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特許7652715集積光学装置、集積光学モジュール及び集積光学装置の製造方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-03-18
(45)【発行日】2025-03-27
(54)【発明の名称】集積光学装置、集積光学モジュール及び集積光学装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
   G02B 6/12 20060101AFI20250319BHJP
   G02B 6/42 20060101ALI20250319BHJP
   H01S 5/02355 20210101ALI20250319BHJP
   H01S 5/0225 20210101ALI20250319BHJP
【FI】
G02B6/12 301
G02B6/42
H01S5/02355
H01S5/0225
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2021573029
(86)(22)【出願日】2020-12-23
(86)【国際出願番号】 JP2020048263
(87)【国際公開番号】W WO2021149450
(87)【国際公開日】2021-07-29
【審査請求日】2023-09-28
(31)【優先権主張番号】P 2020007205
(32)【優先日】2020-01-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2020056032
(32)【優先日】2020-03-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003067
【氏名又は名称】TDK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100141139
【弁理士】
【氏名又は名称】及川 周
(74)【代理人】
【識別番号】100163496
【弁理士】
【氏名又は名称】荒 則彦
(74)【代理人】
【識別番号】100169694
【弁理士】
【氏名又は名称】荻野 彰広
(74)【代理人】
【識別番号】100114937
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 裕幸
(72)【発明者】
【氏名】福▲崎▼ 亮平
(72)【発明者】
【氏名】新海 正博
【審査官】奥村 政人
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2011/0242697(US,A1)
【文献】特開2002-323629(JP,A)
【文献】特開2000-284135(JP,A)
【文献】特開平11-194224(JP,A)
【文献】国際公開第2015/170505(WO,A1)
【文献】特開2010-109132(JP,A)
【文献】国際公開第2020/196489(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 6/12- 6/14
G02B 6/26- 6/27
G02B 6/30- 6/34
G02B 6/42- 6/43
H01S 5/00- 5/50
B23K 26/00-26/70
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基台と、
前記基台の表面に設けられた光半導体素子と、
基板と、
前記基板の表面に設けられた光導波路と、
を備え、
前記光導波路の入射面が前記光半導体素子の出射面と対向するように配置され、
前記光半導体素子から出射される光が前記光導波路に入射可能であり、
前記光半導体素子は、金属層を介して前記基台と接続されており、
前記基台は、他の金属層を介して前記基板と接続されており、
前記基台の表面とは反対側の基台底面と、前記基板の表面とは反対側の基板底面とは、略同一平面上に設けられており、
前記基台は、第1乃至第3の外面を有する略直方体であり、
前記第1の外面は前記基台の上面であり、
前記第2の外面は、前記基台の第1側面であり、
前記第3の外面は、前記第1側面と向かい合う第2側面と、前記第1及び第2側面の各々と隣接し互いに対向する第3及び第4側面と、前記上面と向かい合う前記基台底面と、を含み、
前記光半導体素子は、前記基台の前記第1の外面に実装され、
前記光半導体素子は前記光導波路と光結合するように配置され、
前記基台の前記第2の外面は金属層を介して前記基板の側面に接続され、
前記基台の前記第3の外面の少なくとも一部は、粗面化領域を有し、
前記粗面化領域は、前記第1側面と前記第2側面との中間位置よりも前記第1側面寄りの前部領域に設けられている、集積光学装置。
【請求項2】
前記粗面化領域の表面粗さは前記第1及び第2の外面の表面粗さよりも大きい、請求項1に記載の集積光学装置。
【請求項3】
前記粗面化領域の最大断面高さ(Rt)が5μm以上50μm以下である、請求項1又は2に記載の集積光学装置。
【請求項4】
前記基台底面は、前記粗面化領域が設けられていない平滑面である、請求項1~3のいずれか一項に記載の集積光学装置。
【請求項5】
前記粗面化領域は、前記第3及び第4側面の全面に設けられている、請求項1~4のいずれか一項に記載の集積光学装置。
【請求項6】
前記粗面化領域は、前記第1側面と前記第2側面との中間位置よりも前記第1側面寄りの前部領域に設けられている、請求項1~5のいずれか一項に記載の集積光学装置。
【請求項7】
前記光半導体素子を2つ以上有する、請求項1~6のいずれか一項に記載の集積光学装置。
【請求項8】
前記光半導体素子は、赤色光を出力する第1光半導体素子と、緑色光を出力する第2光半導体素子と、青色光を出力する第3光半導体素子を有する、請求項1~7のいずれか一項に記載の集積光学装置。
【請求項9】
前記光半導体素子と前記光導波路との間に反射防止膜が設けられている、請求項1~8のいずれか一項に記載の集積光学装置。
【請求項10】
前記光半導体素子を複数備え、
複数の前記光半導体素子は互いに異なる波長を有する光を発し、
前記光導波路には複数の前記光半導体素子が発する光のそれぞれが入射可能なコアが設けられ、
複数の前記コアは前記光導波路の出射面に到達する手前側で互いに1つに集められている、請求項1~9のいずれか一項に記載の集積光学装置。
【請求項11】
請求項1~10のいずれか一項に記載の集積光学装置と、前記集積光学装置を収容するパッケージとを有し、前記集積光学装置は、前記基台底面および前記基板底面が共に、金属または樹脂を含む接合層を介して前記パッケージの一内面に固定されている、集積光学モジュール。
【請求項12】
前記接合層は、樹脂にフィラーを混合した材料からなる、請求項11に記載の集積光学モジュール。
【請求項13】
前記接合層の熱伝導率が4W/m・K以上である、請求項11又は12に記載の集積光学モジュール。
【請求項14】
第1乃至第3の外面を有し、前記第1の外面に光半導体素子が実装され、前記第2の外面に金属接合材料が設けられ、前記第3の外面の少なくとも一部に粗面化領域が形成された基台を用意し、
前記基台は、第1乃至第3の外面を有する略直方体であり、
前記第1の外面は前記基台の上面であり、
前記第2の外面は、前記基台の第1側面であり、
前記第3の外面は、前記第1側面と向かい合う第2側面と、前記第1及び第2側面の各々と隣接し互いに対向する第3及び第4側面と、前記上面と向かい合う前記基台底面と、を含み、
前記光半導体素子は、前記基台の前記第1の外面に実装され、
前記光半導体素子は光導波路と光結合するように配置され、
前記基台の前記第2の外面は金属層を介して基板の側面に接続され、
前記基台の前記第3の外面の少なくとも一部は、粗面化領域を有し、
前記粗面化領域は、前記第1側面と前記第2側面との中間位置よりも前記第1側面寄りの前部領域に設けられた集積光学装置の製造方法であって、
前記光導波路が設けられた前記基板の側面に前記基台の前記第2の外面を当接させた状態で前記粗面化領域にレーザー光を照射して前記基台と共に前記金属接合材料を加熱しながら、前記光導波路と光結合するように前記光半導体素子の位置を調整し、
前記レーザー光の照射を停止することにより前記基台を冷却して前記基台と前記基板とを金属接合することにより、前記光半導体素子を固定することを特徴とする集積光学装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、集積光学装置、これを用いた集積光学モジュール、及び集積光学装置の製造方法に関する。
本願は、2020年1月21日に、日本に出願された特願2020-007205号、および2020年3月26日に日本に出願された特願2020-056032号に基づき優先権を主張し、その内容をここに援用する。
【背景技術】
【0002】
データトラフィックの増加に伴い、光通信システムやそれらを活用した身の回りの様々な光デバイスの多機能化が進んでいる。最近では多機能化と共に高密度化が求められ、多機能且つ小型な光デバイスが検討されている。
【0003】
光通信システムにおいては、シリコンフォトニクスの技術検討が進められている。これは、シリコン導波路へ発光素子や受光素子などを集積させるものである。
また身の回りもウェアラブルデバイスや小型プロジェクタなど、多機能かつ持ち歩きが可能なデバイスのために、小型な光モジュールが求められている。
【0004】
従来、複数の光学素子を1つに集積化するために、ミラー及びレンズが用いられている。例えば、特許文献1には、筐体内にレーザーダイオード(Laser Diode:LD)、光学レンズ、全反射用波長フィルタ、波長分離用フィルタ、ファイバコリメータ、フォトダイオードが集積された光モジュールが開示されている。
【0005】
こうした特許文献1の光モジュールでは、LDから発せられた波長1.3μmの光が集光レンズ、キャピラリ、コリメータレンズを経て全反射用波長フィルタを通り、波長分離用フィルタで全反射し、ファイバコリメータで受光される。ファイバコリメータから入力された波長1.49μm,1.55μmの光は、波長分離用フィルタを通過してから、全反射用波長分離用フィルタにより互いに分離される。分離された後の波長1.55μmの光は、全反射用波長フィルタにより折り返され、結合レンズによりフォトダイオードに入射する。分離された後の波長1.49μmの光は、結合レンズによりフォトダイオードに入射する。
【0006】
また、特許文献2には、透明基板の表面及び裏面に波長選択フィルタ及びミラーが搭載された波長合分波器に、波長選択フィルタ及びミラーの配置に合わせて所定の波長を有する光を複数入射させ、波長合分波器で合波可能な光送受信モジュールが開示されている。
【0007】
特許文献1,2のようにミラーやレンズを用いた集積化とは別の構造として、例えば特許文献3、4には導波路構造を備えた光デバイスが開示されている。特許文献3に開示されている合波器では、任意のN本の薄いクラッドを持つファイバ素線がチップ型板に固定され、複数のファイバ素線の出射端が互いに束ねられている。特許文献4には、半導体導波路を有して第1の基板上に搭載された半導体チップと、PLCチップとを一体化したハイブリッド集積光モジュールが開示されている。
【0008】
特許文献4のハイブリッド集積光モジュールでは、半導体チップにおいてPLCチップに対向する端面とPLCチップにおいて半導体チップに対向する端面とはギャップをあけて互いに離間している。また、半導体チップとPLCチップとは、紫外線硬化接着剤で接着されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】特開2005-309370号公報
