IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 住友電工デバイス・イノベーション株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-半導体装置 図1
  • 特許-半導体装置 図2
  • 特許-半導体装置 図3
  • 特許-半導体装置 図4
  • 特許-半導体装置 図5
  • 特許-半導体装置 図6
  • 特許-半導体装置 図7
  • 特許-半導体装置 図8
  • 特許-半導体装置 図9
  • 特許-半導体装置 図10
  • 特許-半導体装置 図11
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-03-18
(45)【発行日】2025-03-27
(54)【発明の名称】半導体装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/60 20060101AFI20250319BHJP
【FI】
H01L21/60 301A
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2022547006
(86)(22)【出願日】2021-09-07
(86)【国際出願番号】 JP2021032825
(87)【国際公開番号】W WO2022050422
(87)【国際公開日】2022-03-10
【審査請求日】2024-03-21
(31)【優先権主張番号】P 2020149904
(32)【優先日】2020-09-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000154325
【氏名又は名称】住友電工デバイス・イノベーション株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100136722
【弁理士】
【氏名又は名称】▲高▼木 邦夫
(74)【代理人】
【識別番号】100174399
【弁理士】
【氏名又は名称】寺澤 正太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100182006
【弁理士】
【氏名又は名称】湯本 譲司
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 鮎彦
【審査官】佐藤 靖史
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-139207(JP,A)
【文献】特開平04-315405(JP,A)
【文献】特開平08-195411(JP,A)
【文献】特開2020-036153(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/60
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上に設けられたトランジスタおよび電極パッドを有する半導体チップと、
誘電体を挟む上部電極および下部電極を有するキャパシタと、
第1中継パッドと、
前記半導体チップの前記基板上に設けられる第2中継パッドと、
前記第1中継パッド、および前記半導体チップの前記電極パッドを互いに接続する第1ワイヤと、
前記第2中継パッド、および前記キャパシタの前記上部電極を互いに接続する第2ワイヤと、
前記第1中継パッド、および前記第2中継パッドを互いに接続する第3ワイヤと、
を備え
前記第1中継パッドは、前記キャパシタの前記誘電体上における前記上部電極から離間した位置に配置されており、
前記第2中継パッドは、前記半導体チップの一辺に沿って配置されている、
半導体装置。
【請求項2】
基板上に設けられたトランジスタおよび電極パッドを有する半導体チップと、
誘電体を挟む上部電極および下部電極を有するキャパシタと、
第1中継パッドと、
前記半導体チップの前記基板上に設けられる第2中継パッドと、
前記第1中継パッド、および前記半導体チップの前記電極パッドを互いに接続する第1ワイヤと、
前記第2中継パッド、および前記キャパシタの前記上部電極を互いに接続する第2ワイヤと、
前記第1中継パッド、および前記第2中継パッドを互いに接続する第3ワイヤと、
を備え
前記電極パッドは、前記半導体チップの一辺に沿って配置されており、
前記第2中継パッドは、前記電極パッドに隣接して配置されている、
半導体装置。
【請求項3】
基板上に設けられたトランジスタおよび電極パッドを有する半導体チップと、
誘電体を挟む上部電極および下部電極を有するキャパシタと、
第1中継パッドと、
前記半導体チップの前記基板上に設けられる第2中継パッドと、
前記第1中継パッド、および前記半導体チップの前記電極パッドを互いに接続する第1ワイヤと、
前記第2中継パッド、および前記キャパシタの前記上部電極を互いに接続する第2ワイヤと、
前記第1中継パッド、および前記第2中継パッドを互いに接続する第3ワイヤと、
を備え
前記キャパシタの一辺に沿って並ぶ複数の前記第1中継パッドと、
前記半導体チップの一辺に沿って並ぶ複数の前記第2中継パッド、および複数の前記電極パッドと、
を備え、
複数の前記第2中継パッドのそれぞれは、前記電極パッドに隣接して配置されている、
半導体装置。
【請求項4】
複数の前記第1ワイヤ、および複数の前記第2ワイヤを備え、
互いに隣接する複数の前記第1ワイヤのそれぞれは、共通の前記第1中継パッドに接続されており、
互いに隣接する複数の前記第2ワイヤのそれぞれは、共通の前記第2中継パッドに接続されている、
請求項1から請求項のいずれか一項に記載の半導体装置。
【請求項5】
前記キャパシタの前記誘電体の裏面に、前記第1中継パッドに対向する領域以外の領域に設けられる裏面電極を備える、
請求項1から請求項のいずれか一項に記載の半導体装置。
