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7652854過熱保護を有するレーザ手術システムのための光学スプリッタ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-03-18
(45)【発行日】2025-03-27
(54)【発明の名称】過熱保護を有するレーザ手術システムのための光学スプリッタ
(51)【国際特許分類】
   A61B 18/20 20060101AFI20250319BHJP
【FI】
A61B18/20
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2023167132
(22)【出願日】2023-09-28
(62)【分割の表示】P 2022061736の分割
【原出願日】2022-04-01
(65)【公開番号】P2023174715
(43)【公開日】2023-12-08
【審査請求日】2023-10-03
(31)【優先権主張番号】63/171,636
(32)【優先日】2021-04-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】500498763
【氏名又は名称】ジャイラス エーシーエムアイ インク ディー/ビー/エー オリンパス サージカル テクノロジーズ アメリカ
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】弁理士法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ブケソフ セルゲイ エー
(72)【発明者】
【氏名】シェルトン カート ジー
【審査官】北村 龍平
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2001/0047137(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2005/0043597(US,A1)
【文献】特表2020-506736(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2007/0049809(US,A1)
【文献】国際公開第2018/115415(WO,A1)
【文献】特開昭62-183980(JP,A)
【文献】国際公開第2014/062219(WO,A1)
【文献】特開2002-113036(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2002/0022829(US,A1)
【文献】特開平07-275254(JP,A)
【文献】特開平01-204635(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 18/00 - 18/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
標的識別システムであって、
(i)第1の光信号を解剖学的標的まで通過させ、(ii)前記解剖学的標的の照射に応じて、前記解剖学的標的からの第2の光信号の少なくとも一部分を通過させる、ように構成された光学経路を備えるプローブと、
光学スプリッタであって、
前記プローブに結合され、(i)前記第1の光信号を前記光学経路に方向付け、(ii)前記光学経路から前記第2の光信号の前記少なくとも一部分を受信する、ように構成された第1のポートと、
信号発生器によって生成された前記第1の光信号を受信するように構成された第2のポートと、
前記第2の光信号の前記少なくとも一部分を、前記第1の光信号の経路とは異なる経路にリダイレクトするように構成された放物面反射体と、
を備える、光学スプリッタと、
(i)リダイレクトされた前記第2の光信号の前記少なくとも一部分を受信し、(ii)これに少なくとも部分的に基づいて、前記解剖学的標的の特性を識別する、ように構成された分光システムと、
を備え、
前記第1の光信号は、前記第2のポートを介して前記光学スプリッタに光学的に結合されたレーザシステムから放射されるレーザビームを含み、
前記光学経路への前記レーザビームの過剰投影を阻止するためのシールドをさらに備え
前記シールドは、前記光学経路に向かう前記レーザビームのエネルギーを低減させるように構成される、ことを特徴とする標的識別システム。
【請求項2】
請求項1に記載の標的識別システムであって、前記放物面反射体は、前記第2の光信号の前記少なくとも一部分を反射し、前記分光システムに結合された前記光学スプリッタの第3のポートに向けて収束させるように構成された反射コーティングを有する凹面を備えることを特徴とする標的識別システム。
【請求項3】
請求項1に記載の標的識別システムであって、前記放物面反射体は、前記第1の光信号に中を通過させるように構成されたガイド部材を備え、前記ガイド部材は、前記第1のポートと空間的に位置合わせされた前記放物面反射体における開口を備えることを特徴とする標的識別システム。
【請求項4】
請求項1に記載の標的識別システムであって、前記放物面反射体に対し位置決めされ、協働して、前記第2の光信号の前記少なくとも一部分を前記分光システムに結合された前記光学スプリッタの第3のポートに向けて方向付けるように構成された、第2の1つ以上の反射体をさらに備えることを特徴とする標的識別システム。
【請求項5】
請求項1に記載の標的識別システムであって、前記第1の光信号は、前記第2のポートを介して前記光学スプリッタに光学的に結合されたレーザシステムから放射されるレーザビームを含むことを特徴とする標的識別システム。
【請求項6】
請求項1に記載の標的識別システムであって、前記光学スプリッタは、前記第1の光信号を前記第1のポートに向けて方向付けるように構成された1つ以上の光学レンズをさらに備えることを特徴とする標的識別システム。
【請求項7】
請求項6に記載の標的識別システムであって、前記1つ以上の光学レンズは、コリメートレンズ、集束レンズまたは両凸レンズのうちの少なくとも1つを含むことを特徴とする標的識別システム。
【請求項8】
請求項6に記載の標的識別システムであって、前記1つ以上の光学レンズのうちの少なくとも1つは、前記第2の光信号の前記少なくとも一部分を前記分光システムにリダイレクトするように構成された反射コーティングを含むことを特徴とする標的識別システム。
【請求項9】
請求項1に記載の標的識別システムであって、前記解剖学的標的は結石標的を含み、前記分光システムは、受信した前記第2の光信号の前記少なくとも一部分に少なくとも部分的に基づいて、(i)前記結石標的の組成プロファイルを生成し、(ii)前記結石標的のタイプを識別する、ように構成されることを特徴とする標的識別システム。
【請求項10】
請求項1に記載の標的識別システムであって、前記解剖学的標的の前記特性は、前記解剖学的標的のタイプ、材料、組成、組成プロファイル、構造または硬さのうちの少なくとも1つを含むことを特徴とする標的識別システム。
【請求項11】
請求項1に記載の標的識別システムであって、前記解剖学的標的の受信した前記第2の光信号の前記少なくとも一部分に基づいて、前記信号発生器の設定を調整するための制御信号を生成するように構成されたコントローラ回路をさらに備えることを特徴とする標的識別システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、一般には光学手術システムに関し、より詳細には、電気手術信号と光学経路を共有する光学応答信号を分割し、光学手術システムの光学構成要素を過熱から保護するための技法に関する。
【背景技術】
【0002】
優先権の主張
本出願は、その全体を本願に引用して援用する、2021年4月7日に出願された米国仮特許出願第63/171,636号の米国特許法第119条(e)の下での優先権の利益を主張する。
【0003】
軟組織または硬組織等の様々な標的治療領域に手術レーザエネルギーを送達するために、レーザまたはプラズマシステムが用いられてきた。レーザ治療の例は、アブレーション、凝固、蒸発、破砕等を含む。砕石術の用途では、レーザは、数ある石形成領域の中でも、腎臓、胆嚢、尿管における結石構造を破壊するか、または大きな結石をアブレーションして小さな断片にするために用いられてきた。
【0004】
医師に視覚的アクセスを与えるように、被検者の内部位置へのアクセスを提供するために内視鏡が一般的に用いられている。内視鏡は、通例、患者の身体内に挿入され、検査されている標的(例えば、標的の解剖学的構造または対象)に光を送達し、対象から反射された信号(例えば、光)を収集する。反射された信号は、検査されている対象に関する情報を搬送する。いくつかの内視鏡は、操作者が吸引を行うか、ブラシ、生検針もしくは鉗子等の器具を通過させるか、または患者の身体から望ましくない組織もしくは異物を除去するための最小侵襲手術を行うことができる作業チャネルを含む。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
電磁エネルギーを用いる或る特定の従来の手順では、処置を実行しながら解剖学的標的の1つ以上の特性(例えば、タイプ、物質、組成、組成プロファイル、構造または硬さ)を識別する方式が存在しない。健康関連の処置の場合、標的が軟組織であるかまたは硬組織であるかを生体内(in vivo)で識別することが困難であり得る。組織を抽出し、次に、身体から除去された後にその組織の組成または他の特性を識別するために用いることができるいくつかの手術方法が存在する。しかしながら、そのような特性は生体内(in vivo)で特定することができない。
【0006】
内視鏡処置中の組織特性の連続識別は、医師に、処置中の治療方法をより良好に適合させるためのさらなる情報を与えることができる。しかしながら、分析のために組織サンプルの除去を通常必要とする従来の組織特性決定技法は、処置全体にわたる組織特性の連続監視および識別を提供することができない。
【0007】
いくつかの内視鏡手術システムは、レーザエネルギーを標的治療領域にレーザエネルギーを送達することができる。レーザエネルギーは、内視鏡手術システムの1つ以上の光学構成要素において不注意に散逸する場合があり、これにより、そのような構成要素の過熱および損傷を引き起こす場合がある。本発明者らは、数ある中でも、構成要素の過熱および損傷を防ぐために内視鏡手術中の光学要素の温度を監視する必要性が満たされていないことを認識している。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本願は、処置中の組織特性の連続した生体内(in vivo)での監視および識別のための改善されたシステム、デバイスおよび方法を提供する。本開示の1つの態様において、電気手術(標的のアブレーション等)において使用するための電気手術信号、および手術システムにおける共通の光学経路を共有する光応答信号を分割するための技法が提供される。光学スプリッタは、入射する照射に応じて標的から反射される光応答信号を受信するための第1のポート、およびレーザシステムからのレーザビーム等の電気手術信号を受信するための第2のポートを含む。光学スプリッタは、光学応答信号を、標的特性を分析するための分光システムにリダイレクトすることができる反射体を含む。反射体は、電気信号を通過させ、標的に向けるように位置合わせされた開口等のガイド部材を有することができる。
【0009】
本開示の別の態様において、標的識別システムは、例えば、解剖学的標的の照射に応答してその解剖学的標的から反射された光応答信号から、電気手術信号(例えば、レーザビーム)を分割するための光学スプリッタを備える。光学スプリッタは、光学応答信号を、標的特性を分析するための分光システムにリダイレクトすることができる、両凸反射面を有する放物面反射体を含む。他の形状の反射体(例えば、平坦な反射体)と比較して、放物面反射体は、より効率的に、より大量の光学応答を収集し、収束させ、追加の光学構成要素なしで信号反射および収束を達成することができ、それによってシステム複雑度および潜在的な位置合わせ誤差を低減する。したがって、システム全体の信頼性を改善することができる。
【0010】
