(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-03-18
(45)【発行日】2025-03-27
(54)【発明の名称】録音装置、音再生装置、録音方法、および音再生方法
(51)【国際特許分類】
H04S 3/00 20060101AFI20250319BHJP
H04R 5/027 20060101ALI20250319BHJP
H04S 7/00 20060101ALN20250319BHJP
【FI】
H04S3/00 600
H04R5/027
H04S7/00 300
(21)【出願番号】P 2020203234
(22)【出願日】2020-12-08
【審査請求日】2023-09-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000005049
【氏名又は名称】シャープ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100147304
【氏名又は名称】井上 知哉
(74)【代理人】
【識別番号】100148493
【氏名又は名称】加藤 浩二
(72)【発明者】
【氏名】尾村 洋
【審査官】川▲崎▼ 博章
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-316358(JP,A)
【文献】特開平05-153688(JP,A)
【文献】特開2006-261886(JP,A)
【文献】特開2010-145524(JP,A)
【文献】特表2009-540650(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04S 3/00
H04R 5/027
H04S 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
1以上のマイクによって取得された1以上の音信号に、それぞれ、マイク情報入力部によって入力された前記1以上のマイクの方向情報を付加する録音信号処理部を備え、
前記録音信号処理部は、前記1以上のマイクの方向情報と前記1以上の音信号とを1対1の関係で関連付けて録音記憶部に記憶させ、
前記録音信号処理部は、
前記1以上のマイクの方向情報に、前記マイク情報入力部によって入力された前記1以上のマイクの全体構成の種類を示す構成情報を付加し、前記1以上のマイクの方向情報と前記構成情報とを関連付けて前記録音記憶部に記憶させ、
前記1以上のマイクの全体構成の種類は、前記1以上のマイクがほぼ1点に集約されていると仮定され得る1点収録の全体構成、または、前記1以上のマイクの位置が分散されている多点収録の全体構成を含む、録音装置。
【請求項2】
前記1以上のマイクの位置情報のそれぞれは、直交座標または極座標を示す座標情報である、請求項1に記載の録音装置。
【請求項3】
前記録音信号処理部は、前記1以上のマイクの方向情報と関連付けられていない他の音信号を、前記1以上の音信号から前記他の音信号を区別可能な識別情報に関連付けて、前記録音記憶部に記憶させる、請求項1または2に記載の録音装置。
【請求項4】
スピーカー位置入力部によって入力された1以上のスピーカーの位置情報に基づいて、1以上の音信号を記憶する音再生記憶部から送信されてきた前記1以上の音信号の1以上の遅延時間を決定する音再生コントロール部と、
前記音再生コントロール部によって決定された前記1以上の遅延時間を前記1以上の音信号にそれぞれ付与する遅延時間付与部と、
前記1以上の音信号に対応する1以上の音を、それぞれ、前記1以上の遅延時間だけ遅延させて、1以上のスピーカーに発生させるスピーカー駆動部と、を備え、
1以上のマイクの方向情報と前記1以上の音信号とは1対1の関係で関連付けられており、
前記音再生コントロール部は、前記1以上のマイクの方向情報が前記音再生記憶部から送信されてきた場合に、前記1以上のスピーカーの位置情報に基づいて、前記1以上の音信号の1以上の遅延時間のそれぞれを決定する、音再生装置。
【請求項5】
1以上のマイクの位置情報と前記1以上の音信号とは1対1の関係で関連付けられており、
前記音再生コントロール部は、前記1以上のマイクの位置情報と前記1以上のスピーカーの位置情報とに基づいて、前記1以上の遅延時間のそれぞれを決定する、請求項4に記載の音再生装置。
【請求項6】
前記音再生記憶部をさらに備え、
前記音再生記憶部は、前記1以上のマイクの位置情報のそれぞれを出力した後に、前記1対1の関係で関連付けられた順序で、前記1以上の音信号のそれぞれを出力する、請求項5に記載の音再生装置。
【請求項7】
前記音再生記憶部をさらに備え、
前記音再生記憶部は、前記1対1の関係で関連付けられた順序で、前記1以上のマイクの位置情報のうちのいずれか1つと前記1以上の音信号のうちのいずれか1つとを交互に出力する、請求項5に記載の音再生装置。
【請求項8】
前記音再生コントロール部は、前記1以上のマイクの方向情報が前記音再生記憶部から送信されてきたか否かを、前記1以上のマイクの方向情報に付加された前記1以上のマイクの全体構成の種類を特定可能な情報に基づいて判定する、請求項5に記載の音再生装置。
【請求項9】
前記スピーカー駆動部は、前記1以上の音信号とは異なる他の音信号に対応する他の音を、前記1以上の遅延時間に基づいた遅延時間なしに、前記1以上のスピーカーの少なくともいずれか1つに発生させる、請求項4~8のいずれかに記載の音再生装置。
【請求項10】
前記他の音信号は、前記1以上の音信号から識別可能な識別情報に関連付けられている、請求項9に記載の音再生装置。
【請求項11】
前記スピーカー駆動部は、前記
1以上のスピーカー
の少なくともいずれか1つを特定可能な情報によって特定された前記
1以上のスピーカー
の少なくともいずれか1つに前記他の音を発生させる、請求項
9または10に記載の音再生装置。
【請求項12】
1以上のマイクによって取得された1以上の音信号に、マイク情報入力部によって入力された前記1以上のマイクの方向情報を、それぞれ付加するステップと、
前記1以上のマイクの方向情報と前記1以上の音信号とを1対1の関係で関連付けて記憶させるステップと、を備え、
前記記憶させるステップにおいては、前記1以上のマイクの方向情報に、前記マイク情報入力部によって入力された前記1以上のマイクの全体構成の種類を示す構成情報を付加し、前記1以上のマイクの方向情報と前記構成情報とを関連付けて記憶させ、
前記1以上のマイクの全体構成の種類は、前記1以上のマイクがほぼ1点に集約されていると仮定され得る1点収録の全体構成、または、前記1以上のマイクの位置が分散されている多点収録の全体構成を含む、録音方法。