【請求項6】
前記半導体チップの裏面、または前記基板の裏面に、前記第2中継パッドに対向する領域以外の領域に設けられる裏面電極を備える、
請求項1から請求項のいずれか一項に記載の半導体装置。
【請求項7】
前記第1中継パッドは、前記キャパシタと前記半導体チップの間に設けられている、
請求項1に記載の半導体装置。
【請求項8】
前記基板は、炭化ケイ素(SiC)、ダイヤモンド、または金属によって構成されている、
請求項1から請求項のいずれか一項に記載の半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、半導体装置に関する。
本出願は、2020年9月7日の日本出願第2020-149904号に基づく優先権を主張し、前記日本出願に記載された全ての記載内容を援用するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、内部整合型高出力電界効果トランジスタ(内部整合型FET)が記載されている。内部整合型FETは、外囲器内に配置された2個のGaAsFETチップと、入出力整合回路用のアルミナ基板とを備える。内部整合型FETは、入力側のアルミナ基板と、出力側のアルミナ基板とを備える。入力側のアルミナ基板、および出力側のアルミナ基板のそれぞれには、インピーダンス整合をとるための整合回路が設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開昭63-86904号公報
【発明の概要】
【0004】
一形態に係る半導体装置は、基板上に設けられたトランジスタおよび電極パッドを有する半導体チップと、誘電体を挟む上部電極および下部電極を有するキャパシタと、第1中継パッドと、半導体チップの基板上に設けられる第2中継パッドと、を備える。この半導体装置は、更に、第1中継パッド、および半導体チップの電極パッドを互いに接続する第1ワイヤと、第2中継パッド、およびキャパシタの上部電極を互いに接続する第2ワイヤと、第1中継パッド、および第2中継パッドを互いに接続する第3ワイヤと、を備える。
【図面の簡単な説明】
【0005】
図1図1は、一実施形態に係る半導体装置の内部構成を示す平面図である。
図2図2は、図1の半導体装置の半導体チップ、キャパシタ、およびワイヤを示す平面図である。
図3図3は、ワイヤ長と電流との関係の例を示すグラフである。
図4図4は、図1の半導体装置の半導体チップ、キャパシタ、およびワイヤを示す図である。
図5図5は、図1の半導体装置の半導体チップ、キャパシタ、およびワイヤを示す平面図である。
図6図6は、第1の変形例に係る半導体装置の半導体チップ、キャパシタ、およびワイヤを示す平面図である。
図7図7は、図6の半導体チップ、キャパシタ、およびワイヤを示す図である。
図8図8は、ワイヤを拡大した斜視図である。
図9図9は、第2の変形例に係る半導体装置の半導体チップ、キャパシタ、およびワイヤを示す平面図である。
図10図10は、図9の半導体チップの裏面、およびキャパシタの裏面を示す背面図である。
図11図11は、第3の変形例に係る半導体装置の半導体チップ、第1中継パッド、キャパシタ、およびワイヤを示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0006】
従来の内部整合型FETでは、GaAsFETチップと整合回路とがボンディングワイヤによって互いに接続されている。ところで、高周波増幅器において取り扱う信号の周波数が低い場合には、ドレインパッド等、半導体チップの電極パッドに接続されるワイヤの本数を減らすと共に、各ワイヤのワイヤ長を長くすることが求められる場合がある。ワイヤ1本あたりの電流が大きく、かつワイヤ長が長い場合、ワイヤが溶断する懸念がある。
【0007】
本開示は、半導体チップの電極パッドに接続されるワイヤを短くすることができる半導体装置を提供することを目的とする。
【0008】
[本開示の実施形態の説明]
最初に、本開示の実施形態の内容を列記して説明する。一実施形態に係る半導体装置は、基板上に設けられたトランジスタおよび電極パッドを有する半導体チップと、誘電体を挟む上部電極および下部電極を有するキャパシタと、第1中継パッドと、半導体チップの基板上に設けられる第2中継パッドと、を備える。この半導体装置は、更に、第1中継パッド、および半導体チップの電極パッドを互いに接続する第1ワイヤと、第2中継パッド、およびキャパシタの上部電極を互いに接続する第2ワイヤと、第1中継パッド、および第2中継パッドを互いに接続する第3ワイヤと、を備える。
【0009】
この半導体装置では、半導体チップが基板上にトランジスタおよび電極パッドを備え、キャパシタは誘電体を挟む上部電極および下部電極を備える。第1ワイヤは、半導体チップの電極パッドと第1中継パッドとを互いに接続する。第3ワイヤは、第1中継パッドと第2中継パッドとを互いに接続する。第2ワイヤは、第2中継パッドとキャパシタの上部電極とを互いに接続する。よって、半導体チップとキャパシタとは、半導体チップから延びる第1ワイヤ、第1中継パッド、第3ワイヤ、半導体チップ上の第2中継パッド、およびキャパシタに向かって延びる第2ワイヤを介して互いに接続される。したがって、第1ワイヤ、第1中継パッド、第3ワイヤ、第2中継パッド、および第2ワイヤを備えることによって、半導体チップの電極パッドに接続されるワイヤを第1ワイヤのみとすることが可能となる。各ワイヤが第1中継パッドおよび第2中継パッドを介して互いに接続されることにより、各ワイヤを短くすることができる。
【0010】
第1中継パッドは、キャパシタの誘電体上における上部電極から離間した位置に配置されていてもよい。第2中継パッドは、半導体チップの一辺に沿って配置されていてもよい。この場合、第1中継パッドをキャパシタの誘電体上に配置することができると共に、第2中継パッドをキャパシタに対向する半導体チップの一辺に沿って配置することができる。
