(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-03-18
(45)【発行日】2025-03-27
(54)【発明の名称】バッテリー容量推定装置及び方法
(51)【国際特許分類】
G01R 31/367 20190101AFI20250319BHJP
G01R 31/387 20190101ALI20250319BHJP
G01R 31/3835 20190101ALI20250319BHJP
H01M 10/48 20060101ALI20250319BHJP
【FI】
G01R31/367
G01R31/387
G01R31/3835
H01M10/48 P
(21)【出願番号】P 2023504078
(86)(22)【出願日】2021-08-09
(86)【国際出願番号】 KR2021010477
(87)【国際公開番号】W WO2022035153
(87)【国際公開日】2022-02-17
【審査請求日】2023-01-19
(31)【優先権主張番号】10-2020-0101866
(32)【優先日】2020-08-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】521065355
【氏名又は名称】エルジー エナジー ソリューション リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100188558
【氏名又は名称】飯田 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(72)【発明者】
【氏名】ボ・ミ・イム
【審査官】永井 皓喜
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-107577(JP,A)
【文献】特開2014-163921(JP,A)
【文献】特開2012-185124(JP,A)
【文献】特開2020-71054(JP,A)
【文献】国際公開第2017/051515(WO,A1)
【文献】特開2020-106470(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0205466(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01R 31/36
H01M 10/42
H02J 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
バッテリーセルの電圧を測定する電圧測定部と、
前記バッテリーセルの電圧データのうちロギングパターンが予め設定された基準範囲から外れた場合、当該電圧データを第1のデータとして決定するフィルタリング部と、
前記バッテリーセルの電圧データに対する統計的分析により第2のデータを決定する統計分析部と、
前記第1のデータと前記第2のデータとを区分して生成された容量推定モデルに、測定対象であるバッテリーセルに対して前記フィルタリング部又は前記統計分析部により分類されたデータを適用して容量を推定する容量推定部と、
を含
んでなり、
前記統計分析部は、
前記第1のデータとして決定されたデータ以外のデータを対象にして統計的分析を行い、
前記バッテリーセルの時間に対する電圧の微分データを算出し、
前記統計分析部は、複数の微分データに対して主成分分析を行って前記複数の微分データを一つの主成分データとして抽出し、
前記統計分析部は、前記主成分データに対し、k-平均クラスタ化を介して複数のクラスタを算出し、前記微分データが予め設定されたクラスタに含まれる場合、前記第2のデータとして決定し、
前記統計分析部は、前記クラスタに含まれない微分データを前記第1のデータとして決定し、
前記第1のデータは、前記バッテリーセルの電圧データが不連続的な形態で示されるデータであり、
前記第2のデータは、前記バッテリーセルの電圧データが連続的な形態で示されるデータである、バッテリー容量推定装置。
【請求項2】
前記電圧測定部は、前記バッテリーセルの充電又は放電後のアイドル区間に対して電圧を測定する、請求項
1に記載のバッテリー容量推定装置。
【請求項3】
前記フィルタリング部は、前記バッテリーセルの電圧データのうち、ロギング時間及び個数の少なくとも一つがエラー又はロギングデータの欠落により前記基準範囲から外れた場合、当該電圧データを第1のデータとして決定する、請求項
