(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-03-19
(45)【発行日】2025-03-28
(54)【発明の名称】蓄圧式スプレイヤー及び噴射方法
(51)【国際特許分類】
B05B 11/10 20230101AFI20250321BHJP
B05B 11/00 20230101ALI20250321BHJP
B65D 47/34 20060101ALI20250321BHJP
B65D 83/76 20250101ALI20250321BHJP
F04B 9/14 20060101ALI20250321BHJP
【FI】
B05B11/10 103J
B05B11/00 102E
B05B11/00 102G
B05B11/00 103E
B05B11/00 103J
B05B11/10 102E
B05B11/10 102G
B05B11/10 103E
B65D47/34 100
B65D83/76
F04B9/14 C
(21)【出願番号】P 2024146980
(22)【出願日】2024-08-09
【審査請求日】2024-09-27
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】519249723
【氏名又は名称】多田 篤
(72)【発明者】
【氏名】多田 篤
【審査官】松本 泰典
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-112365(JP,A)
【文献】特開2014-128779(JP,A)
【文献】特開2024-84(JP,A)
【文献】特開2023-125735(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B05B 11/00
B65D 47/34
B65D 83/76
F04B 9/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器内の液をスプレーするための蓄圧式スプレイヤーであって、
吸い上げ通路を介して前記容器から前記液を吸入する基礎シリンダと、
該基礎シリンダ内を摺動する基礎ピストンと、
前記基礎シリンダの下流に位置する貯蓄シリンダと、
該貯蓄シリンダ内を摺動する貯蓄ピストンと、
前記貯蓄シリンダの周囲に設けられたバルブケースと、
前記基礎シリンダと前記貯蓄シリンダとを連通する第1流路と、
前記貯蓄シリンダと前記バルブケースとの間に設けられた第2流路と、
前記吸い上げ通路と前記基礎シリンダとの間を開閉するファーストバルブと、前記基礎シリンダと前記バルブケースとの間を開閉するセカンドバルブと、前記貯蓄シリンダ内を摺動し前記バルブケースとノズルとの間を開閉するノズルバルブと、
を備え、
前記基礎ピストンに連結されたトリガーの回動により、前記基礎シリンダ内の液を前記第1流路、前記
セカンドバルブ、前記第2流路、前記
ノズルバルブの順に通過させ、前記ノズルを介して外部へと噴射させ、
且つ、前記基礎シリンダ内の液を前記第1流路、及び前記
セカンドバルブを通って前記貯蓄シリンダに充填するものであることを特徴とする蓄圧式スプレイヤー。
【請求項4】
請求項1記載の蓄圧式スプレイヤーを用いて
前記ノズルから前記容器内の前記液を外部へと噴射させる噴射方法であって、
前記基礎シリンダ内の液を、前記第1流路を介して前記貯蓄シリンダの底部に充填させる充填工程と、
前記基礎シリンダの液を前記第1流路と前記第2流路とを介して前記ノズルより外部に噴射させる噴射工程と、
を有し、
前記充填工程と前記噴射工程と同時に行われることを特徴とする噴射方法。
【請求項5】
請求項
2記載の蓄圧式スプレイヤーを用いて
前記ノズルから前記容器内の前記液を外部へと噴射させる噴射方法であって、
前記基礎シリンダ内の液を、前記第1流路を介して前記貯蓄シリンダの底部に充填させる充填工程と、
前記弾圧バネ体のバネ力により前記貯蓄シリンダの底部に充填された前記液を、前記第2流路を外部に噴射する充填後噴射工程と、
を順次行うことを特徴とする噴射方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蓄圧式スプレイヤー及び噴射方法に関し、更に詳しくはトリガーを引き切ってからも連続噴射が可能な蓄圧式スプレイヤー及び噴射方法に関する。
【背景技術】
【0002】
容器内の液を噴射するために、スプレイヤーは広く用いられている。なかでも、トリガー式スプレイヤーは、スプレー方向を定めやすく扱いも容易であることから人気がある。