【0011】
電極パッドは、半導体チップの一辺に沿って配置されていてもよい。第2中継パッドは、電極パッドに隣接して配置されていてもよい。この場合、半導体チップ上の電極パッドおよび第2中継パッドを、キャパシタに対向する半導体チップの一辺に沿って並べるように配置することが可能となる。
【0012】
前述した半導体装置は、キャパシタの一辺に沿って並ぶ複数の第1中継パッドと、半導体チップの一辺に沿って並ぶ複数の第2中継パッド、および複数の電極パッドと、を備えてもよい。複数の第2中継パッドのそれぞれは、電極パッドに隣接して配置されていてもよい。この場合、半導体チップに対向するキャパシタの一辺に沿って複数の第1中継パッドを並べることができると共に、キャパシタに対向する半導体チップの一辺に沿って電極パッドおよび第2中継パッドを並べることができる。
【0013】
前述した半導体装置は、複数の第1ワイヤ、および複数の第2ワイヤを備えてもよく、互いに隣接する複数の第1ワイヤのそれぞれは、共通の第1中継パッドに接続されていてもよい。互いに隣接する複数の第2ワイヤのそれぞれは、共通の第2中継パッドに接続されていてもよい。この場合、第1中継パッドおよび第2中継パッドのそれぞれに複数本のワイヤが接続されるので、第1中継パッドおよび第2中継パッドをワイヤの接続部としてより有効利用することができる。
【0014】
前述した半導体装置は、キャパシタの誘電体の裏面に、第1中継パッドに対向する領域以外の領域に設けられる裏面電極を備えていてもよい。この場合、第1中継パッドの裏面に裏面電極が設けられないことにより、第1中継パッドで発生する寄生容量を抑制することができる。
【0015】
前述した半導体装置は、半導体チップの裏面、または基板の裏面に、第2中継パッドに対向する領域以外の領域に設けられる裏面電極を備えていてもよい。この場合、第2中継パッドの裏面に裏面電極が設けられないことにより、第2中継パッドで発生する寄生容量を抑制することができる。
【0016】
第1中継パッドは、キャパシタと半導体チップの間に設けられていてもよい。この場合、第1中継パッドをキャパシタおよび半導体チップの双方から離間した場所に配置することが可能となる。
【0017】
基板は、炭化ケイ素(SiC)、ダイヤモンド、または金属によって構成されていてもよい。この場合、基板を放熱性が高い材料によって構成することが可能となる。
【0018】
[本開示の実施形態の詳細]
本開示の半導体装置の具体例を以下で図面を参照しながら説明する。なお、本発明は、下記の例示に限定されるものではなく、請求の範囲に示され、請求の範囲と均等の範囲における全ての変更が含まれることが意図される。図面の説明において、同一または相当する要素には同一の符号を付し、重複する説明を適宜省略する。図面は、理解を容易にするため、一部を簡略化または誇張して描いており、寸法比率等は図面に記載のものに限定されない。
【0019】
図1は、一実施形態に係る半導体装置1の内部構成を示す図である。図1に示されるように、半導体装置1は、入力端子2、出力端子3、半導体チップ10、分岐回路基板20、合成回路基板30、フィルタ回路40、キャパシタ50、及びキャパシタ60を備える。半導体装置1は、例えば、2つのフィルタ回路40、2つのキャパシタ50,60を備える。
【0020】
例えば、半導体チップ10は、2つの増幅素子11を含む増幅素子部である。一例として、1つの増幅素子11あたりの出力は30Wであり、半導体チップ10全体の出力は60Wである。半導体装置1は、例えば、パッケージ4を備える高周波増幅器である。パッケージ4は、半導体チップ10、分岐回路基板20、合成回路基板30、フィルタ回路40、及びキャパシタ50,60を収容する。
【0021】
パッケージ4は、金属製であり、基準電位に接続されている。例えば、パッケージ4の平面形状は長方形状である。パッケージ4は、第1方向A1において互いに対向する端壁4a,4bと、第2方向A2において互いに対向する側壁4c,4dとを有する。第1方向A1および第2方向A2は、互いに交差しており、一例として互いに直交する。パッケージ4は、長方形状の平坦な底板4eを有する。
【0022】
底板4eは、例えば、第1方向A1および第2方向A2の双方に延びる平面を有する。端壁4a,4bは底板4eの一対の辺(第2方向A2に沿って延びる辺)に沿って立設している。側壁4c,4dは底板4eの別の一対の辺(第1方向A1に沿って延びる辺)に沿って立設している。パッケージ4は、図示しない蓋部を更に有する。当該蓋部は、端壁4a,4bおよび側壁4c,4dによって形成される開口を封止する。
【0023】
入力端子2は、金属製の配線パターンであって、高周波信号を半導体装置1の外部から入力する。高周波信号は、例えば、マルチキャリア伝送方式に基づく信号であって、キャリア信号の周波数が互いに異なる複数の信号を重畳してなる。キャリア信号の周波数帯域は、例えば、500MHz以下である。入力端子2は、第2方向A2における端壁4aの中央部に設けられている。入力端子2は、パッケージ4の外部から内部に延在している。
【0024】
例えば、半導体チップ10は、パッケージ4の底板4e上であって、かつ第1方向A1におけるパッケージ4の中央を含む領域に配置されている。半導体チップ10の各増幅素子11は、トランジスタを内蔵する。トランジスタは、電界効果トランジスタ(FET)であり、一例として、高電子移動度トランジスタ(HEMT)である。各増幅素子11は、ゲートパッド、ソースパッド、およびドレインパッドを有する。
【0025】