1又は2に記載のバッテリー容量推定装置。
【請求項4】
バッテリーセルの電圧を測定する段階と、
前記バッテリーセルの電圧データのうちロギングパターンが予め設定された基準範囲から外れた場合、当該電圧データを第1のデータとして決定する段階と、
第2のデータを決定するために、前記第1のデータとして決定されたデータ以外のデータを統計的
に分析
する段階と、
前記第1のデータ及び前記第2のデータを容量推定モデルにそれぞれ適用することにより、前記バッテリーセルの容量を推定する段階と、
を含
んでなり、
前記統計的に分析する段階は、
前記バッテリーセルの時間に対する電圧の微分データを算出する段階を含み、
前記統計的に分析する段階は、前記微分データに対して主成分分析を行って複数の微分データを一つの主成分データとして抽出する段階をさらに含み、
前記統計的に分析する段階は、前記主成分データに対し、k-平均クラスタ化を介して複数のクラスタを算出し、前記微分データが予め設定されたクラスタに含まれる場合、前記第2のデータとして決定し、
前記統計的に分析する段階は、前記クラスタに含まれない微分データを前記第1のデータとして決定する段階をさらに含み、
前記第1のデータは、前記バッテリーセルの電圧データが不連続的な形態で示されるデータであり、
前記第2のデータは、前記バッテリーセルの電圧データが連続的な形態で示されるデータである、バッテリー容量推定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願の相互参照]
本出願は、2020年8月13日に出願された韓国特許出願第10-2020-0101866号に基づく優先権の利益を主張し、当該韓国特許出願の文献に開示された全ての内容は、本明細書の一部として含まれる。
【0002】
本発明は、分析が容易なデータと容易ではないデータとを区分してモデルを構成することにより、バッテリーの容量を推定するための装置及び方法に関する。
【背景技術】
【0003】
最近、二次電池に対する研究開発が活発に行われている。ここで、二次電池は、充放電が可能な電池であって、従来のNi/Cd電池、Ni/MH電池などと最近のリチウムイオン電池とを全て含む意味である。二次電池のうちリチウムイオン電池は、従来のNi/Cd電池、Ni/MH電池などに比べてエネルギー密度が遥かに高いという利点がある。また、リチウムイオン電池は、小型、軽量で製作することができ、移動機器の電源として使用される。また、リチウムイオン電池は、電気自動車の電源に使用範囲が拡張され、次世代エネルギー貯蔵媒体として注目を浴びている。
【0004】
また、二次電池は、一般的に複数のバッテリーセルが直列及び/又は並列に連結されたバッテリーモジュールを含むバッテリーパックとして用いられる。そして、バッテリーパックは、バッテリー管理システムにより状態及び動作が管理及び制御される。
【0005】
このような二次電池は、生産時に各セルの品質を判断するために、生産工程でLAT(Lot Assembly Test)を行う。一般的には、複数のセルの単位であるLot当たり1つのサンプルを選択してLATを進行する。LATは、二次電池を加速退化させ、300サイクル後にも容量が一定の水準以上となるか否かを確認するためである。
【0006】
このようなLATを介して1~300サイクルを同一の実験条件で完全充電及び放電を進行し、300サイクルでのSOH(state of health)寿命に応じてセルのテスト合格可否を決定する。しかし、LATにロギングされているデータは、分析が容易なデータと容易ではないデータとがともに含まれるので、データ値を分析することに困難があり、正確度が低下するという問題がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、前記のような課題を解決するために考案されたものであって、バッテリーセルのロギングデータのうち、分析が容易なデータと分析が容易ではないデータとを区分し、各データに容量推定モデルを適用することにより、正確かつ効率的にバッテリーセルの容量を推定できるバッテリー容量推定装置及び方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一実施形態によるバッテリー容量推定装置は、バッテリーセルの電圧を測定する電圧測定部、前記バッテリーセルの電圧データのうちロギングパターンが予め設定された基準範囲から外れた場合、当該電圧データを第1のデータとして決定するフィルタリング部、前記バッテリーセルの電圧データに対する統計的分析により第2のデータを決定する統計分析部、及び前記第1のデータと前記第2のデータとを区分して生成された容量推定モデルに、測定対象であるバッテリーセルに対して前記フィルタリング部又は前記統計分析部により分類されたデータを適用して容量を推定する容量推定部を含んでよい。