【文献】特開2009-105106号公報
【文献】特開2016-118750号公報
【文献】特開2011-102819号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、上述の特許文献1、2に開示されている光デバイスの部品数は多く、個々の部品の大きさがあり、ミラーやレンズを用いて自由空間光学系で構成されている。個々の部品の大きさや自由空間光学系での構成を考慮すると、特許文献1、2に開示されている光デバイスの小型化には限界がある。これに対して、特許文献3、4に開示されているように導波路を用いた集積光学装置では、自由空間光学系に比べると小型化を図りやすい。
【0011】
しかしながら、特許文献4に記載されているハイブリッド集積光モジュール1では、半導体チップ2とPLCチップ3、およびSiベンチ5とPLC基板6が、紫外線硬化接着剤8でそれぞれ接着されている(図1、段落0025等)。そのため、光源のワイヤーボンディングの工程等による温度変化による紫外線硬化接着剤の膨張・収縮が生じ、互いに接着されていた部品同士の調芯精度が低下し、集積光学装置の信頼性が低下する虞があった。また、LD等の光半導体素子を作動させるためには電気を導通する必要があり、ワイヤーボンディング等の方法を用いて光半導体素子を基板上の電源に接続する必要がある。しかし、光半導体素子を光導波路に固定する強度が十分でないと、ワイヤーボンディングする際に、光半導体素子が光導波路から滑落する虞があった。
また、半導体チップ2及びPLCチップ3で発生した熱は主に、それらチップが搭載されるパッケージを通して放熱されるが、紫外線硬化接着剤の膨張・収縮によって半導体チップ2及びPLCチップ3の少なくとも一方はパッケージからの離間が大きくなってしまい、放熱が十分でなく、温度依存性があるレーザー光の発光では、安定したレーザー光の出力が得られないという課題があった。
【0012】
本発明は、このような事情を考慮してなされたものであり、レーザー発光の温度依存性が抑制され、構成部品のパッケージへの接合強度が向上した集積光学装置、およびこれを用いた集積光学モジュールを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の第1態様に係る集積光学装置は、基台と、前記基台の表面に設けられた光半導体素子と、基板と、前記基板の表面に設けられた光導波路と、を備え、前記光導波路の入射面が前記光半導体素子の出射面と対向するように配置され、前記光半導体素子から出射される光が前記光導波路に入射可能であり、前記光半導体素子は、金属層を介して前記基台と接続されており、前記基台は、他の金属層を介して前記基板と接続されており、前記基台の表面とは反対側の基台底面と、前記基板の表面とは反対側の基板底面とは、略同一平面上に設けられている。
【0014】
上記態様に係る集積光学装置は、前記光半導体素子と前記光導波路との間に反射防止膜が設けられていてもよい。
【0015】
上記態様に係る集積光学装置は、前記光半導体素子を複数備え、複数の前記光半導体素子は互いに異なる波長を有する光を発し、前記光導波路には複数の前記光半導体素子が発する光のそれぞれが入射可能なコアが設けられ、複数の前記コアは前記光導波路の出射面に到達する手前側で互いに1つに集められていてもよい。
【0016】
上記態様に係る集積光学装置において、前記基台は、第1乃至第3の外面を有し、
前記第1の外面は前記基台の表面であり、前記光半導体素子は前記基台の前記第1の外面に実装され、前記半導体素子は、前記光導波路と光結合するように配置され、前記基台の前記第2の外面は金属層を介して前記基板の側面に接続され、前記基台の前記第3の外面の少なくとも一部は、粗面化領域を有していてもよい。
【0017】
上記態様に係る集積光学装置において、前記粗面化領域の表面粗さは前記第1及び第2の外面の表面粗さよりも大きくてもよい。
【0018】
上記態様に係る集積光学装置において、前記粗面化領域の最大断面高さ(Rt)が5μm以上50μm以下や5μm以上30μm以下であってもよい。
【0019】
上記態様に係る集積光学装置において、前記基台は略直方体であり、前記第2の外面は、前記基台の第1側面であり、前記第3の外面は、前記第1側面と向かい合う第2側面と、前記第1及び第2側面の各々と隣接し互いに対向する第3及び第4側面と、前記上面と向かい合う前記基台底面を含んでいてもよい。
【0020】
上記態様に係る集積光学装置において、前記粗面化領域は、前記第3及び第4側面に設けられており、前記第2側面及び前記基台底面は、前記粗面化領域が設けられていない平滑面であってもよい。
【0021】
上記態様に係る集積光学装置において、前記粗面化領域は、前記第3及び第4側面の全面に設けられていてもよい。
【0022】
上記態様に係る集積光学装置において、前記粗面化領域は、前記第1側面と前記第2側面との中間位置よりも前記第1側面寄りの前部領域に設けられていてもよい。
【0023】
上記態様に係る集積光学装置において、前記粗面化領域は、前記上面と前記基台底面との中間位置よりも前記基台底面寄りの下部領域に設けられていてもよい。
【0024】
上記態様に係る集積光学装置において、前記光半導体素子を2つ以上有していてもよい。
【0025】
上記態様に係る集積光学装置において、前記光半導体素子は、赤色光を出力する第1光半導体素子と、緑色光を出力する第2光半導体素子と、青色光を出力する第3光半導体素子を有していてもよい。
【0026】
本発明の第2の態様に係る集積光学モジュールは、前記各項に記載の集積光学装置と、該集積光学装置を収容するパッケージとを有し、前記集積光学装置は、前記基台底面および前記基板底面が共に、金属または樹脂を含む接合層を介して前記パッケージの一内面に固定されている。
【0027】
上記態様に係る集積光学モジュールにおいて、前記接合層は、樹脂にフィラーを混合した材料からなっていてもよい。
【0028】
上記態様に係る集積光学モジュールにおいて、前記接合層の熱伝導率が4W/m・K以上であってもよい。
【0029】
本発明の第3の態様に係る集積光学装置の製造方法は、第1乃至第3の外面を有し、前記第1の外面に光半導体素子が実装され、前記第2の外面に金属接合材料が設けられ、前記第3の外面の少なくとも一部に粗面化領域が形成された基台を用意し、
光導波路が設けられた基板の側面に前記基台の前記第2の外面を当接させた状態で前記粗面化領域にレーザー光を照射して前記基台と共に前記金属接合材料を加熱しながら、前記光導波路と光結合するように前記光半導体素子の位置を調整し、
前記レーザー光の照射を停止することにより前記基台を冷却して前記基台と前記基板とを金属接合することにより、前記光半導体素子を固定する。
【発明の効果】
【0030】
本発明によれば、光半導体素子の動作によって生じる熱を効率的に放熱して、温度変化による動作不安定を引き起こすことが無い集積光学装置、およびこれを用いた集積光学モジュールを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1】本発明の第一実施形態の集積光学装置の斜視図である。
図2】第1実施形態の集積光学装置のPLCの入射面の断面図である。
図3】第1実施形態の集積光学装置の一部の平面図である。
図4】第1実施形態の集積光学装置においてA-A´線で矢視した断面図である。
図5】第1実施形態の集積光学装置の製造方法の一例を説明するための断面図である。
図6】第1実施形態の集積光学装置がパッケージされた集積光学モジュールの平面図である。
図7】集積光学モジュールの側面図である。
図8】集積光学モジュールのカバーを外した状態の平面図である。
図9】集積光学モジュールの出射部側から見た側面図である。
図10】集積光学モジュールの使用時の一形態を示す斜視図である。
図11】第2実施形態の集積光学装置の斜視図である。
図12】第2実施形態の集積光学装置のPLCの入射面の断面図である。
図13】第2実施形態の集積光学装置の一部の平面図である。
図14】第2実施形態の集積光学装置においてB-B´線で矢視した断面図である。
図15】サブキャリアの各面の表面粗さについて説明するための図である。
図16】第2実施形態の集積光学装置の製造方法の一例を説明するための断面図である。
図17】第2実施形態の集積光学装置の製造方法を説明するための平面図である。
図18】第2実施形態の集積光学装置のLDの出射面とPLCの入射面との間隔と光利用効率との関係を示すグラフである。
図19】第2実施形態の集積光学装置のLDがワイヤーボンディングされた状態を示す平面図である。
図20】サブキャリアの構成の変形例を示す展開図である。
図21】サブキャリアの構成の変形例を示す展開図である。
図22】第3実施形態の集積光学装置の断面図である。
図23】第3実施形態の集積光学装置がパッケージされた集積光学モジュールの構造の一例を透過的に示す略斜視図である。
図24】本発明の検証例を示す熱分布図である。
図25】本発明の検証例を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、本発明を適用した一実施形態について図面を参照して説明する。なお、以下に示す実施形態は、発明の趣旨をより良く理解させるために具体的に説明するものであり、特に指定のない限り、本発明を限定するものではない。また、以下の説明で用いる図面は、本発明の特徴をわかりやすくするために、便宜上、要部となる部分を拡大して示している場合があり、各構成要素の寸法比率などが実際と同じであるとは限らない。すなわち、以下の説明において例示される材料、寸法等は一例であって、本発明はそれらに限定されるものではなく、本発明の効果を奏する範囲で適宜変更して実施することが可能である。
【0033】
「第1実施形態」
(集積光学装置)
図1に示すように、本実施形態の集積光学装置10は、サブキャリア(基台)20と、サブキャリア20の上面(表面)21に設けられたLD(光半導体素子)30と、基板40と、基板40の上面(表面)41に設けられたPLC(光導波路)50と、を備えている。
【0034】
集積光学装置10は、光の3原色である赤(R)、緑(G)、青(B)のそれぞれの色の光を合わせる合波器である。集積光学装置10は、例えばヘッドマウントディスプレイに搭載される合波器として適用可能である。使用する光源であるLD(光半導体素子)30は、赤(R)、緑(G)、青(B)とは限らず、本実施形態において、例示として示した光の3原色のLD(光半導体素子)30は、市販の赤色光、緑色光、青色光等の各種レーザー素子が使用可能である。適宜、所望の用途により選択すればよく、例えば、赤色光は、ピーク波長が610nm以上750nm以下である光が使用可能であり、緑色光は、ピーク波長が500nm以上560nm以下である光が使用可能であり、青色光は、ピーク波長が435nm以上480nm以下である光が使用可能である。
【0035】
集積光学装置10は、赤色光を発するLD30-1、緑色光を発するLD30-2、及び青色光を発するLD30-3を備える。LD30-1,30-2,30-3は、それぞれのLDから発せられる光の出射方向に略直交する方向において互いに間隔をあけて配置され、個別のサブキャリア20の上面21に設けられている。LD30-1は、サブキャリア20-1の上面21-1に設けられている。LD30-2は、サブキャリア20-2の上面21-2に設けられている。LD30-3は、サブキャリア20-3の上面21-3に設けられている。以下では、集積光学装置10の任意の構成要素の符号Zについて、符号Z-1,Z-2,…,Z-Kの構成要素に共通する内容については、これらをまとめて符号Zと記載する場合がある。前述のKは2以上の自然数である。
