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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-03-18
(45)【発行日】2025-03-27
(54)【発明の名称】制御装置
(51)【国際特許分類】
   B25J 19/06 20060101AFI20250319BHJP
   B25J 19/00 20060101ALI20250319BHJP
   G05B 19/18 20060101ALI20250319BHJP
【FI】
B25J19/06
B25J19/00 K
G05B19/18 X
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2023511005
(86)(22)【出願日】2022-03-22
(86)【国際出願番号】 JP2022013072
(87)【国際公開番号】W WO2022210078
(87)【国際公開日】2022-10-06
【審査請求日】2023-10-10
(31)【優先権主張番号】P 2021055120
(32)【優先日】2021-03-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】390008235
【氏名又は名称】ファナック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【弁理士】
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100165157
【弁理士】
【氏名又は名称】芝 哲央
(74)【代理人】
【識別番号】100160794
【弁理士】
【氏名又は名称】星野 寛明
(72)【発明者】
【氏名】林 晃市郎
(72)【発明者】
【氏名】山本 知之
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 元
【審査官】神山 貴行
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-014897(JP,A)
【文献】特開2011-224727(JP,A)
【文献】特開2018-118353(JP,A)
【文献】特開2017-135961(JP,A)
【文献】国際公開第2020/012983(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25J 19/06
B25J 19/00
G05B 19/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
無線センサが配置されたロボットに1対1で接続されて前記ロボットを制御する制御装置であって、
予め設定された前記無線センサのセンサ座標系に関する座標系情報を記憶するセンサ座標記憶部と、
前記無線センサとの間の無線通信に関する設定情報を記憶するセンサ設定記憶部と、
前記設定情報に基づいて前記無線センサにより検出されたセンサデータを無線通信で受信するセンサデータ受信部と、
前記ロボットに含まれる複数の軸それぞれの角度を検出する各軸角度検出部と、
前記各軸角度検出部により検出された前記複数の軸それぞれの角度の順変換、及び前記センサ座標系の座標変換により前記無線センサが検出するセンサ値を推定するセンサ値推定部と、
前記センサデータの値と、前記センサ値推定部により推定されたセンサ値と、を比較し、前記センサデータの値と推定された前記センサ値との差が予め設定された閾値を超える場合、前記センサデータ受信部が他のロボットに配置された無線センサからのセンサデータを受信していると判定するセンサ値異常判定部と、
を備える制御装置。
【請求項2】
無線センサが配置されたロボットに1対1で接続されて前記ロボットを制御する制御装置であって、
予め設定された前記無線センサのセンサ座標系に関する座標系情報を記憶するセンサ座標記憶部と、
前記無線センサとの間の無線通信に関する設定情報を記憶するセンサ設定記憶部と、
前記設定情報に基づいて前記無線センサにより検出されたセンサデータを無線通信で受信するセンサデータ受信部と、
前記センサデータから物理量を算出するセンサ物理量演算部と、
前記ロボットに含まれる複数の軸それぞれの角度を検出する各軸角度検出部と、
前記各軸角度検出部により検出された前記複数の軸それぞれの角度の順変換、及び前記センサ座標系の座標変換により前記無線センサに関する物理量を推定するセンサ物理量推定部と、
前記センサデータから算出された前記物理量と、前記センサ物理量推定部により推定された前記物理量と、を比較し、算出された前記物理量と推定された前記物理量との差が予め設定された閾値を超える場合、前記センサデータ受信部が他のロボットに配置された無線センサからのセンサデータを受信していると判定するセンサ値異常判定部と、
を備える制御装置。
【請求項3】
前記センサ値異常判定部により前記センサデータ受信部が他のロボットに配置された無線センサからのセンサデータを受信していると判定された場合、アラートを出力するユーザ通知部を備える、請求項1又は請求項2に記載の制御装置。
【請求項4】
前記ユーザ通知部は、前記アラートとともに、前記センサ設定記憶部に設定されている前記設定情報、及び前記センサデータ受信部により受信された前記センサデータの値を出力する、請求項3に記載の制御装置。
【請求項5】
計測する物理量が互いに異なる2以上の無線センサが前記ロボットに配置される、請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の制御装置。
【請求項6】
1以上の無線センサを含むスマートデバイスを前記無線センサとして前記ロボットに配置される、請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の制御装置。
【請求項7】
無線センサが配置された制御対象のロボットに1対1で接続されて前記ロボットを制御する制御装置であって、
予め設定された前記無線センサのセンサ座標系に関する座標系情報を記憶するセンサ座標記憶部と、
前記制御対象のロボットを含む複数のロボットそれぞれに配置された無線センサにより検出されたセンサデータを無線通信で受信するセンサデータ受信部と、
前記制御対象のロボットに含まれる複数の軸それぞれの角度を検出する各軸角度検出部と、
前記各軸角度検出部により検出された前記複数の軸それぞれの角度の順変換、及び前記センサ座標系の座標変換により前記制御対象のロボットの前記無線センサが検出するセンサ値を推定するセンサ値推定部と、
前記複数のロボットそれぞれに配置された無線センサのセンサデータの値と、前記センサ値推定部により推定されたセンサ値と、を比較し、推定された前記センサ値との差が予め設定された閾値を超えるセンサデータの無線センサを、前記制御対象のロボット以外のロボットに配置された無線センサと判定する適正センサ判定部と、
を備える制御装置。
【請求項8】
無線センサが配置された制御対象のロボットに1対1で接続されて前記ロボットを制御する制御装置であって、
予め設定された前記無線センサのセンサ座標系に関する座標系情報を記憶するセンサ座標記憶部と、
前記制御対象のロボットを含む複数のロボットそれぞれに配置された無線センサにより検出されたセンサデータを無線通信で受信するセンサデータ受信部と、
前記複数のロボットそれぞれに配置された無線センサのセンサデータからそれぞれ物理量を算出するセンサ物理量演算部と、
前記制御対象のロボットに含まれる複数の軸それぞれの角度を検出する各軸角度検出部と、
前記各軸角度検出部により検出された前記複数の軸それぞれの角度の順変換、及び前記センサ座標系の座標変換により前記制御対象のロボットの前記無線センサに関する物理量を推定するセンサ物理量推定部と、
前記複数のロボットそれぞれに配置された無線センサのセンサデータからそれぞれ算出された前記物理量と、前記センサ物理量推定部により推定された前記物理量と、を比較し、推定された前記物理量との差が予め設定された閾値を超える前記物理量が算出されたセンサデータの無線センサを、前記制御対象のロボット以外のロボットに配置された無線センサと判定する適正センサ判定部と、
を備える制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ロボット動作時の振動を低減することで高速化や軌跡精度を向上することは生産効率や品質の向上に直結する。そこで、ロボットが動作する際に発生する振動や軌跡ずれを低減したいという要望がある。
そのような課題に対し、振動を除去したい箇所や高精度軌跡を実現したい箇所に加速度センサを取り付け、ロボット動作中の振動を加速度センサによって計測し、学習制御を行うことで振動を低減する方法が提案されている。例えば、特許文献1参照。
また、センサの接続方式が有線による場合、センサケーブルの取りまわしの煩雑さから、無線化した加速度センサをロボットに取り付け、ロボットの振動を抑制する方法が提案されている。例えば、特許文献2参照。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2011-167817号公報
【文献】特開2011-161562号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
制御対象のロボットに配置された無線加速度センサとの接続において、他のロボットに配置された無線加速度センサとの間でペアリングしてしまう間違いが生じることがある。間違った無線加速度センサに無線接続した状態でセンサ値の計測を続行すると予期しないロボットの制御が行われてしまう。
【0005】