【0003】
スプレイヤーの中でも、特にファーストバルブとセカンドバルブを備える蓄圧式スプレイヤーは、液に高い圧力をかけることで、一定時間連続的に液を霧状にスプレーできるために極めて有用なものとして使用されている。
【0004】
例えば、特許文献1の蓄圧式スプレー(スプレイヤー)は、シリンダ部の底に取り付けられたFバルブと、ボディ部の通路に取り付けられた蓄圧式バルブと、蓄圧バルブを閉弁方向に押圧する押圧バネ部と、を備え、トリガーを回動させることにより、液体を噴射する蓄圧式スプレーである。
【0005】
また、特許文献2の蓄圧式スプレー容器は、容器本体に取り付けられたポンプ部を備え、操作部の操作によって摺動するポンプシリンダと弁機構とにより容器内の液体を吸い上げて蓄圧し、噴射するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特許第6833361号公報
【文献】特開第2021-123397号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1や特許文献2のスプレイヤーを含め、一般的な蓄圧式スプレイヤーにおいては、シリンダ内の基礎ピストンの移動がトリガー(操作部)の回動と連動して行われる。そのため、トリガーの最大可動幅が連続噴射の可能な時間と直結する。
すなわち、連続噴射が可能な時間はトリガーの最大可動幅に制約を受けることとなる。ゆっくりとトリガーを引けばその分、長時間の連続噴射を行うことが可能である一方、素早くトリガーを引いた場合は連続噴射ができない。
【0008】
本発明は、上述の課題を受けて開発されたものである。すなわち、本発明はトリガーの最大可動幅に制約を受けずに連続噴射をすることが可能な蓄圧式スプレイヤー及び当該蓄圧式スプレイヤーを用いた噴射方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は鋭意検討の結果、第3のバルブを設け、両端がバルブによって開閉する第1流路と第2流路とを設け、第1流路及び第2流路内の液がトリガーの回動により蓄圧されるものとすることにより、上記課題を解決可能であることを見出した。
本発明はこの知見に基づく。
【0010】
本発明は、容器1内の液をスプレーするための蓄圧式スプレイヤーAであって、吸い上げ通路3を介して容器1から液を吸入する基礎シリンダ4と、基礎シリンダ4内を摺動する基礎ピストン4aと、基礎シリンダ4の下流に位置する貯蓄シリンダ7と、貯蓄シリンダ7内を摺動する貯蓄ピストン7aと、貯蓄シリンダ7の周囲に設けられたバルブケース6と、基礎シリンダ4と貯蓄シリンダ7とを連通する第1流路P1と、貯蓄シリンダ7とバルブケース6との間に設けられた第2流路P2と、吸い上げ通路3と基礎シリンダ4との間を開閉するファーストバルブV1と、基礎シリンダ4とバルブケース6との間を開閉するセカンドバルブV2と、貯蓄シリンダ7内を摺動しバルブケース6とノズル8との間を開閉するノズルバルブV3と、を備え、基礎ピストン4aに連結されたトリガー5の回動により、基礎シリンダ4内の液を第1流路P1、セカンドバルブV2、第2流路P2、ノズルバルブV3の順に通過させ、ノズル8を介して外部へと噴射させ、且つ、基礎シリンダ4内の液を第1流路P1、及びセカンドバルブV2を通って貯蓄シリンダ7に充填するものであることを特徴とする蓄圧式スプレイヤーAに存する。
【0011】
本発明は、ノズルバルブV3と、貯蓄ピストン7aとの弾圧バネ体9を設けたものであることを特徴とする上記記載の蓄圧式スプレイヤーAに存する。
【0012】
本発明は、上記記載の蓄圧式スプレイヤーAを用いてノズル8から容器1内の液を外部へと噴射させる噴射方法であって、基礎シリンダ4内の液を、第1流路P1を介して貯蓄シリンダ7の底部に充填させる充填工程S1と、基礎シリンダ4の液を第1流路P1と第2流路P2とを介してノズル8より外部に噴射させる噴射工程S2と、を有し、充填工程と噴射工程と同時に行われることを特徴とする噴射方法AAに存する。
【0013】
本発明は、上記記載の蓄圧式スプレイヤーAを用いてノズル8から容器1内の液を外部へと噴射させる噴射方法であって、基礎シリンダ4内の液を、第1流路P1を介して貯蓄シリンダ7の底部に充填させる充填工程S1と、弾圧バネ体9のバネ力により貯蓄シリンダ7の底部に充填された液を、第2流路P2を外部に噴射する充填後噴射工程S3と、を順次行うことを特徴とする噴射方法AAに存する。
【0014】
