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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-03-19
(45)【発行日】2025-03-28
(54)【発明の名称】空気調和装置
(51)【国際特許分類】
   F24F 11/74 20180101AFI20250321BHJP
【FI】
F24F11/74
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2021076725
(22)【出願日】2021-04-28
(65)【公開番号】P2022170532
(43)【公開日】2022-11-10
【審査請求日】2024-03-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000002853
【氏名又は名称】ダイキン工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000202
【氏名又は名称】弁理士法人新樹グローバル・アイピー
(72)【発明者】
【氏名】高橋 健
(72)【発明者】
【氏名】山川 剛史
【審査官】佐藤 正浩
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-128157(JP,A)
【文献】特開平08-136038(JP,A)
【文献】特開2011-231975(JP,A)
【文献】特開2008-267795(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24F 11/74
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧縮機(21)から吐出された高温高圧の冷媒と、室内ファン(34)の回転によって吸込口から取り込まれた空気とを室内熱交換器(32)で熱交換させ、前記室内熱交換器(32)で加熱された前記空気を吹出口から送出して、室内の暖房を行う空気調和装置であって、
前記室内の温度(Tr)を測定する第1温度測定部と、
前記室内熱交換器(32)の温度(Th)を測定する第2温度測定部と、
前記室内ファン(34)の回転数を制御する制御部(40)と、
を備え、
前記制御部(40)は、暖房運転中の負荷を示す代用値が所定条件を満たした低負荷暖房運転のとき、前記室内熱交換器(32)の温度(Th)が第1温度(Ta)以下の場合、
前記室内の温度(Tr)が第2温度(Tb)以下のときは前記室内ファン(34)を第1回転数(fa)で回転させ、
前記室内の温度(Tr)が第2温度(Tb)を超えるときは前記室内ファン(34)を前記第1回転数(fa)よりも大きい第2回転数(fb)で回転させる、
空気調和装置(1)。
【請求項2】
前記代用値は、前記室内の温度の設定値と測定値との差(△T)であり、
前記所定条件は、前記差(△T)が0℃以下である、
請求項1に記載の空気調和装置(1)。
【請求項3】
前記代用値は、前記圧縮機(21)の運転周波数(fo)であり、
前記所定条件は、前記運転周波数(fo)が20Hz以下である、
請求項1に記載の空気調和装置(1)。
【請求項4】
前記第1温度測定部は、前記吸込口に取り込まれる空気の温度を検出する第1温度センサ(61)を有し、前記第1温度センサ(61)の検出値を前記室内の温度(Tr)として代用する、
請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の空気調和装置(1)。
【請求項5】
前記第1温度測定部は、室内の輻射温度を検出する輻射センサを有し、前記輻射センサの検出値を前記室内の温度として代用する、
請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の空気調和装置(1)。
【請求項6】
前記第2温度測定部は、前記室内熱交換器(32)に取り付けられる第2温度センサ(62)を有し、
前記制御部(40)は、前記第2温度センサ(62)の検出値を前記室内熱交換器(32)の温度として代用する、
請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の空気調和装置(1)。
【請求項7】
前記第2温度測定部は、前記室内熱交換器(32)から前記吹出口に到る空気通路に配置される第3温度センサを有し、前記第3温度センサの検出値から前記室内熱交換器(32)の温度を推定する、
請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の空気調和装置(1)。
