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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-03-18
(45)【発行日】2025-03-27
(54)【発明の名称】ラックバー及びステアリング装置
(51)【国際特許分類】
   B62D 3/12 20060101AFI20250319BHJP
   B21J 5/12 20060101ALI20250319BHJP
   F16H 19/04 20060101ALI20250319BHJP
   B21K 1/76 20060101ALI20250319BHJP
【FI】
B62D3/12 503Z
B21J5/12 Z
F16H19/04 Z
B21K1/76 A
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2023546802
(86)(22)【出願日】2022-07-07
(86)【国際出願番号】 JP2022026909
(87)【国際公開番号】W WO2023037743
(87)【国際公開日】2023-03-16
【審査請求日】2024-02-01
(31)【優先権主張番号】P 2021148485
(32)【優先日】2021-09-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】509186579
【氏名又は名称】日立Astemo株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100086232
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 博通
(74)【代理人】
【識別番号】100092613
【弁理士】
【氏名又は名称】富岡 潔
(74)【代理人】
【識別番号】100205682
【弁理士】
【氏名又は名称】高嶋 一彰
(72)【発明者】
【氏名】山中 伸一
(72)【発明者】
【氏名】濱中 大輔
(72)【発明者】
【氏名】木村 紀博
(72)【発明者】
【氏名】北村 圭祐
【審査官】神田 泰貴
(56)【参考文献】
【文献】特開平03-138042(JP,A)
【文献】特開昭57-073268(JP,A)
【文献】特開2017-044228(JP,A)
【文献】特開2014-005839(JP,A)
【文献】国際公開第2015/111595(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2013/0192330(US,A1)
【文献】特開2018-047473(JP,A)
【文献】特開2016-179475(JP,A)
【文献】国際公開第2016/031323(WO,A1)
【文献】特開昭59-104237(JP,A)
【文献】特開2017-056479(JP,A)
【文献】特開2019-218967(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62D 3/12
B21J 5/12
F16H 19/04
B21K 1/76
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
型鍛造により成型され、ステアリングホイールに連係して回転するピニオン軸の回転運動を軸方向運動に変換することにより操舵操作を転舵輪に伝達するラックバーであって、
金属材料によって棒状に形成されたラック本体と、
前記型鍛造に供する鍛造型を介して前記金属材料を塑性流動させることにより前記ラック本体に形成されたラック歯成型部と、
を備え、
前記ラック歯成型部は、歯底と、突出歯と、歯面と、を有し、
前記歯底は、前記ラック本体の外周から径方向内側に向かって凹形状に形成される複数の歯底を含み、
前記複数の歯底は、それぞれ前記ラック本体の軸線に対して交差する方向に延びる歯幅を有し、かつ平行に並んで形成されていて、前記複数の歯底のうち前記ラック本体の軸方向の中央側に形成された一般歯底と、前記複数の歯底のうち前記軸方向の最端側に形成され、前記型鍛造の際に前記鍛造型に作用する応力が前記一般歯底よりも小さいものとなる最端側歯底と、を有し、
前記突出歯は、前記軸方向において隣り合う前記複数の歯底の間に形成されていて、前記ラック本体の径方向外側に向かって先細り状に突出して形成され、
前記歯面は、前記軸方向における前記複数の歯底の両側に形成されていて、前記ラック本体の前記軸方向の最端側の歯面は、前記ピニオン軸と当接せず、
前記最端側歯底の深さは、前記ラック本体の軸線に対して交差する方向に可変して形成されている
ことを特徴とするラックバー。
【請求項2】
請求項1に記載のラックバーであって、
前記最端側歯底の深さは、前記一般歯底の深さよりも浅く形成される
ことを特徴とするラックバー。
【請求項3】
請求項2に記載のラックバーであって、
前記一般歯底の深さよりも浅い前記最端側歯底は、前記ラック歯成型部の前記軸方向の両端側に1つずつ有する
ことを特徴とするラックバー。
【請求項4】