【0009】
本発明の一実施形態によるバッテリー容量推定方法は、バッテリーセルの電圧を測定する段階、前記バッテリーセルの電圧データのうちロギングパターンが予め設定された基準範囲から外れた場合、当該電圧データを第1のデータとして決定する段階、前記バッテリーセルの電圧データに対する統計的分析により第2のデータを決定する段階、及び前記第1のデータ及び前記第2のデータを容量推定モデルにそれぞれ適用することにより、前記バッテリーセルの容量を推定する段階を含んでよい。
【発明の効果】
【0010】
本発明のバッテリー容量推定装置及び方法によれば、バッテリーセルのロギングデータのうち、分析が容易なデータと分析が容易ではないデータとを区分し、各データに容量推定モデルを適用することにより、正確かつ効率的にバッテリーセルの容量を推定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】一般的なバッテリーラックの構成を示すブロック図である。
【
図2】本発明の一実施形態によるバッテリー容量推定装置の構成を示すブロック図である。
【
図3】本発明の一実施形態によるバッテリー容量推定装置がデータを分類する動作を示すフローチャートである。
【
図4】バッテリーセルのロギングデータと容量との間の相関関係を示す図である。
【
図5】本発明の一実施形態によるバッテリー容量推定装置によりバッテリーセルのロギングデータを複数のクラスタに分類したことを示す図である。
【
図6】本発明の一実施形態によるバッテリー容量推定装置により、すべてのバッテリーセルのロギングデータを複数のクラスタに分類したことを示す図である。
【
図7】本発明の一実施形態によるバッテリー容量推定装置の容量推定モデル(LSTM)の例示を示す図である。
【
図8】本発明の一実施形態によるバッテリー容量推定方法を示すフローチャートである。
【
図9】本発明の一実施形態によるバッテリー容量推定装置のハードウェア構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、添付した図面を参照して、本発明の多様な実施形態に対して詳細に説明する。本文書で図面上の同一の構成要素に対しては同一の参照符号を使用し、同一の構成要素に対して重複した説明は省略する。
【0013】
本文書に開示されている本発明の多様な実施形態に対して、特定の構造的又は機能的説明は、単に本発明の実施形態を説明するための目的として例示されたものであって、本発明の多様な実施形態は、多様な形態で実施可能であり、本文書に説明された実施形態に限定されるものと解釈されてはいけない。
【0014】
多様な実施形態で用いられる「第1」、「第2」、「第一」、又は「第二」などの表現は、多様な構成要素を順序及び/又は重要度に関係なく修飾することができ、当該構成要素を限定しない。例えば、本発明の権利範囲を外れることなく、第1の構成要素は第2の構成要素と命名されてよく、同様に、第2の構成要素も第1の構成要素に変えて命名されてよい。
【0015】
本文書で用いられる用語は、単に特定の実施形態を説明するために用いられたものであって、他の実施形態の範囲の限定を意図するものではない。単数の表現は、文脈上明らかに異なる意味がない限り、複数の表現を含んでよい。
【0016】
技術的や科学的な用語を含めて、ここで用いられる全ての用語は、本発明の技術分野における通常の知識を有する者により一般的に理解される意味と同一の意味を有し得る。一般的に用いられる辞書に定義された用語は、関連技術の文脈上有する意味と同一又は類似の意味を有するものと解釈されてよく、本文書で明らかに定義されない限り、理想的又は過度に形式的な意味に解釈されない。場合によっては、本文書で定義された用語であっても、本発明の実施形態を排除するように解釈されてはいけない。
【0017】
図1は、一般的なバッテリーラックの構成を示すブロック図である。
【0018】
