(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-03-19
(45)【発行日】2025-03-28
(54)【発明の名称】CAR-T細胞の製造方法、核酸導入キャリア及びキット
(51)【国際特許分類】
C12N 5/10 20060101AFI20250321BHJP
C12N 5/0783 20100101ALI20250321BHJP
C12N 15/12 20060101ALI20250321BHJP
C12N 15/54 20060101ALI20250321BHJP
C12N 15/87 20060101ALI20250321BHJP
C12N 9/10 20060101ALI20250321BHJP
【FI】
C12N5/10 ZNA
C12N5/0783
C12N15/12
C12N15/54
C12N15/87 Z
C12N9/10
(21)【出願番号】P 2023130389
(22)【出願日】2023-08-09
(62)【分割の表示】P 2019135549の分割
【原出願日】2019-07-23
【審査請求日】2023-08-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(73)【特許権者】
【識別番号】504180239
【氏名又は名称】国立大学法人信州大学
(74)【代理人】
【識別番号】110001737
【氏名又は名称】弁理士法人スズエ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】赤星 英一
(72)【発明者】
【氏名】石原 美津子
(72)【発明者】
【氏名】中沢 洋三
(72)【発明者】
【氏名】盛田 大介
【審査官】小林 薫
(56)【参考文献】
【文献】特表2018-509151(JP,A)
【文献】特表2015-500835(JP,A)
【文献】特表2002-529439(JP,A)
【文献】国際公開第2017/061615(WO,A1)
【文献】国際公開第2014/153114(WO,A1)
【文献】特表2018-533573(JP,A)
【文献】国際公開第2018/073393(WO,A2)
【文献】米国特許出願公開第2018/0016337(US,A1)
【文献】特表2019-507579(JP,A)
【文献】特表2008-545375(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0145348(US,A1)
【文献】特開2004-159501(JP,A)
【文献】特表2019-511566(JP,A)
【文献】Proc. Natl. Acad. Sci.,2016年,Vol.113, No.3,pp.520-525
【文献】Drug Deliv.,2013年,Vol.20, No.2,pp.57-64
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 15/00-15/90
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS (STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
キメラ抗原受容体(CAR)を発現する遺伝子改変T細胞(CAR-T細胞)を製造する方法であって、
T細胞を含む細胞集団を、前記T細胞を活性化する抗体で刺激する刺激工程、
前記刺激工程の後、前記細胞集団に、中空体である脂質粒子と、前記脂質粒子の内腔に内包された、CAR遺伝子を含む第1核酸及びトランスポゼース遺伝子を含む第2核酸とを含む核酸導入キャリアを接触させる遺伝子導入工程、及び
前記遺伝子導入工程の後、前記細胞集団を培養する培養工程
を含み、
前記脂質粒子を構成する第1の脂質化合物は、下記式(1-01)及び/又は下記式(1-02)の化合物を含み、
【化1-1】
【化1-2】
前記第1核酸及び前記第2核酸は互いに核酸の種類が異なる、製造方法。
【請求項2】
前記脂質粒子は、前記核酸導入キャリアの表面電荷を調整する脂質と、前記核酸導入キャリア同士の凝集を抑制する脂質との少なくとも1つを更に含む、
請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記脂質粒子の酸解離定数が6.5~8.0である、
請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記第1核酸及び前記第2核酸は、DNA、RNA、PNA又はこれらの何れかの誘導体である、
請求項1~3の何れか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記第1核酸及び前記第2核酸は、一本鎖又は二本鎖の、環状、直鎖又は分岐鎖核酸である、
請求項1~4の何れか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記第1核酸及び前記第2核酸は、一緒に前記脂質粒子に内包されているか、或いは、別々の前記脂質粒子に内包されている、
請求項1~5の何れか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記トランスポゼースは、PiggyBacである、
請求項1~6の何れか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記核酸導入キャリアは、前記第1核酸が第1の脂質粒子に内包されている第1のサブ核酸導入キャリアと、前記第2核酸が第2の脂質粒子に内包されている第2のサブ核酸導入キャリアとを含み、
前記第1の脂質粒子と、前記第2の脂質粒子とが、互いに同じ又は異なる組成を有する、
請求項1~7の何れか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記遺伝子導入工程において、前記第1のサブ核酸導入キャリアと、前記第2のサブ核酸導入キャリアとを同時に接触させる、
請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記遺伝子導入工程において、前記第2のサブ核酸導入キャリアを前記第1のサブ核酸導入キャリアよりも先に接触させる、
請求項8に記載の方法。
【請求項11】
前記刺激工程における前記抗体が、抗CD3抗体、抗CD28抗体の少なくともどちらか1つを含む、
請求項1~10の何れか1項に記載の方法。
【請求項12】
T細胞にCAR遺伝子を導入するための核酸導入キャリアであって、
中空体である脂質粒子と、前記脂質粒子の内腔に内包されたCAR遺伝子を含む第1核酸
及びトランスポゼース遺伝子を含む第2核酸とを含み、
前記脂質粒子を構成する第1の脂質化合物は、下記式(1-01)及び/又は下記式(1-02)の化合物を含み、
【化2-1】
【化2-2】
前記第1核酸及び前記第2核酸は互いに核酸の種類が異なる、核酸導入キャリア。
【請求項13】
前記脂質粒子は、前記核酸導入キャリアの酸解離定数を調整する脂質と、前記核酸導入キャリア同士の凝集を抑制する脂質との少なくとも1つを更に含む、
請求項12に記載の核酸導入キャリア。
【請求項14】
前記脂質粒子の酸解離定数が6.5~8.0である、
請求項12又は13の何れか1項に記載の核酸導入キャリア。
【請求項15】
前記第1核酸及び前記第2核酸は、DNA、RNA、PNA又はこれらの何れかの誘導体である、
請求項12~14の何れか1項に記載の核酸導入キャリア。
【請求項16】
前記第1核酸及び前記第2核酸は、一本鎖又は二本鎖の、環状、直鎖又は分岐鎖核酸である、
請求項12~15の何れか1項に記載の核酸導入キャリア。
【請求項17】
前記核酸導入キャリアが前記第1核酸及び前記第2核酸の両方を含む場合、
前記第1核酸及び前記第2核酸は、一緒に前記脂質粒子に内包されているか、或いは、別々の前記脂質粒子に内包されている、
請求項12~16の何れか1項に記載の核酸導入キャリア。
【請求項18】
前記トランスポゼースは、PiggyBacである、
請求項12~17の何れか1項に記載の核酸導入キャリア。
【請求項19】
前記核酸導入キャリアは、前記第1核酸が第1の脂質粒子に内包されている第1のサブ核酸導入キャリアと、前記第2核酸が第2の脂質粒子に内包されている第2のサブ核酸導入キャリアとを含み、
前記第1の脂質粒子と、前記第2の脂質粒子とが、互いに同じ又は異なる組成を有する、
