(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-03-18
(45)【発行日】2025-03-27
(54)【発明の名称】非水電解質二次電池
(51)【国際特許分類】
H01M 10/058 20100101AFI20250319BHJP
H01M 10/0525 20100101ALI20250319BHJP
H01M 10/0587 20100101ALI20250319BHJP
H01M 50/533 20210101ALI20250319BHJP
H01M 4/13 20100101ALI20250319BHJP
【FI】
H01M10/058
H01M10/0525
H01M10/0587
H01M50/533
H01M4/13
(21)【出願番号】P 2022509364
(86)(22)【出願日】2021-02-08
(86)【国際出願番号】 JP2021004630
(87)【国際公開番号】W WO2021192666
(87)【国際公開日】2021-09-30
【審査請求日】2023-10-11
(31)【優先権主張番号】P 2020055461
(32)【優先日】2020-03-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000001889
【氏名又は名称】三洋電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】太田 雅人
(72)【発明者】
【氏名】細川 尚士
【審査官】今井 拓也
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-192524(JP,A)
【文献】国際公開第2019/111742(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/163932(WO,A1)
【文献】特開2014-010970(JP,A)
【文献】特開平06-349460(JP,A)
【文献】特開2009-211970(JP,A)
【文献】特開2014-132591(JP,A)
【文献】国際公開第2018/116876(WO,A1)
【文献】国際公開第2019/054312(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 10/05 - 10/0587
H01M 10/36 - 10/39
H01M 50/50 - 50/598
H01M 4/00 - 4/62
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
正極板と負極板とを含む電極体と、
開口を有し、前記電極体を収容した角形外装体と、
前記開口を封口した封口板と、
前記封口板に設けられた電極端子と
を備えた非水電解質
リチウムイオン二次電池であって、
前記正極板は、正極芯体と該正極芯体の少なくとも一方の面に塗布された正極活物質とを備え、
前記正極芯体上における前記正極活物質の塗布部の周長は、電池の単位容量あたり0.28m/Ah以下であ
り、
前記負極板は、負極芯体と該負極芯体に塗布された負極活物質とを備え、
前記電極体においては、セパレータを介して前記正極板と前記負極板とが重ねられており、
前記負極板において前記負極活物質の塗布部のうち、前記正極活物質の塗布部と対向している部分の面積は、前記負極活物質の塗布部の全体面積の85%以上95%以下であり、
前記負極活物質は黒鉛であり、
前記正極板の活物質塗布範囲は対向している前記負極板の活物質塗布範囲の内側にあり、
1以上の前記電極体を含み、前記電極体一つあたりの容量は30Ah以上である、非水電解質
リチウムイオン二次電池。
【請求項2】
前記正極芯体上における前記正極活物質の塗布部の周長は、電池の単位容量あたり0.11m/Ah以下である、請求項1に記載の非水電解質
リチウムイオン二次電池。
【請求項3】
前記電極体は前記正極板と前記負極板とを対向させて巻回した形状を有している、請求項1又は2に記載の非水電解質
リチウムイオン二次電池。
