(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-03-18
(45)【発行日】2025-03-27
(54)【発明の名称】時計部品の製造方法
(51)【国際特許分類】
G04B 11/04 20060101AFI20250319BHJP
G04B 17/06 20060101ALI20250319BHJP
G04B 15/14 20060101ALI20250319BHJP
G04B 13/02 20060101ALI20250319BHJP
【FI】
G04B11/04
G04B17/06 A
G04B15/14 A
G04B13/02 Z
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2019228082
(22)【出願日】2019-12-18
【審査請求日】2022-11-22
(32)【優先日】2018-12-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】599091346
【氏名又は名称】ロレックス・ソシエテ・アノニム
【氏名又は名称原語表記】ROLEX SA
(74)【代理人】
【識別番号】110000062
【氏名又は名称】弁理士法人第一国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】カラム, フロリアン
(72)【発明者】
【氏名】メーグリ, アレクサンドラ
(72)【発明者】
【氏名】ムルトン, ザビエル
【審査官】藤澤 和浩
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-176714(JP,A)
【文献】国際公開第2017/148394(WO,A1)
【文献】特開2016-57283(JP,A)
【文献】国際公開第2003/027355(WO,A1)
【文献】特表2005-520691(JP,A)
【文献】特表平7-505061(JP,A)
【文献】特表2011-502817(JP,A)
【文献】欧州特許出願公開第3260932(EP,A1)
【文献】Carsten et al,Hybrid lithography: Combining UV-exposure and two photon direct laser writing,Optics Express,21,2013年,p.29921-29926,https://opg.optica.org/oe/fulltext.cfm?uri=oe-21-24-29921&id=274892
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G04B 1/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第2構造を用いて形成される時計部品用金型のマスターパターンの製造方法であって、前記方法は、少なくとも、
少なくとも1つのマスクを介して照射することにより第1感光性樹脂を重合し、その後前記第1感光性樹脂を現像することで得られる第1パターンを含む、前記第1感光性樹脂から少なくとも1つの感光性樹脂層を含む第1構造を製造する(E1)ステップと、
第2感光性樹脂を少なくとも1つの表面へ追加することで、前記第1構造の前記少なくとも1つの表面を構造化することにより、前記第1構造を前記第2構造へ転換する(E2)ステップであって、前記第1構造を転換する(E2)ことからなる当該ステップは、
前記第2感光性樹脂の層を前記第1構造の前記少なくとも1つの表面の少なくとも一部分に形成する(E21)ステップと、
第2パターンの外形及びまたは形状を定義するボクセルへレーザビームを案内し焦点を合わせるように、前記第2感光性樹脂に少なくとも部分的に沈設される対物レンズを含む光子装置を用いて、
レーザビームが前記対物レンズと空気との間の接触面、及び空気と前記第2感光性樹脂との間の接触面を交差することを防ぎながら、前記第2パターンに基づく立体重合を得るために、前記第2感光性樹脂へ2光子重合を実施する(E22)ステップと、
前記第2感光性樹脂を除去し、前記第1及び第2パターンで定義される形状の前記第
2構造を得るために現像する(E23)ステップと、
を含むステップと、
を含み、
前記第1感光性樹脂は、SU-8タイプまたはSU-8-100タイプであり、前記第2感光性樹脂は、
前記第1感光性樹脂とは異なる液状樹脂または半流動体樹脂であり、
前記2光子重合を実施する(E22)ことからなるステップは、前記対物レンズで集束したレーザビームにより前記ボクセル内で前記第2感光性樹脂の液状樹脂または半流動体樹脂が重合されて硬化することにより、0.001μm
3またはそれより優れた三次元分解能、及びまたは0.1μmまたはそれより優れた方位分解能の、第2パターンを定義することを可能にする、方法。
【請求項2】
前記第1構造を転換する(E2)ことからなるステップは、前記第1構造の少なくとも1つの側面上へ前記第2感光性樹脂を追加することを含む、
請求項1に記載の時計部品用金型のマスターパターンの製造方法。
【請求項3】
前記第1感光性樹脂を露光する(E12)ことからなるステップは、基板に直角または実質的に直角な横側面を含む、及びまたは基板に平行または実質的に平行な一定断面積の、第1構造を生成する、
請求項1または2に記載の時計部品用金型のマスターパターンの製造方法。
【請求項4】
前記2つの樹脂は、ポジまたはネガであ
る、
請求項1から3のいずれか一項に記載の時計部品用金型のマスターパターンの製造方法。
【請求項5】
前記方法は、
前記第2構造へ、電着または電気めっきを用いて、前記時計部品用金型の前記マスターパターンを少なくとも部分的に形成する金属層を形成する(E31)ステップと、
前記金属層から形成される前記時計部品用金型の前記マスターパターンを前記第2構造から分離する(E33)ステップと、
