対する抗微生物剤の影響を決定するためにインキュベートされる。
【0195】
次いで、本発明は、インキュベートされた部分における病原体細胞の数および品質を分析するため、ならびにこれらの結果を、インキュベートされていない参照部分における病原体細胞の数および品質と比較するために、使用され得る。特定の抗微生物剤を含む部分において正常に複製する病原体細胞の能力が顕著に損なわれている場合、その病原体は、分析ソフトウェアによって、その部分における濃度の抗微生物剤に対して感受性であるとスコア化される。あるいは、正常な成長がその部分において顕著に損なわれていない場合、その病原体は、分析ソフトウェアによって、その部分における濃度の抗微生物剤に対して感受性であるとスコア化される。
【0196】
本発明は、評価基準を含み得、例えば、細胞複製は、抗微生物剤(複数可)を含む部分における病原体または微生物標的の抗微生物薬感受性または耐性の決定のために評価される。これらの基準は、標的微生物の種、検体型、抗微生物剤、成長培地組成物、温度およびインキュベーション時間が含まれるがこれらに限定されないパラメーターの特定の組合せについて決定され得る。
【0197】
評価基準は、好ましくは、抗微生物薬感受性試験について受容された参照方法との相関によって、経験的に決定される。1つの標準的な参照方法は、ブロス微量希釈(BMD)であり、当業者によって理解される。ブロス微量希釈は、抗微生物剤に対する微生物株の抗微生物薬感受性が標準的な条件下で評価される方法である。標的微生物の精製された細胞は、種々の抗微生物剤の2倍連続希釈を含む規定された栄養成長培地の一連の部分またはアリコートに、規定された濃度で添加される。微生物株の抗微生物薬感受性は、規定された期間の成長インキュベーション後の種々の部分の濁度を視覚的に評価した後に決定される。濁度が視覚的に存在しない、または抗微生物剤を含まない部分と比較して顕著に低下されている、抗微生物剤の最も低い濃度は、最小阻害濃度(MIC)と呼ばれる。抗微生物薬感受性試験のための標準を決定する組織(例えば、CLSIまたはEUCAST)は、特定の微生物種および特定の抗微生物剤の組合せについてのMIC値を、臨床実務における特定の治療用量の抗微生物剤の有効性と相関させている。MIC値は、カテゴリー的範囲:感受性、中間耐性および耐性へと一般にビニングされる。これらは、SIRまたはカテゴリー的抗微生物薬感受性試験結果と呼ばれる。この方法で、特定の抗微生物剤に対する特定の種の特定の株についてのMICは、SIRまたはカテゴリー的結果として報告され得る。決定するために使用される他の標準的な方法には、-Bauerまたはディスク拡散および寒天希釈が含まれる。これらの方法は、CLSIおよびEUCAST文書に記載されており、当業者に公知である。
【0198】
本発明を使用して抗微生物薬感受性試験結果を決定するための評価基準は、ブロス微量希釈法と同様、種々の濃度の特定の抗微生物剤における特定の種の種々の株の細胞複製の程度および品質を評価するために、本発明を使用することによって経験的に決定される。特定の抗微生物剤について、抗微生物薬感受性試験結果(一般に、MICまたはSIRカテゴリー的結果)を特定の種の株に割り当てるための基準は、種々の株についての結果が、本発明を使用して、参照ブロス微量希釈法の結果と一貫して相関するように、選択される。例えば、抗微生物薬感受性試験結果を決定するための本発明のシステムおよび方法によって使用され得る基準は、ある特定の温度における栄養成長培地中での、種々の濃度のある特定の抗微生物剤の存在下でのある特定の期間のインキュベーションにわたる、ある特定の種の標的微生物の成長倍率(標的細胞の数における増加倍率)の評価である。この場合、抗微生物薬感受性を評価するための本発明のシステムおよび方法についての使用に関する有効な基準を決定するための経験的な研究は、種々の濃度の抗微生物剤における種の種々の株の成長倍率を評価する。成長倍率についての閾値は、本発明を使用してある株について測定された成長倍率が、同じ抗微生物剤の存在下で成長した同じ株についてのブロス微量希釈の結果と相関するように選択され得る。閾値は、株の成長倍率が閾値を超える場合に、その株が、本発明によって、その濃度の抗微生物剤の存在下で顕著に成長したとカテゴライズされるように、標的種の種々の株を使用して経験的に選択される。株の成長倍率が成長倍率閾値未満である場合、その株は、本発明によって、顕著に成長しなかったとカテゴライズされる。したがって、この例では、成長倍率についての閾値は、参照ブロス微量希釈法および本発明の方法の両方が、種々の株が種々の抗微生物剤濃度において顕著に成長したかしなかったと決定されるかどうかについて同じ結果を返すように選択される。
【0199】
他の評価基準もまた、抗微生物薬感受性試験結果を決定するために本発明によって使用され得る。例えば、本発明は、抗微生物剤中でのインキュベーションによって引き起こされる正常な細胞複製の混乱を反映する形態学的特徴の評価を含み得る。別の例として、インキュベーションステップ後の、抗生物質を含まない部分と比較した、抗微生物剤を含む部分における成長阻害の程度が、評価され得る。複数の評価基準を、特定の濃度の抗微生物剤が標的細胞の正常な細胞複製に対する顕著な混乱を引き起こすかどうかを決定するために同時に使用することもできる。したがって、本発明は、患者検体から直接的に、感染を検出し、感染性病原体を同定し、どの抗微生物薬が処置のために有効かを決定するために使用され得る。
【0200】
患者検体、例えば、尿、糞便、呼吸器、創傷、脳脊髄液または血液は、好ましくは、ユーザーによるいずれの検体調製もなしに、微生物分析のために分析カートリッジ中に直接的に移動される。したがって、多数の純粋な病原体細胞を単離するためのコロニー精製、核酸精製、または他の時間もしくは労働集約的な検体調製プロトコールをユーザーが実施する必要は、好ましくは存在しない。検体は、好ましくは、例えば、生物学的残骸を除去するための予めの富化も浄化もなしに、試験カートリッジ中に直接的にロードされる。カートリッジは、本開示の微生物定量化および同定ならびに抗微生物薬感受性試験のための試薬を含む。検体中の微生物の種特異的標識およびイメージングなどのステップは全て、検体が直接的にロードされたカートリッジ上で行われる。カートリッジは、標的細胞特異的標識、例えば、本発明のシステムおよび方法によって検体中の微生物を同定するために使用される蛍光プローブを含む。微生物を同定するために、機器は、好ましくは、カートリッジ中の標識された微生物をイメージングするためのイメージングサブシステムを含む。
【0201】
本発明のシステムおよび方法を使用して、迅速に感染を検出し、病原体を同定し、抗微生物薬感受性を決定することは、非常に長い培養ステップを必要とする従来法よりもはるかにすぐに、患者感染の有効な処置をガイドする、すぐに実施可能な結果を得るための潜在性を提供する。本発明のシステムおよび方法は、患者検体を分析カートリッジ中に直接的に単純に移動させ、カートリッジを機器中にロードすることによって、約30分間で感染を検出し感染性病原体を同定し、数時間で抗微生物薬感受性試験結果を決定する能力を臨床医に提供することができる。
【0202】
一部の実施形態では、本発明は、患者検体から直接的な、微生物検出および有効な処置の同定を含む。ある特定の態様では、本発明は、微小生物の同定を提供する。微生物同定は、患者検体、例えば、全血、血漿、血清、尿、痰、唾液、糞便、脳脊髄液、羊水、腹水、膿、リンパ液、膣分泌物、鼻分泌物、嘔吐物、汗および組織から、検体調製ステップなしに直接的に達成される。例えば、方法は、微生物同定のために、尿検体を分析カートリッジデバイス中に直接的に移動させるステップを含み得る。一部の実施形態では、方法は、患者検体を分析カートリッジの試料ウェル中に直接的に移動させるステップ、および種特異的様式で微生物を標識し、標識された微生物をイメージングし、標識された微生物を同定するためにカートリッジを操作するステップを含む。
【0203】
本発明の種々の実施形態では、検体中の微生物は、磁気粒子でタグ化され、種特異的な検出可能な標識で標識される。一部の実施形態では、検出可能な標識は、種特異的蛍光核酸プローブを含み得る。他の検出可能な標識には、標的特異的蛍光抗体もしくはアプタマー、受容体-リガンド対のメンバー、レクチンまたは染料が含まれる。標的特異的核酸プローブは、標的微生物の核酸配列のみに相補的であるように選択され得る。種々の実施形態において使用される磁気粒子は、標的微生物に特異的または非特異的に結合し得る。一部の実施形態では、複数の種が検出され得る。
【0204】
一部の実施形態では、カートリッジを操作するステップは、本発明のカートリッジデバイス内で、感染を検出し;検体中の病原体を同定および定量化し;抗微生物薬感受性を決定するために、カートリッジを機器中にロードすることを含み得る。本発明は、全てカートリッジ内で、微生物を同定しならびに/または治療感受性および有効性を決定するために、患者検体を直接的に受け入れて処理することが可能な分析カートリッジおよび機器を提供する。
【0205】
一部の好ましい実施形態では、別々のカートリッジが、異なる連続する診断機能のために展開される。例えば、好ましい実施形態では、カートリッジは、感染を検出し、病原体を同定し、検体中の病原体を定量化する。感染が検出され病原体が同定されると、患者検体の別の部分は、同定された病原体を処置するための候補である抗微生物剤を含むカートリッジ上で試験される。抗微生物薬感受性試験のために本発明のシステムおよび方法を使用することで、カートリッジは、患者の感染を引き起こす病原体の特定の株を処置するためにどの抗微生物剤が有効であり得るかを決定するために使用され得る。
【0206】
本発明のカートリッジは、生物学的に重要な分子、例えば、毒素およびバイオマーカーの高感度の検出のためにも使用することができる。
【0207】
本発明のシステムおよび方法は、本発明の方法を実施するために分析カートリッジとインタラクトするために使用され得る機器または分析器を含む。機器は、本発明の方法を実施するための複数のサブシステムを含み得る。分析カートリッジは、カートリッジ内の検体を処理するための複数のサブシステムを有する機器中にロードされ得る。好ましい実施形態では、複数のサブシステムのうち1つは、カートリッジ内で標識された微生物をイメージングするためのイメージングサブシステムであり得る。機器のサブシステムには、空気圧サブシステム、磁気サブシステムおよび廃棄物サブシステムもまた含まれ得る。機器は、機器内でカートリッジを動かしマニピュレートするために、カルーセル、プッシャー機構およびタスクスケジューラも含み得る。機器は、処理ステップの全てを一定の温度で実施することが可能である。
【0208】
機器およびデバイスを含む本発明のシステムおよび方法は、感染を検出すること;全ての型の病原体細胞を検出、同定および定量化すること;抗微生物薬感受性を決定すること;毒素、ウイルス、および宿主-応答因子を含むバイオマーカーを検出および定量化すること;ならびに診断的に情報価値のあるヒトまたは宿主細胞を検出および定量化することを含む、広範な診断機能を実施することができる。本発明のシステムおよび方法は、単一のデバイス(例えば、分析カートリッジ)中で、単一の検体に対してかかる診断機能を単独でまたは組み合わせて同時に実施することが可能である。本発明のシステムおよび方法は、(例えば、尿路感染、血液感染および呼吸器感染についての)異なる型の診断試験を実施する複数のかかるデバイスが、単一の機器上で同時に処理され得るように、ランダムアクセス処理の性能を含む。このように、本明細書に記載される機器およびカートリッジは、かかる機能性を提供し、デバイス内で検体を処理するためにしかるべくマニピュレートされ得る。
【0209】
ASTカートリッジは、アッセイのために必要な試薬を予めロードした一連の相互接続された区画を含み得る。ユーザーは、所望のアッセイおよび検体の型に基づいて、患者からの検体をカートリッジに直接的に添加し、次いで、自動的処理のためにカートリッジを機器中にロードする必要があるだけである。機器は、ユーザー入力を介して、またはカートリッジ自体を読み取ること(例えば、その上のコードをスキャンすること)を介して、実行されるアッセイの型を同定することができる。本明細書に記載される機器は、異なるアッセイのために必要とされ得る種々のステップを実施するための種々のステーションを含み得、アッセイステップのパフォーマンスのために必要に応じて、複数のインプロセスカートリッジを格納し、ステーション間でそれらを移動させるためのカルーセルまたは他の機構を含み得る。
【0210】
カートリッジは、所望のアッセイのステップを実施するために必要に応じて、その中の異なる区画を接続するための種々のバルブおよびチャネルを含み得る。例えば、ASTアッセイのためのカートリッジは、成長培地および分析される異なる抗微生物薬を予めロードした一連の成長リザーバーを含み得る。カートリッジは、その中で成長後検体を処理し標的を標識するための区画、ならびに標識された標的をイメージングするための窓を提供するイメージングウェルもまた含み得る。機器は、種々のアッセイのために必要に応じて、異なる区画を接続し、それらの間で検体体積を動かすために、カートリッジ中でのバルブおよび圧力の外部マニピュレーションを可能にするために、カートリッジとインターフェース接続する流体工学モジュールを含み得る。
【0211】
図1は、本発明の種々のシステムおよび方法において使用されるカートリッジ101を示す。試験カートリッジ101は、検体を受け入れるための検体ウェル103、分割ウェル105、試薬ウェル109、イメージングウェル111、およびウェル間で検体を動かすためのチャネル113、ならびにその動きを制御するスライディングバルブ107を含む。カートリッジ101は、特異的アッセイのための試薬を含み得る。例えば、試薬ウェル109中に、カートリッジは、標的特異的プローブ、透過処理試薬または他の材料を含み得、それらは、ビーズ141(例えば、凍結乾燥されたビーズ)中に含まれて提供され得る。
【0212】
示されるように、カートリッジは、互いに平行な複数の対になったイメージングウェル/インキュベーションウェルセットを含み得る。ここで、カートリッジ101は、8個の平行な「チャネル」を含むように示され、各チャネルは、分割ウェル105、試薬ウェル109およびイメージングウェル111を含む。カートリッジの実施形態は、2集団の8個チャネルを含み得(さらなる8個のチャネルが、8個の目に見えるチャネルの後ろにある)、1つのカートリッジ全体で16個のチャネルになる。カートリッジは、その寸法、例えば、高さh、長さlおよび幅w(ここで、wは、hおよびlに対して直角に測定される)に従って記載され得る。高さhは、約3cmと約10cmとの間であり得る。長さlは、約5cmと約12cmとの間であり得る。幅wは、約0.5cmと約3cmとの間であり得る。例えば、一実施形態では、hは約6cmであり、lは約8cmであり、wは約2cmである。
【0213】
カートリッジ101は、好ましくは、ユーザーがカートリッジ中に検体をピペッティングすることができる検体ウェル103を含む。ある特定の実施形態では、カートリッジ101は、それを通るチャネルを有するガスケットを含むスライディングバルブ107を含む。スライディングバルブ107が第1の位置に位置決めされる場合、検体ウェル103は、少なくとも第1の分割ウェル105と流体連通する。スライディングバルブ107が第2の位置にある場合、検体ウェル103、第1の分割ウェル105および第1の試薬ウェル109は全て、互いから密封される。スライディングバルブ107が第3の位置にある場合、第1の分割ウェル105および第1の試薬ウェル109は、互いに流体連通する。
【0214】
カートリッジ101は、検体ウェル103からの検体を分割ウェル105中に分割し(したがって、「分割」)、分割ウェル105からの液体を対応する試薬ウェル109中に引き続いて渡すために、そこからの空気圧を受け入れるように外部機器に連結するためのフィッティングを含み得る。イメージングウェル111は、好ましくは、色素クッション115および透明窓(例えば、カートリッジ101の底部の)を含む。
【0215】
色素クッション115は、イメージングウェル111の底部にある材料である。検体の部分がイメージングウェル111中に移動されると、これは液体検体層を形成し、色素クッション115は、液体検体層の基礎をなす。色素クッションは、好ましくは、粒子の遊走に抵抗し(例えば、密度媒体、ゲルなど)、光の通過を阻害する(例えば、顔料または色素を含むことを介して)材料である。色素クッション115に起因して、プローブは、磁気ビーズにも結合した標的に結合した場合にのみ、検出ゾーンに引き寄せられる。色素クッション115は、(液体検体層の根底にあるクッション層として存在するので)検出ゾーンを提供する窓から未結合の材料を排除し、未結合のシグナル伝達部分からの光が検出ゾーンに達しないように阻害する(色素クッション層は色素を含み、透明ではないため)。
【0216】
カートリッジ101は、空気圧ポート117を介して、機器の流体工学モジュールとインターフェース接続することができる。スライディングバルブ107は、接続を開放および閉鎖することによって、分割ウェル105と試薬ウェル109との間での流体の動きを制御することができる。スライディングバルブ107は、例えば、AST分析のためのゼロ成長参照を提供するために、または標的細胞もしくは微生物の存在を同定することに焦点を当てているがAST分析とは関連しない適用において、検体の1つまたは複数の部分が、分割ウェル105を迂回し、試薬ウェル109およびイメージングウェル111に直接的に進むことを可能にし得る。スライディングバルブ107は、機器201の流体工学モジュールによってマニピュレートされ得る。好ましい実施形態では、カートリッジ101は、希釈剤リザーバー121およびボタン127を含む。ボタンを(例えば、操作者が手動で、または本開示の機器内で機械的に)押すことで、希釈剤リザーバー121中に予めロードされた希釈剤(例えば、食塩水)を分割ウェル105中に分配する。本発明の他の実施形態では、バルブ107は、AST分析のためのゼロ成長参照またはベースラインを提供するために、1つまたは複数の部分が、分配ウェル105を迂回し、1つまたは複数の試薬ウェル109およびイメージングウェル111に直接的に進むことを可能にするようにも構成され得る。分配ウェル105には、成長培地および/または1つもしくは複数の抗微生物剤が予め充填され得る。バルブ107は、分配ウェル105中に、任意の期間にわたって種々の抗微生物剤の存在下でインキュベートされる検体部分を保持することができる。
【0217】
図2は、カートリッジ101を使用して微生物同定および抗生物質感受性試験(AST)を実施するための機器201(例えば、分析器)を示す。機器201は、検体の標的細胞同定およびAST分析を実施するためにカートリッジ101とインタラクトするために使用され得る。持ち上げ開放型ローディングドア202は、ローディングトレイへのアクセスを提供するために含められ得る。
【0218】
機器201は、プロンプト、結果、報告を表示し、コマンドを受け取るための少なくとも1つのユーザーインターフェース203(例えば、タッチスクリーン)を含む。機器601は、異なる機能的エリアおよびサブシステムを含み得る。区画は、分析カートリッジを輸送およびインキュベートするためのカルーセル205、処理およびインキュベーション装置を収納する上部区画207、ならびにエレクトロニクス、イメージングおよび空気圧装置を収納する下部区画209を含み得る。本開示の機器201および方法は、ウイルス、細菌、真菌、寄生生物、ヒト細胞、動物細胞、植物細胞を含む種々の標的細胞または微生物を同定および定量化するために使用され得る。成長培地および抗微生物剤を標的細胞または微生物に合わせることによって、AST分析は、種々の標的細胞に対して実施され得る。
【0219】
図3は、機器201の例示的な上面図である。機器201は、複数の分析カートリッジ101を受容および分類するための入力機構303、例えば、ローディングトレイを含み得る。
【0220】
機器201は、機器201内でカートリッジ101を受容し、動かし、マニピュレートするために、カルーセル205および機械的コンベアアーム307を含み得る。機器201は、タスクスケジューラもまた含み得る。機器201は、好ましくは、分析カートリッジのマニピュレーション、微生物同定およびAST分析のパフォーマンス、ならびに結果の生成を自動化するために、コンピューターによって制御される。機器201は、本発明の方法を実施するための複数のサブシステムを含み得る。
【0221】
機器201のサブシステムには、空気圧サブシステム309、磁気サブシステム311、イメージングサブシステム313および廃棄物サブシステム315が含まれ得る。磁気サブシステム311は、例えば、イメージングのために分析カートリッジの検出表面上に磁気粒子と標的との複合体を沈着させるために磁場を提供する永久磁石または電磁石を含み得る。イメージングサブシステム313は、例えば、上で論じたような米国特許第9,643,180号および同第8,021,848号に記載されるもの、ならびに機器201のイメージングモジュールに対して分析カートリッジ101の検出表面をマニピュレートするためのステージであり得る。イメージングサブシステム313は、イメージ処理、分析を提供し、性能を表示するように、コンピューターと動作可能に関連し得る。空気圧サブシステム309は、例えば、空気圧または真空によって提供される機能性を使用するスライディングバルブ107(例えば、プランジャーおよびアクチュエータ)のマニピュレーションを介して、分析カートリッジ101内での検体および試薬の動きを駆動するように動作可能であり得る。一部の実施形態では、水力学的または機械的手段もまた、検体の動きを生じさせるために、空気圧サブシステム309中に取り込まれ得る。廃棄物サブシステム315は、使用後のカートリッジ101の処分のためのレセプタクル(例えば、除去可能なビン)を含み得る。
【0222】
機器201は、成長のためのインキュベーションおよび/またはアッセイインキュベーションの間に分析カートリッジを保持(または格納)するための1つまたは複数のインキュベーションエリアもまた含み得る。インキュベーションエリアは、標的細胞または微生物の成長のための所望の温度(例えば、35℃)でインキュベーションエリアを維持するため、またはアッセイインキュベーションを実施するための、加熱および/または冷却要素ならびにその要素を制御するサーモスタットを含み得る。
【0223】
一部の実施形態では、機械的コンベアアーム307は、機器201内の種々のサブシステムの中で、分析カートリッジ101をマニピュレートするように動作可能であり得る。本発明の一部の実施形態では、機械的コンベアアーム307は、機器のカルーセル205と種々のサブシステムとの間で、分析カートリッジ101の各々を移動させる。機械的コンベアアーム307は、カルーセル205の方へおよびそこから離れて分析カートリッジ101を移動させるために、押す力を印加する。カルーセル205は、もう1つのサブシステムに隣接して分析カートリッジ101を位置決めするように回転し、次いで、機械的コンベアアーム307は、分析カートリッジ101をサブシステム上にスライドさせる力を印加し得る。分析カートリッジ101は、好ましくは、例えば、機器201内で、絞る力または圧縮力によってつかむことは決してない。機器201内で分析カートリッジ101をスライドさせるまたは押すことで、破片への曝露を低減させる。機器内の種々のステーションまたはサブシステムならびにカルーセル205は、カートリッジ101を受容し、カルーセル205と種々のステーションとの間でそれがスライドされるときにカートリッジ101をガイドするようなサイズにされたスロット317を含み得る。カルーセル205の回転は、機械的コンベアアーム307によってカートリッジ101がそれに沿ってスライドされ得るガイドまたはトラックが形成されるように、その上のスロット317を、ステーション上の対応するスロットと整列させるように機能する。
【0224】
一部の実施形態では、機器201は、分析カートリッジ101を管理するためのタスクスケジューラを含む。タスクスケジューラは、複数のサブシステムの中での分析カートリッジ101の各々の輸送および移動などの動きを制御するように動作可能である。一部の実施形態では、各分析カートリッジ101がサブシステム中で費やす時間もまた、タスクスケジューラによって管理され得る。タスクスケジューラは、分析カートリッジ101の各々の分析のために必要に応じて、種々のサブシステム上での時間を取っておくことができる。本発明の一部の実施形態では、タスクスケジューラは、カートリッジの内容を同定することによって、分析カートリッジ101の動き(即ち、実施される分析のステップ/パラメーター)を管理することができる。スケジューラは、有形の非一時的なメモリ上に記憶され、プロセッサーによって操作されるソフトウェアを含み得る。プロセッサーは、例えば、カルーセルおよび機械的コンベアアーム機構を操作するため、ならびにイメージングデバイスを制御し、イメージングサブシステムまたはステーションから受け取られた際にイメージをメモリ中に記録するために、機器201ならびにその上の種々のモーターおよびサブシステムまたはステーション内にあり得るならびに/またはそれと通信し得る。プロセッサーおよびメモリは、入力/出力デバイス203、例えば、モニター、キーボード、マウスまたはタッチスクリーンもまた含み得るコンピューターを構成することができる。
【0225】
一部の実施形態では、機器201は、分析カートリッジ101上に場所決めされた識別子(例えば、バーコード)を分析するように動作可能なリーダーもまた含み得る。分析カートリッジ101の内容および必要な処理は、分析カートリッジ101上の識別子と関連し得る。分析カートリッジ101の各々は、機器201によって読み取り可能な識別子を含み得る。機器201は、リーダーを介して識別子を読み取ることができ、その識別子を、タスクスケジューラを実行するための特定のセットの指示と関連付けることができる。
【0226】
識別子の読み取りの際に、コンピュータープロセッサーは、その識別子と関連するアッセイ(例えば、E.coliについてのAST分析)にアクセスすることができる。次いで、プロセッサーは、アッセイの必要なステップを実施するためのスケジュールを決定することができ、開始の際に、各ステーションまたはサブシステムが必要とされる時点およびアッセイを完了するためにどのくらいの時間がかかるかを決定することができる。プロセッサーは、そのメモリから、機器中で現在実行中の他のカートリッジのスケジュールにアクセスすることができ、必要な時点における種々のステーションの利用可能性を比較することができる。ある特定のステップ(例えば、インキュベーション)は融通が利き得、スケジュールは、他のカートリッジ上での他のスケジューリングされた操作に適応するために変更され得る様々な長さを提供し得る。ある特定の時点において試験を開始することが、サブシステムまたはステーションのいずれかについて相容れない矛盾を生じる場合、機器は、カートリッジを拒絶し得、アッセイを矛盾なしに開始および実行するのに受容可能な後の時点をユーザーに通知し得る。ある特定の実施形態では、機器は、かかる矛盾を回避するために、2つまたはそれよりも多くの、サブシステムまたはステーションのいずれかを含み得る。例えば、高流量ステーション、例えば、流体工学モジュールは、機器の所望の能力に依存して、2つまたはそれよりも多くを含むことを保証し得る。
【0227】
機器201は、ユーザー入力を受け取り、結果、ステータスおよび他の情報を表示するためのユーザーインターフェース203を含む。機器201は、機器201内で所望のインキュベーションまたは反応温度を維持するために囲い込まれる。機器は、ユーザーが分析のためにカートリッジをロードすることができるローディングトレイ303へのアクセスを可能にするように開放状態であるアクセスドアを有する。機器201は、処理を開始するために内部ドアを開放し、カートリッジをカルーセル中にもたらす前に、ローディングトレイ303内のカートリッジ上の識別子を読み取ることができる。こうして、任意のエラーまたはスケジューリング矛盾が存在する場合、それらは、カートリッジを取り付ける前に対処され得る。ローディングトレイ303は、機器に対して設定された場所にカートリッジを位置決めして、識別子について、およびカートリッジに係合しそれをカルーセル中にもたらす機械的コンベアアーム機構について既知の場所を機器がスキャンするのを可能にする。カートリッジおよびローディングトレイは、詰まりまたはエラー、例えば、機器のスキャナから外れた場所を指し示す識別子を回避するために、1つの配向でのみトレイ中にカートリッジが挿入され得るように、非対称なフットプリントを含み得る。
【0228】
機器201およびカルーセル205は、カートリッジ101を使用する試験を実施するように動作する。機器201を使用すると、カートリッジ101は、差次的成長および種特異的検出に基づいて、多微生物検体から迅速な抗生物質感受性試験(AST)を実施するために有用である。ASTを決定するために有用な差次的成長は、分割ウェル105中での多くの標的細胞および微生物のほんの数時間にわたるインキュベーション後に観察され得る。種々の実施形態では、検体部分は、イメージングウェル中での処理およびイメージングの前に、約1時間、2時間、3時間、4時間、5時間、6時間、12時間または24時間未満にわたって、分割ウェル105中でインキュベートされ得る。成長培地および/または抗微生物剤は、検体中の分析される標的細胞または微生物に基づいて選択され得、カートリッジ101中に含まれ得る。例えば、同定された標的細胞または微生物の成長を支持することが公知の成長培地および同定された標的を処置するために一般に使用される治療剤または抗微生物剤が選択され得る。種々の実施形態では、カートリッジ101には、検体中の標的を同定した(例えば、患者の感染の供給源または特定のがん型を決定した)ユーザーが、標的微生物のAST分析または標的細胞の治療有効性分析のために適切な予め包装された試験デバイスを選択することができるように、ある特定の標的のための成長培地および治療剤が予めロードされ得る。
【0229】
適切なインキュベーション期間後、スライディングバルブ107は、インキュベートされた検体部分を分割ウェル105から試薬ウェル109へと移動させるためにマニピュレートされ得る。試薬ウェル109には、イメージングのために標的細胞または微生物を標識するための処理試薬が予め充填され得る。処理試薬は、保管のために凍結乾燥され得、流体検体部分および成長培地との接触の際に活性化され得る。例えば、試薬ウェル109は、種特異的な検出可能なプローブおよび微生物結合性磁気粒子を含み得る。検体部分が試薬ウェル109を通過する際に、微生物結合性磁気粒子は、存在する全ての微生物に結合するが、種特異的な検出可能なプローブは、(例えば、顕微鏡法による)検出のために目的の生物に結合する。
【0230】
一部の適用について、磁気粒子または他の検出可能な標識、例えば、アビジンコーティングされた磁気粒子およびSYBR-green色素は、非特異的であり得る。例えば、ビオチン標識された標的特異的抗体(即ち、標的特異的結合分子)は、特異的磁気選択のためにアビジン磁気粒子によって次いでタグ化される特定の細胞または微生物を標的化するために使用され得る。全ての細胞がSYBR-greenによって標識されるが、磁気的に分離された(即ち、ビオチンタグ化された)標的だけが、イメージングのために検出表面上に沈着する。
【0231】
機器201は、イメージングウェル111の底部上で、複合体を検出表面に引き寄せるために磁場を使用し得る。イメージングウェル111は、本明細書に記載されるイメージングウェル中の上部アッセイ層の下にある高密度不透明水性層を形成する色素クッションを含み得る。複合体化した磁気粒子は、下部色素クッション層を介して押し進められ、イメージングウェル111の検出表面上に沈着する。検出表面は、標識された標的細胞または微生物の光学検出を可能にするために透き通っていてもよい。処理および磁場によるプルダウンの後、カートリッジ101は、イメージングのためにイメージングステージ上に置かれ得る。標的特異的な蛍光オリゴヌクレオチドプローブは、蛍光標識のイメージングが標的細胞の定量化(例えば、検体中の標的細菌についての細胞計数)を提供するように、標的細胞を蛍光標識するために使用され得る。
【0232】
カートリッジ101は任意の数の成長または分割ウェルならびに対応する処理およびイメージングウェルを有し得るが、好ましくは、ゼロ成長参照検体、および少なくとも2個の別々の治療剤の差次的成長分析のために、少なくとも3個のウェルを有する。一部の実施形態では、試験デバイスは、少なくとも8個またはさらには16個のウェルを含む。
【0233】
種々の抗微生物剤の存在下での差次的成長後に各検体部分中に存在するいくつかの種特異的に標識された細胞を計数することによって、特定の種に対する各治療剤の効果が決定され得る。どの抗微生物剤が成長を最良に阻害したかを決定することによって、患者の感染を処置する有効な治療が決定され得る。
【0234】
抗微生物薬選択は、検体中の細菌または標的細胞が未知であり、多数のウェルおよび多量の検体が広範囲のランダム試験を可能にするために利用可能である場合には、ランダムであり得る。好ましくは、細菌または他の標的細胞は、既に同定されており、種々の抗微生物薬、例えば、同定された細菌を処置するために一般に使用される抗微生物薬は、しかるべく選択されている。各分割ウェルは、標的細胞成長に対する組み合わされた効果を評価するために、単一の抗微生物剤または抗微生物剤の独自の組合せを含み得る。異なる濃度の異なる抗微生物剤が、異なる分割ウェル中で検体部分またはアリコートと組み合わされ得、一部の分割ウェルは、結果を強化するために同一の抗微生物剤による処置を再現するために使用され得る。一部の分割ウェル中の検体部分またはアリコートは、阻害されていない成長を定量化するためおよび/または非抗微生物推論もしくは試薬不安定性のいずれかに起因する成長阻害を検出するために、抗微生物剤と組み合わされなくてもよい。
【0235】
図4は、カートリッジ101中への検体の部分の移動を示す。最初に、ローディングトレイ303は、機器201から離れて運ばれ得、ベンチトップ上にセットされ得る。カートリッジ101を使用するために、検体は、カートリッジ101の検体ウェル103中に置かれる。これは、検体収集デバイス、例えば、検体収集コンテナ、スワブなどからピペッティングすることによって実施され得る。次いで、カートリッジ101は、ローディングトレイ303中に置かれ得る。
【0236】
図5は、カートリッジ101の使用のための、機器201中へのローディングトレイ303のユーザーローディングを示す。好ましくは、カートリッジ101は、検体を分析するために機器201中にロードされる。カートリッジ101が機器中に置かれた後、空気圧または類似の力が、チャネル213を介して検体ウェル103からの検体を分割ウェル105中に分割するために使用され得る。
【0237】