【請求項4】
前記正極芯体上における前記正極活物質の塗布部の単位面積あたりの電池の容量は、40Ah/m
2以上である、請求項1から
3のいずれか一つに記載の非水電解質
リチウムイオン二次電池。
【請求項5】
前記電極体と前記封口板との間に配置され、前記電極端子に接続された第1集電体と、
前記電極体と、前記角形外装体における側壁との間に配置され、前記第1集電体に接続された第2集電体と、
前記電極体から前記側壁側に延出し、前記第2集電体に接続されたタブ群と
を備え、
前記第2集電体は、前記側壁に平行な面を有する平板からなり、
前記タブ群は、前記正極板から延出した正極タブを複数束ねた正極タブ群と前記負極板から延出した負極タブを複数束ねた負極タブ群とを有しているとともに、前記第2集電体との接続部側において、前記側壁に平行に折り曲げられている、請求項1から
4のいずれか一つに記載の非水電解質
リチウムイオン二次電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、非水電解質二次電池に関するものである。
【背景技術】
【0002】
リチウムイオン電池等の非水電解質二次電池は、開口を有する外装体に電極体が収容されていて、その開口を封口板が封口している構造を有している。電極体の構造は、正極と負極とがセパレータを介して重ねられているものである。
【0003】
近年、車載用のリチウムイオン電池の需要が増えている。車載用のリチウムイオン電池、特にEV用のリチウムイオン電池には、大容量、急速充電への対応、高い容量回復率、高度な安全性等のさまざまな特性が求められている。例えば、リチウムイオン電池に充電を行った後、車をある程度の時間稼働させることなく保管していると電池容量が低下してしまうため、この容量低下を防止する特性の向上が必要になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2019-160587号公報
【文献】特開2012-43752号公報
【発明の概要】
【0005】
長期間の保存による電池容量の低下に対し、従来から材料観点では改善対策が進められてきたが、EV用のリチウムイオン電池の高性能化に伴い、更なる特性向上が求められるようになってきた。
【0006】
本開示の非水電解質二次電池は、正極板と負極板とを含む電極体と、開口を有し、前記電極体を収容した角形外装体と、前記開口を封口した封口板と、前記封口板に設けられた電極端子とを備えた非水電解質二次電池であって、前記正極板は、正極芯体と該正極芯体の少なくとも片面に塗布された正極活物質とを備え、前記正極芯体上における前記正極活物質の塗布部の周長は、電池の単位容量あたり0.28m/Ah以下である構成を備えている。前記正極芯体上における前記正極活物質の塗布部の周長は、電池の単位容量あたり0.11m/Ah以下であるとなおよい。
【0007】
なお、前記正極芯体上における前記正極活物質の塗布部の周長は、正極芯体の両面に正極活物質が塗布されている場合は、両面の周長の合計を意味する。
【0008】
前記電極体は前記正極板と前記負極板とを対向させて巻回した形状を有していてもよい。
【0009】
前記負極板は、負極芯体と該負極芯体に塗布された負極活物質とを備え、前記電極体においては、セパレータを介して前記正極板と前記負極板とが重ねられており、前記負極板において前記負極活物質の塗布部のうち、前記正極活物質の塗布部と対向している部分の面積は、前記負極活物質の塗布部の全体面積の85%以上95%以下であってもよい。
【0010】
1以上の前記電極体を含み、前記電極体一つあたりの容量は30Ah以上であってもよい。
【0011】
前記正極芯体上における前記正極活物質の塗布部の単位面積あたりの電池の容量は、40Ah/m2以上であってもよい。正極芯体上における正極活物質の塗布部の面積は、正極芯体の両面に正極活物質が塗布されている場合は、両面の塗布面積の合計を意味する。
【0012】
