(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-03-18
(45)【発行日】2025-03-27
(54)【発明の名称】主要な増粘系としてジウタンガムを使用した高アルカリ溶剤ベースの脱脂剤およびクリーナー
(51)【国際特許分類】
C11D 3/37 20060101AFI20250319BHJP
C11D 3/04 20060101ALI20250319BHJP
C11D 3/43 20060101ALI20250319BHJP
C11D 1/68 20060101ALI20250319BHJP
C11D 3/08 20060101ALI20250319BHJP
C11D 17/08 20060101ALI20250319BHJP
【FI】
C11D3/37
C11D3/04
C11D3/43
C11D1/68
C11D3/08
C11D17/08
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023216635
(22)【出願日】2023-12-22
(62)【分割の表示】P 2022515727の分割
【原出願日】2020-09-25
【審査請求日】2024-01-10
(32)【優先日】2019-09-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】510250467
【氏名又は名称】エコラボ ユーエスエー インコーポレイティド
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100146466
【氏名又は名称】高橋 正俊
(74)【代理人】
【識別番号】100202418
【氏名又は名称】河原 肇
(74)【代理人】
【識別番号】100191444
【氏名又は名称】明石 尚久
(72)【発明者】
【氏名】ヒリナ エミル
(72)【発明者】
【氏名】ケリー イー.ウォルターズ
(72)【発明者】
【氏名】マドリン ジー.ファウビオン
【審査官】橋本 栄和
(56)【参考文献】
【文献】特表2005-510621(JP,A)
【文献】登録実用新案第3217258(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C11D 3/37
C11D 3/04
C11D 3/43
C11D 1/68
C11D 3/08
C11D 17/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ジウタンガムと、
少なくとも1つの水酸化物アルカリ性源と、
界面活性剤洗浄剤と、
少なくとも1つの溶剤と、
芳香族スルホネートを含むヒドロトロープと、
希釈剤と、
を含む、洗浄および脱脂即使用可能組成物であって、
前記組成物は、7超のpHおよ
び10~150ダイン/cm
2の降伏点を有する、洗浄および脱脂組成物。
【請求項2】
前記組成物が、ゲルである、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記水酸化物アルカリ性源が、1つ以上のアルカリ金属水酸化物である、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項4】
前記水酸化物アルカリ性源が、水酸化ナトリウムおよび水酸化カリウムである、請求項3に記載の組成物。
【請求項5】
前記溶剤が、アルコールおよび/またはアルカノールアミンである、請求項1~4のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項6】
前記界面活性剤洗浄剤が、アルキルポリグリコシドである、請求項1~5のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項7】
前記水酸化物アルカリ性源が、前記組成物
の5重量%か
ら50重量
%を構成し、前記ジウタンガムは、前記組成物
の0.01重量%か
ら1重量
%を構成し、前記界面活性剤洗浄剤は、前記組成物
の0.1重量%か
ら20重量
%を構成し、前記溶剤は、本組成物
の0.1重量%か
ら20重量
%を構成する、請求項1~6のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項8】
少なくとも1つの追加の機能性成分をさらに含む、請求項1~7のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項9】
前記追加の機能性成分が、
追加の加工助剤、溶解度調整剤、分散剤、金属保護剤、安定剤、ビルダー/金属イオン封鎖剤/キレート剤、審美性向上剤、追加の高アルカリ適合性界面活性剤、またはそれらの組み合わせを含み、前記組成物
の0.1重量%か
ら40重量%を構成する、請求項8に記載の組成物。
【請求項10】
前記金属保護剤は、アルカリ金属グルコン酸塩および/またはケイ酸塩であり、前記
追加の加工助剤が
、ポリエチレングリコールである、請求項9に記載の組成物。
【請求項11】
前記
ヒドロトロープが、キシレンスルホン酸ナトリウ
ムである、請求項10に記載の組成物。
【請求項12】
前記組成物が、40℃において8週間にわたって粘度の低下が10%未満であることから判断され
る、室温で長期にわたる常温保存が可能である、請求項1~11のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項13】
表面を洗浄および脱脂する方法であって、前記方法は、
(a)汚れの除去を必要とする表面に、請求項1~12のいずれか一項に記載の洗浄および脱脂組成物を接触させることと、
(b)表面から汚れを除去することと、を含む方法。
【請求項14】
前記汚れを除去することが、前記洗浄および脱脂組成物と前記汚れとを除去するためのすすぎ工程である、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記汚れを除去することが、機械的攪拌を必要としない、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記接触時間が、少なくとも20
分である、請求項13~15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記接触時間が、垂直付着接触時間である、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記接触時間が、浸漬接触時間である、請求項16に記載の方法。
【請求項19】
前記組成物が、前記表面に接触する前に
更に希釈されない、請求項13~18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
処理を必要とする前記表面が、キッチンまたは食品の調理/加工面である、請求項13~19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
前記表面が、オーブン、グリルおよび/またはフライヤーの表面である、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記組成物が、噴霧器またはホースによって塗布される、請求項13~21のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
前記組成物が、前記表面に接触する前に
更に希釈されない、請求項13~22のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
この出願は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる2019年9月26日に出願された仮出願第62/906,216号に対して米国特許法第119条に基づく優先権を主張する。
【0002】
本発明は、最小限の手作業で、焦げ、重合し、炭化した食品の汚れを除去するのに適した、ジウタンガム増粘剤を含む洗浄および脱脂組成物に関する。本明細書に記載の組成物は、希釈または他の製品との組み合わせを必要としない即使用可能組成物を含む。本組成物は、長い付着時間の結果として表面に残り、時間の経過とともに乾燥することなく汚れに浸透することができる。本組成物は、処理された表面に適用される低圧水を使用するなど、最小限の手作業で簡単に除去することができ、有益なことに残留物を残さない。本組成物を用いて表面を洗浄および脱脂する方法もまた提供される。従来の増粘剤の限界を克服するために、ジウタンガムとケイ酸塩粘土を使用する増粘系もまた提供される。
【背景技術】
【0003】
重合して焦げた汚れを除去することは困難である。これは、非トランス脂肪(すなわち、ゼロトランス脂肪)の使用が増加した結果として、厨房やその他の食品の調理施設および加工施設でますます大きな課題となっている。トランス脂肪は、トランス異性体脂肪酸を含む不飽和脂肪と定義されている。
【0004】