【請求項13】
スピーカー位置入力部によって入力された1以上のスピーカーの位置情報に基づいて、1以上の音信号の1以上の遅延時間を決定するステップと、
前記1以上の遅延時間を前記1以上の音信号にそれぞれ付与するステップと、
前記1以上の音信号に対応する1以上の音を、それぞれ、前記1以上の遅延時間だけ遅延させて、1以上のスピーカーに発生させるステップと、を備え、
1以上のマイクの方向情報と前記1以上の音信号とは1対1の関係で関連付けられており、
前記遅延時間を決定するステップにおいては、前記1以上のマイクの方向情報が送信されてきた場合に、前記1以上のスピーカーの位置情報に基づいて、前記1以上の音信号の1以上の遅延時間のそれぞれを決定する、音再生方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、録音装置、音再生装置、録音方法、および音再生方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1~3に開示されているように、音をマイクで取得し、その音をスピーカーで再生する録音装置および音再生装置の開発が行われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2006-211047号公報
【文献】特開2006-287606号公報
【文献】特開2009-044261号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1~3に開示された技術においては、マイクから聴取想定位置へ向かう方向と実際のスピーカーから実際の聴取者へ向かう方向が同一であっても、マイクから聴取想定位置までの距離とスピーカーから実際の聴取者までの距離とが異なる場合がある。この場合、実際に発生した音が聴取想定位置で聴取されると推定される仮想の聴取タイミングと、聴取者がスピーカーから出力された音を聴取する実際の聴取タイミングとの間にずれが生じてしまう。そのため、マイクによって取得された音をスピーカーによって再生しても、臨場感が高い音を聴取することができない。
【0005】
本開示は、上述の問題に鑑みてなされたものである。本開示の目的は、マイクによって取得された音をスピーカーによって再生しても、臨場感が高い音を聴取することができる録音装置、音再生装置、録音方法、および音再生方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一形態の録音装置は、1以上のマイクによって取得された1以上の音信号に、それぞれ、マイク情報入力部によって入力された前記1以上のマイクの位置情報または前記1以上のマイクの方向情報を付加する録音信号処理部を備え、前記録音信号処理部は、前記1以上のマイクの位置情報または前記1以上のマイクの方向情報と前記1以上の音信号とを1対1の関係で関連付けて録音記憶部に記憶させる。
【0007】
本開示の一形態の音再生装置は、スピーカー位置入力部によって入力された1以上のスピーカーの位置情報に基づいて、1以上の音信号を記憶する音再生記憶部から送信されてきた前記1以上の音信号の1以上の遅延時間を決定する音再生コントロール部と、前記音再生コントロール部によって決定された前記1以上の遅延時間を前記1以上の音信号にそれぞれ付与する遅延時間付与部と、前記1以上の音信号に対応する1以上の音を、それぞれ、前記1以上の遅延時間だけ遅延させて、1以上のスピーカーに発生させるスピーカー駆動部と、を備えている。
【0008】
本開示の一形態の録音方法は、1以上のマイクによって取得された1以上の音信号に、マイク情報入力部によって入力された前記1以上のマイクの位置情報または前記1以上のマイクの方向情報を、それぞれ付加するステップと、前記1以上のマイクの位置情報または前記1以上のマイクの方向情報と前記1以上の音信号とを1対1の関係で関連付けて記憶させるステップと、を備えている。
【0009】
本開示の一形態の音再生方法は、スピーカー位置入力部によって入力された1以上のスピーカーの位置情報に基づいて、1以上の音信号の1以上の遅延時間を決定するステップと、前記1以上の遅延時間を前記1以上の音信号にそれぞれ付与するステップと、前記1以上の音信号に対応する1以上の音を、それぞれ、前記1以上の遅延時間だけ遅延させて、1以上のスピーカーに発生させるステップと、を備えている。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】実施の形態1の録音装置の機能ブロック図である。
【
図2】実施の形態1の録音装置における1以上のマイクの位置と傾聴者が存在する基準位置との関係を示す模式図である。
【
図3】実施の形態1の録音装置および音再生装置において、1以上の位置情報と1以上の音信号とが1対1の関係で関連付けられたデータ列の一例を示す図である。
【
図4】実施の形態1の録音装置および音再生装置において、1以上の位置情報と1以上の音信号とが1対1の関係で関連付けられたデータ列の他の例を示す図である。
【
図5】1以上のマイクの位置情報を特定するためのXYZ座標を説明するための第1模式図である。
【
図6】1以上のマイクの位置情報を特定するためのXYZ座標を説明するための第2模式図である。
【
図7】1以上のマイクの位置情報を特定するためのXYZ座標を説明するための第3模式図である。
【
図8】1以上のマイクの位置情報を特定するための極座標を説明するための模式図である。
【
図9】実施の形態1の音再生装置の機能ブロック図である。
【
図10】実施の形態1の音再生装置における1以上のスピーカーと傾聴者が存在する基準位置との位置関係の一例を示す模式図である。
【
図11】実施の形態2の録音装置の1以上のマイクの全体構成の一例を示す図である。
【
図12】実施の形態2の1以上のマイクの全体構成を特定可能な情報と1以上のマイクの方向情報とが関連付けられていることを説明するための図である。
【
図13】実施の形態2の音再生装置における1以上のスピーカーと傾聴者が存在する基準位置との位置関係の一例を示す模式図である。
【
図14】実施の形態3の録音装置および音再生装置において、1以上の位置情報と1以上の音信号とが1対1の関係で関連付けられたデータ列の一例を示す図である。
【