前記電極体と前記封口板との間に配置され、前記電極端子に接続された第1集電体と、前記電極体と、前記角形外装体における側壁との間に配置され、前記第1集電体に接続された第2集電体と、前記電極体から前記側壁側に延出し、前記第2集電体に接続されたタブ群と備え、前記第2集電体は、前記側壁に平行な面を有する平板からなり、前記タブ群は、前記正極板から延出した正極タブを複数束ねた正極タブ群と前記負極板から延出した負極タブを複数束ねた負極タブ群とを有しているとともに、前記第2集電体との接続部側において、前記側壁に平行に折り曲げられていることが好ましい。
【0013】
本開示の非水電解質二次電池は、正極活物質の塗布部の周長が電池の単位容量あたり0.28m/Ah以下であるので、充電後の負極板において正極板に対向している領域に存在していたリチウムイオンのうち、保存されている間に正極板とは対向していない領域に拡散する割合を小さくすることができ、それによって電池容量の回復率を大きくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】
図1は、本開示の実施形態に係る非水電解質二次電池を示す斜視図である。
【
図3】
図3は、本開示の実施形態に係る第2集電体を示す図である。
【
図4】
図4は、本開示の実施形態に係る正極板の平面図である。
【
図5】
図5は、本開示の実施形態に係る負極板の平面図である。
【
図6】
図6は、本開示の実施形態に係る電極体の平面図である。
【
図7】
図7は、非水電解質二次電池の正極板と負極板とを模式的に表した斜視図である。
【
図8】
図8は、充電を行った直後の負極板の状態を正極板を不図示として模式的に表した斜視図である。
【
図9】
図9は、充電後、放電をしないで長時間放置した負極板の状態を正極板を不図示として模式的に表した斜視図である。
【
図10】
図10は、
図9の状態から放電を行った直後の負極板の状態を正極板を不図示として模式的に表した斜視図である。
【
図11】
図11は、
図10の状態からそのまま放置しておいた負極板の状態を正極板を不図示として模式的に表した斜視図である。
【
図12】
図12は、タブ群の折り曲げ前において、第2集電体とタブ群との接続部近傍を示す図である。
【
図13】
図13は、タブ群の折り曲げ後において、第2集電体とタブ群との接続部近傍を示す図である。
【
図14】
図14は、タブ群の折り曲げ前において、第2集電体にタブ群を接続した電極体を示す斜視図である。
【
図15】
図15は、複数の電極体を含む電極体群を示す図である。
【
図16】
図16は、第1集電体及び第2集電体により互いに接続された複数の電極体群と封口板とを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本開示の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本開示、その適用物あるいはその用途を制限することを意図するものでは全くない。以下の図面においては、説明の簡潔化のため、実質的に同一の機能を有する構成要素を同一の参照符号で示す。
【0016】
<電池の全体構成>
図1は、本開示に係る非水電解質二次電池を示す斜視図である。
図2は、
図1の電池を紙面に平行に切断した断面図である。
図1,2に示すように、非水電解質二次電池20は、開口を有する有底角筒状の角形外装体1と、角形外装体1の開口を封口する封口板2と、からなる電池ケース100を備える。
【0017】
角形外装体1は、底部1aと、一対の第1側壁1b,1cと、一対の第2側壁1d,1eと、を有する。一対の第1側壁1b,1cは、互いに対向する向きに配置されている。一対の第2側壁1d,1eは、互いに対向する向きに配置されている。一対の第1側壁1b,1cは、封口板2の長手方向に垂直であり、一対の第1側壁1b,1cの面積は、一対の第2側壁1d、1eの面積よりも小さい。
【0018】
角形外装体1内には、正極板4と負極板5とを含む電極体3が電解質と共に収容されている。本実施形態では、電極体3は、正極板4と負極板5とがセパレータを介して巻回された扁平状の電極体である。電極体3の巻回軸は、第1側壁1b,1cに対して垂直、且つ、第2側壁1d,1eに対して平行に延びる。なお、電極体3は巻回電極体に限定されず、例えば複数の正極板4と負極板5とがセパレータを介して積層された積層電極体でもよい。
