(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-03-18
(45)【発行日】2025-03-27
(54)【発明の名称】機体の保守点検システム
(51)【国際特許分類】
B64F 5/40 20170101AFI20250319BHJP
B64D 45/00 20060101ALI20250319BHJP
G06F 3/01 20060101ALI20250319BHJP
G06T 19/00 20110101ALI20250319BHJP
【FI】
B64F5/40
B64D45/00 Z
G06F3/01 510
G06T19/00 A
(21)【出願番号】P 2021049047
(22)【出願日】2021-03-23
【審査請求日】2024-02-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000005348
【氏名又は名称】株式会社SUBARU
(74)【代理人】
【識別番号】100090033
【氏名又は名称】荒船 博司
(74)【代理人】
【識別番号】100093045
【氏名又は名称】荒船 良男
(72)【発明者】
【氏名】浅井 孝行
【審査官】長谷井 雅昭
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2004/0008253(US,A1)
【文献】韓国登録特許第10-2147192(KR,B1)
【文献】特開2019-117308(JP,A)
【文献】韓国登録特許第10-1960946(KR,B1)
【文献】米国特許出願公開第2020/0072137(US,A1)
【文献】特開2018-108802(JP,A)
【文献】特開2018-074757(JP,A)
【文献】特表2012-526979(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B64F 5/40
B64D 45/00
G06F 3/01
G06T 19/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
航空機に搭載され、航空機の飛行中に
、所定のタイミングで保守点検対象を撮影する複数の撮影装置と、
前記複数の撮影装置により撮影された複数の画像を伝送する伝送装置と、
前記伝送装置により伝送されてきた前記複数の画像に基づいて前記保守点検対象の形状を3次元的に見ることが可能な状態で表示する表示装置と、
を備え
、
前記所定のタイミングは、前記表示装置から前記伝送装置を介して伝送要求が送信されたタイミング、前記航空機の到着予定の空港から所定の距離内に接近したタイミング、又は、前記航空機の到着予定時間の所定時間前のタイミングである、
ことを特徴とする機体の保守点検システム。
【請求項2】
前記表示装置は、
ユーザの頭部に装着され、バーチャルリアリティ画像を表示するヘッドセットと、
前記ヘッドセットの移動と向きを検出するセンサと、
前記センサが検出した前記ヘッドセットの移動と向きに応じて、前記複数の画像に基づいて前記保守点検対象の前記バーチャルリアリティ画像を生成する生成部と、
を備えることを特徴とする請求項1に記載の機体の保守点検システム。
【請求項3】
前記複数の撮影装置から前記伝送装置への前記複数の画像の伝送、及び前記複数の撮影装置への給電が無線で行われることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の機体の保守点検システム。
【請求項4】
前記撮影装置は、前記保守点検対象の動画を撮影する装置であり、
前記保守点検対象が撮影された画像を解析して当該保守点検対象の異常振動検出若しくは動体検出又はその両方を行う画像解析装置を備えることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の機体の保守点検システム。
【請求項5】
前記複数の撮影装置は、前記保守点検対象と、前記保守点検対象の近傍に揺動可能に配置された部材と、を撮影し、
前記画像解析装置は、前記部材の揺動の様子を解析して前記保守点検対象の異常振動を検出し、当該異常振動が検出された場合にその旨を前記表示装置に表示させる、
ことを特徴とする請求項4に記載の機体の保守点検システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、航空機の機体の保守点検システムに関する。
【背景技術】
【0002】
航空機の運航において必ず行わなければならない整備として日々の運航整備がある。運航整備には、その日の始発便前に実施する飛行前点検と、各飛行ごとに実施する飛行間点検と、最終便到着後に実施する飛行後点検の3つの項目がある。
