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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-03-18
(45)【発行日】2025-03-27
(54)【発明の名称】車両の制御システム
(51)【国際特許分類】
   B60W 50/035 20120101AFI20250319BHJP
   B60W 60/00 20200101ALI20250319BHJP
   G08G 1/09 20060101ALI20250319BHJP
   G16Y 10/40 20200101ALI20250319BHJP
   G16Y 20/20 20200101ALI20250319BHJP
   G16Y 40/20 20200101ALI20250319BHJP
【FI】
B60W50/035
B60W60/00
G08G1/09 V
G16Y10/40
G16Y20/20
G16Y40/20
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2024517139
(86)(22)【出願日】2023-01-18
(86)【国際出願番号】 JP2023001327
(87)【国際公開番号】W WO2024154251
(87)【国際公開日】2024-07-25
【審査請求日】2024-03-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000005348
【氏名又は名称】株式会社SUBARU
(74)【代理人】
【識別番号】110004554
【氏名又は名称】弁理士法人i-MIRAI
(74)【代理人】
【識別番号】100099793
【弁理士】
【氏名又は名称】川北 喜十郎
(74)【代理人】
【識別番号】100154586
【弁理士】
【氏名又は名称】藤田 正広
(74)【代理人】
【識別番号】100180747
【弁理士】
【氏名又は名称】小森 剛彦
(72)【発明者】
【氏名】山口 史人
【審査官】吉村 俊厚
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2022/249677(WO,A1)
【文献】特開2019-172219(JP,A)
【文献】国際公開第2022/239420(WO,A1)
【文献】国際公開第2021/038741(WO,A1)
【文献】特開2011-035721(JP,A)
【文献】特開2002-323551(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60W 10/00 - 60/00
G05D 1/00 - 1/12
G08G 1/00 - 99/00
G16Y 10/00 - 40/60
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
自車である車両の走行を制御するための制御値を生成可能な走行制御部を有する複数の車両と、
複数の前記車両についての走行情報に基づいて複数の前記車両の各々の個別遠隔制御値を生成して複数の前記車両へ送信するサーバ装置と、を有し、
複数の前記車両の各々の前記走行制御部は、前記サーバ装置から受信している自車宛ての前記個別遠隔制御値を用いて自車の走行制御のための制御値を生成する、車両の管制制御システムであって、
複数の前記車両の各々の前記走行制御部は、
前記サーバ装置から受信する個別遠隔制御値と、自車において自律走行制御が生成する前記制御値とを比較することにより、前記サーバ装置についての不具合の有無を判定し、
前記サーバ装置に不具合があると判定しない場合には、自車センサの情報とともに前記サーバ装置から受信している前記個別遠隔制御値を用いて前記制御値を生成する従走行制御を実行し、
前記サーバ装置に不具合があると判定する場合には、前記サーバ装置から受信している前記個別遠隔制御値を用いることなく、自車センサの情報または手動操作による情報を用いて前記制御値を生成する自律走行制御を実行する、
車両の制御システム。
【請求項2】
複数の前記車両の各々の前記走行制御部は、
前記サーバ装置から受信する複数の個別遠隔制御値についてのエンベロープと、自車において前記自律走行制御が生成する複数の前記制御値についてのエンベロープとを比較し、
比較する各々の前記エンベロープに含まれている波形特徴の数の差が、閾値以上であるか否かを判断し、
前記波形特徴の数の差が前記閾値以上である場合には、前記サーバ装置に不具合があると判定する、
請求項1記載の、車両の制御システム。
【請求項3】
複数の前記車両の各々の前記走行制御部は、
前記サーバ装置から受信している前記個別遠隔制御値を用いて前記制御値を生成する前記従走行制御において、前記サーバ装置から受信している前記個別遠隔制御値をそのまま制御値として用いる場合と比べて、走行の変化を抑えている前記制御値を生成する、
請求項1または2記載の、車両の制御システム。
【請求項4】
複数の前記車両の各々の前記走行制御部は、
前記サーバ装置から不具合通知を受信している場合には、前記自律走行制御を実行する、
請求項記載の、車両の制御システム。
【請求項5】
前記サーバ装置は、
複数の前記車両の各々について緊急対応の要否を判断して、緊急対応が必要であると判断した車両については、前記個別遠隔制御値に加えて、遠隔制御の強制情報および推奨情報の一方を有意にできる遠隔制御情報を送信し、
複数の前記車両の各々の前記走行制御部は、
前記サーバ装置から受信する前記遠隔制御情報において前記遠隔制御の強制情報が有意である場合に前記サーバ装置に不具合があると判定するときには、前記自律走行制御により、自車を緊急停止させ、
前記サーバ装置から受信する前記遠隔制御情報において前記遠隔制御の推奨情報が有意である場合に前記サーバ装置に不具合があると判定するときには、前記自律走行制御により、自車の走行を継続させる、
請求項4記載の、車両の制御システム。
【請求項6】
複数の前記車両の各々の前記走行制御部は、
前記サーバ装置から有意な前記遠隔制御の強制情報を受信している場合には、波形特徴の数の差と比較する閾値として、前記サーバ装置から有意な前記遠隔制御の推奨情報を受信している場合での第一閾値より大きい第二閾値を用いる、
請求項5記載の、車両の制御システム。
【請求項7】
複数の前記車両の各々の前記走行制御部は、
自らの前記自律走行制御についての不具合の有無を判定し、
自らの前記自律走行制御に不具合があると判定する場合には、前記従走行制御により、前記個別遠隔制御値を用いた前記制御値を生成する、
請求項6記載の、車両の制御システム。
【請求項8】
前記サーバ装置は、
前記サーバ装置に不具合があると判定した不具合判定車両から、前記サーバ装置の不具合との判定結果を受信した場合には、前記不具合判定車両に対して送信する走行制御のための情報を、前記不具合判定車両での走行制御にそのまま用いることができる前記個別遠隔制御値から、前記車両の走行制御についての要求を含む個別管制情報へ切り替える、
請求項7記載の、車両の制御システム。
【請求項9】
自車である車両の走行を制御するための制御値を生成可能な走行制御部を有する複数の車両と、
複数の前記車両についての走行情報に基づいて複数の前記車両の各々の個別遠隔制御値を生成して複数の前記車両へ送信するサーバ装置と、を有し、
複数の前記車両の各々の前記走行制御部は、前記サーバ装置から受信している自車宛ての前記個別遠隔制御値を用いて自車の走行制御のための制御値を生成する、車両の管制制御システムであって、
複数の前記車両の各々の前記走行制御部は、
前記サーバ装置についての不具合の有無を判定し、
前記サーバ装置に不具合があると判定しない場合には、自車センサの情報とともに前記サーバ装置から受信している前記個別遠隔制御値を用いて前記制御値を生成する従走行制御を実行し、
前記サーバ装置に不具合があると判定する場合には、前記サーバ装置から受信している前記個別遠隔制御値を用いることなく、自車センサの情報または手動操作による情報を用いて前記制御値を生成する走行制御を実行し、前記走行制御は、前記サーバ装置から受信している前記個別遠隔制御値をそのまま制御値として用いる場合と比べて、走行の変化を抑えている前記制御値を生成する、
