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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-03-18
(45)【発行日】2025-03-27
(54)【発明の名称】着陸設備、着陸方法
(51)【国際特許分類】
   B64U 80/00 20230101AFI20250319BHJP
   B64U 10/13 20230101ALI20250319BHJP
   B64U 50/19 20230101ALI20250319BHJP
   B64U 20/80 20230101ALI20250319BHJP
【FI】
B64U80/00
B64U10/13
B64U50/19
B64U20/80
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2022569401
(86)(22)【出願日】2020-12-16
(86)【国際出願番号】 JP2020047003
(87)【国際公開番号】W WO2022130542
(87)【国際公開日】2022-06-23
【審査請求日】2023-12-05
(73)【特許権者】
【識別番号】517331376
【氏名又は名称】株式会社エアロネクスト
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 陽一
【審査官】塚本 英隆
(56)【参考文献】
【文献】特開平04-321492(JP,A)
【文献】特開2016-086732(JP,A)
【文献】特許第6713696(JP,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B64U 80/00
B64U 10/13
B64U 50/19
B64U 20/80
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
飛行体を垂直下降により着陸させる第1領域と、
所定の高さを有し、前記第1領域の周囲の少なくとも一部分を覆う防風部と、
前記防風部から離れており前記第1領域と少なくとも水平方向で異なる位置にあり、前記飛行体が所定の飛行高度まで降下する第2領域を含み、
前記飛行高度は、前記防風部の所定の高さよりも低い高度であり、
前記防風部の少なくとも一部は網で構成されている、
着陸設備。
【請求項2】
前記第2領域は、垂直降下が許可された複数の許可エリアから選択された領域である、
ことを特徴とする請求項1に記載の着陸設備。
【請求項3】
前記第2領域は、前記所定の飛行高度まで降下するように前記飛行体に指示する降下指示ユニットを含む、
ことを特徴とする請求項1または2に記載の着陸設備。
【請求項4】
前記防風部は、前記第1領域の周囲において、前記飛行体が前記第1領域の鉛直上方に進入する進入位置に対して前記第1領域を挟んで向かい側の位置を少なくとも覆う
ことを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の着陸設備。
【請求項5】
飛行体を垂直下降により着陸させる第1領域と、所定の高さを有し、前記第1領域の周囲の少なくとも一部分を覆う防風部と、前記防風部から離れており前記第1領域と少なくとも水平方向で異なる位置にあり、前記飛行体が所定の飛行高度まで降下する第2領域を含む着陸設備による着陸方法であって、
前記飛行高度は、前記防風部の所定の高さよりも低い高度であり、
前記防風部の少なくとも一部は網で構成されており、
前記第2領域において前記飛行体が所定の飛行高度まで降下し、その後前記第1領域において垂直下降により着陸する、
ことを特徴とする着陸方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、着陸設備、着陸方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ドローン(Drone)や無人航空機(UAV:Unmanned Aerial Vehicle)などの飛行体(以下、「飛行体」と総称する)を用いる宅配サービスの実用化に向けた研究や実証実験が進められている。実用化に際しては、飛行時の信頼性や安全性、効率の向上に加え、着陸時も同様に向上が望まれる。このような状況を鑑みて、特許文献1においては、ポートでの安全性を担保しつつ飛行計画を実現するシステムが開示されている。(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1では、飛行体が安全にポートへと着陸可能な飛行管理システムを提供する(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】WO2018-155700号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