飛行間点検では、整備士等が駐機場などで、機体に鳥などの衝突の痕跡や、機体やエンジン等からのオイル漏れ、タイヤやブレーキの損傷の有無等を目視で点検したり、必要に応じて不具合箇所の修復等を行う(例えば非特許文献1等参照)。
【0003】
また、整備士等は、パイロットからフライト情報を確認したり、乗務員等からの聞き取りを行ったりもする。また、コックピットや客室内などの点検等も行う。
また、飛行後点検では、整備士等が格納庫内などで、不具合箇所や故障した箇所の修理や部品の交換のほか、場合によってはエンジンの交換等の整備作業が行われる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【文献】ANAラインメンテナンステクニクス株式会社、“業務紹介”、[令和3年1月22日検索]、インターネット<UTL:http://www.ltc.ana-g.com/service.html>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、空港等での運航整備では、上記のように目視による点検や不具合箇所の修復や修理等が行われるが、そのような点検、整備作業に時間がかかると、航空機の出発に遅延が生じたり欠航になったりする場合がある。
しかし、航空機の出発が遅延したり欠航になったりすると、機体の運用率が低下する等の問題が生じてしまい、航空会社の売り上げ低下にもつながるおそれがある。
【0006】
本発明は、上記の点を鑑みてなされたものであり、航空機の機体に対する保守、点検を効率よく行うことを可能とし、機体の運用率を維持、向上させることが可能な機体の保守点検システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記の問題を解決するために、請求項1に記載の発明は、機体の保守点検システムにおいて、
航空機に搭載され、航空機の飛行中に、所定のタイミングで保守点検対象を撮影する複数の撮影装置と、
前記複数の撮影装置により撮影された複数の画像を伝送する伝送装置と、
前記伝送装置により伝送されてきた前記複数の画像に基づいて前記保守点検対象の形状を3次元的に見ることが可能な状態で表示する表示装置と、
を備え、
前記所定のタイミングは、前記表示装置から前記伝送装置を介して伝送要求が送信されたタイミング、前記航空機の到着予定の空港から所定の距離内に接近したタイミング、又は、前記航空機の到着予定時間の所定時間前のタイミングであることを特徴とする。
【0008】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の機体の保守点検システムにおいて、
前記表示装置は、
ユーザの頭部に装着され、バーチャルリアリティ画像を表示するヘッドセットと、
前記ヘッドセットの移動と向きを検出するセンサと、
前記センサが検出した前記ヘッドセットの移動と向きに応じて、前記複数の画像に基づいて前記保守点検対象の前記バーチャルリアリティ画像を生成する生成部と、
を備えることを特徴とする。
【0009】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は請求項2に記載の機体の保守点検システムにおいて、前記複数の撮影装置から前記伝送装置への前記複数の画像の伝送、及び前記複数の撮影装置への給電が無線で行われることを特徴とする。
【0010】
請求項4に記載の発明は、請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の機体の保守点検システムにおいて、
前記撮影装置は、前記保守点検対象の動画を撮影する装置であり、
前記保守点検対象が撮影された画像を解析して当該保守点検対象の異常振動検出若しくは動体検出又はその両方を行う画像解析装置を備えることを特徴とする。
請求項5に記載の発明は、請求項4に記載の機体の保守点検システムにおいて、
前記複数の撮影装置は、前記保守点検対象と、前記保守点検対象の近傍に揺動可能に配置された部材と、を撮影し、
前記画像解析装置は、前記部材の揺動の様子を解析して前記保守点検対象の異常振動を検出し、当該異常振動が検出された場合にその旨を前記表示装置に表示させる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、航空機の機体に対する保守、点検を効率よく行うことを可能とし、機体の運用率を維持、向上させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本実施形態に係る機体の保守点検システムの構成を示す図である。
【
図2】格納された車輪の周囲に位置するように複数の撮影装置が配置されている状態を表す図である。
【
図3】表示装置のヘッドセットとセンサと生成部の構成例を表す図である。
【
図4】燃料タンクの内部に配置された撮影装置等を表す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明に係る機体の保守点検システムの実施の形態について、図面を参照して説明する。
