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特許7652434がん治療のためのビアミノキノリンとナノ製剤
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-03-18
(45)【発行日】2025-03-27
(54)【発明の名称】がん治療のためのビアミノキノリンとナノ製剤
(51)【国際特許分類】
   C07D 215/46 20060101AFI20250319BHJP
   A61K 9/16 20060101ALI20250319BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20250319BHJP
   A61K 45/06 20060101ALI20250319BHJP
   A61K 47/22 20060101ALI20250319BHJP
   A61K 47/28 20060101ALI20250319BHJP
   A61K 49/00 20060101ALI20250319BHJP
   A61K 51/04 20060101ALI20250319BHJP
   A61P 1/02 20060101ALI20250319BHJP
   A61P 1/04 20060101ALI20250319BHJP
   A61P 1/16 20060101ALI20250319BHJP
   A61P 1/18 20060101ALI20250319BHJP
   A61P 3/00 20060101ALI20250319BHJP
   A61P 11/00 20060101ALI20250319BHJP
   A61P 11/02 20060101ALI20250319BHJP
   A61P 11/04 20060101ALI20250319BHJP
   A61P 13/08 20060101ALI20250319BHJP
   A61P 13/10 20060101ALI20250319BHJP
   A61P 15/00 20060101ALI20250319BHJP
   A61P 17/00 20060101ALI20250319BHJP
   A61P 17/04 20060101ALI20250319BHJP
   A61P 19/02 20060101ALI20250319BHJP
   A61P 25/00 20060101ALI20250319BHJP
   A61P 27/16 20060101ALI20250319BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20250319BHJP
   A61P 31/14 20060101ALI20250319BHJP
   A61P 33/06 20060101ALI20250319BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20250319BHJP
   A61P 35/02 20060101ALI20250319BHJP
   A61P 37/02 20060101ALI20250319BHJP
   A61P 37/06 20060101ALI20250319BHJP
   A61P 37/08 20060101ALI20250319BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20250319BHJP
   C07D 215/60 20060101ALI20250319BHJP
   C07K 14/47 20060101ALN20250319BHJP
   C12N 9/82 20060101ALN20250319BHJP
   C07J 9/00 20060101ALN20250319BHJP
【FI】
C07D215/46 CSP
A61K9/16
A61K45/00
A61K45/06
A61K47/22
A61K47/28
A61K49/00
A61K51/04 100
A61P1/02
A61P1/04
A61P1/16
A61P1/18
A61P3/00
A61P11/00
A61P11/02
A61P11/04
A61P13/08
A61P13/10
A61P15/00
A61P17/00
A61P17/04
A61P19/02
A61P25/00
A61P27/16
A61P29/00 101
A61P31/14
A61P33/06
A61P35/00
A61P35/02
A61P37/02
A61P37/06
A61P37/08
A61P43/00 105
A61P43/00 111
A61P43/00 125
C07D215/60
C07K14/47 ZNA
C12N9/82
C07J9/00
【請求項の数】 23
(21)【出願番号】P 2022517438
(86)(22)【出願日】2020-09-18
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-11-24
(86)【国際出願番号】 US2020051430
(87)【国際公開番号】W WO2021055705
(87)【国際公開日】2021-03-25
【審査請求日】2023-09-14
(31)【優先権主張番号】62/902,156
(32)【優先日】2019-09-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】506115514
【氏名又は名称】ザ リージェンツ オブ ザ ユニバーシティ オブ カリフォルニア
【氏名又は名称原語表記】The Regents of the University of California
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100117019
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100141977
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 勝
(74)【代理人】
【識別番号】100138210
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 達則
(74)【代理人】
【識別番号】100196977
【弁理士】
【氏名又は名称】上原 路子
(72)【発明者】
【氏名】ユアンペイ リー
(72)【発明者】
【氏名】チャオ マー
【審査官】安藤 倫世
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2017/0275252(US,A1)
【文献】国際公開第2016/196393(WO,A2)
【文献】特表2014-513101(JP,A)
【文献】国際公開第2015/068142(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2018/0280372(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2018/0111904(US,A1)
【文献】David I. Fletcher; et al.,Synthesis and pharmacological testing of polyaminoquinolines as blockers of the apamin-sensitive Ca2+-activated K+ channel (SKCa),Bioorganic & Medicinal Chemistry,2007年,15 (16),5457-5479
【文献】Ma, Zhao; et al,Pharmacophore hybridisation and nanoscale assembly to discover self-delivering lysosomotropic new-chemical entities for cancer therapy,Nature Communications ,2020年09月15日,11,4615, 1-12
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D
C07J
A61K
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
構造:
【化1】
(式中、nは1~7の整数である)
有する化合物、またはその医薬として許容可能な塩。
【請求項2】
【化2】
からなるグループから選択される、請求項に記載の化合物、またはその医薬として許容可能な塩。
【請求項3】
【化3】
からなるグループから選択される化合物、またはその医薬として許容可能な塩。
【請求項4】
内側と外側を持つナノ担体であって、請求項のいずれか1項に記載の複数の化合物、またはその医薬として許容可能な塩を含み、疎水性ポケットが前記ナノ担体の内側に形成されるとともに、親水性基が前記ナノ担体の外側に自己集合するようにそれぞれの化合物が水性溶媒の中で自己集合して前記ナノ担体を形成する、ナノ担体。
【請求項5】
前記疎水性ポケットの中に封鎖された1つ以上の疎水性薬またはイメージング剤をさらに含む、請求項に記載のナノ担体。
【請求項6】
前記疎水性薬が、化学療法剤、分子標的剤、免疫療法剤、放射線療法剤、またはこれらの組み合わせである、請求項に記載のナノ担体。
【請求項7】
前記疎水性薬が免疫療法剤である、請求項に記載のナノ担体。
【請求項8】
前記疎水性薬が放射線療法剤である、請求項に記載のナノ担体。
【請求項9】
前記疎水性薬が化学療法剤または分子標的剤である、請求項に記載のナノ担体。
【請求項10】
前記疎水性薬が、FLT-3阻害剤、VEGFR阻害剤、EGFR TK阻害剤、オーロラキナーゼ阻害剤、PIK-1調節剤、Bcl-2阻害剤、HDAC阻害剤、c-MET阻害剤、PARP阻害剤、Cdk阻害剤、EGFR TK阻害剤、IGFR-TK阻害剤、抗HGF抗体、PI3キナーゼ阻害剤、AKT阻害剤、JAK/STAT阻害剤、チェックポイント-1または2の阻害剤、接着斑キナーゼ阻害剤、Mapキナーゼキナーゼ(mek)阻害剤、VEGF捕獲抗体、エベロリムス、トラベクテジン、アブラキサン、TLK 286、AV-299、DN-101、パゾパニブ、GSK690693、RTA 744、ON 0910.Na、AZD 6244(ARRY-142886)、AMN-107、TKI-258、GSK461364、AZD 1152、エンザスタウリン、バンデタニブ、ARQ-197、MK-0457、MLN8054、PHA-739358、R-763、AT-9263、ペメトレキセド、エルロチニブ、ダサタニブ、ニロチニブ、デカタニブ、パニツムマブ、アムルビシン、オレゴボマブ、Lep-etu、ノラトレキセド、azd2171、バタブリン、オファツムマブ、ザノリブマブ、エドテカリン、テトランドリン、ルビテカン、テスミリフェン、オブリメルセン、チシリムマブ、イピリムマブ、ゴシポール、Bio 111、131-I-TM-601、ALT-110、BIO 140、CC 8490、シレンジタイド、ジマテカン、IL13-PE38QQR;INO 1001、IPdR1 KRX-0402、ルカントン、LY 317615、ノイラジアブ、ビテスパン、Rta 744、Sdx 102、タランパネル、アトラセンタン、Xr 311、ロミデプシン、ADS-100380、スニチニブ、5-フルオロウラシル、ボリノスタット、エトポシド、ゲムシタビン、ドキソルビシン、イリノテカン、リポソームドキソルビシン、5′-デオキシ-5-フルオロウリジン、ビンクリスチン、テモゾロミド、ZK-304709、セリシクリブ;PD0325901、AZD-6244、カペシタビン、N-[4-[2-(2-アミノ-4,7-ジヒドロ-4-オキソ-1H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-5-イル)エチル]ベンゾイル]-L-グルタミン酸二ナトリウム塩七水和物、カンプトテシン、PEG標識イリノテカン、タモキシフェン、クエン酸トレミフェン、アナストラゾール、エキセメスタン、レトロゾール、DES(ジエチルスチルベストロール)、エストラジオール、エストロゲン、結合型エストロゲン、ベバシズマブ、IMC-1C11、CHIR-258);3-[5-(メチルスルホニルピペラジンメチル)-インドリルj-キノロン、バタラニブ、AG-013736、AVE-0005、[D-Ser(Bu t) 6, Azgly 10]の酢酸塩(酢酸ピロ-Glu-His-Trp-Ser-Tyr-D-Ser(Bu t)-Leu-Arg-Pro-Azgly-NH2 [C59H84N18O14-(C2H4O2)X(ただしx=1~2.4)]、酢酸ゴセレリン、酢酸ロイプロリド、パモ酸トリプトレリン、酢酸メドロキシプロゲステロン、カプロン酸ヒドロキシプロゲステロン、酢酸メゲストロール、ラロキシフェン、ビカルタミド、フルタミド、ニルタミド、酢酸メゲストロール、CP-724714;TAK-165、HKI-272、エルロチニブ、ラパタニブ、カネルチニブ、ABX-EGF抗体、アービタックス、EKB-569、PKI-166、GW-572016、イオナファルニブ、BMS-214662、チピファルニブ;アミフォスチン、NVP-LAQ824、ヒドロキサミン酸サブエロイルアニリド、バルプロ酸、トリコスタチンA、FK-228、SU11248、ソラフェニブ、KRN951、アミノグルテチミド、アムサクリン、アナグレリド、L-アスパラギナーゼ、カルメット-ゲラン桿菌(BCG)ワクチン、ブレオマイシン、ブセレリン、ブスルファン、カルボプラチン、カルムスチン、クロラムブシル、シスプラチン、クラドリビン、クロドロネート、シプロテロン、シタラビン、ダカルバジン、ダクチノマイシン、ダウノルビシン、ジエチルスチルベストロール、エピルビシン、フルダラビン、フルドロコルチゾン、フルオキシメステロン、フルタミド、ゲムシタビン、グリベック、ヒドロキシウレア、イダルビシン、イホスファミド、イマチニブ、ロイプロリド、レバミゾール、ロムスチン、メクロレタミン、メルファラン、6-メルカプトプリン、メスナ、メトトレキサート、マイトマイシン、ミトタン、ミトキサントロン、ニルタミド、オクトレオチド、オキサリプラチン、パミドロネート、ペントスタチン、プリカマイシン、ポルフィマー、プロカルバジン、ラルチトレキセド、リツキシマブ、ストレプトゾシン、テニポシド、テストステロン、サリドマイド、チオグアニン、チオテパ、トレチノイン、ビンデシン、13-シス-レチノイン酸、フェニルアラニンマスタード、ウラシルマスタード、エストラムスチン、アルトレタミン、フロクスウリジン、5-デオオキシウリジン、シトシンアラビノシド、6-メルカプトプリン、デオキシコホルマイシン、カルシトリオール、バルルビシン、ミトラマイシン、ビンブラスチン、ビノレルビン、トポテカン、ラゾキシン、マリマスタット、COL-3、ネオバスタット、BMS-275291、スクアラミン、エンドスタチン、SU5416、SU6668、EMD121974、インターロイキン-12、IM862、アンギオスタチン、ビタキシン、ドロロキシフェン、イドキシフェン、スピロノラクトン、フィナステリド、シミチジン、トラスツズマブ、デニロイキン・ディフィトックス、ゲフィチニブ、ボルテジミブ、パクリタキセル、イリノテカン、トポテカン、ドキソルビシン、ドセタキセル、ビノレルビン、ベバシズマブ(モノクローナル抗体)とアービタックス、無クレモホールパクリタキセル、エピチロンB、BMS-247550、BMS-310705、ドロロキシフェン、4-ヒドロキシタモキシフェン、ピペンドキシフェン、ERA-923、アルゾキシフェン、フルベストラント、アコルビフェン、ラソフォキシフェン、イドキシフェン、TSE-424、HMR-3339、ZK186619、PTK787/ZK 222584、VX-745、PD 184352、ラパマイシン、40-O-(2-ヒドロキシエチル)-ラパマイシン、テムシロリムス、AP-23573、RAD001、ABT-578、BC-210、LY294002、LY292223、LY292696、LY293684、LY293646、ウォルトマンニン、ZM336372、L-779,450、PEG-フィルグラスチム、ダルベポエチン、エリスロポエチン、顆粒球コロニー刺激因子、ゾレンドロネート、プレドニゾン、セツキシマブ、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子、ヒストレリン、ペグインターフェロンアルファ-2a、インターフェロンアルファ-2a、ペグインターフェロンアルファ-2b、インターフェロンアルファ-2b、アザシチジン、PEG-L-アスパラギナーゼ、レナリドミド、ゲムツズマブ、ヒドロコルチゾン、インターロイキン-11、デクスラゾキサン、アレムツズマブ、全トランスレチノイン酸、ケトコナゾール、インターロイキン-2、メゲストロール、免疫グロブリン、ナイトロジェンマスタード、メチルプレドニゾロン、イブリツグモマブチウキセタン、アンドロゲン、デシタビン、ヘキサメチルメラミン、ベキサロテン、トシツモマブ、三酸化ヒ素、コルチゾン、エジトロネート、ミトタン、シクロスポリン、リポソームダウノルビシン、Edwina-アスパラギナーゼ、ストロンチウム89、カソピタント、ネツピタント、NK-1受容体アンタゴニスト、パロノセトロン、アプレピタント、ジフェンヒドラミン、ヒドロキシジン、メトクロプラミド、ロラゼパム、アルプラゾラム、ハロペリドール、ドロペリドール、ドロナビノール、デキサメタゾン、メチルプレドニゾロン、プロクロルペラジン、グラニセトロン、オンダンセトロン、ドラセトロン、トロピセトロン、sspegフィルグラスチム、エリスロポエチン、エポエチンアルファとダルベポエチンアルファ、イピルムマブ、ベムラフェニブ、またはこれらの組み合わせである、請求項のいずれか1項に記載のナノ担体。
【請求項11】
請求項のいずれか1項に記載の複数の化合物を含む、請求項のいずれか1項に記載のナノ担体。
【請求項12】
請求項11のいずれか1項に記載のナノ担体を含む、疾患を治療するための医薬組成物。
【請求項13】
前記医薬組成物は、1つ以上の追加の薬剤と組み合わせて投与され、前記追加の薬剤が、化学療法剤、分子標的剤、免疫療法剤、放射線療法剤、またはこれらの組み合わせである、請求項12に記載の医薬組成物。
【請求項14】
前記追加の薬剤剤剤が免疫療法剤である、請求項13に記載の医薬組成物。
【請求項15】
前記追加の薬が放射線療法剤である、請求項13に記載の医薬組成物。
【請求項16】
前記追加の薬が化学療法剤または分子標的剤である、請求項13に記載の医薬組成物。
【請求項17】
前記追加の薬剤が、FLT-3阻害剤、VEGFR阻害剤、EGFR TK阻害剤、オーロラキナーゼ阻害剤、PIK-1調節剤、Bcl-2阻害剤、HDAC阻害剤、c-MET阻害剤、PARP阻害剤、Cdk阻害剤、EGFR TK阻害剤、IGFR-TK阻害剤、抗HGF抗体、PI3キナーゼ阻害剤、AKT阻害剤、JAK/STAT阻害剤、チェックポイント-1または2の阻害剤、接着斑キナーゼ阻害剤、Mapキナーゼキナーゼ(mek)阻害剤、VEGF捕獲抗体、エベロリムス、トラベクテジン、アブラキサン、TLK 286、AV-299、DN-101、パゾパニブ、GSK690693、RTA 744、ON 0910.Na、AZD 6244(ARRY-142886)、AMN-107、TKI-258、GSK461364、AZD 1152、エンザスタウリン、バンデタニブ、ARQ-197、MK-0457、MLN8054、PHA-739358、R-763、AT-9263、ペメトレキセド、エルロチニブ、ダサタニブ、ニロチニブ、デカタニブ、パニツムマブ、アムルビシン、オレゴボマブ、Lep-etu、ノラトレキセド、azd2171、バタブリン、オファツムマブ、ザノリブマブ、エドテカリン、テトランドリン、ルビテカン、テスミリフェン、オブリメルセン、チシリムマブ、イピリムマブ、ゴシポール、Bio 111、131-I-TM-601、ALT-110、BIO 140、CC 8490、シレンジタイド、ジマテカン、IL13-PE38QQR;INO 1001、IPdR1 KRX-0402、ルカントン、LY 317615、ノイラジアブ、ビテスパン、Rta 744、Sdx 102、タランパネル、アトラセンタン、Xr 311、ロミデプシン、ADS-100380、スニチニブ、5-フルオロウラシル、ボリノスタット、エトポシド、ゲムシタビン、ドキソルビシン、イリノテカン、リポソームドキソルビシン、5′-デオキシ-5-フルオロウリジン、ビンクリスチン、テモゾロミド、ZK-304709、セリシクリブ;PD0325901、AZD-6244、カペシタビン、N-[4-[2-(2-アミノ-4,7-ジヒドロ-4-オキソ-1H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-5-イル)エチル]ベンゾイル]-L-グルタミン酸二ナトリウム塩七水和物、カンプトテシン、PEG標識イリノテカン、タモキシフェン、クエン酸トレミフェン、アナストラゾール、エキセメスタン、レトロゾール、DES(ジエチルスチルベストロール)、エストラジオール、エストロゲン、結合型エストロゲン、ベバシズマブ、IMC-1C11、CHIR-258);3-[5-(メチルスルホニルピペラジンメチル)-インドリルj-キノロン、バタラニブ、AG-013736、AVE-0005、[D-Ser(Bu t) 6, Azgly 10]の酢酸塩(酢酸ピロ-Glu-His-Trp-Ser-Tyr-D-Ser(Bu t)-Leu-Arg-Pro-Azgly-NH2 [C59H84N18O14-(C2H4O2)X(ただしx=1~2.4)]、酢酸ゴセレリン、酢酸ロイプロリド、パモ酸トリプトレリン、酢酸メドロキシプロゲステロン、カプロン酸ヒドロキシプロゲステロン、酢酸メゲストロール、ラロキシフェン、ビカルタミド、フルタミド、ニルタミド、酢酸メゲストロール、CP-724714;TAK-165、HKI-272、エルロチニブ、ラパタニブ、カネルチニブ、ABX-EGF抗体、アービタックス、EKB-569、PKI-166、GW-572016、イオナファルニブ、BMS-214662、チピファルニブ;アミフォスチン、NVP-LAQ824、ヒドロキサミン酸サブエロイルアニリド、バルプロ酸、トリコスタチンA、FK-228、SU11248、ソラフェニブ、KRN951、アミノグルテチミド、アムサクリン、アナグレリド、L-アスパラギナーゼ、カルメット-ゲラン桿菌(BCG)ワクチン、ブレオマイシン、ブセレリン、ブスルファン、カルボプラチン、カルムスチン、クロラムブシル、シスプラチン、クラドリビン、クロドロネート、シプロテロン、シタラビン、ダカルバジン、ダクチノマイシン、ダウノルビシン、ジエチルスチルベストロール、エピルビシン、フルダラビン、フルドロコルチゾン、フルオキシメステロン、フルタミド、ゲムシタビン、グリベック、ヒドロキシウレア、イダルビシン、イホスファミド、イマチニブ、ロイプロリド、レバミゾール、ロムスチン、メクロレタミン、メルファラン、6-メルカプトプリン、メスナ、メトトレキサート、マイトマイシン、ミトタン、ミトキサントロン、ニルタミド、オクトレオチド、オキサリプラチン、パミドロネート、ペントスタチン、プリカマイシン、ポルフィマー、プロカルバジン、ラルチトレキセド、リツキシマブ、ストレプトゾシン、テニポシド、テストステロン、サリドマイド、チオグアニン、チオテパ、トレチノイン、ビンデシン、13-シス-レチノイン酸、フェニルアラニンマスタード、ウラシルマスタード、エストラムスチン、アルトレタミン、フロクスウリジン、5-デオオキシウリジン、シトシンアラビノシド、6-メルカプトプリン、デオキシコホルマイシン、カルシトリオール、バルルビシン、ミトラマイシン、ビンブラスチン、ビノレルビン、トポテカン、ラゾキシン、マリマスタット、COL-3、ネオバスタット、BMS-275291、スクアラミン、エンドスタチン、SU5416、SU6668、EMD121974、インターロイキン-12、IM862、アンギオスタチン、ビタキシン、ドロロキシフェン、イドキシフェン、スピロノラクトン、フィナステリド、シミチジン、トラスツズマブ、デニロイキン・ディフィトックス、ゲフィチニブ、ボルテジミブ、パクリタキセル、イリノテカン、トポテカン、ドキソルビシン、ドセタキセル、ビノレルビン、ベバシズマブ(モノクローナル抗体)とアービタックス、無クレモホールパクリタキセル、エピチロンB、BMS-247550、BMS-310705、ドロロキシフェン、4-ヒドロキシタモキシフェン、ピペンドキシフェン、ERA-923、アルゾキシフェン、フルベストラント、アコルビフェン、ラソフォキシフェン、イドキシフェン、TSE-424、HMR-3339、ZK186619、PTK787/ZK 222584、VX-745、PD 184352、ラパマイシン、40-O-(2-ヒドロキシエチル)-ラパマイシン、テムシロリムス、AP-23573、RAD001、ABT-578、BC-210、LY294002、LY292223、LY292696、LY293684、LY293646、ウォルトマンニン、ZM336372、L-779,450、PEG-フィルグラスチム、ダルベポエチン、エリスロポエチン、顆粒球コロニー刺激因子、ゾレンドロネート、プレドニゾン、セツキシマブ、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子、ヒストレリン、ペグインターフェロンアルファ-2a、インターフェロンアルファ-2a、ペグインターフェロンアルファ-2b、インターフェロンアルファ-2b、アザシチジン、PEG-L-アスパラギナーゼ、レナリドミド、ゲムツズマブ、ヒドロコルチゾン、インターロイキン-11、デクスラゾキサン、アレムツズマブ、全トランスレチノイン酸、ケトコナゾール、インターロイキン-2、メゲストロール、免疫グロブリン、ナイトロジェンマスタード、メチルプレドニゾロン、イブリツグモマブチウキセタン、アンドロゲン、デシタビン、ヘキサメチルメラミン、ベキサロテン、トシツモマブ、三酸化ヒ素、コルチゾン、エジトロネート、ミトタン、シクロスポリン、リポソームダウノルビシン、Edwina-アスパラギナーゼ、ストロンチウム89、カソピタント、ネツピタント、NK-1受容体アンタゴニスト、パロノセトロン、アプレピタント、ジフェンヒドラミン、ヒドロキシジン、メトクロプラミド、ロラゼパム、アルプラゾラム、ハロペリドール、ドロペリドール、ドロナビノール、デキサメタゾン、メチルプレドニゾロン、プロクロルペラジン、グラニセトロン、オンダンセトロン、ドラセトロン、トロピセトロン、sspegフィルグラスチム、エリスロポエチン、エポエチンアルファとダルベポエチンアルファ、イピルムマブ、ベムラフェニブ、またはこれらの組み合わせである、請求項1316のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項18】
前記疾患ががんである、請求項12に記載の医薬組成物。
【請求項19】
前記がんが、膀胱がん、脳腫瘍、乳がん、子宮頸がん、胆管癌、結腸直腸がん、食道がん、胆嚢がん、胃がん、膠芽腫、腸がん、頭頸部がん、白血病、肝臓がん、肺がん、黒色腫、骨髄腫、卵巣がん、膵臓がん、前立腺がん、および子宮がんである、請求項18に記載の医薬組成物。
【請求項20】
前記疾患が、コロナウイルス、マラリア、抗リン脂質抗体症候群、ループス、関節リウマチ、慢性蕁麻疹、またはシェーグレン病である、請求項12に記載の医薬組成物。
【請求項21】
リソソーム破壊、リソソーム機能不全、および/またはオートファジー阻害を標的とする、請求項1220のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項22】
リソソームを標的とする、請求項12又は21に記載の医薬組成物。
【請求項23】
請求項4~11のいずれか1項に記載のナノ担体を含む、イメージングのための医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連する出願の相互参照
本出願は、2019年9月18日に出願されたアメリカ合衆国仮出願第62/902,156号の優先権を主張するものであり、あらゆる目的のためその全体が本明細書に組み込まれている。
【0002】
連邦が資金援助した研究と開発のもとでなされた発明に対する権利に関する宣言
本発明は、政府の支援を得て、アメリカ国立衛生研究所とアメリカ国立がん研究所から資金提供された助成金番号R01CA199668と5R01CA232845、アメリカ国立衛生研究所とアメリカ国立歯科・頭蓋顔面研究所から資金提供された助成金番号R01DE029237、およびアメリカ国立衛生研究所とアメリカ国立小児保健発達研究所から資金提供された助成金番号R01HD086195のもとでなされた。政府は本発明に所定の権利を有する。
【背景技術】
【0003】