請求項1に記載のラックバーであって、
前記最端側歯底には、グリスが保持されている
ことを特徴とするラックバー。
【請求項5】
請求項1に記載のラックバーであって、
前記軸方向において、前記最端側歯底の長さは、前記一般歯底の長さよりも大きく形成されている
ことを特徴とするラックバー。
【請求項6】
請求項1に記載のラックバーであって、
前記最端側歯底と当該最端側歯底の軸方向一方側に接続する前記歯面との間、及び、前記最端側歯底と当該最端側歯底の軸方向他方側に接続する前記歯面との間に、アール部又は面取り部が形成されている
ことを特徴とするラックバー。
【請求項7】
請求項1に記載のラックバーであって、
前記最端側歯底と当該最端側歯底の軸方向一方側に接続する前記歯面との角度、及び、前記最端側歯底と当該最端側歯底の軸方向他方側に接続する前記歯面との角度は、前記一般歯底と当該一般歯底に接続する前記歯面との角度よりも大きく形成されている
ことを特徴とするラックバー。
【請求項8】
ステアリングホイールに連係して回転するピニオン軸と、
型鍛造により成型され、前記ピニオン軸の回転運動を軸方向運動に変換することにより操舵操作を転舵輪に伝達するラックバーと、
を備えたステアリング装置であって、
前記ラックバーは、
金属材料によって棒状に形成されたラック本体と、
前記型鍛造に供する鍛造型を介して前記金属材料を塑性流動させることにより前記ラック本体に形成されたラック歯成型部と、
を備え、
前記ラック歯成型部は、歯底と、突出歯と、歯面と、を有し、
前記歯底は、前記ラック本体の外周から径方向内側に向かって凹形状に形成される複数の歯底を含み、
前記複数の歯底は、それぞれ前記ラック本体の軸線に対して交差する方向に延びる歯幅を有し、かつ平行に並んで形成されていて、前記複数の歯底のうち前記ラック本体の軸方向の中央側に形成された一般歯底と、前記複数の歯底のうち前記軸方向の最端側に形成され、前記型鍛造の際に前記鍛造型に作用する応力が前記一般歯底よりも小さいものとなる最端側歯底と、を有し、
前記突出歯は、前記軸方向において隣り合う前記複数の歯底の間に形成されていて、前記ラック本体の径方向外側に向かって先細り状に突出して形成され、
前記歯面は、前記軸方向における前記複数の歯底の両側に形成されていて、前記ラック本体の前記軸方向の最端側の歯面は、前記ピニオン軸と当接せず、
前記最端側歯底の深さは、前記ラック本体の軸線に対して交差する方向に可変して形成されている
ことを特徴とするステアリング装置。
【請求項9】
請求項に記載のステアリング装置であって、
前記最端側歯底の深さは、前記一般歯底の深さよりも浅く形成される
ことを特徴とするステアリング装置。
【請求項10】
請求項に記載のステアリング装置であって、
前記一般歯底の深さよりも浅い前記最端側歯底は、前記ラック歯成型部の前記軸方向の両端側に1つずつ有する
ことを特徴とするステアリング装置。
【請求項11】
請求項に記載のステアリング装置であって、
前記最端側歯底には、グリスが保持されている
ことを特徴とするステアリング装置。
【請求項12】
請求項に記載のステアリング装置であって、
前記軸方向において、前記最端側歯底の長さは、前記一般歯底の長さよりも大きく形成されている
ことを特徴とするステアリング装置。
【請求項13】
請求項に記載のステアリング装置であって、
前記最端側歯底と当該最端側歯底の軸方向一方側に接続する前記歯面との間、及び、前記最端側歯底と当該最端側歯底の軸方向他方側に接続する前記歯面との間に、アール部又は面取り部が形成されている
ことを特徴とするステアリング装置。
【請求項14】
請求項に記載のステアリング装置であって、
前記最端側歯底と当該最端側歯底の軸方向一方側に接続する前記歯面との角度、及び、前記最端側歯底と当該最端側歯底の軸方向他方側に接続する前記歯面との角度は、前記一般歯底と当該一般歯底に接続する前記歯面との角度よりも大きく形成されている
ことを特徴とするステアリング装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ラックバー及びステアリング装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のラックバーとしては、例えば、以下の特許文献1に記載されたものが知られている。
【0003】
特許文献1に記載されたラックバーは、中実の丸棒状の素材を上型と下型とによって挟み込み、当該素材の材料を塑性流動させることによって行う、いわゆる型鍛造により成形され、ラック本体の所定の軸方向範囲に、ラック歯成型部を有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2020-192681号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、素材の材料を塑性流動させることにより行う前記型鍛造では、前記塑性流動の終端となる、前記ラック歯成型部の最端側の歯底を形成する際、当該ラック歯成型部を形成する前記上型に、例えばひび割れなど、いわゆるヒートチェックを招来するおそれがある。しかしながら、前記従来のラックバーでは、前記ヒートチェックについて、何ら考慮されていない。