そこで、ペアリング間違いが生じた場合にユーザに通知する機能が望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1)本開示の制御装置の一態様は、センサが配置されたロボットを制御する制御装置であって、予め設定された前記センサのセンサ座標系に関する座標系情報を記憶するセンサ座標記憶部と、前記センサとの間の通信に関する設定情報を記憶するセンサ設定記憶部と、前記設定情報に基づいて前記センサにより検出されたセンサデータを受信するセンサデータ受信部と、前記ロボットに含まれる複数の軸それぞれの角度を検出する各軸角度検出部と、前記各軸角度検出部により検出された前記複数の軸それぞれの角度の順変換、及び前記センサ座標系の座標変換により前記センサが検出するセンサ値を推定するセンサ値推定部と、前記センサデータの値と、前記センサ値推定部により推定されたセンサ値と、を比較し、前記センサデータの値と推定された前記センサ値と差が予め設定された閾値を超える場合、前記センサデータ受信部が他のロボットに配置されたセンサからのセンサデータを受信していると判定するセンサ値異常判定部と、を備える。
【0007】
(2)本開示の制御装置の一態様は、センサが配置されたロボットを制御する制御装置であって、予め設定された前記センサのセンサ座標系に関する座標系情報を記憶するセンサ座標記憶部と、前記センサとの間の通信に関する設定情報を記憶するセンサ設定記憶部と、前記設定情報に基づいて前記センサにより検出されたセンサデータを受信するセンサデータ受信部と、前記センサデータから物理量を算出するセンサ物理量演算部と、前記ロボットに含まれる複数の軸それぞれの角度を検出する各軸角度検出部と、前記各軸角度検出部により検出された前記複数の軸それぞれの角度の順変換、及び前記センサ座標系の座標変換により前記センサに関する物理量を推定するセンサ物理量推定部と、前記センサデータから算出された前記物理量と、前記センサ物理量推定部により推定された前記物理量と、を比較し、算出された前記物理量と推定された前記物理量と差が予め設定された閾値を超える場合、前記センサデータ受信部が他のロボットに配置されたセンサからのセンサデータを受信していると判定するセンサ値異常判定部と、を備える。
【0008】
(3)本開示の制御装置の一態様は、センサが配置された制御対象のロボットを制御する制御装置であって、予め設定された前記センサのセンサ座標系に関する座標系情報を記憶するセンサ座標記憶部と、前記制御対象のロボットを含む複数のロボットそれぞれに配置されたセンサにより検出されたセンサデータを受信するセンサデータ受信部と、前記制御対象のロボットに含まれる複数の軸それぞれの角度を検出する各軸角度検出部と、前記各軸角度検出部により検出された前記複数の軸それぞれの角度の順変換、及び前記センサ座標系の座標変換により前記制御対象のロボットの前記センサが検出するセンサ値を推定するセンサ値推定部と、前記複数のロボットそれぞれに配置されたセンサのセンサデータの値と、前記センサ値推定部により推定されたセンサ値と、を比較し、推定された前記センサ値と差が予め設定された閾値を超えるセンサデータのセンサを、前記制御対象のロボット以外のロボットに配置されたセンサと判定する適正センサ判定部と、を備える。
【0009】
(4)本開示の制御装置の一態様は、センサが配置された制御対象のロボットを制御する制御装置であって、予め設定された前記センサのセンサ座標系に関する座標系情報を記憶するセンサ座標記憶部と、前記制御対象のロボットを含む複数のロボットそれぞれに配置されたセンサにより検出されたセンサデータを受信するセンサデータ受信部と、前記複数のロボットそれぞれに配置されたセンサのセンサデータから物理量を算出するセンサ物理量演算部と、前記制御対象のロボットに含まれる複数の軸それぞれの角度を検出する各軸角度検出部と、前記各軸角度検出部により検出された前記複数の軸それぞれの角度の順変換、及び前記センサ座標系の座標変換により前記制御対象のロボットの前記センサに関する物理量を推定するセンサ物理量推定部と、前記複数のロボットそれぞれに配置されたセンサのセンサデータから算出された前記物理量と、前記センサ物理量推定部により推定された前記物理量と、を比較し、推定された前記物理量と差が予め設定された閾値を超えるセンサデータのセンサを、前記制御対象のロボット以外のロボットに配置されたセンサと判定する適正センサ判定部と、を備える。
【発明の効果】
【0010】
センサの接続間違いの状態でロボットが稼働することを未然に防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】第1実施形態に係るロボットシステムの機能的構成例を示す機能ブロック図である。
図2A図1のロボットにおける座標系を説明するための図である。
図2B図1のロボットにおける座標系を説明するための図である。
図3】制御装置の機能的構成例を示す機能ブロック図である。
図4A】センサデータの値と推定されたセンサ値との比較の一例を示す図である。
図4B】センサデータの値と推定されたセンサ値との比較の一例を示す図である。
図5】制御装置の異常判定処理について説明するフローチャートである。
図6】第2実施形態に係るロボットシステムの機能的構成例を示す機能ブロック図である。
図7】制御装置の機能的構成例を示す機能ブロック図である。
図8】制御装置の異常判定処理について説明するフローチャートである。
図9】第3実施形態に係るロボットシステムの機能的構成例を示す機能ブロック図である。
図10】制御装置の機能的構成例を示す機能ブロック図である。
図11】センサデータの値と推定されたセンサ値との比較の一例を示す図である。
図12】制御装置の適正センサ判定処理について説明するフローチャートである。
図13】制御装置の機能的構成例を示す機能ブロック図である。
図14】制御装置の適正センサ判定処理について説明するフローチャートである。
図15】ロボットシステムの機能的構成例を示す機能ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
<第1実施形態>
本実施形態の構成について図面を用いて詳細に説明する。ここでは、センサとして無線加速度センサの場合を例示する。なお、本発明は、ジャイロセンサや慣性センサ等のセンサの場合や、1以上のセンサを含むスマートフォン等のスマートデバイスをセンサとして用いる場合に対しても適用可能である。
【0013】
図1は、第1実施形態に係るロボットシステムの機能的構成例を示す機能ブロック図である。
図1に示すように、ロボットシステム1は、n台のロボット10(1)~10(n)、n台の制御装置20(1)~20(n)、及び無線受信機30を有する(nは2以上の整数)。
ロボット10(1)~10(n)、制御装置20(1)~20(n)、及び無線受信機30は、図示しない接続インタフェースを介して互いに直接接続されてもよい。なお、ロボット10(1)~10(n)と、制御装置20(1)~20(n)とは、LAN(Local Area Network)等のネットワークを介して相互に接続されていてもよい。この場合、ロボット10(1)~10(n)と、制御装置20(1)~20(n)とは、かかる接続によって相互に通信を行うための図示しない通信部を備えてもよい。
なお、以下、ロボット10(1)~10(n)のそれぞれを個々に区別する必要がない場合、これらをまとめて「ロボット10」という。また、制御装置20(1)~20(n)のそれぞれを個々に区別する必要がない場合、これらをまとめて「制御装置20」という。
【0014】
<ロボット10>
ロボット10は、例えば、図1に示すように、6軸の垂直多関節ロボットであり、6つの関節軸11(1)~11(6)と、関節軸11(1)~11(6)の各々により連結されるアーム部12と、を有する。ロボット10は、制御装置20からの駆動指令に基づいて、関節軸11(1)~11(6)の各々に配置される図示しないサーボモータの各々を駆動することにより、アーム部12等の可動部材を駆動する。また、ロボット10の可動部材の先端部、例えば、関節軸11(6)の先端部には、例えば、溶接ガン、握持ハンド、レーザ照射装置等のエンドエフェクタ13が取り付けられる。そして、エンドエフェクタ13には、無線加速度センサ101が設置される。
【0015】
なお、ロボット10は、6軸の垂直多関節ロボットとしたが、6軸以外の垂直多関節ロボットでもよく、水平多関節ロボットやパラレルリンクロボット等でもよい。
【0016】
図2A及び図2Bは、図1のロボット10における座標系を説明するための図である。
ロボット10は、図2Aに示すように、ロボット基準点14と、ロボット基準点14を中心とするロボット座標系Σrと、を有する。また、無線加速度センサ101は、センサ基準点111と、センサ基準点111を中心とするセンサ座標系Σsと、を有する。
また、図2Bに示すように、ロボット10は、関節軸11(6)の先端のフランジにおいて、ロボット先端点15と、ロボット先端点15を中心とするメカニカルインタフェース座標系Σmと、を有する。
メカニカルインタフェース座標系Σmとセンサ座標系Σsとの位置関係は、メカニカルインタフェース座標系Σmにおいて、メカニカルインタフェース座標系Σmの原点からセンサ座標系Σsの原点へのベクトル(x,y,z)、及びメカニカルインタフェース座標系Σmの各軸回りの回転によってセンサ座標系Σsの方向を定義する回転角(w,p,r)の6個の要素を用いて定義することができる。そして、ベクトル(x,y,z)及び回転角(w,p,r)は、公知の手法(例えば、特開2017-74647号公報)を用いて求めることができる。