両の制御システム。
【請求項10】
複数の車両についての走行情報に基づいて複数の前記車両の各々の個別遠隔制御値を生成して複数の前記車両へ送信するサーバ装置と通信する車両通信デバイスと、
車両に設けられる自車センサと、
前記車両通信デバイスが前記サーバ装置から受信している自車宛ての前記個別遠隔制御値を用いて、自車である車両の走行を制御するための制御値を生成可能な走行制御部と、
を有し、
前記走行制御部は、
前記サーバ装置から受信する個別遠隔制御値と、自車において自律走行制御が生成する前記制御値とを比較することにより、前記サーバ装置についての不具合の有無を判定し、
前記サーバ装置に不具合があると判定しない場合には、自車センサの情報とともに前記サーバ装置から受信している前記個別遠隔制御値を用いて前記制御値を生成する従走行制御を実行し、
前記サーバ装置に不具合があると判定する場合には、前記サーバ装置から受信している前記個別遠隔制御値を用いることなく、自車センサの情報または手動操作による情報を用いて前記制御値を生成する自律走行制御を実行する、
車両。
【請求項11】
複数の車両についての走行情報に基づいて複数の前記車両の各々の個別遠隔制御値を生成して複数の前記車両へ送信するサーバ装置と通信する車両通信デバイスと、
車両に設けられる自車センサと、
前記車両通信デバイスが前記サーバ装置から受信している自車宛ての前記個別遠隔制御値を用いて、自車である車両の走行を制御するための制御値を生成可能な走行制御部と、
を有し、
前記走行制御部は、
前記サーバ装置についての不具合の有無を判定し、
前記サーバ装置に不具合があると判定しない場合には、自車センサの情報とともに前記サーバ装置から受信している前記個別遠隔制御値を用いて前記制御値を生成する従走行制御を実行し、
前記サーバ装置に不具合があると判定する場合には、前記サーバ装置から受信している前記個別遠隔制御値を用いることなく、自車センサの情報または手動操作による情報を用いて前記制御値を生成する走行制御を実行し、前記走行制御は、前記サーバ装置から受信している前記個別遠隔制御値をそのまま制御値として用いる場合と比べて、走行の変化を抑えている前記制御値を生成する、
車両。
【請求項12】
車両の走行を制御するための制御値を生成可能な走行制御部を各々が有する複数の車両と通信するサーバ通信デバイスと、
前記サーバ通信デバイスが受信する複数の前記車両についての走行情報に基づいて、複数の前記車両の各々の個別遠隔制御値を生成して、前記サーバ通信デバイスから複数の前記車両の各々へ送信するサーバ制御部と、を有し、
前記サーバ制御部は、
前記個別遠隔制御値を送信する複数の前記車両の中の、不具合判定車両から、サーバ装置の不具合との判定結果を受信した場合には、前記不具合判定車両に対して送信する走行制御のための情報を、前記不具合判定車両での走行制御にそのまま用いることができる前記個別遠隔制御値から、前記車両の走行制御についての要求を含む個別管制情報へ切り替える、
サーバ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の制御システムに関する。
【背景技術】
【0002】
自動車といった車両の走行制御のために、サーバ装置を用いることが提案されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】国際公開第2021/038741号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、このようにサーバ装置を用いて車両の走行を制御しようとする場合、その管制制御システムは、基本的に、以下のような制御を実行することになる。
サーバ装置は、複数の車両についての走行情報を取得し、取得した情報に基づいて複数の車両の各々の個別制御情報を生成し、各個別制御情報を複数の車両の各々へ送信する。
各自動車は、自車宛ての個別制御情報を受信すると、その個別制御情報を用いて自車の走行制御に実際に用いる制御値を生成し、生成した制御値を用いて走行制御を実行する。
そして、これらサーバ装置の制御と、複数の車両の各々での制御とが繰り返しに実行されることにより、各車両は、サーバ装置の制御の下で安全性などを改善した走行をすることが可能になると期待される。
【0005】
しかしながら、このようなサーバ装置の制御の下で複数の車両が各々の走行を制御している間などにおいて、サーバ装置に不具合が発生する可能性があることは否定し難い。
たとえば、サーバ装置には、一般論として、それで使用するプログラムの不整合が発生する可能性はゼロではないと考えられる。たとえばプログラムのバグ、プログラム更新などに起因したプログラム間の不整合などが、サーバ装置に生じる可能性はゼロではない。
また、サーバ装置は、通信網に接続されている必要がある。その結果として、サーバ装置は、外部からの不正アクセスに合う可能性もある。サーバ装置の乗っ取りなどによるプログラムの書き換えの可能性もゼロではない。
このようなサーバ装置の不具合が発生したとしても、現実に道路を走行中の車両は、安全に走行することが求められる。また、各車両は、他の車両の走行を阻害しないように走行することも求められる。
【0006】
このように車両の走行制御のためにサーバ装置を使用する車両の制御システムでは、サーバ装置の制御の下で走行可能な各車両について、サーバ装置の不具合に対応できるようにすることが求められる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一形態に係る車両の制御システムは、自車である車両の走行を制御するための制御値を生成可能な走行制御部を有する複数の車両と、複数の前記車両についての走行情報に基づいて複数の前記車両の各々の個別遠隔制御値を生成して複数の前記車両へ送信するサーバ装置と、を有し、複数の前記車両の各々の前記走行制御部は、前記サーバ装置から受信している自車宛ての前記個別遠隔制御値を用いて自車の走行制御のための制御値を生成する、車両の管制制御システムであって、複数の前記車両の各々の前記走行制御部は、前記サーバ装置から受信する個別遠隔制御値と、自車において自律走行制御が生成する前記制御値とを比較することにより、前記サーバ装置についての不具合の有無を判定し、前記サーバ装置に不具合があると判定しない場合には、自車センサの情報とともに前記サーバ装置から受信している前記個別遠隔制御値を用いて前記制御値を生成する従走行制御を実行し、前記サーバ装置に不具合があると判定する場合には、前記サーバ装置から受信している前記個別遠隔制御値を用いることなく、自車センサの情報または手動操作による情報を用いて前記制御値を生成する自律走行制御を実行する、ものである。
本発明の一形態に係る車両の制御システムは、自車である車両の走行を制御するための制御値を生成可能な走行制御部を有する複数の車両と、複数の前記車両についての走行情報に基づいて複数の前記車両の各々の個別遠隔制御値を生成して複数の前記車両へ送信するサーバ装置と、を有し、複数の前記車両の各々の前記走行制御部は、前記サーバ装置から受信している自車宛ての前記個別遠隔制御値を用いて自車の走行制御のための制御値を生成する、車両の管制制御システムであって、複数の前記車両の各々の前記走行制御部は、前記サーバ装置についての不具合の有無を判定し、前記サーバ装置に不具合があると判定しない場合には、自車センサの情報とともに前記サーバ装置から受信している前記個別遠隔制御値を用いて前記制御値を生成する従走行制御を実行し、前記サーバ装置に不具合があると判定する場合には、前記サーバ装置から受信している前記個別遠隔制御値を用いることなく、自車センサの情報または手動操作による情報を用いて前記制御値を生成する走行制御を実行し、前記走行制御は、前記サーバ装置から受信している前記個別遠隔制御値をそのまま制御値として用いる場合と比べて、走行の変化を抑えている前記制御値を生成する、ものである。