【請求項8】
前記第1回転数(fa)の下限値は、前記室内熱交換器(32)の温度(Th)に応じて設定されており、
前記室内の温度(Tr)が前記第2温度(Tb)より大きい場合における前記第1回転数(fa)の下限値は、前記室内の温度(Tr)が前記第2温度(Tb)以下の場合における前記第1回転数(fa)の下限値よりも大きい、
請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の空気調和装置(1)。
【請求項9】
前記室内ファン(34)の風量を設定する風量設定手段(50)をさらに備え、
前記室内の温度(Tr)が前記第2温度(Tb)よりも大きいとき、前記制御部(40)は、前記風量設定手段(50)によって設定された風量に応じた回転数で前記室内ファン(34)を回転させる、
請求項1から請求項8のいずれか1項に記載の空気調和装置(1)。
【請求項10】
前記第1温度(Ta)は、18℃~35℃の範囲内で設定される、
請求項1から請求項9のいずれか1項に記載の空気調和装置(1)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
空気調和装置に関する。
【背景技術】
【0002】
空気調和装置による暖房運転時、室内の温度が設定温度に近づくと、居住者にドラフト感(冷風感)を与えることがある。これは、室内の温度が設定温度に近づき、室内熱交換器の温度が低下することに起因している。このドラフト感(冷風感)を防止するため、例えば、特許文献1(実公昭53-1632号公報)に記載の空気調和装置では、室内の温度が設定温度に近づいたときに室内ファンの風量を下げるような制御が行われている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
そのため、室内の空気が攪拌されにくくなり、室内の上部に「暖気だまり」が生じ易く、かかる場合、サーモオフし易くなる。
【0004】
それゆえ、居住者にドラフト感を与えることを抑制しつつ、室内の上部における「暖気だまり」の発生を抑制する、という課題が存在する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
第1観点の空気調和装置は、圧縮機から吐出された高温高圧の冷媒と、室内ファンの回転によって吸込口から取り込まれた空気とを室内熱交換器で熱交換させ、室内熱交換器で加熱された空気を吹出口から送出して、室内の暖房を行う空気調和装置である。当該空気調和装置は、第1温度測定部と、第2温度測定部と、制御部とを備えている。第1温度測定部は、室内の温度を測定する。第2温度測定部は、室内熱交換器の温度を測定する。制御部は、室内ファンの回転数を制御する。また、制御部は、暖房運転中の負荷を示す代用値が所定条件を満たしたとき、室内熱交換器の温度が第1温度以下の場合、室内ファンを以下のように制御する。室内の温度が第2温度以下のときは室内ファンを第1回転数で回転させる。室内の温度が第2温度を超えるときは室内ファンを第1回転数よりも大きい第2回転数で回転させる。
【0006】
この空気調和装置では、室内の温度が高くなれば、吹出空気が居住者に当たってもドラフト感(冷風感)を与え難くなるので、室内の温度の上昇に合わせて、室内ファンの風量を上げることによって、室内の空気が撹拌され、室内上部の「暖気だまり」の発生を抑制することができる。
【0007】
第2観点の空気調和装置は、第1観点の空気調和装置であって、代用値が、室内の温度の設定値から測定値を差し引いたときの差△Tである。そして、所定条件は、差△Tが0℃以下である。
【0008】
この空気調和装置では、室内の温度の設定値から測定値を差し引いたときの差△Tが0℃以下ならば室内の温度が安定しており、従来の室内ファン風量制御ならば、室内の空気を撹拌する程の風量が得られないが、室内の温度の上昇に合わせて、室内ファンの風量を上げることで、室内の空気が撹拌され、室内上部の暖気だまりの発生を抑制することができる。
【0009】
第3観点の空気調和装置は、第1観点の空気調和装置であって、代用値が、圧縮機の運転周波数foである。そして、所定条件は、運転周波数foが20Hz以下である。
【0010】
この空気調和装置では、圧縮機の運転周波数foが20Hz以下ならば室内の温度が安定しており、従来の室内ファン風量制御ならば、室内の空気を撹拌する程の風量が得られないが、室内の温度の上昇に合わせて、室内ファンの風量を上げることで、室内の空気が撹拌され、室内上部の暖気だまりの発生を抑制することができる。
【0011】
