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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-03-18
(45)【発行日】2025-03-27
(54)【発明の名称】飲料、飲料の製造方法、及び、飲料の香味向上方法
(51)【国際特許分類】
A23L 2/52 20060101AFI20250319BHJP
A23L 2/54 20060101ALI20250319BHJP
A23L 2/00 20060101ALI20250319BHJP
C12G 3/06 20060101ALI20250319BHJP
【ＦＩ】
A23L2/52
A23L2/54
A23L2/00 B
A23L2/00 T
C12G3/06
【請求項の数】
7
(21)【出願番号】P 2020171471
(22)【出願日】2020-10-09
(65)【公開番号】P2022063106
(43)【公開日】2022-04-21
【審査請求日】2023-10-03
(73)【特許権者】
【識別番号】303040183
【氏名又は名称】サッポロビール株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】弁理士法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】塩野 優介
【審査官】戸来 幸男
(56)【参考文献】
【文献】特開２００５－０１５６８６（ＪＰ，Ａ）
(58)【調査した分野】(Int.Cl.，ＤＢ名)
Ａ２３Ｌ ２／００－２／８４
Ｃ１２Ｇ ３／００－３／０８
ＦＳＴＡ／ＲＥＧＩＳＴＲＹ／ＣＡｐｌｕｓ／ＡＧＲＩＣＯＬＡ／
ＢＩＯＳＩＳ／ＭＥＤＬＩＮＥ／ＥＭＢＡＳＥ（ＳＴＮ）
Ｇｏｏｇｌｅ
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ペリルアルデヒドの含有量が８０００～２００００ｐｐｂであり、γ－デカラクトンの含有量が８～５５０ｐｐｂである飲料。
【請求項2】
前記ペリルアルデヒドの含有量をＸｐｐｂとし前記γ－デカラクトンの含有量をＹｐｐｂとした場合、Ｙ／Ｘの値が０．００１～０．０６０である請求項１に記載の飲料。
【請求項3】
梅テイストアルコール飲料である請求項１又は請求項２に記載の飲料。
【請求項4】
アルコール度数が１～１０ｖ／ｖ％である請求項１から請求項３のいずれか１項に記載の飲料。
【請求項5】
発泡性である請求項１から請求項４のいずれか１項に記載の飲料。
【請求項6】
ペリルアルデヒドの含有量が８０００～２００００ｐｐｂである飲料の製造方法であって、γ－デカラクトンの含有量を８～５５０ｐｐｂとする工程を含む飲料の製造方法。
【請求項7】
ペリルアルデヒドの含有量が８０００～２００００ｐｐｂである飲料について、後味にくるケミカル感を低減させるとともにトップの甘味のある華やかさを増強させる飲料の香味向上方法であって、γ－デカラクトンの含有量を８～５５０ｐｐｂとする工程を含む飲料の香味向上方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、飲料、飲料の製造方法、及び、飲料の香味向上方法に関する。
【背景技術】
【0002】
梅の特徴的な酸味は、爽やかな印象を消費者に与えることができるため、この梅の酸味を生かした様々な飲料が製造販売されている。
そして、このような飲料に関し、より消費者のニーズに合致した商品を創出すべく、研究開発が進められている。
そして、このような飲料に関し、より消費者のニーズに合致した商品を創出すべく、研究開発が進められている。
【0003】
例えば、特許文献１には、梅酒の製造方法において、完熟梅及び／又は追熟梅を凍結処理し、果皮及び／又は果肉からなる部分のみが直接アルコール水溶液に接触した状態で、アルコール水溶液に浸漬することを特徴とする、顕著な完熟香を有する梅酒の製造方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開２０１１－１１５１１８号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明者は、特許文献１のような梅の香味（梅干しの香味を含む）を呈する飲料に関して、消費者の嗜好により適した飲料を提供するため、詳細な香味の検討を実施した。
その結果、飲料にペリルアルデヒドが含まれていると、梅の香味が強くなるものの、後味においてネガティブなケミカル感が強くなることを本発明者は確認した。
その結果、飲料にペリルアルデヒドが含まれていると、梅の香味が強くなるものの、後味においてネガティブなケミカル感が強くなることを本発明者は確認した。
【0006】
また、飲用者に対し、大きなインパクトを与えるトップ（飲料を口に含んだタイミングあたり）において、梅の香味を邪魔しないような甘味のある華やかさを付与し強くすることができれば、これまでにない特徴的な香味の飲料を提供できるのではないかと本発明者は考えた。
【0007】
そこで、本発明は、後味にくるケミカル感が低減しているとともにトップの甘味のある華やかさが増強した飲料、飲料の製造方法、及び、後味にくるケミカル感を低減するとともにトップの甘味のある華やかさを増強する飲料の香味向上方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題は、以下の手段により解決することができる。
（１）ペリルアルデヒドの含有量が８０００～２００００ｐｐｂであり、γ－デカラクトンの含有量が８～５５０ｐｐｂである飲料。
（２）前記ペリルアルデヒドの含有量をＸｐｐｂとし前記γ－デカラクトンの含有量をＹｐｐｂとした場合、Ｙ／Ｘの値が０．００１～０．０６０である前記１に記載の飲料。
（３）梅テイストアルコール飲料である前記１又は前記２に記載の飲料。
（４）アルコール度数が１～１０ｖ／ｖ％である前記１から前記３のいずれか１つに記載の飲料。
（５）発泡性である前記１から前記４のいずれか１つに記載の飲料。
（６）ペリルアルデヒドの含有量が８０００～２００００ｐｐｂである飲料の製造方法であって、γ－デカラクトンの含有量を８～５５０ｐｐｂとする工程を含む飲料の製造方法。
（７）ペリルアルデヒドの含有量が８０００～２００００ｐｐｂである飲料について、後味にくるケミカル感を低減させるとともにトップの甘味のある華やかさを増強させる飲料の香味向上方法であって、γ－デカラクトンの含有量を８～５５０ｐｐｂとする工程を含む飲料の香味向上方法。
（１）ペリルアルデヒドの含有量が８０００～２００００ｐｐｂであり、γ－デカラクトンの含有量が８～５５０ｐｐｂである飲料。