なお、言うまでもないが、本実施形態として示した赤(R)、緑(G)、青(B)以外の光も使用可能であり、図面を用いて説明した赤(R)、緑(G)、青(B)の搭載順についても、この順である必要性はなく適宜変更可能である。
【0036】
LD30は、ベアチップでサブキャリア20に実装されている。サブキャリア20は、例えば窒化アルミニウム(AlN)や、酸化アルミニウム(Al)、シリコン(Si)、等で構成されている。図4に示すように、サブキャリア20とLD30との間には、金属層75,76が設けられている。サブキャリア20とLD30とは、金属層75,76を介して接続されている。金属層75,76を形成する方法としては、公知の方法が利用可能で特に問わないが、スパッタ、蒸着、ペースト化した金属の塗布等の公知手法が利用可能である。金属層75,76は、例えば金(Au)、白金(Pt)、銀(Ag)、鉛(Pb)、インジウム(In)、ニッケル(Ni)、チタン(Ti)及びタンタル(Ta)、タングステン(W)、金(Au)とスズ(Sn)の合金、スズ(Sn)-銀(Ag)-銅(Cu)系はんだ合金(SAC)、SnCu、InBi、SnPdAg、SnBiIn及びPbBiInからなる群から選択される1又は複数の金属を含み、この群から選択される1又は複数の金属で構成されていてもよい。
【0037】
基板40は、シリコン(Si)で構成されている。PLC50は、集積回路等の微細な構造を形成する際に用いられる公知のフォトリソグラフィやドライエッチングを含む半導体プロセスによって、上面41に、基板40と一体になるように作製されている。図1及び図2に示すように、PLC50には、光導波路を構成するLD30-1,30-2,30-3と同数のコア51-1,51-2,51-3と、コア51-1,51-2,51-3を囲むクラッド52が設けられている。クラッド52の厚みと、コア51-1,51-2,51-3の幅方向寸法は、特に制限されない。例えば、50μm程度の厚みを有するクラッド52中に、数ミクロン程度の幅方向寸法を有するコア51-1,51-2,51-3が配設されている。
【0038】
コア51-1,51-2,51-3及びクラッド52は、例えば石英で構成されている。コア51-1,51-2,51-3の屈折率は、クラッド52の屈折率より所定値だけ高くなっている。このことによって、コア51-1,51-2,51-3の各々に入射した光が、各コアとクラッド52との界面で全反射しながら、各コアを伝搬する。コア51-1,51-2,51-3には、例えばゲルマニウム(Ge)等の不純物が前述の所定値に応じた量でドープされている。
【0039】
以下、LD30から発せられる光の出射方向をy方向とする。y方向を含む面内でy方向に直交し、且つLD30-1,30-2,30-3が互いに間隔をあけて配置されている方向をx方向とする。x方向及びy方向に直交し、且つサブキャリア20からLD30に向かう方向をz方向とする。PLC50の入射面61では、コア51-1,51-2,51-3は、x方向及びz方向に関してLD30-1,30-2,30-3から発せられる光の光軸に合わせて配置されている。
【0040】
図1及び図4に示すように、コア51-1,51-2,51-3は、PLC50の出射面64に到達する手前側で互いに1つに集められている。即ち、コア51-1,51-2,51-3は、y方向の前方に向かうにしたがって順次互いに近づき、1つのコア51-4に合流する。コア51-1,51-2,51-3からの漏れ光が生じないように、コア51-1,51-2,51-3はそれぞれ、所定の曲率半径以上の曲率半径でコア51-4に接続されるのが好ましい。
【0041】
図3に示すように、PLC50の入射面61がLD30の出射面31と対向するように配置されている。詳細には、LD30-1の出射面31-1がコア51-1の入射面61-1と対向している。x方向及びz方向において、LD30-1から発せられる赤色光の光軸と入射面61-1の中心とが略重なっている。同様に、LD30-2の出射面31-2がコア51-2の入射面61-2と対向している。x方向及びz方向において、LD30-2から発せられる緑色光の光軸と入射面61-2の中心とが略重なっている。LD30-3の出射面31-3がコア51-3の入射面61-3と対向している。x方向及びz方向において、LD30-3から発せられる青色光の光軸と入射面61-3の中心とが略重なっている。このような構成及び配置によって、LD30-1,30-2,30-3から発せられる赤色光、緑色光、青色光の少なくとも一部は、コア51-1,51-2,51-3に入射可能である。
【0042】
図1に示すように、LD30-1,30-2,30-3から発せられる赤色光、緑色光、青色光は、コア51-1,51-2,51-3にそれぞれ入射した後、各コアを伝搬する。コア51-1,51-2及びこれらのコアを伝搬する赤色光及び緑色光は、合流位置57-2よりy方向の後方の所定の合流位置57-1(図3参照)で合わさる。コア51-1,51-2同士が合流したコア51-7(図3参照)とコア51-3及びこれらのコアを伝搬する赤色光、緑色光及び青色光は、合流位置57-2で合わさる。合流位置57-2で集光された赤色光、緑色光及び青色光は、コア51-4を伝搬し、出射面64に到達する。出射面64から出射される3色光は、例えば集積光学装置10の使用目的に応じて信号光等として用いられる。
【0043】
図4に示すように、サブキャリア20は、第1金属層71,第2金属層72,第3金属層73を介して基板40と接続されている。本実施形態では、サブキャリア20において基板40に対向する側面(第1側面)22(22-1、22-2、22-3)と基板40においてサブキャリア20に対向する側面(第2側面)42とは、第1金属層71、第2金属層72、第3金属層73、反射防止膜81を介して接続されている。金属層75の融点は、第3金属層73の融点よりも高い。
【0044】
第1金属層71は、スパッタ又は蒸着等によって側面22に当接した状態で設けられ、例えば金(Au)、白金(Pt)、銀(Ag)、鉛(Pb)、インジウム(In)、ニッケル(Ni)、チタン(Ti)及びタンタル(Ta)からなる群から選択される1又は複数の金属を含み、この群から選択される1又は複数の金属で構成されていてもよい。好ましくは、第1金属層71が、金(Au)、白金(Pt)、銀(Ag)、鉛(Pb)、インジウム(In)、ニッケル(Ni)からなる群から選択される少なくとも1つの金属を含む。第2金属層72は、スパッタ又は蒸着等によって側面42に当接した状態で設けられ、例えばチタン(Ti)、タンタル(Ta)及びタングステン(W)からなる群から選択される1又は複数の金属を含み、この群から選択される1又は複数の金属で構成されていてもよい。好ましくは、第2金属層72に、タンタル(Ta)が用いられる。第3金属層73は、第1金属層71と第2金属層72との間に介在し、例えばアルミニウム(Al)、銅(Cu)、AuSn、SnCu、InBi、SnAgCu、SnPdAg、SnBiIn及びPbBiInからなる群から選択される1又は複数の金属を含み、この群から選択される1又は複数の金属で構成されていてもよい。好ましくは、第3金属層73に、AuSn、SnAgCu、SnBiInが用いられる。
【0045】
第1金属層71の厚み、即ち第1金属層71のy方向の大きさは、例えば0.01μm以上5.00μm以下である。第2金属層72の厚み、即ち第2金属層72のy方向の大きさは、例えば0.01μm以上1.00μm以下である。第3金属層73の厚み、即ちy方向の大きさは、例えば0.01μm以上5.00μm以下である。また、第3金属層73の厚みは、第1金属層71及び第2金属層72の各厚みより大きいことが好ましい。このような構成では、第1金属層71、第2金属層72、第3金属層73の前述の各役割が良好に発現され、基板40に対する第1金属層71の材料の進入及び各金属層同士の接着強度の低下が抑えられる。第1金属層71、第2金属層72および第3金属層73の厚みは、例えば分光エリプソメトリにより測定される。
【0046】
本実施形態では、第1金属層71は、金属層75に接触しない状態で、側面22の略全域において基板40又はPLC50に対向する側面に設けられている。第2金属層72及び第3金属層73のz方向の前端、即ち上端は、例えばz方向の前側では第1金属層71の上端と同じ位置に達している。第2金属層72及び第3金属層73のz方向の後端、即ち下端は、例えばサブキャリア20,第1金属層71及び基板40の下端と同じ位置に達している。y方向に沿って見たとき、x方向において第1金属層71はサブキャリア20より大きく形成されている。
【0047】
前述の構成のように、第1金属層71の面積、即ちx方向及びz方向を含む面内の大きさは、第2金属層72及び第3金属層73の面積と略同じであり、かつその下端がサブキャリア20の下端と同じ位置に達していることが好ましい。このような構成では、基板40に対するサブキャリア20の接続強度が最大限に確保される。すなわち、例えば後述の通りLD30及びサブキャリア20の各々と複数の内部電極パッド202のうち各LD30に対応する内部電極パッド202とを、ワイヤーボンディングを用いてワイヤー95によって接続する場合であっても、サブキャリア20と基板40との接続が解除されることを抑制できる。またサブキャリア20、第1金属層71、第2金属層72、第3金属層73及び基板40の下端が同じ位置に達していることで、サブキャリア20からの放熱パスを増やすことができる。尚、第1金属層71の面積は第2金属層72及び第3金属層73の面積より小さくてもよい。
【0048】
本実施形態に係る集積光学装置10では、LD30とPLC50との間に反射防止膜81が設けられている。例えば、反射防止膜81は、基板40の側面42とPLC50の入射面61とに、一体的に形成されている。但し、反射防止膜81は、PLC50の入射面61のみに形成されていてもよい。
【0049】
集積光学装置10では、入射面61に加えて出射面64にも、反射防止膜82が設けられている。なお、図1では、集積光学装置10の概略構成を示しており、第1金属層71、第2金属層72、第3金属層73及び反射防止膜81,82は省略されている。
【0050】
反射防止膜81,82は、PLC50への入射光又は出射光が入射面61又は出射面64から各面に進入する方向とは逆向きに反射することを防止し、入射光又は出射光の透過率を高めるための膜である。反射防止膜81,82は、例えば複数の種類の誘電体が、入射光である赤色光、緑色光、青色光の波長に応じた所定の厚みで交互に積層されることによって形成される多層膜である。前述の誘電体としては、例えば酸化チタン(TiO)、酸化タンタル(Ta)、酸化シリコン(SiO)、酸化アルミニウム(Al)等が挙げられる。
【0051】
LD30の出射面31とPLC50の入射面61とは、所定の間隔で配置されている。入射面61は出射面31と対向しており、y方向において出射面31と入射面61との間には隙間70がある。集積光学装置10は空気中に露出されているので、隙間70には空気が満ちている。集積光学装置10がヘッドマウントディスプレイに用いられる点及びヘッドマウントディスプレイで求められる光量等をふまえると、隙間(間隔)70のy方向の大きさは、例えば0μmより大きく、5μm以下である。
【0052】