第4観点の空気調和装置は、第1観点から第3観点のいずれか1つの空気調和装置であって、第1温度測定部が、吸込口に取り込まれる空気の温度を検出する第1温度センサを有している。第1温度測定部は、第1温度センサの検出値を室内の温度として代用する。
【0012】
この空気調和装置では、既設の温度センサを利用することができるので、合理的である。
【0013】
第5観点の空気調和装置は、第1観点から第3観点のいずれか1つの空気調和装置であって、第1温度測定部が、室内の輻射温度を検出する輻射センサを有している。第1温度測定部は、輻射センサの検出値を室内の温度として代用する。
【0014】
第6観点の空気調和装置は、第1観点から第5観点のいずれか1つの空気調和装置であって、第2温度測定部が、室内熱交換器に取り付けられる第2温度センサを有している。第2温度測定部は、第2温度センサの検出値を室内熱交換器の温度として代用する。
【0015】
この空気調和装置では、既設の温度センサを利用することができるので、合理的である。
【0016】
第7観点の空気調和装置は、第1観点から第5観点のいずれか1つの空気調和装置であって、第2温度測定部が、室内熱交換器から吹出口に到る空気通路に配置される第3温度センサを有している。制御部は、第3温度センサの検出値から室内熱交換器の温度を推定する。
【0017】
第8観点の空気調和装置は、第1観点から第7観点のいずれか1つの空気調和装置であって、第1回転数の下限値が、室内熱交換器の温度に応じて設定されている。室内の温度が第2温度より大きい場合における第1回転数の下限値は、室内の温度が第2温度以下の場合における第1回転数の下限値よりも大きい。
【0018】
この空気調和装置では、室内の温度が高くなるほど、段階的に室内ファンの回転数の下限値は大きくなる。したがって、暖房負荷が小さくなる条件下では、室内の温度に見合った風量で室内の空気を撹拌し、暖気だまりの発生を抑制すことができる。
【0019】
第9観点の空気調和装置は、第1観点から第8観点のいずれか1つの空気調和装置であって、室内ファンの風量を設定する風量設定手段をさらに備えている。室内の温度が第2温度よりも大きいとき、制御部は、風量設定手段によって設定された風量に応じた回転数で室内ファンを回転させる。
【0020】
この空気調和装置では、ドラフト感は個人差があるので、風量設定手段によって設定されたユーザー好みの風量で暖気だまりの発生が抑制される。
【0021】
第10観点の空気調和装置は、第1観点から第9観点のいずれか1つの空気調和装置であって、第1温度が、18℃~35℃の範囲内で設定されている。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本開示の一実施形態に係る空気調和装置の構成図である。
図2】空気調和装置の制御部を示すブロック図である。
図3】運転時の室内ユニットの断面図である。
図4】暖気だまり抑制制御のフローチャートである。
図5】室内熱交換器の温度別に室内ファンの回転数を示した表である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
(1)空気調和装置1の構成
図1は、本開示の一実施形態に係る空気調和装置1の構成図である。図1において、空気調和装置1は、室内の冷房及び暖房を行う。空気調和装置1は、室外に設置される室外ユニット2と、室内に設置される室内ユニット3とを備えている。
【0024】
室外ユニット2と室内ユニット3とは、2本の連絡配管11、12によって互いに接続されることによって、冷媒回路10を構成している。冷媒回路10では、充填された冷媒が循環することによって、蒸気圧縮式の冷凍サイクルが行われる。
【0025】
また、空気調和装置1は、制御部40を備えている。制御部40は、室外ユニット2に搭載されている室外側制御部41と、室内ユニット3に搭載されている室内側制御部42とを含む。室内側制御部42は、リモートコントローラ50と無線または有線で繋がっている。
【0026】
室内ユニット3が据え付けられている居住空間(以下、「室内」という。)の居住者は、リモートコントローラ50を介して、空気調和装置1の設定温度および風量を変更することができる。
【0027】
(1-1)室外ユニット2
室外ユニット2は、圧縮機21、四方切換弁22、室外熱交換器23、及び室外膨張弁24を含んでいる。
【0028】
(1-1-1)圧縮機21
圧縮機21は、低圧の冷媒を圧縮し、圧縮後の高圧の冷媒を吐出する。圧縮機21では、スクロール式、ロータリ式等の圧縮機構がモータ21mによって駆動される。モータ21mの運転回転数は、インバータ装置によって変更される。