（２）前記ペリルアルデヒドの含有量をＸｐｐｂとし前記γ－デカラクトンの含有量をＹｐｐｂとした場合、Ｙ／Ｘの値が０．００１～０．０６０である前記１に記載の飲料。
（３）梅テイストアルコール飲料である前記１又は前記２に記載の飲料。
（４）アルコール度数が１～１０ｖ／ｖ％である前記１から前記３のいずれか１つに記載の飲料。
（５）発泡性である前記１から前記４のいずれか１つに記載の飲料。
（６）ペリルアルデヒドの含有量が８０００～２００００ｐｐｂである飲料の製造方法であって、γ－デカラクトンの含有量を８～５５０ｐｐｂとする工程を含む飲料の製造方法。
（７）ペリルアルデヒドの含有量が８０００～２００００ｐｐｂである飲料について、後味にくるケミカル感を低減させるとともにトップの甘味のある華やかさを増強させる飲料の香味向上方法であって、γ－デカラクトンの含有量を８～５５０ｐｐｂとする工程を含む飲料の香味向上方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係る飲料は、後味にくるケミカル感が低減しているとともにトップの甘味のある華やかさが増強している。
本発明に係る飲料の製造方法は、後味にくるケミカル感が低減しているとともにトップの甘味のある華やかさが増強した飲料を製造することができる。
本発明に係る飲料の香味向上方法は、ペリルアルデヒドを含有する飲料について、後味にくるケミカル感を低減し、トップの甘味のある華やかさを増強することができる。
本発明に係る飲料の製造方法は、後味にくるケミカル感が低減しているとともにトップの甘味のある華やかさが増強した飲料を製造することができる。
本発明に係る飲料の香味向上方法は、ペリルアルデヒドを含有する飲料について、後味にくるケミカル感を低減し、トップの甘味のある華やかさを増強することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明に係る飲料、飲料の製造方法、及び、飲料の香味向上方法を実施するための形態（本実施形態）について説明する。
【0011】
［飲料］
本実施形態に係る飲料は、ペリルアルデヒドを含有する飲料であって、γ－デカラクトンの含有量が所定値以上の飲料である。
そして、本実施形態に係る飲料の一つとして、アルコールを含有するアルコール飲料が挙げられるが、このアルコール飲料については、特定の種類の飲料に限定されないものの、例えば、チューハイテイスト飲料が挙げられる。そして、このチューハイテイスト飲料とは、チューハイのような味わいを呈する飲料、つまり、チューハイの香味が感じられるように香味設計された飲料である。なお、チューハイの香味には、サワーやカクテルといった香味も含まれる。また、本実施形態に係る飲料は、果実酒テイスト飲料（果実酒のような香味となるように香味設計された飲料）に適用してもよい。
なお、本実施形態に係る飲料は、シソのような香りを呈するペリルアルデヒドを含有する飲料であることから、梅テイスト飲料（梅干しテイスト飲料も含み、梅又は梅干しのような香味となるように香味設計された飲料）であるのが好ましい。そして、梅テイスト飲料がアルコールを含有する場合、梅テイストアルコール飲料となる。
以下、本実施形態に係る飲料を構成する各要素について説明する。
本実施形態に係る飲料は、ペリルアルデヒドを含有する飲料であって、γ－デカラクトンの含有量が所定値以上の飲料である。
そして、本実施形態に係る飲料の一つとして、アルコールを含有するアルコール飲料が挙げられるが、このアルコール飲料については、特定の種類の飲料に限定されないものの、例えば、チューハイテイスト飲料が挙げられる。そして、このチューハイテイスト飲料とは、チューハイのような味わいを呈する飲料、つまり、チューハイの香味が感じられるように香味設計された飲料である。なお、チューハイの香味には、サワーやカクテルといった香味も含まれる。また、本実施形態に係る飲料は、果実酒テイスト飲料（果実酒のような香味となるように香味設計された飲料）に適用してもよい。
なお、本実施形態に係る飲料は、シソのような香りを呈するペリルアルデヒドを含有する飲料であることから、梅テイスト飲料（梅干しテイスト飲料も含み、梅又は梅干しのような香味となるように香味設計された飲料）であるのが好ましい。そして、梅テイスト飲料がアルコールを含有する場合、梅テイストアルコール飲料となる。
以下、本実施形態に係る飲料を構成する各要素について説明する。
【0012】
（ペリルアルデヒド）
ペリルアルデヒド（perillaldehyde）とは、分子式Ｃ１０Ｈ１４Ｏで表されるモノテルペンの一種であり、シソのような香りを呈する。
そして、本発明者は、ペリルアルデヒドを飲料に含有させると、後味においてネガティブなケミカル感が強くなることを確認した。
ペリルアルデヒド（perillaldehyde）とは、分子式Ｃ１０Ｈ１４Ｏで表されるモノテルペンの一種であり、シソのような香りを呈する。
そして、本発明者は、ペリルアルデヒドを飲料に含有させると、後味においてネガティブなケミカル感が強くなることを確認した。
【0013】
ペリルアルデヒドの含有量は、１００ｐｐｂ以上が好ましく、１０００ｐｐｂ以上、５０００ｐｐｂ以上、８０００ｐｐｂ以上、９０００ｐｐｂ以上、１００００ｐｐｂ以上がより好ましい。ペリルアルデヒドの含有量が所定値以上であることによって、本発明の課題（後味にくるケミカル感）が明確になるとともに、梅干感を強くすることができる。
ペリルアルデヒドの含有量は、３００００ｐｐｂ以下が好ましく、２５０００ｐｐｂ以下、２２０００ｐｐｂ以下、２００００ｐｐｂ以下、１８０００ｐｐｂ以下、１５０００ｐｐｂ以下がより好ましい。ペリルアルデヒドの含有量が所定値以下であることによって、後味にくるケミカル感が後記するγ－デカラクトンによって低減できないといった事態を回避することができる。
なお、本明細書において「ｐｐｂ」という単位は「μｇ／Ｌ」と同義である。
ペリルアルデヒドの含有量は、３００００ｐｐｂ以下が好ましく、２５０００ｐｐｂ以下、２２０００ｐｐｂ以下、２００００ｐｐｂ以下、１８０００ｐｐｂ以下、１５０００ｐｐｂ以下がより好ましい。ペリルアルデヒドの含有量が所定値以下であることによって、後味にくるケミカル感が後記するγ－デカラクトンによって低減できないといった事態を回避することができる。
なお、本明細書において「ｐｐｂ」という単位は「μｇ／Ｌ」と同義である。
【0014】
（γ－デカラクトン）
γ－デカラクトン（γ－decalactone）とは、分子式Ｃ１０Ｈ１８Ｏ２で表されるラクトンの一種である。
そして、本発明者は、ペリルアルデヒドを含有する飲料に対してγ－デカラクトンを含有させると、ペリルアルデヒドに起因する「後味にくるケミカル感」を低減できることを見出した。
また、本発明者は、ペリルアルデヒドを含有する飲料に対してγ－デカラクトンを含有させると、トップの甘味のある華やかさを増強できることも見出した。
