(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-03-18
(45)【発行日】2025-03-27
(54)【発明の名称】スクリュー押出プロセスが実行されている間に押出対象の材料の特性を決定する測定装置及び方法
(51)【国際特許分類】
B29C 48/92 20190101AFI20250319BHJP
B29C 48/395 20190101ALI20250319BHJP
B29C 48/685 20190101ALI20250319BHJP
B29C 48/68 20190101ALI20250319BHJP
B29C 48/505 20190101ALI20250319BHJP
B29C 48/25 20190101ALI20250319BHJP
G01N 29/02 20060101ALI20250319BHJP
【FI】
B29C48/92
B29C48/395
B29C48/685
B29C48/68
B29C48/505
B29C48/25
G01N29/02
(21)【出願番号】P 2022531079
(86)(22)【出願日】2020-11-04
(86)【国際出願番号】 EP2020080976
(87)【国際公開番号】W WO2021104819
(87)【国際公開日】2021-06-03
【審査請求日】2023-10-06
(31)【優先権主張番号】102019218387.5
(32)【優先日】2019-11-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】515230084
【氏名又は名称】フラウンホーファー-ゲゼルシャフト ツゥア フェアデルング デア アンゲヴァンドテン フォァシュング エー.ファウ.
(74)【代理人】
【識別番号】100103894
【氏名又は名称】家入 健
(72)【発明者】
【氏名】ホイヤー ヘニング
(72)【発明者】
【氏名】シューベルト フランク
(72)【発明者】
【氏名】ワイルド マルセル
【審査官】家城 雅美
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/110194(WO,A1)
【文献】特開平01-195013(JP,A)
【文献】独国特許出願公開第102015102200(DE,A1)
【文献】特開平08-216230(JP,A)
【文献】特開平07-100824(JP,A)
【文献】特表2014-521948(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 48/92
B29C 48/395
B29C 48/685
B29C 48/68
B29C 48/505
B29C 48/25
G01N 29/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
押出
機で押出プロセスが実行されている間に押出対象の材料の特性を決定する測定装置であって、少なくとも1つの押出機スクリュ
ーがバレル内の管状ガイ
ドに回転可能に取り付けられ、回転駆動装置に接続され、押出対象の材
料が一端で前記管状ガイ
ドに供給可能であり、反対側に配置された排出
部で完成した押出材として除去可能であり、
前記押出機スクリュ
ーの長手方向軸に沿った前記管状ガイ
ドの壁上に予め決定可能な定義された間隔で測定位置に配置された複数の第1の音響変換
器は、前記押出プロセスによる前記押出プロセス中にプロセスノイズとして生成される音波及び/又は前記管状ガイ
ドの一端に配置された第2の音響変換
器から前記押出機スクリュ
ーの長手方向軸の方向に且つ前記管状ガイド内に存在する混合チャンバを通って搬送される前記押出対象の材料中に放出される音波を検出するように設計されている測定装置。
【請求項2】
前記第2の音響変換
器は、前記押出プロセスの開始前又は開始時に、前記押出対象の材
料の搬送方向に配置される前記管状ガイ
ドの端部の領域に配置されることを特徴とする請求項1に記載の測定装置。
【請求項3】
第1の音響変換
器は、前記管状ガイ
ドの円周上に異なる角度方向に分散して配置されていることを特徴とする、請求項1又は2に記載の測定装置。
【請求項4】
前記第1の音響変換
器の能動面は、保護調整窓又は保護層を介して、前記管状ガイ
ドの内部における前記押出対象の材
料に結合することを特徴とする、請求項1から3のいずれか一項に記載の測定装置。
【請求項5】
前記第1の音響変換