請求項12~18の何れか1項に記載の核酸導入キャリア。
【請求項20】
請求項12~19の何れか1項に記載の核酸導入キャリア、及び
前記核酸導入キャリアの保管安定性を向上させる物質
を少なくとも
含む、CAR-T細胞を製造するためのキット。
【請求項21】
前記核酸導入キャリアが、固相に直接又は間接的に付着又は固定されている、
請求項20に記載のキット。
【請求項22】
前記固相が、金属、樹脂、ゲル又は繊維を材料とする容器、プレート又はシートである、
請求項21に記載のキット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、CAR-T細胞の製造方法、核酸導入キャリア及びキットに関する。
【背景技術】
【0002】
キメラ抗原受容体(Chimeric Antigen Receptor:CAR)を産生するよう遺伝子改変したT細胞(CAR-T細胞)を用いたCAR-T細胞療法は、腫瘍に対する治療効果が非常に高いことで注目されている。この方法では、患者から採取したT細胞にCAR遺伝子を導入してCAR-T細胞を作製し、それを患者に投与する。投与されたCAR-T細胞は、患者の体内で遭遇した腫瘍細胞を殺傷する。
【0003】
CAR-T細胞の作製時、CAR遺伝子の導入にはウィルスベクター法やエレクトロポレーション法が一般的に用いられている。しかしながら、これらの方法では、特に遺伝子導入や培養の工程において煩雑な操作が必要であることに加え、ウィルスベクターを使用する際には、専用細胞培養設備が必要となるため、治療費が非常に高額になるという経済性の問題もある。
【0004】
そこで、CAR遺伝子を簡単且つ高効率にT細胞に導入する方法が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、簡単な手順でCAR遺伝子をT細胞により効率よく導入することができ、且つCAR遺伝子の発現量の多いCAR-T細胞を得ることができるCAR-T細胞の製造方法、核酸導入キャリア及びキットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
実施形態に従う方法は、キメラ抗原受容体(CAR)を発現する遺伝子改変T細胞(CAR-T細胞)を製造する方法である。本方法は、T細胞を含む細胞集団を、T細胞を活性化する抗体で刺激する刺激工程、刺激工程の後、前記細胞集団に、脂質粒子と、脂質粒子に内包された、CAR遺伝子を含む第1核酸及びトランスポゼース遺伝子を含む第2核酸とを含む核酸導入キャリアを接触させる遺伝子導入工程、及び遺伝子導入工程の後、細胞集団を培養する培養工程を含む。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、実施形態の核酸導入キャリアの一例を示す断面図である。
【
図2】
図2は、実施形態の第1核酸の一例を示す図である。
【
図3】
図3は、実施形態の核酸導入キャリアの一例を示す断面図である。
【
図4】
図4は、実施形態の核酸導入キャリアの一例を示す断面図である。
【
図5】
図5は、実施形態のCAT-T細胞の製造方法の一例を示すフローチャートである。
【
図6】
図6は、実施形態のCAT-T細胞の製造方法の一例を示す模式図である。
【
図7】
図7は、例1の実験結果(NanoLuc発光強度)を示すグラフである。
【
図8】
図8は、例1の実験結果(GFP蛍光強度)を示すグラフである。
【
図9】
図9は、例2の実験結果(NanoLuc発光強度)を示すグラフである。
【
図10】
図10は、例2の実験結果(DNA内包量)を示すグラフである。
【
図11】
図11は、例3で作製した核酸導入キャリアにおけるNanoLuc発光強度とpKaとの関係を示すグラフである。
【
図12】
図12は、例4の実験結果(NanoLuc発光強度)を示すグラフである。
【
図13】
図13は、例4の実験結果(GFP蛍光強度)を示すグラフである。
【
図14】
図14は、例5のFACSの実験結果を示すヒストグラムである。
【
図15】
図15は、例6のFACSの実験結果を示すヒストグラムである。
【
図16】
図16は、例6のFACSの実験結果を示すヒストグラムである。
【
図17】
図17は、例7のFACSの実験結果を示すヒストグラムである。
【
図18】
図18は、例7のFACSの実験結果を示すヒストグラムである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、実施形態の核酸導入キャリア、CAR-T細胞の製造方法及びキットについて図面を参照して説明する。各図は実施形態とその理解を促すための模式図であり、その形状や寸法、比等は実際と異なる箇所があるが、これらは以下の説明と公知の技術を参酌して適宜、設計変更することができる。
【0010】
・核酸導入キャリア
実施形態の核酸導入キャリアは、詳しくは後述するが、CAR-T細胞の製造のために用いられ、細胞に接触させることによりCAR遺伝子を細胞に導入することが可能である。核酸導入キャリアの一例について
図1を参照して説明する。
【0011】
核酸導入キャリア10は、例えば、脂質粒子1と、脂質粒子1に内包されている第1核酸2及び第2核酸3とを備える。第1核酸2は、CAR遺伝子をコードする配列(以下、「CAR遺伝子配列」と称する)2aを含む。第2核酸3は、トランスポゼース遺伝子をコードする配列(以下、「トランスポゼース遺伝子配列」と称する)3aを含む。第1核酸2と第2核酸3とは、例えば、核酸凝縮ペプチド5で凝縮された状態で脂質粒子1に内包されている。
【0012】
以下、各構成成分について詳細に説明する。
【0013】
(脂質粒子)
実施形態の脂質粒子1は、複数の脂質分子1aが非共有結合で配列してできた脂質膜からなる、略球状の中空体である。そして、その中心の内腔1bに第1核酸2及び第2核酸3が内包されている。脂質粒子1は、脂質単分子膜であってもよいし、脂質二重膜であってもよい。また、脂質粒子1は、一層の膜からなっていてもよいし、多重層の膜からなっていてもよい。
【0014】
脂質粒子1の材料は、下記に例示するベース脂質から構成されてもよいが、ベース脂質の他に下記に例示する第1の脂質化合物及び/又は第2の脂質化合物を更に含むことが好ましい。
【0015】
ベース脂質として、例えば、生体膜の主成分である脂質を用いることができる。ベース脂質は、リン脂質又はスフィンゴ脂質、例えば、ジアシルホスファチジルコリン、ジアシルホスファチジルエタノールアミン、セラミド、スフィンゴミエリン、ジヒドロスフィンゴミエリン、ケファリン又はセレブロシド、或いはこれらの組み合わせ等である。
【0016】
例えば、ベース脂質として、1,2-ジオレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン(DOPE)、1,2-ステアロイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン(DSPE)、1,2-ジパルミトイル-sn-グリセロ-3-ホスファチジルコリン(DPPC)、1-パルミトイル-2-オレオイル-sn-グリセロ-3-ホスファチジルコリン(POPC)、1,2-ジ-O-オクタデシル-3-トリメチルアンモニウムプロパン(DOTMA)、1,2-ジオレオイル-3-ジメチルアンモニウムプロパン(DODAP)、1,2-ジミリストイル-3-ジメチルアンモニウムプロパン(14:0 DAP)、1,2-ジパルミトイル-3-ジメチルアンモニウムプロパン(16:0 DAP)、1,2-ジステアロイル-3-ジメチルアンモニウムプロパン(18:0 DAP)、N-(4-カルボキシベンジル)-N,N-ジメチル-2,3-ビス(オレオイロキシ)プロパン(DOBAQ)、1,2-ジオレオイル-3-トリメチルアンモニウムプロパン(DOTAP)、1,2-ジオレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホクロリン(DOPC)、1,2-ジリノレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホクロリン(DLPC)、1,2-ジオレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホ-L-セリン(DOPS)、又はコレステロール、或いはこれらの何れかの組み合わせ等を用いることが好ましい。特にDOTAPは、カチオン性脂質であり、その含有量によって脂質粒子1の酸解離定数を調節することができるため好ましい。上記ベース脂質は、細胞膜と融合しやすく、特に、ジアシルホスファチジルコリン、及びジアシルホスファチジルエタノールアミンを用いる場合、脂質粒子1の構造や粒子径の制御が容易であり、且つ細胞膜と融合しやすいため好ましい。脂質に含まれるアシル基の炭化水素鎖の長さはC10~C20であることが好ましい。この炭化水素鎖は飽和炭化水素基であっても、不飽和炭化水素基であってもよい。