ナノ医療の研究増加が、過去数十年にわたってがん治療に大きく貢献してきた。担体支援ナノ医療と無担体ナノ医療の両方が、薬固有の動態と安全性プロファイルを改善するために開発されつつある。しかしこれらナノ療法のアプローチに関連するいくつかの制約が存在している。第1に、その多成分という性質に起因する複雑さと毒性が、多くのナノ製剤の臨床への橋渡しを強く阻んできた。第2に、従来の送達研究で用いられるたいていの薬は数十年前に認可されており、いくつかはもはや第一選択治療ではない。第3に、最近開発された治療剤(特に新規化学物質)のために設計されるナノ製剤は特許の問題に遭遇可能性がある。最後に、すべての薬を構造的に改変できるわけではない。これらの制約は、医薬品化学の文脈で対処することができる。薬の研究と開発のため送達プロファイルに焦点を当てているナノ医療と比べ、医薬品化学は初期段階での薬物質の発見に注力している。薬発見技術は多数の薬リードと薬候補を生み出してきたが、薬物動態、代謝、および毒物学を取り巻く諸問題が課題として残されている。これらの課題もナノ医療の分野からのナノテクノロジーによって比較的容易に解決できる可能性がある。この分野横断的なつながりを活用してナノテクノロジーから最初の薬設計へという原理が統合され、一成分非プロドラッグナノ医療(ONN)戦略が開発された(図1)。この戦略では、薬設計は、従来の薬設計戦略と分子自己集合原理の両方に従うため、設計された薬には、薬発見と薬送達の両方の観点からの利点が与えられる。
【0004】
リソソームが、がん治療の標的として選択された。がん細胞のリソソームは異常に肥大していて容易に壊れるため、正常なリソソームよりも脆弱である。リソソーム膜透過処理(LMP)によって細胞質の中にタンパク質溶解酵素(すなわちカテプシン)を放出することが可能になるため、細胞死を直接開始させることができる;そこでLMPを誘導できるリソソーム作用性(lysosomotropic)洗浄剤が腫瘍治療のために開発されてきた。さらに、リソソーム阻害は、確立された腫瘍のストレス応答と薬剤耐性に関する1つの重要な経路であるオートファジーに干渉するため、抗がん戦略としてかなり大きな可能性を持つ。リソソーム作用性アルカリ化剤であるクロロキン(CQ)とヒドロキシクロロキン(HCQ)が一般に使用されているオートファジー阻害剤であり、さまざまなタイプのがんに対する多数の臨床試験で試験されてきた。しかしこれらの効果は、特に単剤として使用されるときには不十分であると見なされている。
【0005】
ファーマコフォアハイブリダイゼーションを採用し、分子自己集合によって一連の親油性カチオン性BAQ誘導体を設計した(図1図7)。BAQ12とBAQ13を選択してONNを構成するのは、これらが治療剤と自己集合建築ブロックになる可能性があるからである。これらのBAQ ONNはインビトロで優れた抗がん活性を示し、リソソーム破壊、リソソーム機能不全、およびオートファジー阻害に関して増強された効果を持つ。さらに、BAQ ONNは、ナノ薬として、予想される自己送達プロファイルを示す。薬発見と薬送達の両方の観点からのこれら利点は、最終的に、生体内胃腸がんモデルにおける単剤としてのこれら化合物の顕著な抗がん活性に寄与する。それに加え、BAQ ONNはナパブカシンとの併用療法での用途が有望である。というのもBAQ ONNは、治療剤と送達担体の両方として二重の役割を果たすからである。BAQ ONNは、多分野を統合するとともに機能を巧妙に重ね合わせているため、がん治療を改善するための優れた代替物として世に出ることになろう。
【0006】
薬発見の分野と薬送達の分野の独自の利点を統合することは、薬開発の進展にとって極めて有益である。本明細書では、自己集合原理を薬設計に組み込むことを通じてがん療法を改善するため、自己送達式で一成分の新規化学物質ナノ医療(ONN)戦略を記述する。リソソーム作用性洗浄剤(MSDH)とオートファジー阻害剤(Lys05)がハイブリダイズされて、ナノ集合体を自律的に形成することのできるビスアミノキノリン誘導体が開発される。選択されるBAQ12とBAQ13のONNは、リソソーム破壊、リソソーム機能不全、およびオートファジー阻止を誘導するのに非常に有効であり、臨床試験で用いられるヒドロキシクロロキンよりも30倍大きな抗増殖活性を示す。これら単一薬ナノ粒子は、優れた薬物動態プロファイルおよび毒物学的プロファイルと、劇的な生体内抗腫瘍効果を示す。それに加え、これら単一薬ナノ粒子は追加の薬をカプセル化して腫瘍部位に送達できるため、オートファジー阻害に基づく併用療法にとって有望な薬剤である。これらBAQ ONNは、その分野横断的利点を考慮すると、がん療法を改善する莫大な潜在力を有する。必要なのは新しいBAQ ONNである。驚くべきことに、本発明は、この必要性とそれ以外の必要性を満たしている。
【発明の概要】
【0007】
一実施態様では、本発明により式(I)の化合物:
【化1】
またはその医薬として許容可能な塩が提供される(ただしこの式において:R1は、水素、C1-40アルキル、C2-40アルケニル、C2-40アルキニル、-W、-(L-Y)p-Z、または-C(O)R1aであり、その中のそれぞれのアルキル、アルケニル、およびアルキニルは、場合により、C1-20アルコキシ、ヒドロキシル、または-NR1bR1cで置換されており;Wは、C3-12シクロアルキル、C6-12アリール、またはそれぞれが独立にN、O、またはSである1~4個のヘテロ原子を持つ5~12員のヘテロアリールであり、その中のそれぞれのシクロアルキル、アリール、およびヘテロアリールは、場合により、C1-40アルキル、C2-40アルケニル、またはC2-40アルキニルで置換されており;それぞれのLは、独立に、不在、C1-20アルキレン、C2-20アルケニレン、またはC2-20アルキニレンであり;それぞれのYは、独立に、不在、-O-、-NH-、-NHC(O)-、-NHC(O)NH-、-NHSO2-、-OC(O)-、-OC(O)NH-、-C(O)-、または-SO2-であり;Zは、蛍光体、光増感剤、ポルフィリン、化学療法薬、ステロール、C3-12シクロアルキル、それぞれが独立にN、O、またはSである1~4個のヘテロ原子を持つ3~12員のヘテロシクロアルキル、C6-12アリール、それぞれが独立にN、O、またはSである1~4個のヘテロ原子を持つ5~12員のヘテロアリール、-OH、または-NH2であり;R1aは、C1-40アルキル、C2-40アルケニル、またはC2-40アルキニルであり、その中のそれぞれのアルキル、アルケニル、およびアルキニルは、場合により、C1-40アルコキシ、ヒドロキシル、または-NR1bR1cで置換されており;R1bは、水素、C1-40アルキル、C2-40アルケニル、またはC2-40アルキニルであり;R1cは、水素、C1-40アルキル、C2-40アルケニル、C2-40アルキニル、または-L-Wであり;R2a、R2b、R3a、およびR3bは、それぞれ独立に、水素、C1-40アルキル、C2-40アルケニル、C2-40アルキニル、C1-40アルコキシ、ハロゲン、-CN、または-NO2であり;R2a、R2b、R3a、およびR3bは、それぞれ独立に、水素、C1-40アルキル、C2-40アルケニル、C2-40アルキニル、C1-40アルコキシ、ハロゲン、-CN、または-NO2であり;mとnは、独立に、1~10の整数であり;pは、独立に、1~20の整数であり;それぞれのXは、独立に、不在であるか-O-であるが、Xが不在で、R2aとR2bが水素で、R3aとR3bが、それぞれ独立に、水素、-OMe、フッ素、塩素、ホウ素、または-NO2であるときには、R1は、C2-40アルキル、C2-40アルケニル、C4-40アルキニル、-W、-(L-Y)p-Z、または-C(O)R1aであり、Xが不在で、R1が-CH2CH2NH(7-クロロ-4-キノリニル)で、R2aとR2bが水素であるときには、R3aとR3bは、独立に、水素、C1-20アルキル、C2-40アルケニル、C2-40アルキニル、C1-40アルコキシ、フッ素、ホウ素、ヨウ素、-CN、または-NO2から選択される)。
【0008】
別の一実施態様では、本発明により、内側と外側を持つナノ担体として、本発明の複数の化合物、またはその医薬として許容可能な塩を含み、疎水性ポケットがこのナノ担体の内側に形成されるとともに、親水性基がこのナノ担体の外側に自己集合するようにそれぞれの化合物が水性溶媒の中で自己集合してこのナノ担体を形成するナノ担体が提供される。
【0009】
別の一実施態様では、本発明により、疾患を治療する方法として、それを必要とする対象に、治療に有効な量の本発明のナノ担体を投与することを含む方法が提供される。
【0010】
別の一実施態様では、本発明により、イメージングの方法として、画像を撮影される対象に、本発明のナノ担体の有効な量を投与することを含む方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、提案する薬設計戦略と本研究の模式図を示す。経路(a)は、従来の医薬品化学の分野とナノ医療の分野を統合するため分野横断的な薬設計戦略を提案することを示す。薬は一成分非プロドラッグナノ医療(ONN)と名づけられ、従来の薬設計と分子自己集合の戦略に従って設計されるため、薬発見と薬送達の両方の観点からの利点を獲得することができよう。経路(b)は、本研究における概念実証実験、すなわちがん療法のための自己送達リソソーム作用性ビスアミノキノリン(BAQ)誘導体の発見を示す。BAQ誘導体が、リソソーム作用性洗浄剤と、BAQに基づくオートファジー阻害剤のハイブリダイゼーションから生成し、自己集合してBAQ ONNになることができる。このBAQ ONNは、単剤として、インビトロで増強された機能、優れた送達プロファイル、および生体内で顕著な治療効果を示す。さらに、このBAQ ONNは大きな薬搭載能力も持っていて追加の薬を腫瘍部位へと送達するため、併用療法の有望な用途が生まれる。
【0012】
図2A-2C】図2A~2GはBAQ ONNの特徴づけを示す。図2Aは、異なるpH値を持つ酢酸塩バッファの中でのBAQ NP(10 μM)のサイズ変化を示す;データは平均値±SDである;n=3個の独立なナノ粒子サンプル。図2Bは、PBSバッファの中でBAQ NP(50 μM、4時間)によって誘導されるpH依存性溶血を示す;データは平均値±SDである;n=3個の独立なナノ粒子サンプル。図2Cは、塩酸(HCl、0.1 M)滴定の範囲でのBAQ NP(1 mM)のpH変化を示す。
図2D-2G】図2A~2GはBAQ ONNの特徴づけを示す。図2D~2Eは、pH 7.4(図2D)とpH 5.0(図2E)での代表的なTEM顕微鏡画像を示す;挿入図はサイズ分布(左)とチンダル効果(右)を示す;実験はすべて独立に3回繰り返した。図2Fは、pH 7.4とpH 5.0におけるインビトロでの薬放出パターンを示す;データは平均値±SDである;n=3個の独立なナノ粒子サンプル。図2Gは、水中のさまざまな濃度のBAQ NPの計数率を示す;2本の線の交点はBAQ12 NP(0.45 μg mL-1、0.76 μM)とBAQ13 NP(0.15 μg mL-1、0.25 μM)のCACである;データは平均値±SDである;n=3個の独立なナノ粒子サンプル。
【0013】
図3A図3A~3Kは、MIA PaCa-2細胞の中でBAQ ONNによって誘導されたリソソーム破壊と阻害されたオートファジーを示す。図3Aは、細胞へのナノ粒子取り込みに関する代表的な画像を示す;Dextran-AF488をロードされた細胞を、DiDで標識したBAQ ONNとともに2時間インキュベートした;実験は独立に3回繰り返した。
図3B-3D】図3A~3Kは、MIA PaCa-2細胞の中でBAQ ONNによって誘導されたリソソーム破壊と阻害されたオートファジーを示す。図3Bは、細胞が示されているように処理され(10 μM、2時間)、LysoTracker Greenによって染色されたことを示す;実験は独立に3回繰り返した。図3Cは、示されている処理(5 μM、12時間)の範囲での細胞のAO染色を示す;実験は独立に3回繰り返した。図3Dは、Dextran-AF488をロードされた細胞を示されているように処理した(5 μM、12時間)ものの代表的な画像を示す;実験は独立に3回繰り返した。
図3E-3G】図3A~3Kは、MIA PaCa-2細胞の中でBAQ ONNによって誘導されたリソソーム破壊と阻害されたオートファジーを示す。図3Eは、示されているように処理した(25 μM、12時間)後の単離されたリソソームからのカテプシンB放出を示す;データは平均値±SDとして示されている;n=3。図3Fはウエスタンブロッティングを示す。図3Gは、図3Fにおけるゲルブロットを規格化した定量分析を示す;データは平均値±SDとして示されている;n=3。
図3H-3K】図3A~3Kは、MIA PaCa-2細胞の中でBAQ ONNによって誘導されたリソソーム破壊と阻害されたオートファジーを示す。図3Hは、示されている4時間の処理に関する代表的なLC3B-GFP画像を示す;実験は独立に3回繰り返した。図3Iは、hにおける細胞1個当たりのLC3B-GFP斑点の定量を示す;データは平均値±SDとして示されている;n=3。図3Jは、示されているように処理された(2 μM、48時間)細胞の代表的なTEM画像を示す;オレンジ色の長方形:興味ある領域;紫色の矢印:オートファジー小胞;赤色の矢印:リソソーム。図3Kはリソソームの平均直径を示す;データは平均値±SDとして示されている;n=7。統計のすべてのp値はチューキーの多重比較検定を用いた一元配置分散分析によって計算した。ns.、有意差なし;*p<0.05;**p<0.01;****p<0.0001。
【0014】
図4A-4C】図4A~4Jは、BAQ ONNがリソソーム遺伝子の発現を変化させ、アポトーシスを通じて細胞死を引き起こしたことを示す。図4Aは、BAQ13 NP(5 μM、24時間)で処理されたMIA PaCa-2細胞におけるリソソーム遺伝子セットの濃縮を実証するGSEAを示す。GSEAはn=1,000パーミュテーションで実施し、調整済みp<0.05かつFDR<0.05を有意であると見なした。図4Bは、aからの代表的な上方調節されたリソソーム遺伝子を示す。図4Cは、Lys05とBAQ13 NPの間の遺伝子上方調節の比較を示す。
【0015】
図4D-4G】図4A~4Jは、BAQ ONNがリソソーム遺伝子の発現を変化させ、アポトーシスを通じて細胞死を引き起こしたことを示す。図4D~4Eは、示されている処理(5 μM、24時間)に関与するV-ATPアーゼ遺伝子(図4D)とCl-チャネル遺伝子(図4E)のqPCR分析を示す;データは平均値±SDである;n=3。図4Fは、48時間の処理を受けた細胞の生存曲線と、対応するIC50値を示す;データは平均値±SDである;n=3。図4Gは、連続処理の範囲でのMIA PaCa-2(1.5 μM)細胞とHT29(1.0 μM)細胞の増殖曲線を示す;データは平均値±SDである;n=3回の独立な実験。
図4H-4J】図4A~4Jは、BAQ ONNがリソソーム遺伝子の発現を変化させ、アポトーシスを通じて細胞死を引き起こしたことを示す。図4Hは、MIA PaCa-2細胞とHT29細胞のクローン原性アッセイを示す;n=3。図4Iは、それぞれ6時間と12時間処理されたMIA PaCa-2細胞とHT29細胞におけるカスパーゼ3/7の活性を示す;データは平均値±SDである;n=4。図4Jは、24時間処理されたMIA PaCa-2細胞(左)とHT29細胞(右)のアポトーシス集団の割合を示す。統計のすべてのp値はチューキーの多重比較検定を用いた一元配置分散分析によって計算した;ns.、有意差なし;*p<0.05;**p<0.01;***p<0.001;****p<0.0001。
【0016】
図5A-5C】図5A~5Hは、BAQ ONNの薬物動態、生体内分布、および生体内抗腫瘍効果を示す。図5Aは、DiDをロードされたBAQ ONNと遊離DiDを静脈内注射した後の血漿濃度-時間プロファイルを示す;データは平均値±SDである;n=3。図5Bは、HT29腫瘍を持つマウスにBAQ13 NPを注射してから24時間後の生体内と生体外の分布を示す。図5Cは、注射後12時間と24時間の時点で得られた組織の定量的蛍光強度を示す;データは平均値±SDである;n=3である。
図5D-5G】図5A~5Hは、BAQ ONNの薬物動態、生体内分布、および生体内抗腫瘍効果を示す。図5Dは、示されているようにして3日ごとに治療されたマウスでのMIA PaCa-2腫瘍増殖曲線を示す;データは平均値±SDである;群1つ当たりn=6個の腫瘍。図5Eは治療中のマウスの体重を示す;データは平均値±SDである;群1つ当たりn=6匹のマウス。図5F、治療終了時に回収された腫瘍の重量を示す;データは平均値±SDである;群1つ当たりn=6個の腫瘍。(g~j)図5G~Jは、治療終了時に回収された腫瘍の代表的なH&E(図5G)、IHC(図5H)、イムノブロッティング(図5I)、およびTEM(図5J)の結果を示す;i各群のブロットは、各群の個別の3つの腫瘍に由来した;図5Jの中の紫色の矢印:オートファジー小胞;図5G~5Jの実験はすべて、独立に3回繰り返した。統計のすべてのp値はチューキーの多重比較検定を用いた一元配置分散分析によって計算した;*p<0.05;****p<0.0001。
図5H】(g~j)図5G~Jは、治療終了時に回収された腫瘍の代表的なH&E(図5G)、IHC(図5H)、イムノブロッティング(図5I)、およびTEM(図5J)の結果を示す;i各群のブロットは、各群の個別の3つの腫瘍に由来した;図5Jの中の紫色の矢印:オートファジー小胞;図5G~5Jの実験はすべて、独立に3回繰り返した。統計のすべてのp値はチューキーの多重比較検定を用いた一元配置分散分析によって計算した;*p<0.05;****p<0.0001。
【0017】
図6A-6B】図6A~6Lは、BAQ ONNが併用療法において二重の役割を持つことを示す。図6Aは患者由来膵臓がん幹細胞(PCSC)モデルの確立を示す。図6Bは、PCSC腫瘍の間質が高レベルであることを示す組織学的分析を示す;実験は独立に3回繰り返した。
図6C-6F】図6A~6Lは、BAQ ONNが併用療法において二重の役割を持つことを示す。図6Cは、48時間処理されたPCSCの生存曲線とIC50値を示す;n=3回の独立な実験。図6Dは、12時間処理されたPCSCのLMPを示すAO染色を示す;実験は独立に3回繰り返した。図6Eは、示されているように処理(2.5 μM、48時間)されたPCSCの中のオートファジータンパク質のイムノブロッティング分析を示す;実験は独立に3回繰り返した。図6FはBAQ13 NPとナパブカシンの相乗効果を示す(48時間)。
図6G-6I】図6A~6Lは、BAQ ONNが併用療法において二重の役割を持つことを示す。図3Gは、3日ごとの静脈内投与の範囲での皮下MIA PaCa-2異種移植モデルにおける腫瘍増殖曲線を示す;データは平均値±SDである;群1つ当たりn=10個の腫瘍。図3Hは治療終了時に回収した腫瘍の画像を示す。図3Iは治療中のマウスの体重変化を示す;データは平均値±SDである;群1つ当たりn=5匹のマウス。
図6K-6L】図6A~6Lは、BAQ ONNが併用療法において二重の役割を持つことを示す。図3JはPCSC腫瘍切片の代表的な画像を示す;実験は独立に3回繰り返した。図3Kは、静脈内注射(10 mg kg-1)の48時間後にPCSCモデルでナパブカシンおよびDiDと同時にロードされたBAQ13 NPの生体内と生体外の蛍光イメージングを示す。図3L図3Kにおける組織の定量的蛍光強度を示す、データは平均値±SDである;群1つ当たりn=3匹のマウス。統計のすべてのp値は両側スチューデントのt検定によって計算した。ns.、有意差なし;*p<0.05;**p<0.01;****p<0.0001。
【0018】
図7図7は、本研究に関与する化合物の化合構造とBAQ12~BAQ18の合成経路を示す。
【0019】
図8A-8B】図8A~8CはBAQ NPのインビトロでの評価を示す。図8Aはサイズ分布を示す。図8BはpH依存性溶血効果の観察を示す;赤血球細胞を示されているように処理した(50 μM、4時間)。
図8C図8A~8CはBAQ NPのインビトロでの評価を示す。図8Cは、異なる化合物に24時間曝露されたさまざまな細胞系それぞれの生存曲線を示す。データは平均値±SDとして示されている;n=3回の独立な実験。
【0020】
図9A-9C】図9A~9GはBAQ NPの安定性測定とTEM特徴づけを示す。図9A~9Bは、中性条件でのBAQ12 NPとBAQ13 NPの動的光散乱(DLS)測定を示す;データは平均値±SDとして示されている;n=3。
図9D-9G】図9A~9GはBAQ NPの安定性測定とTEM特徴づけを示す。図9Cは、10日目と30日目のBAQ12 NPとBAQ13 NPの全外観を示す。図9D~9Eは、10%FBSの存在下でのBAQ12 NPとBAQ13 NPのDLS測定を示す;データは平均値±SDとして示されている;n=3。図9Fは、0.5 mMのBSAとともに24時間インキュベートした時点のBAQ12 NP(左)とBAQ13 NP(右)のサイズ分布を示す。図9Gは、異なる薬剤をロードしたBAQ13 NPの代表的なTEM画像を示す;実験は独立に3回繰り返した。
【0021】
図10図10A~10Fは、BAQ NPが細胞レベルでリソソームとオートファジーに及ぼす効果を示す。図10Aは、図3Aの共局在化分析に関するピアソン相関係数を示す。図10Bは、示されているように処理されたMIA PaCa-2細胞におけるLysoTracker Greenの蛍光定量を示す;データは平均値±SDとして示されている;n=3回の独立な実験;統計的有意性は両側スチューデントのt検定によって計算した;**p<0.01。図10Cは、HT29細胞を示されているように処理した(10 μM、2時間)後、LysoTracker Redで染色したことを示す;実験は独立に3回繰り返した。図10Dは、示されているように処理されたHT29細胞(5 μM、12時間)のAO染色を示す;実験は独立に3回繰り返した。図10Eは、示されているようにして12時間処理されたMIA PaCa-2細胞における525 nmと650 nmの蛍光強度の比を示す;データは平均値±SDとして示されている;n=3回の独立な実験;統計的有意性はチューキーの多重比較検定を用いた一元配置分散分析によって計算した;ns.、有意差なし;****p<0.0001。図10Fは、対応する処理(5 μM、4時間)の範囲での細胞の代表的なLC3B-GFP画像を示す;実験は独立に3回繰り返した。
【0022】
図11A-11D】図11A~11Fは、BAQ NPが遺伝子発現と脂質代謝に及ぼす効果を示す。図11Aは、Lys05(下)とBAQ13 NP(上)によって誘導されてMIA PaCa-2細胞において発現が異なる遺伝子を示すRNA-seqからの火山(volcano)プロットを示す。図11Bは、RNA-seqの結果によるオートファジー関連遺伝子の変化を示す。図11Cは、示されているように処理された(5 μM、24時間)MIA PaCa-2細胞の代表的なオートファジー関連遺伝子とアポトーシス関連遺伝子のqPCR分析を示す;データは平均値±SDとして示されている;n=3;統計的有意性はチューキーの多重比較検定を用いた一元配置分散分析によって計算した;*p<0.05;**p<0.01;***p<0.001;****p<0.0001。図11Dは、示されているように処理されたMIA PaCa-2細胞(5 μM、12時間)のアポトーシス関連遺伝子の変化を示す;データは平均値±SDとして示されている;n=3;統計的有意性は両側スチューデントのt検定によって計算した;*p<0.05;**p<0.01。
図11E-11F】図11A~11Fは、BAQ NPが遺伝子発現と脂質代謝に及ぼす効果を示す。図11E~11Fは、処理(2.5 μM、48時間)あり、または処理なしのMIA PaCa-2細胞における酸性スフィンゴミエリナーゼ(ASM)基質(図11E)とホスホリパーゼA(PLA)基質(図11F)の濃度変化を示す;データは平均値±SDとして示されている;n=4。
【0023】
図12図12は、示されているようにして48時間処理されたさまざまな細胞系の生存曲線を示す。データは平均値±SDとして示されている;n=3回の独立な実験。
【0024】
図13A-13C】図13A~13Fは、BAQ NPの生体内分布と毒性の研究を示す。図13Aは、遊離DiD(上)と、DiDをロードされたBAQ13 NP(下)を(i.v.)注射してから12時間後のHT29腫瘍を有するマウスの生体内と生体外のイメージングを示す、群1つ当たりn=3匹のマウス。図13Bは、aにおける臓器の定量的蛍光強度を示す;データは平均値±SDとして示されている;群1つ当たりn=3匹のマウス;データは平均値±SDとして示されている;n=3;統計的有意性は両側スチューデントのt検定によって計算した;***p<0.001;****p<0.0001。図13Cは、生理学的pHでの対応する処理によって誘導された濃度依存性溶血を示す;データは平均値±SDとして示されている;n=3個の独立なナノ粒子サンプル;統計的有意性はチューキーの多重比較検定を用いた一元配置分散分析によって計算した;ns.、有意差なし;***p<0.001;****p<0.0001。
図13D-13F】図13A~13Fは、BAQ NPの生体内分布と毒性の研究を示す。図13Dは、対応する薬剤を2日ごとにi.v.注射されたFVB/nマウスの生存率を示す;群1つ当たりn=6匹のマウス。図13Eは、示されているようにして2日ごとに治療されたマウスの体重を示す;データは平均値±SDとして示されている;群1つ当たりn=4匹のマウス。図13Fはリポソーム@Lys05の動的光散乱(DLS)測定と代表的なTEM画像を示す;実験は独立に3回繰り返した。
【0025】
図14図14A~14Eは、組織切片と血液学の分析を示す。図14Aは、ビヒクル(生理食塩水)、Lys05(20 mg kg-1、ip)、BAQ12 NP(20 mg kg-1、iv)、およびBAQ13 NP(20 mg kg-1、iv)で24日間治療したマウスからの主要な臓器のH&E分析を示す。縮尺棒は100 μmである。実験は独立に3回繰り返した。図14Bは、aにおけるマウスの対応する血清化学分析を示す。1.アラニントランスアミナーゼU L-1、2.アスパラギン酸トランスアミナーゼU L-1、3.血清尿素窒素mg dL-1、4.クレアチニンmg dL-1、5.全ビリルビンmg dL-1、6.溶血。図14B~14Eは、aにおけるマウスの対応する全血算(CBC)分析を示す;データは平均値±SDとして示されている;群1つ当たりn=3匹のマウス。1.好中球細胞絶対数(k μL-1)、2.単球細胞絶対数(k μL-1)、3.好酸球細胞絶対数(k μL-1)、4.好塩基球細胞絶対数(k μL-1)、5.好酸球%、6.好塩基球%、7.MPV(fL)、8.リンパ球細胞絶対数(k μL-1)、9.WBC(k μL-1)、10.RBC(M μL-1)、11.ヘモグロビン(g dL-1)、12.MCH(pg)、13.単球(%)、14.RDW(%)、15.好中球%、16.リンパ球%、17.ヘマトクリット%、18.MCV(fL)、19.MCHC(g dL-1)、20.血小板(k μL-1)、21.凝血塊の存在。
【0026】
図15図15A~15Cは、HT29マウスモデルにおけるBAQ NPの生体内評価を示す。図15Aは、2日ごとの静脈内投与の範囲での皮下HT29異種移植モデルにおける腫瘍増殖曲線を示す;データは平均値±SDとして示されている;群1つ当たりn=12個の腫瘍。統計的有意性は両側スチューデントのt検定によって計算した;ns.、有意差なし;*p<0.05;**p<0.01;***p<0.001、****p<0.0001。図15Bは治療中のマウスの体重を示す;データは平均値±SDとして示されている;群1つ当たりn=6匹のマウス。図15Cはマウスの生存曲線を示す;群1つ当たりn=6匹のマウス。治療は24日目に終えた。
【0027】
図16図16は、膵臓がん幹細胞(PCSC)を単離するためのゲーティング戦略を示す。
【0028】
図17A-17D】図17A~17Fは膵臓がん幹細胞(PCSC)のモデルにおけるBAQ NPの評価を示す。図17Aはリソソーム脱酸アッセイを示す。PCSCを2時間(10 μM)治療した後、LysoTracker Redによって染色した;実験は独立に3回繰り返した。図17Bは、示されているようにして治療されて(5 μM、4時間)LC3B-GFPを発現しているPCSCの代表的な画像を示す;実験は独立に3回繰り返した。図17Cは、示されている治療(5 μM、24時間)の範囲でのPCSCのアポトーシス集団の割合を示す。図17Dは、示されているようにして8時間治療されたPCSCのイムノブロッティングアッセイを示す;実験は独立に3回繰り返した。