また本発明は、上記の構成を適宜組み合わせたものであってもよい。
【発明の効果】
【0015】
本発明の蓄圧式スプレイヤーAは、基礎シリンダ4と貯蓄シリンダ7とを連通する第1流路P1と、貯蓄シリンダ7とバルブケース6との間に設けられた第2流路P2と、吸い上げ通路3と基礎シリンダ4との間を開閉するファーストバルブV1と、基礎シリンダ4とバルブケース6との間を開閉するセカンドバルブV2と、貯蓄シリンダ7内を摺動しバルブケース6とノズル8との間を開閉するノズルバルブV3と、を備えることにより、第1流路P1と第2流路P2との複数個所において液の蓄圧状態が維持され、トリガー5を引ききって、トリガー5の回動が終了してからも、ノズル8から連続的なスプレーをすることが可能となる。
そのため、より広い面積に一度にスプレーをすることができ、使い勝手が向上する。
【0016】
また、トリガーの回動により基礎ピストン4aに連結されたトリガー5の回動により、基礎シリンダ4内の液を第1流路P1、セカンドバルブV2、第2流路P2、ノズルバルブV3の順に通過させ、ノズル8を介して外部へと噴射させ、且つ、基礎シリンダ4内の液を第1流路P1、及びセカンドバルブV2を通って貯蓄シリンダ7に充填するものであることにより、噴射終了後に、再度の噴射を行う準備が完了した状態とすることができる。
【0017】
本発明の蓄圧式スプレイヤーAは、ノズルバルブV3と、貯蓄ピストン7aとの弾圧バネ体9を設けたものであることにより、弾圧バネ体9によってノズルバルブV3と、貯蓄ピストン7aとが同時に押圧される。そのため、第2流路P2内の液がノズル8からスプレーされ第2流路P2内が減圧されるのに応じて、弾圧バネ体9の発する押圧力によりバルブケース6内の液が第2流路P2へと押し出されノズル8からの連続的なスプレーを維持することが可能となる。
【0018】
本発明の蓄圧式スプレイヤーAは、弾圧バネ体9が、複数のバネ小片9aよりなることにより、弾圧力の調整や、部品の交換等が容易に行えるようになる。
そのため、メンテナンス性が向上する。
【0019】
本発明の噴射方法AAは、基礎シリンダ4内の液を、第1流路P1を介して貯蓄シリンダ7の底部に充填させる充填工程S1と、基礎シリンダ4の液を第1流路P1と第2流路P2とを介してノズル8より外部に噴射させる噴射工程S2と、を有し、充填工程と噴射工程と同時に行われることにより、1度のトリガーの回動により液の噴射と次の噴射のための準備とを同時に行うことが可能となる。
【0020】
本発明の噴射方法AAは、基礎シリンダ4内の液を、第1流路P1を介して貯蓄シリンダ7の底部に充填させる充填工程S1と、弾圧バネ体9のバネ力により貯蓄シリンダ7の底部に充填された液を、第2流路P2を外部に噴射する充填後噴射工程S3と、を順次行うことにより、トリガーを引き切った後も連続的に噴射が行われる。そのため、連続的なスプレーを行うことが可能となり、蓄圧式スプレイヤーAの使い勝手が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】
図1は、蓄圧式スプレイヤーを示す断面図である。
【
図2】
図2は、基礎シリンダを示す拡大断面図である。
【
図3】
図3は、基礎シリンダを示す拡大断面図である。
【
図4】
図4は、基礎シリンダを示す拡大断面図である。
【
図5】
図5は、セカンドバルブからノズルまでを分解して断面で示す説明図である。
【
図6】
図6は、セカンドバルブから第2流路までの液の流れを示す説明図である。
【
図7】
図7は、第2流路とノズルバルブの接続を分解して示す斜視図である。
【
図8】
図8は、ノズルバルブの開閉を示す断面側面図である。
【
図9】
図9は、本発明の噴射方法を示すフローチャートである。
【
図10】
図10は、噴射前の蓄圧式スプレイヤーを簡略化して示す説明図である。
【
図11】
図11は、充填工程及び噴射工程を簡略化して示す説明図である。
【
図12】
図12は、充填後噴射工程を簡略化して示す説明図である。
【
図13】
図13は、吸い上げ工程を簡略化して示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、必要に応じて図面を参照しつつ、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。
なお、図面中、同一要素には同一符号を付すこととし、重複する説明は省略する。
また、上下左右等の位置関係は、特に断らない限り、図面に示す位置関係に基づくものとする。