【0006】
本発明は、かかる技術的課題に鑑みて案出されたものであり、ラックバーの型鍛造時に鍛造型に発生するヒートチェックを抑制することができるラックバー及びステアリング装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、その一態様として、複数の歯底の最端側に、型鍛造の際に鍛造型に作用する応力を小さくする最端側歯底が形成されている。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、ラックバーの型鍛造時に鍛造型に発生するヒートチェックを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明に係るステアリング装置の概略図である。
図2図1に示すラックバーの斜視図である。
図3図2に示すラックバーのA-A線断面の要部拡大図である。
図4図2に示すラックバーとピニオン軸との噛み合い状態を現した矢視図である。
図5】本発明に係るラックバーの製造方法(製造工程)を示し、(a)は鍛造型に素材をセットした状態、(b)は鍛造工程、(c)は鍛造品を離型した状態、(d)はバリ除去工程を表した図5相当図である。
図6】ラックバーの型鍛造時に上型に作用する応力の解析結果を示す図であって、(a)は本発明に係るラックバーの要部断面図、(b)は従来のラックバーの要部断面図である。
図7】本発明に係るラックバーの第2実施形態を表した図3相当図である。
図8】本発明に係るラックバーの第3実施形態を表した図3相当図である。
図9】本発明に係るラックバーの第4実施形態を表した図3相当図である。
図10】本発明に係るラックバーの第5実施形態を表した図3相当図である。
図11】本発明に係るラックバーの第6実施形態を示し、図3に示すラックバーのB-B線断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明に係るラックバー及びステアリング装置の各実施形態を図面に基づいて詳述する。なお、下記の各実施形態では、当該ラックバーを、従来と同様、自動車のステアリング装置に適用したものを示している。
【0011】
[第1実施形態]
(ステアリング装置の構成)
図1は、本発明に係るラックバーを備えたステアリング装置の一実施形態であって、本発明に係るステアリング装置の概略図を示している。
【0012】
図1に示すステアリング装置は、ステアリングホイールSWに連係して回転可能に設けられた操舵軸1と、周知のラック・ピニオン機構を介して操舵軸1と連係し、操舵軸1の回転運動を軸方向運動に変換することにより操舵操作を転舵輪WL,WRに伝達するラックバー2と、を備える。
【0013】
操舵軸1は、一端がステアリングホイールSWと一体回転可能に接続された入力軸11と、一端がトーションバー(図示外)を介して入力軸11の他端に相対回転可能に接続され、他端がラックバー2に噛み合い接続された出力軸としてのピニオン軸12と、を含む。入力軸11は、軸継手等を介して、ステアリングホイールSWに、機械的に直接接続される。ピニオン軸12は、ラックバー2に接続される他端側の外周に、ラックバー2に形成されたラック歯20と噛み合うピニオン歯120を有する。また、入力軸11とピニオン軸12の間には、例えば入力軸11とピニオン軸12の相対回転に伴う磁束変化を検出するなどして操舵トルクを検出するトルクセンサTSが設けられている。
【0014】
ラックバー2は、軸線Z方向に沿って直線状に延びる丸棒状を呈し、軸線Z方向においてピニオン軸12と噛み合う所定領域に、ピニオン歯120と噛み合い可能なラック歯20が形成されている。ラックバー2の一端部及び他端部は、それぞれタイロッド3及び図示外のナックルアームを介して、左右の転舵輪WR,WLに連係される。すなわち、ステアリング装置は、ラックバー2の軸方向移動に伴いそれぞれタイロッド3を介して前記図示外のナックルアームが引っ張られることにより、左右の転舵輪WR,WLの向きが変更されるようになっている。
【0015】
また、ステアリング装置は、操舵軸1に設けられたトルクセンサTSや図示外の車速センサの検出結果に基づきラックバー2に対して運転者の操舵トルクに応じた操舵アシストトルクを付与する操舵アシスト機構を有する。この操舵アシスト機構は、動力源であるモータユニット4と、モータユニット4の回転をラックバー2に伝達する伝達機構5と、を含む。モータユニット4は、電動モータ41と、この電動モータ41を駆動制御する制御装置42と、が一体に形成されている。電動モータ41は、ラックバー2の軸線Zに平行な軸線Zxを中心に回転する駆動軸410を有し、駆動軸410は、伝達機構5を介してラックバー2に接続される。制御装置42は、電動モータ41の駆動軸410の反対側に付設されていて、トルクセンサTS及び前記図示外の車速センサ等から入力される各種検出信号に基づき、電動モータ41を駆動制御する。
【0016】