現在、サービスの開発が行われている飛行体の多くは、いわゆるマルチコプターと呼ばれる、複数回転翼を備える飛行体であり、これらの機体は飛行中や離着陸中に風の影響を受けやすく、特に、強い横風や上昇気流などの中で行う垂直降下(着陸動作)は危険を伴うことが知られている。特許文献1においては、ポートに風センサを設置し、風情報を用いてポートへの離着陸の可否を判断することで、安全な着陸を提供することが可能となっている。
【0006】
しかし、宅配業務においては、業務の特性上、強風時でも指定の場所に着陸をしなければならないことが予想され、また、業務効率を向上するためには、風が弱まるまで飛行や離着陸を中断することは避ける必要がある。特に、複数の飛行体が次々に荷物を届けに来る場所においては、複数の飛行体が着陸を待つために上空に留まることとなり、効率の低下だけでなく使用する燃料の増加による燃費の悪化等が起こる。
【0007】
特許文献1のポートでは、強風が観測されている間のポートへの飛行体の着陸は困難となり、業務効率が低下する。離着陸に使用するポートは、飛行体が無風時に安全に着陸できるだけでなく、稼働率の向上のため、強風等の環境下であっても、安定した離着陸ができる設備であることが望ましい。
【0008】
そこで、本発明は、飛行体が強風下においても安全に着陸が可能な着陸設備及び着陸方法を提供することを一つの目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明によれば、飛行体を着陸させる第1領域と、所定の高さを有し、前記第1領域の周囲の少なくとも一部分を覆う防風部と、前記防風部から離れて位置し、前記飛行体が所定の飛行高度まで降下する第2領域を含む、ことを特徴とする着陸設備を提供することができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、飛行体が強風下においても安全に着陸が可能な着陸設備及び着陸方法を提供し得る。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明による着陸設備を上面から見た概念図である。
図2図1の着陸設備を側面から見た図である。
図3】空気を通さない防風部に風が当たった場合の気流の模式図である。
図4】本発明による着陸方法を上面から見た概念図である。
図5図4の着陸方法を側面から見た図である。
図6】本発明による着陸設備を建物の上縁部に設けた構成の側面図である。
図7】本発明による着陸方法の構成例のひとつの斜視図である。
図8図6の着陸方法を正面から見た図である。
図9図6の着陸方法を側面から見た図である。
図10】本発明による着陸設備の構成例のひとつを正面から見た図である。
図11】本発明による着陸設備の構成例のひとつを側面から見た図である。
図12】本発明による着陸設備の構成例のひとつを側面から見た図である。
図13】本発明による飛行体の上面図である。
図14図13の飛行体の機能ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の実施形態の内容を列記して説明する。本発明の実施の形態による着陸設備、着陸方法は、以下のような構成を備える。
[項目1]
飛行体を着陸させる第1領域と、
所定の高さを有し、前記第1領域の周囲の少なくとも一部分を覆う防風部と、
前記防風部から離れて位置し、前記飛行体が所定の飛行高度まで降下する第2領域を含む、
ことを特徴とする着陸設備。
[項目2]
前記飛行高度は、前記防風部の所定の高さよりも低い高度である、
ことを特徴とする項目1に記載の着陸設備。
[項目3]
前記第2領域は、垂直降下が許可された複数の許可エリアから選択された領域である、
ことを特徴とする項目1または項目2のいずれかに記載の着陸設備。
[項目4]
前記防風部の一部は網で構成されている、
ことを特徴とする項目1ないし項目3のいずれかに記載の着陸設備。
[項目5]
前記防風部は建造物である、
ことを特徴とする項目1ないし項目3のいずれかに記載の着陸設備。
[項目6]
前記第2領域は、前記所定の飛行高度まで降下するように前記飛行体に指示する降下指示ユニットを含む、