【0029】
(1-1-2)四方切換弁22
四方切換弁22は、第1から第4までのポートP1~P4を有している。四方切換弁22では、第1ポートP1が圧縮機21の吐出側に接続され、第2ポートP2が圧縮機21の吸入側(具体的には、アキュムレータ25)に接続され、第3ポートP3が室外熱交換器23のガス側端部に接続され、第4ポートP4がガス側閉鎖弁28に接続されている。
【0030】
四方切換弁22は、第1状態(図1の実線で示す状態)と第2状態(図1の破線で示す状態)とに切り換わる。第1状態の四方切換弁22では、第1ポートP1と第3ポートP3とが連通し且つ第2ポートP2と第4ポートP4とが連通する。
【0031】
第2状態の四方切換弁22では、第1ポートP1と第4ポートP4とが連通し且つ第2ポートP2と第3ポートP3とが連通する。
【0032】
(1-1-3)室外熱交換器23
室外熱交換器23は、フィン・アンド・チューブ式の熱交換器である。室外熱交換器23の近傍には、室外ファン29が設置される。室外熱交換器23では、室外ファン29が搬送する空気と室外熱交換器23内を流れる冷媒とが熱交換する。
【0033】
(1-1-4)室外膨張弁24
室外膨張弁24は、開度可変の電子膨張弁である。室外膨張弁24は、冷房運転時の冷媒回路10における冷媒の流れ方向において室外熱交換器23の下流側に配置されている。
【0034】
冷房運転時、室外膨張弁24の開度は、室内熱交換器32に流入する冷媒を蒸発圧力まで減圧するように調節される。また、暖房運転時は、室外膨張弁24の開度は、室外熱交換器23に流入する冷媒を蒸発圧力まで減圧するように調節される。
【0035】
(1-1-5)室外側制御部41
図1に示すように、室外ユニット2には室外側制御部41が搭載されている。また、図2は、空気調和装置1の制御部40を示すブロック図である。図2において、室外側制御部41は、マイコン41a、メモリ41bを内蔵している。マイコン41aは、各種の演算を行い、制御対象機器への指令を行う。メモリ41bは、各種データを格納する。
【0036】
(1-1-6)室外ファン29
図1に示すように、室外ファン29は、プロペラファン29aと、プロペラファン29aを駆動するモータ29bとで構成されている。モータ29bは、インバータ装置によって、その回転数が可変である。
【0037】
(1-1-7)液連絡配管11およびガス連絡配管12
2本の連絡配管は、液連絡配管11およびガス連絡配管12を含む。液連絡配管11は、一端が液側閉鎖弁27に接続され、他端が室内熱交換器32の液側端部に接続される。
【0038】
ガス連絡配管12は、一端がガス側閉鎖弁28に接続され、他端が室内熱交換器32のガス側端部に接続される。
【0039】
(1-2)室内ユニット3
図3は、運転時の室内ユニット3の断面図である。図3において、室内ユニット3は、本体ケーシング30と、室内熱交換器32と、室内ファン34と、室内側制御部42とを含んでいる。
【0040】
(1-2-1)本体ケーシング30
本体ケーシング30は、内部に室内熱交換器32、室内ファン34、および室内側制御部42を収納している。
【0041】
本体ケーシング30の上部には、吸込口310が設けられている。本体ケーシング30の下部には、吹出口311が設けられている。
【0042】
吹出口311の近傍には、吹出口311から吹き出される吹出空気の方向を変更する風向調整羽根36(第1風向調整羽根361および第2風向調整羽根362)が回動自在に取り付けられている。
【0043】
また、吹出口311は、吹出流路318によって本体ケーシング30の内部と繋がっている。吹出流路318は、吹出口311から底フレーム316のスクロール317に沿って形成されている。室内熱交換器32および室内ファン34は、底フレーム316に取り付けられている。
【0044】
本実施形態では、吸込口310と吹出口311とを結ぶ空気流路に、室内熱交換器32が配置されている。室内空気は、室内ファン34の稼動によって吸込口310、室内熱交換器32を経て室内ファン34に吸い込まれ、室内ファン34から吹出流路318を経て吹出口311から吹き出される。
【0045】
(1-2-2)室内熱交換器32
室内熱交換器32は、通過する空気との間で熱交換を行うフィン・アンド・チューブ式の熱交換器である。室内熱交換器32は、側面視において両端が下方に向いて屈曲する逆V字状の形状を成し、その下方に室内ファン34が位置する。室内熱交換器32は、第1熱交換部321と、第2熱交換部322とを含んでいる。
【0046】
(1-2-3)室内ファン34