γ－デカラクトン（γ－decalactone）とは、分子式Ｃ１０Ｈ１８Ｏ２で表されるラクトンの一種である。
そして、本発明者は、ペリルアルデヒドを含有する飲料に対してγ－デカラクトンを含有させると、ペリルアルデヒドに起因する「後味にくるケミカル感」を低減できることを見出した。
また、本発明者は、ペリルアルデヒドを含有する飲料に対してγ－デカラクトンを含有させると、トップの甘味のある華やかさを増強できることも見出した。
【0015】
γ－デカラクトンの含有量は、５ｐｐｂ以上が好ましく、８ｐｐｂ以上、１０ｐｐｂ以上、３０ｐｐｂ以上、５０ｐｐｂ以上、８０ｐｐｂ以上、１００ｐｐｂ以上がより好ましい。γ－デカラクトンの含有量が所定値以上であることによって、後味にくるケミカル感を低減できるとともに、トップの甘味のある華やかさを増強することができる。また、γ－デカラクトンの含有量が所定値以上であることによって、飲みやすさが向上するとともに、飲料としての全体のバランスも良くすることができる。
γ－デカラクトンの含有量は、５５０ｐｐｂ以下が好ましく、５２０ｐｐｂ以下、５００ｐｐｂ以下、４００ｐｐｂ以下、３５０ｐｐｂ以下、３２０ｐｐｂ以下、３００ｐｐｂ以下がより好ましい。γ－デカラクトンの含有量が所定値以下であることによって、後味にくるケミカル感の低減効果とトップの甘味のある華やかさの増強効果をしっかりと発揮させることができる。
γ－デカラクトンの含有量は、５５０ｐｐｂ以下が好ましく、５２０ｐｐｂ以下、５００ｐｐｂ以下、４００ｐｐｂ以下、３５０ｐｐｂ以下、３２０ｐｐｂ以下、３００ｐｐｂ以下がより好ましい。γ－デカラクトンの含有量が所定値以下であることによって、後味にくるケミカル感の低減効果とトップの甘味のある華やかさの増強効果をしっかりと発揮させることができる。
【0016】
飲料におけるペリルアルデヒドとγ－デカラクトンの含有量は、例えば、サンプルを適宜希釈し、固相マイクロ抽出－質量分析計付きガスクロマトグラフィー（Ｓｏｌｉｄ Ｐｈａｓｅ ＭｉｃｒｏＥｘｔｒａｃｔｉｏｎ－Ｇａｓ Ｃｈｒｏｍａｔｏｇｒａｐｈｙ－Ｍａｓｓ Ｓｐｅｃｔｒｏｍｅｔｒｙ：ＳＰＭＥ－ＧＣ－ＭＳ）法によって測定することができる。
【0017】
（γ－デカラクトンの含有量／ペリルアルデヒドの含有量）
本実施形態に係る飲料のペリルアルデヒドの含有量をＸｐｐｂとしγ－デカラクトンの含有量をＹｐｐｂとした場合、Ｙ／Ｘの値は以下のとおりである。
Ｙ／Ｘは、０．００１以上が好ましく、０．００３以上、０．００５以上、０．００８以上、０．０１０以上がより好ましい。Ｙ／Ｘが所定値以上であることによって、ペリルアルデヒドに起因する「後味にくるケミカル感」をγ－デカラクトンによってより確実に低減できるとともに、トップの甘味のある華やかさをしっかりと増強することができる。
Ｙ／Ｘは、０．０６０以下が好ましく、０．０５５以下、０．０５０以下、０．０４０以下、０．０３０以下がより好ましい。Ｙ／Ｘが所定値以下であることによって、飲料としての全体のバランスを良い状態とすることができる。
本実施形態に係る飲料のペリルアルデヒドの含有量をＸｐｐｂとしγ－デカラクトンの含有量をＹｐｐｂとした場合、Ｙ／Ｘの値は以下のとおりである。
Ｙ／Ｘは、０．００１以上が好ましく、０．００３以上、０．００５以上、０．００８以上、０．０１０以上がより好ましい。Ｙ／Ｘが所定値以上であることによって、ペリルアルデヒドに起因する「後味にくるケミカル感」をγ－デカラクトンによってより確実に低減できるとともに、トップの甘味のある華やかさをしっかりと増強することができる。
Ｙ／Ｘは、０．０６０以下が好ましく、０．０５５以下、０．０５０以下、０．０４０以下、０．０３０以下がより好ましい。Ｙ／Ｘが所定値以下であることによって、飲料としての全体のバランスを良い状態とすることができる。
【0018】
（アルコール）
本実施形態に係る飲料は、アルコールを含有してもよい。
アルコールは飲用することができるアルコールであればよく、本発明の効果が阻害されない範囲であれば、種類、製法、原料などに限定されることがないが、ウイスキー、ブランデー、スピリッツ類（例えばジン、ウォッカ、ラム等のスピリッツ、及び、原料用アルコール等）、リキュール類、焼酎等、さらには清酒、果実酒、ビール等の醸造酒を使用することができ、これらの中でも、特に、蒸留酒であるウォッカ、原料用アルコールのうちの１種以上が好ましい。
なお、本明細書においてアルコールとは、特に明記しない限り、エタノールのことをいう。
本実施形態に係る飲料は、アルコールを含有してもよい。
アルコールは飲用することができるアルコールであればよく、本発明の効果が阻害されない範囲であれば、種類、製法、原料などに限定されることがないが、ウイスキー、ブランデー、スピリッツ類（例えばジン、ウォッカ、ラム等のスピリッツ、及び、原料用アルコール等）、リキュール類、焼酎等、さらには清酒、果実酒、ビール等の醸造酒を使用することができ、これらの中でも、特に、蒸留酒であるウォッカ、原料用アルコールのうちの１種以上が好ましい。
なお、本明細書においてアルコールとは、特に明記しない限り、エタノールのことをいう。
【0019】
（アルコール度数）
本実施形態に係る飲料がアルコールを含有する場合、アルコール度数は、１ｖ／ｖ％以上であるのが好ましく、２ｖ／ｖ％以上、２．５ｖ／ｖ％以上、３ｖ／ｖ％以上、５ｖ／ｖ％以上であるのがより好ましい。また、アルコール度数は、１５ｖ／ｖ％以下であるのが好ましく、１３ｖ／ｖ％以下、１２．５ｖ／ｖ％以下、１０ｖ／ｖ％以下、９ｖ／ｖ％以下、７ｖ／ｖ％以下、６ｖ／ｖ％以下であるのがより好ましい。
なお、飲料のアルコール度数は、例えば、国税庁所定分析法（訓令）３清酒３－４アルコール分（振動式密度計・ガスクロマトグラフ分析法）に基づいて測定することができる。
本実施形態に係る飲料がアルコールを含有する場合、アルコール度数は、１ｖ／ｖ％以上であるのが好ましく、２ｖ／ｖ％以上、２．５ｖ／ｖ％以上、３ｖ／ｖ％以上、５ｖ／ｖ％以上であるのがより好ましい。また、アルコール度数は、１５ｖ／ｖ％以下であるのが好ましく、１３ｖ／ｖ％以下、１２．５ｖ／ｖ％以下、１０ｖ／ｖ％以下、９ｖ／ｖ％以下、７ｖ／ｖ％以下、６ｖ／ｖ％以下であるのがより好ましい。
なお、飲料のアルコール度数は、例えば、国税庁所定分析法（訓令）３清酒３－４アルコール分（振動式密度計・ガスクロマトグラフ分析法）に基づいて測定することができる。
【0020】
（果汁）
本実施形態に係る飲料は、果汁を含有してもよい。
ここで、果汁とは、果実を搾った汁であり、濃縮果汁、還元果汁、ストレート果汁といった各種果汁、果実ピューレ（火を通した果実あるいは生の果実をすりつぶしたり裏ごししたりした半液体状のもの）、これらの希釈液、濃縮液、混合液なども含む。また、果汁は、１種類の果実を原料としてもよいし、２種類以上の果実を原料としてもよい。