【0017】
ベース脂質は、脂質粒子1に含まれる脂質分子1a全体に対して100%近く含まれてもよい。或いは、脂質粒子1が第1及び/又は第2の脂質化合物を含む場合は、ベース脂質は脂質分子1a全体に対して約30%~約80%(モル比)含まれることが好ましい。
【0018】
第1の脂質化合物は、例えば、生分解性である。第1の脂質化合物は、Q-CHR2の式で表すことができる。(式中、Qは、3級窒素を2つ以上含み、酸素を含まない含窒素脂肪族基であり、Rは、それぞれ独立に、C12~C24の脂肪族基であり、少なくとも一つのRは、その主鎖中又は側鎖中に、-C(=O)-O-、-O-C(=O)-、-O-C(=O)-O-、-S-C(=O)-、-C(=O)-S-、-C(=O)-NH-、及び-NHC(=O)-からなる群から選択される連結基LRを含む)。
【0019】
脂質粒子1が第1の脂質化合物を含む場合、脂質粒子1の表面が非カチオン性となるため、細胞導入における障害が低減され、核酸の導入率が高まる。
【0020】
第1の脂質化合物として、例えば、下記式で表される構造を有する脂質を用いれば、核酸の導入効率がより優れているため好ましい。
【化1-1】
【化1-2】
【化1-3】
【0021】
第2の脂質化合物は、例えば、生分解性である。第2の脂質化合物は、P-[X-W-Y-W’-Z]2の式で表すことができる。(式中、Pは、1つ以上のエーテル結合を主鎖に含むアルキレンオキシであり、Xは、それぞれ独立に、三級アミン構造を含む2価連結基であり、Wは、それぞれ独立に、C1~C6アルキレンであり、Yは、それぞれ独立に、単結合、エーテル結合、カルボン酸エステル結合、チオカルボン酸エステル結合、チオエステル結合、アミド結合、カルバメート結合及び尿素結合からなる群から選ばれる2価連結基であり、W’は、それぞれ独立に、単結合又はC1~C6アルキレンであり、Zは、それぞれ独立に、脂溶性ビタミン残基、ステロール残基、又はC12~C22脂肪族炭化水素基である)。
【0022】
第2の脂質化合物を含む場合、Pに含まれるエーテル結合を構成する酸素が、内包される核酸と水素結合を形成するため、核酸の内包量が多くなる。
【0023】
例えば、以下の構造を有する第2の脂質化合物を用いれば、核酸内包量がより優れているため好ましい。
【化2-1】
【化2-2】
【化2-3】
【0024】
以上に説明した第1及び第2の脂質化合物を含む脂質粒子1を用いた場合、核酸の内包量を増加させ、且つ核酸の導入率を高めることが可能である。かつ導入した細胞の細胞死も低減することができる。特に、式(1-01)、式(1-02)及び/又は式(2-01)の化合物を用いれば核酸内包量及び核酸導入効率が特に優れているため好ましい。
【0025】
第1及び第2の脂質化合物は、脂質粒子1全体に対して約20%~約70%(モル比)で含まれることが好ましい。
【0026】
脂質粒子1は、脂質粒子1の凝集を抑制する脂質、例えば、PEG修飾した脂質、特にポリエチレングリコール(PEG)ジミリストイルグリセロール(DMG-PEG)、オメガ-アミノ(オリゴエチレングリコール)アルカン酸モノマーから誘導されるポリアミドオリゴマー(米国特許第6,320,017号)、モノシアロガングリオシドを更に含むことが好ましい。このような脂質は、脂質粒子1全体に対して約1%~約5%(モル比)で含まれることが好ましい。
【0027】
脂質粒子1は、毒性を調整するための相対的に毒性の低い脂質;脂質粒子1に配位子を結合させる官能基を有する脂質;ステロール、例えばコレステロール等の内包物の漏出を抑制するための脂質等の脂質を含んでもよい。特に、コレステロールを含ませることが好ましい。
【0028】
脂質粒子1に用いる脂質の種類及び組成は、目的とする脂質粒子1の酸解離定数(pKa)若しくは脂質粒子1のサイズ、内包物の種類、或いは導入する細胞中での安定性等を考慮して適切に選択される。酸解離定数(pKa)は、6.5~8.0であることが好ましい。この値であれば、核酸の細胞への導入効率を高めることが可能である。
【0029】
例えば、脂質粒子1は、式(1-01)若しくは式(1-02)の化合物及び/又は式(2-01)の化合物と、DOPE及び/又はDOTAPと、コレステロールと、DMG-PEGとを含む場合、核酸内包量及び核酸導入効率が特に優れているため好ましい。例えば、これらの成分を以下の表1に示す(1)~(17)の何れかの組成で含むことが好ましい。
【表1】
【0030】
特に、(1)の組成を用いれば核酸の導入効率を更に高めることができる。また、(5)~(8)の組成は脂質粒子1の酸解離定数を6.5~8.0とすることが可能であり、核酸の導入効率を更に高めることができる。
【0031】
(核酸)
第1核酸2及び第2核酸3は、例えば、一本鎖又は二本鎖の環状、直鎖又は分岐鎖核酸である。第1核酸2及び第2核酸3は、例えば、DNA、RNA、PNA又はこれらの誘導体の何れかである。誘導体とは、DNA、RNA又はPNAにヌクレオチドアナログを挿入したもの、或いはDNA、RNA又はPNAの何れかの末端を標識又は官能基で修飾したもの等である。第1核酸2及び第2核酸3は、例えば、互いに異なる種類の核酸であってもよい。例えば、第1核酸2及び第2核酸3のどちらか一方がDNAで他方がRNAであってもよい。
【0032】
第1核酸2及び/又は第2核酸3がRNAである場合、分解耐性を有するように修飾されていることが好ましい。例えば、当該修飾は、RNase等によりRNAが分解されないようにする公知の修飾であればよい。そのような修飾は、例えば、RNAへの天然修飾ヌクレオチド又は非天然ヌクレオチドの使用/導入、非天然配列の使用/付加、又は天然/非天然CAP構造の付加等である。
【0033】
天然修飾ヌクレオチドは、例えば、シュードウリジン、5-メチルシチジン、1-メチルアデノシン等である。非天然ヌクレオチドは、例えば、BNA(Bridgednucleicacid)、LNA(Lockednucleicacid)、又はPNA(Peptidenucleicacid)等である。
【0034】
非天然配列は、例えば、人工的に作成された天然には存在しない塩基配列であり、例えば、ランダムな塩基配列、又は天然/非天然アミノ酸と核酸のハイブリッド配列等である。非天然配列は、例えばRNAの末端に付加することが好ましい。
【0035】
天然CAP構造は、例えば、CAP0(m7GpppN)、CAP1(m7GpppNm)等である。非天然CAP構造は、例えば、ARCA(Anti-ReverseCapAnalog)又はLNA-グアノシン等である。非天然CAP構造は、例えばRNAの5’末端に付加することが好ましい。
【0036】
第1核酸2はCAR遺伝子配列2aを含む。CAR遺伝子とは、特定の標的(抗原)と結合する抗体の抗原結合ドメイン(細胞外ドメイン)と、抗原結合ドメインへの標的の結合によりT細胞を活性化するシグナルを伝達するシグナルドメイン(細胞内シグナルドメイン)とを少なくとも含む融合タンパク質の遺伝子であればよい。CAR遺伝子として、一般的にCARとして知られる融合タンパク質の遺伝子を用いてもよいし、或いはそれを同様の機能を有する範囲で改変した融合タンパク質、更なるドメインを追加した融合タンパク質又は同様の機能を有する新規の融合タンパク質の遺伝子等を用いることも可能である。
【0037】
以下、CARの一例について詳細に説明する。CARは、例えば、細胞外ドメイン、膜貫通ドメイン及び細胞内ドメインを含む。
【0038】
(a)細胞外ドメイン
細胞外ドメインは、上記したとおりT細胞の外側に配置され、標的と特異的に結合するドメインである。例えば細胞外ドメインは、抗標的モノクローナル抗体の抗原結合性断片、例えば、scFv断片を含む。モノクローナル抗体として、例えば、齧歯類(マウス、ラット、ウサギ等)の抗体、ヒト抗体或いはヒト化抗体等を用いることができる。scFv断片は、免疫グロブリンの軽鎖可変領域(VL)と重鎖可変領域(VH)とがリンカーを介して連結された構造体である。リンカーとして、例えば直鎖状にアミノ酸が連結したペプチドからなるペプチドリンカーを用いることができる。ペプチドリンカーは、例えば、グリシンとセリンとから構成されるリンカー(例えば、GGSリンカー又はGSリンカー)である。例えば、アミノ酸残基数が5~25個のリンカーを用いることができる。
