(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-03-18
(45)【発行日】2025-03-27
(54)【発明の名称】センサモジュール、電池パック
(51)【国際特許分類】
H01M 10/48 20060101AFI20250319BHJP
G01B 7/16 20060101ALI20250319BHJP
【FI】
H01M10/48 301
G01B7/16
(21)【出願番号】P 2021082909
(22)【出願日】2021-05-17
【審査請求日】2024-05-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000114215
【氏名又は名称】ミネベアミツミ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】森 公生
【審査官】赤穂 嘉紀
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2020/045499(WO,A1)
【文献】国際公開第2019/065752(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 10/42-10/48
G01B 7/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電池を収容する筐体の外面に接着される金属製の起歪体と、
前記起歪体の一方の面に設けられた、Cr混相膜を抵抗体とするひずみゲージと、を有し、
前記起歪体の他方の面に、前記筐体と接着される互いに離隔した複数の接着領域が画定され、
前記ひずみゲージは、前記起歪体の一方の面の前記接着領域とは対向しない領域に配置される、センサモジュール。
【請求項2】
前記起歪体は、断面視でL字型である、請求項1に記載のセンサモジュール。
【請求項3】
前記接着領域は、L字の長辺側と短辺側に1つずつ画定されている、請求項2に記載のセンサモジュール。
【請求項4】
L字の屈曲部は、前記筐体と接着されない非接着領域である、請求項2又は3に記載のセンサモジュール。
【請求項5】
前記起歪体は、細長状の平板であり、
前記接着領域は、前記起歪体の長手方向の両端に1つずつ画定されている、請求項1に記載のセンサモジュール。
【請求項6】
前記起歪体の長手方向の断面視において、2つの前記接着領域の間の領域の長さは、前記接着領域の合計の長さよりも長い、請求項5に記載のセンサモジュール。
【請求項7】
前記起歪体の長手方向の長さは、前記筐体の長さと一致する、請求項5又は6に記載のセンサモジュール。
【請求項8】
前記起歪体は、応力集中部を有し、
前記ひずみゲージは、前記応力集中部に配置されている、請求項1乃至7のいずれか一項に記載のセンサモジュール。
【請求項9】
前記応力集中部は、平面視で前記ひずみゲージを挟んで対向する2つの括れを有する、請求項8に記載のセンサモジュール。
【請求項10】
前記接着領域に接着層が設けられている、請求項1乃至9のいずれか一項に記載のセンサモジュール。
【請求項11】
請求項1乃至10のいずれか一項に記載のセンサモジュールが電池を収容する筐体の外面に接着された電池パック。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、センサモジュール、電池パックに関する。
【背景技術】
【0002】
モバイル機器等に用いられる電池パックにおいて、電池パック内の電池の寿命の低下等に起因して電池が膨張し、液漏れ等を引き起こす場合がある。そこで、電池パックにおいて、電池の膨張を検出することは重要であり、電池の膨張を検出する様々な装置が提案されている。
【0003】
一例として、リチウム2次電池の内側空間に配置したひずみゲージにより内部圧力を検出し、検出した内部圧力を表示器に表示する装置が挙げられる。この装置では、表示された内部圧力を監視することにより、リチウム2次電池が正常であるか異常であるかを判定することができる(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、電池の膨張により生じる歪みは小さいため、従来提案されていた装置では精度よく検出することが困難であった。
【0006】
本発明は、上記の点に鑑みてなされたもので、電池の状態を精度よく検出することが可能なセンサモジュールを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本センサモジュールは、電池を収容する筐体の外面に接着される金属製の起歪体と、前記起歪体の一方の面に設けられた、Cr混相膜を抵抗体とするひずみゲージと、を有し、前記起歪体の他方の面に、前記筐体と接着される互いに離隔した複数の接着領域が画定され、前記ひずみゲージは、前記起歪体の一方の面の前記接着領域とは対向しない領域に配置される。
【発明の効果】
【0008】
開示の技術によれば、電池の状態を精度よく検出することが可能なセンサモジュールを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】第1実施形態に係る電池パックを例示する平面図である。
【
図2】第1実施形態に係る電池パックを例示する断面図である。
【