本発明の一形態に係る車両は、複数の車両についての走行情報に基づいて複数の前記車両の各々の個別遠隔制御値を生成して複数の前記車両へ送信するサーバ装置と通信する車両通信デバイスと、車両に設けられる自車センサと、前記車両通信デバイスが前記サーバ装置から受信している自車宛ての前記個別遠隔制御値を用いて、自車である車両の走行を制御するための制御値を生成可能な走行制御部と、を有し、前記走行制御部は、前記サーバ装置から受信する個別遠隔制御値と、自車において自律走行制御が生成する前記制御値とを比較することにより、前記サーバ装置についての不具合の有無を判定し、前記サーバ装置に不具合があると判定しない場合には、自車センサの情報とともに前記サーバ装置から受信している前記個別遠隔制御値を用いて前記制御値を生成する従走行制御を実行し、前記サーバ装置に不具合があると判定する場合には、前記サーバ装置から受信している前記個別遠隔制御値を用いることなく、自車センサの情報または手動操作による情報を用いて前記制御値を生成する自律走行制御を実行する、ものである。
本発明の一形態に係る車両は、複数の車両についての走行情報に基づいて複数の前記車両の各々の個別遠隔制御値を生成して複数の前記車両へ送信するサーバ装置と通信する車両通信デバイスと、車両に設けられる自車センサと、前記車両通信デバイスが前記サーバ装置から受信している自車宛ての前記個別遠隔制御値を用いて、自車である車両の走行を制御するための制御値を生成可能な走行制御部と、を有し、前記走行制御部は、前記サーバ装置についての不具合の有無を判定し、前記サーバ装置に不具合があると判定しない場合には、自車センサの情報とともに前記サーバ装置から受信している前記個別遠隔制御値を用いて前記制御値を生成する従走行制御を実行し、前記サーバ装置に不具合があると判定する場合には、前記サーバ装置から受信している前記個別遠隔制御値を用いることなく、自車センサの情報または手動操作による情報を用いて前記制御値を生成する走行制御を実行し、前記走行制御は、前記サーバ装置から受信している前記個別遠隔制御値をそのまま制御値として用いる場合と比べて、走行の変化を抑えている前記制御値を生成する、ものである。
本発明の一形態に係るサーバ装置は、車両の走行を制御するための制御値を生成可能な走行制御部を各々が有する複数の車両と通信するサーバ通信デバイスと、前記サーバ通信デバイスが受信する複数の前記車両についての走行情報に基づいて、複数の前記車両の各々の個別遠隔制御値を生成して、前記サーバ通信デバイスから複数の前記車両の各々へ送信するサーバ制御部と、を有し、前記サーバ制御部は、前記個別遠隔制御値を送信する複数の前記車両の中の、不具合判定車両から、サーバ装置の不具合との判定結果を受信した場合には、前記不具合判定車両に対して送信する走行制御のための情報を、前記不具合判定車両での走行制御にそのまま用いることができる前記個別遠隔制御値から、前記車両の走行制御についての要求を含む個別管制情報へ切り替える、ものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明では、複数の車両の各々において、自車の走行を制御するための制御値を生成可能な走行制御部は、サーバ装置に不具合があるか否かを判定する。そして、サーバ装置に不具合があると判定しない場合には、走行制御部は、自車センサの情報とともに、サーバ装置から受信している個別遠隔制御値を用いて、制御値を生成する従走行制御を実行する。これにより、各車両は、不具合があると判定されていないサーバ装置の個別遠隔制御値にしたがって、走行することができる。
しかも、走行制御部は、サーバ装置に不具合があると判定する場合には、自車センサの情報または手動操作による情報を用いて、制御値を生成する自律走行制御を実行する。この際、走行制御部は、不具合があると判定しているサーバ装置から受信した個別遠隔制御値を用いることなく、制御値を生成する。これにより、各車両は、不具合があると判定しているサーバ装置の個別遠隔制御値にしたがって、走行しないようにできる。
【0009】
このように本発明では、車両の走行制御のためにサーバ装置を使用する車両の制御システムにおける各車両は、サーバ装置に不具合がある場合にそれに対応することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、本発明の実施形態に係る自動車の制御システムの構成図である。
図2図2は、図1の自動車の制御系の説明図である。
図3図3は、図2の自動車の走行制御装置の基本的なハードウェア構成の説明図である。
図4図4は、図3の自動車の走行制御装置による自律走行制御の基本的なフローチャートである。
図5図5は、図1のサーバ装置のハードウェア構成図である。
図6図6は、図1の制御システムにおける、複数の自動車の個別制御の基本的なタイミングチャートである。
図7図7は、図3の自動車の走行制御装置による制御選択制御の基本的なフローチャートである。
図8図8は、図3の自動車の走行制御装置による、サーバ装置の不具合の判定制御のフローチャートである。
図9図9は、図1のサーバ装置による、基本的な遠隔制御情報の送信制御のフローチャートである。
図10図10は、自動車の走行制御装置による、サーバ装置の不具合の判定方法の説明図である。
図11図11は、自動車の走行制御装置による、サーバ装置の不具合の判定方法の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態を、図面に基づいて説明する。
【0012】
図1は、本発明の実施形態に係る自動車2の制御システム1の構成図である。
図1の制御システム1は、道路90を走行する複数の自動車2と、複数の自動車2と通信システム6を通じて情報を送受するサーバ装置3と、を有する。
【0013】
ここで、自動車2は、車両の一例である。車両には、この他にもたとえば、トラック、バス、モータサイクル、パーソナルモビリティ、などがある。図1において、複数の自動車2は、道路90を順番に走行している。また、一部の自動車2は、道路90に面した駐車場95に停車している。
【0014】
通信システム6は、道路90に沿って配列される複数の基地局7と、複数の基地局7が接続される通信網8と、を有する。基地局7は、たとえば、商用の5G用のものでも、ADAS(Advanced driver-assistance systems)などの高度交通システム用のものでも、よい。通信網8は、5G用の基地局を提供するキャリア通信網、キャリア通信網に接続されるインターネット、などで構成されてよい。
【0015】
サーバ装置3は、通信システム6の通信網8に接続されるサーバ本体4と、サーバ本体4に接続されるサーバDB5と、を有する。サーバ装置3は、基本的に、通信システム6のインターネットに接続されていればよいが、キャリア通信網に接続されてもよい。また、サーバ装置3は、1つのサーバ本体4ではなく、互いに協働して制御を分散実行する複数のサーバ本体4により構成されてもよい。複数のサーバ本体4は、たとえば階層化されてよい。階層において最下層の複数のサーバ本体4は、キャリア通信網に対して、その地域ごとなどに応じて分散して接続されてもよい。このようなサーバ本体4は、5G用の基地局の制御装置などにおいて実現されてもよい。
【0016】
そして、図1のサーバ装置3は、少なくとも図中の3つの基地局7のゾーンにより構成される通信システム6の通信範囲にいる複数の自動車2について個別制御を実行する。
また、図1には、GNSS(Global Navigation Satellite System)衛星110が示されている。GNSS衛星110は、その位置および時刻の情報を含む信号を、地上へブロードキャストする。GNSS受信機は、複数のGNSS衛星110の信号を受信することにより、GNSS受信機が存在する位置および時刻の情報を得ることができる。各GNSS受信機の位置および時刻は、他のGNSS受信機の位置および時刻との間で誤差が生じ難い確からしいものとして用いることができる。
【0017】
図2は、図1の自動車2の制御系10の説明図である。
図1に示す複数の自動車2の各々は、図2の制御系10を備えていてよい。
【0018】
図2の自動車2の制御系10は、車ネットワーク19と、それに接続される複数の制御装置と、を有する。図2には、複数の制御装置の例として、センサ制御装置11、走行制御装置12、駆動制御装置13、操舵制御装置14、制動制御装置15、車外通信制御装置16、が例示されている。自動車2の制御系10は、これ以外の制御装置、たとえば乗員の手動による運転操作の情報を取得する操作制御装置などを備えてよい。