本実施形態に係る飲料は、果汁を含有してもよい。
ここで、果汁とは、果実を搾った汁であり、濃縮果汁、還元果汁、ストレート果汁といった各種果汁、果実ピューレ（火を通した果実あるいは生の果実をすりつぶしたり裏ごししたりした半液体状のもの）、これらの希釈液、濃縮液、混合液なども含む。また、果汁は、１種類の果実を原料としてもよいし、２種類以上の果実を原料としてもよい。
【0021】
果汁の含有量は、果汁率換算で０％でもよいものの、１％以上が好ましく、３％以上、５％以上がより好ましい。また、果汁の含有量は、果汁率換算で１５％以下が好ましく、１０％以下、９％以下、８％以下がより好ましい。
【0022】
本実施形態に係る飲料の果汁の含有量（果汁率換算）は、「含有量（果汁率換算）％（詳細には、ｗ／ｖ％）」＝「飲料１００ｍＬ中への果汁配合量（ｇ）」×「濃縮倍率」／１００ｍＬ×１００により算出することとする。ここで、「濃縮倍率」（ストレート果汁を１００％としたときの果汁の相対的濃縮倍率）を算出するにあたり、ＪＡＳ規格に準ずるものとする。詳細には、ＪＡＳ規格の糖用屈折計示度の基準（°Ｂｘ）又は酸度の基準（％）に基づいて算出することができ、例えば、酸度が７％の梅果汁を用いた場合、果実飲料の日本農林規格（平成２８年２月２４日農林水産省告示第４８９号）の別表４によると梅の基準酸度は３．５％であるから、この梅果汁は、２倍濃縮の梅果汁となる。
【0023】
なお、果汁の由来となる果実は、飲料を梅の香味とするために梅が好ましいが、本発明の所望の効果が阻害されない範囲において、食用のものであれば、いずれの果実も使用できる。例えば、果汁の由来となる果実としては、前記した梅の他に、柑橘類果実である、レモン、ライム、ミカン、オレンジ、グレープフルーツ、ユズ、シークワーサー等や、バラ科果実である、リンゴ、イチゴ、桃等、これら以外にも、ぶどう、プラム、ざくろ、ブルーベリー、カシス、クランベリー、マキベリー、いちご、アップル、ピーチ、マンゴー、パイナップル、キウイ、梨等といった従来公知の果実も挙げることができる。
【0024】
（エキス分）
本実施形態に係る飲料のエキス分（エキスの含有量）は特に限定されないものの、例えば、以下のとおりである。
エキス分は、１．００ｗ／ｖ％以上が好ましく、２．００ｗ／ｖ％以上、３．００ｗ／ｖ％以上、４．００ｗ／ｖ％以上、４．２０ｗ／ｖ％以上が好ましい。また、エキス分は、１０．００ｗ／ｖ％以下が好ましく、９．００ｗ／ｖ％以下、８．００ｗ／ｖ％以下、７．００ｗ／ｖ％以下、６．５０ｗ／ｖ％以下がより好ましい。
本実施形態に係る飲料のエキス分（エキスの含有量）は特に限定されないものの、例えば、以下のとおりである。
エキス分は、１．００ｗ／ｖ％以上が好ましく、２．００ｗ／ｖ％以上、３．００ｗ／ｖ％以上、４．００ｗ／ｖ％以上、４．２０ｗ／ｖ％以上が好ましい。また、エキス分は、１０．００ｗ／ｖ％以下が好ましく、９．００ｗ／ｖ％以下、８．００ｗ／ｖ％以下、７．００ｗ／ｖ％以下、６．５０ｗ／ｖ％以下がより好ましい。
【0025】
ここで、エキス分とは、温度１５度の時において原容量百立方センチメートル中に含有する不揮発性成分のグラム数である（酒税法第三条）。そして、エキス分は、主に後記する甘味料の含有量が反映される数値であり、甘味料の含有量が多いと当該数値は高くなり、甘味料の含有量が少ないと当該数値は低くなる。
なお、飲料のエキス分は、例えば、日本国の国税庁所定分析法に準拠して比重（日本酒度）及びアルコール度を測定して算出することができる。
なお、飲料のエキス分は、例えば、日本国の国税庁所定分析法に準拠して比重（日本酒度）及びアルコール度を測定して算出することができる。
【0026】
（酸度）
本実施形態に係る飲料の酸度（クエン酸換算の酸度）は特に限定されないものの、例えば、以下のとおりである。
酸度は、０．１０ｗ／ｖ％以上が好ましく、０．２０ｗ／ｖ％以上、０．３０ｗ／ｖ％以上、０．４０ｗ／ｖ％以上、０．４５ｗ／ｖ％以上がより好ましい。また、酸度は、２．００ｗ／ｖ％以下が好ましく、１．５０ｗ／ｖ％以下、１．００ｗ／ｖ％以下、０．９０ｗ／ｖ％以下、０．８０ｗ／ｖ％以下、０．７５ｗ／ｖ％以下がより好ましい。
本実施形態に係る飲料の酸度（クエン酸換算の酸度）は特に限定されないものの、例えば、以下のとおりである。
酸度は、０．１０ｗ／ｖ％以上が好ましく、０．２０ｗ／ｖ％以上、０．３０ｗ／ｖ％以上、０．４０ｗ／ｖ％以上、０．４５ｗ／ｖ％以上がより好ましい。また、酸度は、２．００ｗ／ｖ％以下が好ましく、１．５０ｗ／ｖ％以下、１．００ｗ／ｖ％以下、０．９０ｗ／ｖ％以下、０．８０ｗ／ｖ％以下、０．７５ｗ／ｖ％以下がより好ましい。
【0027】
なお、本明細書における酸度（クエン酸換算の酸度：クエン酸相当量として換算した酸度の値）は、果実飲料の日本農林規格（平成２８年２月２４日農林水産省告示第４８９号）に定められた方法で求めることができる。具体的には、飲料を水酸化ナトリウム溶液（０．１ｍｏｌ／Ｌ）で中和滴定し、中和滴定において必要となった水酸化ナトリウム溶液の「滴定量（ｍｌ）」、滴定に使用した飲料の「重量（ｇ）」、「０．００６４」（０．１ｍｏｌ／Ｌ水酸化ナトリウム水溶液１ｍＬに相当するクエン酸の重量（ｇ））という定数などを用いて算出すればよい。
また、酸度は、例えば、後記する酸味料や前記した果汁の添加量によって調整することができる。
また、酸度は、例えば、後記する酸味料や前記した果汁の添加量によって調整することができる。
【0028】
（発泡性）
本実施形態に係る飲料は、炭酸ガスを含有する発泡性のもの、つまり、炭酸飲料であるのが好ましい。ここで、本実施形態における発泡性とは、２０℃におけるガス圧（全圧）が０．５ｋｇ／ｃｍ２以上であることをいい、１．０ｋｇ／ｃｍ２以上が好ましく、１．５ｋｇ／ｃｍ２以上、２．０ｋｇ／ｃｍ２以上、２．１ｋｇ／ｃｍ２以上がより好ましい。また、２０℃におけるガス圧（全圧）は、５．０ｋｇ／ｃｍ２以下が好ましく、４．０ｋｇ／ｃｍ２以下、３．５ｋｇ／ｃｍ２以下、３．０ｋｇ／ｃｍ２以下がより好ましい。
なお、本実施形態に係る飲料の２０℃におけるガス圧（全圧）は、例えば、国税庁所定分析法（訓令）「８－３ガス圧」に基づいて測定することができる。
本実施形態に係る飲料は、炭酸ガスを含有する発泡性のもの、つまり、炭酸飲料であるのが好ましい。ここで、本実施形態における発泡性とは、２０℃におけるガス圧（全圧）が０．５ｋｇ／ｃｍ２以上であることをいい、１．０ｋｇ／ｃｍ２以上が好ましく、１．５ｋｇ／ｃｍ２以上、２．０ｋｇ／ｃｍ２以上、２．１ｋｇ／ｃｍ２以上がより好ましい。また、２０℃におけるガス圧（全圧）は、５．０ｋｇ／ｃｍ２以下が好ましく、４．０ｋｇ／ｃｍ２以下、３．５ｋｇ／ｃｍ２以下、３．０ｋｇ／ｃｍ２以下がより好ましい。