図15】実施の形態4の録音装置および音再生装置において、1以上の位置情報と1以上の音信号とが1対1の関係で関連付けられたデータ列の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図面を参照しながら、本開示の実施形態の録音装置および音再生装置を説明する。なお、図面については、同一又は同等の要素には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
【0012】
(実施の形態1)
図1~
図9を用いて、実施の形態1の録音装置SRECおよび音再生装置SREGを説明する。
【0013】
本実施の形態の録音装置SRECは、たとえば、野外の自然環境の下で発生する風の音、川の流れる音、または、雷の音、または動物の鳴き声等を録音するために使用されることが想定されている。ただし、室内の音楽の演奏等を録音するために使用されてもよい。
【0014】
図1は、1以上の音信号、より具体的には、1以上のオーディオ信号を記録する録音装置SRECの機能ブロック図である。
図1に示されるように、録音装置SRECは、1以上のマイクMic(K)<以下、K=1,2,3,・・・,N:Nは自然数>を備えている。録音装置SRECは、1以上のアナログ-デジタル変換部A/D(K)<以下、K=1,2,3,・・・,N:Nは自然数>を備えている。
【0015】
録音装置SRECは、録音信号処理部SP1を備えている。このように、録音装置SRECは、録音信号処理部SP1を備えていれば、前述したマイクMic(K)およびアナログ-デジタル変換部A/D(K)、ならびに、後述される録音記憶部R1および後述されるマイク情報入力部MINPは、必須の構成ではない。マイクMic(K)およびアナログ-デジタル変換部A/D(K)は、録音装置SRECの使用目的に応じて異なる性能および構造のものに交換可能であってもよい。後述される録音記憶部R1および後述されるマイク情報入力部MINPは、録音装置SREC以外の装置に含まれていてもよい。
【0016】
1以上のマイクMic(K)のそれぞれは、音、すなわち、空気振動をダイヤフラム等で受け止め、ダイヤフラム等で受け止められた空気振動を電気信号に変換する。1以上のアナログ-デジタル変換部A/D(K)は、それぞれ、空気振動から生成されたアナログ電気信号をデジタル信号に変換する。
【0017】
1以上のアナログ-デジタル変換部A/D(K)のそれぞれは、前述のデジタル信号を録音信号処理部SP1へ送信する。以下、前述のデジタル信号を、Audio Stream(K)<以下、K=1,2,3,・・・,N:Nは自然数>と言う(
図9参照)。ただし、前述のデジタル信号を、単に、音信号SS(K)<以下、K=1,2,3,・・・,N:Nは自然数>と言うこともある。
【0018】
マイク情報入力部MINPは、録音装置SRECの使用者が予め定められた座標上の1以上のマイクMic(K)のそれぞれの位置情報(X,Y,Z)を入力するための操作部である。ただし、マイク情報入力部MINPは、実施の形態2で説明されるように、録音装置SRECの使用者が予め定められた1以上のマイクMic(K)のそれぞれの方向情報(α,β)を入力するための操作部としても機能する。マイク情報入力部MINPは、録音装置SRECの必須の構成ではなく、交換可能なタッチパネル、キーボード、またはマウス等のいかなる入力装置であってもよい。
【0019】
録音コントロール部CT1は、録音信号処理部SP1を制御する。本実施の形態においては、録音コントロール部CT1は、マイク情報入力部MINPで入力された1以上のマイクMic(K)のそれぞれの位置情報(X,Y,Z)を録音信号処理部SP1へ送信する。
【0020】
録音信号処理部SP1は、1以上のマイクMic(K)によって取得された1以上の音信号に、それぞれ、マイク情報入力部MINPによって入力された1以上のマイクMic(K)の位置情報(X,Y,Z)を付加する。1以上の音信号は、それぞれ、1以上のマイクMic(K)によって取得されたものである。録音記憶部R1は、1以上のマイクMic(K)の位置情報(X,Y,Z)と1以上の音信号SS(K)とを1対1の関係で関連付けて記憶する。つまり、録音信号処理部SP1は、1以上のマイクMic(K)の位置情報(X,Y,Z)と1以上の音信号SS(K)とを1対1の関係で関連付けて録音記憶部R1に記憶させる。
【0021】
本明細書における1対1の関係は、マイクMic(K)の位置情報(X,Y,Z)と音信号SS(K)とが1対1で対応してればよい。この場合、マイクMic(K)の位置情報(X,Y,Z)と音信号SS(K)とに関連付けられた他の信号または情報が録音記憶部R1に記憶されていても、前述の1対1の関係は成立する。
【0022】
本実施の形態においては、1以上のマイクMic(K)の位置情報(X,Y,Z)のそれぞれは、直交座標を示す座標情報である。ただし、1以上のマイクMic(K)の位置情報(X,Y,Z)のそれぞれは、極座標を示す座標情報であってもよい。
【0023】
図2は、実施の形態1の録音装置SRECにおける1以上のマイクMic(K)の位置情報(X,Y,Z)と傾聴者が存在する基準位置Pとの関係を示す模式図である。
図2を用いて、たとえば、24個のマイクMic(K)<K=1~24の自然数>を用いて、たとえば、野外で発生した音を収録した場合のマイクMic(K)の位置情報(X,Y,Z)を決定する方法を説明する。
【0024】
図2に示されるように、本実施の形態の録音装置SRECは、たとえば、8個の上層、8個の中層、および8個の下層からなる24個のマイクMic(K)を備えているものとする。基準位置Pは、24個のマイクMic(K)の中央の位置に設定されている。基準位置Pは、録音装置SRECを用いて記録された1以上の音信号SS(K)を、以下に説明される音再生装置SREGを用いて再生するときに、聴取者が聴取すると想定される仮想の位置を示している。基準位置PからマイクMic(K)の位置までの相対的な位置関係が、位置情報(X,Y,Z)である。
【0025】
マイクMic(K)の位置情報(X,Y,Z)は、次のようにして、マイク情報入力部MINPを用いて入力される。たとえば、X軸方向、Y軸方向、およびZ軸方向の3軸のそれぞれに沿って、まず、聴取者が聴取すると想定される基準位置Pから1以上のマイクMic(K)のそれぞれまでの距離をメジャー等で測定する。それにより、X軸方向、Y軸方向、およびZ軸方向の3軸方向に沿った距離がそれぞれ測定される。この3軸方向に沿った距離が、ユーザによるマイク情報入力部MINPの操作によって、マイクMic(K)の位置情報(X,Y,Z)として、録音コントロール部CT1を経由して、録音信号処理部SP1へ送信される。
【0026】