【0019】
車ネットワーク19は、たとえばCAN(Controller Area Network)やLIN(Local Interconnect Network)といった車用のものでよい。また、車ネットワーク19は、IEEE(Institute of Electrical and Electronics Engineers)802.3やIEEE802.11などの一般的に用いられるネットワークを備えてもよい。このような車ネットワーク19を用いることにより、各制御装置は、車ネットワーク19を通じて他の制御装置との間で情報を入出力することができる。
【0020】
センサ制御装置11は、自動車2に設けられる各種の自車センサの動作を制御し、各種の自車センサの検出情報または加工情報を、車ネットワーク19を通じて他の制御装置へ出力する。図2では、センサ制御装置11には、自車センサの例として、GNSS受信機21、車外カメラ22、加速度センサ23、が接続されている。センサ制御装置11には、この他にも、車速センサ、操舵センサ、などが接続されてよい。
【0021】
GNSS受信機21は、自動車2の位置および時刻の情報を生成する。
【0022】
車外カメラ22は、道路90などを走行する自動車2の周辺を撮像する。車外カメラ22は、単眼カメラであっても、複眼カメラであっても、360度カメラであってもよい。車外カメラ22は、少なくとも走行する自動車2の前側を撮像できるものが望ましい。センサ制御装置11は、車外カメラ22の撮像画像に基づいて、自車の周囲にいる他の自動車の相対的な距離および方向の情報を生成してよい。
【0023】
加速度センサ23は、自動車2の加速度を検出する。加速度センサ23として3軸方向の加速度を検出するセンサを用いることにより、センサ制御装置11は、自動車2のヨー、ピッチ、ロールの各方向の角加速度の情報を生成することができる。
【0024】
車速センサは、自動車2の速度を検出する。
操舵センサは、自動車2の不図示のステアリングの舵角を検出する。
【0025】
車外通信制御装置16には、自動車2に設けられる車両通信デバイス29が接続される。車両通信デバイス29は、通信可能な基地局7との間で無線通信路を確立する。車外通信制御装置16は、車両通信デバイス29の動作を制御し、車両通信デバイス29および基地局7を通じて、サーバ装置3との情報の送受を実行する。たとえば、車外通信制御装置16は、車両通信デバイス29がサーバ装置3や基地局7から受信した情報を、車ネットワーク19を通じて他の制御装置へ出力する。車外通信制御装置16は、車ネットワーク19を通じて他の制御装置から入力される情報を、車両通信デバイス29および基地局7を通じて、サーバ装置3へ送信する。
【0026】
駆動制御装置13は、自動車2に設けられるたとえばガソリンや水素を燃料として駆動力を発生するエンジン、電力により駆動力を発生するモータ、トランスミッション、などの駆動系部材が接続される。駆動制御装置13は、車ネットワーク19を通じて取得する制御値により、これらの駆動系部材の動作を制御する。
【0027】
操舵制御装置14は、自動車2に設けられるたとえばステアリング装置が接続される。操舵制御装置14は、車ネットワーク19を通じて取得する制御値により、ステアリング装置の動作を制御する。
【0028】
制動制御装置15は、自動車2に設けられるブレーキ装置が接続される。制動制御装置15は、車ネットワーク19を通じて取得する制御値により、ブレーキ装置の動作を制御する。
【0029】
走行制御装置12は、自動車2の走行を制御する。走行制御装置12は、乗員の操作によらずに自動運転で自動車2を走行させる場合、センサ制御装置11から自車の走行状態の情報および自車の周辺の情報を取得し、それらの情報に応じた制御値を生成する。
走行制御装置12は、たとえば車外カメラ22の最新の撮像画像に基づいて自車の前に他の移動体が接近してきていると判断する場合、制動制御装置15のための制御値を生成して、自車を減速または停止させる。
車外カメラ22の最新の撮像画像に基づいて停止している自車が発進可能な状態になったと判断する場合、走行制御装置12は、駆動制御装置13のための制御値を生成して、自車を加速させる。
車外カメラ22の最新の撮像画像に基づいて自車が走行中の車線を逸脱しそうな場合、走行制御装置12は、操舵制御装置14のための制御値を生成して、自車の進行方向を変化させる。
また、GNSS受信機21の位置と高精度地図データとを照合して自車が右折、左折または車線変更する必要があると判断する場合、走行制御装置12は、操舵制御装置14のための制御値を生成して、自車の進行方向を変化させる。
このように、走行制御装置12は、自車センサの検出に基づく自律的な判断制御により、自動車2を自律的に走行させることができる。
【0030】
図3は、図2の自動車2の走行制御装置12の基本的なハードウェア構成の説明図である。
図3の走行制御装置12は、車両CPU(Central Processing Unit)73、車両メモリ72、車ネットワーク19に接続される入出力デバイス71、および、これらが接続される車両内部バス79、を有する。車両内部バス79には、さらにタイマなどが接続されてもよい。
【0031】
入出力デバイス71は、車ネットワーク19を通じて、他の制御装置との間で、情報を入出力する。これにより、走行制御装置12は、その制御に用いる情報を取得することができる。
【0032】
車両メモリ72は、走行制御のためのプログラム、設定値、検出値、などを記録する。図3には、車両メモリ72に記録される高精度地図データ74が例示されている。車両メモリ72は、たとえば半導体メモリ、HDD(Hard Disk Drive)、などで構成されてよい。
【0033】
車両CPU73は、車両メモリ72からプログラムを読み込んで実行する。これにより、走行制御装置12には、制御部が実現される。
【0034】
図4は、図3の自動車2の走行制御装置12による自律走行制御の基本的なフローチャートである。
走行制御装置12の車両CPU73は、図4の自律走行制御を、繰り返し実行する。
【0035】
ステップST1において、走行制御装置12の車両CPU73は、自車のセンサ制御装置11などから、自車の走行状態を示す情報や自車の周囲の走行環境の情報といった車両情報を収集して取得する。なお、自車のセンサ制御装置11などから取得する情報は、予め取得して走行制御装置12の車両メモリ72などに記録されていてよい。ここで、車両情報には、たとえば車内カメラの撮像画像に含まれる自車周辺の他の自動車や自車についての、位置、方向、速度、加速度、および進行方向、などの情報が含まれてよい。車両CPU73は、センサ制御装置11などから取得した情報を処理して、これらの情報を生成してよい。また、車両情報には、駆動制御装置13、操舵制御装置14、制動制御装置15などの動作状態、制御内容、および制御結果を示す情報、などが含まれてよい。また、車両情報には、GNSS受信機21が生成する時刻の情報が含まれるとよい。
【0036】
ステップST2において、走行制御装置12の車両CPU73は、ステップST1において取得している情報に基づいて、自車の走行を自律的に制御するための制御値を生成する。
車両CPU73は、車両情報に対応して他の自動車などとの干渉を抑制するように、自車の走行制御のための制御値を生成する。
これにより、車両CPU73は、たとえば自動車2を加速させる制御値、速度を維持させる制御値、減速させる制御値、停止させる制御値、速度を維持する制御値、車線を維持する操舵の制御値、車線を変更する操舵の制御値などを生成する。
【0037】
ステップST3において、走行制御装置12の車両CPU73は、ステップST2で生成した制御値を、車ネットワーク19を通じて、自車の走行制御を実行する各制御装置へ出力する。これにより、たとえば駆動制御装置13は、駆動出力を制御値にする制御を実行する。操舵制御装置14は、操舵方向を含む舵角が制御値となるように制御を実行する。制動制御装置15は、制動力を制御値にする制御を実行する。これにより、自動車2は、走行制御装置12による自律的な走行制御にしたがって走行することができる。
