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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-03-18
(45)【発行日】2025-03-27
(54)【発明の名称】圧着端子
(51)【国際特許分類】
   H01R 4/18 20060101AFI20250319BHJP
【FI】
H01R4/18 A
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2021084262
(22)【出願日】2021-05-19
(65)【公開番号】P2022177863
(43)【公開日】2022-12-02
【審査請求日】2024-05-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000227995
【氏名又は名称】TE Connectivity Japan合同会社
(74)【代理人】
【識別番号】100100077
【弁理士】
【氏名又は名称】大場 充
(74)【代理人】
【識別番号】100136010
【弁理士】
【氏名又は名称】堀川 美夕紀
(72)【発明者】
【氏名】池谷 洋之
(72)【発明者】
【氏名】宍倉 誠司
【審査官】山下 寿信
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-277185(JP,A)
【文献】実開昭55-105266(JP,U)
【文献】実開昭54-118694(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01R 4/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
相手端子と接触する接触部と、
電気ケーブルの芯線を圧着する芯線バレルと、前記芯線を覆う電気絶縁被覆を圧着する被覆バレルと、前記芯線バレルおよび前記被覆バレルを支持する基部と、を有する圧着部と、を備え、
前記電気ケーブルは、
前記電気絶縁被覆から露出する前記芯線に折り返しが形成され、
前記芯線バレルは、
前記折り返しにより形成される、隣接する一対の前記芯線を圧着し、
前記接触部と前記芯線バレルの間に、
前記折り返しを係止する係止体が設けられ、
前記係止体は、
前記接触部の側である前方から前記圧着部の側である後方に向けて延び、かつ、前記基部から離れて前記折り返しを係止する、
ことを特徴とする圧着端子。
【請求項2】
前記係止体は、
前記折り返しを係止する係止面を備え、
前記係止面は、前記接触部の側を向く、
請求項1に記載の圧着端子。
【請求項3】
前記係止面は、
前記基部に対して傾斜する、
請求項2に記載の圧着端子。
【請求項4】
前記係止体は、
前記接触部の側を向く第1係止面と、前記第1係止面の一端から前記接触部の側に延びる第2係止面と、前記第1係止面の他端から前記接触部に向けて延びる第3係止面と、を備え、
前記折り返しは、
前記第1係止面、前記第2係止面および前記第3係止面により三方向から取り囲まれる、
請求項に記載の圧着端子。
【請求項5】
前記係止体は、
前記接触部の側を向く第1係止面と、前記第1係止面の一端から前記接触部の側に延び、前記基部の側を向く第2係止面と、前記第2係止面に連なるとともに、前記第1係止面に対向する第3係止面と、を備える、
請求項に記載の圧着端子。
【請求項6】
複数の前記芯線バレルは、
一対の前記芯線のそれぞれの芯線を独立して圧着する、
請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の圧着端子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は電気ケーブルが圧着により接続される電気コネクタの圧着端子に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の圧着端子は、電気ケーブルの末端部において露出される芯線を圧着する。芯線を圧着すると、圧着部分から突出する芯線の先端部分が跳ね上がる傾向がある。芯線の先端が跳ね上がっていると、相手側の電気コネクタとの嵌合に悪影響を及ぼすことがある。
【0003】
そこで、例えば特許文献1、特許文献2は、芯線の先端の跳ね上がりを防止できる電気コネクタを提案する。
特許文献1は、芯線バレル側に開口するアーチ状の跳ね防止部を設け、この跳ね防止部に芯線の先端を挿入する電気コネクタを提案する。また、特許文献2は、芯線バレルから突出された芯線の先端を外周側から押圧する出代部押え片を設けることを提案する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2010-61872号公報