図1を参照すれば、本発明の一実施形態によるバッテリーラック1と上位システムに含まれる上位制御器2とを含むバッテリー制御システムを概略的に示す。
【0019】
図1に示されたように、バッテリーラック1は、一つ以上のバッテリーセルからなり、充放電可能なバッテリーモジュール10と、バッテリーモジュール10の(+)端子側又は(-)端子側に直列に連結されてバッテリーモジュール10の充放電電流の流れを制御するためのスイッチング部14と、バッテリーラック1の電圧、電流、温度などをモニタリングして、過充電及び過放電などを防止するように制御管理するバッテリー管理システム20(例えば、RBMS)を含む。この際、バッテリーラック1には、バッテリーモジュール10、センサ12、スイッチング部14、及びバッテリー管理システム20が複数備えられてよい。
【0020】
ここで、スイッチング部14は、複数のバッテリーモジュール10の充電又は放電に対する電流の流れを制御するための素子であって、例えば、バッテリーラック1の仕様に応じて少なくとも一つのリレー、マグネチック接触器などが用いられてよい。
【0021】
バッテリー管理システム20は、前述した各種パラメータを測定した値が入力されるインターフェースであって、複数の端子と、これら端子と連結されて入力される値の処理を行う回路などを含んでよい。また、バッテリー管理システム20は、スイッチング部14、例えば、リレー又は接触器などのON/OFFを制御してもよく、バッテリーモジュール10に連結されてバッテリーモジュール10それぞれの状態を監視してもよい。
【0022】
一方、本発明のバッテリー管理システム20では、後述するように、バッテリーセルの電圧に関する回帰分析を別途のプログラムを介して行うことができる。また、算出した回帰式を用いてバッテリーセルの異常類型を分類することができる。
【0023】
上位制御器2は、バッテリー管理システム20にバッテリーモジュール10に対する制御信号を伝送することができる。これによって、バッテリー管理システム20は、上位制御器2から印加される信号に基づいて動作が制御され得る。一方、本発明のバッテリーセルは、ESS(Energy Storage System)に用いられるバッテリーモジュール10に含まれる構成であってよい。そして、このような場合、上位制御器2は、複数のラックを含むバッテリーバンクの制御器(BBMS)又は複数のバンクを含むESS全体を制御するESS制御器であってよい。ただし、バッテリーラック1は、このような用途に限定されるものではない。
【0024】
このようなバッテリーラック1の構成及びバッテリー管理システム20の構成は、公知の構成であるため、より具体的な説明は省略する。
【0025】
図2は、本発明の一実施形態によるバッテリー容量推定装置の構成を示すブロック図である。
【0026】
図2を参照すれば、本発明の一実施形態によるバッテリー容量推定装置200は、電圧測定部210、フィルタリング部220、統計分析部230、及び容量推定部240を含んでよい。例えば、本発明の一実施形態によるバッテリー容量推定装置200は、リアルタイムでバッテリーの充放電データを分析してバッテリーセルの容量を推定する装置であってよく、又はバッテリーセルの製造時にモジュールに搭載する前に不良有無をサンプリングしてテストする装置であってよい。
【0027】
電圧測定部210は、バッテリーセルの電圧を測定することができる。この際、電圧測定部210は、一定の時間間隔でバッテリーセルの電圧を測定することができる。例えば、電圧測定部210は、バッテリーセルの充電又は放電後のアイドル区間に対して電圧を測定することができる。また、電圧測定部210は、バッテリーセルに流れる電流を測定することができる。
【0028】
フィルタリング部220は、バッテリーセルの電圧データのうちロギングパターンが予め設定された基準範囲から外れた場合、当該電圧データを第1のデータとして決定することができる。具体的には、フィルタリング部220は、バッテリーセルの電圧データのうちロギング時間及び個数の少なくとも一つが基準範囲から外れた場合、当該電圧データを第1のデータとして決定することができる。
【0029】