また、1以上のマイクMic(K)のそれぞれがGPS(Global Positioning System)とディスプレイ(図示せず)とを備えている場合には、次のようにしてもよい。たとえば、その位置情報(X,Y,Z)を発信する発信機を基準位置Pに設置する。それにより、発信機(図示せず)が発信する基準位置Pの情報を1以上のマイクMic(K)が受信し、基準位置Pに対する1以上のマイクMic(K)の3軸座標系における座標を位置情報(X,Y,Z)としてディスプレイ(図示せず)に表示してもよい。
【0027】
さらに、マイクMic(K)のディスプレイ(図示せず)に現在のMic(K)の位置と所望のマイクMic(K)の設置予定位置との間の差を表示してもよい。この場合、Mic(K)の所望の設置予定位置へマイクMic(K)を移動させることを促すガイド情報、たとえば、Mic(K)の移動すべき方向を、マイクMic(K)のディスプレイに表示してもよい。
【0028】
その後、ユーザがマイク情報入力部MINPを操作することによって、1以上のマイクMic(K)の位置情報(X,Y,Z)のそれぞれが、録音コントロール部CT1を経由して録音信号処理部SP1へ入力される。
【0029】
図3は、1以上の位置情報(X,Y,Z)と1以上の音信号SS(K)とが1対1の関係で関連付けられた一例を示す図である。ここでいう1対1の関係とは、1つの位置情報(X,Y,Z)と1つの音信号SS(K)とが対応関係を有していれば、1つの位置情報(X,Y,Z)と1つの音信号SS(K)との組合せに他の1または2以上の情報または他の1または2以上の信号が付されていてもよい。
【0030】
本実施の形態においては、
図3に示されるフォーマットで、録音記憶部R1は、マイクMic(K)の位置情報(X,Y,Z)が付加された音信号SS(K)を記憶する。録音記憶部R1は、1以上のマイクMic(K)の位置情報(X,Y,Z)のそれぞれを出力した後に、1対1の関係で関連付けられた順序で、1以上の音信号SS(K)のそれぞれを出力する。録音記憶部R1は、このような態様で、マイクMic(K)の位置情報(X,Y,Z)と音信号SS(K)とを記憶している。
【0031】
具体的には、まず、マイクMic(1)の位置情報(X,Y,Z)、マイクMic(2)の位置情報(X,Y,Z)、・・・マイクMic(K)の位置情報(X,Y,Z)、・・・、マイクMic(24)の位置情報(X,Y,Z)がこの順番で出力される。その後、音信号(1)、音信号(2)、・・・、音信号SS(K)、・・・音信号(24)がこの順番で出力される。つまり、マイクMic(K)の位置情報(X,Y,Z)がKの数字(自然数)の順番で出力された後に、音信号SS(K)がKの数字(自然数)の順番で出力される。
【0032】
なお、後述される音再生信号処理部SP2は、位置情報(X,Y,Z)と音信号のいずれが送信されてきたのかを識別する必要がある。そのため、本実施の形態においては、録音信号処理部SP1は、出力するコンテンツの最初のデータにおいて、伝送フォーマットを指定する。たとえば、コンテンツの最初のデータは、その次のデータがマイクMic(K)の位置情報(X,Y,Z)が付加されたデータ列であることを指定する。また、コンテンツの最初のデータは、その指定の後に最初のY個のXバイトの位置情報(X,Y,Z)のデータが続きくこと、および、さらにその後にY個のZバイトの音声ストリームが続くことを指定する。
【0033】
しかしながら、前述の指定の代わりに、録音信号処理部SP1は、マイクMic(K)の位置情報(X,Y,Z)の出力を開始する時に、マイクMic(K)の位置情報(X,Y,Z)の出力を開始することを示す位置情報出力開始情報を送信してもよい。この位置情報出力開始情報は、各マイクMic(K)の位置情報(X,Y,Z)内に含まれていてもよい。また、音信号SS(K)の出力を開始する時に、音信号SS(K)の出力を開始する音信号出力開始情報を送信してもよい。この音信号出力開始情報は、各マイクMic(K)の音信号SS(K)に含まれていてもよい。録音信号処理部SP1は、前述の位置情報出力開始信号と音信号出力開始情報とを出力することにより、後述される受信側の音再生信号処理部SP2が、送信されてきたデータがいかなるデータであるかを容易に識別することができる。
【0034】
図4は、1以上の位置情報(X,Y,Z)と1以上の音信号SS(K)とが1対1の関係で関連付けられた他の例を示す図である。ここでいう1対1の関係とは、1つの位置情報(X,Y,Z)と1つの音信号SS(K)とが対応関係を有していれば、1つの位置情報(X,Y,Z)と1つの音信号SS(K)とに他の1または2以上の情報または他の1または2以上の信号が付されていてもよい。
【0035】
録音記憶部R1は、
図4に示されるフォーマットで、マイクMic(K)の位置情報(X,Y,Z)が付加された音信号SS(K)を記憶してもよい。より具体的に言うと、録音記憶部R1は、1対1の関係で関連付けられた順序で、1以上のマイクMic(K)の位置情報(X,Y,Z)のうちのいずれか1つと1以上の音信号SS(K)のうちのいずれか1つとを交互に出力することができる。
【0036】
具体的には、マイクMic(1)の位置情報(X,Y,Z)、音信号(1)、マイクMic(2)の位置情報(X,Y,Z)、音信号(2)、・・・、マイクMic(24)の位置情報(X,Y,Z)音信号(24)が、この順番で出力される。つまり、マイクMic(K)の位置情報(X,Y,Z)と音信号SS(K)とがKの値の順番で交互に出力される。言い換えると、マイクMic(K)の位置情報(X,Y,Z)とマイクMic(K)の位置情報(X,Y,Z)の後に続く音信号SS(K)との組合せが、Kの数字(自然数)の順番に出力される。
【0037】
図5~
図7は、1以上のマイクの位置情報を特定するためのXYZ座標を説明するための図である。
図5~
図7に示されるように、本実施の形態においては、1以上のマイクMic(K)の位置情報(X,Y,Z)は、X軸、Y軸、およびZ軸からなる3軸座標系を用いて表される。具体的には、1以上のマイクMic(K)の位置情報(X,Y,Z)の左右方向の位置は、Left/Center/Right(
図5参照)の文言で表される。1以上のマイクMic(K)の位置情報(X,Y,Z)の上下方向の位置は、Top/Middle/Bottom(
図6参照)の文言で表される。1以上のマイクMic(K)の位置情報(X,Y,Z)の奥行方向の位置は、Fornt/Side/Back(
図7参照)の文言で表現されている。
【0038】
図8は、1以上のマイクMic(K)の位置情報(R,α,β)を特定するための極座標を説明するための模式図である。