なお、本実施形態に係る飲料の２０℃におけるガス圧（全圧）は、例えば、国税庁所定分析法（訓令）「８－３ガス圧」に基づいて測定することができる。
【0029】
（その他）
本実施形態に係る飲料は、本発明の所望の効果が阻害されない範囲で飲料として通常配合される甘味料、高甘味度甘味料、酸化防止剤、香料、酸味料、塩類、食物繊維など（以下、適宜「添加剤」という）を含有していてもよい。甘味料としては、例えば、果糖ぶどう糖液糖、グルコース、ガラクトース、マンノース、フルクトース、ラクトース、スクロース、マルトースなどを用いることができる。高甘味度甘味料としては、例えば、ネオテーム、アセスルファムカリウム、スクラロース、サッカリン、サッカリンナトリウム、グリチルリチン酸二ナトリウム、チクロ、ズルチン、ステビア、グリチルリチン、ソーマチン、モネリン、アスパルテーム、アリテームなどを用いることができる。酸化防止剤としては、例えば、ビタミンＣ、ビタミンＥ、ポリフェノールなどを用いることができる。酸味料としては、例えば、クエン酸、アジピン酸、クエン酸三ナトリウム、グルコノデルタラクトン、グルコン酸、グルコン酸カリウム、グルコン酸ナトリウム、コハク酸、コハク酸一ナトリウム、コハク酸二ナトリウム、酢酸ナトリウム、ＤＬ－酒石酸、Ｌ－酒石酸、ＤＬ－酒石酸ナトリウム、Ｌ－酒石酸ナトリウム、二酸化炭素、乳酸、乳酸ナトリウム、フマル酸、フマル酸一ナトリウム、ＤＬ－リンゴ酸、ＤＬ－リンゴ酸ナトリウム、リン酸などを用いることができる。塩類としては、例えば、食塩、酸性りん酸カリウム、酸性りん酸カルシウム、りん酸アンモニウム、硫酸カルシウム、メタ重亜硫酸カリウム、塩化カルシウム、硝酸カリウム、硫酸アンモニウムなどを用いることができる。食物繊維としては、例えば、難消化性デキストリン、ペクチン、ポリデキストロース、グアーガム分解物などを用いることができる。
そして、前記した各原料は、一般に市販されているものを使用することができる。
本実施形態に係る飲料は、本発明の所望の効果が阻害されない範囲で飲料として通常配合される甘味料、高甘味度甘味料、酸化防止剤、香料、酸味料、塩類、食物繊維など（以下、適宜「添加剤」という）を含有していてもよい。甘味料としては、例えば、果糖ぶどう糖液糖、グルコース、ガラクトース、マンノース、フルクトース、ラクトース、スクロース、マルトースなどを用いることができる。高甘味度甘味料としては、例えば、ネオテーム、アセスルファムカリウム、スクラロース、サッカリン、サッカリンナトリウム、グリチルリチン酸二ナトリウム、チクロ、ズルチン、ステビア、グリチルリチン、ソーマチン、モネリン、アスパルテーム、アリテームなどを用いることができる。酸化防止剤としては、例えば、ビタミンＣ、ビタミンＥ、ポリフェノールなどを用いることができる。酸味料としては、例えば、クエン酸、アジピン酸、クエン酸三ナトリウム、グルコノデルタラクトン、グルコン酸、グルコン酸カリウム、グルコン酸ナトリウム、コハク酸、コハク酸一ナトリウム、コハク酸二ナトリウム、酢酸ナトリウム、ＤＬ－酒石酸、Ｌ－酒石酸、ＤＬ－酒石酸ナトリウム、Ｌ－酒石酸ナトリウム、二酸化炭素、乳酸、乳酸ナトリウム、フマル酸、フマル酸一ナトリウム、ＤＬ－リンゴ酸、ＤＬ－リンゴ酸ナトリウム、リン酸などを用いることができる。塩類としては、例えば、食塩、酸性りん酸カリウム、酸性りん酸カルシウム、りん酸アンモニウム、硫酸カルシウム、メタ重亜硫酸カリウム、塩化カルシウム、硝酸カリウム、硫酸アンモニウムなどを用いることができる。食物繊維としては、例えば、難消化性デキストリン、ペクチン、ポリデキストロース、グアーガム分解物などを用いることができる。
そして、前記した各原料は、一般に市販されているものを使用することができる。
【0030】
本実施形態に係る飲料は、ベンズアルデヒド（benzaldehyde）を含有してもよい。
ベンズアルデヒドの含有量は、８０ｐｐｂ以上が好ましく、１００ｐｐｂ以上、３００ｐｐｂ以上、５００ｐｐｂ以上、８００ｐｐｂ以上、１０００ｐｐｂ以上がより好ましい。
ベンズアルデヒドの含有量は、３２００ｐｐｂ以下が好ましく、３０００ｐｐｂ以下、２８００ｐｐｂ以下、２５００ｐｐｂ以下、２２００ｐｐｂ以下、２０００ｐｐｂ以下がより好ましい。
なお、飲料のベンズアルデヒドは、例えば、サンプルを適宜希釈し、固相マイクロ抽出－質量分析計付きガスクロマトグラフィー（Ｓｏｌｉｄ Ｐｈａｓｅ ＭｉｃｒｏＥｘｔｒａｃｔｉｏｎ－Ｇａｓ Ｃｈｒｏｍａｔｏｇｒａｐｈｙ－Ｍａｓｓ Ｓｐｅｃｔｒｏｍｅｔｒｙ：ＳＰＭＥ－ＧＣ－ＭＳ）法によって測定することができる。
ベンズアルデヒドの含有量は、８０ｐｐｂ以上が好ましく、１００ｐｐｂ以上、３００ｐｐｂ以上、５００ｐｐｂ以上、８００ｐｐｂ以上、１０００ｐｐｂ以上がより好ましい。
ベンズアルデヒドの含有量は、３２００ｐｐｂ以下が好ましく、３０００ｐｐｂ以下、２８００ｐｐｂ以下、２５００ｐｐｂ以下、２２００ｐｐｂ以下、２０００ｐｐｂ以下がより好ましい。
なお、飲料のベンズアルデヒドは、例えば、サンプルを適宜希釈し、固相マイクロ抽出－質量分析計付きガスクロマトグラフィー（Ｓｏｌｉｄ Ｐｈａｓｅ ＭｉｃｒｏＥｘｔｒａｃｔｉｏｎ－Ｇａｓ Ｃｈｒｏｍａｔｏｇｒａｐｈｙ－Ｍａｓｓ Ｓｐｅｃｔｒｏｍｅｔｒｙ：ＳＰＭＥ－ＧＣ－ＭＳ）法によって測定することができる。
【0031】
本実施形態に係る飲料は、仮に、チューハイテイスト飲料とする場合、前記した果汁以外にも、フルーツフレーバー（フルーツ様の香りを付与するフレーバー）、果実エキス（果実又は果汁から水やアルコールなどを用いて当該果実の有効成分を抽出した抽出物）を含有させることもできる。そして、果実フレーバーや果実エキスの果実種は、前記した果汁の果実種と同様である。
なお、本発明の効果（特に、後味にくるケミカル感の低減効果やトップの甘味のある華やかさの増強効果）は、フレーバー・果実エキスの香味タイプや香味の強弱に基づいて、当該効果が完全に消失してしまうといったことはないと考えることから、フレーバーなどによる香味タイプは多様であってもよく、含有量についても特に限定されない。
なお、本発明の効果（特に、後味にくるケミカル感の低減効果やトップの甘味のある華やかさの増強効果）は、フレーバー・果実エキスの香味タイプや香味の強弱に基づいて、当該効果が完全に消失してしまうといったことはないと考えることから、フレーバーなどによる香味タイプは多様であってもよく、含有量についても特に限定されない。
【0032】
（容器詰め飲料）
本実施形態に係る飲料は、各種容器に入れて提供することができる。各種容器に飲料を詰めることにより、長期間の保管による品質の劣化を好適に防止することができる。