例えば、各増幅素子11の入力端子2側の一辺(端辺)にはゲートパッド(信号入力端)およびソースパッドが交互に並んでいる。各増幅素子11の出力端子3側の端辺にはドレインパッド(信号出力端)が並んでいる。各ソースパッドは、ビアホールを介してパッケージ4の底板4eと電気的に接続され、基準電位とされている。このビアホールは、増幅素子11を厚さ方向(例えば、図1の紙面に直交する方向)に貫通する。各増幅素子11は、各ゲートパッドに入力された高周波信号を増幅し、増幅後の高周波信号を各ドレインパッドから出力する。なお、増幅素子11のドレインパッドの周辺の構成については後に詳述する。
【0026】
分岐回路基板20は、パッケージ4の底板4e上に配置されている。分岐回路基板20は、第1方向A1に沿って入力端子2および半導体チップ10と並んで配置される。分岐回路基板20は、入力端子2と半導体チップ10との間に位置する。分岐回路基板20は、セラミック製の基板21と、基板21の主面上に設けられた分岐回路22とを有する。例えば、基板21の平面形状は長方形状である。
【0027】
例えば、分岐回路基板20の一方の長辺21aは入力端子2と対向しており、分岐回路基板20の他方の長辺21bはキャパシタ50を介して半導体チップ10と対向している。基板21の裏面は、パッケージ4の底板4eと対向している。基板21の一方の短辺21cはパッケージ4の側壁4cに対向しており、基板21の他方の短辺21dはパッケージ4の側壁4dに対向している。
【0028】
分岐回路22は、基板21の主面上に設けられた配線パターン23を含む。配線パターン23は、ボンディングワイヤ9aを介して入力端子2と電気的に接続されている。高周波信号は、第2方向A2における入力端子2の中央部からボンディングワイヤ9aを介して配線パターン23に入力される。配線パターン23は、例えば、第1方向A1に沿った基板21の中心線に対して線対称な形状を有する。
【0029】
配線パターン23は、ボンディングワイヤ9aとの接続点を起点として2分岐を繰り返し、最終的に8つの金属パッド23aに至る。8つの金属パッド23aは、長辺21bに沿って並んで配置されている。互いに隣り合う金属パッド23a同士は、膜抵抗を介して互いに接続されており、ウィルキンソン型カプラを構成する。これにより、半導体チップ10の複数のゲートパッド間のアイソレーションを確保しつつ、入力端子2から見た半導体チップ10の入力インピーダンスの整合を図っている。図1には、一例として1つの膜抵抗23bのみを示している。8つの金属パッド23aは、ボンディングワイヤ9bを介してキャパシタ50と電気的に接続されている。
【0030】
キャパシタ50は、パッケージ4の底板4e上に配置される。キャパシタ50は、分岐回路基板20と半導体チップ10との間に配置されている。キャパシタ50は、例えば、平行平板型キャパシタ(ダイキャパシタ)であり、誘電体基板の主面上に複数の金属パッド(不図示)を有する。キャパシタ50の金属パッドの数は、例えば、金属パッド23aの数と同一である。キャパシタ50の複数の金属パッドは、第2方向A2に沿って一列に並んでいる。当該金属パッドは、ボンディングワイヤ9bを介して対応する金属パッド23aと電気的に接続される。当該金属パッドは、ボンディングワイヤ9cを介して半導体チップ10の対応するゲートパッドと電気的に接続されている。
【0031】
キャパシタ50においては、ボンディングワイヤ9b,9cによるインダクタンス成分と、当該インダクタンス成分の間のノードおよび基準電位(底板4e)の間に接続された金属パッドのキャパシタンスとによって、T型フィルタ回路が構成される。キャパシタ50は、このT型フィルタ回路によってインピーダンス変換を行う。通常、半導体チップ10においてゲートパッドからトランジスタ内部を見込んだインピーダンスは、伝送線の特性インピーダンス(例えば50Ω)とは異なる。キャパシタ50は、このインピーダンスを、T型フィルタ回路によって入力端子2からトランジスタ内部を見込んだ50Ωに変換するマッチング回路である。
【0032】
キャパシタ60は、パッケージ4の底板4e上に配置される。キャパシタ60は、半導体チップ10と合成回路基板30の間に配置されている。キャパシタ60は、キャパシタ50と同様、例えば、平行平板キャパシタ(ダイキャパシタ)である。キャパシタ60は、誘電体を挟む上部電極および下部電極を有する。すなわち、キャパシタ60も、キャパシタ50と同様、誘電体基板の主面上に複数の金属パッド(不図示)を有する。
【0033】
キャパシタ60の金属パッドの数は、例えば、金属パッド23aの数と同一である。キャパシタ60の複数の金属パッドは、第2方向A2に沿って一列に配列されている。当該金属パッドは、後述するワイヤ群70を介して半導体チップ10の対応するドレインパッドと電気的に接続される。当該金属パッドは、ボンディングワイヤ9eを介して合成回路基板30の対応する金属パッド33aと電気的に接続されている。なお、図1では、ワイヤ群70の図示を簡略化している。
【0034】
キャパシタ60においては、ワイヤ群70およびボンディングワイヤ9eによるインダクタンス成分と、これらのインダクタンス成分の間のノードおよび基準電位(底板4e)の間に接続された金属パッドのキャパシタンスとによってT型フィルタ回路が構成される。キャパシタ60は、このT型フィルタ回路によってインピーダンス変換を行う。通常、半導体チップ10においてドレインパッドからトランジスタ内部を見込んだインピーダンスは、伝送線の特性インピーダンス(例えば50Ω)とは異なり、50Ωより小さい値であることが多い。キャパシタ60は、このインピーダンスを、T型フィルタ回路により出力端子3からトランジスタ内部を見込んだ50Ωに変換するマッチング回路である。
【0035】
合成回路基板30は、パッケージ4の底板4e上に配置されている。合成回路基板30は、第1方向A1に沿って半導体チップ10および出力端子3と並んで配置される。合成回路基板30は、半導体チップ10と出力端子3の間に位置する。合成回路基板30は、セラミック製の基板31と、基板31の主面上に設けられた合成基板32とを有する。基板31の平面形状は、例えば、長方形状である。