その後、走行制御装置12の車両CPU73は、本制御を終了する。
【0038】
このように、複数の自動車2の各々は、その走行制御装置12による自律走行制御により、自車の走行を制御するための制御値を生成することができる。
【0039】
図5は、図1のサーバ装置3のハードウェア構成図である。
図5のサーバ装置3は、サーバ通信デバイス31、サーバGNSS受信機32、サーバDB(サーバデータベース)5、サーバメモリ33、サーバCPU34、および、これらが接続されるサーバ内部バス39、を有する。
【0040】
サーバ通信デバイス31は、通信システム6の通信網8に接続される。サーバ通信デバイス31は、自動車2に設けられる車両通信デバイス29との間での情報の送受を実行する。サーバ通信デバイス31は、複数の自動車2の各々から走行情報を受信してよい。
【0041】
サーバGNSS受信機32は、サーバ装置3の位置および時刻の情報を生成する。サーバGNSS受信機32が生成する時刻は、各自動車2のGNSS受信機21が生成する時刻と高精度に一致し得る。
【0042】
サーバDB5は、サーバ装置3が複数の自動車2の個別制御のために使用する各種のデータを蓄積して記録する。このようなデータとしては、たとえば各自動車2の走行情報がある。サーバDB5には、たとえば、高精度地図データ、道路規制DB(道路規制データベース)、車両位置挙動DB(車両位置挙動データベース)、などが設けられてよい。
【0043】
サーバメモリ33は、サーバCPU34が実行するプログラムなどのデータが記録される。
【0044】
サーバCPU34は、サーバメモリ33に記録されているプログラムを読み込んで実行する。これにより、サーバ装置3には、その動作を制御する制御部が実現される。制御部は、たとえば各自動車2の走行を個別制御するために、各自動車2での走行制御に用いる個別遠隔制御値や個別管制情報といった個別制御情報を生成して、各自動車2へ送信する。
ここで、個別遠隔制御値は、各自動車2の走行制御装置12が生成する制御値と同種のものであり、各自動車2において駆動制御装置13などの制御を実行する制御装置に対して直接に与えることができるものでよい。このような個別遠隔制御値は、上述した図4の自律走行制御において生成する制御値を、サーバ装置3で生成して各自動車2へ送信することになる。この場合、各自動車2は、サーバ装置3にしたがって遠隔制御により走行することになる。
これに対し、個別管制情報は、各自動車2の走行制御装置12が制御値を生成するにあたっての要望を示すものでよい。このような個別管制情報には、加減速についての要望を示す情報、操舵や車線変更についての要望を示す情報、などが含まれてよい。この場合、各自動車2は、サーバ装置3の要求に対応するように制御値を生成して、サーバ装置3の管制制御の下で走行することになる。
【0045】
サーバCPU34は、各自動車2の走行状態などに応じて、各自動車2について生成する個別制御情報を、個別遠隔制御値と個別管制情報との間で切り替えてよい。
たとえば、自動車2が図1の道路90をそのまま走行する場合、サーバCPU34は、その自動車2についての個別制御情報として、個別管制情報を生成してよい。
これに対して、自動車2が図1の道路90から駐車場95に入るように走行する場合、サーバCPU34は、その自動車2についての個別制御情報として、個別遠隔制御値を生成してよい。
これにより、自動車2は、図1の道路90をそのまま走行する場合には、個別管制情報にしたがいながら、それとともに自車の自車センサの検出情報を用いて、道路90をそのまま走行するために適した制御値を生成することができる。
また、自動車2は、図1の道路90から駐車場95へ走行する場合には、駐車場95の状態を把握しているサーバ装置からの個別遠隔制御値にしたがう制御値を生成して、駐車場95へ向けて走行することができる。
自動車2は、自車の自車センサにより検出可能な範囲を超えた情報に基づくサーバ装置3の指示にしたがって、安全に走行することが可能になる。
【0046】
図6は、図1の制御システム1における、複数の自動車2の個別制御の基本的なタイミングチャートである。なお、図6には、説明の簡便化のために、1つの自動車2のみを示している。
図6は、各自動車2が、サーバ装置3の個別遠隔制御値にしたがって、従走行制御(ステップST20)により走行する例である。
図6において、時間は、上から下へ流れる。
【0047】
自動車2の走行制御装置12は、ステップST20の従走行制御の場合、まず、ステップST71において自車の車両情報を収集して取得すると、自車の走行情報を、サーバ装置3へ送信する(ステップST72)。これにより、サーバ装置3には、複数の自動車2の走行情報が収集される。ここで、走行情報は、基本的にサーバ装置3の処理に必要な情報で構成されてよい。走行情報は、車両情報そのままであっても、車両情報の一部であってもよい。ただし、走行情報には、少なくとも、自動車2の位置や速度などを示す情報が含まれることが望まれる。
【0048】
サーバ装置3のサーバCPU34は、自動車2から走行情報を受信すると、受信している走行情報に基づいて自動車2の位置(車両S位置)を演算する(ステップST81)。ここで、車両S位置とは、たとえば高精度地図データを用いて、自動車2が走行している道路90の車線およびその車線上の位置を示すものでよい。これにより、サーバ装置3は、各自動車2を、高精度地図データなどに対してマッピングすることができる。高精度地図データなどには、複数の自動車2の走行位置および走行状態がマッピングされることになる。
【0049】
次に、サーバ装置3のサーバCPU34は、複数の自動車2についての将来干渉の可能性を判定する(ステップST82)。たとえば同一車線上の前を走る自動車2と比べて後を走る自動車2の速度が高い場合、サーバ装置3のサーバCPU34は、それらの自動車2が将来的に干渉する可能性があると判定する。
【0050】
次に、サーバ装置3のサーバCPU34は、複数の自動車2の各々についての個別制御情報を生成し(ステップST83)、各自動車2へ送信する(ステップST84)。遠隔制御を実行する場合、サーバCPU34は、個別制御情報として、個別遠隔制御値を生成する。管制制御を実行する場合、サーバCPU34は、個別制御情報として、個別管制情報を生成する。
【0051】
サーバ装置3から個別制御情報を受信すると、自動車2の走行制御装置12は、サーバ装置3から受信して個別制御情報に基づいて、自車において走行制御を実行する各制御装置へ出力する制御値を生成する(ステップST73)。その後、走行制御装置12は、生成した制御値を、駆動制御装置13、操舵制御装置14、または制動制御装置15へ出力する。これにより、たとえば駆動制御装置13は、駆動出力を制御値にする制御を実行する。操舵制御装置14は、操舵方向を含む舵角が制御値となるように制御を実行する。制動制御装置15は、制動力を制御値にする制御を実行する。
ここで、複数の自動車2の各々の走行制御装置12は、サーバ装置3から個別遠隔制御値を受信している場合、その個別遠隔制御値をそのまま制御値として用いることが可能である。しかしながら、本実施形態の走行制御装置12は、サーバ装置3から受信している個別遠隔制御値と比べて、走行の変化を抑えた制御値を生成している。
【0052】
このような一連の協働的な制御により、自動車2は、サーバ装置3の個別制御の下で、サーバ装置3が生成する個別制御情報にしたがって走行することができる。
サーバ装置3は、複数の自動車2についての走行情報に基づいて複数の自動車2の各々の個別遠隔制御値といった個別制御情報を生成して複数の自動車2へ送信することができる。
また、複数の自動車2の各々の走行制御装置12は、サーバ装置3から受信している自車宛ての最新の個別制御情報を用いて、自車の走行制御のための制御値を生成する、ことができる。
複数の自動車2は、サーバ装置3の個別制御の下で、基本的にサーバ装置3の指示にしたがう走行制御を実行することにより、互いに干渉を起こすことなく安全に走行することが可能になる。
【0053】