これにより、後述する制御装置20は、ベクトル(x,y,z)及び回転角(w,p,r)を用いて、関節軸11(6)のロボット先端点15からセンサ座標系Σsの原点までの距離を計算することで、ロボットの動作プログラムに記述された座標及び角度からロボット座標系Σrにおける無線加速度センサ101の位置を算出することができる。
【0017】
無線加速度センサ101は、例えば、ロボット10の動作に伴う可動部材の先端部におけるセンサ座標系ΣsのXYZ軸毎に加速度を所定のサンプリング時間で周期的に検出する、3次元加速度センサである。無線加速度センサ101は、図示しないクロック部を有し、加速度を検出する度に、当該クロック部から出力される時刻情報を、検出した時刻として取得する。また、無線加速度センサ101は、例えば、検出した各軸の加速度及び時刻情報を含むセンサ信号を、無線受信機30に無線で送信する。
なお、無線加速度センサ101は、検出した加速度及び時刻情報のセンサ信号を、無線受信機30に無線で送信したが、制御装置20と有線で接続されセンサ信号を制御装置20に送信してもよい。
また、無線加速度センサ101は、加速度センサに限定されず、ジャイロセンサ、慣性センサ、力センサ、レーザトラッカ、ビジョンセンサ、又はモーションキャプチャセンサ等でもよい。また、無線加速度センサ101は、加速度センサ等の複数のセンサを含むスマートフォン等のスマートデバイスでもよい。
【0018】
<無線受信機30>
無線受信機30は、例えば、WiFi(登録商標)ルータ等であり、無線加速度センサ101からのセンサ信号を受信し、受信したセンサ信号を制御装置20に出力する。
なお、無線通信の通信規格はWiFi(登録商標)に限定されず、Bluetooth(登録商標)等の電波を利用したものでもよく、赤外線通信を利用したものでもよい。そして、無線受信機30は、通信規格に応じたモジュールを使用することが好ましい。
【0019】
<制御装置20>
制御装置20は、無線加速度センサ101により検出された加速度を用いた学習制御を行うことにより、動作中にロボット10のアーム部12に発生する振動を低減するように、動作プログラムに基づいてロボット10に対して駆動指令を出力し、ロボット10の動作を制御する制御装置(「ロボットコントローラ」とも呼ばれる)である。
図3は、制御装置20の機能的構成例を示す機能ブロック図である。
図3に示すように、本実施形態に係る制御装置20は、教示操作盤25が接続され、センサ座標記憶部201、センサ設定記憶部202、各軸角度検出部203、センサ値推定部204、センサデータ受信部205、及びセンサ値異常判定部206を含んで構成される。また、教示操作盤25は、ユーザ通知部251、及びユーザ入力部252を含む。
なお、制御装置20は、図3の機能ブロックの動作を実現するために、CPU(Central Processing Unit)等の図示しない演算処理装置を備える。また、制御装置20は、各種の制御用プログラムを格納したROM(Read Only Memory)やHDD(Hard Disk Drive)等の図示しない補助記憶装置や、演算処理装置がプログラムを実行する上で一時的に必要とされるデータを格納するためのRAM(Random Access Memory)といった図示しない主記憶装置を備える。
【0020】
そして、制御装置20において、演算処理装置が補助記憶装置からOSやアプリケーションソフトウェアを読み込み、読み込んだOSやアプリケーションソフトウェアを主記憶装置に展開させながら、これらのOSやアプリケーションソフトウェアに基づいた演算処理を行なう。この演算結果に基づいて、制御装置20が各ハードウェアを制御する。これにより、図3の機能ブロックによる処理は実現される。すなわち、制御装置20は、ハードウェアとソフトウェアが協働することにより実現することができる。
【0021】
センサ座標記憶部201は、例えば、RAM等のメモリであり、後述する教示操作盤25のユーザ入力部252を介したユーザによる入力操作に基づいて予め設定された無線加速度センサ101のセンサ座標系Σsに関する座標系情報を記憶する。
具体的には、センサ座標記憶部201は、無線加速度センサ101の位置及び姿勢を算出するのに必要となる、メカニカルインタフェース座標系Σmの原点からセンサ座標系Σsの原点へのベクトル(x,y,z)、及びメカニカルインタフェース座標系Σmの各軸回りの回転によってセンサ座標系Σsの方向を定義する回転角(w,p,r)を、座標系情報として記憶する。
【0022】
センサ設定記憶部202は、例えば、RAM等のメモリであり、後述する教示操作盤25のユーザ入力部252を介したユーザによる入力操作に基づいて無線加速度センサ101との間の通信に関する設定情報を記憶する。
具体的には、センサ設定記憶部202は、通信対象となる無線加速度センサ101が有する通信アドレス(例えば、IPアドレスやMACアドレス等)を、設定情報として記憶する。
【0023】
各軸角度検出部203は、例えば、ロボット10の関節軸11(1)~11(6)それぞれに配置された図示しないエンコーダ等を用いて、関節軸11(1)~11(6)それぞれの角度を検出する。
各軸角度検出部203は、検出した関節軸11(1)~11(6)それぞれの角度をセンサ値推定部204に出力する。
【0024】
センサ値推定部204は、各軸角度検出部203により検出された関節軸11(1)~11(6)それぞれの角度の順変換、及びセンサ座標系Σsの座標変換により無線加速度センサ101が取り付けられた位置で無線加速度センサ101が検出するセンサ値を推定する。
具体的には、センサ値推定部204は、各軸角度検出部203により検出された関節軸11(1)~11(6)それぞれの角度を用いて順変換することにより、ロボット座標系Σrにおける、メカニカルインタフェース座標系Σmの位置及び姿勢を算出する。センサ値推定部204は、センサ座標記憶部201に記憶されたベクトル(x,y,z)、及び回転角(w,p,r)の座標系情報を用いて、ロボット座標系Σrにおける無線加速度センサ101が取り付けられた位置を算出する。センサ値推定部204は、算出した位置の時系列データを時間で2階微分することによりロボット座標系Σrの各軸の加速度を算出し、算出した加速度をメカニカルインタフェース座標系Σmを介してセンサ座標系Σsの各軸の加速度のセンサ値に変換し推定する。そして、センサ値推定部204は、ロボット10が動作している場合、推定したセンサ座標系Σsの加速度のセンサ値から重力加速度の成分を差し引き、差し引いたセンサ値をセンサ値異常判定部206に出力する。
なお、センサ値推定部204は、ロボット10が静止している場合、重力加速度を差し引くことなく、推定したセンサ座標系Σsの加速度のセンサ値をセンサ値異常判定部206に出力してもよい。
【0025】
センサデータ受信部205は、センサ設定記憶部202に記憶された設定情報に基づいて無線加速度センサ101により検出されたセンサデータを受信する。
具体的には、センサデータ受信部205は、センサ設定記憶部202に記憶された設定情報の通信アドレスに基づいて、無線加速度センサ101とペアリングを行う。例えば、センサデータ受信部205は、無線受信機30を介して受信するセンサ信号のうち、センサ信号のヘッダにペアリングした無線加速度センサ101の通信アドレスを含むセンサ信号を受信する。センサデータ受信部205は、受信したセンサ信号に含まれるセンサ座標系Σsの各軸の加速度を、センサデータとしてセンサ値異常判定部206に出力する。
なお、センサデータ受信部205は、センサデータをセンサ値異常判定部206に出力するとき、ローパスフィルタ(図示しない)によりノイズを除去して出力するようにしてもよい。
【0026】
センサ値異常判定部206は、センサデータ受信部205からのセンサデータの値と、センサ値推定部204により推定されたセンサ値と、をセンサ座標系Σsの軸毎に比較する。センサ値異常判定部206は、軸毎のセンサデータの値と推定されたセンサ値と差のうち、最大の差が予め設定された閾値(例えば「2m/s」等)を超える場合、センサデータ受信部205が他のロボット10に配置された無線加速度センサ101からのセンサデータを受信していると判定する。センサ値異常判定部206は、判定結果を後述する教示操作盤25のユーザ通知部251に出力する。
図4A及び図4Bは、センサデータの値と推定されたセンサ値との比較の一例を示す図である。なお、図4Aは、例えば、ロボット動作時におけるセンサ座標系ΣsのX軸方向のセンサデータの値と推定されたセンサ値との差が閾値以下の正常な場合を示す。また、図4Bは、ロボット動作時におけるセンサ座標系ΣsのX軸方向のセンサデータの値と推定されたセンサ値との差が閾値を超える異常な場合を示す。
なお、センサ値異常判定部206は、センサ座標系Σsの軸毎にセンサデータの値と推定されたセンサ値との差を算出し、算出した差と予め設定された閾値とを比較したが、これに限定されない。例えば、センサ値異常判定部206は、センサ座標系Σsの各軸のセンサデータの値であるベクトルの大きさと、センサ座標系Σsの各軸で推定されたセンサ値であるベクトルの大きさと、の差を算出し、算出した差と閾値とを比較してもよい。
あるいは、センサ座標系Σsの各軸の加速度を変数とする所定の関数を用いて、センサ値異常判定部206は、センサ座標系Σsの各軸のセンサデータの値を所定の関数に入力することで算出される値と、センサ座標系Σsの各軸で推定されたセンサ値を所定の関数に入力することで算出される値と、の差を算出し、算出した差と閾値とを比較してもよい。
【0027】
ユーザ通知部251は、センサ値異常判定部206の判定結果に基づいて、センサデータの値が異常を通知するアラートを出力する。
具体的には、ユーザ通知部251は、センサデータの値が異常の場合、当該異常を通知するアラートを教示操作盤25に含まれる液晶ディスプレイ等の表示部に表示する。