を含む、
請求項1から4のいずれか一項に記載の時計部品用金型のマスターパターンの製造方法。
【請求項6】
前記金属層の金属は、ニッケル基またはニッケルリン合金である、
請求項5に記載の時計部品用金型のマスターパターンの製造方法。
【請求項7】
前記第2構造を、セラミック粉末を含む製品によって、流体経路を用いて充填する(E31’)ステップと、
前記製品を統合する(E32’)ステップと、
前記製品により形成されるブランクを前記第2構造から分離する(E33’)ステップと、
前のステップで得られた前記ブランクを脱バインダし、その後焼結により高密度化する(E34’)ステップと、
を含む、
請求項1から4のいずれか一項に記載の時計部品用金型のマスターパターンの製造方法。
【請求項8】
前記第2構造は、時計部品用金型の前記マスターパターンを直接形成する、
請求項1から4のいずれか一項に記載の時計部品用金型のマスターパターンの製造方法。
【請求項9】
前記方法は、請求項1から8のいずれか一項に記載の方法を用いてマスターパターン(2;2’)を製造することからなるステップと、時計部品用金型(3;3’)を製造する(E4;E4’;E4’’;E4*)ために前記マスターパターンを用いることからなるステップと、その後時計部品を製造する(E5;E5’)ための製造用金型として当該時計部品用金型(3;3’)を使用することからなるステップであって、前記時計部品は、セラミック製であるステップと、を含む、
時計部品の製造方法。
【請求項10】
前記時計部品用金型(3;3’)は、ポリマー製である、
請求項9に記載の時計部品の製造方法。
【請求項11】
前記時計部品用金型(3:3’)を製造(E4;E4’)するために前記マスターパターンを使用することからなる前記ステップは、
前記マスターパターン(2;2’)を補完するため、環状要素(7)と共に、ポリマーの体積を受けることが意図される体積を囲む(E41;E41’)サブステップと、
エラストマの体積を前記環状要素(7)で補完された前記マスターパターン(2;2’)で形成される型穴空洞内へ注ぐ(E42;E42’)サブステップと、
エラストマを硬化させるために前記エラストマの体積を重合する(E43;E43’)サブステップと、
前記時計部品用金型(3;3’)を前記マスターパターン(2;2’)と前記環状要素(7)とから分離する(E44;E44’)サブステップ、
を含む、
請求項10に記載の時計部品の製造方法。
【請求項12】
前記時計部品用金型(3;3’)は、金属または金属合金またはセラミック製である、請求項9に記載の時計部品の製造方法。
【請求項13】
前記時計部品を製造する(E5;E5’)ことからなる前記ステップは、
前記時計部品用金型(3;3’)を、セラミック粉末を含む製品によって、液体経路を用いて充填する(E51;E51’)サブステップと、
前記製品を固定する(E52;E52’)サブステップと、
前記時計部品用金型(3;3’)から前記製品で形成されるブランクを分離する(E5
3、E53‘’)サブステップと、 前記ブランクを分離するサブステップで得られた前記ブランクを脱バインダし、その後焼結により高密度化する(E54、E54’)サブステップ、
を用いて、工業用セラミックで時計部品を製造することを含む、
請求項9から12のいずれか一項に記載の時計部品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、時計部品用金型の製造を可能にすることが意図されるマスターパターンの製造方法、および時計部品の製造方法に関する。換言すれば、本発明は、時計部品用金型のマスターパターンの製造方法、および時計部品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
フォトリソグラフィは、時計部品の製造に通常用いられ、特に時計部品の製造に用いられる樹脂金型の形成を可能にする、技術である。
【0003】
特許文献1は、例えば、フォトリソグラフィ技術を用いた、少なくとも2層の金属製部品を製造する方法の実施を開示する。
【0004】
特許文献2は、フォトリソグラフィ技術を用いた、多層時計部品を製造する改善された方法を提案する。
【0005】
特許文献3は、フォトリソグラフィで形成された金型が用いられる、多結晶セラミック製の時計部品の製造方法を開示する。
【0006】
いわゆる従来のフォトリソグラフィに基づくこうした従来技術の手法は、マイクロメートルまたはナノメートル規模で複雑な形状など、完全に全ての三次元形状を製造することは不可能であるというという欠点を有する。
【0007】
更に、例えば従来のフォトリソグラフィ方法を用いて製造されたマスターパターンから、軟質材料製の金型を得ることを可能にする方法を説明するために、「ソフトリソグラフィ」の文言が用いられる。
【0008】
従来技術の当該方法は、マイクロメートルまたはナノメートル規模で複雑な形状など、完全に全ての三次元形状を製造することは不可能であるという欠点を有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】欧州特許出願公開第2405300号明細書
【文献】欧州特許出願公開第3035125号明細書
【文献】欧州特許出願公開第3260932号明細書
【文献】米国特許第9302430号
【文献】国際公開第2017/102661号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
このため、本発明の目的の一つは、従来技術から既知の方法を改善し、可能であればマイクロメートルまたはナノメートル規模で複雑な形状の、三次元時計部品を製造するための解決策を提案することである。本発明の他の目的は、高い信頼性と高い再現性と高精度を有する時計部品の製造を可能にすることである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