更に、図面の寸法比率は図示の比率に限られるものではない。
【0023】
図1は、蓄圧式スプレイヤーAを示す断面図である。
本発明の蓄圧式スプレイヤーAは、トリガー5の回動より容器1内の液を霧状に噴射(スプレー)するための装置である。
蓄圧式スプレイヤーAは、液を貯留するための容器1と、容器1に連結されるキャップ部2と、キャップ部2に取り付けられたベース部Bと、を備える。
ベース部Bには、容器1内から液を吸い上げるためのチューブ状の吸い上げ通路3が取り付けられている。
また、吸い上げ通路3を介して容器1から液を吸入する基礎シリンダ4と、基礎シリンダ4内を摺動する基礎ピストン4aと、基礎シリンダ4の下流に下流に位置する貯蓄シリンダ7と、貯蓄シリンダ7内を摺動する貯蓄ピストン7aと、貯蓄シリンダ7の周囲に設けられたバルブケース6と、基礎シリンダ4と貯蓄シリンダ7とを連通する第1流路P1と、貯蓄シリンダ7とバルブケース6との間に設けられた第2流路P2と、が設けられており、ベース部Bはこれらを収容する枠体として機能している。
【0024】
また、蓄圧式スプレイヤーAは吸い上げ通路3と基礎シリンダ4との間を開閉するファーストバルブV1と、基礎シリンダ4とバルブケース6との間を開閉するセカンドバルブV2と、貯蓄シリンダ7内を摺動しバルブケース6とノズル8との間を開閉するノズルバルブV3と、を備える。
ファーストバルブV1は、通常の状態において基礎ピストン4aの内圧により閉弁方向に押圧されている。
また、セカンドバルブV2及びノズルバルブV3は、弾圧バネ体9によりそれぞれ閉弁方向に押圧されている。
【0025】
容器1は、合成樹脂等により好適に形成される。
また、容器1に貯留される液は、家庭用又は業務用の洗剤等、霧状にスプレーして用いられるものであれば、種類は問わない。
容器1の口部は後述するキャップ部2が取り付けられるように例えばネジが切られている。
【0026】
キャップ部2は、容器1の口部に例えば螺合により取り付けられる。キャップ部2が容器1に取り付けられることにより、吸い上げ通路3が容器1内の液に浸漬した状態となる。
【0027】
基礎シリンダ4は円筒状であり、基礎シリンダ4内を摺動する基礎ピストン4aが取り付けられている。上述したように、当該基礎ピストン4aはトリガー5の回動によって基礎ピストン4a内を摺動する。
トリガー5は、使用者が指を掛けて握るようにして引き込めるように設けられている。
トリガー5は、引き込められていない状態では常に元の状態に復帰するように、図示しないバネにより付勢されている。
【0028】
トリガー5が引き込まれた状態から復帰する方向へ回動することにより、基礎ピストン4aがファーストバルブV1から遠ざかる方向へと摺動し、基礎シリンダ4内の容積が増加する。
そうすることで、シリンダ内が負圧の状態となり、吸い上げ通路3とシリンダとの間を閉弁するファーストバルブV1が開くことで、吸い上げ通路3を介して容器1内の液がシリンダ内へと流入する。
【0029】
次に、トリガー5が引き込まれる方向へ回動することにより基礎ピストン4aがファーストバルブV1へと近づく方向へ移動する。
これにより、基礎シリンダ4内の圧が高まりファーストバルブV1は閉弁する。一方で、基礎ピストン4aにより圧された液は第1流路P1へと流入する。
【0030】
トリガー5が前後に回動することにより基礎ピストン4aは往復し、上記の液の移動が繰り返される。
すなわち、基礎シリンダ4内は常に新しい液に満たされた状態となっている。
ここで、新品の蓄圧式スプレイヤーAを用いる場合など、シリンダ内が液で満たされていない状態から蓄圧式スプレイヤーAを用いる際には、トリガー5を複数回回動させてシリンダ内の空気を排出し、シリンダ内へと液を引き込む、いわゆる空打ちを行うことにより、蓄圧式スプレイヤーAを使用可能な状態とすることができる。
【0031】
図2は、基礎シリンダ4を示す拡大断面図である。
基礎ピストン4aの下部には、基礎ピストン4bに追従して摺動するベントピストン4bが設けられている。また、基礎シリンダ4の底部の逆側、すなわち、基礎ピストン4bに遮られて液が流入しない側には、ベント孔4c及び排気孔4dが設けられており、容器1と連通している。
ベントピストン4bによって、基礎シリンダ4内と容器1との連通が開閉し、空気が移動することにより、基礎ピストン4内に容器1から液をスムーズに引き込むことができる。
図2は、基礎ピストン4bが最もファーストバルブV1から遠ざかった状態(トリガ-5が引かれていない)状態であり、ベントピストン4bによってベント孔4b及び排気孔4dによって、ベントピストン4bと基礎ピストン4aとの間の空間が容器1と連通している。