なお、ユーザ通知部251は、アラートとともに、センサ設定記憶部202に設定されている設定情報、及びセンサデータ受信部205により受信されたセンサデータの値を出力してもよい。
そうすることで、ユーザは、センサ設定記憶部202に記憶されている設定情報が間違っているか否か、無線加速度センサ101が故障しているか否か等を確認することができる。設定情報が間違っている場合、ユーザは、後述する教示操作盤25のユーザ入力部252を介して、正しい設定情報を再設定することができる。また、無線加速度センサ101が故障している場合、ユーザは、新しい無線加速度センサ101に交換することで、センサ値の異常に迅速に対応することができる。
なお、ユーザ通知部251は、教示操作盤25に配置されたが、制御装置20に配置されてもよい。
【0028】
ユーザ入力部252は、例えば、教示操作盤25に配置された操作キーやタッチパネル等であり、ユーザからセンサ座標系Σsの設定や無線加速度センサ101の通信アドレス等の入力を受け付ける。ユーザ入力部252は、受け付けた入力を制御装置20に出力する。
なお、ユーザ入力部252は、教示操作盤25に配置されたが、制御装置20に配置されてもよい。
【0029】
<制御装置20の異常判定処理>
次に、図5を参照しながら、制御装置20の異常判定処理の流れを説明する。
図5は、制御装置20の異常判定処理について説明するフローチャートである。ここで示すフローは、ユーザにより無線加速度センサ101のセンサ座標系Σsの設定が行われる度に実行される。
【0030】
ステップS1において、ユーザ入力部252は、ユーザによる入力操作に応じて、メカニカルインタフェース座標系Σmの原点から無線加速度センサ101のセンサ座標系Σsの原点へのベクトル(x,y,z)、及びメカニカルインタフェース座標系Σmの各軸回りの回転によってセンサ座標系Σsの方向を定義する回転角(w,p,r)を、座標系情報として設定し、センサ座標記憶部201に記憶する。また、ユーザ入力部252は、ユーザによる入力操作に応じて、無線加速度センサ101が有する通信アドレスを設定情報として設定し、センサ設定記憶部202に記憶する。
【0031】
ステップS2において、無線加速度センサ101は、学習制御の開始時に、センサ座標系Σsの各軸の加速度の計測を開始し、センサデータ受信部205は、無線受信機30を介して計測されたセンサ座標系Σsの各軸の加速度を含むセンサ信号を受信し、受信したセンサ座標系Σsの各軸の加速度をセンサデータとして取得する。
【0032】
ステップS3において、センサ値推定部204は、各軸角度検出部203により検出されたロボット10が動作する前(ロボット10の静止時)における関節軸11(1)~11(6)それぞれの角度の順変換から求まるロボット10の姿勢、及びセンサ座標系Σsの座標変換により無線加速度センサ101が取り付けられた位置における、センサ座標系Σsの各軸のセンサ値を推定する。
なお、ステップS3では、動作プログラムの実行の有無にかかわらず、センサ値推定部204は、ロボット10が動作する前(ロボット10の静止時)におけるセンサ値(重力加速度)を推定することが好ましい。
【0033】
ステップS4において、センサ値異常判定部206は、ステップS2で取得されたセンサデータの値とステップS3で推定されたセンサ値との差がセンサ座標系Σsの全ての軸において閾値以下か否かを判定する。センサデータの値と推定されたセンサ値との差がセンサ座標系Σsの全ての軸において閾値以下の場合、処理はステップS6に移る。一方、センサデータの値と推定されたセンサ値との差がセンサ座標系Σsの全ての軸において閾値以下でない場合、処理はステップS5に移る。
【0034】
ステップS5において、センサ値異常判定部206は、センサデータの異常の判定結果をユーザ通知部251に出力し、ユーザ通知部251は、アラートを教示操作盤25の表示部(図示しない)に表示する。そして、処理は、ステップS1に戻る。
【0035】
ステップS6において、センサ値推定部204は、各軸角度検出部203により検出されたロボット10の動作時の関節軸11(1)~11(6)それぞれの角度の順変換から求まるロボット10の位置及び姿勢、及びセンサ座標系Σsの座標変換により無線加速度センサ101が取り付けられた位置におけるセンサ座標系Σsの各軸のセンサ値を推定する。
なお、ロボット10の動作とは、実際の作業における動作でもよく、ロボット座標系ΣrのX軸やY軸に対する並進動作等の予め設定された所定の動作でもよい。
【0036】
ステップS7において、センサ値異常判定部206は、センサデータ受信部205により取得されたセンサデータの値とステップS6で推定されたセンサ値との差がセンサ座標系Σsの全ての軸において閾値以下か否かを判定する。センサデータの値と推定されたセンサ値との差がセンサ座標系Σsの全ての軸において閾値以下の場合、処理はステップS8に移る。一方、センサデータの値と推定されたセンサ値との差がセンサ座標系Σsの全ての軸において閾値以下でない場合、処理はステップS5に移る。
【0037】
ステップS8において、制御装置20(センサ値異常判定部206)は、センサ値の異常がない場合、正常と判断して、学習制御に基づく動作プログラムによるロボット10の制御を続ける。
【0038】
以上のように、第1実施形態に係る制御装置20は、無線加速度センサ101の通信アドレスの設定を変更することにより、無線加速度センサ101の接続間違いの状態でロボットが稼働することを未然に防ぐことができる。
また、制御装置20は、ロボット10を動作させる前とロボット10の動作中とに、センサデータの値と推定したセンサ値との比較からセンサデータの異常を検出し、検出した異常のアラートをユーザに通知する。これにより、制御装置20は、無線加速度センサ101の設定が間違ったままロボット10の制御を続行することを防止するための余計な工数を削減でき、無線加速度センサ101の設定間違いによるロボット10の予期しない制御(例えば、振動が発散する動作等)を防止できる。
以上、第1実施形態について説明した。
【0039】
<第2実施形態>
次に、第2実施形態について説明する。第1実施形態では、制御装置20は、ロボット10の関節軸11(1)~11(6)の角度の順変換から求まるロボット10の位置及び姿勢、及びセンサ座標系Σsの座標変換により無線加速度センサ101の位置におけるセンサ座標系Σsの各軸のセンサ値を推定し、無線加速度センサ101により検出されたセンサデータの値と推定されたセンサ値との差がセンサ座標系Σsの全ての軸において閾値以下か否かを判定することで、センサデータの異常(無線加速度センサ101の接続間違い)をユーザに通知した。これに対して、第2実施形態では、制御装置20Aは、ロボット10の関節軸11(1)~11(6)の角度の順変換から求まるロボット10の位置及び姿勢、及びセンサ座標系Σsの座標変換により、ロボット座標系Σrにおける無線加速度センサ101の移動距離及び移動方向の移動ベクトルを物理量として推定するとともに、センサデータ受信部が受信したセンサデータからロボット座標系Σrにおける無線加速度センサ101の移動距離及び移動方向の移動ベクトルを物理量として算出し、センサデータから算出された物理量の移動ベクトルと推定された物理量の移動ベクトルとの差の全ての成分が閾値以下か否かを判定する点が、第1実施形態と相違する。
これにより、第2実施形態に係る制御装置20Aは、センサの接続間違いの状態でロボットが稼働することを未然に防ぐことができる。
以下、第2実施形態について説明する。
【0040】
図6は、第2実施形態に係るロボットシステムの機能的構成例を示す機能ブロック図である。なお、図1のロボットシステム1の要素と同様の機能を有する要素については、同じ符号を付し、詳細な説明は省略する。
図6に示すように、ロボットシステム1Aは、n台のロボット10(1)~10(n)、n台の制御装置20A(1)~20A(n)、及び無線受信機30を有する。
以下、制御装置20A(1)~20A(n)のそれぞれを個々に区別する必要がない場合、これらをまとめて「制御装置20A」という。
【0041】
ロボット10、無線加速度センサ101、及び無線受信機30は、第1実施形態のロボット10、無線加速度センサ101、及び無線受信機30と同様の構成を有する。
【0042】
<制御装置20A>
図7は、制御装置20Aの機能的構成例を示す機能ブロック図である。
図7に示すように、制御装置20Aは、教示操作盤25が接続され、センサ座標記憶部201、センサ設定記憶部202、各軸角度検出部203、センサデータ受信部205、センサ値異常判定部206a、センサ物理量推定部207、及びセンサ物理量演算部208を含んで構成される。また、教示操作盤25は、ユーザ通知部251、及びユーザ入力部252を含む。
センサ座標記憶部201、センサ設定記憶部202、各軸角度検出部203、及びセンサデータ受信部205は、第1実施形態のセンサ座標記憶部201、センサ設定記憶部202、各軸角度検出部203、及びセンサデータ受信部205と同等の機能を有する。
また、ユーザ通知部251、及びユーザ入力部252は、第1実施形態のユーザ通知部251、及びユーザ入力部252と同等の機能を有する。
【0043】
センサ物理量推定部207は、各軸角度検出部203により検出された関節軸11(1)~11(6)それぞれの角度の順変換、及びセンサ座標系Σsの座標変換により無線加速度センサ101に関する物理量を推定する。
具体的には、センサ物理量推定部207は、例えば、各軸角度検出部203により検出された関節軸11(1)~11(6)それぞれの角度を用いて順変換することにより、ロボット座標系Σrにおける、メカニカルインタフェース座標系Σmの位置及び姿勢を算出する。センサ物理量推定部207は、センサ座標記憶部201に記憶されたベクトル(x,y,z)、及び回転角(w,p,r)を用いて、ロボット座標系Σrにおける無線加速度センサ101が取り付けられた位置の移動距離及び移動方向からなる移動ベクトルを、物理量として推定する。