室内ファン34は、クロスフローファンである。室内ファン34は、室内熱交換器32の下方に位置し、室内から取り込んだ空気を室内熱交換器32に当てて通過させた後、室内に吹き出す。室内ファン34は、横長のファン34aと、ファン34aを駆動するモータ34bとで構成されている。モータ34bは、インバータ装置によって、その回転数が可変である。
【0047】
(1-2-4)第1風向調整羽根361および第2風向調整羽根362
第1風向調整羽根361は、モータ(図示せず)によって駆動されて揺動し、傾斜角が異なる複数の姿勢をとることが可能である。第1風向調整羽根361が揺動するときの回転軸は、吹出口311の上端側に設けられている。
【0048】
第2風向調整羽根362は、モータ(図示せず)によって駆動されて揺動し、吹出空気の方向を変更するだけでなく、吹出口311を開閉することもできる。第2風向調整羽根362は、傾斜角が異なる複数の姿勢をとることが可能である。第2風向調整羽根362が揺動するときの回転軸は、吹出口311の下端側に設けられている。
【0049】
(1-2-5)室内側制御部42
図1に示すように、室内ユニット3には、室内側制御部42が搭載されている。また、図2に示すように、室内側制御部42は、マイコン42aおよびメモリ42bを内蔵している。
【0050】
マイコン42aは、室内ユニット3における各種の演算を行う。また、メモリ42bは、各種データを格納する。
【0051】
また、マイコン42aは、室内ユニット3を個別に操作するためのリモートコントローラ50との間で制御信号等の通信を行い、さらに、室外ユニット2との間で伝送線を介して制御信号等の通信を行う。
【0052】
(1-2-6)各種センサ
室内ユニット3には、室内温度センサ61および熱交換器温度センサ62が設けられている。室内温度センサ61は、室内ユニット3の室内空気の吸込口側に設けられている。室内温度センサ61は、室内ユニット3内に流入する室内空気の温度(以下、室内温度Trという)を測定する。
【0053】
熱交換器温度センサ62は、室内熱交換器32のほぼ中央に取り付けられ、室内熱交換器32内を流通する冷媒の温度を測定する。
【0054】
(1-3)制御部40
制御部40は、室外ユニット2の室外側制御部41と、室内ユニット3の室内側制御部42と、を協働させることで、空気調和装置1の動作を制御する。例えば、制御部40は、室外側制御部41や室内側制御部42のマイコンが、それぞれのメモリに記憶されたプログラムを実行することによって、空気調和装置1全体の動作を制御する。
【0055】
制御部40は、図2に示すように、室内温度センサ61と、熱交換器温度センサ62と通信可能に接続されている。また、制御部40は、室内ファン34のモータ34b、圧縮機21のモータ21m、四方切換弁22、室外膨張弁24、室外ファン29のモータ26b、第1風向調整羽根361のモータ、および第2風向調整羽根362のモータと電気的に接続されている。
【0056】
(2)運転動作
次に、本実施形態に係る空気調和装置1の運転動作について説明する。空気調和装置1では、冷房運転と暖房運転とが切り換えて行われる。ここでは、暖房運転、冷房運転の順に説明する。
【0057】
(2-1)冷房運転
冷房運転では、図1に示す四方切換弁22が実線で示す状態となり、圧縮機21、室内ファン34、室外ファン29が運転状態となる。これにより、冷媒回路10では、室外熱交換器23が凝縮器となり、室内熱交換器32が蒸発器となる冷凍サイクルが行われる。
【0058】
具体的には、圧縮機21で圧縮された高圧冷媒は、室外熱交換器23を流れ、室外空気と熱交換する。室外熱交換器23では、高圧冷媒が室外空気へ放熱して凝縮する。室外熱交換器23で凝縮した冷媒は、室内熱交換器32へ送られる途中において、室外膨張弁24で減圧され、その後、室内熱交換器32を流れる。
【0059】
室内ユニット3では、室内ファン34によって吸い込まれた室内空気が、室内熱交換器32を通過し、その際に室内熱交換器32内を流れる冷媒と熱交換する。室内熱交換器32では、冷媒が室内空気から吸熱して蒸発し、その際に空気が冷却される。室内熱交換器32で冷却された空気は、室内空間へ供給される。室内熱交換器32で蒸発した冷媒は、圧縮機21に吸入され再び圧縮される。
【0060】
(2-2)暖房運転
暖房運転では、図1に示す四方切換弁22が破線で示す状態となり、圧縮機21、室内ファン34、室外ファン29が運転状態となる。これにより、冷媒回路10では、室内熱交換器32が凝縮器となり、室外熱交換器23が蒸発器となる冷凍サイクルが行われる。
【0061】