【0032】
図3は、基礎シリンダ4を示す拡大断面図である。
図3の状態においては、トリガー5が一定程度引かれ、基礎ピストン4a及びベントピストン4bが一定程度引き込まれた状態にある。
このとき、ベントピストン4bが移動することで、ベント孔4bが開き、基礎シリンダ4のトリガー5側の内壁とベントピストン4bとの間の空間が、容器1と連通し、空気がこれらの空間を移動可能な状態となる。
基礎シリンダ4のトリガー5側の内壁とベントピストン4bとの間の空間は、基礎ピストン4aとベントピストン4bとの移動によって広がっていく状況にあるので、空気が容器1~流入することにより、基礎ピストン4aとベントピストン4bがスムーズに移動することが可能となる。
また、このとき、排気孔4dによって基礎ピストン4aとベントピストン4bとの間の空間も同様に、広い空間である容器1と連通しているため、トリガー5の引き込みによって空気が圧縮されることがなく、トリガー5の引き込み、及び基礎ピストン4aとベントピストン4bの移動を妨げることない。
トリガー5をどの程度引いた状態でベント孔4cが開くものとするかは、適宜調整し得るが、トリガー5を全て引き切る1ストロークに対して、5~15%程度引いた状態で、ベント孔4cが開くものとすることが好ましい。
これにより、後述するようにトリガー5の引き込みと、基礎シリンダ4内への容器1からの液の引き込みがスムーズになる。
【0033】
図4は、基礎シリンダ4を示す拡大図である。
図4の状態においては、トリガー5が完全に引き込まれ、基礎ピストン4a及びベントピストン4bが、最も基礎シリンダ4の底部に近付いた状態となる。
このとき、ベント孔4bと排気孔4dのいずれも、ベントピストン4bによってふさがれておらず、解放した状態となっている。
【0034】
トリガー5がバネ力によって復帰する場合においても、上記とは逆の順序で容器1と、基礎ピストン4及びベントピストン4bの間の空間と、又は基礎ピストン4aとベントピストン4bとの間の空間と、が連通し、トリガー5の回動及び基礎ピストン4aとベントピストン4bとの移動がスムーズに行われる。
これにより、基礎シリンダ4内への容器1からの液の引き込みがスムーズになる。
特に、蓄圧式スプレイヤーAの使用開始時に行う、トリガー5を複数回回動させ、基礎シリンダ4や後述する貯蓄シリンダ5内の空気を抜き、液を引き込む作業(いわゆる空打ち)時に、トリガー5の回動及び基礎ピストン4aとベントピストン4bとの移動がスムーズに行われることによって、容易に蓄圧式スプレイヤーAの使用を開始することができる。
【0035】
図5は、セカンドバルブV2からノズル8までを分解して断面で示す説明図である。
バルブケース6は円筒状の部材であり、その内部には円筒状の部材である貯蓄シリンダ7が設けられている。貯蓄シリンダ7の底部は第1流路P1と連通しており、第1流路P1との間にセカンドバルブV2が設けられている。貯蓄シリンダ7内には、貯蓄シリンダ内を摺動する貯蓄ピストン7aが設けられており、貯蓄ピストン7aは後述するように弾圧バネ体9により押圧されている。
バルブケース6と貯蓄シリンダ7との間には第2流路P2が設けられており、第2流路はノズル8と連通している。第2流路P2とノズル8との間には、貯蓄バルブ内を摺動するノズルバルブV3が設けられている。ノズルバルブV3は先端が円錐状となった釘状であり、針状の部分がノズル8へと入り込むことで閉弁する。ノズルバルブV3は後述するように、弾圧バネ体9により押圧されている。
すなわち、バルブケース6内には貯蓄シリンダ7が設けられており、貯蓄シリンダ7内には第1流路P1側からノズル8側の順に、セカンドバルブV2、貯蓄ピストン7a、弾圧バネ体9、及びノズルバルブV3が設けられている。ノズルバルブV3については、公知の構造を好適に利用できる。
【0036】
セカンドバルブV2はいわゆるひげバネを備えたチェックバルブ(逆止弁)である。セカンドバルブV2は第1流路P1からバルブケース6の内部へと、一方向的に液が流れるようにするためのものである。
【0037】
第1流路P1はバルブケース6へと連通しており、第1流路P1との間をセカンドバルブV2が閉弁している。セカンドバルブV2は、後述するように弾圧バネ体9によって閉弁方向に付勢されている。
第1流路P1へ流入した液は上述の通り蓄圧された状態であるため、弾圧バネ体9の押圧力に打ち勝ってセカンドバルブV2を開弁方向へと押圧する。