【0039】
細胞外ドメインの種類及び構成は、標的の種類に依存して選択される。標的は、典型的には腫瘍細胞に関連する抗原である。腫瘍細胞に関連する抗原とは、例えば、腫瘍細胞、その周辺組織の細胞又は腫瘍細胞を有する生体において特異的又は選択的な発現が認められる抗原をいう。腫瘍とは、例えば、B細胞リンパ腫、多発性骨髄腫、網膜芽腫、肺小胞腫又は中枢神経腫瘍等である。標的は、例えば、CD19抗原、CD20抗原、GD2抗原、CD22抗原、CD30抗原、CD33抗原、CD44variant7/8抗原、CEA抗原、Her2/neu抗原、MUC1抗原、MUC4抗原、MUC6抗原、IL-13receptor-alpha2、イムノグロブリン軽鎖、PSMA抗原又はVEGFreceptor2等である。
【0040】
或いは、標的が骨髄系腫瘍の白血病幹細胞、白血病前駆細胞又は白血病細胞等である場合は、細胞外ドメインとしてGM-CSF(顆粒球単球コロニー刺激因子)受容体のリガンドであるGM-CSFを用いることも可能である。
【0041】
(b)膜貫通ドメイン
膜貫通ドメインは、細胞外ドメインと細胞内シグナルドメインとの間に設けられ、T細胞の細胞膜に配置されるドメインである。膜貫通ドメインとして、CD28、CD3ε、CD8α、CD3、CD4又は4-1BB等を用いることができる。或いは人工的に構築したポリペプチドからなる膜貫通ドメインを用いることも可能である。
【0042】
(c)細胞内シグナルドメイン
細胞内シグナルドメインは、上記したとおりT細胞の内側に配置され、細胞外ドメインが標的の抗原と結合した際、T細胞の活性化に必要なシグナルを伝達するドメインである。細胞内シグナルドメインは、例えば、TCR複合体を介したシグナルを伝達するためのドメイン(第1ドメイン)と、共刺激シグナルを伝達するためのドメイン(第2ドメイン)とを含む。第1ドメインとして、CD3ζ又はFcεRIγ等を用いることができる。好ましくは、CD3ζが用いられる。また、第2ドメインとして、例えば、CD28、4-1BB(CD137)、CD2、CD4、CD5、CD134、OX-40又はICOS等の共刺激分子の細胞内ドメインを用いることができる。好ましくは、CD28又は4-1BBが用いられる。第1ドメイン及び第2ドメインはそれぞれ、上記列挙した要素のうち1つを含んでもよいし、同一又は異種の複数の上記要素をタンデム状に連結した構成としてもよい。
【0043】
第1ドメインと第2ドメインとの連結される順番は特に限定されないが、膜貫通ドメイン側に第2ドメインを配置することが好ましい。第1ドメインと第2ドメインとは、これらを直接連結しても、これらの間にリンカーを介在させてもよい。リンカーとしては例えば2~15個のアミノ酸が直鎖状に連結したペプチドからなるペプチドリンカーを用いることができる。
【0044】
(d)その他の要素
CARは、その他の要素を含んでもよい。その他の要素として、例えば、CARの分泌を促すリーダー配列(シグナルペプチド)、例えば、GM-CSFレセプターのリーダー配列等を用いることができる。また、細胞外ドメインと膜貫通ドメインとの間にスペーサードメインを配置してもよい。スペーサードメインは、CARと標的との結合を促進させ得る。スペーサードメインとして、例えば、ヒトIgG(例えばヒトIgG1、ヒトIgG4)のFc断片を用いることがきる。或いは、CD28の細胞外ドメインの一部やCD8αの細胞外ドメインの一部等をスペーサードメインとして用いることもできる。尚、膜貫通ドメインと細胞内シグナルドメインの間にもスペーサードメインを設けることもできる。
【0045】
CAR遺伝子は、例えば、上記各ドメインに対応する遺伝子を適切な順番で結合したものである。CAR遺伝子配列2aは上記の何れかCAR遺伝子の全長を含むものであってもよく、或いは一部を含むものであってもよい。
【0046】
第1核酸2は、DNAであることが好ましい。
【0047】
第1核酸2は、例えば、
図2に示すようにCAR遺伝子配列2aの両端に配置された第1のトランスポゼース認識配列及び第2のトランスポゼース認識配列を含んでもよい。
【0048】
第1のトランスポゼース認識配列2b及び第2のトランスポゼース認識配列2cは、トランスポゼースがこれらの配列を認識して、そこに結合し、CAR遺伝子配列2aを切り出すための配列である。第1のトランスポゼース認識配列2b及び第2のトランスポゼース認識配列2cは、互いに逆向きの同じ配列を含む塩基配列である。これらの配列は逆向き反復配列(InvertedRepeatSequences:IR)とも称される配列である。
【0049】
第1のトランスポゼース認識配列2b及び第2のトランスポゼース認識配列2cの配列は、第2核酸3に含まれるトランスポゼース遺伝子配列3aの種類に対応して選択される。
【0050】
トランスポゼース遺伝子配列3aとしてPiggyBacの遺伝子を用いる場合、例えば、第1のトランスポゼース認識配列2b及び第2のトランスポゼース認識配列2cに挟まれたCAR遺伝子配列2aの配列として表2に示す配列番号1の配列を用いることができる。なお、配列番号1の第1番目~第312番目までが第1のトランスポゼース認識配列2b(5’IR配列)、第4300番目~第4536番目までが第2のトランスポゼース認識配列2c(3’IR配列)であり、その間にCAR遺伝子が含まれている。
【表2-1】
【表2-2】
【表2-3】
【0051】
第1核酸2の長さは、例えば、3~約20000塩基である。第1核酸2は、核酸導入キャリア10内に1~100分子含まれることが好ましい。
【0052】
第2核酸3は、トランスポゼース遺伝子配列3aを含む。トランスポゼース遺伝子配列として、例えば、PiggyBac、SleepingBeauty、FrogPrince、Hsma、Minos、Tol1、Tol2、Passport、hAT、Ac/Ds、PIF、Harbinger、Harbinger3-DR、Himar1、Hermes、Tc3又はMos1等の遺伝子をコードする配列を用いることができる。第2核酸3は、DNAであってもよいし、RNAであってもよいが、RNAであることが好ましい。RNAである場合は、第2核酸3は、トランスポゼース遺伝子のmRNAであってもよい。
【0053】
トランスポゼース遺伝子配列3aの配列として、例えば、以下の配列を用いることができる。表3はDNAの配列を示すが、RNAである場合は、下記配列のチミン(T)はウラシル(U)に置き換えたものを使用することができる。
【表3】
【0054】
第2核酸3は、トランスポゼース遺伝子配列3aの他に更なる配列を有してもよい。更なる配列は、例えば、5’末端リーダー配列、IRES(InternalRibosomeEntrySite)、転写終結配列、又はPoly(A)配列等である。第2核酸3は、CAP構造を有してもよい。
【0055】
第2核酸3の長さは、例えば、約20~約5000塩基である。第2核酸3は、核酸導入キャリア10内に1~約1000分子含まれることが好ましい。
【0056】
脂質粒子1に内包される核酸は、第1核酸2及び第2核酸3の他に、更なる核酸を含んでもよい。そのような核酸は、例えば、DNAのメチル化、脱メチル化、修復及び/又は結合等、DNAを修飾する機能を有するDNA又はRNAである。例えば、これらの核酸は、上記修飾の活性を有するタンパク質をコードするDNA又はRNAであってもよい。これらの核酸を含むことによって、ゲノムに導入されたCAR遺伝子配列2aやその周辺の配列に上記修飾を加えることが可能である。それにより、例えば、T細胞に更なる機能改変を加えることができる。
【0057】
(核酸凝縮ペプチド)
核酸凝縮ペプチド5は、より多くの核酸をより小さく凝縮し、脂質粒子1内に多くの核酸を効率よく内包するためのペプチドである。このようなペプチドとして、例えば、カチオン性のペプチドを用いることが好ましい。カチオン性のペプチドは、例えば、アニオン性の核酸の螺旋形状の隙間に入り込んで隙間を縮めることにより核酸を凝縮することができる。
【0058】