検体は、検体の導入とインキュベーションとの間の任意の点で、カートリッジ101内で、ある量の成長培地と混合され得る。インキュベーション115ステップは、検体105中の標的細胞または微生物の測定可能な差次的成長を可能にするために、約30分間、1時間、2時間、3時間、4時間、5時間、6時間、12時間もしくは24時間またはそれよりも長い時間未満持続し得るが、好ましくは、約4時間である。
【0238】
インキュベーション115後、インキュベートされた部分117は、イメージング123のために、例えば、検体部分中の特定の標的細胞と複合体119を形成し得る磁気タグおよび検出可能な標識に曝露され得る。次いで、標識された標的121複合体は、部分中でイメージング123され得、イメージ125は、各部分中に存在する標識された標的121の量を定量化するために(手動でまたは計算デバイスによって)分析され得る。
【0239】
種々の抗微生物剤の存在下でインキュベートされた部分中の標的細胞または微生物の量を比較することによって、それらの薬剤のうちどれが成長を阻害したかを決定することができる。比較は、好ましくは、インキュベーションなしに元の検体から分割され、処理され、イメージングされた「時間ゼロ」成長参照部分からの標的細胞量を含む。
【0240】
本発明のシステムおよび方法を使用する試験のために企図される標的微生物および細胞には、ウイルス、細菌もしくは真菌細胞、またはヒト細胞、例えば、がん細胞もしくはβ細胞が含まれる。細菌標的の場合、例えば、検体は、種々の抗細菌剤の存在下でインキュベートされ得、検体中の標的細菌成長に対するこれらの薬剤の効果が、有効性を決定するために分析され得る。本明細書に記載されるシステムおよび方法は、がん細胞に対する化学療法剤の細胞傷害効果を測定するため、または検体中のウイルス負荷に対する種々の抗ウイルス剤の有効性を測定するために、等しく適用され得る。種々の標的細胞および微生物にわたって必要とされ得る唯一の変化は、標的特異的結合分子(例えば、細菌細胞表面特異的抗体、ウイルス特異的オリゴヌクレオチドプローブまたは細胞特異的色素)、試験されている処置(例えば、抗ウイルス薬、抗細菌剤またはがん治療)、インキュベーション時間、および一部の場合には、イメージ分析において分析されている特徴(例えば、CFU定量化、ウイルス負荷、または細胞数、形態もしくは機能)である。
【0241】
検体は、受け入れウェル103中に直接的に挿入され得る。空気圧ポート117は、検体をカートリッジ101内のウェルに分配するために圧力または真空を印加するために開放され得る。検体は、検体ウェル103から分割ウェル105へと最初に分配され得、インキュベーションの間にはスライディングバルブ107によってそこに保持され得、標識のために試薬ウェル109に、次いで、イメージングのためにイメージングウェル111に放出され得る。機器の流体工学モジュールは、特定のアッセイの要求に従って、検体および試薬分配と協調してバルブの動きを制御するために、カートリッジとインターフェース接続し得る。
【0242】
図6は、本発明の例示的な方法601を示す。方法601は、好ましくは、患者からの検体を得るステップを含む。検体には、患者からの身体検体、例えば、血液もしくはその部分(例えば、血漿もしくは血清)、尿、痰、脳脊髄液、糞便、創傷、またはヒト身体から得られた任意の他の検体が含まれ得る。ある特定の実施形態では、獣医学、環境、農業および食品検体が含まれるがこれらに限定されない、非医療的検体が試験され得る。検体は、事前の標的細胞精製を必要とすることなしに、カートリッジの収集管、ウェルまたはリザーバー中に直接的に送達607され得または導入され得る。例えば、患者からの直接的な尿検体は、コロニー精製、または試薬との前もっての混合、標的精製、検体の構成要素を除去するための処置、遠心分離、生化学的富化もしくは他の処置を含む検体調製を必要とすることなしに、分析カートリッジ中にピペッティングされ得る。いったん得られると、検体は、分析カートリッジ(例えば、デバイス)中に導入607される。検体は、生物学的残骸および他の材料を含み得る。方法601は、検体を、1つの種の微小生物のみに結合する標識、即ち、標的種に特異的な標識と共にインキュベート613するステップを含む。必要に応じて、透過処理剤が、検体中の細胞を透過処理625するために導入され得る。方法601は、未結合の標識から検体中の細胞を分離629するステップ、および細胞中で結合した標識を検出635して、検体中のその種の存在を示すステップをさらに含む。ある特定の実施形態では、標識は種特異的であり、細胞は一般に、未結合のプローブから分離されることに留意されたい。
【0243】
本開示は、一定の生理的温度で実施され得る蛍光in situハイブリダイゼーション(FISH)を実施するための試薬を予めロードしたカートリッジを提供する。本開示のカートリッジは、さもなくば目的の細胞を溶解させ得、タンパク質を変性させ得、異なる細胞もしくは生物の相対的差次的成長速度に過度に影響を与え得、または検体分析プロトコールの化学的構成成分およびプロセスステップに対して有害効果をさもなくば有し得る極度の熱に検体を供する必要なしに、検体内の細胞および生物の遺伝子内容をプローブおよび検出するために使用され得る。一定の生理的温度でFISHを実施することができることの1つの重要な特性は、生理的温度で最適な他の生物学的アッセイを実施するために同時に使用される他のカートリッジが機器上にロードされたままで、1つのカートリッジ内で検体が蛍光プローブおよびイメージングされ得ることである。本開示のカートリッジは、生理的温度でFISHを使用して微生物同定または抗生物質感受性試験を実施するためのハードウェア、ツーリングおよび試薬を全て含む。試験ステップの一部が、目的の生物の成長を促進するためにインキュベーションを含む場合、生理的温度を顕著に上回って加熱することなしに同じカートリッジの他のウェル内で蛍光プローブハイブリダイゼーションを同時に実施する能力は、時系列的に重複するまたは同時でさえあることを含む、それら自体の時間およびペースで複数のステップが全て進行するのを可能にする。さらに、蛍光プローブハイブリダイゼーションが、分析機器内にロードされそこで操作されるカートリッジ内のウェル内で実施される場合、機器は、機器内で一定の温度を維持しつつ、複数の異なるカートリッジを異なる試験ステップへとルーティングおよびスケジューリングして、カートリッジを多重化することができる。
【0244】
本開示の好ましい実施形態は、生理的温度で動作する蛍光プローブハイブリダイゼーションプロトコールを実施するための試薬がロードされたカートリッジを提供する。一般に、生理的温度は、動物などの生物の体温を指す。本明細書に開示されるプロセスステップ、分子種および化学的試薬は、細胞を溶解させることなしに生理的温度で、蛍光プローブを細胞内の核酸にはハイブリダイズさせるため、およびそれらのプローブをイメージングするために有用である。検体が曝露されステップが実施される温度に関して、融通性が存在する。本開示の方法は、ゆらぎはするが45℃を超えない温度で有用に実施され得、さらには40℃を超えない温度で稼働し得る。本開示の方法および組成物は、例えば、36~39℃の範囲内の温度で使用される場合、有用かつ機能的である。実際、本開示の方法は、本質的にヒト体温、または約ヒト体温、即ち、健康なヒトについては約37℃、発熱したヒトについては38℃、または一部の夜間ヒト温度ゆらぎパターンについては36℃で温度を維持する機器上で実行され得る。「約」と言うことは、小数点以内などであることを意味することである。即ち、36.3は約36.5であり、37.7は約37.5とみなす。重要なことは、本明細書に開示されるFISHプロトコールが、身体の、例えば、哺乳動物の、好ましくはヒトの約生理的温度で全面的に実施され得ることを理解することである。
【0245】
これらの方法によって許容される温度範囲の1つの利点は、臨床的検体中の微小生物が、in vivo条件に近似する温度条件下で研究され得、そうして、別の生物の出現を抑制しつつ、さもなければ臨床的に顕著ではなかった1つの生物の差次的成長を熱が促進する影響を回避することである。例えば、根底にある主な刺激物がProteus mirabilisである尿路感染に人が罹患しており、尿検体を加熱することを含む臨床試験が実施される場合、Streptococcus agalactiaeのさもなくばほんのわずかであった数の細胞の成長を熱が促進する場合には、その臨床試験は、臨床医に適切な処置を指図しない。その試験は、処置される必要がある微小生物を誤同定する。かかる結末を回避するために、本開示は、一定の生理的温度でFISHを実施することを可能にする組成物、デバイスおよび方法を提供し、この組成物、デバイスおよび方法は、微小生物を同定する際に特定の有用性を有する。
【0246】
図7は、方法601のステップがどのように進行するかを示す。検体は、細胞701と、細胞701中の1つまたは複数の標的細胞723との混合物を含み得る。細胞は、プローブ707と共にインキュベートされる。好ましくは、透過処理剤が、標的細胞723を含む細胞701を透過処理625して、標識をその中に拡散させるために使用される。好ましい実施形態では、標識707は、標的細胞723内の核酸715標的に特異的に結合する。細胞は、標識から分離629され、細胞を含む部分は、標識を検出635するために試験される。本明細書で論じられるように、標識は、好ましくは、プローブ、例えば、蛍光標識されたオリゴヌクレオチド(例えば、約10~18塩基長)である。細胞は、細胞701に結合する磁気粒子を使用し、未結合のプローブをあとに残す密度媒体を介して磁場Bを使用して細胞を引き寄せることによって、未結合のプローブ707から分離629され得る。検出625は、分離された細胞を(例えば、顕微鏡を用いて)イメージングすることによって実施され得る。細胞は、密度媒体内または密度媒体下でイメージングされ得、色素クッションとも呼ばれる密度媒体は、イメージ中の任意の光スポットが、そこの標的核酸715にハイブリダイズした蛍光標識されたオリゴヌクレオチドプローブを有する標的細胞723の存在を示すように、未結合のプローブからの光がイメージングデバイスに達しないように防止する色素または顔料をさらに含み得る。
【0247】
図8は、本明細書の方法に従う、細胞701を透過処理625するために使用される透過処理剤801を示す。示された実施形態では、薬剤801は、3-([3-コラミドプロピル]ジメチルアンモニオ)-2-ヒドロキシ-1-プロパンスルホネート(Millipore Sigma、St.Louis、MOによってCHAPSOの名称の下で販売される)とスルホベタイン3-12(B-Biosciences、St.Louis、MOからSB3-12として入手可能)との混合物を含む。これらの界面活性剤は、細胞701を透過処理625して、微生物標的核酸715に結合するようにプローブ707を進入させる。任意の適切なプローブが、本明細書の方法で使用され得る。インキュベートするステップは、細胞を、細胞を透過処理する試薬に曝露させるステップを含み得、そうして、標識を細胞に進入させ、その中の標的に結合させる。
【0248】
細胞701を含む検体が試薬ウェル109中に送達されると、透過処理剤801は、微生物(例えば、標的細胞723)中へのプローブ707の進入を促進するが、検体は、約40℃を下回る温度で維持される。プローブ707は、特定の細菌種のリボソームRNAのセグメントに相補的な蛍光標識されたオリゴヌクレオチド901を含み得る。好ましくは、透過処理剤801は、1つまたは複数の界面活性剤(例えば、CHAPSO、SB3-12、TRITON(登録商標) X100)を含む。
【0249】
示されるように、プローブ707および透過処理剤801は、インキュベーションウェル中への検体の送達によって再水和および溶解される凍結乾燥されたビーズ141で提供される。
【0250】
したがって、方法は、種特異的標識(例えば、標的細胞中のRNAに相補的な蛍光標識されたオリゴヌクレオチド)を検体中に導入するステップ、薬剤(例えば、界面活性剤、例えば、3-([3-コラミドプロピル]ジメチルアンモニオ)-2-ヒドロキシ-1-プロパンスルホネート(CHAPSOとしても公知);スルホベタイン3-12(sb3-12としても公知);ポリエチレングリコールp-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)-フェニルエーテル(TRITON(登録商標) X100としても公知);ノニルフェノキシポリエトキシルエタノール(NP-40としても公知);その他;またはそれらの一部の組合せ)を使用して細胞を必要に応じて透過処理するステップ;未結合の標識を検体中の細胞から分離するステップ;および細胞をイメージングして標識を検出するステップ、を含む。方法は、微生物を含む検体、例えば、臨床的検体を(例えば、UTIの原因因子について試験するためまたはそれを検出するために)試験するために有用である。本開示に従って実施される場合、方法は、任意の所望の温度、例えば、可変のまたは一定の生理的温度であり得るFISHを提供する。
【0251】
蛍光in situハイブリダイゼーションは、遺伝子マッピングおよび染色体異常の診断などの適用のために提唱されてきた。Nature Methods 2(3):237 (2005)を参照のこと。これらのプロトコールには、変性された染色体DNAへの、ビオチンまたはジゴキシゲニンで標識されたプローブのハイブリダイゼーション、および蛍光色素コンジュゲートされた試薬を使用したプローブの検出が関与する。一般に、これらのプロトコールは、プローブ自体および標的DNAが、プローブハイブリダイゼーション、インキュベーションおよび可視化の前に70~80℃で別々に変性される、変性させるステップを必要とする。本開示の方法は、加熱するステップを必要とせず、検体の任意の部分または試薬が約70℃に、またはさらには40℃を上回るまで加熱されることを必要としない。本開示の方法のために可能な温度範囲を提供する1つの重要な特性には、プローブ707を細胞701中に送達するための、透過処理剤(熱ではなく)の使用が関与する。
【0252】
本明細書の方法での使用に適切なプローブには、DNA、RNA、ペプチド核酸、改変塩基、コンフォメーション拘束された核酸、またはそれらの組合せを含む核酸プローブが含まれ得る。適切なプローブには、抗体または抗原、結合分子、例えば、マンノース結合性レクチンもしくは他のコレクチンが含まれ得る。分子的または化学的構造および組成物、例えば、ポリエチレングリコール、色素、染料、インターカレート色素、クリスタルバイオレット、サフラニン/カルボールフクシン、または標的に特異的に結合し得る任意の他の組成物もしくは構造。好ましい実施形態では、プローブ707は、オリゴヌクレオチドを含む。
【0253】
図9は、好ましい実施形態に従うプローブ707を示す。好ましい実施形態では、プローブ707は、約8塩基長と22塩基長との間、好ましくは、約10塩基長と22塩基長との間の長さを有するオリゴヌクレオチド901を含む。プローブは、好ましくは、2’ヒドロキシル基の自由電子による求核攻撃によって触媒される自己触媒を回避するために、DNA塩基を含む(RNA塩基が必要に応じて使用され得るまたは含まれ得るが)。プローブは、好ましくは、約45℃、例えば、40と50との間の融解温度を有する。各オリゴヌクレオチド901は、好ましくは、少なくとも1つのフルオロフォア403で標識される。好ましい実施形態では、各オリゴヌクレオチド901は、1つ~数個のコンフォメーション拘束されたヌクレオチド905(ロックト核酸または架橋核酸と種々に呼ばれる場合がある)もまた含む。したがって、プローブ707は、必要に応じたコンフォメーション拘束された核酸905を有する蛍光標識されたDNAオリゴ901を含み、より好ましくは、必要に応じて第2のヘルパープローブ913と共に、少なくとも1つのヘルパープローブ907も同様に含む。
【0254】
ある特定の実施形態では、標識またはプローブ707は、微生物RNAに相補的なプローブオリゴヌクレオチド901を含む。微生物リボソームRNAに相補的なプローブオリゴ901について、オリゴ901は、好ましくは、10ntと18ntとの間の長さを一般に有する。Tmは、およそ45℃である。これらは、rRNAの構造に注目することによって設計される。ヘルパープローブは、リボソーム構造を破壊する。rRNAを標的化する1つの理由は、コピー数が非常に高いからである。細胞1つ当たり数千コピーが存在するので、事実上のシグナル増幅が得られる。したがって、方法101の好ましい実施形態は、1つまたは複数の界面活性剤(例えば、CHAPSOおよびSB3-12のうち1つまたは複数)を含む試薬を使用し、微生物リボソームRNAを標的化するプローブオリゴヌクレオチドを使用する。具体的には、プローブは、目的の標的種にしかないリボソームRNAのセグメントに相補的な蛍光標識されたプローブオリゴヌクレオチドである。好ましくは、蛍光標識されたプローブオリゴヌクレオチドは、10塩基長と18塩基長との間であり、少なくとも1つのコンフォメーション拘束された核酸を含む。また好ましくは、プローブオリゴ901は、少なくとも1つのヘルパープローブ907および必要に応じて第2のヘルパープローブ913と共に提供される。
【0255】
図10は、小サブユニットリボソームリボ核酸(ssrRNA)215、具体的には、E.coli16s rRNAの二次構造を示す。他の細菌は、E.coliと正確に同じ16S rRNAを有さないものの、リボソームの二次構造は高度に保存されており(Woese & Fox, 1977を参照のこと)、したがって、示されたらせんのほとんどは、他の細菌において、容易に同定可能なホモログを有する。16S rRNA内の好ましい標的には、h44;h27;h16;h17;h18;h25;h27;h9;h10;h13;h23;h19;およびh43が含まれる。参照によって取り込まれるFuchs, 2000, Unlabeled helper oligonucleotides increase the in situ accessibility to 16S rRNA of fluorescently labeled oligonucleotide probes, Appl Environ Microbiol 66(8):3603-7を参照のこと。暫定的プローブ設計を決めたら、オンラインツール、例えば、German network for bioinformatics infrastructureによってサポートされるウェブサイトとして利用可能なSILVA、「high quality ribosomal RNA databases」を使用して、特異性および包括性を試験することができる。共に参照によって取り込まれるPruesse, 2007, SILVA: a comprehensive online resource for quality checked and aligned ribosomal RNA sequence data compatible with ARB, Nucl Acids Res 35:7188-7196およびQuast, 2013, The SILVA ribosomal RNA gene database project: improved data processing and web-based tools, Nucl Acids Res 41 (D1):D590-D596を参照のこと。プローブオリゴ901は、好ましくは、少なくとも1つの架橋またはロックト核酸を含む。ヘルパープローブ907、913について、オリゴ901よりも低い特異性(SILVAツールを参照のこと)を有することが許容可能である。ヘルパープローブ907、913は、好ましくは、約20nt長であり得る。
【0256】
リボソームRNAの二次構造は、プローブ設計の原理ならびにヘルパープローブの設計および役割を示すために有益である。好ましくは、オリゴ901が微生物リボソームRNAのセグメントにハイブリダイズする場合、ヘルパープローブ907および任意の必要に応じた第2のヘルパープローブ913は、蛍光標識されたプローブオリゴヌクレオチドが結合するセグメントから1~30塩基以内の場所でリボソームRNAに結合するオリゴヌクレオチドである。例えば、ヘルパープローブは、ハイブリダイズしたプローブオリゴ901のすぐ上流および下流で微生物リボソームRNAにハイブリダイズし得る。ヘルパープローブ907、913がない場合、標的部位のアクセス不能性が、16S rRNAとオリゴヌクレオチドプローブとのハイブリダイゼーションについての問題を提示し得る。本明細書では、プローブ標的部位に隣接して結合する未標識のオリゴヌクレオチド(ヘルパー907、913)が、弱いプローブハイブリダイゼーションシグナルを増加させるために使用される。ヘルパープローブは、蛍光シグナルを増強するために使用され得る。参照によって取り込まれるFuchs, 2000, Unlabeled helper oligonucleotides increase the in situ accessibility to 16S rRNA of fluorescently labeled oligonucleotide probes, Appl Environ Microbiol 66(8):3603-7を参照のこと。
【0257】
プローブ標的配列を選ぶ際の考慮事項には、FISHプローブの理論的特異性および包括性を決定すること、LNA塩基の場所を最適化すること、ならびに特異的プローブのためのヘルパープローブを設計することが含まれる。多くの病原体標的は、使用され得る特異的であることが示されているFISHプローブ(公開された通りの、または本開示の温度に適応するために短縮された)を既に有している。それらの多くは、rRNA標的化オリゴヌクレオチドプローブについてのオンライン情報源であるprobeBase中に見出される。共に参照によって取り込まれるLoy, 2007, probeBase--an online resource for rRNA-targeted oligonucleotide probes: new features 2007, Nucleic Acids Res 35: D800-D804およびLoy, 2003, probeBase--an online resource for rRNA-targeted oligonucleotide probes, Nucleic Acids Res 31:514-516を参照のこと。FISHは、通常、はるかに高い温度で実施され、したがって、これらの供給源からのプローブは、方法101のために短縮または改変される必要があり得ることに留意されたい。属を入力するためにオンラインツール「DECIPHER」を使用することもでき、その属に特異的な16S上の領域をDECIPHERツールに示唆させることもできる。参照によって取り込まれるWright, 2014, Automated Design of Probes for rRNA-Targeted Fluorescence In Situ Hybridization Reveals the Advantages of Using Dual Probes for Accurate Identification, Applied Env Microbiologyを参照のこと。
【0258】
オンラインツールから始める場合であれ、手動でプローブを設計する場合であれ、アラインメント(例えば、ClustalWによって作成された16S rRNAペアワイズ配列アラインメントに対するプローブ)を試験することおよび標的配列がマッチする(好ましくは、複数のマッチを有する)が、他の病原体はマッチしない領域を選択することは、有益であり得る。包括性(包括度)および特異性を試験することは、有益であり得る。Tmは、40℃を超えるべきである(本開示の方法は、35℃で動作するため)。より高い融解温度が好ましい場合があるが、どのくらい高い温度にできるかは、オフターゲット配列にどのくらい多くのミスマッチが存在するかに依存する。本開示に従うプローブオリゴは、40℃と60℃との間の融解温度を有する(例えば、2または3個のLNA塩基を有する、16S rRNA中のらせんh17に相補的な10~18nt長のDNAプローブの場合)。中央部のミスマッチは、末端部のミスマッチよりも識別力が高い。ミスマッチの強度の順序:(最もましなものから最も悪いものまで):G/T、G/G、A/G、A/A、T/T、A/C、T/C、C/C。好ましくは、よりアクセス可能なrRNAの領域を選ぶ。
【0259】
プローブ707は、特定の標的微生物を標識するために使用される。方法601の別の一部は、未結合のプローブから細胞701を分離629するステップを含む。任意の適切な方法または技術が、未結合のプローブから細胞701を分離629するために使用され得る。未結合のプローブから細胞701を分離するための適切な技術には、遠心分離、フローサイトメトリー、蛍光活性化細胞選別、カラム分離、1つもしくは複数のヌクレアーゼを介した未結合のプローブの消化、その他、またはそれらの組合せが含まれる。好ましい実施形態では、細胞701は、磁気粒子の使用によって、未結合のプローブ707から分離629される。例えば、インキュベーション613ステップは、細胞を、細胞の表面に結合する磁気粒子に曝露させるステップを含み得る。
【0260】
例えば、抗体、コラーゲン含有C型レクチン(lection)(コレクチン、例えば、マンノース結合性レクチンとしても公知)、または細菌細胞に結合する化学基に結合した磁気粒子を含む、細胞の表面に結合する任意の適切な磁気粒子が使用され得る。ある特定の好ましい実施形態では、磁気粒子は、好ましくは、PAAを含む。
【0261】
図11は、細菌細胞表面に結合する化学基1111を含む磁気粒子1105を示す。化学基1111には、例えば、ジエチルアミンエチルデンプン;デキストラン硫酸;ポリアスパラギン酸;ポリアクリル酸;ポリスチレンスルホネート;ポリジアリルジメチルアミン;またはそれらの組合せが含まれ得る。示されるように、磁気粒子1105は、ポリアスパラギン酸化学基1111を含む。この粒子は、chemicell GmbH(Berlin、Germany)によって、fluidMAG-PAAとして販売される。fluidMAG-PAA粒子は、細菌の表面に結合するポリアスパラギン酸である。細胞は、細菌細胞表面への化学基1111の結合を促進する化合物1121の存在下で、磁気粒子1105に曝露され得る。
【0262】
粒子1105を細胞701に効果的に結合させるために、細胞表面へのPAAの結合を促進する薬剤1121を含めることが有益であり得る。任意の適切な薬剤1121が、結合を促進するために含められ得る。例えば、一部の実施形態では、薬剤は、セトリミドとしても公知の、臭化セトリモニウム(CTAB)を含む異なる第4級アンモニウム塩の混合物を含む。セトリミドは、磁気捕捉のために細胞表面へのPAAの結合を促進し、グラム陽性生物での特定のトラブルを解決する。グラム陰性生物は、トラブルなしにfluidMAG-PAAに結合することが見出され得る。目的の標的微小生物がグラム陽性である場合、薬剤1121(例えば、セトリミド)を含めることが好ましい場合がある。したがって、方法601の好ましい実施形態では、標識は、その種にしかないリボソームRNA215に相補的な蛍光標識されたプローブオリゴヌクレオチド901を含み;インキュベート613するステップは、細胞を、細菌細胞701の表面に結合する磁気粒子1105に曝露させるステップも含み;分離629するステップは、磁場Bを細胞701に印加するステップを含む。
【0263】
図12は、印加された磁場Bを使用して密度勾配媒体1201を介して細胞701を引き寄せることによって未結合のプローブ700から分離629される、磁気粒子1105結合した細胞701を示す。分離629するステップが、色素クッション115にわたって磁気粒子1105結合した細胞701を分配するステップ、および磁場Bを使用して、結合した細胞701を、色素クッション115を介してイメージング表面1205上に引き寄せて、未結合のプローブ700を色素クッション115の表面上に残すステップ、を含み得るように、密度媒体1201は、描写された管またはイメージングウェル111(「色素クッション115」を提供するための色素を含み得る)内に供給され得る。次いで、検出635するステップは、イメージング表面1205を蛍光顕微鏡でイメージングするステップを含み得、全てのステップは、40℃を下回る温度で実施され得る。好ましくは、これらのステップは、約36℃と39℃との間の温度で実施される。したがって、示されるように、インキュベート613するステップは、細胞を、細菌細胞の表面に結合する磁気粒子1105に曝露させるステップを含み、分離629するステップは、磁場Bを使用して、結合した細胞を未結合の標識から離して引き寄せるステップを含む。好ましくは、分離629するステップは、色素クッション115の表面にわたって磁気粒子結合した細胞を分配するステップ、および磁場を使用して、結合した細胞を、色素クッション115を介してイメージング表面1205上に引き寄せて、未結合の標識を色素クッションの表面上に残すステップ、を含む。
【0264】
論じられるように、分離629の実施形態は、色素クッションを提供するための色素を含み得る密度勾配媒体1201を使用する。したがって、色素クッション115は、色素をさらに含む密度勾配媒体を含む材料である。
【0265】
色素クッション115は、例えば、未結合のプローブ700からの光を吸収する色素をさらに含む密度勾配媒体(例えば、検体への曝露の前に必要に応じて乾燥されたまたは凍結乾燥された、イオジキサノールまたはポリビニルピロリドンコーティングされたコロイドシリカ粒子の溶液)であり得る。クッションは、反応の未選択の構成要素を検出ゾーンから排除するための高密度材料を含み得る。クッションは、反応構成要素よりも一般に高密度の層(液体、または乾燥されたもしくは凍結乾燥された)である。クッションは、例えば、スクロース、ジアトリゾエート、イオジキサノール(OptiPrepとしても公知)、NaCl、CsCl、Percollまたはアルブミンを含む種々の密度薬剤を単独でまたは組み合わせて(および種々の濃度で)含み得る。実施形態は、他の密度薬剤、例えば、他の一般に使用される密度薬剤、例えば、イオジキサノール、ジアトリゾ酸ナトリウム、ナトリウム、スクロース、および他の糖、オリゴ糖、合成ポリマー(例えば、Ficoll)、ならびに塩、例えば、塩化セシウム、臭化カリウムなどもまた取り込み得る。実施形態は、使用において、異なるシグナル伝達特徴および部分を一致させるために色素を使用し得る。例えば、色素Toluidine Blue Oが、蛍光標識Texas Red(スルホローダミン)と共に使用され得る。一実施形態は、アッセイウェル中にピペッティングされる、2mg/mL Chromotrope R2および10%v/v OptiPrep(イオジキサノールの60%w/v溶液)プラス5%w/vトレハロースである色素クッション試薬の65μLアリコートを使用する。色素クッションは、カートリッジ101のイメージングウェル111中に予めアリコート化された、15%OptiPrepおよび5mg/mL Chromotrope R2であり得る。
【0266】
イメージングウェル111に関して、色素クッション115は、任意の必要に応じた色素を含むイオジキサノールまたはポリビニルピロリドンの溶液を調製し、イメージングウェル111中で溶液を乾燥または凍結乾燥させて色素クッション915を形成することによって、形成され得る。次いで、色素クッション915は、本質的に固体になる(例えば、乾燥されて、例えば、イメージングウェル111は、使用まで、上下逆を含む任意の配向で保管され得る)。液体検体がイメージングウェル111中に送達されると、液体は、色素クッション115を再水和する。実際、方法601における使用に関して本明細書を通じて開示され論じられる試薬は、例えば、一定の生理的TでのFISHのためのプロトコールにおける後の使用のために、乾燥されたまたは凍結乾燥された形態で提供され得る。これは、試薬が調製され、カートリッジ上に乾燥状態でロードされることを可能にし、このカートリッジは次いで、出荷または保管され得、本開示の方法において後に使用され得る。
【0267】
好ましい実施形態では、カートリッジ101は、細菌細胞表面に結合する磁気粒子1105;およびイメージング表面1205を提供する透明壁に隣接する色素クッション115もまた含む。磁場が色素クッション115にわたって印加される場合、磁場は、色素クッションを介して透明壁へと磁気粒子1105を引き寄せる。好ましくは、磁気粒子1105(および結合を促進する任意の化合物621)もまた、凍結乾燥されたビーズ141中に含まれる。色素クッション115は、未結合のプローブ700からの光を吸収する色素をさらに含む密度勾配媒体1201の溶液を含む。示された実施形態では、色素クッション115および透明壁1205は、試薬ウェル109と流体連通したイメージングウェル111中に提供される。色素クッション115は、ゲルとして、または検体によって湿らされるまで、カートリッジ内のイメージングウェル中に乾燥されたもしくは凍結乾燥された状態で、提供され得る。
【0268】
好ましくは、凍結乾燥されたビーズ141中の磁気粒子1105は、細菌細胞表面に結合する化学基を含み、カートリッジは、細菌細胞表面への化学基の結合を促進する化合物をさらに含む。細胞表面への化学基の結合を促進する化合物は、セトリミドであり得、化学基は、例えば、ジエチルアミンエチルデンプン;デキストラン硫酸;ポリアスパラギン酸;ポリアクリル酸;ポリグルタミン酸;ポリスチレンスルホネート;またはポリジアリルジメチルアミンであり得る。
【0269】
プローブ707は、凍結乾燥されたビーズ141中に、特定の細菌種のリボソームRNA 215のセグメントに相補的な蛍光標識されたオリゴヌクレオチド901として提供され得、ビーズ141は、好ましくは、セグメントから1~30塩基以内の場所でリボソームRNAに結合する少なくとも1つのヘルパープローブオリゴヌクレオチドもまた含む。蛍光標識されたオリゴヌクレオチド901は、10塩基長と18塩基長との間であり得、例えば、一部の実施形態では一定の生理的温度であるFISHにおける使用のための少なくとも1つのコンフォメーション拘束された核酸を含む。
【0270】
試薬組成物、プローブ、ヘルパープローブおよび化合物は、カートリッジ101中への検体の送達によって再水和および溶解される凍結乾燥されたビーズ141として提供される。色素クッション115は、未結合のプローブからの光を吸収する色素をさらに含む密度勾配媒体1201を含む。色素クッション115は、検体によって湿らされるまで、カートリッジ内のイメージングウェル中に乾燥されたまたは凍結乾燥された状態で提供され得る。方法601およびカートリッジ101は、抗生物質感受性試験を実施するために使用され得る。
【0271】
図13は、生理的温度でのFISHが抗生物質感受性試験(AST)を実施するために使用されるワークフローを示す。検体は、カートリッジ101の検体ウェル103中にロードされる。分割ウェル105は、異なる抗生物質または異なる濃度の抗生物質のいずれかの、抗生物質を含む。1つの「チャネル」は、対照として、または成長のベースラインを確立するために、抗生物質を含まなくてもよい。カートリッジは、空気圧の供給源、ゲートスイッチ、および蛍光顕微鏡または類似のイメージング機器に接続される。ゲートスイッチは、スライディングバルブを第1の位置にスライドさせ、検体ウェル103は、分割ウェル105と流体連通する。空気圧は、フィッティングを介して印加され、検体は、分割ウェル間で分割される。本明細書で、検体は、分割ウェル105にわたって分配された複数の抗生物質と共にインキュベートされ得る。