例えば、バッテリーセルの電圧データのロギングパターンは、5分単位で4つの電圧データを抽出するものであってよい。この場合、バッテリーセルの電圧データのロギング時間が(59、10、20、5分)の場合のようにロギング時間にエラーがあるか、ロギング時間が(5、10、20分)又は(10、15、20分)の場合など特定のロギングデータの欠落が発生する可能性がある。このような場合、フィルタリング部220は、当該データを第1のデータとして分類してよい。
【0030】
統計分析部230は、バッテリーセルの電圧データに対する統計的分析により第2のデータを決定することができる。この際、統計分析部230は、フィルタリング部220で第1のデータとして決定したデータ以外のデータを対象にして統計的分析を行うことができる。また、統計分析部230は、バッテリーセルの時間に対する電圧の微分データ(dV/dt)を算出することができる。後述するように、ロギングされた電圧データに比べて、電圧の時間に対する微分データの傾向性がより明らかに示されるので、統計分析部230は、電圧の時間に対する微分データを活用することができる。
【0031】
具体的には、統計分析部230は、微分データに対して主成分分析(Principal Component Analysis、PCA)を行って電圧データに対する主成分データを抽出することができる。
【0032】
また、統計分析部230は、主成分データに対し、k-平均クラスタ化(k-means clustering)を介して複数のクラスタを算出し、微分データが特定のクラスタに含まれる場合、第2のデータとして決定し、前記クラスタに含まれない微分データを第1のデータとして決定してよい。
【0033】
例えば、第1のデータは、バッテリーセルの電圧データが不連続的な形態で示されるデータであり、第2のデータは、前記バッテリーセルの電圧データが連続的な形態で示されるデータであってよい。すなわち、第1のデータは、分析が容易ではないデータであり、第2のデータは、分析が容易なデータであってよい。
【0034】
このように、本発明の一実施形態によるバッテリー容量推定装置200は、概形の異なる第1のデータと第2のデータとを区分して容量推定モデルを適用することにより、既存に第1、2のデータが混合しているデータを用いる場合に比べて正確度を向上させることができる。例えば、本発明の一実施形態によるバッテリー容量推定装置200によれば、バッテリーの充放電時に初期100サイクルに対するデータを用いて300サイクルの容量を予測する場合において、データを区分して容量推定モデルに適用することにより、正確度を高めることができる。
【0035】
容量推定部240は、第1のデータと第2のデータとを区分して生成された容量推定モデルに、測定対象であるバッテリーセルに対してフィルタリング部220又は統計分析部230により分類されたデータを適用することにより、容量を推定することができる。例えば、容量推定モデルは、長短期記憶ネットワーク(Long Short Term Memory Networks、LSTM)モデルであってよい。この際、第1のデータと第2のデータのそれぞれに対して生成された容量推定モデルは、異なるパラメータ値を含んでよい。
【0036】
一方、
図2に示されていないが、本発明の一実施形態によるバッテリー容量推定装置200は、保存部を含んでよい。この際、保存部は、電圧測定部210で測定された電圧データ、フィルタリング部220と統計分析部230により分類された電圧データ、容量推定プログラムなど、各種データを保存することができる。また、本発明の一実施形態によるバッテリー容量推定装置200は、保存部を含む代わりに、通信部(未図示)を介して外部のサーバと通信して前述したデータを送受信する方式で動作してよい。
【0037】
このように、本発明の一実施形態によるバッテリー容量推定装置200によれば、バッテリーセルのロギングデータのうち、分析が容易なデータと分析が容易ではないデータとを区分し、各データに容量推定モデルを適用することにより、正確かつ効率的にバッテリーセルの容量を推定することができる。
【0038】
図3は、本発明の一実施形態によるバッテリー容量推定装置がデータを分類する動作を示すフローチャートである。
【0039】
図3を参照すれば、本発明の一実施形態によるバッテリー容量推定装置では、先ず、バッテリーセルが現在アイドル状態(すなわち、電流=0)であるかを判断する(S310)。バッテリーセルがアイドル状態の場合、予め設定された方式に応じて電圧データがロギングされたか否かを確認する(S320)。例えば、ロギング方式は、5分間隔で4つの電圧データをロギングするものであってよい。
