(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-03-18
(45)【発行日】2025-03-27
(54)【発明の名称】工程管理システム及びプログラム
(51)【国際特許分類】
G05B 19/418 20060101AFI20250319BHJP
G06Q 50/04 20120101ALI20250319BHJP
【FI】
G05B19/418 Z
G06Q50/04
(21)【出願番号】P 2020158951
(22)【出願日】2020-09-23
【審査請求日】2023-07-20
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】504093467
【氏名又は名称】トヨタホーム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】荘加 滋
【審査官】永井 友子
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-156988(JP,A)
【文献】特開2009-157690(JP,A)
【文献】特開2014-197308(JP,A)
【文献】特開2006-350832(JP,A)
【文献】特開2019-149104(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05B 19/418
G06Q 50/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
後工程における当日の作業を示す後工程作業情報に基づいて、後工程において必要になる対象物の数の推移である後工程必要数推移を算出する手段と、
自工程において準備すべき複数の対象物の順番と、各対象物の準備に要する標準的な時間と、を示す自工程作業情報
と、自工程で準備した対象物を利用する後工程のタクトタイム
と、自工程の配置人員
と、に基づいて、当該後工程のタクトタイム内に準備できる対象物の数の推移である自工程計画数推移を算出する手段と、
前記自工程計画数推移を示す情報及び当日始めの対象物の在庫数を示す情報に基づいて、前記配置人員とした場合に準備できる対象物の数の推移である累計計画数推移を算出する手段と、
前記後工程必要数推移及び前記累計計画数推移に基づいて、前記配置人員とした場合に後工程において欠品が生じるか否かを示す欠品情報を生成する手段と、
を備える工程管理システム。
【請求項2】
当日の生産単位数を示す情報の入力を受け付ける手段と、
受け付けた生産単位数を示す情報に基づいて、前記後工程作業情報を特定する手段と、
を備える請求項1に記載の工程管理システム。
【請求項3】
当日の生産単位数及び当日始めの対象物の在庫数を示す情報の入力を受け付ける手段と、
受け付けた生産単位数及び当日始めの対象物の在庫数を示す情報に基づいて、前記自工程作業情報を特定する手段と、
を備える請求項1又は請求項2に記載の工程管理システム。
【請求項4】
前記欠品情報は、前記後工程必要数推移及び前記累計計画数推移を視覚的に表したグラフを含む、
請求項1~請求項3の何れか一項に記載の工程管理システム。
【請求項5】
前記後工程必要数推移を上回ると、対象物を在庫として保管しておく場所が足りなくなる、又は足りなくなる恐れがあることを意味する在庫許容数推移を算出する手段
を更に備える請求項1~請求項4の何れか一項に記載の工程管理システム。
【請求項6】
複数の作業によって自工程が構成されている場合に、ユーザの操作により、前記複数の作業のうち一又は複数の作業について、前記累計計画数推移を算出し、前記欠品情報を生成するように構成されている、
請求項1~請求項5の何れか一項に記載の工程管理システム。
【請求項7】
請求項1~請求項6の何れか一項に記載の工程管理システムとしてコンピュータを機能させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、工程管理システム及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、各人員の能力差を考慮してタスクの割り当てをし、最小人員でのスケジュールを管理するための方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記方法においては、後工程の進捗を考慮した自工程の工程管理を行うという観点において、改善の余地がある。