【文献】特開2017-188333号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近時、電気コネクタが適用される用途の軽量化に応じて、電気コネクタの軽量化が望まれる。特に多数の電気コネクタが適用される用途についてはこの傾向が顕著であり、用いられる電気ケーブルの軽量化のために、線径の小さい電気ケーブルを用いられる。
そこで本開示は、線径の小さい電気ケーブルを用いるのに好適な圧着端子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の圧着端子は、相手端子と接触する接触部と、電気ケーブルの芯線を圧着する芯線バレルと、芯線を覆う電気絶縁被覆を圧着する被覆バレルと、芯線バレルおよび被覆バレルを支持する基部と、を有する圧着部と、を備える。
本開示における電気ケーブルは、電気絶縁被覆から露出する芯線に折り返しが形成される。
また、本開示における芯線バレルは、折り返しによる、隣接する一対の芯線を圧着し、接触部と芯線バレルの間に、折り返しを係止する係止体が設けられる。
【0007】
本開示における係止体は、折り返しを係止する係止面を備える。この係止面は、好ましくは、接触部の側を向く。
【0008】
本開示における係止面は、好ましくは、基部(35F2等その延長部分も含む)に対して傾斜する。なお、「傾斜」とは例えば係止面が、折り返しが当接する基部31(または35F2等その延長部分)の面方向に対して90度超180度未満であることを指し、その効果として、電線ケーブルが(B)方向に引っ張られた際に折り返し102が係止されることを(傾斜の無い場合に比べて)より確実にするものである。例えば、図3(b)において、基部31の面を0度とした場合、係止面35Bは、およそ135度の傾斜を形成している。また、図4(b)において、係止面35Cも同様におよそ135の傾斜を形成している。また、図7(b)において、基部31の延長方向を0度とした場合、第1係止面35F1は、およそ100度の傾斜を形成している。
【0009】
本開示における折り返しは、好ましくは、基部と係止体の間に挟まれる。
【0010】
本開示における係止体は、好ましくは、接触部の側を向く第1係止面と、第1係止面と交差する第2係止面と、を備える。
【0011】
本開示における芯線バレルは、好ましくは、一対の芯線のそれぞれを独立して圧着する。
【発明の効果】
【0012】
本開示の圧着端子によれば、芯線バレルが、折り返しによる、隣接する一対の芯線を圧着するので、芯線の線径が細くても、芯線の圧着力を確保できる。しかも、本開示の圧着端子によれば、折り返しを係止する係止体を設けるので、折り返しを含む芯線を所望する位置に設けることができる。以上より、本開示の圧着端子によれば、線径の小さい電気ケーブルを用いても、安定した圧着状態を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】第1実施形態に係る圧着端子を示し、(a)は左側面図、(b)は平面図、(c)は右側面図である。
図2】(a)は図1(b)の要部拡大図、(b)は(a)のIIb-IIb線矢視図、(c)は(a)のIIIc-IIIc線矢視図であり、(d)は電気ケーブルを示す平面図である。
図3】第2実施形態に係る圧着端子を示し、(a)は図2(a)に対応する図、(b)は図2(b)に対応する図である。
図4】第3実施形態に係る圧着端子を示し、(a)は図2(a)に対応する図、(b)は図2(b)に対応する図である。
図5】第4実施形態に係る圧着端子を示し、(a)は図2(a)に対応する図、(b)は図2(b)に対応する図である。
図6】第5実施形態に係る圧着端子を示し、(a)は図2(a)に対応する図、(b)は図2(b)に対応する図である。
図7】第6実施形態に係る圧着端子を示し、(a)は図2(a)に対応する図、(b)は図2(b)に対応する図である。
図8】芯線の係止体のない圧着端子を示し、(a)は芯線が圧着される前を示し、(b)は芯線が圧着された後を示し、(c)は芯線の長手方向Yの位置ずれを示す図である。
図9】芯線の係止体のない圧着端子を示し、(a)は芯線が圧着される前を示し、(b)は芯線が圧着された後を示し、(c)は芯線の跳ね上がりによる位置ずれを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、添付図面を参照しながら、実施形態に係る複数の圧着端子1A,1B,1C,1D,1E,1Fについて説明する。これらの実施形態は、以下の共通点を備える。これらのいずれの実施形態も、電気ケーブル100の芯線101の折り返し102について安定した保持状態が得られるように、当該折り返し部分が圧着端子1A~1Fに係止されている。また、これらのいずれの実施形態も電気的に接続される一本の電気ケーブル100が圧着端子1A~1FにおいてU字状に折り返されて幅方向Xに隣接する見かけ上で二本(以下、一対という)の芯線101のそれぞれが独立して圧着されている。