【0019】
なお、
図2において、符号10は、封口板2と正極端子8との間に配置された外部側絶縁部材であり、符号12は、封口板2と負極端子9との間に配置された外部側絶縁部材である。符号11は、封口板2と第1正極集電体61との間に配置された内部側絶縁部材であり、符号13は、封口板2と第1負極集電体71との間に配置された内部側絶縁部材である。符号14は、角形外装体1の内部に配置され、電極体3を収容する箱状ないし袋状の絶縁シートである。符号15は、封口板2に設けられた電解液注液孔である。符号16は、電解液注液孔15を封止する封止部材である。符号17は、封口板2に設けられたガス排出弁である。
【0020】
非水電解質二次電池20は電極体3の巻回軸が延びる方向において、一方側を正極側、他方側を負極側としている。以下、主に正極側について説明し、負極側については、説明を省略する場合がある。
【0021】
<電極体の構成>
正極板4は、
図4に示すように長尺の帯状であって、正極芯体(例えばアルミニウム箔)の両面に正極活物質層4aが形成された領域を有している。正極タブ4bは、正極板4の短手方向における一方の端の正極芯体から凸状に複数延出している。正極板4の短手方向における一方の端の及びその近傍における正極芯体は、保護層4cにより表面が被覆されている。すなわち、正極板4の長手方向に伸びる一方の辺(端)から正極板4cの長手中心軸方向へ一定の幅で保護層4cが設けられている。また、正極タブ4bにもその付け根部分に保護層が設けられている。保護層4cは絶縁物を含んでおり、例えば樹脂製の絶縁層としたり、無機酸化物であるセラミック及び樹脂バインダーを含む層としてもよい。保護層4cの一例として、アルミナ粉末と、導電材としての炭素材料と、結着材としてのポリフッ化ビニリデンとを含む層が挙げられる。なお、保護層4cは設けなくてもよい。
【0022】
負極板5は、
図5に示すように長尺の帯状であって、負極芯体(例えば銅箔)の両面に負極活物質層5aが形成された領域を有している。負極タブ5bは、負極板5の短手方向における一方の端の負極芯体から凸状に複数延出している。
【0023】
正極板4と負極板5とは、
図6に示すようにセパレータを介して重ねられ、これを巻回することにより電極体3が形成されている。電極体3においては、巻回軸は正極タブ群40と負極タブ群50とを結ぶ方向(
図6の横方向)に伸びており、巻回軸に垂直な電極体3の端面のうち、一方の端面に正極タブ群40が位置し、それとは反対側の他方の端面に負極タブ群50が位置する。このような位置関係により電池内の短絡の防止が容易になる。
【0024】
<正極板と負極板との関係>
一般に電池では、安全性の確保及び長寿命化のために負極の活物質の方が正極の活物質よりも容量が大きくなるように設計されている。そして、正極板と負極板とを向かい合わせて重ねるタイプの電池では、負極板の活物質塗布範囲内に正極板の活物質塗布範囲が入るように設計され且つ負極活物質の塗布部分が正極活物質の塗布部分を超える(はみ出す)ように設計されている。
【0025】
図7は、非水電解質二次電池の正極板44と負極板55とを模式的に表した図である。正極板44及び負極板55のいずれも全面に活物質が設けられている。負極板55の方が正極板44よりも面積が大きく、且つ正極板44の負極板55に向い合っている面は全面が負極板55の面に対向しており、負極板55には正極板44に対向していない非対向領域57が存在している。
【0026】
充電を行った直後の負極板55の状態(正極板44を不図示としている)を
図8に模式的に示す。充電によって正極板44から負極板55へとリチウムイオン48が移動している。リチウムイオン48の負極板55内での拡散速度はそれほど大きくはないため、充電直後ではリチウムイオン48は、正極板44と対向している対向領域56にのみ存在している。なお、
図8において破線により正極板44の外周を示す外周線46を表示しており、対向領域56はこの外周線46に囲まれた領域である。
【0027】