図8に示すように、マイクMic(K)の位置情報(X,Y,Z)は、基準平面RPにおける基準位置Pからの距離Rと、基準方向RDからの回転角αと、基準方向RDからの仰角βとを用いる極座標の形式を用いて表されてもよい。
【0039】
図9は、本実施の形態の音再生装置SREGの機能ブロック図である。
【0040】
音再生装置SREGは、音再生記憶部R2および音再生信号処理部SP2を備えている。音再生装置SREGは、遅延時間付与部DL(K)<K=1,2,3,・・・,N:Nは自然数>、スピーカー駆動部SDR(K)<以下、K=1,2,3,・・・N:Nは自然数>、およびスピーカーSP(K)<K=1,2,3,・・・,N:Nは自然数>を備えている。
【0041】
音再生記憶部R2は、録音装置SRECの録音記憶部R1で記憶された1以上の音信号SS(K)と同一の1以上の音信号SS(K)を記憶している。つまり、録音記憶部R1に記憶された1以上のマイクMic(K)の位置情報(X,Y,Z)および1以上音信号SS(K)が、電気通信情報網または記憶媒体を経由して、音再生記憶部R2に記憶されている。したがって、音再生記憶部R2は、1以上のマイクMic(K)の位置情報(X,Y,Z)と1以上の音信号SS(K)とを1対1の関係で関連付けて記憶している。なお、音再生装置SREGは、音再生記憶部R2を有していなくてもよい。たとえば、インターネット等の電気通信網上に設置されたサーバーが音再生記憶部R2を含んでいてもよい。この場合、サーバーからのストリーミングによって、各家庭内の音再生装置SREGに1以上の音信号が配信されてもよい。つまり、音再生装置SREGは、音再生コントロール部CT2、遅延時間付与部DL(K)およびスピーカー駆動部SDR(K)を含んでいれば、いかなるなるものであってもよい。
【0042】
1以上の音信号SS(K)は、いわゆる、マルチチャンネル音声データである。1以上の音信号SS(K)は、それぞれ、音再生記憶部R2から遅延時間付与部DL(K)へ送信される。
【0043】
音再生装置SREGは、音再生信号処理部SP2、マイク情報読出部MIR、音再生コントロール部CT2、およびスピーカー位置入力部SINPを備えている。音再生装置SREGは、1以上の遅延時間付与部DL(K))<K=1、2、3、・・・、N:Nは自然数>およびスピーカー駆動部SDR(K)を備えている。音再生装置SREGは、1以上のスピーカーSP(K)を備えている。
【0044】
音再生記憶部R2は、1以上のマイクMic(K)の位置情報(X,Y,Z)と1以上の音信号SS(K)とを、音再生信号処理部SP2へ送信する。音再生信号処理部SP2は、1以上の音信号SS(K)を1以上の遅延時間付与部DL(K)へ送信する。また、音再生信号処理部SP2は、マイクMic(K)の位置情報(X,Y,Z)を、マイク情報読出部MIRを経由して音再生コントロール部CT2へ送信する。
【0045】
ユーザは、スピーカー位置入力部SINPの操作によって、1以上のスピーカーSP(K)の位置情報(x,y,z)のそれぞれを音再生コントロール部CT2へ送信する。
【0046】
音再生コントロール部CT2は、1以上のマイクMic(K)の位置情報(X,Y,Z)および1以上のスピーカーSP(K)の位置情報(x,y,z)に基づいて、1以上の音信号SS(K)の1以上の遅延時間DT(K)<K=1、2、3、・・・、N:Nは自然数>を決定する。音再生コントロール部CT2は、1以上の遅延時間付与部DL(K)へ1以上の遅延時間DT(K)を送信する。遅延時間付与部DL(K)は、1以上に音信号(K)にそれぞれ1以上の遅延時間DT(K)を付与する。
【0047】
スピーカー駆動部SDR(K)は、1以上の音信号SS(K)に対応する1以上の音を、それぞれ、1以上の遅延時間DT(K)だけ遅延させて、1以上のスピーカーSP(K)<以下、K=1,2,3,・・・N:Nは自然数>に発生させる。なお、スピーカー駆動部SDR(K)は、1以上のスピーカーSP(K)にそれぞれ対応した1以上の増幅器Amp(K)<以下、K=1,2,3,・・・N:Nは自然数>を含んでいる。
【0048】
より具体的には、音再生装置SREGで1以上の音信号SS(K)を再生するときには、音再生記憶部R2から、1以上の音信号SS(K)が録音装置SRECで録音された時の1以上のマイクMic(K)の位置情報(X,Y,Z)が読み出される。それにより、音再生コントロール部CT2は、1以上のマイクMic(K)の位置情報(X,Y,Z)および1以上のスピーカーSP(K)の位置情報(x,y,z)にそれぞれ応じた1以上の遅延時間DT(K)を決定する。遅延時間付与部DL(K)は、1以上の音信号SS(K)にそれぞれ1以上の遅延時間DT(K)を付与する。スピーカー駆動部SDR(K)は、算出された1以上の遅延時間DT(K)だけ、1以上のマイクMic(K)によりそれぞれ取得された1以上の音信号SS(K)に基づく音の発生を遅らせる。
【0049】
そのため、1以上のマイクMic(K)の基準位置P(
図2参照)で音が聴取されたであろう想定されたタイミングと、聴取者が音を基準位置P(
図10参照)で実際に聴取するタイミングとが一致する。その結果、1以上のスピーカーSP(K)が発生する音の臨場感を向上させることが可能になる。つまり、上記した本実施の形態の録音装置SRECと音再生装置SREGとを用いれば、聴取者は、臨場感が高い音を聴取することができる。
【0050】
図10は、実施の形態1の音再生装置SREGにおける1以上のスピーカーSP(K)と傾聴者が存在する基準位置Pとの位置関係の一例を示す模式図である。
【0051】
図10においては、録音装置SRECで録音したときのマイクMic(2)の位置を表す〇印が、基準位置Pから所定距離、たとえば、X軸方向およびZ軸方向に、それぞれ、3mだけ離れ、かつ、Y軸方向に、0mだけ離れた位置に配置されている。また、
図10においては、スピーカーSP(2)の位置を表す◎が基準位置Pから特定距離、たとえば、X軸方向およびZ軸方向に、それぞれ、1mだけ離れ、かつ、Y軸方向に、0mだけ離れた位置に配置されている。スピーカーSP(2)の位置は、録音装置SRECで録音されたマイクMic(2)の音を音再生装置SREGで再生するときの位置であり、1以上のスピーカーSP(K)のそれぞれは、基準位置Pから対応する1以上のマイクMic(K)のいずれか1つへ延びる直線上に配置される。
【0052】