【0272】
スライディングバルブ107は、第3の位置にスライドされ、ここで、分割ウェル105は、試薬ウェル109と流体連通する。空気圧が印加され、検体のアリコートは、分割ウェル105からそれぞれの試薬ウェル109に送達される。各試薬ウェル109において、検体アリコートは、微小生物の種の標的核酸に特異的なプローブならびに磁気粒子と共に、45℃を超えることなくインキュベートされる。スライディングバルブ107は、第2の位置にスライドされ、ここで、試薬ウェルは密封される。検体は、イメージングウェル111に送達され、磁場が、検体中のインタクトな細胞を未結合のプローブから分離するために印加される。これは、カートリッジを磁石上にスライドさせることによって実施され得る。場Bは、細胞をイメージング表面上に引き付ける。インタクトな細胞内の結合したプローブは、各アリコート検体内の種の成長を定量化するために検出される。成長またはその欠如は、どの抗生物質がどの分割ウェル105中に存在したかと、逆に相関付けられ得る。病原体成長が検出されない(例えば、蛍光顕微鏡法が蛍光を示さない)イメージングウェル111については、検体は、対応する分割ウェル105中に存在した抗生物質に対して感受性であることが示される。
【0273】
カートリッジ101の利点は、それらが、ステップを自動化するためにカートリッジ101とインタラクトする機器との使用に適している点である。
【0274】
検出可能な標識には、蛍光分子、放射性同位体、質量分析のための質量タグ、または化学発光分子が含まれ得る。検出可能な標識は、標的細胞または微生物に優先的に結合するために、標的特異的部分を含み得る。標的特異的結合分子には、例えば、標的特異的分子もしくは抗原に対する抗体、または標的特異的核酸配列に相補的なオリゴヌクレオチドもしくはポリヌクレオチドプローブが含まれ得る。好ましい実施形態では、微生物の検出可能な標識化は、蛍光in situハイブリダイゼーション(FISH)を構成する。FISH分析は、核酸(または核酸アナログ)プローブ部分を含む蛍光プローブおよび標的特異的核酸配列と再会合を介して結合するフルオロフォアプローブ部分を使用し、その結果、標的は、光学的に次いで検出され得る。例えば、標的特異的16S rRNAを標的化するプローブは、微小生物を選択的にタグ化し検出するために使用され得る。参照により本明細書に組み込まれるVolkhard, et al., 2000, Fluorescent In Situ Hybridization Allows Rapid Identification of Microorganisms in Blood Cultures, J Clin Microbiol., 38(2):830-838を参照のこと。同定アッセイについて、いくつかの別個の標的特異的蛍光プローブが、単一の検体中の複数の別個のカテゴリーの標的を独立して同定するために使用され得る。別個の蛍光プローブは、アッセイ再会合条件下で、蛍光プローブの核酸プローブ部分が、別個のカテゴリーの標的細胞または微生物についての標的特異的細胞核酸配列と優先的に再会合するように設計された、別個の核酸プローブ部分を含み得る。プローブ再会合の詳細な論述は、参照により本明細書に組み込まれる米国特許出願公開第20030228599号に見出すことができる。
【0275】
別個の蛍光プローブ上のフルオロフォアは、別個のフォトニックシグナルを有し得、その結果、アッセイにおける異なるカテゴリーの標的細胞または微生物についての蛍光シグナルは、それらの別個のフォトニックシグナルによって識別され得る。複数の別個のフォトニックシグナルを識別するためのイメージング方法は、当業者に公知である。例えば、複数のイメージは、別個のフルオロフォアの作用スペクトルに対応する励起および発光光学フィルターの別個の対を使用して獲得することができる。したがって、単一の検体部分は、単一の処理およびイメージングウェル中で、複数の特定の標的細胞または微生物の存在について試験され得る。
【0276】
ある特定の実施形態では、検体中の標的細胞または微生物の同定および/または定量化のためのFISH分析は、試薬交換なしに、細胞固定なしに、等温で実施され得、反応を開始することとイメージング結果を得ることとの間が約30分間またはそれ未満での自動的オンデバイス処理を可能にする。
【0277】
いくつかのカートリッジが、インキュベーションおよびFISH分析について同じ温度に維持され得、それによって、機器の内部について単一の温度のみを必要とし、異なる温度で維持した別々のインキュベーションチャンバーの必要を回避するように、本明細書に記載されるFISH分析は、一定の生理的温度で実施され得る。
【0278】
一般に、生理的温度は、動物などの生物の体温を指す。本明細書に開示されるプロセスステップ、分子種および化学的試薬は、細胞を溶解させることなしに生理的温度で、蛍光プローブを細胞内の核酸にハイブリダイズさせるため、およびそれらのプローブをイメージングするために有用である。検体が曝露されステップが実施される温度に関して、融通性が存在する。本開示の方法は、ゆらぎはするが45℃を超えない温度で有用に実施され得、さらには40℃を超えない温度で稼働し得る。本開示の方法および組成物は、例えば、36~39℃の範囲内の温度で使用される場合、有用かつ機能的である。実際、本開示の方法は、本質的にヒト体温、または約ヒト体温、即ち、健康なヒトについては約37℃、発熱したヒトについては38℃、または一部の夜間ヒト温度ゆらぎパターンについては36℃で温度を維持する機器上で実行され得る。「約」と言うことは、小数点以内などであることを意味することである。即ち、36.3は約36.5であり、37.7は約37.5とみなす。重要なことは、本明細書に開示されるFISHプロトコールが、身体の、例えば、哺乳動物の、好ましくはヒトの約生理的温度で全面的に実施され得ることを理解することである。
【0279】
これらの方法によって許容される温度範囲の1つの利点は、臨床的検体中の微小生物が、in vivo条件に近似する温度条件下で研究され得、そうして、別の生物の出現を抑制しつつ、さもなければ臨床的に顕著ではなかった1つの生物の差次的成長を熱が促進する影響を回避することである。例えば、根底にある主な刺激物がProteus mirabilisである尿路感染に人が罹患しており、尿検体を加熱することを含む臨床試験が実施される場合、Streptococcus agalactiaeのさもなくばほんのわずかであった数の細胞の成長を熱が促進する場合には、その臨床試験は、臨床医に適切な処置を指図しない。その試験は、処置される必要がある微小生物を誤同定する。かかる結末を回避するために、本開示は、一定の生理的温度で実施され得るFISHを実施するための組成物、デバイスおよび方法を提供し、この組成物、デバイスおよび方法は、微小生物を同定する際に特定の有用性を有する。
【0280】
種特異的標識(例えば、標的細胞中のRNAに相補的な蛍光標識されたオリゴヌクレオチド)は、検体中に導入され得、細胞は、薬剤(例えば、界面活性剤、例えば、3-([3-コラミドプロピル]ジメチルアンモニオ)-2-ヒドロキシ-1-プロパンスルホネート(CHAPSOとしても公知);スルホベタイン3-12(sb3-12としても公知);ポリエチレングリコールp-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)-フェニルエーテル(TRITON(登録商標) X100としても公知);ノニルフェノキシポリエトキシルエタノール(NP-40としても公知);その他;またはそれらの一部の組合せ)を使用して必要に応じて透過処理され得る。標識された種は、検体中の未結合の標識から分離され得;細胞は、標識を検出するためにイメージングされ得る。かかる方法は、微生物を含む検体、例えば、臨床的検体を(例えば、UTIの原因因子について試験するためまたはそれを検出するために)試験するために有用である。本開示に従って実施される場合、方法は、任意の可変の温度、例えば、一定の生理的温度で実施され得るFISHの実施を可能にする。
【0281】
蛍光in situハイブリダイゼーションは、遺伝子マッピングおよび染色体異常の診断などの適用のために提唱されてきた。Nature Methods 2(3):237 (2005)を参照のこと。これらのプロトコールには、変性された染色体DNAへの、ビオチンまたはジゴキシゲニンで標識されたプローブのハイブリダイゼーション、および蛍光色素コンジュゲートされた試薬を使用したプローブの検出が関与する。一般に、これらのプロトコールは、プローブ自体および標的DNAが、プローブハイブリダイゼーション、インキュベーションおよび可視化の前に70~80℃で別々に変性される、変性させるステップを必要とする。本開示の方法は、加熱するステップを必要とせず、検体の任意の部分または試薬が約70℃に、またはさらには40℃を上回るまで加熱されることを必要としない。本開示の方法のために可能な温度範囲を提供する1つの重要な特性には、プローブを細胞中に送達するための、透過処理剤(熱ではなく)の使用が関与する。
【0282】
透過処理剤は、3-([3-コラミドプロピル]ジメチル-アンモニオ)-2-ヒドロキシ-1-プロパンスルホネート(Millipore Sigma、St.Louis、MOによってCHAPSOの名称の下で販売される)とスルホベタイン3-12(B-Biosciences、St.Louis、MOからSB3-12として入手可能)との混合物を含み得る。これらの界面活性剤は、細胞を透過処理して、微生物標的核酸に結合するようにプローブを進入させる。任意の適切なプローブが、本明細書の方法で使用され得る。
【0283】
本明細書の方法での使用に適切なプローブには、DNA、RNA、ペプチド核酸、改変塩基、コンフォメーション拘束された核酸、またはそれらの組合せを含む核酸プローブが含まれ得る。適切なプローブには、抗体または抗原、結合分子、例えば、マンノース結合性レクチンもしくは他のコレクチンが含まれ得る。分子的または化学的構造および組成物、例えば、ポリエチレングリコール、色素、染料、インターカレート色素、クリスタルバイオレット、サフラニン/カルボールフクシン、または標的に特異的に結合し得る任意の他の組成物もしくは構造。好ましい実施形態では、プローブ707は、オリゴヌクレオチドを含む。
【0284】
プローブは、約8塩基長と22塩基長との間、好ましくは、約10塩基長と22塩基長との間の長さを有するオリゴヌクレオチドを含み得る。プローブは、好ましくは、2’ヒドロキシル基の自由電子による求核攻撃によって触媒される自己触媒を回避するために、DNA塩基を含む(RNA塩基が必要に応じて使用され得るまたは含まれ得るが)。プローブは、好ましくは、約45℃、例えば、40と50との間の融解温度を有する。各オリゴヌクレオチドは、好ましくは、少なくとも1つのフルオロフォアで標識される。好ましい実施形態では、各オリゴヌクレオチドは、1つ~数個のコンフォメーション拘束されたヌクレオチド(ロックト核酸または架橋核酸と種々に呼ばれる場合がある)もまた含む。したがって、プローブは、必要に応じたコンフォメーション拘束された核酸を有する蛍光標識されたDNAオリゴを含み、より好ましくは、必要に応じて第2のヘルパープローブと共に、少なくとも1つのヘルププローブも同様に含む。
【0285】
ある特定の実施形態では、標識またはプローブは、微生物RNAに相補的なプローブオリゴヌクレオチドを含む。微生物リボソームRNAに相補的なプローブオリゴについて、オリゴは、好ましくは、10ntと18ntとの間の長さを一般に有する。Tmは、およそ45℃である。ヘルパープローブは、リボソーム構造を破壊するために使用され得る。rRNAを標的化する1つの理由は、コピー数が、細菌細胞内のメッセンジャーおよびトランスファーRNAと比較して非常に高いからである。細胞1つ当たり数千コピーが存在するので、フルオロフォアなどのシグナル伝達分子をrRNA標的化プローブに連結させることで、単一細胞中の数千の標的による事実上のシグナル増幅が生じる。したがって、引き続く蛍光イメージングにおいて単一細胞を選び出すことは、標的細菌細胞中のかかる高濃度の標識によって得られるシグナルノイズ比を考慮すると、より容易である。したがって、方法の好ましい実施形態は、1つまたは複数の界面活性剤(例えば、CHAPSOおよびSB3-12のうち1つまたは複数)を含む試薬を使用し、微生物リボソームRNAを標的化するプローブオリゴヌクレオチドを使用する。具体的には、プローブは、目的の標的種にしかないリボソームRNAのセグメントに相補的な蛍光標識されたプローブオリゴヌクレオチドであり得る。好ましくは、蛍光標識されたプローブオリゴヌクレオチドは、10塩基長と18塩基長との間であり、少なくとも1つのコンフォメーション拘束された核酸を含む。また好ましくは、プローブオリゴは、少なくとも1つのヘルパープローブおよび必要に応じて第2のヘルパープローブと共に提供される。
【0286】
好ましくは、オリゴが微生物リボソームRNAのセグメントにハイブリダイズする場合、ヘルパープローブおよび任意の必要に応じた第2のヘルパープローブは、蛍光標識されたプローブオリゴヌクレオチドが結合するセグメントから1~30塩基以内の場所でリボソームRNAに結合するオリゴヌクレオチドである。例えば、ヘルパープローブは、ハイブリダイズしたプローブオリゴのすぐ上流および下流で微生物リボソームRNAにハイブリダイズし得る。ヘルパープローブがない場合、標的部位のアクセス不能性が、16S rRNAとオリゴヌクレオチドプローブとのハイブリダイゼーションについての問題を提示し得る。ある特定の実施形態では、プローブ標的部位に隣接して結合する未標識のオリゴヌクレオチドが、弱いプローブハイブリダイゼーションシグナルを増加させるために使用される。ヘルパープローブは、蛍光シグナルを増強するために使用され得る。参照によって取り込まれるFuchs, 2000, Unlabeled helper oligonucleotides increase the in situ accessibility to 16S rRNA of fluorescently labeled oligonucleotide probes, Appl Environ Microbiol 66(8):3603-7を参照のこと。プローブ標的配列を選ぶ際の考慮事項には、FISHプローブの理論的特異性および包括性を決定すること、LNA塩基の場所を最適化すること、ならびに特異的プローブのためのヘルパープローブを設計することが含まれる。多くの病原体標的は、使用され得る特異的であることが示されているFISHプローブ(公開された通りの、または本開示の温度に適応するために短縮された)を既に有している。それらの多くは、rRNA標的化オリゴヌクレオチドプローブについてのオンライン情報源であるprobeBase中に見出され得る。共に参照によって取り込まれるLoy, 2007, probeBase--an online resource for rRNA-targeted oligonucleotide probes: new features 2007, Nucleic Acids Res 35: D800-D804およびLoy, 2003, probeBase--an online resource for rRNA-targeted oligonucleotide probes, Nucleic Acids Res 31:514-516を参照のこと。従来のFISH反応は、通常、好ましい一定の生理的温度法において使用される温度よりもはるかに高い温度で実施されることに留意されたい。したがって、従来の供給源からのプローブは、本明細書に記載される方法における使用のために短縮または改変される必要があり得る。属を入力するためにオンラインツール「DECIPHER」を使用することもでき、その属に特異的な16S上の領域をDECIPHERツールに示唆させることもできる。参照によって取り込まれるWright, 2014, Automated Design of Probes for rRNA-Targeted Fluorescence In Situ Hybridization Reveals the Advantages of Using Dual Probes for Accurate Identification, Applied Env Microbiologyを参照のこと。オンラインツールから始める場合であれ、手動でプローブを設計する場合であれ、アラインメント(例えば、ClustalWによって作成された16S rRNAペアワイズ配列アラインメントに対するプローブ)を試験することおよび標的配列がマッチする(好ましくは、複数のマッチを有する)が、他の病原体はマッチしない領域を選択することは、有益であり得る。包括性(包括度)および特異性を試験することは、有益であり得る。Tmは、40℃を超えるべきである(本開示の方法は、35℃で動作するため)。より高い融解温度が好ましい場合があるが、どのくらい高い温度にできるかは、オフターゲット配列にどのくらい多くのミスマッチが存在するかに依存する。本開示に従うプローブオリゴは、40℃と60℃との間の融解温度を有する(例えば、2または3個のLNA塩基を有する、16S rRNA中のらせんh17に相補的な10~18nt長のDNAプローブの場合)。中央部のミスマッチは、末端部のミスマッチよりも識別力が高い。ミスマッチの強度の順序:(最もましなものから最も悪いものまで):G/T、G/G、A/G、A/A、T/T、A/C、T/C、C/C。好ましくは、よりアクセス可能なrRNAの領域を選ぶ。
【0287】
暫定的プローブ設計を決めたら、オンラインツール、例えば、German network for bioinformatics infrastructureによってサポートされるウェブサイトとして利用可能なSILVA、「high quality ribosomal RNA databases」を使用して、特異性および包括性を試験することができる。共に参照によって取り込まれるPruesse, 2007, SILVA: a comprehensive online resource for quality checked and aligned ribosomal RNA sequence data compatible with ARB, Nucl Acids Res 35:7188-7196およびQuast, 2013, The SILVA ribosomal RNA gene database project: improved data processing and web-based tools, Nucl Acids Res 41 (D1):D590-D596を参照のこと。プローブオリゴは、好ましくは、少なくとも1つの架橋またはロックト核酸を含む。ヘルパープローブについて、オリゴよりも低い特異性(SILVAツールを参照のこと)を有することが許容可能である。ヘルパープローブは、好ましくは、約20nt長であり得る。
【0288】
標的細胞が標識された後、本明細書に記載されるカートリッジおよび機器は、背景シグナルを低減させるために、イメージングのために未結合の標識から標識された細胞を分離するように動作可能である。任意の適切な方法または技術が、未結合のプローブから細胞を分離するために使用され得る。未結合のプローブから細胞を分離するための適切な技術には、遠心分離、フローサイトメトリー、蛍光活性化細胞選別、カラム分離、1つもしくは複数のヌクレアーゼを介した未結合のプローブの消化、その他、またはそれらの組合せが含まれる。これらの方法は閉鎖されたカートリッジ内で実施されるので、未結合の標識を除去するための従来の洗浄ステップは、実現困難である。好ましい実施形態では、細胞は、磁気粒子の使用によって、未結合のプローブから分離される。例えば、インキュベーションステップは、細胞を、細胞の表面に結合する磁気粒子に曝露させるステップを含み得る。
【0289】
磁気粒子は、細菌細胞表面に結合する化学基を含み得る。化学基には、例えば、ジエチルアミンエチルデンプン;デキストラン硫酸;ポリアスパラギン酸;ポリアクリル酸;ポリスチレンスルホネート;ポリジアリルジメチルアミン;またはそれらの組合せが含まれ得る。かかる粒子は、例えば、chemicell GmbH(Berlin、Germany)によって、fluidMAG-PAAとして販売される。fluidMAG-PAA粒子は、細菌の表面に結合するポリアスパラギン酸である。細胞は、細菌細胞表面への化学基の結合を促進する化合物の存在下で、磁気粒子に曝露され得る。
【0290】
粒子を細胞に効果的に結合させるために、細胞表面へのPAAの結合を促進する薬剤を含めることが有益であり得る。任意の適切な薬剤が、結合を促進するために含められ得る。例えば、一部の実施形態では、薬剤は、セトリミドとしても公知の、臭化セトリモニウム(CTAB)を含む異なる第4級アンモニウム塩の混合物を含む。セトリミドは、磁気捕捉のために細胞表面へのPAAの結合を促進し、グラム陽性生物での特定のトラブルを解決する。グラム陰性生物は、トラブルなしにfluidMAG-PAAに結合することが見出され得る。目的の標的微小生物がグラム陽性である場合、薬剤(例えば、セトリミド)を含めることが好ましい場合がある。したがって、方法の好ましい実施形態では、標識は、その種にしかないリボソームRNAに相補的な蛍光標識されたプローブオリゴヌクレオチドを含み;インキュベートするステップは、細胞を、細菌細胞の表面に結合する磁気粒子に曝露させるステップも含み;分離するステップは、磁場Bを細胞に印加するステップを含む。
【0291】
磁気粒子結合した細胞は、機器内の磁気サブシステムまたはステーションによって提供されるような印加された磁場を使用して密度勾配媒体を介して細胞を引き寄せることによって、未結合のプローブから分離され得る。分離するステップが、色素クッションにわたって磁気粒子結合した細胞を分配するステップ、および磁場を使用して、結合した細胞を、色素クッションを介してイメージングまたは検出表面上に引き寄せて、未結合のプローブを色素クッションの表面上に残すステップ、を含み得るように、密度媒体は、管またはウェル(「色素クッション」を提供するための色素を含み得る)内に供給され得る。次いで、検出するステップは、イメージング表面を蛍光顕微鏡でイメージングするステップを含み得、全てのステップは、40℃を下回る温度で実施され得る。好ましくは、これらのステップは、約36℃と39℃との間の温度で実施される。
【0292】
論じられるように、分離の実施形態は、色素クッションを提供するための色素を含み得る密度勾配媒体を使用する。したがって、色素クッションは、色素をさらに含む密度勾配媒体を含む材料である。
【0293】
色素クッションは、例えば、未結合のプローブからの光を吸収する色素をさらに含む密度勾配媒体(例えば、検体への曝露の前に必要に応じて乾燥されたまたは凍結乾燥された、イオジキサノールまたはポリビニルピロリドンコーティングされたコロイドシリカ粒子の溶液)であり得る。クッションは、反応の未選択の構成要素を検出ゾーンから排除するための高密度材料を含み得る。クッションは、反応構成要素よりも一般に高密度の層(液体、または乾燥されたもしくは凍結乾燥された)である。クッションは、例えば、スクロース、ジアトリゾエート、イオジキサノール(OptiPrepとしても公知)、NaCl、CsCl、Percollまたはアルブミンを含む種々の密度薬剤を単独でまたは組み合わせて(および種々の濃度で)含み得る。実施形態は、他の一般に使用される密度薬剤、例えば、イオジキサノール、ジアトリゾ酸ナトリウム、ナトリウム、スクロース、および他の糖、オリゴ糖、合成ポリマー(例えば、Ficoll)、ならびに種々の塩、例えば、塩化セシウム、臭化カリウムなどを含む他の密度薬剤もまた取り込み得る。実施形態は、使用において、異なるシグナル伝達特徴および部分を一致させるために色素を使用し得る。例えば、色素Toluidine Blue Oが、蛍光標識Texas Red(スルホローダミン)と共に使用され得る。
【0294】
色素クッションは、任意の必要に応じた色素を含むイオジキサノールまたはポリビニルピロリドンの溶液を調製し、カートリッジのイメージングウェル中で溶液を乾燥または凍結乾燥させることによって、形成され得る。次いで、色素クッションは、本質的に固体になる(例えば、乾燥されて、例えば、ウェルは、使用まで、上下逆を含む任意の配向で保管され得る)。液体検体がウェル中に送達されると、液体は、色素クッションを再水和する。実際、方法における使用に関して本明細書を通じて開示され論じられる試薬は、生理的温度を下回っても超えてもよい一定の生理的温度または周期的温度でのFISHのためのプロトコールにおける後の使用のために、乾燥されたまたは凍結乾燥された形態で提供され得る。これは、試薬が調製され、カートリッジ上に乾燥状態でロードされることを可能にし、このカートリッジは次いで、出荷または保管され得、本開示の方法において後に使用され得る。
【0295】
磁気粒子、検出可能な標識および標的特異的結合分子は、好ましくは、検体中に存在する任意の標的と複合体を形成する。磁気粒子および印加された磁場は、洗浄ステップなしに、結合した検出可能な標識を、溶液中の未結合の検出可能な標識から物理的に分離するために使用され得る。米国特許第9,643,180号に記載される色素クッション層は、磁気粒子および磁場と連動して、標識された標的細胞または微生物を、高密度色素層を介して引き寄せ、イメージング分析のために試験デバイスのウェル中の検出表面上にそれらを沈着させるために使用され得る。色素クッション層中の色素は、好ましくは、イメージングのための機器によって使用される励起光および発光を吸収するように選択される。したがって、アッセイ層中の未結合の標識化部分からのシグナルは、検出表面上に磁気的に沈着した標識された標的細胞または微生物複合体からのシグナルの検出を顕著には妨害しない。同様に、色素クッションの使用は、アッセイ層中にこれもまた含まれる検体マトリックスからのいずれの自己蛍光も、沈着した標識された標的細胞複合体からのシグナルの検出を顕著には妨害しないように防止する。色素クッションのこれらの性状は、ユーザーによる検体調製なしに、かつ試験デバイスから未結合の標識を除去するための洗浄ステップなしに、標的細胞または微生物を検出することを可能にし得る。
【0296】
標識された標的細胞または微生物のデジタルイメージングは、デジタルイメージャーを使用して達成され得る。蛍光標識化の好ましい場合には、種々のレンズ、照明供給源、励起光供給源およびフィルターが使用され得る。イメージングモジュールは、溶液中の、またはウェルもしくは試験デバイス中の検出表面に引き寄せられた、検出可能に標識された標的細胞または微生物のデジタルイメージを生成することが可能な任意のデバイスを含み得る。イメージングモジュールは、例えば、CCDカメラ、CMOSカメラ、ラインスキャンカメラ、CMOSアバランシェフォトダイオード(APD)、フォトダイオードアレイ、光電子増倍管アレイ、または他の型のデジタルイメージング検出器を含み得る。
【0297】
イメージングは、単一セットの条件の下で実施され得、または光供給源、フィルターおよび/もしくはレンズは、異なる光学的に識別可能な標識(例えば、異なる標的細胞または微生物に対応する異なる蛍光プローブ)を検出するために、イメージ間で変更され得る。米国特許第9,643,180号および同第8,021,848号に記載されるイメージング技術および機器は、個々の細菌または他の標的細胞の観察および列挙を可能にし得る。
【0298】
本発明のシステムおよび方法は、機器および試験デバイスを制御するように、ならびに/またはイメージング結果を処理するように動作可能なコンピューターを含み得る。コンピューターは、非一時的なメモリデバイスに連結されたプロセッサーを含み得る。メモリは、好ましくは、プロセッサーによって実行可能な指示を記憶して、システムに、機器内の試験デバイスをマニピュレートさせ、標識された標的細胞のイメージを得させ処理させる。
【0299】
プロセッサーは、処理操作を実施する任意のデバイスまたはデバイスのシステムを指す。プロセッサーは、一般に、中央処理装置(CPU)を提供するために、チップ、例えば、シングルコアまたはマルチコアチップを含む。プロセスは、IntelまたはAMDからのチップによって提供され得る。プロセッサーは、Intel(Santa Clara、CA)によって商標XEON E7の下で販売されるマイクロプロセッサーまたはAMD(Sunnyvale、CA)によって商標OPTERON 6200の下で販売されるマイクロプロセッサーなどの、任意の適切なプロセッサーであり得る。
【0300】
メモリは、機械可読形式のデータまたは指示を記憶するデバイスまたはデバイスのシステムを指す。メモリは、開示されるコンピューターのプロセッサーのうち1つまたは複数によって実行される場合に本明細書に記載される方法または機能の一部または全てを達成することができる1つまたは複数のセットの指示(例えば、ソフトウェア)を含み得る。好ましくは、コンピューターは、非一時的なメモリ、例えば、ソリッドステートドライブ、フラッシュドライブ、ディスクドライブ、ハードドライブ、加入者識別モジュール(SIM)カード、セキュアデジタルカード(SDカード)、マイクロSDカード、もしくはソリッドステートドライブ(SSD)、光学および磁気媒体、その他、またはそれらの組合せを含む。
【0301】
入力/出力デバイスは、コンピューター中にまたはその外にデータを移動させるための機構またはシステムである。例示的な入力/出力デバイスには、ビデオディスプレー装置(例えば、液晶ディスプレー(LCD)または陰極線管(CRT))、英数字入力デバイス(例えば、キーボード)、カーソル制御デバイス(例えば、マウス)、ディスクドライブ装置、シグナル生成デバイス(例えば、スピーカー)、タッチスクリーン、加速度計、マイクロフォン、セルラー無線周波数アンテナ、および例えば、ネットワークインターフェースカード(NIC)、Wi-Fiカードまたはセルラーモデムであり得るネットワークインターフェースデバイスが含まれる。入力/出力デバイスは、ユーザーが機器を制御し、機器によって試験デバイスから得られたデータを受け取るのを可能にするために使用され得る。
【0302】
分析カートリッジ101は、機器または機器中のリーダーによって分析または読み取られた場合に、カートリッジを機器内での処理のための指示のセットと関連させ、ある特定の患者による関連のアッセイ結果のための、検体供給源に関する情報を含み得る、バーコードステッカーなどの識別子を有する。
【実施例
【0303】
(実施例1)
新規の迅速な蛍光in situハイブリダイゼーションアッセイを使用するグラム陰性細菌についての検出限界(LoD)
【0304】
概説:以下の実施例は、非常に低い濃度の細胞を、新規等温蛍光in situハイブリダイゼーション法を使用して検出することができることを実証している。3つの一般的なヒト尿路感染(UTI)病原体についての検出限界が示される。
実験方法:
【0305】
細菌細胞調製:E.coli ATCC 19138、K.pneumoniae ATCC 700603およびP.aeruginosa ATCC 9721についての細菌培養物を、Trypticase Soy Broth(TSB、Hardy Diagnostics カタログU65)に、新鮮なトリプシンソイ寒天プレート(TSA、BD カタログ221185)からの3~5個のコロニーを接種し、35℃で1.5~3時間成長させて対数期成長を達成することによって得た。細胞が、0.15~0.30の、600nmにおける光学密度読み取りに達した後、細胞を氷上に少なくとも15分間置き、その後希釈した。冷却後、細胞を、1×カチオンで調整したMueller-Hintonブロス(MHBII、Teknova カタログM5860)中に、アッセイされる濃度(およそ19200、9600、4800、2400、1200、600、300および150コロニー形成単位(CFU)/反応)になるように希釈した。より正確な細胞濃度のために、これらの推定された細菌入力を、コロニー計数を使用して調整した。プレート計数を、対数期培養物をMHBII中に約500CFU/mLになるように希釈し、100μLをTSAプレート上にプレートし、35℃で16~24時間の成長後にコロニーを計数することによって決定した。平均プレート計数を使用して、試験した各濃度中に存在する実際のCFUを計算した。
【0306】
磁気粒子の調製:ポリアスパラギン酸コンジュゲートされた磁気粒子(Fluidmag-PAA、Chemicell、カタログ4108)およびカルボキシルコーティングされた高鉄磁気粒子(Carboxyl Magnetic Particles、Spherotech、カタログCM-025-10H)を使用して、細菌細胞を非特異的に捕捉した。各粒子を、ポリアスパラギン酸粒子については1反応当たりおよそ1.38×10粒子、カルボキシル粒子については1反応当たり3.46×10粒子の終濃度で、50mM Epps緩衝剤、pH8.2中に1:40希釈した。緑色色素を含む蛍光磁気ミクロスフェア(Dragon Green Fluorescent Microspheres、BANGS Laboratories、カタログMEDG001)を、3×10粒子/mLの終濃度で懸濁物に添加した。これらの粒子により、光学システムが正しい平面に焦点を当てることが可能になる。磁気粒子混合物を、使用直前に1分間超音波処理して、凝集を最小化した。
【0307】
FISHプローブの調製:E.coliおよびK.pnuemoniaeのための2つの種特異的DNAオリゴマーセットならびにP.aeruginosaのための1つの種特異的DNAオリゴマーセットを、80~85℃の間の水浴中で10分間加熱し、次いで、氷上に置いて、凝集を低減させた。DNAオリゴマーセットは、オリゴヌクレオチドの5’末端、または5’末端および3’末端の両方のいずれかにおいて蛍光色素(Alexa647N、Thermo Fischer)で標識した種特異的DNAオリゴヌクレオチド、ならびに特異的プローブに隣接してまたはその近傍で結合する、リボソームサブユニットの局所的二次構造を破壊し、標識された特異的プローブの、標的rRNAに対するより高いハイブリダイゼーション効率を可能にするように設計された2~6個のヘルパーオリゴヌクレオチドを含んだ。この実施例で使用したプローブ配列は、図17中の表Aに示される。
【0308】