【0005】
本発明は、後工程の進捗を考慮した自工程の配置人員の決定に資する工程管理システム及びプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1の態様に係る工程管理システムは、後工程における当日の作業を示す後工程作業情報に基づいて、後工程において必要になる対象物の数の推移である後工程必要数推移を算出する手段と、自工程において準備すべき複数の対象物の順番と、各対象物の準備に要する標準的な時間と、を示す自工程作業情報、並びに、後工程のタクトタイム、自工程の配置人員及び当日始めの対象物の在庫数を示す情報に基づいて、前記配置人員とした場合に準備できる対象物の数の推移である累計計画数推移を算出する手段と、前記後工程必要数推移及び前記累計計画数推移に基づいて、前記配置人員とした場合に後工程において欠品が生じるか否かを示す欠品情報を生成する手段と、備える工程管理システムである。
【0007】
この態様によれば、設定された配置人員(例えば、基本となる配置人員だけでなく、リリーフを考慮した配置人員)を採用した場合に、後工程において欠品が生じるか否かをユーザが知ることができる。したがって、後工程において欠品が生じないような自工程の配置人員を知ることができ、適切な人員配置をすることができる。
【0008】
第2の態様に係る工程管理システムは、第1の態様において、当日の生産単位数を示す情報の入力を受け付ける手段と、受け付けた生産単位数を示す情報に基づいて、前記後工程作業情報を特定する手段と、備える。
【0009】
この態様では、工程管理システムは、当日の生産単位数(例えば生産ユニット数)を示す情報の入力を受け付け、受け付けた生産単位数を示す情報に基づいて、後工程作業情報を特定する。このため、ユーザの入力に応じて後工程作業情報を変化させることができ、様々なパターンを想定した工程管理をすることが容易である。
【0010】
第3の態様に係る工程管理システムは、第1又は第2の態様において、当日の生産単位数及び当日始めの対象物の在庫数を示す情報の入力を受け付ける手段と、受け付けた生産単位数及び当日始めの対象物の在庫数を示す情報に基づいて、前記自工程作業情報を特定する手段と、備える。
【0011】
この態様では、工程管理システムは、当日の生産単位数及び当日始めの対象物の在庫数を示す情報の入力を受け付け、受け付けた生産単位数及び当日始めの対象物の在庫数を示す情報に基づいて、自工程作業情報を特定する。このため、ユーザの入力に応じて自工程作業情報を変化させることができ、様々なパターンを想定した工程管理をすることが容易である。
【0012】
第4の態様に係る工程管理システムは、第1~第3の何れかの態様において、前記欠品情報は、前記後工程必要数推移及び前記累計計画数推移を視覚的に表したグラフを含む。
【0013】
この態様では、欠品情報は、後工程必要数推移及び累計計画数推移を視覚的に表したグラフを含む。このため、ユーザは欠品情報を視覚的に認識することができる。
【0014】
第5の態様に係る工程管理システムは、第1~第4の何れかの態様において、前記後工程必要数推移を上回ると、対象物を在庫として保管しておく場所が足りなくなる、又は足りなくなる恐れがあることを意味する在庫許容数推移を算出する手段を更に備える。
【0015】
この態様では、工程管理システムは、在庫許容数推移を算出する。在庫許容数推移とは、後工程必要数推移を上回ると対象物を在庫として保管しておく場所が足りなくなる、又は足りなくなる恐れがあることを意味する推移である。このため、対象物を在庫として保管しておく場所をも考慮した工程管理をすることができる。
【0016】
第6の態様に係る工程管理システムは、複数の作業によって自工程が構成されている場合に、ユーザの操作により、前記複数の作業のうち一又は複数の作業について、前記累計計画数推移を算出し、前記欠品情報を生成するように構成されている。
【0017】
この態様では、工程管理システムは、複数の作業によって自工程が構成されている場合に、ユーザの操作により、複数の作業のうち一又は複数の作業について、累計計画数推移を算出し、欠品情報を生成するように構成されている。このため、自工程が複数の作業によって構成されている場合でも、そのうちの一又は複数の作業について選択的に工程管理をすることができる。