充電後に放電を行わず、長時間放置をしておくと、
図9(正極板44を不図示としている)に示すようにリチウムイオン48は負極板55内を拡散して、負極板55のどの部分においてもリチウムイオン48の存在確率が同じになる。すなわち、対向領域56および非対向領域57の両方ともリチウムイオン48の分布割合は同じになる。
【0028】
充電後に放電を行わず長時間放置をし、その後放電を十分に行った負極板55の状態を
図10(正極板44を不図示としている)に示す。放電により対向領域56に存在していたリチウムイオン48は全て正極板44へと移動して、対向領域56内にはリチウムイオン48は存在しなくなる。一方、リチウムイオン48の拡散速度の関係で非対向領域57に存在していたリチウムイオン48は放電中に正極板44にまで移動できないため、そのまま非対向領域57に残存する。この状態からさらに充放電を行わずに放置をしておくと、
図11(正極板44を不図示としている)に示すようにリチウムイオン48の一部は非対向領域57から対向領域56内に移動(拡散)していく。
【0029】
以上の説明から、充電後に放置して電池を保存しておいた場合、電池容量は充電直後に比較して減少してしまうことが理解できる。このような電池容量の減少の割合を小さくして、容量回復率を大きくするためには電池の単位容量あたりの外周線46の長さ(より正確には、正極板において、正極芯体上における正極活物質の塗布部の周長)を小さくすることが必要になる。すなわち、
図8から
図9へと移る際に、電池の単位容量あたりの外周線46が短ければ非対向領域57に移動するリチウムイオン48の数が減少するので、容量回復率が大きくなるのである。
【0030】
具体的には、正極芯体上における正極活物質の塗布部の周長は電池の単位容量あたり0.28m/Ah以下であると、EV用電池として実用的に十分な容量回復率となる。正極芯体上における正極活物質の塗布部の周長が電池の単位容量あたり0.11m/Ah以下であると、更なる容量回復率の向上が期待できる。また、負極板55において、対向領域/(対向領域+非対向領域)の面積割合は85%以上95%以下であることが好ましい。なお、対向領域/(対向領域+非対向領域)の面積割合とは、より正確には、負極活物質の塗布部の全体面積に対する正極活物質の塗布部と対向している部分の負極活物質の塗布部の面積の割合である。本開示の単位容量あたりの正極活物質の塗布部の周長に加え、負極板55において対向領域/(対向領域+非対向領域)の面積割合を85%以上95%以下とすることで、
図9に示す長時間放置中のリチウムイオンの拡散領域を抑制でき、容量回復率を向上させることができる。
【0031】
電極体一つあたりの容量は30Ah以上であることが好ましい。また、正極芯体上における正極活物質の塗布部の単位面積あたりの電池の容量は40Ah/m2以上であることが好ましい。本開示の目的である容量回復率の改善は、EV用のリチウムイオン電池で特に求められており、さらにこれらの電池においては、前記のような構成とすることでエネルギー密度が向上し、EV走行距離の延長につながる。
【0032】
なお、特許文献1では、電池容量が8.4Ah、正極活物質の塗布幅が11.0cm、正極板の長さが440cmの電池が開示されており、この電池では単位容量あたりの正極活物質塗布部の周長が1.07m/Ahである。また特許文献2では、電池容量が4.6Ah、正極活物質の塗布幅が50mm、正極板の長さが3000mmの電池が開示されており、この電池では単位容量あたりの正極活物質塗布部の周長が1.33m/Ahである。
【0033】
<電極体からの集電の構造>
封口板2には、外部への電極端子としての正極端子8及び負極端子9が設けられている。正極端子8は、正極集電体6を介して正極タブ群40に電気的に接続されており、正極集電体6は、第1正極集電体61及び第2正極集電体62で構成されている。負極端子9は、負極集電体7を介して負極タブ群50に電気的に接続されており、負極集電体7は、第1負極集電体71及び第2負極集電体72で構成されている。
【0034】