好ましい核酸凝縮ペプチド5は、例えば、カチオン性のアミノ酸を全体の45%以上含むペプチドである。より好ましい核酸凝縮ペプチド5は、一方の端にRRRRRR(第1のアミノ酸配列)を有し、他方の端が配列RQRQR(第2のアミノ酸配列)を有する。そして、両アミノ酸配列の間に、RRRRRR又はRQRQRからなる中間配列を0個又は1個以上含む。また、第1のアミノ酸配列、第2のアミノ酸配列及び中間配列のうち、隣り合う2つの配列の間に2つ以上の中性アミノ酸を含む。中性アミノ酸は、例えば、G又はYである。
【0059】
上記核酸凝縮ペプチド5は、好ましくは、以下のアミノ酸配列を有する。
RQRQRYYRQRQRGGRRRRRR (配列番号3)
RQRQRGGRRRRRR (配列番号4)。
【0060】
このような核酸凝縮ペプチド5によれば、Rによるカチオン性により核酸を効率よく凝縮し、且つ核酸の有するアニオン性を弱めることが可能であるため、効率よく核酸を脂質粒子1内に封入することが可能である。更に、当該核酸凝縮ペプチド5は細胞中で核酸を効率よく解離するため、細胞内に導入された核酸を細胞内で効率よく発現させることが可能である。
【0061】
或いは、核酸凝縮ペプチド5は、一方の端にRRRRRR(第3のアミノ酸配列)を有し、他方の端にRRRRRR(第4のアミノ酸配列)を有する。そして、両アミノ酸配列の間に、RRRRRR又はRQRQRからなる中間配列を0個又は1個以上含む。また、第3のアミノ酸配列、第4のアミノ酸配列及び中間配列のうち、隣り合う2つの配列の間に2つ以上の中性アミノ酸を含む。
【0062】
このような核酸凝縮ペプチド5は、好ましくは、以下のアミノ酸配列を有する。
RRRRRRYYRQRQRGGRRRRRR (配列番号5)。
【0063】
このような核酸凝縮ペプチド5は、両端のカチオン性が強く、核酸との結合性が高い。したがって、更に効率よく核酸を凝縮し、より多くの核酸を脂質粒子1内に内包することができる。その結果、脂質粒子1外に残存する核酸の量が低減され、それによって核酸導入キャリア同士の凝集が防止されるため、核酸導入キャリアが細胞内に取り込まれやすくなる。
【0064】
更に、次のようなアミノ酸配列を有する核酸凝縮ペプチド5を上記の何れかの核酸凝縮ペプチド5と組み合わせて用いることもできる。
GNQSSNFGPMKGGNFGGRSSGPYGGGGQYFAKPRNQGGY(M9)(配列番号6)
【0065】
このペプチドは、上記核酸凝縮ペプチド5で凝縮した核酸凝集体を更に凝縮することができる。したがって、更に粒径の小さい核酸導入キャリアを得ることが可能である。そのような核酸導入キャリアは細胞内に取り込まれやすいため、より効率よく核酸を細胞のゲノムに導入することが可能である。
【0066】
例えば、脂質粒子1に内包する前に、第1核酸2及び第2核酸3を核酸凝縮ペプチド5と撹拌混合することによって第1核酸2及び第2核酸3を凝縮することができる。第1核酸2及び第2核酸3を一緒に凝縮してもよいし、別々に凝縮してもよい。
【0067】
以上に説明した効果を奏することから核酸凝縮ペプチド5を用いることが好ましいが、用いる核酸の種類、又は細胞の培養条件等によっては核酸凝縮ペプチド5を用いなくともよい。
【0068】
核酸導入キャリア10は、上記核酸の他に、更なる成分を内包していてもよい。例えば、レチノイン酸、環状アデノシン一リン酸(cAMP)又はアスコルビン酸等の細胞内での核酸の発現を調節する化合物;ペプチド、ポリペプチド、サイトカイン、増殖因子、アポトーシス因子、分化誘発因子、他の細胞表面受容体及びそのリガンド等を内包することも可能である。
【0069】
核酸導入キャリア10は、例えば、小分子を脂質粒子等に封入する際に用いられる公知の方法、例えば、バンガム法、有機溶媒抽出法、界面活性剤除去法、凍結融解法等を用いて作製することができる。例えば、脂質粒子1の材料をアルコール等の有機溶媒に含ませて得られた混合物に、第1核酸2及び第2核酸3等の内包されるべき成分を含む水性緩衝液を添加し、撹拌して懸濁することにより核酸導入キャリアを作製することができる。脂質粒子1に内包する核酸の量比は、水性緩衝液中の両者の量比を変えることにより容易に調節することができる。核酸の内包量の確認は、例えば、市販のDNA及びRNA定量キット等を用いて行うことができる。
【0070】
核酸導入キャリア10の平均粒子径は、例えば約50nm~約300nmであり、好ましくは約50nm~約200nmである。例えば、超音波処理によって粒子径を小さくすることができる。また、ポリカーボネート膜やセラミック膜を透過させて、核酸導入キャリア10のサイズを調整することも可能である。なお、核酸導入キャリア10の平均粒子径は、例えば動的光散乱法を用いたゼータサイザーによって測定することができる。
【0071】
更なる実施形態において、第1核酸2及び第2核酸3は、コアシェル構造を有してもよい。
【0072】
図3の(a)に示される核酸導入キャリア20は、第1核酸2を含む第1核酸コア6、及び第1核酸コア6をコーティングする第2核酸3を含む第2核酸シェル7を含むコアシェル構造を備える。反対に、
図3の(b)に示される核酸導入キャリア21は、第2核酸3を含む第2核酸コア8、及び第2核酸コア8をコーティングする第1核酸2を含む第1核酸シェル9を含むコアシェル構造を備える。コアシェル構造は、脂質粒子1に内包されている。
【0073】
コアシェル構造は、例えば、次のように製造することができる。まず、コア用の核酸を核酸凝縮ペプチド5で凝縮してコアを作製する。次にシェル用の核酸をコアに接触させることによって、シェル用の核酸が静電気的にコアの周囲に張り付き、シェルが形成される。シェル用の核酸は、核酸凝縮ペプチド5で凝縮されたものであってもよい。その結果、コアシェル構造が形成される。次いで、脂質粒子1の材料を含む溶媒にコアシェル構造を添加し、撹拌することによってコアシェル構造が脂質粒子1に内包され、核酸導入キャリア20又は21が製造される。
【0074】
このような構造を有することによって、第1核酸2と第2核酸3との時間差導入が可能である。コアに含まれる核酸の放出速度及び放出持続時間は、核酸凝縮ペプチド5の組成又は量、或いは核酸の量等によって調節可能である。CAR-T細胞の作製においては、第2核酸3から翻訳されるトランスポサーゼタンパク質が、第1核酸2へ作用することから、第2核酸3が先に放出される核酸導入キャリア20の構成を有することが好ましい。
更なる実施形態によれば、
図4に示すように、第1核酸2と第2核酸3とが、別々の脂質粒子1に内包されていてもよい。即ち、第1核酸2は第1の脂質粒子1cに内包されており(第1のサブ核酸導入キャリア22)、第2核酸3は、第2の脂質粒子1dに内包されている(第2のサブ核酸導入キャリア23)。第1核酸2と第2核酸3とはそれぞれ、核酸凝縮ペプチド5で凝縮された状態で各脂質粒子に内包されていてもよい。
【0075】
第1の脂質粒子1c及び第2の脂質粒子1dは、互いに同じ組成を有してもよいし、互いに異なる組成を有してもよい。
【0076】
第1のサブ核酸導入キャリア22と第2のサブ核酸導入キャリア23とによれば、コアシェル構造を有する核酸導入キャリア20,21よりも更に長く間隔をあけて第1核酸2と第2核酸3とを時間差導入することができる。例えば、後述する遺伝子導入工程(S2)において、一方を細胞に接触させた後、30分以上の間隔を空けて他方を接触させることが可能である。故に、核酸導入キャリア20,21を用いるよりも導入時間の差を調節しやすい。第2のサブ核酸導入キャリア23を第1のサブ核酸導入キャリア22よりも先に細胞に接触させることが好ましい。或いは、両者を同時に細胞に接触させてもよい。
【0077】
以上に説明した実施形態の核酸導入キャリアは、適切な担体に含ませた組成物として提供されてもよい。担体は、例えば、水、生理食塩水のような食塩水、グリシン水溶液又は緩衝液等である。
【0078】
核酸導入キャリアが
図4に示す第1のサブ核酸導入キャリア22及び第2のサブ核酸導入キャリア23のような形態である場合は、これらは別々の容器に収容され、別々の組成物として提供されてもよい。
【0079】
組成物は、保管安定性を向上させる物質を更に含んでもよい。保管安定性を向上させる物質は、限定されるものではないが、例えば、アルブミン、リポタンパク、アポリポタンパク、グロブリン等の糖タンパク等:pH調整剤、緩衝化剤、張度調整剤等;ナトリウムアセテート、ナトリウムラクテート、ナトリウムクロリド、カリウムクロリド、カルシウムクロリド等の製薬学的に許容可能であり、医薬組成物を生理的状態に近づける関与剤;フリーラジカルによるダメージを抑制する、α-トコフェロールのような脂肪親和性フリーラジカルクエンチャー;脂質の過酸化損傷を抑制し、貯蔵安定性を改良するためのフェリオキサミンのような水溶性キレーター等の脂質保護剤等である。保管安定性を向上させる物質は好ましくは、核酸導入キャリアの形成の後に加える。