図4に示すように、本実施形態の集積光学装置10は、サブキャリア(基台)20の上面(表面)21に対向する底面(基台底面)23と、基板40の上面(表面)41に対向する底面(基板底面)43とが、互いに略同一平面S上に位置するように設けられている。本実施形態の集積光学装置10では、サブキャリア(基台)20と基板40とが金属層を介して接続されているため、接着剤によって接続された構成の特許文献4のハイブリッド集積光モジュールと比べて、加熱工程による位置ズレの発生が著しく抑制されている。
なお、ここでいう略同一平面Sは、底面(基台底面)23と、底面(基板底面)43との僅かなズレを許容する。具体的には、基板40のz方向に沿った厚みに対して20μm以下の範囲のズレを許容するが、ズレは小さいほどよく、10μm以下であることがより好ましく、5μm以下であることがさらに好ましい。
【0053】
本実施形態のように、サブキャリア20の底面23と、基板40の底面43とが、略同一平面S上になるように形成すれば、サブキャリア20と基板40の両方を、例えばパッケージやヒートシンクの一平面上に接合することができる。これによって、サブキャリアの底面と、基板の底面とが略同一平面上に無く、どちらか一方の底面でしか接合できない従来の集積光学装置と比較して、本実施形態の集積光学装置10は、LD(光半導体素子)30の動作で生じた熱を、サブキャリア20の底面23と、基板40の底面43の両方で効率的に放熱することができる。
【0054】
また、本実施形態のように、サブキャリア20の底面23と、基板40の底面43とを、略同一平面S上に設けることによって、集積光学装置10を他の基板等の一平面上に接合する際に、サブキャリア20の底面23と、基板40の底面43の両方で基板等の一平面上に接合できるので、接合強度を高く保ち、耐衝撃性に優れた集積光学装置10を実現することができる。
例えば、サブキャリアの底面が基板の底面よりも+z方向に位置する場合すなわち、サブキャリアの底面が基板の底面よりもパッケージ110の土台180(図7参照)から上方に離間して配置する場合、サブキャリアの第1側面の大きさが小さく、放熱を効率的にできず、また基板との接合強度が十分ではなく後述するワイヤーボンディングをした場合に、サブキャリアが滑落する場合があった。しかしながら、本実施形態に係る集積光学装置10では、側面22の大きさを十分に確保し、底面23および側面22からの放熱や基板40との接合を十分に行うことができるため、放熱性や耐衝撃性を向上できる。耐衝撃性を向上することで、例えば、LD30がPLC50に対して最適な位置に維持される。従って、集積光学装置10に所望の光利用効率及び光学特性を発揮させ、集積光学装置10の信頼性を高めることができる。
【0055】
次いで、集積光学装置10の製造方法を簡単に説明する。図5は、集積光学装置10の製造方法を説明するための図である。先ず、サブキャリア20の上面21に、ベアチップのLD30を公知の手法を用いて実装する。例えば、サブキャリア20の上面21に、金属層75をスパッタ又は蒸着等を用いて形成する。さらに、LD30の下面33(例えば、LD30-1の下面33-1)に、金属層76をスパッタ又は蒸着等を用いて形成する。次に、図5(a)に示すように、例えば、レーザー90からレーザー光をサブキャリア20に照射し、サブキャリア20のみを溶融及び変形しない程度に加熱する。サブキャリア20からの伝熱によって、金属層75,76を軟化あるいは溶融させ、その後冷却する。これにより、サブキャリア20の上面21に、LD30が金属層75,76を介して接合される。また、LD30のサブキャリア20への実装前或いは実装後に、サブキャリア20の側面22に第1金属層71をスパッタ又は蒸着等を用いて形成する。
【0056】
次に、基板40の上面41に、公知の半導体プロセスによってPLC50を形成する。続いて、入射面61及び出射面64に反射防止膜81,82、不図示の反射防止膜を形成する。さらに、反射防止膜81のy方向の後方に、第2金属層72、第3金属層73をこの順に、スパッタ又は蒸着等を用いて形成する。
【0057】
次に、x方向及びz方向において、互いに対応するLD30とコア51-1,51-2,51-3の出射面31と入射面61とをy方向に間隔をあけて対向させる。LD30から発せられる各色光の光軸と対応するコアの入射面61の中心とを略重ねる。この時、サブキャリア20の底面23と、基板40の底面43とが略同一平面上になるように、サブキャリア20の底面23と、基板40の底面43とを揃えて配置する。
【0058】
次いで、図5(b)に示すように、レーザー90からレーザー光をサブキャリア20に照射し、サブキャリア20からの伝熱によって第1金属層71、第2金属層72及び第3金属層73を軟化或いは溶融させる。LD30とPLC50との相対位置を調整し、かつ、サブキャリア20の底面23と基板40の底面43とが略同一平面上になるように、PLC50が形成された基板40に、LD30が実装されたサブキャリア20を接合する。こうした工程を経て、サブキャリア20の底面23と、基板40の底面43とが、互いに略同一平面上に位置する集積光学装置10を製造することができる。
【0059】
(集積光学モジュール)
次に、本実施形態の集積光学装置を有する集積光学モジュールについて説明する。
【0060】
本実施形態の集積光学モジュール100は、図6図7に示すように、例えばパッケージ110に収容されてもよい。集積光学モジュール100は、上述した集積光学装置10と、パッケージ110と、を備える。パッケージ110は、キャビティ構造を有する本体102と、本体102を覆うカバー105と、を備える。
【0061】
本体102は、集積光学装置10が収容される箱状の収容部107と、収容部107に隣り合う電極部108と、を有する。本体102は、例えばセラミック等で形成されている。収容部107の上面には開口が形成されている。上面視で開口の周縁の収容部107の上面には、コバール等の金属膜112が形成されている。カバー105は、金属膜112を介して、収容部107の上面に形成された開口を隙間なく覆っている。カバー105で収容部107を気密封止する際に、収容部107の内部空間に窒素(N)等の不活性ガスが封入されている。つまり、収容部107は、カバー105によって気密封止されている。収容部107の内部空間は、不活性ガスで満たされている。これにより、隙間70(図4参照)には不活性ガスが満たされる。
【0062】
電極部108は、収容部107のy方向で手前側、即ちy方向の後方に配置されている。電極部108の上面は、収容部107の上面よりも下に位置している。電極部108の底面は、収容部107の底面と略同じ高さに位置している。電極部108の上面には、x方向に間隔をあけて複数の外部電極パッド210が設けられている。
【0063】
図7図8に示すように、収容部107の底壁部131の所定の位置に、集積光学装置10を設置するための土台180が設けられている。集積光学装置10は、土台180の上に設けられている。つまり、集積光学装置10は、収容部107の内部空間に配置されている。集積光学装置10は、サブキャリア(基台)20の底面(基台底面)23と、基板40の底面(基板底面)43とが、互いに略同一平面S上に位置するように形成されているので、集積光学装置10はサブキャリア20及び基板40は、共に土台180の上面180a(一内面)に接合されている。
【0064】
サブキャリア(基台)20の底面(基台底面)23と、基板40の底面(基板底面)43は、土台180の上面180a(一内面)との間で接着層182を介して接合されていればよい。この接着層182は、熱伝導性を高めるために、樹脂にフィラーを混合した材料が用いられている。接着層182を構成する樹脂としては、例えば、エポキシ樹脂が挙げられる。また、樹脂の熱伝導性を向上させるフィラーとしては、銅粉末やアルミニウム粉末、アルミナ粉末などを用いることができる。
なお、こうした接着層182は、一定以上の熱伝導性を保つために、熱伝導率が0.5W/m・K以上にすることが好ましく、熱伝導率が1W/m・K以上にすることが好ましく、熱伝導率が4W/m・K以上にすることがさらに好ましい。
【0065】
このように、集積光学装置10のサブキャリア(基台)20と、基板40の両方をパッケージ110の土台180の上面180aに接合することによって、LD30の動作により生じた熱を、サブキャリア(基台)20の底面(基台底面)23と、基板40の底面(基板底面)43の両方から、土台180に向けて効率よく放熱することができる。また、更に、サブキャリア(基台)20の底面(基台底面)23と、基板40の底面(基板底面)43の両方を、フィラーを混合した樹脂からなる接着層を用いて接合することにより、サブキャリア(基台)20の底面(基台底面)23と、基板40の底面(基板底面)43の両方から、土台180に向けて効率よく熱を伝搬させることができる。
【0066】
y方向においてサブキャリア20の下方の土台180と外部電極パッド210との間の位置の底壁部131には、x方向に間隔をあけて複数の内部電極パッド202が設けられている。
LD30及びサブキャリア20の各々と複数の内部電極パッド202のうち各LD30に対応する内部電極パッド202とは、ワイヤーボンディング等の方法を用いてワイヤー95によって接続されている。例えば、LD30-1及びサブキャリア20-1の各々と2つの内部電極パッド202-1の各々とは、ワイヤー95-1によって個別に接続されている。LD30-2及びサブキャリア20-2の各々と2つの内部電極パッド202-2の各々とは、ワイヤー95-2によって個別に接続されている。LD30-3及びサブキャリア20-3の各々と2つの内部電極パッド202-3の各々とは、ワイヤー95-3によって個別に接続されている。
【0067】
内部電極パッド202-1、202-2、202-3の各々は、互いに異なる外部電極パッド210と接続されている。前述のように内部電極パッド202-1、202-2、202-3の各々と電気的に接続された外部電極パッド210は、不図示の電源等と電気的に接続されている。つまり、集積光学装置10では、LD30と不図示の電源とがワイヤー95、内部電極パッド202-1、202-2、202-3及び外部電極パッド210によって接続されている。不図示の電源から内部電極パッド202-1、202-2、202-3の各々に対応する外部電極パッド210に電力が供給されることによって、LD30-1、30-2、30-3から赤色光、緑色光、青色光が出射される。
【0068】
収容部107の側壁部132のうち、集積光学装置10のPLC50の出射面31と対向する側壁部132には、開口133が形成されている。開口133は、側壁部132においてPLC50のコア51-4から出射される3色光の光軸と交差する位置を略中心として形成されている。開口133は、コア51-4から出射され、収容部107の内部空間で拡がった3色光の側壁部132の表面上での大きさよりも大きく形成されている。図12及び図13に示すように、開口133は、側壁部132の外方からガラス板220によって隙間なく覆われている。つまり、収容部107は、カバー105に加えてガラス板220によって気密封止されている。ガラス板220の両板面には、不図示の反射防止膜が設けられている。
【0069】
開口133は、PLC50のコア51-4から出射される3色光が通過してパッケージ110の外部に伝搬するための窓である。図14に示すように、PLC50のコア51-4から出射された3色光LLは、y方向を中心に拡散しつつ、開口133及びガラス板220を通り、パッケージ110のy方向で奥側、即ちy方向の前方に進行する。例えば、パッケージ110の側壁部132-1よりもy方向で奥側に、コリメートレンズ310を備えたコリメート装置300を配置できる。y方向における出射面31とコリメートレンズ310との距離をコリメートレンズ310の焦点距離に合わせ、3色光LLの光軸上にコリメートレンズ310の中心を合わせることによって、コア51-4から出射された3色光LLがコリメートされ、平行光になる。
