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特許7652736除細動システム、電源装置、切替機器および接続状態の切替制御方法
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  • 特許-除細動システム、電源装置、切替機器および接続状態の切替制御方法 図1
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  • 特許-除細動システム、電源装置、切替機器および接続状態の切替制御方法 図3A
  • 特許-除細動システム、電源装置、切替機器および接続状態の切替制御方法 図3B
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-03-18
(45)【発行日】2025-03-27
(54)【発明の名称】除細動システム、電源装置、切替機器および接続状態の切替制御方法
(51)【国際特許分類】
   A61N 1/39 20060101AFI20250319BHJP
【FI】
A61N1/39
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2022050666
(22)【出願日】2022-03-25
(65)【公開番号】P2023143343
(43)【公開日】2023-10-06
【審査請求日】2024-02-20
(73)【特許権者】
【識別番号】594170727
【氏名又は名称】日本ライフライン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001357
【氏名又は名称】弁理士法人つばさ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小島 康弘
【審査官】和田 将彦
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-220778(JP,A)
【文献】特開2018-122091(JP,A)
【文献】特開2017-176351(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61N 1/39
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気的な除細動を行う除細動カテーテルに対して電力を供給する電源装置と、
電極カテーテルおよび心電位機器の間の接続状態を切り替える切替部と
を備え、
前記電極カテーテルは、前記除細動カテーテルとは別個に設けられており、
前記心電位機器では、前記電極カテーテルを用いて測定された心電位の表示が行われ、
前記電源装置は、
前記電力を出力する電源部と、
前記除細動の実行期間において、前記電極カテーテルと前記心電位機器との間が遮断されるように、前記切替部に対する切替制御を行う切替制御部と
を有する除細動システム。
【請求項2】
前記電源装置が、
前記切替制御部を含む内部回路と、
前記除細動カテーテルと電気的に接続されている第1接点が、前記心電位機器側または前記内部回路側へと接続されるように切り替える第1切替部と
を更に有しており、
前記切替部としての第2切替部が、前記電極カテーテルと電気的に接続されている第2接点と、前記心電位機器との間の接続状態を切り替え、
前記切替制御部は、前記除細動の実行期間において、
前記第1接点が前記内部回路側へと接続されて、前記電力が前記除細動カテーテルへと供給されると共に、
前記第2接点と前記心電位機器との間が遮断されるように、
前記第1切替部および前記第2切替部に対する切替制御を行う
請求項1に記載の除細動システム。
【請求項3】
前記切替制御部は、前記除細動の実行期間後に、
前記第1接点が前記心電位機器側へと接続されると共に、
前記第2接点と前記心電位機器との間が接続されるように、
前記第1切替部および前記第2切替部に対する切替制御を行う
請求項2に記載の除細動システム。
【請求項4】
電気的な除細動を行う除細動カテーテルに対して電力を供給する電源部と、
電極カテーテルおよび心電位機器の間の接続状態を切り替える切替部と、
前記除細動の実行期間において、前記電極カテーテルと前記心電位機器との間が遮断されるように、前記切替部に対する切替制御を行う切替制御部と
を備え、
前記電極カテーテルは、前記除細動カテーテルとは別個に設けられており、
前記心電位機器では、前記電極カテーテルを用いて測定された心電位の表示が行われる
電源装置。
【請求項5】
前記切替制御部を含む内部回路と、
前記除細動カテーテルと電気的に接続されている第1接点が、前記心電位機器側または前記内部回路側へと接続されるように切り替える第1切替部と
を更に備え、
前記切替部としての第2切替部が、前記電極カテーテルと電気的に接続されている第2接点と、前記心電位機器との間の接続状態を切り替え
前記切替制御部は、前記除細動の実行期間において
前記第1接点が前記内部回路側へと接続されて、前記電力が前記除細動カテーテルへと供給されると共に、
前記第2接点と前記心電位機器との間が遮断されるように、
前記第1切替部および前記第2切替部に対する切替制御を行う
請求項4に記載の電源装置。
【請求項6】
電気的な除細動を行う除細動カテーテルに対して電力を供給する電源装置とは、別個に設けられた機器であって、
電極カテーテルおよび心電位機器の間の接続状態を切り替える切替部を備え、
前記電極カテーテルは、前記除細動カテーテルとは別個に設けられており、
前記心電位機器では、前記電極カテーテルを用いて測定された心電位の表示が行われ、
前記除細動の実行期間において、前記電極カテーテルと前記心電位機器との間が遮断されるように、前記接続状態の切替制御が行われる
切替機器。
【請求項7】
電気的な除細動を行う除細動カテーテルとは別個に設けられた電極カテーテルと、前記電極カテーテルを用いて測定された心電位の表示が行われる心電位機器と、の間の接続状態の切替制御を行う方法であって、
前記除細動の実行期間においては、前記電極カテーテルと前記心電位機器との間が遮断されるように、切替制御部が、前記接続状態の切替制御を行う
接続状態の切替制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、除細動システム、電源装置、切替機器および接続状態の切替制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
心臓カテーテル術中に生じた心房細動を除去する(電気的な除細動を行う)ための医療機器の1つとして、除細動システム(除細動カテーテルシステム)が開示されている(例えば特許文献1)。除細動システムは、心腔内に挿入されて除細動を行う除細動カテーテルと、除細動カテーテルに対して除細動の際の電力供給を行う電源装置と、を備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】WO2019/155941号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、除細動システム等では一般に、使用する際の利便性を向上させることが求められている。利便性を向上させることが可能な、除細動システム、電源装置、切替機器および接続状態の切替制御方法を提供することが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一実施の形態に係る除細動システムは、電気的な除細動を行う除細動カテーテルに対して電力を供給する電源装置と、電極カテーテルおよび心電位機器の間の接続状態を切り替える切替部と、を備えている。電極カテーテルは、除細動カテーテルとは別個に設けられている。心電位機器では、電極カテーテルを用いて測定された心電位の表示が行われる。電源装置は、上記電力を出力する電源部と、除細動の実行期間において電極カテーテルと心電位機器との間が遮断されるように、切替部に対する切替制御を行う切替制御部と、を有している。