図17E-17F】図17A~17Fは膵臓がん幹細胞(PCSC)のモデルにおけるBAQ NPの評価を示す。図17Eは、治療終了時に回収した主要臓器のH&E分析を示す;実験は独立に3回繰り返した。図17Fは、尾の静脈に注射してから24時間後のマウスにおける遊離DiDとBAQ13 NP@ナパブカシン+DiDの生体内分布を示す;赤色の丸:腫瘍。
【0029】
図18A-18D】図18A~18Gは、生理学的pHとリソソームpHでのPBC NPの特徴づけを示す。図18AはPBC単量体の化学構造を示す。図18Bは、さまざまなpHでの変形可能性の模式図を示す。図18Cは、pH 7.4とpH 5.0でのPBC NPの限外濾過分析とTEM観察を示す。図18DはPBCナノ粒子のpH依存性DLS測定を示す。
図18E-18G】図18A~18Gは、生理学的pHとリソソームpHでのPBC NPの特徴づけを示す。図18E pH 5.0でのPBCナノ粒子の経時DLS測定。図18FはPBCナノ粒子のpH依存性TEM測定を示す。図18Gは、PBCナノ粒子の時間依存性TEM測定を示す。
【0030】
図19A図19A~19Hは、PBCナノ粒子の変形可能性がリソソーム機能不全を誘導し、OSC-3細胞の中でアポトーシスを引き起こすことを示す。図19Aは変形可能なPBCナノ粒子と変形不能なBAQナノ粒子の化学構造を示す。
図19B-19D】図19A~19Hは、PBCナノ粒子の変形可能性がリソソーム機能不全を誘導し、OSC-3細胞の中でアポトーシスを引き起こすことを示す。図19Bは細胞生存率を示し、図19Cはオートファジー分析を示し、図19Dはアポトーシス分析を示す。
図19E-19H】図19A~19Hは、PBCナノ粒子の変形可能性がリソソーム機能不全を誘導し、OSC-3細胞の中でアポトーシスを引き起こすことを示す。図19Eは、リソソームの中に形成されたPBCナノ繊維を実証するTEM画像を示す。図19Fは、PBC NPによって誘導されたリソソーム膜(LMP)を示すためのアクリジンオレンジ(AO)染色を示す。図19Gは、PBC NPによって誘導されたLMPを示すためのデキストラン染色を示す。(h)PBC NPがOSC-3細胞において明らかな空胞形成を誘導した。
【0031】
図20A-20E】図20A~20Lは、PBC NPが大きな光線力学効果を示し、オートファジー関連薬剤耐性を克服できたことを示す。図20A~20Bは、伝統的な光増感剤フェオホルビドa(Pa)がOSC-3細胞においてオートファジーを誘導したことを示しており、それがLC3-GFP-RFPのイメージング(図20A)とイムノブロッティング(図20B)によって確認された。図20C~20Dは、Paを媒介とした光線力学療法がオートファジー阻害剤Lys05によって増感され、そのことが細胞生存率(図20C)とイムノブロッティング(図20D)によって確認されたことを示す。図20Eは、一重項酸素の生成を示す。
図20F-20J】図20A~20Lは、PBC NPが大きな光線力学効果を示し、オートファジー関連薬剤耐性を克服できたことを示す。図20Fは、OSC-3細胞におけるROS生成を示す。図20Gは、異なる処理がなされた後のOSC-3口腔細胞のDiO/PIによる生/死染色を示す。図20Hは細胞生存率を示す。図20Iはアポトーシスアッセイを示す。図20Jは、アポトーシス経路のためのイムノブロッティングアッセイを示す。
図20K-20L】図20A~20Lは、PBC NPが大きな光線力学効果を示し、オートファジー関連薬剤耐性を克服できたことを示す。図20Kは異なる処理がなされた後のOSC-3細胞のTEM画像を示す。図20Lはオートファジープロセスに関するイムノブロッティングアッセイを示す。
【0032】
図21図21は、他の合成されたBAQ誘導体と、OSC-3細胞におけるそれらの細胞生存率の結果(48時間)を示す。
【0033】
図22図22A~22BはBAQO誘導体の予備スクリーニングを示す。図22Aは化学的構造を示す。図22Bは、72時間処理された膵臓がん幹細胞(PCSC)の生存率の結果を示す。
【0034】
図23図23A~23FはBAQ12O NPの特徴づけを示す。図23AはBAQ12O NPのDLS測定を示す。図23BはBAQ12O NPの代表的なTEM画像を示す。図23Cは、BAQ12O NPの臨界凝集濃度(CAC)の測定を示す。図23D~23Eは、BAQ12O NPと遊離BAQ12O溶液の吸収(図23D)と蛍光(図23E)のスペクトルを示す。図23F BAQ12O NPの安定性。
【0035】
図24図24A~24Fは、PCSC腫瘍を有するマウスにおけるBAQ12O NPの抗腫瘍活性の評価を示す。図24Aは、3日ごとに(iv)治療されたマウスにおける腫瘍増殖曲線を示す。図24B治療終了時に回収された腫瘍の重量。図24C治療中のマウスの体重。図24Dマウスにおけるオートファジープロセスのイムノブロッティング。図24E~24Fは、異なる群における腫瘍の代表的なHE(図24E)とKi67-IHC(図24F)の画像を示す。
【0036】
図25図25は設計されたBAQO誘導体の化学構造を示す。
【発明を実施するための形態】
【0037】
I.全般
【0038】
本発明により、ビスアミノキノリン誘導体化合物と、これらの化合物から形成される、疾患の治療に有用なナノ担体が提供される。これらの化合物とナノ担体はリソソームを標的とすることができ、その結果としてリソソーム破壊、リソソーム機能不全、および/またはオートファジー阻害に至る。さらに、ナノ担体は、追加の薬をカプセル化することによって併用療法で使用すること、または薬剤耐性を克服するのに役立つ可能性がある追加の薬と同時に投与するために使用することができる。ナノ担体は、興味ある細胞または生物のイメージングに用いることもできる。
II.定義
【0039】
特に断わらない限り、本明細書で用いられているあらゆる科学技術用語は、本発明が属する分野の当業者によって一般に理解されているのと同じ意味を持つ。それに加え、本明細書に記載されている任意の方法または材料と同様の、または同等な方法または材料を用いて本発明を実施することができる。本発明の目的のため、以下の用語を定義する。
【0040】
本明細書で用いられる「1つの」または「その」には、1つのメンバーを持つ側面が含まれるだけでなく、2つ以上のメンバーを持つ側面も含まれる。例えば単数形「1つの」と「その」には複数が含まれるが、文脈が明確に異なることを述べている場合は別である。したがって例えば「1個の細胞」への言及には複数のそのような細胞が含まれ、「その薬剤」への言及には、当業者に知られている1つ以上の薬剤が含まれる、などである。
【0041】
「アルキル」は、示されている数の炭素原子を持つ直線状の、または分岐した飽和脂肪族基を意味する。アルキルは、任意の数の炭素を含むことができる(C1-2、C1-3、C1-4、C1-5、C1-6、C1-7、C1-8、C1-9、C1-10、C1-20、C1-30、C1-40、C2-3、C2-4、C2-5、C2-6、C3-4、C3-5、C3-6、C4-5、C4-6、およびC5-6など)。例えばC1-6アルキルの非限定的な例に含まれるのは、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、s-ブチル、t-ブチル、ペンチル、イソペンチル、ヘキシルなどである。アルキルは、40個までの炭素原子を持つアルキル基も意味することができ、その非限定的な例はヘプチル、オクチル、ノニル、デシルなどである。アルキル基は置換されていても置換されていなくてもよい。
【0042】
「アルキレン」は、直線状の、または分岐した飽和脂肪族基で、示されている数の炭素原子を持ち、少なくとも2つの他の基を連結しているもの、すなわち2価の炭化水素基を意味する。アルキレンに連結されるこれら2つの部分は、アルキレン基の同じ原子または異なる原子に連結させることができる。例えば直鎖アルキレンとして-(CH2)n-の2価の基が可能である(ただしnは、1、2、3、4、5、または6である)。代表的なアルキレン基の非限定的な例に含まれるのは、メチレン、エチレン、プロピレン、イソプロピレン、ブチレン、イソブチレン、s-ブチレン、ペンチレン、およびヘキシレンである。アルキレン基は置換されていても置換されていなくてもよい。
【0043】
「アルケニル」は、少なくとも2個の炭素原子と少なくとも1つの二重結合を持つ直線状の、または分岐した炭化水素を意味する。アルケニルは、任意の数の炭素を含むことができる(C2、C2-3、C2-4、C2-5、C2-6、C2-7、C2-8、C2-9、C2-10、C2-20、C2-30、C2-40、C3、C3-4、C3-5、C3-6、C4、C4-5、C4-6、C5、C5-6、およびC6など)。アルケニル基は適切な任意の数(その非限定的な例に含まれるのは、1、2、3、4、5つ、またはそれよりも多数)の二重結合を持つことができる。アルケニル基の非限定的な例に含まれるのは、ビニル(エテニル)、プロペニル、イソプロペニル、1-ブテニル、2-ブテニル、イソブテニル、ブタジエニル、1-ペンテニル、2-ペンテニル、イソペンテニル、1,3-ペンタジエニル、1,4-ペンタジエニル、1-ヘキセニル、2-ヘキセニル、3-ヘキセニル、1,3-ヘキサジエニル、1,4-ヘキサジエニル、1,5-ヘキサジエニル、2,4-ヘキサジエニル、または1,3,5-ヘキサトリエニルである。アルケニル基は置換されていても置換されていなくてもよい。
【0044】
「アルケニレン」は、上に定義したアルケニル基で、少なくとも2つの他の基、すなわち2価の炭化水素基を連結しているものを意味する。アルケニレンに連結されるこれら2つの部分はアルケニレンの同じ原子または異なる原子に連結させることができる。アルケニレン基の非限定的な例に含まれるのは、エテニレン、プロペニレン、イソプロペニレン、ブテニレン、イソブテニレン、s-ブテニレン、ペンテニレン、およびヘキセニレンである。アルケニレン基は置換されていても置換されていなくてもよい。
【0045】
「アルキニル」は、少なくとも2個の炭素原子と少なくとも1つの三重結合を持つ直鎖または分岐鎖の炭化水素を意味する。アルキニルは任意の数の炭素を含むことができる(C2、C2-3、C2-4、C2-5、C2-6、C2-7、C2-8、C2-9、C2-10、C2-20、C2-30、C2-40、C3、C3-4、C3-5、C3-6、C4、C4-5、C4-6、C5、C5-6、およびC6など)。アルキニル基の非限定的な例に含まれるのは、アセチレニル、プロピニル、1-ブチニル、2-ブチニル、ブタジニル、1-ペンチニル、2-ペンチニル、イソペンチニル、1,3-ペンタジニル、1,4-ペンタジニル、1-ヘキシニイル、2-ヘキシニイル、3-ヘキシニイル、1,3-ヘキサジイニル、1,4-ヘキサジイニル、1,5-ヘキサジイニル、2,4-ヘキサジイニル、または1,3,5-ヘキサトリニルである。アルキニル基は置換されていても置換されていなくてもよい。
【0046】
「アルキニレン」は、上に定義したアルキニル基で、少なくとも2つの他の基、すなわち2価の炭化水素基を連結するものを意味する。アルキニレンに連結されるこれら2つの部分はそのアルキニレンの同じ原子または異なる原子に連結させることができる。アルキニレン基の非限定的な例に含まれるのは、エチニレン、プロピニレン、イソプロピニレン、ブチニレン、s-ブチニレン、ペンチニレン、およびヘキシニレンである。アルキニレン基は置換されていても置換されていなくてもよい。
【0047】
「シクロアルキル」は、飽和または部分的不飽和の単環、縮合二環、または架橋した多環構造で、3~12個の環原子、または示されている数の原子を含有するものを意味する。シクロアルキルは任意の数の炭素を含むことができる(C3-6、C4-6、C5-6、C3-8、C4-8、C5-8、C6-8、C3-9、C3-10、C3-11、およびC3-12など)。飽和単環シクロアルキル環には、例えばクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、およびシクロオクチルが含まれる。飽和した二環と多環のシクロアルキル環には、例えばノルボラン、[2.2.2]ビシクロオクタン、デカヒドロナフタレン、およびアダマンタンが含まれる。シクロアルキル基は、部分的に不飽和で環内に1つ以上の二重結合または三重結合を持っていてもよい。部分的に不飽和である代表的なシクロアルキル基の非限定的な例に含まれるのは、シクロブテン、シクロペンテン、シクロヘキセン、シクロヘキサジエン(1,3-異性体と1,4-異性体)、シクロヘプテン、シクロヘプタジエン、シクロオクテン、シクロオクタジエン(1,3-、1,4-、および1,5-異性体)、ノルボレン、およびノルボルナジエンである。シクロアルキルが飽和単環C3-8シクロアルキルであるときには、代表的な基の非限定的な例に含まれるのは、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、およびシクロオクチルである。シクロアルキルが飽和単環C3-6シクロアルキルであるときには、代表的な基の非限定的な例に含まれるのは、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、およびシクロヘキシルである。シクロアルキル基は置換されていても置換されていなくてもよい。
【0048】
「ヘテロシクロアルキル」は、3~12個の環メンバーと、N、O、およびSである1~4個のヘテロ原子を持つ飽和環系を意味する。ヘテロ原子は酸化されていてもよい(その非限定的な例は-S(O)-と-S(O)2-である)。ヘテロシクロアルキル基は任意の数の環原子を含むことができる(例えば3~6、4~6、5~6、3~8、4~8、5~8、6~8、3~9、3~10、3~11、または3~12個の環メンバー)。ヘテロシクロアルキル基は適切な任意の数のヘテロ原子を含むことができる(例えば1、2、3、または4、または1~2、1~3、1~4、2~3、2~4、または3~4個)。ヘテロシクロアルキル基に含めることができるのは、以下の基、すなわちアジリジン、アゼチジン、ピロリジン、ピペリジン、アゼパン、アゾカン、キヌクリジン、ピラゾリジン、イミダゾリジン、ピペラジン(1,2-、1,3-、および1,4-異性体)、オキシラン、オキセタン、テトラヒドロフラン、オキサン(テトラヒドロピラン)、オキセパン、チイラン、チエタン、チオラン(テトラヒドロチオフェン)、チアン(テトラヒドロチオピラン)、オキサゾリジン、イソオキサゾリジン、チアゾリジン、イソチアゾリジン、ジオキソラン、ジチオラン、モルホリン、チオモルホリン、ジオキサン、またはジチアンなどである。ヘテロシクロアルキル基を芳香族または非芳香族の環系に縮合させてさまざまなメンバーを形成することもできる(その非限定的な例に含まれるのはインドリンである)。ヘテロシクロアルキル基は置換されていなくても置換されていてもよい。例えばヘテロシクロアルキル基はC1-6アルキルまたはオキソ(=O)で置換できるが、他にも多くの置換基がある。
【0049】
「アリール」は、適切な任意の数の環原子と適切な任意の数の環を持つ芳香族環系を意味する。アリール基は適切な任意の数の環原子を含むことができる(例えば6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、または16個の環原子のほか、6~10、6~12~または6~14個の環メンバー)。アリール基は、単環であること、縮合して二環または三環の基を形成すること、または結合によって連結してビアリール基を形成することができる。代表的なアリール基に含まれるのは、フェニル、ナフチル、およびビフェニルである。他のアリール基に含まれるのは、メチレン連結基を持つベンジルである。いくつかのアリール基は6~12個の環メンバーを持つ(フェニル、ナフチル、またはビフェニルなど)。他のアリール基は6~10個の環メンバーを持つ(フェニルまたはナフチルなど)。いくつかの他のアリール基は6個の環メンバーを持つ(フェニルなど)。アリール基は置換されていても置換されていなくてもよい。
【0050】
「ヘテロアリール」は、単環であるか、縮合した二環または三環の芳香族環構造で、5~16個の環原子を含有し、そのうちの1~5個の環原子がヘテロ原子(N、O、またはSなど)であるものを意味する。ヘテロ原子は酸化されていてもよい(その非限定的な例は-S(O)-と-S(O)2-である)。ヘテロアリール基は任意の数の環原子(例えば5~6、3~8、4~8、5~8、6~8、3~9、3~10、3~11、または3~12個の環メンバー)を含むことができる。ヘテロアリール基は適切な任意の数のヘテロ原子(例えば1、2、3、4、または5個、または1~2、1~3、1~4、1~5、2~3、2~4、2~5、3~4、または3~5個)を含むことができる。ヘテロアリール基は、5~8個の環メンバーと1~4個のヘテロ原子、または5~8個の環メンバーと1~3個のヘテロ原子、または5~6個の環メンバーと1~4個のヘテロ原子、または5~6個の環メンバーと1~3個のヘテロ原子を持つことができる。ヘテロアリール基に含めることのできる基は、ピロール、ピリジン、イミダゾール、ピラゾール、トリアゾール、テトラゾール、ピラジン、ピリミジン、ピリダジン、トリアジン(1,2,3-、1,2,4-、および1,3,5-異性体)、チオフェン、フラン、チアゾールフラン、チアゾール、イソチアゾール、オキサゾール、およびイソオキサゾールなどである。ヘテロアリール基を芳香族環系(フェニル環など)に縮合させてさまざまなメンバーを形成することもでき、その非限定的な例に含まれるのは、ベンゾピロール(インドールとイソインドールなど)、ベンゾピリジン(キノリンとイソキノリンなど)、ベンゾピラジン(キノキサリン)、ベンゾピリミジン(キナゾリン)、ベンゾピリダジン(フタラジンとシンノリンなど)、ベンゾチオフェン、およびベンゾフランである。他のヘテロアリール基に含まれるのは、結合によって連結されたヘテロアリール環(ビピリジンなど)である。ヘテロアリール基は置換されていても置換されていなくてもよい。
【0051】
「アルコキシ」は、アルキル基を付着点に接続する1個の酸素原子を持つアルキル基、すなわちアルキル-O-を意味する。アルキル基と同様、アルコキシ基は適切な任意の数の炭素原子を持つことができる(C1-6など)。アルコキシ基に含まれるのは、例えばメトキシ、エトキシ、プロポキシ、イソ-プロポキシ、ブトキシ、2-ブトキシ、イソ-ブトキシ、s-ブトキシ、t-ブトキシ、ペントキシ、ヘキソキシなどである。アルコキシ基は、本明細書に記載されている多彩な置換基でさらに置換することができる。アルコキシ基は置換されていても置換されていなくてもよい。
【0052】
「ヒドロキシル」は、-OH官能基を意味する。
【0053】
「ハロゲン」は、フッ素、塩素、ホウ素、およびヨウ素を意味する。
【0054】
「蛍光体」は、励起後に一般に300~700 nmの範囲の光を出す化合物を意味する。蛍光体は、移された光エネルギー(例えばフォトン)を吸収すると励起状態になる。この分子が励起状態から脱出するとき、より低エネルギーの光子の形態で光エネルギーを放出し(例えば蛍光を出し)、この染料分子をその基底状態に戻す。蛍光体として天然化合物または合成化合物が可能である。蛍光体の非限定的な例に含まれるのは、DAPI、臭化エチジウム、アクリジンオレンジ、GFP、mCherry、ヒドロキシクマリン、フルオレセイン、LysoTracker(赤色と緑色)、Dextran-Alexa Fluor 488、Premo(商標)オートファジーセンサーLC3B-GFP、およびAc-DEVD-AMCである。
【0055】
「光増感剤」は、光による活性化で光線力学療法のための反応基(典型的には反応性酸素種(ROS))を生成させることができるが、重合、架橋、または分解のための反応基も生成させることのできる化合物を意味する。光増感剤は、一重項酸素を発生させて腫瘍を損傷させることによって疾患を治療するのに役立つ可能性がある。光増感剤の非限定的な例に含まれるのは、ポルフィリン、染料、およびクロロフィルである。
【0056】
「ポルフィリン」は、以下のポルフィリンコア:
【化2】
を持つ任意の化合物を意味する(ただしこのポルフィリンコアは置換されていても置換されていなくてもよい。
【0057】
「ステロール」は、以下のコア構造:
【化3】
を持つ化合物を意味する(ただしコアはさらに置換されていてもよい)。
【0058】
「薬」は、状態または疾患を治療および/または改善することのできる薬剤を意味する。薬として疎水性薬(水を撥く任意の薬)が可能である。本発明で有用な疎水性薬の非限定的な例に含まれるのは、ヒドロクロロキン(HCQ)、Lys05、ボルテゾミブ、β-ラパコン、JQ1、ナパブカシン、ラパマイシン、パクリタキセル、SN38、エトポシド、レナリドミド、およびアポプトゾールである。他の薬に含まれるのは、非ステロイド抗炎症薬とビンカアルカロイド(ビンブラスチンやビンクリスチンなど)である。本発明の薬にはプロドラッグ形態も含まれる。当業者は、他の薬が本発明において有用であることがわかるであろう。
【0059】
「イメージング剤」または「造影剤」は、イメージング法(その非限定的な例に含まれるのは、MRI、PET、SPECT、およびCTである)のため、細胞または身体の位置にある構造のコントラストを大きくする化合物を意味する。イメージング剤は、放射線、蛍光、磁場、またはラジオ波を発生させることができる。イメージング剤の非限定的な例に含まれるのは、放射性金属キレータ、放射性金属の原子またはイオン、および蛍光体である。
【0060】
「化学療法剤」は、疾患(その非限定的な例は、がん、腫瘍、および新生物である)の治療に使用できる化学的な薬を意味する。いくつかの実施態様では、化学療法剤は、活性化させて細胞毒性形態にすることのできるプロドラッグの形態が可能である。化学療法剤は当業者に一般に知られており、本発明で用いることができる。化学療法剤の非限定的な例に含まれるのは、ダウノルビシン、ドキソルビシン、パクリタキセル、ドセタキセル、アブラキサン、ボルテゾミブ、エトポシド、レナリドミド、アポプトゾール、カルボプラチン、シスプラチン、オキサリプラチン、ビンブラスチン、およびビンクリスチンである。
【0061】
「分子標的剤」は、腫瘍とがんの進化、増殖、および拡大に関与する特定の分子を標的とすることのできる薬を意味する。腫瘍とがんの進化に関与する特定の分子を標的とすることで、腫瘍とがんを殺すこと、または腫瘍とがんの増殖と拡大を阻害することが可能になる。分子標的剤の非限定的な例に含まれるのは、トラスツズマブ、エルロチニブ、イマチニブ、ニロチニブ、およびベムラフェニブである。
【0062】
「免疫療法剤」は、免疫系を刺激または抑制することによって免疫応答を変化させることのできるタイプの薬を意味する。免疫調節剤の非限定的な例に含まれるのは、HCQ、Lys05、JQ1、ラパマイシン、ナパブカシン、イピリムマブ、ニボルマブ、ペムブロリズマブ、アテゾリズマブ、アベルマブ、およびデュルバルマブである。
【0063】
「放射線療法剤」は、放射線療法を用いた疾患の治療に使用できる薬を意味する。放射線療法は、放射線を用いて腫瘍細胞とがん細胞を殺傷または阻害する疾患治療法である。放射線療法剤の非限定的な例に含まれるのは、β-ラパコン、シスプラチン、ニモラゾール、セツキシマブ、ミソニダゾール、およびチラパザミンである。
【0064】
「ナノ担体」または「ナノ粒子」は、本発明の化合物の凝集から生じるミセルを意味する。本発明のナノ担体は疎水性のコアと親水性の外側を持つことができる。
【0065】
「阻害」、「阻害する」、および「阻害剤」は、特定の作用または機能を阻止する化合物、または阻止する方法を意味する,。
【0066】
「治療する」、「治療している」、および「治療」は、治療における成功の何らかの兆候を意味するか、損傷、病状、状態、または症状(例えば疼痛)の改善を意味し、その中には、任意の客観的または主観的なパラメータの改善(緩和;寛解;症状を減らすことや、症状、損傷、病状、または状態を患者にとってより忍容できるようにすること;症状または状態の頻度を減らすか持続期間を短くすること;またはいくつかの状況では、症状の開始を阻止することなど)が含まれる。症状の治療または改善は、任意の客観的または主観的なパラメータに基づくことができ;パラメータには例えば身体検査の結果が含まれる。
【0067】
「疾患」は生物における異常な細胞機能を意味し、物理的損傷または外部損傷の直接的な結果が原因ではない。疾患は、不安、機能不全、障害、異常、感染症、疼痛を引き起こしたり、それどころか死さえ引き起こすあらゆる状態を意味する。疾患の非限定的な例に含まれるのは、遺伝的疾患(遺伝子疾患や非遺伝子疾患など)、感染性疾患、非感染性疾患(がん、欠乏症など)、および生理学的疾患である。
【0068】
「投与する」は、対象への経口投与、座薬としての投与、局所的接触、非経口、静脈内、腹腔内、筋肉内、病巣内、鼻腔内、または皮下への投与、髄腔内投与、または徐放装置(例えばミニ浸透圧ポンプ)の埋め込みを意味する。
【0069】
「対象」は動物を意味し、それは例えば哺乳類であり、その非限定的な例に含まれるのは、霊長類(例えばヒト)、ウシ、ヒツジ、ヤギ、ウマ、イヌ、ネコ、ウサギ、ラット、マウスなどである。いくつかの実施態様では、対象はヒトである。
【0070】
「治療に有効な量または用量」または「治療に十分な量または用量」または「有効または十分な量または用量」は、投与されて治療効果を生じさせる用量を意味する。正確な用量は治療の目的によるであろうし、当業者が既知の技術を利用して確認できよう(例えばLieberman, Pharmaceutical Dosage Forms (vols. 1-3, 1992);Lloyd, The Art, Science and Technology of Pharmaceutical Compounding (1999);Pickar, Dosage Calculations (1999);およびRemington: The Science and Practice of Pharmacy, 20th Edition, 2003, Gennaro, Ed., Lippincott, Williams & Wilkinsを参照されたい)。増感された細胞では、治療に有効な用量は、非増感細胞にとって治療に有効な従来の用量よりも低くできることがしばしばある。
【0071】
「標的」または「標的とする」は、細胞、ウイルス粒子、ウイルスタンパク質、抗原、または生体分子に特異的または選択的に結合するか、具体的な細胞のタイプ、組織のタイプ、微生物のタイプ、またはウイルスのタイプに局在化する化合物、タンパク質、または抗体を用いることを意味する。
【0072】
「イメージング」は、イメージング剤(本発明の化合物など)の位置を明確にするため対象の外部にある装置を用いることを意味する。イメージングツールの非限定的な例に含まれるのは、陽電子放出断層撮影(PET)、磁気共鳴イメージング(MRI)、超音波、単一フォトン放出コンピュータ断層撮影(SPECT)、X線コンピュータ断層撮影(CT)である。陽電子放出断層撮影は、イメージング剤による陽電子の放出からの放射線を検出する。
III.化合物
【0073】
いくつかの実施態様では、本発明により、式(I)の化合物:
【化4】
またはその医薬として許容可能な塩が提供される(ただしこの式において、R1は、水素、C1-40アルキル、C2-40アルケニル、C2-4アルキニル、-W、-(L-Y)p-Z、または-C(O)R1aであり、その中のそれぞれのアルキル、アルケニル、およびアルキニルは、場合により、C1-20アルコキシ、ヒドロキシル、または-NR1bR1cで置換されており;Wは、C3-12シクロアルキル、C6-12アリール、またはそれぞれ独立にN、O、またはSである1~4個のヘテロ原子を持つ5~12員のヘテロアリールであり、その中のそれぞれのシクロアルキル、アリール、およびヘテロアリールは、場合により、C1-40アルキル、C2-40アルケニル、またはC2-40アルキニルで置換されており;それぞれのLは、独立に、不在、C1-20アルキレン、C2-20アルケニレン、またはC2-20アルキニレンであり;それぞれのYは、独立に、不在、-O-、-NH-、-NHC(O)-、-NHC(O)NH-、-NHSO2-、-OC(O)-、-OC(O)NH-、-C(O)-、または-SO2-;Zは、蛍光体、光増感剤、ポルフィリン、化学療法薬、ステロール、C3-12シクロアルキル、それぞれ独立にN、O、またはSである1~4個のヘテロ原子を持つ3~12員のヘテロシクロアルキル、C6-12アリール、それぞれ独立にN、O、またはSである1~4個のヘテロ原子を持つ5~12員のヘテロアリール、-OH、または-NH2;R1aは、C1-40アルキル、C2-40アルケニル、またはC2-40アルキニルであり、その中のそれぞれのアルキル、アルケニル、およびアルキニルは、場合により、C1-40アルコキシ、ヒドロキシル、または-NR1bR1cで置換されており;R1bは、水素、C1-40アルキル、C2-40アルケニル、またはC2-40アルキニルであり;R1cは、水素、C1-40アルキル、C2-40アルケニル、C2-40アルキニル、または-L-Wであり;R2a、R2b、R3a、およびR3bは、それぞれ独立に、水素、C1-40アルキル、C2-40アルケニル、C2-40アルキニル、C1-40アルコキシ、ハロゲン、-CN、または-NO2であり;mとnは、独立に、1~10の整数であり;pは、独立に、1~20の整数であり;それぞれのXは、独立に、不在であるか-O-であるが、Xが不在で、R2aとR2bが水素、R3aとR3bが、それぞれ独立に、水素、-OMe、フッ素、塩素、ホウ素、または-NO2であるときには、R1は、C2-40アルキル、C2-40アルケニル、C4-40アルキニル、-W、-(L-Y)p-Z、または-C(O)R1aであり、Xが不在で、R1が-CH2CH2NH(7-クロロ-4-キノリニル)で、R2aとR2bが水素であるときには、R3aとR3bは、独立に、水素、C1-20アルキル、C2-40アルケニル、C2-40アルキニル、C1-40アルコキシ、フッ素、ホウ素、ヨウ素、-CN、または-NO2から選択される。