伝達機構5は、入力側プーリ51と、出力側プーリ52と、図示外のボールねじ機構と、ベルト53と、を含む。入力側プーリ51は、電動モータ41の駆動軸410の外周に設けられ、軸線Zxを中心に駆動軸410と一体に回転する。出力側プーリ52は、ラックバー2の外周に相対回転可能に設けられ、ラックバー2の軸線Zを中心に回転する。前記図示外のボールねじ機構は、出力側プーリ52とラックバー2との間に設けられ、出力側プーリ52の回転を減速してラックバー2の軸方向運動に変換する。ベルト53は、入力側プーリ51と出力側プーリ52とに跨って巻き掛けられ、入力側プーリ51の回転を出力側プーリ52に伝達することにより入力側プーリ51と出力側プーリ52とを同期して回転させる。
【0017】
なお、本実施形態に係るステアリング装置では、電動モータ31の回転力をラックバー2に付与することにより操舵アシストを行う、ラックアシスト型の電動パワーステアリング装置を例示するが、本発明に係るステアリング装置は、当該態様に限定されるものではない。換言すれば、本発明に係るステアリング装置は、上記ラックアシスト型のほか、例えば電動モータ31の回転力をピニオン軸12に付与することにより操舵アシストを行うピニオンアシスト型など、他のアシスト態様からなる電動パワーステアリングであってもよい。
【0018】
また、本発明に係るステアリング装置は、電動モータ31の回転力をもって操舵アシストを行う電動パワーステアリング装置のほか、例えば油圧をもって操舵アシストを行う油圧パワーステアリング装置など、他の動力源を利用したパワーステアリング装置であってもよい。さらに、本発明に係るステアリング装置は、本実施形態で例示した、操舵軸1(入力軸11)がステアリングホイールSWに直接接続された態様のほか、例えばステア・バイ・ワイヤのように操舵軸1(入力軸11)がステアリングホイールSWと分離された態様(図示外のクラッチにより接続可能な態様を含む)であってもよい。加えて、本発明に係るステアリング装置は、運転者がステアリングホイールSWを介して操舵力を入力する手動運転用のステアリング装置のほか、運転者の操舵操作を介さずに例えば図示外の電動モータ等の動力源から操舵力が入力される自動運転用のステアリング装置であってもよい。
【0019】
(ラックバーの構成)
図2は、図1に示すラックバー2の斜視図を示している。なお、以下では、便宜上、ラックバー2の軸線Z方向に沿った方向を「軸方向」と、ラックバー2の軸線Z方向に直交する方向を「径方向」と、ラックバー2の軸線Z周りの方向を「周方向」と、それぞれ定義して説明する。
【0020】
図2に示すように、ラックバー2は、金属材料(例えばS45C、S48C、又は鉄系材料など)によって一体に形成されたものである。このラックバー2は、概ね丸棒状に形成されたラック本体21と、ラック本体21の周方向の一部の範囲に軸方向に亘って型鍛造によりラック歯20が形成されたラック歯成型部22と、を有する。
【0021】
ラック本体21は、ラックバー2の全体においてラック歯成型部22が形成されていない部分が該当する。すなわち、ラック本体21は、軸方向において、ラック歯成型部22が形成されていない領域では、横断面が概ね円形状を呈し、ラック歯成型部22が形成された領域では、横断面が概ねD字形状を呈する。
【0022】
ラック歯成型部22は、型鍛造に供する図示外の鍛造型を介して前記金属材料を塑性流動させることによってラック本体21の一部に形成され、それぞれが所定のねじれ角をもってラックバー2の軸線Zと交差する方向に延び、かつ軸方向に並列に形成された複数のラック歯20を有する。具体的には、ラック歯成型部22(複数のラック歯20)は、ラック本体21の外周から径方向内側に向かって凹形状に形成された複数の歯底221と、軸方向において隣り合う各歯底221の間に形成された複数の突出歯222と、を有する。
【0023】
複数の歯底221は、それぞれラックバー2(ラック本体21)の軸線Zに対して交差する方向に延びる歯幅Wを有し、かつ平行に並んで設けられていて、軸方向両側には、それぞれ歯面223が形成されている。複数の突出歯222は、それぞれラック本体21の径方向外側に向かって先細り状に突出して形成されている。
【0024】
図3は、図2に示すラックバー2をA-A線に沿って切断した断面図であり、ラック歯成型部22の最端部の拡大図を示している。図4は、ラック歯成型部22の軸方向の最端部におけるラック歯20とピニオン歯120との噛み合い状態を現した矢視図を示している。
【0025】
図3に示すように、複数の歯底221は、当該各歯底221のうち軸方向の最端側を除いた軸方向の中央側(中央寄り)に形成された一般歯底224と、当該各歯底221のうち軸方向の最端側に形成され、型鍛造時に図示外の鍛造型に作用する応力が一般歯底224よりも小さいものとなる最端側歯底225と、を有する。一般歯底224は、それぞれ所定の深さD1に設定され、かつ所定の幅W1を有する。最端側歯底225は、一般歯底224よりも差分Dxだけ小さい深さD2に設定されていて、一般歯底224の幅W1と同じ幅W2を有し、ラック歯成型部22の軸方向両側の最端部にそれぞれ1つずつ設けられている。なお、本実施形態は、ラック歯成型部22の軸方向両側に1つずつ最端側歯底225が設けられた態様を例示するが、当該態様に限定されるものではなく、ラック歯成型部22の軸方向両端側にそれぞれ最端側歯底225が複数設けられていてもよい。