【0006】
本開示の一実施の形態に係る電源装置は、電気的な除細動を行う除細動カテーテルに対して電力を供給する電源部と、電極カテーテルおよび心電位機器の間の接続状態を切り替える切替部と、除細動の実行期間において電極カテーテルと心電位機器との間が遮断されるように、切替部に対する切替制御を行う切替制御部と、を備えている。電極カテーテルは、除細動カテーテルとは別個に設けられている。心電位機器では、電極カテーテルを用いて測定された心電位の表示が行われる。
【0007】
本開示の一実施の形態に係る切替機器は、電気的な除細動を行う除細動カテーテルに対して電力を供給する電源装置とは別個に設けられた機器であって、電極カテーテルおよび心電位機器の間の接続状態を切り替える切替部を、備えている。電極カテーテルは、除細動カテーテルとは別個に設けられている。心電位機器では、電極カテーテルを用いて測定された心電位の表示が行われる。除細動の実行期間において電極カテーテルと心電位機器との間が遮断されるように、上記接続状態の切替制御が行われる。
【0008】
本開示の一実施の形態に係る接続状態の切替制御方法は、電気的な除細動を行う除細動カテーテルとは別個に設けられた電極カテーテルと、この電極カテーテルを用いて測定された心電位の表示が行われる心電位機器と、の間の接続状態の切替制御を行う方法であって、除細動の実行期間においては電極カテーテルと心電位機器との間が遮断されるように、切替制御部が、上記接続状態の切替制御を行う。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本開示の一実施の形態に係る除細動システムの全体構成例を模式的に表すブロック図である。
図2図1に示した除細動カテーテルの概略構成例を表す模式図である。
図3A】実施の形態に係る除細動処理の一例を表す流れ図である。
図3B図3Aに続く除細動処理の一例を表す流れ図である。
図4図3Aに示したインピーダンス測定の際の動作状態例を模式的に表すブロック図である。
図5図3Aに示した心電位測定(除細動の実行前)の際の動作状態例を模式的に表すブロック図である。
図6図3Bに示した除細動の実行期間の際の動作状態例を模式的に表すブロック図である。
図7図3Bに示した除細動の実行期間の際の詳細な動作状態例を模式的に表す回路図である。
図8図3Bに示した心電位測定(除細動の実行後)の際の動作状態例を模式的に表すブロック図である。
図9】変形例1に係る除細動システムの全体構成例を模式的に表すブロック図である。
図10】変形例2に係る除細動システムの全体構成例を模式的に表すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本開示の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、説明は以下の順序で行う。
1.実施の形態(第1切替部:電源装置に内蔵、第2切替部:外部に設けた場合の例)
2.変形例
変形例1(第1切替部・第2切替部の双方を電源装置に内蔵した場合の例)
変形例2(第1切替部・第2切替部の双方を電源装置の外部に設けた場合の例)
3.その他の変形例
【0011】
<1.実施の形態>
[全体構成]
図1は、本開示の一実施の形態に係る除細動システム6の全体構成例を、模式的にブロック図で表している。除細動システム6は、例えば心臓カテーテル術中において、患者9に生じた心房細動を除去する(電気的な除細動を行う)際に用いられるシステムである。なお、本開示における「接続状態の切替制御方法」は、本開示の除細動システムにおいて具現化されるため、以下併せて説明する。
【0012】
除細動システム6は、図1に示したように、除細動カテーテル1a、電極カテーテル1b、電源装置2および切替機器3を備えている。除細動システム6を用いた除細動等の際には、例えば図1に示した心電計4および心電図表示装置5(波形表示装置)についても、適宜使用される。
【0013】
なお、心電計4および心電図表示装置5は、本開示における「心電位機器」の一具体例に対応している。
【0014】
(A.除細動カテーテル1a)
除細動カテーテル1aは、血管を通して患者9の体内(心腔内)に挿入されて、電気的な除細動を行うための電極カテーテルである。図2は、除細動カテーテル1aの概略構成例を、模式的に表している。除細動カテーテル1aは、カテーテル本体としてのシャフト11(カテーテルシャフト)と、シャフト11の基端に装着されたハンドル12とを有している。
【0015】
(シャフト11)
シャフト11は、可撓性を有する管状構造(管状部材)からなり、自身の軸方向(Z軸方向)に沿って延在している。シャフト11は、例えば、ポリオレフィン、ポリアミド、ポリエーテルポリアミド、ポリウレタン等の合成樹脂により構成されている。シャフト11は、ルーメン(細孔,貫通孔)が内部に形成されている。ルーメンには、図示しない各種の細線(導線または操作用ワイヤ等)がそれぞれ、互いに電気的に絶縁された状態で挿通されている。
【0016】
シャフト11の先端領域P1には、例えば図2に示したように、複数の電極(先端電極110およびリング状電極111,112,113)が設けられている。具体的には、シャフト11の軸方向(Z軸方向)に沿って、1つの先端電極110および複数のリング状電極111,112,113がそれぞれ、シャフト11の先端側から基端側へ向けて、この順で所定の間隔をおいて配置されている。リング状電極111,112,113はそれぞれ、シャフト11の外周面上に固定配置され、先端電極110は、シャフト11の最先端に固定配置されている。図2に示したように、互いに間隔をおいて配置された複数のリング状電極111によって、電極群111Gが構成されている。同様に、互いに間隔をおいて配置された複数のリング状電極112によって、電極群112Gが構成され、互いに間隔をおいて配置された複数のリング状電極113によって、電極群113Gが構成されている。
【0017】
なお、ここで言う「電極群」とは、同一の極を構成し(同一の極性を有し)、または、同一の目的を持って、狭い間隔(例えば5mm以下)で装着された複数の電極の集合体を意味している。
【0018】
リング状電極111,112,113はそれぞれ、シャフト11のルーメン内に挿通された複数の導線(リード線)を介して、ハンドル12と電気的に接続されている。詳細は後述するが、リング状電極111,112,113を用いて測定された心電位信号Sc1が、導線を介して電源装置2側へと出力される(図1参照)。一方、この例では先端電極110には、導線が接続されていない。ただし、先端電極110にも導線が接続されているようにしてもよい。