乾燥されたハイブリダイゼーション緩衝剤プレートの調製:10×SSC(1.5M NaCl、0.15Mクエン酸ナトリウム、Sigma、カタログS6639)、2.6%w/v CHAPSO(Sigma カタログC3649)、2.4%w/v SB3-12(Sigma カタログD0431)、0.43Mチオシアン酸グアニジン(Sigma カタログG9277)および0.6%w/vセトリミド(Sigma カタログM7365)の混合物を調製した。30uLのこの混合物を、96ウェルプレートの各ウェルに添加した。プレートを、50℃の対流式オーブン中に置き、一晩乾燥させた。100uLの液体をこれらのウェルに添加すると、3×SSC(0.45M NaCl、0.045Mクエン酸ナトリウム)、0.77%w/v CHAPSO(Sigma カタログC3649)、0.72%w/v SB3-12(Sigma カタログD0431)、0.13Mチオシアン酸グアニジン(Sigma カタログG9277)および0.18%w/vセトリミド(Sigma カタログM7365)の正確なハイブリダイゼーション緩衝剤濃度が達成される。
【0309】
検出限界(LoD)アッセイ手順:目的の細菌に適切なDNAオリゴヌクレオチドセットの混合物を、尿および濃縮カチオンで調整したMueller Hinton Stock(MHBII)と合わせて、1×MHBIIおよび30%のプールされたヒト尿(Innovative Research、カタログIRHUURE500ML)を含む最終溶液を作製した。プローブ濃度は、異なる細菌種の間で変動したが、標識されたオリゴヌクレオチドについては0.2~0.6μM、対応するヘルパープローブについては1.5~6μMの範囲であった。90uLのこの混合物を、適切な乾燥されたハイブリダイゼーション緩衝剤プレート中に置いた。10uLの磁気粒子混合物を添加し、その後、10uLの適切な細胞希釈物を添加した。各細胞濃度の12個の複製およびブランク(細菌を含まない培地)の24個の複製を、試験した各標的細菌について評価した。100μLの最終反応混合物を、1ウェル当たり50μL(前もって乾燥させた)の「色素クッション」(50mM TRIS pH7.5(Sigma カタログT1075)、7.5%v/v Optiprep(Sigma カタログD1556)、50mg/mL Direct Black 19(Orient カタログ191L))を含むマイクロタイタープレートに移動させ、35℃で30分間インキュベートして、「色素クッション」の再水和、細菌細胞の標識化、および細菌細胞表面への磁気粒子の結合を同時に可能にした。インキュベーション後、マイクロタイタープレートを、磁場(Dexter magnetic technologies、カタログ54170260)上に4分間置いて、標識された細胞を含む画分である磁気粒子を、「色素クッション」を介してウェルの底部にあるイメージング表面に近接させた。
【0310】
標識された細胞のイメージング:MultiPath(商標)ラボラトリーイメージングシステムは、マイクロタイタープレートの選択されたウェルからイメージデータを自動的に捕捉することが可能な特注の機器およびソフトウェアである。これは、Prior Scientific(Rockland、MA)の高精度リニアステージを使用して、蛍光ベースのイメージ獲得サブシステム上に各ウェルを位置決めする。機器は、4つの別々の色チャネルでイメージングすることができ、対物レンズ、照明LED、蛍光フィルターセットおよびカメラを使用する。対物レンズは、マイクロタイタープレートウェル全体のイメージを捕捉するように設計された視野を有する。照明モジュール光供給源は、色チャネル1つ当たり2つの高出力LEDからなる。一連の蛍光イメージフレームを、1ピクセル量子化当たり12ビットで、3.1MP Sony IMX265モノクロセンサーを使用してカメラで捕捉する。次いで、各ウェルについての最終イメージを、複数のフレームを合計することによって形成する。16フレームを、635/25nm励起および680/40nm発光フィルターを使用して、100ミリ秒の曝露で捕捉した。焦点粒子(focus particle)を、470/40nm励起および520/40nm励起フィルターでイメージングし、20ミリ秒の曝露で2フレームを捕捉する。
【0311】
データ分析:各細胞濃度において、検出された蛍光物体の数を決定した。8つ全ての細胞濃度からのデータを、線形回帰直線にフィットさせ、最も低い3つの細胞入力の傾き、切片および標準偏差を使用して、試験した各細菌についてのブランク上限(LoB)および検出限界(LoD)を決定した。
結果:
【0312】
試験した3つ全ての細菌は、低い検出限界を示した。図14図15および図16は、LoBおよびLoDを計算するために使用した線形フィットを用いてE.coli、K.pneumoniaeおよびP.aeruginosaについて生成したデータを示す。LoBおよびLoDを、単一の反応ウェル中の検出可能なCFUで示す。
【0313】
結論。この実施例に記載される新規かつ迅速なFISH法は、最小限に処理された尿マトリックスを使用して、1反応当たり約500CFUまたはそれ未満の検出限界の、高感度の方法であることが示される。
【0314】
バリエーション。この実施例は、この新規FISH法のパフォーマンスの例示であって、記載に含まれる具体的な詳細に限定されない。したがって、異なるプローブ配列および核酸構造(PNA、LNAなど)、代替的なアッセイ化学(異なる界面活性剤、カオトロープ、フルオロフォア、緩衝剤、pH、温度、反応時間、構成要素濃度)、尿の濃度および尿処理手順を使用することを含む多くのバリエーションが可能であることを、当業者は容易に理解する。この方法論は、他の生物学的検体ならびに他の細菌および非細菌病原体にも明らかに拡張することができる。
【0315】
図14は、E.coli ATCC 19138の検出限界(LoD)を示す。ブランク上限(LoB)は89CFU/アッセイであり、LoDは284CFU/アッセイであった。これは、尿の9,467CFU/mlのLoDに対応する。
【0316】
図15は、P.aeruginosa ATCC 9721の検出限界(LoD)を示す。ブランク上限(LoB)は104CFU/アッセイであり、LoDは506CFU/アッセイであった。これは、尿の16,867CFU/mlのLoDに対応する。
【0317】
図16は、K.pneumoniae ATCC 700603の検出限界(LoD)を示す。ブランク上限(LoB)は109CFU/アッセイであり、LoDは319CFU/アッセイであった。これは、尿の10,633CFU/mlのLoDに対応する。
【0318】
図17は、この実施例で使用したプローブ配列の表である。
【0319】
(実施例2)
包括性:本発明の迅速なFISH法を使用して細菌種の異なる株を検出および同定する
【0320】
概説。この実施例は、標的化された細菌種について異なる株を検出するための本発明の使用を実証している。11個の異なるE.coli株についての生データが示され、K.pneumoniae、P.aeruginosa、P.mirabilisおよびEnterococcus spp.についてのデータが要約される。細菌細胞標的を、等温蛍光in situハイブリダイゼーション(FISH)を使用して30分で標識し、MultiPath(商標)CCDカメラベースの検出システムで検出した。
実験方法。
【0321】
細菌細胞調製:異なる株についての細菌培養物を、Trypticase Soy Broth(TSB、Hardy Diagnostics カタログU65)に、新鮮なトリプシンソイ寒天プレート(TSA、BD カタログ221185)からの3~5個のコロニーを接種し、35℃で1.5~3時間成長させて対数期成長を達成することによって得た。細胞濃度を推定するために600nmでの光学密度を使用して、細胞を、1×カチオンで調整したMueller-Hintonブロス(MHBII、Teknova カタログM5860)中に、1反応当たりおよそ600CFUおよび3000CFUになるように希釈した。より正確なパーセント細胞検出計算のために、これらの推定された細菌入力を、コロニー計数を使用して調整した。プレート計数を、対数期培養物をMHBII中に約500CFU/mLになるように希釈し、100μLをTSAプレート上にプレートし、35℃で16~24時間の成長後にコロニーを計数することによって決定した。
【0322】
磁気粒子の調製:細菌細胞を非特異的に捕捉するために使用したポリアスパラギン酸コンジュゲートされた磁気粒子(Fluidmag-PAA、Chemicell、カタログ4108)を、50mM EPPS緩衝剤、pH8.2中に、2.75×1012粒子/mLになるように1:20希釈した。緑色色素を含む蛍光磁気ミクロスフェア(Dragon Green Fluorescent Microspheres、BANGS Laboratories、カタログMEDG001)を、3×10粒子/mLの終濃度で懸濁物に添加した。これらの粒子により、光学システムが正しい平面に焦点を当てることが可能になる。磁気粒子混合物を、使用直前に1分間超音波処理して、凝集を最小化した。別々の磁気粒子懸濁物を、以下に記載される時間ゼロおよび時間4時間アッセイのために調製した。
【0323】
細菌細胞の標識化:100μL標識化反応を、希釈した細胞、等温ハイブリダイゼーション緩衝剤(0.9×MHBII、3×SSC(1.5M NaCl、0.15Mクエン酸ナトリウム、Sigma、カタログS6639)、0.77%w/v CHAPSO(Sigma カタログC3649)、0.72%w/v SB3-12(Sigma カタログD0431)、0.13Mチオシアン酸グアニジン(Sigma カタログG9277)、0.18%w/vセトリミド(Sigma カタログM7365))、16Sまたは23S細菌rRNAに標的化された種特異的Alexa647N標識されたDNAまたはLNA含有DNAプローブ(Integrated DNA Technologies、IDT)、有効なハイブリダイゼーションを促進するためのヘルパープローブ(IDT)および30μLのプールされたヒト尿(Innovative Research、カタログIRHUURE500ML)を合わせることによって調製した。プローブ配列は、図20中の表に示される。
【0324】
尿を、製造業者の使用説明書に従って、Zeba 7K MWCOスピンカラム(Thermo Fisher、尿体積に依存してカタログ89893または89892)を介して最初に処理した。次いで、10μLの磁気粒子調製物をこの混合物に添加した。最終反応混合物を、50μL(前もって乾燥させた)の「色素クッション」(50mM TRIS pH7.5(Teknova カタログT1075)、7.5%v/v Optiprep(Sigma カタログD1556)、50mg/mL Direct Black 19(Orient カタログ191L))を含むマイクロタイタープレートに移動させ、35℃で30分間インキュベートして、「色素クッション」の再水和、細菌細胞の標識化、および細菌細胞表面への磁気粒子の結合を同時に可能にした。インキュベーション後、マイクロタイタープレートを、磁場(Dexter magnetic technologies、カタログ54170260)上に4分間置いて、標識された細胞を含む画分である磁気粒子を、「色素クッション」を介してウェルの底部にあるイメージング表面に近接させた。
【0325】
標識された細胞のイメージング:MultiPathラボラトリーイメージングシステム上の標識された細菌細胞は、マイクロタイタープレートの選択されたウェルからイメージデータを自動的に捕捉することが可能な特注の機器およびソフトウェアである。これは、Prior Scientific(Rockland、MA)の高精度リニアステージを使用して、蛍光ベースのイメージ獲得サブシステム上に各ウェルを位置決めする。機器は、4つの別々の色チャネルでイメージングすることができ、対物レンズ、照明LED、蛍光フィルターセットおよびカメラを使用する。対物レンズは、マイクロタイタープレートウェル全体のイメージを捕捉するように設計された視野を有する。照明モジュール光供給源は、色チャネル1つ当たり2つの高出力LEDからなる。一連の蛍光イメージフレームを、1ピクセル量子化当たり12ビットで、3.1MP Sony IMX265モノクロセンサーを使用してカメラで捕捉する。次いで、各ウェルについての最終イメージを、複数のフレームを合計することによって形成する。16フレームを、635/25nm励起および680/40nm発光フィルターを使用して、100ミリ秒の曝露で捕捉した。焦点粒子を、470/40nm励起および520/40nm励起フィルターでイメージングし、20ミリ秒の曝露で2フレームを捕捉する。
【0326】
データ分析:各細菌について、蛍光物体の数を決定した(アッセイシグナル)。細胞なし条件におけるシグナルの3標準偏差を上回るシグナルが検出された場合、細菌株が検出されたとみなした。
【0327】
結果。図105は、11個のE.coli株についてのアッセイシグナルを示す。11個全ての株が、1アッセイ当たりおよそ600CFUの細胞入力について、背景「細胞なし」条件を上回って検出された。図18は、検出された細胞のパーセンテージ(細胞入力ウェルにおける総アッセイシグナル-背景アッセイシグナル/総細胞入力100)として示されるデータを示す。検出効率は株ごとに幾分可変であるが、これは、11個の異なるE.coli株の各々を検出するアッセイの能力を阻害しなかった。
【0328】
図19中の表は、E.coliと同じ様式で分析したE.coli、K.pneumoniae、P.aeruginosa、P.mirabilisおよびEnterococcus spp.についての包括性結果を要約する。K.pneumoniaeについて試験した株は、ATCC 13833、CDC80、CDC44、CDC87、CDC47、CDC43、BAA2470、CDC34、CDC39、ATCC 700603およびBAA-2472であった。P.aeruginosaについて試験した株は、CDC263、CDC242、9721、CDC236、27853、BAA-2110、CDC233、15692、CDC234、CDC246およびCDC261であった。P.mirabilisについて試験した株は、CDC155、CDC29、CDC159、CDC59、ATCC 7002およびCDC156であった。Enterococcusについて試験した株は、ATCC 19433、ATCC 29212、ATCC 33186、ATCC 51575、ATCC 51299およびBAA-2128を含んだ。
【0329】
結論。この実施例に記載される新規FISH法は、UTIを有する患者において臨床症状をもたらす主要な病原体の中にある5つの異なる細菌種について、試験した全ての株を検出した。
【0330】
バリエーション。この実施例は、この新規FISH法のパフォーマンスの例示であって、記載に含まれる具体的な詳細に限定されない。したがって、異なるプローブ配列および核酸構造(PNA、LNAなど)、代替的なアッセイ化学(異なる界面活性剤、カオトロープ、フルオロフォア、緩衝剤、pH、温度、反応時間、構成要素濃度)、尿の濃度および尿処理手順を使用することを含む多くのバリエーションが可能であることを、当業者は容易に理解する。この方法論は、他の生物学的検体ならびに他の細菌および非細菌病原体にも明らかに拡張することができる。
【0331】
図105は、およそ600CFU/アッセイ(明るい灰色のバー)および3000CFU/アッセイ(暗い灰色のバー)の入力細胞濃度について、11個のE.coli株についてプロットされた平均シグナル(n=3)を示す。細胞なし対照(ブランク)に由来するシグナルは、図面の左側に示される。エラーバーは、1標準偏差を示す。
【0332】
図18は、11個のE.coli株の各々について検出された入力細胞のパーセンテージ(プレート計数によって決定される)を示す。各バーは、2つの異なる入力細胞レベルの各々から3つずつの、6つの決定の平均を示す。パーセンテージ細胞検出を、[(アッセイシグナル-背景シグナル)/入力細胞]100として計算した。
【0333】
図19は、4つのさらなる細菌についての包括性結果を与える表である。
【0334】
図20は、この実施例で使用したプローブ配列を与える表である。
【0335】
(実施例3)
迅速な等温FISHを使用した標的細菌の特異的検出
【0336】
概説。この実施例は、新規等温FISH法が、関連の非標的細菌を、非常に高い濃度であっても検出することなしに、標的細菌を特異的に検出することを実証している。この実施例は、これもまた尿路感染(UTI)を引き起こす、類似のrRNA配列を有する、または共生生物である16個の他の細菌を検出しないが、E.coliを特異的に検出するアッセイ条件を示す。
実験方法。
【0337】
細菌細胞調製:16個のオフターゲット細菌(表1に列挙される)およびE.coli株ATCC 25922についての細菌培養物を、新鮮なトリプシンソイ寒天プレート(TSA、BD カタログ221185)から選択された単一のコロニーから成長させ、Trypticase Soy Broth(TSB、Hardy Diagnostics カタログU65)中に接種し、振盪しながら35℃で一晩成長させた。50~80μLの一晩培養物を、新鮮なTSB中に添加し、600nmにおける光学密度が0.15~0.3に達するまで、1.5~2時間成長させた。次いで、各細菌を、カチオンで調整したMueller Hinton(MHBII、Teknova カタログM5860)中に、およそ1×10細胞/mLになるように希釈した。
【0338】
評価する細菌標的の選択:特異性について試験する細菌病原体を、標的細菌のrRNA配列とのrRNA配列類似性について、またはそれらが、尿路感染(疾患標的)において一般に見出される病原体であり、したがって、これらの生物に対する交差反応性が最も問題になることに起因して、選択した。図21中の表は、試験した細菌種および株を示す。
【0339】
FISHプローブの調製:E.coliのためのDNAプローブセットを、80~85℃の間の水浴中で10分間加熱し、次いで、氷上に置いて、凝集を低減させた。このDNAプローブセットは、図22中の表に示される。このセットは、蛍光色素(Alexa647N、Thermo Fischer)で標識した種特異的DNAオリゴヌクレオチド、および特異的プローブに隣接してまたはその近傍で結合する、リボソームサブユニットの局所的二次構造を破壊し、標識された特異的プローブの、標的rRNAに対するより高いハイブリダイゼーション効率を可能にするように設計されたヘルパーオリゴヌクレオチドを含んだ。
【0340】
磁気粒子の調製:細菌細胞を非特異的に捕捉するために使用したポリアスパラギン酸コンジュゲートされた磁気粒子(Fluidmag-PAA、Chemicell、カタログ4108)を、50mM EPPS緩衝剤、pH8.2中に、2.75×1012粒子/mLになるように1:20希釈した。緑色色素を含む蛍光磁気ミクロスフェア(Dragon Green Fluorescent Microspheres、BANGS Laboratories、カタログMEDG001)を、3×10粒子/mLの終濃度で懸濁物に添加した。これらの粒子により、光学システムが正しい平面に焦点を当てることが可能になる。磁気粒子混合物を、使用直前に1分間超音波処理して、凝集を最小化した。
【0341】
細菌細胞の標識化:100μL標識化反応を、希釈した細胞、等温ハイブリダイゼーション緩衝剤(0.9×MHBII(Teknova カタログM5860)、3×SSC(0.45M NaCl、0.045Mクエン酸ナトリウム、Sigma、カタログ、カタログS6639)、0.77%w/v CHAPSO(Sigma カタログC3649)、0.72%w/v SB3-12(Sigma カタログD0431)、0.13Mチオシアン酸グアニジン(Sigma カタログG9277)、0.18%w/vセトリミド(Sigma カタログM7365))、16Sまたは23S細菌rRNAに標的化された種特異的Alexa647N標識されたプローブ(Integrated DNA Technologies、IDT)、有効なハイブリダイゼーションを促進するためのヘルパープローブ(IDT)および30μLのプールされたヒト尿(Innovative Research、カタログIRHUURE500ML)を合わせることによって調製した。試験した特異的プローブセットは、図22中の表に示される。尿を、製造業者の使用説明書に従って、Zeba 7K MWCOスピンカラム(Thermo Fisher、尿体積に依存してカタログ89893または89892)を介して最初に処理した。次いで、10μLの磁気粒子調製物を、この混合物に添加した。最終反応混合物を、1ウェル当たり50μL(前もって乾燥させた)の「色素クッション」(50mM TRIS pH7.5(Sigma カタログT1075)、7.5%v/v Optiprep(Sigma カタログD1556)、50mg/mL Direct Black 19(Orient カタログ191L))を含むマイクロタイタープレートに移動させ、35℃で30分間インキュベートして、「色素クッション」の再水和、細菌細胞の標識化、および細菌細胞表面への磁気粒子の結合を同時に可能にした。各細菌を、1反応当たり1×10細胞の終濃度で試験した。この濃度は、E.coliについての決定された検出限界よりもおおよそ3000倍高い。インキュベーション後、マイクロタイタープレートを、磁場(Dexter magnetic technologies、カタログ54170260)上に4分間置いて、標識された細胞を含む画分である磁気粒子を、「色素クッション」を介してウェルの底部にあるイメージング表面に近接させた。
【0342】
標識された細胞のイメージング:MultiPath(商標)ラボラトリーイメージングシステムは、マイクロタイタープレートの選択されたウェルからイメージデータを自動的に捕捉することが可能な特注の機器およびソフトウェアである。これは、Prior Scientific(Rockland、MA)の高精度リニアステージを使用して、蛍光ベースのイメージ獲得サブシステム上に各ウェルを位置決めする。機器は、4つの別々の色チャネルでイメージングすることができ、対物レンズ、照明LED、蛍光フィルターセットおよびカメラを使用する。対物レンズは、マイクロタイタープレートウェル全体のイメージを捕捉するように設計された視野を有する。照明モジュール光供給源は、色チャネル1つ当たり2つの高出力LEDからなる。一連の蛍光イメージフレームを、1ピクセル量子化当たり12ビットで、3.1MP Sony IMX265モノクロセンサーを使用してカメラで捕捉する。次いで、各ウェルについての最終イメージを、複数のフレームを合計することによって形成する。16フレームを、635/25nm励起および680/40nm発光フィルターを使用して、100ミリ秒の曝露で捕捉した。焦点粒子を、470/40nm励起および520/40nm励起フィルターでイメージングし、20ミリ秒の曝露で2フレームを捕捉する。
【0343】
データ分析:各細菌について、蛍光物体の数を決定した(アッセイシグナル)。ブランク(細胞の添加なし)におけるシグナルの3標準偏差以内のシグナルが検出された場合、細菌を交差反応性とみなした。
結果。
【0344】
図23および図24は、迅速な新規FISH法が、E.coliのみを検出し、他の16個の異なるチャレンジ細菌を検出しないことを示している。図1および2は各々、非常に高い濃度(1反応当たり1×10細胞)の8個の臨床的に関連するチャレンジ細菌が、標的化されたE.coli細菌について高いアッセイシグナルを生じる同じアッセイ条件下で検出されないことを示している。2つのバーは、E.coliに特異的であるように設計した2つの異なるプローブセットを示す(図22中の表を参照のこと)。16個のチャレンジ細菌の各々についてのアッセイシグナルは、細胞なし対照プラス3標準偏差未満であった(125)。
【0345】
結論。この実施例に記載される新規の迅速なFISH法は、設計により、E.coliを特異的に検出するが、16個の臨床的に関連する潜在的交差反応性細菌は検出しない。これは、この方法が、感染の臨床処置にとって非常に重要な標的UTI病原体の同定のための高い特異性を有することを実証している。
【0346】
バリエーション。この実施例は、この新規FISH法のパフォーマンスの例示であって、記載に含まれる具体的な詳細に限定されない。したがって、異なるプローブ配列および核酸構造(PNA、LNAなど)、代替的なアッセイ化学(異なる界面活性剤、カオトロープ、フルオロフォア、緩衝剤、pH、温度、反応時間、構成要素濃度)、尿の濃度および尿処理手順を使用することを含む多くのバリエーションが可能であることを、当業者は容易に理解する。この方法論は、他の生物学的検体ならびに他の細菌および非細菌病原体にも明らかに拡張することができる。K.pneumoniae、K.oxytoca、P.aeruginosa、P.mirabilisおよびE.faecalisについて高い特異性を実証するアッセイもまた設計されている。
【0347】
図21は、E.coli検出の特異性を試験するチャレンジ細菌を示す表である。
【0348】
図22は、この実施例で使用したプローブ配列を示す表である。
【0349】
図23は、E.coliの特異的検出、および8個のチャレンジ細菌の検出がないことを示す。
【0350】
図24は、E.coliの特異的検出、および8個の追加のチャレンジ細菌の検出がないことを示す。
【0351】
(実施例4)
4個の別個の微生物を同時に同定する多重化FISH法
【0352】
概説。この実施例は、各細菌のrRNAに特異的な蛍光標識されたプローブを使用して、単一の反応において、E.coli、K.pneumoniae、P.aeruginosaおよびK.oxytocaを同時に検出するための本発明の使用を実証している。各病原体は、異なる励起/発光スペクトル特徴を有する4個の別個のフルオロフォア - 各細菌種について1つ - の使用を介して、混合物中で特異的に検出された。
【0353】
実験方法。細菌細胞成長:Escherichia coli ATCC 25922、Klebsiella pneumoniae ATCC 13883、Pseudomonas aeruginosa ATCC 27853およびKlebsiella oxytoca ATCC 8724についての細菌培養物を、Trypticase Soy Broth(TSB、Hardy Diagnostics カタログU65)に、新鮮なトリプシンソイ寒天プレート(TSA、BD カタログ221185)からの3~5個のコロニーを接種し、37℃で1.5~3時間成長させて対数期成長を達成することによって得た。次いで、各培養物を、カチオンで調整したMueller-Hinton Broth(MHBII、Teknova、カタログM5860)中に、およそ1.0×10コロニー形成単位(CFU)/mLである600nmの光学密度が0.15になるように希釈した。
【0354】
磁気粒子の調製:ポリアスパラギン酸コンジュゲートされた磁気粒子(Fluidmag-PAA、Chemicell、カタログ4108)およびカルボキシルコーティングされた磁気粒子(Carboxyl Magnetic Particles、Spherotech、カタログCM-025-10H)を使用して、細菌細胞を非特異的に捕捉した。各粒子を、ポリアスパラギン酸粒子については1反応当たりおよそ1.38×10粒子、カルボキシル粒子については3.46×10の終濃度で、50mM Epps緩衝剤、pH8.2中に1:40希釈した。
【0355】
細菌細胞の標識化:100μL標識化反応を、4個全ての細菌の希釈した細胞、等温ハイブリダイゼーション緩衝剤(0.9×MHBII、3×SSC(1.5M NaCl、0.15Mクエン酸ナトリウム、Sigma、カタログS6639)、0.77%w/v CHAPSO(Sigma カタログC3649)、0.72%w/v SB3-12(Sigma カタログD0431)、0.13Mチオシアン酸グアニジン(Sigma カタログG9277)、0.18%w/vセトリミド(Sigma カタログM7365))、16Sまたは23S細菌rRNAに標的化された種特異的DNAプローブ(Integrated DNA Technologies、IDT)、有効なハイブリダイゼーションを促進するためのヘルパープローブ(IDT)および30μLのプールされたヒト尿(Innovative Research、カタログIRHUURE500ML)を合わせることによって調製した。次いで、10μLの磁気粒子調製物を、この混合物に添加した。プローブ配列およびそれらの色素改変の場所は、図26中の表に示される。
【0356】
細胞/ハイブリダイゼーション混合物(1mL)を、カートリッジ中に移動させた。カートリッジを、残りのアッセイステップならびにイメージの獲得および分析を自動化する分析器(以下に記載される)上に置いた。簡潔に述べると、分析器の流体システムは、1ウェル当たり46μL(前もって乾燥させた)の「色素クッション」(50mM TRIS pH7.5(Sigma カタログT1075)、7.5%v/v Optiprep(Sigma カタログD1556)、50mg/mL Direct Black 19(Orient カタログ191L))を含む反応混合物を光学窓中に動かした。カートリッジを、分析器内で35℃で30分間インキュベートした。このインキュベーション後、カートリッジを、磁石ステーション(Dexter magnetic technologies、カタログ54170260)上に4分間動かして、標識された細胞を含む画分である磁気粒子を、再水和された「色素クッション」を介してウェルの底部にあるイメージング表面に近接させた。磁石ステーションの後、カートリッジを、分析器内のイメージングステーションに動かし、4つの色チャネル(赤(励起635/25nm、発光680/40nm)、黄色(励起530/20nm、発光572/23nm)、緑(励起470/40nm、発光520/40nm)、オレンジ(励起569/25nm、発光609/34nm))の各々において、一連のイメージを得た。
【0357】
標識された細胞のイメージング:MultiPath分析器イメージングシステムは、完全に自動化された試験の一部として、MultiPathカートリッジの選択されたウェルからイメージデータを自動的に捕捉することが可能な特注の機器およびソフトウェアである。これは、注文設計された高精度3軸位置決めシステムを使用して、蛍光ベースのイメージ獲得サブシステム上に各ウェルを場所決めする。分析器は、4つの別々の色チャネルでイメージングすることができ、対物レンズ、照明LED、蛍光フィルターセットおよびカメラを使用する。対物レンズは、カートリッジイメージングウェル全体のイメージを捕捉するように設計された視野を有する。照明モジュール光供給源は、色チャネル1つ当たり2つの高出力LEDからなる。一連の蛍光イメージフレームを、1ピクセル量子化当たり12ビットで、3.1MP Sony IMX265モノクロセンサーを使用してカメラで捕捉する。次いで、各ウェルについての最終イメージを、複数のフレームを合計することによって形成する。赤チャネルについて、16フレームを、635/25nm励起および680/40nm発光フィルターを使用して、100ミリ秒の曝露で捕捉した。オレンジチャネルについて、24フレームを、569/25nm励起および609/34nm発光フィルターを使用して、100ミリ秒の曝露で捕捉した。黄色チャネルについて、48フレームを、530/20nm励起および572/23nm発光フィルターを使用して、100ミリ秒の曝露で捕捉した。緑チャネルについて、32フレームを、470/40nm励起および520/40nm発光フィルターを使用して、100ミリ秒の曝露で捕捉した。標識された細胞をイメージングするための焦点平面を、この実施例において実験的に決定した。
結果。
【0358】
図25は、各々4つの入力細菌のうち1つに特異的な4つの色チャネルの各々において蛍光を検出した、完全な獲得されたイメージの一部分を示す。各スポットは、単一細胞または細胞の群に対応する。アルゴリズムを使用して、アーチファクト(例えば、破片)とは別個の意味ある物体を同定し、それらの物体を細胞として計数する。各細菌についての差し込み図でわかるように、類似の数の細胞が予想どおり検出されたが、それは、入力細胞濃度がおよそ同じだったからである。オーバーレイすると、これらのスポットは対応せず、これは、4つの異なる細菌標的で、異なる物体が予想どおり各チャネルにおいて観察されたことを示している。
【0359】
結論。この方法は、単一の迅速なFISH法が、カートリッジの単一のウェルにおいて4つの異なる細菌を同時に検出および定量化するのを可能にする。
バリエーション:
【0360】
この実施例は、この新規FISH法の多重性能の例示であって、記載に含まれる具体的な詳細に限定されない。したがって、異なるプローブ配列および核酸構造(PNA、LNAなど)および代替的なアッセイ化学(異なる界面活性剤、カオトロープ、フルオロフォア、緩衝剤、pH、温度、反応時間、構成要素濃度)を使用することを含む多くのバリエーションが可能であることを、当業者は容易に理解する。この方法論は、それに対する特異的プローブを設計することができる他の生物学的検体ならびに他の細菌および非細菌病原体にも明らかに拡張することができる。
【0361】
図25は、CCDイメージング法および各細菌について1つの4つの異なるフルオロフォアを使用して4つの異なる色チャネルにおいて得た同じ視野を示すイメージである。4つ全ての細菌を、単一のウェルにおいて検出することができた。
【0362】
図26は、この実施例4で使用したプローブ配列の表である。
【0363】
(実施例6)
機器上のカートリッジ内の臨床尿検体におけるE.coliの自動化された迅速AST
【0364】
概要:この実施例は、細胞の精製を必要とすることなく、4時間で、尿中の標的化細菌病原体(この実施例ではE.coli)の抗微生物薬感受性を決定するための発明のシステム、デバイス、および方法の使用を実証する。標識化と磁気選別のための、かつ非拡大デジタルイメージングを使用する差示的成長後に特異的標的細胞を定量する、協奏的なFISH方法を使用する実施例。この新たな方法は、ゴールドスタンダードであるCLSIブロス微量希釈(BMD)方法と匹敵する性能を有する。
実験方法:
【0365】
尿検体:尿路感染症(UTI)を有する患者から採取され、E.coliを含有することが公知の48個の残遺物である匿名化された尿検体をベスイスラエル病院(Beth Israel Hospital)(Boston、MA)のKirby医師の研究所から受領した。試料は、採取の1~5日後に受領し、細胞生存率の損失を制限する尿防腐剤を含有した。各試料について、尿の色、pH、および微粒子の存在を記録した。受領の際に、存在する細菌のおよそのCFU/mLを決定し、Kirby医師の研究所によって報告された単一のまたは混合した細菌の形態学を確認するために、従来の尿培養を実施した。簡潔には、較正した1μLのループを十分に混合した尿試料中に入れ、1μLをトリプシンダイズ寒天(TSA、BD カタログ221185)プレート上に均一に広げ、35℃のインキュベーター中で18~24時間インキュベートした。尿試料の残りを以下に記載したように処理およびアッセイした。
【0366】
尿の処理:試験の前に、尿防腐剤および他の妨害する可能性のある化合物をサイズ排除クロマトグラフィーを使用して除去した。各臨床的に陽性の尿試料2.5mLを事前に洗浄したZeba(商標)7K MWCOスピンカラム(ThermoFisher、カタログ番号89893)に適用し、製造業者の使用説明書に従って遠心分離した。処理後の細菌の損失を調査するために、上記のように、この処理した試料に関して尿培養を繰り返した。