本開示の別の態様では、解剖学的組織標的または結石標的等の標的においてまたはその付近で医療処置を行う間等に、標的の組成をin vivoで(患者の内部で)特定するための技法が提供される。例として、腎臓結石等の閉塞性組織のアブレーションの場合、結石に関する組成情報は、処置をより効率的かつ効果的に実行するのを支援することができる。電気手術における使用のための標的識別システムは、標的へのレーザビーム等の電気手術信号、および入射する照射に応じて標的から反射された光信号を同時に通過させるための光学経路を有するプローブを備えることができる。システムは、プローブに光学的に結合された光学スプリッタを備える。光学スプリッタは、電気手術信号を通過させ、標的に向けるように位置合わせされた開口部と、反射された光信号を分光システムにリダイレクトするための反射面とを有する反射体を含む。分光システムは、反射された光信号からスペクトル情報を生成し、標的を、別個の組成を有するものとして識別することができる。スペクトル情報を用いて、電気手術エネルギーシステムの設定を調整することができる。
【0011】
本開示のさらに別の態様では、電気手術システムにおける光学構成要素の温度を監視し、そのような光学構成要素を過熱または損傷から保護するための技法が提供される。温度モニタは、光学スプリッタにおける反射体の反対面等の光学構成要素のそれぞれの場所に位置決めされた1つ以上の温度センサに結合することができる。温度モニタは、電気手術中のベースライン温度からの温度変化、またはそれぞれの温度センサによって測定された反射体の反対面間等の示差温度を検出することができる。温度モニタは、過熱診断を生成し、過熱診断に基づいて電気手術エネルギーの設定を調整することができる。本願において様々な実施形態に従って説明されるような温度監視、過熱診断および過熱保護は、構成要素の損傷を防ぎ、電気手術システムの信頼性を改善するのに役立つことができる。
【0012】
例1は、標的識別システムであって、(i)第1の光信号を解剖学的標的まで通過させ、(ii)解剖学的標的の照射に応じて、解剖学的標的からの第2の光信号の少なくとも一部分を通過させる、ように構成された光学経路を備えるプローブと、光学スプリッタであって、プローブに結合され、(i)第1の光信号を光学経路に方向付け、(ii)光学経路から第2の光信号の少なくとも一部分を受信する、ように構成された第1のポートと、信号発生器によって生成された第1の光信号を受信するように構成された第2のポートと、第2の光信号の少なくとも一部分をリダイレクトするように構成された放物面反射体と、を備える、光学スプリッタと、(i)リダイレクトされた第2の光信号の少なくとも一部分を受信し、(ii)これに少なくとも部分的に基づいて、解剖学的標的の特性を識別する、ように構成された分光システムと、を備える、標的識別システムである。
【0013】
例2において、例1の主題は、任意選択で、第2の光信号の少なくとも一部分を反射し、分光システムに結合された光学スプリッタの第3のポートに向けて収束させるように構成された反射コーティングを有する凹面を備えることができる放物面反射体を備える。
【0014】
例3において、例1~2のうちの任意の1つ以上の主題は、任意選択で、第1の光信号に中を通過させるように構成されたガイド部材を備えることができる放物面反射体を備え、ガイド部材は、第1のポートと空間的に位置合わせされた放物面反射体における開口を備える。
【0015】
例4において、例1~3のうちの任意の1つ以上の主題は、任意選択で、放物面反射体に対し位置決めされ、協働して、第2の光信号の少なくとも一部分を分光システムに結合された光学スプリッタの第3のポートに向けて方向付けるように構成された、第2の1つ以上の反射体を備える。
【0016】
例5において、例1~4のうちの任意の1つ以上の主題は、任意選択で、第2のポートを介して光学スプリッタに光学的に結合されたレーザシステムから放射されるレーザビームを含むことができる第1の光信号を備える。
【0017】
例6において、例5の主題は、任意選択で、光学経路へのレーザビームの過剰投影を阻止するためのシールドを備える。
【0018】
例7において、例5~6のうちの任意の1つ以上の主題は、任意選択で、光学スプリッタに関連付けられ、レーザビームの放射に応答して光学スプリッタの温度を特定するための、少なくとも1つの温度センサを備える。
【0019】
例8において、例7の主題は、任意選択で、特定された温度に少なくとも部分的に基づいて、レーザシステムの設定を調整するための制御信号を生成するように構成されたコントローラ回路を備える。
【0020】
例9において、例1~8のうちの任意の1つ以上の主題は、任意選択で、第1の光信号を第1のポートに向けて方向付けるように構成された1つ以上の光学レンズをさらに備えることができる光学スプリッタを備える。
【0021】
例10において、例9の主題は、任意選択で、コリメートレンズ、集束レンズまたは両凸レンズのうちの少なくとも1つを含むことができる1つ以上の光学レンズを備える。
【0022】
例11において、例9~10のうちの任意の1つ以上の主題は、任意選択で、第2の光信号の少なくとも一部分を分光システムにリダイレクトするように構成された反射コーティングを含むことができる1つ以上の光学レンズのうちの少なくとも1つを備える。
【0023】
例12において、例1~11のうちの任意の1つ以上の主題は、任意選択で、受信した第2の光信号の少なくとも一部分に少なくとも部分的に基づいて、(i)結石標的の組成プロファイルを生成し、(ii)結石標的のタイプを識別する、ように構成することができる分光システムを備える。
【0024】
例13において、例1~12のうちの任意の1つ以上の主題は、任意選択で、解剖学的標的のタイプ、材料、組成、組成プロファイル、構造または硬さのうちの少なくとも1つを含むことができる解剖学的標的の特性を含む。
【0025】
例14において、例1~13のうちの任意の1つ以上の主題は、任意選択で、解剖学的標的の受信した第2の光信号の少なくとも一部分に基づいて、信号発生器の設定を調整するための制御信号を生成するように構成されたコントローラ回路を備える。
【0026】
例15は、電気手術システムであって、解剖学的標的をアブレーションするように動作可能な電気手術信号を生成するように構成された電気手術エネルギーシステムと、(i)電気手術信号を解剖学的標的に通過させ、(ii)解剖学的標的に入射する照射に応答して、解剖学的標的からの光信号を通過させる、ように構成された光学経路を備えるプローブと、プローブに光学的に結合された光学スプリッタであって、光学スプリッタは、電気手術信号をプローブの光学経路に方向付け、プローブの光学経路から光信号の少なくとも一部分を受信し、受信した光信号の少なくとも一部分をリダイレクトするように構成される、光学スプリッタと、少なくとも1つの温度センサに結合された温度モニタであって、温度モニタは、電気手術信号の放射に応じて、光学スプリッタの温度を監視し、監視温度に少なくとも部分的に基づいて、光学スプリッタの過熱診断を生成するように構成される、温度モニタと、を備える、電気手術システムである。
【0027】
例16において、例15の主題は、任意選択で、電気手術信号に中を通過させるように構成された開口を有する反射体をさらに備えることができる光学スプリッタを備え、少なくとも1つの温度センサは、開口に実質的に近接している。
【0028】
例17において、例15~16のうちの任意の1つ以上の主題は、任意選択で、レーザパルスを放射するように構成されたレーザシステムを備えることができる電気手術エネルギーシステムを備え、温度モニタは、温度測定をレーザパルスと同期させるように構成される。
【0029】
例18において、例15~17の任意の1つ以上の主題は、任意選択で、(i)反射体をさらに備えることができる光学スプリッタと、(ii)反射体の非反射面上の第1の温度センサを含む少なくとも1つの温度センサと、(iii)反射体の非反射面上に入射する光信号の少なくとも一部分を示す非反射面の温度変化を検出し、非反射面の検出された温度変化に少なくとも部分的に基づいて、過熱診断を生成するように構成することができる温度モニタと、を備える。
【0030】
例19において、例15~18の任意の1つ以上の主題は、任意選択で、(i)反射体をさらに備えることができる光学スプリッタと、(ii)反射体の反射面上の第2の温度センサを含む少なくとも1つの温度センサと、(iii)解剖学的標的から反射され、反射体の反射面上に入射する光信号の少なくとも一部分を示す反射面の温度変化を検出し、反射面の検出された温度変化に少なくとも部分的に基づいて、過熱診断を生成するように構成することができる温度モニタと、を備える。
【0031】
例20において、例15~19の任意の1つ以上の主題は、任意選択で、(i)反射体をさらに備えることができる光学スプリッタと、(ii)反射面の反対にある反射体の非反射面の温度を検知するように構成された第1の温度センサと、反射面の温度を検知するように構成された第2の温度センサとを含むことができる少なくとも1つの温度センサと、(iii)非反射面の温度と、反射面の温度との比較に少なくとも部分的に基づいて、過熱診断を生成するように構成することができる温度モニタと、を備える。
【0032】
例21において、例20の主題は、任意選択で、反射面の温度が非反射面の温度よりも高い場合、プローブと光学スプリッタとの位置合わせ不良の第1のインジケータと、非反射面の温度が反射面の温度よりも高い場合、光学スプリッタと電気手術または電磁エネルギーシステムとの位置合わせ不良の第2のインジケータと、を含むことができる過熱診断を含む。
【0033】
例22において、例15~21のうちの任意の1つ以上の主題は、任意選択で、監視温度に少なくとも部分的に基づいて、電気手術エネルギーシステムの設定を調整するための制御信号を生成するように構成されたコントローラ回路を備える。
【0034】
例23は、光学スプリッタと、光学スプリッタに結合されたプローブとを備える電気手術システムを動作させる方法であって、この方法は、電気手術信号を、光学スプリッタおよびプローブを通じて解剖学的標的に方向付けることと、解剖学的標的の照射に応答して、解剖学的標的から反射された光信号の少なくとも一部分を受信することと、光学スプリッタを介して、受信した光信号の少なくとも一部分をリダイレクトすることと、電気手術信号の放射に応答して、温度センサを介して光学スプリッタの温度を監視することと、監視温度が所定のしきい値を超えていると判断すると、監視温度に少なくとも部分的に基づいて、光学スプリッタの過熱診断を生成することと、を含む、方法である。
【0035】
例24において、例23の主題は、任意選択で、レーザパルスを含むことができる電気手術信号と、レーザパルスを用いて温度モニタリングを同期させることとを含む。
【0036】
例25において、例23~24の任意の1つ以上の主題は、任意選択で、反射体上に入射する光信号の少なくとも一部分を示す、光学スプリッタにおける反射体の温度変化を検出することを含む、光学スプリッタの温度を監視することと、検出された温度変化に少なくとも部分的に基づいて過熱診断を生成することとを含む。
【0037】
例26において、例25の主題は、任意選択で、光学スプリッタの反射面または非反射面のうちの少なくとも1つにおける温度変化を検出することを含むことができる、反射体の温度変化を検出することを含む。
【0038】
例27において、例23~26の任意の1つ以上の主題は、任意選択で、光学スプリッタにおける反射体の非反射面の第1の温度を検出することと、非反射面の反対の反射体の反射面の第2の温度を検出することとを含むことができる、光学スプリッタの温度を監視することと、第1の温度と第2の温度との比較に少なくとも部分的に基づいて過熱診断を生成することとを含む。
【0039】
例28において、例27の主題は、任意選択で、第2の温度が第1の温度よりも高い場合、光学スプリッタとプローブとの位置合わせ不良の第1のインジケータと、第1の温度が第2の温度よりも高い場合、光学スプリッタと、電気手術信号を生成する電気手術または電磁エネルギーシステムとの位置合わせ不良の第2のインジケータと、を含むことができる過熱診断を含む。
【0040】
例29において、例23~28の任意の1つ以上の主題は、任意選択で、監視温度に少なくとも部分的に基づいて、電気手術信号を生成するための電気手術エネルギーシステムの設定を調整することを含む。
【0041】