スピーカーSP(K)の位置情報(x,y,z)の入力方法としては、次のものが考えられる。たとえば、X軸方向、Y軸方向、およびZ軸方向の3軸のそれぞれに沿って、まず、聴取者が聴取すると想定される基準位置Pから1以上のスピーカーSP(K)のそれぞれまでの距離をメジャー等で測定する。それにより、X軸方向、Y軸方向、およびZ軸方向の3軸方向に沿った距離がそれぞれ測定される。この3軸方向に沿った距離が、ユーザによるスピーカー位置入力部SINPの操作によって、スピーカーSP(K)の位置情報(x,y,z)として、音再生信号処理部SP2へ送信される。
【0053】
また、1以上のスピーカーSP(K)のそれぞれがGPS(Global Positioning System)とディスプレイ(図示せず)とを備えている場合には、次のようにしてもよい。たとえば、位置情報(x,y,z)を発信する発信機(図示せず)を基準位置Pに設置する。それにより、発信機が発信する基準位置Pの情報を1以上のスピーカーSP(K)が受信し、基準位置Pに対する1以上のスピーカーSP(K)の3軸座標系における座標を位置情報(x,y,z)としてディスプレイに表示してもよい。
【0054】
さらに、スピーカーSP(K)のディスプレイに現在のスピーカーSP(K)の位置と所望のスピーカーSP(K)の所望の設置予定位置との間の差を表示してもよい。この場合、スピーカーSP(K)の所望の設置予定位置へスピーカーSP(K)を移動させることを促すスピーカーSP(K)の移動すべき方向をスピーカーSP(K)のディスプレイに表示してもよい。
【0055】
たとえば、FrontLeftの位置に対応する音信号(2)に付与されたマイクMic(2)の位置情報(-3m,0m,+3m)と、FrontLeftの位置にあるスピーカーSP(2)の位置情報(-1m,0m,+1m)と、を用いる。マイクMic(2)の位置情報(-3m,0m,+3m)とスピーカーSP(2)の位置情報(-1m,0m,+1m)とから、マイクMic(K)とスピーカーSP(K)との間の距離Dを求める。
【0056】
距離Dは、マイクMic(2)の位置情報(Xm,Ym,Zm)、スピーカーSP(2)の位置情報(Xs,Ys,Zs)とすると、√(Xm^2+Zm^2)-√(Xs^2+Zs^2)である。そのため、具体的には、
図9に示される遅延時間付与部DL(2)におけるFrontLeftチャンネルの遅延時間DT(K)は、√(3^2+3^2)-√(1^2+1^2)=√18-√2=2.82mである。
【0057】
算出された距離Dを用いて、音信号(2)の進む時間tを、t=D[m]/340[m/s]として算出する。
図9に示される遅延時間付与部DL(2)における遅延時間tは、2.82[m]/340[m/s]=8.29[ms]である。
【0058】
音再生コントロール部CT2は、1以上のスピーカーSP(K)がそれぞれ発する1以上の音信号SS(K)のそれぞれついて、1以上の遅延時間DT(K)を決定する。遅延時間付与部DL(K)は、1以上の音信号SS(K)にそれぞれ1以上の遅延時間DT(K)を付与する。1以上の遅延時間付与部DL(K)によりそれぞれ決定された1以上の遅延時間DT(K)だけ、1以上のスピーカーSP(K)により発する音を遅延させる。
【0059】
それにより、基準位置PからマイクMic(K)へ向かう方向の延長線上の位置から基準位置Pへ向かって進行する音に関しては、次のことが言える。つまり、実際にスピーカーSP(K)から発せられた音が基準位置Pへ到達するタイミングが実際の音が基準位置Pへ到達するタイミングと一致する。そのため、本実施の形態の録音装置SRECおよび音再生記憶部R2によれば、1以上のマイクMic(K)によって取得された音を1以上のスピーカーSP(K)によって再生しても、臨場感が高い音を聴取することができる。
【0060】
(実施の形態2)
実施の形態2の録音装置SRECおよび音再生装置SREGを説明する。なお、下記において前述の実施の形態の録音装置SRECおよび音再生装置SREGと同様である点については、その説明は繰り返さない。本実施の形態の録音装置SRECおよび音再生装置SREGは、1以上のマイクMic(K)の全体構成が実施の形態1の1以上のマイクMic(K)の全体構成と異なる。
【0061】
図11に示されるように、1以上のマイクMic(K)の全体構成においては、中心から放射状に延びた、すなわち、四方八方へ向かって突出した複数の棒状の部材の先端にそれぞれ複数のマイクMic(K)が設置されている。複数のMic(K)それぞれは、仮想の球面上に設けられているものとする。
【0062】
図11に示されたマイクMic(K)の全体構成によれば、1以上のマイクMic(K)が設けられた仮想球面の中心位置が、音再生装置SREGによって音が再生されるときの聴取者の聴取位置である基準位置Pになる。そのため、1以上の棒状部材の先端の位置が、1以上のマイクMic(K)のそれぞれの位置情報(X,Y,Z)になる。たとえば、1以上の棒状部材のそれぞれの長さが10cmである場合には、1以上のマイクMic(K)の座標が基準位置Pを中心とした半径10cmの仮想球面上のいずれかの位置である。
【0063】
1以上のマイクMic(K)の全体構成の小型化により、1以上の棒状部材のそれぞれの長さがほぼ0cmとなった場合、1以上のマイクMic(K)のそれぞれの位置情報(X,Y、Z)は(0,0,0)となる。この場合は、1以上のマイクMic(K)の位置情報(X,Y,Z)がなくても、1以上のマイクMic(K)の方向情報(α,β)があれば、1以上のスピーカーSP(K)の位置情報(x,y,z)および1以上の遅延時間DT(K)を決定することができる。マイクMic(K)の方向情報(α,β)は、
図8に示される極座標における回転角αおよび仰角βを用いて表される。
【0064】
図12は、実施の形態2の1以上のマイクMic(K)の全体構成を特定可能な情報と1以上のマイクMic(K)の方向情報(α,β)とが関連付けられていることを説明するための図である。
【0065】
そのため、
図12に示されるように、音信号SS(K)としての音声ストリーム
Audio Stream)のデータに付加されている情報は、[一点収録フラグ/多点収録フラグ]および[マイクの方向情報]である。
【0066】
[一点収録フラグ]および[多点収録フラグ]のいずれの情報が音信号SS(K)に付加されるかは、マイク情報入力部MINPを用いて使用者の選択によって決定される。 [一点収録フラグ]は、1以上のマイクMic(K)の全体構成が、
図11に示されるように、ほぼ1点に集約されていると仮定され得るものであることを示すフラグである。[多点収録フラグ]は、1以上のマイクMic(K)の全体構成は、
図2に示されるように、1以上のマイクMic(K)の位置が分散されているものであることを示すフラグである。
【0067】