【0036】
基板31の一方の長辺31aはキャパシタ60を介して半導体チップ10と対向しており、基板31の他方の長辺31bは出力端子3と対向している。基板31の裏面は、パッケージ4の底板4eと対向している。基板31の一方の短辺31cはパッケージ4の側壁4cに対向しており、基板31の他方の短辺31dはパッケージ4の側壁4dに対向している。
【0037】
合成基板32は、半導体チップ10の複数のドレインパッドから出力される信号を合成して一の出力信号とする。合成基板32は、基板31の主面上に設けられた配線パターン33を含む。配線パターン33は、例えば、第1方向A1に沿った基板31の中心線に対して線対称な形状を有する。配線パターン33は、4つの金属パッド33aを含む。4つの金属パッド33aは、基板31の長辺31aに沿って並んで配置されている。
【0038】
互いに隣り合う金属パッド33a同士は、膜抵抗を介して互いに接続されており、ウィルキンソン型カプラを構成する。これにより、半導体チップ10の複数のドレインパッド間のアイソレーションを確保しつつ、出力端子3から見た半導体チップ10の出力インピーダンスの整合を図っている。なお、図1には、一例として1つの膜抵抗33bのみを図示している。
【0039】
各金属パッド33aは、ボンディングワイヤ9eを介してキャパシタ60の対応する2つの金属パッドと電気的に接続されている。配線パターン33は、4つの金属パッド33aからの結合を繰り返しつつ、最終的にボンディングワイヤ9fとの接続点に至る。配線パターン33は、ボンディングワイヤ9fを介して、出力端子3と電気的に接続されている。増幅後の高周波信号は、第2方向A2における基板31の中央部から出力端子3に出力される。
【0040】
出力端子3は、金属製の配線パターンである。出力端子3は、増幅後の高周波信号を半導体装置1の外部へ出力する。出力端子3は、第2方向A2における端壁4bの中央部に設けられている。出力端子3は、パッケージ4の内部から外部に延在している。
【0041】
例えば、半導体装置1は一対のフィルタ回路40を備える。フィルタ回路40は、例えば、出力信号に含まれる3次相互変調歪みを低減するために設けられている。一方のフィルタ回路40は、第2方向A2における基板31の中央部と、基板31において半導体チップ10とは反対側に位置する一方の角部31eとの間に配置されている。
【0042】
他方のフィルタ回路40は、第2方向A2における基板31の中央部と、基板31において半導体チップ10とは反対側に位置する他方の角部31fとの間に配置されている。すなわち、一方のフィルタ回路40は基板31の主面の中心に対して角部31e寄りの位置に配置されている。他方のフィルタ回路40は基板31の主面の中心に対して角部31f寄りの位置に配置されている。
【0043】
次に、図2を参照しながら半導体チップ10およびキャパシタ60の詳細について説明する。図2は、半導体チップ10およびキャパシタ60を示す平面図である。半導体チップ10は、細長く延びる矩形状を呈する。半導体チップ10は、キャパシタ60に対向する長辺12(一辺)を有する。
【0044】
例えば、長辺12は第2方向A2に沿って延びている。半導体チップ10は、基板15、ゲートパッド、活性領域、ドレインパッド18(電極パッド)、および空パッド19(第2中継パッド)を備える。基板15は、前述した長辺12を備える長方形状を呈する。
【0045】
半導体チップ10は、例えば、複数のドレインパッド18、および複数の空パッド19を備える。ドレインパッド18および空パッド19のそれぞれは、キャパシタ60に対向する長辺12に沿って並ぶように配置されている。半導体チップ10が空パッド19を備えることにより、ワイヤ群70の各ワイヤのワイヤ長を短くすることが可能とされている。
【0046】
前述したように、キャパシタ60は、誘電体61、上部電極62、下部電極(不図示)、およびパッド63(第1中継パッド)を備える。キャパシタ60(誘電体61)は、半導体チップ10に対向する長辺64(一辺)を有する。例えば、長辺64は第2方向A2に沿って延びている。
【0047】
上部電極62およびパッド63は、誘電体61上に配置されている。パッド63は、上部電極62よりも半導体チップ10側に設けられている。誘電体61は、前述した長辺64を備える長方形状を呈する。キャパシタ60は複数のパッド63を備える。複数のパッド63は上部電極62の半導体チップ10側に設けられる。例えば、長辺64に沿って複数のパッド63が並んでいる。各パッド63は第2方向A2に沿って延びる長辺を有する長方形状を呈する。
【0048】
前述したように、半導体チップ10およびキャパシタ60は、ワイヤ群70を介して互いに電気的に接続されている。ワイヤ群70は、第1ワイヤ71と、第2ワイヤ72と、第3ワイヤ73とを含む。第1ワイヤ71は、パッド63、および半導体チップ10のドレインパッド18を互いに接続する。第2ワイヤ72は、キャパシタ60の上部電極62および空パッド19を互いに接続する。第3ワイヤ73は、空パッド19およびパッド63を互いに接続する。
【0049】
例えば、ドレインパッド18およびパッド63を互いに接続する第1ワイヤ71、空パッド19およびパッド63を互いに接続する第3ワイヤ73、ならびに空パッド19および上部電極62を互いに接続する第2ワイヤ72は、この順で第2方向A2に沿って並んでいる。第1ワイヤ71、第2ワイヤ72、および第3ワイヤ73の少なくともいずれかのワイヤ長は、一例として、0.6mmである。なお、第2ワイヤ72は、第1ワイヤ71および第3ワイヤ73より長くてもよい。
【0050】
このように、本実施形態では、半導体チップ10およびキャパシタ60を互いに接続するワイヤ群70が第1ワイヤ71、第2ワイヤ72、および第3ワイヤ73を備える。これにより、ワイヤ群70を構成する各ワイヤのワイヤ長を短くすることが可能である。図3に例示されるように、ワイヤ長(L)が短いことによって、各ワイヤの溶断電流(I)が高くなる。