ところで、このようなサーバ装置3の制御の下で複数の自動車2が各々の走行を制御している間などにおいて、サーバ装置3に不具合が発生する可能性があることは否定し難い。
たとえば、サーバ装置3には、一般論として、それで使用するプログラムの不整合が発生する可能性はゼロではないと考えられる。たとえばプログラムのバグ、プログラム更新などに起因したプログラム間の不整合などが、サーバ装置3に生じる可能性はゼロではない。
また、サーバ装置3は、インターネットなどの通信網8に接続されている必要がある。その結果、サーバ装置3は、外部からの不正アクセスに合う可能性もある。サーバ装置3の乗っ取りなどによるプログラムの書き換えの可能性もゼロではない。
このようなサーバ装置3の不具合が発生したとしても、現実に道路を走行中の各自動車2は、安全に走行することが求められる。また、各自動車2は、他の車両の走行を阻害しないように走行することも求められる。
【0054】
図7は、図3の自動車2の走行制御装置12による制御選択制御の基本的なフローチャートである。
走行制御装置12の車両CPU73は、自車の走行制御を、上述した図4の自律走行制御と、図6の従走行制御との間で動的に切り替えるために、図7の制御選択のための制御を、繰り返しに実行する。
【0055】
また、後述する図9で説明するように、サーバ装置3は、各自動車2に遠隔制御を強制させる必要がある場合には、有意な強制情報を含む遠隔制御情報を、各自動車2へ繰り返しに送信する。
また、サーバ装置3は、後述する図9で説明するように、各自動車2に遠隔制御を推奨する場合には、有意な推奨情報を含む遠隔制御情報を、各自動車2へ繰り返しに送信する。遠隔制御情報において、強制情報と推奨情報とは、多くとも一方のみが有意とされ得るものである。強制情報は、サーバ装置3が各自動車2に対して個別遠隔制御値に従うことを求めるための情報である。推奨情報は、サーバ装置3が各自動車2に対して個別遠隔制御値に従うことを推奨するための情報である。サーバ装置3は、基本的に、緊急事態が発生している場合には強制情報を有意にし、自動車2が駐車場95を走行する場合には推奨情報を有意にする、とよい。
【0056】
また、サーバ装置3は、自身の制御に不具合があると自己判断している場合、自身の不具合通知を、各自動車2へ送信する。
【0057】
ステップS11において、走行制御装置12の車両CPU73は、車両通信デバイス29がサーバ装置3から不具合通知を受信しているか否かを判断する。サーバ装置3から不具合通知を受信している場合、車両CPU73は、自律走行制御を実行するために、処理をステップST16へ進める。この場合、車両CPU73は、ステップST15においてサーバ装置3に不具合があると自ら判定しないで、処理をステップST16へ進めることになる。サーバ装置3から不具合通知を受信していない場合、車両CPU73は、処理をステップST12へ進める。
【0058】
ステップS12において、走行制御装置12の車両CPU73は、自らの走行制御装置12について動作を診断し、自らの自律走行制御に不具合があるか否かを自ら判断する。車両CPU73は、定常的に動作させている自らの自律走行制御から周期的な制御値を得られない場合に、自らの自律走行制御に不具合があると判断してよい。また、車両CPU73は、自らの自律走行制御においてリセットされるウォッチドックタイマがタイムアウトしている場合、自らの走行制御に不具合があると判断してよい。自らの走行制御に不具合があると判断する場合、車両CPU73は、従走行制御を実行するために、処理をステップST20へ進める。自らの走行制御に不具合があると判断しない場合、車両CPU73は、処理をステップST13へ進める。
【0059】
ステップS13において、走行制御装置12の車両CPU73は、車外カメラ22の撮像画像などに基づいて、自車の衝突を予測しているか否かを判断する。たとえば車両CPU73は、自車センサの検出情報、たとえば走行方向の画像に基づいて、他の自動車などの衝突の可能性を予測してよい。そして、自車の衝突を予測している場合、車両CPU73は、それに対応するための自律走行制御を実行するために、処理をステップST16へ進める。自車の衝突を予測していない場合、車両CPU73は、処理をステップST14へ進める。
【0060】
ステップS14において、走行制御装置12の車両CPU73は、サーバ装置3についての不具合の有無を判定する。判定の詳細は、後述する。
【0061】
ステップS15において、走行制御装置12の車両CPU73は、ステップS14の判定結果に基づいて、サーバ装置3に不具合があるか否かを判断する。サーバ装置3に不具合があると判断しない場合、車両CPU73は、従走行制御を実行するために、処理をステップST20へ進める。サーバ装置3に不具合があると判断する場合、車両CPU73は、処理をステップST16へ進める。
【0062】
ステップS16において、走行制御装置12の車両CPU73は、自律走行制御を開始する。車両CPU73は、まず、サーバ装置3から取得している最新の遠隔制御情報を取得する。遠隔制御情報では、上述するように、強制情報と推奨情報との中の一方のみが有意に設定され得る。
【0063】
ステップS17において、走行制御装置12の車両CPU73は、ステップS16で取得した遠隔制御情報において、強制情報が有意とされているか否かを判断する。強制情報が有意とされている場合、車両CPU73は、処理をステップST19へ進める。強制情報が有意とされていない場合、車両CPU73は、処理をステップST18へ進める。
【0064】
ステップS18において、走行制御装置12の車両CPU73は、強制情報が有意とされていないため、現在の走行を継続するように、自車センサの検出情報を用いた自律走行制御を実行させる。その後、車両CPU73は、本制御を終了する。
このように、走行制御装置12の車両CPU73は、サーバ装置3に不具合があると判定し、さらにサーバ装置3から受信する遠隔制御情報において遠隔制御の推奨情報が有意である場合には、自律走行制御により、自車の走行を継続させることができる。
車両CPU73は、サーバ装置3に不具合があると判定する場合には、サーバ装置3から個別制御情報として受信している個別遠隔制御値を用いることなく、自車の自車センサの情報を用いて制御値を生成する自律走行制御を実行する。また、車両CPU73は、自車の乗員による手動操作による情報を用いて制御値を生成してもよい。
【0065】
ステップS19において、走行制御装置12の車両CPU73は、強制情報が有意とされているため、自車を緊急停止させるように、自車センサの検出情報を用いた自律走行制御を実行させる。その後、車両CPU73は、本制御を終了する。
このように、走行制御装置12の車両CPU73は、サーバ装置3に不具合があると判定し、さらにサーバ装置3から受信する遠隔制御情報において遠隔制御の強制情報が有意である場合には、自律走行制御により、自車を緊急停止させることができる。
車両CPU73は、サーバ装置3に不具合があると判定する場合には、サーバ装置3から個別制御情報として受信している個別遠隔制御値を用いることなく、自車の自車センサの情報を用いて制御値を生成する自律走行制御を実行する。
【0066】
ステップS20において、走行制御装置12の車両CPU73は、自車の自車センサの情報とともにサーバ装置3から受信している個別遠隔制御値を用いて制御値を生成する従走行制御を実行させる。その後、車両CPU73は、本制御を終了する。
このように、走行制御装置12の車両CPU73は、サーバ装置3に不具合があると判定しない場合には、従走行制御により、個別遠隔制御値を用いた制御値を生成することができる。
また、走行制御装置12の車両CPU73は、自らの自律走行制御に不具合があると判定する場合には、サーバ装置3に不具合があると判定しないときでも、従走行制御により、個別遠隔制御値を用いた制御値を生成することができる。
【0067】
図8は、図3の自動車2の走行制御装置12による、サーバ装置3の不具合の判定制御のフローチャートである。
走行制御装置12の車両CPU73は、図7のステップST14において、図8のサーバ装置3の不具合の判定制御を実行する。
【0068】