ことを特徴とする項目1ないし項目5のいずれかに記載の着陸設備。
[項目7]
前記第1領域は、前記飛行体に着陸を指示する着陸指示ユニットを含む、
ことを特徴とする項目1ないし項目6のいずれかに記載の着陸設備。
[項目8]
飛行体を着陸させる第1領域と、所定の高さを有し、前記第1領域の周囲の少なくとも一部分を覆う防風部と、前記防風部から離れて位置し、前記飛行体が所定の飛行高度まで降下する第2領域を含む着陸設備による着陸方法であって、
前記第2領域において前記飛行体が所定の飛行高度まで降下し、その後前記第1領域において着陸する、
ことを特徴とする着陸方法。
[項目9]
前記飛行高度は、前記防風部の所定の高さよりも低い高度である、
ことを特徴とする項目8に記載の着陸方法。
【0013】
<本発明による実施形態の詳細>
以下、本発明の実施の形態による着陸設備、着陸方法について、図面を参照しながら説明する。
【0014】
<第1の実施の形態の詳細>
図1乃至図2に示されるように、本発明の実施の形態による着陸設備10は、着陸設備10を利用する飛行体100が安定して接地可能な面積、形状、素材で構成される第1領域12と、離陸または着陸を行う飛行体に当たる風を防ぐ防風部11を備えている。
【0015】
第1領域12内の飛行体着陸部15は、土や砂、粉塵等をプロペラ後流によって巻き上げ、飛行体や運搬物に悪影響を及ぼすことを防ぐため、飛行体から発せられる風が当たる場所にコンクリートやアスファルト等を敷設したり、金属や樹脂等のプレートやシートを敷いたりすることが望ましい。もしくは、地面から離すよう、高所に設けることでも土等の巻き上げを防ぐことが可能である。飛行体の着陸開始のトリガーは、GNSS等の位置情報や、第1領域12に設けられるマーカー、ビーコン等の着陸指示ユニットにより提供されることが望ましい。
【0016】
防風部11は、第1領域外から第1領域内に向かって吹く風を、弱める効果のある構成でなければならない。例えば、パネル、網、柵、建築物、エアーカーテン、グリーンカーテン、ウォーターカーテン等が挙げられる。
【0017】
防風部11は、フレーム等を設けて網を張ったり、既存の構造物に網の一部を固定したりする方法が単純かつローコストな構成である。長期にわたる運用の場合には、雨風や紫外線などに耐えられるような屋外用の建材を用い、頑強に作ることが望ましい。また、図4及び図5に示されるように建築物を防風部11として用いると、新たに防風部11を設置するコストがなく、パネルや網などと比較して頑強となる。
【0018】
防風部11に、目の細かい網状素材やパネル、建築物等の空気を通しづらい部材を用いる場合、強い防風効果が望めるが、図3のように防風部11に当たる風が防風部11を避けるように上昇し、防風部11上部の領域A付近の空気が圧縮される。その後防風部11を越えた領域B付近において、気圧の差によって空気の渦が生まれやすくなる。発生した渦により第1領域の気流が乱れ、飛行体の離着陸が不安定となる場合がある。
【0019】
第1領域12に着陸する飛行体が、図3における地点P1と地点P2夫々から降下した場合、P1においては空気の圧縮領域Aおよび渦発生領域Bに近いため、一定の風に対抗する姿勢を取って降下していた機体が急流および乱流内に侵入することとなり、飛行が不安定になる場合がある。P2は、P1に比較して空気の渦発生点から離れている。そのため機体が降下する間の空気の流れの変化が穏やかになり、且つ、防風効果の及ぶ範囲内となるため、地点A1を降下した場合に比べて、飛行の安定性が増す。
【0020】
しかしながら、P1鉛直下方にあるP1´と、P2鉛直下方にあるP2´を比較したとき、P2´においても防風効果を得ることが可能であるが、防風部11に近いP1´はより防風効果が高くなることは明らかであるため、飛行体の着陸には好適である。そのため、飛行体の降下は防風部から離れたP2で行い、飛行体の着陸は防風部11に近いP1´で行うことが出来るよう、少なくとも降下を2段階以上に分けて行うことで、飛行体を安全に着陸させ得る。
【0021】
また、防風部11に用いる素材は、部分によって防風効果の程度を変えても良い。例えば、ネットを用いる場合に上方は網目を荒く、下方は網目を細かい物とすることで、上方の防風効果を弱く、下方に向かうにつれて段階的に防風効果を強くし、領域A付近における空気の圧縮や領域B付近における渦の発生を防止し、より安定した離着陸を可能にする。
【0022】
