(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-03-18
(45)【発行日】2025-03-27
(54)【発明の名称】エンジン用吸気装置
(51)【国際特許分類】
F02M 35/10 20060101AFI20250319BHJP
F02M 35/16 20060101ALI20250319BHJP
F02M 35/12 20060101ALI20250319BHJP
F02M 35/024 20060101ALI20250319BHJP
B60K 13/00 20060101ALI20250319BHJP
【FI】
F02M35/10 101L
F02M35/16 C
F02M35/12 M
F02M35/024 511A
B60K13/00
(21)【出願番号】P 2021044859
(22)【出願日】2021-03-18
【審査請求日】2024-02-01
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000002967
【氏名又は名称】ダイハツ工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099966
【氏名又は名称】西 博幸
(74)【代理人】
【識別番号】100134751
【氏名又は名称】渡辺 隆一
(72)【発明者】
【氏名】萩原 健太
(72)【発明者】
【氏名】茂内 晋
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 禎朗
【審査官】佐々木 淳
(56)【参考文献】
【文献】特開平08-158965(JP,A)
【文献】特開2015-017549(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2013-0013386(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02M 35/00-35/16
B60K 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エアクリーナとこれに空気を取り込む吸気ダクト、及び、前記吸気ダクトに連通路を介して一体に設けられたレゾネータとを備えており、
前記吸気ダクトは、吸気口が上端に開口して空気が下向きに流れる第1縦長部と、吐出口が上端に開口して空気が上向きに流れる第2縦長部と、前記両縦長部の下端に繋がった底部とを有して、前記第2縦長部の上端に、前記エアクリーナのダーティ室を構成する本体ケースが一体的に接続されているエンジン用吸気装置であって、
前記エアクリーナは、平面視で前記吸気ダクトにおける底部
の全長と重なるように配置されている一方、前記レゾネータは、前記吸気ダクトの前記両縦長部と底部とで囲われた空間
のみに配置されており、
前記エアクリーナと前記レゾネータと前記吸気ダクトの底部とが、平面視で重なった状態に高さを変えて配置されている、
エンジン用吸気装置。
【請求項2】
前記吸気ダクトは、重ね合わせて接合された2つのシェル状部材の合わせ面に形成されていて、前記第1縦長部と底部と第2縦長部とは一連に連続しており、
前記2つのシェル状部材のうち一方のシェル状部材に、前記第2縦長部の前記吐出口が開口した略水平状の受け板を一体に設けて、前記受け板に前記エアクリーナの本体ケースを固定している、
請求項1に記載したエンジン用吸気装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、エンジン(内燃機関)に付属品として設けられる吸気装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ガソリンエンジンやディーゼルエンジンでは、空気を取り込んで浄化するエアクリーナが必要不可欠である。エアクリーナは、エンジンの付属品としては比較的設計の自由性が高く、様々な構造や配置形態が提案されている。
【0003】
その例として特許文献1には、エアクリーナを構成する本体ケースの下面にレゾネータと吸気ダクトとを一体に設けることが開示されている。また、特許文献2にも、エアクリーナのダーティ室にレゾネータを一体に設けることが開示されている。特許文献1,2のようにレゾネータをエアクリーナに一体化すると、全体としてコンパクト化しつつ吸気騒音を抑制できる利点がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2000-064920号公報