【0367】
磁気粒子の調製:細菌細胞を非特異的に捕捉するために使用したポリアスパラギン酸がコンジュゲートした磁気粒子(Fluidmag-PAA、Chemicell、カタログ4108)を50mMのEPPS緩衝剤、pH8.2中へ、1mL当たり2.75×1012個の粒子まで1:20で希釈した。緑色色素(Dragon Green Fluorescent Microspheres、BANGS Laboratories、カタログMEDG001)を含有する蛍光磁気マイクロスフェアを1mL当たり3×10個の粒子の終濃度で懸濁液に添加した。これらの粒子により、光学システムが正しい平面に焦点を当てることが可能になる。凝集を最小限にするために、使用する直前に、磁気粒子混合物を1分間超音波処理した。以下に記載した時間0と時間4時間とのアッセイのために、別々の磁気粒子懸濁液を調製した。
【0368】
AST時間0における細菌細胞の標識化:抗生物質の存在下または非存在下で、細菌成長の開始前の時間0(T0)におけるアッセイシグナルを各臨床尿検体について決定した。それぞれ処理済尿30μLを、種特異的Alexa647Nで標識されたDNAオリゴヌクレオチドFISHプローブおよび未標識DNAヘルパープローブを含有する1×カチオンで調整したMueller-Hinton Broth(MHBII)70μLに添加した。使用したプローブ配列を表Aに示す。次いで、混合物100μLを、脱水したハイブリダイゼーション緩衝剤(3X SSC(0.45MのNaCl、0.045Mのクエン酸Na)緩衝剤(Sigma、カタログ番号S6639)、0.18%のセトリミド(Sigma、カタログ番号H9151)、0.77%のCHAPSO(Sigma カタログ番号C3649)、0.72%のSB3-12(Sigma カタログ番号D0431) 0.13Mのチオシアン酸グアニジン(Sigma、カタログ番号G9277))を含有するマイクロタイタープレートのウェルに添加した。次いで、調製した磁気粒子混合物10μLをウェルに添加した。この反応混合物100μLを、ウェル(事前に乾燥させた)当たり50μLの「色素クッション」(50mMのTRIS pH7.5(Sigma カタログT1075)、7.5%v/vのOptiprep(Sigma カタログD1556)、50mg/mLのDirect Black 19(Orient カタログ191L))を含有するマイクロタイタープレートに移し、35℃で30分間インキュベートした。インキュベーション後に、マイクロタイタープレートを磁場(Dexter magnetic technologies、カタログ54170260)上に4分間置き、磁気粒子、標識化細胞を含有する画分を「色素クッション」を介して、ウェルの底のイメージング表面の近傍に移動させた。
【0369】
標識化細胞のイメージング:MultiPath(商標)研究所のイメージングシステムは、マイクロタイタープレートの選択されたウェルからイメージデータを自動的に捕捉することが可能なカスタムビルト機器およびソフトウェアである。これは、Prior Scientific(Rockland、MA)からの高精度リニアステージを使用し、各ウェルを蛍光ベースのイメージ獲得サブシステムに対して位置付ける。この機器は、4色の別々のカラーチャネルでイメージングすることができ、対物レンズ、LED照明、蛍光フィルターセット、およびカメラを使用する。対物レンズは、マイクロタイタープレートのウェル全体のイメージを捕捉するよう設計された視野を有する。イルミネーションモジュール光源は、カラーチャネルごとに2つの高出力LEDからなる。一連の蛍光イメージフレームは、ピクセル当たり12ビットを量子化する3.1MP Sony IMX265単色センサーを使用するカメラで捕捉される。次いで、複数のフレームを合計することによって、各ウェルに関する最終イメージが形成される。635/25nmの励起フィルターおよび667/30nmの発光フィルターを使用して、100ミリ秒の露出で16フレームを捕捉した。470/40nmの励起フィルターおよび520/40nmの励起フィルターで焦点粒子をイメージングし、20ミリ秒の露出で2フレームを捕捉した。
【0370】
抗生物質プレートの調製:予想された最少阻止濃度(MIC)よりも10倍高い濃度で開始して、2倍連続希釈系列で各抗生物質の6つの濃度を含有するマイクロタイタープレートを調製した。使用した抗生物質は、セファゾリン、シプロフロキサシン、ニトロフラントイン、およびトリメトプリム-スルファメトキサゾールであった。抗生物質の希釈液を、少なくとも2つのCLSI QC株に関するMICがCLSIの文献M100Ed29E-2019において報告されたQC範囲内にあることを確認することによって、適切な忍容性の範囲内にあることを検証した。各抗生物質を試験するために選択した濃度は、E.coliに対する抗生物質に関してCLSIにより報告されたブレイクポイントをまたいだ。抗微生物希釈系列を含有するウェルに加えて、水または希釈液を含有する8つのウェルがプレート中に含まれ、抗生物質なしの陽性成長対照および陰性成長対照を可能とした。
【0371】
4時間の成長:時間0での細胞の定量化がなされている間に、処理済臨床尿32.4μLと1.43X MHB II(Teknova、カタログ番号M5860)75.6μLを抗生物質プレート(既に抗生物質12μLを含有する)の各ウェルに添加した。標準的インキュベーター中で、35℃で4時間、試料を成長させた。
【0372】
ASTの時間4時間の成長における細菌細胞の標識化:抗生物質の存在下および非存在下で、試料を4時間(T4)インキュベートした後に、細胞を標識し、定量して、もしあれば、どの程度の成長が起こったかを決定した。インキュベートした試料-抗生物質プレートの各ウェルの100μLを脱水緩衝剤プレートの対応するウェルに移し、時間0のアッセイに関して上記したのと同じ手法で、FISHプローブ、ヘルパープローブ、磁気粒子、および焦点粒子と合わせた。
【0373】
比較方法:MulitPath(商標)アッセイに関する結果を、CLSIの方法M07-Ed13E 2018に従って実施したブロス微量希釈(BMD)と比較した。
【0374】
データ分析および閾値の作成:CCDカメラによって捕捉したイメージを使用して、視野内の物体の数とその物体の強度の両方を考慮するアルゴリズムによって、検出した細胞を推定した。この検出アルゴリズムに基づく細胞数は、時間0、ならびに抗生物質を含まない時間4時間および各抗生物質の6つの濃度全てを含む時間4時間において得られた。薬物濃度ごとの各尿試料について、成長前(時間0)の尿試料中のシグナルに対する成長後(時間4)の抗生物質を含有するウェル中のシグナルとして、成長倍率を計算した。成長倍率およびCLSI対応のブロス微量希釈における対応するウェル中の成長の観察を使用して、ロジスティック回帰モデルを使用し、細胞が抗生物質の存在下で成長している(よって、その濃度において耐性である)ものを超え、細胞が死滅する過程にある(よって、その濃度において感受性である)ものより低い成長倍率カットオフを決定するための閾値を作成した。成長倍率の数が決定した閾値未満にある点は、このアッセイによって生じたMIC値である。それに対応して、結果を、各抗生物質に対して感受性、中間、または耐性のカテゴリーに割り当てた。次いで、全てのデータをCLSIの標準的BMDと比較した。抗生物質の非存在下での4時間の成長は、生存可能な細菌が処理済尿試料中に存在することを確認するための対照条件である。
結果。
【0375】
図27から図30は、ゴールドスタンダードであるブロス微量希釈方法に一致する3つの個体の尿に関するMICを得るためにこの方法をどのように使用することができるかを実証する本発明者らのより大きなデータセットからの3つの実施例を示す。
【0376】
図27は、単一の薬物(ニトロフラントイン)に対する単一の臨床尿試料(BIUR0017)に関する異なる抗生物質濃度における成長倍率の数の結果を示す。ブロス微量希釈に関するMICは、成長倍率閾値によって決定されたMICと正確に一致する。
【0377】
図28は、単一の薬物(セファゾリン)に対する単一の臨床尿試料(BIUR0047)に関する異なる抗生物質濃度における成長倍率の数の結果を示す。ブロス微量希釈に関するMICは、成長倍率閾値によって決定されたMICと正確に一致する。
【0378】
図29は、単一の薬物(シプロフロキサシン)に対する単一の臨床尿試料(BIUR0057)に関する異なる抗生物質濃度における成長倍率の数の結果を示す。ブロス微量希釈に関するMICは、成長倍率閾値によって決定されたMICと正確に一致する。
【0379】
図30は、単一の薬物(トリメトプリム/スルファメトキサゾール)に対する単一の臨床尿試料(BIUR0052)に関する異なる抗生物質濃度における成長倍率の数の結果を示す。ブロス微量希釈に関するMICは、成長倍率閾値によって決定されたMICと正確に一致する。
【0380】
結論。この新規方法は、正確なASTの結果(MICの決定)が、注目すべきことに、長時間に及ぶコロニー精製ステップを用いずに、最小限に処理された尿臨床検体の4時間のみの差示的成長によってなされ得ることを示す。ASTの結果は、MICカテゴリーの抗生物質感受性結果として報告されたかどうかにかかわらず、ゴールドスタンダードであるブロス微量希釈方法と比較するのが好都合である。
【0381】
バリエーション。この実施例は、この新規AST方法の性能の例証であり、本明細書に含まれる具体的詳述に限定されるものではない。当業者であれば、したがって、異なるプローブ配列および核酸構造(PNA、LNAなど)、代替的なアッセイ化学(異なる界面活性剤、カオトロープ、フルオロフォア、緩衝剤、pH、温度、反応時間、構成成分の濃度など)、尿の濃度および尿の処理手順を使用することを含む多くのバリエーションが可能であることを容易に理解するであろう。この方法論はまた、他の抗生物質、生物学的検体ならびに他の細菌および非細菌病原体に明らかに拡張され得る。
【0382】
図27は、ニトロフラントインを含むBIUR0017を示す。
【0383】
図28は、セファゾリンを含むBIUR047を示す。
【0384】
図29は、シプロフロキサシンを含むBIUR057を示す。
【0385】
図30は、トリメトプリム/スルファメトキサゾールを含むBIUR052を示す。
【0386】
図31は、この実施例6において使用したプローブ配列の表である。
【0387】
(実施例7)
尿試料中の細菌に関する迅速かつ正確な抗微生物薬感受性試験
【0388】
概要。この実施例は、細菌を含まない尿中に添加された公知の抗生物質感受性プロファイルを有する病原体の抗微生物薬感受性を正確に決定するための本発明の使用について実証する。抗微生物剤を含有する微生物学的培地における差示的成長、その後の標的特異的細胞の定量化のための本発明と協奏するFISH方法を使用する成長の評価には、ちょうど4.5時間を要した。この新たな方法は、ゴールドスタンダードであるCLSIブロス微量希釈(BMD)方法と匹敵する性能を有する。
実験方法。
【0389】
細菌細胞の調製:公知の耐性プロファイルを有する50種の細菌株を、ATCCまたはCDC抗生物質耐性バンク(ARバンク)のいずれかから採取し、表Aに示す。これらのうちのそれぞれに関する細菌培養物は、Trypticase Soy Broth(TSB、Hardy Diagnostics カタログU65)に新鮮なトリプシンダイズ寒天プレート(TSA、BD カタログ221185)からの3から5個のコロニーを接種し、35℃で1.5から3時間成長させて対数期成長を達成することによって得られた。600nmの光学密度を使用して細胞濃度を推定し、各培養物をカチオンで調整したMueller Hinton II(MHBII、Teknova カタログM5860)中でおよそ5×10コロニー形成単位(CFU)/mLまで希釈した。
【0390】
尿の処理:試験する前に、プールしたヒトの尿(Innovative Research、カタログIRHUURE500ML)を事前に洗浄したZeba(商標)7K MWCOスピンカラムに、4mLの尿の1つの事前に洗浄した10mLのスピンカラム(ThermoFisher、カタログ番号89893)に対する比で適用し、製造業者の使用説明書に従って遠心分離した。
【0391】
磁気粒子の調製:細菌細胞を非特異的に捕捉するために使用したポリアスパラギン酸がコンジュゲートした磁気粒子(Fluidmag-PAA、Chemicell、カタログ4108)を、50mMのEPPS緩衝剤、pH8.2中へ、1mL当たり2.75×1012個の粒子まで1:20で希釈した。緑色色素(Dragon Green Fluorescent Microspheres、BANGS Laboratories、カタログMEDG001)を含有する蛍光磁気マイクロスフェアを1mL当たり3×10個の粒子の終濃度で懸濁液に添加した。これらの粒子により、光学システムが正しい平面に焦点を当てることが可能になる。凝集を最小限にするために、使用する直前に、磁気粒子混合物を1分間超音波処理した。以下に記載した時間0と時間4時間とのアッセイのために、別々の磁気粒子懸濁液を調製した。
【0392】
AST時間0における細菌細胞の標識:抗生物質の存在下または非存在下で、細菌成長の開始前の時間0(T0)におけるアッセイシグナルを各細菌について決定した。処理済尿30μL、5×10CFU/mLの細菌希釈液10μL、MHBII(100μL中の1×終濃度)60μLならびに標的細菌種に対して適切な種特異的なAlexa647Nで標識されたDNAオリゴヌクレオチドFISHプローブおよびそれに関連する未標識DNAヘルパープローブからなる反応混合物を調製した。使用したプローブ配列を図35の表に示す。次いで、混合物100μLを、脱水したハイブリダイゼーション緩衝剤(3X SSC(0.45MのNaCl、0.045Mのクエン酸Na)緩衝剤(Sigma、カタログ番号S6639)、0.18%のセトリミド(Sigma、カタログ番号H9151)、0.77%のCHAPSO(Sigma カタログ番号C3649)、0.72%のSB3-12(Sigma カタログ番号D0431)、0.13Mのチオシアン酸グアニジン(Sigma、カタログ番号G9277))を含有するマイクロタイタープレートのウェルに添加した。次いで、調製した磁気粒子混合物10μLをウェルに添加した。この反応混合物100μLを、ウェル(事前に乾燥させた)当たり50μLの「色素クッション」(50mMのTRIS pH7.5(Sigma カタログT1075)、7.5%v/vのOptiprep(Sigma カタログD1556)、50mg/mLのDirect Black 19(Orient カタログ191L))を含有するマイクロタイタープレートに移し、35℃で30分間インキュベートした。インキュベーション後に、マイクロタイタープレートを磁場(Dexter magnetic technologies、カタログ54170260)上に4分間置き、磁気粒子、標識化細胞を含有する画分を「色素クッション」を介して、ウェルの底のイメージング表面の近傍に移動させた。
【0393】
標識化細胞のイメージング:MultiPath研究所のイメージングシステムは、マイクロタイタープレートの選択されたウェルからイメージデータを自動的に捕捉することが可能なカスタムビルト機器およびソフトウェアである。これは、Prior Scientific(Rockland、MA)からの高精度リニアステージを使用し、各ウェルを蛍光ベースのイメージ獲得サブシステムに対して位置付ける。この機器は、4色の別々のカラーチャネルでイメージングすることができ、対物レンズ、LED照明、蛍光フィルターセット、およびカメラを使用する。対物レンズは、マイクロタイタープレートのウェル全体のイメージを捕捉するよう設計された視野を有する。イルミネーションモジュール光源は、カラーチャネルごとに2つの高出力LEDからなる。一連の蛍光イメージフレームは、ピクセル当たり12ビットを量子化する3.1MP Sony IMX265単色センサーを使用するカメラで捕捉される。次いで、複数のフレームを合計することによって、各ウェルに対する最終イメージが形成される。635/25nmの励起フィルターおよび667/30nmの発光フィルターを使用して100ミリ秒の露出で、16フレームを捕捉した。470/40nmの励起フィルターおよび520/40nmの励起フィルターで焦点粒子をイメージングし、20ミリ秒の露出で2フレームを捕捉した。
【0394】
抗生物質プレートの調製:2倍連続希釈系列で各抗生物質の6つの濃度を含有するマイクロタイタープレートを調製した。2倍希釈系列を、追加の細胞/尿/培地混合物によって正しい抗生物質範囲が得られるように、最終ブロス微量希釈における所望の濃度よりも10倍高い濃度で調製した。次いで、各抗生物質の希釈液12uLを96ウェルプレートの適切なウェル中にアリコートした。異なる抗体を異なる細菌について試験した。抗生物質の希釈液を、少なくとも2つのCLSI QC株に関するMICがCLSIの文献M100Ed29E-2019において報告されたQC範囲内にあることを確認することによって、適切な忍容性の範囲内にあることを検証した。各抗生物質を試験するために選択した濃度は、適切な細菌種に対する抗生物質に関してCLSIにより報告されたブレイクポイントをまたぎ、その結果、カテゴリーの決定(感受性/中間/耐性)はこのデータからなされた。抗微生物希釈系列を含有するウェルに加えて、水または他の希釈液を含有するいくつかのウェルは、抗生物質なしの陽性成長対照および陰性成長(細胞なし)対照のために含まれた。抗生物質プレートを-80℃で凍結させ、使用前に完全に解凍した。
【0395】
4時間の成長:時間0での細胞の定量化がなされている間に、調製した細菌培養物12μL、時間0のアッセイに対してなされたように処理したプールしたヒトの尿36uL、2X MHB II(Teknova、カタログ番号M5860)60uLおよび水2uLを調製した抗生物質プレートの各ウェルに添加した。標準的インキュベーター中で、35℃で4時間、試料を成長させた。
【0396】
ASTの時間4時間の成長における細菌細胞の標識化:抗生物質の存在下および非存在下で、試料を4時間(T4)インキュベートした後に、細胞を標識化し、定量して、もしあれば、どの程度の成長が起こったかを決定した。インキュベートした試料-抗生物質プレートの各ウェルの100μLを脱水緩衝剤プレートの対応するウェルに移し、時間0のアッセイに関して上記したのと同じ手法で、FISHプローブ、ヘルパープローブ、磁気粒子、および焦点粒子と合わせた。
【0397】
比較方法:MulitPath(商標)アッセイに関する結果を、CLSIの方法M07-Ed13E 2018に従って実施したブロス微量希釈(BMD)と比較した。
【0398】
データ分析および閾値の作成:CCDカメラによって捕捉したイメージを使用して、視野内の物体の数とその物体の強度の両方を考慮するアルゴリズムによって、検出した細胞を推定した。この検出アルゴリズムに基づく細胞数は、時間0、ならびに抗生物質を含まない時間4時間および各抗生物質の全ての濃度を含む時間4時間において得られた。薬物濃度ごとの各細菌試料について、成長前(時間0)の尿試料中のシグナルに対する成長後(時間4)の抗生物質を含有するウェル中のシグナルとして、成長倍率を計算した。成長倍率およびCLSI対応のブロス微量希釈における対応するウェル中の成長の観察を使用して、ロジスティック回帰モデルを使用し、細胞が抗生物質の存在下で成長している(よって、その濃度において耐性である)ものを超え、細胞が死滅する過程にある(よって、その濃度において感受性である)ものより低い成長倍率カットオフを決定するための閾値を作成した。成長倍率の数が決定した閾値未満にある点は、このアッセイによって生じたMIC値である。それに対応して、結果を、各抗生物質に対して感受性、中間、または耐性のカテゴリーに割り当てた。次いで、結果を、ATCCまたはCDCによって報告されたMIC値およびカテゴリーコールと比較した。抗生物質の非存在下での4時間の成長は、生存可能な細菌が各試料に添加されたことを確認するための、または阻害倍率を計算する際に使用するための対照条件である。
【0399】
図32は、さらに、セフタジジム(CAZ)に対して試験した細菌について、独占的な糸状菌の存在が(左側(正常細菌)と右側(糸状菌)を比較して、目視で容易に識別することができるように)、その抗生物質濃度において差し迫った細胞死の指標として得られたこと、およびMIC濃度が、可能ならばこれに従って調整されたことを示す。トリメトプリム/スルファメトキサゾール(TMP/SXT)について試験した細菌の場合には、閾値は、阻害倍率(抗生物質と細菌の両方を含有するウェルによって分割された細菌を含有するが抗生物質を含有しないウェルにおけるアッセイシグナル)に基づいて作成された。
結果。
【0400】
図33は、CDCまたはCLSIにより公表されたMICと一致する、尿マトリックスの存在下での個々の細菌に関するMICを得るためにこの方法をどのように使用することができるかを示す。この実施例は、単一の薬物(シプロフロキサシン)に対する単一の細菌(K.pneumoniae CDC0126)に関する異なる抗生物質濃度における成長倍率の数を示す。公表されたMIC(≧0.25μg/mL)は、本発明において記載した新規の、迅速AST方法によって決定したMICと正確に一致する。成長倍率に関する閾値(この実施例では20)は、灰色の横線で示す。
【0401】
図34の表は、試験した全ての株にわたる全体的性能を示す。試験したMICは、新規AST方法によって決定したMICが、正確に一致するか、または公表された値の1つの2倍希釈内にある場合に、本質的一致内にある。2つの場合を除き、全ての細菌/抗生物質の組合せが100%の本質的一致を有した。
【0402】
結論。本新規方法は、多剤耐性機序を有する高度に特徴付けられた細菌株に対して公表された値と一致するMICの決定が、試料マトリックスの文脈において、4時間のみの成長によってなされ得ることを示す。
【0403】
バリエーション。この実施例は、この新規AST方法の性能の例証であり、本明細書に含まれる具体的詳述に限定されるものではない。当業者であれば、したがって、異なるプローブ配列および核酸構造(PNA、LNAなど)、代替的なアッセイ化学(異なる界面活性剤、カオトロープ、フルオロフォア、緩衝剤、pH、温度、反応時間、構成成分の濃度など)、尿の濃度および尿の処理手順を使用することを含む多くのバリエーションが可能であることを容易に理解するであろう。この方法論はまた、他の抗生物質、生物学的検体および特異的プローブが設計され得る他の細菌に明らかに拡張され得る。
【0404】
図32は、糸状菌(右のパネル)に対する正常細菌(左のパネル)の目視比較である。
【0405】
図33は、本発明において記載した新規な、迅速AST方法によって得られたMICが、0.25μg/mLでコールされることを示す。
【0406】
【表A-1】
【表A-2】
【0407】
図34は、この実施例において試験した全ての細菌および抗生物質に関するASTの結果の表である。
【0408】
図35は、この実施例7において使用したプローブ配列の表である。
【0409】
(実施例8)
細胞精製を使用しない臨床尿検体に対する迅速かつ正確な自動ASTの結果
【0410】
概要。この実施例は、長時間に及ぶ細胞精製ステップを必要としない、4時間での臨床尿試料中の病原体に関するASTの結果を自動的に決定するための本発明のシステムおよび方法の使用について実証する。自動化された機器は、一定の生理的温度で抗微生物薬感受性を決定するために、試薬を含有するカートリッジにおいて必要とされるステップを実施する。温度は、微生物成長と標的細胞を検出および定量するための本発明の方法との両方に適合する。後者の方法は、FISHに基づく標識化、磁気選別、および非拡大デジタルイメージングを使用する本発明のシステムで実施される。
【0411】
機器の空気圧サブシステムを使用して、カートリッジ内の検体を、様々な濃度の様々な抗微生物剤と微生物学的培地とを含有するポーションまたはアリコート中に自動的に分配する。ポーションのうちの1つを使用して、成長インキュベーションの前に病原体細胞を定量する。このシステムはカートリッジを4時間インキュベートし、次いで、抗微生物剤を含有するウェル中の標的細胞数を定量する。抗微生物剤を含有するインキュベートしたポーション中の細胞数のインキュベーション前に測定した細胞数との比較を使用して、様々な抗生物質における病原体の抗微生物薬感受性を決定する。
【0412】
この実施例は、尿中にE.coliを有する入院患者からの臨床検体において直接的に、迅速かつ自動化された抗微生物薬感受性試験のための本発明の自動化システム、デバイス、および方法を使用する結果を示す。本発明は、ちょうど4時間で、ゴールドスタンダードであるCLSIブロス微量希釈(BMD)方法と比較して正確な性能を実現した。
実験方法。
【0413】
尿検体:尿路感染症(UTI)を有する患者から採取され、E.coliを含有することが知られている残遺物である匿名化された尿検体をベスイスラエル病院(Boston、MA)のKirby医師の研究所から受領した。試料は、採取の1~5日後に受領し、細胞生存率の損失を制限する尿防腐剤を含有した。各試料について、尿の色、pH、および微粒子の存在を記録した。受領の際に、存在する細菌についておよそのCFU/mLを決定し、Kirby医師の研究所によって報告された単一または混合した細菌の形態学を確認するために、従来の尿培養を実施した。簡潔には、較正した1μLのループを十分に混合した尿試料中に入れ、1μLをトリプシンダイズ寒天(TSA)プレート上に均一に広げ、35℃のインキュベーター中で18~24時間インキュベートした。尿試料の残りを以下に記載したように処理およびアッセイした。
ASTカートリッジの調製-培地および抗微生物薬
【0414】
4X MHB II(Teknova、カタログ番号101320-356)25uLを8個の個々の成長ウェルのそれぞれの中に分配することによってカートリッジを調製する何日か前に(カートリッジの図としての図1を参照されたい)、成長ウェル1および2は時間0の測定のためのものであり(以下の記載を参照されたい)、よって、成長ウェルには成長培地のみが含有されている。成長ウェル3および4も培地しか含有しなかった。これらのウェルは、成長が4時間をかけて観察されることを確認するための陽性対照としての役割を果たす。成長ウェル5および6、ならびに7および8中に、2つの濃度の抗生物質を添加した。これを行うために、1mL当たりのマイクログラムで標的濃度より22.2倍高い倍率で濃縮した抗生物質4.5μLを適切な成長ウェル中に沈着させた。カートリッジは、シプロフロキサシン(CIP)とニトロフラントイン(NIT)との両方またはセファゾリン(CFZ)とトリメトプリム/スルファメトキサゾール(TMP/SXT)との両方のいずれかを2つの濃度で含有した。カートリッジ中の各抗生物質の終濃度については、表1を参照されたい。次いで、培地および抗生物質を40℃のコンベクションオーブン中で16~20時間乾燥させた。
【0415】
ASTカートリッジの調製-ハイブリダイゼーション試薬
【0416】
3X SSC(0.45MのNaCl、0.045Mのクエン酸ナトリウム、pH7.5)(Sigma、カタログ番号S6639)、0.18%w/vのセトリミド、0.77%のCHAPSO(Sigma カタログ番号C3649)、0.72%のSB3-12(Sigma カタログ番号D0431)、および0.13Mのチオシアン酸グアニジン(Sigma、カタログ番号G9277)を含有するハイブリダイゼーション緩衝剤を調製した。トレハロース(Sigma、カタログ番号T9449)をこの混合物中に溶解させ、終濃度を10%w/vとした。このハイブリダイゼーション緩衝剤-トレハロース混合物を8.3μL体積のビーズ中で凍結乾燥させた。2つの8.3uLビーズを8つの試薬ウェルのそれぞれの中に入れた(カートリッジ上の位置について、図1を参照されたい)。
ASTカートリッジの調製-磁気粒子
【0417】
ポリアスパラギン酸がコンジュゲートした磁気粒子(Fluidmag-PAA、Chemicell、カタログ4108)を50mMのEpps緩衝剤、pH8.2中に1:20で希釈し、10%w/vのトレハロース(Sigma、カタログ番号T9449)の終濃度を含む1mL当たり2.75×1014個の粒子の濃度とした。これを希釈するために、緑色色素(Dragon Green Fluorescent Microspheres、BANGS Laboratories、カタログMEDG001)を含有する蛍光磁気マイクロスフェアを1mL当たり3×10個の粒子の終濃度で懸濁液に添加した。凝集を最小限にするために、使用する直前に、磁気粒子混合物を1分間超音波処理した。次いで、混合物を10μL体積のビーズ(反応ごとに2.64×1012個の粒子)中で凍結乾燥させた。1つの磁気粒子を凍結乾燥させたビーズを2つのハイブリダイゼーションミックスビーズと一緒に8個の試薬ウェルのそれぞれの中に入れた。
試料をカートリッジ中に入れるための手順-尿の処理
【0418】
試験の前に、尿防腐剤および他の妨害する可能性のある化合物をサイズ排除クロマトグラフィーを使用して除去した。各臨床的に陽性の尿試料2.5mLを事前に洗浄したZeba(商標)7K MWCOスピンカラム(ThermoFisher、カタログ番号89893)に適用し、製造業者の使用説明書に従って遠心分離した。処理後の細菌損失を調査するために、上記のようにこの処理した試料に関して尿培養を繰り返した。
試料をカートリッジ中に入れるための手順-試料をカートリッジ上に置く
【0419】
各処理済尿試料750μLを水1705μLおよび種特異的DNAオリゴヌクレオチド蛍光in situハイブリダイゼーション(FISH)プローブ45μLおよび未標識DNAヘルパープローブと合わせて、30%v/vの終濃度の尿を含有する溶液を作製した。各細菌に対して使用したオリゴヌクレオチド、それらの濃度および色素標識は表2に見出すことができる。混合物1mLをカートリッジの試料ポットに添加し、カートリッジを分析器上に置いた。
自動分析器上でのASTカートリッジの実行
【0420】
次いで、カートリッジを機器上に置いた後、データ分析以外の全てのその後の作動は自動で行われた。尿/水/FISHプローブ混合物(試料)は、最初に、真空下で、カートリッジ上部の8つの成長ウェル中に向けられた。次いで、最初の2つの成長ウェル中の試料を反応ウェルにすぐに再度位置付け、ハイブリダイゼーション緩衝剤/FISHプローブミックスおよび凍結乾燥させた磁気粒子を再水和させた。次いで、試料は、脱水した「色素クッション」(50mMのTRIS pH7.5(Teknova、カタログT5075)、7.5%v/vのOptiprep(Sigma、カタログD1556)、5mg/mLのDirect Black-19(Orient、カタログ番号3222)、コンベクションオーブン中で60℃で3時間乾燥させた)46μLを含有するイメージングウインドウに続き、分析器上で35℃で30分間インキュベートした。このインキュベーション後に、次いで、カートリッジを磁石ステーションに再配置させ、強力な永久磁石(Dexter magnetic technologies、カタログ54170260)の上に4分間置いて、標識された磁気粒子と相互作用する細菌細胞をイメージング表面の近傍に移動させた。最後に、カートリッジをイメージングステーションまで動かし、以下に記載した非拡大CCDイメージャーを使用してイメージングを撮影した。
【0421】
残りの6つの成長ウェル中の試料をその場所に保ち、細菌を、抗生物質の存在下または非存在下で、再水和した培地中で35℃で4時間成長させた。成長後に、細胞懸濁液を、時間0のアッセイについて行ったように、試薬ウェルに再度位置付け、正確に同じハイブリダイゼーション反応、磁気プルダウン、およびイメージングを上記のように実施した。
分析器のイメージングシステムおよびイメージングプロセス
【0422】
MultiPath Analyzerイメージングシステムは、完全に自動化された試験の一部として、MultiPath Cartridgeの選択されたウェルからイメージデータを自動的に捕捉することが可能なカスタムビルト機器およびソフトウェアである。これは、カスタム設計された精度の高い3軸位置決めシステムを使用し、各ウェルを蛍光ベースのイメージ獲得サブシステムに対して位置付ける。この分析器は、4色の別々のカラーチャネルでイメージングすることができ、対物レンズ、LED照明、蛍光フィルターセット、およびカメラを使用する。対物レンズは、Cartridge Imaging Well全体のイメージを捕捉するよう設計された視野を有する。イルミネーションモジュール光源は、カラーチャネルごとに2つの高出力LEDからなる。一連の蛍光イメージフレームは、ピクセル当たり12ビットを量子化する3.1MP Sony IMX265単色センサーを使用するカメラで捕捉される。次いで、複数のフレームを合計することによって、各ウェルに対する最終イメージが形成される。635/25nmの励起フィルターおよび667/30nmの発光フィルターを使用して100ミリ秒の露出で、16フレームを捕捉した。470/40nmの励起フィルターおよび520/40nmの励起フィルターで焦点粒子をイメージングし、20ミリ秒の露出で2フレームを捕捉した。
【0423】
データ分析:CCDカメラによって捕捉したイメージを使用して、視野内の物体の数とその物体の強度との両方を考慮するアルゴリズムによって、検出した細胞を推定した。この検出アルゴリズムに基づく細胞数は、時間0、ならびに抗生物質を含まない時間4時間および各抗生物質の両濃度を含む時間4時間において得られた。薬物濃度ごとの各尿試料について、成長前(時間0)の尿試料中のシグナルに対する成長後(時間4)の抗生物質を含有するウェル中のシグナルとして、成長倍率を計算した。成長倍率とCLSI対応のブロス微量希釈における対応するウェル中の成長の観察とを比較して、閾値を、ブロス微量希釈の結果との一致を最大化する成長倍率カットオフのために選択した。細胞が抗生物質の存在下で成長している(よって、その濃度において耐性である)条件では成長倍率が多くなり、細胞が死滅する過程にある(よって、その濃度において感受性である)条件では成長倍率の数が少なくなる。これらのカートリッジでは、両濃度の抗生物質がそれらの成長倍率の数に基づいて成長を示さなければ、その尿試料中の細菌は感受性と呼ばれる。低い方の濃度では成長が存在するが、高い方の濃度では成長が存在しない場合、その尿試料中の細菌は、シプロフロキサシン、ニトロフラントインおよびトリメトプリム/スルファメトキサゾールの場合には中間であり、セファゾリンの場合には耐性である。両濃度の抗生物質がそれらの成長倍率閾値に基づいて成長を示す場合、その尿試料中の細菌は耐性と呼ばれる。全ての感受性/耐性コールデータを、CLSI対応の標準的BMDにおけるMIC決定によって作製された感受性/耐性コールと比較した。抗生物質の非存在下での4時間の成長は、生存可能な細菌が処理済尿試料中に存在することを確認するための対照条件である。
結果。
【0424】