【0074】
いくつかの実施態様では、本発明により、式(I)の化合物が提供される(ただしこの式において、R1は、水素、C1-20アルキル、C2-20アルケニル、C2-20アルキニル、-W、-(L-Y)p-Z、または-C(O)R1aであり、その中のそれぞれのアルキル、アルケニル、およびアルキニルは、場合により、C1-20アルコキシ、ヒドロキシル、または-NR1bR1cで置換されており;Wは、C3-12シクロアルキル、C6-12アリール、またはC4-12ヘテロアリールであり、その中のそれぞれのシクロアルキル、アリール、およびヘテロアリールは、場合により、C1-20アルキル、C2-20アルケニル、またはC2-20アルキニルで置換されており;それぞれのLは、独立に、不在、C1-10アルキレン、C2-10アルケニレン、またはC2-10アルキニレンであり;それぞれのYは、独立に、不在、-O-、-NH-、-NHC(O)-、-NHC(O)NH-、-NHSO2-、-OC(O)-、-OC(O)NH-、-C(O)-、または-SO2-であり;Zは、蛍光体、光増感剤、ポルフィリン、化学療法薬、またはステロールであり;R1aは、C1-20アルキル、C2-20アルケニル、またはC2-20アルキニルであり、その中のそれぞれのアルキル、アルケニル、およびアルキニルは、場合により、C1-20アルコキシ、ヒドロキシル、または-NR1bR1cで置換されており、R1bは、水素、C1-20アルキル、C2-20アルケニル、またはC2-20アルキニルであり、R1cは、水素、C1-20アルキル、C2-20アルケニル、C2-20アルキニル、または-L-Wであり;R2a、R2b、R3a、およびR3bは、それぞれ独立に、水素、C1-20アルキル、C2-20アルケニル、C2-20アルキニル、C1-20アルコキシ、ハロゲン、-CN、または-NO2であり;mとnは、独立に、1~10の整数であり;pは、独立に、1~20の整数であり;それぞれのXは、独立に、不在であるか-O-であるが、Xが不在で、R2aとR2bが水素で、R3aとR3bが、それぞれ独立に、水素、-OMe、フッ素、塩素、ホウ素、または-NO2であるときには、R1は、C2-20アルキル、C2-20アルケニル、C4-20アルキニル、-W、-(L-Y)p-Z、または-C(O)R1aであり;Xが不在で、R1が-CH2CH2NH(7-クロロ-4-キノリニル)で、R2aとR2bが水素であるときには、R3aとR3bは、独立に、水素、C1-20アルキル、C2-20アルケニル、C2-20アルキニル、C1-20アルコキシ、フッ素、ホウ素、ヨウ素、-CN、または-NO2から選択される)。
【0075】
いくつかの実施態様では、R1は、水素、C1-20アルキル、C2-20アルケニル、C2-20アルキニル、-W、-(L-Y)p-Z、または-C(O)R1aであり、その中のそれぞれのアルキル、アルケニル、およびアルキニルは、場合により、C1-20アルコキシ、ヒドロキシル、または-NR1bR1cで置換されており;Wは、C3-12シクロアルキル、C6-12アリール、または5~12員のヘテロアリールであり、その5~12員のヘテロアリールは、N、O、およびSという1~4個のヘテロ原子を持ち、それぞれのシクロアルキル、アリール、およびヘテロアリールは、場合により、C1-20アルキル、C2-20アルケニル、またはC2-20アルキニルで置換されており;それぞれのLは独立に、不在、C1-10アルキレン、C2-10アルケニレン、またはC2-10アルキニレンであり;それぞれのYは独立に、不在、-O-、-NH-、-NHC(O)-、-NHC(O)NH-、-NHSO2-、-OC(O)-、-OC(O)NH-、-C(O)-、または-SO2-であり;Zは、蛍光体、光増感剤、ポルフィリン、化学療法薬、またはステロールであり;R1aは、C1-20アルキル、C2-20アルケニル、またはC2-20アルキニルであり、その中のそれぞれのアルキル、アルケニル、およびアルキニルは、場合により、C1-20アルコキシ、ヒドロキシル、または-NR1bR1cで置換されており;R1bは、水素、C1-20アルキル、C2-20アルケニル、またはC2-20アルキニルであり;R1cは、水素、C1-20アルキル、C2-20アルケニル、C2-20アルキニル、または-L-Wであり;R2a、R2b、R3a、およびR3bは、それぞれ独立に、水素、C1-20アルキル、C2-20アルケニル、C2-20アルキニル、C1-20アルコキシ、ハロゲン、-CN、または-NO2であり;mとnは、独立に、1~10の整数であり;pは、独立に、1~20の整数であり;それぞれのXは、独立に、不在であるか-O-であるが、Xが不在で、R2aとR2bが水素で、R3aとR3bが、それぞれ独立に、水素、-OMe、フッ素、塩素、ホウ素、または-NO2,であるときには、R1は、C2-20アルキル、C2-20アルケニル、C4-20アルキニル、-W、-(L-Y)p-Z、またはC(O)R1aであり、Xが不在で、R1が-CH2CH2NH(7-クロロ-4-キノリニル)で、R2aとR2bが水素であるときには、R3aとR3bは、独立に、水素、C1-20アルキル、C2-20アルケニル、C2-20アルキニル、C1-20アルコキシ、フッ素、ホウ素、ヨウ素、-CN、または-NO2から選択される。
【0076】
いくつかの実施態様では、R1は、水素、C1-40アルキル、C2-40アルケニル、C2-40アルキニル、-W、-(L-Y)p-Z、または-C(O)R1aである。いくつかの実施態様では、R1は、C1-40アルキル、C2-40アルケニル、-(L-Y)p-Z、または-C(O)R1aである。
【0077】
いくつかの実施態様では、R1はC1-40アルキルである。いくつかの実施態様では、R1はC1-25アルキルである。いくつかの実施態様では、R1はC1-20アルキルである。いくつかの実施態様では、R1はC10-25アルキルである。いくつかの実施態様では、R1はC10-20アルキルである。いくつかの実施態様では、R1はC12-22アルキルである。いくつかの実施態様では、R1はC12-18アルキルである。
【0078】
いくつかの実施態様では、R1はC2-40アルケニルである。いくつかの実施態様では、R1はC20-40アルケニルである。いくつかの実施態様では、R1はC30-40アルケニルである。いくつかの実施態様では、R1はC2-40アルキニルである。いくつかの実施態様では、R1はC20-40アルキニルである。いくつかの実施態様では、R1はC30-40アルキニルである。
【0079】
いくつかの実施態様では、R1はWである。いくつかの実施態様では、Wは、C3-12シクロアルキル、C6-12アリール、またはそれぞれ独立にN、O、またはSである1~4個のヘテロ原子を持つ5~12員のヘテロアリールであり、その中のそれぞれのシクロアルキル、アリール、およびヘテロアリールは、場合により、C1-40アルキル、C2-40アルケニル、またはC2-40アルキニルで置換されている。いくつかの実施態様では、Wは、C5-12シクロアルキル、C6-12アリール、またはそれぞれ独立にN、O、またはSである1~4個のヘテロ原子を持つ5~12員のヘテロアリールである。いくつかの実施態様では、WはC5-12シクロアルキルである。いくつかの実施態様では、WはC5-8シクロアルキルである。いくつかの実施態様では、Wはシクロペンチルまたはシクロヘキシルである。
【0080】
いくつかの実施態様では、R1は-(L-Y)p-Zである。いくつかの実施態様では、pは1~20の整数である。いくつかの実施態様では、pは1~10の整数である。いくつかの実施態様では、pは1~5の整数である。いくつかの実施態様では、pは、1、2、3、4、または5である。いくつかの実施態様では、pは1である。
【0081】
いくつかの実施態様では、Lは、C1-20アルキレン、C2-20アルケニレン、またはC2-20アルキニレンである。いくつかの実施態様では、LはC1-20アルキレンである。いくつかの実施態様では、LはC1-10アルキレンである。いくつかの実施態様では、LはC1-5アルキレンである。
【0082】
いくつかの実施態様では、Yは、不在、-O-、-NH-、-NHC(O)-、-NHC(O)NH-、-NHSO2-、-OC(O)-、-OC(O)NH-、-C(O)-、または-SO2-である。いくつかの実施態様では、Yは、不在、-NH-、-NHC(O)-、-NHC(O)NH-、-OC(O)-、-OC(O)NH-、または-C(O)-である。いくつかの実施態様では、Yは、不在、-NH-、-NHC(O)-、または-NHC(O)NH-である。いくつかの実施態様では、Yは、不在、-NH-、または-NHC(O)-である。
【0083】
いくつかの実施態様では、Zは、蛍光体、光増感剤、ポルフィリン、化学療法薬、ステロール、C3-12シクロアルキル、それぞれが独立にN、OまたはSである1~4個のヘテロ原子を持つ3~12員のヘテロシクロアルキル、C6-12アリール、それぞれが独立にN、O、またはSである1~4個のヘテロ原子を持つ5~12員のヘテロアリール、-OH、または-NH2である。
【0084】
本発明で有用な光増感剤の非限定的な例に含まれるのは、ポルフィリン、ベンゾポルフィリン、コリン、クロリン、バクテリオクロロフィル、コルフィン、またはこれらの誘導体である。代表的な光増感剤を以下に示す:
【化5-1】
【化5-2】
【0085】
いくつかの実施態様では、光増感剤は、ポルフィリン、ベンゾポルフィリン、コリン、クロリン、バクテリオクロロフィル、コルフィン、またはこれらの誘導体である。いくつかの実施態様では、光増感化合物は、ポルフィリン、ピロフェオホルビド-a、フェオホルビド、クロリンe6、プルプリン、プルプリンイミド、ベルテポルフィン、フォトフリンポルフィマー、ロスタポルフィン、タルポルフィン、またはテモポルフィンである。いくつかの実施態様では、光増感剤はピロフェオホルビド-aである。いくつかの実施態様では、光増感剤はフェオホルビド-aである。いくつかの実施態様では、光増感剤はポルフィリンである。
【0086】
適切な任意のポルフィリンを本発明の化合物で用いることができる。本発明に適した代表的なポルフィリンの非限定的な例に含まれるのは、ピロフェオホルビド-a、フェオホルビド、クロリンe6、プルプリン、またはプルプリンイミドである。いくつかの実施態様では、ポルフィリンとしてフェオホルビド-aが可能である。いくつかの実施態様では、ポルフィリンとしてピロフェオホルビド-aが可能である。
【0087】
いくつかの実施態様では、Zは、ポルフィリン、ステロール、6~12員のヘテロシクロアルキル、8~12員のヘテロアリール、-OH、または-NH2であり、その中の6~12員のヘテロシクロアルキルと8~12員のヘテロアリールは、N、O、およびSという1~4個のヘテロ原子を持つ。いくつかの実施態様では、Zは、ポルフィリン、コール酸、インドリン、イソインドリン、1-イソインドリノン、プタルイミド、無水フタル酸、-OH、または-NH2である。
【0088】
いくつかの実施態様では、pは1であり;LはC4-5アルキレンであり;Yは、不在、-NH-、または-NHC(O)-であり;Zは、ポルフィリン、コール酸、イソインドリン、フタルイミド、-OH、または-NH2である。
【0089】
いくつかの実施態様では、R1は-C(O)R1aである。いくつかの実施態様では、R1aは、C1-40アルキル、C2-40アルケニル、またはC2-40アルキニルであり、その中のそれぞれのアルキル、アルケニル、およびアルキニルは、場合により、C1-40アルコキシ、ヒドロキシル、または-NR1bR1cで置換されている。いくつかの実施態様では、R1aは、C1-20アルキル、C2-20アルケニル、またはC2-20アルキニルであり、その中のそれぞれのアルキル、アルケニル、およびアルキニルは、場合により、C1-20アルコキシ、ヒドロキシル、または-NR1bR1cで置換されている。いくつかの実施態様では、R1aは、C1-10アルキル、C2-10アルケニル、またはC2-10アルキニルである。いくつかの実施態様では、R1aはC1-10アルキルである。いくつかの実施態様では、R1aはC1-5アルキルである。いくつかの実施態様では、R1aは、メチル、エチレン、プロピル、またはブチルである。
【0090】
いくつかの実施態様では、R1bは、C1-40アルキル、C2-40アルケニル、またはC2-40アルキニルである。いくつかの実施態様では、R1bは、C1-20アルキル、C2-20アルケニル、またはC2-20アルキニルである。いくつかの実施態様では、R1bはC1-10アルキルである。いくつかの実施態様では、R1bはC1-5アルキルである。いくつかの実施態様では、R1bは、メチル、エチレン、プロピル、またはブチルである。
【0091】
いくつかの実施態様では、R1cは、C1-40アルキル、C2-40アルケニル、C2-40アルキニル、または-L-Wである。いくつかの実施態様では、R1cは、C1-20アルキル、C2-20アルケニル、C2-20アルキニル、または-L-Wである。いくつかの実施態様では、R1cはC1-10アルキルである。いくつかの実施態様では、R1cはC1-5アルキルである。いくつかの実施態様では、R1cは、メチル、エチレン、プロピル、またはブチルである。
【0092】
いくつかの実施態様では、R2aとR2bは、それぞれ独立に、水素、C1-20アルキル、C2-20アルケニル、C2-20アルキニル、C1-20アルコキシ、ハロゲン、-CN、または-NO2である。いくつかの実施態様では、R2aとR2bは、それぞれ独立に、水素、C1-20アルキル、またはハロゲンである。いくつかの実施態様では、R2aとR2bは、それぞれ独立に、水素またはハロゲンである。いくつかの実施態様では、R2aとR2bは、それぞれ独立に、水素、フッ素、塩素、ホウ素、またはヨウ素である。いくつかの実施態様では、R2aとR2bは、それぞれ独立に水素である。
【0093】
いくつかの実施態様では、R3aとR3bは、それぞれ独立に、水素、C1-20アルキル、C2-20アルケニル、C2-20アルキニル、C1-20アルコキシ、ハロゲン、-CN、または-NO2である。いくつかの実施態様では、R3aとR3bは、それぞれ独立に、水素、C1-20アルキル、またはハロゲンである。いくつかの実施態様では、R3aとR3bは、それぞれ独立に、水素またはハロゲンである。いくつかの実施態様では、R3aとR3bは、それぞれ独立に、水素、フッ素、塩素、ホウ素、またはヨウ素である。いくつかの実施態様では、R3aとR3bは、それぞれ独立に水素である。
【0094】
いくつかの実施態様では、mとnは、独立に、1~10の整数である。いくつかの実施態様では、mとnは、独立に、1~5の整数である。いくつかの実施態様では、mとnは、独立に、1、2、3、4、または5である。いくつかの実施態様では、mとnは、それぞれ独立に1である。
【0095】
いくつかの実施態様では、それぞれのXは独立に、不在または-O-である。いくつかの実施態様では、それぞれのXは不在である。いくつかの実施態様では、それぞれのXは-O-である-
【0096】
いくつかの実施態様では、それぞれのXは不在である。いくつかの実施態様では、化合物は、式(Ia)の化合物:
【化6】
である。
【0097】
いくつかの実施態様では、R1はC1-20アルキルであり、化合物は、式(Ia):
【化7】
である。
【0098】
いくつかの実施態様では、化合物は、構造:
【化8】
を持つ(ただしnは1~7の整数である)。
【0099】
いくつかの実施態様では、化合物は、
【化9】
からなるグループから選択される。
【0100】
いくつかの実施態様では、化合物は、
【化10】
である。
【0101】
いくつかの実施態様では、化合物は、
【化11】
からなるグループから選択される。
【0102】
いくつかの実施態様では、それぞれのXは-O-である。いくつかの実施態様では、化合物は、式(Ib)の化合物:
【化12】
である。
【0103】
いくつかの実施態様では、化合物は、
【化13】
からなるグループから選択される。
【0104】
いくつかの実施態様では、化合物は、
【化14】
【化15】
からなるグループから選択される。
【0105】
本発明には、混合物の形態であるか純粋または実質的に純粋な形態にされた本発明の化合物のあらゆる互変異整体と立体異性体が含まれる。本発明の化合物は炭素原子の位置に不斉中心を持つことができ、したがって本発明の化合物は、ジアステレオマー形態または鏡像異性体形態で、またはこれらの混合物で存在することができる。あらゆる配座異性体(例えばシスとトランスの異性体)とあらゆる光学異性体(例えば鏡像異性体とジアステレオマー)、そのような異性体のラセミ混合物、ジアステレオマー混合物、および他の混合物のほか、溶媒和物、水和物、同形体、多形体、および互変異性体が、本発明の範囲に含まれる。本発明による化合物は、出発材料としてジアステレオマー、鏡像異性体、またはラセミ混合物を用いて調製することができる。さらに、ジアステレオマーと鏡像異性体生成物は、クロマトグラフィ、分別晶析、または当業者に知られている他の方法によって分離することができる。
【0106】
本発明には同位体で標識された本発明の化合物も含まれ、この化合物では1個以上の原子が特定の原子質量または質量数を持つ1個以上の原子で置換されている。本発明の化合物に組み込むことのできる同位体の非限定的な例に含まれるのは、水素、炭素、窒素、酸素、フッ素、硫黄、および塩素の同位体(2H、3H、13C、14C、15N、18O、17O、18F、35S、および36Clなど)である。同位体で標識された本発明の化合物は、それらの化合物とそのプロドラッグおよび代謝産物の組織分布のアッセイにおいて有用である;このようなアッセイにとって好ましい同位体には3Hと14Cが含まれる。それに加え、いくつかの場合には、より重い同位体(重水素(2H))で置換することで代謝安定性を大きくすることができ、それが、生体内半減期の増加、または必要な用量の減少などの治療上の利点を与える。同位体で標識された本発明の化合物は、一般に、当業者に知られている方法に従い、同位体で標識されていない試薬を同位体で標識された試薬で置き換えることによって調製することができる。本発明の化合物は、芳香族環の中の塩基性アミンと、メトキシ置換基のメチル基に隣接した位置を同位体で標識することができる。
【0107】
本発明の化合物は医薬として許容可能な塩の形態(本発明の化合物の酸塩または塩基塩など)にすることもできる。医薬として許容可能な塩の代表例は、無機酸(塩酸、臭化水素酸、リン酸など)の塩、有機酸(フマル酸、酢酸、プロピオン酸、グルタミン酸、クエン酸など)の塩、第四級アンモニウム(ヨウ化メチル、ヨウ化エチレンなど)の塩である。医薬として許容可能な塩は非毒性であると理解される。医薬として許容可能な適切な塩に関する追加情報は、Remington's Pharmaceutical Sciences, 17th ed., Mack Publishing Company, イーストン、ペンシルヴェニア州、1985年に見いだすことができる(参照によって本明細書に組み込まれている)。
IV.ナノ担体
【0108】
いくつかの実施態様では、本発明により、内側と外側を持つナノ担体が提供されるが、そのナノ担体は本発明の化合物またはその医薬として許容可能な塩を複数含み、それぞれの化合物が水性溶媒の中で自己集合するとき、疎水性ポケットがナノ担体の内側に形成され、親水性基がナノ担体の外側で自己集合するようにナノ担体を形成する。
【0109】
本発明のナノ担体の直径は適切な任意のサイズが可能である。いくつかの実施態様では、ナノ担体は5~200 nmの直径を持つことができる。いくつかの実施態様では、ナノ担体は10~150 nmの直径を持つことができる。いくつかの実施態様では、ナノ担体は50~150 nmの直径を持つことができる。いくつかの実施態様では、ナノ担体は100~150 nmの直径を持つことができる。いくつかの実施態様では、ナノ担体は約80 nm、90 nm、100 nm、110 nm、120 nm、または130 nmの直径を持つことができる。いくつかの実施態様では約100 nmの直径を持つことができる。
【0110】
ナノ担体の外側は細胞またはリソソームを標的とするために利用することができる。ナノ担体は、オートファジーを阻害するため細胞またはリソソームを標的とすることができる。いくつかの実施態様では、ナノ担体は、リソソーム破壊、リソソーム機能不全、オートファジー阻害、またはこれらの組み合わせを標的とすることができる。いくつかの実施態様では、ナノ担体はリソソームを標的とする。
【0111】
いくつかの実施態様では、疎水性ポケットが本発明の化合物のR1基から形成される。いくつかの実施態様では、ナノ担体は、このナノ担体の疎水性ポケットの中に封鎖された1つ以上の疎水性薬またはイメージング剤を含む。
【0112】
本発明で有用な疎水性薬として、当業者に知られている任意の疎水性薬が可能である。本発明で有用な疎水性薬の非限定的な例に含まれるのは、デオキシコール酸、デオキシコール酸塩、レシキモド、ガーディキモド、イミキモド、タキサン(例えばパクリタキセル、ドセタキセル、カバジタキセル、バカチンIII、10-デアセチルバカチン、紅豆杉(Hongdoushan)A、紅豆杉B、または紅豆杉C)、ドキソルビシン、エトポシドイリノテカン、SN-38、シクロスポリンA、ポドフィロトキシン、カルムスチン、アムホテリシン、イキサベピロン、パツピロン(エポテロンクラス)、ラパマイシン、および白金薬である。他の薬に含まれるのは、非ステロイド抗炎症薬とビンカアルカロイド(ビンブラスチンとビンクリスチンなど)である。
【0113】
本発明で有用な他の疎水性薬の非限定的な例に含まれるのは、化学療法剤、分子標的剤、免疫調節剤、免疫療法剤、放射線療法剤、またはこれらの組み合わせである。
【0114】
いくつかの実施態様では、疎水性薬は、化学療法剤、分子標的剤、免疫療法剤、放射線療法剤、またはこれらの組み合わせである。いくつかの実施態様では、疎水性薬は免疫療法剤である。本発明で有用な免疫療法治療剤の非限定的な例に含まれるのは、HCQ、Lys05、JQ1、ラパマイシン、ナパブカシン、イピリムマブ、ニボルマブ、ペムブロリズマブ、アテゾリズマブ、アベルマブ、およびデュルバルマブである。
【0115】
いくつかの実施態様では、疎水性薬は放射線療法剤である。本発明で有用な放射線療法剤の非限定的な例に含まれるのは、β-ラパコン、シスプラチン、ニモラゾール、セツキシマブ、ミソニダゾール、およびチラパザミンである。
【0116】
いくつかの実施態様では、疎水性薬は、化学療法剤または分子標的剤である。化学療法剤または分子標的剤の非限定的な例に含まれるのは、ダウノルビシン、ドキソルビシン、パクリタキセル、ドセタキセル、アブラキサン、ボルテゾミブ、エトポシド、レナリドミド、アポプトゾール、カルボプラチン、シスプラチン、オキサリプラチン、ビンブラスチン、ビンクリスチン、トラスツズマブ、エルロチニブ、イマチニブ、ニロチニブ、およびベムラフェニブである。
【0117】
いくつかの実施態様では、疎水性薬は、FLT-3阻害剤、VEGFR阻害剤、EGFR TK阻害剤、オーロラキナーゼ阻害剤、PIK-1調節剤、Bcl-2阻害剤、HDAC阻害剤、c-MET阻害剤、PARP阻害剤、Cdk阻害剤、EGFR TK阻害剤、IGFR-TK阻害剤、抗HGF抗体、PI3キナーゼ阻害剤、AKT阻害剤、JAK/STAT阻害剤、チェックポイント-1または2の阻害剤、接着斑キナーゼ阻害剤、Mapキナーゼキナーゼ(mek)阻害剤、VEGF捕獲抗体、エベロリムス、トラベクテジン、アブラキサン、TLK 286、AV-299、DN-101、パゾパニブ、GSK690693、RTA 744、ON 0910.Na、AZD 6244(ARRY-142886)、AMN-107、TKI-258、GSK461364、AZD 1152、エンザスタウリン、バンデタニブ、ARQ-197、MK-0457、MLN8054、PHA-739358、R-763、AT-9263、ペメトレキセド、エルロチニブ、ダサタニブ、ニロチニブ、デカタニブ、パニツムマブ、アムルビシン、オレゴボマブ、Lep-etu、ノラトレキセド、azd2171、バタブリン、オファツムマブ、ザノリブマブ、エドテカリン、テトランドリン、ルビテカン、テスミリフェン、オブリメルセン、チシリムマブ、イピリムマブ、ゴシポール、Bio 111、131-I-TM-601、ALT-110、BIO 140、CC 8490、シレンジタイド、ジマテカン、IL13-PE38QQR;INO 1001、IPdR1 KRX-0402、ルカントン、LY 317615、ノイラジアブ、ビテスパン、Rta 744、Sdx 102、タランパネル、アトラセンタン、Xr 311、ロミデプシン、ADS-100380、スニチニブ、5-フルオロウラシル、ボリノスタット、エトポシド、ゲムシタビン、ドキソルビシン、イリノテカン、リポソームドキソルビシン、5′-デオキシ-5-フルオロウリジン、ビンクリスチン、テモゾロミド、ZK-304709、セリシクリブ;PD0325901、AZD-6244、カペシタビン、N-[4-[2-(2-アミノ-4,7-ジヒドロ-4-オキソ-1H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-5-イル)エチル]ベンゾイル]-L-グルタミン酸二ナトリウム塩七水和物、カンプトテシン、PEG標識イリノテカン、タモキシフェン、クエン酸トレミフェン、アナストラゾール、エキセメスタン、レトロゾール、DES(ジエチルスチルベストロール)、エストラジオール、エストロゲン、結合型エストロゲン、ベバシズマブ、IMC-1C11、CHIR-258);3-[5-(メチルスルホニルピペラジンメチル)-インドリル-キノロン、バタラニブ、AG-013736、AVE-0005、[D-Ser(Bu t) 6, Azgly 10]の酢酸塩(酢酸ピロ-Glu-His-Trp-Ser-Tyr-D-Ser(Bu t)-Leu-Arg-Pro-Azgly-NH2 [C59H84N18O14-(C2H4O2)X(ただしx=1~2.4)]、酢酸ゴセレリン、酢酸ロイプロリド、パモ酸トリプトレリン、酢酸メドロキシプロゲステロン、カプロン酸ヒドロキシプロゲステロン、酢酸メゲストロール、ラロキシフェン、ビカルタミド、フルタミド、ニルタミド、酢酸メゲストロール、CP-724714;TAK-165、HKI-272、エルロチニブ、ラパタニブ、カネルチニブ、ABX-EGF抗体、アービタックス、EKB-569、PKI-166、GW-572016、イオナファルニブ、BMS-214662、チピファルニブ;アミフォスチン、NVP-LAQ824、ヒドロキサミン酸サブエロイルアニリド、バルプロ酸、トリコスタチンA、FK-228、SU11248、ソラフェニブ、KRN951、アミノグルテチミド、アムサクリン、アナグレリド、L-アスパラギナーゼ、カルメット-ゲラン桿菌(BCG)ワクチン、ブレオマイシン、ブセレリン、ブスルファン、カルボプラチン、カルムスチン、クロラムブシル、シスプラチン、クラドリビン、クロドロネート、シプロテロン、シタラビン、ダカルバジン、ダクチノマイシン、ダウノルビシン、ジエチルスチルベストロール、エピルビシン、フルダラビン、フルドロコルチゾン、フルオキシメステロン、フルタミド、ゲムシタビン、グリベック、ヒドロキシウレア、イダルビシン、イホスファミド、イマチニブ、ロイプロリド、レバミゾール、ロムスチン、メクロレタミン、メルファラン、6-メルカプトプリン、メスナ、メトトレキサート、マイトマイシン、ミトタン、ミトキサントロン、ニルタミド、オクトレオチド、オキサリプラチン、パミドロネート、ペントスタチン、プリカマイシン、ポルフィマー、プロカルバジン、ラルチトレキセド、リツキシマブ、ストレプトゾシン、テニポシド、テストステロン、サリドマイド、チオグアニン、チオテパ、トレチノイン、ビンデシン、13-シス-レチノイン酸、フェニルアラニンマスタード、ウラシルマスタード、エストラムスチン、アルトレタミン、フロクスウリジン、5-デオオキシウリジン、シトシンアラビノシド、6-メルカプトプリン、デオキシコホルマイシン、カルシトリオール、バルルビシン、ミトラマイシン、ビンブラスチン、ビノレルビン、トポテカン、ラゾキシン、マリマスタット、COL-3、ネオバスタット、BMS-275291、スクアラミン、エンドスタチン、SU5416、SU6668、EMD121974、インターロイキン-12、IM862、アンギオスタチン、ビタキシン、ドロロキシフェン、イドキシフェン、スピロノラクトン、フィナステリド、シミチジン、トラスツズマブ、デニロイキン・ディフィトックス、ゲフィチニブ、ボルテジミブ、パクリタキセル、イリノテカン、トポテカン、ドキソルビシン、ドセタキセル、ビノレルビン、ベバシズマブ(モノクローナル抗体)とアービタックス、無クレモホールパクリタキセル、エピチロンB、BMS-247550、BMS-310705、ドロロキシフェン、4-ヒドロキシタモキシフェン、ピペンドキシフェン、ERA-923、アルゾキシフェン、フルベストラント、アコルビフェン、ラソフォキシフェン、イドキシフェン、TSE-424、HMR-3339、ZK186619、PTK787/ZK 222584、VX-745、PD 184352、ラパマイシン、40-O-(2-ヒドロキシエチル)-ラパマイシン、テムシロリムス、AP-23573、RAD001、ABT-578、BC-210、LY294002、LY292223、LY292696、LY293684、LY293646、ウォルトマンニン、ZM336372、L-779,450、PEG-フィルグラスチム、ダルベポエチン、エリスロポエチン、顆粒球コロニー-刺激因子、ゾレンドロネート、プレドニゾン、セツキシマブ、顆粒球マクロファージコロニー-刺激因子、ヒストレリン、ペグインターフェロンアルファ-2a、インターフェロンアルファ-2a、ペグインターフェロンアルファ-2b、インターフェロンアルファ-2b、アザシチジン、PEG-L-アスパラギナーゼ、レナリドミド、ゲムツズマブ、ヒドロコルチゾン、インターロイキン-11、デクスラゾキサン、アレムツズマブ、全トランスレチノイン酸、ケトコナゾール、インターロイキン-2、メゲストロール、免疫グロブリン、ナイトロジェンマスタード、メチルプレドニゾロン、イブリツグモマブチウキセタン、アンドロゲン、デシタビン、ヘキサメチルメラミン、ベキサロテン、トシツモマブ、三酸化ヒ素、コルチゾン、エジトロネート、ミトタン、シクロスポリン、リポソームダウノルビシン、Edwina-アスパラギナーゼ、ストロンチウム89、カソピタント、ネツピタント、NK-1受容体アンタゴニスト、パロノセトロン、アプレピタント、ジフェンヒドラミン、ヒドロキシジン、メトクロプラミド、ロラゼパム、アルプラゾラム、ハロペリドール、ドロペリドール、ドロナビノール、デキサメタゾン、メチルプレドニゾロン、プロクロルペラジン、グラニセトロン、オンダンセトロン、ドラセトロン、トロピセトロン、sspegフィルグラスチム、エリスロポエチン、エポエチンアルファとダルベポエチンアルファ、イピルムマブ、ベムラフェニブ、またはこれらの組み合わせである。いくつかの実施態様では、疎水性薬は、HCQ、Lys05、JQ1、ラパマイシン、ナパブカシン、イピリムマブ、ニボルマブ、ペムブロリズマブ、アテゾリズマブ、アベルマブ、デュルバルマブ、β-ラパコン、シスプラチン、ニモラゾール、セツキシマブ、ミソニダゾール、チラパザミン、ダウノルビシン、ドキソルビシン、パクリタキセル、ドセタキセル、アブラキサン、ボルテゾミブ、エトポシド、レナリドミド、アポプトゾール、カルボプラチン、シスプラチン、オキサリプラチン、ビンブラスチン、ビンクリスチン、トラスツズマブ、エルロチニブ、イマチニブ、ニロチニブ、ベムラフェニブ、またはこれらの組み合わせである。