【0019】
先端電極110およびリング状電極111,112,113はそれぞれ、例えば、アルミニウム(Al)、銅(Cu)、ステンレス鋼(SUS)、金(Au)、白金(Pt)等の、電気伝導性の良好な金属材料、あるいは、各種の樹脂材料により構成されている。
【0020】
電極群111Gは、同一の極(-極または+極)を構成することになる、複数のリング状電極111からなる。電極群111Gを構成するリング状電極111の個数は、電極の幅および配置間隔によっても異なるが、例えば4~13個であり、好ましくは8~10個である。リング状電極111の幅(軸方向の長さ)は、例えば2~5mm程度であることが好ましく、好適な一例を示せば、4mmである。リング状電極111の装着間隔(隣り合う電極の離間距離)は、例えば1~5mm程度であることが好ましく、好適な一例を示せば、2mmである。なお、除細動カテーテル1aの使用時(心腔内に配置されるとき)において電極群111Gは、例えば冠状静脈内に位置する。
【0021】
電極群112Gは、電極群111Gとは逆の極(+極または-極)を構成することになる、複数のリング状電極112からなる。電極群112Gを構成するリング状電極112の個数は、電極の幅および配置間隔によっても異なるが、例えば4~13個であり、好ましくは8~10個である。リング状電極112の幅(軸方向の長さ)は、例えば2~5mm程度であることが好ましく、好適な一例を示せば、4mmである。リング状電極112の装着間隔(隣り合う電極の離間距離)は、例えば1~5mm程度であることが好ましく、好適な一例を示せば、2mmである。なお、除細動カテーテル1aの使用時において電極群112Gは、例えば右心房に位置する。
【0022】
電極群113Gは、図2の例では、4個のリング状電極113から構成されている。リング状電極113の幅(軸方向の長さ)は、例えば0.5~2.0mm程度であることが好ましく、好適な一例を示せば、1.2mmである。リング状電極113の装着間隔(隣り合う電極の離間距離)は、例えば1.0~10.0mm程度であることが好ましく、好適な一例を示せば、5mmである。なお、除細動カテーテル1aの使用時において電極群113Gは、例えば、異常電位が発生しやすい上大静脈に位置する。
【0023】
(ハンドル12)
ハンドル12は、ハンドル本体121(把持部)および回転板122を有している。
【0024】
ハンドル本体121は、除細動カテーテル1aの使用時に操作者(医師)が掴む(握る)部分である。ハンドル本体121の内部には、シャフト11の内部から前述した各種の細線(導線および操作用ワイヤ等)がそれぞれ、互いに電気的に絶縁された状態で引き出されている。
【0025】
回転板122は、シャフト11の先端付近を湾曲させる際の操作が行われる部材である。例えば、図2中の矢印d1で示した方向に沿って、回転板122を回転させる操作(回転操作)が、可能となっている。
【0026】
(B.電極カテーテル1b)
電極カテーテル1bは、除細動カテーテル1aを用いた電気的な除細動を行う際に使用されるカテーテルであり、除細動カテーテル1aとは別個に設けられている。
【0027】
電極カテーテル1bは、除細動カテーテル1aと同様に、先端付近に電極を有するシャフトと、シャフトの基端側に装着されたハンドルとを、有している。詳細は後述するが、電極カテーテル1bにおけるシャフト上の電極を用いて測定された心電位信号Sc2が、所定の導線を介して、後述する切替機器3側へと出力される(図1参照)。
【0028】
(C.電源装置2)
電源装置2は、除細動カテーテル1aに対して電力を供給する。電源装置2は、図1に示したように、入力部21、電源部22、内部回路24、切替部31、表示部25および音声出力部26を有している。また、詳細は後述するが、電源装置2では、「心電位測定モード」、「インピーダンス測定モード」および「除細動モード」の複数種類(3種類)のモード間での切り替えが、可能となっている。
【0029】
「心電位測定モード」は、上記した除細動カテーテル1aまたは電極カテーテル1bを用いて、心電位測定が行われるモードである。「インピーダンス測定モード」は、除細動カテーテル1aを用いて、後述するインピーダンスZの測定処理が行われるモードである。「除細動モード」は、除細動カテーテル1aを用いて、電気的な除細動が行われるモードである。
【0030】
(入力部21,電源部22)
入力部21は、各種の設定値または所定の動作を指示するための指示信号(操作信号Sin)を、出力する部分である。操作信号Sinは、電源装置2の操作者(例えば技師等)によるボタン(スイッチ)等の操作に応じて、入力部21から内部回路24へ向けて出力される。ただし、各種の設定値が、操作者による操作に応じて入力されるのではなく、例えば、製品の出荷時等に予め電源装置2内で設定されているようにしてもよい。
【0031】
なお、上記したスイッチとしては、例えば、上記した複数種類のモード間での切り替えを行うためのモード切替スイッチ、除細動の際に印加する電気エネルギー(直流電圧Vdc)を設定する印加エネルギー設定スイッチ、電源部22を充電するための充電スイッチ、電気エネルギーを印加して除細動を実行するためのエネルギー印加スイッチ(放電スイッチ)等が挙げられる。
【0032】
電源部22は、内部回路24による制御に従って、除細動カテーテル1aにおける電極群111G,112G(リング状電極111,112)へ向けて、電力(上記した直流電圧Vdc)を出力する。電源部22は、所定の電源回路(例えばスイッチングレギュレータ等)、および、電気エネルギーを充電するためのコンデンサ(容量素子)等を用いて構成されている。
【0033】
(内部回路24)
内部回路24は、電源装置2全体を制御すると共に所定の演算処理を行う部分であり、例えばマイクロコンピュータ等を用いて構成されている。内部回路24は、電源部22、後述する切替部31,32、表示部25および音声出力部26における動作をそれぞれ、制御する。内部回路24は、図1に示したように、出力回路241、記憶部242、インピーダンス測定回路243および切替制御部244を有している。
【0034】
出力回路241は、電源部22から出力された直流電圧Vdcを、後述する切替部31および出力端子を介して、除細動カテーテル1a側(電極群111G,112G)へと出力する。具体的には、出力回路241は、電極群111G,112Gが互いに異なる極性となる(一方の電極群が-極のときには、他方の電極群は+極となる)ように、直流電圧Vdcを出力する。
【0035】
記憶部242は、各種データを保持する部分(メモリ)である。
【0036】
インピーダンス測定回路243は、除細動カテーテル1aを用いて、インピーダンスZの測定を行う。具体的には、インピーダンス測定回路243は、除細動カテーテル1aにおける前述した電極群111G,112G間のインピーダンスZの測定を行う。なお、インピーダンスZの測定値は、後述する切替部31を介して、インピーダンス測定回路243へと入力される。
【0037】
切替制御部244は、制御信号CTLを用いて、後述する切替部31,32に対する切替制御を行う。具体的には、切替制御部244は、切替部31における前述した直流電圧Vdc、心電位信号Sc1およびインピーダンスZの供給経路に関する切替制御を行うと共に、切替部32における前述した心電位信号Sc2の供給経路に関する切替制御を行う。なお、切替制御部244による切替制御の詳細については、後述する(図3A図8)。