第1正極集電体61は、断面略L字状であり、電極体3と封口板2との間に配置されている。具体的には、第1正極集電体61は、封口板2に沿って配置された第1領域と、第1領域の端部から折り曲げられた第2領域とを有する。第2領域は第1側壁1bに沿って底部1a側へ延びる。第1正極集電体61は正極端子8に接続されている。負極側も同様の構成である。
【0035】
第2正極集電体62は、電極体3と角形外装体1における第1側壁1bとの間に配置されている。具体的には、第2正極集電体62は、第1側壁1bに平行な面を有する平板からなり、第1側壁1bに沿って底部1a側へ延びている。第2正極集電体62は第1正極集電体61に接続されている。負極側も同様の構成である。
【0036】
図3は、第2正極集電体62を示す。第2正極集電体62は、略矩形状の平板の一部を屈曲させた構造を有し、集電体接続部62aと傾斜部62bとタブ接続部62cとを有する。集電体接続部62aは、第1正極集電体61に接続される。タブ接続部62cには、正極タブ群40が接続される。傾斜部62bは、集電体接続部62aとタブ接続部62cとを連結しており、両者に対して傾斜している。
【0037】
集電体接続部62aには凹部62dが設けられている。凹部62dには貫通孔62eが設けられている。凹部62dにおいて、集電体接続部62aが第1正極集電体61に接合される。さらに第2正極集電体62にはヒューズ部66が設けられている。
【0038】
次に、正極タブ群40の折り曲げ及び正極タブ群40と第2正極集電体62との接続について説明する。なお、負極側に関しては正極側とほぼ同じ構成・構造であるので、以下正極側のみの説明を行う。
図12は、正極タブ群40の折り曲げ前において、第2正極集電体62と正極タブ群40との接続部近傍を示す。
図14は、正極タブ群40及び負極タブ群50の折り曲げ前において、第2正極集電体62に正極タブ群40を接続し、第2負極集電体72に負極タブ群50を接続した電極体3を示す。
【0039】
正極タブ群40は、第2正極集電体62におけるタブ接続部62cに接続されている。具体的には、
図12に示すように、正極タブ群40の折り曲げ前において、第2正極集電体62におけるタブ接続部62c上に正極タブ群40を配置した状態で、タブ接続部62cと正極タブ群40とを接合(溶接)することによって、接続部63が形成されている。
【0040】
ここで、正極タブ群40は、
図12に示すように、第2正極集電体62を構成する平板の幅方向の一方側(
図12における右側)に寄って、第2正極集電体62におけるタブ接続部62cに接続されている。すなわち、正極タブ群40とタブ接続部62cとの接続部63は、平板の幅方向における正極タブ群40の根本側(幅方向一方側、
図9における右側)に寄っている。これにより、正極タブ群40を折り曲げた際、より確実に正極タブ群40の根本近傍に安定的に湾曲形状を形成することができる。
【0041】
図13は、正極タブ群40の折り曲げ後における、第2正極集電体62と正極タブ群40との接続部近傍を示す図である。電極体3の第1主面3a及び第2主面3bに対して略平行に配置されていた(
図12,14参照)第2正極集電体62におけるタブ接続部62cを、正極タブ群40を折り曲げることによって、電極体3の巻回軸に対して略垂直な向きとする。すなわち、正極タブ群40は、第2正極集電体62との接続部63側において、第1側壁1bに平行に折り曲げられる。折り曲げられた状態の正極タブ群40は、テープ80によって電極体3に固定される。
【0042】
このような構成により、第2正極集電体62を折り曲げることなく、正極タブ群40を折り曲げることができる。これにより、簡単な方法によって、体積エネルギー密度の高い非水電解質二次電池を作製することができる。
【0043】
なお、上述の通り負極側も正極側と同様の構成であり、
図14において、72aは集電体接続部、72bは傾斜部、72cはタブ接続部である。
【0044】
本実施形態に係る非水電解質二次電池は、正極タブ群40及び負極タブ群50を折り曲げることにより、第2集電体62,72を折り曲げずに体積エネルギー密度の高い電池とすることができ、負極板5の一方の端5eを正極板4の保護層4cに対向させた位置に配置しているので、電池内での短絡を防ぐことができる。