具体的には、圧縮機21で圧縮された高圧冷媒は、室内熱交換器32を流れる。室内ユニット3では、室内ファン34よって吸い込まれた室内空気が、室内熱交換器32を通過し、その際に室内熱交換器32内を流れる冷媒と熱交換する。室内熱交換器32では、冷媒が室内空気へ放熱して凝縮し、その際に空気が加熱される。室内熱交換器32で加熱された空気は、室内空間へ供給される。また、室内熱交換器32で凝縮した冷媒は、室外膨張弁24で減圧された後、室外熱交換器23を流れる。室外熱交換器23では、冷媒が室外空気から吸熱して蒸発する。室外熱交換器23で蒸発した冷媒は、圧縮機21に吸入され再び圧縮される。
【0062】
(2-2-1)暖房運転時のサーモオフおよびサーモオン
ここでは、暖房運転時のサーモオフおよびサーモオンについて説明する。
【0063】
サーモオフとは、暖房運転時、設定温度に応じて、自動的に暖房運転を一時的に停止させる機能である。具体的には、制御部40は、室内温度Trが設定温度Tsを超えて、かつ設定温度Tsから室内温度Trを差し引いたときの差△Tの絶対値が、所定値(例えば、2K)より大きくなった場合に、圧縮機21を一時的に停止させる。このとき、室内熱交換器32の凝縮器としての機能も一時的に停止する。
【0064】
サーモオンとは、サーモオフ時において、設定温度Tsに応じて、自動的に暖房運転を再開させる機能である。具体的には、制御部40は、室内温度Trが設定温度Tsを下まわり、かつ設定温度Tsから室内温度Trを差し引いた差△Tの絶対値が、所定値(例えば、2K)より大きくなった場合に、圧縮機21を再稼働させる。このとき、室内熱交換器32の凝縮器としての機能が復活する。
【0065】
(2-2-2)低負荷暖房運転時の風量低減による冷風抑制機能
暖房運転時において、室内熱交換器32を流れる冷媒の温度が所定値よりも低下した場合に、居住者が吹出口311からの吹出空気に当たると寒いと感じることがあり、これを、ドラフト感という。
【0066】
ここで、「室内熱交換器32を流れる冷媒の温度が所定値よりも低下する場合」とは、例えば、空気調和装置1が低負荷暖房運転を行っている場合である。
【0067】
また、低負荷暖房運転とは、暖房運転中の負荷を示す代用値が所定条件を満たしている運転であり、本実施形態では、代用値が室内温度の設定値から測定値を差し引いたときの差△Tであり、所定条件は差△Tが所定値以下であり、サーモオフ前である。
【0068】
例えば、設定温度Ts=20℃のとき、サーモオフ直前の室内熱交換器32の温度Thは25℃~30℃となり、吹出空気の温度は室内熱交換器32の温度Thよりも低くなるので、居住者がその吹出空気に当たると寒いと感じる。
【0069】
制御部40は、居住者にこのドラフト感を与えることを防止するため、室内ファン34のモータ34bの回転数を下げ、吹出口311から吹き出される空気の風量を下げている。この機能が、冷風抑制機能である。冷風抑制機能が働いているときの風量は、例えば、設定可能な最小の風量に調整される。
【0070】
(2-2-3)暖気だまりの抑制
しかしながら、冷風抑制機能が働いて、吹出口311からの吹出空気の風量が下がった場合、室内ユニット3の周囲に暖気が滞留する「暖気だまり」が生じる。
【0071】
暖気だまりが生じた場合、室内ユニット3の周囲の空気の温度が、室内ユニット3の周囲以外の室内の空気の温度よりも高くなる。そのため、室内ユニット3の周囲以外の室内の空気の温度が低いにもかかわらず、誤ってサーモオフが実行されるおそれがある。
【0072】
そこで、制御部40は、設定温度Tsから室内温度Trを差し引いたときの差△Tが所定値以下であって、室内熱交換器32の温度Thが第1温度Ta以下の場合、室内温度Trが第2温度Tb以下のときは室内ファン34を第1回転数faで回転させる。逆に、室内温度Trが第2温度Tbを超えるときは室内ファン34を第1回転数faよりも大きい第2回転数fbで回転させる。
【0073】
図4は、暖気だまり抑制制御のフローチャートである。以下、図4を参照しながら、暖気だまり抑制制御の動作について説明する。
【0074】
(ステップS1)
制御部40は、ステップS1において、室内の設定温度Tsを読み込む。設定温度Tsは、居住者によりリモートコントローラ50を介して設定されており、設定値は室内側制御部42のメモリ42bに記憶されている。
【0075】
(ステップS2)
次に、制御部40は、ステップS2において、室内温度Trを測定する。本実施形態では、室内温度Trは、室内ユニット3の室内空気の吸込口側に設けられている室内温度センサ61の検出値で代用されている。
【0076】
(ステップS3)