【0038】
(切替部31)
切替部31は、3つの接点31a~31cを含むリレー構造を有している。接点31aは、配線を介して除細動カテーテル1aと電気的に接続され、接点31bは、配線を介して心電計4と電気的に接続され、接点31cは、配線を介して内部回路24と電気的に接続されている。切替部31は、除細動カテーテル1aと、心電計4(および心電図表示装置5)と、内部回路24との間の接続状態を、切り替える。具体的には、詳細は後述するが、切替制御部244から供給される制御信号CTLに応じて、切替部31内の接点31aが、接点31b(心電計4側)または接点31c(内部回路24側)へと接続されるように、接続状態の切替が行われる。
【0039】
なお、切替部31は、本開示における「第1切替部」の一具体例に対応しており、接点31aは、本開示における「第1接点」の一具体例に対応している。
【0040】
(表示部25,音声出力部26)
表示部25は、各種の情報を表示して外部へと出力する部分(モニター)である。
【0041】
音声出力部26は、内部回路24から供給される音声信号Ss(図1参照)に基づいて、各種の音声を外部へと出力する部分である。
【0042】
(D.心電計4)
心電計4は、心電位信号等の情報を記録する。図1の例では、心電計4は、除細動カテーテル1aから上記した切替部31を介して出力された心電位信号Sc1と、電極カテーテル1bから後述する切替機器3(切替部32)を介して出力された心電位信号Sc2とをそれぞれ、入力して記録する。なお、心電位信号Sc1,Sc2はそれぞれ、心電計4から心電図表示装置5へと出力される。
【0043】
(E.心電図表示装置5)
心電図表示装置5は、心電計4から出力される心電位信号(心電位信号Sc1または心電位信号Sc2)に基づいて、心電位波形(心電図)等を表示する。なお、心電計4および心電図表示装置5を総称して、ポリグラフ、生体情報モニタ、心臓カテーテル用検査装置、または、EPレコーディングシステムと呼ばれる場合もある。心電図表示装置5に表示される心電位波形等は、例えば除細動カテーテル1aの操作者(医師)によって、随時監視される。
【0044】
(F.切替機器3)
切替機器3は、切替部32を備えている。つまり、本実施の形態では、以下説明する切替部32が、電源装置2とは別個に設けられた切替機器3内に、設けられている。
【0045】
切替部32は、上記した切替部31と同様に、3つの接点32a~32cを含むリレー構造を有している。接点32aは、配線を介して電極カテーテル1bと電気的に接続され、接点32bは、配線を介して心電計4と電気的に接続され、接点31cは、外部とは接続されていない(外部とは遮断された)状態になっている。切替部32は、電極カテーテル1b(接点32a)と、心電計4(および心電図表示装置5)との間の接続状態を、切り替える。具体的には、詳細は後述するが、切替制御部244から供給される制御信号CTLに応じて、切替部32内の接点32aが、接点32b(心電計4側)または接点32cへと接続されるように、接続状態の切替が行われる。言い換えると、接点32aと心電計4(および心電図表示装置5)との間が、接続される(接点32a,32b同士が接続される)か、あるいは、遮断される(接点32a,32c同士が接続される)ように、電極カテーテル1bと心電計4との間の接続状態の切替が行われる。
【0046】
なお、切替部32は、本開示における「切替部」および「第2切替部」の一具体例に対応しており、接点32aは、本開示における「第2接点」の一具体例に対応している。
【0047】
[動作および作用・効果]
(A.基本動作)
除細動システム6では、例えば心臓カテーテル術中における除細動治療(除細動処理)の際などに、除細動カテーテル1aにおけるシャフト11の先端側が、血管を通して患者9の体内に挿入される(図1参照)。このとき、除細動カテーテル1aの操作者(医師)によるハンドル12での操作に応じて、患者9の体内に挿入されたシャフト11の先端領域P1付近の形状が、変化する。具体的には、操作者の指によって、例えば図2中の矢印d1で示した方向に沿って、回転板122が回転されると、シャフト11内で図示しない操作用ワイヤが、基端側へ引っ張られる。その結果、シャフト11の先端領域P1付近が、図2中の矢印d2で示した方向に沿って湾曲する。
【0048】
(A-1.除細動処理)
ここで、上記した除細動処理を行う際には、電源装置2(電源部22)から除細動カテーテル1aの電極群111G,112G(リング状電極111,112)に対し、除細動のための電気エネルギーとしての直流電圧Vdcが供給される。具体的には、電極群111G,112Gが互いに異なる極性となる(一方の電極群が-極のときには、他方の電極群は+極となる)ように、電源装置2内の出力回路241から直流電圧Vdcが出力される。電極群111G,112Gが互いに異なる極性となる直流電圧Vdcが、患者9の体内に挿入された除細動カテーテル1aの先端領域P1から患者9の心臓に対し、直接的な電気エネルギーとして付与されることで、電気的な除細動処理がなされる。
【0049】
除細動システム6(除細動カテーテル1a)を用いた除細動処理では、例えば、電気エネルギーを患者の体外から供給する機器である、AED(Automated External Defibrillator:自動体外式除細動器)等と比べ、以下の利点がある。すなわち、まず、心腔内に配置された除細動カテーテル1aの電極群111G,112Gによって、細動を起こした心臓に対して直接的に電気エネルギーが付与されることで、除細動治療に必要かつ十分な電気的刺激(電気ショック)が、心臓に確実に供給される。その結果、例えば上記したAED等を用いた場合と比べ、より効果的(効率的)な除細動処理を行うことが可能となる。また、心臓に対して直接的に電気エネルギーを付与することから、例えば上記したAED等を用いた場合とは異なり、患者9の体表面に火傷を生じさせることがなくなるため、除細動処理の際の患者への侵襲性を低減することも可能となる。
【0050】
(A-2.心電位の測定処理)
一方、患者9の心電位を測定する際には、患者9の体内に挿入された除細動カテーテル1aまたは電極カテーテル1bを用いて、心電位(心電位信号Sc1,Sc2)が測定される(図1参照)。測定された心電位信号Sc1,Sc2はそれぞれ、切替部31,32を介して心電計4へと入力された後、心電図表示装置5へと供給される(図1参照)。そして、心電位信号Sc1,Sc2に基づく心電位波形が心電図表示装置5に表示されることで、電源装置2の操作者(技師等)または除細動カテーテル1aの操作者(医師)によって、心電位波形が適宜監視される。
【0051】
ところで、除細動カテーテルおよび電極カテーテルを用いた従来の除細動システムでは、電気的な除細動の実行後は、所定期間(例えば8[s]程度)の間、電極カテーテルにて測定される心電位の監視(心電位波形の表示)ができないという問題がある。これは、除細動の際に除細動カテーテルから発生した電気的なエネルギーの影響を、電極カテーテルを経由して、心電計および心電図表示装置にて受けてしまうためである。このようにして従来の除細動システムでは、除細動の実行後において心電位の監視ができない期間が発生することから、使用する際の利便性が損なわれるおそれがある。