図3】電池の膨張による筐体が変形した様子を例示する断面図(その1)である。
【
図4】第1実施形態に係るひずみゲージを例示する平面図である。
【
図5】第1実施形態に係るひずみゲージを例示する断面図である。
【
図6】第2実施形態に係る電池パックを例示する平面図である。
【
図7】第2実施形態に係る電池パックを例示する断面図である。
【
図8】電池の膨張により筐体が変形した様子を例示する断面図(その2)である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照して発明を実施するための形態について説明する。各図面において、同一構成部分には同一符号を付し、重複した説明を省略する場合がある。
【0011】
なお、以下の各実施形態や変形例では、主に電地の膨張を検出する例を示すが、これには限定されず、各実施形態に係るセンサモジュールは、電池の様々な状態を検出することができる。電池の様々な状態とは、電池の膨張以外には、例えば、電池の収縮、凸部や凹部の有無、形状分布、温度等が挙げられる。
【0012】
〈第1実施形態〉
図1は、第1実施形態に係る電池パックを例示する平面図である。
図2は、第1実施形態に係る電池パックを例示する断面図であり、
図1のA-A線に沿う断面を示している。
【0013】
図1及び
図2を参照すると、電池パック1は、筐体10と、センサモジュール20と、接着層31及び32とを有している。電池パック1は、センサモジュール20が電池を収容する筐体10の外面に接着された電池パックであり、パーソナルコンピュータやスマートフォン等の各種電子機器や携帯端末等に広く用いることができる。
【0014】
筐体10は、電池を収容するケースであり、例えば金属或いは樹脂により形成されている。筐体10の内部には、電池以外の部材、例えば、回路基板や外部出力端子等が収容されてもかまわない。筐体10に収容される電池は、例えば、リチウムイオン電池等の2次電池であり、適宜並列及び/又は直列に接続されて複数個収容されている。
【0015】
センサモジュール20は、電池の膨張による筐体10の変形を検出するセンサである。センサモジュール20は、起歪体50と、接着層70を介して起歪体50の一方の面に配置されたひずみゲージ100とを有している。
【0016】
起歪体50は、平面視で長方形状であり、断面視でL字型に屈曲している。ひずみゲージ100は、起歪体50のL字の長辺側の上面において、L字の長辺側と短辺側とが接続する屈曲部近傍に接着層70を介して設けられてる。言い換えれば、ひずみゲージ100は、筐体10の上面と側面とが接続する角部の上方に配置されている。
【0017】
接着層70の材料は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択できるが、例えば、エポキシ樹脂、変性エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、変性シリコーン樹脂、ウレタン樹脂、変性ウレタン樹脂等を用いることができる。また、接着層70として、両面テープを用いても良い。接着層70の厚さは、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択できるが、例えば、0.1μm~50μm程度とすることができる。
【0018】
起歪体50の下面には、筐体10と接着される互いに離隔した複数の接着領域が画定されている。
図2の例では、L字の長辺側の端部と短辺側の端部に1つずつ接着領域が画定されており、長辺側の接着領域には接着層31が設けられ、短辺側の接着領域には接着層32が設けられている。起歪体50において、L字の屈曲部は、筐体10と接着されない非接着領域である。
【0019】
起歪体50のL字の長辺側は接着層31を介して筐体10の上面に接着されており、起歪体50のL字の短辺側は接着層32を介して筐体10の側面に接着されている。接着層31及び32は、例えば、接着層70と同様とすることができる。
【0020】
起歪体50のひずみゲージ100が配置されている領域の反対面側(筐体10側)には、接着層は配置されていなく、空間Sが設けられている。言い換えれば、ひずみゲージ100は、起歪体50の上面の接着領域とは対向しない領域に配置されている。空間Sが設けられていることで、電池の膨張による筐体10の変形に伴ない起歪体50が容易に伸縮できるため、ひずみゲージ100の抵抗値の変化が大きくなり、筐体10の変形を感度良く検出することができる。
【0021】
起歪体50は、金属製である。起歪体50の材料としては、例えば、SUS(ステンレス鋼)、Al、Fe等を用いることができる。これらの中でも、低背化の点や、起歪体に対するひずみゲージの補正し易さの点で、SUSを用いることが好ましい。起歪体50の厚さは、例えば、0.05mm以上0.2mm以下程度とすることができる。起歪体50の厚さを0.05mm以上とすることで、必要な剛性が得られ、空間Sを確保することができる。起歪体50の厚さを0.2mm以下とすることで、起歪体50が十分に伸縮することができる。
【0022】
図3は、電池の膨張により筐体が変形した様子を例示する断面図(その1)である。
図3に示すように、例えば筐体10に配置された電池の内部にガスが発生すると、電池が膨張し、筐体10の上面や下面の中央部が盛り上がり、角部も変形する。そして、筐体10の中央部や角部にひずみが発生する。