図37は、E.coli株を含有した臨床尿試料BIUR0067を含有する2つのカートリッジ中の4つの複製の平均成長倍率を示す。このグラフは、2つの異なるカートリッジ中の4つの複製にわたるシプロフロキサシンとニトロフラントインとのそれぞれの2つの濃度のそれぞれにおける平均成長倍率を示す。両抗生物質に対する成長倍率値2を使用して、MulitPathアッセイは、両シプロフロキサシン(CIP)濃度を成長とコールし、両ニトロフラントイン(NIT)濃度を成長なしとコールする。したがって、MulitPathによって、BIUR0067はシプロフロキサシンに対して耐性であり、ニトロフラントインに対して感受性である。この尿から単離され、CLSI-標準的ブロス微量希釈で試験されたE.coli株は、これらの感受性/耐性コールと一致した。
【0425】
図39は、K.pneumonaie株を含有した臨床尿試料BIUR0084を含有する2つのカートリッジ中の4つの複製の平均成長倍率を示す。このグラフは、2つの異なるカートリッジ中の4つの複製にわたるセファゾリンとトリメトプリム/スルファメトキサゾールとのそれぞれの2つの濃度のそれぞれにおける平均成長倍率を示す。両抗生物質に対する成長倍率値2を使用して、MulitPathアッセイは、セファゾリンとトリメトプリム/スルファメトキサゾールとの両抗生物質の濃度の全てを成長とコールする。したがって、K.pneumoniaeのこの株は、両抗生物質に対して耐性である。これは、社内でなされた両方のCLSI-標準的ブロス微量希釈と一致する。
【0426】
結論。この実施例は、尿中にE.coliを有する入院患者からの臨床検体において直接的に、迅速かつ自動化された抗微生物薬感受性試験のための本発明の自動化システム、デバイス、および方法を使用する結果を示す。本発明は、ちょうど4時間で、ゴールドスタンダードであるCLSIブロス微量希釈(BMD)方法と比較して正確な性能を実現した。
【0427】
バリエーション。この実施例は、カートリッジに関するこの新規AST方法の性能の例証であり、本明細書に含まれる具体的詳述に限定されるものではない。当業者であれば、したがって、異なるプローブ配列および核酸構造(PNA、LNAなど)、代替的なアッセイ化学(異なる界面活性剤、カオトロープ、フルオロフォア、緩衝剤、pH、温度、反応時間、構成成分の濃度)、尿の濃度および尿の処理手順ならびに反応物および抗微生物薬の安定化に対する変更、異なる細菌標的、異なる抗微生物剤などを使用することを含む多くのバリエーションが可能であることを容易に理解するであろう。この方法論はまた、他の生物学的検体ならびに他の細菌および非細菌病原体に明らかに拡張され得る。
【0428】
図36は、Multipath(商標)UTI-ASTカートリッジを示す。
【0429】
図37は試験した抗生物質の濃度の表を示している。
【0430】
図38は、この実施例8において使用したオリゴヌクレオチドの表である。
【0431】
図39は、BIUR0067の結果を示す。
【0432】
図40は、BIUR0084の結果を示す。
【0433】
(実施例9)
尿検体における直接的な迅速AST方法は、様々な病原体濃度に対して頑強である
【0434】
概要。可変的な接種濃度に対する頑強性は、検体に直接由来する検体を試験する際に、標的細胞の濃度が知られていないため、迅速AST方法にとって重要である。この実施例は、人為的検体に対して、広範囲の標的細胞濃度を網羅する場合に、尿検体から直接的に正確かつ一致する結果をもたらす本発明の使用を実証する。この実施例は、10%の尿の存在下でのE.coli BAA-2469、P.aeruginosa ATCC 27853、K.pneumoniae ATCC 700603およびK.pneumoniae CDC-0043の可変的な細胞入力によって、ASTに対するゴールドスタンダードであるブロス微量希釈(BMD)と比較して正確なASTの結果が実現されることを実証する。
【0435】
実験手順。
【0436】
抗生物質プレートの調製:2倍連続希釈系列で3から5つの抗生物質のいずれかの濃度を含有する抗生物質プレートを、所望の終濃度よりも10倍高い濃度の10μLを96ウェルプレートのウェル中に分配することによって調製した。各抗生物質を試験するために選択した濃度は、試験した細菌株に対するCLSIにより報告されたMICをまたいだ。以下の抗生物質の全てまたはサブセットを用いてプレートを調製した:セファゾリン、シプロフロキサシン、レボフロキサシン、ニトロフラントイン、およびトリメトプリム-スルファメトキサゾール。抗微生物希釈系列を含有するウェルに加えて、4つのウェルは、陽性(抗生物質の非存在下での細菌成長)および陰性(細菌細胞なし)の対照を可能とするための水を含有した。
【0437】
培養物の調製:E.coli BAA-2469、P.aeruginosa ATCC 27853、K.pneumoniae ATCC 700603、およびK.pneumoniae CDC-0043に関する細菌培養物は、Trypticase Soy Broth(TSB、Hardy Diagnostics カタログU65)に新鮮なトリプシンダイズ寒天プレート(TSA、BD カタログ221185)からの3から5個のコロニーを接種し、35℃で1.5から3時間成長させて対数期成長を達成することによって得られた。これらの細胞を、様々な接種(2×10CFU/mL~1×10CFU/mL)に対して、1×カチオンで調整したMueller-Hintonブロス(MHBII、Teknova カタログM5860)中で希釈した。より正確な細胞濃度のために、これらの推定された細菌入力を、コロニー計数を使用して調整した。プレート計数は、対数期培養物をMHBII中で約500CFU/mLに希釈し、TSAプレート上に100μLをプレーティングし、35℃で16から24時間の成長後にコロニーを計数することによって決定した。平均プレート計数を使用して、試験した各濃度で存在する実際のCFUを計算した。
【0438】
磁気粒子の調製:2-ヒドロキシプロピルトリメチルアンモニウムクロリドをコーティングしたシリカ磁気粒子(SiMag-Q、Chemicell、カタログ1206-5)を、50mMのEPPS緩衝剤、pH8.2中へ、1mL当たり2.75×1012個の粒子まで1:20で希釈した。緑色色素(Dragon Green Fluorescent Microspheres、BANGS Laboratories、カタログMEDG001)を含有する蛍光磁気マイクロスフェアを1mL当たり3×10個の粒子の終濃度で懸濁液に添加した。これらの粒子により、光学システムが正しい平面に焦点を当てることが可能になる。凝集を最小限にするために、使用する直前に、磁気粒子混合物を1分間超音波処理した。以下に記載した時間0と時間4時間とのアッセイのために、別々の磁気粒子懸濁液を調製した。
【0439】
AST時間0における細菌細胞の標識化:抗生物質の存在下または非存在下で、細菌成長の開始前のアッセイシグナル(時間0またはT0)を各生物および接種について決定した。各試料10μLをハイブリダイゼーション緩衝剤80μLに添加し、3X SSC(0.45MのNaCl、0.045Mのクエン酸Na、Sigma、カタログ番号S6639)、1%のCHAPS(Sigma カタログ番号C3023)、1%のNOG(Sigma カタログ番号08001)、1Xカチオンで調整したMueller-Hinton Broth(MHBII)、種特異的DNAオリゴヌクレオチドFISHプローブおよび未標識DNAヘルパープローブの終濃度とした。使用したオリゴヌクレオチドプローブを表Bに示す。プールした尿(社内で採取し濾過した)10μLを混合物に直接添加することによって、終濃度10%の尿を得た。次いで、上記のように調製した磁気粒子混合物10μLを添加した。この反応混合物100μLを1ウェル(事前に乾燥させた)当たり50μLの「色素クッション」(50mMのTRIS pH7.5(Teknova、カタログT5075)、7.5%v/vのOptiprep(Sigma、カタログD1556)、5mg/mLのDirect Black-19(Orient、カタログ番号3222)(乾燥-クッションプレート)を含有するマイクロタイタープレートに移し、35℃で30分間インキュベートした。インキュベーション後に、マイクロタイタープレートを磁場(Dexter magnetic technologies、カタログ54170260)上に4分間置き、磁気粒子、標識化細胞を含有する画分を「色素クッション」を介して、ウェルの底のイメージング表面の近傍に移動させた。
【0440】
標識化細胞のイメージング:MultiPath(商標)研究所のイメージングシステムは、マイクロタイタープレートの選択されたウェルからイメージデータを自動的に捕捉することが可能なカスタムビルト機器およびソフトウェアである。これは、Prior Scientific(Rockland、MA)からの高精度リニアステージを使用し、各ウェルを蛍光ベースのイメージ獲得サブシステムに対して位置付ける。この機器は、4色の別々のカラーチャネルでイメージングすることができ、対物レンズ、LED照明、蛍光フィルターセット、およびカメラを使用する。対物レンズは、マイクロタイタープレートのウェル全体のイメージを捕捉するよう設計された視野を有する。イルミネーションモジュール光源は、カラーチャネルごとに2つの高出力LEDからなる。一連の蛍光イメージフレームは、ピクセル当たり12ビットを量子化する3.1MP Sony IMX265単色センサーを使用するカメラで捕捉される。次いで、複数のフレームを合計することによって、各ウェルに対する最終イメージが形成される。635/25nmの励起フィルターおよび667/30nmの発光フィルターを使用して100ミリ秒の露出で、16フレームを捕捉した。470/40nmの励起フィルターおよび520/40nmの励起フィルターで焦点粒子をイメージングし、20ミリ秒の露出で2フレームを捕捉した。
【0441】
4時間の成長:時間0での細胞の定量化がなされている間に、各生物接種材料10μL、プールした尿10μL、および1X MHBII 70μLを抗生物質プレート(既に抗生物質10μLを含有する)の適切なウェルに添加した。標準的エアーインキュベーター中で、35℃で4時間、試料を成長させた。
【0442】
ASTの時間4時間の成長における細菌細胞の標識化:抗生物質の存在下および非存在下で、試料を4時間(T4)インキュベートした後に、細胞を標識化し、定量して、もしあれば、どの程度の成長が起こったかを決定した。インキュベートした試料-抗生物質プレートのうちの10μL(10%)をマイクロタイタープレートに移し、時間0のアッセイに関して上記したのと同じ手法で、100μLのハイブリダイゼーション緩衝剤、FISHプローブ、ヘルパープローブ、磁気粒子、および焦点粒子と合わせた。
【0443】
比較方法:本明細書に記載の新規AST方法を使用する結果を、CLSI M07-Ed13E 2018に従って実施したブロス微量希釈(BMD)と比較した。
【0444】
データ分析および閾値の作成:CCDカメラによって捕捉したイメージを使用して、視野内の物体の数とその物体の強度との両方を考慮するアルゴリズムによって、検出した細胞を推定した。この検出アルゴリズムに基づく細胞数は、時間0、ならびに抗生物質を含まない時間4時間および各抗生物質の全ての濃度を含む時間4時間において得られた。薬物濃度ごとの各試料接種について、成長前(時間0)の尿試料中のシグナルに対する成長後(時間4)の抗生物質を含有するウェル中のシグナルとして、成長倍率を計算した。成長倍率およびCLSI対応のブロス微量希釈における対応するウェル中の成長の観察を使用して、ロジスティック回帰モデルを使用し、細胞が抗生物質の存在下で成長している(よって、その濃度において耐性である)ものを超え、細胞が死滅する過程にある(よって、その濃度において感受性である)ものより低い成長倍率カットオフを決定するための閾値を作成した。成長倍率の数が決定した閾値未満にある点は、このアッセイによって生じたMIC値である。それに対応して、結果を、各抗生物質に対して感受性、中間、または耐性のカテゴリーに割り当てた。次いで、全てのデータをCLSIの標準的BMDと比較した。抗生物質の非存在下での4時間の成長は、生存可能な細菌が処理済尿試料中に存在することを確認するための対照条件である。
結果。
【0445】
以下の図は、この方法が、ゴールドスタンダードであるブロス微量希釈方法と一致する一方で、接種レベルの変化に対してどのように頑強であるかを示す。
【0446】
図41は、新規AST方法により得られた結果を、試験した全ての薬物に対して単一の濃度で実施した標準的BMDの結果と比較する。3行目は、新規AST方法およびゴールドスタンダードであるBMDによって得られたMICを比較した。全てのMICコールは、CLSIに対応するBMDの1回の2倍希釈(本質的一致)内にあった。4行目は、MICに基づくカテゴリーの抗生物質感受性の結果(S=感受性、I=中間、R=耐性)を比較した(カテゴリー一致)。Klebsiellaのサブセットの濃度は、ブロス微量希釈においてMICと異なるカテゴリーコールを与えるが、これらの全ては、標準的AST方法論によって軽度のエラーとして分類されるに過ぎなかった。
【0447】
図42は、標準的ブロス微量希釈方法(24時間のBMD、破線)と比較したE.coli BAA-2469に対する全ての接種レベルに関して上記した新規4時間の方法により得られたMIC(塗りつぶしの丸)を示す。この新規方法により決定した全てのMICは本質的一致内にあった(影付きの領域)。図43は、図42に関する生データを示す。
【0448】
結論。本明細書で提示された迅速な4時間のAST方法は、広範囲の標的細胞濃度に対して初期細胞濃度に対して頑強である。可変的な接種濃度に対する頑強性は、検体に直接由来する検体を試験する際に、標的細胞の濃度が知られていないため、迅速AST方法にとって重要である。
【0449】
バリエーション。この実施例は、この新規AST方法の性能の例証であり、本明細書に含まれる具体的詳述に限定されるものではない。当業者であれば、したがって、異なるプローブ配列および核酸構造(PNA、LNAなど)、代替的なアッセイ化学(異なる界面活性剤、カオトロープ、フルオロフォア、緩衝剤、pH、温度、反応時間、構成成分の濃度)、尿の濃度および尿の処理手順を使用することを含む多くのバリエーションが可能であることを容易に理解するであろう。この方法論はまた、他の生物学的検体ならびに特異的プローブが設計され得る他の細菌および非細菌病原体に、ならびに他の抗微生物剤または化学薬剤に対して、明らかに拡張され得る。
【0450】
図41は、全ての生物、抗生物質および接種レベルに対する全体的な本質的一致およびカテゴリー一致のまとめである。
【0451】
図42は、従来のBMD方法と比較した、本明細書に記載の新たな方法を使用して得られた様々な接種レベルに関するMICの結果を示す。
【0452】
図43は、得られた様々な接種レベルに関するMICの結果のまとめである。
【0453】
図44は、この実施例9において使用したプローブ配列の表である。
【0454】
(実施例10)
細胞精製を用いない複数の細菌種を含有する尿臨床検体における標的病原体に対する迅速な抗微生物薬感受性試験
【0455】
概要。抗微生物薬感受性試験に関する現在の方法には、他の微生物を含まない標的病原体細胞の純粋な集団を確保するために長時間に及ぶ培養ベースのコロニー精製が必要とされる。通常の方法であるコロニー精製は、結果を実現するために2~5日を要する。その間、患者は、感染を引き起こす病原体を死滅させるのに最適でない場合があり、さらに完全に無効である可能性のある強力な広域スペクトルの抗生物質により経験的に処置される。加えて、広域スペクトルの抗生物質による経験的処置によって、抗生物質耐性の広がりがもたらされる。
【0456】
現在の方法は、これらの方法が、濁度の増加などの非特異的検出方法を使用するため、どの抗微生物剤が微生物学的培地中の標的病原体の成長を阻害するかを決定するために、長時間に及ぶ細胞精製プロセスを必要とする。細胞複製物の非特異的測定を使用する場合、仮に標的病原体の細胞のみが含有されるならば、見られる成長は標的病原体によるものであることを知ることができるに過ぎない。ほとんどの医療用検体は滅菌されていないため、現在の抗微生物薬感受性試験方法では細胞の精製が行われなければならない。検体は、一般的に、ヒトの体で生息する良性の通常の細菌集団であるヒトマイクロバイオームを構成する微生物を含有する。
【0457】
対照的に、本発明の方法は、コロニー精製ステップを用いずに、検体から直接的に正確な抗微生物薬感受性試験結果を実現することができる。この方法は、抗微生物剤を含有する微生物学的培地中で標的病原体に特異的な成長を評価するという点で、現在の方法と異なる。
【0458】
この実施例は、迅速な抗微生物薬感受性試験方法によって、15個の異なる培養陰性尿試料に関する尿マトリックス(10%)を含む人為的試料中で、E.coli株に関する最少阻止濃度(MIC)が正確に決定されることを実証する。ここで、本発明者らは、新たな方法を使用する抗微生物薬感受性試験結果が正確であり、高濃度の他の微生物種を含有する尿試料中のオフターゲット細菌によって有意に影響を受けないことを示す。
実験手順。
【0459】
抗生物質プレートの調製:実験手順を開始する前に、2倍連続希釈系列で5つの濃度を含有するプレートを、所望の濃度よりも10倍高い濃度の10μLを分配することによって調製した。各抗生物質を試験するために選択した濃度は、E.coliに対する抗生物質に関してCLSIにより報告されたブレイクポイントをまたいだ。抗微生物希釈系列を含有するウェルに加えて、水を含有する4つのウェルが、陽性および陰性の対照を可能とするためにプレート中に含まれた。
【0460】
培養物の調製:E.coli BAA-2469、ならびに8つの他のオフターゲット種(S.aureus ATCC 25923、C.freundii ATCC 43864、A.baumannii ATCC 19606、S.epidermidis ATCC 12228、M. luteus(環境分離株)、C.minutissmum ATCC 23348-BAA 949、K.pneumoniae CDC 0043、およびK.pneumoniae CDC 0141)のうちの3から5個のコロニーを、5mLのTryptic Soy Broth(TSB、Hardy Diagnostics カタログU65)中にそれぞれ別々に接種し、35℃で1~2時間、振盪させながらインキュベートした。光学密度を分光光度計によって測定し、生物を1Xカチオンで調整したMueller-Hinton Broth(MHBII、Teknova カタログM5860)中に希釈した。E.coliをおよそ5×10CFU/mL(最終アッセイ濃度は5×10CFU/mである)まで希釈し、一方、他のオフターゲット種は様々な接種のために希釈した(1×10から5×10CFU/mLの範囲に及ぶ)。
【0461】
磁気粒子の調製:2-ヒドロキシプロピルトリメチルアンモニウムクロリドをコーティングしたシリカ磁気粒子(SiMag-Q、Chemicell、カタログ1206-5)を、50mMのEPPS緩衝剤、pH8.2中へ、1mL当たり2.75×1012個の粒子まで1:20で希釈した。緑色色素(Dragon Green Fluorescent Microspheres、BANGS Laboratories、カタログMEDG001)を含有する蛍光磁気マイクロスフェアを1mL当たり3×10個の粒子の終濃度で懸濁液に添加した。これらの粒子により、光学システムが正しい平面に焦点を当てることが可能になる。凝集を最小限にするために、使用する直前に、磁気粒子混合物を1分間超音波処理した。以下に記載した時間0と時間4時間とのアッセイのために、別々の磁気粒子懸濁液を調製した。
【0462】
AST時間0における細菌細胞の標識化:抗生物質の存在下または非存在下で、細菌成長の開始前(時間0またはT0)のアッセイシグナルをE.coliの各種について決定した。各試料10μLをハイブリダイゼーション緩衝剤(3X SSC(0.45MのNaCl、0.045Mのクエン酸ナトリウム)(Sigma、カタログ番号S6639)、1%のCHAPS(Sigma カタログ番号C3023)、1%のSB3-12(Sigma カタログ番号08001)、1X カチオンで調整したMueller-Hinton Broth(MHBII)、E.coli-特異的DNAオリゴヌクレオチドFISHプローブおよび未標識DNAヘルパープローブ)80μLに添加した。プローブ配列を図50の表に示す。プールした尿(社内で採取し濾過した)10μLを混合物に直接添加することによって、終濃度9.1%の尿を得た。上記のように調製した磁気粒子混合物10μLをこの混合物に直接添加した。ここで、ハイブリダイゼーション混合物、尿、および磁気粒子を含有する試料100μLを1ウェル(事前に乾燥させた)当たり50μLの「色素クッション」(50mMのTRIS pH7.5(Teknova、カタログT5075)、7.5%v/vのOptiprep(Sigma、カタログD1556)、5mg/mLのDirect Black-19(Orient、カタログ番号3222)を含有するマイクロタイタープレートに移し、35℃で30分間インキュベートした。インキュベーション後に、マイクロタイタープレートを磁場(Dexter magnetic technologies、カタログ54170260)上に4分間置き、磁気粒子、標識化細胞を含有する画分を「色素クッション」を介して、ウェルの底のイメージング表面の近傍に移動させた。
【0463】
標識化細胞のイメージング:MultiPath(商標)研究所のイメージングシステムは、マイクロタイタープレートの選択されたウェルからイメージデータを自動的に捕捉することが可能なカスタムビルト機器およびソフトウェアである。これは、Prior Scientific(Rockland、MA)からの高精度リニアステージを使用し、各ウェルを蛍光ベースのイメージ獲得サブシステムに対して位置付ける。この機器は、4色の別々のカラーチャネルでイメージングすることができ、対物レンズ、LED照明、蛍光フィルターセット、およびカメラを使用する。対物レンズは、マイクロタイタープレートのウェル全体のイメージを捕捉するよう設計された視野を有する。イルミネーションモジュール光源は、カラーチャネルごとに2つの高出力LEDからなる。一連の蛍光イメージフレームは、ピクセル当たり12ビットを量子化する3.1MP Sony IMX265単色センサーを使用するカメラで捕捉される。次いで、複数のフレームを合計することによって、各ウェルに対する最終イメージが形成される。635/25nmの励起フィルターおよび667/30nmの発光フィルターを使用して100ミリ秒の露出で、16フレームを捕捉した。470/40nmの励起フィルターおよび520/40nmの励起フィルターで焦点粒子をイメージングし、20ミリ秒の露出で2フレームを捕捉した。
【0464】
4時間の成長:Staphylococcus epidermidis、Micrococcus luteus、Corynebacterium minutissimum、Staphylococcus aureus、Acinetobacter baumannii、Citrobacter freundiiの存在下で、E.coli BAA 2469を3つの抗微生物剤:シプロフロキサシン(CIP)、レボフロキサシン(LVX)、およびニトロフラントイン(NIT)に対するそれらの感受性について試験した。Klebsiella pneumoniaeの存在下で、E.coli BAA 2469を5つの抗微生物剤:セファゾリン(CFZ)、シプロフロキサシン(CIP)、レボフロキサシン(LVX)、ニトロフラントイン(NIT)、およびトリメトプリム-スルファメトキサゾール(TMP/SXT)に対して試験した。これらの抗微生物剤を含有する抗生物質プレートを、上記方法に従って調製した。時間0での細胞の定量化がなされている間に、いずれかのE.coli種(5×10CFU/mL)10μL、オフターゲット種(1×10から5×10CFU/mL)10μL、プールした尿10μL、およびMHB II(Teknova、カタログ番号M5860)60μLを、抗生物質10μLを既に含有する抗生物質プレートの各ウェルに添加した。試料を静置型エアーインキュベーター中で、35℃で4時間成長させた。
【0465】
ASTの時間4時間の成長における細菌細胞の標識化:抗生物質の存在下および非存在下で、試料を4時間(T4)インキュベートした後に、細胞を標識化し、定量して、もしあれば、どの程度の成長が起こったかを決定した。インキュベートした試料-抗生物質プレートのうちの10μL(10%)を乾燥させた「色素クッション」を含有するマイクロタイタープレートに移し、時間0のアッセイに関して上記したように、ハイブリダイゼーション緩衝剤、FISHプローブ、ヘルパープローブ、磁気粒子、および焦点粒子の混合物100μLと合わせた。
【0466】
比較方法:本明細書に記載の新規アッセイ方法に関する結果を、M07-Ed13E 2018に従って実施したブロス微量希釈(BMD)と比較した。
【0467】
データ分析および閾値の作成:CCDカメラによって捕捉したイメージを使用して、視野内の物体の数とその物体の強度の両方を考慮するアルゴリズムによって、検出した細胞を推定した。この検出アルゴリズムに基づく細胞数は、時間0、ならびに抗生物質を含まない時間4時間および各抗生物質の全ての濃度含む時間4時間において得られた。薬物濃度ごとの各細菌試料について、成長前(時間0)の尿試料中のシグナルに対する成長後(時間4)の抗生物質を含有するウェル中のシグナルとして、成長倍率を計算した。成長倍率およびCLSI対応のブロス微量希釈における対応するウェル中の成長の観察を使用して、ロジスティック回帰モデルを使用し、細胞が抗生物質の存在下で成長している(よって、その濃度において耐性である)ものを超え、細胞が死滅する過程にある(よって、その濃度において感受性である)ものより低い成長倍率カットオフを決定するための閾値を作成した。成長倍率の数が決定した閾値未満にある点は、このアッセイによって生じたMIC値である。それに対応して、結果を、各抗生物質に対して感受性、中間、または耐性のカテゴリーに割り当てた。
結果。
【0468】
示されたデータは、上記4時間のAST方法が滅菌されていない試料に対して頑強である一方、余分な細菌が存在するCLSI BMD方法が頑強でないことを実証する。
【0469】
図47は、ニトロフラントインの存在下で、最大100倍過剰な漸増濃度のS.aureus ATCC 25923を有するE.coli BAA-2469に関するデータを示す。CLSI様ブロス微量希釈方法におけるE.coliのMICは、S.aureus株の添加によって影響を受け(図ではXとマークした)、ここで、MICは、S.aureusの非存在下での8から100倍過剰のS.aureusでの32まで増加する。対照的に、本発明において記載した新規4時間のASTアッセイ(MultiPath、丸)は、S.aureus細胞の量にかかわらず、同じMIC(8)(破線)を有した。
【0470】
図47から図49は、E.coli BAA-2469のみが存在するCLSIブロス微量希釈と比較した、この新規方法(MultiPath)を使用して決定した生のMIC値を示す。図46の表は、漸増するオフターゲット細菌の存在下でのE.coliの全体的な本質的一致を示す。単一の条件 -ニトロフラントインと1e7のCitrobacter freundii- のみが本質的一致の欠如をもたらしたが、これは、全ての抗生物質および全てのオフターゲット細菌にわたって100%の一致を有したカテゴリー感受性/中間/耐性の決定を変化させなかった。
【0471】
結論。この実施例は、抗微生物薬感受性試験のために本発明を使用すると、他の種の他の微生物をさらに多数含有する試料においてさえも、標的病原体に関する正確な抗微生物薬感受性試験の結果を達成するために細胞精製が必要でないことを実証する。
【0472】
バリエーション:この実施例は、この新規FISH方法の性能の例証であり、本明細書に含まれる具体的詳述に限定されるものではない。当業者であれば、したがって、異なるプローブ配列および核酸構造(PNA、LNAなど)、別の代替的なアッセイ化学(異なる界面活性剤、カオトロープ、フルオロフォア、緩衝剤、pH、温度、反応時間、構成成分の濃度)、尿の濃度および尿の処理手順を使用することを含む多くのバリエーションが可能であることを容易に理解するであろう。この方法論はまた、他の生物学的検体ならびに他の細菌および非細菌病原体に明らかに拡張され得る。
【0473】
図45は、E.coliに関するMICはS.aureusの様々な接種に関して上記方法と一致しているが、一方、BMDに関するMICはS.aureusの増加と共に増加することを示す。
【0474】
図46は、標準的BMDに対するオフターゲット微生物の様々な接種レベルとのE.coliに関する一致のまとめを示す。
【0475】
図47は、オフターゲット微生物(S.aureus、Staphylococcus epidermidis、およびCitrobacter freundii)の標準的BMDの様々な接種レベルとのE.coliの一致を示す。
【0476】
図48は、オフターゲット微生物(Micrococcus luteus、Acinetobacter baumannii、Corynebacterium minutissimum)の標準的BMDの様々な接種レベルとのE.coliの一致を示す。
【0477】
図49は、オフターゲット微生物(K.pneumoniae)の標準的BMDの様々な接種レベルとのE.coliの一致を示す。
【0478】
図50は、この実施例10において使用したプローブ配列の表である。
【0479】
(実施例11)
迅速な抗微生物薬感受性試験は、ベータ-ラクタマーゼを発現する細菌の存在下でラクタム抗生物質に対して正確である
【0480】
概要。抗微生物薬感受性試験に関する現在の方法には、他の微生物を含まない標的病原体細胞の純粋な集団を確保するために長時間に及ぶ培養ベースのコロニー精製が必要とされる。通常の方法であるコロニー精製は、結果を実現するために2~5日を要する。その間、患者は、感染を引き起こす病原体を死滅させるのに最適でない場合があり、さらに完全に無効である可能性のある強力な広域スペクトルの抗生物質により経験的に処置される。加えて、広域スペクトルの抗生物質による経験的処置によって、抗生物質耐性の広がりがもたらされる。
【0481】
現在の方法が、これらの方法が、濁度の増加などの非特異的検出方法を使用するため、どの抗微生物剤が微生物学的培地中の標的病原体の成長を阻害するかを決定するために、長時間に及ぶ細胞精製プロセスを必要とする理由の1つである。細胞複製物の非特異的測定を使用する場合、仮に標的病原体の細胞のみが含有されるならば、見られる成長は標的病原体によるものであることを知ることができるに過ぎない。
【0482】
対照的に、本発明の方法は、コロニー精製ステップを用いずに、検体から直接的に正確な抗微生物薬感受性試験結果を実現することができる。この方法は、抗微生物剤を含有する微生物学的培地中で標的病原体に特異的な成長を評価するという点で、現在の方法と異なる。本発明者らは、別の実施例において、本発明の方法が、オフターゲット種由来の多数の細胞の存在下で正確であることを実証する。
【0483】
この実施例では、本発明者らは、オフターゲット種の存在下での標的病原体に関する抗微生物薬感受性試験を実施することによって生じ得る別の課題に対処する。ここで、本発明者らは、本発明の方法が、試験される抗微生物剤を分解することが公知の酵素を作製する多数のオフターゲット種を含有する人為的尿検体中の標的病原体に関する正確な抗微生物薬感受性試験の結果を実現することを実証する。理論的には、このことは、抗微生物薬感受性試験の結果を変更するのに十分有意に抗微生物剤の濃度を変化させる可能性がある。
【0484】
この実施例では、本発明者らは、迅速な抗微生物薬感受性試験によって、このタイプの抗微生物剤を分解する酵素を生成する多数のオフターゲット病原体の存在下で、2つのカルバペネム抗生物質(メロペネムおよびイミペネム)に関する正確な抗微生物薬感受性試験の結果が達成されることを実証する。
【0485】
実験手順。抗生物質プレートの調製:抗生物質プレートは、標的MICへの滅菌されていない試料の影響の実施例において記載されたように調製した。
【0486】
培養物の調製:E.coli ATCC 25922、ほとんどの抗生物質に対して感受性である細菌株およびK.pneumoniae CDC 0141(多くの他の耐性遺伝子の中で、ベータ-ラクタマーゼOXA-181を発現する株)のうちの3から5個のコロニーを、Tryptic Soy Broth(TSB、Hardy Diagnostics カタログU65)5mL中にそれぞれ別々に接種し、35℃で1~2時間、振盪させながらインキュベートした。光学密度を分光光度計によって測定し、生物を1Xカチオンで調整したMueller-Hinton Broth(MHBII、Teknova カタログM5860)中に希釈した。E.coliを5×10CFU/mL(CLSIの標準的濃度)まで希釈し、一方、K.pneumoniaeは様々な接種のために希釈した(1×10から5×10CFU/mLの範囲に及ぶ)。
【0487】
磁気粒子の調製:2-ヒドロキシプロピルトリメチルアンモニウムクロリドをコーティングしたシリカ磁気粒子(SiMag-Q、Chemicell、カタログ1206-5)を、50mMのEPPS緩衝剤、pH8.2中へ、1mL当たり3.75×10個の粒子まで1:20で希釈した。緑色色素(Dragon Green Fluorescent Microspheres、BANGS Laboratories、カタログMEDG001)を含有する蛍光磁気マイクロスフェアを1mL当たり3×10個の粒子の終濃度で懸濁液に添加した。これらの粒子により、光学システムが正しい平面に焦点を当てることが可能になる。凝集を最小限にするために、使用する直前に、磁気粒子混合物を1分間超音波処理した。以下に記載した時間0と時間4時間とのアッセイのために、別々の磁気粒子懸濁液を調製した。
【0488】
AST時間0における細菌細胞の標識化:抗生物質の存在下または非存在下で、細菌成長の開始前の時間0(T0)におけるアッセイシグナルを各臨床尿検体について決定した。それぞれ処理済尿30μLを、種特異的Alexa647Nで標識されたDNAオリゴヌクレオチドFISHプローブおよび未標識DNAヘルパープローブを含有する1×カチオンで調整したMueller-Hinton Broth(MHBII)70μLに添加した。使用したプローブ配列を表Aに示す。次いで、混合物100μLを、脱水したハイブリダイゼーション緩衝剤(3X SSC(0.45MのNaCl、0.045Mのクエン酸Na)緩衝剤(Sigma、カタログ番号S6639)、0.18%のセトリミド(Sigma、カタログ番号H9151)、0.77%のCHAPSO(Sigma カタログ番号C3649)、0.72%のSB3-12(Sigma カタログ番号D0431)0.13Mのチオシアン酸グアニジン(Sigma、カタログ番号G9277))を含有するマイクロタイタープレートのウェルに添加した。次いで、調製した磁気粒子混合物10μLをウェルに添加した。この反応混合物100μLを、ウェル(事前に乾燥させた)当たり50μLの「色素クッション」(50mMのTRIS pH7.5(Sigma カタログT1075)、7.5%v/vのOptiprep(Sigma カタログD1556)、50mg/mLのDirect Black 19(Orient カタログ191L))を含有するマイクロタイタープレートに移し、35℃で30分間インキュベートした。インキュベーション後に、マイクロタイタープレートを磁場(Dexter magnetic technologies、カタログ54170260)上に4分間置き、磁気粒子、標識化細胞を含有する画分を「色素クッション」を介して、ウェルの底のイメージング表面の近傍に移動させた。