【0052】
(B.除細動処理の詳細について)
そこで、本実施の形態の除細動システム6では、上記した除細動処理の際に、切替制御部244によって、以下説明する切替制御を行う。以下では図3A図8を参照して、切替制御を含む除細動処理(除細動治療)の詳細について、説明する。
【0053】
図3A図3Bはそれぞれ、本実施の形態に係る除細動処理の一例を、流れ図で表している。図4は、図3Aに示したインピーダンスZの測定処理(ステップS15参照)の際の動作状態例を、模式的にブロック図で表している。図5は、図3Aに示した心電位の測定処理(除細動の実行前:ステップS18参照)の際の動作状態例を、模式的にブロック図で表している。図6は、図3Bに示した除細動の実行期間:ステップS23~S24参照)の際の動作状態例を、模式的にブロック図で表している。図7は、図3Bに示した除細動の実行期間:ステップS23~S24参照)の際の詳細な動作状態例を、模式的に回路図で表している。図8は、図3Bに示した心電位の測定処理(除細動の実行後:ステップS27参照)の際の動作状態例を、模式的にブロック図で表している。
【0054】
図3A図3Bに示した除細動処理では、まず、電源装置2の電源がオン(ON)状態になる(ステップS11)と、除細動の際の印加エネルギーの設定が行われる(ステップS12)。具体的には、電源装置2の操作者(技師等)による入力部21への操作(例えば、前述した印加エネルギー設定スイッチへの操作)によって、操作信号Sinが内部回路24へと供給されることで、除細動の際の印加エネルギーの設定が行われる。なお、この際の印加エネルギーは、例えば1J(ジュール)から30Jまでの範囲内で、1J刻みで設定される。
【0055】
続いて、電源装置2の操作者による入力部21への操作(例えば、前述したモード切替スイッチへの操作)によって、操作信号Sinが内部回路24へと供給されることで、除細動を実行するための「除細動モード」へと移行する(ステップS13)。すると、次に切替制御部244が制御信号CTLを用いて、切替部31内における接点31aの接続先が、接点31b側(心電計4側)から接点31c側(内部回路24側)へと切り替わるように、切替部31に対する切替制御を行う(ステップS14)。これにより、除細動カテーテル1aと内部回路24との間が接続されると共に、除細動カテーテル1aと心電計4との間が遮断される(図4参照)。
【0056】
次に、例えば図4に示したように、インピーダンス測定回路243において、除細動カテーテル1aにおける前述した電極群111G,112G間のインピーダンスZの測定処理が行われる(ステップS15)。つまり、除細動システム6が前述した「抵抗測定モード」に設定されることで、インピーダンスZの測定処理が行われる。なお、インピーダンスZの測定値は、切替部31(接点31a,31c)を介して、除細動カテーテル1aからインピーダンス測定回路243へと入力される(図4参照)。
【0057】
次に、切替制御部244は制御信号CTLを用いて、切替部31内における接点31aの接続先が、接点31c側(内部回路24側)から接点31b側(心電計4側)へと切り替わるように、切替部31に対する切替制御を行う(ステップS16)。これにより、除細動カテーテル1aと内部回路24との間が遮断されると共に、除細動カテーテル1aと心電計4との間が接続される(図1参照)。
【0058】
続いて、電源装置2内の内部回路24は、インピーダンスZの測定値が、所定の閾値Zth1,Zth2により規定される所定の範囲内に収まっているのか否か(Zth1<Z<Zth2を満たすのか否か)について、判定を行う(ステップS17)。
【0059】
ここで、インピーダンスZが所定の範囲内に収まっていない(Z≦Zth1またはZth2≦Zに該当する)と判定された場合(ステップS17:N)、除細動カテーテル1aの電極群111G,112Gが、患者9の体内の所定の部位(例えば、冠状静脈の管壁または右心房の内壁など)に、確実に当接されていないことを意味する。したがって、この場合には、前述した「心電位測定モード」へと移行し(ステップS18)、除細動の実行前における心電位の測定処理が行われる。具体的には、例えば図5に示したように、除細動カテーテル1aを用いて測定された心電位信号Sc1が、切替部31(接点31a,31b)を介して、除細動カテーテル1aから心電計4(および心電図表示装置5)へと供給される。また、電極カテーテル1bを用いて測定された心電位信号Sc2が、切替部32(接点32a,32b)を介して、電極カテーテル1bから心電計4(および心電図表示装置5)へと供給される。これにより心電図表示装置5において、心電位信号Sc1,Sc2に基づく心電位(心電位波形)の表示がなされる。なお、その後は、前述したステップS12へと戻る。
【0060】
一方、インピーダンスZが所定の範囲内に収まっている(Zth1<Z<Zth2を満たす)と判定された場合(ステップS17:Y)、上記したように、除細動カテーテル1aの電極群111G,112Gが、患者9の体内の所定の部位に確実に当接されていることを意味している。したがって、この場合には次に、電源装置2における電源部22内のコンデンサに対して、除細動のためのエネルギー(電荷)の充電が行われる(ステップS19)。具体的には、電源装置2の操作者による入力部21への操作(例えば、前述した充電スイッチへの操作)によって、操作信号Sinが内部回路24へと供給されることで、電源部22内のコンデンサに、除細動のためのエネルギーが充電される。
【0061】
次に、上記したコンデンサへのエネルギー充電の完了後、除細動の待機状態へと移行する(ステップS20)。具体的には、電源装置2の操作者による入力部21への操作(例えば、前述したエネルギー印加スイッチへの操作)によって、操作信号Sinが内部回路24へと供給されることで、除細動の待機状態へと移行する。
【0062】
すると、次に切替制御部244が制御信号CTLを用いて、切替部31内における接点31aの接続先が、接点31b側(心電計4側)から接点31c側(内部回路24側)へと切り替わるように、切替部31に対する切替制御を行う(ステップS21)。これにより、除細動カテーテル1aと内部回路24との間が接続されると共に、除細動カテーテル1aと心電計4との間が遮断される(図6参照)。
【0063】
続いて、切替制御部244が制御信号CTLを用いて、切替部32内における接点32aの接続先が、接点32b側(心電計4側)から接点32c側へと切り替わるように、切替部32に対する切替制御を行う(ステップS22)。これにより、電極カテーテル1b(接点32a)と心電計4(および心電図表示装置5)との間が遮断されて、遮断状態となる(図6参照)。
【0064】
ここで、上記したステップS21(除細動実行前の切替部31に対する切替制御)とステップS22(除細動実行前の切替部32に対する切替制御)との実行順序については(図3B中の符号P21参照)、例えば、図3Bの例とは逆であってもよい。すなわち、ステップS22(除細動実行前の切替部32に対する切替制御)が行われた後に、ステップS21(除細動実行前の切替部31に対する切替制御)が行われるようにしてもよい。