【0070】
「第2実施形態」
(集積光学装置)
図11図14は、第2実施形態に係る集積光学装置10Aを説明するための図である。図11は、集積光学装置10Aの斜視図である。図12は、図11に示す集積光学装置10AのPLC50の入射面61の断面図である。図13は、図11に示す集積光学装置10Aの一部の平面図である。図14は、図11に示す集積光学装置10AにおいてB-B´線で矢視した断面図である。図15は、サブキャリア20の各面の表面粗さについて説明するための図である。第2実施形態に係る集積光学装置10Aは、サブキャリア420の構成が第1実施形態に係る集積光学装置10のサブキャリア20と異なる。集積光学装置10Aにおいて、集積光学装置10と同様の構成は同様の符号を付し、説明を省略する場合がある。
【0071】
図11に示すように、本実施形態による集積光学装置10Aは、サブキャリア(基台)420と、サブキャリア420の上面421に設けられたLD(光半導体デバイス)30と、基板40と、基板40の上面41に設けられたPLC(光導波路デバイス)50とを備えている。
【0072】
集積光学装置10Aは、光の3原色である赤(R)、緑(G)、青(B)のそれぞれの色の光を合わせる合波器である。そのため、集積光学装置10Aは、赤色光を発するLD30-1、緑色光を発するLD30-2、及び青色光を発するLD30-3を備える。このような集積光学装置10Aは、例えばヘッドマウントディスプレイやスマートグラスに搭載される合波器として適用可能である。本実施形態において、赤色光とは、ピーク波長が690nm以上710nm以下である光を意味する。緑色光とは、ピーク波長が535nm以上555nm以下である光を意味する。青色光とは、ピーク波長が425nm以上445nm以下である光を意味する。
【0073】
LD30-1,30-2,30-3は、それぞれのLDから発せられる光の出射方向に略直交する方向において互いに間隔をあけて配置され、個別のサブキャリア420の上面421に設けられている。LD30-1は、サブキャリア420-1の上面421-1に設けられている。LD30-2は、サブキャリア420-2の上面421-2に設けられている。LD30-3は、サブキャリア420-3の上面421-3に設けられている。以下では、集積光学装置10Aの任意の構成要素の符号Zについて、符号Z-1,Z-2,…,Z-Kの構成要素に共通する内容については、これらをまとめて符号Zと記載する場合がある。前述のKは2以上の自然数である。
【0074】
LD30は、ベアチップでサブキャリア420に実装されている。サブキャリア420は、例えば窒化アルミニウム(AlN)や、酸化アルミニウム(Al)、シリコン(Si)、等で構成されている。図14に示すように、サブキャリア420とLD30との間には、金属層75,76が設けられている。サブキャリア420とLD30とは、金属層75,76を介して接続されている。
【0075】
金属層75,76を形成する方法としては、公知の方法が利用可能で特に問わないが、スパッタ、蒸着、ペースト化した金属の塗布等の公知手法が利用可能である。金属層75,76は、例えば金(Au)、白金(Pt)、銀(Ag)、鉛(Pb)、インジウム(In)、ニッケル(Ni)、チタン(Ti)及びタンタル(Ta)、タングステン(W)、金(Au)とスズ(Sn)の合金、スズ(Sn)-銀(Ag)-銅(Cu)系はんだ合金(SAC)、SnCu、InBi、SnPdAg、SnBiIn及びPbBiInからなる群から選択される1又は複数の金属で構成されている。
【0076】
基板40は、シリコン(Si)で構成されている。PLC50は、集積回路等の微細な構造を形成する際に用いられる公知のフォトリソグラフィやドライエッチングを含む半導体プロセスによって、上面41に、基板40と一体になるように作製されている。図11及び図12に示すように、PLC50には、光導波路を構成するLD30-1,30-2,30-3と同数のコア51-1,51-2,51-3と、コア51-1,51-2,51-3を囲むクラッド52が設けられている。クラッド52の厚みと、コア51-1,51-2,51-3の幅は、特に制限されない。例えば、50μm程度の厚みを有するクラッド52中に、数ミクロン程度の幅を有するコア51-1,51-2,51-3が配設されている。
【0077】
コア51-1,51-2,51-3及びクラッド52は、例えば石英で構成されている。コア51-1,51-2,51-3の屈折率は、クラッド52の屈折率より所定値だけ高くなっている。このことによって、コア51-1,51-2,51-3の各々に入射した光が、各コアとクラッド52との界面で全反射しながら、各コアを伝搬する。コア51-1,51-2,51-3には、例えばゲルマニウム(Ge)等の不純物が前述の所定値に応じた量でドープされている。
【0078】
以下、LD30から発せられる光の出射方向をy方向とする。y方向を含む面内でy方向に直交し、且つLD30-1,30-2,30-3が互いに間隔をあけて配置されている方向をx方向とする。x方向及びy方向に直交し、且つサブキャリア420からLD30に向かう方向をz方向とする。PLC50の入射面61では、コア51-1,51-2,51-3は、x方向及びz方向に関してLD30-1,30-2,30-3から発せられる光の光軸に合わせて配置されている。
【0079】
図11及び図13に示すように、コア51-1,51-2,51-3は、PLC50の出射面64に到達する手前側で1つに集められている。即ち、コア51-1,51-2,51-3は、y方向の前方に向かうにしたがって順次互いに近づき、1つのコア51-4に合流する。コア51-1,51-2,51-3からの漏れ光が生じないように、コア51-1,51-2,51-3はそれぞれ、所定の曲率半径以上の曲率半径でコア51-4に接続されるのが好ましい。
【0080】
図13に示すように、PLC50の入射面61はLD30の出射面31と対向するように配置されている。詳細には、LD30-1の出射面31-1はコア51-1の入射面61-1と対向している。x方向及びz方向において、LD30-1から発せられる赤色光の光軸と入射面61-1の中心とが略重なっている。LD30-2の出射面31-2はコア51-2の入射面61-2と対向している。x方向及びz方向において、LD30-2から発せられる緑色光の光軸と入射面61-2の中心とが略重なっている。LD30-3の出射面31-3はコア51-3の入射面61-3と対向している。x方向及びz方向において、LD30-3から発せられる青色光の光軸と入射面61-3の中心とが略重なっている。このような構成及び配置によって、LD30-1,30-2,30-3から発せられる赤色光、緑色光、青色光の少なくとも一部は、コア51-1,51-2,51-3に入射可能である。
【0081】
図11に示すように、LD30-1,30-2,30-3から発せられる赤色光、緑色光、青色光は、コア51-1,51-2,51-3にそれぞれ入射した後、各コアを伝搬する。コア51-1,51-2及びこれらのコアを伝搬する赤色光及び緑色光は、合流位置57-2よりy方向の後方の所定の合流位置57-1(図13参照)で合わさる。コア51-1,51-2同士が合流したコア51-7(図13参照)とコア51-3及びこれらのコアを伝搬する赤色光、緑色光及び青色光は、合流位置57-2で合わさる。合流位置57-2で集光された赤色光、緑色光及び青色光は、コア51-4を伝搬し、出射面64に到達する。出射面64から出射される3色光は、例えば集積光学装置10Aの使用目的に応じて信号光等として用いられる。
【0082】
図14に示すように、サブキャリア420は、第1金属層71,第2金属層72,第3金属層73を介して基板40と接続されている。本実施形態では、基板40と対向するサブキャリア420の側面(第1側面)422(422-1、422-1、422-3)は、第1金属層71、第2金属層72、第3金属層73、反射防止膜81を介して基板40の側面42に接続されている。金属層75の融点は、第3金属層73の融点よりも高い。
【0083】
第1金属層71は、スパッタ又は蒸着等によって第1側面422に当接した状態で設けられ、例えば金(Au)、白金(Pt)、銀(Ag)、鉛(Pb)、インジウム(In)、ニッケル(Ni)、チタン(Ti)及びタンタル(Ta)からなる群から選択される1又は複数の金属で構成されている。好ましくは、第1金属層71に、金(Au)、白金(Pt)、銀(Ag)、鉛(Pb)、インジウム(In)、ニッケル(Ni)が用いられる。第2金属層72は、スパッタ又は蒸着等によって側面42に当接した状態で設けられ、例えばチタン(Ti)、タンタル(Ta)及びタングステン(W)からなる群から選択される1又は複数の金属で構成されている。好ましくは、第2金属層72に、タンタル(Ta)が用いられる。第3金属層73は、第1金属層71と第2金属層72との間に介在し、例えばアルミニウム(Al)、銅(Cu)、AuSn、SnCu、InBi、SnAgCu、SnPdAg、SnBiIn及びPbBiInからなる群から選択される1又は複数の金属で構成されている。好ましくは、第3金属層73に、AuSn、SnAgCu、SnBiInが用いられる。
【0084】
第1金属層71の厚み、即ち第1金属層71のy方向の大きさは、例えば0.01μm以上5.00μm以下である。第2金属層72の厚み、即ち第2金属層72のy方向の大きさは、例えば0.01μm以上1.00μm以下である。第3金属層73の厚み、即ちy方向の大きさは、例えば0.01μm以上5.00μm以下である。また、第3金属層73の厚みは、第1金属層71及び第2金属層72の各厚みより大きいことが好ましい。このような構成では、第1金属層71、第2金属層72、第3金属層73の前述の各役割が良好に発現され、基板40に対する第1金属層71の材料の進入及び各金属層同士の接着強度の低下が抑えられる。
【0085】
本実施形態では、第1金属層71は、金属層75に接触しない状態で、第1側面422の略全域において基板40又はPLC50に対向する側面に設けられている。第2金属層72及び第3金属層73のz方向の前端、即ち上端は、z方向の前側では第1金属層71の上端と同じ位置に達している。第2金属層72及び第3金属層73のz方向の後端、即ち下端は、金属層71,サブキャリア420及び基板40の下端と同じ位置に達している。y方向に沿って見たとき、x方向において第1金属層71はサブキャリア420より大きく形成されている。
【0086】
前述の構成のように、第1金属層71の面積、即ちx方向及びz方向を含む面内の大きさは、第2金属層72及び第3金属層73の面積と略同じであり、かつその下端がサブキャリア20の下端と同じ位置に達していることが好ましい。このような構成では、基板40に対するサブキャリア420の接続強度が最大限に確保される。尚、第1金属層71、第2金属層72、及び第3金属層73の下端は、サブキャリア420及び基板40の下端より上側に位置していてもよい。
【0087】
本実施形態では、LD30とPLC50との間に反射防止膜81が設けられている。例えば、反射防止膜81は、基板40の側面42とPLC50の入射面61とに、一体的に形成されている。但し、反射防止膜81は、PLC50の入射面61のみに形成されていてもよい。
【0088】