【0023】
図3において、電池の膨張による筐体10の変形に伴ない起歪体50も変形していることがわかる。これにより、ひずみゲージ100の抵抗値が変化して、筐体10の変形を検出することができる。すなわち、筐体10の内部に収容された電池の膨張を検出することができる。
【0024】
このように、起歪体50を筐体10に接着する際に、起歪体50の下面と筐体10との間に空間Sを設け、ひずみゲージ100を起歪体50の上面の接着領域とは対向しない領域である空間S上に配置することで、電池の膨張による筐体10の変形を感度良く検出することができる。
【0025】
ここで、ひずみゲージ100について説明する。
【0026】
図4は、第1実施形態に係るひずみゲージを例示する平面図である。
図5は、第1実施形態に係るひずみゲージを例示する断面図であり、
図4のB-B線に沿う断面を示している。
図4及び
図5を参照すると、ひずみゲージ100は、基材110と、抵抗体130と、配線140と、電極150と、カバー層160とを有している。なお、
図4では、便宜上、カバー層160の外縁のみを破線で示している。なお、カバー層160は、必要に応じて設ければよい。
【0027】
基材110は、抵抗体130等を形成するためのベース層となる部材であり、可撓性を有する。基材110の厚さは、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択できるが、例えば、5μm~500μm程度とすることができる。特に、基材110の厚さが5μm~200μmであると、接着層等を介して基材110の下面に接合される起歪体表面からの歪の伝達性、環境に対する寸法安定性の点で好ましく、10μm以上であると絶縁性の点で更に好ましい。
【0028】
基材110は、例えば、PI(ポリイミド)樹脂、エポキシ樹脂、PEEK(ポリエーテルエーテルケトン)樹脂、PEN(ポリエチレンナフタレート)樹脂、PET(ポリエチレンテレフタレート)樹脂、PPS(ポリフェニレンサルファイド)樹脂、LCP(液晶ポリマー)樹脂、ポリオレフィン樹脂等の絶縁樹脂フィルムから形成できる。なお、フィルムとは、厚さが500μm以下程度であり、可撓性を有する部材を指す。
【0029】
ここで、『絶縁樹脂フィルムから形成する』とは、基材110が絶縁樹脂フィルム中にフィラーや不純物等を含有することを妨げるものではない。基材110は、例えば、シリカやアルミナ等のフィラーを含有する絶縁樹脂フィルムから形成しても構わない。
【0030】
基材110の樹脂以外の材料としては、例えば、SiO2、ZrO2(YSZも含む)、Si、Si2N3、Al2O3(サファイヤも含む)、ZnO、ペロブスカイト系セラミックス(CaTiO3、BaTiO3)等の結晶性材料が挙げられ、更に、それ以外に非晶質のガラス等が挙げられる。また、基材110の材料として、アルミニウム、アルミニウム合金(ジュラルミン)、チタン等の金属を用いてもよい。この場合、金属製の基材110上に、例えば、絶縁膜が形成される。
【0031】
抵抗体130は、基材110上に所定のパターンで形成された薄膜であり、ひずみを受けて抵抗変化を生じる受感部である。抵抗体130は、基材110の上面110aに直接形成されてもよいし、基材110の上面110aに他の層を介して形成されてもよい。なお、
図4では、便宜上、抵抗体130を濃い梨地模様で示している。
【0032】
抵抗体130は、複数の細長状部が長手方向を同一方向(
図4のB-B線の方向)に向けて所定間隔で配置され、隣接する細長状部の端部が互い違いに連結されて、全体としてジグザグに折り返す構造である。複数の細長状部の長手方向がグリッド方向となり、グリッド方向と垂直な方向がグリッド幅方向(
図4ではB-B線と垂直な方向)となる。
【0033】
グリッド幅方向の最も外側に位置する2つの細長状部の長手方向の一端部は、グリッド幅方向に屈曲し、抵抗体130のグリッド幅方向の各々の終端130e1及び130e2を形成する。抵抗体130のグリッド幅方向の各々の終端130e1及び130e2は、配線140を介して、電極150と電気的に接続されている。言い換えれば、配線140は、抵抗体130のグリッド幅方向の各々の終端130e1及び130e2と各々の電極150とを電気的に接続している。
【0034】
抵抗体130は、例えば、Cr(クロム)を含む材料、Ni(ニッケル)を含む材料、又はCrとNiの両方を含む材料から形成できる。すなわち、抵抗体130は、CrとNiの少なくとも一方を含む材料から形成できる。Crを含む材料としては、例えば、Cr混相膜が挙げられる。Niを含む材料としては、例えば、Cu-Ni(銅ニッケル)が挙げられる。CrとNiの両方を含む材料としては、例えば、Ni-Cr(ニッケルクロム)が挙げられる。
【0035】
ここで、Cr混相膜とは、Cr、CrN、Cr2N等が混相した膜である。Cr混相膜は、酸化クロム等の不可避不純物を含んでもよい。
【0036】