【文献】特開2002-339822号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
さて、吸気騒音の消去効果を向上させるには吸気ダクトをできるだけ長くするのが好ましいが、特許文献1,2では吸気ダクトの長さに限度があるため、騒音の消去効果にも限度があると解される。
【0006】
すなわち、特許文献1では、吸気ダクトは本体ケースを下から囲うように形成されているため、吸気ダクトの長さは本体ケースの大きさに規制されておのずと限度があり、また、特許文献2では、ダーティ室に一体化されるレゾネータケースの内部を仕切ってUターン形状や蛇行形状の吸気ダクトを形成しているが、この場合も、レゾネータケースの大きさはダーティ室の大きさに規制されるため吸気ダクトを長くすることに限度があり、いずれにしても、吸気騒音の消去性能に限度があると解される。
【0007】
また、特許文献2のように吸気ダクトをUターンさせたり蛇行させたりすると、空気が急激に方向変換するため空気の流れ抵抗が増大するおそれや、急激に曲がった部位に空気が衝突して膜振動を発生させるおそれがあり、レゾネータを設けた意義を没却させ兼ねないおそれもある。また、特許文献2では吸気ダクトで囲われた空間の容積は小さいため、レゾネータとしての機能を十分に発揮できるか否かも問題である。
【0008】
従って、レゾネータ一体型の吸気ダクトを備えたエアクリーナについて検討すると、空気の流れ抵抗をできるだけ抑制しつつ吸気ダクトの長さをできるだけ長くし、かつ、レゾネータに必要な容積を確保しつつコンパクトに纏めて配置できることが要請される。また、空気には塵埃や水分が含まれていることがあるが、これら塵埃や水分がエアクリーナのフィルタエレメントに至ることを抑制できると好適である。更に、強度(剛性)も担保されねばならない。特に、自動車に搭載されるエアクリーナの場合は、走行による振動とエンジンの振動が作用するため、強度についての配慮は重要である。
【0009】
本願発明はこのような現状を契機に成されたものであり、流れ抵抗を抑制しつつ騒音消去機能に優れるなど、改良された吸気装置を提供せんとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本願発明は、請求項1と2の構成を含んでいる。このうち請求項1の発明は、
「エアクリーナとこれに空気を取り込む吸気ダクト、及び、前記吸気ダクトに連通路を介して一体に設けられたレゾネータとを備えており、
前記吸気ダクトは、吸気口が上端に開口して空気が下向きに流れる第1縦長部と、吐出口が上端に開口して空気が上向きに流れる第2縦長部と、前記両縦長部の下端に繋がった底部とを有して、前記第2縦長部の上端に、前記エアクリーナのダーティ室を構成する本体ケースが一体的に接続されている」
という基本構成において、
「前記エアクリーナは、平面視で前記吸気ダクトにおける底部の全長と重なるように配置されている一方、前記レゾネータは、前記吸気ダクトの前記両縦長部と底部とで囲われた空間のみに配置されており、
前記エアクリーナと前記レゾネータと前記吸気ダクトの底部とが、平面視で重なった状態に高さを変えて配置されている」
という特徴を有している。
【0011】
他方、請求項2の発明は、請求項1において、
「前記吸気ダクトは、重ね合わせて接合された2つのシェル状部材の合わせ面に形成されていて、前記第1縦長部と底部と第2縦長部とは一連に連続しており、
前記2つのシェル状部材のうち一方のシェル状部材に、前記第2縦長部の前記吐出口が開口した略水平状の受け板を一体に設けて、前記受け板に前記エアクリーナの本体ケースを固定している」
という構成になっている。
【0012】
請求項1においても、吸気ダクト及びレゾネータは、合成樹脂製の2枚のシェル状部材を重ねて接合することによって中空構造に形成することが可能であり、この接合構造を採用すると、レゾネータ付き吸気ダクトを容易に製造できる。
【発明の効果】
【0013】
本願両発明において、吸気ダクトは、第1縦長部と底部と第2縦長部とを備えて略U型になっているため、空気の流れの急激な方向変換部を無くして、空気の流れ抵抗を抑制しつつ吸気ダクトの長さを長くできる。更に述べると、第1縦長部は本体ケースに規制されないため、第1縦長部を第2縦長部よりも長くすることが可能であり、このため、吸気ダクトの長さを長くすることを確実化できると共に、吸気口の配置位置について設計の自由性を向上できる。そして、空気は第1縦長部を下向きに流れたのち第2縦長部を上向きに流れるため、塵埃や砂粒、水分がエアクリーナに入り込むことを抑制できる。これにより、フィルタエレメントの耐久性を向上できる。