本技法は、健康関連の手順の観点で説明されるが、そのように限定されない。発明の概要は、本出願の教示のうちのいくつかの概観であり、本主題を排他的または包括的に扱うことを意図したものではない。本主題に関するさらなる詳細は、詳細な説明および添付の特許請求の範囲において得ることができる。本開示の他の態様は、以下の詳細な説明を読んで理解し、その一部を形成する図面を見た当業者には明らかとなろう。図面の各々は、限定の意味で解釈されるものではない。本開示の範囲は、添付の特許請求項およびその法的等価物によって定義される。
【図面の簡単な説明】
【0042】
図1】アブレーションシステム等の手術システム内の例示的な標的識別システムを概略的に示す図である。
図2A】中空の平坦な反射体を含む光学スプリッタを各々が備える例示的な標的識別システムを概略的に示す図である。
図2B】中空の平坦な反射体を含む光学スプリッタを各々が備える例示的な標的識別システムを概略的に示す図である。
図3A】中空の平坦な反射体を含む光学スプリッタを各々が備える例示的な標的識別システムを概略的に示す図である。
図3B】中空の平坦な反射体を含む光学スプリッタを各々が備える例示的な標的識別システムを概略的に示す図である。
図4A】協働して光応答信号を分光システムにリダイレクトする複数の反射体を各々が含む例示的な光学スプリッタを概略的に示す図である。
図4B】協働して光応答信号を分光システムにリダイレクトする複数の反射体を各々が含む例示的な光学スプリッタを概略的に示す図である。
図5】患者の身体における治療標的を識別するための例示的な方法を概略的に示す図である。
図6】電気手術システムの光学構成要素の温度を監視し、この光学構成要素を過熱から保護するための例示的な方法を概略的に示す図である。
図7】本明細書で論じる技法(例えば、方法)のうちの任意の1つ以上を実行することができる例示的な機械700のブロック図を概略的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0043】
本明細書は、レーザシステムによって生成され、標的に方向付けされたレーザビーム等の電気手術信号から患者の身体内の標的により反射された光フィードバック信号を分割するためのシステム、デバイスおよび方法について記載している。本明細書において、「電気手術」および「電磁」という用語は交換可能に用いられる。標的は、解剖学的組織標的(例えば、軟組織、硬組織、またはがん組織等の異常組織)、または結石標的(例えば、腎臓または膵臓胆管(pancreobiliary)または胆嚢結石)を含むことができる。光フィードバック信号および電気手術信号は、共通の光学経路と結合される。光学スプリッタは、最小の減衰で電気手術信号の信頼性のある送信を可能にする一方で、同時に、光学フィードバック信号を最小の歪みで分光システムに方向付ける。分光システムは、手順全体を通じて、標的の1つ以上の特性(例えば、タイプ、物質、組成、組成プロファイル、構造または硬さ)を生体内(in vivo)で連続してまたは再帰的に識別することができる。スペクトル情報および/または識別された標的特性に基づいてレーザ出力を調整するためのフィードバックをレーザシステムに提供することができる。これにより、ユーザによって選択されたオリジナルのレーザ設定の設定範囲内でのレーザ設定の即時の調整が可能になる。いくつかの実施形態によれば、電気手術システムは、光学スプリッタ等の光学構成要素の温度を監視し、光学構成要素を過熱から保護するようにレーザ出力を調整することができる過熱保護システムを備え、それによって光学スプリッタおよび光学経路に対する損傷を防ぐことができる。本明細書に論じられるシステムおよびデバイスは、内視鏡的にまたは腹腔鏡下で用いることができる。
【0044】
内視鏡または腹腔鏡により組織の特性(例えば、タイプ、物質、組成、組成プロファイル、構造または硬さ)を生体内(in vivo)で識別することは、多数の用途を有する。例えば、腎臓結石の組成が予め特定される場合、治療方法は、少なくとも部分的に石の組成に基づくことができる。例えば、レーザを用いて石を破壊または「粉化(dust)」するとき、事前に石が硬い組成を有することがわかっていた場合、レーザ設定は、硬い腎臓結石に対しより効果的および/または効率的に機能する設定になるように調整することができる。
【0045】
また、組成を識別するために組織試料の除去を必要とする技法は、全体手順の全てまたは少なくとも一部を通じて継続的に組織の組成を監視することができない。本技法は、内視鏡または腹腔鏡の先端における、解剖学的標的または結石標的の特性(例えば、タイプ、物質、組成、組成プロファイル、構造または硬さ)の測定および分析を可能にすることができる。これらの技法は、手術処置または診断処置等の健康関連の処置中により多くの情報を提供し、処置中の治療方法をより良好に適合させることができる。例えば、処置が、腎臓結石を小片に破壊すること、例えば、腎臓結石を「粉化」することを伴い、腎臓結石が硬い表面を有するが柔らかい芯を有する場合、内視鏡または腹腔鏡による標的組成の連続したまたは他の継続的な監視により、例えば、レーザアブレーション機器のレーザ設定等の処置中の「粉化」を行う機器の設定の調整を可能にすることができる。標的の識別は、まず、石の硬い表面に対しより良好に(例えば、より効果的および/または効率的に)機能する設定を提供し、次に、石の柔らかい芯に対しより良好に機能する設定を提供することを可能にすることができる。
【0046】
図1は、患者の身体内の標的117をアブレーションするためにレーザエネルギーを用いる電気手術システム等の手術システム110内の例示的な標的識別システム100を概略的に示す。標的117は、解剖学的組織標的(例えば、軟組織、硬組織、またはがん組織等の異常組織)、または結石標的(例えば、腎臓または膵臓胆管または胆嚢結石)を含むことができる。手術システム110は、内視鏡101等の視覚化機器と、標的識別システム100と、手術レーザシステム102等の主要な医療機器と、過熱保護システム150とを備えることができる。内視鏡101は、内視鏡プローブ103と、光源104と、ディスプレイ105とを備えることができる。内視鏡プローブ103は、カメラ106と、1つ以上の光信号通信経路107、108と、少なくとも1つの作業管腔111とを備えることができる。内視鏡プローブ103の遠位部分は、患者の身体内に挿入することができる。光源104、1つ以上の光学経路107、108およびディスプレイ105は、医師または外科医またはロボットデバイス等のエンドユーザが、内視鏡プローブ103の遠位端109またはその付近における患者の身体の内部エリアを照射および観察することを可能にすることができる。光源104は、第1の光学経路108を介して電磁放射(例えば、可視光、赤外光、紫外光または蛍光)を放射して、内視鏡プローブ103の遠位端109におけるまたはこれを越えたエリアを照射することができる。代替的に、光源104は、内視鏡の遠位端に配置され、標的117に近接したエリアを照射するように構成された、視覚システムの1つ以上のLED等の照射光を含むことができる。一例において、第2の光学経路107は、内視鏡プローブ103の遠位端109におけるカメラ106からの画像信号情報を、標的117の画像等の内視鏡プローブ103の遠位端109におけるまたはこれを越えたエリアの画像を表示するためのディスプレイ105における信号処理回路部に通信することができる。いくつかの例において、第2の光学経路107は、1つ以上の光ファイバ等の1つ以上の構成要素を含むことができ、ディスプレイ105は、エンドユーザが内視鏡プローブ103の遠位端109におけるまたはこれを越えたエリアを観測するための接眼レンズを含むことができる。或る特定の例において、第2の光学経路107は、例えばエンドユーザが内視鏡プローブ103の遠位端109におけるまたはこれを越えたエリアを観測するために、カメラ106からディスプレイ105へのビュー画像信号情報を結合することができる。いくつかの例において、カメラ106は、ディスプレイ105付近等、内視鏡プローブ103の近位端にまたはその付近に位置することができ、1つ以上の光ファイバが、内視鏡のプローブ103の遠位端109からカメラ106に画像情報を送信するための第2の光学経路107を形成することができる。いくつかの例において、カメラ106は、内視鏡プローブ103の遠位端109に位置することができ、画像情報は、内視鏡プローブ103と一体化された第2の光学経路107の少なくとも一部分を形成する電気導体を介してディスプレイ105に送信することができる。
【0047】
作業管腔111は、エンドユーザが、内視鏡プローブ103を用いて視覚化されている患者の身体の標的内部領域に関して動作するための主要な医療機器(1つ以上の手術具等)の一部分を挿入および抽出することをさらに可能にすることができる。例えば、手術レーザシステム102の場合、主要な医療機器は、作業プローブ113と、内視鏡プローブ103の遠位端109においてまたはその付近で標的組織または結石標的のアブレーションを可能にするためのレーザ発生器112とを含むことができる。そのようなシステムにおいて、内視鏡処置または腹腔鏡処置のために、レーザビーム118は、レーザエネルギーに作業管腔111を通過させ、硬組織および軟組織を治療することができる。或る特定の例において、手術レーザシステム102は、紫外(UV)~赤外(UR)の広波長範囲(例えば、200nm~10000nm)のレーザビーム118を生成することができる。いくつかのレーザは、例えば、水吸収の場合、1900~3000nm、またはオキシヘモグロビンおよび/またはデオキシヘモグロビンの場合、400~520nmの、軟組織または硬組織によって高度に吸収することができる波長範囲内の出力を生成することができる。
【0048】
標的識別システム100は、(ビームスプリッタとも呼ばれる)光学スプリッタ114および分光システム115を備えることができる。いくつかの例において、作業プローブ113は、標的識別システム100の一部とすることができる。ビームスプリッタ114は、(i)レーザビーム118と、例えば標的117から反射または放射された光応答信号119とを同時に送信することができる共通の光学経路130のための第1のポート121と、(ii)手術レーザシステム102に結合された光学経路のための第2のポート122と、(iii)分光システム115に結合されたフィードバック光学経路のための第3のポート123とを備えることができる。分光システム115は、分光計128および任意選択のフィードバック分析器116を備えることができる。一例において、標的識別システム100は、光応答信号119の情報を用いて、標的117の1つ以上の特性(例えば、物質または組成)の特定を支援することができる。光応答信号119は、例えば、人間の目に可視の光、蛍光発光、紫外光、赤外光またはそれらの組合せを含むことができる。
【0049】
或る特定の例において、光応答信号119の情報を用いて、手順をより効率的に実行することができる。一例において、標的に入射する光源104からの電磁放射は、内視鏡プローブ103の遠位端109におけるもしくはその付近の患者の身体の内部エリア内の標的117から反射され得るか、または標的117に例えば蛍光等の光学情報を放射させることができる。光応答信号119を介して伝達された光学情報は、本明細書において、画像応答情報または光応答情報とも呼ばれる。分光計128は、ビームスプリッタ114に光学的に結合することができ、光応答信号119からのスペクトル測定値を提供することができる。分光計128の例は、数ある中でも、フーリエ変換赤外(FTIR)分光計、ラマン分光計、UV-VIS分光計、UV-VIS-IR分光計または蛍光分光計を含むことができる。
【0050】