音信号SS(K)に付加されている情報が、[一点収録フラグ]である場合は、その後に続く情報は、[マイクの方向情報]である。[マイクの方向情報]は、基準位置Pに対するマイクMic(K)の方向情報(α,β)を示す情報である。方向情報(α,β)は、極座標の一部の要素である回転角αと仰角βで示される。[マイクの方向情報]は、マイク情報入力部MINPを用いて使用者によって入力された情報である。
【0068】
本実施の形態においては、1以上のマイクMic(K)の方向情報(α,β)は、基準位置Pに設定された方位磁針が示す1以上のマイクMic(K)の方向を使用者がマイク情報入力部MINPを用いて入力してもよい。入力された1以上のマイクMic(K)の方向情報(α,β)のそれぞれが、マイク情報入力部MINPから録音コントロール部CT1を経由して、録音信号処理部SP1へ各マイクMic(K)の方向情報(α,β)として送信されるものである。
【0069】
しかしながら、また、1以上のマイクMic(K)がGPS(Global Positioning System)とディスプレイ(図示せず)とを備えている場合には、次のようにしてもよい。たとえば、その位置情報(X,Y,Z)を発信する発信機(図示せず)を基準位置Pに設置する。それにより、発信機が発信する基準位置Pの情報を1以上のマイクMic(K)が受信し、基準位置Pの位置情報とMic(K)の位置情報とから、基準位置Pに対する1以上のマイクMic(K)の方向情報(α,β)を算出し、ディスプレイに表示してもよい。この1以上のマイクMic(K)の方向情報(α,β)がユーザの操作によってマイク情報入力部MINPから録音信号処理部SP1へ送信されてもよい。
【0070】
また、音信号SS(K)に付加されている情報が、[多点収録]である場合は、その後に続く情報は、
図3および
図4に示したように、マイクMic(K)の位置情報である。マイクMic(K)の位置情報は、実施の形態1において説明したように、基準位置Pに対するマイクMic(K)の位置情報(X,Y,Z)を示す情報である。1以上のマイクMic(K)の位置情報(X,Y,Z)は、実施の形態1と同様の方法により決定されたものである。
【0071】
図13は、実施の形態2の音再生装置SREGにおける1以上のスピーカーSP(K)と傾聴者が存在する基準位置Pとの位置関係の一例を示す模式図である。
【0072】
本実施の形態においては、録音装置SRECのマイクMic(K)の位置は、音再生装置SREGにおける聴取者の位置である基準位置Pと同一とみなされ得る。したがって、マイクMic(K)の位置情報(X,Y,Z)は、(0,0,0)である。本実施の形態においては、たとえば、音再生装置SREGのスピーカーSP(2)の位置情報(x,y,z)は、基準位置Pを(0,0,0)とすると、(-1m,0,1m)であるものとする。
【0073】
1以上のスピーカーSP(K)のそれぞれは、基準位置PからスピーカーSP(K)に対応するKの値を有するマイクMic(K)が存在する位置へ向かう方向に延びる仮想直線の上に配置されている。
【0074】
たとえば、音再生装置SREGのFrontLeftの位置に設置されたスピーカーSP(2)の位置情報(-1m,0m,+1m)に基づいて、基準位置PとスピーカーSP(2)との間の距離Dを求める。それにより、実施の形態1で説明した方法と同様の方法で、遅延時間(2)=tを求める。その後、
図8の遅延時間付与部DL(2)にそれぞれ設定する。それにより、基準位置Pで聴取される音のタイミングが実際に聴取される音のタイミングと一致するため、臨場感を向上させることができる。
【0075】
以上をまとめると次のようになる。
【0076】
本実施の形態の録音装置SRECは、実施の形態1と同様に、録音信号処理部SP1および録音記憶部R1を備えている。録音信号処理部SP1は、1以上のマイクMic(K)によって取得された1以上の音信号SS(K)に、それぞれ、マイク情報入力部MINPによって入力された1以上のマイクMic(K)の方向情報(α,β)を付加する。録音記憶部R1は、1以上のマイクMic(K)の方向情報(α,β)と1以上の音信号SS(K)とを1対1の関係で関連付けて記憶する。つまり、録音信号処理部SP1は、1以上のマイクMic(K)の方向情報(α,β)と1以上の音信号SS(K)とを1対1の関係で関連付けて録音記憶部R1に記憶させる。
【0077】
音再生装置SREGは、音再生記憶部R2、遅延時間付与部DL(K)、およびスピーカー駆動部SDR(K)を備えている。音再生記憶部R2は、1以上の音信号SS(K)を記憶する。音再生コントロール部CT2は、スピーカー位置入力部SINPによって入力された1以上のスピーカーSP(K)位置情報(x,y,z)に基づいて1以上の音信号SS(K)の1以上の遅延時間DT(K)を決定する。遅延時間付与部DL(K)は、1以上の音信号SS(K)に1以上の遅延時間DT(K)をそれぞれ付与する。スピーカー駆動部SDR(K)は、1以上の音信号SS(K)に対応する実際の1以上の音を、それぞれ、1以上の遅延時間DT(K)だけ遅延させて、1以上のスピーカーSP(K)に発生させる。
【0078】
音再生記憶部R2は、1以上のマイクMic(K)の方向情報(α,β)と1以上の音信号SS(K)とを1対1の関係で関連付けて記憶している。音再生コントロール部CT2は、1以上のマイクMic(K)の方向情報(α,β)が音再生記憶部R2から送信されてきた場合に、1以上のスピーカーSP(K)位置情報(x,y,z)のみに基づいて、1以上の音信号SS(K)の1以上の遅延時間のそれぞれを決定する。なお、音再生記憶部R2から送信されてきた場合には、音再生記憶部R2から音再生信号処理部SR2およびマイク情報読出部MIR等の他の部分を経由して送信されてきた場合を含む。音再生コントロール部CT2は、1以上のマイクMic(K)の方向情報(α,β)が音再生記憶部R2から送信されてきたか否かを判定する。音再生コントロール部CT2は、前述の判定を、1以上のマイクMic(K)の方向情報(α,β)に付加された1以上のマイクMic(K)の全体構成の種類を示す構成情報としての[一点収録/他点収録]に基づいて実行する。
【0079】
本実施の形態の録音装置SRECおよび音再生記憶部R2によっても、1以上のマイクMic(K)によって取得された音を1以上のスピーカーSP(K)によって再生しても、臨場感が高い音を聴取することができる。
【0080】
(実施の形態3)
