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特許7652973蒸着材料およびその製造方法並びにダイス
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-03-18
(45)【発行日】2025-03-27
(54)【発明の名称】蒸着材料およびその製造方法並びにダイス
(51)【国際特許分類】
   C23C 14/24 20060101AFI20250319BHJP
   B21C 1/00 20060101ALI20250319BHJP
   B21C 3/14 20060101ALI20250319BHJP
   B21C 3/02 20060101ALN20250319BHJP
【FI】
C23C14/24 E
B21C1/00 A
B21C1/00 L
B21C1/00 M
B21C3/14
B21C3/02 Z
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2024098737
(22)【出願日】2024-06-19
【審査請求日】2024-08-01
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】596133201
【氏名又は名称】松田産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】脇 昌之
(72)【発明者】
【氏名】南 直希
【審査官】神▲崎▼ 賢一
(56)【参考文献】
【文献】特開2021-021109(JP,A)
【文献】米国特許第05823039(US,A)
【文献】特開2011-031264(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C23C 14/24
B21C 1/00
B21C 3/14
B21C 3/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
原料を溶解鋳造する工程と、溶解鋳造して作製されるインゴットを圧延及び/又は鍛造する工程と、圧延及び/又は鍛造して作製される部材をダイスで伸線する工程と、を含み、前記伸線する工程は、潤滑油を使用せず、空気あるいは不活性ガスを吹き付けて前記部材の表面温度を100℃以下に維持して伸線する、蒸着材料の製造方法。
【請求項2】
真空あるいは不活性ガス雰囲気で溶解鋳造する、請求項1に記載の蒸着材料の製造方法。
【請求項3】
前記ダイスのベル部が凸曲面又は多段面である、請求項1に記載の蒸着材料の製造方法。
【請求項4】
前記凸曲面の曲率半径が20mm以上、100mm以下である、請求項3に記載の蒸着材料の製造方法。
【請求項5】
前記多段面において、少なくとも2段以上の面を有し、第1段目のベル角が60°以上80°以下であり、第2段目のベル角が30°以上50°以下である、請求項3に記載の蒸着材料の製造方法。
【請求項6】
伸線速度が10~100mm/分である、請求項1に記載の蒸着材料の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、蒸着材料およびその製造方法並びにダイスに関する。
【背景技術】
【0002】
真空蒸着法は、成膜技術の一つであり、真空中で蒸着材料を加熱して、気体分子となった蒸着材料を基板に付着させることによって、薄膜を形成する技術である。真空蒸着法は、電子部品、半導体デバイス、光学薄膜、磁気デバイス、LED、有機EL、LCD等における素子の形成に広く利用されている。
【0003】
蒸着材料を坩堝に充填し、電子ビーム等で溶解すると、突沸(スプラッシュとも呼ばれる)が発生して、薄膜上に溶融飛沫が付着するという問題があった。この問題に対して、蒸着材料に含まれる不純物を低減して、突沸を防ぐ技術が開示されている(特許文献1)。また、特許文献2に蒸着材料の表面を王水で洗浄することで、溶融飛沫の付着を防ぐことが記載されている。
【0004】