トランス脂肪がゼロの食品は、米国食品医薬品局によって規則21 CFR 101.9(c)(2)(ii)において、「1食分に含まれる総脂肪が0.5グラム未満」と定義されている。食品加工機器および/または環境表面は、洗浄が非常に困難な重合したゼロトランス脂肪汚れで汚染されるため、食品におけるゼロトランス脂肪の使用の増加は、食品産業にとって課題となる。これは、ゼロトランス脂肪がトランス脂肪や飽和脂肪よりも安定性が低く、分解や重合を起こしやすいためである。これらのゼロトランス脂肪が常温のまたは冷たい表面に長期間放置され、表面で重合した場合、それらを除去することは非常に困難である。さらに、ゼロトランス脂肪汚れが表面上で重合するために残される時間が長いほど、その表面から汚れを除去することがより困難になる。
【0005】
重合した汚れの除去が必要な表面は、食品加工と直接接触している表面である場合がある。高温のゼロトランス脂肪源から放出されるゼロトランス脂肪のミストの結果として、さらなる表面がゼロトランス脂肪で汚れる場合がある。脂肪が周囲の表面にミスト状になることによってもまた、これらの表面で時間の経過とともに集合と重合が起こる。また、調理が行われる場所にも汚れが集中する。つまり、ゼロトランス脂肪は、調理面に焼き付けられ、その後、低温の表面に比べて増加した速度で重合し、除去がさらに困難な汚れを生じさせる場合がある。
【0006】
汚れ除去のさらなる課題として、ゼロトランス脂肪は一般に、タンパク質、炭水化物、その他の脂肪などの他の食品材料と結合する。これらはまた、重合したゼロトランス脂肪と結合して、汚れや残留物を取り除くのが困難になる。例としては、大量のゼロトランス脂肪を使用し、定期的に清掃する必要のある、タンク、ライン、ポンプ、およびその他の処理機器にゼロトランス脂肪を頻繁に送る場合がある揚げ作業やベーキング作業が挙げられる。このようなシステムや機器の洗浄は、洗浄の間の重合によって汚れの除去が困難になるため、かなりの時間がかかる場合がある。さらに、一部の操作では、特定の製造プロセスで必要とされるように、洗浄の間にかなりの時間がかかる。一部の用途では、徹底的な洗浄の間に数日、数週間、または数か月かかることがあり、その結果、ゼロトランス脂肪汚染が集合して、除去が非常に困難な、重合したゼロトランス脂肪の汚れが形成される。このような汚れは取り除くのが非常に難しいため、場合によっては、様々な表面を適切に清掃するのに必要な手動のおよび/または機械的な労力を費やすよりも、単に機器を交換する方がより安価(かつタイムリー)となる。
【0007】
これらのタイプの汚れに効果的に浸透させて、これを除去するには、増粘組成物が必要となる。様々な増粘系、および増粘組成物が、例えば、多糖類増粘剤、セルロース増粘剤、およびポリカルボキシレート増粘剤を含む様々な材料を使用して試みられてきた。当技術分野の当業者は、垂直面または傾斜面上の対象汚れ上において活性洗浄剤の有効濃度を長期間維持することができる増粘材料の製造を成功させる必要があることを理解している。このような増粘クリーナーは、製造時に、滞留時間が短い従来のクリーナーに耐性のある汚れを取り除くことができる協働成分を含む必要がある。家庭用、施設用、および工業用食品調製環境におけるものであり得る脱脂用途のための増粘水性クリーナーが無条件に必要とされている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
したがって、本開示の目的は、所望の粘度を提供するための増粘系を含む洗浄および脱脂組成物を提供することである。
【0009】
本開示のさらなる目的は、長い垂直付着時間を必要とする汚れを含む、除去が困難な汚れを除去するのに適した洗浄および脱脂組成物および方法を提供することである。
【0010】
この開示の別の目的は、所望の粘度を提供するために様々な組成物に含めることができる、温度およびアルカリ性の安定性を有する増粘系を配合することである。
【0011】
本発明の他の目的、態様および利点は、以下の開示、図面、および添付の特許請求の範囲を考慮して当業者には明らかであろう。
【課題を解決するための手段】
【0012】
一実施形態では、洗浄および脱脂組成物は、ジウタンガムと、任意選択でケイ酸塩粘土と、少なくとも1つの水酸化物アルカリ性源と、溶剤と、界面活性剤洗浄剤とを含み、本組成物は、7超のpHを有し、約10~150ダイン/cm2の降伏点を有する、すぐに使える組成物である。いずれの実施形態においても、本組成物はゲルである。いずれの実施形態においても、ジウタンガムは長鎖多糖類であり、水酸化物アルカリ性源は1つ以上のアルカリ金属水酸化物であり、溶剤はアルコールおよび/またはアルカノールアミンであり、および/または界面活性剤洗浄剤はアルキルポリグリコシドである。例示的な実施形態では、水酸化物アルカリ性源は、 本組成物の約5重量%から約50重量%、または本組成物の約20重量%から約50重量%を構成し、ここで、ジウタンガムは、本組成物の約0.01重量%から約1重量%、または本組成物の約0.1重量%から約1重量%を構成し、ここで、ケイ酸塩粘土は、本組成物の約0.1重量%から約2重量%、または本組成物の約0.1重量%から約0.5重量%を構成し、ここで、界面活性剤洗浄剤は、本組成物の約0.1重量%から約20重量%、または本組成物の約0.1重量%から約10重量%を構成し、ここで、溶剤は、本組成物の約0.1重量%から約20重量%、または本組成物の約1重量%から約20重量%を構成する。いずれの実施形態においても、少なくとも1つの追加の機能性成分を含めることができる。いくつかの実施形態では、本組成物は、40℃において8週間にわたって粘度の低下が10%未満であることから判断されるように、室温で長期にわたる常温保存が可能である。
【0013】
一実施形態では、表面を洗浄および脱脂する方法は、汚れの除去が必要な表面を本明細書に記載の洗浄および脱脂組成物と接触させ、その表面から汚れを除去することを含む。
【0014】
この開示の別の目的は、ジウタンガムとケイ酸塩粘土を含む増粘系を配合することである。
【0015】
複数の実施形態を開示するが、本発明のさらなる他の実施形態は、例証的な実施形態を図示および説明する以下の詳細な説明から、当業者には明らかになるであろう。したがって、図面および詳細な説明は、本来は例示的であり、限定的ではないものとしてみなされるべきである。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】
図1は、ジウタンガムの安定性を実証するために、室温および高温でのアルカリ性洗浄および脱脂組成物中のジウタンガムの粘度測定のグラフを示す。
【
図2】
図2は、キサンタンガムの安定性を実証するために、室温および高温でのアルカリ性洗浄および脱脂組成物中のキサンタンガムの粘度測定のグラフを示す。
【
図3】
図3は、様々な増粘系の垂直付着評価のグラフを示す。
【
図4】
図4は、垂直付着性能に対する安定性の影響を実証するためにエイジングした配合物を用いた、ジウタンガムおよびキサンタンガム増粘系の垂直付着評価のグラフを示す。
【
図5】
図5は、増粘系を使用して本明細書で評価された様々な洗浄および脱脂組成物のソーク試験を使用した性能試験のグラフを示す。
【
図6】
図6は、以下の実施例で評価される溶液の降伏点を特定するための振動振幅掃引試験のグラフを示す。
【
図7】
図7は、ジウタンガム増粘系の粘度対剪断速度を評価する粘度測定試験のグラフを示す。
【
図8A】
図8Aは、増粘ポリマーの例示的な構造を示し、アクリルコポリマー構造(ASEポリマー)を示す。
【
図8B】
図8Bは、増粘ポリマーの例示的な構造を示し、アクリルポリマー構造(HASEポリマー)を示す。
【
図8C】
図8Cは、増粘ポリマーの例示的な構造を示し、ポリエチレングリコールコポリマー構造(HEURポリマー)を示す。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の様々な実施形態について、図面を参照して詳細に説明するが、いくつかの図を通して同様の参照番号は同様の部分を表す。様々な実施形態への参照は、本発明の範囲を限定するものではない。本明細書に示された図は、本発明による様々な実施形態に対する限定ではなく、本発明の代表的な例示のために提示される。
【0018】
本実施形態は、特定の洗浄および脱脂組成物または増粘系を使用する組成物に限定されず、これらは異なる可能性があり、当業者によって理解される。驚くべきことに、ジウタンガムとケイ酸塩粘土を含む増粘系を、即使用可能常温保存可能な高アルカリ性洗浄組成物に配合し得ることがわかった。
【0019】
本明細書に使用されるすべての専門用語は、特定の実施形態を説明する目的のためだけのものであり、いかなる態様または範囲においても限定的であることを意図するものではないことがさらに理解されるべきである。例えば、本明細書および添付の特許請求の範囲において使用される場合、単数形「a」、「an」および「the」は、内容が明らかにそうでないことを示さない限り、複数形の指示対象を含み得る。さらに、すべての単位、接頭辞、および記号は、そのSIによって認められた形式で示され得る。本明細書内に列挙された数値範囲は、定義された範囲内の数を含む。本開示全体を通して、様々な態様が範囲形式で提示される。範囲形式での説明は、単に便宜上および簡潔にするためのものであり、本発明の範囲に対する柔軟性のない制限として解釈されるべきではないことを理解されたい。したがって、範囲の説明は、すべての可能な下位範囲およびその範囲内の個々の数値を具体的に開示しているとみなされるべきである(例えば、1~5は、1、1.5、2、2.75、3、3.80、4、および5を含む)。
【0020】