ここで、圧着端子1A,1B,1Cは、圧着部30の側から接触部10の側に向けて延びる。これに対して、圧着端子1D,1E,1Fは、接触部10の側から圧着部30の側に向けて延びる。
【0015】
〔第1実施形態:図1図2図3
[圧着端子1Aの全体構成:図1
第1実施形態に係る圧着端子1Aは、図1に示すように、リセプタクル型の接触部10と、電気ケーブル100を圧着する圧着部30とが、例えば銅合金からなる金属板を板金加工することにより一体的に形成されている。
図1に示すように、圧着端子1Aにおいて、接触部10が設けられる側を前または前方(F)、圧着部30が設けられる側を後または後方(B)と定義する。この前および後は相対的な定義である。また、圧着端子1Aにおいて、幅方向X、長手方向Yおよび高さ方向Zを図1に示すように定義する。
【0016】
[接触部10:図1
圧着端子1Aは、互いに嵌合される相手端子3と電気的に接続される。本実施形態の圧着端子1Aは、図1に示すように、接触部10としてリセクタプル型を採用しているが、本開示における接触部はこれに限定されるものではなく、例えば、タブ型等の雄型接触部を採用してもよい。
接触部10は、図示を省略するタブ型端子が挿入される受容口13が一端側に開口されたボックス状の端子本体11と、受容口13から挿入されるタブ型端子を収容する端子本体11の内部に設けられる受容キャビティ15と、を備える。図示を省略するが、受容キャビティ15の内部には、タブ型端子を押し付けるばね片が設けられる。
【0017】
[圧着部30:図1図2
圧着部30は、図1および図2に示すように、電気ケーブル100を圧着により圧着端子1Aに固定するとともに芯線101と電気的に接続される。
圧着部30は、図1および図2(a)に示すように、電気ケーブル100が載せられる基部31と、基部31に支持される一対の芯線バレル37,37および一対の被覆バレル39,39と、を備える。芯線バレル37,37のそれぞれは、基部31の幅方向Xの両端から立ち上がり、また、被覆バレル39,39のそれぞれは基部31の幅方向Xの両端から立ち上がる。被覆バレル39,39は芯線バレル37,37よりも後方(B)に設けられる。
【0018】
[基部31:図1図2
基部31は、図1および図2(a),(b)に示すように、接触部10と連なり長手方向Yに延びるように構成され、電気ケーブル100の芯線101と電気絶縁被覆103の双方を支持する。
基部31には、基部31から立ち上がる係止体33Aが設けられる。
係止体33Aは、芯線101の折り返し102の内側が係止されることで、芯線101の浮き上がりを阻止できる。また、係止体33Aを定位置に設けることにより、芯線バレル37,37から折り返し102までの寸法を一定にできる。
【0019】
係止体33Aは、図2(b)に示すように、例えば基部31を切り起こすことにより、基部31からほぼ垂直に立ち上がる。係止体33Aは、概ね直方体状の形態をなしており、その前端に折り返し102が係止される係止面35Aが設けられる。係止面35Aは、接触部10の側、つまり前方(F)を向いている。係止体33Aは、芯線101の折り返し102を係止できる限りその形状および寸法は任意であるが、切り起こしによる係止体33Aの形状は限定される。
基部31には、係止体33Aを切り起こして形成する名残として、その表裏を貫通する打抜孔36が形成される。本実施形態においては、係止体33Aよりも前方に打抜孔36が形成されるように、切り起こしがなされている。
【0020】
[芯線バレル37,37:図1図2(a),(c)]
一対の芯線バレル37,37は、電気ケーブル100の芯線101を圧着して芯線101を圧着部30の基部31に固定する。ここで、芯線バレル37,37は、図2(a),(c)に示すように、折り返し102で折り返された一本の芯線101を2か所で個別に圧着する。芯線バレル37,37は、好ましくは、図2(c)に示すように、芯線101の周囲を取り囲みつつ、芯線101を基部31に押し付けて圧着する。
【0021】
芯線バレル37は、図2(a)に示すように、平面視した形状が矩形をなしているが、これはあくまで一例である。例えば、次に設位する被覆バレル39のように、幅方向Xの寸法が先端に向けて連続的に狭くなる形態を採用できる。
【0022】
[被覆バレル39,39:図1図2(a)]
次に、被覆バレル39,39は、電気ケーブル100の電気絶縁被覆103を圧着して電気絶縁被覆103を圧着部30の基部31に固定する。