出願人は、以前、真空蒸着法で用いられる金の蒸着材料であって、真空蒸着時に突沸を抑制することができる技術を開示した。例えば、特許文献3では、表面粗さRaが10μm以下であり、面積円相当径0.1mm以上のマイクロクラックの数を低減した蒸着材料を開示した。また、特許文献4では、平均結晶粒径が0.1mm以上であり、酸素含有量が10wtppm以下、水素含有量が5wtppm以下の蒸着材料を開示した。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開平1-180961号公報
【文献】特開2018-123389号公報
【文献】国際公開第2022/070432号
【文献】国際公開第2022/070433号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本開示は、真空蒸着時に突沸を抑制できる蒸着材料、およびその製造方法並びにその製造方法に用いられるダイスを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の要旨は、以下に示す通りである。
[1] 原料を溶解鋳造する工程と、溶解鋳造して作製されるインゴットを圧延及び/又は鍛造する工程と、圧延及び/又は鍛造して作製される部材をダイスで伸線する工程と、を含み、前記伸線する工程は、潤滑油を使用せず、空気あるいは不活性ガスを吹き付けて伸線する、蒸着材料の製造方法。
[2] 前記部材の表面温度を100℃以下に維持しながら伸線する、[1]に記載の蒸着材料の製造方法。
[3] 真空あるいは不活性ガス雰囲気で溶解鋳造する、[1]又は[2]に記載の蒸着材料の製造方法。
[4] 前記ダイスのベル部が凸曲面又は多段面である、[1]乃至[3]のいずれかに記載の蒸着材料の製造方法。
[5] 前記凸曲面の曲率半径が20mm以上、100mm以下である、[4]に記載の蒸着材料の製造方法。
[6] 前記多段面は、第1段目のベル角が60°以上80°以下であり、第2段目のベル角が30°以上50°以下である、[4]に記載の蒸着材料の製造方法。
[7] 伸線速度が10~100mm/分である、[1]乃至[6]のいずれかに記載の蒸着材料の製造方法。
[8] [1]乃至[7]のいずれかに記載の蒸着材料の製造方法に用いられるダイスであって、前記ダイスのベル部が凸曲面又は多段面である、ダイス。
[9] 前記凸曲面あるいは多段面の曲率半径が20mm以上、100mm以下である、[7]に記載のダイス。
[10] 前記多段面は、少なくとも2段以上の面を有し、第1段目のベル角が60°以上80°以下であり、第2段目のベル角が30°以上50°以下である、[7]に記載のダイス。
[11] 走査型電子顕微鏡を用いて蒸着材料の表面を分析した場合、蒸着材料と同成分からなる1μm以上の付着物がない、蒸着材料。
[12] 蒸着材料が、金、銀、パラジウム、白金のいずれか一種以上の貴金属を含む、[11]に記載の蒸着材料。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、蒸着材料を電子ビーム等で溶解する際に、突沸(スプラッシュ)の発生を抑制することができる。これにより、基板あるいは薄膜上に、溶融飛沫が付着することを低減することができ、製品の歩留まり改善に寄与することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の実施形態に係るダイス(ベル部が凸曲面)の断面模式図である。
図2】本発明の実施形態に係るダイス(ベル部が多段面)の断面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
蒸着材料は、通常、以下の工程を経て、作製することができる。1)原料(ショットとも呼ばれる)を大気中で溶解し、溶湯を鋳型に流し込んで、インゴットを作製する。2)インゴットを鍛造や圧延して所定に形状に加工した後、潤滑油を用いて、伸線(線引き加工)する。3)所定の長さに切断して、ワイヤ(棒状のもの)を作製する。4)ペレットの表面を酸や有機溶媒で洗浄して表面に付着した不純物等を除去する。