【0489】
標識化細胞のイメージング MultiPath(商標)研究所のイメージングシステムは、マイクロタイタープレートの選択されたウェルからイメージデータを自動的に捕捉することが可能なカスタムビルト機器およびソフトウェアである。これは、Prior Scientific(Rockland、MA)からの高精度リニアステージを使用し、各ウェルを蛍光ベースのイメージ獲得サブシステムに対して位置付ける。この機器は、4色の別々のカラーチャネルでイメージングすることができ、対物レンズ、LED照明、蛍光フィルターセット、およびカメラを使用する。対物レンズは、マイクロタイタープレートのウェル全体のイメージを捕捉するよう設計された視野を有する。イルミネーションモジュール光源は、カラーチャネルごとに2つの高出力LEDからなる。一連の蛍光イメージフレームは、ピクセル当たり12ビットを量子化する3.1MP Sony IMX265単色センサーを使用するカメラで捕捉される。次いで、複数のフレームを合計することによって、各ウェルに対する最終イメージが形成される。635/25nmの励起フィルターおよび667/30nmの発光フィルターを使用して100ミリ秒の露出で、16フレームを捕捉した。470/40nmの励起フィルターおよび520/40nmの励起フィルターで焦点粒子をイメージングし、20ミリ秒の露出で2フレームを捕捉した。
【0490】
4時間の成長:変化するK.pneumoniae-OXA接種の存在下で、E.coliを2つの抗微生物剤:イミペネムおよびメロペネムに対する感受性について試験した。時間0での細胞の定量化がなされている間に、E.coli種(5×10CFU/mL)10μL、K.pneumoniae(1×10から1×10CFU/mL)10μLまたは培地(対照)10uL、プールした尿10μL、およびMHB II(Teknova、カタログ番号M5860)60μLを、抗生物質10μLを既に含有する抗生物質プレートの各ウェルに添加した。試料を静置型エアーインキュベーター中で、35℃で4時間成長させた。
【0491】
ASTの時間4時間の成長における細菌細胞の標識化:抗生物質の存在下および非存在下で、試料を4時間(T4)インキュベートした後に、細胞を標識化し、定量して、もしあれば、どの程度の成長が起こったかを決定した。インキュベートした試料-抗生物質プレートの各ウェルの100μLを脱水緩衝剤プレートの対応するウェルに移し、時間0のアッセイに関して上記したのと同じ手法で、FISHプローブ、ヘルパープローブ、磁気粒子、および焦点粒子と合わせた。
【0492】
比較方法:MulitPath(商標)アッセイに関する結果を、CLSIの方法M07-Ed13E 2018に従って実施したブロス微量希釈(BMD)と比較した。
【0493】
データ分析および閾値の作成:CCDカメラによって捕捉したイメージを使用して、視野内の物体の数とその物体の強度の両方を考慮するアルゴリズムによって、検出した細胞を推定した。この検出アルゴリズムに基づく細胞数は、時間0、ならびに抗生物質を含まない時間4時間および各抗生物質の6つの濃度全てを含む時間4時間において得られた。薬物濃度ごとの各尿試料について、成長前(時間0)の尿試料中のシグナルに対する成長後(時間4)の抗生物質を含有するウェル中のシグナルとして、成長倍率を計算した。成長倍率およびCLSI対応のブロス微量希釈における対応するウェル中の成長の観察を使用して、ロジスティック回帰モデルを使用し、細胞が抗生物質の存在下で成長している(よって、その濃度において耐性である)ものを超え、細胞が死滅する過程にある(よって、その濃度において感受性である)ものより低い成長倍率カットオフを決定するための閾値を作成した。成長倍率の数が決定した閾値未満にある点は、このアッセイによって生じたMIC値である。それに対応して、結果を、各抗生物質に対して感受性、中間、または耐性のカテゴリーに割り当てた。次いで、全てのデータをCLSIの標準的BMDと比較した。抗生物質の非存在下での4時間の成長は、生存可能な細菌が処理済尿試料中に存在することを確認するための対照条件である。
結果。
【0494】
図51は、イミペネム抗生物質を分解するベータ-ラクタマーゼを生成することによってイミペネム抗生物質に耐性であるK.pneumonaie株の漸増量の存在下での、イミペネムに対して感受性のE.coli株のMICを示す。本発明の新規な迅速AST方法をBMD方法と比較する。新規な4.5時間のAST方法は、一貫して1μg/mLイミペネム未満のMICを有するさらに高濃度のベータ-ラクタマーゼを生成するK.pneumonaieの存在によって影響を受けない。対照的に、16~24時間の成長後のBMD方法は、K.pneumonaieのレベルの増加に伴う感受性E.coli株に関するMICの増加を示し、この抗生物質に対して耐性であると誤って決定されることになる。
【0495】
図52は、ラクタム系抗生物質であるメロペネムに関して同様の結果を示す。
【0496】
結論。本発明の新規の4.5時間のAST方法は、抗生物質を分解するカルバペネマーゼ(carbapemase)酵素を発現する高濃度の耐性細菌の存在下においても、カルバペネム抗微生物剤に対して感受性の細菌の正確なMIC決定を示す。
【0497】
バリエーション。この実施例は、この新規AST方法の性能の例証であり、本明細書に含まれる具体的詳述に限定されるものではない。当業者であれば、したがって、異なるプローブ配列および核酸構造(PNA、LNAなど)、代替的なアッセイ化学(異なる界面活性剤、カオトロープ、フルオロフォア、緩衝剤、pH、温度、反応時間、構成成分の濃度など)、尿の濃度および尿の処理手順を使用することを含む多くのバリエーションが可能であることを容易に理解するであろう。この方法論はまた、ラクタム感受性細菌とベータ-ラクタマーゼ発現細菌のさらなるペアリングに拡張され得る。
【0498】
図51は、K.pneumonaieの、耐性、カルバペネム加水分解B-ラクタマーゼ株の存在下で、E.coliに関するイミペネムのMICを決定するための新規迅速AST方法およびBMD方法の比較である。
【0499】
図52は、E.coliのMICが、K.pneumonaieの、耐性、カルバペネム加水分解B-ラクタマーゼ株の様々な接種に関する上記方法と一致しており、一方、ここでは標準的BMDは一致していないことを示す。
【0500】
図53は、この実施例11において使用したプローブ配列の表である。
【0501】
(実施例12)
培養ベースの細胞精製を用いない尿中の細菌の正確で迅速な抗微生物薬感受性試験。
【0502】
概要:抗微生物薬感受性試験のための現在の方法には、病原体細胞をまさに含まない検体自体の純粋な集団を確保するために長時間に及ぶ培養ベースのコロニー精製が必要とされる。結論として、どの抗生物質が感染を引き起こす病原体を死滅させるのに最適であるかを示す抗微生物薬感受性試験の結果を2~5日間利用できない。その間、患者は、感染を引き起こす病原体を死滅させるのに最適でない場合があり、さらに完全に無効である可能性のある強力な広域スペクトルの抗生物質により経験的に処置される。加えて、広域スペクトルの抗生物質による経験的処置によって、抗生物質耐性の広がりがもたらされる。
【0503】
対照的に、本発明の方法は、長時間に及ぶコロニー精製ステップを用いずに検体から直接的に正確な抗微生物薬感受性試験の結果を実現することができる。ここで、本発明者らは、新たな抗微生物薬感受性試験の結果は、尿試料中の細菌がコロニー精製を用いずに試験される際に有意な影響を受けないことを示す。この実施例は、迅速な抗微生物薬感受性試験方法によって、15個の異なる培養陰性尿試料に関する尿マトリックス(10%)を含む人為的試料中で、E.coli株に関する最少阻止濃度(MIC)が正確に決定されることを実証する。
【0504】
実験手順。尿検体:15種の培養陰性臨床尿試料(残遺物)は、Discovery Life Sciencesから購入した。試料は、採取後7日を超えて受領し、使用まで-80℃で保管した。各試料について、尿の色、pH、および微粒子の存在を記録した。受領の際に、試料が培養陰性であったことを決定するために従来の尿培養を尿に関して実施した。簡潔には、較正した1uLのループを十分に混合した尿試料中に入れ、トリプシンダイズ寒天(TSA)プレート上に均一に広げ、35℃のエアーインキュベーター中で18~24時間インキュベートした。尿試料の残りを以下に記載したようにアッセイした。
【0505】
抗生物質プレートの調製:予想された最少阻止濃度(MIC)よりも10倍高い濃度で開始して、2倍連続希釈系列で各抗生物質の6つの濃度を含有するマイクロタイタープレートを調製した。使用した抗生物質は、セファゾリン、シプロフロキサシン、ニトロフラントイン、およびトリメトプリム-スルファメトキサゾールであった。抗生物質の希釈液を、少なくとも2つのCLSI QC株に関するMICがCLSIの文献M100Ed29E-2019において報告されたQC範囲内にあることを確認することによって、適切な忍容性の範囲内にあることを検証した。各抗生物質を試験するために選択した濃度は、E.coliに対する抗生物質に関してCLSIにより報告されたブレイクポイントをまたいだ。抗微生物希釈系列を含有するウェルに加えて、水または希釈液を含有する8つのウェルがプレート中に含まれ、抗生物質なしの陽性成長対照および陰性成長対照を可能とした。
【0506】
培養物の調製:E.coli(BAA-2469)の対数培養を、Tryptic Soy Broth(TSB、Hardy Diagnostics カタログU65)5mL中に接種した3から5個のコロニーを使用して成長させ、35℃で1~2時間、振盪させながらインキュベートした。光学密度を分光光度計によって測定し、生物を1Xカチオンで調整したMueller-Hinton Broth(MHBII、Teknova カタログM5860)中で、5×10CFU/mL(それぞれ100μLの反応物中で5×10CFU/mLの終濃度として)に希釈した。
【0507】
磁気粒子の調製:2-ヒドロキシプロピルトリメチルアンモニウムクロリドをコーティングしたシリカ磁気粒子(SiMag-Q、Chemicell、カタログ1206-5)を、50mMのEPPS緩衝剤、pH8.2中へ、1mL当たり2.75×1012個の粒子まで1:20で希釈した。緑色色素(Dragon Green Fluorescent Microspheres、BANGS Laboratories、カタログMEDG001)を含有する蛍光磁気マイクロスフェアを1mL当たり3×10個の粒子の終濃度で懸濁液に添加した。これらの粒子により、光学システムが正しい平面に焦点を当てることが可能になる。凝集を最小限にするために、使用する直前に、磁気粒子混合物を1分間超音波処理した。以下に記載した時間0と時間4時間とのアッセイのために、別々の磁気粒子懸濁液を調製した。
【0508】
AST時間0における細菌細胞の標識化:抗生物質の存在下または非存在下で、細菌成長の開始前(時間0またはT0)のアッセイシグナルを各尿試料について決定した。希釈したE.coli 10μLをハイブリダイゼーション緩衝剤70μLに添加した:終濃度:3X SSC(0.45MのNaCl、0.045Mのクエン酸Na)緩衝剤(Sigma、カタログ番号S6639)、1%のCHAPS(Sigma、カタログ番号C3023)、1%のNOG(Sigma カタログ番号08001)、1Xカチオンで調整したMueller-Hinton Broth(MHBII)(2Xストックから)(Teknova、カタログM5866)、ならびに非特異的DNAオリゴヌクレオチドFISHプローブおよび未標識DNAヘルパープローブ(プローブレベル、配列、および濃度については表Aを参照されたい)。10%の尿の終濃度は、各個体の尿10μLを混合物に直接添加することによって得られた。上記のように調製した磁気粒子混合物10μLをこの混合物に直接添加した。ここで、ハイブリダイゼーション混合物、尿、および磁気粒子を含有する試料100μLを1ウェル(事前に乾燥させた)当たり50μLの「色素クッション」(50mMのTRIS pH7.5(Teknova、カタログT5075)、7.5%v/vのOptiprep(Sigma、カタログD1556)、5mg/mLのDirect Black-19(Orient、カタログ番号3222)、コンベクションオーブン中で、60℃で3時間乾燥させた)を含有するマイクロタイタープレートに移し、35℃で30分間インキュベートした。インキュベーション後に、マイクロタイタープレートを磁場(Dexter magnetic technologies、カタログ54170260)上に4分間置き、磁気粒子、標識化細胞を含有する画分を「色素クッション」を介して、ウェルの底のイメージング表面の近傍に移動させた。
【0509】
標識化細胞のイメージング:MultiPath(商標)研究所のイメージングシステムは、マイクロタイタープレートの選択されたウェルからイメージデータを自動的に捕捉することが可能なカスタムビルト機器およびソフトウェアである。これは、Prior Scientific(Rockland、MA)からの高精度リニアステージを使用し、各ウェルを蛍光ベースのイメージ獲得サブシステムに対して位置付ける。この機器は、4色の別々のカラーチャネルでイメージングすることができ、対物レンズ、LED照明、蛍光フィルターセット、およびカメラを使用する。対物レンズは、マイクロタイタープレートのウェル全体のイメージを捕捉するよう設計された視野を有する。イルミネーションモジュール光源は、カラーチャネルごとに2つの高出力LEDからなる。一連の蛍光イメージフレームは、ピクセル当たり12ビットを量子化する3.1MP Sony IMX265単色センサーを使用するカメラで捕捉される。次いで、複数のフレームを合計することによって、各ウェルに対する最終イメージが形成される。635/25nmの励起フィルターおよび667/30nmの発光フィルターを使用して100ミリ秒の露出で、16フレームを捕捉した。470/40nmの励起フィルターおよび520/40nmの励起フィルターで焦点粒子をイメージングし、20ミリ秒の露出で2フレームを捕捉した。
【0510】
4時間の成長:スパイクされた培養陰性臨床UTI尿試料を5つの抗微生物剤に対するそれらの感受性について試験した:セファゾリン、シプロフロキサシン、レボフロキサシン、ニトロフラントイン、およびトリメトプリム-スルファメトキサゾール。これらの抗微生物剤を含有する抗生物質プレートを、上記方法に従って調製した。時間0での細胞の定量化がなされているのと同時に、E.coli 10μL、尿10μL、および1X MHB II(Teknova、カタログM5860)70μLを、抗生物質プレートの各ウェルに添加した。試料を静置型エアーインキュベーター中で、35℃で4時間成長させた。
【0511】
ASTの時間4時間の成長における細菌細胞の標識化:抗生物質の存在下および非存在下で、試料を4時間(T4)インキュベートした後に、細胞を標識化し、定量して、もしあれば、どの程度の成長が起こったかを決定した。インキュベートした試料-抗生物質プレートの各ウェルの100μLを脱水緩衝剤プレートの対応するウェルに移し、時間0のアッセイに関して上記したのと同じ手法で、FISHプローブ、ヘルパープローブ、磁気粒子、および焦点粒子と合わせた。
【0512】
比較方法:MulitPath(商標)アッセイに関する結果を、CLSIの方法M07-Ed13E 2018に従って実施したブロス微量希釈(BMD)と比較した。
【0513】
データ分析および閾値の作成:CCDカメラによって捕捉したイメージを使用して、視野内の物体の数とその物体の強度の両方を考慮するアルゴリズムによって、検出した細胞を推定した。この検出アルゴリズムに基づく細胞数は、時間0、ならびに抗生物質を含まない時間4時間および各抗生物質の6つの濃度全てを含む時間4時間において得られた。薬物濃度ごとの各尿試料について、成長前(時間0)の尿試料中のシグナルに対する成長後(時間4)の抗生物質を含有するウェル中のシグナルとして、成長倍率を計算した。成長倍率およびCLSI対応のブロス微量希釈における対応するウェル中の成長の観察を使用して、ロジスティック回帰モデルを使用し、細胞が抗生物質の存在下で成長している(よって、その濃度において耐性である)ものを超え、細胞が死滅する過程にある(よって、その濃度において感受性である)ものより低い成長倍率カットオフを決定するための閾値を作成した。成長倍率の数が決定した閾値未満にある点は、このアッセイによって生じたMIC値である。それに対応して、結果を、各抗生物質に対して感受性、中間、または耐性のカテゴリーに割り当てた。次いで、全てのデータをCLSIの標準的BMDと比較した。抗生物質の非存在下での4時間の成長は、生存可能な細菌が処理済尿試料中に存在することを確認するための対照条件である。
【0514】
結果。以下の図は、ASTの結果にマトリックスの影響はほとんど存在しないことを示す。
【0515】
図54は、レボフロキサシンに関して尿が存在しないゴールドスタンダードであるCLSI BMD方法によって決定されたMIC(破線)と比較した、新規AST方法によって決定されたE.coli BAA-2469のMIC(黒丸)を示す。影付きの領域は本質的一致の領域であり、これは、一般的に、CLSI対応のBMDプロセスに関する許容される誤差の範囲内であると考えられる。新規AST方法を使用してE.coli BAA-2469に関して決定されたレボフロキサシンに関するMICのほとんどは、CLSI方法と正確に一致し、残りの2つは2倍の本質的一致ゾーンの範囲内にあった。
【0516】
図55は、5種の抗生物質全てについて得られた結果をまとめる。標準的BMDに対する100%の本質的一致と100%のカテゴリー一致が、新規AST法を使用して、15種の培養陰性臨床尿試料にわたって観察された。
【0517】
図56は、試験した5つの抗生物質にわたってCLSI対応のBMDプロセスにおいて観察されたMICと比較した、新規AST方法を使用して、E.coliによりスパイクされた15個の培養陰性臨床尿試料に関して決定されたMICを示す。この図は、標準的BMDに対する、15個のスパイクインされた培養陰性臨床UTI尿試料のそれぞれとのレボフロキサシンに関する100%の本質的一致を示す。
【0518】
結論。本発明の方法は、15個の別個の尿マトリックス全てにおいて試験された5つの抗生物質全てに対してUTI病原体(E.coli)に関するMIC(ゴールドスタンダードであるBMD方法に対して本質的一致ゾーン内)を正確に決定した。よって、この新規の4時間の抗微生物薬感受性試験は、長時間に及ぶ成長ベースのコロニー精製を必要とすることなく、尿検体から直接的に正確な結果をもたらす能力を有し、実質的な時間を節約する。迅速なASTの結果によって、正しく、有効な抗生物質処置の素早い開始、および抗生物質耐性の広がりを加えることの回避を可能にすることによって患者のケアを改善することができる。
【0519】
バリエーション。この実施例は、この新規AST方法の性能の例証であり、本明細書に含まれる具体的詳述に限定されるものではない。当業者であれば、したがって、異なるプローブ配列および核酸構造(PNA、LNAなど)、代替的なアッセイ化学(異なる界面活性剤、カオトロープ、フルオロフォア、緩衝剤、pH、温度、反応時間、構成成分の濃度)および尿の濃度を使用することを含む多くのバリエーションが可能であることを容易に理解するであろう。この方法論はまた、他の細菌および非細菌病原体ならびに尿以外の最小限に処理された臨床マトリックスに明らかに適応され得る。
【0520】
図54は、15個の尿にわたる本質的一致を示す。
【0521】
図55は、標準的BMDに対して、15個のスパイクインされた培養陰性臨床UTI尿試料のそれぞれに関する100%の本質的一致および100%のカテゴリー一致を示す。
セファゾリン、シプロフロキサシン、レボフロキサシン、ニトロフラントイン、およびトリメトプリム-スルファメトキサゾール。
【0522】
図56は、標準的BMD方法(「CLSI対応の」)と比較した、新規AST方法によって決定されたE.coliによりスパイクされた15個の尿試料に関するMICを示す。濃度(μg/mL)。
【0523】
図58は、この実施例12において使用したプローブ配列の表である。
【0524】
(実施例13)
複数菌における複数の標的に関する迅速かつ正確なAST
【0525】
概要。多微生物感染症は、創傷を含む多くのタイプの感染症において一般的である。生命を脅かす可能性のあるこのような感染症では、どの抗微生物剤が各感染病原体に対して有効であり得るかを決定することが重要である。現在の抗微生物薬感受性試験方法は、多微生物感染症における多数の各感染病原体を、それらが分析され得る前に精製するために2~5日を要する。
【0526】
この実施例は、長時間に及ぶコロニー精製を必要とせずに、患者の検体から直接的に、ちょうど4.5時間で迅速なASTの結果を生じる本発明のシステムおよび方法に関する可能性を実証する。本方法は、ブロス微量希釈の参照基準結果と比較した、人為的な2つの標的複数菌混合物における各標的種に関する正確なASTの結果(MIC値)を達成する。
実験手順。
【0527】
抗生物質プレートの調製:6つのシプロフロキサシン濃度の2倍連続希釈系列を含有するマイクロタイタープレートを調製した。2倍希釈系列を、追加の細胞/尿/培地混合物によって正しい抗生物質範囲が得られるように、最終ブロス微量希釈における所望の濃度よりも10倍高い濃度で調製した。次いで、各抗生物質の希釈液10uLを96ウェルプレートの適切なウェル中にアリコートした。抗生物質の希釈液を、少なくとも2つのCLSI QC株に関するMICがCLSIの文献M100Ed29E-2019において報告されたQC範囲内にあることを確認することによって、適切な忍容性の範囲内にあることを検証した。抗微生物希釈系列を含有するウェルに加えて、水または他の希釈液を含有する十分なウェルが、抗生物質なしの陽性成長対照のために含まれた。抗生物質プレートを-80℃で凍結させ、使用前に完全に解凍した。
【0528】
培養物の調製:感受性株と耐性株の両方を4つの異なる生物に対して選択した(E.coli ATCC 25922、E.coli BAA-2469、K.pneumoniae CDC 0076、K.pneumoniae CDC 0043、P.aeruginosa CDC 0233、P.aeruginosa CDC 0236、E.faecalis ATCC 29212、およびE.faecium ATCC 19434)。試験した株および各抗生物質に対するそれらの耐性を表Aに示す。各株をTryptic Soy Broth(TSB)5mL中に接種した3から5個のコロニーと一緒に、別々に成長させ、35℃で1~2時間振盪させながらインキュベートした。光学密度を分光光度計によって測定し、生物を1Xカチオンで調整したMueller-Hinton Broth(MHBII、Teknova カタログM5860)中に1×10CFU/mLまで希釈した。
【0529】
磁気粒子の調製:ポリアスパラギン酸がコンジュゲートした磁気粒子(Fluidmag-PAA、Chemicell、カタログ4108)の溶液を、50mMのEPPS緩衝剤、pH8.2中へ、1mL当たり2.75×1012個の粒子まで1:20で希釈した。緑色色素(Dragon Green Fluorescent Microspheres、BANGS Laboratories、カタログMEDG001)を含有する蛍光磁気マイクロスフェアを1mL当たり3×10個の粒子の終濃度で懸濁液に添加した。これらの粒子により、光学システムが正しい平面に焦点を当てることが可能になる。凝集を最小限にするために、使用する直前に、磁気粒子混合物を1分間超音波処理した。以下に記載した時間0のアッセイと4時間とのアッセイのために、別々の磁気粒子懸濁液を調製した。2-ヒドロキシプロピルトリメチルアンモニウムクロリドをコーティングしたシリカ磁気粒子(SiMag-Q、Chemicell、カタログ1206-5)を用いて同一の手順を行った。
【0530】
AST時間0における細菌細胞の標識化:抗生物質の存在下または非存在下で、細菌成長の開始前(時間0またはT0)のアッセイシグナルを各種および株について決定した。標的A5μLを、生物ごとに5×10CFU/mLの終濃度のために、標的B5μLまたはMHB II 5μLのいずれかと合わせ、ハイブリダイゼーション緩衝剤(終濃度:3X SSC(0.45MのNaCl、0.045Mのクエン酸ナトリウム pH7)(Sigma、カタログ番号S6639)、0.25Mのチオシアン酸グアニジン(Sigma、カタログ番号503-84-0)、5%のPEG MW 3350(Sigma、カタログ番号P-3640)、7.5%のIgepal CA-630(Sigma、カタログ番号I3021)、0.2%のセトリミド(Sigma、カタログ番号H9151)、1Xカチオンで調整したMueller-Hinton Broth(MHBII)、種特異的DNAオリゴヌクレオチドFISHプローブおよび未標識DNAヘルパープローブ(配列および濃度は表Bに見られる))80μLに添加した。10%の尿の終濃度は、プールした尿(Innovative Research、カタログIR100007P-24203)10μLを総反応液100μLのために混合物に直接添加することによって得られた。上記のように調製したSiMag-Q磁気粒子混合物(E.coli、K.pneumoniaeおよびP.aeruginosaの株が標識されている条件に関する)またはFluidmag-PAA磁気粒子混合物(Enterococcus spp.が標識された条件に関する)のいずれか10μLをこの混合物に直接添加した。ここで、ハイブリダイゼーション混合物、尿、および磁気粒子を含有する試料100μLを50μLの色素クッション(50mMのTRIS pH7.5(Teknova、カタログT5075)、7.5%v/vのOptiprep(Sigma、カタログD1556)、5mg/mLのDirect Black-19(Orient、カタログ番号3222)、60℃で乾かした)(乾燥-クッションプレート)を含有するマイクロタイタープレートに移し、35℃で30分間インキュベートした。このインキュベーション後に、マイクロタイタープレートを強力な永久磁石(Dexter magnetic technologies、カタログ54170260)上に4分間置き、標識された磁気粒子と相互作用する細菌細胞をイメージング表面の近傍に移動させた。
【0531】
標識化細胞のイメージング:MultiPath(商標)研究所のイメージングシステムは、マイクロタイタープレートの選択されたウェルからイメージデータを自動的に捕捉することが可能なカスタムビルト機器およびソフトウェアである。これは、Prior Scientific(Rockland、MA)からの高精度リニアステージを使用し、各ウェルを蛍光ベースのイメージ獲得サブシステムに対して位置付ける。この機器は、4色の別々のカラーチャネルでイメージングすることができ、対物レンズ、LED照明、蛍光フィルターセット、およびカメラを使用する。対物レンズは、マイクロタイタープレートのウェル全体のイメージを捕捉するよう設計された視野を有する。イルミネーションモジュール光源は、カラーチャネルごとに2つの高出力LEDからなる。一連の蛍光イメージフレームは、ピクセル当たり12ビットを量子化する3.1MP Sony IMX265単色センサーを使用するカメラで捕捉される。次いで、複数のフレームを合計することによって、各ウェルに対する最終イメージが形成される。635/25nmの励起フィルターおよび667/30nmの発光フィルターを使用して100ミリ秒の露出で、16フレームを捕捉した。470/40nmの励起フィルターおよび520/40nmの励起フィルターで焦点粒子をイメージングし、20ミリ秒の露出で2フレームを捕捉した。
【0532】
4時間の成長:2つの種を含有する複数菌試料を1種の抗微生物剤:シプロフロキサシンに対する感受性について試験した。これらの抗微生物剤を含有する抗生物質プレートを、上記方法に従って調製した。時間0での細胞の定量化がなされているのと同時に、標識される種と検出される種のいずれか5μLおよび複数菌UTI感染症において存在し得る(しかし標識しない)細菌種または対照としてのMHB IIのいずれか5μL、プールした尿10μL、およびMHB II 70μLを、抗生物質プレートの各ウェルに添加した。試料を静置型エアーインキュベーター中で、35℃で4時間成長させた。この実施例における各株は、1回の例では、標識された標的種としての、別の例では、複数菌のペアの未標識メンバーとしての役割を果たす。
【0533】
ASTの時間4時間の成長における細菌細胞の標識化:抗生物質の存在下および非存在下で、試料を4時間(T4)インキュベートした後に、細胞を標識化し、定量して、もしあれば、どの程度の成長が起こったかを決定した。インキュベートした試料-抗生物質プレートのうちの10μL(10%)をマイクロタイタープレートに移し、時間0のアッセイに関して上記したのと同じ手法で、100μLのハイブリダイゼーション緩衝剤、FISHプローブ、ヘルパープローブ、磁気粒子、および焦点粒子と合わせた。
【0534】
比較方法:本明細書に記載の新規AST方法を使用する結果を、CLSI M07-Ed13E 2018に従って実施したブロス微量希釈(BMD)と比較した。
【0535】
データ分析および閾値の作成:CCDカメラによって捕捉したイメージを使用して、視野内の物体の数とその物体の強度の両方を考慮するアルゴリズムによって、検出した細胞を推定した。この検出アルゴリズムに基づく細胞数は、時間0、ならびに抗生物質を含まない時間4時間および全部で6つの濃度のシプロフロキサシンを含む時間4時間において得られた。薬物濃度ごとの各試料接種について、成長前(時間0)の尿試料中のシグナルに対する成長後(時間4)の抗生物質を含有するウェル中のシグナルとして、成長倍率を計算した。成長倍率およびCLSI対応のブロス微量希釈における対応するウェル中の成長の観察を使用して、ロジスティック回帰モデルを使用し、細胞が抗生物質の存在下で成長している(よって、その濃度において耐性である)ものを超え、細胞が死滅する過程にある(よって、その濃度において感受性である)ものより低い成長倍率カットオフを決定するための閾値を作成した。成長倍率の数が決定した閾値未満にある点は、このアッセイによって生じたMIC値である。それに対応して、MICの結果を、CLSI M100Ed28 2018ガイドラインに基づく感受性、中間、または耐性のカテゴリーに割り当てた。次いで、全てのデータをCLSIの標準的BMDと比較した。
結果。
【0536】
図60は、第2の感受性または耐性細菌の存在にかかわらず、新規の4.5時間のAST法によって標的細菌に関して決定した全てのMICが、各標的細菌(第2の細菌の非存在下で決定した)に関するゴールドスタンダードであるBMD方法に対して認められた2倍の忍容性範囲内であった(本質的一致と称される)ことを示す。
【0537】
図61は、新たなAST方法による各標的細菌に関する感受性および耐性のカテゴリーの決定は、これらの対の組合せによっても影響を受けず、BMDの決定と100%一致したことを示す。
【0538】
結論。本発明のAST方法は、現在の方法で必要とされる時間を消費するコロニー精製を必要とすることなく、4.5時間で複数菌試料における各種に関する抗生物質感受性を正確に決定することができる。この結果は、今日の方法で必要とされる日数よりもむしろ適正な時間で生命を脅かす多微生物感染症を有効に処置することができる抗微生物剤を決定する本発明の可能性を示す。
【0539】
バリエーション。この実施例は、この新規AST方法の性能の例証であり、本明細書に含まれる具体的詳述に限定されるものではない。当業者であれば、したがって、異なるプローブ配列および核酸構造(PNA、LNAなど)ならびに代替的なアッセイ化学(異なる界面活性剤、カオトロープ、フルオロフォア、緩衝剤、pH、温度、反応時間、構成成分の濃度)を使用することを含む多くのバリエーションが可能であることを容易に理解するであろう。この方法論はまた、他の生物学的検体、他の細菌および他の抗生物質に明らかに拡張され得る。
【0540】
図61は、この実施例において使用したシプロフロキサシンの感受性株と耐性株とを示す。
【0541】
図62は、この実施例13において使用したプローブ配列の表の最初の半分である。
【0542】
図63は、この実施例13において使用したプローブ配列の表の2番目の半分である。
【0543】
図64は、2つの標的生物による多微生物感染症に関する本質的一致を示す。以下に見られるように、上記AST方法によって、標準的BMDに対する100%の本質的一致が得られる。
【0544】
図65は、2つの標的生物による多微生物感染症に関するカテゴリー一致を示す。以下に見られるように、上記AST方法によって、標準的BMDに対する100%のカテゴリー一致が得られる。
【0545】
(実施例14)
自動化された機器上のカートリッジ中の単一の検体における複数の標的病原体の迅速かつ正確な検出
【0546】
概要。2種以上の細菌種によって引き起こされる感染である多微生物感染症は一般的である。病原体を同定するための現在の、培養に基づく方法およびMALDI-TOFに基づく方法には、標的種それぞれの多数の細胞を別々に精製するために長時間に及ぶコロニー精製ステップが必要とされる。この実施例は、全てのアッセイ試薬を含有する自動化された分析器の内側の使い捨ての消耗カートリッジにおいて、人為的尿試料中に存在する複数種の標的病原体を30分間で検出および同定する本発明のFISH方法の使用について実証する。本実施例は、多微生物感染症の複数の標的病原体を迅速かつ特異的に同定する本発明のシステムおよび方法の可能性を示す。
実験手順。
【0547】
尿検体:10種の培養陰性臨床尿試料(残遺物)は、Discovery Life Sciencesから購入した。試料は、採取後7日を超えて受領し、使用まで-80℃で保管した。各試料について、尿の色、pH、および微粒子の存在を記録した。受領の際に、試料が培養陰性であることを決定するために従来の尿培養を尿に関して実施した。簡潔には、較正した1uLのループを十分に混合した尿試料中に入れ、トリプシンダイズ寒天(TSA、BD カタログ221185)プレート上に均一に広げ、35℃のエアーインキュベーター中で18~24時間インキュベートした。尿試料の残りを以下に記載したように処理およびアッセイした。