これによりセカンドバルブV2が開弁し、第1流路P1からバルブケース6内へと液が流入する。
これにより第1流路P1内の液圧が下がると、セカンドバルブV2が閉弁してバルブケース6内への液の流入が停止する。
【0038】
図6は、セカンドバルブV2から第2流路P2までの液の流れを示す説明図である。
吸い上げ通路3を介して容器1から基礎ピストン4a内へと引き込まれた液は、基礎ピストン4aに連結されたトリガー5の回動により、基礎シリンダ4内の液を第1流路P1、
セカンドバルブ
V2、第2流路P2、
ノズルバルブV3の順に通過させ、ノズル8を介して外部へと噴射される。
貯蓄ピストン7aは、液圧又は弾圧バネ体9による押圧力により、バルブケース6内を摺動するための部材である。貯蓄ピストン7aは弾圧バネ体9により、セカンドバルブV2の方向(バルブケース6の外側)に向けて押圧された状態にある。
セカンドバルブV2からバルブケース6内へ液が流入すると、バルブケース6内の液圧が弾圧バネ体9の押圧力に打ち勝ち、貯蓄ピストン7aをセカンドバルブV2から遠ざかる方向(すなわち、バルブケース6への内側)へと押圧する。これにより、バルブケース6内に第1流路P1から液が流入するためのスペースが確保される。
【0039】
貯蓄ピストン7aは、液圧又は弾圧バネ体9による押圧力により、バルブケース6内を摺動するための部材である。貯蓄ピストン7aは弾圧バネ体9により、セカンドバルブV2の方向(バルブケース6の外側)に向けて押圧された状態にある。
セカンドバルブV2からバルブケース6内へ液が流入すると、バルブケース6内の液圧が弾圧バネ体9の押圧力に打ち勝ち、貯蓄ピストン7aをセカンドバルブV2から遠ざかる方向(すなわち、バルブケース6への内側)へと押圧する。これにより、バルブケース6内に第1流路P1から液が流入するためのスペースが確保される。
【0040】
弾圧バネ体9は、複数のバネ小片9aよりなる。バネ小片9aはいずれも同形であり、一対の円盤状の平板部9aaと、これらの平板部9aaを連結する連結部9abとよりなる。本実施例では、2つの平板部9aaが、3つのアーチ状の連結部9abにより連結されている。バネ小片9aは、それぞれの円盤部が接するように向きをそろえて貯蓄ピストン7aとノズルバルブV3との間に配置されることにより、貯蓄ピストン7aとノズルバルブV3とをそれぞれ遠ざかる方向(すなわち、バルブケース6の外側方向)へと押圧する。連結部9abがアーチ状であることにより、弾圧バネ体9において、弾圧力が効率よく発揮される。
【0041】
弾圧バネ体9がバネ小片9aよりなり、貯蓄ピストン7a及びノズルバルブV3を同時に押圧していることにより、相互のバネ小片9a並びに、ノズルバルブV3及び貯蓄ピストン7aに均等にバネ小片9aのバネ力が発揮され、互いに均等に押圧することができる。そのため、バルブケース6内、及び第2流路P2に対する蓄圧を効率的に行うことが可能となる。
バネ小片9aが全て同形であることにより、バネ力の調整や、弾圧バネ体9の一部が破損した際のメンテナンスを容易に行うことが可能となる。
そのため、メンテナンス性が向上する。
【0042】
貯蓄ピストン7aは常に弾圧バネ体9により付勢された状態にある。そのため、セカンドバルブV2が閉弁しバルブケース6内への液の流入が止まると、弾圧バネ体9に押圧されることでセカンドバルブV2の側へとバルブケース6内を摺動し、液を押し出す。
このとき、セカンドバルブV2の外周には、複数の第2流路P2の流入口がもうけられており、液は第2流路P2へと押し込まれる。
【0043】
図7は、第2流路P2とノズルバルブV3の接続を分解して示す斜視図である。
第2流路P2は、円筒状であるバルブケース6の両端を、バルブケース6の外側を迂回して接続するように、設けられている。
第2流路P2の流出口はノズル8と接続しており、その間をノズルバルブV3が閉弁している。
【0044】
図8は、ノズルバルブV3の開閉を示す断面側面図である。
ノズルバルブV3は、弾圧バネ体9によりノズル8側(バルブケース6の外側)へと押圧されることにより閉弁されている。
貯蓄ピストン7aにより押圧された液が第2流路P2に流入し、第2流路P2内の液圧が高まると、弾圧バネ体9の押圧力に打ち勝ってノズルバルブV3が押圧されて、ノズルバルブV3が開弁する。
これにより、液はノズル8から勢いよく外部へとスプレーされる。
【0045】
上述したように、弾圧バネ体9は貯蓄ピストン7aとノズルバルブV3とを同時に押圧している。