【0118】
いくつかの実施態様では、ナノ担体は、上に説明した化合物の構造を持つ本発明の化合物を複数含む。
V.製剤と投与
【0119】
本発明の化合物、ナノ担体、および組成物は、多彩な経口投与形態、非経口投与形態、および局所投与形態で調製することができる。経口調製物には、患者が摂取するのに適した錠剤、ピル、粉末、ドラジェ、カプセル、液体、ロゼンジ、カシェ、ゲル、シロップ、スラリー、懸濁液などが含まれる。本発明の組成物は、注射によって、すなわち静脈内、筋肉内、皮内、皮下、十二指腸内、または腹腔内に投与することもできる。また、本明細書に記載されている組成物は吸入によって(例えば鼻腔内)投与することができる。それに加え、本発明の組成物は経皮投与することができる。本発明の組成物は、眼内経路、膣内経路、および直腸内経路によって投与することもでき、その例に含まれるのは、座薬、送気、粉末、およびエアロゾル製剤(例えばステロイド吸入剤:Rohatagi, J. Clin. Pharmacol. 35:1187-1193, 1995;Tjwa, Ann. Allergy Asthma Immunol. 75:107-111, 1995を参照されたい)である。したがって本発明により、医薬として許容可能な基剤または賦形剤と本発明の化合物を含む医薬組成物も提供される。
【0120】
本発明の化合物から医薬組成物を調製するには、医薬として許容可能な基剤として、固体または液体が可能である。固体形態調製物に含まれるのは、粉末、錠剤、ピル、カプセル、カシェ、座薬、および分散可能な顆粒である。固体基剤として1つ以上の物質が可能であり、それは、希釈剤、香味剤、結合剤、保存剤、錠剤崩壊剤、またはカプセル化材料としても作用することができる。製剤化と投与の技術に関する詳細は学術文献と特許文献に十分に記載されている。例えば最新版のRemington's Pharmaceutical Sciences, Maack Publishing Co、イーストン、ペンシルヴェニア州(「Remington's」)を参照されたい。
【0121】
粉末では、基剤は細かく分割された固体であり、細かく分割された活性成分との混合物になっている。錠剤では、活性成分は、必要な結合特性を持つ基剤と適切な割合で混合され、望む形とサイズに圧縮される。粉末と錠剤は、本発明の化合物を5%または10%から70%まで含有することが好ましい。
【0122】
適切な固体賦形剤の非限定的な例に含まれるのは、炭酸マグネシウム;ステアリン酸マグネシウム;タルク、ペクチン;デキストリン;デンプン;トラガカントゴム;低融点ワックス;カカオバター;炭水化物;糖(その非限定的な例に含まれるのはラクトース、スクロース、マンニトール、またはソルビトール、トウモロコシ、コムギ、イネ、ジャガイモ、または他の植物からのデンプンである);セルロース(メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチル-セルロース、またはナトリウムカルボキシメチルセルロースなど);およびゴム(アラビアゴムとトラガカントゴムが含まれる);のほか、タンパク質(その非限定的な例に含まれるのはゼラチンとコラーゲンである)である。望む場合には、崩壊剤または可溶剤を添加することができる(架橋したポリビニルピロリドン、寒天、アルギン酸またはその塩(アルギン酸ナトリウムなど)など)。
【0123】
ドラジェのコアには適切なコーティング(濃縮糖溶液(アラビアゴム、タルク、ポリビニルピロリドン、カルボポールゲル、ポリエチレングリコール、および/または二酸化チタンも含有することができる)、ラッカー溶液、および適切な有機溶媒、または溶媒混合物など)が施される。製品を特定するため、または活性化合物の量(すなわち用量)を特徴づけるため、染料または顔料を錠剤またはドラジェのコーティングに添加することができる。本発明の医薬調製物は経口で使用することもでき、それは例えば、ゼラチン製の押し込み型カプセルのほか、ゼラチンとコーティング(グリセロールまたはソルビトールなど)からなる軟質密封カプセルである。押し込み型カプセルは、充填剤または結合剤(ラクトースまたはデンプンなど)、潤滑剤(タルクまたはステアリン酸マグネシウムなど)、および場合により安定剤と混合された本発明の化合物を含有することができる。軟質カプセルでは、本発明の化合物を、安定剤あり、またはなしで適切な液体(脂肪油、液体パラフィン、または液体ポリエチレングリコールの中に溶かすか懸濁させることができる。
【0124】
座薬を調製するには、低融点ワックス(脂肪酸グリセリドまたはカカオバターの混合物など)を最初に融解させ、本発明の化合物を例えば攪拌によってその中に均一に分散させる。その後、融解した均一な混合物を適切なサイズの鋳型に流し込み、放置して冷やすことによって固化させる。
【0125】
液体形態の調製物には、溶液、懸濁液、およびエマルション(例えば水、または水/プロピレングリコール溶液)が含まれる。非経口注射のためには、液体調製物をポリエチレングリコール水溶液の中の溶液に製剤化することができる。
【0126】
経口での利用に適した水溶液は、本発明の化合物を水に溶かし、望む場合には適切な着色剤、香味剤、安定剤、および増粘剤を添加して調製することができる。経口での使用に適した水性懸濁液は、細かく分割した活性成分を水の中に粘性材料(天然ゴムまたは合成ゴム、樹脂、メチルセルロース、ナトリウムカルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、アルギン酸ナトリウム、ポリビニルピロリドン、トラガカントゴム、およびアラビアゴムなど)、および分散剤または湿潤剤(天然のホスファチド(例えばレシチン)、アルキレンオキシドと脂肪酸の縮合生成物(例えばステアリン酸ポリオキシエチレン)、エチレンオキシドと長鎖脂肪族アルコールの縮合生成物(例えばヘプタデカエチレンオキシセタノール)、エチレンオキシドと、脂肪酸とヘキシトールに由来する部分エステルの縮合生成物(例えばモノオレイン酸ポリオキシエチレンソルビトール)、またはエチレンオキシドと、脂肪酸と無水ヘキシトールに由来する部分エステルの縮合生成物(例えばモノオレイン酸ポリオキシエチレンソルビトール)など)とともに分散させることによって作ることができる。水性懸濁液は、1つ以上の保存剤(p-ヒドロキシ安息香酸エチルまたはp-ヒドロキシ安息香酸n-プロピルなど)、1つ以上の着色剤、1つ以上の香味剤、および1つ以上の甘味剤(スクロース、アスパルターム、またはサッカリンなど)も含有することができる。製剤の浸透圧を調節することができる。
【0127】
使用する少し前に経口投与のための液体形態調製物に変換することが想定されている固体形態の調製物が含まれる。このような液体形態には、溶液、懸濁液、エマルションが含まれる。これら調製物は、活性成分に加え、着色剤、香味、安定剤、バッファ、人工または天然の甘味剤、分散剤、増粘剤、可溶剤などを含有することができる。
【0128】
油懸濁液は本発明の化合物を植物油(ピーナツ油、オリーブ油、ゴマ油、またはココナツ油など)、または鉱物油(液体パラフィンなど);またはこれらの混合物に懸濁させることによって製剤化することができる。油懸濁液は増粘剤(蜜蝋、硬質パラフィン、またはセチルアルコールなど)を含有することができる。甘味剤を添加して口当たりのよい経口調製物(グリセロール、ソルビトール、またはスクロースなど)を提供することができる。これらの製剤は抗酸化剤(アスコルビン酸など)を添加することによって保存することができる。注射可能な油ビヒクルの一例として、Minto, J. Pharmacol. Exp. Ther. 281:93-102, 1997を参照されたい。本発明の医薬製剤は水中油型エマルションの形態にすることもできる。油相として、上記の植物油または鉱物油、またはこれらの混合物が可能である。適切な乳化剤に含まれるのは、天然ゴム(アラビアゴムやトラガカントゴムなど)、天然のホスファチド(ダイズのレシチンなど)、脂肪酸と無水ヘキシトールに由来するエステルまたは部分エステル(モノオレイン酸ソルビタンなど)、およびこれら部分エステルとエチレンオキシドの縮合物(モノオレイン酸ポリオキシエチレンソルビタンなど)である。エマルションは、シロップとエリキシルの製剤におけるように、甘味剤と香味剤も含有することができる。このような製剤は、粘滑剤、保存剤、または着色剤も含有することができる。
【0129】
別の一実施態様では、本発明の組成物は、非経口投与(静脈内(IV)投与や、体腔または臓器の管腔への投与など)のために製剤化することができる。投与するための製剤は、一般に、本発明の組成物を医薬として許容可能な基剤に溶かした溶液を含むことになる。使用できる許容可能なビヒクルと溶媒には、水とリンゲル溶液、等張塩化ナトリウムがある。それに加え、減菌不揮発性油を通常は溶媒または懸濁媒体として用いることができる。その目的で、合成モノグリセリドまたは合成ジグリセリドを含む任意の無刺激不揮発性油を用いることができる。それに加え、脂肪酸(オレイン酸など)を同様に注射可能な製剤の調製に用いることができる。これら溶液は減菌されており、一般に望ましくない物質を含まない。これら製剤は、通常の周知の殺菌技術によって殺菌することができる。製剤は、生理学的条件を模倣するために必要な、医薬として許容可能な補助物質(pHの調節剤と緩衝剤、毒性調節剤などであり、例えば酢酸ナトリウム、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム、乳酸ナトリウム)を含有することができる。これら製剤の中での本発明の組成物の濃度は広く変化する可能性があり、選択される具体的な投与方式と患者の必要性に応じ、流体の体積、粘度、体重などに主として基づいて選択されることになる。IV投与のためには、製剤として減菌注射可能調製物(減菌された注射可能な水性または油性の懸濁液など)が可能である。この懸濁液は、適切な分散剤または湿潤剤と懸濁剤を用いて既知の技術に従って製剤化することができる。減菌注射可能調製物として、非毒性であって非経口で受け入れ可能な希釈剤または溶媒の中の減菌された注射可能な溶液または懸濁液(1,3-ブタンジオールの溶液など)も可能である。
【0130】
本発明の組成物は、適切な任意の手段(経口法、非経口法、および局所法が含まれる)によって送達することができる。局所経路による経皮投与法は、塗布棒、溶液、懸濁液、エマルション、ゲル、クリーム、軟膏、ペースト、ゼリー、ペイント、粉末、およびエアロゾルとして製剤化することができる。
【0131】
医薬調製物は単位剤形にされることが好ましい。そのような形態だと、調製物は適量の本発明の化合物を含有する単位用量に分割されている。単位剤形として、包装された調製物、離散量の調製物を含有するパッケージ(包装された錠剤、カプセル、およびバイアルまたはアンプルの中の粉末など)が可能である。また、単位剤形として、カプセル、錠剤、カシェ、またはロゼンジそのものや、適切な数のこれらいずれかの包装形態が可能である。
【0132】
本発明の化合物とナノ担体は適切な任意の量で存在することができ、さまざまな因子(その非限定的な例に含まれるのは、対象の体重と年齢、疾患の状態などである)に依存する可能性がある。本発明の化合物の適切な用量の範囲に含まれるのは、約0.1 mg~約10,000 mg、または約1 mg~約1000 mg、または約10 mg~約750 mg、または約25 mg~約500 mg、または約50 mg~約250 mgである。本発明の化合物の適切な用量に含まれるのは、約1 mg、5、10、20、30、40、50、60、70、80、90、100、200、300、400、500、600、700、800、900、または1000 mgである。
【0133】
本発明の化合物とナノ担体は、適切な任意の頻度、間隔、および期間で投与することができる。例えば本発明の化合物は、1時間に1回、または1時間に2回、3回、またはより多数回、1日に1回、または1日に2回、3回、またはより多数回、または2、3、4、5、6、または7日ごとに1回投与することで、好ましい用量レベルを提供することができる。本発明の化合物が1日に2回以上投与されるときには、代表的な間隔には、5、10、15、20、30、45、および60分間のほか、1、2、4、6、8、10、12、16、20、および24時間が含まれる。本発明の化合物は、1回、2回、または3回、またはより多くの回数を、1時間、1~6時間、1~12時間、1~24時間、6~12時間、12~24時間、1日だけ、1~7日間、1週間だけ、1~4週間、1ヶ月間、1~12ヶ月間、1年以上にわたって、または無限にさえ投与することができる。
【0134】
組成物は適合性のある他の治療剤も含むことができる。本明細書に記載されている化合物は、互いに組み合わせて、グルココルチコイド受容体を変化させるのに有用であることが知られている他の活性剤と組み合わせて、または単独では有効でない可能性があるが活性剤の効果に寄与する可能性のある助剤と組み合わせて使用することができる。
【0135】
本発明の化合物は別の活性剤と同時に投与することができる。同時投与には、本発明の化合物と活性剤を互いに0.5、1、2、4、6、8、10、12、16、20、または24時間以内に投与することが含まれる。同時投与には、本発明の化合物と活性剤を同時に投与すること、ほぼ同時に(例えば互いに約1、5、10、15、20、または30分以内に)投与すること、または任意の順番で逐次的に投与することも含まれる。さらに、本発明の化合物と活性剤は、1日当たりの好ましい用量レベルを提供するため、それぞれ1日に1回、または1日に2回、3回、またはより多数回投与することができる。
【0136】
いくつかの実施態様では、同時投与は、共製剤化によって、すなわち本発明の化合物と活性剤の両方を含む単一の医薬組成物を調製することによって実現することができる。他の実施態様では、本発明の化合物と活性剤を別々に製剤化することができる。
【0137】
本発明の化合物と活性剤は、本発明の組成物の中に適切な任意の重量比(約1:100~約100:1 (w/w)、または約1:50~約50:1、または約1:25~約25:1、または約1:10~約10:1、または約1:5~約5:1 (w/w)など)で存在することができる。本発明の化合物と他の活性剤は、適切な任意の重量比(約1:100 (w/w)、1:50、1:25、1:10、1:5、1:4、1:3、1:2、1:1、2:1、3:1、4:1、5:1、10:1、25:1、50:1、または100:1 (w/w)など)で存在することができる。他の用量と用量比の本発明の化合物と活性剤は本発明の組物と方法に適している。
VI.治療の方法
【0138】
いくつかの実施態様では、本発明により、疾患を治療する方法として、それを必要とする対象に治療に有効な量の本発明のナノ担体を投与することを含む方法が提供される。
【0139】
いくつかの実施態様では、この方法は、疾患を治療するための追加の薬剤を用いることによる併用療法をさらに含む。追加の薬剤は治療剤である。本発明の併用療法の非限定的な例に含まれるのは、本発明のナノ担体と1つ以上の追加の薬剤の使用である。
【0140】
併用療法の非限定的な例に福丸ことができるのは、免疫療法、放射線療法、化学療法、分子標的療法、またはこれらの組み合わせである。
【0141】
いくつかの実施態様では、この方法は、1つ以上の追加の薬剤をさらに含み、その追加の薬剤は、化学療法剤、分子標的剤、免疫療法剤、放射線療法剤、またはこれらの組み合わせである。いくつかの実施態様では、追加の薬剤は免疫療法剤である。本発明で有用な免疫療法剤は上に示されている。いくつかの実施態様では、追加の薬剤は放射線療法剤である。本発明で有用な放射線治療剤は上に示されている。いくつかの実施態様では、追加の薬剤は化学療法剤または分子標的剤である。本発明で有用な化学療法剤と分子標的剤は上に示されている。
【0142】
いくつかの実施態様では、1つ以上の追加の薬剤には2つの追加の薬剤が含まれる。いくつかの実施態様では、追加の薬剤は免疫療法剤と放射線療法剤である。いくつかの実施態様では、追加の薬剤は免疫療法剤と化学療法剤である。いくつかの実施態様では、追加の薬剤は免疫療法剤と分子標的剤である。いくつかの実施態様では、追加の薬剤は放射線療法剤と化学療法剤である。いくつかの実施態様では、追加の薬剤は放射線療法剤と分子標的剤である。
【0143】
いくつかの実施態様では、追加の薬剤は、FLT-3阻害剤、VEGFR阻害剤、EGFR TK阻害剤、オーロラキナーゼ阻害剤、PIK-1調節剤、Bcl-2阻害剤、HDAC阻害剤、c-MET阻害剤、PARP阻害剤、Cdk阻害剤、EGFR TK阻害剤、IGFR-TK阻害剤、抗HGF抗体、PI3キナーゼ阻害剤、AKT阻害剤、JAK/STAT阻害剤、チェックポイント-1または2の阻害剤、接着斑キナーゼ阻害剤、Mapキナーゼキナーゼ(mek)阻害剤、VEGF捕獲抗体、エベロリムス、トラベクテジン、アブラキサン、TLK 286、AV-299、DN-101、パゾパニブ、GSK690693、RTA 744、ON 0910.Na、AZD 6244(ARRY-142886)、AMN-107、TKI-258、GSK461364、AZD 1152、エンザスタウリン、バンデタニブ、ARQ-197、MK-0457、MLN8054、PHA-739358、R-763、AT-9263、ペメトレキセド、エルロチニブ、ダサタニブ、ニロチニブ、デカタニブ、パニツムマブ、アムルビシン、オレゴボマブ、Lep-etu、ノラトレキセド、azd2171、バタブリン、オファツムマブ、ザノリブマブ、エドテカリン、テトランドリン、ルビテカン、テスミリフェン、オブリメルセン、チシリムマブ、イピリムマブ、ゴシポール、Bio 111、131-I-TM-601、ALT-110、BIO 140、CC 8490、シレンジタイド、ジマテカン、IL13-PE38QQR;INO 1001、IPdR1 KRX-0402、ルカントン、LY 317615、ノイラジアブ、ビテスパン、Rta 744、Sdx 102、タランパネル、アトラセンタン、Xr 311、ロミデプシン、ADS-100380、スニチニブ、5-フルオロウラシル、ボリノスタット、エトポシド、ゲムシタビン、ドキソルビシン、イリノテカン、リポソームドキソルビシン、5′-デオキシ-5-フルオロウリジン、ビンクリスチン、テモゾロミド、ZK-304709、セリシクリブ;PD0325901、AZD-6244、カペシタビン、N-[4-[2-(2-アミノ-4,7-ジヒドロ-4-オキソ-1H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-5-イル)エチル]ベンゾイル]-L-グルタミン酸二ナトリウム塩七水和物、カンプトテシン、PEG標識イリノテカン、タモキシフェン、クエン酸トレミフェン、アナストラゾール、エキセメスタン、レトロゾール、DES(ジエチルスチルベストロール)、エストラジオール、エストロゲン、結合型エストロゲン、ベバシズマブ、IMC-1C11、CHIR-258);3-[5-(メチルスルホニルピペラジンメチル)-インドリルj-キノロン、バタラニブ、AG-013736、AVE-0005、[D-Ser(Bu t) 6, Azgly 10]の酢酸塩(酢酸ピロ-Glu-His-Trp-Ser-Tyr-D-Ser(Bu t)-Leu-Arg-Pro-Azgly-NH2 [C59H84N18O14-(C2H4O2)X(ただしx=1~2.4)]、酢酸ゴセレリン、酢酸ロイプロリド、パモ酸トリプトレリン、酢酸メドロキシプロゲステロン、カプロン酸ヒドロキシプロゲステロン、酢酸メゲストロール、ラロキシフェン、ビカルタミド、フルタミド、ニルタミド、酢酸メゲストロール、CP-724714;TAK-165、HKI-272、エルロチニブ、ラパタニブ、カネルチニブ、ABX-EGF抗体、アービタックス、EKB-569、PKI-166、GW-572016、イオナファルニブ、BMS-214662、チピファルニブ;アミフォスチン、NVP-LAQ824、ヒドロキサミン酸サブエロイルアニリド、バルプロ酸、トリコスタチンA、FK-228、SU11248、ソラフェニブ、KRN951、アミノグルテチミド、アムサクリン、アナグレリド、L-アスパラギナーゼ、カルメット-ゲラン桿菌(BCG)ワクチン、ブレオマイシン、ブセレリン、ブスルファン、カルボプラチン、カルムスチン、クロラムブシル、シスプラチン、クラドリビン、クロドロネート、シプロテロン、シタラビン、ダカルバジン、ダクチノマイシン、ダウノルビシン、ジエチルスチルベストロール、エピルビシン、フルダラビン、フルドロコルチゾン、フルオキシメステロン、フルタミド、ゲムシタビン、グリベック、ヒドロキシウレア、イダルビシン、イホスファミド、イマチニブ、ロイプロリド、レバミゾール、ロムスチン、メクロレタミン、メルファラン、6-メルカプトプリン、メスナ、メトトレキサート、マイトマイシン、ミトタン、ミトキサントロン、ニルタミド、オクトレオチド、オキサリプラチン、パミドロネート、ペントスタチン、プリカマイシン、ポルフィマー、プロカルバジン、ラルチトレキセド、リツキシマブ、ストレプトゾシン、テニポシド、テストステロン、サリドマイド、チオグアニン、チオテパ、トレチノイン、ビンデシン、13-シス-レチノイン酸、フェニルアラニンマスタード、ウラシルマスタード、エストラムスチン、アルトレタミン、フロクスウリジン、5-デオオキシウリジン、シトシンアラビノシド、6-メルカプトプリン、デオキシコホルマイシン、カルシトリオール、バルルビシン、ミトラマイシン、ビンブラスチン、ビノレルビン、トポテカン、ラゾキシン、マリマスタット、COL-3、ネオバスタット、BMS-275291、スクアラミン、エンドスタチン、SU5416、SU6668、EMD121974、インターロイキン-12、IM862、アンギオスタチン、ビタキシン、ドロロキシフェン、イドキシフェン、スピロノラクトン、フィナステリド、シミチジン、トラスツズマブ、デニロイキン・ディフィトックス、ゲフィチニブ、ボルテジミブ、パクリタキセル、イリノテカン、トポテカン、ドキソルビシン、ドセタキセル、ビノレルビン、ベバシズマブ(モノクローナル抗体)とアービタックス、無クレモホールパクリタキセル、エピチロンB、BMS-247550、BMS-310705、ドロロキシフェン、4-ヒドロキシタモキシフェン、ピペンドキシフェン、ERA-923、アルゾキシフェン、フルベストラント、アコルビフェン、ラソフォキシフェン、イドキシフェン、TSE-424、HMR-3339、ZK186619、PTK787/ZK 222584、VX-745、PD 184352、ラパマイシン、40-O-(2-ヒドロキシエチル)-ラパマイシン、テムシロリムス、AP-23573、RAD001、ABT-578、BC-210、LY294002、LY292223、LY292696、LY293684、LY293646、ウォルトマンニン、ZM336372、L-779,450、PEG-フィルグラスチム、ダルベポエチン、エリスロポエチン、顆粒球コロニー-刺激因子、ゾレンドロネート、プレドニゾン、セツキシマブ、顆粒球マクロファージコロニー-刺激因子、ヒストレリン、ペグインターフェロンアルファ-2a、インターフェロンアルファ-2a、ペグインターフェロンアルファ-2b、インターフェロンアルファ-2b、アザシチジン、PEG-L-アスパラギナーゼ、レナリドミド、ゲムツズマブ、ヒドロコルチゾン、インターロイキン-11、デクスラゾキサン、アレムツズマブ、全トランスレチノイン酸、ケトコナゾール、インターロイキン-2、メゲストロール、免疫グロブリン、ナイトロジェンマスタード、メチルプレドニゾロン、イブリツグモマブチウキセタン、アンドロゲン、デシタビン、ヘキサメチルメラミン、ベキサロテン、トシツモマブ、三酸化ヒ素、コルチゾン、エジトロネート、ミトタン、シクロスポリン、リポソームダウノルビシン、Edwina-アスパラギナーゼ、ストロンチウム89、カソピタント、ネツピタント、NK-1受容体アンタゴニスト、パロノセトロン、アプレピタント、ジフェンヒドラミン、ヒドロキシジン、メトクロプラミド、ロラゼパム、アルプラゾラム、ハロペリドール、ドロペリドール、ドロナビノール、デキサメタゾン、メチルプレドニゾロン、プロクロルペラジン、グラニセトロン、オンダンセトロン、ドラセトロン、トロピセトロン、sspegフィルグラスチム、エリスロポエチン、エポエチンアルファとダルベポエチンアルファ、イピルムマブ、ベムラフェニブ、またはこれらの組み合わせである。いくつかの実施態様では、追加の薬剤は、HCQ、Lys05、JQ1、ラパマイシン、ナパブカシン、イピリムマブ、ニボルマブ、ペムブロリズマブ、アテゾリズマブ、アベルマブ、デュルバルマブ、β-ラパコン、シスプラチン、ニモラゾール、セツキシマブ、ミソニダゾール、チラパザミン、ダウノルビシン、ドキソルビシン、パクリタキセル、ドセタキセル、アブラキサン、ボルテゾミブ、エトポシド、レナリドミド、アポプトゾール、カルボプラチン、シスプラチン、オキサリプラチン、ビンブラスチン、ビンクリスチン、トラスツズマブ、エルロチニブ、イマチニブ、ニロチニブ、ベムラフェニブ、またはこれらの組み合わせである。