【0065】
続いて、所定のトリガタイミングにて除細動が開始され(ステップS23)、除細動の実行期間(前述した「除細動モード」:図6参照)へと移行する。この除細動の実行期間では、切替部31内の接点31aが接点31c側(内部回路24側)へと接続されていることで、電源装置2内の電源部22から出力された直流電圧Vdcが、出力回路241および切替部31(接点31c,31a)を介して、除細動カテーテル1aへと供給される(図6参照)。これにより、除細動カテーテル1aにおける電極群111G,112G間に、電気エネルギーとしての直流電圧Vdcが印加されることで、患者9の体内での除細動が行われる。一方、除細動の実行期間においては上記したように、切替部32内の接点32aが接点32c側へと接続されていることで、電極カテーテル1b(接点32a)と心電計4(および心電図表示装置5)との間が、遮断される。これにより、電極カテーテル1bを用いて測定される心電位信号Sc2が、心電計4および心電図表示装置5の側へと、入力されなくなる(図6参照)。
【0066】
ここで、図7を参照して、上記した除細動の実行期間における詳細な動作状態例について説明する。図7(A)は、除細動の実行期間における「+」側の除細動出力の際の動作状態例を、模式的に回路図で示している。図7(B)は、除細動の実行期間における「-」側の除細動出力の際の動作状態例を、模式的に回路図で示している。
【0067】
なお、図7(A),図7(B)では、説明の便宜上、除細動システム6における一部の構成を抜粋して、部分的に簡略化して図示している。具体的には、電源部22は、前述したコンデンサ(コンデンサC)を含んでいる。切替部31は、前述した接点31a,31c間を接続または遮断させるリレーRLを含んでおり、便宜上、心電計4側の接点31bに関する図示は省略されている。出力回路241は、回路内の一部の部品として、例えばFET(Field Effect Transistor)により構成された、4つのスイッチSW1~4を含んでいる。
【0068】
スイッチSW1は、接続点P31,P32間を繋ぐ配線上に配置され、スイッチSW2は、接続点P32,P34間を繋ぐ配線上に配置されている。スイッチSW3は、接続点P31,P33間を繋ぐ配線上に挿入配置され、スイッチSW4は、接続点P33,P34間を繋ぐ配線上に挿入配置されている。接続点P31は、配線を介してコンデンサCの一端側に接続されており、接続点P34は、配線を介してコンデンサCの他端側に接続されている。接続点P32,P33間の配線上には、リレーRLを介して除細動カテーテル1aが配置されている。
【0069】
ここで、上記したステップS20において、例えばエネルギー印加スイッチへの操作によって、コンデンサCへのエネルギー充電完了後における除細動の待機状態へと移行すると、切替部31内のリレーRLがオン状態となる。これにより、図7(A),図7(B)に示したように、内部回路241と除細動カテーテル1aとの間が接続された状態となる(上記したステップS21参照)。そして、上記したステップS23から下記のステップS24までの、除細動の実行期間へと移行する。この除細動の実行期間では、詳細には、以下のステップS31~S34の各処理が行われる。言い換えると、以下のステップS31~S34の各処理が行われる期間が、本開示における「除細動の実行期間」の一具体例に対応している。
【0070】
まず、ステップS31では、図7(A)に示したように、スイッチSW1,SW4がそれぞれオン状態に設定されると共に、スイッチSW2,SW3がそれぞれオフ状態に設定される。なお、初期状態においては、全てのスイッチSW1~4が、オフ状態に設定されている。すると、コンデンサCに充電されていた除細動エネルギーEが、コンデンサCの一端側から、スイッチSW1、リレーRLおよび除細動カテーテル1a、ならびにスイッチSW4を経由して、コンデンサCの他端側へと循環する。これにより、電源部22から除細動カテーテル1aに対して除細動エネルギーEの供給がなされ、「+」側の除細動出力が行われる。
【0071】
次に、ステップS32では、スイッチSW1,SW4がそれぞれ、オン状態からオフ状態へと切り替わる。
【0072】
続いて、ステップS33では、スイッチSW2,SW3がそれぞれ、オフ状態からオン状態へと切り替わる。すると、図7(B)に示したように、コンデンサCに充電されていた除細動エネルギーEが、コンデンサCの一端側から、スイッチSW3、リレーRLおよび除細動カテーテル1a、ならびにスイッチSW2を経由して、コンデンサCの他端側へと循環する。これにより、電源部22から除細動カテーテル1aに対して、上記した図7(A)の場合とは逆向き(除細動カテーテル1a内における逆向き)での除細動エネルギーEの供給がなされ、「-」側の除細動出力が行われる。
【0073】
そして、ステップS34では、スイッチSW2,SW3がそれぞれ、オン状態からオフ状態へと切り替わり、以下のステップS24にて、除細動が停止されることになる(上記した除細動の実行期間が終了となる)。なお、後述するステップS26(除細動実行後の切替部31に対する切替制御)において、切替部31内のリレーRLが、オン状態からオフ状態へと切り替わる。
【0074】
次に、所定時間の経過後に、内部回路24が電源部22からの直流電圧Vdcの出力を停止させることで、除細動が停止され(ステップS24)、上記した除細動の実行期間が終了となる。
【0075】
すると、次に切替制御部244は制御信号CTLを用いて、切替部32内における接点32aの接続先が、接点32c側から接点32b側(心電計4側)へと切り替わるように、切替部32に対する切替制御を行う(ステップS25)。これにより、電極カテーテル1b(接点32a)と心電計4(および心電図表示装置5)との間が接続されて、接続状態となる(図8参照)。
【0076】
続いて、切替制御部244は制御信号CTLを用いて、切替部31内における接点31aの接続先が、接点31c側(内部回路24側)から接点31b側(心電計4側)へと切り替わるように、切替部31に対する切替制御を行う(ステップS26)。これにより、除細動カテーテル1aと内部回路24との間が遮断されると共に、除細動カテーテル1aと心電計4との間が接続される(図8参照)。
【0077】
ここで、上記したステップS25(除細動実行後の切替部32に対する切替制御)とステップS26(除細動実行後の切替部31に対する切替制御)との実行順序についても(図3B中の符号P22参照)、例えば、図3Bの例とは逆であってもよい。すなわち、ステップS26(除細動実行後の切替部31に対する切替制御)が行われた後に、ステップS25(除細動実行後の切替部32に対する切替制御)が行われるようにしてもよい。
【0078】
次いで、前述した「心電位測定モード」へと移行し、除細動の実行後における心電位の測定処理が行われる(ステップS27)。具体的には、例えば図8に示したように、除細動カテーテル1aを用いて測定された心電位信号Sc1が、切替部31(接点31a,31b)を介して、除細動カテーテル1aから心電計4(および心電図表示装置5)へと供給される。また、電極カテーテル1bを用いて測定された心電位信号Sc2が、切替部32(接点32a,32b)を介して、電極カテーテル1bから心電計4(および心電図表示装置5)へと供給される。これにより心電図表示装置5において、心電位信号Sc1,Sc2に基づく心電位(心電位波形)の表示がなされる。