【0014】
図1は、本実施形態に係る機体の保守点検システムの構成を示す図である。本実施形態では、機体の保守点検システム1は、航空機10に搭載された複数の撮影装置2や伝送装置3と、空港20に配置された表示装置4とを備えている。
以下、前述した整備士等による運航整備等における点検、整備の対象である保守点検対象Aが、航空機10の車輪(以下、車輪A1という。)である場合を例示して、具体的に説明する。なお、車輪という場合、タイヤやブレーキ等を含む。
【0015】
機体の保守点検システム1の複数の撮影装置2は、航空機10に搭載されている。
そして、例えば
図2に示すように、複数の撮影装置2が、離陸後に車輪A1が格納されるとその周囲に位置するように航空機10の機内(例えば図示しない壁面等)に配置されている。
【0016】
なお、撮影装置2は、静止画を撮影することができるものであればよいが、動画を撮影するものであってもよい。
また、
図2では、撮影装置2が格納された車輪A1の周囲に5つ配置されている場合が示されているが、撮影装置2は、適切な位置に適切な数だけ配置されることは言うまでもない。
【0017】
また、保守点検対象Aは、格納された車輪A1の場合のように機体内の暗い場所にある場合が少なくない。
そのため、
図2に示すようにフラッシュ等の照明装置21を配置し、撮影装置2で撮影を行う際に照明装置21で保守点検対象Aを照明するように構成することも可能である。
【0018】
そして、複数の撮影装置2は、航空機10の飛行中に、所定のタイミングで、機内に格納されている車輪A1(保守点検対象A)を撮影する。
この場合、複数の撮影装置2は、例えば、後述する表示装置4側から伝送装置3を介して伝送要求が送信されてきたタイミングや、航空機10が着陸予定の空港20から所定の距離内に接近したタイミング、あるいは到着予定時間の所定時間前のタイミング等の決められたタイミングで車輪A1(保守点検対象A)を撮影し、撮影した画像をそれぞれ伝送装置3に送信するようになっている。
【0019】
なお、複数の撮影装置2から伝送装置3に複数の画像を伝送する際、複数の画像の伝送が無線で行われるように構成されていれば、複数の撮影装置2から伝送装置3への複数の画像の伝送のため機内に新たに配線を設けることが不要になり、例えば、配線のためにシールが破壊される等の問題が生じることを回避することが可能となる。
また、同様の理由で、複数の撮影装置2への給電を無線で行うように構成すること(ワイヤレス給電)も可能である。
【0020】
伝送装置3は、無線通信モジュール等で構成されている。
そして、伝送装置3は、複数の撮影装置2から撮影された複数の画像が送信されてくると、それらを表示装置4に無線で伝送するようになっている。
【0021】
表示装置4は、空港20の所定の場所(例えば整備士等の待機所や格納庫など)に配置されており、伝送装置3により伝送されてきた、航空機10に搭載された複数の撮影装置2で撮影された複数の画像に基づいて、車輪A1(保守点検対象A)の形状を3次元的に見ることが可能な状態で表示するようになっている。
なお、3次元的に見ることが可能な状態で表示するという場合、以下で説明する、左右の複眼からの視差を反映して3次元の空間認識を提供する表示方法(例えば、アップディスプレイ等によるバーチャルリアリティ表示)のほか、視差をもうけずに単眼の視点のみからの表示方法(いわゆる複数のディスプレイによるパノラマ表示)も含む。
【0022】
本実施形態では、表示装置4は、
図3に示すように、ユーザである整備士α等の頭部に装着され、バーチャルリアリティ画像(以下、VR画像という。)を表示するヘッドセット41と、ヘッドセット41の移動と向きを検出するセンサ42と、センサ42が検出したヘッドセット41の移動と向きに応じて、航空機10から送信されてきた保守点検対象Aの複数の画像に基づいて保守点検対象AのVR画像を生成する生成部43と、を備えている。
なお、ヘッドセット41内に生成部43を組み込むなどして一体的に形成することも可能である。
【0023】
次に、本実施形態に係る機体の保守点検システム1の作用について説明する。
本実施形態では、機体の保守点検システム1は上記のように構成されているため、空港20に配置されている表示装置4の生成部43は、飛行中の航空機10から、複数の撮影装置2が撮影した、機体内に格納されている車輪A1(保守点検対象A)の複数の画像が送信されてくると、それらに基づいて車輪A1のVR画像を生成する。
【0024】
そして、ユーザである整備士等が空港20の待機所等で表示装置4のヘッドセット41を頭部に装着すると、表示装置4の生成部43は、センサ42が検出したヘッドセット41の向きに応じて、複数の画像に基づいて、整備士等が顔を向けている方向に見えるべき車輪A1のVR画像を生成する。ヘッドセット41はそのVR画像(すなわち車輪A1(保守点検対象A)を3次元的に見ることが可能な画像)を整備士等に表示する。