分光法(Spectroscopy/spectrometry)技法を用いて、標的表面によって反射された、送信された、放射された、吸収された、または吸収されていないスペクトルを介して特性(例えば、タイプ、物質、組成、組成プロファイル、構造または硬さ)を識別することができる。光学分光法は、有機物質および無機物質の適時の分析を提供することができる。アブレーションの場合、光学分光法は、例えば、限定ではないが、ファイバレーザアブレーション技法との統合、物質化学組成分析の非破壊的方法、リアルタイムまたはほぼリアルタイムの組成推定または組成プロファイル、および様々なタイプの生体物質:硬組織および軟組織、石等の分析への適用可能性を含む、いくつかの利点を提供するのに役立つことができる。分光技法を単独でまたは組み合わせて用いて、硬組織または軟組織の化学組成を分析し、デジタルスペクトルデータを生成することができる。デジタルスペクトルデータの例は、基準スペクトルから抽出された1つ以上の特徴的なスペクトル特徴を含むことができる。特徴的な反射率特徴の例は、特定の波長におけるまたは波長範囲にわたる反射強度(または正規化された反射スペクトル強度)、反射スペクトルから計算された統計値(例えば、2つ以上の異なる波長にわたる反射率の変動、波長の範囲にわたる反射率の変化率等)、またはスペクトル反射曲線の少なくとも一部分の形態を表すグラフィック特徴(例えば、傾斜、曲率、曲線セグメント等)を含むことができる。いくつかの例では、限定ではないが、色、紫外、遠紫外、可視光、近赤外、および蛍光分光法を含む1つ以上のタイプの分光法を内視鏡101とともに用いて、標的117の組成を識別することができる。一例において、分光システム115は、(i)例えば、内視鏡プローブ103の第1の光学経路108を介して標的117を照射するように光源104を開始および制御し、(ii)例えば、作業プローブ113の光学経路(共通の光学経路130等)を介して標的117から反射または放射された光応答信号119を受信し、(iii)光応答信号119に基づいてスペクトルデータを生成することができる。
【0051】
フィードバック分析器116は、分光計128によって生成されたスペクトル測定値から、このスペクトル測定値に基づいて、タイプ、物質、組成、組成プロファイル、構造または硬さ等の標的117の特性を特定することができる。一例において、フィードバック分析器116は、スペクトルデータによって表される物質の成分プロファイルを推定することができ、そのような推定値を表示することができる。組成または構造情報は、外科的処置をより効率的に行うために用いることができるフィードバックを提供するのに役立つように、有用であり得る。例えば、フィードバック分析器116は、分光応答信号を、組織組成データの利用可能なデータベースライブラリと比較することができる。フィードバック分析器116は、分光応答信号に基づいて標的物質組成を識別し、手術レーザシステム102が識別された組織組成のための有効な組織治療を達成するための構成を提案することができる。一例において、フィードバック分析器116は、泌尿器系、胆嚢、鼻腔、消化管、胃、またはへんとう腺等の石形成領域におけるトーンまたは石断片等の別個の組成を有する複数の結石タイプのうちの1つとして結石標的を識別することができる。一例において、結石標的は、リン酸カルシウム(CaP)石、リン酸アンモニウムマグネシウム(MAP)石、一水化シュウ酸カルシウム(COM)石、コレステロール系石、二水化シュウ酸カルシウム(COD)石、シスチン石または尿酸(UA)石のうちの1つ等の別個の化学組成を有する石タイプのうちの1つとして識別することができる。別の例において、フィードバック分析器116は、数ある中でも、軟組織(例えば、筋肉、腱、靭帯、血管、筋膜、皮膚、脂肪および繊維組織)、骨等の硬組織、軟骨等の結合組織等の複数の組織タイプのうちの1つとして解剖学的組織標的を識別することができる。いくつかの例では、解剖学的組織標的は、別個の解剖学的ロケーションを有する組織タイプのうちの1つとして識別することができる。例えば、腎臓組織標的は、杯組織、皮質組織、髄質組織または尿管組織のうちの1つとして識別することができる。別の例において、識別された組織標的は、正常組織または異常組織(例えば、がん組織)として識別することができる。さらに別の例において、識別される組織標的は、治療領域(例えば、除去対象の主要またはポリープ)または非治療領域(例えば、血管、筋肉等)として識別することができる。
【0052】
或る特定の例において、フィードバック分析器116は、手術レーザシステム102の設定を調整するために1つ以上の制御信号または制御データを提供することができる。レーザアブレーションの例において、フィードバック分析器116または中間デバイスは、標的特性(例えば、タイプ、物質、組成、組成プロファイル、構造または硬さ)に基づいて、レーザ設定を自動的にプログラムまたは調整するための制御回路部を含むことができる。レーザ設定を調整する例は、数ある中でも、レーザビームの送達もしくは送達の保留、または、波長、電力、電力密度、エネルギー、もしくはパルスパラメータ(例えば、パルス幅、パルスレート、振幅、デューティサイクル、パルス形状)等のレーザビームパラメータ、露出時間、総投与量もしくはエネルギー、またはそれらの1つ以上の組合せの調整を含むことができる。いくつかの例では、レーザ設定の調整は、例えば、手順の開始時にエンドユーザによって選択される設定に基づいて設定された個々のまたは多変量の安全動作範囲内にあるように制限または制約することができる。
【0053】
或る特定の例では、分光システム115は、任意選択で、データベース129と通信することができる。いくつかの例では、データベース129は、手順と関連付けられた測定値および他の情報を記憶するためのリポジトリとすることができる。いくつかの例では、データベースがさらなる情報を収集する際、分光システム115、またはフィードバック分析器116等のその一部分は、データベース129の情報とインタラクトして、例えば、処置中に収集もしくは分析され、かつ/またはデータベース129内で利用可能な履歴情報と比較される分光情報に基づいてレーザシステム102の最も効果的な用途を決定することができる。或る特定の例において、データベースは、処置の分光情報が収集および分析される際に手術レーザシステム102を構成するための時間的方策(例えば、レーザパルスパラメータ値および/またはその時間的変動)を提供することが可能であり得る。或る特定の例では、データベース129は、インターネットベースまたはクラウドベースのデータベースを含むことができ、履歴処置情報に基づいて、かつ/または処置中に収集された特定の分光情報に適応させて、効率的な手術処置の実行を支援するために、フィードバック分析器116または分光システム115の何らかの他の部分とインタラクトするように設計されたアプリケーションを含むことができる。
【0054】
例えば、レーザアブレーションシステムの場合、手術レーザシステム102の構成のための方策の一部とすることができるレーザ設定は、限定ではないが、レーザ動作モード(例えば、パルスまたは連続波)、電力、エネルギー、周波数、パルス形状、パルスプロファイル、またはその1つ以上の組合せを含むことができる。或る特定の例において、手術レーザシステム102は、数ある中でも、自動モードまたは半自動モードで動作することができる。自動モードにおいて、レーザ設定は、推定される標的特性(例えば、タイプ、物質、組成、組成プロファイル、構造または硬さ)に基づいて自動的に制御することができる。半自動モードにおいて、レーザ設定は、設定変更を行うために操作者の承認の何らかの確認の指示を受信した後に、推定標的特性に基づいて調整することができる。手術レーザシステム102、分光システム115およびフィードバック分析器116の組合せを、継続動作内フィードバックモードにおいて用いて、例えば、作業プローブ113を通じて標的117の特性(例えば、タイプ、物質、組成、組成プロファイル、構造または硬さ)を連続してまたは再帰的に識別し、処置中または処置全体にわたってレーザ設定を更新することができる。本主題の範囲から逸脱することなく、本明細書において論じられるようなレーザベースの手術技法以外の手術技法も標的識別システム100とともに用いることが可能であることが理解される。
【0055】
或る特定の例において、標的識別システム100の作業プローブ113の単一の光学経路を用いて、作業プローブ113の遠位端109において標的117との間で第1の光信号(レーザビーム118等)をトランスポートすることができ、またこれを用いて、作業プローブ113の遠位端109から第2の光信号(光応答信号119等)を分光システム115にトランスポートすることもできる。ビームスプリッタ114は、複数の光学経路を単一の光学経路にマージすることができるか、共通の光学経路(光学経路130等)からの光学情報を1つ以上の別個の光学経路に分割することができる。ビームスプリッタ114は、反射体の2つの反対面間に延びる開口等のガイド部材を有する反射体を備えることができる。ガイド部材または開口は、位置合わせしてレーザビーム118を通過させることができ、共通の光学経路130を介して標的117に向けてレーザビーム118を方向付けることができる。ガイド部材は、有利には、光学経路130に入る前のレーザエネルギーの減衰または歪みを回避するかまたは実質的に低減することができる。反射体は、第1のポート121に面し、光学経路130を通じて送信された到来する光応答信号119を第3のポート123を通じて分光システム115の方へリダイレクトするように位置決めされた反射面を有する。いくつかの例では、反射面は、反射防止コーティングもしくは物質、またはダイクロイックコーティングもしくは物質、またはそれらの組合せ等の波長高感度コーティングを含む。反射防止コーティングに適した物質は、SiO2(約1.4~約1.5の屈折率)、SiO(約1.8~約1.9の屈折率)、Si3N4(約1.9の屈折率)、TiO2(約2.3の屈折率)、Ta2O5(約2.1~約2.3の屈折率)、MgF2(約1.4~約1.5の屈折率)、BaF2(約1.47の屈折率)、CaF2(約1.39の屈折率)等を含むことができる。中空の反射体を有するビームスプリッタの例が図2A図2Bおよび図3A図3B等を参照して以下に論じられる。ビームスプリッタ114は図1において標的識別システム100の一部として示されているが、その用途は限定されない。ビームスプリッタ114または以下で図2A図2B図3A図3Bおよび図4A図4Bを参照して論じられるようなその変形を、他の光学システムまたは電気手術システムにおいて用いることができる。
【0056】
過熱保護システム150は、ビームスプリッタ114またはその一部等の手術システム110の光学構成要素を過熱から保護することができる。熱蓄積は、ビームスプリッタ114を通過する際に光学構成要素において散逸するレーザビーム118の一部分によって生じ得る。さらにまたは代替的に、いくつかの例では、標的117に入射するレーザエネルギーの一部分は、反射または放射されて内視鏡プローブ103に戻り、共通の光学経路130を通って進み、ビームスプリッタ114等の光学構成要素の表面上に散乱し、内部の温度上昇を引き起こす場合がある。過熱保護システム150は、ビームスプリッタ114または他の光学構成要素の温度を測定するために1つ以上の温度センサに電気的に結合された温度モニタ152を含むことができる。一例において、過熱保護システム150は、監視温度に基づいてレーザ発生器112の設定を調整するように手術レーザシステム102に制御信号を生成することができる、例えば温度モニタ152に含まれるコントローラ回路部を備えることができる。例えば、ビームスプリッタ114の上昇温度がしきい値を超えていることに応答して、コントローラ回路は、レーザ発生器112を一時的にシャットダウンするか、または1つ以上のレーザビームパラメータを変更してレーザエネルギー出力を低減することができる。いくつかの例において、温度モニタ152は、異なる光学構成要素のそれぞれの温度、または光学構成要素の異なるロケーションにおけるそれぞれの温度を監視することができる。温度測定値に基づいて、温度モニタ152は、例えば、レーザビーム118がビームスプリッタ114において散逸することに起因する、または反射レーザエネルギーがビームスプリッタ114上に散乱することに起因する過熱原因を識別することができる。温度モニタ152は、光学構成要素過熱の診断をさらに生成することができる。温度モニタおよび過熱保護システムの例が図2A図2Bおよび図3A図3B等を参照して以下に論じられる。
【0057】