【0045】
(実施例)
<実施例1>
[正極板の作製]
正極活物質としてのリチウムニッケルコバルトマンガン複合酸化物、結着材としてのポリフッ化ビニリデン(PVdF)、導電材としての炭素材料、及び分散媒としてのN-メチル-2-ピロリドン(NMP)をリチウムニッケルコバルトマンガン複合酸化物:PVdF:炭素材料の質量比が97.5:1:1.5となるように混練し、正極活物質層スラリーを作製した。
【0046】
アルミナ粉末、導電材としての炭素材料、結着材としてのポリフッ化ビニリデン(PVdF)と分散媒としてのN-メチル-2-ピロリドン(NMP)を、アルミナ粉末:炭素材料:PVdFの質量比が83:3:14となるように混練し、保護層スラリーを作製した。
【0047】
正極芯体としてアルミニウム箔の両面に、上述の方法で作製した正極活物質層スラリー及び正極保護層スラリーをダイコータにより塗布した。このとき、正極芯体の幅方向の中央に正極活物質層スラリーが塗布された。また、正極活物質層スラリーが塗布される領域の幅方向の端部に正極保護層スラリーが塗布された。
【0048】
正極活物質層スラリー及び正極保護層スラリーが塗布された正極芯体を乾燥させ、正極活物質層スラリー及び正極保護層スラリーに含まれるNMPを除去した。これにより正極活物質層及び正極保護層が形成された。その後、正極活物質層を圧縮して正極原板とする。この正極原板を活物質層塗布部が幅88mm、長さ4600mmの長方形となるように切断し、正極板とした。なお正極板の切断は、レーザー等のエネルギー線の照射、金型、あるいはカッター等により行うことができた。
【0049】
[負極板の作製]
負極活物質としての黒鉛、結着材としてのスチレンブタジエンゴム(SBR)及びカルボキシメチルセルロース(CMC)、及び分散媒としての水を、黒鉛:SBR:CMCの質量比が98:1:1となるように混練し、負極活物質層スラリーを作製した。
【0050】
負極芯体として銅箔の両面に、上述の方法で作製した負極活物質層スラリーをダイコータにより塗布した。
【0051】
負極活物質層スラリーが塗布された負極芯体を乾燥させ、負極活物質層スラリーに含まれる水を除去する。これにより負極活物質層が形成された。その後、負極活物質層を圧縮して負極原板とした。この負極原板を活物質層塗布部が幅92mm、長さ4900mmとなるように切断し、負極板とした。なお負極原板の切断は、レーザー等のエネルギー線の照射、金型、あるいはカッター等により行うことができた。
【0052】
[電極体の作製]
上述の方法で作製した帯状の正極板及び帯状の負極板を、ポリオレフィン製の帯状のセパレータを介して巻回し、扁平状の巻回型の電極体を作製する。電極体は中央に扁平状の領域を有し、扁平状の領域の両端に湾曲部を有する。
【0053】
電極体の巻回軸が延びる方向における一方の端部には複数の正極タブが積層された正極タブ群が設けられている。電極体の巻回軸が延びる方向における他方の端部には複数の負極タブが積層された負極タブ群が設けられている。なお、電極体の巻回軸が延びる方向に対して垂直な方向で、且つ電極体の厚み方向に対して垂直な方向において、正極タブ群の中心及び負極タブ群の中心は、巻回軸から一方にずれて配置されている。
【0054】
[電池の作製]
図14に示すように、正極タブ群40には第2正極集電体62を、負極タブ群50には第2正極集電体72を接合する。さらに、
図15,16に示すように、正極タブ群40及び負極タブ群50がそれぞれ折り曲げられて状態の2つの電極体3を積層し、テープ90で固定する。各正極タブ群40は同じ側に配置され、各負極タブ群50は同じ側に配置される。また、各電極体3において、正極タブ群40はそれぞれ同じ方向に折り曲げられている。各電極体3において、負極タブ群50はそれぞれ同じ方向に折り曲げられている。
【0055】
電極体3の積層方向において、各電極体3に取り付けられた第2正極集電体62は間隔を置いて並べられて第1正極集電体61の第2領域61b上に接続されている。各第2負極集電体72についても同様である。