【0026】
複数の歯面223は、それぞれ所定の圧力角θをもって傾斜しており、一般歯底224における軸方向両側に形成される一般歯面223aと、最端側歯底225における軸方向の最端側に形成される最端側歯面223bと、を含む。図4に示すように、一般歯面223aは、ピニオン軸12のピニオン歯120と噛み合う一方、最端側歯面223bは、ピニオン軸12と当接しない構成となっている。換言すれば、最端側歯底225は、基本的にピニオン歯120と噛み合わない、いわゆるダミーの歯部の形成に供するものであり、少なくとも最端側歯面223bはピニオン歯120と噛み合わない構成となっている。
【0027】
また、特に図4に示すように、ラック歯20とピニオン歯120の表面には、グリスGが塗布されていて、このグリスGによってラック歯20とピニオン歯120との噛み合いが潤滑されている。なお、このグリスGは、ラック歯20とピニオン歯120とが噛み合い、ピニオン軸12がラック歯成型部22の軸方向最端部に移動することに伴い、軸方向の中央側である一般歯底224から最端側歯底225へ移動し、当該最端側歯底225にて保持されることとなる。
【0028】
(ラックバーの製造方法)
図5は、ラックバー2の製造方法(製造工程)を示すラックバー2の横断面図であって、(a)は鍛造型に素材M1をセットした状態、(b)は鍛造工程、(c)は鍛造品M2を離型した状態、(d)はバリ除去工程を示している。
【0029】
まず、ラックバー2の製造(型鍛造)に用いる鍛造型について、図5(a)に基づいて説明する。この鍛造型は、ラック本体21(素材)の周方向一方側に配置された可動型である第1鍛造型FD1と、第1鍛造型FD1の反対側に対向して配置された固定型である第2鍛造型FD2と、を含む。第1鍛造型FD1は、ラック歯成型部22の形成に供するラック形成部61と、ラック形成部61の両側に設けられ、後述するバリBの形成に供する一対のバリ形成部62と、を有する。第2鍛造型FD2は、素材M1の外形に対応する横断面がほぼ凹半円形状の素材支持部63を有し、この素材支持部63をもって型鍛造時における素材M1の支持に供する。
【0030】
第1鍛造型FD1及び第2鍛造型FD2からなる鍛造型を用いてラックバー2を製造するには、まず、図5(a)に示すように、第1鍛造型FD1を上昇させることによって、型開きされた第2鍛造型FD2の素材支持部63に、素材M1をセットする。
【0031】
続いて、図5(b)に示すように、第1鍛造型FD1を下降させ、第1鍛造型FD1及び第2鍛造型FD2によって素材M1を挟み込むかたちで素材M1を加圧変形させることにより、ラック形成部61を転写して型鍛造を行う(鍛造工程)。すなわち、第1鍛造型FD1のラック形成部61により素材M1を加圧することで当該素材M1の上端部が押し潰されて、この押し潰された分の材料が軸方向両側のバリ形成部62内へ塑性流動する。これにより、ラック形成部61が転写されてラック歯成型部22(ラック歯20)が形成されると共に、一対のバリ形成部62によって一対のバリBが形成される。
【0032】
その後、図5(c)に示すように、第1鍛造型FD1を上昇させることにより型開きを行い、型鍛造された鍛造品M2を取り出す。そして、最後に、図5(d)に示すように、前記型鍛造により形成された一対のバリBの先端側を切除することにより、一対のバリ除去部226が形成され(バリ除去工程)、ラックバー2の製造が完了する。
【0033】
(本実施形態の作用効果)
図6は、ラックバー2の型鍛造時において第1鍛造型FD1に作用する応力の解析結果を示す図であって、(a)は本実施形態に係るラックバー2の要部断面図、(b)は従来のラックバー2´の要部断面図を示している。
【0034】
前記従来のラックバー2´に係る型鍛造によれば、図6(b)に示すように、素材M1の塑性流動の終端となる、ラック歯成型部22の最端側の一般歯底224を形成する際に、第1鍛造型FD1に比較的大きな応力が作用する。具体的には、第1鍛造型FD1のラック形成部61に突出形成された歯底形成部611のうち、最端側の一般歯底224の反最端側の歯面(一般歯面223a)の形成に供する第1歯面形成部611aに比較的大きな応力が作用することとなる(図6(b)の濃色部P参照)。これにより、当該第1鍛造型FD1の第1歯面形成部611aに、例えばひび割れなど、いわゆるヒートチェックが発生してしまうおそれがある。ところが、前記従来のラックバー2´では、前記ヒートチェックについて何ら考慮されていない。
【0035】