また、一度防風効果を得られる範囲内に進入した飛行体は、範囲外に比べて空気の流れが穏やかな場所を進み、着陸を行うことが可能となるため、飛行体の降下から着陸までの一連の動作における安定性や信頼性が向上し得る。
【0023】
防風部11に対して、第1領域12を挟んで離れた位置に設けられた第2領域13は、飛行体が降下を行う領域である。飛行体の降下開始のトリガーは、GNSS等の位置情報や、第2領域13に設けられるマーカー、ビーコン等の降下指示ユニットにより提供されることが望ましい。
【0024】
トリガーは、例えば、第2領域13に降下指示となるマーカーを上方に向けて表示したパネルを設け、飛行体が備える撮像機器で捕捉したり、GNSS情報によって第1領域12から所定の距離となる地点(第2領域13となる地点)に到達したことを認識したりするなど、環境や運用方法に応じて適切に決定されるべきであり、また、冗長化のために複数の方法を備えても良い。
【0025】
第2領域に進入した飛行体100は、飛行体の高度を所定の高度以下に下降させる。このとき、飛行体が防風部11の防風効果を十分に得られるよう、第2領域13は防風部11から所定の距離以上に離れない位置に設けられ、また、下降後の機体高度は防風部11上端より低く設定されることが望ましい。
【0026】
防風部11と第2領域13の距離の決定は、防風部11として用いられる素材や構造体の性質や、運用環境に応じて適切に決定されるべきである。例えば、ネットによる防風効果範囲(水平方向)は一般に防風部の高さの20倍とされることから、図2に示される防風部11がネットを用いる場合、防風部11上端から、第1領域12に設けられた着陸面までの鉛直方向の高さbをnメートルとしたとき、防風部11の端から第2領域13の端の水平方向の距離aは、n×20メートル以内に設けられることが望ましい。
【0027】
着陸設備10における第1領域12は、地上から一定距離オフセットして高所に設けられる場合がある。例として、第三者や地上に居る生き物が飛行体に触れて事故などにならないよう、地上から一定距離オフセットして高所に設けられる場合(例えば、日本において第三者が触れる危険を減らすためには、約2メートル以上のオフセットが好適と考えられる)や、飛行・着陸する場所の都合上、建物30の上層階や屋根上、屋上等に設ける場合等があり得る。
【0028】
第1領域12を高所に設ける際には、横風だけでなく、上昇気流も低減することが望ましい。第1領域の上縁付近に、鉛直上方ではなく、第1領域の外側方向へ延伸する防風部をさらに設けることで、第1領域12に進入する飛行体にあたる上昇気流を抑えることが出来る。例えば、図6に示されるように、第1領域の外側方向へ延伸する防風部11は、略水平方向へ延伸し、建物の上縁付近に設けられることが望ましいが、第1領域が設けられる構造物や環境により、構造物から斜め上方向に延伸したり、構造物側面に設けられたりしてもよい。
【0029】
また、防風部11は、使用しない間は折り畳みや縮小、収納等が可能となっていてもよく、これにより、防風部11に風が当たることによって音が発生する時間を最低限にしたり、建物等の美観を損なわないようにしたりすることが出来る。
【0030】
防風部11を車両などの移動体に設けることにより、短期間使用の実験用着陸設備や、祭事にあわせた臨時の着陸設備10などに効率よく防風部11を設置することが可能となる。
【0031】
<第2の実施の形態の詳細>
本発明による第2の実施の形態の詳細において、第1の実施の形態と重複する構成要素は同様の動作を行うので、再度の説明は省略する。
【0032】
図7図9に示されるように、第1領域12を防風部11で覆い、飛行体100が防風部11を通過して着陸部15に着陸可能となる進入部14を設けた場合や、図11および図12のように建物の内部に第1領域12を設けた場合においては、第2領域13で下降動作を行った飛行体が、略水平飛行で進入部を通過し、第1領域上へ進行する。着陸動作は、防風部11によって風が弱められた中で行うこととなるため、飛行体の安定した着陸が可能となる。
【0033】
飛行体100は略水平飛行で進入部14を通過するため、垂直下降に比べて早く飛行体が防風部11に囲まれた空間に進入可能である。さらに、飛行体が防風部11に囲まれた空間へ進入後、空間の外に出る可能性が低くなるため、近くに第三者が立ち入る場所における周囲への安全性が向上する。
【0034】
また、第1領域12を建物に併設する場合、防風部11の一部を建物の外壁を利用することが可能である。例えば、図10に示されるように、防風部のうち1面を建物の外壁と兼用させることで、建物と防風部に囲まれた空間の間に人が通ることのできる扉を設け、着陸した機体の回収を容易にすることも可能である。