【0011】
ところが、上記工程で作製した蒸着材料は真空蒸着の際(電子ビーム等で溶解した際)、突沸が発生するという問題が生じた。この原因について詳細に調査したところ、蒸着材料の表面に黒色部分が観察され、この黒色部分は加工痕(スクラッチ)に残存する潤滑油が起因していることが分かった。一般的に用いられる潤滑油の沸点は600℃程度のものが多く、金(融点1080℃)等の貴金属を溶解した際に揮発あるいは分解するので、これが突沸の原因となると考えられる。
【0012】
伸線工程では、通常、潤滑油を使用して、蒸着材料部材とダイスとの間の摩擦を低減することが行われる。しかしながら、潤滑油を使用すると、上述の通り、突沸の原因となるため、この使用を避ける必要がある。ここで、潤滑油を使用せずに、摩擦熱を冷却する手段として水冷や空冷を考えた。どちらの手段も一長一短があるが、水冷は、特に装置等の腐食のリスクがあり、さらにそれによる汚染も高いため、本開示では空冷を採用することとした。
【0013】
以下、本実施形態の蒸着材料の製造方法について詳述する。なお、製造条件等については例示であって、この条件に限定する意図はない。また、開示する製造方法が不必要に不明瞭となることを避けるために、周知の製造工程の説明は省略する。
【0014】
(溶解鋳造工程)
純度99.9重量%以上(好ましくは99.99重量%以上)の原料を大気中、もしくは、真空あるいは不活性ガス雰囲気(アルゴンガス又は窒素ガス)で溶解する。一般的な溶解鋳造においては、大気溶解でセラミック坩堝やカーボン坩堝等を用いるが、大気中でこれらの坩堝を用いると不純物成分が混入することがある。そのため、汚染の少ない銅又はカーボン坩堝等を用いてEB(電子ビーム)溶解や高周波溶解を用いることが好ましい。溶解温度は、対象とする金属の融点から50℃以上、200℃以下に設定することが好ましい。融点の50℃未満であると、液体の流動性が低く、所望の鋳造インゴットができない。融点より200℃超であると、金属の蒸発ロスが発生してしまう。一般に金属は大気で溶解するが、これは酸素との親和性が低いためであるが、それでも大気中の酸素や窒素等のガスを巻き込み、インゴットの性状が悪くなり、品質特性も悪くなる。そのため、真空又は不活性ガスを含んだ雰囲気(真空度:1000~0.001Pa)で原料を溶解することが好ましい。その後、溶湯を水冷銅製の鋳型に流し込み、その後、室温で冷却して、インゴットを作製する。
【0015】
(圧延工程、鍛造工程)
伸線工程で処理可能な所定形状とするために、圧延もしくは鍛造、あるいは両方を行う。圧延条件(圧下率、パス回数等)や圧延方法(溝付きロール圧延等)を適宜、選択することができる。また、加熱しながら、圧延してもよい。所定の温度で加熱することで、所定の形状に加工しやすくなる。加熱温度は300℃以上とすることが好ましい。一方、対象金属の融点を超える温度で加熱すると金属の一部が溶融してしまうため、対象とする金属の融点よりも100℃以上低い温度とすることが好ましい。
【0016】
(空冷伸線)
圧延した蒸着材料部材(厚さ10~50mm程度)を伸線(線引き加工)して、直径1~5mm程度の線状にする。伸線は、1回のみとしてもよいが、直径の異なるダイスを用いて徐々に線径を小さくしてもよい。本開示では、上述した理由から、潤滑油を使用せず、空冷伸線を行う。ここで、本開示における空冷とは、伸線時に30℃以下の空気あるいはアルゴンや窒素等の不活性ガスを吹き付けることをいう。空冷伸線には、潤滑の効果はないが、貴金属は特に延性に優れることから、摩擦熱によるダイスの温度上昇を防ぐことができれば、焼き付きなどの潤滑性は特に問題とならない。また、空冷により、伸線時に金属表面に発生した削り粉(蒸着材料と同成分)を吹き飛ばすこともできるので、削り粉がダイスに巻き込まれ、再度、部材に付着するのを防ぐことができる。なお、空冷による酸素濃度の上昇がないことは確認済みである。
【0017】