器によって音波の通過時間及び/又は振幅を周波数分解して検出し、前記押出対象の材
料の搬送方向に配置された各プロセスゾーンにおいて、電子評価装置によって前記押出対象の材
料の特性を決定することを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載の測定装置を用いた押出プロセス中の押出対象の材料の特性を決定する方法。
【請求項6】
それぞれ異なる測定位置に配置された2つの第1の音響変換
器間で検出された検出音波測定信号と、前記2つの測定位置で検出された音波測定信号のパルス伝達関数と、の相互相関を得ることを特徴とする請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記検出音波測定信号の平均値、標準偏差、分布関数、及びそれらの高次モーメントを考慮することを特徴とする、請求
項6に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、押出プロセスが実行されている間に押出対象の材料の特性を決定する測定装置及び方法に関する。例えば、密度、押出対象の材料の粘弾性特性、及び様々なプロセスゾーンに含まれる粒子の分布は、それぞれの押出機を出る前にその場で認識することができ、必要に応じて、完成した押出製品の十分な品質を確保するさらなるプロセス制御を考慮に入れることができる。
【0002】
本発明は、押出成形のすべての分野、すなわち、建設産業、自動車産業、航空産業、医療技術、家具産業、見本市建設業、包装産業、農業、造粒におけるホース用途、プラスチック産業、動物飼料及び食品産業、ならびに電池製造において使用することができる。このため、次のようなさまざまな製品に適している。
・ チューブ・ロッド(半製品)
・ 窓枠、ケーブルダクト、シールなどの輪郭
・ 電線などの被覆
・ ホース
・ 箔
・ 自動車タイヤのトレッド
・ 小型自動車部品(室内ドアパネル、リアビューミラーフレーム)
・ ワイパーのスクイージ
・ 自転車のリム
・ Vベルト及び歯付ベルト
・ ドアシール
・ 押出法ポリスチレンハードフォームパネル(XPS)
・ 木材とプラスチックの複合材料から作られた鉛筆と色鉛筆
・ 陶磁器、スプリットクリンカー、穴あき煉瓦及び鋳造用金型構造物
・ 石鹸製造における前駆体
・ ステアリンろうそく
・ パスタ、スナック、ビスケット、成型肉
・ 化学繊維の製造
・ ヒートシンク
・ バッテリコンポーネント
【0003】
押出機は、材料を均質化及び/又は分散させるために使用することができる。これらは、異なるデザインで利用できる。これらには、ラム押出機、遊星ローラ押出機、カスケード押出機及びスクリュー押出機が含まれる。スクリュー押出機は、輸送機としても、加工押出機としても使用することができる。上記スクリュー押出機は、1本又は2本のスクリューで構成することができるので、一軸スクリュー及び二軸スクリュー押出機という用語が使用される。スクリューは、用途に応じて異なる形状にすることができる。異なる形状は、所望の特性を実現するために、材料/押出物に機械的に影響を与えることを目的とする。後者はスクリューの幾何学的特性だけでなく、原料の種類、量及び組成にも依存する。材料は、最終的に押出機の出口で所望のパラメータに対応しなければならない。
【0004】
記載された本発明を使用すると、スクリューの機械的作用によって押出対象の材料の変化を、(スクリュー)押出機の特定のタイプ及び形状に関係なく、押出機内で段階的に監視することができる。その結果、押出中の材料及び条件の変化は、不必要な無駄を回避しつつ、よりよく理解され、制御され、目標とする方法で最適化され得る。
【背景技術】
【0005】
現在、押出プロセスをインラインで監視する音響測定システムは、主に押出機の前部又は後部に設置されている。これらの領域では、押出対象の材料のターゲット特性がチェックされる。逸脱や材料の変更がある場合、その原因は後で分かりにくくなり、影響を受けることはない。原理的には、原材料及び押出プロセスのパラメータに対して事後的に調整を行うことができ、最適化プロセスの結果は、押出材の新しい完全な押出成形の後にのみ利用可能である。これは、使用不可能な材料の生産と、時間とコストのかかるプロセスにつながる可能性がある。さらに、スクリューの形状の影響とその結果として生じる材料の変化した状態が不明であるため、エラーの原因を追跡することは困難である。
【0006】