被覆バレル39,39は、図1および図2(a)に示すように、平面視した形状が台形状をなしている。これは一例であり、電気絶縁被覆103を圧着できる限り、その形状は任意である。また、ここでは一対の被覆バレル39,39により折り返された電気ケーブル100の電気絶縁被覆103の2か所で保持する例を示しているが、これは本開示の一例に過ぎない。形状、寸法を調整することにより、一つの被覆バレル39により電気絶縁被覆103の2か所を圧着することもできる。また、ここでは一対の被覆バレル39,39を長手方向Yの位置をずらして設ける例を示しているが、これも本開示の一例に過ぎない。長手方向Yの同じ位置に設けるとともに、一方の被覆バレル39に他方の被覆バレル39を積層するように圧着してもよい。
【0023】
[電気ケーブル100:図1図2(d)]
圧着端子1Aに用いられる電気ケーブル100は、図2(d)に示すように、芯線101と、芯線101を覆う電気絶縁被覆103と、を備えている。電気ケーブル100は、電気絶縁被覆103の一部が剥ぎ取られることで、芯線101が露出する部分がある。電気ケーブル100は、芯線101が剥き出しにされたところに折り返し102が形成される。電気ケーブル100は、折り返し102と電気絶縁被覆103の間において、芯線バレル37,37により隣接する一対の芯線101のそれぞれが独立して圧着される。独立して圧着される一対の芯線101の部分には、図2(a),(c)に符号101Pが付されている。また、折り返し102を有することにより、芯線101だけでなく電気絶縁被覆103の部分についても、見かけ上は2本の電気絶縁被覆103が隣接して並ぶ。被覆バレル39,39による電気絶縁被覆103の圧着はこの隣接して並ぶ部分で行われる。
【0024】
[効 果:図2図9
圧着端子1Aは、基部31に係止体33Aが設けられ、電気ケーブル100の折り返し102が係止体33Aに係止される。したがって、この圧着端子1Aによれば、以下の効果を奏する。
【0025】
(1)圧着される電気ケーブル100の位置が定まる。
予め定められる位置に係止体33Aを設け、この係止体33Aに電気ケーブル100の折り返し102が係止されるので、電気ケーブル100は定位置に設けられる。この定位置は、高さ方向Z、長手方向Yおよび幅方向Xの両者において実現される。
係止体33Aに折り返し102が係止されると、係止体33Aと折り返し102の間の摩擦力により、折り返し102が跳ね上がって係止体33Aから上方(基部31から離れる方向)に移動して、高さ方向Zに抜け出るのが抑えられる。
また、芯線バレル37,37から係止体33Aの係止面35Aまでの長手方向Yの距離が定まるので、折り返し102を係止体33Aに係止させれば、折り返し102の位置は定まるので、電気ケーブル100の全体としての長手方向Yの位置も定まる。
さらに、係止体33Aを基部31の幅方向Xの中央に設け、折り返し102を係止体33Aに係止させれば、折り返し102および折り返し102に連なる芯線101を幅方向Xの中央に整列させることができる。
以上の通りであり、本実施形態によれば、安定した電気ケーブル100の圧着状態を得ることができる。
【0026】
ここで、図8および図9を参照して、係止体33Aが設けられていない場合について説明する。
図8(a)および図9(a)に示すように芯線101および電気絶縁被覆103が圧着される前の状態から、図8(b)および図9(b)に示すようにそれぞれ芯線バレル37,37および被覆バレル39,39で圧着されたとする。
【0027】
しかし、圧着される前の折り返し102の位置は、例えば図8(c)に示すように、実線で示される正規の位置よりも、破線で示されるように前方(F)または後方(B)に位置ずれすることがある。これに対して、前述したように正規の位置に係止体33Aを設け、かつ、折り返し102を係止体33Aに係止させれば、位置ずれを規制することがない。図8(c)は長手方向Yについてだけ示しているが、幅方向Xについても位置ずれの規制有無は同様である。
【0028】
また、芯線バレル37,37による圧着すると、図9(c)に示すように、折り返し102および折り返し102に連なる芯線101が跳ね上がることがある。ところが、係止体33Aを設け、係止体33Aに折り返し102を係止すれば、前述したように、係止体33Aと折り返し102の間の摩擦により、当該部分の跳ね上がりを抑えることができる。
【0029】
(2)電気ケーブル100の保持力を、芯線101に傷を付けずに大きくできる。