本発明をより容易に理解することができるように、特定の用語をまず定義する。他に定義されない限り、本明細書で使用されるすべての技術用語および科学用語は、本発明の実施形態が関連する当業者によって一般に理解されるものと同じ意味を有する。本明細書に記載されるものと類似しているか、それらを修正したか、またはそれらと同等である多くの方法および材料が、過度の実験を伴うことなく、本発明の実施形態の実践に使用することができるが、好ましい材料および方法が、本明細書に記載される。実施形態を説明し、請求する際に、以下に記載される定義に従って以下の専門用語が使用される。
【0021】
「約」という用語は、本明細書で使用される場合、例えば、現実世界において濃縮物または使用溶液を作製するために使用される一般的な測定手順および液体取り扱い手順、これらの手順における不注意な誤り、組成物を作製するかまたは方法を実施するために使用される成分の製造、供給源、または純度における差異などにより生じ得る数量の変動を指す。「約」という用語はまた、特定の初期混合物から生じる組成物についての異なる平衡条件に起因して異なる量も包含する。「約」という用語により修飾されるか否かにかかわらず、特許請求の範囲は、量と同等のものを含む。
【0022】
「活性」または「パーセント活性」または「重量パーセント活性」または「活性濃度」という用語は、本明細書において互換的に使用され、水または塩などの不活性成分を差し引いたパーセンテージとして表される、洗浄に関与するこれらの成分の濃度を指す。
【0023】
本明細書で使用される場合、「含まない」という用語は、その構成成分が完全に欠落した組成物、またはその成分が組成物の性能に影響しないような少量の構成成分を有する組成物を指す。構成成分は、不純物としてまたは汚染物質として存在してもよく、0.5重量%未満でなければならない。別の実施形態では、構成要素の量は0.1重量%未満であり、さらに別の実施形態では、構成要素の量は0.01重量%未満である。一実施形態では、本組成物および増粘系は、追加の増粘剤を含まない。
【0024】
材料のリストを参照して使用される場合の「含む」および「含むこと」という用語は、そのように列挙されている材料を指すが、それに限定されるものではない。
【0025】
本明細書に記載の溶液および組成物などの流体を指す際の「擬塑性」という用語は、剪断速度が増加するにつれて減少する粘度を有する。
【0026】
「界面活性剤(surfactant)」または「界面活性剤(surface active agent)」という用語は、液体に添加されると、表面でその液体の特性を変化させる有機化合物を指す。
【0027】
「降伏点」という用語は、本明細書に記載の溶液および組成物などの流体に、それが流動し始める前に、加えられなければならない応力を指す。別の言い方をすれば、降伏点は応力下での流動に対する初期抵抗である。十分な降伏値があれば、ゲル化した液体が垂直面を滴り落ちたり流れ落ちたりすることはない。降伏点(ダイン/cm2)を測定するために利用できる様々な方法がある。本明細書に記載の方法では、振動応力またはひずみが増加し、弾性率(G’)および粘性率(G’’)の対応する変化がモニタリングされる振動振幅掃引試験を使用して降伏点を測定する。G’は弾性率を表し、変形したときの材料の弾性挙動を反映する。G’’は、粘性率を表し、変形中の材料の流動を反映する。G’/G’’の交点は、固体から液体への遷移を表すため、降伏点となる。「粘度」という用語は、配合物の内部摩擦の結果としての本明細書に記載される洗浄および脱脂組成物の粘度を指す。粘度は、剪断応力下の変形に対する流体の抵抗の測定値であり、ブルックフィールド粘度計、DV-IIスピンドル2、30rpm、20℃(約68°F)を含む従来の標準的な方法により測定することができる。
【0028】
「重量パーセント(weight percent)」、「重量%(wt-%)」、「重量パーセント(percent by weight)」、「重量%(% by weight)」という用語、およびそれらの変形は、本明細書で使用される場合、その物質の重量を組成物の総重量で除し、100を乗じた物質の濃度を指す。本明細書で使用される場合、「パーセント」、「%」などは、「重量パーセント」、「重量%」などと同義であることが意図されると理解される。
【0029】
方法および組成物は、本明細書に記載の構成成分および成分、並びに他の成分を含み得るか、それらから本質的になり得るか、またはそれらからなり得る。本明細書で使用される場合、「から本質的になる」は、さらなる工程、構成成分、または成分が、特許請求される方法および組成物の基本的かつ新規な特徴を実質的に変化させない場合に限り、方法および組成物が、さらなる工程、構成成分、または成分を含み得ることを意味する。
【0030】
増粘組成物
いくつかの実施形態によれば、様々な配合組成物での使用に適した増粘組成物が開示される。例示的な増粘組成物を重量パーセントで表1に示す。
【表1】
【0031】
例示的な増粘組成物は、粉末組成物である。この組成物は、増粘を必要とする組成物中の水または水混和性溶剤で水和されるまで粉末のままである。増粘組成物に含めるための例示的な追加の機能性成分は、防腐剤系である。
【0032】
いくつかの実施形態では、増粘系は、安定なゲル組成物を形成する必要がある洗浄組成物に添加するのに適している。有益なことに、増粘系は、水和時に組成物に所望の粘度をもたらし、追加の従来のゲル化剤および/または粘度調整剤の添加を必要としない。増粘系は、様々な組成物、好ましくはアルカリ性条件下での貯蔵安定性を必要とする組成物に給することができる。ただし、他の実施形態では、増粘系は、増粘酸性系にも給することができる。
【0033】
一実施形態では、増粘系は、従来の多糖類増粘剤(すなわち、非ジウタンガム多糖類)、セルロース系増粘剤、および/またはポリカルボキシレート増粘剤を含まない。
【0034】
洗浄および脱脂組成物
いくつかの実施形態では、洗浄および脱脂組成物は、ケイ酸塩粘土、水酸化物アルカリ性、界面活性剤、溶剤、および他の追加の機能性成分と組み合わせてジウタンガム増粘剤を含む。洗浄および脱脂組成物は、即使用可能(RTU)組成物として有益に提供される。これらの組成物は、表面に塗布でき、焦げた重合汚れなどの困難な汚れを除去するために求められる接触時間を有する増粘ゲル組成物を提供する一方で、希釈を必要としないことから、調製上の利点をもたらす。例示的な洗浄および脱脂組成物を、表2A~2Bに重量パーセントで示す。
【表2】
【表3】
【0035】
いくつかの実施形態によれば、洗浄および脱脂組成物は、すぐに使用でき、約10~150ダイン/cm2の降伏点を有する。本組成物は、降伏点を有するより粘性のある液体であるゲルであるが、当業者は、本組成物を、上記の降伏点を有する液体またはゲルのいずれかと呼ぶことができる。有益なことに、ゲル組成物は、従来の液体および発泡体が困難な汚れを除去するのに十分な接触時間を保持できない垂直表面を含む表面における接触時間を増大させる。ゲルは、本組成物の粘度のために、増大された(すなわち、より長い)接触時間をもたらす。
【0036】
いくつかの実施形態によれば、洗浄および脱脂組成物は、相安定性ゲルである。本明細書で言及されるように、相安定性は、シリカ粘土および洗浄および脱脂組成物の他の成分の均一な懸濁液によって評価される。本組成物は相分離せずに懸濁状態のままである。
【0037】
いくつかの実施形態によれば、洗浄および脱脂組成物は常温保存可能(すなわち安定な組成物)である。貯蔵安定性は、本明細書では、40℃の貯蔵庫において8週間にわたって粘度の変化が10%以下と定義される。貯蔵安定性の測定値は、1年間の貯蔵安定性を示す。洗浄および脱脂組成物は、例えば、貯蔵、輸送および使用の用途において出くわす可能性がある室温および高温で貯蔵可能である。
【0038】
洗浄および脱脂組成物は、約7超~約14のpHを有する。本明細書に記載の実施例に示されるように、キサンタンガムベースのシステムによって高アルカリ組成物を増粘および安定化できないことは、これらが最もアルカリ性の安定な増粘系であることが知られているがゆえにで、予想外である。
ジウタンガム
【0039】
増粘系および洗浄および脱脂組成物は、ジウタンガム増粘剤を含む。有益なことに、ジウタンガムは、高アルカリ性組成物に他の方法では溶解しないであろう洗浄および脱脂組成物の材料を懸濁するために使用される。本明細書で言及されるように、ジウタンガムは長鎖多糖類である。ジウタンガムは、水溶性の生体高分子である。好ましいジウタンガムは、高分子量の天然微生物多糖類を含む高分子量の多糖類を有する。一実施形態において、ジウタンガムの分子量は、約2.5~5.5×106g/molである。
【0040】
ジウタンガムの構造は次のとおりである。
【化1】
式中、Rは、
【化2】
であり、nは、1~6000、または1500~6000、または1900~5800の整数である。
【0041】
ジウタンガムは、水不活化または部分的に水不活化されている。市販のジウタンガムとしては、CP Kelco US Incが提供するKELCO-CRETE80、KELCO-CRETE200、KOC617、KELCO-VIS DG、およびDG-Fジウタンガムが挙げられる。例示的な市販のジウタンガムは、スフィンゴモナス属(Sphin-gomonas sp)の細菌が分泌する天然高分子量微生物多糖類である。これはアニオン性生体高分子であり、b-1,3-d-グルコピラノシル、b-1,4-d-グルクロノピラノシル、b-1,4-d-グルコピラノシルおよび1,4-l-ラムノピラノシル、並びに(1→4)結合したグルコピラノシル残基に結合した二糖のL-ラムノピラノシル側鎖の繰り返し単位で構成される。いくつかの実施形態では、ジウタンガムは粉末である。