なお、容器は密閉できるものであればよく、金属製（アルミニウム製又はスチール製など）のいわゆる缶容器・樽容器を適用することができる。また、容器は、ガラス容器、ペットボトル容器、紙容器、パウチ容器などを適用することもできる。容器の容量は特に限定されるものではなく、現在流通しているどのようなものも適用することができる。なお、気体、水分および光線を完全に遮断し、長期間常温で安定した品質を保つことが可能な点から、金属製の容器を適用することが好ましい。
本実施形態に係る飲料は、各種容器に入れて提供することができる。各種容器に飲料を詰めることにより、長期間の保管による品質の劣化を好適に防止することができる。
なお、容器は密閉できるものであればよく、金属製（アルミニウム製又はスチール製など）のいわゆる缶容器・樽容器を適用することができる。また、容器は、ガラス容器、ペットボトル容器、紙容器、パウチ容器などを適用することもできる。容器の容量は特に限定されるものではなく、現在流通しているどのようなものも適用することができる。なお、気体、水分および光線を完全に遮断し、長期間常温で安定した品質を保つことが可能な点から、金属製の容器を適用することが好ましい。
【0033】
以上説明したように、本実施形態に係る飲料は、後味にくるケミカル感が低減しているとともにトップの甘味のある華やかさが増強している。
また、本実施形態に係る飲料は、飲みやすさが向上しているとともに、飲料としての全体のバランスも良くなっている。
また、本実施形態に係る飲料は、飲みやすさが向上しているとともに、飲料としての全体のバランスも良くなっている。
【0034】
［飲料の製造方法］
次に、本実施形態に係る飲料の製造方法を説明する。
本実施形態に係る飲料の製造方法は、混合工程と、後処理工程と、を含む。
次に、本実施形態に係る飲料の製造方法を説明する。
本実施形態に係る飲料の製造方法は、混合工程と、後処理工程と、を含む。
【0035】
混合工程では、混合タンクに、水、ペリルアルデヒド、γ－デカラクトン、果汁、アルコール、添加剤などを適宜投入して混合後液を製造する。
この混合工程において、ペリルアルデヒドの含有量、γ－デカラクトンの含有量などが前記した所定範囲内となるように各原料を混合し、調整すればよい。
この混合工程において、ペリルアルデヒドの含有量、γ－デカラクトンの含有量などが前記した所定範囲内となるように各原料を混合し、調整すればよい。
【0036】
そして、後処理工程では、例えば、ろ過、殺菌、炭酸ガスの付加、容器への充填などの処理を必要に応じて選択的に行う。
なお、後処理工程のろ過処理は、一般的なフィルター又はストレーナーによって行うことができる。また、後処理工程の殺菌処理は、処理速度等の観点から、プレート殺菌によって行うのが好ましいが、同様の処理を行うことができるのであればこれに限定されることなく適用可能である。また、後処理工程の充填処理は、飲料品の製造において通常行われる程度にクリーン度を保ったクリーンルームにおいて充填するのが好ましい。そして、後処理工程での各処理の順序は特に限定されない。
このように本実施形態に係る飲料は、調合で製造される調合飲料であって、蒸留で製造される蒸留酒ではないのが好ましい。
なお、後処理工程のろ過処理は、一般的なフィルター又はストレーナーによって行うことができる。また、後処理工程の殺菌処理は、処理速度等の観点から、プレート殺菌によって行うのが好ましいが、同様の処理を行うことができるのであればこれに限定されることなく適用可能である。また、後処理工程の充填処理は、飲料品の製造において通常行われる程度にクリーン度を保ったクリーンルームにおいて充填するのが好ましい。そして、後処理工程での各処理の順序は特に限定されない。
このように本実施形態に係る飲料は、調合で製造される調合飲料であって、蒸留で製造される蒸留酒ではないのが好ましい。
【0037】
なお、混合工程及び後処理工程において行われる各処理は、ＲＴＤ飲料などを製造するために一般的に用いられている設備によって行うことができる。
【0038】
以上説明したように、本実施形態に係る飲料の製造方法によると、後味にくるケミカル感が低減しているとともにトップの甘味のある華やかさが増強した飲料を製造することができる。
また、本実施形態に係る飲料の製造方法によると、飲みやすさが向上しているとともに、飲料としての全体のバランスも良くなっている飲料を製造することができる。
また、本実施形態に係る飲料の製造方法によると、飲みやすさが向上しているとともに、飲料としての全体のバランスも良くなっている飲料を製造することができる。
【0039】
［飲料の香味向上方法］
次に、本実施形態に係る飲料の香味向上方法を説明する。
本実施形態に係る飲料の香味向上方法は、ペリルアルデヒドを含有する飲料について、後味にくるケミカル感を低減させるとともにトップの甘味のある華やかさを増強させる飲料の香味向上方法であって、γ－デカラクトンの含有量を所定値以上とする方法である。
なお、各成分の含有量等については、前記した「飲料」において説明した値と同じである。
次に、本実施形態に係る飲料の香味向上方法を説明する。
本実施形態に係る飲料の香味向上方法は、ペリルアルデヒドを含有する飲料について、後味にくるケミカル感を低減させるとともにトップの甘味のある華やかさを増強させる飲料の香味向上方法であって、γ－デカラクトンの含有量を所定値以上とする方法である。
なお、各成分の含有量等については、前記した「飲料」において説明した値と同じである。
【0040】
以上説明したように、本実施形態に係る飲料の香味向上方法によると、後味にくるケミカル感を低減させるとともにトップの甘味のある華やかさを増強させることができる。
また、本実施形態に係る飲料の香味向上方法によると、飲みやすさを向上させるとともに、飲料としての全体のバランスも良くすることができる。
また、本実施形態に係る飲料の香味向上方法によると、飲みやすさを向上させるとともに、飲料としての全体のバランスも良くすることができる。
【実施例】
【0041】
次に、本発明の要件を満たす実施例とそうでない比較例とを例示して、本発明について説明する。
【0042】
［サンプルの準備］
表１～３の各サンプルは、表に示す量となるように、ウォッカ、ペリルアルデヒド、γ－デカラクトン、クエン酸（無水）、クエン酸三ナトリウム、梅果汁、果糖ぶどう糖液糖、グラニュー糖、Ｌ－アスコルビン酸、香料、炭酸水、純水を適宜配合してサンプル（チューハイテイスト飲料であって梅テイストアルコール飲料）を準備した。
なお、表１～３の各サンプルの２０℃におけるガス圧（全圧）は２．１ｋｇ／ｃｍ２とした。そして、表１、２の各サンプルは、ペリルアルデヒドとγ－デカラクトン以外の成分はサンプル間で略同じとした。また、表３の各サンプルの酸度はクエン酸（無水）の量によって調整し、エキス分は果糖ぶどう糖液糖の量によって調整した。