【0018】
第7の態様に係るプログラムは、第1~第6の何れかの態様の工程管理システムとしてコンピュータを機能させるためのプログラムである。
【0019】
この態様では、上述の工程管理システムとしてコンピュータを機能させるためのプログラムが提供される。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、後工程の進捗を考慮した自工程の配置人員の決定に資する工程管理システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】実施形態の工程管理システムにおけるユーザの手順及びシステムの処理を示すフローである。
【
図2】実施形態の工程管理システムの装置構成及び機能構成を示す図である。
【
図4】実施形態の生産データを用いて、各用語の概念を説明する図である。
【
図5】リリーフ情報が入力される前の入力画面を示す図である。
【
図6】リリーフ情報が入力される前の進捗グラフである。
【
図7】リリーフ情報が入力された後の入力画面を示す図である。
【
図8】リリーフ情報が入力された後の進捗グラフである。
【
図9】リリーフ情報が入力された後の工程生産管理板を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、
図1~
図9を用いて、本発明に係る工程管理システムの実施形態について説明する。
【0023】
本実施形態に係る工程管理システムは、工程管理のためのシステムであり、次のような工程の管理に利用することができる。
すなわち、その工程とは、自工程で対象物(例えば間仕切壁)の準備(生産)を行い、自工程で準備した対象物(間仕切壁)が、後工程(例えば艤装工程)で必要になるような工程(自工程、間仕切壁工程)である。後工程(艤装工程)は、タクトタイムで管理されており、所定のタクトタイム毎に1生産単位(1ユニット)の作業(例えば組付作業)が行われる。例えば、1日の生産ユニット数が14の場合、定時稼働時間を7.5時間(=450分=27000秒)として、約32分がタクトタイムとなる。
【0024】
本実施形態に係る工程管理システムは、所定の情報が入力されることで、以下の情報を出力するように構成される。
・必要人工
・残業時間
・進捗グラフ(後工程必要数推移、自工程計画数推移、在庫計画数推移、在庫許容数推移、
図6参照)
・工程生産管理板(
図9参照)
すなわち、ユーザは、本実施形態に係る工程管理システム(以下単に「システム」ということがある。)を利用することで、上記の情報を得ることができ、工程管理に役立てることができる。
【0025】
[処理、手順]
ユーザの手順及びシステムの処理の一例を時系列に沿って示すと、次のとおりとなる(
図1参照)。
1.ユーザが、所定の情報を入力する(S1)。
2.システムが、必要人工を算出し、表示する(S2)。
3.ユーザが、表示された必要人工を参考にして、基本となる配置人員を入力する(S3)。
4.システムが、入力された配置人員のみで作業をした場合の進捗グラフ等を生成し、表示する(S4)。
5.ユーザが、表示された進捗グラフ等を参考にして、リリーフ情報を入力する(S5)。
6.システムが、基本となる配置人員にリリーフを投入した場合の進捗グラフ等を生成し、表示する(S6)。
【0026】
以下、それぞれの段階について具体的に説明する。
なお、以下の説明では、木カット作業、枠組作業及び石こう貼作業から構成された間仕切壁工程うち、石こう貼作業を行う工程を「自工程」とし、間仕切壁を建物ユニットに組み付ける艤装工程を「後工程」として説明する。
【0027】
[1.ユーザが、所定の情報を入力する。]
図5は、本実施形態の入力画面である。この図に示されるように、システムは、ユーザの入力によって、以下の情報を受け付けるように構成される。
・タクトタイム(図ではラインタクト)
・当日の生産単位数(図では生産ユニット数)
・当日始めの対象物の在庫数(図ではバッファ)
【0028】
(生産データ)
また、システムは、
図3に示す生産データを取得可能に構成されている。
生産データは、複数の対象物(間仕切壁)について、
・複数の対象物を準備すべき順番
・各対象物が属する生産単位の番号(組付ナンバー)
・各対象物の処理区分、基準時間
を示す情報を含んでいる。