【0044】
センサ物理量演算部208は、無線加速度センサ101が検出した加速度のセンサデータから物理量を算出する。
具体的には、センサ物理量演算部208は、センサデータ受信部205から受信したセンサデータの加速度の時系列データを時間で2階積分することで、ロボット座標系Σrにおける無線加速度センサ101の移動ベクトルを、物理量として算出する。
【0045】
センサ値異常判定部206aは、センサ物理量演算部208により算出された物理量である移動ベクトルと、センサ物理量推定部207により推定された物理量である移動ベクトルと、を比較する。センサ値異常判定部206aは、算出された移動ベクトルと推定された移動ベクトルとの差のXYZ成分うち、最大の差の成分が予め設定された閾値(例えば「1mm」等)を超える場合、センサデータ受信部205が他のロボット10に配置された無線加速度センサ101からのセンサデータを受信していると判定する。そして、センサ値異常判定部206aは、判定結果を教示操作盤25のユーザ通知部251に出力する。
なお、センサ値異常判定部206aは、例えば、センサ物理量演算部208により算出された移動ベクトルの大きさと、センサ物理量推定部207により推定された移動ベクトルの大きさと、の差を算出し、算出した差と閾値とを比較してもよい。
【0046】
<制御装置20Aの異常判定処理>
次に、図8を参照しながら、制御装置20Aの異常判定処理の流れを説明する。
図8は、制御装置20Aの異常判定処理について説明するフローチャートである。ここで示すフローは、ユーザにより無線加速度センサ101のセンサ座標系Σsの設定が行われる度に実行される。
なお、図8に示す異常判定処理において、ステップS1、ステップS2、ステップS8の処理は、図5の第1実施形態のステップS1、ステップS2、ステップS8の処理と同様であり、説明は省略する。
【0047】
ステップS3aにおいて、センサ物理量推定部207は、各軸角度検出部203により検出されたロボット10が動作する前(ロボット10の静止時)における関節軸11(1)~11(6)それぞれの角度の順変換から求まるロボット10の姿勢、及びセンサ座標系Σsの座標変換により無線加速度センサ101が取り付けられた位置の移動ベクトルを、物理量として推定する。
【0048】
ステップS4aにおいて、センサ値異常判定部206aは、ステップS2で取得されたセンサデータを用いてセンサ物理量演算部208により算出された無線加速度センサ101の位置の移動ベクトルの物理量と、ステップS3aで推定された物理量と、の差のうち、差の全ての成分が閾値以下か否かを判定する。差の全ての成分が閾値以下の場合、処理はステップS6aに移る。一方、差の全ての成分が閾値以下でない場合、処理はステップS5aに移る。
【0049】
ステップS5aにおいて、センサ値異常判定部206aは、物理量の異常の判定結果をユーザ通知部251に出力し、ユーザ通知部251は、アラートを教示操作盤25の表示部(図示しない)に表示する。そして、処理は、ステップS1に戻る。
【0050】
ステップS6aにおいて、センサ物理量推定部207は、各軸角度検出部203により検出されたロボット10の動作時の関節軸11(1)~11(6)それぞれの角度の順変換から求まるロボット10の位置及び姿勢、及びセンサ座標系Σsの座標変換により無線加速度センサ101が取り付けられた位置の移動ベクトルを、物理量として推定する。
【0051】
ステップS7aにおいて、センサ値異常判定部206aは、センサ物理量演算部208により算出された移動ベクトルの物理量とステップS6aで推定された移動ベクトルの物理量との差のうち、差の全ての成分が閾値以下か否かを判定する。差の全ての成分が閾値以下の場合、処理はステップS8に移る。一方、差の全ての成分が閾値以下でない場合、処理はステップS5aに移る。
【0052】
以上のように、第2実施形態に係る制御装置20Aは、無線加速度センサ101の通信アドレスの設定を変更することにより、無線加速度センサ101の接続間違いの状態でロボット10が稼働することを未然に防ぐことができる。
また、制御装置20Aは、ロボット10を動作させる前とロボット10の動作中とに、センサデータから算出した物理量と推定した物理量との比較からセンサデータの異常を検出し、検出した異常のアラートをユーザに通知する。これにより、制御装置20Aは、無線加速度センサ101の設定が間違ったままロボット10の制御を続行することを防止するための余計な工数を削減でき、無線加速度センサ101の設定間違いによるロボット10の予期しない制御(例えば、振動が発散する動作等)を防止できる。
以上、第2実施形態について説明した。
【0053】
<第3実施形態>
次に、第3実施形態について説明する。なお、第3実施形態に係る制御装置20Bは、第1実施形態と以下の点で相違する。
(1)第3実施形態に係る制御装置20Bは、制御対象のロボット10を含む複数のロボット10それぞれに配置された無線加速度センサ101により検出されたセンサデータを受信する点
(2)第3実施形態に係る制御装置20Bは、各ロボット10の無線加速度センサ101のセンサデータの値と、制御対象のロボット10の各軸の角度の順変換、及びセンサ座標系の座標変換により推定された無線加速度センサ101の位置におけるセンサ値と、を比較し、推定された値との差が予め設定された閾値を超えるセンサを、制御対象のロボット10以外のロボット10に配置されたセンサと判定する点
これにより、第3実施形態に係る制御装置20Bは、センサの接続間違いの状態でロボットが稼働することを未然に防ぐことができる。
以下、第3実施形態について説明する。
【0054】
図9は、第3実施形態に係るロボットシステムの機能的構成例を示す機能ブロック図である。なお、図1のロボットシステム1の要素と同様の機能を有する要素については、同じ符号を付し、詳細な説明は省略する。
図9に示すように、ロボットシステム1Bは、n台のロボット10(1)~10(n)、n台の制御装置20B(1)~20B(n)、及び無線受信機30を有する。
以下、制御装置20B(1)~20B(n)のそれぞれを個々に区別する必要がない場合、これらをまとめて「制御装置20B」という。
【0055】
ロボット10、無線加速度センサ101、及び無線受信機30は、第1実施形態のロボット10、無線加速度センサ101、及び無線受信機30と同様の構成を有する。
【0056】
<制御装置20B>
図10は、制御装置20B(1)の機能的構成例を示す機能ブロック図である。なお、図10では、制御装置20B(1)の機能的構成例を示すが、制御装置20B(2)~20B(n)についても制御装置20B(1)と同様である。
図10に示すように、制御装置20B(1)は、教示操作盤25が接続され、センサ座標記憶部201、センサ設定記憶部202、各軸角度検出部203、センサ値推定部204、センサデータ受信部205b、及び適正センサ判定部209を含んで構成される。また、教示操作盤25は、ユーザ通知部251、及びユーザ入力部252を含む。
センサ座標記憶部201、センサ設定記憶部202、各軸角度検出部203、及びセンサ値推定部204は、第1実施形態のセンサ座標記憶部201、センサ設定記憶部202、各軸角度検出部203、及びセンサ値推定部204と同等の機能を有する。
また、ユーザ通知部251、及びユーザ入力部252は、第1実施形態のユーザ通知部251、及びユーザ入力部252と同等の機能を有する。
【0057】
センサデータ受信部205bは、制御対象のロボット10(1)に配置された無線加速度センサ101により検出された加速度を含むセンサ信号とともに、ロボット10(2)~10(n)それぞれに配置された無線加速度センサ101により検出された加速度を含むセンサ信号を受信する。すなわち、各ロボット10に配置された無線加速度センサ101は、例えば、マルチキャストでセンサ信号を送信するようにしてもよい。この場合、センサデータ受信部205bは、センサ設定記憶部202の設定情報を参照しなくてもよい。
センサデータ受信部205bは、受信した各無線加速度センサ101のセンサ信号に含まれるセンサ座標系Σsの各軸の加速度を、センサデータとして適正センサ判定部209に出力する。なお、センサデータ受信部205bは、各無線加速度センサ101のセンサデータを適正センサ判定部209に出力するとき、ローパスフィルタ(図示しない)によりノイズを除去して出力するようにしてもよい。
【0058】
適正センサ判定部209は、センサデータ受信部205bからロボット10(1)~10(n)それぞれの無線加速度センサ101のセンサデータの値と、センサ値推定部204により推定されたセンサ値と、をセンサ座標系Σsの軸毎に比較する。適正センサ判定部209は、ロボット10(1)~10(n)それぞれの無線加速度センサ101のセンサデータの値と推定されたセンサ値との軸毎の差のうち、最大の差が予め設定された閾値(例えば「2m/s」等)を超えるセンサデータの無線加速度センサ101について、制御対象のロボット10(1)以外のロボット10に配置された適正でないセンサと判定する。
一方、適正センサ判定部209は、最大の差が予め設定された閾値(例えば「2m/s」等)以内のセンサデータの無線加速度センサ101について、制御対象のロボット10(1)に配置された適正なセンサと判定する。適正センサ判定部209は、判定結果を教示操作盤25のユーザ通知部251に出力する。この場合、ユーザ入力部252は、ユーザ通知部251の表示に基づきユーザによる入力操作に応じて、適正な無線加速度センサ101が有する通信アドレスを設定情報として設定し、センサ設定記憶部202に記憶するようにしてもよい。