電気ケーブル100、特に芯線101が細い場合、圧着により芯線101を強い力で保持することは容易ではない。仮に強い力で保持すると、芯線101を傷つけるおそれがある。これに対して圧着端子1Aは、前述したように、一対の芯線101のそれぞれが芯線バレル37,37により独立して圧着により保持される。したがって、圧着端子1Aによれば、1本、換言すると1か所のみを芯線バレル37で圧着するのに比べて、芯線101の保持力を2倍にすることができる。これは、同じ保持力を得ることを前提とすれば、1か所当たりの保持力を小さくできることを意味する。しかも、圧着端子1Aは、一対の電気絶縁被覆103についても、被覆バレル39,39により独立して圧着により保持されるので、この構成によっても保持力を大きくできる。
【0030】
(3)電気ケーブル100の座屈を防止して相手端子3と嵌合できる。
圧着端子1Aと相手端子3との嵌合は、圧着端子1Aについては電気ケーブル100の電気絶縁被覆103を手で持ちながら行われる。圧着端子1Aによれば、折り返し102を設けることにより、隣接して並ぶ見かけ上では2本の電気絶縁被覆103を持つことができる。したがって、1本だけの電気絶縁被覆103を持つのに比べて、手で持つ部分の強度が向上するので、電気ケーブル100の座屈を防ぎつつ相手端子3と嵌合できる。
【0031】
〔第2実施形態:図3
次に、本開示の第2実施形態に係る圧着端子1Bについて、図3を参照して説明する。なお、圧着端子1Aと共通する部分の説明は省き、圧着端子1Aとの相違点を中心にして説明する。第3実施形態以降も同様である。
【0032】
[圧着端子1Bの構成:図3
圧着端子1Bは、図3(a),(b)に示すように、電気ケーブル100の折り返し102が係止される係止体33Bを備える。係止体33Bは、圧着端子1Aと同様に、接触部10と圧着部30の基部31を切り起こすことにより形成されるが、基部31から接触部10に向けて連続的に背が高くなるように傾斜して立ち上がる。係止体33Bの係止面35Bは、基部31に対向する面側に設けられる。電気ケーブル100の折り返し102は、図3(b)に示すように、基部31に載せられた状態で係止体33Bの係止面35Bに接する。つまり、折り返し102が基部31と係止体33Bの係止面35Bに挟まれた状態で係止体33Bに係止される。
【0033】
[圧着端子1Bによる効果]
圧着端子1Bによると、圧着端子1Aと同様の効果を奏するのに加えて、以下の効果を奏する。つまり、圧着端子1Bによると、折り返し102が基部31と係止体33Bの係止面35Bに挟まれた状態で係止体33Bに係止されるので、圧着端子1Bが振動を受けたとしても、芯線101が係止状態から抜けにくい。
【0034】
〔第3実施形態:図4
次に、本開示の第3実施形態に係る圧着端子1Cについて、図4を参照して説明する。[圧着端子1Cの構成:図4
圧着端子1Cは、図4(a),(b)に示すように、電気ケーブル100の折り返し102が係止される係止体33Cを備える。係止体33Cは、圧着端子1Bの係止体33Bと同様に、基部31から接触部10に向けて連続的に背が高くなるように傾斜して立ち上がる。ただし、係止体33Cは、図4(b)に示すように、基部31から切り起こされるのに加えて、側断面がZ字状の折り曲げが加えられて形成されている。この折り曲げにより、係止体33Cの係止面35Cは、基部31に対向する面側に設けられる。電気ケーブル100の折り返し102は、図4(b)に示すように、基部31に載せられた状態で係止体33Cの係止面35Cに接する。つまり、折り返し102が基部31と係止体33Cの係止面35Cに挟まれた状態で係止体33Cに係止される。
【0035】
[圧着端子1Cによる効果]
圧着端子1Cによると、圧着端子1Aと同様の効果を奏するのに加えて、以下の効果を奏する。つまり、圧着端子1Cによると、折り返し102が基部31と係止体33Cの係止面35Cに挟まれた状態で係止体33Cに係止されるので、圧着端子1Cが振動を受けたとしても、芯線101が係止状態から抜けにくい。
また、圧着端子1Cによると、圧着端子1Bに対して以下の効果を奏する。つまり、圧着端子1Bは係止面35Bの図中の下方は基部31が存在しない打抜孔36が空いているが、圧着端子1Cの基部31にはそのような空孔がないため、基部31の強度を上げる効果を奏する。
【0036】
〔第4実施形態:図5
次に、本開示の第4実施形態に係る圧着端子1Dについて、図5を参照して説明する。
[圧着端子1Dの構成:図5
圧着端子1Dは、図5(a),(b)に示すように、電気ケーブル100の折り返し102が係止される係止体33Dを備える。係止体33Dは、圧着端子1A~1Cとは異なり、接触部10の側である前方(F)から圧着部30の側である後方(B)に向けて延びている。そして、係止体33Dは、その後端において高さ方向Zに立ち上がることで、接触部10の側を向く第1係止面35D1と、第1係止面35D1と交差する第2係止面35D2と、が形成される。電気ケーブル100の折り返し102は、図5(b)に示すように、基部31から離れる第2係止面35D2に載せられた状態で第1係止面35D1に係止される。