押出機内のインラインプロセス監視の公知の変形例では、測定点は押出機の占有長さにわたって分布される。測定原理はパルス伝送法である。このためには、測定点ごとに適切な測定チャネルを備えた2つの超音波変換器が必要であり、1つは送信器として機能し、もう1つは受信器として機能する。二軸スクリュー押出機には2本のスクリューがあり、この2本のスクリューには材料を処理するための搬送要素及び混練要素が備わっている。2本のスクリューの間隔は非常に小さく、これが材料の目標とする処理を実現する唯一の方法である。このような公知の構造では、スクリュー間及び押出成形品のみを通る音響伝送路を実装することはできない。この問題の可能な解決策として、測定点の領域でスクリューの搬送要素及び混合要素をスペーサスリーブに置き換えた。これらは、直径が小さい円形の材料を表す。上記スペーサスリーブの長さは、測定点の窓長に対応する。これにより、押出成形品のみでスクリュー間に音響伝送路を形成し、パルス伝送方式を用いることが可能になる。
【0007】
その欠点は、プロセスに直接影響を与えることである。押出成形品は、測定点の領域でそれ以上処理されず、均質化及び分散プロセスが中断される。したがって、測定点の領域のこの休止段階で望ましくない材料の変化が発生する可能性がある。スペーサスリーブのため、スクリューはカスタムメイドでなければならず、他の材料システム及び他のタイプの押出機への柔軟な適応をかなり困難にし、又は不可能にさえする。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
したがって、本発明の目的は、スクリュー押出機の内部において押出対象の材料のインライン状態監視のためのオプションを特定することであり、励起音波はスクリュー(又は複数のスクリュー)自体で励起及び誘導することができる。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明によれば、この目的は、請求項1に記載の特徴を有する測定装置によって達成される。請求項5は方法を定義する。本発明の有利な改良及び開発は、従属請求項において特定される特徴を用いて実施することができる。
【0010】
本発明では、少なくとも1つの押出機スクリューがバレル内の管状ガイドに回転可能に取り付けられ、回転駆動装置に接続される。押出対象の材料は、一端で管状ガイドに供給可能であるとともに、反対側に配置された排出部で完成した押出材として除去される。
【0011】
押出機スクリューの長手方向軸に沿った管状ガイドの壁上又は導入された測定窓内に直接、予め決定可能な定義された間隔で測定位置に配置された複数の第1の音響変換器は、押出プロセスによる押出プロセス中にプロセスノイズとして生成される音波、及び/又は管状ガイドの一端に配置された第2の音響変換器から放出される音波を検出するように設計されている。第2の音響変換器によって押出機スクリューの長手方向軸の方向に送られ、混合チャンバ内の管状ガイド内に存在する押出材から放出される音波は、第1の音響変換器によって検出することができる。したがって、音波は、音波が押出材を介して伝達される前に、まず押出スクリューに結合される。
【0012】
このように、音波は、押出対象の材料を通って導かれ、それぞれのプロセスゾーンでの押出対象の材料の特性に影響される可能性があり、そのプロセスゾーンは、第1の音響変換器が配置される2つの測定位置間における押出対象の材料の搬送方向にあることが好ましい。これにより、押出対象の材料の典型的な特性を対応するプロセスゾーンで識別することができる。最初の音波の対応する配置で、これは、搬送方向に並べて配置することができる更なるプロセスゾーンにも適用される。
【0013】
第1の音響変換器は、少なくとも1つの回転スクリューが配置されて回転可能に取り付けられている管状ガイドの外壁上に列状に配置された軸に沿って配置することができる。第1の音響変換器間の間隔は、等距離にすることができるが、必ずしも等距離にする必要はない。重要なのは、測定位置間の間隔又は各測定位置の位置が既知であることだけである。
【0014】
第1の音響変換器は、管状ガイドの円周上に異なる角度方向に分散して配置することができる。上記音響変換器は、例えば、螺旋状又は星形に配置することができるが、搬送方向に並べて配置する必要がある。第1の音響変換器間の位置及び/又は間隔は、それらで検出された測定信号を評価する際に考慮に入れることができるように既知でなければならない。
【0015】