図3に示す生産データの上から下へ向けて順番に作業が進む。また、生産データのうち、最も上の行に対応する作業が、当日の後工程(艤装工程)の最初の作業を示している。すなわち、当日、後工程(艤装工程)では組付ナンバー771から作業が始まる。
本実施形態では、組付ナンバーは建物ユニットに対応しており、組付ナンバー771に対応する建物ユニットの組付作業ために、8枚の間仕切壁の準備が必要であることを示しており、組付ナンバー772に対応する建物ユニットの組付作業ために、6枚の間仕切壁の準備が必要であることを示している。また、
図3の1Gは木カット作業、3Gは枠組作業、4Gが石こう貼作業にそれぞれ対応する。
【0029】
[2.システムが、必要人工を算出し、表示する(第一出力情報)。]
システムは、入力された情報と生産データ(
図3参照)に基づいて、必要人工を算出し、表示する。
図5に示す例では、必要人工は、入力画面と同じ画面上に「1.13」(人)と出力されている。ここでいう必要人工とは、自工程において対象物を準備する作業(対象作業)の必要人工である。本実施形態では、間仕切壁工程における石こう貼作業の必要人工である。石こう貼作業として当日に行う作業を定時稼働時間で終わらせるためには、1.13人で作業を行う必要があることを示している。
【0030】
(必要人工の算出)
必要人工の算出方法は、特に限定されないが、例えば基準時間の合計と定時稼働時間とを用いて行うことができ、本実施形態では次の式を用いる。
必要人工(人)=自工程作業範囲に属する作業の「基準時間の合計」/定時稼働時間
(1.13=組付ナンバー774~788までの基準時間の合計/27000)
図4を用いて説明すると、自工程作業範囲に属する作業の「基準時間の合計」は、生産データの4G(石こう貼作業)の列の数値のうち破線で囲んだ数値の合計である。自工程作業範囲に属する作業の「基準時間の合計」とは、自工程において当日行う必要のある作業の基準時間の合計を意味し、以下では単に「基準時間の合計」と称する。
定時稼働時間は、例えば、7.5時間(=27000秒)である。
基準時間の合計は、生産データと、生産データのうち自工程で当日行う作業範囲(自工程作業範囲)と、を特定することで算出する。
【0031】
本実施形態では、後工程の生産ユニット数と同じユニット数分の間仕切壁を準備するように、自工程作業範囲が特定される。これにより、
図4に示されるように当日始めに3ユニット分の在庫数(18枚)が存在した場合、翌日始めの在庫数を同じユニット数(3ユニット)分準備することができる。当日始めの在庫数は、「当日始めの対象物の在庫数(図ではバッファ)」として入力された情報を用いる。
【0032】
[3.ユーザが、表示された必要人工を参考にして、基本となる配置人員を入力する。]
ユーザは、基本となる配置人員を示す情報(例えば、「1」(人))を配置人員の欄に入力する。このとき、ユーザは、出力された必要人工を超えない自然数のうち、最も大きい自然数を入力することが好ましい。つまり、出力された必要人工が「1.13」の場合、ユーザは、配置人員として「1」を入力することが好ましい。必要人工よりも小さい値を入力するため、残業時間や欠品が生じる可能性が大きいが、後で述べるリリーフ投入により対処する。
【0033】
[4.システムが、入力された配置人員のみで作業をした場合の進捗グラフ等を生成し、表示する。]
システムは、進捗グラフ、工程管理板、残業時間を生成又は算出し、表示する。
【0034】
図6は、本実施形態の進捗グラフを示す。進捗グラフは、横軸を時間軸、縦軸を対象物の数量としたグラフであり、後工程必要数推移と自工程計画数推移と累計計画数推移と在庫許容数推移と視覚的に示す。横軸は、時間軸であり、左から右に向かって時間が進んでいくことを示しているが、表示上の単位は後工程の組付ナンバーである。
【0035】
後工程必要数推移とは、後工程において必要になる対象物の数の推移であり、累計計画数推移は、当日始めの在庫数をも含めて自工程で準備できる対象物の数の推移である。
そのため、後工程必要数推移が累計計画数推移を上回っている部分が存在することは、後工程において欠品が発生することを意味し、上回る横軸の値は、欠品するタイミングを意味する。このように、進捗グラフでは、後工程必要数推移と累計計画数推移とが時間的に対応するように表示されるので、ユーザは、欠品が生じるか否かを容易に確認することができ、欠品が生じる場合はどのタイミングで生じるかを容易に確認することができる。