図8の判定制御は、後述する図10または図11に例示するように、サーバ装置3から受信する複数の個別遠隔制御値についてのエンベロープと、自車において自律走行制御が生成している複数の制御値についてのエンベロープとの比較に基づいて、サーバ装置3の不具合を判定するものである。
車両CPU73は、図7のステップST14において、図8以外の判定制御を併せて実行してもよい。
【0069】
ステップS31において、走行制御装置12の車両CPU73は、車両通信デバイス29が所定期間において受信した複数の個別遠隔制御値を、後述する図10図11に示すようなグラフにプロットする。各個別遠隔制御値は、その値と時刻とに基づいて、グラフにプロットされてよい。
【0070】
ステップS32において、走行制御装置12の車両CPU73は、複数の個別遠隔制御値についてのエンベロープを生成し、そのエンベロープに含まれる波形特徴をカウントする。ここで、波形特徴は、たとえば、エンベロープにおける波形の傾きの変化の回数や、エンベロープに含まれる波形の極の数でよい。
【0071】
ステップS33において、走行制御装置12の車両CPU73は、上述した所定期間において自律走行制御が自車センサの検出値のみに基づいて生成している複数の制御値(以下、自律制御値という。)を、後述する図10図11に示すようなグラフにプロットする。各自律制御値は、その値と時刻とに基づいて、グラフにプロットされてよい。
【0072】
ステップS34において、走行制御装置12の車両CPU73は、複数の自律制御値についてのエンベロープを生成し、そのエンベロープに含まれる波形特徴をカウントする。ここで、波形特徴は、個別遠隔制御値について使用したものと同じとする。
【0073】
ステップS35において、走行制御装置12の車両CPU73は、ステップST32での個別遠隔制御値についてのカウント値と、ステップST34での自律制御値についてのカウント値と、の差を演算する。
【0074】
ステップS36において、走行制御装置12の車両CPU73は、サーバ装置3から受信している最新の遠隔制御情報を取得する。遠隔制御情報では、上述するように、強制情報と推奨情報との中の一方のみが有意に設定され得る。
【0075】
ステップS37において、走行制御装置12の車両CPU73は、ステップS36で取得した遠隔制御情報において有意となっているものに対応する閾値を読み込む。
たとえば遠隔制御情報において推奨情報が有意となっている場合には、車両CPU73は、推奨情報に対応する第一閾値を読み込む。
これに対し、遠隔制御情報において強制情報が有意となっている場合には、車両CPU73は、強制情報に対応する第二閾値を読み込む。
ここで、第一閾値と第二閾値とは、車両メモリ72に記録されていてよい。
また、第二閾値は、第一閾値より大きい値としてよい。たとえば、第一閾値が3である場合、第二閾値は、3より大きいたとえば5としてよい。第一閾値および第二閾値は、たとえば10以下の自然数にしてよい。
【0076】
ステップS38において、走行制御装置12の車両CPU73は、ステップST35で演算した波形特徴のカウント値の差と、ステップST37で取得する閾値とを比較する。
そして、波形特徴のカウント値の差が、閾値以上である場合、車両CPU73は、処理をステップST39へ進める。
これに対し、波形特徴のカウント値の差が、閾値より小さい場合、車両CPU73は、処理をステップST40へ進める。
この際、車両CPU73は、サーバ装置3から有意な遠隔制御の強制情報を受信している場合には、波形特徴のカウント値の差と比較する閾値として、サーバ装置3から有意な遠隔制御の推奨情報を受信している場合での第一閾値より大きい第二閾値を用いることになる。
【0077】
ステップS39において、走行制御装置12の車両CPU73は、波形特徴のカウント値の差が閾値以上であるため、サーバ装置3に不具合があると判定する。その後、車両CPU73は、本制御を終了して、処理を図7へ戻す。
【0078】
ステップS40において、走行制御装置12の車両CPU73は、波形特徴のカウント値の差が閾値より小さいため、サーバ装置3に不具合がないと判定する。その後、車両CPU73は、本制御を終了して、処理を図7へ戻す。
【0079】
このように、走行制御装置12の車両CPU73は、サーバ装置3から受信する個別遠隔制御値と、自車において自律走行制御により生成する制御値とを比較することにより、サーバ装置3に不具合があるか否かを判定することができる。また、サーバ装置3に不具合があると判断する場合には、図7のステップST15においてそれをさらに判断して、従走行制御から自律走行制御へ自車の走行制御を切り替えることができる。
【0080】
図9は、図1のサーバ装置3による、基本的な遠隔制御情報の送信制御のフローチャートである。
サーバ装置3のサーバCPU34は、遠隔制御情報を生成するために、図9の遠隔制御情報の送信制御を、繰り返しに実行する。
また、サーバCPU34は、図9の遠隔制御情報の送信制御の結果として、各自動車2へ送信する個別制御情報を、個別遠隔制御値と個別管制情報との間で切り替えることになる。
【0081】
ステップS51において、サーバ装置3のサーバCPU34は、走行情報を受信している自動車2との通信信頼度値を生成する。通信信頼度値は、たとえば初期値を100として通信の欠落ら大きな遅延があった場合に減算し、通信に欠落や大きな遅延が生じなくなった場合に、初期値に戻されるものでよい。この場合、サーバCPU34は、自動車2から走行情報を受信する度に、その通信を判断して、通信信頼度値を更新する。
【0082】
ステップS52において、サーバ装置3のサーバCPU34は、ステップS51で更新されている通信信頼度値が閾値以上であるか否かを判断する。通信信頼度値が閾値以上である場合、通信状態は良好である。この場合、サーバCPU34は、処理をステップST53へ進める。通信信頼度値が閾値以上でない場合、サーバCPU34は、通信状態が個別遠隔制御値を送信し続けために適していない可能性があるため、処理をステップST57へ進める。
【0083】
ステップS53において、サーバ装置3のサーバCPU34は、自動車2からサーバ不具合判定の通知を受信しているか否かを判断する。自動車2の走行制御装置12は、たとえば図7のステップST15においてサーバ装置3に不具合があると判断した後、図6のステップST72で走行情報を送信する際に、自車においてサーバ装置3に不具合があると判断していることを示す情報を追加して、サーバ装置3へ送信する。サーバCPU34は、このような追加情報が、走行情報に含まれているか否かに基づいて、サーバ不具合判定の通知を受信しているか否かを判断してよい。サーバ不具合判定の通知を受信していない場合、サーバCPU34は、処理をステップST54へ進める。サーバ不具合判定の通知を受信している場合、サーバCPU34は、個別遠隔制御値ではなく個別管制情報を生成するために、処理をステップST57へ進める。
【0084】
ステップS54において、サーバ装置3のサーバCPU34は、自動車2に不具合があるか否かを判断する。自動車2の走行制御装置12は、自車に不具合が発生している場合、その情報を、走行情報に含めて送信する。サーバCPU34は、このような情報が、走行情報に含まれているか否かに基づいて、自動車2に不具合があるか否かを判断してよい。自動車2に不具合がある場合、サーバCPU34は、自動車2の自律走行制御の実行を抑制するために、処理をステップST60へ進める。自動車2に不具合がない場合、サーバCPU34は、処理をステップST55へ進める。
【0085】
ステップS55において、サーバ装置3のサーバCPU34は、自動車2の個別制御において、遠隔制御の強制が必要であるか否かを判断する。サーバCPU34は、たとえば緊急車両の通過走行に対応させる必要がある場合に、遠隔制御の強制が必要であると判断してよい。遠隔制御の強制が必要である場合、サーバCPU34は、自動車2が自律走行制御を実行することを抑制するために、処理をステップST60へ進める。遠隔制御の強制が必要でない場合、サーバCPU34は、処理をステップST56へ進める。
【0086】