【0042】
有益なことに、ジウタンガムは、従来のキサンタンガムの組成上の制限を克服する。ジウタンガムは、高アルカリ性組成物の中に含まれたときに安定性のある組成物をもたらす。本明細書に記載の実施例に示されるように、系の増粘性に加えて、安定性が重要である。キサンタンガムなどの従来の増粘剤は組成物を増粘することができるが、そのような効力は、貯蔵条件下で少なくとも1年間保持されなければならない。
【0043】
いくつかの実施形態では、ジウタンガムは、少なくとも、約0.01重量%から約1重量%、約0.1重量%から約1重量%、約0.1重量%から約0.9重量%、約0.1重量%から約0.8重量%、約0.1重量%から約0.7重量%、約0.1重量%から約0.6重量%、または約0.1重量%から約0.5重量%の量で本組成物に含まれる。さらに、本発明に従って限定されることなく、列挙されたすべての範囲は、範囲を定義する数を含み、定義された範囲内の各整数を含む。
【0044】
ケイ酸塩粘土
増粘系および洗浄および脱脂組成物は、任意選択で、天然または合成のいずれかのケイ酸塩粘土を含む。好ましい実施形態では、増粘系並びに洗浄および脱脂組成物は、ケイ酸塩粘土を含む。有益なことに、ケイ酸塩粘土は、洗浄および脱脂組成物中のジウタンガム内に懸濁されて、所望の粘度を有する相安定組成物をもたらす。ケイ酸塩粘土は、洗浄および消毒用組成物の垂直方向の付着特性を伸ばすのに特に有用である。市販のケイ酸塩粘土としては、Southern Clay Products、Inc.およびBYK Additives&InstrumentsからLAPONITEの商品名で販売されているものが挙げられる。
【0045】
いくつかの実施形態では、ケイ酸塩粘土は、少なくとも、約0.1重量%から約2重量%、約0.1重量%から約1重量%、約0.1重量%から約0.9重量%、約0.1重量%から約0.8重量%、約0.1重量%から約0.7重量%、約0.1重量%から約0.6重量%、または約0.1重量%から約0.5重量%の量で本組成物に含まれる。さらに、本発明に従って限定されることなく、列挙されたすべての範囲は、範囲を定義する数を含み、定義された範囲内の各整数を含む。
【0046】
水酸化物アルカリ性源
洗浄および脱脂組成物は、1つ以上の水酸化物アルカリ性源を含む。約7~約14のpHを有する組成物をもたらすように1つ以上の水酸化物アルカリ性源の有効量が給される。特定の実施形態では、洗浄組成物は、約7.5~約13.5のpHを有する。特定の実施形態では、洗浄組成物は、約8~約13のpHを有する。これは、キサンタンガムのアルカリ性不安定点である約pH12を超える安定した増粘系を得るために特に有益である。好適な水酸化物アルカリ性源としては、例えば、ナトリウム、リチウム、またはカリウム水酸化物などのアルカリ金属水酸化物が挙げられる。
【0047】
いくつかの実施形態では、水酸化物アルカリ性源は、少なくとも、約0.1重量%から約50重量%、約1重量%から約50重量%、約5重量%から約50重量%、約10重量%から約50重量%、約10重量%から約50重量%、または約20重量%から約50重量%の量で本組成物に含まれる。さらに、本発明に従って限定されることなく、列挙されたすべての範囲は、範囲を定義する数を含み、定義された範囲内の各整数を含む。
【0048】
希釈剤
即使用可能組成物として提供される洗浄および脱脂組成物は、水または水混和性溶剤などの希釈剤を含む。いくつかの実施形態では、希釈剤は、少なくとも、約0.1重量%から約70重量%、約0.1重量%から約60重量%、約1重量%から約60重量%、約1重量%から約50重量%、約10重量%から約60重量%、または約10重量%から約50重量%の量で本組成物に含まれる。さらに、本発明に従って限定されることなく、列挙されたすべての範囲は、範囲を定義する数を含み、定義された範囲内の各整数を含む。
【0049】
界面活性剤洗浄剤
洗浄および脱脂組成物は、少なくとも1つの界面活性剤洗浄剤を含む。一実施形態では、界面活性剤は任意の高アルカリ性(すなわち、少なくとも約12のpH)の適合性界面活性剤であり、例えば、非イオン性、アニオン性、両性および/または双性イオン性界面活性剤を含む。いくつかの実施形態では、界面活性剤は、少なくとも、約0.1重量%から約20重量%、約0.1重量%から約15重量%、約0.1重量%から約10重量%、約1重量%から約10重量%、または約1重量%から約5重量%の量で本組成物に含まれる。さらに、本発明に従って限定されることなく、列挙されたすべての範囲は、範囲を定義する数を含み、定義された範囲内の各整数を含む。
【0050】
非イオン性界面活性剤
一実施形態では、界面活性剤は、非イオン性界面活性剤、すなわち、湿潤性および洗浄性を有する非イオン性界面活性剤である。非イオン性界面活性剤は、水性媒体に溶解したときに孤立電荷を帯びない。非イオン性界面活性剤の親水性は、水分子との水素結合によってもたらされる。好適な非イオン性界面活性剤としては、アルコキシル化界面活性剤、EO/POコポリマー、キャッピングされたEO/POコポリマー、アルコールアルコキシレート、キャッピングされたアルコールアルコキシレート、それらの混合物などが挙げられる。さらに好適な非イオン性界面活性剤としては、アミンオキシド、ホスフィンオキシド、スルホキシド、およびそれらのアルコキシル化誘導体が挙げられる。特に好適なアミンオキシドとしては、通常アミンオキシド(N→O)に結合した3つのアルキル基を含む三級アミンオキシド界面活性剤が挙げられる。一般に、アルキル基は、1つの高級C6~24アルキル基に結合した2つの低級(C1~4)アルキル基を含むか、または1つの低級アルキル基と結合した2つの高級アルキル基を含み得る。さらに、低級アルキル基は、ヒドロキシル基、アミン基、カルボキシル基などの親水性部分で置換されたアルキル基を含み得る。
【0051】
一実施形態では、非イオン性界面活性剤は、アルキルポリグリコシドである。
【0052】
例示的なアルキルポリグリコシドとしては、アルキルポリグルコシドおよびアルキルポリペントシドが挙げられるが、これらに限定されない。アルキルポリグリコシドは、湿潤性および洗浄性を有し、一般に以下の構造に適合する混合物を有するバイオベースの非イオン性界面活性剤である:
【化3】
式中、Rは、8から22個の炭素原子を有するアルキルであり、
R
1、R
2、R
3、およびR
4は、
R
1、R
2、R
3、およびR
4がすべてHではないことを条件として、--CH
2CH(OH)CH
2--R
12およびHからなる群から独立して選択され、
R
12は、--OH、
【化4】
からなる群から選択され、Mは、Na、KおよびNH4、および
【化5】
からなる群から選択され、式中、
Rは、8から22個の炭素原子を有するアルキルであり、
R
1、R
2、R
3およびR
4、R
5、R
6、R
7、R
8、R
9、R
10およびR
11は、独立して、--OH、
【化6】
からなる群から選択され、Mは、Na、K、およびNH4からなる群から選択される。
【0053】
市販されているアルキルポリグリコシドは、炭素長のブレンドを含有し得る。好適なアルキルポリグリコシドは、C12未満の鎖長などの短鎖炭素を含有するアルキルポリグリコシドを含む。一例では、好適なアルキルポリグリコシドとして、C8~C10アルキルポリグリコシドおよび主にC8~C10アルキルポリグリコシドを含むアルキルポリグリコシドブレンドが挙げられる。好適な市販のアルキルポリグリコシドとしては、BASF Corporationから入手可能なC8~C10およびC10~C20アルキルポリグリコシド界面活性剤の混合物であるGlucopon 425Nが挙げられる。
アミンオキシド(三級アミンオキシド)は、同様の一般式を有する:
【化7】
式中、矢印は、半極性結合の従来的な表現であり、R
1、R
2、およびR
3は、脂肪族、芳香族、複素環式、脂環式、またはそれらの組み合わせであり得る。一般に、洗剤用のアミンオキシドの場合、R
1は、約8から約24個の炭素原子のアルキルラジカルであり、R
2およびR
3は、1~3個の炭素原子のアルキルもしくはヒドロキシアルキル、それらの混合物であり、R
2およびR
3は、例えば、酸素または窒素原子を通して互いに結合されて、環構造を形成し得、R
4は、2から3個の炭素原子を含有するアルキレンまたはヒドロキシアルキレン基であり、nは、0から約20の範囲である。アミンオキシドは、対応するアミンと、過酸化水素などの酸化剤から生成することができる。アミンオキシド材料の分類は、溶液のpHに依存し得る。酸側では、アミンオキシド材料がプロトン化し、カチオン性界面活性剤の特性をシミュレートし得る。中性pHでは、アミンオキシド材料は、非イオン性界面活性剤であり、アルカリ性側では、それらはアニオン性を示す。
【0054】