図2A図2Bは、中空の平坦な反射体を含むビームスプリッタを各々が備える例示的な標的識別システムを概略的に示す。図2Aに示すような標的識別システム200Aは、標的識別システム100の一例であり、ビームスプリッタ214A、プローブ113および分光システム115を備える。ビームスプリッタ214Aは、1つ以上のポート221、222および223、コリメートレンズ220、集束レンズ224および中空の反射体270を含むことができる。ビームスプリッタ114のポート121、122および123と同様に、第1のポート221は、標的117に向けてレーザビーム118を同時に送信することができ、標的117から反射または放射された光応答信号119をビームスプリッタ214Aに返送することができる、内視鏡における外科用ファイバ等の共通の光学経路130を受けることができる。第2のポート222は、手術レーザシステム102に結合された、レーザファイバ230等の第2の光路を受けることができる。第3のポート223は、分光システム115に結合された、分光計ファイバ240等の第3の光学経路を受けることができる。図2Aに示すように、レーザビーム118は、コリメートレンズ220、集束レンズ224および中空の反射体270を介して第2のポート222から第1のポート221に向けることができる。中空の反射体270は、数ある物質の中でも、金属、ガラスまたはプラスチックから作製することができる。一例において、中空の反射体270は中空ミラーである。中空の反射体270は、第1のポート221および共通の光学経路130に面する反射面271(「前面」とも呼ばれる)、および反射面271の反対側の、第2のポート222およびコリメートレンズ220および集束レンズ224に面する非反射面272(「背面」とも呼ばれる)を有する。中空の反射体270は、反射体本体の前面から背面に延びる貫通孔等の開口275を有することができる。開口275は、中空の反射体270の実質的に中心に位置することができる。代替的に、開口275は、中心から離れた反射体本体の他のロケーションに位置してもよい。開口275は特定のサイズおよび形状を有することができ、コリメートされ集束したレーザビーム118の経路と位置合わせして、閉塞なしでレーザビームを実質的に通過させることができる。いくつかの例において、反射面271は、レーザの波長に対し透過性または反射防止性とすることができるが、光応答信号119の対象波長に対しては高度に反射性とすることができる、AR物質等の波長高感度物質またはコーティングを含むことができる。したがって、レーザエネルギーの全てではなくとも多くが第2のポート222から第1のポート221に通過することができる。いくつかの例において、集束レンズ224は、同様に、中空の反射体270に面する表面において、レーザの波長に対し透過性であるかまたは反射防止性とすることができるが、光応答信号119の波長に対しては高度に反射性である波長高感度物質またはコーティングを含むことができ、それによって、レーザエネルギーは、閉塞なしで通過することができる一方で、中空の反射体270の開口275を通じて漏れる光応答信号119の一部分(存在する場合)を第3のポート223にリダイレクトすることができる。コリメートレンズ220、集束レンズ224および開口275は、第1のポート221と空間的に位置合わせすることができ、それによってレーザビーム118は、第1のポート221を介して光学経路130に方向付けることができる。
【0058】
数ある利点の中でも、開口275は、共通の光学経路130に入る前に、ビームスプリッタ214Aを通過する際にレーザビームの減衰または歪みを効果的に回避することができる。さらに、開口275はレーザビーム118に対し開いているため、反射体本体は、レーザビーム118と直接インタラクトしてレーザエネルギーを吸収する可能性がより低い。したがって、ビームスプリッタ214Aの反射体本体または他の光学構成要素に対する発熱または損傷の機会を低減させることができ、システムの安全性および信頼性を改善することができる。
【0059】
中空の反射体270には1つのみの開口275が示されているが、これは例示のためであり、限定ではない。いくつかの例では、中空の反射体270は、それぞれの光信号を通過させるために互いに空間的に離間された2つ以上の開口を含むことができる。一例において、2つの別個のレーザビームは、第2のポート222を介してそれぞれのレーザファイバを通って送信され、ビームスプリッタ214Aに入ることができる。第1のレーザビームは、第1の組成を有する硬い石または結石標的の硬い部分をアブレーションまたは粉化するためのエネルギーレベルまたはレーザ設定を有し、第2のレーザビームは、異なる第2の組成を有する柔らかい石または結石標的の柔らかい部分をアブレーションまたは粉化するための異なるエネルギーレベルまたは異なるレーザ設定を有する。レンズ220および224によって2つのレーザビームをコリメートおよび集束することができ、反射体本体上のそれぞれの開口を通して共通の光学経路130に向けて方向付けることができる。
【0060】
図2Aに示す例において、中空の反射体270は、平坦な反射面271および平坦な非反射面272を有する平坦な反射体(例えば、平坦なミラー)である。標的117から反射または放射され、共通の光学経路130を通ってビームスプリッタ214Aに方向付けられた光応答信号119は、第1のポート221から中空の反射体270を介して第3のポート223に結合することができる。平坦な反射面271は、光応答信号119を反射し、反射された光応答信号219をビームスプリッタ214Aの第3のポート223に向けてリダイレクトするように位置決めすることができる。一例において、ビームスプリッタ214Aは、反射された光応答信号219を第3のポート223に向けて収束させるための集束レンズ260を含むことができる。収束した光応答信号229は、分光計ファイバ240を介して分光システム115まで進むことができる。
【0061】
レーザビームがビームスプリッタ等の光学機器を通過する際、或る特定の光学構成要素がレーザエネルギーを吸収し、過熱状態になる場合がある。上記で論じたように、開口275は、レーザビームの大部分(例えば、90%、またはいくつかの実施形態では80%もしくは70%)が反射体270と直接作用することなく開口275を通過することを可能にし、これによって、反射体の本体に熱が蓄積する機会を実質的に低減することができる。しかしながら、或る特定の場合に、いくらかのレーザエネルギー138が、中空の反射体270等の光学構成要素において散逸する場合があり、これが温度上昇につながる場合がある。これは、例えば、レーザシステム102とビームスプリッタ214Aとの間の結合異常、ビームスプリッタ214Aにおけるレーザファイバ230とレンズシステムとの位置合わせ不良、またはコリメートレンズ220もしくは集束レンズ224の亀裂、塵もしくは劣化等のレンズシステムの欠陥に起因して生じ得る。このため、散逸するレーザエネルギー138は、中空の反射体の非反射面(背面)を加熱する場合がある。さらにまたは代替的に、いくつかの事例では、標的117に方向付けられるレーザビームの一部分を反射または放射して内視鏡プローブに戻すことができる。反射されたレーザビーム148は、共通の光学経路130を通って戻り、中空の反射体270の反射面(正面)上に散乱し、これを加熱し得る。
【0062】
標的識別システム200Aは、中空の反射体270またはその一部分の温度を監視するための温度モニタ152を含むことができる。温度モニタ152は、レーザビーム118の発生に応じた中空の反射体270における温度変化を検出するように、1つ以上の温度センサに電気的に結合することができる。温度センサは、接触センサまたは非接触センサとすることができる。温度センサの例は、数ある中でも、熱電対、サーミスタ、赤外センサ、バイメタル素子、抵抗温度検出器、蛍光温度センサ、温度高感度または温度依存発光物質を含む。いくつかの例では、温度モニタ152は、温度測定値のサンプリングをレーザパルスと同期させることができる。例えば、温度モニタ152は、レーザパルスレートと実質的に等しいサンプリングレートで温度測定値をサンプリングすることができ、それによって、温度データが、レーザパルスが発生する度にその直後にサンプリングされる。代替的に、温度モニタ152は、レーザパルスレートの整数倍で温度をサンプリングすることができ、それによって、温度測定は、N(>2)個のレーザパルスごとにその直後にサンプリングされる。レーザパルス出射の時間は、概ね、散逸するレーザエネルギー138が反射体の本体に入射し、これを加熱し、それによって反射体の本体面において高い温度勾配を生じさせる時間であるため、温度測定をレーザパルスと同期させることにより、中空の反射体270における温度変化検出の感度および正確性を改善するのに役立つことができる。
【0063】
限定ではなく例として、図2Aに示すように、温度モニタ152は、各々が中空の反射体270の本体上に位置する第1の温度センサ254および第2の温度センサ256の1つ以上に電気的に結合することができる。一例において、温度センサ252および/または温度センサ254は、実質的に開口275に近接することができる。上記で論じたように、開口275は、コリメートおよび集束したレーザビームと位置合わせして位置決めすることができる。しかしながら、ビームスプリッタ214Aに対するレーザファイバ230の僅かな位置合わせ不良、またはコリメートレンズ220および/または集束レンズ224の或る特定の欠陥により、レーザエネルギーが、開口275から離れた反射体本体の他の部分よりも、開口275の近傍でレーザエネルギーを散逸させる可能性がより高い場合がある。したがって、位置合わせ不良が生じる場合、開口275に近いエリアの温度は、反射体表面の他のエリアよりも高い可能性が高い。温度センサを開口275に密接した場所に位置決めすることにより、レーザファイバの位置合わせ不良またはレンズシステムの欠陥等に起因した反射体の過熱を検出する感度および精度を改善することができる。
【0064】
第1の温度センサ254は、中空の反射体270の非反射面272上に位置決めすることができる。第1の温度センサ254は、レーザエネルギーの発生中の非反射面272の一部分の温度(T(1))、およびレーザエネルギーの発生前等の非反射面272のベースライン温度(T(0))を検知することができる。温度モニタ152は、レーザ出射中のベースライン温度からの非反射面272における温度変化(ΔT)、すなわち、ΔT=T(1)-T(0)を検出することができる。温度上昇ΔTが、しきい値(TN-th)を超える、すなわち、ΔT>TN-th等の特定の条件を満たす場合、温度モニタ152は、温度上昇が相当であること、および非反射面272において散逸しているレーザエネルギー138が中空の反射体270の加熱を引き起こしていることを判断することができる。
【0065】
第2の温度センサ256は、反射面271上に位置決めすることができる。第2の温度センサ256は、レーザエネルギーの発生中の反射面271の一部分の温度(T(1))、およびレーザエネルギーの発生前等の反射面271のベースライン温度(T(0))を検知することができる。温度モニタ152は、レーザ出射中のベースライン温度からの反射面271における温度変化(ΔT)、すなわち、ΔT=T(1)-T(0)を検出することができる。温度上昇ΔTRが、しきい値(TR-th)を超える、すなわち、ΔT>TR-th等の特定の条件を満たす場合、温度モニタ152は、温度上昇が相当であること、および反射面271上に散乱している反射されたレーザビーム148が中空の反射体270の加熱を引き起こしていることを判断することができる。
【0066】
温度モニタ152は、反射体過熱のアラートまたは通知を生成し、これを例えばディスプレイ105を介してユーザに提示することができる。さらにまたは代替的に、温度モニタ152は、加熱の相当な原因を示す過熱の診断を生成することができる。例えば、ΔT>TN-thの場合、レーザシステム102とビームスプリッタ214Aとの間の結合異常、ビームスプリッタ214Aにおけるレーザファイバ230とレンズシステムとの位置合わせ不良、またはコリメートレンズ220もしくは集束レンズ224の亀裂、塵もしくは劣化等のレンズシステムの欠陥の過熱診断を生成することができる。ΔT>TR-thの場合、共通の光学経路130(例えば、手術ファイバ)またはプローブ113とビームスプリッタ214Aとの位置合わせ不良の過熱診断を生成することができる。診断情報は、例えばディスプレイ105を介してユーザに提示することができる。いくつかの例では、位置合わせ不良の診断に応答して、例えばディスプレイ105を介して、補正動作の推薦(例えば、位置合わせの調整、または内視鏡プローブ等の部品の交換)をユーザに提供することができる。
【0067】