これに対して、本実施形態に係るラックバー2は、型鍛造により成型され、ステアリングホイールSWに連係して回転するピニオン軸12の回転運動を軸方向運動に変換することにより操舵操作を転舵輪WR,WLに伝達するラックバーであって、金属材料によって棒状に形成されたラック本体21と、前記型鍛造に供する鍛造型(第1鍛造型FD1及び第2鍛造型FD2)を介して前記金属材料を塑性流動させることによりラック本体21に形成されたラック歯成型部22と、を備え、ラック歯成型部22は、歯底221と、突出歯222と、歯面223と、を有し、歯底221は、ラック本体21の外周から径方向内側に向かって凹形状に形成される複数の歯底を含み、前記複数の歯底は、それぞれラック本体21の軸線Zに対して交差する方向に延びる歯幅Wを有し、かつ平行に並んで形成されていて、前記複数の歯底のうちラック本体21の軸方向の中央側に形成された一般歯底224と、前記複数の歯底のうち前記軸方向の最端側に形成され、前記型鍛造の際に前記鍛造型に作用する応力が一般歯底224よりも小さいものとなる最端側歯底225と、を有し、突出歯222は、前記軸方向において隣り合う前記複数の歯底の間に形成されていて、ラック本体21の径方向外側に向かって先細り状に突出して形成され、歯面223は、前記軸方向における前記複数の歯底の両側に形成されていて、ラック本体21の前記軸方向の最端側の歯面(最端側歯面223b)は、ピニオン軸12と当接しないものとなっている。
【0036】
換言すれば、本実施形態に係るステアリング装置は、ステアリングホイールSWに連係して回転するピニオン軸12と、型鍛造により成型され、ピニオン軸12の回転運動を軸方向運動に変換することにより操舵操作を転舵輪WR,WLに伝達するラックバー2と、を備えたステアリング装置であって、ラックバー2は、金属材料によって棒状に形成されたラック本体21と、前記型鍛造に供する鍛造型(第1鍛造型FD1及び第2鍛造型FD2)を介して前記金属材料を塑性流動させることによりラック本体21に形成されたラック歯成型部22と、を備え、ラック歯成型部22は、歯底221と、突出歯222と、歯面223と、を有し、歯底221は、ラック本体21の外周から径方向内側に向かって凹形状に形成される複数の歯底を含み、前記複数の歯底は、それぞれラック本体21の軸線Zに対して交差する方向に延びる歯幅Wを有し、かつ平行に並んで形成されていて、前記複数の歯底のうちラック本体21の軸方向の中央側に形成された一般歯底224と、前記複数の歯底のうち前記軸方向の最端側に形成され、前記型鍛造の際に前記鍛造型に作用する応力が一般歯底224よりも小さいものとなる最端側歯底225と、を有し、突出歯222は、前記軸方向において隣り合う前記複数の歯底の間に形成されていて、ラック本体21の径方向外側に向かって先細り状に突出して形成され、歯面223は、前記軸方向における前記複数の歯底の両側に形成されていて、ラック本体21の前記軸方向の最端側の歯面(最端側歯面223b)は、ピニオン軸12と当接しないものとなっている。
【0037】
このように、本実施形態に係るラックバー2及びこれを用いたステアリング装置では、複数の歯底の最端側に、ラック歯成型部22を型鍛造する際の第1鍛造型FD1に作用する応力を小さくする最端側歯底225が形成されている。具体的には、本実施形態では、最端側歯底225の深さD2が、一般歯底224の深さD1よりも浅く形成されている。
【0038】
このように、本実施形態では、最端側歯底225の深さD2が、一般歯底224の深さD1に対して差分Dxの分だけ浅く形成されている。これにより、前記差分Dxの分だけ、最端側歯底225を形成する際の素材の流動量を低減することが可能となる。その結果、図6(a)に示すように、第1鍛造型FD1の第1歯面形成部611aに作用する応力を低減させることができ、当該第1鍛造型FD1の第1歯面形成部611aにおける前記ヒートチェックの発生を抑制することができる。
【0039】
さらに、本実施形態では、一般歯底224の深さD1よりも浅い最端側歯底225は、ラック歯成型部22の前記軸方向の両端側に1つずつ有する。
【0040】
このように、本実施形態では、最端側歯底225が、ラック歯成型部22の軸方向の両端側にそれぞれ1つずつ設けられている。これにより、最端側歯底225を複数設ける場合と比べてラック歯成型部22を縮小することが可能となり、ラックバー2の小型化を図ることができる。
【0041】
また、本実施形態では、最端側歯底225には、グリスGが保持されている。
【0042】
このように、ピニオン歯120との噛み合いに供しない最端側歯底225に、グリスGが保持されている。これにより、当該最端側歯底225に保持されたグリスGの油分が一般歯底224へと流動し(浸み出し)、一般歯底224に接続する一般歯面223aとピニオン歯120との潤滑を図ることができる。
【0043】
[第2実施形態]
図7は、本発明に係るラックバー及びステアリング装置の第2実施形態を示している。なお、本実施形態は、前記第1実施形態において、最端側歯底225の構成を変更したものであり、他の構成については、前記第1実施形態と同様である。このため、前記第1実施形態と同じ構成については、同一の符号を付すことにより、その説明を省略する。
【0044】
(ラックバーの構成)
図7に示すように、本実施形態に係るラックバー及びステアリング装置では、最端側歯底225と当該最端側歯底225の軸方向一方側(反最端側)に接続する一般歯面223aとの間、及び、最端側歯底225と当該最端側歯底225の軸方向他方側(最端側)に接続する最端側歯面223bとの間が、面取り部である、縦断面が円弧状をなすアール部226aによって接続されている。
【0045】