図11は、センサデータの値と推定されたセンサ値との比較の一例を示す図である。なお、図11では、例えば、ロボット動作時におけるロボット10(1)~10(3)それぞれに配置された無線加速度センサ101により検出されたセンサ座標系ΣsのX軸方向のセンサデータの値と推定されたセンサ値とを示す。
なお、適正センサ判定部209は、センサ座標系Σsの軸毎にセンサデータの値と推定されたセンサ値との差を算出し、算出した差と予め設定された閾値とを比較したが、これに限定されない。例えば、適正センサ判定部209は、センサ座標系Σsの各軸のセンサデータの値であるベクトルの大きさと、センサ座標系Σsの各軸で推定されたセンサ値であるベクトルの大きさと、の差を算出し、算出した差と閾値とを比較してもよい。
あるいは、センサ座標系Σsの各軸の加速度を変数とする所定の関数を用いて、適正センサ判定部209は、センサ座標系Σsの各軸のセンサデータの値を所定の関数に入力することで算出される値と、センサ座標系Σsの各軸で推定されたセンサ値を所定の関数に入力することで算出される値と、の差を算出し、算出した差と閾値とを比較してもよい。
【0059】
<制御装置20Bの適正センサ判定処理>
次に、図12を参照しながら、制御装置20Bの適正センサ判定処理の流れを説明する。なお、以下では、制御装置20B(1)の適正センサ判定処理について説明するが、制御装置20B(2)~20B(n)についても制御装置20B(1)の場合と同様であり、説明は省略する。
図12は、制御装置20Bの適正センサ判定処理について説明するフローチャートである。ここで示すフローは、ユーザにより無線加速度センサ101のセンサ座標系Σsの設定が行われる度に実行される。
【0060】
ステップS11において、ユーザ入力部252は、ユーザによる入力操作に応じて、メカニカルインタフェース座標系Σmの原点から無線加速度センサ101のセンサ座標系Σsの原点へのベクトル(x,y,z)、及びメカニカルインタフェース座標系Σmの各軸回りの回転によってセンサ座標系Σsの方向を定義する回転角(w,p,r)を、座標系情報として設定し、センサ座標記憶部201に記憶する。
【0061】
ステップS12において、ロボット10(1)~10(n)それぞれの無線加速度センサ101は、学習制御の開始時に、センサ座標系Σsの各軸の加速度の計測を開始し、センサデータ受信部205bは、無線受信機30を介して制御対象のロボット10(1)を含むロボット10それぞれの無線加速度センサ101により計測されたセンサ座標系Σsの各軸の加速度を含むセンサ信号それぞれを受信し、受信したセンサ信号それぞれにおけるセンサ座標系Σsの各軸の加速度をセンサデータとして取得する。
【0062】
ステップS13において、センサ値推定部204は、第1の実施形態におけるステップS3と同様に、各軸角度検出部203により検出された制御対象のロボット10(1)が動作する前(ロボット10(1)の静止時)における関節軸11(1)~11(6)それぞれの角度の順変換から求まるロボット10(1)の姿勢、及びセンサ座標系Σsの座標変換により無線加速度センサ101が取り付けられた位置における、センサ座標系Σsの各軸のセンサ値を推定する。
なお、ステップS13では、動作プログラムの実行の有無にかかわらず、センサ値推定部204は、ロボット10(1)が動作する前(ロボット10(1)の静止時)におけるセンサ値(重力加速度)を推定することが好ましい。
【0063】
ステップS14において、適正センサ判定部209は、ステップS12で取得された各ロボット10の無線加速度センサ101のセンサデータの値とステップS13で推定されたセンサ値との差がセンサ座標系Σsの全ての軸において閾値以下となる適正な無線加速度センサ101があるか否かを判定する。適正な無線加速度センサ101がある場合、処理はステップS16に移る。一方、適正な無線加速度センサ101がない場合、処理はステップS15に移る。
【0064】
ステップS15において、適正センサ判定部209は、適正な無線加速度センサ101がない旨の判定結果をユーザ通知部251に出力し、ユーザ通知部251は、アラートを教示操作盤25の表示部(図示しない)に表示する。そして、処理は、ステップS11に戻る。
【0065】
ステップS16において、センサ値推定部204は、各軸角度検出部203により検出されたロボット10(1)の動作時の関節軸11(1)~11(6)それぞれの角度の順変換から求まるロボット10(1)の位置及び姿勢、及びセンサ座標系Σsの座標変換により無線加速度センサ101が取り付けられた位置におけるセンサ座標系Σsの各軸のセンサ値を推定する。
なお、ロボット10(1)の動作とは、実際の作業における動作でもよく、ロボット座標系ΣrのX軸やY軸に対する並進動作等の予め設定された所定の動作でもよい。
【0066】
ステップS17において、適正センサ判定部209は、センサデータ受信部205bにより取得された制御対象のロボット10(1)を含むロボット10それぞれの無線加速度センサ101のセンサデータの値とステップS16で推定されたセンサ値との差がセンサ座標系Σsの全ての軸において閾値以下となる適正な無線加速度センサ101があるか否かを判定する。適正な無線加速度センサ101がある場合、処理はステップS18に移る。一方、適正な無線加速度センサ101がない場合、処理はステップS15に移る。
【0067】
ステップS18において、ユーザ入力部252は、ユーザによる入力操作に応じて、適正な無線加速度センサ101が有する通信アドレスを設定情報として設定してセンサ設定記憶部202に記憶し、適正な無線加速度センサ101とペアリングする。そして、制御装置20B(1)は、学習制御に基づく動作プログラムによるロボット10の制御を続ける。
【0068】
以上のように、第3実施形態に係る制御装置20Bは、各ロボット10に配置された無線加速度センサ101のセンサデータの値と推定されたセンサ値との差がセンサ座標系Σsの全ての軸において閾値以下となる適正な無線加速度センサ101、すなわち制御対象のロボット10に配置された無線加速度センサ101とペアリングすることにより、無線加速度センサ101の接続間違いの状態でロボットが稼働することを未然に防ぐことができ、接続の設定を任意に切り替えることができる。
また、制御装置20Bは、ロボット10を動作させる前とロボット10の動作中とに、各ロボット10に配置された無線加速度センサ101のセンサデータの値と推定されたセンサ値との比較から適正な無線加速度センサ101の有無を判定し、適正な無線加速度センサ101がない場合、アラートをユーザに通知する。これにより、制御装置20Bは、適正でない無線加速度センサ101が設定されたままロボット10の制御を続行することを防止するための余計な工数を削減でき、無線加速度センサ101の設定間違いによるロボット10の予期しない制御(例えば、振動が発散する動作等)を防止できる。
以上、第3実施形態について説明した。
【0069】
<第4実施形態>
次に、第4実施形態について説明する。なお、第4実施形態に係る制御装置20Bは、第1実施形態と以下の点で相違する。
(1)第4実施形態に係る制御装置20Bは、制御対象のロボット10を含む複数のロボット10それぞれに配置された無線加速度センサ101により検出されたセンサデータを受信する点
(2)第4実施形態に係る制御装置20Bは、各ロボット10の無線加速度センサ101のセンサデータから算出された物理量と、制御対象のロボット10の各軸の角度の順変換、及びセンサ座標系の座標変換により推定された物理量と、を比較し、推定された物理量との差が予め設定された閾値を超えるセンサを、制御対象のロボット10以外のロボット10に配置されたセンサと判定する点
これにより、第4実施形態に係る制御装置20Bは、センサの接続間違いの状態でロボットが稼働することを未然に防ぐことができる。
以下、第4実施形態について説明する。
【0070】
第4実施形態に係るロボットシステムは、図9のロボットシステム1Bと同様であり、ロボットシステム1Bの要素と同様の機能を有する要素については、同じ符号を付し、詳細な説明は省略する。
【0071】
ロボット10、無線加速度センサ101、及び無線受信機30は、第3実施形態のロボット10、無線加速度センサ101、及び無線受信機30と同様の構成を有する。
【0072】
<制御装置20B>
図13は、制御装置20B(1)の機能的構成例を示す機能ブロック図である。なお、図13では、制御装置20B(1)の機能的構成例を示すが、制御装置20B(2)~20B(n)についても制御装置20B(1)と同様である。
図13に示すように、制御装置20B(1)は、教示操作盤25が接続され、センサ座標記憶部201、センサ設定記憶部202、各軸角度検出部203、センサデータ受信部205b、センサ物理量推定部207、センサ物理量演算部208b、及び適正センサ判定部209bを含んで構成される。また、教示操作盤25は、ユーザ通知部251、及びユーザ入力部252を含む。
センサ座標記憶部201、センサ設定記憶部202、及び各軸角度検出部203は、第1実施形態のセンサ座標記憶部201、センサ設定記憶部202、及び各軸角度検出部203と同等の機能を有する。
また、センサ物理量推定部207は、第2実施形態のセンサ物理量推定部207と同等の機能を有する。
また、センサデータ受信部205bは、第3実施形態のセンサデータ受信部205bと同等の機能を有する。
また、ユーザ通知部251、及びユーザ入力部252は、第1実施形態のユーザ通知部251、及びユーザ入力部252と同等の機能を有する。
【0073】