入射面61に加えて出射面64にも、反射防止膜82が設けられている。なお、出射面64にも不図示の反射防止膜が設けられている。なお、図11では、集積光学装置10Aの概略構成を示しており、第1金属層71、第2金属層72、第3金属層73及び反射防止膜81,82は省略されている。
【0089】
反射防止膜81,82は、PLC50への入射光又は出射光が入射面61又は出射面64から各面に進入する方向とは逆向きに反射することを防止し、入射光又は出射光の透過率を高めるための膜である。反射防止膜81,82は、例えば複数の種類の誘電体が、入射光である赤色光、緑色光、青色光の波長に応じた所定の厚みで交互に積層されることによって形成される多層膜である。前述の誘電体としては、例えば酸化チタン(TiO)、酸化シリコン(SiO)、酸化アルミニウム(Al)等が挙げられる。
【0090】
図15は、サブキャリア420の各面の表面粗さについて説明するための図である。
【0091】
図15に示すように、サブキャリア420の形状は略直方体であり、LD30の実装面を構成する上面421と、金属層71,73,72を介して基板40の側面に接続される第1側面422と、第1側面422と反対側の第2側面423と、第1側面422及び第2側面423の各々に隣接し、互いに向かい合う第3側面424及び第4側面425と、上面421と反対側の底面(基台底面)26とを有している。LD30は、サブキャリア420の第1側面422寄り(すなわち、上面421の前方端部)に配置されており、金属層75、76を介してサブキャリア420に接続されている。
【0092】
本実施形態において、サブキャリア420の上面421、第1側面422、第2側面423及び底面26は平滑面であるが、第3側面424及び第4側面425の全面には粗面化領域420Sが設けられている。粗面化領域420Sは、サブキャリア420の上面421等の平滑面よりも表面粗さが大きな領域である。具体的には、サブキャリア420の上面421等の平滑面の最大断面高さ(Rt)が0.01以上5μm未満であるのに対し、粗面化領域420Sの最大断面高さ(Rt)は5μm以上50μm以下である。粗面化領域420Sの最大断面高さ(Rt)は10μm以上50μm以下や、20μm以上40μm以下であってもよく、5μm以上30μm以下であることが好ましい。
本明細書において「最大断面高さ」とは、JIS B601に準拠して、評価長さにおける輪郭曲線の山高さの最大値と谷深さの最大値との和を意味する。
【0093】
サブキャリア420の粗面化領域420Sの最大断面高さ(Rt)は、白色光干渉型顕微鏡(例えば、BRUKER社製、「Wyko-HD9800」)と同様の原理の装置を用いる方法で非接触で測定する。
表1に示すサンプル1~5は、サンドブラストを用いて、シリコンからなるサブキャリアの表面を粗面化処理を行った前後の表面の最大断面高さ(Rt)を、白色光干渉型顕微鏡(BRUKER社製、「Wyko-HD9800」)によって測定した例である。測定はVSIモードを用い、粗面化処理前のRtは倍率7.5倍、測定範囲(400)μm×(400)μmにて測定し、粗面化処理後のRtは倍率10倍、測定範囲(400)μm×(400)μmにて測定した。
【表1】
【0094】
サブキャリア420の全面が平滑面である場合、後述するサブキャリア420へのレーザー照射の際にレーザー光がサブキャリア420の平滑面で反射して加熱効率が良くなく、金属層71,73,72を介したサブキャリア420と基板40との間の接合強度が不十分となる場合がある。しかし、サブキャリア420の第3及び第4側面424,425が粗面化されている場合には、熱容量が抑えられ、サブキャリア420の第3及び第4側面424,425に照射したレーザー光の反射を抑えてサブキャリア420の加熱効率を高めることができ、これにより金属接合強度を高めることができる。
【0095】
サブキャリア420の上面421及び第1側面422は平滑面である。サブキャリア420の上面421を平滑面とすることで上面421に均一な厚さの金属層を形成することができ、金属層を介してLD30をサブキャリア420上に確実かつ強固に実装することができる。またサブキャリア420の第1側面422を平滑面とすることで第1側面422に均一な厚さの金属層71を形成することができ、金属層71,73,72を介してサブキャリア420と基板40の側面に確実かつ強固に接続することができる。
【0096】
サブキャリア420の第2側面423及び底面26も平滑面であることが好ましい。これにより、サブキャリア420の第2側面423及び底面26を真空吸着により保持することができる。したがって、サブキャリア420の第3及び第4側面424、425にレーザー光を照射しながらサブキャリア420の位置調整を行うことができる。
【0097】
粗面化領域形成のための粗面化の方法は特に制限はなく、ウェットな方法でもドライな方法でも無機部材の表面を粗面化する公知の方法を用いることができる。例えば、サンドブラスト等の手法によって任意の場所に形成することができる。サンドブラストに代わりサンドペーパーの様なものを用いてサブキャリアの側面に傷を形成させても良い。
また、サブキャリア420の集合基板をダイシングして個片化する際に切断面が粗くなる加工条件を採用する方法により形成してもよい。具体的にはダイヤモンドカッターの刃に接着されているダイヤモンド砥粒の大きさを調整することにより粗面化が可能である。その他レーザーによる切断方法を用い所定の条件によって形成することも可能である。
【0098】
LD30の出射面31とPLC50の入射面61とは、所定の間隔をあけて配置されている(図15(b)参照)。入射面61は出射面31と対向しており、y方向において出射面31と入射面61との間には隙間70がある。集積光学装置10Aが空気中に露出している場合、隙間70には空気が満ちている。集積光学装置10Aがヘッドマウントディスプレイ等に用いられる場合に求められる光量等を考慮すると、隙間(間隔)70のy方向の大きさは、例えば0μmより大きく、5μm以下である。
【0099】
次いで、集積光学装置10Aの製造方法を簡単に説明する。図16は、集積光学装置10Aの製造方法を説明するための図である。先ず、サブキャリア420の上面421に、ベアチップのLD30を公知の手法を用いて実装する。例えば、サブキャリア420の上面421に、金属層75をスパッタ又は蒸着等を用いて形成する。さらに、LD30の下面33(例えば、LD30-1の下面33-1)に、第1金属層76をスパッタ又は蒸着等を用いて形成する。次に、図16(a)に示すように、例えば、レーザー装置90からレーザー光をサブキャリア420に照射し、サブキャリア420のみを溶融及び変形しない程度に加熱する。サブキャリア420からの伝熱によって、金属層75,76を軟化あるいは溶融させ、その後冷却する。これにより、サブキャリア420の上面421に、LD30が金属層75,76を介して接合される。また、LD30のサブキャリア420への実装前或いは実装後に、サブキャリア420の第1側面422に第1金属層71をスパッタ又は蒸着等を用いて形成する。
【0100】
次に、基板40の上面41に、公知の半導体プロセスによってPLC50を形成する。続いて、入射面61及び出射面64に反射防止膜81,82、不図示の反射防止膜を形成する。さらに、反射防止膜81のy方向の後方に、第2金属層72、第3金属層73をこの順に、スパッタ又は蒸着等を用いて形成する。
【0101】
次に、x方向及びz方向において、互いに対応するLD30とコア51-1,51-2,51-3の出射面31と入射面61とをy方向に間隔をあけて対向させる。LD30から発せられる各色光の光軸と対応するコアの入射面61の中心とを略重ねる。この時、サブキャリア420の底面423と、基板40の底面43とが略同一平面上になるように、サブキャリア420の底面423と、基板40の底面43とを揃えて配置する。
【0102】
次いで、図16(b)に示すように、レーザー装置90からレーザー光をサブキャリア420に照射し、サブキャリア420からの伝熱によって第1金属層71、第2金属層72及び第3金属層73を軟化或いは溶融させる。LD30とPLC50との相対位置を調整し、かつ、サブキャリア420の底面423と基板40の底面43とが略同一平面上になるようにしながら、PLC50が形成された基板40に、LD30が実装されたサブキャリア420を接合する。こうした工程を経て、サブキャリア420の底面423と、基板40の底面43とが、互いに略同一平面上に位置する集積光学装置10Aを製造することができる。
【0103】
具体的には、図17に示すように、X方向におけるサブキャリア420の両側にレーザー装置90を配置し、矢印で示す方向に沿ってサブキャリア420の第3側面424及び第4側面425にレーザー装置90から出射されたレーザー光を当てて加熱し、サブキャリア420のみを溶融及び変形しない程度に加熱する。同時に、LD30から各色光を発し、発光強度を検出すると共に、コア51-4から出射される3色光の出射強度を検出する。図18に例示するように、y方向における出射面31と入射面61との間隔Sをミクロンオーダーの値で振って、発光強度に対する出射強度を光利用効率[%]とすると、間隔Sが大きくなる程(Sa<Sb<Sc<Sd<Se<Sf<Sg)、光利用効率が低下する。各間隔Sにおける「光利用効率」は、図18のグラフの横軸のDT offsetが0(零)であるときの光利用効率を意味する。最適な間隔Sは、集積光学装置10Aの使用用途、LD30の発光パターン、コア51-1,51-2,51-3のx方向及びz方向の大きさによって変わる。これらの条件を勘案し、求められる光利用効率を満たすように間隔S及びLD30の位置、姿勢を調整する。このようなLD30の位置、姿勢の調整は、所謂アクティブアライメント及びギャップコントロールを行うことを意味する。前述の間隔S及びLD30の調整は、アクティブアライメントの機能を有する公知の装置を用いて行うことができる。
【0104】
アクティブアライメント及びギャップコントロールとサブキャリア420の加熱を行うと、図17に示すように、最適な位置に配置されたLD30の出射面31と入射面61との間の第1金属層71、第2金属層72及び第3金属層73は、第3金属層73の合金化及び僅かな熱収縮によって、出射面31と入射面61との間に挟まれていない各金属層より薄くなる。レーザー装置90によるサブキャリア420の加熱を止めることによって、冷却され、LD30の位置が固定される。以上の手順を進めることによって、集積光学装置10Aを製造できる。
【0105】
上記のように、サブキャリア420の第3側面424及び第4側面425は粗面化されており、レーザー光は粗面化領域420Sに照射されるので、サブキャリア420の加熱時にレーザー光の反射を抑えて加熱効率を高めることができる。したがって第1金属層71、第2金属層72及び第3金属層73を介してサブキャリア420と基板40とを接合する場合にその接合強度を高めることができる。
【0106】
以上説明した本実施形態の集積光学装置10Aは、サブキャリア420、LD30、基板40、PLC50を備える。入射面61は、出射面31と対向するように配置され、LD30から出射される光がコア51-1,51-2,51-3に入射可能である。また、サブキャリア420の第1側面422と基板40の側面42とがy方向の後方から前方に向かって第1金属層71、第2金属層72及び第3金属層73を介して接続されている。
【0107】