このため、本発明は、時計部品用金型の製造を可能にすることが意図されるマスターパターンの製造方法と、時計部品の製造方法に関する。時計部品用金型のマスターパターンの製造方法は少なくとも、
少なくとも1つのマスクを介して照射することにより第1感光性樹脂を重合し、その後前記第1感光性樹脂を現像することで得られる第1パターンを含む、前記第1感光性樹脂から少なくとも1つの感光性樹脂層を含む第1構造を製造するステップと、
第2感光性樹脂を少なくとも1つの表面へ追加することで、前記第1構造の前記少なくとも1つの表面を構造化することにより、前記第1構造を第2構造へ転換するステップと、を含むことを特徴とする。当該ステップは有利には、2光子重合技術を用いる。
【0012】
本発明は、より具体的には、請求項により定義される。
【0013】
本発明のこうした目的、特徴、及び利点は、添付の図面を参照した、非限定的例示として与えられる、特定の実施形態についての以下の説明において、より詳細に提示される。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】
図1は、本発明の一実施形態にかかる製造方法により製造された自動装置爪の斜視図を示す。
【
図2】
図2は、本発明の一実施形態にかかる製造方法により製造された、
図1の自動装置爪の開口の拡大斜視図を示す。
【
図3】
図3は、本発明の第1実施形態にかかる、
図1及び2に示す自動装置爪用金型の製造を可能にすることが意図されるマスターパターンの製造方法の連続的ステップを示す。
【
図4】
図4は、本発明の第1実施形態にかかる、
図1及び2に示す自動装置爪用金型の製造を可能にすることが意図されるマスターパターンの製造方法の連続的ステップを示す。
【
図5】
図5は、本発明の第1実施形態にかかる、
図1及び2に示す自動装置爪用金型の製造を可能にすることが意図されるマスターパターンの製造方法の連続的ステップを示す。
【
図6】
図6は、本発明の第1実施形態にかかる、
図1及び2に示す自動装置爪用金型の製造を可能にすることが意図されるマスターパターンの製造方法の連続的ステップを示す。
【
図7】
図7は、本発明の第1実施形態にかかる、
図1及び2に示す自動装置爪用金型の製造を可能にすることが意図されるマスターパターンの製造方法の連続的ステップを示す。
【
図8】
図8は、本発明の第1実施形態にかかる、
図1及び2に示す自動装置爪用金型の製造を可能にすることが意図されるマスターパターンの製造方法の連続的ステップを示す。
【
図9】
図9は、本発明の第1実施形態にかかる、
図1及び2に示す自動装置爪の製造方法の連続的ステップを示す。
【
図10】
図10は、
図3から9に図示するステップから生じるマスターパターンに基づいた、自動装置爪用金型の製造のステップを示す。
【
図11】
図11は、とりわけ
図10に図示するステップの終わりに得られる金型に基づいた、自動装置爪の製造のステップを示す。
【
図12】
図12は、本発明の第2実施形態にかかる、
図1及び2に図示する自動装置爪用金型の製造を可能にすることが意図されるマスターパターンの製造方法の、連続的ステップを示す。
【
図13】
図13は、本発明の第2実施形態にかかる、
図1及び2に図示する自動装置爪用金型の製造を可能にすることが意図されるマスターパターンの製造方法の、連続的ステップを示す。
【
図14】
図14は、本発明の第2実施形態にかかる、
図1及び2に図示する自動装置爪用金型の製造を可能にすることが意図されるマスターパターンの製造方法の、連続的ステップを示す。
【
図15】
図15は、本発明の第2実施形態にかかる、
図1及び2に図示する自動装置爪用金型の製造を可能にすることが意図されるマスターパターンの製造方法の、連続的ステップを示す。
【
図16】
図16は、本発明の第2実施形態にかかる、
図1及び2に図示する自動装置爪用金型の製造を可能にすることが意図されるマスターパターンの製造方法の、連続的ステップを示す。
【
図17】
図17は、
図12から16に示すステップから生じるマスターパターンに基づいた、自動装置爪用金型の製造のステップを示す。
【
図18】
図18は、とりわけ
図17に示すステップの終わりに得られる金型に基づいた、自動装置爪用金型の製造のステップを示す。
【
図19】
図19は、第1実施形態の第1及び第2代替形態の、ステップとサブステップを模式的に示す、フローチャートを図示する。
【
図20】
図20は、第2実施形態の第1及び第2及び第3代替形態の、ステップとサブステップを模式的に示す、フローチャートを図示する。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明は、有利には、従来のフォトリソグラフィに基づく少なくとも1つのステップと、TPPという略称で知られる2光子重合技術に基づく少なくとも1つのステップとを組み合わせる、とりわけ時計部品用金型の製造を可能にすることが意図されるマスターパターンの製造方法を実施する。例えば当該方法は、時計から乖離した分野の、特許文献4に開示された方法で用いられる。最終的に当該方法は、従来のフォトリソグラフィと全く異なる、特定の、三次元の、フォトリソグラフィ方式に例えることができる。
【0016】
より具体的には、本発明は、従来のフォトリソグラフィ技術を用いて基板上に第1構造を製造するE1からなる第1ステップと、有利には2光子重合技術を用いて第1構造の少なくとも1つの表面を構造化することで、第1構造を第2構造へ変換するE2からなる第2ステップとを少なくとも含む、製造方法を実施する。
【0017】
本発明の第1実施形態において、製造方法は、第1及び第2ステップE1、E2に加えて、
時計部品6用金型3の製造を可能にすることが意図されるマスターパターン2を製造するE3、E3’からなる第3ステップと、