【0079】
その後、電源装置2の電源がオフ(OFF)状態になることで(ステップS28)、図3A図3Bに示した一連の除細動処理が終了となる。
【0080】
(C.作用・効果)
本実施の形態では、電極カテーテル1bと心電計4(および心電図表示装置5)との間の接続状態が、切り替えられると共に、除細動カテーテル1aを用いた除細動の実行期間では、電極カテーテル1bと心電計4(および心電図表示装置5)との間が遮断されるように、接続状態の切替制御が行われる。
【0081】
これにより本実施の形態では、前述した従来の除細動システムとは異なり、除細動の際に除細動カテーテル1aから発生した電気的なエネルギーの影響を、電極カテーテル1bを経由して心電計4および心電図表示装置5にて受けてしまうおそれが、回避される。つまり、本実施の形態では従来の除細動システムとは異なり、除細動の実行後での心電位の監視ができない期間の発生を、回避することができる。その結果、本実施の形態では、除細動システム6(電源装置2および切替機器3)を使用する際の利便性を、向上させることが可能となる。
【0082】
特に本実施の形態では、切替部31,32のうちの切替部32については、電源装置2とは別個に設けられた(外付け型の)切替機器3内に設けるようにしたので、例えば以下のような効果を得ることも可能となる。すなわち、電源装置2自体については、既存の構成のままで済むことから、外付け型の切替機器3を別途設けるだけで、除細動システム6全体として上記した切替制御を実現できる結果、利便性を更に向上させることが可能となる。
【0083】
<2.変形例>
続いて、上記実施の形態の変形例(変形例1,2)について説明する。なお、実施の形態における構成要素と同一のものには同一の符号を付し、適宜説明を省略する。
【0084】
[変形例1]
(構成)
図9は、変形例1に係る除細動システム6Aの全体構成例を、模式的にブロック図で表している。変形例1の除細動システム6Aは、除細動カテーテル1a、電極カテーテル1bおよび電源装置2Aを備えている。つまり、除細動システム6Aでは、実施の形態の除細動システム6(図1)において、切替機器3が設けられていない(省かれている)と共に、電源装置2の代わりに電源装置2Aが設けられており、他の構成は同様となっている。
【0085】
電源装置2Aは、入力部21、電源部22、内部回路24、切替部31,32、表示部25および音声出力部26を有している。つまり、電源装置2Aでは、実施の形態の電源装置2(図1)において、切替部32が更に設けられており、他の構成は同様となっている。言い換えると、実施の形態の除細動システム6(図1)において、切替機器3内に設けられていた切替部32が、変形例1の除細動システム6Aでは、電源装置2A内に設けられている(内蔵されている)。
【0086】
(作用・効果)
変形例1においても、基本的には、実施の形態と同様の作用により、同様の効果を得ることが可能となる。すなわち、変形例1においても、実施の形態と同様にして切替制御を行うことで、除細動システム6A(電源装置2A)を使用する際の利便性を、向上させることが可能となる。
【0087】
特に変形例1では、切替部31,32の双方を、電源装置2A内に設けるようにしたので、例えば以下のような効果を得ることも可能となる。すなわち、切替部31,32における2つの切替機能をそれぞれ、電源装置2A内に集約させることで、外付け型の切替機器3が不要となり、機器間の接続配線が簡素化されることから、除細動システム6A全体の構成の簡素化を図ることが可能となる。
【0088】
[変形例2]
図10は、変形例2に係る除細動システム6Bの全体構成例を、模式的にブロック図で表している。変形例2の除細動システム6Bは、除細動カテーテル1a、電極カテーテル1b、電源装置2Bおよび切替機器3Bを備えている。つまり、除細動システム6Bでは、実施の形態の除細動システム6(図1)において、電源装置2の代わりに電源装置2Bが設けられていると共に、切替機器3の代わりに切替機器3Bが設けられており、他の構成は同様となっている。
【0089】
電源装置2Bは、入力部21、電源部22、内部回路24、表示部25および音声出力部26を有している。つまり、電源装置2Bでは、実施の形態の電源装置2(図1)において、切替部31が設けられておらず(省かれており)、他の構成は同様となっている。
【0090】
切替機器3Bは、切替部31,32をそれぞれ有している。つまり、切替機器3Bでは、実施の形態の切替機器3(図1)において、切替部32が更に設けられており、他の構成は同様となっている。言い換えると、実施の形態の除細動システム6(図1)において、電源装置2内に設けられていた切替部32が、変形例2の除細動システム6Bでは、切替機器3B内に設けられている(内蔵されている)。
【0091】
(作用・効果)
変形例2においても、基本的には、実施の形態と同様の作用により、同様の効果を得ることが可能となる。すなわち、変形例2においても、実施の形態と同様にして切替制御を行うことで、除細動システム6B(電源装置2Bおよび切替機器3B)を使用する際の利便性を、向上させることが可能となる。
【0092】
特に変形例2では、切替部31,32の双方を、切替機器3B内に設けるようにしたので、例えば以下のような効果を得ることも可能となる。すなわち、切替部31,32における2つの切替機能をそれぞれ、切替機器3B内に集約させることで、電源装置2Bの構成の簡素化(小型化)を図ることが可能となる。
【0093】
<3.その他の変形例>
以上、実施の形態および変形例をいくつか挙げて本開示を説明したが、本開示はこれらの実施の形態等に限定されず、種々の変形が可能である。
【0094】
例えば、上記実施の形態等では、除細動カテーテル1aの構成を具体的に挙げて説明したが、必ずしも全ての部材を備える必要はなく、また、他の部材を更に備えていてもよい。また、シャフト11における電極の構成(リング状電極および先端電極の配置、形状、個数等)は、上記実施の形態等で挙げたものには限られない。更に、除細動カテーテル1aにおける各部材の構成(形状、配置、材料、個数等)については、上記実施の形態等で説明したものには限られず、他の形状、配置、材料、個数等であってもよい。加えて、上記実施の形態等で説明した各種パラメータの値、範囲、大小関係等についても、上記実施の形態等で説明したものには限られず、他の値、範囲、大小関係等であってもよい。
【0095】
上記実施の形態等では、シャフト11における先端領域P1付近の形状が、ハンドル12での操作に応じて片方向に変化するタイプの除細動カテーテルを例に挙げて説明したが、この例には限られない。すなわち、本開示は、例えば、シャフト11における先端領域P1付近の形状がハンドル12での操作に応じて両方向に変化するタイプの除細動カテーテルにも適用することが可能であり、この場合には操作用ワイヤを複数本用いることとなる。また、本開示は、シャフト11における先端領域P1付近の形状が固定となっているタイプの除細動カテーテルにも適用することが可能であり、この場合には、操作用ワイヤや回転板122等が不要となる。
【0096】