抵抗体130の厚さは、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択できるが、例えば、0.05μm~2μm程度とすることができる。特に、抵抗体130の厚さが0.1μm以上であると、抵抗体130を構成する結晶の結晶性(例えば、α-Crの結晶性)が向上する点で好ましい。また、抵抗体130の厚さが1μm以下であると、抵抗体130を構成する膜の内部応力に起因する膜のクラックや基材110からの反りを低減できる点で更に好ましい。抵抗体130の幅は、抵抗値や横感度等の要求仕様に対して最適化し、かつ断線対策も考慮して、例えば、10μm~100μm程度とすることができる。
【0037】
例えば、抵抗体130がCr混相膜である場合、安定な結晶相であるα-Cr(アルファクロム)を主成分とすることで、ゲージ特性の安定性を向上できる。また、抵抗体130がα-Crを主成分とすることで、ひずみゲージ100のゲージ率を10以上、かつゲージ率温度係数TCS及び抵抗温度係数TCRを-1000ppm/℃~+1000ppm/℃の範囲内とすることができる。ここで、主成分とは、対象物質が抵抗体を構成する全物質の50重量%以上を占めることを意味するが、ゲージ特性を向上する観点から、抵抗体130はα-Crを80重量%以上含むことが好ましく、90重量%以上含むことが更に好ましい。なお、α-Crは、bcc構造(体心立方格子構造)のCrである。
【0038】
また、抵抗体130がCr混相膜である場合、Cr混相膜に含まれるCrN及びCr2Nは20重量%以下であることが好ましい。Cr混相膜に含まれるCrN及びCr2Nが20重量%以下であることで、ゲージ率の低下を抑制できる。
【0039】
また、CrN及びCr2N中のCr2Nの割合は80重量%以上90重量%未満であることが好ましく、90重量%以上95重量%未満であることが更に好ましい。CrN及びCr2N中のCr2Nの割合が90重量%以上95重量%未満であることで、半導体的な性質を有するCr2Nにより、TCRの低下(負のTCR)が一層顕著となる。更に、セラミックス化を低減することで、脆性破壊の低減がなされる。
【0040】
一方で、膜中に微量のN2もしくは原子状のNが混入、存在した場合、外的環境(例えば高温環境下)によりそれらが膜外へ抜け出ることで、膜応力の変化を生ずる。化学的に安定なCrNの創出により上記不安定なNを発生させることがなく、安定なひずみゲージを得ることができる。
【0041】
配線140は、基材110上に形成され、抵抗体130及び電極150と電気的に接続されている。配線140は、第1金属層141と、第1金属層141の上面に積層された第2金属層142とを有している。配線140は直線状には限定されず、任意のパターンとすることができる。また、配線140は、任意の幅及び任意の長さとすることができる。なお、
図4では、便宜上、配線140及び電極150を抵抗体130よりも薄い梨地模様で示している。
【0042】
電極150は、基材110上に形成され、配線140を介して抵抗体130と電気的に接続されており、例えば、配線140よりも拡幅して略矩形状に形成されている。電極150は、ひずみにより生じる抵抗体130の抵抗値の変化を外部に出力するための一対の電極であり、例えば、外部接続用のリード線やフレキシブル基板等が接合される。基材110及び配線140を伸ばして、電極150が起歪体50の端部に位置するようにしてもよい。これにより、電極150と外部との電気的な接続が容易となる。
【0043】
電極150は、一対の第1金属層151と、各々の第1金属層151の上面に積層された第2金属層152とを有している。第1金属層151は、配線140の第1金属層141を介して抵抗体130の終端130e1及び130e2と電気的に接続されている。第1金属層151は、平面視において、略矩形状に形成されている。第1金属層151は、配線140と同じ幅に形成しても構わない。
【0044】
なお、抵抗体130と第1金属層141と第1金属層151とは便宜上別符号としているが、同一工程において同一材料により一体に形成できる。従って、抵抗体130と第1金属層141と第1金属層151とは、厚さが略同一である。また、第2金属層142と第2金属層152とは便宜上別符号としているが、同一工程において同一材料により一体に形成できる。従って、第2金属層142と第2金属層152とは、厚さが略同一である。
【0045】
第2金属層142及び152は、抵抗体130(第1金属層141及び151)よりも低抵抗の材料から形成されている。第2金属層142及び152の材料は、抵抗体130よりも低抵抗の材料であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択できる。例えば、抵抗体130がCr混相膜である場合、第2金属層142及び152の材料として、Cu、Ni、Al、Ag、Au、Pt等、又は、これら何れかの金属の合金、これら何れかの金属の化合物、あるいは、これら何れかの金属、合金、化合物を適宜積層した積層膜が挙げられる。第2金属層142及び152の厚さは、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択できるが、例えば、3μm~5μm程度とすることができる。
【0046】
第2金属層142及び152は、第1金属層141及び151の上面の一部に形成されてもよいし、第1金属層141及び151の上面の全体に形成されてもよい。第2金属層152の上面に、更に他の1層以上の金属層を積層してもよい。例えば、第2金属層152を銅層とし、銅層の上面に金層を積層してもよい。あるいは、第2金属層152を銅層とし、銅層の上面にパラジウム層と金層を順次積層してもよい。電極150の最上層を金層とすることで、電極150のはんだ濡れ性を向上できる。