すなわち、本実施形態では、最端側歯底225の形成に係る除肉量、つまり当該最端側歯底225の形成に係る素材M1の流動量が、アール部226aの分だけ、一般歯底224よりも少なくなるように形成されている。換言すれば、アール部226aにより、最端側歯底225の軸方向両側に残存する残肉部Mが一般歯底224(図7の仮想線参照)よりも多くなるように形成されている。
【0046】
なお、本実施形態で例示したアール部226aは、最端側歯底225と一般歯底224との間、及び最端側歯底225と最端側歯面223bとの間に形成する面取り部の好ましい一態様を示している。換言すれば、最端側歯底225と一般歯底224との間、及び最端側歯底225と最端側歯面223bとの間に形成する面取り部は、本実施形態で例示したアール部226aに限られず、例えばいわゆるC面取りのような、平坦状の傾斜面からなる面取り部226bによって構成することも可能である。
【0047】
(本実施形態の作用効果)
以上のように、本実施形態に係るラックバー及びステアリング装置では、最端側歯底225と当該最端側歯底225の軸方向一方側に接続する歯面(一般歯面223a)との間、及び、最端側歯底225と当該最端側歯底225の軸方向他方側に接続する歯面(最端側歯面223b)との間に、アール部226a(又は面取り部226b)が形成されている。
【0048】
このように、本実施形態では、最端側歯底225と、当該最端側歯底225に接続する歯面である一般歯面223a及び最端側歯面223bと、の間に、アール部226a(又は面取り部226b)が形成されている。これにより、最端側歯底225の形成に係る除肉量、つまり当該最端側歯底225の形成に係る素材M1の流動量が、アール部226aの分だけ、一般歯底224よりも少なくなる。その結果、ラック歯成型部22の型鍛造時において、第1鍛造型FD1の歯底形成部611の角部611b(図6(a)参照)に作用する面圧を低減することができる。これにより、最端側歯底225の形成時において第1鍛造型FD1(歯底形成部611の角部611b)に対する局所的な応力の作用を抑制することが可能となり、第1鍛造型FD1における前記ヒートチェックの発生を抑制することができる。
【0049】
[第3実施形態]
図8は、本発明に係るラックバー及びステアリング装置の第3実施形態を示している。なお、本実施形態は、前記第1実施形態において、最端側歯底225の構成を変更したものであり、他の構成については、前記第1実施形態と同様である。このため、前記第1実施形態と同じ構成については、同一の符号を付すことにより、その説明を省略する。
【0050】
(ラックバーの構成)
図8に示すように、本実施形態に係るラックバー及びステアリング装置では、軸方向において、最端側歯底225の長さである幅W2が、一般歯底224の長さである幅W1よりも大きく形成されている。
【0051】
なお、本実施形態では、最端側歯底225の深さD2が、一般歯底224の深さD1よりも大きく設定されているが、当該態様に限定されるものではない。換言すれば、本発明によれば、最端側歯底225の幅W2が一般歯底224の幅W1よりも大きく形成されていればよく、最端側歯底225の深さD2は、一般歯底224の深さD1と同じ深さであってもよく、また、一般歯底224の深さD1よりも小さくてもよい。
【0052】
(本実施形態の作用効果)
以上のように、本実施形態に係るラックバー及びステアリング装置では、軸方向において、最端側歯底225の長さ(幅W2)は、一般歯底224の長さ(幅W1)よりも大きく形成されている。
【0053】
このように、最端側歯底225の幅W2が、一般歯底224の幅W1よりも大きく設定されていることにより、ラック歯成型部22の型鍛造時において、第1鍛造型FD1の歯底形成部611の歯先611b(図6(a)参照)に作用する面圧を低減することができる。これにより、最端側歯底225の形成時において第1鍛造型FD1(歯底形成部611の角部611b)に対する局所的な応力の作用を抑制することが可能となり、第1鍛造型FD1における前記ヒートチェックの発生を抑制することができる。
【0054】
また、本実施形態では、一般歯面223a及び最端側歯面223bと最端側歯底225とが角部225aによって接続された態様を例示しているが、当該態様に限定されるものではない。換言すれば、本発明では、最端側歯底225の幅W2が一般歯底224の幅W1よりも大きく設定されていればよく、例えば図9に示すように、一般歯面223a及び最端側歯面223bと最端側歯底225とが、前記第2実施形態で開示したようなアール部226aによって接続されていてもよい。
【0055】
[第4実施形態]
図10は、本発明に係るラックバー及びステアリング装置の第4実施形態を示している。なお、本実施形態は、前記第1実施形態において、最端側歯底225の構成を変更したものであり、他の構成については、前記第1実施形態と同様である。このため、前記第1実施形態と同じ構成については、同一の符号を付すことにより、その説明を省略する。
【0056】
(ラックバーの構成)