【0036】
システムは、進捗グラフの生成のために、後工程必要数推移と自工程計画数推移と累計計画数推移と在庫許容数推移とを算出する。
【0037】
(後工程必要数推移)
後工程必要数推移は、生産データ及び生産ユニット数に基づいて算出することができ、本実施形態では、この方法により算出する。
図4を用いて説明すると、後工程作業範囲のうち、各組付ナンバーに属する対象物の数を積算することで、後工程必要推移が算出される。
図4に示されるように、各組付ナンバーに属する対象物の数は、
No771:8枚
No772:6枚
No773:4枚
No774:3枚
(中略)
No785:5枚
である。そのため、各組付ナンバーまでに必要な合計枚数は、
No771: 8枚
No772:14枚(=8+6)
No773:18枚(=8+6+4)
No774:21枚(=8+6+4+3)
(中略)
No785:92枚
となる。
これをグラフ化したものが
図6に示す進捗グラフの「後工程必要数」である。
【0038】
(自工程計画数推移)
自工程計画数推移とは、設定された配置人員(この段階では入力された「基本となる配置人員」のみでリリーフを含まない。)によって、自工程において準備できる対象物の数の推移である。当日始めの在庫数は含まない。
【0039】
本実施形態では、自工程計画数推移は、各タクトタイム内に準備できる対象物の数(計画数(i))を積算することにより算出する。iは、各タクトタイムに対応する組付ナンバーであり、図に示す例ではiは771以上の自然数である。
自工程計画数推移(i)=Σ(k=771~i)計画数(k)
【0040】
各タクトタイムにおける計画数(計画数(k))は、そのタクトタイムに対応する作業時間内に生産できる間仕切壁の数を、生産データに基づいて算出した値とする。
計画数(i):組付ナンバーiの作業時間における自工程での計画数
作業時間(i):組付ナンバーiに対応する作業時間
【0041】
本実施形態では、組付ナンバーiに対応する作業時間(i)は、直前の組付ナンバー(i-1)での残時間を考慮して算出する。
具体的には、次の式により算出する。
作業時間(i)=残時間(i-1)+タクトタイム×基本配置人員
なお、残時間(i-1)は、直前の組付ナンバー(i-1)での残り時間である。
上の式からも判るように、作業時間(i)は、基本配置人員に応じた値となり、基本配置人員が多いほど作業時間の値は大きくなる。
【0042】
自工程作業範囲に属する基準時間を順番に積算し、作業時間(i)を超えない範囲に含まれる対象物の数を、その組付ナンバーのタクトタイムでの計画数とする。そして、残り時間を次タクトタイムに対応する作業時間に繰り越す。
【0043】
(累計計画数推移)
累計計画数推移は、当日始めの在庫数(バッファ)を含めて、後工程のために準備が完了する対象物の数の推移である。本実施形態では、当日始めの在庫数と、自工程計画数推移とを足し合わせて算出する。
累計計画数推移=自工程計画数推移+当日始めの在庫数
【0044】
(在庫許容数推移)
在庫許容数推移とは、この在庫許容数推移が後工程必要数推移を上回ってしまうと、対象物を在庫として保管しておく場所が足りなくなる、又は足りなくなる恐れがあることを意味する推移である。本実施形態では、在庫許容数推移は、次の式により算出する。
在庫許容数推移=自工程計画数推移-在庫を保管できるスペースに応じた定数
【0045】
(残業時間)
また、システムは、残業時間を算出し、表示する。ここでいう残業時間とは、自工程における当日の残業時間を指す。
図5に示すように、リリーフ情報が入力される前の状態では、残業時間として「1.5」(h)が表示されている。
残業時間の算出の方法は、特に限定されない。本実施形態では、自工程作業範囲に含まれる複数の作業を、設定された配置人員で行った場合に要する時間を基準時間に基づいて算出し、定時稼働時間を引くことで算出する。
【0046】
[5.ユーザが、リリーフ情報を入力する。]
システムが表示した進捗グラフ、残業時間などに問題がある場合には、ユーザは、リリーフ情報を入力する。進捗グラフ、残業時間などに問題がある場合とは、例えば、進捗グラフが「後工程において欠品が生じること」を示している場合や、残業時間がある場合などである。
【0047】
図7は、リリーフ情報が入力された状態の入力画面を示す。