【0035】
高層の建物内部に第1領域を設ける場合には、防風部11に衝突した空気が上昇気流や下降気流となり、飛行体の追加に支障をきたす可能性があるため、風向き等によってより安全な進入方向を選択可能とするよう、図11に示されるように地形や風の傾向を鑑みた2方向以上の進入部(例えば、南と北、東と西、東西南北夫々など)を備えることが望ましい。建物に進入部14が複数備えられた場合、飛行体は、風に対して、防風部11より風下側に設けられた進入部14を用いることで、防風部11による防風効果を最も効率よく受けることができる。例えば、建物の東西南北4方に進入部14を設けた場合、北から風が吹く環境において建物北面が風に正対している場合、建物南側の進入部14を選択する。このとき、東面や西面に設けられた進入部14は、建物北面に当たった風が建物側面に沿って流れるため、周囲に強い横風が吹くこととなり、南面の進入部に比較して、飛行体の進入に適さない。
【0036】
飛行体が進入部14に進入する際、飛行体は、進行方向に対して横方向から強い風を受けると、姿勢を崩しやすくなる。進入の際には、前または後ろから風を受けることができる進入部14を選択することで、進入時の飛行の安定性や精度を向上する。なお、風向や風速、風に対する建物の形状や向きは常に一定ではなく、第1領域12を設ける場所により条件が異なるため、進入部14を設ける位置については、過去の気象データ等から好適な位置を検討することが望ましい。また、進入に利用しない進入部14からの風等の流入を防ぐために、進入部16に対して開閉可能な機構を設けるようにしてもよい。
【0037】
飛行体100が降下を行う第2領域13は、第1領域12の周囲において、飛行体の垂直移動が許可された所定の許可エリア内に限定して、あらかじめ設定されるものとしてもよい。
【0038】
例えば、防風部11の機能を有する建物が、第1領域12を内包する場合において、飛行体100が降下を行う第2領域13は、建物付近の、飛行体100の垂直移動が許可された所定の許可エリアに設定される。第1領域を内包する建物がタワーマンションであるとき、マンションの敷地には第三者が容易に立ち入ることができるエリア(通路、広場、駐車場など)が存在する。このようなエリアの上空においては、第2領域13に設定しないよう、飛行体の垂直移動を制限する制限エリアとすることが望ましい。
【0039】
また、飛行体100が垂直降下を行う際は、横風や上昇気流によって飛行体が不安定となる場合があるため、気流の乱れが予測される場所(高層の建造物の近傍や、ビル風が吹き込む場所など)についても、飛行体の垂直移動を制限するエリアとすることが望ましい。
【0040】
図12に示されるように、第2領域13が、第1領域12を内包する建物の周囲に複数存在する場合、飛行体100は、降下を行う際に、降下に適した第2領域をさらに選択し、使用するものとしてもよい。風向や、自機以外の飛行体の状況などから、降下に適した第2領域を選択して使用することで、降下時の安定性向上が期待できる。例えば、風が吹いているときには、第1領域を内包する建物の風下側に設けられた第2領域を選択することで、効率よく防風効果を得ることが可能となる。
【0041】
飛行体100が使用する第2領域13は、過去の気象観測データや飛行前の状況等から飛行前に決定されていてもよいし、飛行中に、飛行体100や自機以外の飛行体、地上の観測所などが取得する、気象や第2領域の使用率のデータをもとに決定してもよい。これらの決定については、飛行体の垂直移動が許可される許可エリア、または、制限される制限エリアという種別の設定や、当該許可エリアのうち第2領域13として利用するエリアの選択に用いられてもよい。
【0042】
飛行体の垂直移動が許可される所定のエリアは、運用開始前には想定が困難である、上空の乱流や新規の構造物など多様な要因により、運用開始後に飛行体が不安定になりやすい場所が出現または発見される可能性がある。飛行体の飛行ログや障害記録を蓄積し、飛行体が安定して降下しているエリアは引き続き飛行体の垂直移動が許可される許可エリアとし、飛行体が安定して降下していない(例えば、飛行姿勢の乱れや墜落などの記録がある)エリアについては飛行体の垂直移動を制限する制限エリアに変更することで、第2領域13における飛行体の降下の信頼性をさらに向上し得る。
【0043】