当該金型3を製造するE4からなる第4ステップと、
当該時計部品6を製造するE5からなるステップと、
を含む。
【0018】
本発明の第1実施形態の第1代替形態にかかる製造方法は、
図1及び2に図示される自動装置爪6の製造の文脈で説明される。自動装置爪6は、例えば、工業用セラミック、好ましくはイットリア安定化ジルコニアといったセラミック製であり、開口62を含み、当該開口の壁は、例えば爪の開口62の壁と、壁と協働する案内手段との間の接触面積を減少させるよう設計される微細構造63を含む。当該爪は、そしてとりわけ開口62の微細構造化壁は、高度に複雑な形状を有しており、有利には、第1実施形態にかかる製造方法により得ることができる。
【0019】
図3から
図11を参照して、上述の自動装置爪の製造に特に適している、そしてより一般的にはあらゆる時計部品の製造に適している、時計部品用金型の製造を可能にすることが意図されるマスターパターンの製造方法と、当該マスターパターンから得られた金型を用いた時計部品の製造方法の第1実施形態を説明する。
【0020】
当該方法は、従来のフォトリソグラフィ技術を用いて、基板20上に第1構造10を製造するE1からなる、第1ステップを含む。
【0021】
慣習により、水平方向を、基板20の平面に平行な方向と定義する。垂直方向を、水平方向に直角な方向であり、このため基板の平面に直角な方向と定義する。
【0022】
当該基板20は、ステンレス鋼など、金属製のウェハの形状を取ってもよく、シリコンウェハ、またはガラスウェハ、またはセラミックウェハの形状を取ってもよい。有利には、平面状である。基板は、任意で、例えばレーザ加工により製造された構造を含んでもよい。これら構造は、例えば、パターンを、とりわけ加工されたパターンを、及びまたは空洞を含んでもよい。基板は、とりわけ脱脂、洗浄、場合により不動態化、及びまたは活性化に関して、当業者に既知の規則に沿って準備される。好みにより、基板20は、高い正確さを持って位置決め可能なように、参照記号が設けられる。基板20は、例えばステンレス鋼といった導電性素材製であってもよい。代替的に、例えばシリコンといった、不導電性素材製の基板を用いることも可能である。この場合、基板20の上面に、第1ステップE1前に実施される準備ステップにおいて、例えば熱蒸発を用いて、導電層21が形成されてもよい。既知の方法により、当該導電開始層21は、金または銅の層で覆われた、クロム、ニッケル、またはチタンの副層を含んでもよく、このため多層構造の形状を示してもよい。
【0023】
第1ステップは、当業者に既知の規則により、基板20の導電層21の全部または一部を所望の高さにわたり第1感光性樹脂31の層で覆うように(または導電層21がない場合に基板20の上面を直接覆うように)、第1感光性樹脂31を形成するE11からなるサブステップを含む。第1感光性樹脂31は、従来のフォトリソグラフィに適している。第1感光性樹脂31は、ネガでもポジでもよい。前者の場合、照射の作用下で現像薬に対して不溶またはかろうじて可溶となる(すなわち、照射された区域は現像に抵抗する)よう設計される一方、後者の場合、照射の作用下で現像薬に対して可溶になるよう設計され、照射に曝されない部分は不溶またはかろうじて可溶に維持される。当該感光性樹脂31は、SU-8タイプであってもよく、これはUV照射の作用下で重合されるネガ感光性樹脂であり、例えばMicrochem社の樹脂SU-8-100樹脂である。
【0024】
その後、第1ステップは、
図3で示すように、マスク4で定義された第1パターンに従い第1感光性樹脂を重合させるために、第1感光性樹脂31をマスク4を通じて、とりわけマスクに実質的に直角な方向のUV照射、X線照射、またはエレクトロンビームを用いて、曝すE12からなるサブステップを含む。当該露光は、感光性樹脂31の層を、開口と不透明区域を含むマスク4を通した光照射に曝すことからなる。このため、当該マスクは、構造をまたは構造の一部を形成するために複製される第1パターンを定義する。用いられる照射は、マスクに形成された開口と直接に一致している樹脂の区域のみが照射されるように、マスクが延長する平面に直角にまたは実質的に直角であり、また基板20に直角にまたは実質的に直角である。このため、これら区域は、直角または実質的に直角な壁、すなわち基板20の平面に直角または実質的に直角な壁により定義される。代替的に、非直角または傾斜した壁を形成するために、透過率に変化を有するマスクが用いられてもよい。
【0025】
次に、第1ステップは、第1感光性樹脂31を現像するE13からなるサブステップを含む。樹脂31がネガ樹脂である実施形態では、現像は、樹脂の非露光(すなわち、非照射)区域を、感光性樹脂31に適した方法で、例えば化学製品を用いて溶解することで、またはプラズマプロセスを用いて、除去することからなる。代替として、ポジ感光性樹脂の場合、照射区域は、現像中に例えば化学的経路経由で除去され、非照射区域は基板上に維持される。現像後、基板20の上面、または任意の導電層21は、樹脂が除去された場所で表面化される。このため、樹脂の残余部分は、
図4に示すように、第1構造10を形成する。当該構造は、基板20の上面の上、またはある場合には基板20の導電層21上に載置される。このため、第1構造10は、上部(重合化樹脂と空気との間の接触面として定義される)と下部(重合化樹脂と基板20または任意の導電層21の上面との間の接触面として定義される)の2つの水平表面間に延長し、2つの水平表面間に延長する、一般的に実質的に垂直だが代替的に傾斜してもよい、側面11を含む。これら側面は、従来のフォトリソグラフィを用いた非重合化感光性樹脂の除去により第1感光性樹脂31に形成された開口の結果である。好みにより、第1構造10は、(2つの上部及び下部表面間で測定された)一定の高さを有する。
【0026】