【0056】
これら2つの電極体3を角形外装体1内に挿入する。そして、封口板2を角形外装体1に接合し、角形外装体1の開口を封口板2により封口する。封口板2に設けられた電解液注液孔15から電解液を注液し、封止部材16で電解液注液孔15を封止する。これにより非水電解質二次電池20とする。
【0057】
[初回充電放電条件]
作製した前記の非水電解質二次電池を0.5Cで充電及び放電を行い、SOC20%以下に調整することで出荷可能な状態になる。これを実施例1の電池とした。
【0058】
[高温保存試験条件]
前記の出荷可能な非水電解質二次電池をSOC90%まで充電した時点を保存日数0日とし、60℃環境下で56日間、300日間、夫々放置した時の放電容量確認を行い、保存前の放電容量を100%としたときの比率を保存後の容量回復率とした。
【0059】
<実施例2>
1つの電極体における、正極板の活物質層塗布部が幅262mm、長さ2900mm、また負極板の活物質層塗布部が幅272mm、長さ3100mmになるようにしたこと以外は、実施例1と同様にして電池を作製し、高温保存試験を実施した。これを実施例2とした。
【0060】
<比較例>
1つの電極体における、正極板の活物質層塗布部が幅76mm、長さ4600mm、また負極板の活物質層塗布部が幅80mm、長さ4900mmになるようにしたこと以外は、実施例1及実施例2と同様にして電池を作製し、高温保存試験を実施した。これを比較例とした。
【0061】
以下、本開示に係る実施例について、表1を用いて詳細に説明する。
【0062】
【0063】
表1は、前記の実施例1および2、比較例の非水電解質二次電池の電池単位容量あたりの正極活物質塗布部の周長、負極活物質塗布部の全体面積に対する正極活物質塗布部と対向している部分の面積の割合、電極体一つあたりの容量、正極活物質の塗布部の単位面積あたりの容量、および高温保存試験後の容量回復率を示す。
【0064】
実施例1のように電池単位容量あたりの正極活物質塗布部の周長を0.28m/Ah以下とすれば、300日保存後でも容量回復率80%が維持できることが判明した。なお、60℃環境下で300日保存しても容量回復率80%を超えることがEV用電池としては好適とされる。また、実施例2のように電池単位容量あたりの正極活物質塗布部の周長を0.11m/Ah以下とすれば、300日保存後でも容量回復率が86%となり、より保存耐性が向上した。
【0065】
一方で、比較例のように電池単位容量あたりの正極活物質塗布部の周長が0.28m/Ahより大きい場合、300日保存後の容量回復率は78%まで低下しており、EV用電池として必要とされる性能水準を満足できていない。
【0066】
(その他の実施形態)
上述の実施形態は本願発明の例示であって、本願発明はこれらの例に限定されず、これらの例に周知技術や慣用技術、公知技術を組み合わせたり、一部置き換えたりしてもよい。また当業者であれば容易に思いつく改変発明も本願発明に含まれる。
【0067】
非水電解質二次電池20は、電極体3を複数備えていてもよい。この場合、電極体一つあたりの容量は30Ah以上であることが好ましい。
図15は、複数の電極体3を含む電極体群300を示した図である。
図15に示すように、非水電解質二次電池20は、電極体3を複数(2つ)備える。各電極体3の正極タブ群40には、それぞれ第2集電体62が接続されている。複数の電極体3、3を配列し、テープ90で纏めて固定することで、電極体群300が形成される。
図16は、第1正極集電体61及び第2正極集電体62により互いに接続された電極体群300と封口板2とを示した図である。
【符号の説明】
【0068】
1 角形外装体
1b 第1側壁(側壁)
1c 第1側壁(側壁)
2 封口板
3 電極体
4 正極板
4b 正極タブ
5 負極板
5b 負極タブ
8 正極端子(電極端子)
9 負極端子(電極端子)
20 非水電解質二次電池
40 正極タブ群(タブ群)
50 負極タブ群(タブ群)
61 第1正極集電体(第1集電体)
62 第2正極集電体(第2集電体)
71 第1負極集電体(第1集電体)
72 第2負極集電体(第2集電体)