【0051】
図4は、半導体チップ10、キャパシタ60、および第3ワイヤ73を示す図である。図4に示されるように、半導体チップ10は、例えば、Ag-P層10bと、Au層10cと、SiC層10dと、GaN層10fとを含む。半導体チップ10は、Ag-P層10bの上にAu層10cが設けられ、Au層10cの上にSiC層10dが設けられ、SiC層10dの上にGaN層10fが設けられた構成を備える。
【0052】
空パッド19は、GaN層10fの上に設けられる。空パッド19は、例えば、金(Au)を含んでいる。半導体チップ10では、空パッド19からGaN層10fを介してSiC層10dに熱が流入する。ワイヤ群70(例えば第3ワイヤ73)からの熱が放熱され、発熱によるワイヤ群70の溶断を抑制することができる。一例として、底板4eの厚さT1は1000μm、Ag-P層10bの厚さT2は30μm、Au層10cおよびSiC層10dの厚さT3は100μmである。GaN層10fの厚さT4は0.6μm、空パッド19の厚さT5は10μm、空パッド19からのパッド63の立ち上がりの高さHは100μmである。
【0053】
例えば、半導体チップ10の基板15がAg-P層10b、Au層10cおよびSiC層10dを含む。前述したように、基板15は、素子で生じた熱を放熱する放熱板として機能する。基板15は、例えば、放熱性が高い材料によって構成されている。例えば、基板15は、SiC層10dと共に又はSiC層10dに代えて、ダイヤモンド層または金属層を備えていてもよい。基板15の金属層の材料は、例えば、銅もしくは金を含む赤色系金属材料、または、銀、ニッケルもしくはアルミニウムを含む銀白色系金属材料である。
【0054】
キャパシタ60は、例えば、Ag-P層60bと、Au層60cと、セラミック層60dとを含む。キャパシタ60は、Ag-P層60bの上にAu層60cが設けられ、Au層60cの上にセラミック層60dが設けられた構成を備える。パッド63は、セラミック層60dの上に設けられる。パッド63は、例えば、金(Au)を含んでいる。キャパシタ60では、ワイヤ群70(例えば第3ワイヤ73)からの熱がパッド63からセラミック層60dに放熱される。その結果、発熱によるワイヤ群70の溶断を抑制することができる。
【0055】
図5は、図1で示した半導体チップ10、キャパシタ60およびワイヤ群70の全体を示す平面図である。図5に示されるように、ワイヤ群70は、複数の第1ワイヤ71、複数の第2ワイヤ72、および複数の第3ワイヤ73を含んでいる。ワイヤ群70は、第1ワイヤ71、第2ワイヤ72、および第3ワイヤ73からなる複数の組75を備えていてもよい。例えば、複数の組75は、第2方向A2に沿って並んでいる。
【0056】
例えば、各組75では、第1ワイヤ71、第3ワイヤ73および第2ワイヤ72がこの順で第2方向A2に沿って並ぶように配置されている。一例として、組75の数は9である。例えば、空パッド19の第2方向A2の長さL1は、ドレインパッド18の第2方向A2の長さL2よりも長い。一例として、空パッド19の長さL1は250μmであり、ドレインパッド18の長さL2は150μmである。第2方向A2の一端に位置するドレインパッド18から第2方向A2の他端に位置するドレインパッド18までの長さXは5.34mmである。
【0057】
次に、実施形態に係る半導体装置1から得られる作用効果について説明する。半導体装置1では、半導体チップ10が基板15上にトランジスタおよびドレインパッド18を備える。キャパシタ60は誘電体61を挟む上部電極62および下部電極を備える。第1ワイヤ71は、半導体チップ10のドレインパッド18とパッド63とを互いに接続する。第3ワイヤ73は、パッド63と、空パッド19とを互いに接続する。第2ワイヤ72は、空パッド19とキャパシタ60の上部電極62とを互いに接続する。よって、半導体チップ10とキャパシタ60とは、半導体チップ10から延びる第1ワイヤ71、パッド63、第3ワイヤ73、半導体チップ10上の空パッド19、およびキャパシタ60に向かって延びる第2ワイヤ72を介して互いに接続される。
【0058】
第1ワイヤ71、パッド63、第3ワイヤ73、空パッド19、および第2ワイヤ72を備えることによって、半導体チップ10のドレインパッド18に接続されるワイヤを第1ワイヤ71のみとすることが可能となる。各ワイヤがパッド63および空パッド19を介して互いに接続されることにより、各ワイヤを短くすることができる。
【0059】
パッド63は、キャパシタ60の誘電体61上における上部電極62から離間した位置に配置されていてもよい。空パッド19は、半導体チップ10の長辺12に沿って配置されていてもよい。この場合、パッド63をキャパシタ60の誘電体61上に配置することができる。空パッド19をキャパシタ60に対向する半導体チップ10の長辺12に沿って配置することができる。
【0060】
ドレインパッド18は、半導体チップ10の長辺12に沿って配置されており、空パッド19は、ドレインパッド18に隣接して配置されていてもよい。この場合、半導体チップ10上のドレインパッド18および空パッド19を、キャパシタ60に対向する半導体チップ10の長辺12に沿って並べるように配置することが可能となる。
【0061】
半導体装置1は、キャパシタ60の長辺64に沿って並ぶ複数のパッド63と、半導体チップ10の長辺12に沿って並ぶ複数の空パッド19、および複数のドレインパッド18と、を備えてもよい。複数の空パッド19のそれぞれは、ドレインパッド18に隣接して配置されていてもよい。この場合、半導体チップ10に対向するキャパシタ60の長辺64に沿って複数のパッド63を並べることができると共に、キャパシタ60に対向する半導体チップ10の長辺12に沿ってドレインパッド18および空パッド19を並べることができる。