表１～３の各サンプルは、表に示す量となるように、ウォッカ、ペリルアルデヒド、γ－デカラクトン、クエン酸（無水）、クエン酸三ナトリウム、梅果汁、果糖ぶどう糖液糖、グラニュー糖、Ｌ－アスコルビン酸、香料、炭酸水、純水を適宜配合してサンプル（チューハイテイスト飲料であって梅テイストアルコール飲料）を準備した。
なお、表１～３の各サンプルの２０℃におけるガス圧（全圧）は２．１ｋｇ／ｃｍ２とした。そして、表１、２の各サンプルは、ペリルアルデヒドとγ－デカラクトン以外の成分はサンプル間で略同じとした。また、表３の各サンプルの酸度はクエン酸（無水）の量によって調整し、エキス分は果糖ぶどう糖液糖の量によって調整した。
【0043】
［試験内容］
前記の方法により製造した各サンプルについて、訓練された識別能力のあるパネル３名が下記評価基準に則って「後味にくるネガティブなケミカル感」、「トップの甘さ、華やかさ」、「ミドルにくる果肉感」、「しょっぱさ」、「梅干感」、「飲みやすさ」、「飲料としての全体のバランス」について、１～５点の５段階評価で独立点数付けし、その平均値を算出した。
なお、全ての評価は、サンプルを飲んで評価した。
前記の方法により製造した各サンプルについて、訓練された識別能力のあるパネル３名が下記評価基準に則って「後味にくるネガティブなケミカル感」、「トップの甘さ、華やかさ」、「ミドルにくる果肉感」、「しょっぱさ」、「梅干感」、「飲みやすさ」、「飲料としての全体のバランス」について、１～５点の５段階評価で独立点数付けし、その平均値を算出した。
なお、全ての評価は、サンプルを飲んで評価した。
【0044】
（後味にくるネガティブなケミカル感：評価基準）
後味にくるネガティブなケミカル感の評価は、サンプル１－０の３点を基準とし、「後味にくるケミカル感が弱い」場合を１点、「後味にくるケミカル感がサンプル１－０と同程度である」場合を３点、「後味にくるケミカル感が強い」場合を５点と評価した。
そして、「後味にくるケミカル感」については、点数が低いほど低減されており、好ましいと判断できる。
後味にくるネガティブなケミカル感の評価は、サンプル１－０の３点を基準とし、「後味にくるケミカル感が弱い」場合を１点、「後味にくるケミカル感がサンプル１－０と同程度である」場合を３点、「後味にくるケミカル感が強い」場合を５点と評価した。
そして、「後味にくるケミカル感」については、点数が低いほど低減されており、好ましいと判断できる。
【0045】
ここで、「後味にくるケミカル感（ネガティブなケミカル感）」とは、後味（サンプルを飲み込んだ後に残る味）における嫌な薬品的な香味である。
【0046】
（トップの甘さ、華やかさ：評価基準）
トップの甘さ、華やかさの評価は、サンプル１－０の３点を基準とし、「トップの甘さ、華やかさが弱い」場合を１点、「トップの甘さ、華やかさがサンプル１－０と同程度である」場合を３点、「トップの甘さ、華やかさが強い」場合を５点と評価した。
そして、「トップの甘さ、華やかさ」については、点数が高いほど増強されており、好ましいと判断できる。
トップの甘さ、華やかさの評価は、サンプル１－０の３点を基準とし、「トップの甘さ、華やかさが弱い」場合を１点、「トップの甘さ、華やかさがサンプル１－０と同程度である」場合を３点、「トップの甘さ、華やかさが強い」場合を５点と評価した。
そして、「トップの甘さ、華やかさ」については、点数が高いほど増強されており、好ましいと判断できる。
【0047】
ここで、「トップの甘さ、華やかさ」とは、トップ（サンプルを口に含んだ瞬間あたり）における甘味のある華やか（フローラル）な香味である。
【0048】
（ミドルにくる果肉感：評価基準）
ミドルにくる果肉感の評価は、サンプル１－０の３点を基準とし、「ミドルにくる果肉感が弱い」場合を１点、「ミドルにくる果肉感がサンプル１－０と同程度である」場合を３点、「ミドルにくる果肉感が強い」場合を５点と評価した。
そして、「ミドルにくる果肉感」については、点数が高いほど増強されており、好ましいと判断できる。
ミドルにくる果肉感の評価は、サンプル１－０の３点を基準とし、「ミドルにくる果肉感が弱い」場合を１点、「ミドルにくる果肉感がサンプル１－０と同程度である」場合を３点、「ミドルにくる果肉感が強い」場合を５点と評価した。
そして、「ミドルにくる果肉感」については、点数が高いほど増強されており、好ましいと判断できる。
【0049】
ここで、「ミドルにくる果肉感」とは、ミドル（「サンプルを口に含んだ瞬間あたり」を指すトップの後）におけるジューシーな果肉様の香味である。
【0050】
（しょっぱさ：評価基準）
しょっぱさの評価は、サンプル１－０の３点を基準とし、「しょっぱさが弱い」場合を１点、「しょっぱさがサンプル１－０と同程度である」場合を３点、「しょっぱさが強い」場合を５点と評価した。
しょっぱさの評価は、サンプル１－０の３点を基準とし、「しょっぱさが弱い」場合を１点、「しょっぱさがサンプル１－０と同程度である」場合を３点、「しょっぱさが強い」場合を５点と評価した。
【0051】
ここで、「しょっぱさ」とは、前記した果肉感を引き立たせるような塩味である。
【0052】
（梅干感：評価基準）
梅干感の評価は、サンプル１－０の３点を基準とし、「梅干感が弱い」場合を１点、「梅干感がサンプル１－０と同程度である」場合を３点、「梅干感が強い」場合を５点と評価した。
そして、「梅干感」については、点数が高いほど増強されており、好ましいと判断できる。
梅干感の評価は、サンプル１－０の３点を基準とし、「梅干感が弱い」場合を１点、「梅干感がサンプル１－０と同程度である」場合を３点、「梅干感が強い」場合を５点と評価した。
そして、「梅干感」については、点数が高いほど増強されており、好ましいと判断できる。
【0053】
ここで、「梅干感」とは、酸味と塩味と梅の風味とで構成される梅干様の香味である。
【0054】
（飲みやすさ：評価基準）
飲みやすさの評価は、基準を設けず、「飲み難い（飲みやすさが悪い）」場合を１点、「飲みやすい（飲みやすさが良い）」場合を５点と評価した。
そして、「飲みやすさ」については、点数が高いほど好ましいと判断できる。
飲みやすさの評価は、基準を設けず、「飲み難い（飲みやすさが悪い）」場合を１点、「飲みやすい（飲みやすさが良い）」場合を５点と評価した。
そして、「飲みやすさ」については、点数が高いほど好ましいと判断できる。
【0055】
ここで、「飲みやすさ」とは、味に引っかかりがなくスムーズに飲むことができるという感覚である。
【0056】
（飲料としての全体のバランス：評価基準）
飲料としての全体のバランスの評価は、基準を設けず、「飲料としての全体のバランスが悪い」場合を１点、「飲料としての全体のバランスが良い」場合を５点と評価した。
そして、「飲料としての全体のバランス」については、点数が高いほど好ましいと判断できる。