【0014】
そして、請求項1の発明では、吸気ダクトで囲われた空間にレゾネータが配置されているが、吸気ダクトは底部を有して囲われた空間の面積は大きいため、エアクリーナの下方の空間を有効利用しつつ、吸気ダクトの長さを長くできると共にレゾネータの容積も大きくできる。従って、レゾネータの機能をフルに発揮させて、騒音・振動の消去効果を格段に向上できる。
【0015】
また、請求項1の発明では、エアクリーナと吸気ダクトとレゾネータとが1つの吸気装置としてユニット化されているため、エンジン本体や車体などに取り付けるにおいて、取付け箇所を低減して作業能率を向上できる。請求項2のように、2枚のシェル状部材を接合して吸気ダクトとレゾネータとを中空化すると、レゾネータがリブ効果を発揮して吸気ダクトが補強されるため、全体として剛性を向上できる。
【0016】
なお、レゾネータを介して第1縦長部と第2縦長部との中途高さ部位を連通させておくことも可能であり、この構造を採用すると、自動車用エンジンに適用したとき、自動車が冠水した道路を走行して吸気ダクトの底部に水が溜まって閉塞しても、空気をエアクリーナに取り込んでエンジンの運転を維持することができる。
【0017】
請求項2のように、吸気ダクトに一体に設けた受け板にエアクリーナの本体ケースを固定すると、エアクリーナの下方の空間を有効利用して吸気装置をコンパクト化しつつ、吸気ダクトをエアクリーナの本体ケースで安定的に吊支できる利点がある(この点は、請求項1も同様である。)。この場合、吸気ダクトを重ね接合された2枚のシェル状部材で構成して、一方のシェル状部材に、その上端から表裏両側に張り出した状態で受け板を一体成形していることにより、受け板とシェル状部材とがT型構造を成すため、剛性を格段に向上できて好適である。
また、本体ケースと受け板が溶着等により一体化される事により、地面と対向する本体ケースの底板平面が二重構造になり、エアクリーナの表面から放射される放射音が大きく低減される。これにより、車両用に適用すると、エアクリーナの放射音が地面に反射して車両側方で聞こえる車外騒音も抑制される。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】吸気装置をやや斜め上方から見た斜視図である。
【
図4】吸気装置の分離側面図である(但し、右シェル状部材は裏返した状態になっている。)。
【
図5】2つのシェル状部材を広げた状態(合わせ面を見せた状態)の分離側面図である。
【
図7】一部構造を省略した状態での右シェル状部材の斜視図である。
【
図9】実施形態を適用した自動車を示す図で、(A)は全体の側面図、(B)は(A)の一部破断拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
次に、本願発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
図9においてキャブオーバー型バン(例えばワンボックスタイプの軽バン)を表示しているが、本実施形態の吸気装置1は、このキャブオーバー型バンに搭載できる。
【0020】
すなわち、キャブオーバー型バンは、前席2aが配置された前室(運転室)2とその後方の荷室空間3とを有しており、前席2aの下方の空間にエンジン4が配置されているが、本実施形態の吸気装置1は、前席2aの後部下方のうち助手席に寄った部位(車体のサイドメンバー(アンダーフレーム)とフロアとアンダーボデー(外板)とで囲われた空間)に配置されている(運転席の側に配置してもよい。)。
【0021】
なお、エンジン4は、クランク軸を車両の前後方向に向けた縦置きで配置されており、シリンダボア軸線を水平の側に近づくように大きくスラントさせている。また、吸気側面を上向きにして配置している。
図6(B)に示す4aはミッションケース、4bはドライブシャフトである。
【0022】
以下では、方向を特定するため前後左右の文言を使用するが、この方向は車両の前後・左右方向と同じである。すなわち、運転者から見た前後左右の方向と同じである。各図に、適宜方向を表示している。
【0023】
(1).概要
図1に示すように、吸気装置1は、エアクリーナ5と、その下方に大半が配置されたダクトユニット6とを備えており、エアクリーナ5は、