次に、制御部40は、ステップS3において、設定温度Tsから室内温度Trを差し引いたときの差△Tが所定値d以下であるか否かを判定する。本実施形態では、d=0℃である。差△Tが所定値d以下のときは、暖房運転が低負荷運転であると判断し、ステップS4へ進む。
【0077】
(ステップS4)
次に、制御部40は、ステップS4において、室内熱交換器32の温度Thを測定する。本実施形態では、室内熱交換器32の温度Thは、室内熱交換器32のほぼ中央に取り付けられている熱交換器温度センサ62の検出値で代用されている。
【0078】
(ステップS5)
次に、制御部40は、ステップS5において、室内熱交換器32の温度ThがTa以下であるか否かを判定する。温度Thが第1温度Ta以下のときはステップS6に進む。
【0079】
(ステップS6)
次に、制御部40は、ステップS6において、室内温度TrがTb以下であるか否かを判定する。室内温度TrがTb以下のときはステップS7に進み、室内温度TrがTbを超えているときはステップS8に進む。
【0080】
(ステップS7)
制御部40は、ステップS7において、室内ファン34を第1回転数faで回転させる。状態としては、暖房運転が低負荷暖房運転に移行し、室内熱交換器32の温度Thが第1温度Ta以下となり、室内温度Trが第2温度Tb以下であるので、居住者は吹出空気を冷たく感じやすい。したがって、制御部40は、冷風抑制機能を働かせて、室内ファン34を第1回転数faで回転させて、風量を最小にする。
【0081】
(ステップS8)
一方、制御部40は、ステップS8において、室内ファン34を第1回転数faよりも大きい第2回転数fbで回転させる。状態としては、暖房運転が低負荷暖房運転に移行し、室内熱交換器32の温度Thが第1温度Ta以下となり、室内温度Trが第2温度Tbを超えているので、居住者は吹出空気を冷たく感じ難い。
【0082】
したがって、制御部40は、室内ファン34を第2回転数fbで回転させて風量を上げ、室内の空気を撹拌し、室内上部の「暖気だまり」の発生を抑制する。
【0083】
より具体的には、制御部40は、室内熱交換器32の温度Thに応じて室内ファン34の回転数を変更し風量を制御する。室内ファン34による風量は、低い方からSタップ,Lタップ,Mタップ,Hタップの4段階に設定可能であるので、冷風抑制機能が働いているときは、既定の回転数であっても室内熱交換器32の温度Thが低いと判断されたときは、LタップまたはSタップに対応する低い回転数へ変更する。そして、吹出空気の温度が上昇し、居住者に当たってドラフト感を与えないか、或いはドラフト感を与える可能性が低いという判断が為されると、制御部40は室内ファン34の回転数を上げる。
【0084】
図5は、室内熱交換器32の温度別に室内ファン34の回転数を示した表である。図5において、室内熱交換器32の温度Thが20℃以下で室内温度Trが18℃以下のとき、室内ファン34の回転数の下限値は、Sタップに対応する回転数fs1である。次に、室内熱交換器32の温度Thが20℃以下で室内温度Trが18℃超のとき、室内ファン34の回転数の下限値は、回転数fs1+α1である。
【0085】
また、室内熱交換器32の温度Thが22℃以下で室内温度Trが20℃以下のとき、室内ファン34の回転数の下限値は、Sタップに対応する回転数fs2である。次に、室内熱交換器32の温度Thが22℃以下で室内温度Trが20℃超のとき、室内ファン34の回転数の下限値は、回転数fs2+α2である。
【0086】
また、室内熱交換器32の温度Thが24℃以下で室内温度Trが22℃以下のとき、室内ファン34の回転数の下限値は、Sタップに対応する回転数fs3である。次に、室内熱交換器32の温度Thが24℃以下で室内温度Trが22℃超のとき、室内ファン34の回転数の下限値は、回転数fs3+α3である。
【0087】
また、室内熱交換器32の温度Thが26℃以下で室内温度Trが24℃以下のとき、室内ファン34の回転数の下限値は、Sタップに対応する回転数fs4である。次に、室内熱交換器32の温度Thが26℃以下で室内温度Trが24℃超のとき、室内ファン34の回転数の下限値は、回転数fs4+α4である。
【0088】
(3)特徴
(3-1)
制御部40は、暖房運転中の負荷を示す代用値が所定条件を満たしたとき、室内熱交換器32の温度Thが第1温度Ta以下の場合、室内ファン34を以下のように制御する。室内の温度Trが第2温度Tb以下のときは室内ファン34を第1回転数faで回転させる。室内の温度Trが第2温度Tbを超えるときは室内ファン34を第1回転数faよりも大きい第2回転数fbで回転させる。
【0089】