【0047】
このように、配線140は、抵抗体130と同一材料からなる第1金属層141上に第2金属層142が積層された構造である。そのため、配線140は抵抗体130よりも抵抗が低くなるため、配線140が抵抗体として機能してしまうことを抑制できる。その結果、抵抗体130によるひずみ検出精度を向上できる。
【0048】
言い換えれば、抵抗体130よりも低抵抗な配線140を設けることで、ひずみゲージ100の実質的な受感部を抵抗体130が形成された局所領域に制限できる。そのため、抵抗体130によるひずみ検出精度を向上できる。
【0049】
特に、抵抗体130としてCr混相膜を用いたゲージ率10以上の高感度なひずみゲージにおいて、配線140を抵抗体130よりも低抵抗化して実質的な受感部を抵抗体130が形成された局所領域に制限することは、ひずみ検出精度の向上に顕著な効果を発揮する。また、配線140を抵抗体130よりも低抵抗化することは、横感度を低減する効果も奏する。
【0050】
カバー層160は、基材110上に形成され、抵抗体130及び配線140を被覆し電極150を露出する。配線140の一部は、カバー層160から露出してもよい。抵抗体130及び配線140を被覆するカバー層160を設けることで、抵抗体130及び配線140に機械的な損傷等が生じることを防止できる。また、カバー層160を設けることで、抵抗体130及び配線140を湿気等から保護できる。なお、カバー層160は、電極150を除く部分の全体を覆うように設けてもよい。
【0051】
カバー層160は、例えば、PI樹脂、エポキシ樹脂、PEEK樹脂、PEN樹脂、PET樹脂、PPS樹脂、複合樹脂(例えば、シリコーン樹脂、ポリオレフィン樹脂)等の絶縁樹脂から形成できる。カバー層160は、フィラーや顔料を含有しても構わない。カバー層160の厚さは、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択できるが、例えば、2μm~30μm程度とすることができる。
【0052】
ひずみゲージ100を製造するためには、まず、基材110を準備し、基材110の上面110aに金属層(便宜上、金属層Aとする)を形成する。金属層Aは、最終的にパターニングされて抵抗体130、第1金属層141、及び第1金属層151となる層である。従って、金属層Aの材料や厚さは、前述の抵抗体130、第1金属層141、及び第1金属層151の材料や厚さと同様である。
【0053】
金属層Aは、例えば、金属層Aを形成可能な原料をターゲットとしたマグネトロンスパッタ法により成膜できる。金属層Aは、マグネトロンスパッタ法に代えて、反応性スパッタ法や蒸着法、アークイオンプレーティング法、パルスレーザー堆積法等を用いて成膜してもよい。
【0054】
ゲージ特性を安定化する観点から、金属層Aを成膜する前に、下地層として、基材110の上面110aに、例えば、コンベンショナルスパッタ法により所定の膜厚の機能層を真空成膜することが好ましい。
【0055】
本願において、機能層とは、少なくとも上層である金属層A(抵抗体130)の結晶成長を促進する機能を有する層を指す。機能層は、更に、基材110に含まれる酸素や水分による金属層Aの酸化を防止する機能や、基材110と金属層Aとの密着性を向上する機能を備えていることが好ましい。機能層は、更に、他の機能を備えていてもよい。
【0056】
基材110を構成する絶縁樹脂フィルムは酸素や水分を含むため、特に金属層AがCrを含む場合、Crは自己酸化膜を形成するため、機能層が金属層Aの酸化を防止する機能を備えることは有効である。
【0057】
機能層の材料は、少なくとも上層である金属層A(抵抗体130)の結晶成長を促進する機能を有する材料であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択できるが、例えば、Cr(クロム)、Ti(チタン)、V(バナジウム)、Nb(ニオブ)、Ta(タンタル)、Ni(ニッケル)、Y(イットリウム)、Zr(ジルコニウム)、Hf(ハフニウム)、Si(シリコン)、C(炭素)、Zn(亜鉛)、Cu(銅)、Bi(ビスマス)、Fe(鉄)、Mo(モリブデン)、W(タングステン)、Ru(ルテニウム)、Rh(ロジウム)、Re(レニウム)、Os(オスミウム)、Ir(イリジウム)、Pt(白金)、Pd(パラジウム)、Ag(銀)、Au(金)、Co(コバルト)、Mn(マンガン)、Al(アルミニウム)からなる群から選択される1種又は複数種の金属、この群の何れかの金属の合金、又は、この群の何れかの金属の化合物が挙げられる。
【0058】
上記の合金としては、例えば、FeCr、TiAl、FeNi、NiCr、CrCu等が挙げられる。また、上記の化合物としては、例えば、TiN、TaN、Si3N4、TiO2、Ta2O5、SiO2等が挙げられる。
【0059】
機能層が金属又は合金のような導電材料から形成される場合には、機能層の膜厚は抵抗体の膜厚の1/20以下であることが好ましい。このような範囲であると、α-Crの結晶成長を促進できると共に、抵抗体に流れる電流の一部が機能層に流れて、ひずみの検出感度が低下することを防止できる。
【0060】