【0040】
もし、電圧データが定められたロギング方式から外れた場合(NO)、当該データを第1のデータとして分類する(S330)。一方、電圧データが定められた方式に応じて正常にロギングされた場合(YES)、当該電圧データの時間に対する微分データ(dV/dt)を算出する(S340)。
【0041】
そして、電圧の微分データに対し、主成分分析(PCA)を介して特質(主成分)データを抽出する。この際、微分データに対して主成分分析をすることにより、データの次元を縮小させ得る。そして、主成分データに対し、k-平均クラスタリングを適用することにより、データを複数のクラスタに分類する(S360)。
【0042】
この際、分類されたデータが特定のクラスタ(例えば、クラスタ2)に含まれない場合(NO)、第1のデータとして分類する(S370)。一方、データが特定のクラスタに含まれる場合(YES)、当該データを第2のデータとして分類する(S380)。
【0043】
このように、本発明の一実施形態によるバッテリー容量推定装置によれば、ロギングデータの時間単位を確認し、主成分分析とk-平均クラスタリングアルゴリズムを介して電圧データとを区分することができる。よって、特性が類似しているデータ同士分類することにより、バッテリーの容量推定をより効率的かつ正確に行うことができる。
【0044】
図4は、バッテリーセルのロギングデータと容量との間の相関関係を示す図である。
【0045】
図4の左側グラフは、充電及び放電後の電圧の時間に対する微分データ(dV1、dV2、dV3、dV4)(x軸)のそれぞれに対するバッテリー容量値(例えば、SOH)(y軸)との相関関係を示し、右側表は、バッテリーの充電及び放電後の電圧のロギングデータを示す。
【0046】
図4を参照すれば、x軸は、それぞれ充電後の電圧微分データであるdV1、dV2、dV3、dV4、及び放電後の電圧微分データであるdV1、dV2、dV3、dV4を示す。この際、
図4のグラフにおいて、y軸の値が1又は-1に近く、縦棒の長さが短いほどバッテリー容量値との相関関係が高いものである。すなわち、充電及び放電直後のデータ(25及び29)が他のデータに比べてバッテリー容量値との相関関係が高いことが分かる。これは、充電及び放電直後の電圧の変化が、その後の電圧変化に比べて相対的に明らかに示されるためである。
【0047】
図5は、本発明の一実施形態によるバッテリー容量推定装置によりバッテリーセルのロギングデータを複数のクラスタに分類したことを示す図である。
【0048】
図5を参照すれば、x軸は、バッテリーセルの充放電サイクル数、y軸は、バッテリーセルの充放電後のアイドル区間での電圧の時間に対する微分データ(dV1~dV4)を示す。また、クラスタ1の場合、前述した第1のデータを示し、クラスタ2は、前述した第2のデータを示す。
【0049】
図5に示されたように、クラスタ1に属する第1のデータの場合は、データが相対的に不連続的に示されることが分かる。すなわち、第1のデータは、その特性が不規則的であるので、バッテリー容量分析に容易ではないデータであってよい。
【0050】
一方、クラスタ2に属する第2のデータの場合、第1のデータに比べて連続的かつ緩やかな曲線の形態で示されることが分かる。すなわち、第2のデータは、第1のデータと比べて相対的に一定の傾向性を示すものであって、分析に容易なデータであってよい。
【0051】
図6は、本発明の一実施形態によるバッテリー容量推定装置により、すべてのバッテリーセルのロギングデータを複数のクラスタに分類したことを示す図である。
【0052】
図6を参照すれば、x軸は、バッテリーセルの充放電サイクル数、y軸は、全体バッテリーセルの充放電後のアイドル区間での電圧の時間に対する微分データ(dV2)を示す。
【0053】
図5の場合と同様に、全体バッテリーセルのデータを合算してみても、クラスタ1に属するデータは、上端又は下端に不規則に突出されたデータが多数発生することが分かる。一方、クラスタ2に属するデータは、クラスタ1に比べて緩やかな形態で示される。よって、バッテリーの容量推定時により正確に結果を算出することができる。
【0054】
図7は、本発明の一実施形態によるバッテリー容量推定装置の容量推定モデル(LSTM)の例示を示す図である。
【0055】
図7に示された容量推定モデルは、長短期記憶ネットワークモデル(LSTM)を示す。