【0080】
組成物は、一般的な方法によって滅菌されていてもよい。また、組成物は、液体として提供されてもよいし、それを乾燥した粉末として提供されてもよい。粉末の組成物は、例えば、適切な液体に溶解することにより使用可能となる。
【0081】
組成物中に含まれる核酸導入キャリアの濃度は、限定されるものではないが、0.01~30質量%、好ましくは0.05~10質量%であることが好ましい。濃度は、目的に応じて適切に選択される。
【0082】
・CAR-T細胞の製造方法
以下に、実施形態の核酸導入キャリアを用いるCAR-T細胞の製造方法について説明する。実施形態のCAR-T細胞の製造方法は、
図5に示す次の工程を含む。T細胞を含む細胞集団を、T細胞を活性化する抗体で刺激する刺激工程(S1)、刺激工程の後、細胞集団に実施形態の核酸導入キャリアを接触させる遺伝子導入工程(S2)、及び遺伝子導入工程の後、細胞集団を培養する培養工程(S3)。
【0083】
以下、各工程について詳細に説明する。
【0084】
まず、刺激工程(S1)に先立ち、T細胞を含む細胞集団を用意する。T細胞は、CD4陽性CD8陰性T細胞、CD4陰性CD8陽性T細胞、iPS細胞から調製されたT細胞、αβ-T細胞、γδ-T細胞又はその前駆細胞等を含む。このようなT細胞を含むものであれば様々な細胞集団を用いることができる。細胞集団は、例えば、末梢血から採取される末梢血単核細胞(Peripheral Blood MononuclearCells:PBMC)であることが好ましい。
【0085】
細胞集団は、実施形態の製造方法で最終的に得られるCAR-T細胞を投与する対象から採取された自家由来の細胞集団であることが好ましいが、他家由来の細胞集団や市販の細胞集団等も用いることができる。また、採取又は入手した細胞集団から不要な細胞を分離する処理を行った細胞集団を用いてもよい。
【0086】
細胞集団は、例えば、適切な培地及び培養条件で培養しておくことが好ましい。そして
図6の(S1)に示すように、T細胞を活性化する抗体26を接触させる。それによって、抗体26によりT細胞を刺激することができる(刺激工程(S1))。抗体26との接触は、例えば、抗体26を細胞懸濁液に添加する方法、抗体26がコートされたビーズを細胞懸濁液に添加する方法、又は抗体26で培養面をコートした容器等に細胞懸濁液を添加する方法等を用いることができる。
【0087】
抗体として、例えば、抗CD3抗体及び抗CD28抗体の少なくともどちらか一方を用いることが好ましい。抗CD3抗体および抗CD28抗体は、抗体の全領域を用いても良いし、抗原への結合能を有する限りにおいては、その一部たとえば、F(ab’)2フラグメントを用いても良い。
【0088】
次に、
図6の(S2)に示すように、細胞集団25に核酸導入キャリア10を接触させる(遺伝子導入工程(S2))。ここでは核酸導入キャリア10を用いた例を示すが、核酸導入キャリア20,21又は第1のサブ核酸導入キャリア22及び第2のサブ核酸導入キャリア23を同様に用いることも可能である。接触は、培地24に細胞集団25を懸濁した細胞懸濁液に核酸導入キャリア10(例えば、組成物の形態)を添加することにより行うことができる。或いは、接触は、後述するような核酸導入キャリア10が表面に付着又は固定された容器等に細胞懸濁液を添加する方法により行われてもよい。
【0089】
遺伝子導入工程(S2)における核酸導入キャリア10の接触によって第1核酸及び第2核酸を細胞に導入することができる。導入は例えば次のように行われる。まず核酸導入キャリア10の接触によって、エンドサイトーシスにより核酸導入キャリア10がT細胞25に取り込まれる。T細胞25内に入り込んだ核酸導入キャリア10の脂質粒子1から、第1核酸2及び第2核酸3がT細胞25内に放出される。その後、第2核酸3からはトランスポゼースが翻訳される。
【0090】
トランスポゼースは、第1核酸2のトランスポゼース認識配列2b、2cを認識して切断し、CAR遺伝子配列2a及びトランスポゼース認識配列2b、2cを第1核酸2から切り出す。切り出された断片とトランスポゼースの複合体は、T細胞のゲノムに結合して、ゲノムを切断し、CAR遺伝子配列2aをT細胞のゲノムに挿入する。
【0091】
以上のようにして、T細胞25のゲノム上にCAR遺伝子配列2aが導入される。
【0092】
ここで、核酸導入キャリア10が第2核酸3をDNAの形態で含む場合、細胞内にトランスポゼースが発現する段階で、転写及び翻訳が必要であるが、RNAの形態で導入する場合は転写工程を省略することができるので、より迅速かつ高効率に細胞内でトランスポゼースを発現させることが可能である。その結果、より効率的にT細胞25のゲノムにCAR遺伝子配列2aを導入することが可能である。
【0093】
次に、得られた細胞集団25を培養する(
図6、培養工程(S3))。培養期間は例えば7日~28日、好ましくは10日~21日、更に好ましくは12日~16日である。
【0094】
培養に用いる基本培地は、T細胞の培養に適した一般的に使用されるものを用いればよい。例えば、培地は、TexMACSTM、AIM V(登録商標)、又はALys705等を用いることができる。その他の培養条件は、T細胞の生存、増殖に適した一般的な条件であればよく、例えば、温度は37℃、CO2濃度は、5.0%であることが好ましい。
【0095】
培養工程(S3)においては、T細胞の増殖率及び生存率を向上させるために、培地にT細胞増殖因子(例えばIL-15及び/又はIL-7)を添加することが好ましい。IL-15の添加量は例えば5~10ng/ml、IL-7の添加量は例えば5~10ng/mlとすることが好ましい。培地に血清(ヒト血清又はウシ胎仔血清等、好ましくは自己血清)を添加して培養を行ってもよいが、無血清培地を使用することが好ましい。
【0096】
例えば、刺激工程(S1)により細胞集団25に含まれるT細胞が活性化し、培養工程(S3)を経ることによりT細胞を増殖させることができる。
【0097】
培養後、細胞集団を凍結保存することも可能である。しかしながら、その場合、使用時に細胞集団を融解し、再度、刺激工程(S1)及び培養工程(S3)を行うことが好ましい。
【0098】
以上の工程により、CAR-T細胞を製造することができる。例えば、ある実施形態においては、上記工程(S1)~(S3)を行うことにより、その他の手順や工程を追加で行うことなく、CAR-T細胞を製造することができる。
【0099】
培養工程(S3)の後、例えば、得られたCAR-T細胞を回収する。回収は、例えば、ピペッティング、遠心等の一般的な処理によって行うことができる。
【0100】
実施形態の核酸導入キャリアによれば、第1核酸2及び第2核酸3をより効率よくT細胞内に導入し、T細胞のゲノムにCAR遺伝子を導入し、CAR遺伝子をより効率よく細胞内で発現させることが可能である。
【0101】
例えば、実施形態の核酸導入キャリアはリポフェクション(脂質と核酸との複合体)を用いる場合と異なり、脂質粒子1の内腔1bに核酸を内包することから、より多くの核酸を内包し、且つ核酸を分解や不要な分子との凝集から保護するため、細胞内への核酸の導入効率においても優れており、導入したCAR遺伝子のゲノムへの導入率及びCARの発現量においても優れている。また、導入する第1核酸2及び第2核酸3の量比を容易に調節することも可能である。
【0102】
実施形態のCAR-T細胞の製造方法によれば、実施形態の核酸導入キャリアを用いるため、より簡単な操作により、CARの発現率が高いCAR-T細胞を効率よく製造することができる。故に、遺伝子導入工程及び培養工程において煩雑な操作を行う必要が無く、コストや手間が削減され、且つコンタミネーションによる品質や製造量の低下等も防止することができる。以上のことから、実施形態の方法によればより効率よくCAR-T細胞を製造することができ、製造コストを削減することも可能である。
【0103】
加えて、実施形態の核酸導入キャリアによれば、細胞集団に核酸を均一に導入することができるため、製造されるCAR-T細胞の品質が安定しており、且つ実施形態の製造方法によって得られた細胞集団にはCAR遺伝子を発現するT細胞(CAR-T細胞)がより多く含まれる。このような特徴もまた、実施形態の方法のCAR-T細胞の製造効率が非常に高い一因である。