空冷の方法として、例えば、ダイスの入口側(線材を挿入する側)付近に冷却ガスを吹き付けて(コンプレッサー圧:1~10MPa程度)、部材の表面温度を100℃以下に維持することができることが好ましい。より好ましくは80℃以下であり、特に好ましくは60℃以下である。伸線速度については10mm/分以上、100mm/分以下とすることが好ましい。より好ましくは、30mm/分以上、70mm/分以下である。伸線速度を制御することで、ダイスの温度上昇を抑えることができる。なお、空冷の方法は上記に限定されず、他の空冷方法を用いてもよい。なお、空冷細線は、延性に優れた材料であれば、貴金属材料以外の他の金属材料にも採用することができる。
【0018】
(ダイスについて)
次に、ダイスについて説明する。ダイスは、入口側が広く、出口側の狭い略円錐形の穴の開いた部材であり、線材をダイスに通すことにより、直径を細くして狙いの線径にすることができる。ダイスとして、種々のものを用いることができる。例えば、超硬ダイスやダイヤモンドダイスを用いることができる。ダイスは、線材を挿入する入口側からベル部(潤滑剤の流入を容易にする)、アプローチ部(線材の振動を止めて内部へ導く)、ベア
リング部(線径を最終的に決定する)、リリース部(ガイド的な役割)等から構成される。もっとも、他の部位を有することもあり、また、各部について、異なる名称が用いられることもあるが、名称が異なる場合でも、作用や機能が同じものであれば、同じ部位と判断できる。
【0019】
本開示の実施形態に係るダイスの断面形状を図1、2に例示する。図1はベル部が凸曲面を有する例であり、図2はベル部が多段面(2段)を有する例である。ベル部は凸曲面あるいは多段面とすることが好ましい。これによって、線材がダイスの穴を通過する際の振動をより効果的に抑制することができる。振動は、線材の表面やダイスの穴の内面などにキズを生じさせるため、できるだけ抑制することが好ましい。ベル部が凸曲面の場合、曲率半径は好ましくは2cm以上10cm以下である。また、ベル部が多段面(例えば、3段)の場合、入口側から第1段目、第2段目、第3段目とすると、第1段目のベル角を60°以上80°以下とし、第2段目のベル角を30°以上50°以下とし、第3段目のベル角を、第2段目よりも小さく、アプローチ角よりも大きい角度とするのが好ましい。4段以上備える場合、第4段目以降は、第3段目と同様、1つ前の段のベル角よりも小さく、アプローチ角よりも大きいベル角度とすることが好ましい。なお、多段面は、少なくとも2段以上であり、3段あるいは4段以上とすることができる。
【0020】
本開示の実施形態に係るダイスにおいて、ベル部以外のアプローチ部、ベアリング部、リリース部の形状や寸法などについては特に制限はない。例えば、アプローチ部の角度を11°~17°とすることができる。ベアリング部の長さを、ベアリング部の直径φの0.3~0.5倍とすることができる。また、リリース部の長さを、ニブ高さ(ダイスの高さ)の15%~25%とすることができる。
【0021】
(切断、洗浄工程)
伸線後、所定の長さで切断する。切断する長さは、仕様などにより異なるため、特に制限はなく、例えば、10mm以上、30mm以下とすることができる。切断後、蒸着材料を酸(王水や塩酸等)、アセトン、純水等で洗浄して、表面の不純物を除去する。なお、洗浄は、切断後だけでなく、鋳造工程後、圧延工程前後、伸線工程前後、適宜、行うことができる。以上により、所望の蒸着材料(棒状)を作製することができる。
【0022】
本開示に係る蒸着材料は、金(Au)、白金(Pt)、パラジウム(Pd)、銀(Ag)のいずれか一種以上の貴金属を含むことが好ましい。蒸着材料に含まれる貴金属の含有量は、99.9重量%以上であることが好ましく、より好ましくは99.99重量%以上である。不純物は突沸の一因であるため、高純度品を用いることで突沸を一定程度に抑えることができる。一方で、高純度品は非常に高価であるため、用途や目的によって、用いる貴金属の純度を選択することが好ましい。
【実施例
【0023】