有用な水溶性アミンオキシド界面活性剤は、オクチル、デシル、ドデシル(ラウリル)、イソドデシル、ヤシ、または獣脂アルキルジ-(低級アルキル)アミンオキシドから選択され、それらの具体例は、オクチルジメチルアミンオキシド、ノニルジメチルアミンオキシド、デシルジメチルアミンオキシド、ウンデシルジメチルアミンオキシド、ドデシルジメチルアミンオキシド、イソ-ドデシルジメチルアミンオキシド、トリデシルジメチルアミンオキシド、テトラデシルジメチルアミンオキシド、ペンタデシルジメチルアミンオキシド、ヘキサデシルジメチルアミンオキシド、ヘプタデシルジメチルアミンオキシド、オクタデシルジメチルアインオキシド、ドデシルジプロピルアミンオキシド、テトラデシルジプロピルアミンオキシド、ヘキサデシルジプロピルアミンオキシド、テトラデシルジブチルアミンオキシド、オクタデシルジブチルアミンオキシド、ビス(2-ヒドロキシエチル)ドデシルアミンオキシド、ビス(2-ヒドロキシエチル)-3-ドデコキシ-1-ヒドロキシプロピルアミンオキシド、ジメチル-(2-ヒドロキシドデシル)アミンオキシド、3,6,9-トリオクタデシルジメチルアミンオキシド、および3-ドデコキシ-2-ヒドロキシプロピルジ-(2-ヒドロキシエチル)アミンオキシドである。
【0055】
アニオン性界面活性剤
一実施形態において、界面活性剤は、アニオン性界面活性剤である。本組成物での使用に好適なアニオン性スルフェート界面活性剤としては、アルキルエーテルスルフェート、アルキルスルフェート、直鎖および分岐鎖の一級および二級アルキルスルフェート、アルキルエトキシスルフェート、脂肪オレイルグリセロールスルフェート、アルキルフェノールエチレンオキシドエーテルスルフェート、C5~C17アシル-N-(C1~C4アルキル)およびN-(C1~C2ヒドロキシアルキル)グルカミンスルフェート、並びにアルキルポリグルコシドのスルフェートなどのアルキルポリサッカリドのスルフェートなどが挙げられる。また、エチレンオキシドおよびノニルフェノールのスルフェートまたは濃縮製品(通常1分子当たり1から6個のオキシエチレン基を有する)などの、アルキルスルフェート、アルキルポリ(エチレンオキシ)エーテルスルフェート、および芳香族ポリ(エチレンオキシ)スルフェートも含まれる。
【0056】
本組成物での使用に好適なアニオン性スルホネート界面活性剤としてはまた、アルキルスルホネート、直鎖および分岐鎖の一級および二級アルキルスルホネート、並びに置換基を有するかまたは有しない芳香族スルホネートが挙げられる。
【0057】
本発明における使用に好適なアニオン性カルボキシレート界面活性剤としては、カルボン酸(および塩)、例えば、アルカン酸(およびアルカノエート)、エステルカルボン酸(例えば、コハク酸アルキル)、エーテルカルボン酸などが挙げられる。かかるカルボキシレートとしては、アルキルエトキシカルボキシレート、アルキルアリールエトキシカルボキシレート、アルキルポリエトキシポリカルボキシレート界面活性剤、および石鹸(例えば、アルキルカルボキシル)が挙げられる。本組成物において有用な第二級カルボキシレートとしては、第二級炭素に結合されたカルボキシル単位を含有するものが挙げられる。第二級炭素は、例えば、p-オクチル安息香酸、またはアルキル置換シクロヘキシルカルボキシレートのように、環構造の形であり得る。第二級カルボキシレート界面活性剤は、典型的には、エーテル結合、エステル結合、およびヒドロキシル基を含有しない。さらに、これらは、通常、頭部基(両親媒性部分)内に窒素原子を欠く。好適な第二級石鹸界面活性剤は、典型的には11~13個の全炭素原子を含有するが、より多くの炭素原子(例えば、最大16個)が存在してもよい。好適なカルボキシレートとしてはまた、アシルアミノ酸(および塩)、例えば、アシルグルタメート、アシルペプチド、サルコシネート(例えば、N-アシルサルコシネート)、タウレート(例えば、N-アシルタウレート、およびメチルタウリド(methyl tauride)の脂肪酸アミド)などが挙げられる。
適切なアニオン性界面活性剤としては、以下の式のアルキルまたはアルキルアリールエトキシカルボキシレートが挙げられ:R-O-(CH
2CH
2O)
n(CH
2)
m-CO
2X(3)式中、Rは、C8からC22アルキル基または
【化8】
であり、式中、R1は、C4~C16アルキル基であり、nは、1~20の整数であり、mは、1~3の整数であり、Xは、水素、ナトリウム、カリウム、リチウム、アンモニウムなどの対イオンか、またはモノエタノールアミン、ジエタノールアミン、もしくはトリエタノールアミンなどのアミン塩である。いくつかの実施形態では、nは、4から10の整数であり、mは、1である。いくつかの実施形態では、Rは、C8~C16アルキル基である。いくつかの実施形態では、Rは、C12~C14アルキル基であり、nは、4であり、mは、1である。
他の実施形態では、Rは、
【化9】
であり、R1は、C6~C12アルキル基である。またさらに他の実施形態では、R1は、C9アルキル基であり、nは、10であり、mは、1である。
【0058】
このようなアルキルおよびアルキルアリールエトキシカルボキシレートは、市販されている。これらのエトキシカルボキシレートは、典型的には、酸の形態として入手可能であり、それらは、アニオンまたは塩の形態に容易に変換され得る。市販されているカルボキシレートとしては、Neodox 23-4、C12~13アルキルポリエトキシ(4)カルボン酸(Shell Chemical)、およびEmcol CNP-110、C9アルキルアリールポリエトキシ(10)カルボン酸(Witco Chemical)が挙げられる。カルボキシレートはまた、例えば、製品Sandopan(登録商標)DTC、C13アルキルポリエトキシ(7)カルボン酸が、Clariantから入手可能である。
【0059】
両性界面活性剤
好適な両性界面活性剤は、構造中に酸性親水性部分および塩基性親水性部分の両方を含有し、アニオン性またはカチオン性界面活性剤に関するセクションでまさに前述したアニオン性基またはカチオン性基のいずれかであり得る。アニオン性基としては、カルボキシレート、サルフェート、スルホネート、ホスホネートなどが挙げられるが、カチオン性基は、通常、アミン窒素を有する化合物を含む。多くの両性界面活性剤はまた、親水性を強化するエーテル酸化物またはヒドロキシル基も含有する。本発明の好ましい両性界面活性剤は、アニオン性カルボキシレートまたはスルホネート基と結合したカチオン性アミノ基を有する界面活性剤を含む。有用な両性界面活性剤の例としては、スルホベタイン、N-ココ-3,3-アミノプロピオン酸およびそのナトリウム塩、n-獣脂-3-アミノ-ジプロピオン酸二ナトリウム塩、1,1-ビス(カルボキシメチル)-2-ウンデシル-2-イミダゾリニウムヒドロキシド二ナトリウム塩、ココアミノ酪酸、ココアミノプロピオン酸、ココアミドカルボキシグリシネート、ココベタインが挙げられる。好適な両性界面活性剤としては、ココアミドプロピルベタインおよびココアミノエチルベタインが挙げられる。
【0060】
追加の機能性成分
増粘系および/または洗浄および脱脂組成物の成分は、本明細書に開示される使用に適した様々な機能性成分とさらに組み合わせることができる。いくつかの実施形態では、ジウタンガムおよびケイ酸塩粘土を含む増粘系は、系の総重量の大部分、または実質的にすべてを構成する。例えば、いくつかの実施形態では、追加の機能性成分は、ほとんどまたは全く、その中に入っていない。他の実施形態では、追加の機能性成分が、系に含まれていてもよい。機能性成分は、洗浄および脱脂組成物に所望の特性および機能性をもたらす。
【0061】
いくつかの実施形態では、増粘系(ジウタンガムおよび任意選択でケイ酸塩粘土)、水酸化物アルカリ性、水(希釈剤)および界面活性剤洗浄剤を含む洗浄および脱脂組成物は、本組成物の総重量の大部分、または実質的にすべてを構成する。例えば、いくつかの実施形態では、追加の機能性成分は、ほとんどまたは全く、その中に入っていない。他の実施形態では、追加の機能性成分が、本組成物中に含まれていてもよい。機能性成分は、洗浄および脱脂組成物に所望の特性および機能性をもたらす。
【0062】
本出願では、用語「機能性成分」は、増粘系および/または洗浄および脱脂組成物に分散または溶解された場合に、特定の用途において有益な特性をもたらす材料を含む。機能性材料のいくつかの特定の例は、以下により詳細に説明するが、説明される特定の材料は単に例として挙げられているだけであり、多様な他の機能性成分が使用され得る。
【0063】
いくつかの実施形態において、増粘系および洗浄および脱脂組成物のいずれかまたは両方は、追加の増粘剤を含まない。追加の増粘剤の例としては、他の多糖類、ガム(例えば、キサンタンガム)、または増粘ポリマー/コポリマー(例えば、アクリルポリマーおよび/またはアクリルコポリマー、ポリエチレングリコールコポリマー、ポリアクリル酸、変性アクリルポリマー、アクリレートなど)が挙げられる。
【0064】
いくつかの実施形態では、増粘系および/または洗浄および脱脂組成物は、追加の機能性成分、例えば、汚れ湿潤溶剤系、加工助剤、蛍光増白剤、消泡剤、再付着防止剤、漂白剤、溶解度調整剤、分散剤、金属保護剤、汚れ再付着防止剤、安定剤、腐食防止剤、ビルダー/金属イオン封鎖剤/キレート剤、酵素、香料および/または染料を含む審美性向上剤、ヒドロトロープまたはカプラー、バッファー、溶剤、追加の希釈剤、追加の洗浄剤など含み得る。
【0065】