【0104】
また、そこに含まれるCAR-T細胞は、従来のリポフェクションを用いる方法よりもCAR遺伝子の発現率が高い。そのため、実施形態の方法で製造されたCAR-T細胞をCAR-T細胞療法に用いれば、治療効果、例えば、抗腫瘍効果がより高まる。
【0105】
また、トランスポゼース遺伝子をRNAの形態で導入する場合は、トランスポゼース遺伝子が細胞のゲノム上に組み込まれることがない。そのため、トランスポゼース遺伝子が細胞のゲノムに組み込まれることによる不利な影響を防止したCAR-T細胞を製造することができる。
【0106】
また、上記のように核酸導入キャリア10に核酸凝縮ペプチド5を用いること、RNAに耐分解性を付与すること、また脂質粒子1に第1及び/又は第2の脂質化合物を含めることにより、よりCAR遺伝子のT細胞のゲノムへの導入効率を高めることが可能である。その結果、CAR-T細胞の製造効率を高めることができる。
【0107】
実施形態の方法により得られたCAR-T細胞を用いて、細胞製剤を製造してもよい。細胞製剤には、CAR-T細胞が治療有効量で含まれ得る。細胞製剤には、ジメチルスルフォキシド(DMSO)又は血清アルブミン等のCAR-T細胞を保護する薬剤、抗生物質等の微生物の増殖を防止する薬剤、ビタミン類、サイトカイン、成長因又はステロイド等の細胞の活性化、増殖又は分化誘導等のための薬剤等を含ませてもよい。
【0108】
実施形態のCAR-T細胞又は細胞製剤の投与経路は特に限定されない。例えば、静脈内注射、動脈内注射、門脈内注射、皮内注射、皮下注射、筋肉内注射、又は腹腔内注射によって投与する。或いは投与方法は、局所投与であってもよい。その場合、例えば、目的の組織、臓器又は器官へ直接注入する。投与スケジュールは、対象(患者)の性別、年齢、体重又は病態等を考慮して選択すればよく、単回投与であってもよいし、連続的又は定期的な複数回投与であってもよい。
【0109】
・キット
実施形態のキットは、CAR-T細胞の製造方法に用いられるキットであって、実施形態の核酸導入キャリアと核酸導入キャリアの保管安定性を向上させる物質とを含む。
【0110】
核酸導入キャリアは、例えば、上記のような組成物として提供され得る。核酸導入キャリアが第1のサブ核酸導入キャリア22、第2のサブ核酸導入キャリア23として提供される場合は、キットは、第1のサブ核酸導入キャリア22を含む組成物と、第2のサブ核酸導入キャリア23を含む組成物とのどちらか一方を含んでもよいし、両方を含んでもよい。
【0111】
或いは、第1のサブ核酸導入キャリア22を含み、第2のサブ核酸導入キャリア23を含まない組成物が提供されてもよい。このような組成物は、トランスポゼースを用いない方法でCAR遺伝子の導入を行う場合に、CAR遺伝子を細胞に導入するために用いられてもよい。
【0112】
保管安定性を向上させる物質は、上記した何れかのものである。
【0113】
キットは、上記組成物中に又は別の組成物として、その他の成分を更に含んでいてもよい。その他の成分は、細胞培養培地及び/又はT細胞を活性化させるための抗体、ペプチド等を含む。
【0114】
実施形態のキットにおいて、核酸導入キャリア10(或いは、核酸導入キャリア20,21又は第1のサブ核酸導入キャリア22及び第2のサブ核酸導入キャリア23であってもよい)は、固相40の一面41に直接又は間接的に付着又は固定されて提供されてもよい。固相40は、例えば、金属、樹脂、ゲル又は繊維等を材料とする容器であるが、必ずしも容器形状である必要はなく、プレート又はシート等であってもよい。
【0115】
このような固相40を実施形態のCAR-T細胞の製造方法に用いる場合、遺伝子導入工程(S2)は、固相の核酸導入キャリア10が付着又は固定された面上に細胞集団25を含む細胞懸濁液を添加することにより簡便に行うことが可能である。例えば、核酸導入キャリア10は遊離可能に付着又は固定されており、細胞懸濁液を添加することにより核酸導入キャリア10が細胞懸濁液内に遊離し、細胞集団25と接触することが可能である。
【0116】
直接的な付着又は固定は、例えば、上記組成物を固相の表面に直接塗布し、乾燥させることにより行うことができる。間接的な付着又は固定は、固相上に、例えば、ペプチド、樹脂、又は抗体等を介して上記組成物を塗布し、乾燥することにより行うことができる。
【0117】
[例]
以下に、実施形態の方法で脂質粒子及びCAR-T細胞を作製し、使用した例について説明する。しかしながら、本発明の実施の形態は下記例に限定されるものではない。
【0118】
例1.核酸を内包する脂質粒子のPBMC細胞への導入効率の評価
・DNA内包キャリアの調製
DNAとして、サイトメガロウイルスプロモーターの下流にNanoLuc遺伝子を連結したプラスミドDNAを使用した。このDNAを含むDNA溶液にカチオン性ペプチドを加え、DNA-ペプチド凝縮体を形成した。次いで、それをエタノール溶解脂質溶液((6)FFT10(前記式(1-01)の脂質化合物)/DOTAP/DOPE/コレステロール/PEG-DMG=37/10.5/5.75/60/4mol)に添加し、更に10mMのHEPES(pH7.3)を静かに添加した後、遠心式限外ろ過で洗浄及び濃縮して、DNA内包キャリアを得た。当該核酸導入キャリアのDNA内包量は、Quant-iT(登録商標)PicoGreendsDNAAssayKit(サーモフィッシャー・サイエンティフィック製)で測定し、DNAが十分な量で内包されていることを確認した。
【0119】
・RNA内包キャリアの調製
RNAとして、レポーター遺伝子である緑色蛍光蛋白質(GFP)のメッセンジャーRNA(mRNA、オズバイオサイエンス製)を使用した。このmRNAを含むRNA溶液を、エタノール溶解脂質溶液((6)FFT10/DOTAP/DOPE/コレステロール/PEG-DMG=37/10.5/5.25/60/4mol)に加え、ピペッティングで懸濁した後、10mMのHEPES(pH7.3)を静かに添加し、この溶液を遠心式限外ろ過で洗浄及び濃縮してRNA内包キャリアを得た。当該核酸導入キャリアのRNA内包量は、QuantiFluor(登録商標)RNASystem(プロメガ製)で測定し、mRNAが十分な量で内包されていることを確認した。
【0120】
・PBMCの調製
ヒト末梢血単核細胞(PBMC)をTexMACS培地(ミルテニーバイオテク製)で培養し、遠心で細胞を回収した後、3.3×106細胞/mLとなるように新鮮なTexMACSに細胞を懸濁して、4ウェル培養ディッシュ(Matsunami)に、1.0×106細胞/ウェルとなるように、細胞懸濁液を300μL加えた。
【0121】
・DNA内包キャリア及びRNA内包キャリアによる核酸の導入
その後、DNA内包キャリア及びRNA内包キャリアをDNA及びRNAが2.4μg/ウェルずつ、計4.8μg/ウェルとなるように上記ウェルに添加して、37℃、5%CO2雰囲気で培養した。
【0122】
・リポフェクタミン3000によるDNAの細胞への導入
比較対象として、リポフェクタミン3000試薬(インビトロジェン製)を用いて、上記プラスミドDNA及びmRNAをPBMCに導入した。導入は、当該試薬に添付されたマニュアルに従って行った。プラスミドDNAは、2.4μg/ウェルとなるようにPBMCに添加し、37℃、5%CO2雰囲気で培養した。
【0123】
・NanoLuc発現量(発光強度)の測定(NanoLuc発光アッセイ)
DNA内包キャリア又はリポフェクタミン3000を用いたプラスミドDNAの添加の48時間後、各培養プレートをインキュベータから取り出し、発光顕微鏡システム(オリンパス製)で、NanoLucの発光細胞の写真を撮影した。NanoLucの発光強度は、画像処理ソフト(ImageJ)を用いて、発光細胞の写真から求めた。
【0124】
・GFP発現量の測定
次に、RNA内包キャリア又はリポフェクタミン3000を用いたmRNAの添加の24時間後、各培養プレートをインキュベータから取り出し、遠心で細胞を回収した後、リン酸緩衝液PBSで1回洗浄後、PBSに再懸濁し、蛍光活性化セルソーター(FACS;FACSVerse(登録商標)、BDバイオサイエンス製)により、GFPの緑色蛍光を検出した。
【0125】
・結果