次に、本発明の実施例及び比較例について説明する。なお、以下の実施例は、代表的な例を示しているもので、本発明は、これらの実施例によって制限される必要はなく、明細書の記載される技術思想の範囲で解釈されるべきものである。
【0024】
実施例、比較例では、以下の装置等を用いて分析を行った。
(走査型電子顕微鏡:SEM)
分析装置:JSM-7000E(日本電子製)
測定条件:倍率100倍
測定方法:直径2mm、長さ20mmのサンプルを用意して、10個のサンプルを任意に抽出して、それぞれについて分析を行った。
【0025】
(実施例1)
純度99.99wt%以上の金原料を水冷銅坩堝にて、真空度:10Paで電子ビーム溶解して、インゴットを作製した。得られたインゴットを王水で酸洗浄、脱脂を行った後、圧延して20mm角とし、さらに、溝付きロール圧延を繰り返して、4.6mm角とした。次いで、潤滑油を使用せずに、空冷細線(空冷ガス:アルゴン)を行った。直径が異なるダイス(ベアリング部:φ4.7mm、φ4.3mm、φ3.9mm、φ3.5mm、φ3.2mm、φ3.0mm、φ2.7mm、φ2.4mm、φ2.2mm、φ2.06mm、ベル部の曲率半径:3cm)を用いて、細線を繰り返し行い、直径2.0mm程度まで徐々に線径を小さくした。
【0026】
細線化したサンプル表面を目視したところ、黒色部分は見られず、SEMで観察したところ、1μm以上の金の付着物は存在しなかった。また、エネルギー分散型X線分光法を用いてサンプル表面を分析した結果、C含有量は10重量%未満であった。また、サンプルをEB溶解したところ、従来の潤滑油を使用して細線した場合に比べて、突沸が各段に抑制されていることを確認した。
【0027】
(比較例1)
実施例1と同様の方法で得られたインゴットを王水で酸洗浄、脱脂を行った後、圧延して20mm角とし、さらに、溝付きロール圧延を繰り返して、4.6mm角とした。次いで、潤滑油を用いて、細線を行った。実施例1と同じダイスを用いて、細線を繰り返し行い、直径2.0mm程度まで徐々に線径を小さくした。なお、細線時に空冷は行っていない。
【0028】
細線化したサンプル表面を目視したところ、黒色部分が見られた。また、エネルギー分散型X線分光法を用いてサンプル表面を分析した結果、C含有量は10重量%未満であった。また、サンプルをEB溶解したところ、突沸が非常に多く発生した。
【0029】
(比較例2)
実施例1と同様の方法で得られたインゴットを王水で酸洗浄、脱脂を行った後、圧延して20mm角とし、さらに、溝付きロール圧延を繰り返して、4.6mm角とした。次いで、潤滑油を用いず、細線を行った。実施例1と同じダイスを用いて、細線を繰り返し行い、直径2.0mm程度まで徐々に線径を小さくした。なお、細線時に空冷は行っていない。
【0030】
細線化したサンプル表面を目視したところ、黒色部分は見られなかったが、SEMで観察したところ、1μm以上の金の付着物が付着していた。これは、細線時の削り粉(金粉)が巻き込またものと思われる。また、サンプルをEB溶解したところ、比較例1よりも突沸が多く発生した。
【産業上の利用可能性】
【0031】
本開示によれば、蒸着材料の溶解の際、突沸を抑制することができる。これにより、基板に付着するパーティクルの低減を期待できる。したがって、製品の歩留まり改善に寄与することができる。本開示の蒸着材料は、電子部品、半導体デバイス、光学薄膜、磁気デバイス、LED、有機EL、LCD等における素子形成に有用である。
【要約】
【課題】本開示は、真空蒸着時に突沸を抑制できる蒸着材料、およびその製造方法並びにその製造方法に用いられるダイスを提供することを目的とする。
【解決手段】原料を溶解鋳造する工程と、溶解鋳造して作製されるインゴットを圧延及び/又は鍛造する工程と、圧延及び/又は鍛造して作製される部材をダイスで伸線する工程と、を含み、前記伸線する工程は、潤滑油を使用せず、空気あるいは不活性ガスを吹き付けて伸線する、蒸着材料の製造方法。走査型電子顕微鏡を用いて蒸着材料の表面を分析した場合、蒸着材料と同成分からなる1μm以上の付着物がない、蒸着材料。
【選択図】なし
図1
図2