ステップS56において、サーバ装置3のサーバCPU34は、自動車2の個別制御において、遠隔制御の推奨が必要であるか否かを判断する。サーバCPU34は、たとえば自動車2が駐車場95に駐停車する場合などにおいて、遠隔制御の推奨が必要であると判断してよい。遠隔制御の推奨が必要である場合、サーバCPU34は、自動車2の自律走行制御の実行を抑制するために、処理をステップST62へ進める。遠隔制御の推奨が必要でない場合、サーバCPU34は、個別管制情報の下で自動車2に従走行制御を実行させるために、処理をステップST57へ進める。
【0087】
ステップS57において、サーバ装置3のサーバCPU34は、遠隔制御情報に含める強制情報および推奨情報をともに有意にしない。遠隔制御情報には、有意な情報が含まれない。
【0088】
ステップS58において、サーバ装置3のサーバCPU34は、個別管制情報を生成する。
【0089】
ステップS59において、サーバ装置3のサーバCPU34は、個別制御のために生成した情報を、対応する自動車2へ送信する。ステップS58を実行している場合、サーバCPU34は、有意な情報が含まれていない遠隔制御情報とともに、個別管制情報を送信することになる。その後、サーバCPU34は、本制御を終了する。
【0090】
ステップS60において、サーバ装置3のサーバCPU34は、遠隔制御情報に含める強制情報を有意とするとともに、推奨情報を有意にしない。遠隔制御情報には、有意な強制情報が含まれる。
【0091】
ステップS61において、サーバ装置3のサーバCPU34は、個別遠隔制御値を生成する。この場合、サーバCPU34は、ステップS59において、強制情報を有意にした遠隔制御情報とともに、個別遠隔制御値を送信することになる。その後、サーバCPU34は、本制御を終了する。
【0092】
ステップS62において、サーバ装置3のサーバCPU34は、遠隔制御情報に含める推奨情報を有意とするとともに、強制情報を有意にしない。遠隔制御情報には、有意な推奨情報が含まれる。
【0093】
ステップS63において、サーバ装置3のサーバCPU34は、個別遠隔制御値を生成する。この場合、サーバCPU34は、ステップS59において、推奨情報を有意にした遠隔制御情報とともに、個別遠隔制御値を送信することになる。その後、サーバCPU34は、本制御を終了する。
【0094】
このように、サーバ装置3は、複数の自動車2の各々について緊急対応の要否を判断して、緊急対応が必要であると判断した自動車2については、個別遠隔制御値に加えて、遠隔制御の強制情報を有意にした遠隔制御情報を送信することができる。
また、サーバ装置3は、サーバ装置3に不具合があると判定した不具合判定自動車から、サーバ不具合の判定結果を受信した場合には、不具合判定自動車に対して送信する走行制御のための情報を、不具合判定自動車での走行制御にそのまま用いることができる個別遠隔制御値から、自動車2の走行制御についての要求を含む個別管制情報へ切り替えることができる。
【0095】
次に、自動車2の走行制御装置12による、サーバ不具合判定の具体例について説明する。
【0096】
図10図11とは、自動車2の走行制御装置12による、サーバ装置3の不具合の判定方法の説明図である。
そして、図10は、サーバ装置3に不具合があると判定しない場合の例である。これに対し、図11は、サーバ装置3に不具合があると判定する場合の例である。
これらの図に示すグラフにおいて、横軸は、時間である。縦軸は、値である。
【0097】
符号51は、サーバ装置3が各自動車2へ送信した複数の個別遠隔制御値である。符号52は、複数の個別遠隔制御値51に基づく個別遠隔制御値のエンベロープである。
符号53は、自車センサの検出に基づいて自律走行制御により生成される複数の自律制御値である。走行制御装置12は、たとえば図4の自律走行制御を常時繰り返しに実行して、実際に制御に使用するための制御値とともに、自車センサの検出に基づく自律制御値を繰り返しに生成してよい。符号52は、複数の自律制御値に基づく自律制御値のエンベロープである。
【0098】
サーバ装置3に不具合があると判定しないことになる図10の例では、複数の個別遠隔制御値51に基づくエンベロープ52は、3つの極を有する波形となっている。
これに対し、複数の自律制御値53に基づくエンベロープ54は、1つの極を有する波形となっている。
この場合、走行制御装置12は、図8のステップST35において、波形特徴の数の差として「2(=3-1)」を演算する。また、ステップST37において取得する閾値がたとえば3である場合、走行制御装置12は、ステップST38において波形特徴の数の差が閾値より小さいと判断し、処理をステップST40へ進める。
その後、走行制御装置12は、図7のステップST15においてサーバ装置3に不具合がないと判断して、ステップST20の従走行制御を実行することになる。
【0099】
これに対し、サーバ装置3に不具合があると判定することになる図11の例では、複数の個別遠隔制御値51に基づくエンベロープ52は、7つの極を有する波形となっている。
これに対し、複数の自律制御値53のエンベロープ54は、2つの極を有する波形となっている。
この場合、走行制御装置12は、図8のステップST35において、波形特徴の数の差として「5(=7-2を」を演算する。また、ステップST37において取得する閾値がたとえば3である場合、走行制御装置12は、ステップST38において波形特徴の数の差が閾値以上であると判断し、処理をステップST39へ進める。
その後、走行制御装置12は、図7のステップST15においてサーバ装置3に不具合があると判断して、ステップST18またはステップST19の自律走行制御を実行することになる。
【0100】
以上のように、本実施形態では、複数の自動車2の各々において、自車の走行を制御するための制御値を生成可能な走行制御装置12は、サーバ装置3に不具合があるか否かを判定する。そして、サーバ装置3に不具合があると判定しない場合には、走行制御装置12は、自車の自車センサの情報とともに、サーバ装置3から受信している個別遠隔制御値を用いて、制御値を生成する従走行制御を実行する。これにより、各自動車2は、不具合があると判定されていないサーバ装置3の個別遠隔制御値にしたがって、走行することができる。
しかも、走行制御装置12は、サーバ装置3に不具合があると判定する場合には、自車の自車センサの情報または手動操作による情報を用いて、制御値を生成する自律走行制御を実行する。この際、走行制御装置12は、不具合があると判定しているサーバ装置3から受信した個別遠隔制御値を用いることなく、制御値を生成する。これにより、各自動車2は、不具合があると判定しているサーバ装置3の個別遠隔制御値にしたがって、走行しないようにできる。
【0101】
このように本実施形態では、自動車2の走行制御のためにサーバ装置3を使用する自動車2の制御システム1における各自動車2は、サーバ装置3に不具合がある場合にそれに対応することができる。
【0102】
以上の実施形態は、本発明の好適な実施形態の例であるが、本発明は、これに限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲において種々の変形または変更が可能である。
【符号の説明】
【0103】
1…制御システム、2…自動車(車両)、3…サーバ装置、4…サーバ本体、5…サーバDB、6…通信システム、7…基地局、8…通信網、10…制御系、11…センサ制御装置、12…走行制御装置、13…駆動制御装置、14…操舵制御装置、15…制動制御装置、16…車外通信制御装置、19…車ネットワーク、21…GNSS受信機、22…車外カメラ、23…加速度センサ、29…車両通信デバイス、31…サーバ通信デバイス、32…サーバGNSS受信機、33…サーバメモリ、34…サーバCPU、39…サーバ内部バス、51…個別遠隔制御値、52…複数の個別遠隔制御値に基づくエンベロープ、53…自律制御値、54…複数の自律制御値に基づくエンベロープ、71…入出力デバイス、72…車両メモリ、73…車両CPU、74…高精度地図データ、79…車両内部バス、90…道路、95…駐車場、110…GNSS衛星


図1
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図11