図7において、Cは長期情報、hは以前stepでの情報、σ及びtanhは活性化(activation)関数、Wは加重値、bはノイズを示す。また、
図7のLSTMは、フォゲットゲートレイヤー(Forget gate layer)、デシジョンレイヤー(Decision layer)と新しいセルステートアップデート(Update new state value)、出力値決定(Decide the output value)の段階で構成されている。
【0056】
具体的には、フォゲットゲートレイヤーは、0と1との間の出力値を有するht-1とxtを入力して、どんな情報を維持するか(1)又は捨てるか(0)を決定する。また、デシジョンレイヤーでは、どんな値をアップデートして新しい状態を保存するか決定するものである。この際、インプットゲートレイヤー(input gate layer)を介してどんな値を更新するか決定し、tanhレイヤーを介してセルステートに新たに加えられる新しい候補値のベクトルCを生成する。
【0057】
また、新しいセルステートアップデート段階では、古いセルステート(Ct-1)を新しいセルステート(Ct)にアップデートする。そして、出力値決定段階では、どんな値を出力するか決定し、セルステートをtanh関数を介して-1と1との間の値を抽出した後、出力された値をフォゲットゲートレイヤーの出力値に掛ける。
【0058】
このように、前述した時系列電圧データが、
図7に示された容量推定モデルに入力されると、前述した過程を経てバッテリーセルの容量値(例えば、容量%)が出力され得る。一方、
図7のLSTMモデルは公知の構成であるので、詳細な説明は省略する。
【0059】
一方、
図7の長短期記憶ネットワークモデル(LSTM)は例示的なものであるだけで、本発明の容量推定モデルがこれに制限されるものではなく、多様な推定モデルが使用され得る。
【0060】
図8は、本発明の一実施形態によるバッテリー容量推定方法を示すフローチャートである。
【0061】
図8を参照すれば、本発明の一実施形態によるバッテリー容量推定方法では、先ず、バッテリーセルの電圧を測定する(S810)。この際、段階S810においては、一定の時間間隔でバッテリーセルの電圧を測定することができる。例えば、バッテリーセルの充電又は放電後のアイドル区間に対して電圧を測定することができる。
【0062】
そして、バッテリーセルの電圧データのうちロギングパターンが予め設定された基準範囲から外れた場合、当該電圧データを第1のデータとして決定する(S820)。具体的には、段階S820においては、バッテリーセルの電圧データのうち、ロギング時間及び個数の少なくとも一つが基準範囲から外れた場合、当該電圧データを第1のデータとして決定することができる。例えば、バッテリーセルの電圧データのロギングパターンは、5分単位で4つの電圧データを抽出するものであってよい。
【0063】
次に、バッテリーセルの電圧データに対する統計的分析により第2のデータを決定する(S830)。この際、段階S830においては、バッテリーセルの時間に対する電圧の微分データ(dV/dt)を算出することができる。具体的には、段階S830においては、微分データに対して主成分分析(PCA)を行って電圧データに対する主成分データを抽出することができる。また、主成分データに対し、k-平均クラスタリングを介して複数のクラスタを算出し、微分データが特定のクラスタに含まれる場合、第2のデータとして決定し、前記クラスタに含まれない微分データを第1のデータとして決定することができる。
【0064】
最後に、段階S820とS830から抽出された第1のデータ及び第2のデータを容量推定モデルにそれぞれ適用することにより、バッテリーセルの容量を推定する(S840)。例えば、容量推定モデルは、前述した長短期記憶ネットワーク(LSTM)モデルであってよい。この際、第1のデータと第2のデータの容量推定モデルは同一であってよく、ただし、容量推定モデルに入力されるパラメータ値が変わることがある。
【0065】
このように、本発明の一実施形態によるバッテリー容量推定方法によれば、バッテリーセルのロギングデータのうち、分析が容易なデータと分析が容易ではないデータとを区分し、各データに容量推定モデルを適用することにより、正確かつ効率的にバッテリーセルの容量を推定することができる。
【0066】
図9は、本発明の一実施形態によるバッテリー異常診断装置のハードウェア構成を示すブロック図である。