図4に明示するように、下部に位置してダーティ室を有する合成樹脂製の本体ケース7と、クリーン室を構成して本体ケース7に上から重なる合成樹脂製のカバーケース8と、両者で挟まれるフィルタエレメント9とを備えている。
【0024】
カバーケース8は下向きに開口したトレー状の形態を成しており、各コーナー部が略C型のクリップ10によって本体ケース7に固定されている。従って、本実施形態のカバーケース8は着脱式である。そこで、カバーケース8の開口縁の外側には囲い状の縁体11aを一体に形成し、縁体11aにクリップ10を弾性に抗して引っ掛けている。また、カバーケース8の側面に、浄化した空気の排出口12が突設されている。なお、カバーケース8は、その一側部を支点にして回動する開閉式であってもよい。
【0025】
エアクリーナ5の本体ケース7は上向きに開口した箱状の形態を成しており、開口縁の外側にはカバーケース8と同様の縁体11bが一体に形成されており、クリップ10の下端が縁体11bの箇所に係止されている。また、本体ケース7の外側面と内角部には、車体フレームに固定するためのブラケット部13を一体に形成している。ブラケット部13は、防振グロメットを備えたボルト14によって車体フレーム(図示せず)に固定される。
【0026】
図8に示すように、本体ケース7の底面のうち1つのコーナー部に流入口15が空いている一方、
図6に示すように、ダクトユニット6は本体ケース7が重ね固定される受け板16を備えており、受け板16に、本体ケース7の流入口15と連通する吐出口17を形成している。受け板16と本体ケース7とは、振動溶着等の溶着によって固定(接合)されている。
【0027】
図8に示すように、本体ケース7の下面に、その周囲と流入口15とを囲うと共に前後左右に交叉した溶着用下向きリブ18が形成されている一方、ダクトユニット6の受け板16にも、本体ケース7の溶着用下向きリブ18に対応した溶着用上向きリブ19が形成されている。
【0028】
但し、ダクトユニット6の受け板16には、溶着用上向きリブ19の他に補強用の補助リブ20の群も形成されており、溶着用上向きリブ19と補助リブ20の群とが格子状の形態を成している。
図6において、溶着用上向きリブ19をハッチングで表示しているが、この図から理解できるように、溶着用上向きリブ19には溝を形成している。
【0029】
図8では表示していないが、本体ケース7の溶着用下向きリブ18にも溝が形成されている(
図6の溶着用上向きリブ19は、実際よりも幅広に表示している。)。なお、
図7では溶着用上向きリブ19の一部のみを表示しており、溶着用上向きリブ19の一部と補助リブ20の全部は省略している。なお、受け板16と本体ケース7とを溶着するリブの形態は、様々に変更できる。
【0030】
(2).ダクトユニット
図4,5に示すように、ダクトユニット6は、左シェル状部材21と右シェル状部材22との一対のシェル状部材から成っており、両シェル状部材21,22を重ねて振動溶着等によって接合することによって中空に形成されて、吸気ダクト23と、第1及び第2のレゾネータ24,25とを備えている。従って、両シェル状部材21,22には、吸気ダクト23を形成する膨出部とレゾネータ24,25を形成する膨出部とが形成されている。既述の受け板16は、右シェル状部材22の上端に一体成形されている。
【0031】
図5,7では、両シェル状部材21,22の溶着面(重合面)をハッチングで表示している(従って、ハッチングは断面の表示ではない。)。両シェル状部材21,22の溶着面にも溝(図示せず)が形成されている。
【0032】
図1や
図4,5に示すように、吸気ダクト23は、上端に吸気口26が開口して空気が下向きに流れる第1縦長部23aと、既述の吐出口17が上端に開口して空気が上向きに流れる第2縦長部23bと、これら両縦長部23a,23bの下端に繋がって空気が水平方向に流れる底部23cとを有している。従って、吸気ダクト23は側面視で略U形の形態を成して
一連に延びており、両縦長部23a,23bと底部23cとで囲われた空間にレゾネータ24,25が配置されている。第1縦長部23aと底部23cとが連接したコーナー部に、水を排出するドレン部27を下向きに突設している。
【0033】
第2縦長部23bの上端は受け板16に開口しているので、第2縦長部23bは必然的にエアクリーナ5よりも下方に配置されているが、第1縦長部23aの上端の吸気口26はエアクリーナ5の上端とほぼ同じ高さになっている。例えば
図2から理解できるように、吸気口26はエアクリーナ5のカバーケース8に向けて略水平方向(横向き方向)に開口している(開口方向は任意に設定できる。)。