機能層が金属又は合金のような導電材料から形成される場合には、機能層の膜厚は抵抗体の膜厚の1/50以下であることがより好ましい。このような範囲であると、α-Crの結晶成長を促進できると共に、抵抗体に流れる電流の一部が機能層に流れて、ひずみの検出感度が低下することを更に防止できる。
【0061】
機能層が金属又は合金のような導電材料から形成される場合には、機能層の膜厚は抵抗体の膜厚の1/100以下であることが更に好ましい。このような範囲であると、抵抗体に流れる電流の一部が機能層に流れて、ひずみの検出感度が低下することを一層防止できる。
【0062】
機能層が酸化物や窒化物のような絶縁材料から形成される場合には、機能層の膜厚は、1nm~1μmとすることが好ましい。このような範囲であると、α-Crの結晶成長を促進できると共に、機能層にクラックが入ることなく容易に成膜できる。
【0063】
機能層が酸化物や窒化物のような絶縁材料から形成される場合には、機能層の膜厚は、1nm~0.8μmとすることがより好ましい。このような範囲であると、α-Crの結晶成長を促進できると共に、機能層にクラックが入ることなく更に容易に成膜できる。
【0064】
機能層が酸化物や窒化物のような絶縁材料から形成される場合には、機能層の膜厚は、1nm~0.5μmとすることが更に好ましい。このような範囲であると、α-Crの結晶成長を促進できると共に、機能層にクラックが入ることなく一層容易に成膜できる。
【0065】
なお、機能層の平面形状は、例えば、
図4に示す抵抗体の平面形状と略同一にパターニングされている。しかし、機能層の平面形状は、抵抗体の平面形状と略同一である場合には限定されない。機能層が絶縁材料から形成される場合には、抵抗体の平面形状と同一形状にパターニングしなくてもよい。この場合、機能層は少なくとも抵抗体が形成されている領域にベタ状に形成されてもよい。あるいは、機能層は、基材110の上面全体にベタ状に形成されてもよい。
【0066】
また、機能層が絶縁材料から形成される場合に、機能層の厚さを50nm以上1μm以下となるように比較的厚く形成し、かつベタ状に形成することで、機能層の厚さと表面積が増加するため、抵抗体が発熱した際の熱を基材110側へ放熱できる。その結果、ひずみゲージ100において、抵抗体の自己発熱による測定精度の低下を抑制できる。
【0067】
機能層は、例えば、機能層を形成可能な原料をターゲットとし、チャンバ内にAr(アルゴン)ガスを導入したコンベンショナルスパッタ法により真空成膜できる。コンベンショナルスパッタ法を用いることにより、基材110の上面110aをArでエッチングしながら機能層が成膜されるため、機能層の成膜量を最小限にして密着性改善効果を得ることができる。
【0068】
ただし、これは、機能層の成膜方法の一例であり、他の方法により機能層を成膜してもよい。例えば、機能層の成膜の前にAr等を用いたプラズマ処理等により基材110の上面110aを活性化することで密着性改善効果を獲得し、その後マグネトロンスパッタ法により機能層を真空成膜する方法を用いてもよい。
【0069】
機能層の材料と金属層Aの材料との組み合わせは、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択できるが、例えば、機能層としてTiを用い、金属層Aとしてα-Cr(アルファクロム)を主成分とするCr混相膜を成膜可能である。
【0070】
この場合、例えば、Cr混相膜を形成可能な原料をターゲットとし、チャンバ内にArガスを導入したマグネトロンスパッタ法により、金属層Aを成膜できる。あるいは、純Crをターゲットとし、チャンバ内にArガスと共に適量の窒素ガスを導入し、反応性スパッタ法により、金属層Aを成膜してもよい。この際、窒素ガスの導入量や圧力(窒素分圧)を変えることや加熱工程を設けて加熱温度を調整することで、Cr混相膜に含まれるCrN及びCr2Nの割合、並びにCrN及びCr2N中のCr2Nの割合を調整できる。
【0071】
これらの方法では、Tiからなる機能層がきっかけでCr混相膜の成長面が規定され、安定な結晶構造であるα-Crを主成分とするCr混相膜を成膜できる。また、機能層を構成するTiがCr混相膜中に拡散することにより、ゲージ特性が向上する。例えば、ひずみゲージ100のゲージ率を10以上、かつゲージ率温度係数TCS及び抵抗温度係数TCRを-1000ppm/℃~+1000ppm/℃の範囲内とすることができる。なお、機能層がTiから形成されている場合、Cr混相膜にTiやTiN(窒化チタン)が含まれる場合がある。
【0072】
なお、金属層AがCr混相膜である場合、Tiからなる機能層は、金属層Aの結晶成長を促進する機能、基材110に含まれる酸素や水分による金属層Aの酸化を防止する機能、及び基材110と金属層Aとの密着性を向上する機能の全てを備えている。機能層として、Tiに代えてTa、Si、Al、Feを用いた場合も同様である。
【0073】
このように、金属層Aの下層に機能層を設けることにより、金属層Aの結晶成長を促進可能となり、安定な結晶相からなる金属層Aを作製できる。その結果、ひずみゲージ100において、ゲージ特性の安定性を向上できる。また、機能層を構成する材料が金属層Aに拡散することにより、ひずみゲージ100において、ゲージ特性を向上できる。
【0074】