上述の構成によれば、第1金属層71及び第2金属層72は第1側面422及び基台40の側面42に強固に接着され、第3金属層73は第1金属層71及び第2金属層72との界面で合金化しつつ、第1側面422のx方向及びz方向を含む面内の略全域で強固に第1金属層71及び第2金属層72と接合する。このような合金化による第1金属層71、第2金属層72、第3金属層73によるサブキャリア420と基板40との接続は、熱に強く、例えば図19に示すようにワイヤーボンディング等の工程で周囲の環境温度が高くなっても解除されにくい。したがって、例えばワイヤーボンディング等の方法を用いてLD30と不図示の電源とをワイヤー95によって上面421で接続するときでも、LD30に対してPLC50が強固に固定された状態が維持される。つまり、ワイヤーボンディングする際に、LD30やサブキャリア420がPLC50や基板40から滑落せず、LD30がPLC50に対して最適な位置に維持される。このことによって、集積光学装置10Aに所望の光利用効率及び光学特性を発揮させ、集積光学装置10Aの信頼性を高めることができる。
【0108】
一方、従来のような樹脂を用いたLDとPLCとの接着、又はサブキャリアと基板との接着では、分子構造として高分子である樹脂において置換基による水素結合が生じる。樹脂における置換基の密度は低いので、樹脂の形成面内で局所的な接合となる。集積光学装置10Aの構成に適用すると、x方向及びz方向を含む面内で局所的にLDとPLC、サブキャリアと基板を結合する。そのため、従来のように樹脂を用いた接続では、上述した合金化による全面的且つ強固な接合に比べて接続強度が低下すると推察される。
【0109】
また、本実施形態の集積光学装置10Aによれば、第3金属層73は第1金属層71及び第2金属層72より厚いため、第1金属層71と第3金属層73、及び/又は第3金属層73と第2金属層72とが十分に合金化され、サブキャリア420と基板40とをより強固に接合することができる。また、y方向において第1金属層71と第3金属層73との合金層と基板40との距離を確保できる。
【0110】
また、本実施形態の集積光学装置10Aによれば、y方向(光の進行方向)に沿って見たときに第1金属層71、第2金属層72および第3金属層の下端がサブキャリア420の下端、基板40の下端と同じ位置に達している。すなわち、第1実施形態に係る集積光学装置10Aと同様にサブキャリア420の接合面積を最大化し、サブキャリア420の基板4とを強固に接合できる。
【0111】
また、本実施形態の集積光学装置10Aによれば、LD30とPLC50との間に反射防止膜81が設けられているため、LD30から発せられた各色光の入射面61での反射を防止でき、各色光のコア51-1,51-2,51-3への結合効率を高くすることができる。
【0112】
また、本実施形態の集積光学装置10Aでは、LD30の出射面31とPLC50の入射面61とが所定の間隔で配置されているため、LDの出射面とPLCの入射面との間に樹脂が介在する従来の集積光学素子のようにLDとPLCとの相対配置がLDの出射面とPLCの入射面との間の介在物によって影響されない。このことによって、LD30とPLC50との相対配置のずれの発生を防止できる。
【0113】
また、本実施形態の集積光学装置10Aでは、LD30を複数備え、複数のLD30は互いに異なるピーク波長(波長)を有する光を発する。即ち、集積光学装置10Aは、複数のLD30-1,30-2,30-3を備え、PLC50には、複数のLD30-1,30-2,30-3が発する光のそれぞれが入射可能な複数のコア51-1,51-2,51-3が設けられ、複数のコア51-1,51-2,51-3は出射面64に到達する手前側で互いに1つに集められている。このような構成によれば、互いに異なるピーク波長(波長)を有する3色光を複数のコア51-1,51-2,51-3に効率よく入射させ、出射面64から出射される3色光の光利用効率を高めることができる。
【0114】
また、本実施形態の集積光学装置10Aでは、サブキャリア420の底面423と、基板40の底面43とが略同一平面S状になるように形成される。すなわち、本実施形態の集積光学装置10Aであっても、第1実施形態の集積光学装置10と同様に、LD(光半導体素子)30での動作で生じた熱を、サブキャリア420の底面423と、第1側面422の両方で効率的に放熱することができる。
【0115】
図20(a)~(f)及び図21(a)~(f)は、サブキャリア420の構成の変形例を示す展開図である。
【0116】
図20(a)に示すサブキャリア420は、上面421、第1側面422及び底面426が平滑面からなり、第2側面423、第3側面424及び第4側面425の全面が粗面化領域420Sからなるものである。すなわち、図15に示したサブキャリア420の第2側面423に粗面化領域420Sをさらに追加したものである。
【0117】
図20(b)に示すサブキャリア420は、上面421、第1側面422及び第2側面423が平滑面からなり、第3側面424、第4側面425及び底面426の全面が粗面化領域420Sからなるものである。すなわち、図15に示したサブキャリア420の底面426に粗面化領域420Sをさらに追加したものである。
【0118】
図20(c)に示すサブキャリア420は、第2側面423のみを粗面化領域420Sとし、それ以外のすべての外面を平滑面としたものである。また、図20(d)は、底面426のみを粗面化領域420Sとし、それ以外のすべての外面を平滑面としたものである。
【0119】
図20(e)は、第2側面423と底面426のみを粗面化領域420Sとし、それ以外のすべての外面を平滑面としたものである。したがって、第3側面424及び第4側面425は平滑面である。
【0120】
図20(f)は、上面421及び第1側面422を平滑面とし、上面421及び第1側面422以外のすべての面を粗面化領域420Sとするものである。
【0121】
図21(a)に示すサブキャリア420は、第3側面424及び第4側面425の全面ではなく、各面の中央部にのみ粗面化領域420Sを設けたものである。そのため、第3側面424及び第4側面425それぞれのエッジ近傍は平滑面である。
【0122】
図21(b)に示すサブキャリア420は、第3側面424及び第4側面425と同様の粗面化領域420Sを、第2側面423及び底面426にも設けたものである。このように、粗面化領域420Sは対象面の全面に形成されている必要はなく、対象面の一部、すなわちレーザー照射領域にのみ形成されていればよい。
【0123】
図21(c)に示すサブキャリア420は、第3側面424及び第4側面425のうち、第1側面422寄りの前方半分の領域を粗面化領域420Sとし、第2側面423寄りの後方半分の領域を平滑面としたものである。また、図21(d)に示すサブキャリア420は、底面426の前方半分の領域にも同様の粗面化領域420Sを形成したものである。このように、粗面化領域420Sは、第1側面422と第2側面423との中間位置よりも第1側面422寄りの前部領域にのみ設けられてもよい。
【0124】
図21(e)に示すサブキャリア420は、第3側面424及び第4側面425のうち、底面426寄りの下側半分の領域を粗面とし、上面421寄りの上側半分の領域を平滑面としたものである。図21(f)に示すサブキャリア420は、第2側面423の下側半分の領域と底面426の全面にも同様の粗面化領域420Sを形成したものである。このように、粗面化領域420Sは、上面421と底面426との中間位置よりも底面426寄りの下部領域にのみ設けられてもよい。
【0125】
上記のように、サブキャリア420の形状は略直方体であり、上面421、第1~第4側面422~425、及び底面426を有する。ここで、LD30が実装される上面421を第1の外面、基板40と接続される第1側面422を第2の外面、残りの面を第3の外面とするとき、粗面化領域420Sは第3の外面の少なくとも一部に設けられていればよい。すなわち、本発明において、粗面化領域420Sは、第2側面423、第3側面424、第4側面425及び底面426のいずれかの面の少なくとも一部に形成されていればよい。
【0126】
「第3実施形態」
図22は、第3実施形態に係る集積光学装置10Bの断面図である。第3実施形態に係る集積光学装置10Bは、サブキャリア520、第1金属層571,第2金属層572、及び第3金属層573のz方向における長さが第2実施形態に係る集積光学装置10Aと異なる。集積光学装置10Bにおいて、集積光学装置10Aと同様の構成は、同様の符号を付し、説明を省略する。
【0127】
本実施形態では、第1金属層571は、金属層575に接触しない状態で、第1側面522の略全域において基板40又はPLC50に対向する側面に設けられている。第2金属層572及び第3金属層573のz方向の前端、即ち上端は、z方向の前側では第1金属層571と同じ位置に達している。第2金属層572及び第3金属層573のz方向の後端、即ち下端は、第1金属層571よりも後方且つ反射防止膜81より前方の位置に達している。y方向に沿って見たとき、x方向において第1金属層571はサブキャリア520より大きく形成されている。
【0128】
第1金属層571の面積、即ちx方向及びz方向を含む面内の大きさは、第2金属層572及び第3金属層573の面積と略同じであるか、或いは第2金属層572及び第3金属層573の面積より小さいことが好ましい。
【0129】
本実施形態に係る集積光学装置10Bは、集積光学装置10Aと同様の方法で製造される。尚、集積光学装置10Bの製造にあたって、サブキャリア520の底面523と、基板40の底面43とが略同一平面上になるように、サブキャリア520の底面523と、基板40の底面43とはずらして配置してよい。またPLCが形成された基板40にLD30が実装されたサブキャリア520を接合する際に、サブキャリア520の底面523と基板40の底面43とは同一平面上になくてよい。
【0130】
本実施形態に係る集積光学装置10Bであっても、集積光学装置10Aと同様に、例えば、ワイヤーボンディングする際に、LD30やサブキャリア520がPLC50や基板40から滑落せず、LD30がPLC50に対して最適な位置に維持される。このことによって、集積光学装置10Bに所望の光利用効率及び光学特性を発揮させ、集積光学装置10Bの信頼性を高めることができる。
【0131】
また、本実施形態の集積光学装置10Bであっても、第1金属層571と第3金属層573、及び/又は第3金属層573と第2金属層572とが十分に合金化され、サブキャリア520と基板40とをより強固に接合することができる。また、y方向において第1金属層571と第3金属層573との合金層と基板40との距離を確保できる。
【0132】
また、本実施形態の集積光学装置10Bによれば、y方向(光の進行方向)に沿って見たときに第1金属層571の面積は第2金属層572の面積より小さいため、サブキャリア520と基板40との接合面積を少なくとも第1金属層571の面積以上に確保できる。第1金属層571を第1側面52Bの略全域に設けることによって、サブキャリア520の接合面積を最大化し、サブキャリア520と基板40とをさらに強固に接合できる。
【0133】
(集積光学モジュール)
図23は、集積光学モジュール100Bの構造の一例を透過的に示す略斜視図である。図23に示すように、この集積光学モジュール100Bは、サブキャリア20上のLD30と基板40上のPLC50との組み合わせからなる集積光学装置10Bと、集積光学装置10Bを収容するパッケージ91とを備えている。そして、集積光学装置10BはPD(Photo Detector)モジュールやコントローラICチップ等の他の構成部品(不図示)と共にパッケージ91内に収容され、不活性ガスと共に気密封止されている。
【0134】