図10に示すように、本実施形態に係るラックバー及びステアリング装置では、最端側歯底225と当該最端側歯底225の軸方向一方側(反最端側)に接続する一般歯面223aとの角度θ2、及び、最端側歯底225と当該最端側歯底225の軸方向他方側(最端側)に接続する最端側歯面223bとの角度θ2が、一般歯底224と当該一般歯底224に接続する一般歯面223a(図10の仮想線参照)との角度θ1よりも大きく形成されている。換言すれば、本実施形態では、最端側歯底225に接続する一般歯面223a及び最端側歯面223bの長さL2が、一般歯底224に接続する一般歯面223aの長さL1よりも長くなるように構成されている。
【0057】
なお、本実施形態では、最端側歯底225の深さD2が、一般歯底224の深さD1よりも大きく、また、最端側歯底225の深さW2が、一般歯底224の深さW1よりも大きく設定されているが、当該態様に限定されるものではない。換言すれば、本発明によれば、最端側歯底225に接続される一般歯面223a及び最端側歯面223bとの角度θ2が、一般歯底224に接続される一般歯面223aとの角度θ1よりも大きく形成されていればよく、最端側歯底225の深さD2及び幅W2は、一般歯底224の深さD1及び幅W1と同じであってもよく、また、一般歯底224の深さD1及び幅W1よりも小さくてもよい。
【0058】
(本実施形態の作用効果)
以上のように、本実施形態に係るラックバー及びステアリング装置では、最端側歯底225と当該最端側歯底225の軸方向一方側(反最端側)に接続する歯面(一般歯面223a)との角度θ2、及び、最端側歯底225と当該最端側歯底225の軸方向他方側(最端側)に接続する歯面(最端側歯面223b)との角度θ2は、一般歯底224と当該一般歯底224に接続する歯面(一般歯面223a)との角度θ1よりも大きく形成されている。
【0059】
このように、本実施形態では、最端側歯底225と当該最端側歯底225に接続する歯面である一般歯面223a及び最端側歯面223bとの角度θ2が、一般歯底224と当該一般歯底224に接続する歯面である一般歯面223aとの角度θ1よりも大きく形成されている。これにより、最端側歯底225に接続する一般歯面223a及び最端側歯面223bの長さL2が、一般歯底224に接続する一般歯面223aの長さL1よりも長く形成することが可能となる。その結果、ラック歯成型部22の型鍛造時において、第1鍛造型FD1の歯底形成部611の歯面611c(図6(a)参照)に作用する面圧を低減することができる。これにより、最端側歯底225の形成時において第1鍛造型FD1(歯底形成部611の歯面611c)に対する局所的な応力の作用を抑制することが可能となり、第1鍛造型FD1における前記ヒートチェックの発生を抑制することができる。
【0060】
[第5実施形態]
図11は、本発明に係るラックバー及びステアリング装置の第5実施形態を示している。なお、本実施形態は、前記第1実施形態において、最端側歯底225の構成を変更したものであり、他の構成については、前記第1実施形態と同様である。このため、前記第1実施形態と同じ構成については、同一の符号を付すことにより、その説明を省略する。
【0061】
(ラックバーの構成)
図11に示すように、本実施形態に係るラックバー及びステアリング装置では、ラック歯成型部22の最端側歯底225の深さD2が、ラック本体21の軸線Zに対して交差する方向に可変して形成されている。具体的には、図示外のピニオン歯と噛み合う幅方向一端側(図11の右側)では、最端側歯底225の深さが、当該ピニオン歯との噛み合いを確保するため、比較的大きな深さに形成される。一方、図示外のピニオン歯と噛み合うことがない幅方向他端側(図11の左側)では、最端側歯底225の深さが、比較的小さい深さに形成される。これにより、最端側歯底225では、最端側歯底225の深さD2が、幅方向の一端側から他端側に向かって上り傾斜状、すなわち突出歯222の歯先222aまでの距離Sが徐々に小さくなるように構成されている。
【0062】
(本実施形態の作用効果)
以上のように、本実施形態に係るラックバー及びステアリング装置では、最端側歯底225の深さD2は、ラック本体21の軸線Zに対して交差する方向に可変して形成されている。
【0063】
このように、本実施形態では、ピニオン軸12(ピニオン歯120)と噛み合う領域と、ピニオン軸12(ピニオン歯120)と噛み合わない領域とで、最端側歯底225の深さD2が変更されている。具体的には、ピニオン歯120と噛み合う幅方向一端側では、最端側歯底225の深さD2が比較的大きく、ピニオン歯120と噛み合うことがない幅方向他端側では、最端側歯底225の深さD2が比較的小さくなるように形成されている。このため、ラックバー2を型鍛造する際の最端側歯底225における素材M1の流動量を必要最低限に抑えることが可能となる。その結果、ラックバー2の型鍛造時において第1鍛造型FD1に発生する前記ヒートチェックを抑制することができる。
【0064】
本発明は、前記各実施形態の構成に限定されるものではなく、ラックバー2及び当該ラックバー2が適用されるステアリング装置の仕様等に応じて自由に変更することができる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11