いくつかの例において、温度モニタ152は、反射体270等の光学構成要素の過熱を検出し、レーザエネルギーの発生中の反射面271と非反射面272との間の示差温度に基づいて過熱の診断を生成することができる。例えば、温度モニタ152は、第1の温度センサ254によって検知された非反射面272の温度(T(1))と、第2の温度センサ256によって検知された反射面271の温度(T(1))とを比較し、比較に基づいて過熱診断を生成することができる。一例において、温度モニタ152は、経時的に示差温度T(1)-T(1)を示すことができる。非反射面の温度T(1)が反射面の温度T(1)よりも少なくとも指定されたマージンだけ高い場合、レーザシステム102とビームスプリッタ214Aとの間の結合異常、ビームスプリッタ214Aにおけるレーザファイバ230とレンズシステムとの位置合わせ不良、またはコリメートレンズ220もしくは集束レンズ224の亀裂、塵もしくは劣化等のレンズシステムの欠陥のインジケータを生成することができる。反射面の温度T(1)が非反射面の温度T(1)よりも指定のマージンだけ高い場合、共通の光学経路130(またはプローブ113)とビームスプリッタ214Aとの位置合わせ不良のインジケータを生成することができる。
【0068】
いくつかの例において、温度モニタ152は、過熱診断に基づいて、是正措置の推薦を生成し、ユーザに提示することができる。例えば、ΔT>TR-th、または示差温度T(1)-T(1)が特定のマージンを超えていることに基づいて過熱が検出される場合、プローブ113または手術ファイバをビームスプリッタと再位置合わせするか、または手術ファイバを交換することの推薦をユーザに提示することができる。ΔT>TN-th、または示差温度T(1)-T(1)が特定のマージンを超えていることに基づいて過熱が検出される場合、ビームスプリッタを交換または修理することの推薦をユーザに提示することができる。いくつかの例において、図1を参照して上記で説明したように、光学構成要素の過熱の検出に応答して、過熱保護システム150は、レーザ発生器112を一時的にシャットダウンする等、レーザシステムの設定を自動的に調整するか、または1つ以上のレーザビームパラメータを変更してレーザエネルギー放射を低減することができる。
【0069】
ビームスプリッタ214Aは、第1のポート221に近接したブラストシールド280を含むことができる。ブラストシールド280は、送信レーザビームが共通の光学経路130(例えば、内視鏡プローブ113における手術ファイバ)上に過剰投影し、これを損傷することを防ぐことができる。ブラストシールド280は、共通の光学経路130を通って進む反射されたレーザビーム148を散乱し、反射されたレーザビーム148がレンズシステムを通じて再集束し、レーザシステム102に戻り、レーザ放射と相互作用するか、または他の形でレーザシステム102を損傷することを防ぐこともできる。
【0070】
図2Bは、標的識別システム200Aの一変形である標的識別システム200Bの例を概略的に示す。標的識別システム200Bは、プローブ113と、分光システム115と、温度モニタ152と、システム200のビームスプリッタ214Aの一変形であるビームスプリッタ214Bとを備えることができる。ビームスプリッタ214Bは、数ある中でも、中空の平坦な反射体270、および第2のポート222と中空の反射体270との間のレンズシステムを含む。コリメートレンズ220および集束レンズ224を含むビームスプリッタ214Aのレンズシステムと対照的に、ビームスプリッタ214Bのレンズシステムは、それぞれの曲率半径を有する2つの凸面を有する両凸レンズ225を含む。一例において、2つの凸面は同じ曲率半径を有する。両凸レンズ225は、レーザファイバ230を出るレーザビーム118を収束させ、これを中空の平坦な反射体270の開口275を通じて共通の光学経路130に向けて方向付けることができる。いくつかの例において、両凸レンズ225は、中空の反射体270に面する表面において、レーザの波長に対し透過性であるかまたは反射防止性とすることができるが、光応答信号119の波長に対しては高度に反射性である波長高感度物質またはコーティングを含むことができ、それによって、レーザエネルギーは、閉塞なしで通過することができる一方で、中空の反射体270の開口275を通じて漏れる光応答信号119の一部分(存在する場合)を第3のポート223にリダイレクトすることができる。
【0071】
コリメートレンズ220および集束レンズ224と同様に、いくつかの例において、レーザエネルギー138の或る特定の量が、例えば、レーザシステム102とビームスプリッタ214Bとの間の結合異常、ビームスプリッタ214Bにおけるレーザファイバ230とレンズシステムとの位置合わせ不良、または両凸レンズ225の亀裂、塵もしくは劣化等のレンズシステムの欠陥に起因して、中空の反射体270または他の光学構成要素内で散逸し、構成要素の過熱を引き起こす場合がある。温度モニタ152は、温度センサ254および/または256等の1つ以上の温度センサを介して反射体の温度を連続してまたは再帰的に監視し、過熱の診断を検出および生成することができる。実質的な温度上昇および/または過熱の診断のアラートまたは通知を生成し、ユーザに提示することができる。図2Aを参照して上記で論じたように、構成要素の加熱の検出に応じて、過熱保護システム150は、レーザ発生器112を一時的にシャットダウンする等、レーザシステムの設定を調整するか、または1つ以上のレーザビームパラメータを変更してレーザエネルギー放射を低減することができる。
【0072】
図3A図3Bは、中空の放物面反射体を含むビームスプリッタを各々が備える例示的な標的識別システムを概略的に示す。図3Aに示すような標的識別システム300Aは、標的識別システム200Aの一変形であり、プローブ113と、分光システム115と、温度モニタ152と、システム200Aのビームスプリッタ214Aの一変形であるビームスプリッタ314Aとを備えることができる。ビームスプリッタ314Aは、数ある中でも、コリメートレンズ220および集束レンズ224と、例えば、数ある材料の中でも金属、ガラスまたはプラスチックから作製された、中空の反射体370とを備える。一例において、中空の反射体370は中空ミラーである。中空の平坦な反射体270と対照的に、中空の反射体370は、凹面の反射面371と、凸面の非反射面372とを備える放物面反射体である。標的117から反射または放射され、共通の光学経路130を介して進んでビームスプリッタ314Aに戻る光応答信号119は、第1のポート221から中空の放物面反射体370を介して第3のポート223に結合することができる。凹面の反射面371は、特定の曲率半径を有し、入射する光応答信号119を反射し、収束させ、この反射し収束させた光応答信号319を光学スプリッタ314Aの第3のポート223に向けてリダイレクトするように位置決めすることができる。いくつかの例において、反射面371は、レーザの波長に対し透過性であるかまたは反射防止性とすることができるが、光応答信号119の対象波長に対しては高度に反射性であり得る、AR物質等の波長高感度物質またはコーティングを含むことができる。したがって、レーザエネルギーの全てではなくとも多くを第2のポート222から第1のポート221に通過させることができる。反射および集束した光応答信号319は、分光計ファイバ240を介して分光システム115に送信することができる。中空の平坦な反射体270を用いて光応答信号319を反射し、また別個の集束レンズ260を用いて反射した応答信号を収束させるビームスプリッタ214Aと比較して、中空の放物面反射体370は、追加の光学構成要素なしで信号の反射および収束を達成することができる。これは、システムの複雑度を単純化し、光学位置合わせ誤差を低減し、システム全体の信頼性を改善するのに役立つことができる。
【0073】
中空の平坦な反射体270と同様に、中空の放物面反射体370は、反射体本体を通って延びる貫通孔等の開口375を有することができる。開口375は、コリメートおよび集束レーザビーム118と位置合わせすることができ、レーザビームが閉塞なしで中を通過することを可能にするようにサイズ設定、成形または他の形で構成することができる。様々な例において、開口375は、第1のポート221と空間的に位置合わせすることができ、それによってレーザビーム118は、第1のポート221を介して光学経路130内に方向付けることができる。開口375は、反射体370の実質的に中心に位置することができる。代替的に、開口375は、中心から離れた反射体本体の他のロケーションに位置してもよい。中空の平坦な反射体270に関して上記で論じたのと同様に、いくつかの例において、2つ以上の開口を中空の放物面反射体370の本体に含めることができる。温度モニタ152は、センサ254および/または256等の1つ以上の温度センサを介して反射体の温度を連続してまたは再帰的に監視し、過熱の診断を検出および生成することができる。過熱保護システム150は、反射体の検出された温度上昇または過熱の診断に基づいて、レーザシステムの設定を自動的に調整することができる。
【0074】
図3Bは、標的識別システム300Aの一変形である標的識別システム300Bの例を概略的に示す。標的識別システム300Bは、プローブ113と、分光システム115と、温度モニタ152と、システム300Aのビームスプリッタ314Aの一変形であるビームスプリッタ314Bとを備えることができる。ビームスプリッタ314Bは、数ある中でも、中空の放物面反射体370、および第2のポート222と、システム200Bに含まれるのと同様の両凸レンズ225を含む中空の反射体270との間のレンズシステムを含む。両凸レンズ225は、レーザファイバ230を出るレーザビーム118を収束させ、これを中空の放物面反射体370の開口375を通じて共通の光学経路130に向けて方向付けることができる。
【0075】
上記で論じたように、いくつかの例において、散逸するレーザエネルギー138は、例えば、レーザシステム102とビームスプリッタ214Bとの間の結合異常、ビームスプリッタ214Bにおけるレーザファイバ230とレンズシステムとの位置合わせ不良、または両凸レンズ225の亀裂、塵もしくは劣化等のレンズシステムの欠陥に起因して、中空の反射体370または他の光学構成要素内で散逸し、構成要素の過熱を引き起こす場合がある。温度モニタ152は、センサ254および/または256等の1つ以上の温度センサを介して反射体の温度を連続してまたは再帰的に監視し、中空の反射体370の過熱等の構成要素の過熱を検出し、過熱診断を生成することができる。温度上昇および/または過熱診断のアラートまたは通知を生成し、ユーザに提示することができる。過熱保護システム150は、レーザ発生器112を一時的にシャットダウンする等、レーザシステムの設定を自動的に調整するか、または1つ以上のレーザビームパラメータを変更してレーザエネルギー出力を低減することができる。
【0076】
図4A図4Bは、光応答信号119を第3のポート223に協働してリダイレクトし、最終的に分光計ファイバ240を介して分光システム115に入れる複数の反射体を各々が含むビームスプリッタ414Aおよび414Bの例を示す。図4Aにおいて、複数の反射体は、図2A図2Bに示すのと同様の中空の平坦な反射体270と、中空の平坦な反射体270に対し位置決めされ、光信号を第3のポート223に向けてさらに反射するように構成された平坦なミラー410等の追加の1つ以上の反射体とを含む。同様に、図4Bにおいて、複数の反射体は、図3A図3Bに示すのと同様の中空の放物面反射体370と、中空の放物面反射体370に対し位置決めされ、中空の放物面反射体370によって反射され、収束した光信号319を第3のポート223に向けて反射するように構成された、平坦なミラー410等の追加の1つ以上の反射体とを含む。追加の1つ以上の反射体は、より好都合な、ビームスプリッタ上の第3のポート223の位置決めおよび分光システム115への結合を可能にする。
【0077】
図5は、標的の1つ以上の特性を識別し、任意選択で、これに基づいて、患者の身体における治療のための電気手術システム(例えば、レーザシステム)を動作させるための例示的な方法500を示すフローチャートである。電気手術エネルギーを用いて、解剖学的組織標的(例えば、軟組織、硬組織、またはがん組織等の異常組織)、または結石標的(例えば、腎臓または膵臓胆管または胆嚢結石)等の標的をアブレーションすることができる。方法500は、手術システム110において実装され、手術システム110によって実行され得る。方法500のプロセスは1つのフローチャートにおいて描かれているが、これらは特定の順序で実行されることを必要とされていない。様々な例において、プロセスのうちのいくつかは、本明細書に示すものと異なる順序で実行されてもよい。