原理的には、第2の音響変換器は、押出プロセスの前部又は後部で搬送方向に配置された端部の領域に配置することができるが、押出プロセスの開始時又は開始前にスクリューのための駆動の領域に配置することが好ましい。
【0016】
第1の音響変換器の能動面は、保護調整窓又は保護層を介して、管状ガイドの内部における押出対象の材料に結合することができる。
【0017】
それぞれのスクリューの全長にわたって現れるいわゆる漏洩波は、管状ガイドの壁上又は壁内に横方向に取り付けられた広帯域の第1の音響変換器によって検出及び分析することができる。このアプローチでは、余分な乱れのない音響伝送路を作成する必要はなく、スクリュー表面と管状ガイドの内壁との間の既存の経路を使用して、押出プロセス中に押出対象の材料を通過させる。したがって、原理的には、すべての(スクリュー)押出機タイプに適しており、励起音周波数を変更することによって多くの異なる押出機の形状及び押出対象の材料に適合させることができる。
【0018】
励起周波数は、(一般的に狭帯域の)異なる励起第2の音響変換器を使用することによって調整することができる。一方、第1の音響変換器は、広帯域となるように設計することができるので、各アクチュエータが変更されても変化しないようにすることができる。しかしながら、ここでは、第1の音響変換器を変更することも可能である。狭帯域とは、20%以下の帯域幅を有する周波数範囲を意味し、広帯域とは、80%以上の帯域幅を有する周波数範囲を意味する。
【0019】
このアプローチは、プロセス中の音波測定信号の生成と評価を可能にし、完成した押出材の品質と収率を最適化するために、その音波測定信号は実質的にリアルタイムで押出プロセスにフィードバックできる。
【0020】
変換器のタイプ、変換器の機械的取り付け及び構成、測定原理及び信号処理のような個々の態様は、以下でより詳細に検討される。
【0021】
音波の放出は、例えば、圧電又はEMAT(ElectroMagnetic Acoustic Transducer)に基づいて、それぞれのスクリューの駆動領域における適切な励起によって行われるべきであり、音波の中心周波数及び周波数帯域幅は、それぞれの用途及び使用される材料に適合され得る。広帯域インパルス音又は狭帯域バースト信号による励起に起因して、機械的波は、最初にスクリューに侵入し、次いで、押出対象の材料自体に侵入してそれを通過し、押出機の壁上又は壁内で検出され得る。EMATによる放出は、音波が電磁的に開始された渦電流フィールドによって金属中に放出されるという事実を利用しており、直接の機械的接触やカプラントを必要としない。
【0022】
押出対象の材料に応じて、異なるパラメータを有する音響変換器を使用することができ、材料の減衰及び走行距離に応じて、キロヘルツからメガヘルツの範囲の周波数が使用される。第1の音響変換器の変換器の直径も、機械的取り付けを考慮して変更することができる。検出が行われる受信側では、異なる種類の第1の音響変換器を検出に使用できる可能性がある。これらには、例えば、垂直変換器、角度プローブ、S/E変換器、集束変換器、フェーズドアレイ変換器、空気結合超音波変換器、EMAT変換器などが含まれるが、例えば、レーザー超音波検出器ユニットなども使用することができる。
【0023】
音響変換器は、スクリューの駆動領域における少なくとも1つの第2の音響変換器が、スクリュー及び複数の他の広帯域の第1の音響変換器に音波を能動的に放出するように押出機に組み込むことができ、これらの第1の音響変換器は、外側境界において又は内側測定チャネルにおいて、押出機の長手方向軸に沿って配置することができ、音波を検出することができる。第2の音響変換器から放出された音波は、スクリュー全体に伝搬し、時には押出対象の周囲の材料にも入り、押出対象の材料を通過した後、この目的のために設計された第1の音響変換器で検出することができ、電子評価ユニットを用いて、第1の音響変換器により検出された測定信号を評価して、押出プロセス中に指定された測定位置で押出対象の材料の特性を決定する。
【0024】
このような測定を実施するために、第1の音響変換器は、押出対象の材料が移動して影響を受ける混合チャンバとは異なる位置に配置することができる。機械的計装を実現するために、特別に設計された測定窓を設けることができる。これらの実施形態では、従来技術とは異なり、混合チャンバ内の押出プロセスに影響を与えず、また、励起側の測定窓を必要としない。検出する音響変換器は、測定位置内又は測定位置で機械的に固定され、上記音響変換器の能動面は、保護調整窓又は対応する保護層を介して、内部における押出対象の材料に結合することができる。検出する第1の音響変換器は、押出機の長手方向軸から同一又は異なる間隔に設定することができ、ここで、スクリューが占める容積の制限は除外されるべきである。