次に、金属層Aの上面に、第2金属層142及び第2金属層152を形成する。第2金属層142及び第2金属層152は、例えば、フォトリソグラフィ法により形成できる。
【0075】
具体的には、まず、金属層Aの上面を覆うように、例えば、スパッタ法や無電解めっき法等により、シード層を形成する。次に、シード層の上面の全面に感光性のレジストを形成し、露光及び現像して第2金属層142及び第2金属層152を形成する領域を露出する開口部を形成する。このとき、レジストの開口部の形状を調整することで、第2金属層142のパターンを任意の形状とすることができる。レジストとしては、例えば、ドライフィルムレジスト等を用いることができる。
【0076】
次に、例えば、シード層を給電経路とする電解めっき法により、開口部内に露出するシード層上に第2金属層142及び第2金属層152を形成する。電解めっき法は、タクトが高く、かつ、第2金属層142及び第2金属層152として低応力の電解めっき層を形成できる点で好適である。膜厚の厚い電解めっき層を低応力とすることで、ひずみゲージ100に反りが生じることを防止できる。なお、第2金属層142及び第2金属層152は無電解めっき法により形成してもよい。
【0077】
次に、レジストを除去する。レジストは、例えば、レジストの材料を溶解可能な溶液に浸漬することで除去できる。
【0078】
次に、シード層の上面の全面に感光性のレジストを形成し、露光及び現像して、
図4の抵抗体130、配線140、及び電極150と同様の平面形状にパターニングする。レジストとしては、例えば、ドライフィルムレジスト等を用いることができる。そして、レジストをエッチングマスクとし、レジストから露出する金属層A及びシード層を除去し、
図4の平面形状の抵抗体130、配線140、及び電極150を形成する。
【0079】
例えば、ウェットエッチングにより、金属層A及びシード層の不要な部分を除去できる。金属層Aの下層に機能層が形成されている場合には、エッチングによって機能層は抵抗体130、配線140、及び電極150と同様に
図4に示す平面形状にパターニングされる。なお、この時点では、抵抗体130、第1金属層141、及び第1金属層151上にシード層が形成されている。
【0080】
次に、第2金属層142及び第2金属層152をエッチングマスクとし、第2金属層142及び第2金属層152から露出する不要なシード層を除去することで、第2金属層142及び第2金属層152が形成される。なお、第2金属層142及び第2金属層152の直下のシード層は残存する。例えば、シード層がエッチングされ、機能層、抵抗体130、配線140、及び電極150がエッチングされないエッチング液を用いたウェットエッチングにより、不要なシード層を除去できる。
【0081】
その後、必要に応じ、基材110の上面110aに、抵抗体130及び配線140を被覆し電極150を露出するカバー層160を設けることで、ひずみゲージ100が完成する。カバー層160は、例えば、基材110の上面110aに、抵抗体130及び配線140を被覆し電極150を露出するように半硬化状態の熱硬化性の絶縁樹脂フィルムをラミネートし、加熱して硬化させて作製できる。カバー層160は、基材110の上面110aに、抵抗体130及び配線140を被覆し電極150を露出するように液状又はペースト状の熱硬化性の絶縁樹脂を塗布し、加熱して硬化させて作製してもよい。
【0082】
このように、Cr混相膜は高感度である。そのため、センサモジュール20に、Cr混相膜を抵抗体130とするひずみゲージ100を用いることで、抵抗体130がCu-NiやNi-Crから形成されている場合と比べ、電池の膨張に対する抵抗値の感度が大幅に向上する。抵抗体130がCr混相膜から形成されている場合、電池の膨張に対する抵抗値の感度は、抵抗体130がCu-NiやNi-Crから形成されている場合と比べ、おおよそ5~10倍程度となる。そのため、抵抗体130をCr混相膜から形成することで、電池の膨張を精度よく検出することが可能となる。
【0083】
〈第2実施形態〉
第2実施形態では、起歪体の形状が異なるセンサモジュール、およびこれを適用する電池パックの例を示す。なお、第2実施形態において、既に説明した実施形態と同一構成部についての説明は省略する場合がある。
【0084】
図6は、第2実施形態に係る電池パックを例示する平面図である。
図7は、第2実施形態に係る電池パックを例示する断面図であり、
図6のC-C線に沿う断面を示している。
【0085】
図6及び
図7を参照すると、電池パック1Aは、センサモジュール20がセンサモジュール20Aに置換された点が、電池パック1(
図1~
図3等参照)と相違する。
【0086】
センサモジュール20Aは、電池の膨張による筐体10の変形を検出するセンサである。センサモジュール20Aは、起歪体50Aと、接着層70を介して起歪体50Aの一方の面に配置されたひずみゲージ100とを有している。
【0087】
起歪体50Aは、細長状の平板であり、起歪体50のように屈曲はしていない。起歪体50Aは、平面視でおおよそ長方形状であるが、部分的に応力集中部51を有する。応力集中部51は、起歪体50Aの短手方向の断面積が他の領域よりも小さくなるように形成された領域である。ひずみゲージ100は、応力集中部51に配置されている。
【0088】