そして、表示装置4は、この処理を繰り返し行う。
【0025】
そのため、整備士等が顔の向きを変えると、センサ42が検出したヘッドセット41の移動や向きの変化に応じて、生成部43がその移動や向きの変化に応じた車輪A1のVR画像を生成するため、ヘッドセット41が表示するバーチャルリアリティ画像が変化する。
このようにして、整備士等は、空港20にいるにもかかわらず、あたかも飛行中の航空機10に搭乗して目の前にある格納された車輪A1を目視しているように車輪A1のVR画像を見ることができる。
【0026】
このように、本実施形態に係る機体の保守点検システム1では、空港20にいる整備士等が、航空機10の飛行中に、VR画像(保守点検対象Aを3次元的に見ることが可能な画像)を見て、航空機10の機体内に格納されている車輪等の保守点検対象Aを目視して点検することが可能となる。
すなわち、上記の例では、地上(空港20)にいる整備士等が、まだ航空機10が飛行している間に、タイヤやブレーキに損傷があるか等を目視で点検することが可能となる。
【0027】
また、整備士等がVR画像(保守点検対象Aを3次元的に見ることが可能な画像)を見て、保守点検対象Aに不具合があれば、航空機10の着陸前に、その不具合の状況を把握したり修復等の要否の判断を行うことが可能となる。また、不具合を修復する場合には、航空機10が着陸する前に、それを修復するための道具等を準備しておくことが可能となる。
このように、本実施形態に係る機体の保守点検システム1では、航空機10が着陸する前に、保守点検対象Aの目視による点検作業や不具合箇所の修復等の準備を行っておくことが可能となる。そのため、航空機10の着陸後に、当該航空機10の機体に対する運航整備(飛行間点検や飛行後点検など)を速やかに効率よく行うことが可能となる。
【0028】
以上のように、本実施形態に係る機体の保守点検システム1によれば、航空機10がまだ飛行している間に保守点検対象Aの目視や点検作業を行うことが可能となり、不具合があれば航空機10の飛行中に早期に発見することが可能となるため、航空機10の着陸後に、当該航空機10の機体に対する運航整備を速やかに効率よく行うことが可能となる。
そのため、航空機10の出発に遅延が生じることの発生確率を低下させることが可能となり、航空機10の機体の運用率を維持、向上させることが可能となる。
【0029】
[発明の拡張]
[発明の目的・効果について]
なお、本実施形態に係る機体の保守点検システム1では、整備士等だけでなく保守点検対象Aや航空機10の製造メーカの社員等も航空機10の飛行中の保守点検対象Aの状態をVR画像(保守点検対象Aを3次元的に見ることが可能な画像)で視認することができる。
そのため、保守点検対象Aや航空機10の製造メーカの社員等がVR画像を見ることで、保守点検対象Aや航空機10の品質の向上等を図ることが可能となるほか、例えば、保守点検対象Aに不具合や異常が発生した場合に製造メーカの社員等が整備士等に助言したり、航空機10の乗務員に対して搭乗者への対処のアドバイスを行ったり乗務員の判断の支援等を行うことも可能となる。
【0030】
また、例えば、本実施形態に係る機体の保守点検システム1を整備士等の地上作業者の教育に用いれば、航空機10が飛行中の保守点検対象Aの状態をVR画像(保守点検対象Aを3次元的に見ることが可能な画像)で見ることができるため、地上作業者が直観的に保守点検対象Aの状態を学習することが可能となる。
そのため、地上作業者の保守点検対象Aに対する理解が促進され、教育期間を短縮することが可能となるとともに、地上作業者は実際に業務を開始する際に違和感や戸惑いを覚えることなくスムーズに作業を進めることが可能となる。
【0031】
[対象について]
また、上記の実施形態では、保守点検対象Aが機体内に格納された車輪A1である場合を例示して説明したが、保守点検対象Aは車輪に限定されず、エンジン等の、運航整備の対象となる部品を保守点検対象Aとすることも可能である。
また、航空機10に対する整備としては、上記の運航整備のほかにドック整備やショップ整備(工場整備等ともいう。)等があるが、そのような整備の対象を保守点検対象Aとすることも可能である。
【0032】
例えば、保守点検対象Aが燃料タンクである場合、
図4に示すように、燃料タンクA2の内部に複数の撮影装置2や照明装置21を配置して、燃料タンクA2の内部を撮影するように構成することが可能である。撮影装置2等を燃料タンクA2の外側に配置して外側を撮影するように構成してもよい。
このように構成すれば、燃料タンクA2を分解しなくても、燃料タンクA2の点検等を行うことが可能となる。このように、本実施形態に係る機体の保守点検システム1を採用すれば、部品の密封構造やシール構造を破壊することなく保守点検対象Aの保守点検を行うことが可能となる。