多層構造を作成するために、第1ステップE1は、異なる第1サブパターンを備えた異なるマスクにより、上述のサブステップの繰り返しを伴ってもよく、その結果として、様々な第1サブパターンの組み合わせに対応する第1パターンを有する第1構造が作成される。
【0027】
当該方法は、その後、第1構造10の少なくとも1つの表面を、とりわけ第1構造10の少なくとも1つの側面11を構造化することにより、第1構造10を第2構造1へ転換するE2からなる第2ステップを含む。当該ステップは、少なくとも1つの表面へ、重合化樹脂内の第2立体パターン12を追加することを含む。
【0028】
このため、第2ステップは、
図5に示すように、第1構造10の少なくとも1つの上述の表面の少なくとも一部に、とりわけ少なくとも1つの側面11に、液状または半流動体の第2感光性樹脂32の層を形成するE21からなる、サブステップを含む。当該ステップは、例えば、ドロップキャスト、または液状または半流動体樹脂の適用を可能にするその他あらゆる方法(スプレー塗装、回転塗布等)により実施されてよい。第2感光性樹脂32は、前述の2光子重合技術に特に適している。第2感光性樹脂32は、ネガでもポジでもよい。ある特定の実施形態において、使用される感光性樹脂32は、半流動体樹脂、例えばネガ樹脂であるNanoscribe社によるIP-Dip
TM樹脂である。実施形態は、上記説明に限定されるものではない。第1構造の上記表面は、とりわけ多層時計部品の製造の場合には、代替的にまたは追加的に水平であってもよく、側面に限定されない。
【0029】
有利には、第1及び第2感光性樹脂31、32は、同一でもよい。その場合、2つのステップE1、E2に使用される樹脂は、従来のフォトリソグラフィと2光子重合とに適したものである。
【0030】
その後、第2ステップは、所定の第2立体パターンに従った立体重合を達成するために、
図6に示すように、第2感光性樹脂32の層の少なくとも一部へ2光子重合を実施するE22からなるサブステップを含む。このために、方法は、第2パターンに対応する空間的座標に従って感光性樹脂を重合させるために、感光性樹脂32上または内へ電磁波を照射することが意図される光子装置5を用いてもよい。本方法の利点は、とりわけ垂直方向に非連続なパターンといった、達成可能な解像度の正確性とパターンの複雑さである。
【0031】
有利な実施形態によれば、光子装置5は、第2パターンの形状または立体形状12を定義する空間的座標に従って重合させるために、第2感光性樹脂32に少なくとも部分的に沈設される対物レンズ51を含む。当該代替態様は、有利には、第2立体パターンの解像度を最適化することができる。より具体的には、対物レンズ51は、焦点が第2パターンの外形または形状12を定義する様々な空間的座標を通過するように、レーザビーム52を案内し焦点を合わせるよう設計される。座標のそれぞれに対して、2光子は、レーザ52の焦点において「ボクセル」として知られる非常に小さな体積内で、樹脂32に同時に吸収されてもよい。化学反応が開始され、液状または半流動体樹脂は重合され、ボクセル内で硬化する。このため、レーザビーム52の焦点の経路によって生じるボクセルは、第2パターンの外形または形状12を定義する。有利な効果を得るためにレーザの集束レンズと感光性樹脂32の素材を組み合わせると、ボクセルの直径は0.1μmより小さくでき、このため、第1構造10の少なくとも1つの表面に、とりわけ少なくとも1つの側面11に、非常に高解像度の微細構造またはナノ構造を定義することが可能になる。当該ステップは、0.001μm3またはそれより優れた三次元分解能と、ボクセルの直径に等しい、すなわち0.1μmまたはそれより優れた方位分解能の、第2パターンを定義することを可能にする。
【0032】
加えて、対物レンズ51の第2感光性樹脂32への少なくとも部分的または完全な沈設は、レーザビーム52が対物レンズと空気との間の接触面、及び空気と第2感光性樹脂との間の接触面を交差することを防ぎ、また当該接触面におけるレーザビームの偏向を回避する。レーザビーム(光子線)は、第2感光性樹脂と独占的に相互作用する。レーザビームは連続媒体内で処理され、あらゆる寄生反射や屈折や動力喪失を防ぐ。このため、レーザビームの経路は最小化され、既に重合された部分の検知が簡単になる。このため、第2パターンの三次元分解能が最適化され、処理スピードが最大化される。
【0033】
更に、
図6に示すように、第2パターンは、第1構造10の側面11への、とりわけ基板20に直角または実質的に直角な表面への、第2感光性樹脂32の形成により、少なくとも部分的に水平方向に延長してもよく、または大幅な水平成分を有する方向に延長してもよい。
【0034】
このため、当該ステップは、
図7に示すように、例えば表面11上に方形波または階段12の形状を有する、微細構造またはナノ構造を形成してもよい。当該形状は、表面11内に切り込まれることはなく、表面11上に浮き彫りで適用される。
【0035】
その後、第2ステップは、非重合化第2感光性樹脂32を除去し、第1及び第2パターンで定義された形状の第2構造1を得るために、第2感光性樹脂32を現像するE23からなるサブステップを含む。具体的には、所定の立体形状に従って第2感光性樹脂32が重合されると、露光されなかった感光性樹脂32の区域は、ネガ感光性樹脂の場合には、例えば化学製品に溶解することで、またはプラズマ加工を用いて、除去される。好みにより、用いられる化学製品は、第1ステップで用いられるものと同一である。これは、例えば、PGMEA基溶剤であってもよい。
【0036】
当該第2ステップの最後に、それぞれ上述の2つのパターンに形作られた2つの感光性樹脂31、32の組み合わせが、最終的に、基板20に付着された第2構造1を形成する。
【0037】
第1実施形態によれば、当該第2構造1は、基板20とともに、時計部品の製造用第