したがって、セカンドバルブV2から流入した液に貯蓄ピストン7aが押圧されているとき、ノズルバルブV3も弾圧バネ体9を介して強く閉弁方向に押圧されている。
一方で、貯蓄ピストン7aに押圧されて液が第2流路P2へと流入すると、弾圧バネ体9を押し込む力が徐々に弱まっていく。すなわち、ノズルバルブV3を閉弁する押圧力が減少していくこととなる。この弾圧バネ体9の押圧力の減少と、第2流路P2内の液圧の上昇のバランスによって、ノズルバルブV3が開弁し、ノズル8からのスプレーが行われる。
【0046】
すなわち、第2流路P2内の液がノズル8からスプレーされ第2流路P2内が減圧されるのに応じて、弾圧バネ体9の発する押圧力によりバルブケース6内の液が第2流路P2へと押し出されノズル8からの連続的なスプレーを維持することが可能となる。
【0047】
以下、上述の各部における液の流れをまとめ、本発明の蓄圧式スプレイヤーA及び、蓄圧式スプレイヤーAを用いた液の噴射方法AAにおける一連の液の流れについて説明する。
【0048】
図9は、本発明の噴射方法AAを示すフローチャートである。
噴射方法AAは、基礎シリンダ4内の液を、第1流路P1を介して貯蓄シリンダ7の底部に充填させる充填工程S1と、基礎シリンダ4の液を第1流路P1と第2流路P2とを介してノズル8より外部に噴射させる噴射工程S2と、弾圧バネ体9のバネ力により貯蓄シリンダ7の底部に充填された液を、第2流路P2を外部に噴射する充填後噴射工程S3と、吸い上げ通路3を介して容器1内の液を基礎シリンダ4内へ吸い上げる吸い上げ工程S4とを有する。
トリガー5を回動させることにより、充填工程S1及び噴射工程S2が同時に行われ、その後に充填後噴射工程S3、吸い上げ工程S4が順次行われる。
【0049】
基礎シリンダ4ないは、液に満たされた満たされた状態なっている。
蓄圧式スプレイヤーAの使用開始時には、吸い上げ通路3の先端が容器1内の液に接した状態でトリガー5を回動させる、いわゆる空打ちを行う。
トリガー5が握り込まれた状態から通常の状態に復帰することにより、基礎シリンダ4内の基礎ピストン4aが摺動し、吸い上げ通路3及びファーストバルブV1を介して容器1から液がシリンダ内へと引き込まれる。ファーストバルブV1は、シリンダ内が負圧になることにより開弁し、シリンダ内に液が流入することで液圧が一定以上となると閉弁する。
【0050】
図10は、噴射前の蓄圧式スプレイヤーAを簡略化して示す説明図である。
図10~
図13における矢印は液の流れる方向、又はピストンの動く方向を示す。
噴射前の状態において、基礎シリンダ4、貯蓄シリンダ7ともに、液に満たされた状態にある。また、このとき基礎ピストン4aはファーストバルブV1から遠ざかった状態であり、基礎シリンダ4内の容積が大きい状態である。
【0051】
図11は、充填工程S1及び噴射工程S2を簡略化して示す説明図である。
トリガー5が引き込まれることにより、基礎ピストン4aが摺動して基礎シリンダ4内の液圧が高まる。この時、ファーストバルブV1は閉弁しているため、液は第1流路P1へと流入し、蓄圧される。
【0052】
このとき第1流路P1内の液圧が高まると、チェックバルブであるセカンドバルブV2が開弁し、第1流路P1からバルブケース6内へと液が流入する。
これにより、基礎シリンダ4内の液が、第1流路P1を介して貯蓄シリンダ7の底部に流入する。
貯蓄シリンダ7の底部とバルブケース6は連通しており、貯蓄シリンダ7の底部へ流入した液は、弾圧バネ体9の押圧力に打ち勝って貯蓄ピストン7aを押し込みバルブケース6内の底部に充填される。
【0053】
一方で、貯蓄シリンダ7の底部に流入した液は第2流路P2を通り、ノズルバルブV3を開き外部に噴射される。
このように、トリガー5が引き込まれることにより、貯蓄シリンダ7への液の充填と外部へ液の噴射との、両者が遂行される。
【0054】
図12は、充填後噴射工程S3を簡略化して示す説明図である。
前述の充填工程S1及び噴射工程S2において、基礎シリンダ4内の液が排出されると、セカンドバルブV2は閉じた状態となる。
この後は、貯蓄ピストン7内の底部に充填された液が第2流路P2を通ってノズルバルブV3から外部へと噴射される。すなわち、弾圧バネ体9のバネ力により貯蓄ピストン7aがセカンドバルブV2側へと移動する。これにより貯蓄ピストン7の底部の液は圧を受け、第2流路P2を通ってノズルバルブV3から外部へと噴射される。
これは、容器1からノズル8までの間において、液はファーストバルブV1、セカンドバルブV2、及びノズルバルブV3により、第1流路P1、及び第2流路P2それぞれにおいて蓄圧されていることによる。