【0037】
[圧着端子1Dによる効果]
圧着端子1Dによると、圧着端子1Aと同様の効果を奏するのに加えて、以下の効果を奏する。つまり、圧着端子1Dによると、折り返し102を含む芯線101が基部31から離れた状態で係止体33Dに係止されるので、圧着端子1Dが振動や衝撃、外力等を受けたとしても、基部31からの振動を受けないために、芯線101が係止状態から抜けにくい。
【0038】
〔第5実施形態:図6
次に、本開示の第5実施形態に係る圧着端子1Eについて、図6を参照して説明する。
圧着端子1Eは、図6(a),(b)に示すように、電気ケーブル100の折り返し102が係止される係止体33Eを備える。係止体33Eは、図6(b)に示すように、圧着端子1Dの係止体33Dの上端から接触部10の側である前方(F)に向けて延びる部分を備えることで、U字状の側断面を要する。電気ケーブル100の折り返し102は、図6(b)に示すように、このU字状をなす係止体33Eは、接触部10の側を向く第1係止面35E1と、第1係止面35E1の高さ方向Zの一端、図6(b)における上端から接触部10の側に延びる第2係止面35E2と、第1係止面35E1の高さ方向Zの他端、図6(b)における下端から接触部10に向けて延びる第3係止面35E3と、を備える。折り返し102は第1係止面35E1、第2係止面35E2および第3係止面35E3で三方向から取り囲まれる領域において、専ら第1係止面35E1に係止される。
【0039】
[圧着端子1Eによる効果]
圧着端子1Eによると、圧着端子1Dと同様の効果を奏するのに加えて、三方向から取り囲まれる領域において第1係止面35E1に係止されるので、圧着端子1Eが振動を受けたとしても、芯線101が係止状態から抜けにくい。
【0040】
〔第6実施形態:図7
次に、本開示の第6実施形態に係る圧着端子1Fについて、図7を参照して説明する。
[圧着端子1Fの構成:図7
圧着端子1Fは、図7(a),(b)に示すように、電気ケーブル100の折り返し102が係止される係止体33Fを備える。係止体33Fは、圧着端子1Eの係止体33Fと同様に、U字状の側断面を有し、接触部10の側を向く第1係止面35F1と、第1係止面35F1の高さ方向Zの一端、図7(b)における上端から接触部10の側に延びる第2係止面35F2と、を備える。第2係止面35F2は、図7(b)における下向き、つまり基部31の側を向いている。加えて、係止体33Fは、第2係止面35F2に連なるとともに、第1係止面35F1に対向する第3係止面35F3を有する。このように係止体33Fは、折り返し102を覆う壁が、後方(B)の第1係止面35F1から前方(F)の第3係止面35F3にかけて設けられる。
【0041】
[圧着端子1Fによる効果]
圧着端子1Fによると、圧着端子1Eと同様の効果を奏するのに加えて、以下の効果を奏する。つまり、折り返し102を覆う壁を、前方(F)の第1係止面35F1から後方(B)の第3係止面35F3にかけて設けることで、芯線101が係止状態から抜けにくい形状を構成する。
【0042】
上記以外にも、本開示の主旨を逸脱しない限り、上記実施形態で挙げた構成を取捨選択したり、他の構成に適宜変更したりすることが可能である。
以上で説明した本実施形態は、芯線バレル37,37により一対の芯線101のそれぞれが独立して圧着され、また、一対の電気絶縁被覆103のそれぞれが被覆バレル39,39により独立して圧着される例を説明したが、本開示はこれに限定されない。例えば、一対の芯線101をまとめて一つの芯線バレルで圧着し、または、一対の電気絶縁被覆103をまとめて一つの被覆バレル39で圧着することができる。この場合でも、一対の芯線101が圧着され、一対の電気絶縁被覆103が圧着されるので、保持力の向上に寄与する。
【符号の説明】
【0043】
1A,1B,1C,1D,1E,1F 圧着端子
10 接触部
11 端子本体
13 受容口
15 受容キャビティ
30 圧着部
31 基部
33A,33B,33C,33D,33E,33F 係止体
35A,35B,35C 係止面
35D1,35E1,35F1 第1係止面
35D2,35E2,35F2 第2係止面
35E3,35F3 第3係止面
36 打抜孔
37 芯線バレル
39 被覆バレル
100 電気ケーブル
101 芯線
102 折り返し
103 電気絶縁被覆
X 幅方向
Y 長手方向
Z 高さ方向
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9