【0144】
本発明の方法によって治療される疾患に含まれるのは、コロナウイルス、マラリア、抗リン脂質抗体症候群、ループス、関節リウマチ、慢性蕁麻疹またはシェーグレン病、およびがん(その非限定的な例は、癌腫、神経膠腫、中皮腫、黒色腫、リンパ腫、白血病、腺癌、乳がん、卵巣がん、子宮頸がん、膠芽腫、白血病、リンパ腫、前立腺がん、およびバーキットリンパ腫、頭頸部がん、大腸がん、結腸直腸がん、非小細胞肺がん、小細胞肺がん、食道のがん、胃がん、膵臓がん、肝胆道がん、胆嚢のがん、小腸のがん、直腸がん、腎臓がん、膀胱がん、前立腺がん、陰茎がん、尿道がん、精巣がん、子宮頸がん、膣がん、子宮がん、卵巣がん、甲状腺がん、副甲状腺がん、副腎がん、膵内分泌がん、カルチノイドがん、骨がん、皮膚がん、網膜芽腫、多発性骨髄腫、ホジキンリンパ腫、および非ホジキンリンパ腫である(追加のがんに関しては、CANCER: PRINCIPLES AND PRACTICE(DeVita, V. T. et al. eds 2008)を参照されたい))である。
【0145】
本発明のナノ担体によって治療することのできる他の疾患に含まれるのは、(1)炎症性またはアレルギー性の疾患(全身性アナフィラキシーまたは過敏応答、薬アレルギー、虫刺されアレルギーなど);炎症性腸疾患(クローン病、潰瘍性大腸炎、回腸炎、および腸炎など);膣炎;乾癬と炎症性皮膚疾患(皮膚炎、湿疹、アトピー性皮膚炎、アレルギー性接触皮膚炎、蕁麻疹など);血管炎;脊椎関節炎;強皮症;呼吸器アレルギー疾患(喘息、アレルギー性鼻炎、過敏性肺疾患など)など、(2)自己免疫疾患(関節炎(リウマチ性と乾癬性)、変形性関節症、多発性硬化症、全身性エリテマトーデス、糖尿病、糸球体腎炎など)など、(3)移植片拒絶(同種移植片拒絶と移植片対宿主病が含まれる)、および(4)望まない炎症応答を阻害すべき他の疾患(例えばアテローム性動脈硬化症、筋炎、神経学的状態(脳卒中や閉鎖性頭部損傷など)、神経変性疾患、アルツハイマー病、脳炎、髄膜炎、骨粗鬆症、痛風、肝炎、腎炎、敗血症、サルコイドーシス、結膜炎、中耳炎、慢性閉塞性肺疾患、副鼻腔炎、およびベーチェット症候群)である。
【0146】
いくつかの実施態様では、疾患はがんである。いくつかの実施態様では、がんは、膀胱がん、脳腫瘍、乳がん、子宮頸がん、胆管癌、結腸直腸がん、食道がん、胆嚢がん、胃がん、膠芽腫、腸がん、頭頸部がん、白血病、肝臓がん、肺がん、黒色腫、骨髄腫、卵巣がん、膵臓がん、前立腺がん、および子宮がんである。いくつかの実施態様では、がんは、膀胱がん、脳腫瘍、乳がん、子宮頸がん、胆管癌、結腸直腸がん、食道がん、胆嚢がん、胃がん、膠芽腫、腸がん、頭頸部がん、白血病、肝臓がん、肺がん、黒色腫、骨髄腫、卵巣がん、膵臓がん、および子宮がんである。
【0147】
いくつかの実施態様では、疾患は、コロナウイルス、マラリア、抗リン脂質抗体症候群、ループス、関節リウマチ、慢性蕁麻疹、またはシェーグレン病である。
【0148】
いくつかの実施態様では、疾患を治療する方法は、細胞オートファジーおよび/または リソソームを標的とすることを含む。オートファジーを標的にすると、オートファジー阻害またはオートファジー活性化が起こる可能性がある。リソソームを標的にすると、リソソーム破壊、リソソーム機能不全、またはその両方が起こる可能性がある。
【0149】
いくつかの実施態様では、治療法は、リソソーム破壊、リソソーム機能不全、および/またはオートファジー阻害を標的とする。いくつかの実施態様では、治療法は、リソソームを標的とする。
【0150】
いくつかの実施態様では、ナノ担体は、リソソーム破壊、リソソーム機能不全、および/またはオートファジー阻害を標的とする。いくつかの実施態様では、ナノ担体はリソソームを標的とする。
VII.イメージングの方法
【0151】
いくつかの実施態様では、本発明により、イメージングの方法として、画像を取得する対象に有効量の本発明のナノ担体を投与することを含む方法が提供される。
【0152】
本発明で有用なイメージング剤として、当業者に知られている任意のイメージング剤が可能である。イメージング剤の非限定的な例に含まれるのは、常磁性剤、光学的プローブ、および放射性核種である。常磁性剤は、外部から印加された場のもとで磁性であるイメージング剤である。常磁性剤の非限定的な例に含まれるのは、ナノ粒子を含む鉄粒子である。光学的プローブは、1つの波長の放射線で刺激し、異なる第2の波長の放射線で検出することによって検出が可能な蛍光化合物である。本発明で有用な光学的プローブの非限定的な例に含まれるのは、Cy5.5、Alexa 680、Cy5、DiD(過塩素酸1,1'-ジオクタデシル-3,3,3',3'-テトラメチルインドジカルボシアニン)、およびDiR(ヨウ化1,1'-ジオクタデシル-3,3,3',3'-テトラメチルインドジカルボシアニン)である。他の光学的プローブに含まれるのは量子ドットである。放射性核種は、放射性崩壊する元素である。本発明で有用な放射性核種の非限定的な例に含まれるのは、3H、11C、13N、18F、19F、60Co、64Cu、67Cu、68Ga、82Rb、90Sr、90Y、99Tc、99mTc、111In、123I、124I、125I、129I、131I、137Cs、177Lu、186Re、188Re、211At、Rn、Ra、Th、U、Pu、および241Amである。
【0153】
本発明で有用なイメージング法の非限定的な例に含まれるのは、蛍光顕微鏡法、陽電子放出断層撮影(PET)、磁気共鳴イメージング(MRI)、超音波、単一フォトン放出コンピュータ断層撮影(SPECT)、X線コンピュータ断層撮影(CT)、心エコー検査、および機能的近赤外分光法である。
VIII.実施例
実施例1:化合物
【0154】
材料と装置。化学物質(ジエチレントリアミン、ドデシルアルデヒド、脂肪アルコール、ジクロム酸ピリジニウム、シアノホウ水素化ナトリウム、水酸化アンモニウム溶液、重水素化溶媒、無水溶媒、およびZ-Arg-Arg-AMCなど)はMillipore-Sigma(ミズーリ州、アメリカ合衆国)から購入した。4,7-ジクロロキノリン、無水硫酸塩、およびバルクの溶媒はFisher Scientific(マサチューセッツ州、アメリカ合衆国)から購入した。すべての溶媒をさらに精製せずに直接使用した。すべての実験で用いられる水はMill-Q濾過システムで純化した。他の試薬または薬は以下に示されているように購入した:トリデカナール(Alfa Aesar)、HCQ(Specturm)、Lys05(MedchemExpress)、ボルテゾミブ(eNovation chemical)、過塩素酸DiDとβ-ラパコン(Tocris Bioscience)、JQ1とナパブカシン(ApExBIO)、ラパマイシン、パクリタキセル、およびビンブラスチン(LC Laboratory)、CN38(Acros Organics)、エトポシド(AdipoGen)、レナリドミド(Matrix Scientific)、ナパブカシン(ApExBIO)、およびアポプトゾール(Selleck)。リソソーム濃縮キット、LysoTracker(Red & Green)、アクリジンオレンジ、Dextran-Alexa Fluor 488、Premo(商標)オートファジーセンサーLC3B-GFPはThermo Fisher(MA、アメリカ合衆国)から購入した。SensoLyte(登録商標)均一AMCカスパーゼ-3/7アッセイキットとFITC-アネキシンV/PIアポトーシスキットはそれぞれAnaSpec(カリフォルニア州、アメリカ合衆国)とBiolegend(カリフォルニア州、アメリカ合衆国)から購入した。化合物は、NMRスペクトルを求めるための600 MHz NMR分光器(Bruker、ドイツ国)と、ESI-HRMSスペクトルを求めるためのLTQ-Orbitrap XLハイブリッドイオントラップ質量分析器(Thermo Fisher、マサチューセッツ州、アメリカ合衆国)によって特徴づけた。細胞イメージング研究は、蛍光顕微鏡(Olympus、東京、日本国)またはLSM800共焦点顕微鏡(Carl Zeiss、オーバーコッヒェン、ドイツ国)によって実施した。吸光度と蛍光強度はSpectraMax M2マイクロプレートリーダー(Molecular Devices、カリフォルニア州、アメリカ合衆国)で求めた。ウエスタンブロットはPower Pac 200電気泳動装置(Bio-Rad、カリフォルニア州、アメリカ合衆国)によって現像した。WBイメージング、生体内と生体外の蛍光イメージングを含む研究はChemiDocTM MPイメージングシステム(Bio-Rad、カリフォルニア州、アメリカ合衆国)で実施した。DLS実験はZetasizer Nano ZS(Malvern Instruments、ウースターシャー、連合王国)で実施した。TEMは、加速電圧80 kVのTalos L120C TEM(FEI、オレゴン州、アメリカ合衆国)で実施した。アポトーシスアッセイはBD FACSCanto IIフローサイトメータ(BD Biosciences、ニュージャージー州、アメリカ合衆国)を用いて実施した。がん幹細胞の単離はBD FACSAria IIセルソータ(BD Biosciences、ニュージャージー州、アメリカ合衆国)によって実施した。3D培養のためのマトリゲル(Cat# 354230)と異種移植モデル確立(Cat# 354234)は両方ともCorning(ニューヨーク州、アメリカ合衆国)から購入した。LC3B抗体(1:1000、カタログ#2775)、SQSTM1/p62抗体(1:1000、カタログ#39749)、およびβ-アクチン抗体(1:1000、カタログ:#4970)はCell Signalingから購入し、Pacific Blue抗-CD44 抗体(染色体積100 μLの中に細胞100万個当たり5 μL、カタログ:#338823);APC抗-CD326(EpCAM)抗体(染色体積100 μLの中に細胞100万個当たり5 μL、カタログ:#324207);PE/Cy7抗-CD24抗体(染色体積100 μLの中に細胞100万個当たり5 μL、カタログ:#311119)はBiolegendから取得した。
【化16】
【0155】
O-メチル-セリン-ドデシルアミドヒドロクロリド(MSDH)の合成。MSDHを公開されている文献(Bioorg. Med. Chem. Lett. 1995, 5, 893-898)に従って合成した。1H NMR (600 MHz, CDCl3): δ 7.40 (s, 1 H)、3.63 (m, 1 H)、3.58 (m, 2 H)、3.70 (s, 3 H)、3.26 (m, 2 H)、1.74 (s, 2 H)、1.51 (m, 2 H)、1.29 (m, 18 H)、0.89 (t, 3 H, J=7.2 Hz)。ESI-HRMS:C16H35N2O2 +に関するm/z [M+H]+の計算値287.2693、実測値287.2690。
【化17】
【0156】
BAQの合成。10 mLのフラスコの中で4,7-ジクロロキノリン(1.2 g、6.00 mmol)を攪拌せずに80℃に2時間維持した後、ジエチレントリアミン(0.22 mL、2.00 mmol)を添加した。この反応溶液を130℃で6時間攪拌した。残留物を30 mLのメタノールを用いて採取すると、BAQ化合物として白色の固体が得られた。収量、収率:470 mg、55%。1H NMR (600 MHz, DMSO-d6): δ 8.38 (d, 2 H, J=6.0 Hz)、8.23 (d, 2 H, J=10.8 Hz)、7.78 (d, 2 H, J=1.8 Hz)、7.42 (dd, 2 H, J1=10.8 Hz, J2=2.4 Hz)、7.25 (s, 1 H)、6.51 (d, 2 H, J=6.6 Hz)、3.40 (t, 4 H, J=7.2 Hz)、2.94 (t, 4 H, J=7.8 Hz)。ESI-HRMS:C22H22Cl2N5 +に関するm/z [M+H]+の計算値426.1247、実測値426.1243。
【0157】
BAQ12~18の一般的な合成法。BAQ(426 mg、1.0 mmol)を30 mLの無水メタノールと10 mLの無水ジクロロメタンに溶かした溶液に、対応するアルデヒド(2 mmol)と酢酸(20 μL)を添加した後、室温で20分間攪拌し、次いでシアノホウ水素化ナトリウム(126 mg、2 mmol)を添加した。この混合物を12時間攪拌し、クロロホルム(100 mL)で希釈した。有機相を回収し、水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで一晩乾燥させた。粗生成物を、0.1%のトリエチルアミン(ジクロロメタン:メタノール=30:1~10:1)を含有する溶離液を用いたシリカゲルクロマトグラフィによって精製すると、対応する化合物が得られた。
【化18】
【0158】
BAQ12。収量、収率:320 mg、53.8%。1H NMR (600 MHz, CD3OD): δ 8.27 (d, 2 H, J=5.4 Hz)、7.67 (d, 2 H, J=2.4 Hz)、7.55 (d, 2 H, J=9.0 Hz)、6.95 (dd, 2 H, J1=9.0 Hz, J2=1.8 Hz)、6.46 (d, 2 H, J=5.4 Hz)、3.41 (t, 4 H, J=6.0 Hz)、2.90 (t, 4 H, J=6.0 Hz)、2.66 (t, 2 H, J=6.6 Hz)、1.55 (m, 2 H)、1.33 (m, 20 H)、0.91 (t, 3 H, J=7.2 Hz)。13C NMR (150 MHz, CD3OD): δ 150.9、150.8、147.9、134.8、126.3、124.4、121.9、117.0、98.4、54.1、51.9、40.3、31.6、29.5、29.5、29.4、29.4、29.1、27.4、27.3、22.4、13.1。ESI-HRMS: C34H46Cl2N5 +に関するm/z [M+H]+の計算値594.3125、実測値594.3134。
【0159】
BAQ13。収量、収率:350 mg、57.5%。1H NMR (600 MHz, CD3OD): δ 8.27 (d, 2 H, J=5.4 Hz)、7.67 (d, 2 H, J=1.8 Hz)、7.56 (d, 2 H, J=9.0 Hz)、6.96 (dd, 2 H, J1=9.0 Hz, J2=2.4 Hz)、6.46 (d, 2 H, J=5.4 Hz)、3.42 (t, 4 H, J=6.0 Hz)、2.90 (t, 4 H, J=6.0 Hz)、2.66 (t, 2 H, J=7.2 Hz)、1.56 (m, 2 H)、1.32 (m, 23 H)、0.92 (t, 3 H, J=7.2 Hz)。13CNMR (150 MHz, CD3OD): δ 151.0、150.7、147.8、134.8、126.1、124.5、121.9、117.0、98.4、54.6、51.9、40.3、31.7、29.5、29.5、29.5、29.4、29.1、27.4、27.3、22.3、13.1。ESI-HRMS:C35H48Cl2N5 +に関するm/z [M+H]+の計算値608.3281、実測値608.3274。
【0160】
BAQ14。収量、収率:295 mg、47.4%。1H NMR (600 MHz, CD3OD): δ 8.56 (d, 2 H, J=9.0 Hz)、8.48 (d, 2 H, J=4.8 Hz)、7.86 (d, 2 H, J=1.2 Hz)、7.60 (dd, 2 H, J1=9.0 Hz, J2=1.2 Hz)、7.06 (d, 2 H, J=5.4 Hz)、4.16 (s, 4 H)、3.82 (s, 4 H)、3.48 (s, 2 H)、1.92 (s, 2 H)、1.44 (s, 2 H)、1.35 (m, 23 H)、0.93 (t, 3 H, J=6.6 Hz)。13C NMR (150 MHz, CD3OD): δ 155.9、143.0、139.8、138.2、127.4、125.3、118.7、115.5、98.9、54.6、51.1、38.3、31.5、29.2、29.2、29.2、29.2、29.1、29.0、28.9、28.7、26.1、23.0、22.2、12.9。ESI-HRMS:C36H50Cl2N5 +に関するm/z [M+H]+の計算値622.3438、実測値622.3505。
【0161】
BAQ15。収量、収率:290 mg、45.5%。1H NMR (600 MHz, CD3OD): δ 8.56 (d, 2 H, J=9.0 Hz)、8.48 (d, 2 H, J=6.0 Hz)、7.86 (d, 2 H, J=1.2 Hz)、7.59 (dd, 2 H, J1=9.0 Hz, J2=1.2 Hz)、7.07 (d, 2 H, J=6.0 Hz)、4.16 (s, 4 H)、3.82 (s, 4 H)、3.48 (s, 2 H)、1.92 (s, 2 H)、1.44 (s, 2 H)、1.35 (m, 25 H)、0.93 (t, 3 H, J=6.6 Hz)。13C NMR (150 MHz, CD3OD): δ 155.8、143.0、139.7、138.1、127.3、125.3、118.7、115.4、98.9、54.5、51.0、38.2、31.5、29.2、29.2、29.2、29.1、29.0、28.9、28.7、26.1、23.0、22.2、12.9。ESI-HRMS:C37H52Cl2N5 +に関するm/z [M+H]+の計算値636.3594、実測値636.3661。
【0162】
BAQ16。収量、収率:280 mg、43.0%。1H NMR (600 MHz, CD3OD): δ 8.56 (d, 2 H, J=9.0 Hz)、8.48 (d, 2 H, J=6.6 Hz)、7.86 (d, 2 H, J=1.8 Hz)、7.59 (dd, 2 H, J1=9.0 Hz, J2=1.8 Hz)、7.07 (d, 2 H, J=7.2 Hz)、4.17 (m, 4 H)、3.84 (m, 4 H)、3.50 (t, 2 H, J=7.8 Hz)、1.92 (m, 2 H)、1.44 (m, 2 H)、1.30 (m, 27 H)、0.93 (t, 3 H, J=7.2 Hz)。13C NMR (150 MHz, CD3OD): δ 155.9、143.0、139.7、138.1、127.3、125.2、118.7、115.4、98.8、54.5、51.0、38.2、31.5、29.2、29.2、29.2、29.1、28.9、28.9、28.7、26.1、23.0、22.1、12.9。ESI-HRMS:C38H54Cl2N5 +に関するm/z [M+H]+の計算値650.3751、実測値650.3774。
【0163】
BAQ18。収量、収率:290 mg、42.7%。1H NMR (600 MHz, CD3OD): δ 8.56 (d, 2 H, J=9.0 Hz)、8.48 (d, 2 H, J=5.4 Hz)、7.86 (s, 2 H, J=1.8 Hz)、7.56 (d, 2 H, J1=8.4 Hz)、7.06 (d, 2 H, J=6.6 Hz)、4.16 (s, 4 H)、3.82 (m, 4 H)、3.48 (s, 2 H)、1.91 (s, 2 H)、1.43 (m, 2 H)、1.30 (m, 29 H)、0.93 (s, 3 H)。13C NMR (150 MHz, CD3OD): δ 155.9、143.0、139.8、138.2、127.4、125.2、118.7、115.5、98.8、54.5、51.1、38.2、31.5、29.2、29.1、28.9、28.9、28.7、26.1、23.0、22.2、12.9。ESI-HRMS:C38H54Cl2N5 +に関するm/z [M+H]+の計算値650.3751、実測値650.3774。ESI-HRMS:C40H56Cl2N5 +に関するm/z [M+H]+の計算値678.4064、実測値678.4069。
【化19】
【0164】
化合物1の合成。4,4-ジエトキシブチルアミン(1.84 mL、10.7 mmol、1.00当量)をTHF(30 mL)に溶かした溶液にエチレンN-カルボエトキシフタルイミド(2.34 g、10.7 mmol、1.00当量)とトリエチルアミン(1.49 mL、10.7mmol、1.00当量)を添加した。得られた反応混合物を室温で12時間攪拌した。溶媒を減圧下で除去した後、得られた粗材料を、1:20のEtOAc:ヘキサンを用いて溶離させてシリカカラムで精製すると、透明な油が得られた。(2.9 g、94.0 mmol、収率93%)。1H NMR (600 MHz, DMSO-d6) δ 7.87-7.83 (m, 4H)、4.47 (t, J = 5.4 Hz, 1H)、3.58-3.51 (m, 4H)、3.43-3.38 (m, 2H)、1.61-1.60 (m, 2H)、1.54-1.51 (m, 2H)。ESI-HRMS m/z 314.1361 [M+Na]+
【化20】
【0165】
化合物2の合成。化合物1(2.2 g、7.6 mmol、1.00当量)をアセトン(20 mL)と1 Mの水性HCl(15.2 mL、15.2 mmol、2.00当量)に溶かした溶液を還流(80℃)させて1時間にわたって激しく攪拌した。アセトンを減圧下で蒸発させ、得られた水層をEt2Oで3回抽出した。1つにまとめた有機層を水で1回洗浄し、無水硫酸ナトリウム上で乾燥させ、濾過し、減圧下で蒸発させ、1:2のEtOAc:ヘキサンを用いて溶離させるカラムクロマトグラフィによって精製すると、ワックス状の白色の固体が得られた。(1.2 g、収率74%)。1H NMR (600 MHz, DMSO-d6) δ 9.64 (t, J = 1.2 Hz, 1H, NH2)、7.88-7.83 (m, 4H)、3.61 (t, J = 7.2 Hz, 2H)、2.54-2.51 (m, 2H)、1.85-1.83 (m, 2H)。
【化21】
【0166】
BAQ4qの合成。BAQ(426.5 mg、1.0 mmol、1.00当量)をメタノール(40 mL)に溶かした溶液に、化合物2(434 mg、2 mmol、2.0当量)と酢酸(10 μL)を添加し、室温で30分間攪拌した。シアノホウ水素化ナトリウム(126 mg、2 mmol、2当量)をゆっくりと添加して24時間攪拌した。この反応溶液をジクロロメタン(150 mL)で希釈した後、飽和炭酸ナトリウム、水、およびブラインで洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させた。濾過と減圧下での濃縮の後、この混合物を、20:1のジクロロメタン:メタノールを用いて溶離させるシリカクロマトグラフによって精製すると、白色の固体が得られた。(520 mg、収率83%)。1H NMR (600 MHz, DMSO-d6) δ 8.27 (d, J = 5.4 Hz, 2H)、7.97 (d, J = 9.0 Hz, 2H)、7.78 (s, 4H)、7.67 (d, J = 2.4 Hz, 2H)、7.19 (dd, J1 = 9.0 Hz, J2 = 2.4 Hz, 2H)、7.09 (m, 2H)、6.39 (d, J = 6.0 Hz, 2H)、3.51 (t, J = 7.2 Hz, 2H)、3.31 (t, J = 6.0 Hz, 4H)、2.77 (t, J = 6.6 Hz, 4H)、2.58 (t, J = 6.6 Hz, 2H)、1.60-1.55 (m, 2H)、1.45-1.40 (m, 2H)。ESI-HRMS 627.2035 [M+H]+
【化22】
【0167】
BAQ4aの合成。BAQ4q(314 mg、0.5 mmol、1.0当量)をエタノールに溶かし、ヒドラジン(2.5 mmol、5.0当量)を添加した後、この反応溶液を還流させて12時間攪拌した。その後この反応混合物を放置して室温にした。沈殿物を濾過によって除去した後、濾液を濃縮し、次いでエーテル(100 mL)に添加すると白色の沈殿物が生成し、それを化合物5として回収した。(200 mg、収率80%)。1H NMR 8.30 (d, J = 5.4 Hz, 2H)、8.03 (d, J = 9.6 Hz, 2H)、7.78 (s, 4H)、7.71 (d, J = 2.4 Hz, 2H)、7.27 (dd, J1 = 9.0 Hz, J2 = 2.4 Hz, 2H)、7.05 (t, J =5.4 Hz, 2H)、6.40 (d, J = 5.4 Hz, 2H)、3.31 (t, J = 6.6 Hz, 2H)、3.31 (t, J = 6.0 Hz, 4H)、2.78 (t, J = 7.2 Hz, 4H)、2.54 (t, J = 7.2 Hz, 2H)、2.42 (t, J = 7.2 Hz, 2H)、1.41-1.38 (m, 2H)、1.29-1.26 (m, 2H)。。ESI-HRMS 497.1981 [M+H]+
【化23】
【0168】
PBCの合成。フェオホルビドa(296 mg、0.5 mmol、1.0当量)、6-クロロ-1-ヒドロキシベンゾトリアゾール(102 mg、0.6 mmol、1.2当量)、1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド(93 mg、0.6mmol、1.2当量)、およびN,N-ジイソプロピルエチレンアミン(174 μL、1.0 mmol、2当量)を無水ジクロロメタン(75 mL)に懸濁させ、室温で30分間攪拌した。化合物5(314 mg、0.5 mmol、1.0当量)をこの反応混合物に添加した後、48時間攪拌した。この混合物を、20:1のジクロロメタン:メタノールを用いて溶離させるシリカクロマトグラフによって精製すると、黒色の固体が得られた。(200 mg、収率37%)。1H NMR (600 MHz, CD3OD) δ 8.94 (s, 1H)、8.78 (s, 1H)、8.58 (s, 1H)、7.86 (dd, J1 = 6.0 Hz, J2 = 3.6 Hz, 2H)、7.86 (dd, J1 = 6.0 Hz, J2 = 3.6 Hz, 2H)、7.81 (dd, J1 = 18.0 Hz, J2 = 11.4 Hz, 2H)、7.63 (m, 1H)、7.54 (d, J = 6.0 Hz, 2H)、7.18 (dd, J1 = 9.0 Hz, J2 = 2.4 Hz, 1H)、6.88 (m, 2H)、6.55 (d, J=8.4Hz, 2H)、6.22 (dd, J1 = 8.4 Hz, J2 = 1.8 Hz, 2H)、6.17 (d, J = 18.0 Hz, 1H)、6.10 (d, J = 11.4 Hz, 1H)、5.55 (d, J = 18.0 Hz, 1H)、4.52-4.51 (m, 1H)、4.15-4.14 (m, 1H)、3.88 (s, 3H)、3.72-3.67 (m, 2H)、3.30 (s, 3H)、3.2 (q, J2 = 7.2 Hz, 4H,トリエチルアミン), 2.89 (m, 1H)、2.80 (s, 3H)、2.75 (m, 1H)、2.63-2.61 (m, 2H)、2.56-2.53 (m, 1H)、2.50-2.43 (m, 4H)、2.3-2.16 (m, 8H)、1.94 (s, 1H)、1.82 (d, J = 7.2Hz, 3H)、1.47 (t, J = 7.8Hz, 3H)、1.35 (m, 10H+6Hトリエチルアミン), 1.11 (m, 4H)。ESI-HRMS 1071.4576 [M+H]+
【化24】
【0169】
CABの合成。コール酸(204 mg、0.5 mmol、1.0当量)、6-クロロ-1-ヒドロキシベンゾトリアゾール(102 mg、0.6 mmol、1.2当量)、1-エチレン-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド(93 mg、0.6mmol、1.2当量)、およびN,N-ジイソプロピルエチルアミン(174 μL、1.0 mmol、2当量)を無水ジクロロメタン(75 mL)に懸濁させ、室温で30分間攪拌した。BAQ4a(314 mg、0.5 mmol、1.0当量)をこの反応混合物に添加した後、48時間攪拌した。この混合物を、20:1のジクロロメタン:メタノールを用いて溶離させるシリカクロマトグラフによって精製すると、黒色の固体が得られた。(220 mg、収率49.5%)。ESI-HRMS 887.4774 [M+H]+
【化25】
【0170】