2金型を製造することが意図されるマスターパターンの製造用第1金型を形成することが意図される。第1実施形態において、第2構造は、少なくとも1つの空洞13を有してもよい。
【0038】
上述の方法のステップE1、E2の結果、完全にあらゆる複雑な立体形状を有する第2構造1を形成することが可能になり、このため対応する複雑な立体形状を有する完全にあらゆる時計部品用金型のマスターパターンの製造を可能にする。
【0039】
製造方法は、その後、時計部品製造用金型を製造することが意図されるマスターパターンを製造するために、第2構造1を使用するE3、E3’からなる第3ステップを実施する。
【0040】
より具体的には、第3ステップE3、E3’は、第2構造1と基板20とを、時計部品6を直接製造することが意図される第2金型3の製造が意図されるマスターパターン2の製造用金型として、共に使用することからなる。
【0041】
当該マスターパターン2は、とりわけ金属または金属合金またはセラミック製、または複合材料製であってもよい。好みにより、マスターパターン2は、基板20を含む。
【0042】
第1実施形態の、以下に説明する第1代替形態によれば、マスターパターン2は、金属のまたは金属合金の層22を基板20上に成長させた結果である。このため、マスターパターンは、好ましくは、基板20、存在する場合には層21、及び基板上に成長した金属または金属合金の層22で構成される。代替的に、マスターパターン2は、基板20を含まず、事前に基板から分離された層である、基板上に成長した金属または金属合金の層22の形状を有する。
【0043】
実施形態の第1代替形態において、第3ステップは、
図8に示すように、第2構造1の空洞または複数の空洞13へ、電着または電気めっきにより、マスターパターン2を少なくとも部分的に形成する金属層22を形成するE31からなるサブステップを含む。当該サブステップにおいて、上述の導電層21または導電性素材製の場合は基板20それ自体が、堆積反応を開始するために陰極として作用する。当該ステップは、例えば、LIGA方法と、例えばニッケル(Ni)またはニッケルリン(NiP)またはあらゆるニッケル基合金といった金属または金属合金を用いる。有利には、特許文献5に記載の合金を用いることができる。得られた金属層22は、好ましくは、第2構造1により形成された金型の高さと同じ高さHを有する。金属層22はまた、金型の高さよりも低い高さを有してもよく、金型の高さよりも高い高さを有してもよい。任意で、当該サブステップは、完全に平面状の水平上面を得るために、金属層と金型の同時機械研磨による、高さ調節を含んでもよい。
【0044】
更に、得られた金属層22は、好ましくは、層21の高さより実質的に大きい高さHを有する。高さは、層21の高さの5倍より大きく、または層21の高さの10倍より大きい。
【0045】
当該実施形態の第1代替形態において、第3ステップは、例えば導電層21を基板から剥離することで、当該金属層22と第2構造1から形成されるアセンブリを基板20から分離するE32からなる任意のサブステップを含んでもよい。
【0046】
当該実施形態の第1代替形態において、第3ステップは、
図9で示す結果を得るために、例えば化学攻撃またはプラズマを用いて、とりわけ当該金属層22で形成されたマスターパターン2を第2構造1から分離するE33からなるサブステップを含む。
【0047】
実行可能なサブステップE32とサブステップE33は、どのような順番で実施されてもよい。
【0048】
以下に説明する第1実施形態の第2代替形態によれば、マスターパターン2は、基板20上へのセラミックの層の形成の結果である。このため、マスターパターンは、好ましくは、基板20、存在する場合には層21、及び基板上に形成されたセラミックの層で構成される。代替的に、マスターパターン2は、基板20を含まず、事前に基板から分離された層である、基板上に成長したセラミックの層の形状を取る。
【0049】
当該実施形態の第2代替形態において、第3ステップE3’は、第2構造1を、セラミック粉末を含む製品によって、液体経路を用いて充填するE31’からなるサブステップを含む。当該ステップは、例えば、スラリーを注入するまたはジェルを注入するまたは凝固物を注入することを含んでもよい。代替的に、当該ステップは、導電性素材製の基板の場合、または基板の上面が導電層21で被覆されている場合には、電気泳動法を用いて実施されてもよい。スラリーの場合、スラリーは液体物質、セラミック粉末、および少なくとも1つの添加物を含んでもよい。液体物質は、水、アルコールまたは他の有機溶媒を含んでもよい。セラミック粉末は例えば、ジルコニアまたはアルミナまたは酸化物またはカーバイドまたは窒化物を含んでもよい。当該ステップは、空気が含有されない完璧な充填を保証するために、真空下で行われてもよい。
【0050】
当該サブステップE31’は、将来的な基板20からのマスターパターン2のブランクの脱バインダを簡単にする目的で、第2構造1の少なくとも1つの空洞13に対向する基板20の少なくとも表面部分を準備すること、または第2構造1の少なくとも1つの空洞13に対向する基板20の少なくとも表面部分にコーティングを塗布することからなる、任意のサブステップにより先行されてもよい。当該ブランクは、例えば、マスターパターン2の前身である、素地の形態をとってもよい。
【0051】
当該実施形態の第2代替形態において、第1ステップは、第2構造1に位置された製品を統合するE32’からなるサブステップを含む。当該サブステップは、とりわけ、マスターパターン2のブランクを得るための、スラリーの乾燥を含んでもよい。
【0052】
任意の中間サブステップは、金型の脱バインダ前に、マスターパターン2のブランクの高さを調節することからなってもよい。当該ブランクは、例えば、マスターパターン2の前身である、素地の形態を取ってもよい。
【0053】