また、上述の種々の要因により、複数の許可エリアや複数の制限エリアの中でも安定性や機体または第三者の安全性などに基づき重みづけをすることも可能であり、当該重みづけに応じて、例えば一番安定性が高いエリアや一番安全性が高いエリアなどを第2領域13として選択してもよい。
【0044】
図12に示されるように、複数の進入部14を設けた場合、夫々の進入部から進入した飛行体は、進入した進入部と同じ進入部から退出しても良いし、進入した進入部とは別の進入部から退出してもよい。特に無風時であれば、全ての飛行体が進入部14aから進入し、進入部14bから退出することにより、進入部や第1領域内の混雑を防止することができる。なお、この場合の進入部は単なる開口であってもよいが、図7等に記載されるような防風部11に設けられた開口であってもよいし、そのような開口を有する防風部を一方側にのみに配置する(特に風が強く流入する側)ように構成してもよい。
【0045】
また、建物が第1領域を内包する構成である場合に、風の吹きづらい、または風の弱い場所においては、図12のように、建物内部において夫々の進入部14間を飛行体100の行き来が容易となるような一続きの空間として利便性を向上させてもよいし、風が強く、対面する夫々の進入部を一続きとすることで建物内部を通過する風が強くなる場所においては、夫々の進入部を一続きとせず、壁を設けて別の空間としたり、障害物を設けたりすることで風をスムーズに通り抜けさせず、谷間風のような強風の発生を防ぎ、建物内を飛行する飛行体の安定性を向上させてもよい。
【0046】
さらに、上昇気流や下降気流による飛行への影響を低減するための防風部11を、建物の壁面や上端から延伸させて設けるものとしてもよい。第2領域13において飛行体100が降下後に飛行する所定の高度に対して、より高い位置に設けることで下降気流を減少させ、より低い位置に設けることで上昇気流を減少させる。
【0047】
なお、進入部14は、飛行体100が進入可能でなければならず、進入時の飛行体の前面投影面積以上の面積を持つ。ただ、常に開いている矩形の開口部である必要はなく、スリット状の隙間や楕円形状の穴であったり、開閉機能を備えていたりしてもよい。
【0048】
以下、図13に示される飛行体100について説明するが、これらは飛行体の形態を限定する物ではなく、本発明における着陸設備を使用して運用される飛行体は、着陸設備に着陸可能な形態あればよい。本発明における着陸設備は、特に、VTOL機体や、マルチコプターと呼ばれる複数のモータを持つ機体など、略垂直に着陸することが可能且つ着陸時に強風を受けることが好ましくない飛行体の着陸において、高い効果が期待できる。
【0049】
図13に示されるように、飛行体100は飛行を行うために少なくともプロペラ110やモータ111等の要素を備えており、それらを動作させるためのエネルギー(例えば、二次電池や燃料電池、化石燃料等)を搭載していることが望ましい。
【0050】
なお、図示されている飛行体100は、本発明の構造の説明を容易にするため簡略化されて描かれており、例えば、制御部等の詳しい構成は図示していない。
【0051】
飛行体100および移動体200は図の矢印Dの方向(-YX方向)を前進方向としている(詳しくは後述する)。
【0052】
なお、以下の説明において、以下の定義に従って用語を使い分けることがある。前後方向:+Y方向及び-Y方向、上下方向(または鉛直方向):+Z方向及びZ方向、左右方向(または水平方向):+X方向及び-X方向、進行方向(前方):-Y方向、後退方向(後方):+Y方向、上昇方向(上方):+Z方向、下降方向(下方):-Z方向
【0053】
プロペラ110は、モータ111からの出力を受けて回転する。プロペラ110が回転することによって、飛行体100を出発地から離陸させ、移動させ、目的地に着陸させるための推進力が発生する。なお、プロペラ110は、右方向への回転、停止及び左方向への回転が可能である。
【0054】
本発明の飛行体が備えるプロペラ110は、1以上の羽根を有している。任意の羽根(回転子)の数(例えば、1、2、3、4、またはそれ以上の羽根)でよい。また、羽根の形状は、平らな形状、曲がった形状、よじれた形状、テーパ形状、またはそれらの組み合わせ等の任意の形状が可能である。なお、羽根の形状は変化可能である(例えば、伸縮、折りたたみ、折り曲げ等)。羽根は対称的(同一の上部及び下部表面を有する)または非対称的(異なる形状の上部及び下部表面を有する)であってもよい。羽根はエアホイル、ウイング、または羽根が空中を移動される時に動的空気力(例えば、揚力、推力)を生成するために好適な幾何学形状に形成可能である。羽根の幾何学形状は、揚力及び推力を増加させ、抗力を削減する等の、羽根の動的空気特性を最適化するために適宜選択可能である。