それゆえ、空気調和装置1では、室内の温度Trが高くなれば、吹出空気が居住者に当たってもドラフト感(冷風感)を与え難くなるので、室内の温度の上昇に合わせて、室内ファン34の風量を上げることによって、室内の空気が撹拌され、室内上部の「暖気だまり」の発生を抑制することができる。
【0090】
(3-2)
上記代用値が、室内の温度の設定値から測定値を差し引いたときの差△Tである。そして、上記所定条件は、差△Tが0℃以下である。
【0091】
それゆえ、空気調和装置1では、室内の温度の設定値から測定値を差し引いたときの差△Tが0℃以下ならば室内の温度が安定しており、従来の室内ファン風量制御ならば、室内の空気を撹拌する程の風量が得られないが、室内の温度の上昇に合わせて、室内ファン34の風量を上げることで、室内の空気が撹拌され、室内上部の暖気だまりの発生を抑制することができる。
【0092】
(3-3)
空気調和装置1では、室内温度センサ61の検出値が室内の温度として代用されるので、既設の温度センサを利用することができ、合理的である。
【0093】
(3-4)
空気調和装置1では、熱交換器温度センサ62の検出値を室内熱交換器32の温度として代用されるので、既設の温度センサを利用することができ、合理的である。
【0094】
(3-5)
第1回転数faの下限値が、室内熱交換器32の温度Thに応じて設定されている。室内の温度Thが第2温度Tbより大きい場合における第1回転数の下限値は、室内の温度が第2温度Tb以下の場合における第1回転数の下限値よりも大きい。
【0095】
空気調和装置1では、室内の温度が高くなるほど、段階的に室内ファン34の回転数の下限値は大きくなる。したがって、暖房負荷が小さくなる条件下では、室内の温度に見合った風量で室内の空気を撹拌し、暖気だまりの発生を抑制すことができる。
【0096】
(3-6)
制御部40は、室内の温度Trが第2温度Tbよりも大きいとき、リモートコントローラ50によって設定された風量に応じた回転数で室内ファン34を回転させる。
【0097】
空気調和装置1では、ドラフト感は個人差があるので、リモートコントローラ50によって設定されたユーザー好みの風量で暖気だまりの発生が抑制される。
【0098】
(3-7)
第1温度Taが、18℃~28℃の範囲内で設定されている。
【0099】
(4)変形例
(4-1)第1変形例
上記実施形態では、低負荷暖房運転を、「暖房運転中の負荷を示す代用値が所定条件を満たしている運転であり、本実施形態では、代用値が室内温度の設定値から測定値を差し引いたときの差△Tであり、所定条件は差△Tが0℃以下であり、」と定義している。
【0100】
但し、これに限定されるものではなく、上記代用値が、圧縮機の運転周波数foであり、所定条件は運転周波数foが20Hz以下であってもよい。
【0101】
第1変形例に係る空気調和装置1では、圧縮機21の運転周波数foが20Hz以下ならば室内の温度が安定しており、従来の室内ファン風量制御ならば、室内の空気を撹拌する程の風量が得られないが、室内の温度の上昇に合わせて、室内ファン34の風量を上げることで、室内の空気が撹拌され、室内上部の暖気だまりの発生を抑制することができる。
【0102】
(4-2)第2変形例
上記実施形態では、室内温度センサ61の検出値が室内の温度として代用されているが、これに限定されるものではなく、室内温度センサ61に替えて輻射センサを設け、輻射センサの検出値を室内の温度として代用してもよい。
【0103】
(4-3)
上記実施形態では、熱交換器温度センサ62の検出値が室内熱交換器32の温度として代用されているが、これに限定されるものではなく、室内熱交換器32から吹出口311に到る吹出流路318に第3温度センサが配置され、制御部40が、第3温度センサの検出値から室内熱交換器32の温度を推定してもよい。
【0104】
以上、本開示の実施形態を説明したが、特許請求の範囲に記載された本開示の趣旨及び範囲から逸脱することなく、形態や詳細の多様な変更が可能なことが理解されるであろう。
【符号の説明】
【0105】
1 空気調和装置
32 室内熱交換器
34 室内ファン
40 制御部
41 室外側制御部(制御部)
42 室内側制御部(制御部)
50 リモートコントローラ(風量設定手段)
61 室内温度センサ(第1温度測定部)
62 熱交換器温度センサ(第2温度測定部)
311 吹出口
318 吹出流路(空気通路)
321 第1熱交換部(室内熱交換器)
322 第2熱交換部(室内熱交換器)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0106】
【文献】実公昭53-1632号公報
図1
図2
図3
図4
図5