BAQ5hの合成。BAQ(426.5 mg、1.0 mmol、1.00当量)をメタノール(40 mL)に溶かした溶液に、グルタル酸ジアルデヒド(211 μL、2.0 mmol、2.00当量)と酢酸(10 μL)を添加し、室温で30分間攪拌した。シアノホウ水素化ナトリウム(126 mg、2 mmol、2当量)をゆっくりと添加し、24時間攪拌した。この反応溶液をジクロロメタン(150 mL)で希釈した後、飽和炭酸ナトリウム、水、およびブラインで洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させた。濾過と減圧下での濃縮の後、この混合物を、20:1のジクロロメタン:メタノールを用いて溶離させるシリカクロマトグラフによって精製すると、白色の固体が得られた。(520 mg、収率83%)。1H NMR (600 MHz, CD3OD) δ 8.23 (d, J = 5.4 Hz, 2H)、7.60-7.56 (m, 4H)、7.02 (dd, J1 = 9.0 Hz, J2 = 1.8 Hz, 2H)、6.44 (t, J = 5.4 Hz, 2H)、3.58 (t, J = 6.6 Hz, 2H)、3.42 (t, J = 5.4 Hz, 4H)、2.91 (t, J = 6.0 Hz, 4H)、2.75-2.72 (m, 2H)、1.66-1.57 (m, 4H)、1.51-1.47 (m, 2H)。ESI-HRMS 512.1961 [M+H]+
【化26】
【0171】
DCQOの合成。4,7-ジクロロキノリン(DCQ)(2 g、10 mmol)を50 mLの中に溶かし、氷-水浴の上で15分間にわたって激しく攪拌した(500 rmp)。mCPBA(2.7 g、12 mmol)をその反応溶液に浴の中で注意深く添加した(4回)。得られた反応混合物を室温で12時間攪拌した(500 rpm)。TLCは、出発材料が完全に変換されて1つの大きなスポットになったことを示した。この反応溶液にジクロロメタン(100 mL)と炭酸カリウム(4.1 g、30 mmol)を添加し、室温で1時間攪拌した(300 rpm)。この混合物を200 mLの水とともに500 mLのビーカーの中に注ぎ、さらに1時間攪拌した(300 rpm)。(有機相を回収し、飽和炭酸ナトリウム(75 mL×3)、水(75 mL×3)、ブライン(75 mL×3)のそれぞれで洗浄し、無水硫酸ナトリウムを用いて一晩乾燥させた。濾過後、溶媒を減圧下で蒸発させ、得られた粗材料を80 mLのアセトニトリルで再結晶させた。得られた固体生成物を濾過して回収した後、真空下で乾燥させると、1.8 gのDCQOが白色の固体として得られた。1HNMR (600 MHz, CDCl3) δ 8.79 (d, J=1.8 Hz, 2 H)、8.44 (d, J=6.6 Hz, 2 H)、8.44 (d, J=8.4 Hz, 2 H)、7.71 (d, J1=9.0 Hz, J2=2.4 Hz, 2 H)、7.38 (d, J=6.0 Hz, 2 H)。HRMS (ESI):C9H6Cl2NO [M+H]+に関するm/zの計算値213.9821、実測値213.9834。
【化27】
【0172】
BAQOの合成。DCQO(2.14 g、10 mmol)を30 mLの無水エタノールに溶かした溶液に、炭酸水素ナトリウム(840 mg、10 mmol)とジエチレントリアミン(432 μL、4 mmol)を添加した。この混合物を95℃で48時間還流させた。標的材料材料の生成を示すのにTLCを利用した(TM、黄色のスポット)。エタノールを減圧下で蒸発させ、残留物を30 mLのメタノールによって再懸濁させ、それを100 mLの塩酸(1 M)と50 mLのジクロロメタンの混合溶液とともに300 mLのビーカーの中にゆっくりと滴下した。水相を回収し、ジクロロメタン(50 mL×2)で洗浄し、10 MのNaOH(12 mL)を用いてアルカリ化してpHを10にすると、黄色の沈殿物が生成した。この沈殿物を回収し、水(30 mL×3)で洗浄し、真空下で乾燥させると、850 mgのBAQOが黄色の固体として得られた。1HNMR (600 MHz, CD3OD) δ 8.51 (d, J=1.8 Hz, 2H)、8.35 (d, J=7.2 Hz, 2H)、8.14 (d, J=9.0 Hz, 2H)、7.55 (d, J1=9.0 Hz, J2=2.4 Hz, 2H)、6.63 (d, J=7.2 Hz, 2H)、3.58 (t, J=6.0 Hz, 4H)、2.94 (t, J=6.0 Hz, 4H). HRMS (ESI):C22H22Cl2N5O2 [M+H]+に関するm/zの計算値458.1145、実測値458.1126。
【化28】
【0173】
BAQ12Oの合成。BAQO(916 mg、2 mmol)、ドデシルアルデヒド(1.8 mL、8 mmol)、および酢酸(20 μL)の混合物を室温で30分間にわたって激しく攪拌した(500 rpm)。その後シアノホウ水素化ナトリウム(377 mg、6 mmol)をゆっくりと添加した。この反応混合物を室温でさらに12時間攪拌した。TLCは、出発材料が完全に変換されて1つの大きなスポットになることを示した。溶媒を濃縮して25 mLにした後、得られた残留物を75 mlのジクロロメタンで希釈した)。有機相を100 mLの飽和炭酸水素ナトリウムで3回洗浄した。エマルション層を回収した後に濾過すると、黄色の固体が得られ、それを水(30 mL×3)とエチレンエーテル(30 mL×3)で洗浄した。回収した黄色の固体を真空下で乾燥させると、1.2 gのBAQ12Oが得られた。1HNMR (CD3OD, 600MHz) δ 8.43 (d, J=1.8 Hz, 2H)、8.31 (d, J=7.2 Hz, 2H)、7.82 (d, J=9.0 Hz, 2H)、7.31 (d, J1=9.0 Hz, J2=2.4 Hz, 2H)、6.56 (d, J=7.2 Hz, 2H)、3.50 (t, J=6.0 Hz, 4H)、2.94 (t, J=6.0 Hz, 4H)、2.71 (t, J=7.2 Hz, 2H)、1.55 (m, 2H)、1.32 (m, 18H)、0.92 (t, J1=6.6 Hz, 3H)。CNMR (CD3OD, 150MHz) δ 148.0、140.1、139.9、138.4、127.6、123.9、118.7、117.9、98.09、54.9、52.3、41.5、32.4、30.2、30.1、30.1、29.8、28.1、27.7、23.1、13.8。HRMS (ESI):C34H46Cl2N5O2 [M+H]+に関するm/zの計算値626.3023、実測値626.3060。
【化29】
【0174】
BAQ1Oの合成。この化合物をBAQ12Oの方法を利用して調製した。ホルムアルデヒドを出発材料として使用した。ESI-HRMS 472.1325 [M+H]+
【化30】
【0175】
BAQAOの合成。BAQO(229mg、0.5 mmol)を含む5 mLの無水酢酸を6時間還流させた。過剰な無水酢酸を減圧下で除去した。残留物を冷たいジエチレンエーテルで取り上げると黄色の固体が生成物として得られた(180 mg)。ESI-HRMS 500.1246 [M+H]+
【化31】
【0176】
BAQ5hOの合成。この化合物をBAQ5hの方法を利用して調製した。BAQOを出発材料として使用した。ESI-HRMS 544.1870 [M+H]+
【化32】
【0177】
BAQ4qOの合成。この化合物をBAQ4qの方法を利用して調製した。BAQOを出発材料として使用した。ESI-HRMS 659.1946 [M+H]+
【化33】
【0178】
BAQ4aOの合成。この化合物をBAQ4aの方法を利用して調製した。BAQ4qOを出発材料として使用した。ESI-HRMS 529.1884 [M+H]+
【化34】
【0179】
BAQ13Oの合成。この化合物をBAQ12Oの方法を利用して調製した。トリデカナールを出発材料として使用した。1HNMR (800 MHz, DMSO-d6) δ 9.79 (s, 2 H)、8.91 (d, J=7.2 Hz, 2H)、8.78 (d, J=9.6 Hz, 2 H)、8.16 (d, J=1.6 Hz, 2H)、7.80 (dd, J1=9.6 Hz, J1=1.8 Hz, 2H)、6.97 (d, J=8.0 Hz, 2H)、4.04 (s, 4H)、3.68-3.62 (m, 6 H)、1.70 (s, 2 H)、1.27-1.17 (m, 21H)、0.87 (t, J=7.2 Hz, 3H)。
【0180】
BAQ14Oの合成。この化合物をBAQ12Oの方法を利用して調製した。テトラデカナールを出発材料として使用した。1HNMR (800 MHz, DMSO-d6) δ 9.62 (s, 2 H)、8.88 (d, J=8.0Hz, 2H)、8.70 (d, J=9.6Hz, 2 H)、8.15 (d, J=2.4 Hz, 2H)、7.77 (dd, J1=8.8 Hz, J1=1.6 Hz, 2H)、6.95 (d, J=7.2 Hz, 2H)、4.02 (s, 4H)、3.68-3.62 (m, 6 H)、1.68 (s, 2 H)、1.27-1.15 (m, 23H)、0.86 (t, J=5.4 Hz, 3H)。
【0181】
BAQ15Oの合成。この化合物をBAQ12Oの方法を利用して調製した。ペンタデカナールを出発材料として使用した。1HNMR (800 MHz, DMSO-d6) δ 9.63 (s, 2 H)、8.88 (d, J=8.0 Hz, 2H)、8.70 (d, J=8.8 Hz, 2 H)、8.15 (d, J=2.4 Hz, 2H)、7.77 (dd, J1=8.8 Hz, J1=1.6 Hz, 2H)、6.95 (d, J=8.8 Hz, 2H)、4.01 (s, 4H)、3.68-3.62 (m, 6H)、1.68 (s, 2H)、1.28-1.15 (m, 25H)、0.86 (t, J=5.4 Hz, 3H)。
【0182】
BAQ16OとBAQ18Oの合成。この化合物をBAQ12Oの方法を利用して調製した。ヘキサデカナールをBAQ16Oのためのを出発材料として使用し、オクタデカナールをBAQ18Oのためのを出発材料として使用した。
【0183】
追加のBAQO誘導体は、適切なアルデヒド出発材料とケトン出発材料を用い、BAQ12Oの方法を利用して調製することができる。
実施例2:ナノ担体
【0184】
BAQ ONNの調製と特徴づけ。再沈降法を通じてNPを調製した。BAQ誘導体を含むメタノールを一滴ずつ、MilliQ水に5分間攪拌しながら(体積比、1:10)添加し、ロータリーエバポレーション(40℃、20分間)の後に均一なNPを取得し、その後Zetasizer Nano ZS(Malvern)を用いて特徴づけた。0.5 mMのNPをカーボンスクエアメッシュの上に滴下し、自然乾燥させることによってTEMサンプルを調製した後、それをTalos L120C TEM(FEI)で80 kVの加速電圧にて観察した。ナノ製剤の中の薬の含量を求めるため、調製した薬をロードしたNPを遠心分離フィルタ(ultracel-10 kDa、Millipore)によって切断し、濾液(DMSOで希釈、1:10、体積比)の吸光度を測定して薬の濃度を計算した。
【0185】
潜在的なONNとしてのBAQ誘導体の発見。リソソーム作用性オートファジー阻害剤Lys05の鍵となる構造要素とリソソーム作用性洗浄剤MSDHのハイブリダイゼーションによってBAQ12~BAQ18を設計し、薬理学的融合を実現した(図1)。自己集合原理に基づくと、カチオン性BAQヘッドを持つ長い疎水性テールが含まれることでそのヘッドがナノ粒子(NP)の形成を促進することが予想された。BAQヘッドはpKaの計算値8.4がであるため、この自己集合は周囲のpHに依存するはずであり、NPが中性条件下で形成されて、酸性環境でのプロトン化の後に解離して自由な建築ブロックになる。
【0186】
化合物(BAQ12~BAQ18)を合成し、1H NMR、13C NMR、およびHRMSのスペクトルによって構造を確認した(図7)。Lys05およびMSDHとは異なり、BAQ12~BAQ18は遊離塩基または塩酸塩の形態で水に完全に溶けることはできなかった。しかし親油性カチオンによって水中でナノ沈降を通じた自発的自己集合が可能になり、その結果として均一で不透明なNP溶液になった。BAQ12~BAQ18の集合体NPは同様のナノスケールの特徴(特徴には、そのサイズ(100~140 nm)、多分散指数(PDI)の値が0.1未満であること、および表面の正電荷(約+40 mV)が含まれる)を持っていた(表1と図8A)。その後、pH反応性解離の挙動を粒子のサイズ変化をモニタすることによって評価した(図2A)。すべてのBAQ NPが中性に近い条件下では完全な状態であり、比較的酸性の条件下でだけ解離した。臨界解離pHは、BAQ12~BAQ14では5.5~6.0、BAQ15~BAQ18では5.0~5.5であった。酸性環境でプロトン化すると、BAQ12~BAQ18親油性カチオンは両親媒性分子になり、表面活性を獲得した。次いで溶血試験を利用して化合物のpH反応性生体膜破壊能力を評価した。どのNPもほぼ中性の条件(pHが6.5以上)下では溶血効果を持たなかったが、pHが6.0未満になったとき溶血の誘導が始まった(図2B図8B)。化合物の中でBAQ12 NPとBAQ13 NPが最も強い溶血活性を示し、シミュレーションによるリソソーム条件(pH 4.0~5.5)下で90%までの溶血を誘導した;それとは対照的に、BAQ14 NPは中程度の溶血(70%)を誘導し、BAQ15~BAQ18 NPだけが約50%の溶血を生じさせた。対照群では、従来のリソソーム洗浄剤MSDHはpHに対してほんの弱い溶血応答を示し、洗浄剤なしのLys05は、同じ濃度ではpH範囲全体で観察可能な溶血を誘導しなかった。LMPはアポトーシスのための潜在的な刺激であるため、BAQ12とBAQ13(その洗浄剤はリポソームの中で活性化される可能性がある)は、がん細胞の死を直接誘導するのに有効である可能性がある。さらに、塩酸塩(HCl)を用いて滴定すると、BAQ12 NPとBAQ13 NPは狭いpH範囲内で(ほぼpH 6.0で)pHの明らかなプラトーを示したため、これはこれらの強力なpH緩衝能力を示している(図2C)。それとは対照的に、他のNP(BAQ14~BAQ18)のpH値は比例して低下し、ほんの短いpHプラトーがLys05(pH 7.2)とMSDH(pH 6.2)で観察された。十分な酸性化がリソソームの分解には必要であるため、強力なH+緩衝能力があるBAQ12とBAQ13は、リソソーム機能不全の誘導に関して他の化合物よりも大きな潜在力を示した。したがってBAQ12とBAQ13は腫瘍細胞の増殖を弱める可能性がある。
【表1】
【0187】
BAQ12~BAQ18の治療効果を検証するため、さまざまながん細胞系でMTSアッセイを利用して予備スクリーニングを実施した。これらの誘導体は、処理してから24時間以内に異なるレベルの抗増殖効果を示した。BAQ12とBAQ13は非常に効果的であり、Lys05、HCQ、およびMSDHよりそれぞれ約3倍、約20倍、および約10倍高い効力を示したが、活性は、疎水性テールが炭素14個から18個まで伸びるにつれて安定に低下した(表1と図8C)。この減少は、化合物の洗浄能力とH+緩衝能力が徐々に低下することに起因していた。上記の結果に基づき、BAQ12とBAQ13を、以下の研究でBAQ ONNを構成するための代表として選択した。
【0188】
pH反応性集合と大きな薬搭載能力。BAQ ONNのpH反応性集合の解離相転移をその後透過型電子顕微鏡法(TEM)によって明らかにした。pH 7.4では、NPは強いチンダル効果を示すとともに、直径が約100 nmで二層厚が約5 nmのリポソーム様ナノ構造を示した(図2D)。これらの結果は動的光散乱(DLS)測定と整合していた。それとは対照的に、pH 5.0では溶液はそのチンダル効果を失い、小胞はTEM下で不在であったため、NPがこの条件下で解離したことを実証していた(図2E)。その後、生理学的pH(7.4)とリソソームpH(5.0)でのBAQ ONN放出の挙動を調べた。図2Fに示されているように、BAQ12 NPとBAQ13 NPはpH 5.0で8時間かけてほぼ完全に放出された(約90%)が、中性条件下ではほんの約10%の薬剤が24時間かけて放出された。リソソームが4.0~5.5の範囲のpHを維持することを考慮すると、BAQ ONNはこれらの区画に到達すると解離して遊離した小分子の中に入り、したがって治療効果を及ぼすことになると考えられる。BAQ12 NPとBAQ13 NPの臨界凝集濃度(CAC)を測定すると、それぞれ0.76 μMと0.25 μMであった(図2G)。これらの間で観察された3倍の差は、これらの分子構造の間の差がわずか1メチレン単位であるにもかかわらずBAQ13はBAQ12よりも容易にNPを形成できることを示していた。 2つのNPは、10%血清または0.5 mMのウシ血清アルブミンの存在下でさえ、室温で比較的長期間にわたって粒径が十分な安定性も示した(図9A~9F)。それに加え、BAQ13 NPはそのような長期保管中にBAQ12 NPよりも大きな安定性を示した。これは、両者のCACの違いに起因する可能性が大きい。
【0189】
次の研究は、リポソーム様BAQ ONNが追加の薬剤を包み込めるかどうかであった。BAQ13とさまざまな薬剤をナノ沈降させると、単峰性サイズ分布を持つ均一なNPが自発的に形成された(表2と図9G)。BAQ13 NPは、大きな薬搭載量(50%まで、質量比)のほか、約90%の薬カプセル化効率を示した(表2)。これは、BAQ13 NPが従来のリポソームに基づく薬送達系とポリマーに基づく薬送達系の薬搭載の制約を克服できることを示していた。単一の小分子治療物質からなるこれらの単一NPがこのように強力な薬搭載能力を示すというのは非常に勇気づけられる。
【表2】
【0190】
リソソームの中への蓄積とリソソーム破壊。BAQ ONNのリソソームへの蓄積を検証するため、近赤外蛍光染料である1,1'-ジオクタデシル-3,3,3',3'-テトラメチルインドジ-カルボシアニン(DiD)を標識と追跡のためにロードした。予想通り、Dextran-Alexa Fluor 488(AF488)で染色したMIA PaCa-2細胞の中のリソソーム斑点(緑色)はDiDで標識したNP(赤色)にきっちりと重なった。これは、BAQ ONNが迅速に細胞に取り込まれ、リソソームに蓄積したことを示唆している(図3A図10A)。この蓄積が起こったとき、BAQ ONNはLysoTracker陽性斑点を減らしたが、これは、Lys05およびMSDHと同様にリソソームを脱酸するBAQ ONNの能力を示している(図3B図10B~10C)。
【0191】
BAQ12とBAQ13によるLMPの誘導を、生きている細胞を染料アクリジンオレンジ(AO)で染色することによって調べた。Lys05およびMSDHで処理した細胞と比べると、BAQ12 NPまたはBAQ13 NPで処理した細胞は、赤い斑点の数の減少と、赤色蛍光に対する緑色蛍光の比の増加を示したため、これは、BAQ ONNががん細胞においてリソソーム破壊を誘導する増大した能力を持つことを示唆している。(図3C図10D-10E)。このLMP効果は、リソソームからのDextran-AF488の放出を検出することによってさらに確認された。図3Dに示されているように、BAQ ONNを用いた処理の結果として細胞質全体で散乱した染色パターンになった(リソソームの漏れを示す)一方で、対照細胞における蛍光は点状構造に限定されているように見えた(完全なリソソームを表わす)。BAQ ONNは、そのLMP機能でもって、単離されたリソソームからのカテプシンBの放出(アポトーシスの1つの重要なトリガーである)を誘導することが実証された(図3E)。LMPはMSDHで処理した細胞では観察されなかったため、結果は、BAQ12とBAQ13が次世代のリソソーム作用性洗浄剤を代表することを示唆していた。
【0192】
オートファジー阻害。オートファジーに対するBAQ ONNの効果を調べるため、微小管関連タンパク質1軽鎖3(LC3)とセクエストソーム1(SQSTM1)/p62タンパク質のレベルを測定した。これらはオートファジープロセスの変化をモニタするのにしばしば使用される。オートファジーの間、細胞質ゾル形態のLC3(LC3-I)が脂質改変形態(LC3-II)に変換され、それがその後オートファゴソーム膜にリクルートされる。その間にオートファジー基質SQSTM1/p62タンパク質はオートファゴソームへの選択的な組み込みを通じて分解される。したがってLC3-IIとSQSTM1/p62両方のレベル上昇が、オートファジーの阻害時に観察されるはずであり、その一方でLC3-IIのレベル上昇とSQSTM1/p62のレベル低下が、オートファジーが活性化される場合に観察されるはずである。図3F~3Gに示されているように、処理なしの細胞およびLys05で処理した細胞と比べると、BAQ ONN で処理したMIA PaCa-2細胞は、LC3B-IIタンパク質とSQSTM1/p62タンパク質両方のレベルが濃度に依存して顕著に上昇した。このような増大は、既知のオートファジー阻害剤であるバフィロマイシンA1(BfA1)を用いた処理後にも観察された。これらの知見は、BAQ ONNが細胞オートファジーをLys05よりも効果的に阻害できることを示している。
【0193】
その後、オートファジー阻害効果をLC3B-GFPイメージングを用いて確認した。というのも細胞内の蛍光性LC3-II斑点の形成を利用してオートファゴソームの蓄積を視覚化できるからである。BAQ ONNで処理した細胞は、目立つLC3B-GFP斑点を濃度に依存して生成させた(図3H図10F)。細胞1個当たりのLC3B-GFP斑点を定量すると、BAQ ONNのオートファジー阻害効力がLys05よりも大きいことが明らかになった(図3I)。さらに検証するため、TEMを利用して細胞の微細形態の変化をモニタした。予想通り、Lys05およびMSDHと比べると、BAQ ONNは細胞の中でより大きなオートファジー小胞(AV)またはオートファゴソームの形成を誘導し、そのことでBAQ ONNの改善されたオートファジー阻害効果がさらに確認された(図3J~3K)。合わせて考えると、これらの知見は、BAQ12 NPとBAQ13 NPがオートファジー阻害における親Lys05を凌駕したことを示しており;したがってBAQ ONNはナノ製剤にされたオートファジー阻害剤の生成を表わす。
【0194】
プロトンスポンジ効果とリソソーム機能不全。BAQ12とBAQ13の両方ともカチオン性分子として、プロトンスポンジ効果を持つ材料の1つの重要な特徴である強いH+緩衝能力を持つ(図2C)。上記のTEMの結果は、BAQ ONNがリソソームを顕著に拡大できることを示したため(図3J~3K)、これはBAQ ONNのプロトンスポンジ効果を実証している。これらの効果をさらに調べるため、処理後のMIA PaCa-2細胞のトランスクリプトームの変化をRNAシークエンシング(RNA-seq)を利用して特徴づけた。合計で13234個の遺伝子を調べ、その発現レベルをビヒクル群、Lys05群、およびBAQ13群の間で比較した。火山プロット分析を利用すると、発現が異なる165個の遺伝子(DEG)(倍数変化≧2かつp値≦0.05)が、ビヒクル群と比べてLys05群に見いだされ、その中には62個の上方調節された遺伝子と103個の下方調節された遺伝子が含まれる。比較において、390個のDEGがBAQ13で処理した細胞で見いだされ、その中には209個の上方調節された遺伝子と181個の下方調節された遺伝子が含まれる(図11A)。Kyoto Encyclopedia of Genes and Genomes(KEGG)を用いた遺伝子セットのエンリッチメント分析から、BAQ13 NPがリソソーム関連遺伝子(V-ATPアーゼ、Cl-チャネル、プロテアーゼ、およびリソソーム関連膜タンパク質(LAMP)遺伝子など)のロバストな上方調節を誘導することが明らかになった(図4A~4Cと図11B)。qPCR分析ではV-ATPアーゼとCl-チャネル遺伝子の上方調節も確認されたため、これは、BAQ ONNが強いプロトンスポンジ特性を持つことを顕著に示していた(図4D~4E)。
【0195】
重要なリソソーム酵素遺伝子(カテプシンやNEU1など)の上方調節も、BAQ ONNによって引き起こされるリソソーム機能不全を明確にした(図4B~4C)。リソソームの完全性維持に部分的に責任があると考えられているLAMP遺伝子も上方調節されたため、これはリソソーム破壊におけるBAQ ONNの機能を示している(図11C)。BAQ ONN処理群はアポトーシス促進遺伝子(BAX、BAK1、BAD、BIM、およびPUMA)のトランスクリプトームが高いレベルを示したため、増強されたアポトーシス促進効果を明らかにしている(図11C~11D)。その後、BAQ ONNによって誘導されるリソソーム機能不全をリピドミクス分析を利用して確認した。BAQ13 NPは酸性スフィンゴミエリナーゼ(ASM)前駆体スフィンゴミエリン(SM)の蓄積を誘導し、その生成物であるセラミド(Cer)のレベルの低下につながった(図11E)。それに加え、ホスホリパーゼA(PLA)前駆体(ホスファチジルコリン(PC)、ホスファチジルエタノールアミン(PE)、およびホスファチジルセリン(PI)が含まれる)のレベルが低下し、これらの対応する生成物であるリソホスファチジルコリン(LPC)、リソホスファチジルエタノールアミン(LPE)、およびリソホスファチジルセリン(LPI)のレベルが上昇した(図11F)。
【0196】
本発明のナノ担体には、R1がフェオホルビド-aであってフェオホルビド-aビスアミノキノリン複合体(PBC)を形成する複合体も含めることができる。PBCナノ粒子は、リソソームを標的としていて形態の変更が可能なナノ集合体である。PBCナノ粒子は生理学的条件でリポソーム様形態を持ち、リソソームの中に蓄積した後にナノ繊維へと変形することができた。リソソームの中に形成されたナノ繊維はリソソーム機能不全を引き起こし、がん細胞のアポトーシスを開始させることができる。このナノ粒子は構造中に光増感基を含有するため、本質的にオートファジー関連薬剤耐性を克服できる、リソソームに基づく非常に有効な光線力学治療もサポートする。
実施例3:インビトロでの研究
【0197】
細胞系と細胞培養物。ヒト膵臓がん細胞系(MIA PaCa-2、BXPC3、およびPANC-1)は元々ATCCから購入されたものであり、それがShiro Urayama博士の研究室から好意によって提供された。HT29細胞系、HCT116細胞系、H460細胞系、MCF7細胞系、NIH/3T3細胞系、およびIMR-90細胞系はATCCから購入した。骨髄細胞をFVB/Nマウスの脚の骨髄から回収した。ATCCプロトコルに従い、すべての細胞を、10%ウシ胎仔血清、100 μg mL-1のペニシリン、および100単位mL-1のストレプトマイシンを補足した対応する培地を用い、5%CO2/95%空気の湿潤雰囲気で37℃にて培養した。すべての細胞系が、マイコプラズマ汚染に関して定期的に調べられていた。
【0198】
患者由来の膵臓がん幹細胞(PCSC)の確立。患者の膵臓組織はUC Davis Medical Center のShiro Urayama博士の研究室から寄贈された。患者の同意は、Institutional Review Board(UC Davis IRB Protocol #244896)に従う「Remnant Clinical Biospecimens」を用いて取得した。患者の腫瘍組織をコラゲナーゼIVとディスパーゼ(Stem Cell Technologies、ヴァンクーヴァー、カナダ国)を用いて回収し、70 μmのフィルタを通過させて変形させた。以下の抗体(Biolegend、カリフォルニア州、アメリカ合衆国):抗-CD44(IM7、Cat: #338823)、抗-CD326(9C4、Cat: #324207)、および抗-CD24(ML5、Cat: #311119)で標識することにより、BD FACSAria IIセルソータを用いて細胞を単離した(図16)。精製されたPCSCを回収し、Essential 8 Flex培地(Thermo Fischer)の中に維持し、Gentle Cell Dissociation試薬(Stem Cell Technologies、ヴァンクーヴァー、カナダ国)を用いてトリプシン処理した。腫瘍球形成アッセイにおいて、PCSCの冷たい単一細胞懸濁液を含むEssential 8 Flex培地を冷たいマトリゲル(1:1、体積比)とともに混合した後、それ(100 μL)をゆっくりと均一に24ウエルのプレート(ウエル1つ当たり5,000個の細胞)上のウエルの中心に滴下した。マトリゲルを湿潤なインキュベータの中で37℃にて45~60分間放置して固化させた後、温かい培地(500 μL)を各ウエルに添加した。腫瘍球が2週間で形成された。生体内での腫瘍形成能を知るため、PCSCをカウントし、PBSとマトリゲル(1:1)の混合物の中に再懸濁させた後、NRGマウスの脇腹に皮下注射した。