【0062】
基板15は、炭化ケイ素(SiC)、ダイヤモンド、または金属によって構成されていてもよい。この場合、基板15を放熱性が高い材料によって構成することが可能となる。
【0063】
次に、第1の変形例に係る半導体装置について図6を参照しながら説明する。図6に示されるように、第1の変形例に係る半導体装置は、ドレインパッド18A、空パッド19B、パッド63A、およびワイヤ群70Aを備える。ドレインパッド18Aはドレインパッド18とは異なり、空パッド19Bは空パッド19とは異なる。パッド63Aはパッド63とは異なり、ワイヤ群70Aはワイヤ群70とは異なる。以下では、前述した半導体装置1の説明と重複する説明を適宜省略する。
【0064】
図7は、図6で示した第1の変形例に係る半導体装置の半導体チップ10Aおよびキャパシタ60Aの第2方向A2の全体を示す平面図である。図7に示されるように、第1の変形例に係る半導体チップ10Aは、空パッド19Aおよび空パッド19Bを備える。空パッド19Aは、半導体チップ10Aにおける第2方向A2の両端のそれぞれに設けられる。空パッド19Aの形状、大きさ、および機能は、例えば、前述した空パッド19と同一である。空パッド19Bは、空パッド19Aから見て半導体チップ10Aの第2方向A2の中央側に配置されている。複数の空パッド19Bが一対の空パッド19Aの間に挟み込まれている。
【0065】
第1の変形例に係る半導体装置では、ドレインパッド18Aに1本または2本の第1ワイヤ71が接続されている。空パッド19Bに2本の第2ワイヤ72および2本の第3ワイヤ73が接続されており、パッド63Aに1本または2本の第1ワイヤ71および1本または2本の第3ワイヤ73が接続されている。第1の変形例に係る半導体装置では、空パッド19Bおよびパッド63Aが複数のワイヤが接続されるパッドとして共通化されている。
【0066】
ワイヤ群70Aは複数の第1組75Aおよび複数の第2組75Bを備えており、第1組75Aと第2組75Bとではワイヤの並び順が互いに異なっている。第1組75Aおよび第2組75Bは、例えば、第2方向A2に沿って交互に並んでいる。第1組75Aでは、第2ワイヤ72、第3ワイヤ73および第1ワイヤ71がこの順で第2方向A2に沿って並ぶように配置されている。第2組75Bでは、第1ワイヤ71、第3ワイヤ73および第2ワイヤ72がこの順で第2方向A2に沿って並ぶように配置されている。一例として、第1組75Aの数、および第2組75Bの数は6である。例えば、空パッド19Bの第2方向A2の長さL3、およびパッド63Aの第2方向A2の長さは、500μmである。
【0067】
以上、第1の変形例に係る半導体装置は、複数の第1ワイヤ71、および複数の第2ワイヤ72を備える。互いに隣接する複数の第1ワイヤ71のそれぞれは共通のパッド63Aに接続されている。互いに隣接する複数の第2ワイヤ72のそれぞれは共通の空パッド19Bに接続されている。したがって、パッド63Aおよび空パッド19Bをワイヤの接続部としてより有効利用することができる。また、ワイヤ群70Aの各ワイヤのワイヤ長を更に短縮できる。ワイヤ群70Aの各ワイヤの間隔が短くなって相互インダクタンスが増加するので、相互インダクタンスの増加分だけ各ワイヤのワイヤ長を短縮させることが可能となる。従って、ワイヤ群70Aの各ワイヤの溶断の可能性を更に低減させることができる。
【0068】
より具体的には、図8に例示されるように、第2方向A2の端部に位置するワイヤW1は、片側最近接のワイヤW2と、次に隣接するワイヤW3の影響を主に受ける。一方、ワイヤW4は、両側のワイヤW2、ワイヤW3、ワイヤW5およびワイヤW6の影響を受けるため、相互インダクタンスによる実効的なワイヤ長がワイヤW1と比較して大きく変化する。各ワイヤの長さをl、各ワイヤの半径をr、各ワイヤのグランドからの高さをh、ワイヤの間隔をd、真空の透磁率をμ0とすると、相互インダクタンスは以下の式(1)のように表される。
【数1】
上記の式(1)より、相互インダクタンスMは、ワイヤの長さlに比例すると共に、ワイヤの間隔dが狭いほど大きくなる。したがって、ワイヤの間隔が狭いほど、相互インダクタンスMが大きくなるので、ワイヤの長さlを短くすることが可能となる。
【0069】
続いて、第2の変形例に係る半導体装置について図9および図10を参照しながら説明する。図9は第2の変形例に係る半導体チップ10Cおよびキャパシタ60Cの表面を示している。図10は半導体チップ10Cおよびキャパシタ60Cの裏面を示している。半導体チップ10Cは、ドレインパッド18A、ドレインパッド18B、および空パッド19A,19Bを備える。
【0070】
本変形例において、ドレインパッド18Aは、半導体チップ10Cにおける第2方向A2の両端のそれぞれに設けられる。ドレインパッド18Aには、例えば、1本の第1ワイヤ71が接続されている。ドレインパッド18Bには2本の第1ワイヤ71が接続されている。空パッド19Bには、2本の第2ワイヤ72、および2本の第3ワイヤ73が接続されている。
【0071】
キャパシタ60Cは、誘電体61、上部電極62、パッド63A、およびパッド63Bを備える。パッド63Bは、キャパシタ60Cにおける第2方向A2の両端のそれぞれに設けられる。パッド63Aには、2本の第1ワイヤ71、および2本の第3ワイヤ73が接続されている。パッド63Bには、1本の第1ワイヤ71、および1本の第3ワイヤ73が接続されている。第2の変形例に係るワイヤ群70Cは、第2方向A2に沿って並ぶ複数の第1組75A、および複数の第2組75Bを備える。第2方向A2に沿って第2組75Bおよび第1組75Aが交互に並んでいる。
【0072】