【0033】
一方、本実施形態に係る機体の保守点検システム1のこのような特徴を活用すると、以下のような有益な効果が得られる。
すなわち、航空機10の部品のうち点検をする必要がない部品については、壊れないように保護設計を行ったり壊れた時のための冗長性確保のために部品点数が増える傾向がある。しかし、上記のようにそれらの部品に本実施形態に係る機体の保守点検システム1を適用すれば、当該部品が壊れたか否かを常時点検することができ、壊れた時には交換すればよくなるため、保護設計を簡素化することが可能となり、冗長性の確保が不要になる。
【0034】
そのため、それらの部品に本実施形態に係る機体の保守点検システム1を適用することで、無駄に部品点数が増えることを抑制することが可能となり、より安価な部品を使うことが可能となるため、航空機10の価格の高騰を抑制し、航空機10の重量の軽減を図ることが可能となる。
【0035】
[異常振動検出や動体検出について]
一方、例えば、エンジンに不具合が生じると、エンジンに異常な振動が生じる場合がある。
また、機体内に固定されているべき部品の固定が外れたり、あるいはケーブルが断線するなどしていると、機体内で移動したり揺れたりしないはずのものが移動したり揺れたりする場合がある。
【0036】
このように、保守点検対象Aに異常な振動が検出されたり動かないはずの保守点検対象Aの動きが検出される状況は、何らかの異常が発生していることを意味している場合が少なくない。
そこで、本実施形態に係る機体の保守点検システム1の撮影装置2で撮影された画像を用いて、保守点検対象Aの異常振動検出や動体検出を行うように構成することが可能である。
【0037】
この場合、撮影装置2が静止画を撮影する装置であっても異常振動検出や動体検出を行うように構成することが可能であるが、撮影装置2が動画を撮影する装置であれば、それで保守点検対象Aの動画を撮影することで容易に保守点検対象Aの異常振動検出や動体検出を行うように構成することができる。
また、画像として、上記のように表示装置4の生成部43で生成したVR画像を用いるように構成することも可能であるが、個々の撮影装置2で撮影された画像(VR画像に合成される前の生画像)を用いるように構成することも可能である。
【0038】
そして、画像解析装置で、保守点検対象Aが撮影された画像を解析して当該保守点検対象Aの異常振動検出や動体検出(それらの一方だけでもよく両方の検出を行ってもよい。)を行うように構成することが可能である。
表示装置4の生成部43を画像解析装置としても機能するように構成することも可能であり、生成部43とは別に画像解析装置を設けてもよい。また、画像解析装置は、異常振動や動体を検出した場合には、例えばヘッドセット41の画面上や画像解析装置自体の表示画面等にその旨を表示したり、音声等でその旨を通知したりするように構成することが可能である。
【0039】
このように、画像解析装置で保守点検対象Aの異常振動検出や動体検出を行うように構成すれば、保守点検対象Aの異常な振動や、動かないはずの保守点検対象Aの動きを検出して、保守点検対象Aに何らかの異常が発生していることを的確に検出することが可能となる。また、それを、航空機10がまだ飛行している間に検出することが可能となる。
そのため、運航整備やドック整備、ショップ整備で、当該保守点検対象Aに生じている異常に対して速やかに適切に対処することが可能となり、この点でも航空機10の機体の運用率を適切に維持、向上させることが可能となる。
【0040】
なお、例えば、保守点検対象Aに異常な振動が生じている場合、保守点検対象Aとともに撮影装置2も振動してしまい、画像解析装置による解析で異常振動を適切に検出することが困難になる場合があり得る。
そこで、このような場合には、例えば、保守点検対象Aの振動に起因して揺動する棒状、線状(糸状)、面状等の部材を保守点検対象Aの近傍に配置し、撮影装置2で保守点検対象Aを撮影する際にその部材も撮影するように構成し、画像解析装置でその部材の揺動の様子を解析して保守点検対象Aに異常振動が生じているか否かを検出するように構成することが可能である。
【0041】
このように構成すれば、保守点検対象Aに異常振動が生じている場合に、画像解析装置がその異常振動を適切に検出することが可能となる。
なお、本発明が上記の実施形態等に限定されず、本発明の趣旨を逸脱しない限り、適宜変更可能であることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0042】
1 機体の保守点検システム
2 撮影装置
3 伝送装置
4 表示装置
10 航空機
41 ヘッドセット
42 センサ
43 生成部(生成部、画像解析装置)
A 保守点検対象
A1 車輪(保守点検対象)
A2 燃料タンク(保守点検対象)
α 整備士(ユーザ)