【0055】
また、本発明の飛行体が備えるプロペラは、固定ピッチ、可変ピッチ、また固定ピッチと可変ピッチの混合などが考えられるが、これに限らない。
【0056】
モータ111は、プロペラ110の回転を生じさせるものであり、例えば、駆動ユニットは、電気モータ又はエンジン等を含むことが可能である。羽根は、モータによって駆動可能であり、モータの回転軸(例えば、モータの長軸)の周りに回転する。
【0057】
羽根は、すべて同一方向に回転可能であるし、独立して回転することも可能である。羽根のいくつかは一方の方向に回転し、他の羽根は他方方向に回転する。羽根は、同一回転数ですべて回転することも可能であり、夫々異なる回転数で回転することも可能である。回転数は移動体の寸法(例えば、大きさ、重さ)や制御状態(速さ、移動方向等)に基づいて自動又は手動により定めることができる。
【0058】
飛行体100は、フライトコントローラやプロポ等により、風速と風向に応じて、各モータの回転数や、飛行角度を決定する。これにより、飛行体は上昇・下降したり、加速・減速したり、方向転換したりといった移動を行うことができる。
【0059】
飛行体100は、事前または飛行中に設定されるルートやルールに準じた自律的な飛行や、プロポを用いた操縦による飛行を行うことができる。
【0060】
上述した飛行体は、図14に示される機能ブロックを有している。なお、図14の機能ブロックは最低限の参考構成である。フライトコントローラは、所謂処理ユニットである。処理ユニットは、プログラマブルプロセッサ(例えば、中央処理ユニット(CPU))などの1つ以上のプロセッサを有することができる。処理ユニットは、図示しないメモリを有しており、当該メモリにアクセス可能である。メモリは、1つ以上のステップを行うために処理ユニットが実行可能であるロジック、コード、および/またはプログラム命令を記憶している。メモリは、例えば、SDカードやランダムアクセスメモリ(RAM)などの分離可能な媒体または外部の記憶装置を含んでいてもよい。カメラやセンサ類から取得したデータは、メモリに直接に伝達されかつ記憶されてもよい。例えば、カメラ等で撮影した静止画・動画データが内蔵メモリ又は外部メモリに記録される。
【0061】
処理ユニットは、回転翼機の状態を制御するように構成された制御モジュールを含んでいる。例えば、制御モジュールは、6自由度(並進運動x、y及びz、並びに回転運動θ、θ及びθ)を有する回転翼機の空間的配置、速度、および/または加速度を調整するために回転翼機の推進機構(モータ等)を制御する。制御モジュールは、搭載部、センサ類の状態のうちの1つ以上を制御することができる。
【0062】
処理ユニットは、1つ以上の外部のデバイス(例えば、端末、表示装置、または他の遠隔の制御器)からのデータを送信および/または受け取るように構成された送受信部と通信可能である。送受信機は、有線通信または無線通信などの任意の適当な通信手段を使用することができる。例えば、送受信部は、ローカルエリアネットワーク(LAN)、ワイドエリアネットワーク(WAN)、赤外線、無線、WiFi、ポイントツーポイント(P2P)ネットワーク、電気通信ネットワーク、クラウド通信などのうちの1つ以上を利用することができる。送受信部は、センサ類で取得したデータ、処理ユニットが生成した処理結果、所定の制御データ、端末または遠隔の制御器からのユーザコマンドなどのうちの1つ以上を送信および/または受け取ることができる。
【0063】
本実施の形態によるセンサ類は、慣性センサ(加速度センサ、ジャイロセンサ)、GPSセンサ、近接センサ(例えば、ライダー)、またはビジョン/イメージセンサ(例えば、カメラ)を含み得る。
【0064】
上述した実施の形態は、本発明の理解を容易にするための例示に過ぎず、本発明を限定して解釈するためのものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良することができると共に、本発明にはその均等物が含まれることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0065】
10 着陸設備
11 防風部
12 第1領域
13 第2領域
14 進入部
15 着陸部
100 飛行体
110a~110e プロペラ
111a~111e モータ


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