飲料としての全体のバランスの評価は、基準を設けず、「飲料としての全体のバランスが悪い」場合を１点、「飲料としての全体のバランスが良い」場合を５点と評価した。
そして、「飲料としての全体のバランス」については、点数が高いほど好ましいと判断できる。
【0057】
ここで、「飲料としての全体のバランス」とは、飲料としての香味全体のバランスであり、例えば、特定成分に基づく香味が強く感じられることで香味のバランスが崩れている場合は、悪いとの評価となる。
【0058】
表に、各サンプルの含有量等を示すとともに、各評価の結果を示す。なお、表に示す各成分の数値および指標は、最終製品における含有量および指標である。
また、表の酸度は、各サンプルのクエン酸（無水）とＬ－アスコルビン酸と梅果汁との各含有量に定数（クエン酸（無水）の定数：１、Ｌ－アスコルビン酸の定数：０．３６、梅果汁の定数：０．０３５）を乗じて合算した値である。なお、クエン酸三ナトリウムは酸度（クエン酸換算の酸度）にほとんど影響を与えないことから、表の酸度を算出する際の算出式から除外した。
また、表の果汁は、果汁率換算の果汁（梅果汁）の含有量である。
また、表の酸度は、各サンプルのクエン酸（無水）とＬ－アスコルビン酸と梅果汁との各含有量に定数（クエン酸（無水）の定数：１、Ｌ－アスコルビン酸の定数：０．３６、梅果汁の定数：０．０３５）を乗じて合算した値である。なお、クエン酸三ナトリウムは酸度（クエン酸換算の酸度）にほとんど影響を与えないことから、表の酸度を算出する際の算出式から除外した。
また、表の果汁は、果汁率換算の果汁（梅果汁）の含有量である。
【0059】
【表1】
【0060】
【表2】
【0061】
【表3】
【0062】
（結果の検討）
表１のサンプル１－０～１－６の結果から、ペリルアルデヒドを含有する飲料にγ－デカラクトンを所定量以上含有させると、「後味にくるケミカル感の低減効果」と「トップの甘味のある華やかさの増強効果」が発揮されることが確認できた。
また、ペリルアルデヒドを含有する飲料にγ－デカラクトンを所定量以上含有させると、「ミドルにくる果肉感」、「しょっぱさ」、「梅干感」も増強されることが確認できた。
さらに、ペリルアルデヒドを含有する飲料にγ－デカラクトンを所定量以上含有させると、「飲みやすさ」や「飲料としての全体のバランス」も向上することが確認できた。
なお、全ての評価を考慮すると、サンプル１－０～１－６の中でも、サンプル１－１～１－６（特に、サンプル１－２～１－５）について非常に好ましい結果が得られた。
表１のサンプル１－０～１－６の結果から、ペリルアルデヒドを含有する飲料にγ－デカラクトンを所定量以上含有させると、「後味にくるケミカル感の低減効果」と「トップの甘味のある華やかさの増強効果」が発揮されることが確認できた。
また、ペリルアルデヒドを含有する飲料にγ－デカラクトンを所定量以上含有させると、「ミドルにくる果肉感」、「しょっぱさ」、「梅干感」も増強されることが確認できた。
さらに、ペリルアルデヒドを含有する飲料にγ－デカラクトンを所定量以上含有させると、「飲みやすさ」や「飲料としての全体のバランス」も向上することが確認できた。
なお、全ての評価を考慮すると、サンプル１－０～１－６の中でも、サンプル１－１～１－６（特に、サンプル１－２～１－５）について非常に好ましい結果が得られた。
【0063】
表２のサンプル２－１～２－３の結果から、ペリルアルデヒドの含有量に対するγ－デカラクトンの含有量（Ｙ／Ｘ）の値が同じであると、「後味にくるケミカル感の低減効果」と「トップの甘味のある華やかさの増強効果」について同じような結果が得られることが確認できた。
【0064】
表３のサンプル３－１～３－３の結果から、果汁の含有量を変化させても、エキス分を変化させても、酸度を変化させても、本発明の効果は阻害されることなく発揮されることが確認できた。
【0065】
（参考試験）
前記した実施例とは別に、以下のような参考試験も実施した。
ウォッカ、ペリルアルデヒド、ベンズアルデヒド、γ－デカラクトン、クエン酸（無水）、クエン酸三ナトリウム、梅果汁、果糖ぶどう糖液糖、グラニュー糖、Ｌ－アスコルビン酸、香料、炭酸水、純水を適宜配合してサンプルＡ～Ｅ（チューハイテイスト飲料であり梅テイストアルコール飲料）を準備した。
なお、各サンプルの２０℃におけるガス圧（全圧）は２．１ｋｇ／ｃｍ２とした。そして、各サンプルは、ベンズアルデヒドおよびγ－デカラクトン以外の成分の含有量はサンプル間で略同じとした。
前記した実施例とは別に、以下のような参考試験も実施した。
ウォッカ、ペリルアルデヒド、ベンズアルデヒド、γ－デカラクトン、クエン酸（無水）、クエン酸三ナトリウム、梅果汁、果糖ぶどう糖液糖、グラニュー糖、Ｌ－アスコルビン酸、香料、炭酸水、純水を適宜配合してサンプルＡ～Ｅ（チューハイテイスト飲料であり梅テイストアルコール飲料）を準備した。
なお、各サンプルの２０℃におけるガス圧（全圧）は２．１ｋｇ／ｃｍ２とした。そして、各サンプルは、ベンズアルデヒドおよびγ－デカラクトン以外の成分の含有量はサンプル間で略同じとした。
【0066】
そして、サンプルＡ～Ｅのペリルアルデヒド、ベンズアルデヒド、γ－デカラクトンの含有量は以下のとおりであった。
（サンプルＡ）
ペリルアルデヒド：１５０００ｐｐｂ
ベンズアルデヒド：０ｐｐｂ
γ－デカラクトン：０ｐｐｂ
（サンプルＢ）
ペリルアルデヒド：１５０００ｐｐｂ
ベンズアルデヒド：１６００ｐｐｂ
γ－デカラクトン：０ｐｐｂ
（サンプルＣ）
ペリルアルデヒド：１５０００ｐｐｂ
ベンズアルデヒド：０ｐｐｂ
γ－デカラクトン：１５０ｐｐｂ
（サンプルＤ）
ペリルアルデヒド：１５０００ｐｐｂ
ベンズアルデヒド：８００ｐｐｂ
γ－デカラクトン：１５０ｐｐｂ
（サンプルＥ）
ペリルアルデヒド：１５０００ｐｐｂ
ベンズアルデヒド：１６００ｐｐｂ
γ－デカラクトン：１５０ｐｐｂ
（サンプルＡ）
ペリルアルデヒド：１５０００ｐｐｂ
ベンズアルデヒド：０ｐｐｂ
γ－デカラクトン：０ｐｐｂ
（サンプルＢ）
ペリルアルデヒド：１５０００ｐｐｂ
ベンズアルデヒド：１６００ｐｐｂ
γ－デカラクトン：０ｐｐｂ
（サンプルＣ）
ペリルアルデヒド：１５０００ｐｐｂ
ベンズアルデヒド：０ｐｐｂ
γ－デカラクトン：１５０ｐｐｂ
（サンプルＤ）
ペリルアルデヒド：１５０００ｐｐｂ
ベンズアルデヒド：８００ｐｐｂ
γ－デカラクトン：１５０ｐｐｂ
（サンプルＥ）
ペリルアルデヒド：１５０００ｐｐｂ
ベンズアルデヒド：１６００ｐｐｂ
γ－デカラクトン：１５０ｐｐｂ
【0067】
サンプルＡ～Ｅの香味を確認したところ、サンプルＡと比較して、サンプルＢ～Ｅは、後味にくるケミカル感が抑制されているのが確認できた。また、サンプルＤ、Ｅは、トップのボリュームやボディ感が向上していることも確認できた。