図6に示す進捗グラフ(リリーフ情報が入力される前)は、組付ナンバー782で欠品が生じることを示しているので、ユーザは、それより前の組付ナンバーをリリーフ情報として入力することが好ましい。
図7に示す例では、組付ナンバー780、781がリリーフ情報として入力されている。なお、
図5の入力画面に示す「R必要時間」は、リリーフ必要時間を示し、「Rユニット数」は、リリーフが必要なタクトタイム数(組付ナンバーの数)を示す。つまり、システムは、リリーフが必要な程度(時間など)を表示するように構成されており、ユーザは、これに基づいて適切にリリーフ情報を入力できる。
【0048】
[6.システムが、リリーフを考慮した進捗情報(進捗グラフ、残業時間等)を表示する。]
システムは、リリーフを考慮した進捗情報(進捗グラフ、残業時間等)を表示する。具体的には、リリーフ情報を考慮して、各タクトタイム(各組付ナンバー)に対応する作業時間を変化させ、進捗グラフなどを生成しなおして表示する。
【0049】
リリーフ情報が入力されると、システムは、入力されたリリーフ情報が示すタクトタイムに対応する作業時間を増加させる。
図に示す例では、組付ナンバー776、777に対応する作業時間が増加した結果、組付ナンバー776、777に対応する作業時間内に自工程で生産(準備)できる対象物の数が増加している。
具体的に説明すると、リリーフ情報が入力される前の組付ナンバー776、777に対応する作業時間を示すと次のとおりである。
・作業時間(776)=残時間(775)+タクトタイム×基本配置人員
・作業時間(777)=残時間(776)+タクトタイム×基本配置人員
これに対し、リリーフ情報が入力された後の組付ナンバー776、777に対応する作業時間を示すと次のとおりである。
・作業時間(776)=残時間(775)+タクトタイム×(基本配置人員+1)
・作業時間(777)=残時間(776)+タクトタイム×(基本配置人員+1)
【0050】
本実施形態では、入力されたリリーフ情報である「組付ナンバー780、781」に対して、それよりも3ユニット分前の「No776、777」に対応する作業時間が増大するように構成されている。なお、組付ナンバー789は欠番である。このように構成されることで、対象物の準備を余裕をもって計画することができ、欠品が生じることがより確実に防止できる計画を立てることができる。
【0051】
図8は、リリーフ情報が入力された後の進捗グラフを示す。
この進捗グラフでは累計計画数推移が後工程必要数推移を上回っている部分が存在しないので、欠品が生じないことを示している。組付ナンバー780、781に対応する部分において、累計計画数推移などのグラフの傾きが
図6と比較して大きくなっている。なお、後工程必要推移は、
図6から変化しない。
【0052】
図7は、リリーフ情報が入力された後の入力画面を示しているが、残業時間として「0」が表示されている。
【0053】
(工程生産管理板)
また、システムは、
図9に示す工程生産管理板を作成し、表示する。
図9に示されるように、工程生産管理板は、時間割ごとの計画枚数、時間割ごとの後工程必要数、及び時間割ごとの在庫計画数を示す。また、工程生産管理板は、自工程における時間割ごとの実績枚数の入力欄を有する。ユーザは、必要に応じて、工程管理板をプリントアウトして用いる。
【0054】
以上説明した工程管理システムは、例えば、汎用のコンピュータと、特定のプログラムと、によって実現される(
図2参照)。コンピュータが備えるプロセッサ11がメモリ12に記憶されたプログラムを実行することにより、プロセッサ11は、後工程必要数推移を算定する手段111、必要人工を算定する手段112、自工程計画数(自工程計画数推移、累計計画数推移、在庫許容数推移)を算出する手段113、および欠品情報を生成する手段114として機能する。
【0055】
入力装置は、例えばキーボードやマウスであり、出力装置は、ディスプレイやスピーカ、プリンタである。コンピュータは、
図2に示すように、生産データが記憶されたデータベースとネットワークを介して接続されており、生産データを自動取得するように構成されていてもよい。
【0056】
<作用効果>
次に、本実施形態の作用効果について説明する。
【0057】