これらの追加の成分は、増粘系および/または洗浄および脱脂組成物で事前に処方するか、または使用用途への組成物の添加の前、後、または実質的に同時に、洗浄および脱脂組成物の使用溶液に添加することができる。
【0066】
いくつかの実施形態によれば、様々な追加の機能性成分は、約0重量%から約50重量%、約0重量%から約45重量%、約0重量%から約40重量%、約0.1重量%から約40重量%、約0.1重量%から約35重量%、0.1重量%から約30重量%、約1重量%から約30重量%、約1重量%から約25重量%、または約1重量%から約20重量%の量で増粘系および/または洗浄および脱脂組成物中に給されてもよい。さらに、本発明に従って限定されることなく、列挙されたすべての範囲は、範囲を定義する数を含み、定義された範囲内の各整数を含む。
【0067】
汚れ湿潤溶剤
一実施形態では、洗浄および脱脂組成物は、油、アルコール、グリコールおよび/またはアルカノールアミンなどの汚れ湿潤溶剤を含み得る。一実施形態では、汚れ湿潤溶剤は、ベンジルアルコールなどのアルコールである。別の実施形態では、汚れ湿潤溶剤は、モノエタノールアミンなどのアルカノールアミンである。他の実施形態では、複数の汚れ湿潤溶剤の組み合わせが本組成物に含まれる。そのような実施形態では、汚れ湿潤溶剤は、約0.1重量%から約20重量%、約1重量%から約20重量%、約1重量%から約15重量%、または約5重量%から約15重量%の量で本組成物に含まれる。さらに、列挙されたすべての範囲は、本発明に従って限定されることなく、範囲を定義する数を含み、定義された範囲内の各整数を含む。
【0068】
金属保護剤
一実施形態では、洗浄および脱脂組成物は、金属保護剤(ステンレス鋼保護剤など)を含み得る。一実施形態では、金属保護剤は、アルカリ金属グルコン酸塩および/またはケイ酸塩である。そのような実施形態では、汚れ湿潤溶剤は、約0.1重量%から約5重量%、または約1重量%から約5重量%の量で本組成物に含まれる。さらに、列挙されたすべての範囲は、本発明に従って限定されることなく、範囲を定義する数を含み、定義された範囲内の各整数を含む。
【0069】
加工助剤
一実施形態では、洗浄および脱脂組成物は、本組成物の組成安定性を助ける、ヒドロトロープ、カップリング剤、または可溶化剤などの加工助剤を含み得る。任意のヒドロトロープ、カップリング剤または可溶化剤は、本組成物の他の構成成分と反応しないか、または本組成物の性能特性に悪影響を及ぼさないことを条件として使用され得る。好適な加工助剤として、ポリエチレングリコールを挙げることができる。
【0070】
用いられ得るヒドロトロープカップリング剤または可溶化剤の代表的なクラスとしては、アルキルスルフェートおよびアルカンスルホネート、直鎖アルキルベンゼンまたはナフタレンスルホネート、二級アルカンスルホネート、アルキルエーテルスルフェートまたはスルホネート、アルキルホスフェートまたはホスホネート、ジアルキルスルホコハク酸エステル、糖エステル(例えばソルビタンエステル)、アミンオキシド(モノ、ジ、またはトリアルキル)およびC8~C10アルキルグルコシドなどのアニオン性界面活性剤が挙げられる。一実施形態では、加工助剤は、芳香族スルホネート、例えば、アルキルベンゼンスルホネート(例えば、キシレンスルホネート)もしくはナフタレンスルホネート、アリールもしくはアルカリルホスフェートエステルまたは1から約40個のエチレン、プロピレンもしくはブチレンオキシド単位を有するそれらのアルコキシル化類似体、あるいは、それらの混合物などである。他の好ましいヒドロトロープとしては、1から約15のアルキレンオキシド基(好ましくは約4から約10のアルキレンオキシド基)を有するC6~C24アルコールアルコキシレート(アルコキシレートは、エトキシレート、プロポキシレート、ブトキシレート、およびそれらのコポリマーまたはターポリマー混合物を意味する)(好ましくはC6~C14アルコールアルコキシレート);1から約15のアルキレンオキシド基(好ましくは約4から約10のアルキレンオキシド基)を有するC6~C24アルキルフェノールアルコキシレート(好ましくはC8~C10アルキルフェノールアルコキシレート);1から約15のグリコシド基(好ましくは約4から約10個のグリコシド基)を有するC6~C24アルキルポリグリコシド(好ましくはC6~C20アルキルポリグリコシド);C6~C24脂肪酸エステルエトキシレート、プロポキシレートまたはグリセリド;および、C4~C12モノまたはジアルカノールアミドからなる非イオン性界面活性剤が挙げられる。好ましいヒドロトープは、キシレンスルホン酸ナトリウム(SXS)である。
【0071】
そのような実施形態では、加工助剤は、約0.001重量%から約5重量%、約0.01重量%から約5重量%、約0.01重量%から約2重量%、または約0.01重量%から約1.5重量%の量で本組成物に含まれる。さらに、列挙されたすべての範囲は、本発明に従って限定されることなく、範囲を定義する数を含み、定義された範囲内の各整数を含む。
【0072】
使用方法
洗浄および脱脂組成物は、固い表面や、重合/炭化した食品の汚れなど、脂っこい汚れを取り除くのが難しい汚れた物体の洗浄に適している。洗浄および脱脂組成物は、例えば、食品加工機器、並びに重合した汚れで汚染されたそのような機器を取り巻く表面および/または環境表面などの、様々な表面および物体から汚れを洗浄および除去するのに効果的である。この方法は、安全でクリーンな食品加工環境を提供するために必要である。いくつかの実施形態では、洗浄および脱脂組成物を用いた処理を必要とする表面として、例えば、オーブン、グリルおよび/またはフライヤーの表面などのキッチンまたは食品の調理/加工面を含む、工業用および/または民生用の表面が挙げられる。
【0073】
他の実施形態では、洗浄および脱脂組成物を用いた処理を必要とする表面として、汚れのミストや噴霧に接触しアクセスするのがより困難な場所にある可能性のある他の機器および表面、特に高い、遠い位置にある配管、ダクト具(外部および内部)、屋根や天井、暖房、冷房および空調表面(HVAC)、製品の冷凍庫や冷蔵庫、並びに、食品製造現場の他の多くの表面が挙げられる。
【0074】
いくつかの態様では、洗浄および脱脂組成物を使用する方法は、処理(すなわち、脂性で除去が困難な汚れの除去)を必要とする表面に本組成物を塗布または接触させることを含む。様々な態様では、本組成物は、希釈を必要としない即使用可能洗浄および脱脂組成物として有益に提供される。これらの方法では、物体または表面を本組成物と接触させることによって、物体、表面などに作用することができる。本組成物は、例えば、ハンドヘルドトリガー噴霧器などの噴霧器の使用を含む、ゲルを塗布するための様々な方法を用いて塗布することができる。他の実施形態では、本組成物は、ホースで塗布して、本組成物をさらに遠く(例えば、20フィート以上)に噴霧することができる。さらに他の実施形態では、表面は、洗浄および脱脂組成物に浸されるか、または沈められ得る。
【0075】
本発明による接触に限定されることなく、ゲル組成物を物体に塗布するための任意の従来の方法または装置によって、ゲル組成物を表面または物体に塗布するか、接触させることができる。例えば、表面は、本組成物で拭き、ブラシをかけ、噴霧し、および/または浸漬することができる。ゲル組成物は、表面上で噴霧されもしくは軽くこすられ得、本組成物は、表面上で流動させられ得、または表面は、本組成物中に浸され得る。接触は、手動または機械によって行うことができる。
【0076】
本組成物は、好ましくは使用濃度で塗布され、処理を必要とする表面に塗布する前に希釈を必要としない。
【0077】
一実施形態では、本組成物は表面に塗布され、汚れと接触したままで汚れに浸透し、汚れを除去する。いくつかの実施形態では、接触工程は、数分から数時間、好ましくは少なくとも10分、少なくとも20分、少なくとも30分、または少なくとも60分である。いくつかの実施形態では、接触工程は、数分から数時間、好ましくは少なくとも10分、少なくとも20分、少なくとも30分、または少なくとも60分であり、接触は、表面における本組成物の垂直方向の付着である。洗浄および脱脂組成物は、本組成物と汚れとの間のそのような接触時間を可能にするように垂直方向の付着をもたらすのに十分な粘度を有益にもたらす。有益なことに、洗浄および脱脂組成物は、重力の影響下での本組成物のしたたり、たれ、下降および/または他の動きを最小限に抑える(すなわち、垂直方向の付着)。当業者によって明らかにされるであろうが、接触時間の持続時間は、汚れの量および粘り強さに依存するであろう。
【0078】
いくつかの実施形態では、本方法は、任意選択で、装置を食品調製に使用する前に、残留する洗浄および脱脂組成物および汚れを除去するための最終すすぎおよび/または消毒工程を含むことができる。一実施形態では、汚れを取り除く工程は、洗浄および脱脂組成物および汚れを除去するためのすすぎ工程である。有益なことに、汚れを除去する方法の実施形態は、最小限の手作業のみを必要とする。一実施形態では、汚れの除去は、安定性のある増粘された組成物の粘度の結果である接触時間の下で洗浄および脱脂組成物が汚れに浸透することの効能のおかげで、機械的攪拌(例えば、こすり洗い)を必要としない。本明細書で言及されるように、最小限の手作業は、表面から汚れおよび組成物を拭き取ることおよび/または表面から汚れおよび組成物を洗い流すことを含むことができる。