【0055】
具体的に言うと、トリガー5の回動と連動しているのは基礎シリンダ4部内の基礎ピストン4aであり、基礎ピストン4aの摺動により第1流路P1の液の蓄圧が行われる。本発明は、そこからさらにセカンドバルブV2及びノズルバルブV3との間において、第2流路P2の蓄圧状態が発生する。そのため、第1流路P1から液が流出して第1流路P1の蓄圧状態が解消されて以降も、第2流路P2における蓄圧状態が、ノズル8からの噴射によって解消されるまでは噴射を継続することができる。
【0056】
噴射工程S2において第2流路内P2内の液がノズル8から外部へと噴射されると、第2流路P2と連通している貯蓄シリンダ7底部の液圧が低下する。これにより、弾圧バネ体9の弾圧力が貯蓄シリンダ7底部の液圧に打ち勝ち、液を押圧する。このとき、セカンドバルブV2は閉弁しているため、液は第2流路P2へと流入し、第2流路内の液圧が高まる。この液圧により、ノズルバルブV3が開弁し、液の噴射が継続することとなる。
【0057】
したがって、本発明の蓄圧式スプレイヤーAにおいては、第1流路P1と第2流路P2との複数個所において液の蓄圧状態が維持され、トリガー5を引ききって、トリガー5の回動が終了してからも、ノズル8から連続的な噴射をすることが可能となる。そのため、より広い面積に一度に噴射をすることができ、使い勝手が向上する。
【0058】
図13は、吸い上げ工程S4を簡略化して示す説明図である。
引き込まれたトリガー5は、上述した通り図示しないバネにより引き込まれていない状態へと復帰する。このとき、基礎ピストン4aとトリガーが連動しているため、トリガー5のバネ力による復帰に伴って基礎ピストン4aはファーストバルブV1から遠ざかる方向へと基礎シリンダ4内を摺動する。これによって、基礎シリンダ4内が負圧となってファーストバルブV1が開弁し、容器1内から吸い上げ通路3を介して基礎シリンダ4内へと液が吸い上げられる。
これによって、基礎シリンダ4内は再度、液が満ちた状態となり、次の噴射の準備が整った状態となる。
【0059】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。
【0060】
ノズル8の口径及び形状は任意である。求めるスプレーの形状に応じて、口径の大小を調整したり、又は網等の構造物を設けてもよい。
【0061】
本実施例において、弾圧バネ体9は複数のバネ小片9aよりなったが、これに限られない。例えば、1つのスプリングコイルとしてもよい。この場合、部品点数を少なくすることが出来る。また、比較的高い押圧力を弾圧バネ体に発揮させることができる。
【産業上の利用可能性】
【0062】
本発明の蓄圧式スプレイヤーAは、家庭用又は業務用のスプレイヤーとして、連続的な噴射が必要な場合に、広く利用することが可能である。
【符号の説明】
【0063】
A・・・蓄圧式スプレイヤー
AA・・・噴射方法
1・・・容器
2・・・キャップ部
B・・・ベース部
3・・・吸い上げ通路
4・・・基礎シリンダ
4a・・・基礎ピストン
4b・・・ベントピストン
4c・・・ベント孔
4d・・・排気孔
5・・・トリガー
6・・・バルブケース
6a・・・バルブケースシリンダ
7・・・貯蓄シリンダ
7a・・・貯蓄ピストン
8・・・ノズル
P1・・・第1流路
P2・・・第2流路
V1・・・ファーストバルブ
V2・・・セカンドバルブ
V3・・・ノズルバルブ
9・・・弾圧バネ体
9a・・・バネ小片
9aa・・・平板部
9ab・・・連結部
S1・・・充填工程
S2・・・噴射工程
S3・・・充填後噴射工程
S4・・・吸い上げ工程
【要約】 (修正有)
【課題】トリガーの最大可動幅に制約を受けずに連続スプレーをすることが可能な蓄圧式スプレイヤー及び当該蓄圧式スプレイヤーを用いた噴射方法を提供する。
【解決手段】容器1内の液をスプレーするための蓄圧式スプレイヤーAであって、吸い上げ通路3を介して容器から液を吸入する基礎シリンダ4と、基礎シリンダ内を摺動する基礎ピストン4aと、基礎シリンダの下流に位置する貯蓄シリンダ7と、貯蓄シリンダ内を摺動する貯蓄ピストンと、貯蓄シリンダの周囲に設けられたバルブケース6と、基礎シリンダと貯蓄シリンダとを連通する第1流路P1と、貯蓄シリンダとバルブケースとの間に設けられた第2流路と、吸い上げ通路と基礎シリンダとの間を開閉するファーストバルブV1と、基礎シリンダとバルブケースとの間を開閉するセカンドバルブV2と、貯蓄シリンダ内を摺動しバルブケースとノズルとの間を開閉するノズルバルブV3とを備える。
【選択図】
図1