【0025】
好ましくはそれぞれのスクリューの駆動領域に設置されて音波を発する第2の音響変換器が送信器として能動的に励起し、第1の音響変換器が信号を受信して検出する上述の能動的な変形に加えて、純粋に受動的な変形は、さらなる実施形態として実施することもでき、押出機の長手方向軸に沿って取り付けられたすべての第1の音響変換器は、検出器としてのみ機能し、押出中に音波の形態で発生するプロセスノイズを検出して評価する。両方の変形例において、検出する第1の音響変換器の数及び/又は間隔は、押出機の占有長さ及び監視されるそれぞれの用途に応じて選択することができ、これは、特に、それぞれの押出機の動作パラメータ及びそれぞれの押出対象の材料の特性に依存する。この目的のために、材料特性が押出中に著しく変化するにつれて、多くの第1の音響変換器及び任意選択的に測定窓を使用し、プロセスゾーンに配置することができる。
【0026】
水、高粘度カップリングゲル、接着点、機械的圧力、又は完全に非接触(空気結合超音波、レーザー超音波)が、音響変換器の機械的結合に使用又は適用され得る。
【0027】
従来技術と比較して、スクリューの形状、それによる押出対象の材料の処理は影響を受けない。本発明では、スクリューの駆動領域にある音響変換器によってスクリューに能動的に導入された音響波、又は押出機の純粋に受動的な音響信号は、押出機の管状ガイドの占有長さに取り付けられ、押出プロセスを評価するために使用される第1の音響変換器によって検出することができる。広帯域音響変換器を選択することにより、追加の機械力なしに、異なる材料システムに適応することも可能となる。
【0028】
スクリューから発生し、第1の音響変換器によって検出される音響信号は、押出プロセスを評価するために使用され得る。音波の励起は、スクリューを介して能動的に、又は音響プロセスノイズを介して純粋に受動的に行うことができる。
【0029】
通常のように、直接対向する2つの音響変換器間の局所的な透過率測定は、本発明では行われないが、それは、音波が最初にスクリューから放出され、そこから伝搬され、次いで間接的に個々の第1の音響変換器に到達するからである。
【0030】
検出する第1の音響変換器への音波の移動経路が異なるために、音波は依然として異なるプロセスゾーンに関する局所的な情報を運び、相互相関又は他の通過時間及び減衰の測定に基づく適切な評価方法によって情報を決定し、考慮することができる。
【0031】
2つの測定位置間のパルス伝達関数は、異なる測定位置で検出された2つの音響変換器測定信号間の相互相関によって得ることができる。これにより、押出機の長手方向軸に沿った2つのそれぞれの測定位置間で押出対象の材料の局所的な特徴づけが可能になる。押出対象の材料は、音速や減衰などの標準的な音響パラメータによって特徴づけられ、検出された音波のこれらのパラメータは、一般に分光学的に評価される、すなわち周波数分解される。従来の通過時間及び減衰の測定も、相互相関に加えて行うことができる。
【0032】
密度、粘度、粒径などの局所的に平均化された材料特性は、音響パラメータに基づいて決定できる。
【0033】
押出プロセス中のデータ取得及び信号のインライン評価は、所望の材料パラメータをリアルタイムで出力する適切なソフトウェアで行うことができる。これらの材料パラメータに基づいて、プロセス調整をすぐに行うことができる。
【0034】
能動的測定モード及び受動的測定モードの両方において、伝搬する音波は、スクリューの複雑な形状及び押出プロセス中のそれらの永続的な動作に起因して、一般に確率的特性を有する。このため、平均値、標準偏差、分布関数及びそれらの高次モーメントのような音波測定信号の統計パラメータも評価に使用することができる。
【0035】
しかしながら、従来技術によれば、非統計的なパルス状信号が評価される伝送アプローチが使用される。
【0036】
従来用いられてきた方法と比較して、本発明は、例えば、スクリューの形状の変化による、又はスペーサスリーブの導入がなくても、プロセスに影響を与えることなく、押出プロセス全体にわたって状態の変化を評価することを可能にする。加えて、本発明に従って使用される測定原理は、測定システムを他の材料システムに適合させる際に、柔軟性の向上を可能にし、また、あらゆるタイプの(スクリュー)押出機で使用することができる。