応力集中部51は、平面視でひずみゲージ100を挟んで対向する2つの括れを有している。なお、
図6の例では、長方形の2つの長辺側に、ひずみゲージ100を挟んで対向するように台形状の2つの括れを設けることで応力集中部51を形成しているが、この形状には限定されない。また、括れの位置は、必ずしも起歪体50Aの長手方向の中央付近には限定されず、中央からオフセットした位置に設けてもよい。例えば、非接着領域の中で接着領域に近い位置に括れを設けてもよい。
【0089】
起歪体50Aの下面には、筐体10と接着される複数の接着領域が画定されている。
図7の例では、起歪体50Aの長手方向の両端に1つずつ接着領域が画定されており、一端側の接着領域には接着層31が設けられ、他端側の接着領域には接着層32が設けられている。起歪体50Aにおいて、両端を除く領域は、筐体10と接着されない非接着領域である。なお、応力集中部51は、非接着領域に設けられている。
【0090】
起歪体50Aの長手方向の断面視において、2つの接着領域の間の領域の長さ(すなわち、非接着領域の長さ)は、接着領域の合計の長さよりも長いことが好ましい。ひずみゲージ100は、非接着領域におけるひずみを検出できるため、非接着領域を長くすることで、起歪体50Aのより長い領域において電池の膨張による筐体10の変形を検出できる。
【0091】
例えば筐体10が金属により形成されている場合、起歪体50Aを介さずに筐体10の上面に直接ひずみゲージ100を貼り付けると、ひずみゲージ100を貼り付けた領域のひずみしか検出できない。これに対して、ひずみゲージ100を有する細長状の起歪体50Aを、両端支持により筐体10の上面に貼り付けることで、支持された2点間の広い範囲のひずみを検出できる。
【0092】
起歪体50Aの長手方向の一端側は接着層31を介して筐体10の上面に接着されており、起歪体50Aの長手方向の他端側は接着層32を介して筐体10の上面に接着されている。ひずみゲージ100は、起歪体50Aの上面において、応力集中部51の中央部近傍に配置されていることが好ましい。言い換えれば、ひずみゲージ100は、起歪体50Aの上面において、応力集中部51の中でも短手方向の断面積が最も小さい領域に配置されていることが好ましい。
【0093】
電池パック1Aでは、電池パック1と同様に、起歪体50Aのひずみゲージ100が配置されている領域の反対面側(筐体10側)には、空間Sが設けられている。言い換えれば、ひずみゲージ100は、起歪体50Aの上面の接着領域とは対向しない領域に配置されている。空間Sが設けられていることで、電池の膨張による筐体10の変形に伴ない起歪体50Aが容易に伸縮できるため、ひずみゲージ100の抵抗値の変化が大きくなり、筐体10の変形を感度良く検出することができる。なお、起歪体50Aの材料や厚さは、起歪体50と同様とすることができる。
【0094】
起歪体50Aの長手方向の長さは、筐体10の長さと一致することが好ましい。これにより、起歪体50Aを筐体10に貼り付ける際の貼りずれを小さくできる。
【0095】
図8は、電池の膨張により筐体が変形した様子を例示する断面図(その2)である。
図8に示すように、例えば筐体10に配置された電池の内部にガスが発生すると、電池が膨張し、筐体10の上面や下面の中央部が盛り上がり、角部も変形する。そして、筐体10の中央部や角部にひずみが発生する。
【0096】
図8において、電池の膨張による筐体10の変形に伴ない起歪体50Aも変形していることがわかる。これにより、ひずみゲージ100の抵抗値が変化して、筐体10の変形を検出することができる。すなわち、筐体10の内部に収容された電池の膨張を検出することができる。
【0097】
このように、起歪体50Aを筐体10に接着する際に、起歪体50Aの下面と筐体10との間に空間Sを設け、ひずみゲージ100を起歪体50Aの上面の接着領域とは対向しない領域である空間S上に配置することで、電池の膨張による筐体10の変形を感度良く検出することができる。特に、ひずみゲージ100を応力集中部51に配置することで、電池の膨張による筐体10の変形の検出感度を向上することができる。センサモジュール20Aに、Cr混相膜を抵抗体130とするひずみゲージ100を用いると好適な点も第1実施形態と同様である。
【0098】
以上、好ましい実施形態等について詳説したが、上述した実施形態等に制限されることはなく、特許請求の範囲に記載された範囲を逸脱することなく、上述した実施形態等に種々の変形及び置換を加えることができる。
【0099】
例えば、断面視L字型の起歪体50に応力集中部を設け、ひずみゲージ100を応力集中部に配置してもよい。これにより、電池の膨張による筐体10の変形の検出感度をさらに向上することができる。
【0100】
また、1つの筐体に複数のセンサモジュールを接着してもよい。また、1つのセンサモジュールは、複数のひずみゲージを有してもよい。例えば、1つのセンサモジュールが4つのひずみゲージを有し、それらをフルブリッジ接続してもよい。
【符号の説明】
【0101】
1,1A 電池パック、10 筐体、20,20A センサモジュール、31,32 接着層、50,50A 起歪体、51 応力集中部、70 接着層、100 ひずみゲージ、110 基材、110a 上面、130 抵抗体、140 配線、141,151 第1金属層、142,152 第2金属層、150 電極、160 カバー層