【0079】
組成物を作製する方法
洗浄および脱脂組成物は、ジウタンガム顆粒(粉末など)を、混和性の非水性液体(すなわち、アルコールまたはグリコール)または非混和性液体(すなわち、植物油または鉱油)などの非溶剤と共に使用することによって作製することができる。ジウタンガムは、非水性液体中でスラリー化され、攪拌された水に注がれて合わされ、組成物になる。有益なことに、ジウタンガムを分散させることによって、フィッシュアイ、塊、または非脱水粒子の形成が最小限に抑えられ、総水和時間がより短くなる。
【0080】
洗浄および脱脂組成物などの洗浄組成物に増粘組成物を提供する実施形態では、増粘組成物は、ジウタンガム顆粒(粉末など)をケイ酸塩粘土および他の任意の追加の機能性成分と組み合わせることによって作製される。一実施形態では、増粘組成物は、液体組成物と組み合わされる非液体(顆粒、粉末、流動性粉末など)として提供される。一実施形態では、増粘組成物は、混和性の非水性液体(すなわち、アルコールまたはグリコール)または非混和性液体(すなわち、植物油または鉱油)などの非溶剤を増粘組成物に給することによって作製することができる。その後、増粘系は、非水性液体中でスラリー化され、攪拌された水に注がれて合わされ、組成物になる。
【0081】
本明細書に記載の組成物および使用方法は、増粘組成物の製造方法および/または洗浄および脱脂組成物の方法に関して限定されない。
【実施例】
【0082】
本発明の実施形態を、以下の非限定的な実施例においてさらに定義する。これらの実施例は、本発明の特定の実施形態を示しているが、単なる例示として与えられていることを理解されたい。上記の説明およびこれらの実施例から、当業者は、本発明の本質的な特徴を確認することができ、本発明の趣旨および範囲から逸脱することなく、本発明の実施形態の様々変更および修正を行い、これを種々の用途および条件に適合させることができる。したがって、本明細書に示され説明されたものに加えて、本発明の実施形態の様々な修正は、前述の説明から当業者には明らかであろう。そのような修正もまた、添付の特許請求の範囲内に含まれるように意図される。
【0083】
表3Aおよび3Bに示される洗浄および脱脂組成物を実施例において使用する。様々な増粘ポリマーの例示的な構造が
図8に示されており、ここで、
図8Aは、式Dのアクリルコポリマー構造(ASEポリマー)を示し、
図8Bは、式Eおよび式Fのアクリルポリマー構造(HASEポリマー)を示し、
図8Cは、式Gのポリエチレングリコールコポリマー構造(HEURポリマー)を示す。
【表4】
【表5】
【0084】
実施例1
ジウタンガム増粘剤を他の増粘剤(例えば、アクリルコポリマー、ポリエチレングリコールコポリマー、ポリアクリル酸、変性アクリルポリマー、アクリレートなど)と比較するために、様々な洗浄および脱脂組成物を評価した。本明細書に記載の増粘組成物を使用する配合物A1~A3を含む表3の組成物は、他の従来の増粘剤(配合物B~L)と比較されている。配合物の粘度は、従来の標準的な方法(ブルックフィールド粘度計、DV-IIスピンドル2、30rpm、20℃(約68°F))を用いて測定した。
【0085】
ジウタンガム増粘剤を使用する配合物A1~A3は、透明な溶液をもたらし、さらに、即使用可能組成物として吐出が可能な望ましい粘度を有していた。
【0086】
ジウタンガムを含む配合物の粘度は、総じて、従来のキサンタンガム増粘剤を含む配合物Bと比較して増加した。0.2%重量濃度から0.6%重量濃度のキサンタンガムを含む配合物Bは、必要な粘度を有する透明な溶液を生成することができた。しかし、それは、40℃での長期安定性には失敗した。0.6%キサンタンガムの比較配合物Bの粘度は、40℃で8週間後に粘度が44%低下し、吐出に適さず、長期貯蔵安定性が不足した。この粘度は、滞留時間が不足しているため、垂直方向の付着時間を必要とする表面に使用するには不十分である。
【0087】
配合物C~Lは、相安定な組成物をもたらさず、測定可能な粘度、安定性がなく、時には相安定な溶液を達成することができない。0.2%重量濃度から2.0%重量濃度のラポナイトEP粘土を含む配合物Cも一次増粘剤として評価したが、この配合物は相安定ではなかった。高濃度の電解質では、粘土のレオロジーが抑制され、目で見える液体の分離が観察される。有益なことに、配合物A3に示されるように、これは、ラポナイトEPをジウタンガムで懸濁することによって解消される。ジウタンガムとラポナイト粘土(配合物A3)を組み合わせることによって、組成物の垂直付着特性を伸ばすためにラポナイト粘土が使用され、所望の粘度を有する相安定性配合が実現された。
【0088】
実施例2
ジウタンガムの安定性を、従来の増粘剤キサンタンガムの安定性と比較した。安定性は、室温および40℃の両方における経時的な組成物の粘度の維持(または粘度の喪失)によって測定した。粘度測定値は、実施例1に記載したように得た。
図1は、配合物A1(0.15重量%のジウタンガム)の4週間にわたる安定性試験を示す。安定性の測定結果は、40℃での測定期間にわたって粘度の変化が10%以下であることを要する。40℃での8週間目の測定結果において粘度の低下が10%以下であることが、1年間の常温保存可能の閾値である。
図1は、配合物A1におけるジウタンガムが8週間にわたって室温および40℃の両方で粘度を保持したことを示し、粘度の損失がわずかであったこと(約10%未満の粘度の変化)を示す。
【0089】
次に、キサンタンガムの安定性を同じ8週間の測定結果で比較した。
図2は、0.6重量%のキサンタンガムを用いた配合物Bは、2週間目ですら、40℃での粘度が約10%低下しており安定な配合物ではない。8週間までテストした場合、粘度の低下は40%以上の低下で、はるかに顕著である。キサンタンガム配合物は、従来の増粘剤の中で最もアルカリ性に安定であることを目的としているため、この安定性の欠如は驚くべきことである。しかしながら、
図2の結果は、高温でキサンタンガムの粘度が3週目までにほぼ20%低下することを示しており、これは、高アルカリ性を含む配合物では高温で安定ではないことを示している。
【0090】
実施例3
ジウタンガムの垂直方向の付着を次の試験手順を用いて評価した。
1.ステンレス鋼のパネル(6’’x6’’)を柔らかいスポンジと食器用洗剤できれいにして、余分な汚れや油を取り除く。脱イオン水でよくすすぎ、風乾させる。
2.パネルを垂直に吊るす
3.パネルの真下の重量天びんに空の容器を置き、天びんをゼロにする。これは、パネルから降りてくるすべての製品を回収して測定するために使用される
4.パネルに化学物質をスプレーし、パネルがハンドヘルドトリガースプレーで完全に覆われていることを確認する。スプレーに使用された製品の総量(吐出された製品の量)を記録する。すべての配合物は、部品番号110416のTalco Economist 300ESトリガー噴霧器を使用して噴霧した。
5.タイマーを開始する
6.特定の時間内に容器に回収された製品の量をモニタリングする。例、1分、3分、5分。
7.特定の時間にパネルに残っている製品の量を%で計算する。
A=吐出された製品の総量(g)
B=時点xでコンテナに収集された製品(g)
時点Xでパネルに残っている製品の量=((A-B)/A*100)
【0091】
評価した配合物は、B(キサンタンガム0.2重量%および0.6重量%)、A1(ジウタンガム0.15重量%)、A3(ジウタンガム0.2重量%)、A2(ジウタンガム0.15重量%とキサンタンガム0.2重量%)、およびA3(ジウタンガム0.2重量%、ラポナイトEP粘土0.3重量%)であった。すべての配合は、作成してすぐに試験した(貯蔵安定性は
図3に示す結果の要因ではなかった)。結果を
図3に示し、ここでは、垂直方向の付着は、測定期間(0分から30分)にわたってパネルに残っている製品の量(残留%)によって評価している。結果は、本明細書に記載の増粘系を含む配合物A3(ジウタンガム0.2重量%、ラポナイトEP粘土0.3重量%)が、30分間を超える最良の垂直付着をもたらすことを示している。多くの使用用途では、洗浄および脱脂組成物が除去が困難な汚れに浸透するために、少なくとも30分の付着時間が必要である。したがって、わずか5~10分の垂直方向の付着しか提供しない様々な増粘系では、洗浄および脱脂効果のための十分な接触時間が得られない。
【0092】
結果は、ジウタンガムが、高アルカリ組成物中の0.2重量%と0.6重量%の両方の濃度のキサンタンガム配合物よりも優れていることを明確に示している。ジウタンガムを含む配合物は、垂直粘着面からの組成物の緩慢な脱落をもたらし、これは、洗浄および脱脂効果のための十分な接触時間を提供するために望ましい属性である。
図3に示されるように、ジウタンガムの垂直方向の付着評価は、キサンタンガム配合物よりも優れている。
【0093】
図3のさらなる結果は、さらに、ジウタンガムを増やすことで、0.15重量%から0.2重量%へのわずかな増加であっても、垂直付着の強化が実現されることを示している。さらに、ラポナイト粘土を配合に組み込むことにより、垂直方向の付着を強化することもできる。ジウタンガムは、単独でも、またラポナイト粘土と組み合わせても、キサンタンガムの増粘系よりも優れている。
【0094】