【0034】
従って、第1縦長部23aの上半部はエアクリーナ5の前方に配置されているが、レゾネータ24,25はエアクリーナ5の下方に配置されているため、第1縦長部23aの下半部は、エアクリーナ5の下方に入り込むように曲げられている。このように配慮することにより、吸気装置1をコンパクト化できる。
【0035】
第1縦長部23aは緩い角度で曲げられており、また、第1縦長部23aと底部23cとの連接部の曲率半径もできるだけ大きくして湾曲している。更に、底部23cと第2縦長部23bとの連接部は大きく湾曲していると共に、第2縦長部23b自体も車体の外側に向けて膨れるように湾曲している。従って、吸気ダクト23は、全体としてはU型を成しつつ、連接部は滑らかに湾曲して、第1縦長部23aは滑らかに曲がり、第2縦長部23bは大きく湾曲している。このような曲がり形状により、空気は吸気ダクト23の内部を殆ど抵抗なくスムーズに流れる。従って、吸気抵抗は著しく抑制されている。
【0036】
第1レゾネータ24は第1縦長部23aに寄せて配置されており、その下端が第1連通路28を介して底部23cと連通している。他方、第2レゾネータ25は、第2縦長部23bを外向きに湾曲させたことによって形成された凹所に収まった状態になっており、その下端部が第2連通路29を介して第2縦長部23bの下部と連通している。第1レゾネータ24が第2レゾネータ25よりも大きい容積になっているが、両者を等しい容積に設定したり、第2レゾネータ25を第1レゾネータ24より大きい容積に設定したりすることも可能である。
【0037】
他方、第2レゾネータ25は、第2縦長部23bを外向きに湾曲させたことによって形成された凹所に収まった状態になっている。従って、第2縦長部23bを湾曲させたことによる空間を有効利用して、デッドスペースの発生を防止している。第2レゾネータ25は、その下端部が第2連通路29を介して第2縦長部23bの下部と連通している。
【0038】
図1,2から理解できるように、レゾネータ24,25は両シェル状部材21,22の合わせ面の前後両側に膨れているが、右シェル状部材22の膨れ量が左シェル状部材21の膨れ量よりも大きくなっている。すなわち、レゾネータ24,25は後ろ側に向けて大きく膨れている。レゾネータ24,25は左右方向に大きく膨らませることができるため、エアクリーナ5の下方の空間を有効利用しつつ必要な容積を確保できる。この点、本実施形態の大きな利点の一つである。
【0039】
図2に示すように、第1レゾネータ24の後部下端には、エア抜きポート30を下向きに突設している。
図5,7に示すように、レゾネータ24,25の内部には、側面視で格子状に交叉した縦横の内部リブ31が形成されている。内部リブ31は、主として補強目的で設けている。
【0040】
既述のとおり、受け板16は右シェル状部材22の上端に一体成形されており、右シェル状部材22を構成するプレートの前後両側に張り出している。そして、例えば
図1,2,6に示すように、第1レゾネータ24
及び第2レゾネータ25が受け板16よりも下方に配置されて、右シェル状部材22のプレート部と受け板16とに、受け板支持リブ32の群が一体に接続されている。従って、受け板16が右シェル状部材22に安定した状態に保持されており、その結果、ダクトユニット6は全体として堅牢な構造になっている。
上記のとおり、レゾネータ24,25は受け板16の下方に配置されているため、エアクリーナ8とレゾネータ24,25と吸気ダクト23の底部23cとは、平面視で重なった状態に配置されている。
【0041】
また、
図2~4(特に
図2参照)に示すように、左シェル状部材21の第1縦長部23aと右シェル状部材22の第1縦長部23aとには、第1レゾネータ24に連続した水平状の吸気ダクト用リブ33が一体に形成されており、前後の吸気ダクト用リブ33が互いに接合されている。このため、第1縦長部23aと第1レゾネータ24とが一体化して、第1縦長部23aの安定性を高めている。
【0042】
また、
図6,7に示すように、右シェル状部材22には、第1縦長部23aと受け板16とに繋がった第1サイドリブ34と、第2縦長部23bと受け板16とに繋がった第2サイドリブ35とを設けている。これらのサイドリブ34,35によっても、吸気ダクト23の堅牢性が格段に向上している。
【0043】
(3).まとめ
本実施形態は以上の構成であり、空気は、吸気ダクト23を上から下向きに流れたのち、第2縦長部23bにおいて上向きに方向変換してエアクリーナ5の本体ケース7に流入するが、吸気ダクト23はレゾネータ24,25を抱き込んだ略U型になっているため、スペースを有効利用しつつ長さを長くできる。