【0078】
510において、電気手術において使用するための、光学スプリッタ114等の光学スプリッタ、またはビームスプリッタ214A、214B、314A、314B、414Aもしくは414Bのうちの任意のもの等のその変形を準備することができる。光学スプリッタは、反射体の反射面から非反射面まで延びる貫通孔等の開口を有する反射体を含むことができる。図2A図2B図3A図3Bおよび図4A図4Bに示し、そのような図面を参照して上記で説明したように、そのような反射体の例は、反射体内に開口275を有する中空の平坦な反射体270、または反射体内に開口375を有する中空の放物面反射体370を含むことができる。
【0079】
520において、被検者の身体内の標的および周囲環境を、光源104によって生成されるような電磁放射により照射することができる。光源は、UV~IRの光学範囲内の電磁放射を生成することができる。電磁放射の例は、可視光、赤外光、紫外光または蛍光を含む。図1を参照して上記で論じたように、電磁放射は、内視鏡の細長い本体に沿って延びる光学経路を通じて標的に方向付けることができる。代替的に、照射光は、内視鏡の遠位端に位置決めされた1つ以上の照射光(例えば、LED)によって生成されてもよい。
【0080】
530において、電磁放射に応答して標的から反射または放射される光信号は、内視鏡プローブによって受信することができる。反射された光信号は、内視鏡プローブ103内の共通の光学経路130等の光学経路を通じて送信することができる。プローブおよびその内部の光学経路は、光学スプリッタに光学的に結合することができる。図2A図2B図3A図3Bおよび図4A図4Bのうちの任意のものに示すように、540において、反射された光信号は、光信号の反射体によって反射することができ、その少なくとも一部分は分光システムに光学的に結合されたビームスプリッタのポートにリダイレクトすることができる。
【0081】
550において、標的の特性(例えば、解剖学的標的のタイプ、物質、組成、組成プロファイル、構造または硬さ)を示すスペクトル情報を、分光計128等の分光システムによって、反射された光信号から生成することができる。分光技法を単独でまたは組み合わせて用いて、硬組織または軟組織の化学組成を分析し、デジタルスペクトルデータを用いて組成プロファイルを作成することができる。デジタルスペクトルデータの例は、数ある中でも、特定の波長における反射強度、2つ以上の異なる波長にわたる反射の統計的特徴、反射スペクトルのグラフィック表現のグラフィック特徴を含むことができる。
【0082】
560において、スペクトル情報に基づいて、標的の特性を、フィードバック分析器116等を用いて識別することができる。一例において、標的は結石標的を含み、スペクトル情報を用いて、泌尿器系、胆嚢、鼻腔、消化管、胃、またはへんとう腺等の石形成領域における石または石断片等の別個の組成を有する複数の結石タイプのうちの1つとして結石標的を識別することができる。一例において、結石標的は、CaP石、MAP石、COM石、COD石、シスチン石、コレステロール系石、または尿酸(UA)石のうちの1つ等の別個の化学組成を有する石タイプのうちの1つとして識別することができる。別の例において、標的は解剖学的組織標的を含み、スペクトル情報を用いて、数ある中でも、軟組織(例えば、筋肉、腱、靭帯、血管、筋膜、皮膚、脂肪および繊維組織)、骨等の硬組織、軟骨等の結合組織等の複数の組織タイプのうちの1つとして解剖学的組織標的を識別することができる。いくつかの例では、解剖学的組織標的は、別個の解剖学的ロケーションを有する組織タイプのうちの1つとして識別することができる。例えば、腎臓組織標的は、杯組織、皮質組織、髄質組織または尿管組織のうちの1つとして識別することができる。別の例において、識別された組織標的は、正常組織または異常組織(例えば、がん組織)として識別することができる。さらに別の例において、識別される組織標的は、治療領域(例えば、除去対象の腫瘍またはポリープ)または非治療領域(例えば、血管、筋肉等)として識別することができる。
【0083】
550において生成されるスペクトル情報および/または560における標的の識別を用いて、標的に対するレーザエネルギー等の電気手術エネルギーの送達を制御することができる。方法500は、標的の識別に基づいて電気手術信号を放射するための電気手術エネルギーシステムの設定を調整するための制御信号を生成する任意選択のステップ570を含むことができる。一例において、電気手術エネルギーシステムは、手術レーザシステム102とすることができ、制御信号は、レーザビームを放射するためのレーザシステムの設定を調整するために、フィードバック分析器116を用いて生成することができる。図2A図2B図3A図3Bおよび図4A図4Bのうちの任意のものに示し、これらを参照して論じたように、レーザビーム等の電気手術信号は、反射体の開口およびプローブの光学経路を通じて標的に方向付けることができる。レーザ設定を調整する例は、数ある中でも、レーザビームの送達もしくは送達の保留を含むか、または、波長、電力、電力密度、エネルギー、もしくはパルスパラメータ(例えば、パルス幅、パルスレート、振幅、デューティサイクル、パルス形状)等のレーザビームパラメータ、露出時間、総投与量もしくはエネルギー、もしくはそれらの1つ以上の組合せを調整することができる。一例において、硬い物質で構成された結石標的またはその一部分について、レーザシステムは、標的をアブレーションまたは粉化するために、より高いエネルギーを有するレーザビームを生成することができる。柔らかい物質で構成された結石標的またはその一部分について、レーザシステムは、標的をアブレーションまたは粉化するために、より低いエネルギーを有するレーザビームを生成することができる。
【0084】
図6は、電気手術システムの光学スプリッタにおけるもの等の光学構成要素の温度を監視し、この光学要素を電気手術(例えば、解剖学的組織標的または結石標的のレーザアブレーション)中の過熱から保護するための方法600を示すフローチャートである。一例において、方法600は、手術システム110の過熱保護システム150において実装し、過熱保護システム150によって実行することができる。
【0085】
610において、電気手術において使用するための光学スプリッタを準備することができる。図2A図2B図3A図3Bおよび図4A図4Bに示すように、そのような光学スプリッタの例は、光学スプリッタ114、またはビームスプリッタ214A、214B、314A、314B、414Aもしくは414Bのうちの任意のもの等のその変形を含む。光学スプリッタは、反射体の反射面から非反射面まで延びる開口を有する反射体を含むことができる。図2A図2B図3A図3Bおよび図4A図4Bに示すように、そのような反射体の例は、反射体内に開口275を有する中空の平坦な反射体270、または反射体内に開口375を有する中空の放物面反射体370を含むことができる。
【0086】
図2A図2B図3A図3Bおよび図4A図4Bのうちの任意のものに示すように、620において、レーザエネルギーは、手術レーザシステム102等のレーザシステムによって生成することができ、反射体の開口部、およびビームスプリッタに光学的に結合された内視鏡プローブの光学経路を通じて、標的に向けて方向付けることができる。レーザエネルギーを用いて、解剖学的組織標的(例えば、軟組織、硬組織、またはがん組織等の異常組織)、または結石標的(例えば、腎臓または膵臓胆管または胆嚢結石)等の標的をアブレーションすることができる。
【0087】
図2A図2B図3A図3Bおよび図4A図4Bを参照して上記で説明したように、反射体の開口(例えば、開口275または375)は、レーザエネルギーの大部分が反射体本体と相互作用することなく開口を通過することを可能にするが、或る特定の場合、いくらかのレーザエネルギーが反射体本体内で散逸する場合がある。これは、例えば、レーザシステムとビームスプリッタとの間の結合異常、ビームスプリッタ内のレーザファイバとレンズシステム(例えば、コリメートレンズ220および集束レンズ224、または両凸レンズ225)との位置合わせ不良、またはレンズシステムの亀裂、塵または劣化等のレンズシステムの欠陥に起因して生じ得る。そのようなレーザエネルギー散逸は、反射体本体またはその一部分の非反射面における温度上昇を引き起こす場合がある。さらにまたは代替的に、いくつかの例において、電気手術(例えば、組織または結石標的のアブレーション)中に標的に入射するレーザエネルギーの一部分が、反射または放射されて内視鏡プローブに戻り、反射体の反射面上に散乱し、そこで熱蓄積を引き起こす場合がある。反射体等の光学構成要素の過熱は、適時に補正または軽減されない場合、これらの光学構成要素の損傷を引き起こす場合がある。連続したまたは再帰的温度監視は、過熱の相当な原因を識別し、過熱に起因した損傷を防ぐかまたは低減するのに役立つことができる。
【0088】
630において、例えば温度モニタ152を用いて、光学スプリッタの反射体等の光学構成要素の温度を監視することができる。上記で論じたように、温度モニタ152を第1の温度センサ254のうちの1つ以上に結合し、反射体の非反射面の温度を検知するか、または第2の温度センサ256に結合し、反射体の反射面の温度を検知することができる。一例において、温度測定を、レーザパルスと同期させて、反射体における温度変化の検出の信頼性および感度を改善するのに役立つことができる。
【0089】
640において、例えば温度モニタ152を用いて、反射体の過熱を検出することができる。一例において、反射体過熱は、レーザエネルギーの発生前のベースライン温度に対するレーザエネルギーの発生中の温度変化に基づいて検出することができる。例えば、非反射面における温度上昇は、特定のしきい値を超えている場合、反射体の非反射面におけるレーザエネルギー散逸を示す場合がある。レーザシステムとビームスプリッタとの間の結合異常、ビームスプリッタ内のレーザファイバとレンズシステムとの間の位置合わせ不良、またはレンズシステムの欠陥の第1の診断を生成し、例えばディスプレイ105を介してユーザに提示することができる。さらにまたは代替的に、反射面における温度上昇は、特定のしきい値を超えている場合、反射体の反射面に対し散乱する反射レーザエネルギーを示す場合がある。内視鏡プローブおよびビームスプリッタにおける光学経路の位置合わせ不良の第2の診断を生成し、例えばディスプレイ105を介してユーザに提示することができる。
【0090】
1つのみの温度センサを使用することに加えて、またはその代わりに、いくつかの例ではレーザエネルギーの発生中の反射体の反対面間の示差温度を用いて反射体過熱を検出することができる。例えば、(第1の温度センサによって測定される)非反射面温度が(第2の温度センサによって測定される)反射面温度よりも第1のマージンだけ高い場合、レーザシステムとビームスプリッタとの間の結合異常、ビームスプリッタ内のレーザファイバとレンズシステムとの間の位置合わせ不良、またはレンズシステムの欠陥の第1の診断を生成し、ユーザに提示することができる。反射面温度が非反射面温度よりも第2のマージンだけ高い場合、内視鏡プローブおよびビームスプリッタにおける光学経路の位置合わせ不良の第2の診断を生成し、ユーザに提示することができる。
【0091】
方法600は、過熱された光学構成要素の検出に応答して、レーザシステムの設定を調整する任意選択のステップ650を含むことができる。図1を参照して上記で論じたように、調整は、過熱保護システム150におけるフィードバックコントローラによって自動的に制御することができる。そのような調整は、例えば、レーザ発生器を一時的にシャットダウンすること、または1つ以上のレーザビームパラメータ(例えば、パルスもしくは連続波、電力、エネルギー、周波数、パルス形状、パルスプロファイル、またはそれらの1つ以上の組合せ)を変更してレーザエネルギー出力を低減することを含むことができる。いくつかの例では、位置合わせ不良の診断に応答して、例えばディスプレイ105を介して、補正動作の推薦(例えば、位置合わせの調整、または内視鏡プローブ等の部品の交換)をユーザに提供することができる。
【0092】