当該実施形態の第2代替形態において、第3ステップは、マスターパターンのブランクを、第2構造1で形成された製造金型から分離するE33’からなるサブステップを含む。当該分離は、例えば化学攻撃により、またはプラズマを用いた処理により、達成されてもよい。
【0054】
当該実施形態の第2代替形態において、第3ステップは、最後に、前のステップで得られたブランクを脱バインダし、その後焼結により高密度化するE34’からなるサブステップを含む。好みにより、基板20は、第3ステップE3’のサブステップが実施される温度に耐えることが意図される素材製である。例えば基板は、シリコンまたはアルミナ製であってもよい。代替的に、マスターパターン2は、基板20を含まず、事前に基板から分離されたセラミック層の形状を有する。
【0055】
第1実施形態の代替形態によれば、マスターパターン2は、少なくとも一部がエラストマといった軟質素材で構成されてもよい。例えば、そして非包括的に、シリコン、PDMSポリジメチルシロキサン、ゴム、ポリブタジエン、ふっ素エラストマ等に言及することができる。
【0056】
第1実施形態の代替形態がどれであれ、時計部品の製造方法は、第2金型3を製造するために、上述の方法ステップで得られたマスターパターンを用いるE4からなる第4ステップを含む。第2金型3は、有利には、マスターパターン2から簡単に除去できるように、軟質素材製である。第2金型3は、例えば、ポリマー製、とりわけPDMS(ポリジメチルシロキサン)またはシリコンといった、エラストマ製であってもよい。
【0057】
当該ステップE4は、マスターパターン2と、金型の型穴空洞を少なくとも部分的に定義する環状要素7といった補助手段とを用いて第2金型3の前身であるエラストマの体積33を受けることが意図される体積を囲むE41からなる第1ステップを含む。
【0058】
当該ステップE4は、その後、
図10に示すように、エラストマの体積33をマスターパターン2と環状要素7とで定義される型穴空洞内へ注ぐE42からなる第2サブステップを含む。
【0059】
当該ステップE4は、その後、事前に定義された型穴空洞内で凝固させるために、エラストマ33の体積を重合するE43からなる第3サブステップを含む。
【0060】
当該ステップE4は、その後、エラストマ金型3をマスターパターン2と環状要素7とから分離するE44からなる第4サブステップを含む。
【0061】
第1実施形態の代替形態がどれであれ、時計部品の製造方法は、その後、第2金型3を用いて時計部品6を製造するE5からなる第5ステップを含む。
【0062】
当該ステップE5は、例えば、本発明の第1実施形態の第2代替形態のステップE3’のサブステップE31’、E32’、E33’E34’と類似のサブステップE51、E52、E53、E54を含む。
【0063】
当該ステップE5は、とりわけ、金型3を、セラミック粉末を含む製品によって、液体経路を用いて充填するE51からなるサブステップを含む。当該ステップは、例えば、スラリーを注入するまたはジェルを注入するまたは凝固物を注入することを含んでもよい。スラリーの場合、スラリーは液体物質、セラミック粉末、および少なくとも1つの添加物を含んでもよい。液体物質は、水、アルコールまたは他の有機溶媒を含んでもよい。セラミック粉末は、例えば、ジルコニアまたはアルミナまたは酸化物またはカーバイドまたは窒化物を含んでもよい。当該ステップは、空気が含有されない完璧な充填を保証するために、真空下で行われてもよい。
【0064】
当該サブステップE51は、将来的な金型3からの部品6のブランクの脱バインダを簡単にする目的で、金型3の少なくとも表面部分を準備することまたは金型3の少なくとも表面部分にコーティングを塗布することからなる任意のサブステップにより先行されてもよい。当該ブランクは、例えば、部品6の前身である、素地の形態をとってもよいことを注記する。
【0065】
ステップE5は、その後、金型3に位置された製品を統合するE52からなるサブステップをとりわけ含んでもよい。当該サブステップは、とりわけ、部品6のブランクを得るための、スラリーの乾燥を含んでもよい。
【0066】
任意の中間サブステップは、金型の脱バインダ前に、部品6のブランクの高さを調節することからなってもよい。
【0067】
ステップE5は、その後、部品6のブランクと金型3とを分離するE53からなるサブステップをとりわけ含んでもよい。当該分離は、例えば、化学攻撃により、またはプラズマを用いた処理により、達成されてもよい。
【0068】
ステップE5は、その後、前のステップで得られた部品6のブランクを脱バインダし、焼結により高密度化するE54からなるサブステップをとりわけ含んでもよい。
【0069】
時計部品は、好ましくは、セラミックまたは複合材料製である。このようなセラミック部品は、好ましくは、工業用セラミックとして知られるセラミック製である。「工業用セラミック」は、酸化アルミニウムに基づく、およびまたは酸化ジルコニウムに基づく、およびまたはとりわけ酸化イットリウム及びまたは酸化セリウム及びまたは酸化マグネシウムにより安定化された酸化ジルコニウムに基づく、およびまたはアルミン酸ストロンチウム、とりわけドープされたアルミン酸ストロンチウム製、およびまたは窒化物製、およびまたは炭化物製の、高密度物質であって、任意でとりわけ金属酸化物及びまたは混合金属酸化物及びまたはスピネル相を用いて着色された高密度物質に与えられる名前である。説明の簡素化のため、部品6を製造するために用いられる「工業用セラミック」に言及するために「セラミック」の文言を使用することができる。素材は、その密度が、問題の素材の理論密度の95%から100%の間に含まれる場合、「高密度」と見做される。ここで、「基づく」との考え方は、言及された化学成分が、関連するセラミックの全体化学組成の少なくとも50重量%を示すことを意味することを注記する。部品を形成するために用いられる工業用セラミックは、理論的には、金型を形成するために用いられる可能性のあるセラミックとは異なることを注記する。