本実施形態に係る工程管理システムは、後工程における当日の作業を示す情報(後工程作業情報)に基づいて、後工程において必要になる対象物の数の推移である後工程必要数推移を算出する。また、工程管理システムは、自工程において準備すべき複数の対象物の順番と、各対象物の準備に要する標準的な時間と、を示す自工程作業情報、並びに、後工程のタクトタイム、自工程の配置人員及び当日始めの対象物の在庫数を示す情報に基づいて、その配置人員とした場合に準備できる対象物の数の推移である累計計画数推移を算出する。そして、工程管理システムは、後工程必要数推移及び累計計画数推移に基づいて、その配置人員とした場合に後工程において欠品が生じるか否かを示す欠品情報を生成する。
このため、設定された配置人員(例えば、基本となる配置人員だけでなく、リリーフを考慮した配置人員)を採用した場合に、後工程において欠品が生じるか否かをユーザが知ることができる。したがって、ユーザは、配置人員を変更することで、後工程において欠品が生じないような自工程の配置人員を知ることができ、適切な人員配置をすることができる。
【0058】
また、本実施形態では、工程管理システムは、当日の生産単位数(例えば生産ユニット数)を示す情報の入力を受け付け、受け付けた生産単位数を示す情報に基づいて、後工程作業情報を特定する。このため、ユーザの入力に応じて後工程作業情報を変化させることができ、様々なパターンを想定した工程管理をすることが容易である。
【0059】
また、本実施形態では、工程管理システムは、当日の生産単位数(例えば生産ユニット数)及び当日始めの対象物の在庫数を示す情報の入力を受け付け、受け付けた生産単位数及び当日始めの対象物の在庫数を示す情報に基づいて、自工程作業情報を特定する。このため、ユーザの入力に応じて自工程作業情報を変化させることができ、様々なパターンを想定した工程管理をすることが容易である。
【0060】
また、本実施形態では、欠品情報は、後工程必要数推移及び累計計画数推移を視覚的に表したグラフを含む。このため、ユーザは欠品情報を視覚的に認識することができる。
【0061】
また、本実施形態では、工程管理システムは、在庫許容数推移を算出する。在庫許容数推移とは、後工程必要数推移を上回ると対象物を在庫として保管しておく場所が足りなくなる、又は足りなくなる恐れがあることを意味する推移である。このため、対象物を在庫として保管しておく場所をも考慮した工程管理をすることができる。
【0062】
また、本実施形態では、工程管理システムは、複数の作業によって自工程が構成されている場合に、ユーザの操作により、複数の作業のうち一又は複数の作業について、累計計画数推移を算出し、欠品情報を生成するように構成されている。このため、自工程が複数の作業によって構成されている場合でも、そのうちの一又は複数の作業について選択的に工程管理をすることができる。なお、本実施形態では、ユーザは、入力画面(
図5)の「作業選択」の欄の入力により選択することをできる。
【0063】
〔補足説明〕
なお、上記実施形態では、配置人員を、ユーザが入力するように構成されていたが、本発明はこれに限定されない。例えば、システムが算出した必要人工に基づいて、配置人員をシステムが設定するように構成されてもよい。具体的には、必要人工以下の自然数のうち最も大きい自然数を配置人員としてシステムが自動で設定するように構成されてもよい。
【0064】
上記実施形態では、あるタクトタイムに対応する作業時間が、直前のタクトタイムにおける残時間を考慮して算出される例を説明したが、本発明はこれに限定されない。例えば、作業時間(i)は、タクトタイム×配置人員(リリーフを考慮した人員)と同一であってもよい。
【0065】
上記実施形態では、各人の能力差を考慮しないで定められた基準時間を用いる例を説明したが、本発明はこれに限定されず、各人員の能力差を考慮して工程管理できるように構成されてもよい。
【0066】
本発明に係る工程管理システムは、例えば、汎用のコンピュータと、表計算ソフトウェアとによって実現することもできる。すなわち、本明細書における「プログラム」とは、一般的なプログラムの他にプログラムに準じるものを含み、例えば、表計算ソフトウェアのファイルであってもよい。表計算ソフトウェアのファイルは、表計算ソフトウェアを起動したコンピュータで行われる処理を規定するものといえる。
【符号の説明】
【0067】
10 工程管理システム
111 後工程必要数推移算出手段
112 必要人工算出手段
113 自工程計画数推移手段
114 欠品情報生成手段