図7は、本明細書で論じる技法(例えば、方法)のうちの任意の1つ以上を実行することができる例示的な機械700のブロック図を概略的に示す。この説明の一部は、分光システム115および過熱保護システム150等の手術システム110の様々な部分のコンピューティングフレームワークに適用することができる。
【0093】
代替的な実施形態では、機械700は、スタンドアロンデバイスとして動作してもよく、または他の機械に接続(例えば、ネットワーク接続)されてもよい。ネットワーク接続展開では、機械700は、サーバマシンもしくはクライアントマシンとして動作するか、またはサーバ-クライアントネットワーク環境の両方において動作してもよい。一例では、機械700は、ピアツーピア(P2P)(または他の分散)ネットワーク環境においてピアマシンとして動作することができる。機械700は、パーソナルコンピュータ(PC)、タブレットPC、セットトップボックス(STB)、携帯自動端末(PDA)、モバイル電話、ウエブアプライアンス、ネットワークルータ、スイッチもしくはブリッジ、または機械自体によって行われる動作を指定する命令を(順次またはその他の方法で)実行することができる任意の機械とすることができる。さらに、単一の機械のみが示されているが、「機械」という用語は、クラウドコンピューティング、サービスとしてのソフトウェア(SaaS)、他のコンピュータクラスター構成等、命令の1つのセット(または複数のセット)を個別にまたは共同して実行して本明細書に論じる方法のうちの任意の1つ以上の方法を行う機械の任意の集合も含むと見なされるものとする。
【0094】
本明細書で説明する例は、論理もしくはいくつかの構成要素、または機構を含むことができるか、論理もしくはいくつかの構成要素、または機構によって動作することができる。回路セットは、ハードウェア(例えば、単純回路、ゲート、論理等)を含む有形エンティティにおいて実装される回路の集合である。回路セットの部材は、経時的に融通性があり、基本的にハードウェアを変更可能である。回路セットは、単独であるかそれとも組み合わされるかにかかわらず、動作時に指定された動作を実行することができる部材を含む。一例では、回路セットのハードウェアは、特定の動作を実施するように変更不能に設計することができる(例えば、ハードワイヤード)。一例では、回路セットのハードウェアは、特定の動作の命令を符号化するように物理的に修正された(例えば、磁気的修正、電気的修正、不変凝集粒子の移動可能な配置等)コンピュータ可読媒体を含む可変的に接続された物理構成要素(例えば、実行ユニット、トランジスタ、単純回路等)を含むことができる。物理構成要素を接続する際、ハードウェア構成要素の基本的な電気的特性が、例えば絶縁体から導体に、またはその逆に変更される。命令は、組み込まれたハードウェア(例えば、実行ユニットまたはローディング機構)が可変接続を介してハードウェアにおける回路セットの部材を作成して動作時に特定の動作の一部を実施するのを可能にする。したがって、コンピュータ可読媒体は、デバイスが動作する際に回路セット部材の他の構成要素に通信可能に結合される。一例では、物理構成要素のうちのいずれかを2つ以上の回路セットの2つ以上の部材において用いてもよい。例えば、動作時には、実行ユニットは、或る時点では第1の回路セットの第1の回路において用いられ、異なる時点では、第1の回路セットにおける第2の回路によって再使用されるか、または第2の回路における第3の回路によって再使用されてもよい。
【0095】
機械(例えば、コンピュータシステム)700は、ハードウェアプロセッサ702(例えば、中央処理ユニット(CPU)、グラフィックス処理ユニット(GPU)、ハードウェアプロセッサコア、またはそれらの任意の組合せ)、メインメモリ704、およびスタティックメモリ706を含むことができ、これらの構成要素のうちのいくつかまたは全ては、インターリンク(例えば、バス)708を介して互いに通信することができる。機械700は、ディスプレイユニット710(例えば、ラスターディスプレイ、ベクターディスプレイ、ホログラフィックディスプレイ等)、英数字入力デバイス712(例えば、キーボード)、およびユーザインタフェース(UI)ナビゲーションデバイス714(例えば、マウス)をさらに備えることができる。一例では、ディスプレイユニット710、入力デバイス712、およびUIナビゲーションデバイス714は、タッチスクリーンディスプレイとすることができる。機械700は、記憶デバイス(例えば、ドライブユニット)716と、信号生成デバイス718(例えば、スピーカー)と、ネットワークインタフェースデバイス720と、全地球測位システム(GPS)センサ、コンパス、加速度計、または他のセンサ等の1つ以上のセンサ721とをさらに備えることができる。機械700は、1つ以上の周辺デバイス(例えば、プリンタ、カードリーダ等)と通信するかまたはそれらの周辺デバイスを制御するためにシリアル(例えば、ユニバーサルシリアルバス(USB))、パラレル、または他の有線もしくはワイヤレス(例えば、赤外線(IR)、近距離無線通信(NFC)等)接続等の出力コントローラ728を備えることができる。
【0096】
記憶デバイス716は、本明細書で説明する技法もしくは機能のうちの任意の1つ以上を具体化するかまたはそれらによって利用されるデータ構成もしくは命令724(例えば、ソフトウェア)の1つ以上のセットが記憶される機械可読媒体722を備えることができる。命令724は、機械700によって命令724が実行される間、メインメモリ704内、スタティックメモリ706内、またはハードウェアプロセッサ702内に全体が存在してもよく、または少なくとも一部が存在してもよい。一例では、ハードウェアプロセッサ702、メインメモリ704、スタティックメモリ706、または記憶デバイス716の1つの組合せまたは任意の組合せが機械可読媒体を構成することができる。
【0097】
機械可読媒体722は単一の媒体として図示されているが、「機械可読媒体」という用語は、1つ以上の命令724を記憶するように構成された単一の媒体または複数の媒体(例えば、中央データベースもしくは分散データベース、ならびに/または関連するキャッシュおよびサーバ)を含んでもよい。
【0098】
「機械可読媒体」という用語は、機械700によって実行される命令を記憶、符号化、もしくは搬送することができ、機械700に本開示の技法のうちの任意の1つ以上を実行させるか、またはそのような命令によって使用されるかもしくはそのような命令に関連するデータ構造を記憶、符号化、もしくは搬送することができる任意の媒体を含むことができる。非制限的な機械可読媒体の例には、固体メモリならびに光学媒体および磁気媒体を含めることができる。一例では、大容量機械可読媒体は、不変(例えば、静止)質量を有する複数の粒子を含む機械可読媒体を備える。したがって、大容量機械可読媒体は一時的な伝搬信号ではない。大容量機械可読媒体の特定の例には、半導体メモリデバイス(例えば、電気的プログラム可能読出し専用メモリ(EPROM)、電気的消去可能プログラム可能読出し専用メモリ(EPSOM))およびフラッシュメモリデバイス等の不揮発性メモリ、内部ハードディスクおよびリムーバブルディスク等の磁気ディスク、光学磁気ディスク、ならびにCD-ROMおよびDVD-ROMディスクを含めることができる。
【0099】
命令724はさらに、いくつかの転送プロトコル(例えば、フレームリレー、インターネットプロトコル(IP)、伝送制御プロトコル(TCP)、ユーザデータグラムプロトコル(UDP)、ハイパーテキスト転送プロトコル(HTTP)等)のうちの任意のものを利用するネットワークインタフェースデバイス720を介して伝送媒体を用いて通信ネットワーク726上で送受信されてもよい。例示的な通信ネットワークは、数ある中でも、ローカルエリアネットワーク(LAN)、ワイドエリアネットワーク(WAN)、パケットデータネットワーク(例えば、インターネット)、移動電話ネットワーク(例えば、セルラーネットワーク)、プレインオールドテレフォンサービス(POTS)ネットワーク、およびワイヤレスデータネットワーク(例えば、WiFi(登録商標)として知られる電気電子技術者協会(IEEE)802.11規格群、WiMax(登録商標)として知られるIEEE802.16規格群)、IEEE802.15.4規格群、ピアツーピア(P2P)ネットワークを含むことができる。一例では、ネットワークインタフェースデバイス720は、通信ネットワーク726に接続するための1つ以上の物理ジャック(例えば、イーサネット、同軸、もしくはフォーンジャック)または1つ以上のアンテナを含むことができる。一例では、ネットワークインタフェースデバイス720は、単一入力多出力(SIMO)、多入力多出力(MIMO)、多入力単一出力(MISO)技法のうちの少なくとも1つを使用してワイヤレスに通信するために複数のアンテナを備えることができる。「伝送媒体」という用語は、機械700によって実行される命令を記憶、符号化、もしくは搬送することができ、そのようなソフトウェアの通信を容易にするためにデジタルもしくはアナログ通信信号または他の無形媒体を含む任意の無形媒体を含むと見なされるものとする。
【0100】
補注
上記の詳細な説明には、詳細な説明の一部を形成する添付の図面への参照が含まれる。図面は、例として、本発明が実施され得る特定の実施形態を示す。これらの実施形態は、本明細書では「例」とも呼ばれる。そのような例は、示したものまたは説明したものに加えた要素を含むことができる。しかしながら、本発明者らは、図示または説明した要素のみが提供される例も企図する。さらに、本発明者は、本明細書に示されるか、または説明される特定の例(または、その1つ以上の態様)に関して、または他の例(または、その1つ以上の態様)に関して、図示または説明した要素(または、その1つ以上の態様)の任意の組合せまたは置換を使用する例も企図する。
【0101】
本願では、「1つの(a、an)」という用語は、特許文書で一般的であるように、「少なくとも1つ」または「1つ以上」の任意の他のインスタンスまたは使用法とは無関係に、1つ以上を含むように使用される。本願では、「または」という用語は、他に指定されていない限り、非排他的、つまり「AまたはB」が、「AであるがBではない」、「BであるがAではない」、および「AおよびB」を含むことを指すために使用される。本願において、「含む(including)」および「ここで(in which)」という用語は、「含む(comprising)」および「ここで(wherein)」それぞれの用語の平易な英語の同等物として使用される。また、以下の特許請求の範囲では、「含む(including)」および「備える(comprising)」という用語は制限がない。すなわち、請求項内のそのような用語の後に列挙されている要素に加えて、要素を含むシステム、装置、物品、またはプロセスは、その特許請求の範囲内に依然としてあると見なされる。さらに、以下の特許請求の範囲において、「第1」、「第2」、および「第3」等の用語は、単にラベルとして使用され、それらの物体に数値要件を課すことを意図しない。
【0102】
上記の説明は、例示を意図したものであり、限定を意図したものではない。例えば、上記の例(または、その1つ以上の態様)は、互いに組み合わせて使用することができる。上記の説明を検討すると、当業者等によって、他の実施形態が使用され得る。要約は、読者が技術的開示の性質を迅速に確認することを可能にするために、米国特許法施行規則第1.72条に準拠して提供される。要約は、特許請求の範囲または意味を解釈または限定するために使用されないということを理解した上で提出される。また、上記の詳細な説明では、開示を簡素化するために、様々な特徴をグループ化することができる。これは、特許請求の範囲に記載されていない開示された機能が任意の特許請求項に不可欠であることを意図するものとして解釈すべきではない。むしろ、発明の主題は、特定の開示された実施形態の全ての特徴より少ない場合がある。このため、以下の特許請求の範囲は、これにより詳細な説明に例または実施形態として組み込まれ、各請求項は別個の実施形態としてそれ自体で成立し、そのような実施形態は、様々な組合せまたは置き換えにおいて互いに組み合わせることができることが企図される。本発明の範囲は、添付の特許請求の範囲を参照して、そのような特許請求の範囲が権利範囲を与える等価物の全範囲とともに決定すべきである。
図1
図2A
図2B
図3A
図3B
図4A
図4B
図5
図6
図7