実施の形態3の録音装置SRECおよび音再生装置SREGを説明する。なお、下記において前述の実施の形態の録音装置SRECおよび音再生装置SREGと同様である点については、その説明は繰り返さない。本実施の形態の録音装置SRECおよび音再生装置SREGは、以下の点で、実施の形態の録音装置SRECおよび音再生装置SREGと異なる。
【0081】
録音装置SRECで録音された1以上の音信号SS(K)に、音再生装置SREGにおいて、ナレーション音声または音楽等の他の1つの音信号(N+1)<Nは自然数>を付加する。この場合、ナレーション音声または音楽等の他の音信号(N+1)は、録音装置SRECで録音された音信号SS(K)の音声ストリームから独立した別の音声ストリームとして伝送される。これにより、ナレーションまたは音楽の録音装置SRECによって録音された1以上の音信号SS(K)との混合を避けることができる。
【0082】
本実施の形態においては、ナレーション音声または音楽等の他の音信号(N+1)に付与するマイクMic(N+1)の位置情報、すなわち、座標は、基準位置Pを表す(0,0,0)である。
【0083】
ただし、ナレーションまたは音楽等の他の音信号(N+1)に、その位置情報(X,Y,Z)、すなわち、再生座標を付与しなくてもよい。この場合、たとえば、音声ストリーム(Audio Stream)に付与するデータは、
図14に示されるように、[マイク座標フラグ]、[アフレコフラグ]、および[マイク座標データ]である。[マイク座標フラグ]は、後続のマイク座標データを有効にするフラグである。[アフレコフラグ]は、後続の音信号が、1以上のマイクMic(K)によって取得された1以上の音信号SS(K)以外の他の音信号(N+1)であることを示すフラグであり、後続の[マイク座標データ]を無効化するフラグである。[マイク座標データ]は、マイクMic(K)の座標情報である、つまり、[マイク座標データ]は、Mic(K)の位置情報(X,Y,Z)として機能する。
【0084】
[マイク座標フラグ]がなければ、[アフレコフラグ]に続く[マイク座標データ]は、無効化される。つまり、[マイク座標フラグ]がなければ、マイクMic(K)の位置情報(X,Y,Z)は、無いものとみなされる。したがって、他の音信号(N+1)は、マイクMic(K)の位置情報(X,Y,Z)に基づく遅延時間DT(K)なしに、スピーカーSP(K)に他の音を発生させる。
【0085】
本実施の形態においては、次のことが言える。
【0086】
音再生記憶部R2は、1以上の音信号SS(K)とは異なる他の音信号SS(K)を記憶している。スピーカー駆動部SDR(K)は、他の音信号(N+1)に対応する他の音を、前述の1以上の遅延時間DT(K)に基づく遅延時間なしに、1以上のスピーカーSP(K)の少なくともいずれか1つに発生させる。他の音信号(N+1)は、他の音信号(N+1)を1以上の音信号SS(K)から識別可能な識別情報としてのフラグに関連付けて音再生記憶部R2に記憶されている。
【0087】
本実施の形態の録音装置SRECにおいては、録音記憶部R1は、1以上のマイクMic(K)の位置情報または1以上のマイクMic(K)の方向情報と関連付けられていない他の音信号(N+1)を記憶している。他の音信号(N+1)は、1以上の音信号SS(K)から他の音信号(N+1)を区別可能な識別情報としてのフラグに関連付けて録音記憶部R1に記憶されている。
【0088】
(実施の形態4)
実施の形態4の録音装置SRECおよび音再生装置SREGを説明する。なお、下記において前述の実施の形態の録音装置SRECおよび音再生装置SREGと同様である点については、その説明は繰り返さない。本実施の形態の録音装置SRECおよび音再生装置SREGは、以下の点で、実施の形態の録音装置SRECおよび音再生装置SREGと異なる。
【0089】
音再生装置SREGによって音を再生するときに、録音装置SRECによって録音された音信号SS(K)に、他の音信号(N+1)としてのナレーション音声または音楽を付加する。この場合に、ナレーション音声または音楽を出力する位置、すなわち、スピーカーSP(K)を選択するための処理は、次のようなものである。
【0090】
スピーカーSP(K)で音を再生するときに、ナレーションまたは音楽の聴こえてくる位置を指定する場合、ナレーションまたは音楽が聴こえてくる位置情報を「再生座標」として、ナレーションまたは音楽等の他の音信号(N+1)に付与する。他の音信号(N+1)も音声ストリームである。
【0091】
この場合、音声ストリームには、
図15に示すように、[マイク座標フラグ]に加え、[再生位置フラグ]および[再生座標]が付されている。本実施の形態の[マイク座標フラグ]は、実施の形態3の[マイク座標フラグ]と同一である。
【0092】
[再生位置フラグ]、ナレーションまたは音楽等の他の音信号SS(K)の再生位置を特定可能な[再生座標]が後続することを示すフラグである。[再生座標]は、他の音信号(N+1)の再生位置を特定可能な座標情報である。他の音の再生位置を特定すれば、他の音信号(N+1)によって特定された他の音であるナレーションまたは音楽を発するスピーカーSP(K)の位置が特定される。
【0093】
[再生座標]は、録音装置SRECのスピーカーSP(K)の位置情報そのものではなく、音が聞こえている位置を特定可能なデータである。したがって、音が聞こえてくる方向および音の発生源から基準位置Pまでの距離を特定できれば、ナレーションまたは音楽情報は、2以上のスピーカーSP(K)によって生成されてもよい。
【0094】
ただし、[再生座標]は、音再生装置SREGにおいて追加された他の音信号(N+1)によって特定される音が発せられるスピーカーSP(K)の位置情報(X,Y,Z)そのものであってもよい。言い換えると、[再生座標]は、音再生装置SREGによって音が再生されるときに、ナレーションまたは音楽等の他の音が発生するスピーカーSP(K)の座標データ、すなわち、位置情報(x,y,z)であってもよい。
【0095】
以上から分かるように、音再生記憶部R2は、1以上の音信号SS(K)とは異なる他の音信号(N+1)に対応する他の音を発せさせる少なくとも1つのスピーカーSP(K)を特定可能な情報を記憶している。スピーカー駆動部SDR(K)は、少なくとも1つのスピーカーSP(K)を特定可能な情報によって特定された少なくとも1つのスピーカーSP(K)に他の音信号(N+1)に対応する他の音を発生させる。
【符号の説明】
【0096】
DL(K) 遅延時間付与部
DT(K)遅延時間
Mic(K) マイク
MINP マイク情報入力部
SP1 録音信号処理部
SREC 録音装置
R1 録音記憶部
R2 音再生記憶部
SDR(K) スピーカー駆動部
SREG 音再生装置