センサ物理量演算部208bは、制御対象のロボット10(1)を含む各ロボット10に配置された無線加速度センサ101が検出した加速度のセンサデータから物理量を算出する。
具体的には、センサ物理量演算部208bは、センサデータ受信部205bから受信した無線加速度センサ101毎のセンサデータの加速度の時系列データを時間で2階積分することで、ロボット座標系Σrにおける無線加速度センサ101の移動ベクトルを、物理量として算出する。
【0074】
適正センサ判定部209bは、センサ物理量演算部208bにより算出された物理量である無線加速度センサ101毎の移動ベクトルと、センサ物理量推定部207により推定された物理量である移動ベクトルと、を比較する。適正センサ判定部209bは、無線加速度センサ101毎に算出された移動ベクトルと推定された移動ベクトルとの差のXYZ成分うち、最大の差の成分が予め設定された閾値(例えば「1mm」等)を超える移動ベクトルが算出されたセンサデータの無線加速度センサ101について制御対象のロボット10(1)以外のロボット10に配置された適正でないセンサと判定する。
一方、適正センサ判定部209bは、最大の差の成分が予め設定された閾値(例えば「1mm」等)以内のセンサデータの無線加速度センサ101について、制御対象のロボット10(1)に配置された適正なセンサと判定する。適正センサ判定部209bは、判定結果を教示操作盤25のユーザ通知部251に出力する。この場合、ユーザ入力部252は、ユーザ通知部251の表示に基づきユーザによる入力操作に応じて、適正な無線加速度センサ101が有する通信アドレスを設定情報として設定し、センサ設定記憶部202に記憶するようにしてもよい。
【0075】
<制御装置20Bの適正センサ判定処理>
次に、図14を参照しながら、制御装置20Bの適正センサ判定処理の流れを説明する。なお、以下では、制御装置20B(1)の適正センサ判定処理について説明するが、制御装置20B(2)~20B(n)についても制御装置20B(1)の場合と同様であり、説明は省略する。
図14は、制御装置20Bの適正センサ判定処理について説明するフローチャートである。ここで示すフローは、ユーザにより無線加速度センサ101のセンサ座標系Σsの設定が行われる度に実行される。
なお、図14に示す適正センサ判定処理において、ステップS11、ステップS12、ステップS15、ステップS18の処理は、図12の第3実施形態のステップS11、ステップS12、ステップS15、ステップS18の処理と同様であり、説明は省略する。
【0076】
ステップS13aにおいて、センサ物理量推定部207は、各軸角度検出部203により検出されたロボット10(1)が動作する前(ロボット10(1)の静止時)における関節軸11(1)~11(6)それぞれの角度の順変換から求まるロボット10(1)の姿勢、及びセンサ座標系Σsの座標変換により無線加速度センサ101が取り付けられた位置の移動ベクトルを、物理量として推定する。
【0077】
ステップS14aにおいて、適正センサ判定部209bは、ステップS12で取得された制御対象のロボット10(1)を含むロボット10それぞれの無線加速度センサ101のセンサデータを用いてセンサ物理量演算部208bにより算出された無線加速度センサ101毎の位置の移動ベクトルの物理量と、ステップS13aで推定された物理量と、の差のうち、差の全ての成分が閾値以下となる適正な無線加速度センサ101があるか否かを判定する。適正な無線加速度センサ101がある場合、処理はステップS16aに移る。一方、適正な無線加速度センサ101がない場合、処理はステップS15に移る。
【0078】
ステップS16aにおいて、センサ物理量推定部207は、各軸角度検出部203により検出されたロボット10(1)の動作時の関節軸11(1)~11(6)それぞれの角度の順変換から求まるロボット10(1)の位置及び姿勢、及びセンサ座標系Σsの座標変換により無線加速度センサ101が取り付けられた位置の移動ベクトルを、物理量として推定する。
【0079】
ステップS17aにおいて、適正センサ判定部209bは、センサ物理量演算部208bにより算出された無線加速度センサ101毎の移動ベクトルの物理量とステップS16aで推定された移動ベクトルの物理量との差のうち、差の全ての成分が閾値以下となる適正な無線加速度センサ101があるか否かを判定する。適正な無線加速度センサ101がある場合、処理はステップS18に移る。一方、適正な無線加速度センサ101がない場合、処理はステップS15に移る。
【0080】
以上のように、第4実施形態に係る制御装置20Bは、各ロボット10に配置された無線加速度センサ101のセンサデータを用いて算出された物理量と推定された物理量との差が全ての成分において閾値以下となる適正な無線加速度センサ101、すなわち制御対象のロボット10に配置された無線加速度センサ101とペアリングすることにより、無線加速度センサ101の接続間違いの状態でロボット10が稼働することを未然に防ぐことができ、接続の設定を任意に切り替えることができる。
また、制御装置20Bは、ロボット10を動作させる前とロボット10の動作中とに、各ロボット10に配置された無線加速度センサ101のセンサデータを用いて算出された物理量と推定された物理量との比較から適正な無線加速度センサ101の有無を判定し、適正な無線加速度センサ101がない場合、アラートをユーザに通知する。これにより、制御装置20Bは、適正でない無線加速度センサ101が設定されたままロボット10の制御を続行することを防止するための余計な工数を削減でき、無線加速度センサ101の設定間違いによるロボット10の予期しない制御(例えば、振動が発散する動作等)を防止できる。
以上、第4実施形態について説明した。
【0081】
以上、第1実施形態から第4実施形態について説明したが、制御装置20(20A、20B)は、上述の実施形態に限定されるものではなく、目的を達成できる範囲での変形、改良等を含む。
【0082】
<変形例1>
上述の第1実施形態から第4実施形態では、センサは、無線加速度センサ101としたが、これに限定されない。例えば、センサとして、ジャイロセンサがロボット10に配置されてもよい。この場合、ジャイロセンサが検出するセンサ値は角速度である。一方、制御装置20は、検出された関節軸11(1)~11(6)それぞれの角度を用いて順変換することにより、ロボット座標系Σrにおける、メカニカルインタフェース座標系Σmの位置及び姿勢を算出し、その時のロボット10の姿勢変化から角速度のセンサ値を推定してもよく、ロボット10の姿勢変化からジャイロセンサの位置の移動距離及び方向(移動ベクトル)の物理量を推定してもよい。
【0083】
また、センサとして、慣性センサがロボット10に配置されてもよい。そして、慣性センサの場合、制御装置20は、無線加速度センサ101や上述のジャイロセンサの場合と同様に動作することができる。
また、センサとして、力センサがロボット10に配置されてもよい。この場合、制御装置20は、移動ベクトルとは別の物理量である、例えばロボット内部データから力センサが検出する力の大きさ及び方向の力ベクトルを物理量としてシミュレーションで推定するようにしてもよい。
【0084】
また、センサとして、レーザトラッカがロボット10に配置されてもよい。この場合、レーザトラッカは直接動作軌跡を計測できることから、制御装置20は、ロボット内部データの各軸角度を使用した順変換、及びセンサ座標系Σsの座標変換により動作軌跡(位置)を推定するようにしてもよい。
なお、レーザトラッカの代わりに、モーションキャプチャセンサがロボット10に配置されてもよい。この場合、制御装置20は、レーザトラッカの場合と同様に動作することができる。
【0085】
また、センサとして、ビジョンセンサがロボット10に配置されてもよい。例えば、ロボット10に取り付けられたツールが平面上を移動する動作の場合、当該ツールに取り付けられたビジョンセンサが連続的に平面を撮像することで、制御装置20は、撮像された画像の差から移動距離の物理量を算出することができる。また、制御装置20は、ロボット内部データから移動距離を推定することができる。
また、無線加速度センサ101や上述のジャイロセンサ等の2以上のセンサの組み合わせが、ロボット10に配置されてもよく、無線加速度センサ101やジャイロセンサ等の1以上のセンサを含むスマートフォン等のスマートデバイスがセンサとして、ロボット10に配置されてもよい。
【0086】
<変形例2>
また例えば、第1実施形態及び第2実施形態では、ロボットシステム1、1Aでは、ロボット10それぞれに配置された無線加速度センサ101と、制御装置20、20Aと、は、無線受信機30を介して通信を行ったが、これに限定されない。例えば、図15に示すように、ロボットシステム1は、ロボット10それぞれに配置されペアリングされた無線加速度センサ101からのセンサ信号のみを受信する無線受信機31(1)~31(n)を用いて、無線加速度センサ101と、制御装置20、20Aと、が通信を行ってもよい。
図15は、ロボットシステムの機能的構成例を示す機能ブロック図である。なお、図1のロボットシステム1の要素と同様の機能を有する要素については、同じ符号を付し、詳細な説明は省略する。
【0087】
図15に示すように、ロボット10(i)に配置された無線加速度センサ101は、ペアリングされた無線受信機31(i)と一対を成す(iは1からn)。すなわち、ロボット10(i)に配置されていた無線加速度センサ101が他のロボット10(j)に配置される場合、制御装置20(j)は、無線受信機31(i)との接続に切り替える必要がある(j≠iかつj=1~n)。