【0070】
本発明の第2実施形態において、第2構造1は、時計部品6の製造用金型3’のマスターパターン2’を、少なくとも部分的に、形成することが意図される。第2ステップE2の終わりに、上述の2つのパターンにそれぞれ形作られた2つの感光性樹脂31、32の組み合わせが、基板20に付着された第2構造1を形成する。
【0071】
図12から16は、本発明の第2実施形態にかかる、
図1及び2に図示された自動装置爪の金型3’の製造を可能にすることが意図されるマスターパターン2’の製造方法の連続するステップを図示する。当該第2構造1は、ここでは、基板20と共に、時計部品6用金型3’を製造するためのマスターパターン2’を形成することが意図される。代替的に、マスターパターン2’はいかなる基板20も含まず、事前に当該基板から分離された第2構造1の形態を取る。このため、第1実施形態の場合と異なり、ここでは第2構造1は、マスターパターンの製造用金型ではなく、マスターパターン2’を直接形成する。
【0072】
当該第2実施形態において、第2構造1は、少なくとも1つの空洞13を含んでもよい。
【0073】
当該第2実施形態において、時計部品の製造方法は、
図17に図示するように、金型3’を製造するためにマスターパターン2’を使用するE4’、E4’’、E4*からなる第3ステップを含む。
【0074】
第2実施形態の第1代替形態によれば、当該金型3’は、有利には、マスターパターン2’から簡単に除去できるように、軟質素材製である。当該第2金型3’は、例えば、ポリマー製、とりわけPDMS(ポリジメチルシロキサン)またはシリコンといった、エラストマ製であってもよい。
【0075】
当該第2実施形態の第1代替形態によれば、時計部品の製造方法は、
図17に図示するように、金型3’を製造するためにマスターパターン2’を使用するE4’からなる第3ステップを含む。ステップE4’は、例えば、前述のステップE4のサブステップE41、E42、E43、E44に類似のサブステップE41’、E42’、E43’、E44’を含んでもよい。
【0076】
第2実施形態の第2及び第3代替形態において、金型3’は、硬質であってもよい。この場合、マスターパターン2’は、犠牲マスターパターンであってもよい。
【0077】
第2実施形態の第2代替形態によれば、金型3’は、基板20上に金属または金属合金の層を成長させた結果である。このため、金型3’は、好ましくは、基板20、存在する場合には層21、及び基板上に成長した金属または金属合金の層で構成される。代替的に、金型3’は、基板20を含まず、事前に基板から分離された層である、基板上に成長した金属または金属合金の層の形状を有する。ここで金型3’は、少なくとも1つの空洞を含む。
【0078】
当該第2実施形態の第2代替形態によれば、金型3’を製造するためにマスターパターン2’を使用するE4’’からなる第3ステップは、本発明の第1実施形態の第1代替形態のステップE3のサブステップE31、E32、E33に類似の、サブステップE41’’、E42’’、E43’’を含む。
【0079】
第2実施形態の第3代替形態によれば、金型3’は、基板20上へのセラミックの層の形成の結果である。このため、金型3’は、好ましくは、基板20、存在する場合には層21、及び基板上に形成されたセラミックの層で構成される。代替的に、金型3’は、基板20を含まず、事前に基板から分離された層である、基板上のセラミックの層の形状を有する。ここで金型3’は、少なくとも1つの空洞を含む。
【0080】
当該第2実施形態の第3代替形態によれば、金型3’を製造するためにマスターパターン2’を使用するE4*からなる第3ステップは、本発明の第1実施形態の第2代替形態のステップE3’のサブステップE31’、E32’、E33’、E34’に類似の、サブステップE41*、E42*、E43*、E44*を含む。
【0081】
第2実施形態の代替形態がどれであれ、時計部品の製造方法は、その後、金型3’を用いて時計部品6を製造するE5’からなる第4ステップを含む。
【0082】
ステップE5’は、とりわけ上述のステップE5のサブステップE51、E52、E53、E54に類似のサブステップE51’、E52’、E53’、E54’を含んでもよい。
【0083】
硬質金型3’の場合、部品6または部品6のブランクは、部品または部品6のブランクが製造される素材の収縮を活用して、金型3’から除去できる。
【0084】
上述の時計部品の製造方法は、例えば、例示及び非限定的例として、テンプ、アンクル、ジャンパ、ピニオン、歯車、レバー、ばね、カム、またはブランクといった、全ての時計部品の製造に用いられてもよい。製造方法は、とりわけ必然的に、微細構造を含むあらゆる要素の製造に用いられてもよい。
【0085】
このため、本発明は、2つの異なる技術を有利に組み合わせることにより、求められた目的を達成できることが明らかである。従来のフォトリソグラフィは、第1ステップにおいて時計部品用金型の製造を、簡単に、迅速に、および信頼性高く形成することを可能にすることが意図されるマスターパターンの主たる容積を形成することを可能にし、2光子重合技術は、より複雑でそれほど迅速ではないが、より正確且つ柔軟な第2ステップにおいて、当該主たる容積に複雑な形状を追加可能にし、これによりあらゆる立体形状パターンを完全に定義可能にする。これは、形状が複雑で、単純且つ堅固な方法で製造された、時計部品用金型のマスターパターンをもたらす。
【符号の説明】
【0086】
1 第2構造
2 マスターパターン
3 金型
4 マスク
5 光子装置
6 時計部品
7 環状要素
10 第1構造
11 側面
13 空洞
20 基板
21 導電層
22 金属層
31 第1感光性樹脂
32 第2感光性樹脂