【0044】
そして、吸気ダクト23は底部23cを備えているため、特許文献2のようなUターン形状や蛇行形状に比べて流れ抵抗は著しく抑制される。特に、第2縦長部23bが第1縦長部23aと反対側に膨れるように湾曲しているため、空気流の上向き方向変換は極めてスムーズであり、圧損を著しく抑制できる。
【0045】
そして、長い長さの吸気ダクト23に2つのレゾネータ24,25が接続されているため、レゾネータ24,25の機能をフルに発揮させて、振動と騒音の抑制効果を格段に向上できる。更に述べると、レゾネータ24,25はエアクリーナ5の下方に隠れた状態で前後両方向に膨れているため、既述のとおり、エアクリーナ5の下方のスペースを有効利用して必要な容積を確保しており、その結果、空気の膨張作用・衝撃吸収作用を大きく向上させて、振動・騒音の抑制効果を大きく向上させている。
【0046】
図9に示すワンボックスタイプの軽バンでは、既述のとおり、エアクリーナは車体のサイドメンバーとフローとロアボデーとで囲われた空間に配置されており、この空間は上下幅が限られた狭い空間になっているが、本実施形態では、レゾネータ24,25がエアクリーナ5の下方において前後方向に膨れて必要な容積を確保していることにより、吸気装置の高さをできるだけ低くできるため、高い騒音防止効果を保持した状態で軽バンにも適用できる。
【0047】
また、空気は第2縦長部23bにおいて上向きに流れるため、空気に砂粒や水が混入していても、それら砂粒や水がエアクリーナ5の本体ケース7に流入することを防止又は著しく抑制できる。従って、フィルタエレメント9の耐久性を向上できる。
【0048】
構造面について述べると、吸気ダクト23とレゾネータ24,25とはシェル状部材21,22を膨らませることによって形成されているため、これらがリブ効果を発揮してダクトユニット6の堅牢性を大きく高めている。また、ダクトユニット6は受け板16を介してエアクリーナ5の本体ケース7に接合されているため、ダクトユニット6とエアクリーナ5とは強固に固着されている。従って、自動車の走行による振動やエンジン4の振動等によってダクトユニット6が脱落するような不具合は生じない。
【0049】
更に、受け板16と右シェル状部材22とが受け板支持リブ32の群で繋がっているため、ダクトユニット6は軽量でありながら堅牢な構造になっている。この場合、受け板16が右シェル状部材22の左右両側に張り出して、受け板16と右シェル状部材22とで正面視T型になっているため、ダクトユニット6はバランス良く本体ケース7で吊支されている。
【0050】
これに加えて、受け板16と右シェル状部材22とは受け板支持リブ32の群によって前方から後方まで一様に連結されているため、ダクトユニット6は前後方向に揺すられる振動に対しても強い抵抗を発揮する。従って、自動車の走行によってダクトユニット6に前後方向のモーメントが作用しても、ダクトユニット6はエアクリーナ5に対して前後に振れ動くことなく高い強度を保持できる。
【0051】
以上、本願発明の実施形態を説明したが、本願発明は他にも様々に具体化できる。例えばレゾネータの個数は2つに限らず、1つ又は3つ以上であってもよい。また、実施形態では第2縦長部を通った空気は本体ケースに対して下方から入り込んでいるが、本体ケースに対して側方から入り込ませてもよい(すなわち、吐出口を横向きに開口させてもよい。)。エアクリーナの本体ケースは、受け板にビス等のファスナで固定することも可能である。
【0052】
受け板がシェル状部材の上端から片側のみに張り出す逆L形に形成して、受け板の下方にレゾネータを配置すること(すなわち、一対のシェル状部材のうち主として片方にレゾネータを膨出形成すること)も可能である。
【産業上の利用可能性】
【0053】
本願発明は、エンジンの吸気装置に具体化できる。従って、産業上利用できる。
【符号の説明】
【0054】
1 吸気装置
4 エンジン
5 エアクリーナ
6 ダクトユニット
7 本体ケース
8 カバーケース
9 フィルタエレメント
15 本体ケース7の空気流入口
16 受け板
17 吐出口
18 溶着用下向きリブ
19 溶着用上向きリブ
21 左シェル状部材
22 右シェル状部材
23 吸気ダクト
23a 第1縦長部
23b 第2縦長部
23c 底部
24,25 レゾネータ
26 吸気口
27 ドレン部
28,29 連通路
32 受け板支持リブ