【0548】
尿処理:同定(ID)を実施する前に、尿防腐剤および他の妨害する可能性のある化合物をサイズ排除クロマトグラフィーを使用して除去した。各臨床的に陰性の尿試料2.5mLを事前に洗浄したZeba(商標)Spin Desaltingカラム、7K MWCO(ThermoFisher、カタログ番号89893)に適用した。製造業者によって説明された通り、試料を遠心分離によってカラムに通過させた。
【0549】
カートリッジ内での脱水試薬の調製:同定(ID)を実施する前に、2.2×に濃縮されたハイブリダイゼーション緩衝剤(6.7X SSC(1MのNaCl、0.1Mのクエン酸ナトリウム、(Sigma、カタログ番号S6639)、0.4%w/vのセトリミド(Sigma、カタログ番号H9151)、1.71%w/vのCHAPSO(Sigma カタログ番号C3649)、1.6%w/vのSB3-12(Sigma カタログ番号D0431)、および0.29Mチオシアン酸グアニジン(Sigma、カタログ番号G9277))45μLをカートリッジの試薬ウェルのうちの6つ中に分配した。分析器による処理後に最終100uL体積で再水和させると、標準的な1×ハイブリダイゼーション緩衝剤(3X SSC(0.45MのNaCl、0.045Mのクエン酸Na)、0.18%のセトリミド、0.77%のCHAPSO、0.72%のSB3-12、および0.13Mのチオシアン酸グアニジン)が実現されることになる。それぞれ標的種特異的DNAオリゴヌクレオチドFISHプローブおよび未標識DNAヘルパープローブの混合物1.8μLを試薬ウェルの8つのうちの2つに添加した(1カートリッジ中の各標的ごとにN=2)。E.coli FISHオリゴヌクレオチドプローブのセットをカートリッジの場所A1およびA2に対応する試薬ウェルに添加し、K.pneumoniaeプローブセットをカートリッジの場所A3およびA4に対応する試薬ウェルに添加し、P.aeruginosaプローブセットをカートリッジの場所A5およびA6に対応する試薬ウェルに添加した。次いで、ハイブリダイゼーション緩衝剤および特異的プローブを含有するこれらのカートリッジウェルを50℃のコンベクションオーブン中で16~20時間インキュベートし、材料を脱水した。
【0550】
磁気粒子の調製:ポリアスパラギン酸がコンジュゲートした磁気粒子(Fluidmag-PAA、Chemicell、カタログ4108)を、10%w/vのトレハロース(Sigma、カタログ番号T9449)の終濃度で、50mMのEpps緩衝剤、pH8.2中へ、1mL当たり2.75×1012個の粒子の濃度まで1:20で希釈した。この希釈のために、緑色色素(Dragon Green Fluorescent Microspheres、BANGS Laboratories、カタログMEDG001)を含有する蛍光磁気マイクロスフェアを1mL当たり3×10個の粒子の終濃度で懸濁液に添加した。凝集を最小限にするために、使用する直前に、磁気粒子混合物を1分間超音波処理した。次いで、混合物を10μL体積のビーズ(反応ごとに2.64×1012個のPAA粒子)中で凍結乾燥させ、1つのビーズを6つの試薬ウェルのそれぞれの中に入れた。
【0551】
培養物の調製:3つの異なる標的病原体(E.coli ATCC 25922、K.pneumoniae ATCC 13883、およびP.aeruginosa ATCC 27853)の対数培養を、Tryptic Soy Broth(TSB、Hardy Diagnostics カタログU65)5mL中に接種した3から5個のコロニーと共に別々に成長させ、35℃で1~2時間、振盪させながらインキュベートした。光学密度を分光光度計によって測定し、生物を1Xカチオンで調整したMueller-Hinton Broth(MHBII、Teknova カタログM5860)中で、約5×10CFU/mLに希釈した。
【0552】
同定のための細菌細胞の標識化およびイメージング:30%の処理済尿の終濃度で目的の2種の細菌を含有する人為的複数菌混合物(全部で2種の細菌の組合せを3つ)中の各標的病原体について、アッセイシグナルを決定した。各複数菌の組合せを10個の固有の異なる培養陰性臨床試料中で試験した(全部で30個の尿を試験した)。細菌標的A(反応ごとに約5×10CFU/mL)103.5μL、細菌標的B(反応ごとに約5×10CFU/mL)103.5μL、尿360μL、および633μLを合わせて総体積1.2mLとし、この混合物1mLをカートリッジの試料添加ポートに移した。次いで、カートリッジを機器上に置き、その後の動作は全て自動的に実施された。試料は、最初に、真空下で、カートリッジ上部の6つの成長ウェル中に向けられた。次いで、試料を反応ウェルにすぐに移動させ、ハイブリダイゼーション緩衝剤/FISHプローブミックスおよび凍結乾燥させた磁気粒子を再水和させた。次いで、試料は、脱水した「色素クッション」(50mMのTRIS pH7.5(Teknova、カタログT5075)、7.5%v/vのOptiprep(Sigma、カタログD1556)、5mg/mLのDirect Black-19(Orient、カタログ番号3222)、コンベクションオーブン中で60℃で3時間乾燥させた)45μLを含有する光学ウインドウに続き、分析器上で35℃で30分間インキュベートした。このインキュベーション後に、カートリッジを磁石ステーションに再度位置付け、強力な永久磁石(Dexter magnetic technologies、カタログ54170260)の上に4分間置き、標識した磁気粒子と相互作用する細菌細胞をウェルの底のイメージング表面の近傍に移動させた。最後に、カートリッジをイメージングステーションまで動かし、以下に記載した非拡大CCDイメージャーを使用してイメージングを得た。簡潔には、標識された細菌細胞をイメージングするために、緑色チャネルで蛍光磁気マイクロスフェアの連続イメージ、決定された焦点面、および赤色チャネルで得たその場所の対応するイメージを撮ることによって、個々のウェルそれぞれに焦点が当てられた。
【0553】
標識化細胞のイメージング:MultiPath(商標)分析器イメージングシステムは、完全に自動化された試験の一部として、MultiPath Cartridgeの選択されたウェルからイメージデータを自動的に捕捉することが可能なカスタムビルト機器およびソフトウェアである。これは、カスタム設計された精度の高い3軸位置決めシステムを使用し、各ウェルを蛍光ベースのイメージ獲得サブシステムに対して位置付ける。この分析器は、4色の別々のカラーチャネルでイメージングすることができ、対物レンズ、LED照明、蛍光フィルターセット、およびカメラを使用する。対物レンズは、Cartridge Imaging Well全体のイメージを捕捉するよう設計された視野を有する。イルミネーションモジュール光源は、カラーチャネルごとに2つの高出力LEDからなる。一連の蛍光イメージフレームは、ピクセル当たり12ビットを量子化する3.1MP Sony IMX265単色センサーを使用するカメラで捕捉される。次いで、複数のフレームを合計することによって、各ウェルに対する最終イメージが形成される。635/25nmの励起フィルターおよび667/30nmの発光フィルターを使用して100ミリ秒の露出で、16フレームを捕捉した。470/40nmの励起フィルターおよび520/40nmの励起フィルターで焦点粒子をイメージングし、20ミリ秒の露出で2フレームを捕捉した。
【0554】
データ分析:CCDカメラによって捕捉したイメージを使用して、視野内の物体の数と物体の強度の両方を考慮するアルゴリズムによって、検出した細胞を推定した。アッセイシグナルが130を超えると、チャネルのシグナルが検出されたと考えられた。
【0555】
結果。データは、存在しない病原体は検出せずに(すなわち、非標的細菌に対するFISHプローブの交差反応性なし)単一の試料中の2つの標的病原体の同定に成功することを実証する。
【0556】
図66は、E.coli/K.pneumoniae混合試料が試験されるカートリッジを実行することを示す(N=10)。
【0557】
図66は、E.coli/P.aeruginosa混合試料が試験されるカートリッジを実行することを示す(N=10)。
【0558】
図68は、K.pneumoniae/P.aeruginosa混合試料が試験されるカートリッジを実行することを示す(N=10)。K.pneumoniae/P.aeruginosaのカートリッジ番号6は、そのカートリッジが有効な結果を得ることができなかったため、分析から除去した。さらに、E.coli/P.aeruginosaのカートリッジ番号9のA3では、ウェル中のシグナルが異常に高く表れる原因となるアーチファクトが観察され、そのため、このシグナルの複製は排除された。この除外された点(ウェルA4)の複製はこのアーチファクトを有さず、そのため、K.pneumoniaeは依然として検出されずとしてカテゴライズされた。アッセイシグナルは異なるカートリッジにわたり変化したが、すでに記載されたもの以外の全ての場合に、培養陰性尿に添加された2種の細菌が検出されたが、一方、添加されなかった細菌に関するプローブを含有するウェル中では非常に低いシグナルしか観察されない。
【0559】
結論。この実施例は、消耗カートリッジの内部に安定化試薬を含む自動化された分析器で実施される本発明の恒温FISH方法によって、人為的尿試料中の複数の標的細菌種が特異的に同定され得ることを実証する。このことは、多微生物感染症における複数の病原体を同定する本方法の可能性を示す。この実施例はまた、異種間の検出が観察されなかったため、本方法の特異性も実証する。
【0560】
バリエーション。この実施例は、カートリッジに関するこの新規FISH方法の性能の例証であり、本明細書に含まれる具体的詳述に限定されるものではない。当業者であれば、したがって、異なるプローブ配列および核酸構造(PNA、LNAなど)、代替的なアッセイの化学(異なる界面活性剤、カオトロープ、フルオロフォア、緩衝剤、pH、温度、反応時間、構成成分の濃度)、尿の濃度および尿の処理手順ならびに反応物の安定化に対する変更(構成成分の凍結乾燥)を使用することを含む多くのバリエーションが可能であることを容易に理解するであろう。この方法論はまた、他の生物学的検体ならびに他の細菌および非細菌病原体に明らかに拡張され得る。
【0561】
図66は、標的病原体が、それらの種特異的DNAオリゴヌクレオチドFISHプローブを含有するウェルにおいてのみ検出されることを示す。
【0562】
図67は、標的病原体が、それらの種特異的DNAオリゴヌクレオチドFISHプローブを含有するウェルにおいてのみ検出されることを示す。
【0563】
図68は、標的病原体が、それらの種特異的DNAオリゴヌクレオチドFISHプローブを含有するウェルにおいてのみ検出されることを示す。
【0564】
図69は、表「実施例14の表A」であり、標的病原体が検出され、一方、他の非標的病原体が検出されなかったことを示す。
【0565】
図70は、表「実施例14の表B」であり、この実施例14において使用したプローブ配列を示す。
【0566】
(実施例16)
カルボキシ-フルオレセインジアセテートを使用する生きた細菌の非特異的検出
【0567】
概要。この実施例では、大面積イメージングを使用して、蛍光発生エステラーゼ基質で染色された個々のS.aureus細菌細胞標的を検出した。この基質は、インタクトな生細胞の細胞膜を通って拡散することができ、これらは両方とも、代謝的に活性な細胞において見られるエステラーゼ酵素によって、作用した際に蛍光かつ荷電した状態になる。これらの荷電した蛍光生成物は、もはや細胞膜を通って受動的に拡散することができず、インタクトな細胞中に捕捉される。よって、この技法は、活性エステラーゼとインタクトな細胞膜とを有する細胞のみが適切に染色されるため、死細胞から生細胞を識別することができる。この実施例では、S.aureus細胞は、蛍光発生基質であるカルボキシ-フルオレセインジアセテート(cFDA)により標識され、非拡大デジタルイメージングを使用してイメージングされる。
実験方法。
細菌細胞の調製:
【0568】
S.aureus ATCC 29213をTryptic Soy Broth(TSB、BD カタログ番号211822)中で終夜成長させた。終夜培養物100uLを新鮮なTSB培地5ml中に接種することによってS.aureusを対数培養させ、35℃で2.5時間振盪インキュベーター中でさらにインキュベートした。
磁気粒子の調製:
【0569】
抗体がコンジュゲートした磁気粒子を、標準的EDAC(1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド)カップリング化学を使用して、磁気粒子(Ademtec、292nm)をニワトリ抗プロテインA抗体(Meridian Biosciences)にカップリングさせることによって作製した。
細菌細胞の標識化および捕捉:
【0570】
このアッセイは96ウェルのマイクロタイタープレート中で行われ、各ウェルは、S.aureus(TSB中に10,000個の細胞)またはTSBのみ(無細胞対照)40uL、10mMのcFDA(Life Technologies)5uLおよび抗体がコンジュゲートした磁気粒子(2e10/mL)5uLを含んだ。反応物を室温で15分間インキュベートした。インキュベーション後に、反応混合物40uLを、黒色の透明底半面積マイクロタイタープレート(Greiner 675096、VWR パーツ番号82050-056)中に予めアリコートされた「色素クッション」(5mg/mLのChromotrope 2Rを含む15%のOptiprep)75ul上に注意深く重ねた。マイクロタイタープレートを磁場上に4分間置き、磁気粒子、標識化細胞を含有する画分を「色素クッション」を介して、ウェルの底のイメージング表面の近傍に移動させた。
細菌細胞のイメージング:
【0571】
標識化細胞:磁気粒子複合体の磁気捕捉後に、マイクロタイタープレートをCCDデジタルカメラ(IDS、モデルUI-2250SE-M)の上のステージ上に置き、光学フィルターを通してLEDからの光で照らした(469nm、35nmのFWHM)。発光フィルター(520~35nm)を通過する蛍光シグナルをカメラで検出し、蛍光複合体のイメージを作成した。個々の細胞を列挙するFLimageソフトウェア(First Light Biosciences)を使用して、イメージを分析した。
結果。
【0572】
図146は、S.aureus細胞(左のパネル)は明るい蛍光スポットとして検出され、一方、細胞を含まない培地(右のパネル)はデブリとしてカテゴライズされる物体のみを含有することを示す。標識されたS.aureus細胞を含む視野のスポットの数は約5000個であり、予測された入力細菌の数とよく相関する。
【0573】
図59は、S.aureusの細胞(左のパネル)およびTSB培地のみ(右のパネル)を示す。
【0574】
結論。この実施例は、細菌を非特異的に列挙するための方法を実証する。このアプローチを使用して、検体中の広範囲の細菌種を網羅する混合集団から細胞の総数を計数することができる。詳細には、本実施例は、遍在するエステラーゼ酵素を含有する生存可能な細胞を非特異的に標識する蛍光基質であるカルボキシ-フルオレセインジアセテートで標識された少数の細菌細胞を列挙するための本発明の非拡大イメージング方法の可能性を実証した。
【0575】
バリエーション。STYOおよびSYBRファミリーの染料、ヨウ化プロピジウム、ならびにDAPIなどの核酸染料を含む非特異的な細胞の標識化のための他の染料が存在する。他の染料は、使用することができる生細胞または死細胞を識別する。例えば、他の蛍光発生基質、またはインタクトな細胞膜を通過することができるかもしくは通過することができないDNA染料を、cFDAまたはFDAの代わりにまたはそれと併せて使用することができる。蛍光検出のための複数の励起波長および吸収波長を使用することによって、複数の染料および色素が識別され得る。物体に関連する蛍光スペクトルを使用して、細胞が生細胞として計数されるか死細胞として計数されるかを決定することができる。さらに、特定の種類の細菌の生化学的活性に対して特異的である蛍光発生基質を使用して、その存在を決定することができる。例えば、蛍光発生□-ガラクトシダーゼ基質は、大腸菌群に特異的である□-ガラクトシダーゼによって、その蛍光産物に切断され得る。この方法論は、ほとんどの細菌および複数の細菌種を含有する検体にも適用可能である。本方法は、最小限の処理により多くの異なる臨床検体の種類(例えば、尿、痰、スワブ、髄液など)において細菌を検出するのに好適である。
【0576】
(実施例15)
DNA染色色素を使用する細菌の非特異的検出
【0577】
概要。この実施例では、大面積イメージングを使用して、DNA結合染料で染色された個々の生きたS.aureus細菌細胞標的を検出した。このDNA結合色素は、インタクトな生細胞の細胞膜を通って拡散することができ、これらは、細菌のDNAに結合した後に高度に蛍光性になる。一旦DNAに結合すると、これらの色素は、もはやインタクトな細胞膜を通って容易かつ受動的に拡散することができず、インタクトな細胞中に捕捉される。この技法は、インタクトな細胞膜を有する生細胞が、死細胞または易感染性膜を有する細胞と比較して、異なる色素で異なって染色されるため、生細胞を死細胞から識別することが重要である場合に有用であり得る。この実施例では、S.aureusは、DNA結合蛍光色素であるSyBR Greenにより標識され、非拡大大面積CCDイメージングを使用してイメージングされる。
実験方法。
細菌細胞の調製:
【0578】
S.aureus ATCC 29213をTryptic Soy Broth(TSB、BDカタログ番号211822)中で終夜成長させた。終夜培養物100uLを新鮮なTSB培地5ml中に接種し、35℃で2.5時間、振盪インキュベーター中でさらにインキュベートすることによってS.aureusを対数培養させた。
磁気粒子の調製:
【0579】
抗体がコンジュゲートした磁気粒子を、標準的EDAC(1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド)カップリング化学を使用して、磁気粒子(Ademtec、292nm)をニワトリ抗プロテインA抗体(Meridian Biosciences)にカップリングさせることによって作製した。
細菌細胞の標識化および捕捉:
【0580】
このアッセイは96ウェルのマイクロタイタープレート中で行われ、各ウェルは、S.aureus(TSB中に10,000個の細胞)またはTSBのみ(無細胞対照)40uL、500倍希釈したSyBR Green色素(カタログ番号S7563、Life Technologies)5uLおよび抗体がコンジュゲートした磁気粒子(2e10/mL)5ulを含んだ。反応物を室温で15分間インキュベートした。インキュベーション後に、反応混合物40uLを、黒色の透明底半面積マイクロタイタープレート(Greiner 675096、VWR パーツ番号82050-056)中に予めアリコートされた「色素クッション」(5mg/mLのChromotrope 2Rを含む15%のOptiprep)75ul上に注意深く重ねた。マイクロタイタープレートを磁場上に4分間置き、磁気粒子、標識化細胞を含有する画分を「色素クッション」を介して、ウェルの底のイメージング表面の近傍に移動させた。
細菌細胞のイメージング:
【0581】
標識化細胞:磁気粒子複合体の磁気捕捉後に、マイクロタイタープレートをCCDデジタルカメラ(IDS、モデルUI-2250SE-M)の上のステージ上に置き、光学フィルターを通してLEDからの光で照らした(469nm、35nmのFWHM)。発光フィルター(520~35nm)を通過する蛍光シグナルをカメラで検出し、蛍光複合体のイメージを作成した。個々の細胞を列挙するFLimageソフトウェア(First Light Biosciences)を使用して、イメージを分析した。
結果。
【0582】
図146は、S.aureus細胞(左のパネル)が明るい蛍光スポットとして検出され、一方、細胞を含まない培地(右のパネル)がデブリとしてカテゴライズされる物体のみを含有することを示す。標識されたS.aureus細胞を含む視野のスポット数は約5000個であり、予測された入力細菌の数とよく相関する。
【0583】
図59は、S.aureus細胞(左のパネル)およびTSB培地のみ(右のパネル)を示す。
【0584】
結論。この大面積の、非拡大イメージングシステムは、生細胞を非特異的に標識するDNA結合色素である、SyBR Greenで標識される細菌細胞を検出および列挙することが可能である。
【0585】
バリエーション。生細胞または死細胞を識別する他の色素を使用してもよい。例えば、インタクトな細胞膜を通過することができるかまたは通過することができない他の蛍光DNA染料を、SyBR Greenの代わりにまたはそれと併せて使用することができる。蛍光検出のための複数の励起波長および吸収波長を使用することによって、複数の染料および色素が識別され得る。物体に関連する蛍光スペクトルを使用して、細胞が生細胞として計数されるか死細胞として計数されるかを決定することができる。さらに、特定の種類の細菌の生化学的活性に対して特異的である蛍光発生基質を使用して、その存在を決定することができる。例えば、蛍光発生□-ガラクトシダーゼ基質は、大腸菌群に特異的である□-ガラクトシダーゼによって、その蛍光産物に切断され得る。この方法論は、ほとんどの細菌および複数の細菌種を含有する検体にも適用可能である。本方法は、最小限の処理により多くの異なる臨床検体の種類(例えば、尿、痰、スワブ、髄液など)において細菌を検出するのに好適である。SYTO/SYBRファミリーの染料、ヨウ化プロピジウム、およびDAPIの他のメンバーを含む、他の核酸染料は、細菌細胞を非特異的に標識することができる。
【0586】
(実施例5)
抗体をコーティングした磁気粒子および蛍光標識された抗体を使用する多形核好中球(PMN)の特異的検出
【0587】
概要。多形核好中球(PMN)の存在および数は、感染症を検出するのに診断上有益であり得る。例えば、尿試料中の好中球の数が少ないことは、尿路感染症を除外することの助けとなる。この実施例では、非拡大デジタルイメージングを使用して、蛍光標識された抗体で染色された多形核好中球(PMN)標的を列挙した。この実施例では、本発明者らは、多形核好中球(PMN)の表面に存在する捕捉および検出に特異的な分子である抗CD15および抗CD16抗体を使用した。一実施形態では、抗CD15抗体は、PMN捕捉のために使用される磁気粒子および非拡大デジタルイメージングを使用する検出のための蛍光標識された抗CD16抗体にコンジュゲートされた。
実験方法。
血液試料
【0588】
健康なドナーに由来する新鮮な血液試料をResearch Blood Components(Boston、MA)から入手し、PMNの供給源として使用した。
磁気粒子の調製:
【0589】
抗体がコンジュゲートした磁気粒子を、標準的EDAC(1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド)カップリング化学を使用して、磁気粒子(Ademtec、292nm)をマウス抗CD15抗体(Biolegend)にカップリングさせることによって作製した。
検出抗体
【0590】
Alexa Fluor(登録商標)488抗ヒトCD16抗体(Biolegend)を検出抗体として使用した。
PMNの標識化および捕捉
【0591】
96ウェルのマイクロタイタープレートにおいてアッセイを行った。各ウェルは、リン酸緩衝食塩水(PBS)38ul、新鮮な血液試料2uL、またはPBS(PMNなしの対照)2uL、Alexa-488により標識された抗CD-16抗体(1ug)5uLおよび抗体がコンジュゲートした磁気粒子(2e10/mL)5ulを含んだ。反応物を室温で15分間インキュベートした。インキュベーション後に、反応混合物40uLを、黒色の透明底半面積マイクロタイタープレート(Greiner 675096、VWR パーツ番号82050-056)中に予めアリコートされた「色素クッション」(5mg/mLのChromotrope 2Rを含む15%のOptiprep)75ul上に注意深く重ねた。マイクロタイタープレートを磁場上に4分間置き、磁気粒子、標識化細胞を含有する画分を「色素クッション」を介して、ウェルの底のイメージング表面の近傍に移動させた。
PMNのイメージング:
【0592】
標識されたPMN:磁気粒子複合体の磁気捕捉後に、マイクロタイタープレートをCCDデジタルカメラ(IDS、モデルUI-2250SE-M)の上のステージ上に置き、光学フィルターを通してLEDからの光で照らした(469nm、35nmのFWHM)。発光フィルターを通過する蛍光シグナル(520~35nm)をカメラで検出し、蛍光複合体のイメージを作成した。個々の細胞を列挙するFLimageソフトウェア(First Light Biosciences)を使用して、イメージを分析した。
結果。
【0593】
図60は、MultiPathアッセイによって血液試料中に存在するPMNが特異的に検出され、一方、血液試料を含まない緩衝剤は非常に低い検出可能な蛍光シグナルしか有さないことを示すMultiPathアッセイの結果を示す。
【0594】
結論。この大面積の、非拡大イメージングシステムは、細胞表面マーカーに対して蛍光標識された抗体で標識される血液試料由来のPMNを検出および列挙することが可能である。この結果は、診断上有益なヒトまたは宿主の細胞を列挙するための本発明のシステムおよび方法の可能性を示す。
【0595】
バリエーション。他の細胞特異的抗体を使用して、様々な生体試料中で異なる細胞を検出することができる。例えば、他の細胞表面マーカーの抗体は、異なる診断上有益な細胞を認識することができる。例えば、扁平上皮細胞を定量することは、肺炎の診断において呼吸試料の質を評価するために重要である。複数の抗体/細胞表面マーカーを使用することができ、標識された細胞は、蛍光検出のために複数の励起波長および吸収波長を使用することによって識別され得る。物体に関連する蛍光スペクトルを使用して、特定の種類の細胞のシグナルであるか否かを決定することができる。
参照による組込み
【0596】
特許、特許出願、特許公報、雑誌、本、論文、ウェブコンテンツなどの他の文書に対する参照および引用は、本開示全体を通してなされる。全てのこのような文書は、全ての目的のために参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
均等物
【0597】
本明細書に示されかつ記載されたものに加えて、本発明の様々な修正およびその多くのさらなる実施形態は、本明細書において引用された科学文献および特許文献への参照を含む、この文書の全内容から当業者に対して明らかとなるであろう。本明細書における主題は、本発明の様々な実施形態およびその均等物において、本発明の実践のために採用され得る重要な情報、例証およびガイダンスを含有する。
本発明は、例えば、以下の項目を提供する。
(項目1)
抗微生物薬感受性試験(AST)のためのカートリッジであって、
検体チャンバー;
前記検体チャンバーと選択可能に流体連通し、1つまたは複数の抗微生物剤を含む、複数の分割ウェル;および
前記分割ウェルと選択可能に流体連通した複数の試薬ウェルであって、各試薬ウェルが、微生物結合性磁気粒子および種特異的微生物プローブを含む、複数の試薬ウェル
を含む、カートリッジ。
(項目2)
前記検体チャンバーと前記複数の分割ウェルと前記複数の試薬ウェルとの間の流体連通のチャネルを開放および閉鎖するために前記カートリッジの外側から操作可能なスライド可能バルブをさらに含む、項目1に記載のカートリッジ。
(項目3)
前記スライド可能バルブが、前記スライド可能バルブが第1の位置にある場合には、前記検体チャンバーと前記分割ウェルとの間の直接的流体連通を提供し、第2の位置にある場合には、前記分割ウェルの各々から、前記試薬ウェルの対応するウェルへの接続を提供するチャネルを含む、項目2に記載のカートリッジ。
(項目4)
各種特異的微生物プローブが、特定の細菌種のリボソームRNAのセグメントに相補的な蛍光標識されたオリゴヌクレオチドを含む、項目1に記載のカートリッジ。
(項目5)
前記微生物結合性磁気粒子が、種特異的でない、項目4に記載のカートリッジ。
(項目6)
前記磁気粒子が、細菌細胞表面に結合する、項目5に記載のカートリッジ。
(項目7)
前記試薬ウェルの対応するウェルと各々が選択可能に流体連通した1つまたは複数のイメージングウェルをさらに含む、項目1に記載のカートリッジ。
(項目8)
各イメージングウェルが、検出表面および色素クッションを含む、項目7に記載のカートリッジ。
(項目9)
前記色素クッションが、前記検出表面に隣接した密度勾配媒体および色素を含み、前記色素クッションにわたって磁場を印加する際に、前記磁気粒子および結合した細菌が、前記色素クッションを介して前記検出表面に引き寄せられる、項目8に記載のカートリッジ。
(項目10)
前記微生物結合性磁気粒子および前記種特異的微生物プローブが、前記カートリッジ中への前記検体の送達によって再水和および溶解される凍結乾燥されたビーズとして提供される、項目1に記載のカートリッジ。
(項目11)
インキュベーションウェル;
種特異的微生物プローブ;および
透過処理剤
を含み、微生物を含む検体が混合ウェル中に送達される場合に、前記透過処理剤が、前記検体を約40℃を下回る温度に維持しながら、微生物中への前記プローブの進入を促進する、カートリッジ。
(項目12)
前記プローブが、特定の細菌種のリボソームRNAのセグメントに相補的な蛍光標識されたオリゴヌクレオチドを含む、項目11に記載のカートリッジ。
(項目13)
前記透過処理剤が、1つまたは複数の界面活性剤を含む、項目11に記載のカートリッジ。
(項目14)
前記透過処理剤および前記プローブが、前記インキュベーションウェル中への前記検体の送達によって再水和および溶解される凍結乾燥されたビーズで提供される、項目13に記載のカートリッジ。
(項目15)
細菌細胞表面に結合する磁気粒子;および
透明壁に隣接する色素クッション
をさらに含み、磁場が前記色素クッションにわたって印加される場合に、前記磁場が、前記色素クッションを介して前記磁気粒子を前記透明壁に引き寄せる、項目11に記載のカートリッジ。
(項目16)
前記色素クッションが、未結合のプローブからの光を吸収する色素をさらに含む密度勾配媒体の溶液を含む、項目15に記載のカートリッジ。
(項目17)
前記色素クッションおよび前記透明壁が、前記インキュベーションウェルと流体連通したイメージングウェル中に提供される、項目15に記載のカートリッジ。
(項目18)
前記色素クッションが、検体によって湿らされるまで、前記カートリッジ内の前記イメージングウェル中に乾燥されたまたは凍結乾燥された状態で提供される、項目17に記載のカートリッジ。
(項目19)
互いに平行な複数の対になったイメージングウェル/インキュベーションウェルセットをさらに含む、項目17に記載のカートリッジ。
(項目20)
ユーザーが前記カートリッジ中に前記検体をピペッティングすることができる受け入れリザーバーをさらに含む、項目19に記載のカートリッジ。
(項目21)
それを通るチャネルを有するガスケットを含むスライド可能ゲートをさらに含み、前記ゲートが第1の位置に位置決めされる場合には、前記受け入れリザーバーが、少なくとも第1のインキュベーションウェルと流体連通し;前記ゲートが第2の位置にある場合には、前記受け入れリザーバー、前記第1のインキュベーションウェルおよび第1のイメージングウェルが全て、互いから密封され、前記ゲートが第3の位置にある場合には、前記第1のインキュベーションウェルおよび前記第1のイメージングウェルが互いに流体連通する、項目20に記載のカートリッジ。
(項目22)
前記受け入れリザーバーからの前記検体を前記インキュベーションウェル中に分割し、前記インキュベーションウェルからの液体を対応するイメージングウェル中に引き続いて渡すために、そこからの空気圧を受け入れるように外部機器に連結するためのフィッティングをさらに含む、項目21に記載のカートリッジ。
(項目23)
前記磁気粒子が、前記細菌細胞表面に結合する化学基を含み、前記カートリッジが、前記細菌細胞表面への前記化学基の結合を促進する化合物をさらに含む、項目15に記載のカートリッジ。
(項目24)
前記細胞表面への前記化学基の結合を促進する前記化合物が、セトリミドを含み、
前記化学基が、ジエチルアミンエチルデンプン;デキストラン硫酸;ポリアスパラギン酸;ポリアクリル酸;ポリグルタミン酸;ポリスチレンスルホネート;およびポリジアリル
ジメチルアミンからなる群から選択される化学基を含む、項目23に記載の方法。
(項目25)
前記プローブが、特定の細菌種のリボソームRNAのセグメントに相補的な蛍光標識されたオリゴヌクレオチドを含み、前記カートリッジが、前記セグメントから1~30塩基以内の場所で前記リボソームRNAに結合する少なくとも1つのヘルパープローブオリゴヌクレオチドをさらに含む、項目25に記載のカートリッジ。
(項目26)
前記蛍光標識されたオリゴヌクレオチドが、10塩基長と18塩基長との間であり、少なくとも1つのコンフォメーション拘束された核酸を含む、項目25に記載の方法。
(項目27)
試薬組成物、前記プローブ、前記ヘルパープローブおよび前記化合物が、前記カートリッジ中への前記検体の送達によって再水和および溶解される凍結乾燥されたビーズとして提供され、
前記色素クッションが、未結合のプローブからの光を吸収する色素をさらに含む密度勾配媒体の溶液を含み、
前記クッションが、検体によって湿らされるまで、前記カートリッジ内の前記イメージングウェル中に乾燥されたまたは凍結乾燥された状態で提供される、項目26に記載のカートリッジ。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17-1】
図17-2】
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25
図26
図27
図28
図29
図30
図31
図32
図33
図34
図35
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図37
図38
図39
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図42
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図53
図54
図55
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図57
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図59
図60
図61
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図66
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図68
図69
図70