換言すれば、無線加速度センサ101と無線受信機31のペアリングが個体毎に行われているため、ユーザによる無線加速度センサ101に対する設定、すなわちセンサ設定記憶部202が不要となり、制御装置20、20Aは、無線受信機31との繋ぎ変えをするだけで、ロボット10と無線加速度センサ101とのペアを容易に切り替えることができる。
【0088】
なお、第1実施形態から第4実施形態における、制御装置20、20A、20Bに含まれる各機能は、ハードウェア、ソフトウェア又はこれらの組み合わせによりそれぞれ実現することができる。ここで、ソフトウェアによって実現されるとは、コンピュータがプログラムを読み込んで実行することにより実現されることを意味する。
【0089】
プログラムは、様々なタイプの非一時的なコンピュータ可読媒体(Non-transitory computer readable medium)を用いて格納され、コンピュータに供給することができる。非一時的なコンピュータ可読媒体は、様々なタイプの実体のある記録媒体(Tangible storage medium)を含む。非一時的なコンピュータ可読媒体の例は、磁気記録媒体(例えば、フレキシブルディスク、磁気テープ、ハードディスクドライブ)、光磁気記録媒体(例えば、光磁気ディスク)、CD-ROM(Read Only Memory)、CD-R、CD-R/W、半導体メモリ(例えば、マスクROM、PROM(Programmable ROM)、EPROM(Erasable PROM)、フラッシュROM、RAM)を含む。また、プログラムは、様々なタイプの一時的なコンピュータ可読媒体(Transitory computer readable medium)によってコンピュータに供給されてもよい。一時的なコンピュータ可読媒体の例は、電気信号、光信号、及び電磁波を含む。一時的なコンピュータ可読媒体は、電線及び光ファイバ等の有線通信路、又は、無線通信路を介して、プログラムをコンピュータに供給できる。
【0090】
なお、記録媒体に記録されるプログラムを記述するステップは、その順序に沿って時系列的に行われる処理はもちろん、必ずしも時系列的に処理されなくとも、並列的あるいは個別に実行される処理をも含むものである。
【0091】
以上を換言すると、本開示の制御装置は、次のような構成を有する各種各様の実施形態を取ることができる。
【0092】
(1)本開示の制御装置20は、無線加速度センサ101が配置されたロボット10を制御する制御装置であって、予め設定された無線加速度センサ101のセンサ座標系Σsに関する座標系情報を記憶するセンサ座標記憶部201と、無線加速度センサ101との間の通信に関する設定情報を記憶するセンサ設定記憶部202と、設定情報に基づいて無線加速度センサ101により検出されたセンサデータを受信するセンサデータ受信部205と、ロボット10に含まれる複数の関節軸11(1)~11(6)それぞれの角度を検出する各軸角度検出部203と、各軸角度検出部203により検出された複数の関節軸11(1)~11(6)それぞれの角度の順変換、及びセンサ座標系Σsの座標変換により無線加速度センサ101が検出するセンサ値を推定するセンサ値推定部204と、センサデータの値と、センサ値推定部204により推定されたセンサ値と、を比較し、センサデータの値と推定されたセンサ値と差が予め設定された閾値を超える場合、センサデータ受信部205が他のロボット10に配置された無線加速度センサ101からのセンサデータを受信していると判定するセンサ値異常判定部206と、を備える。
この制御装置20によれば、無線加速度センサ101の接続間違いの状態でロボット10が稼働することを未然に防ぐことができる。
【0093】
(2)本開示の制御装置20Aは、無線加速度センサ101が配置されたロボット10を制御する制御装置であって、予め設定された無線加速度センサ101のセンサ座標系Σsに関する座標系情報を記憶するセンサ座標記憶部201と、無線加速度センサ101との間の通信に関する設定情報を記憶するセンサ設定記憶部202と、設定情報に基づいて無線加速度センサ101により検出されたセンサデータを受信するセンサデータ受信部205と、センサデータから物理量を算出するセンサ物理量演算部208と、ロボットに含まれる関節軸11(1)~11(6)それぞれの角度を検出する各軸角度検出部203と、各軸角度検出部203により検出された関節軸11(1)~11(6)それぞれの角度の順変換、及びセンサ座標系Σsの座標変換により無線加速度センサ101に関する物理量を推定するセンサ物理量推定部207と、センサデータから算出された物理量と、センサ物理量推定部207により推定された物理量と、を比較し、算出された物理量と推定された物理量と差が予め設定された閾値を超える場合、センサデータ受信部205が他のロボットに配置されたセンサからのセンサデータを受信していると判定するセンサ値異常判定部206aと、を備える。
この制御装置20Aによれば、(1)と同様の効果を奏することができる。
【0094】
(3) (1)又は(2)に記載の制御装置20、20Aにおいて、センサ値異常判定部206、206aによりセンサデータ受信部205が他のロボット10に配置された無線加速度センサ101からのセンサデータを受信していると判定された場合、アラートを出力するユーザ通知部251を備えてもよい。
そうすることで、制御装置20、20Aは、無線加速度センサ101の接続間違いをユーザに通知することができる。
【0095】
(4) (3)に記載の制御装置20、20Aにおいて、ユーザ通知部251は、アラートとともに、センサ設定記憶部202に設定されている設定情報、及びセンサデータ受信部205により受信されたセンサデータの値を出力してもよい。
そうすることで、ユーザは、センサ設定記憶部202に記憶されている設定情報が間違っているか否か、無線加速度センサ101が故障しているか否か等を確認することができる。
【0096】
(5) (1)から(4)のいずれかに記載の制御装置20、20Aにおいて、計測する物理量が互いに異なる2以上のセンサが前記ロボットに配置されてもよい。
そうすることで、制御装置20、20Aは、より精度よくセンサデータの異常を検出することができる。
【0097】
(6) (1)から(4)のいずれかに記載の制御装置20、20Aにおいて、1以上のセンサを含むスマートデバイスをセンサとしてロボット10に配置されてもよい。
そうすることで、制御装置20、20Aは、(5)と同様の効果を奏することができる。
【0098】
(7)本開示の制御装置20Bは、無線加速度センサ101が配置された制御対象のロボット10を制御する制御装置であって、予め設定された無線加速度センサ101のセンサ座標系Σsに関する座標系情報を記憶するセンサ座標記憶部201と、制御対象のロボット10を含む複数のロボット10それぞれに配置された無線加速度センサ101により検出されたセンサデータを受信するセンサデータ受信部205bと、制御対象のロボット10に含まれる関節軸11(1)~11(6)それぞれの角度を検出する各軸角度検出部203と、各軸角度検出部203により検出された関節軸11(1)~11(6)それぞれの角度の順変換、及びセンサ座標系Σsの座標変換により制御対象のロボット10の無線加速度センサ101が検出するセンサ値を推定するセンサ値推定部204と、複数のロボット10それぞれに配置された無線加速度センサ101のセンサデータの値と、センサ値推定部204により推定されたセンサ値と、を比較し、推定されたセンサ値と差が予め設定された閾値を超えるセンサデータの無線加速度センサ101を、制御対象のロボット10以外のロボット10に配置されたセンサと判定する適正センサ判定部209と、を備える。
この制御装置20Bによれば、(1)と同様の効果を奏することができる。
【0099】
(8)本開示の制御装置20Bは、無線加速度センサ101が配置された制御対象のロボット10を制御する制御装置であって、予め設定された無線加速度センサ101のセンサ座標系Σsに関する座標系情報を記憶するセンサ座標記憶部201と、制御対象のロボット10を含む複数のロボット10それぞれに配置された無線加速度センサ101により検出されたセンサデータを受信するセンサデータ受信部205bと、複数のロボット10それぞれに配置された無線加速度センサ101のセンサデータから物理量を算出するセンサ物理量演算部208bと、制御対象のロボット10に含まれる関節軸11(1)~11(6)それぞれの角度を検出する各軸角度検出部203と、各軸角度検出部203により検出された関節軸11(1)~11(6)それぞれの角度の順変換、及びセンサ座標系Σsの座標変換により制御対象のロボット10の無線加速度センサ101に関する物理量を推定するセンサ物理量推定部207と、複数のロボット10それぞれに配置された無線加速度センサ101のセンサデータから算出された物理量と、センサ物理量推定部207により推定された物理量と、を比較し、推定された物理量と差が予め設定された閾値を超えるセンサデータの無線加速度センサ101を、制御対象のロボット10以外のロボット10に配置されたセンサと判定する適正センサ判定部209bと、を備える。
この制御装置20Bによれば、(1)と同様の効果を奏することができる。
【符号の説明】
【0100】
1、1A、1B ロボットシステム
10(1)~10(n) ロボット
20、20A、20B 制御装置
201 センサ座標記憶部
202 センサ設定記憶部
203 各軸角度検出部
204 センサ値推定部
205、205b センサデータ受信部
206、206a センサ値異常判定部
207 センサ物理量推定部
208、208b センサ物理量演算部
209、209b 適正センサ判定部
30、31(1)~31(n) 無線受信機
101 無線加速度センサ
図1
図2A
図2B
図3
図4A
図4B
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15