【0067】
図9を参照すれば、本発明の一実施形態によるバッテリー容量推定装置900は、MCU910、メモリー920、入出力I/F930、及び通信I/F940を含んでよい。
【0068】
MCU910は、メモリー920に保存されている各種プログラム(例えば、バッテリー容量推定プログラム、主成分分析プログラム、k-meansクラスタリングプログラムなど)を実行させ、このようなプログラムを介してバッテリーセルのデータ分類と容量推定などのための各種データを処理し、前述した
図2の機能を行うようにするプロセッサであってよい。
【0069】
メモリー920は、バッテリーセルの統計分析、容量推定などに関する各種プログラムを保存してよい。また、メモリー920は、バッテリーセルの電圧データ、バッテリーセル電圧の微分データなどの各種データを保存してよい。
【0070】
このようなメモリー920は、必要に応じて複数設けられてもよい。メモリー920は、揮発性メモリーであってもよく、非揮発性メモリーであってもよい。揮発性メモリーとしてのメモリー920は、RAM、DRAM、SRAMなどが使用されてよい。非揮発性メモリーとしてのメモリー920は、ROM、PROM、EAROM、EPROM、EEPROM、フラッシュメモリーなどが使用されてよい。前記列挙したメモリー920などの例は単に例示であるだけで、これら例に限定されるものではない。
【0071】
入出力I/F930は、キーボード、マウス、タッチパネルなどの入力装置(未図示)とディスプレイ(未図示)などの出力装置とMCU910との間を連結してデータを送受信できるようにするインターフェースを提供することができる。
【0072】
通信I/F940は、サーバと各種データが送受信可能な構成であって、有線又は無線通信を支援できる各種装置であってよい。例えば、通信I/F940を介して別途設けられた外部サーバからバッテリーセルの統計分析と容量推定のためのプログラムや各種データなどを送受信することができる。
【0073】
このように、本発明の一実施形態によるコンピュータープログラムは、メモリー920に記録され、MCU910によって処理されることにより、例えば、
図2に示された各機能ブロックを行うモジュールとして具現されてもよい。
【0074】
以上、本発明の実施形態を構成する全ての構成要素が一つに結合するか、結合されて動作することと説明されたとして、本発明が必ずこのような実施形態に限定されるものではない。すなわち、本発明の目的範囲内であれば、その全ての構成要素が一つ以上に選択的に結合されて動作してもよい。
【0075】
また、以上に記載された「含む」、「構成する」又は「有する」などの用語は、特に反対の記載がない限り、当該構成要素が内在し得ることを意味するので、他の構成要素を除くものではなく、他の構成要素をさらに含んでよいと解釈されなければならない。技術的や科学的な用語を含む全ての用語は、特に定義されない限り、本発明の属する技術分野における通常の知識を有する者により一般的に理解されるものと同一の意味を有すると解釈されてよい。辞書に定義された用語のように一般的に用いられる用語は、関連技術の文脈上の意味と一致すると解釈されなければならず、本発明で明らかに定義しない限り、理想的や過度に形式的な意味として解釈されない。
【0076】
以上の説明は、本発明の技術思想を例示的に説明したものに過ぎないものであって、本発明の属する技術分野における通常の知識を有する者であれば、本発明の本質的な特性から外れない範囲で多様な修正及び変形が可能である。したがって、本発明に開示された実施形態は、本発明の技術思想を限定するためではなく、説明するためのものであり、このような実施形態により本発明の技術思想の範囲が限定されるものではない。本発明の保護範囲は、以下の特許請求の範囲により解釈されなければならず、それと同等の範囲内の全ての技術思想は、本発明の権利範囲に含まれるものと解釈されなければならない。
【符号の説明】
【0077】
1 バッテリーラック
2 上位制御器
10 バッテリーモジュール
12 センサ
14 スイッチング部
20 バッテリー管理システム
200 バッテリー容量推定装置
210 電圧測定部
220 フィルタリング部
230 統計分析部
240 容量推定部
900 バッテリー容量推定装置
910 MCU
920 メモリー
930 入出力I/F
940 通信I/F