注目すべきは、これらの配合物は作成された後に表面に塗布されたことである。この評価は、本組成物の貯蔵安定性を要因として含めていなかった。したがって、配合物の安定性が垂直付着評価に与える影響をさらに実証するための追加の試験を遂行する。
【0095】
実施例4
実施例3に概説された試験手順を使用して、ジウタンガムの追加の垂直付着を評価して、付着に対する配合物の安定性の影響を実証した。結果を
図4に示し、ここでは、垂直面での配合B(キサンタンガム0.6%)と配合A1(ジウタンガム0.15%)の比較が示されている。キサンタンガムは、付着性評価を遂行する前に6週間、高温(40℃)でエイジングし、その結果は、その粘性の性質、すなわち、時間依存性剪断減粘性を失い、その後、垂直面に効果的に付着しないことを示した。このことは、エイジングした配合Bの表面に付着する製品の量が時間(すなわち、洗浄剤が表面に接触する望ましい時間の商業的閾値である30分の大台)の経過とともにはるかに大幅に減少することによって示されている。この場合も、この実施例は、ジウタンガムの垂直方向の付着評価がキサンタンガム配合物よりも優れていることを示している。
【0096】
実施例5
洗浄効果のソーク試験もまた、次の試験手順を用いて実施した。
1.試験する化学物質を用意する。
2.ソーク試験の前に、乾燥した汚れたパネルの初期重量を測定する。試験する化学物質ごとに2回または3回実行する。汚れは、華氏425度で3時間パネル上に焼き付けられた脂/タンパク質の汚れとした。
3.複製ごとに200gの化学物質を量り取り、浅いプラスチック製のタッパーウェアコンテナまたは他のプラスチック製の容器に入れ、この容器内において、試験片は、化学物質に完全に浸漬されている間、平らで水平になるようにする。
4.試験する独自のプラスチック容器/溶液に各試験片を置く。化学物質は複数回再利用しない。試験片を30分間浸す。
5.金属製のトングを使用して化学物質からステンレス鋼パネルを取り外し、シンクでDI水で1分間すすぐ。DI水の水圧は、試験片に適用される水圧が非常に低くなるように制御する。
6.試験片を一晩乾かす。
7.乾燥したパネルの最終重量を計り、試験した各化学物質の平均汚れ除去率を計算する。
【0097】
結果を
図5に示し、ここでは、配合A1、A2、およびA3は、ネガティブコントロール(DI水)に対して評価されており、約50~100%の汚れ除去を示した(統計的有意性を考慮した場合)。
【0098】
実施例6
配合A1(0.15%ジウタンガム)を、振動振幅掃引試験と粘度測定試験を用いてさらに評価した。粘度測定試験によって、洗浄および脱脂組成物が一貫した擬塑性溶液(すなわち、剪断速度が増加するにつれて粘度が低下する)であることが確認され、これにより、本組成物がポンプで吸い上げることが可能な増粘組成物(低剪断速度)のまま維持されるという利点が提示される。本明細書で言及されるように、剪断速度は、流動する物質中の速度の勾配であり、秒の逆数で測定され、単位は1/sまたはs-1である。
【0099】
振動振幅掃引試験によれば、溶液の降伏点を見つけることができる。試験は、最小ひずみ0.001から最大ひずみ10までの範囲で、1hzの一定周波数、0.02Paの初期応力で実施した。結果は、
図6に示すように、振動応力の関数としての弾性率(G’)および粘性率(G’’)の両対数プロットの形で見られる。配合A1の降伏点は、G’/G’’(ダイン/cm
2、1パスカル単位は、10ダイン/cm
2である)の交点から計算され、2.754Paまたは27.54ダイン/cm
2である。
【0100】
粘度測定テスト:粘度対剪断速度粘度測定試験は、制御された速度または制御された応力条件下で、ある範囲のひずみ速度または剪断応力にわたって粘度応答を測定する。
図7は、ジウタンガムがずり減粘挙動を示すことを表している。配合A1の0.15%ジウタンガムは、非常に低い剪断速度で約4500cPの粘度を持ち、これは優れた貯蔵条件と沈降の可能性が低いことをシミュレートする。高い剪断速度では、粘度が30cP未満に低下するため、スプレーやポンプの使用が容易になる。この実施例は、配合A1が、
図7に示されるように、剪断速度が増加するにつれて粘度が減少する擬塑性流体であることを示している。
【0101】
本発明をその詳細な説明と併せて説明してきたが、前述の説明は例示を意図しており、添付の特許請求の範囲によって定義される本発明の範囲を限定するものではないことを理解されたい。他の実施形態、利点、および変更は、以下の特許請求の範囲内である。さらに、上記で論じられたすべての特許公報の内容は、この参照によりその全体が組み込まれる。
【0102】
特定の形態で、あるいは開示の機能を実行するための手段、または開示の結果を達成するための方法もしくはプロセスの観点から表される前述の説明、または次の特許請求の範囲、または添付の図面に開示される特徴は、適宜、別々に、またはそのような特徴の任意の組み合わせで、本発明をその多様な形態で実現するために利用することができる。以下の項目[1]~[26]に、本開示の実施形態の例を列記する。
[1]
ジウタンガムと、
任意選択でケイ酸塩粘土と、
少なくとも1つの水酸化物アルカリ性源と、
界面活性剤洗浄剤と
少なくとも1つの溶剤と、
を含む、洗浄および脱脂組成物であって、
前記組成物は、7超のpHおよび約10~150ダイン/cm
2
の降伏点を有する即使用可能組成物である、洗浄および脱脂組成物。
[2]
前記組成物が、ゲルである、項目1に記載の組成物。
[3]
前記ジウタンガムが、長鎖多糖類である、項目1または2に記載の組成物。
[4]
前記水酸化物アルカリ性源が、1つ以上のアルカリ金属水酸化物である、項目1~3のいずれか一項に記載の組成物。
[5]
前記水酸化物アルカリ性源が、水酸化ナトリウムおよび水酸化カリウムである、項目4に記載の組成物。
[6]
前記溶剤が、アルコールおよび/またはアルカノールアミンである、項目1~5のいずれか一項に記載の組成物。
[7]
前記界面活性剤洗浄剤が、アルキルポリグリコシドである、項目1~6のいずれか一項に記載の組成物。
[8]
前記水酸化物アルカリ性源が、前記組成物の約5重量%から約50重量%、または前記組成物の約20重量%から約50重量%を構成し、前記ジウタンガムは、前記組成物の約0.01重量%から約1重量%、または前記組成物の約0.1重量%から約1重量%を構成し、前記ケイ酸塩粘土は、前記組成物の約0.1重量%から約2重量%、または前記組成物の約0.1重量%から約0.5重量%を構成し、前記界面活性剤洗浄剤は、前記組成物の約0.1重量%から約20重量%、または前記組成物の約0.1重量%から約10重量%を構成し、前記溶剤は、本組成物の約0.1重量%から約20重量%、または前記組成物の約1重量%から約20重量%を構成する、項目1~7のいずれか一項に記載の組成物。
[9]
少なくとも1つの追加の機能性成分をさらに含む、項目1~8のいずれか一項に記載の組成物。
[10]
前記追加の機能性成分が、加工助剤、溶解度調整剤、分散剤、金属保護剤、安定剤、ビルダー/金属イオン封鎖剤/キレート剤、審美性向上剤、追加の高アルカリ適合性界面活性剤、またはそれらの組み合わせを含み、前記組成物の約0.1重量%から約40重量%を構成する、項目9に記載の組成物。
[11]
前記金属保護剤が、アルカリ金属グルコン酸塩および/またはケイ酸塩であり、前記加工助剤が、ヒドロトロープまたはポリエチレングリコールである、項目10に記載の組成物。
[12]
前記加工助剤が、キシレンスルホン酸ナトリウムおよび/またはポリエチレングリコールである、項目11に記載の組成物。
[13]
前記組成物が、40℃において8週間にわたって粘度の低下が10%未満であることから判断されるように、室温で長期にわたる常温保存が可能である、項目1~12のいずれか一項に記載の組成物。
[14]
表面を洗浄および脱脂する方法であって、前記方法は、
(a)汚れの除去を必要とする表面に、項目1~13のいずれか一項に記載の洗浄および脱脂組成物を接触させることと、
(b)表面から汚れを除去することと、を含む方法。
[15]
前記汚れを除去することが、前記洗浄および脱脂組成物と前記汚れとを除去するためのすすぎ工程である、項目14に記載の方法。
[16]
前記汚れを除去することが、機械的攪拌を必要としない、項目15に記載の方法。
[17]
前記接触時間が、少なくとも20分、または少なくとも30分である、項目14~16のいずれか一項に記載の方法。
[18]
前記接触時間が、垂直付着接触時間である、項目17に記載の方法。
[19]
前記接触時間が、浸漬接触時間である、項目17に記載の方法。
[20]
前記組成物が、前記表面に接触する前に希釈されない、項目14~19のいずれか一項に記載の方法。
[21]
処理を必要とする前記表面が、キッチンまたは食品の調理/加工面である、項目14~20のいずれか一項に記載の方法。
[22]
前記表面が、オーブン、グリルおよび/またはフライヤーの表面である、項目21に記載の方法。
[23]
前記組成物が、噴霧器またはホースによって塗布される、項目14~22のいずれか一項に記載の方法。
[24]
前記組成物が、前記表面に接触する前に希釈されない、項目14~23のいずれか一項に記載の方法。
[25]
ジウタンガムと、
ケイ酸塩粘土と
を含む増粘系。
[26]
前記系が、約10~150ダイン/cm
2
の降伏点をもたらすために、酸またはアルカリ性組成物と組み合わせるのに適している、項目25に記載の系。