パッケージ91は、上面側に開口を有する樹脂又はセラミック製の本体91aと、本体91aの上面に形成された開口を隙間なく覆うカバー92とで構成されている。本体91aの長手方向の一端側の側面にはレーザー光の出射窓93が設けられている。本体91aのうち、出射窓93に対応する部分には、開口が形成されている。PLC50から発せられたレーザー光は出射窓93を通過して外部に出力される。また出射窓93が設けられた側面とは反対側の側面側には、本体91aと一体化された端子台91bが形成されており、端子台91bの上面には複数の外部電極パッド94が形成されている。複数の外部電極パッド94は、パッケージ91内の複数の内部端子電極96のいずれかと電気的に接続されており、LD30はボンディングワイヤー(ワイヤー)95を介して内部端子電極96に接続されている。
【0135】
複数の外部電極パッド94は、パッケージ91内の複数の内部端子電極96のいずれかと電気的に接続されており、LD30はワイヤー95を介して内部端子電極96に接続されている。このように、LD30のパッドと内部端子電極96との接続にはワイヤーボンディングが用いられるが、基板40に対するサブキャリア20の接合強度が弱い場合には、ワイヤーボンディング時の加圧力によってサブキャリア20が基板40から剥離する場合がある。しかし、本実施形態においては、基板40に対してサブキャリア20を強固に接合しているので、ワイヤーボンディングによるケース側端子と光半導体デバイス30との電気的な接続を確実に行うことができる。
【0136】
尚、パッケージ91内は窒素(N)等の不活性ガスで満たされていてもよい。
【0137】
以上、本発明の実施形態について説明したが、これらの実施形態は例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。この実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。例えば、上記の実施形態及び変形例の特徴的な構成をそれぞれ組み合わせてもよい。
【0138】
例えば、本実施形態の集積光学装置10(10A,10B)では、サブキャリア(基台)20(420,520)の上面(表面)21(421,521)に3つのLD(光半導体素子)30-1,30-2,30-3が設けられているが、LD(光半導体素子)は少なくとも1つだけ(例えば白色光を発するLD)設けられていればよく、あるいは4つ以上のLDが設けられていてもよい。また、それぞれのLD(光半導体素子)30-1,30-2,30-3がそれぞれ発する光も、赤色光、青色光、緑色光に限定されるものではなく、任意の波長域の光を発するLDを用いることができる。
【0139】
また、例えば、互いに略同一平面上に位置するサブキャリア20の底面23、および基板40の底面43に接合される、1つの共通する放熱板等を備えた構成であってもよい。
また、集積光学モジュール100(100A)では、パッケージの底面に更にヒートシンクなどを接合することもできる。これにより、集積光学装置10(10A,10B)からパッケージ110に伝搬された熱を一層効率よく外部に放熱することができる。
【0140】
また、例えば、集積光学装置10(10A,10B)ではサブキャリア20(420,520)と基板40とが、少なくとも第1金属層71(571)の金属と第3金属層73(573)との合金層、及び/又は第2金属層72(572)の金属と第3金属層73(573)との合金層を含む不図示の金属複合層を介して接続されていてもよい。「少なくとも第1金属層71(571)の金属と第3金属層73(573)との合金層、及び/又は第2金属層72(572)の金属と第3金属層73(573)との合金層を含む金属複合層」とは、その一部に第1金属層71(571)の金属と第3金属層73(573)との合金層、及び/又は第2金属層72(572)と第3金属層73(573)との合金層を有しているか、又は、その全部が、第1金属層71(571)の金属と第3金属層73(573)との合金層、及び第2金属層72(572)の金属と第3金属層73(573)との合金層で構成されている層を意味する。一例として、集積光学装置10(10A,10B)において、第1金属層71(571)の金属と第3金属層73(573)の金属とがy方向の一部又は全体に亘って合金化し、1つの合金層を形成する場合が挙げられる。
【0141】
また、例えば、第2金属層72(572)の金属と、第3金属層73(573)の金属とがy方向の一部又は全体に亘って合金化し、1つの合金層を形成する場合が挙げられる。これらの場合、サブキャリア20(420,520)と基板40とを、第1金属層71(571)と第3金属層73(573)との合金層、及び第2金属層72(572)と第3金属層73(573)との合金層のいずれか又は双方を介して接続できる。このような構成によれば、サブキャリア20(420,520)と基板40とを、合金層によって従来のような樹脂による接続よりも強固に接続でき、集積光学装置の信頼性を高めることができる。
【0142】
また、例えば、集積光学装置10(10A,10B)では、サブキャリア20(420,520)とLD30とが、少なくとも金属層75,76との合金層を含む不図示の金属複合層を介して接続されていてもよい。「少なくとも金属層75,76との合金層を含む金属複合層」とは、その一部に金属層75と金属層76との合金層を有している層であるか、又は、その全部が当該合金層で構成されている層を意味する。一例として、集積光学装置10(10A,10B)において、金属層75の金属と金属層76の金属とがz方向の一部又は全体に亘って合金化し、合金層を形成している場合が挙げられる。金属層75の金属と金属層76の金属とがz方向の一部で合金化された場合、サブキャリア20(420,520)とLD30との間には、金属層75,76の合金層と、金属層75及び金属層76のいずれか又は双方とが介在する。金属層75の金属と金属層76の金属とがz方向の全体に亘って合金化された場合、サブキャリア20(420,520)とLDとの間には、実質的に上記合金層のみが介在する。また、金属層75と金属層76とがy方向の全体に亘って合金化し、合金層が形成されることが好ましいが、このような構成に限定されず、y方向の一部で合金化し、合金層が形成されていてもよい。
【0143】
サブキャリア20(420,520)と基板40とを接続するためにサブキャリア20(420,520)と基板40との間に介在させる金属材料は、サブキャリア20(420,520)、基板40、第1金属層71(571)の各材料によって適宜変更可能である。また、金属層や合金層の金属材料の厚みについても、サブキャリア20(420,520)、基板40、第1金属層71(571)の各材料に応じて適宜設定される。金属材料の種類及び厚み、サブキャリア20(420,520)の加熱条件等によって、サブキャリア20(420,520)と基板40との間に介在する金属複合層の構成は変わり得る。金属複合層は、単独の合金層、金属層と合金層との組み合わせ、互いに異なる組成の合金層同士の組み合わせ、これら以外に少なくとも合金層を含む多層構造の何れであってもよい。
【0144】
また、上述の集積光学装置10(10A,10B)は、可視波長域の3原色の光を合わせる合波器である旨を説明したが、本発明の集積光学装置は合波器に限定されず、光通信用途で広く使用可能である。
【0145】
また、上述の集積光学装置10(10A,10B)は、ウェアラブルデバイスや小型プロジェクタ等の用途に用いられることを目的として、可視波長域の3原色を合波可能である旨を説明したが、本発明の集積光学装置が処理する光の波長は可視波長域に限定されない。例えば、本発明の集積光学装置が処理する光の波長域は、可視波長域から近赤外波長域に亘ってもよく、光通信で用いられることを目的として近赤外波長域のみであってもよい。本発明の集積が処理する光の波長に応じて、基板40やPLC50、各種金属層及び合金層の材料を選択すればよい。
【実施例
【0146】
本発明の効果を検証した。
(実施例)
図1に示す第1実施形態の集積光学装置10を作成し、この集積光学装置10のサブキャリア20の底面23および基板40の底面43に、熱伝導性の接着剤を介してパッケージを接合した時の放熱状態をシミュレーションした。
サブキャリア:シリコン(Si)
基板:シリコン(Si)
パッケージ:酸化アルミニウム(Al
接着剤:エポキシ樹脂
【0147】
(比較例)
サブキャリアの底面が基板の底面よりも厚み方向に凹んでおり、それ以外の構成は実施例と同じ集積光学装置を作成し、集積光学装置の基板の底面に熱伝導性の接着剤を介してパッケージを接合した時の、放熱状態を測定した。サブキャリアの底面はパッケージに接合されておらず、サブキャリアの底面とパッケージの内面とのギャップは0.5mmである。
【0148】
図24(a)に実施例の集積光学装置10のLD30を1W発熱させた際の熱分布を、図24(b)に比較例の集積光学装置のLDを1W発熱させた際の熱分布を、それぞれ示す。なお、図24は、集積光学モジュールの厚み方向に沿った要部断面を示している。
【0149】
図24に示す結果によれば、実施例の集積光学装置10は、サブキャリア20の底面23と基板40の底面43とが互いに略同一平面S上になるように、共にパッケージに接合されているため、サブキャリア20の底面23と基板40の底面43のそれぞれから、LD30で生じた熱がパッケージに放熱されていることが分かる。これにより、LD30の温度は、比較例よりも低く保たれていることが確認できた。
【0150】
一方、比較例の集積光学装置は、サブキャリアの底面が基板の底面との間に段差があり、基板の底面だけがパッケージに接合されているので、LDから離れた位置にある基板の底面でのみLDで生じた熱がパッケージに放熱されている。このため、実施例と比較して放熱効率が悪く、LDの温度は、実施例よりも高くなっている。
【0151】
次に、上述した実施例及び比較例において、集積光学装置をパッケージに接合する接着剤の熱伝導率と温度変化最大値との関係を測定した。この結果を図25にグラフで示す。
図25の測定結果によれば、熱伝導率を1W/(m・K)以上とすることで集積光モジュールの温度変化量を最低水準にすることができ、さらに熱伝導率を4W/(m・K)以上とすることで集積光モジュールの温度変化量を抑えることが可能であると確認された。
【符号の説明】
【0152】
10 集積光学装置
20、420、520 サブキャリア(基台)
20-1、420-1、520-1 サブキャリア(基台)
20-2、420-2、520-2 サブキャリア(基台)
20-3、420-3、520-3 サブキャリア(基台)
21、421、521 上面
21-1 上面
21-2 上面
21-3 上面
22 側面
22-1 側面
22-2 側面
22-3 側面
23 底面(基台底面)
30 LD(光半導体素子)
30-1 LD
30-2 LD
30-3 LD
31 出射面
31-1 出射面
31-2 出射面
31-3 出射面
33 下面
33-1 下面
40 基板
41 上面(表面)
42 側面
43 底面(基板底面)
50 PLC(光導波路)
51-1,51-2,51-3 コア
51-4,51-7 コア
52 クラッド
57-1,57-2 合流位置
61 入射面
61-1 入射面
61-2 入射面
61-3 入射面
64 出射面
70 隙間
71 第1金属層
72 第2金属層
73 第3金属層
75 金属層
76 金属層
81,82 反射防止膜
100 集積光学モジュール
102 本体
105 カバー
110 パッケージ
180 土台
180a 上面(一内面)
182 接着層
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25