上記実施の形態等では、電源装置および切替機器における各ブロック構成を具体的に挙げて説明したが、上記実施の形態等で説明した各ブロックを必ずしも全て備える必要はなく、また、他のブロックを更に備えていてもよい。また、除細動システム全体としても、上記実施の形態等で説明した各装置を必ずしも全て備える必要はなく、また、他の装置を更に備えていてもよい。具体的には、除細動カテーテル1aおよび電極カテーテル1bのうちの少なくとも一方が、除細動システム内に含まれないように構成してもよい。また、例えば、心電計4および心電図表示装置5のうちの少なくとも一方が、除細動システム内に含まれるように構成してもよい。更に、心電位信号を測定する電極カテーテルが、1つだけでなく、複数設けられているようにしてもよい。
【0097】
上記実施の形態等では、切替部31,32の各構成を具体的に挙げて説明したが、この場合の例には限られず、他の構成を用いるようにしてもよい。
【0098】
上記実施の形態等では、切替部31,32に対する切替制御処理を含めた除細動処理全体について、具体的に挙げて説明したが、切替制御処理および除細動処理全体の処理手法についてはそれぞれ、上記実施の形態等で挙げた手法には限られない。すなわち、他の手法を用いて、切替制御処理および除細動処理全体を行うようにしてもよい。
【0099】
上記実施の形態等で説明した一連の処理は、ハードウェア(回路)で行われるようにしてもよいし、ソフトウェア(プログラム)で行われるようにしてもよい。ソフトウェアで行われるようにした場合、そのソフトウェアは、各機能をコンピュータにより実行させるためのプログラム群で構成される。各プログラムは、例えば、上記コンピュータに予め組み込まれて用いられてもよいし、ネットワークや記録媒体から上記コンピュータにインストールして用いられてもよい。
【0100】
また、これまでに説明した各種の例を、任意の組み合わせで適用させるようにしてもよい。
【0101】
なお、本明細書中に記載された効果はあくまで例示であって限定されるものではなく、また、他の効果があってもよい。
【0102】
本開示は、以下のような構成を取ることも可能である。
(1)
電気的な除細動を行う除細動カテーテルに対して電力を供給する電源装置と、
電極カテーテルおよび心電位機器の間の接続状態を切り替える切替部と
を備え、
前記電極カテーテルは、前記除細動カテーテルとは別個に設けられており、
前記心電位機器では、前記除細動カテーテルまたは前記電極カテーテルを用いて測定された心電位の表示が行われ、
前記電源装置は、
前記電力を出力する電源部と、
前記除細動の実行期間において、前記電極カテーテルと前記心電位機器との間が遮断されるように、前記切替部に対する切替制御を行う切替制御部と
を有する除細動システム。
(2)
前記電源装置が、
前記切替制御部を含む内部回路と、
前記除細動カテーテルと電気的に接続されている第1接点が、前記心電位機器側または前記内部回路側へと接続されるように切り替える第1切替部と
を更に有しており、
前記切替部としての第2切替部が、前記電極カテーテルと電気的に接続されている第2接点と、前記心電位機器との間の接続状態を切り替え、
前記切替制御部は、前記除細動の実行期間において、
前記第1接点が前記内部回路側へと接続されて、前記電力が前記除細動カテーテルへと供給されると共に、
前記第2接点と前記心電位機器との間が遮断されるように、
前記第1切替部および前記第2切替部に対する切替制御を行う
上記(1)に記載の除細動システム。
(3)
前記切替制御部は、前記除細動の実行期間後に、
前記第1接点が前記心電位機器側へと接続されると共に、
前記第2接点と前記心電位機器との間が接続されるように、
前記第1切替部および前記第2切替部に対する切替制御を行う
上記(2)に記載の除細動システム。
(4)
電気的な除細動を行う除細動カテーテルに対して電力を供給する電源部と、
電極カテーテルおよび心電位機器の間の接続状態を切り替える切替部と、
前記除細動の実行期間において、前記電極カテーテルと前記心電位機器との間が遮断されるように、前記切替部に対する切替制御を行う切替制御部と
を備え、
前記電極カテーテルは、前記除細動カテーテルとは別個に設けられており、
前記心電位機器では、前記除細動カテーテルまたは前記電極カテーテルを用いて測定された心電位の表示が行われる
電源装置。
(5)
前記切替制御部を含む内部回路が設けられており、
前記切替部が、
前記除細動カテーテルと電気的に接続されている第1接点が、前記心電位機器側または前記内部回路側へと接続されるように切り替える第1切替部と、
前記電極カテーテルと電気的に接続されている第2接点と、前記心電位機器側との間の接続状態を切り替える第2切替部と
を含んでおり、
前記切替制御部は、前記除細動の実行期間前に、
前記第1接点が前記内部回路側へと接続されて、前記電力が前記除細動カテーテルへと供給されると共に、
前記第2接点と前記心電位機器との間が遮断されるように、
前記第1切替部および前記第2切替部に対する切替制御を行う
上記(4)に記載の電源装置。
(6)
電気的な除細動を行う除細動カテーテルに対して電力を供給する電源装置とは、別個に設けられた機器であって、
電極カテーテルおよび心電位機器の間の接続状態を切り替える切替部を備え、
前記電極カテーテルは、前記除細動カテーテルとは別個に設けられており、
前記心電位機器では、前記除細動カテーテルまたは前記電極カテーテルを用いて測定された心電位の表示が行われ、
前記除細動の実行期間において、前記電極カテーテルと前記心電位機器との間が遮断されるように、前記接続状態の切替制御が行われる
切替機器。
(7)
除細動カテーテルを用いて電気的な除細動を行う除細動システムの制御方法であって、
前記除細動カテーテルとは別個に電極カテーテルを設けると共に、心電位機器において、前記除細動カテーテルまたは前記電極カテーテルを用いて測定された心電位の表示を行い、
前記除細動の実行期間においては、前記電極カテーテルと前記心電位機器との間が遮断されるように、前記電極カテーテルおよび前記心電位機器の間の接続状態の切替制御を行う
除細動システムの制御方法。
【符号の説明】
【0103】
1a…除細動カテーテル、1b…電極カテーテル、11…シャフト、110…先端電極、111,112,113…リング状電極、111G,112G,113G…電極群、12…ハンドル、121…ハンドル本体、122…回転板、2,2A,2B…電源装置、21…入力部、22…電源部、24…内部回路、241…出力回路、242…記憶部、243…インピーダンス測定回路、244…切替制御部、25…表示部、26…音声出力部、3,3B…切替機器、31,32…切替部、31a~31c,32a~32c…接点、4…心電計、5…心電図表示装置、6,6A,6B…除細動システム、9…患者、Vdc…直流電圧、Z…インピーダンス、Zth1,Zth2…閾値、CTL…制御信号、Sc1,Sc2…心電位信号、Sin…操作信号、Ss…音声信号、P1…先端領域、P31~P34…接続点、SW1~SW4…スイッチ、RL…リレー、C…コンデンサ、E…除細動エネルギー。
図1
図2
図3A
図3B
図4
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図6
図7
図8
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図10