【0199】
細胞生存率、細胞増殖、およびコロニー形成。細胞生存率をMTSアッセイによって調べた。簡単に述べると、96ウエルのプレートの中の細胞(ウエル1つ当たり4,000個の細胞)を示されているようにして処理した後、MTS試薬とともに4時間インキュベートした。OD値(490 nm)をマイクロプレートリーダーで求めた。結果は、式[(ODtreat-ODblank)/(ODcontrol-ODblank)×100%]から計算される平均細胞生存率として示される。薬組み合わせデータをCombenefit 2.02によって分析した。細胞増殖アッセイにおいて、6ウエルのプレートの中の細胞(ウエル1つ当たり50,000個の細胞)を示されているようにして処理し、手作業で24時間ごとにカウントした。コロニー形成アッセイも6ウエルのプレートでウエル1つ当たり1,000-2,000個の細胞の初期密度にて実施した。示されているようにして10~20日間インキュベートした後、細胞をPBSで洗浄し、クリスタルバイオレットの溶液とメタノールを用いて20分間染色した。
【0200】
アポトーシスとカスパーゼ-3/7活性。細胞のアポトーシスを、FITC-アネキシンV/PIアポトーシスキット(AnaSpec)を用いて測定した。簡単に述べると、処理した細胞を製造者の指示に従って染色し、BD FACSCanto IIフローサイトメータで検出した。データをFlowJo 7.6.1によって分析した。カスパーゼ3/7活性アッセイにおいて、96ウエルのプレートの中の細胞(ウエル1つ当たり10,000個の細胞)を示されているようにして処理した後、AMCカスパーゼ-3/7アッセイキット(ウエル1つ当たり50 μL、AnaSpec)を添加した。蛍光強度(λex=356 nm、λem=442 nm)をマイクロプレートリーダーによって記録した。
【0201】
細胞の取り込みと脱酸。細胞の取り込みを知るため、リソソームをAlexa Fluor 488-デキストラン(10 kDa、100 μg mL-1、Thermo Fisher)で36時間標識した後、DiDをロードした BAQ NP(10 uM、1:10、質量比)とともに2時間インキュベートした。リソソーム脱酸分析において、細胞を2時間処理し、LysoTracker Red(100 nM、Thermo Fisher)とともに1時間インキュベートした。Zeiss共焦点顕微鏡を用いて細胞の画像を取得し、Zen 2.3とImageJ 1.51sによって分析した。
【0202】
リソソームの完全さ。AO(Thermo Fisher)またはAlexa Fluor 488-デキストラン(10 kDa)染色を利用することにより、リソソームの完全さを生きている細胞の中で測定した。AO染色のため、処理された細胞をAO(2 μg mL-1)とともに1時間インキュベートした。デキストラン染色のため、デキストランをロードした細胞を12時間処理した。画像をZeiss共焦点顕微鏡のもとで捕獲し、Zen 2.3とImageJ 1.51sによって分析した。
【0203】
LC3B-GFPイメージング。96ウエルのプレートの中の細胞(ウエル1つ当たり5,000個の細胞)にオートファジーセンサーLC3B-GFP(Thermo Fisher)を12時間トランスフェクトした。示されているようにして4時間処理した後、細胞を蛍光顕微鏡(Olympus)によって視覚化した。ウエル1つ当たりの斑点をImageJ 1.51sを用いて定量化した。
【0204】
リソソームの単離とカテプシンの放出。リソソームを、リソソーム濃縮キット(Thermo Fisher)を製造者のプロトコルに従って用いて単離した。等量の単離されたリソソームを示されているようにして37℃で12時間インキュベートした後、15,000×gで4℃にて30分間遠心分離することによってペレット化して完全なリソソームにした。200 μMの蛍光生カテプシンB基質III(Z-Arg-Arg-AMC)とともに2時間インキュベートした後、上清へのカテプシンBの放出を求めた(Ex=380 mm、Em=460 mm)。
【0205】
溶血。赤血球細胞(2%)を含むPBS(10 mM、pH7.4)をNPとともに37℃で4時間インキュベートした。500×gで5分間遠心分離した後、溶血の程度を分光測色法により上清の中のヘモグロビンの量(540 nm)から明らかにした。溶血アッセイを利用してNPのpH依存性洗浄能力と毒性を評価した。
【0206】
ウエスタンブロット。細胞または腫瘍のサンプルをRIPAバッファ(Thermo Fisher)で溶解させた。4℃での遠心分離(15分間、12,000×g)の後、上清の中のタンパク質の濃度をBradfordタンパク質アッセイ染料(Bio-Rad)によって求めた。イムノブロッティングを定型的に実施し、ChemiDoc(商標)MPイメージングシステムを用いて現像した。
【0207】
細胞と腫瘍組織のTEM。8ウエルのスライドプレートの中のMIA PaCa-2細胞(ウエル1つ当たり30,000個の細胞、Lab-Tek)を示されているようにして48時間処理した。新たに回収した腫瘍を切断して1 mm3の断片にした。サンプルを、2.5%グルタルアルデヒド+2%パラホルムアルデヒドを含有する0.1 Mのカコジル酸塩バッファで固定し、カーボンスクエアメッシュの上に移した後、Talos L120C TEMのもとで観察した。
【0208】
RNA-seq。処理されたMIA PaCa-2細胞(5 μM、24時間)から全RNAをRNeasyミニキット(Qiagen、ドイツ国)によって抽出した。サンプルをUC Davis Comprehensive Cancer Center’s Genomics Shared Resource(GSR)に送ってRNA-Seq分析を実施した。標準的なRNA-Seqライブラリを100 ngの全RNAからNEBNext Ultra Directional RNAライブラリ調製キット(New England BioLabs)を用いて調製した。その後、ライブラリを1つにまとめ、Illumina HiSeq 4000システム(2×150 bp、ペアエンド、サンプル1つ当たり20×106リード超)で多重シークエンシングを実施した。規格化した遺伝子リードカウントのデータを、倍数変化とt検定を利用して分析した。Funrichソフトウエア3.1.3によるシグナル伝達経路エンリッチメントのため、発現が異なる遺伝子(DEG)を回収した。遺伝子セットはMSigDBデータベース(Broad Institute)からのものであった。オンラインのKEGG遺伝子セットカテゴリーの中のGSEAバージョン3.0を用いてGSEAを実施したが、そのとき以下のパラメータ、すなわちn=1,000パーミュテーションを用い、調整済みp<0.05かつFDR<0.05を有意であると見なした。
【0209】
qPCR。TRIZOL試薬(Invitrogen)とフェノール-クロロホルム抽出法を用いて全RNAを単離した。20 μLの反応物の中でSuperScript II逆転写酵素(Invitrogen)を2 μgの全RNAとともに用いてcDNAを合成した。得られたcDNAを無ヌクレアーゼ水の中で1:20に希釈し、qPCR反応1回当たり4 μLを三連で使用した。非鋳型陰性対照を含むCFX96リアル-タイムPCR検出システム(Bio-Rad)でPower SYBR Green PCRマスターミックス(Thermo Fisher)を用いてqPCRを実施した。GAPDHの増幅を利用してmRNA発現のレベルを規格化した。プライマーの配列を表3に掲載した。
【表3】
【0210】
リピドミクス。MIA PaCa-2細胞を化合物(2.5 μM)で48時間処理し、RPLC-QTOF分析のため各群で150万個の細胞を回収してサンプルを定法により調製した。サンプルをVanquish UHPLCシステムで分析した後、Q-Exactive HFハイブリッド四重極Orbitrap質量分析器を用いてデータを取得した。MS-DIAL 3.70を用いてLC-MSデータを処理した。統計的分析は、既知の数値の和を用いてデータを最初に規格化して、またはmTIC規格化して各サンプルをスケーリングすることによって実施した。次いで統計的分析のため規格化されたピーク高に対してR 3.5.1を実施した。ANOVA分析をFDR補正と事後検定で実施した。
【0211】
BAQ 誘導体のインビトロ抗腫瘍活性。インビトロでの抗腫瘍効果を系統的に調べるため、3つの膵臓がん細胞系(MIA PaCa-2、BxPC-3、およびPANC-1)と2つの大腸がん細胞系(HT29とHCT116)を48時間MTSアッセイのために選択した。BAQ ONNは1~3 μMというIC50値を示したため、Lys05、HCQ、およびMSDHよりもそれぞれ約5倍、30倍、および20倍強力であった(図4F図12、および表4)。これらの結果も、単独のBAQ12またはBAQ13を用いた治療がLys05およびMSDHとの併用療法よりも効果的であることを示した。これは、ファーマコフォアが融合したときに顕著な薬力学的相乗効果が起こったことを示唆している。細胞増殖とコロニー形成アッセイの結果は、腫瘍細胞に対するBAQ ONNの阻害効果をさらに実証している(図4G~4H)。BAQ ONNのこの改善された抗がん活性は、がん細胞でLMP、リソソーム機能不全、およびオートファジー阻害を誘導する多機能に帰することができる;これらの効果はアポトーシスの重要なトリガーであると考えられる。BAQ ONNのアポトーシス促進効果を調べるため、MIA PaCa-2細胞とHT29細胞の中のアポトーシスシグナルをその後検出した。BAQ ONNで処理した結果、カスパーゼ3/7活性とアポトーシス両方のレベルが有意に上昇した(図4I~4J)。対照であるLys05は濃度に依存してアポトーシスシグナルが増加したが、IC50に近い高濃度でのその効果は低濃度のBAQ ONNの効果よりもまだ弱かった。これらの結果は、がん細胞が、多機能性BAQ物質で処理されたときには、主な機能がオートファジー阻害であるLys05で処理されたときよりもアポトーシスを受けやすいことを実証している。それに加え、上記の一群のがん細胞系と比較し、非がん性細胞系(IMR-90細胞、NIH/3T3細胞、および骨髄細胞が含まれる)は比較的BAQ ONNに対して非感受性であり、したがってこれら化合物の安全性は比較的高いことを示している(図12と表4)。
【表4】
【0212】
BAQO誘導体のインビトロ抗腫瘍活性。BAQO誘導体のインビトロ抗腫瘍効果を膵臓がん幹細胞(PCSC)で調べた。BAQ12O ONNは5 μM未満のIC50値を示した(図22B)一方で、他のBAQO誘導体は100 μMの濃度まで毒性を示さなかった。これらの結果は、BAQO誘導体が細胞毒性に寄与することなく、治療剤または薬送達剤として用途が広い可能性があることを示している。
実施例4:生体内の研究
【0213】
動物モデル。皮下異種移植モデルを確立するため、5×106個のMIA PaCa-2細胞、2×106個のHT29細胞、または2×104個のPCSCをマトリゲル(Corning)とともに懸濁させ、PBS混合物(1:1、体積比)をそれぞれヌードマウスまたはNRGマウスの右脇腹に皮下注射した。
【0214】
動物への給餌。すべての動物実験をUniversity of California, DavisのInstitutional Animal Care and Use Committeeによって承認されたプロトコル(#20265)に従って実施した。雌マウス(4-6週齢)(BALB/cヌードマウス(Envigo)、NRGマウス(Jackson Laboratory)、およびFVB/Nマウス(Charles River)が含まれる)を購入し、標準的な条件(22±1℃、湿度50~60%、12時間明/12時間暗サイクル、餌と水への自由なアクセス)で集団生活させた。
【0215】
生体内治療のスケジュール。MIA PaCa-2異種移植腫瘍(約100 mm3)を持つNRGマウスをランダムに5つの群(n=6)に分けた後、3日ごとに示されているようにしてiv注射した。HT29異種移植モデルに関し、6つの群の100 mm3の腫瘍を持つヌードマウス(n=6)に、3日ごとに、ビヒクル(生理食塩水、iv)、Lys05(ip)、BAQ12 NP(iv)、BAQ13 NP(iv)、イリノテカン(ip)をそれぞれ投与した。HT29モデルでの治療は24日目に停止し、その後各群のマウスの生存を記録し、1,000 mm3よりも大きな腫瘍を持つマウスを死んだと見なした。同時送達研究のため、PCSC腫瘍を持つNRGマウス(n=5)を、ビヒクル(生理食塩水、iv)、ナパブカシン(iv)、BAQ13 NP(iv)、BAQ13 NP+ナパブカシン(それぞれivとip)、およびBAQ13 NP@ナパブカシン(iv)で3日ごとに治療した。毎回薬を投与する前に腫瘍体積と体重を記録した。治療が終了したときマウスを安楽死させ、腫瘍を回収してさらに分析した。
【0216】
生体内毒性研究。BAQ NPの毒性をiv注射によって雌FVB/Nマウスで調べた。マウスにさまざまな濃度(10 mg kg-1、20 mg kg-1、または40 mg kg-1)のLys05、リポソーム@Lys05、BAQ12 NP、およびBAQ13 NPを2日ごとに投与した。マウスの状態を毎日モニタし、体重を2日ごとに記録した。血液サンプルを回収し、UCD Comparative Pathology Laboratoryに送って全血算(CBC)と血清化学を調べた。
【0217】
生体内薬物動態研究。雌のSprague-Dawleyラット(200~250g)の頸静脈に、薬注射と血液回収のためのカテーテル(Harland、インディアナポリス、インディアナ州、アメリカ合衆国)を埋め込んだ。ラット(n=3)に、同等な用量のDiD(0.5 mg kg-1)を含有する遊離DiD、BAQ12 NP@DiD(10:1、質量比)、およびBAQ13 NP@DiD(10:1、質量比)をそれぞれ注射した。血液サンプルを示された時点に回収した後、遠心分離して血漿を得た。血漿をDMSOで希釈し(1:100)、蛍光強度(λEx=595 nm、λEm=665 nm)をマイクロプレートリーダー(SpectraMax M2)によって測定した。
【0218】
生体内/生体外分布。HT29腫瘍を持つヌードマウスにBAQ13 NP@DiD(10:1、質量比)を1.0 mg kg-1 DiDの用量で投与した。生体内イメージング研究を対応する時点に実施した。生体外イメージングのため臓器(脳、心臓、肺、肝臓、脾臓、腎臓、腸、および筋肉)と腫瘍をマウスから回収した。BAQ13 NP@ NAPA+DiD(10/2.5/1.0 mg kg-1、iv)の生体内分布を、PCSC腫瘍を持つNRGマウスで調べた。生体内と生体外の両方でのイメージング研究を上記のようにして実施した。
【0219】
統計。統計分析をGraphPad Prism 7.0を用いて実施した。データは平均値±SDとして示されており、n=生物学的複製、または独立なナノ粒子サンプル複製である。各図の説明に記されているように、チューキーの多重比較検定または両側スチューデントのt検定を用いた一元配置分散分析を利用してp値を計算した。ns.、有意差なし;*p<0.05;**p<0.01;***p<0.001;****p<0.0001。
【0220】
データの入手可能性。RNA-seqデータはGene Expression Omnibus(GEO)データベースにアクセッションコードGSE154323で寄託されている [https://www.ncbi.nlm.nih.gov/geo/query/acc.cgi?acc=GSE154323]。
【0221】
薬物動態、生体内分布、および毒性。静脈内(iv)注射したときのBAQ ONNの薬物動態をSprague-Dawleyラットで研究した。図5Aと表5に示されているように、BAQ ONNの血清濃度は48時間までの同じ時点で遊離DiDの血清濃度よりも高かったため、これは、BAQ ONNの血漿クリアランスが、BAQ ONNのナノスケールという特徴のためにDiDよりも遅かったことを示している。DiDで標識したBAQ13 NPもHT29腫瘍を有するヌードマウスにおけるNPの生体内分布を調べるのに使用した。予想通り、生体内と生体外の両方のイメージングは、注射後12時間と24時間の時点でBAQ13 NPの蛍光シグナルを周囲の正常な組織よりも腫瘍領域において明確に識別できることを示したため、これはBAQ ONNが腫瘍を標的として生体内分布していることを示している(図5B~5Cと図13A~13B)。標的に向かうこの能力は、腫瘍の血管を透過する能力が比較的高くてナノ治療剤の受動的蓄積が可能になることに起因する可能性がある。遊離DiD(対照)群は腫瘍部位よりも肺で高いシグナルを示した(図13A~13B)。特に、BAQ13 NP群における蛍光の腫瘍/肺比は遊離DiD群におけるよりも約4倍大きかった。これらの結果は、BAQ ONNが腫瘍を標的とする生体内分布をすることを実証した。
【表5】
【0222】
次に、溶血アッセイを実施してBAQ ONNの安全性を評価した。生理学的条件下で、赤血球細胞を、動物治療研究に用いる動作濃度に近い0.25~1 mg mL-1の濃度のLys05、BAQ12 NP、またはBAQ13 NPで処理した(図13C)。対照薬Lys05を用いて処理すると、濃度約0.5 mg mL-1のBAQ12 NPまたはBAQ13 NPを用いた処理よりも溶血率が有意に高くなったため、これはBAQ ONNの安全性がLys05よりも大きいことを示している。FVB/Nマウスでの以下の動物毒性研究において、Lys05処理は、iv投与の後、10 mg kg-1という低濃度でさえマウスの急な死を引き起こすことが見られた;それとは対照的に、BAQ ONN処理の結果は低い死亡率となり、体重喪失がなかったため、BAQ ONNは、注射によって投与されるとき安全であることが明らかになった(図13D~13E)。BAQ ONNは40 mg kg-1ではまったく死に至らず、BAQ13 NPはマウスによってBAQ12 NPよりもよく忍容された。この結果は、BAQ13 NPの高い安定性と低いCACに帰することができる可能性が大きい。リポソームを用いてLys05(リポソーム@Lys05)をカプセル化すると、この製剤はiv注射に関して安全であることが見いだされた(図13E~13F)。オートファジーは腸ホメオスタシスで重要な役割を果たしているため、BAQ12 NPまたはBAQ13 NPの腹腔内(ip)投与はオートファジー阻害効果の増大となり、マウスで腸障害と体重減少を引き起こす可能性がある。組織切片のH&E染色と血液学的指標は、尾の静脈によって20 mg kg-1のBAQ NPで処理したマウスでは明らかに異常な変化を示すことがなかったため、これは、BAQ ONNのiv投与がよく忍容されることをさらに示唆している(図14A~14E)。したがってBAQ ONNは、生体内での利点を研究するには、ip注射ではなくiv注射によって投与すべきである。
【0223】
マウスにおける単剤としての抗腫瘍効果。BAQ ONNの安全性を証明した後、抗がん効果に関してNPをMIA PaCa-2細胞の膵臓異種移植モデルで評価した。MIA PaCa-2腫瘍(約100 mm3)を有するNRGマウスをランダムに5つの群(n=6)、すなわち生理食塩水(iv)群、Lys05(ip)群、リポソーム@Lys05(iv)群、BAQ12 NP(iv)群、およびBAQ13 NP(iv)群に割り当てた。マウスをその後3日ごとに20 mg kg-1の用量で治療した。図5D~5Fの結果は、BAQ12 NPまたはBAQ13 NPを用いた治療が、体重に干渉することなく腫瘍増殖を有意に減速させることを示している。対照薬Lys05はこの条件下では治療効果を示さなかったが、そのナノ製剤であるリポソーム@Lys05は腫瘍阻害の増加を誘導したため、これは薬送達におけるナノ医療の利点を浮き上がらせている。自己集合するBAQ12 NPまたはBAQ13 NPの一成分製剤が遊離Lys05またはナノ製剤化Lys05のどちらよりも有意に効果があったことも強調すべきである。これらの知見は、薬発見と薬送達の両方に関してBAQ ONNの潜在的な利点を明確に示している。
【0224】
BAQ ONNの生体内効果をさらに理解するため、腫瘍組織を組織学的評価のため回収した。劇的な細胞破壊、切断されたカスパーゼ-3のレベル上昇、およびKi67発現の低下が両方のBAQ ONN群で観察されたため、これは、BAQ ONNで処理した腫瘍は死ぬか、アポトーシスまたは休眠になる傾向があることを示唆している(図5G~5H)。LC3発現が両方のBAQ ONN群で増加した(図5H);この知見は、両方のBAQ ONNの生体内オートファジー阻害効果を説明する1つの重要な手がかりである。その後のイムノブロット分析により、腫瘍におけるオートファジーがBAQ ONNによって阻止されることがさらに実証された(図5I)。それに加え、組織超構造がTEMによって観察され、BAQ ONNで処理した腫瘍は、腫瘍の群よりも多数の大きなAVを含有することが見いだされた(図5J)。上記のアッセイでは、Lys05ナノ製剤、リポソーム@Lys05も、ビヒクルまたは遊離Lys05で観察されなかったいくつかの効果を示した。しかしリポソーム@Lys05の効果は、BAQ12 NPまたはBAQ13 NPどちらの効果よりもはるかに弱かった。これらの組織レベルの結果から、生体内でのBAQ ONNの優れたオートファジー阻害効果が明らかになった。
【0225】
生体内BAQ ONNの治療効果が大腸HT29腫瘍を有するマウスからなる別の動物モデルにおいてさらに実証された。ビヒクルまたはLys05の投与と比較し、BAQ ONNの投与は腫瘍増殖を有意に阻害した(図15A~15B)。そしてBAQ13 NPはBAQ12 NPよりも優れた効果を示した。興味深いことに、この結果はインビトロ増幅アッセイで得られた結果(BAQ12 NPがBAQ13 NPよりも効果的であると実証された)と矛盾していた。この相違は、BAQ ONN間の自己集合の挙動と薬物動態プロファイルの違いによって説明できる可能性がある(図2G図5A)。さらに、BAQ13 NPも、FDAに認可されたイリノテカンよりも報告されている治療用量では有効であったのに対し、BAQ12 NPはイリノテカンと同様の効果を示した。生存分析から、BAQ13 NPを用いた治療の結果、ビヒクル群およびイリノテカン群(生存期間の中央値はそれぞれ21または36日間)よりも有意に長い生存時間(生存期間の中央値は48日間)になることが明らかになった(図15Cと表6)。ハイブリッドBAQ ONNは、薬力学的効果と薬物動態プロファイルの両方に関する多数の利点が統合されているため、単剤として生体内がん治療に関して大きな潜在力を示す。
【表6】
【0226】
併用療法におけるBAQ ONNの二重の役割。オートファジー阻害に基づく併用療法は腫瘍を従来の治療剤に対して感受性にできると考えられるが、現在の制約は、オートファジー阻害剤の不十分な効果である。さらに、併用療法で用いられる薬は薬物動態がバラバラで投薬スケジュールが異なるというのは不便である。BAQ ONNは抗がん効力がHCQよりも30倍大きく、追加の薬を包み込む能力が大きいため、BAQ ONNは、薬力学と薬物動態のこれら2つの課題に同時に対処できる可能性がある。この仮説を検証するため、患者由来の膵臓腺癌組織からの膵臓がん幹細胞(PCSC)系を使用し、不均一性が大きくて腫瘍間質の割合が多い異種移植モデルを確立した(図6A~6Bと図16)。インビトロの結果は、BAQ ONNがPCSCにおけるリソソームとオートファジーの阻害に関して似た機能を持ち、したがって強力なアポトーシス促進活性と抗増殖活性を示すことを証明した(図6C~6Eと図17A~17C)。併用療法のため、BAQ13 NPの中に包み込むことのできるSTAT3阻害剤ナパブカシンを、オートファジーを誘導し、BAQ13 NPと相乗作用することができるという理由で選択した(図6F図17D)。マウスをランダムに5つの群(ビヒクル(生理食塩水)群、ナパブカシン群、BAQ13 NP群、混合物(BAQ13 NP+ナパブカシン)群、およびBAQ13 NP@ナパブカシン群が含まれる)に分けた(図6G~6I)。BAQ13 NPは腫瘍増殖を中程度に阻害したのに対し、ナパブカシンそのものはこれらの条件下で抗腫瘍効果を示さなかった。混合物群は生体内で増強された効果を示さなかったが、ナパブカシンとBAQ13 NPのインビトロ相乗作用が観察された。生体内効果のこの欠如は、おそらくナパブカシンの小さな溶解度と不効率な送達に起因していた。ナノ製剤化されたナパブカシンは、BAQ13 NPにロードされると(BAQ13 NP@ナパブカシン)、BAQ13 NPと相乗作用することによって満足のゆく抗腫瘍効果を達成した。腫瘍組織学における顕著な変化もBAQ13 NP@ナパブカシン群で観察され、その群では細胞が低い増殖活性を示した(図6J)。それに加え、治療群のどのマウスも明らかな全身毒性を示さなかった(図6I図17E)。BAQ13 NPがナパブカシンを送達する能力をさらに検証するため、DiDで標識したBAQ13 NP@ナパブカシンを用いて別のイメージング研究をPCSCモデルに関して実施した。結果は、正常な臓器よりも腫瘍部位にNPが明らかに蓄積することを示した(図6K~6Lと図17F)。これらの興味深い結果は、BAQ13 NPが併用療法において治療剤としてだけでなく送達担体としても機能しうることを実証している;したがってBAQ13 NPは、がん治療を改善するのに有望であることを示している。
【0227】
マウスにおけるBAQO誘導体の抗腫瘍効果。BAQO誘導体は、ナノ粒子を形成すること、そして生体内マウス研究のために使用することができる。例えばPCSC腫瘍を持つマウスの治療にBAQ12O NPを使用した。図24Aに示されているように、BAQ10O NPで治療したマウスは腫瘍体積がより小さく、27日目までに腫瘍体積に有意な差があった。図24Bは、BAQ12O NPを用いた治療終了時の腫瘍重量が対照の腫瘍重量よりも50%少なかったことを示す。これらの興味深い結果は、BAQO誘導体が薬発見と薬送達のための有望な薬剤として機能しうることを実証している。
【0228】
ONN戦略と、ファーマコフォアハイブリダイゼーションおよび分子自己集合の原理とに基づき、自己送達新規化学物質であるBAQ ONNを開発した。これらの物質は、薬送達と、腫瘍を標的とする生体内分布に関する改善された特性に加え、リソソーム破壊、リソソーム機能不全、およびオートファジー阻止を誘導する増強された能力を備えていた;したがってこれらの物質は、有意な抗がん効果を示した。驚くべきことに、単独のBAQ13 NPは大きな薬搭載能力を示し、追加の薬と強力に相乗作用するとともに追加の薬を送達できることが見いだされたため、併用療法における用途にとって有望である。
【0229】
典型的には活性な医薬成分(API)含量が20%未満であり、相乗作用するのが難しい従来のNPとは対照的に、BAQ ONNは100%のAPI含量であり、相乗作用とスケールアップが容易である。BAQ ONNは非プロドラッグ化学物質であるため、新興の一成分プロドラッグNPより優れてもいる。これらの利点すべてが、BAQ ONNを臨床試験に橋渡しすることを非常に容易にする。これは、ナノテクノロジーを新規化学物質の設計へと拡張する重要な1つの試みである。薬発見と、ナノテクノロジーに支援された薬送達の間のシームレスな接続により、研究者は、がんを標的とした治療と市場性の利点を持つ、ますます進歩しているナノ医療を発展させることができよう。
【0230】
ここまで、理解を明確にするため本発明を図解と実施例によっていくらか詳細に記述してきたが、当業者は、添付の請求項の範囲内でいくつかの変更と改変を実施できることがわかるであろう。それに加え、本明細書に提示されている各参考文献は、各参考文献が個別に参照によって組み込まれているかのごとくにしてその全体が参照によって組み込まれている。本出願と本明細書に提示されている参考文献の間に矛盾が存在する場合には、本出願が優先する。
図1
図2A-2C】
図2D-2G】
図3A
図3B-3D】
図3E-3G】
図3H-3K】
図4A-4C】
図4D-4G】
図4H-4J】
図5A-5C】
図5D-5G】
図5H
図6A-6B】
図6C-6F】
図6G-6I】
図6K-6L】
図7
図8A-8B】
図8C
図9A-9C】
図9D-9G】
図10
図11A-11D】
図11E-11F】
図12
図13A-13C】
図13D-13F】
図14
図15
図16
図17A-17D】
図17E-17F】
図18A-18D】
図18E-18G】
図19A
図19B-19D】
図19E-19H】
図20A-20E】
図20F-20J】
図20K-20L】
図21
図22
図23
図24
図25
【配列表】
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