半導体チップ10Cは裏面電極10gを更に備え、キャパシタ60Cは裏面電極67を更に備える。裏面電極10gは、例えば、半導体チップ10の長辺12、長辺13、および短辺14に沿った長方形状を呈する。裏面電極10gは、ゲートパッド16および活性領域17の半導体チップ10Cの裏面に設けられている。裏面電極10gは、ドレインパッド18A,18Bおよび空パッド19Bの半導体チップ10Cの裏面には設けられていない。すなわち、裏面電極10gは、半導体チップ10Cにおけるドレインパッド18A,18Bおよび空パッド19Bの裏側から削除されている。
【0073】
キャパシタ60Cの裏面電極67は、上部電極62の裏面に設けられている。裏面電極67は、パッド63Aおよびパッド63Bのキャパシタ60Cの裏面には設けられていない。すなわち、裏面電極67は、キャパシタ60Cにおけるパッド63Aおよびパッド63Bの裏側から削除されている。
【0074】
以上、第2の変形例に係る半導体装置は、キャパシタ60Cの裏面に、パッド63Aおよびパッド63Bに対向する領域以外の領域に設けられる裏面電極67を備える。このように、パッド63Aおよびパッド63Bの裏面に裏面電極67が設けられないことにより、パッド63Aおよびパッド63Bで発生する寄生容量を抑制することができる。
【0075】
第2の変形例に係る半導体装置は、半導体チップ10Cの裏面、または基板15の裏面に、空パッド19Bに対向する領域以外の領域に設けられる裏面電極10gを備える。このように、空パッド19Bの裏面に裏面電極10gが設けられないことにより、空パッド19Bで発生する寄生容量を抑制することができる。
【0076】
次に、第3の変形例に係る半導体装置について図11を参照しながら説明する。図11に示されるように、第3の変形例に係る半導体装置は、半導体チップ10、キャパシタ60D、および中継基板80を備える。キャパシタ60Dは、パッド63を有しない点において前述したキャパシタ60と異なる。第3の変形例に係る半導体装置は、パッド63に代えて、半導体チップ10およびキャパシタ60Dとは別体とされた中継基板80に設けられた中継パッド81(第1中継パッド)を備える。
【0077】
中継基板80は、第2方向A2に延びる長辺、および第1方向A1に延びる短辺を有する長方形状とされている。中継パッド81は、中継基板80の長辺に沿って延びる長辺、および中継基板80の短辺に沿って延びる短辺を有する長方形状とされている。中継パッド81には、複数のドレインパッド18のそれぞれから延びる複数の第1ワイヤ71、および複数の空パッド19から延びる複数の第3ワイヤ73が接続されている。
【0078】
以上、第3の変形例に係る半導体装置では、中継パッド81は、キャパシタ60Dと半導体チップ10の間に設けられている。したがって、中継パッド81をキャパシタ60Dおよび半導体チップ10の双方から離間した場所に配置することが可能となる。
【0079】
以上、本開示に係る半導体装置の実施形態について説明した。しかしながら、本発明は、前述した実施形態または変形例に限定されない。すなわち、本発明が請求の範囲に記載された要旨を変更しない範囲において種々の変形および変更が可能であることは、当業者によって容易に認識される。例えば、半導体装置の各部品の形状、大きさ、数、材料および配置態様は、前述した内容に限られず適宜変更可能である。
【0080】
例えば、前述の実施形態では、半導体チップ10が2つの増幅素子11を備える例について説明した。しかしながら、増幅素子11の数は、1つであってもよいし、3つ以上であってもよく、適宜変更可能である。
【0081】
上記では、キャパシタ60のパッド63に代えて、半導体チップ10およびキャパシタ60Dとは別体とされた中継基板80に設けられた中継パッド81を備える例について説明した。しかしながら、半導体チップ10の空パッド19に代えて、半導体チップ10およびキャパシタ60とは別体とされた中継基板に設けられた中継パッドを備えていてもよい。このように、中継パッドは、半導体チップ10またはキャパシタ60と一体に設けられていてもよいし、別体に設けられていてもよい。中継パッドの配置態様については適宜変更可能である。第1ワイヤ71、第2ワイヤ72および第3ワイヤ73の数、および配置態様についても適宜変更可能である。
【符号の説明】
【0082】
1…半導体装置
2…入力端子
3…出力端子
4…パッケージ
4a,4b…端壁
4c,4d…側壁
4e…底板
9a,9b,9c,9e,9f…ボンディングワイヤ
10,10A,10C…半導体チップ
10b…Ag-P層
10c…Au層
10d…SiC層
10f…GaN層
10g…裏面電極
11…増幅素子
12…長辺(一辺)
13…長辺
14…短辺
15…基板
16…ゲートパッド
17…活性領域
18,18A,18B…ドレインパッド(電極パッド)
19,19A,19B…空パッド(第2中継パッド)
20…分岐回路基板
21…基板
21a,21b…長辺
21c,21d…短辺
22…分岐回路
23…配線パターン
23a…金属パッド
23b…膜抵抗
30…合成回路基板
31…基板
31a,31b…長辺
31c,31d…短辺
31e,31f…角部
32…合成基板
33…配線パターン
33a…金属パッド
33b…膜抵抗
40…フィルタ回路
50…キャパシタ
60,60A,60C,60D…キャパシタ
60b…Ag-P層
60c…Au層
60d…セラミック層
61…誘電体
62…上部電極
63,63A,63B…パッド(第1中継パッド)
64…長辺(一辺)
65…長辺
66…短辺
67…裏面電極
70,70A,70C…ワイヤ群
71…第1ワイヤ
72…第2ワイヤ
73…第3ワイヤ
75…組
75A…第1組
75B…第2組
80…中継基板
81…中継パッド(第1中継パッド)
A1…第1方向
A2…第2方向
d…間隔
M…相互インダクタンス
W1,W2,W3,W4,W5,W6…ワイヤ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11