【0037】
原料又は完成した押出物についての以前のオフライン測定とは対照的に、本発明は、より良好な歩留まり、より高い材料品質及びより低い不合格率を生み出すプロセス統合インライン測定である。さらに、材料特性のトレーサビリティは、安全性に関連するIndustry 4.0アプリケーションのコンテキストでサポートできる。
【0038】
本発明は、電池セルの製造プロセスに適用することができる。電池は2つの電極、セパレータ及び電解質から成る。性能は、とりわけ、電極材料に依存する。本発明は、電極材料の製造に用いることができる。そこで、キャリア箔(典型的にはアルミニウム箔又は銅箔)が電極材料で被覆される。電極材料を製造する際には、製品原材料が均質な特性と必要なパラメータを有することが重要である。粘度、密度、粒径などのパラメータは非常に重要である。
【0039】
電極材料は、多くの場合、押出プロセスを使用して製造される。本発明を使用して上記製造プロセスを監視することによって、押出中の材料変化を記録することができ、必要に応じて、個々の材料成分を追加又は調整することによってそれを最適化することができる。音速及び減衰の音響パラメータは、押出対象の材料の弾性率及び粘弾性率を決定するために使用される。
【0040】
以下、本発明を実施例により詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0041】
図面において:
【
図1】本発明における測定装置の一例の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0042】
図1は、押出機7上の本発明における測定装置の一例を示す。この例では、スクリュー4が管状ガイド5に回転可能に取り付けられており、図示しない回転駆動装置によって駆動される。
【0043】
管状ガイド5の内部に配置され、管状ガイドの内壁とスクリュー4の外壁との間の隙間によって形成された混合チャンバに、フィーダを介して押出対象の材料1が導入される。互いに平行に並んだ回転軸を中心に回転する2本のスクリューが隣り合って配置されている場合、スクリューの外面間の隙間の体積が混合チャンバに加えられる。
【0044】
押出対象の材料は、スクリューの回転により、管状ガイド5を介して出口6に搬送される。
【0045】
この例では、管状ガイド5の外壁に4個の第1の音響変換器3が配置されており、これにより音響変換器の音波を検出することができる。4個の第1の音響変換器3は、電子評価ユニットに接続されており、この電子評価ユニットでは、押出機7から電子評価ユニット(図示せず)へのチャネルを通る配線によって、第1の音響変換器3の測定位置で検出された音波の周波数分解評価が行われる。
【0046】
図示の例では、管状ガイド5のスクリュー4の回転駆動領域(図示せず)に第2の音響変換器2が配置されており、スクリュー4及び押出対象の材料1に第2の音響変換器の音波が放出される。この場合、各押出対象の材料1を考慮して、異なる周波数の音波を放出することができる。しかしながら、周波数は、第1の音響変換器3が配置される特定の測定位置に最適化されるように選択することもできる。この目的のために、関連するプロセスゾーン及び/又はそこに配置された第2の音響変換器2と対応する第1の音響変換器3との間の間隔における押出対象の材料1の特性を考慮することができる。
【0047】
第1の音響変換器3によって検出される音波測定信号の評価は、次のようになる。
【0048】
任意の時刻において、ti,i=1,...N
- 測定信号をフィルタリングして高周波ノイズを除去する。
- 第1の音響変換器3が配置された測定位置間のパルス伝達関数を得るために、異なる第1の音響変換器3からの測定信号を相互相関させる。これに代わる方法として、相互相関を伴わない個々の測定信号の直接評価、又は、その分布のモーメントに関する個々の測定信号の統計的評価を行うことができる。
- 相互相関及び直接信号評価の場合には、周波数に依存する通過時間及び振幅のスペクトル解析、又は代替的には非スペクトル累積解析を行うことができる。
- 異なる測定位置で検出された測定結果(直接評価及び統計的評価)、又は異なる測定位置間の相互相関による測定結果を比較する。
- 予め記録された較正曲線を用いて、測定結果と関連するプロセスパラメータとの相関を確立する;任意に、進行中のプロセスにおける測定結果の時間的変化を事前の較正なしに考慮することができる。