図7に、NanoLuc発光強度の測定結果を示す。DNA内包キャリアを用いて導入した場合(核酸導入キャリア(+)、リポフェクタミン3000(-))では、リポフェクタミン3000によって導入した場合(核酸導入キャリア(-)、リポフェクタミン3000(+))の約3.5倍もの発光強度が得られた。この結果から、DNA内包キャリアを用いてDNAを導入した細胞では、DNAがよく導入され、且つNanoLuc遺伝子がよく発現していることが明らかである。このことは、DNAを脂質粒子に内包して導入する方法は、リポフェクタミンとDNAとの複合体を用いる方法よりもDNA導入効率及び遺伝子発現効率が高いことを示している。
【0126】
図8に、GFP蛍光強度の測定結果を示す。RNA内包キャリアを用いて導入した場合(核酸導入キャリア(+)、リポフェクタミン3000(-))では、リポフェクタミン3000によって導入した場合(核酸導入キャリア(-)、リポフェクタミン3000(+))の約10倍もの蛍光強度が得られた。この結果から、RNA内包キャリアを用いてRNAを導入した細胞では、RNAがよく導入され、且つGFP遺伝子がよく発現していることが明らかである。このことは、RNAを脂質粒子に内包して導入する方法は、リポフェクタミンとRNAとの複合体を用いる方法よりもRNA導入効率及び遺伝子発現効率が高いことを示している。
【0127】
例2.DNAを内包し、生分解性脂質を含む脂質粒子によるPBMC細胞への核酸導入率の評価
・DNA内包キャリアの調製
DNAとして、サイトメガロウイルスプロモーターの下流にNanoLuc遺伝子を連結したプラスミドDNAを使用した。このDNAを含むDNA溶液にカチオン性ペプチドを加え、DNA-ペプチド凝縮体を形成した。次いで、それを3種のエタノール溶解脂質溶液((1)FFT10/DOTAP/コレステロール/PEG-DMG=74/21/60/4mol、(2)FFT10/SST04(前記式(2-01)の脂質化合物)/DOTAP/コレステロール/PEG-DMG=37/7.5/21/60/4mol、(3)DOTAP/コレステロール/PEG-DMG=21/30/2mol)にそれぞれ添加し、更に10mMのHEPES(pH7.3)を静かに添加した後、遠心式限外ろ過で洗浄及び濃縮して、DNA内包キャリアを得た。当該核酸導入キャリアのDNA内包量は、Quant-iT(登録商標)PicoGreendsDNAAssayKit(サーモフィッシャー・サイエンティフィック製)で測定し、DNAが十分な量で内包れていることを確認した。
【0128】
・PBMCの調製
ヒト末梢血単核細胞(PBMC)をTexMACS培地(ミルテニーバイオテク製)で培養し、遠心で細胞を回収した後、2.0×106細胞/mLとなるように新鮮なTexMACSに細胞を懸濁した。96ウェル培養プレートに、4.0×106細胞/ウェルとなるように、細胞懸濁液を200μL加えた。
【0129】
・DNA内包キャリアによる核酸の導入
その後、DNA内包キャリアをDNAが0.5μg/ウェルとなるように上記ウェルに添加して、37℃、5%CO2雰囲気で培養した。
【0130】
・NanoLuc発現量(発光強度)の測定(NanoLuc発光アッセイ)
DNA内包キャリアと混合したプラスミドDNAの添加の48時間後、培養プレートをインキュベータから取り出し、Nano-GloLuciferaseAssaySystem(プロメガ製)で、NanoLucの発光強度をルミノメーター(Infinite(登録商標)F200PRO、テカン製)で測定した。測定は、キット及び装置に添付のマニュアルに従って行った。
【0131】
・結果
NanoLuc発光強度の測定結果を
図9に示し、DNA内包量の結果を
図10に示す。生分解性脂質を含む脂質粒子(1)を用いた場合では、生分解性脂質を含まない脂質粒子(3)を用いた場合と比較して、約157倍の発光強度が得られ、また5倍以上のDNA内包量が得られた。生分解性脂質を含む脂質粒子(2)を用いた場合では、脂質粒子(3)を用いた場合と比較して、約36倍の発光強度が得られ、約2倍のDNA内包量が得られた。この結果から、生分解性脂質を含む脂質粒子を用いると、核酸の内包量が向上し、且つ遺伝子の発現量が大きく向上することが明らかとなった。このことは、生分解性脂質を含む脂質粒子を用いると核酸の導入効率が非常に高くなることを示す。
【0132】
また、(1)の脂質粒子を用いた場合と(2)の脂質粒子を用いた場合を比較すると、(1)の脂質粒子を用いた場合の方がNanoLuc発光強度及びDNA内包量がそれぞれ、約4倍及び約3倍と優れていることが明らかとなった。したがって、(1)の脂質を用いれば、核酸の導入効率をより高めることが示された。
【0133】
例3.DNAを内包し、生分解性脂質を含む脂質粒子によるPBMC細胞への核酸導入率の評価・DNA内包キャリアの調製
DNAとして、サイトメガロウイルスプロモーターの下流にNanoLuc遺伝子を連結したプラスミドDNAを使用した。このDNAを含むDNA溶液にカチオン性ペプチドを加え、DNA-ペプチド凝縮体を形成した。次いで、それを表4に示す10種のエタノール溶解脂質溶液にそれぞれ添加し、更に10mMのHEPES(pH7.3)を静かに添加した後、遠心式限外ろ過で洗浄及び濃縮して、DNA内包キャリアを得た。
【表4】
【0134】
当該核酸導入キャリアのDNA内包量は、Quant-iT(登録商標)PicoGreen dsDNA Assay Kit(サーモフィッシャー・サイエンティフィック製)で測定し、DNAが十分な量で内包されていることを確認した。
【0135】
・PBMCの調製
ヒト末梢血単核細胞(PBMC)をTexMACS培地(ミルテニーバイオテク製)で培養し、遠心で細胞を回収した後、2.0×106細胞/mLとなるように新鮮なTexMACSに細胞を懸濁した。96ウェル培養プレートに、4.0×106細胞/ウェルとなるように、細胞懸濁液を200μL加えた。
【0136】
・DNA内包キャリアによる核酸の導入
その後、DNA内包キャリアをDNAが0.5μg/ウェルとなるように上記ウェルに添加して、37℃、5%CO2雰囲気で培養した。
【0137】
・核酸導入キャリアの酸解離定数の測定
ゼータサイザーナノの自動滴定装置(マルバーン社製)によって、核酸導入キャリアの酸解離定数pKa(ゼータ電位が0になるpH)を測定した。pHは塩酸と水酸化Naを用いて調整した。
【0138】
・NanoLuc発現量の測定(NanoLuc発光アッセイ)
DNA内包キャリアと混合したプラスミドDNAの添加の48時間後、培養プレートをインキュベータから取り出し、Nano-GloLuciferaseAssaySystem(プロメガ製)で、NanoLucの発光強度をルミノメーター(Infinite(登録商標)F200PRO、テカン製)で測定した。測定は、キット及び装置に添付のマニュアルに従って行った。
【0139】
・結果
表5に脂質粒子の酸解離定数(pKa)及びNanoLuc発現量(発光量:RLU)を示す。
【表5】
【0140】
また、NanoLuc発現量と脂質粒子の酸解離定数との関係を
図11に示す。表5及び
図11に示す結果から、pKa6.5~7.6の間で8000RLU以上の高いNanoLuc発現量が得られることが明らかとなった。したがって、5、6及び7の組成の脂質粒子は、核酸導入効率において特に優れていることが示された。
【0141】
例4.DNA及びmRNAを内包し、生分解性脂質を含む脂質粒子によるPBMC細胞への核酸導入率の評価・DNA内包キャリアの調製
DNAとして、サイトメガロウイルスプロモーターの下流にNanoLuc遺伝子を連結したプラスミドDNA、及びサイトメガロウイルスプロモーターの下流にGFP遺伝子を連結したプラスミドDNA使用した。これらのDNAを含むDNA溶液にカチオン性ペプチドを加え、DNA-ペプチド凝縮体を形成した。次いで、それをエタノール溶解脂質溶液((6)FFT10/DOTAP/DOPE/コレステロール/PEG-DMG=37/10.5/5.25/60/4mol)に添加し、更に10mMのHEPES(pH7.3)を静かに添加した後、遠心式限外ろ過で洗浄及び濃縮して、NanoLuc-DNA内包キャリア及びGFP-DNA内包キャリアを得た。当該核酸導入キャリアのDNA内包量は、Quant-iT(登録商標)PicoGreendsDNAAssayKit(サーモフィッシャー・サイエンティフィック製)で測定し、DNAが十分な量で内包れていることを確認した。
【0142】
・RNA内包キャリアの調製
メッセンジャーRNA(mRNA)として、レポーター遺伝子である緑色蛍光蛋白質(GFP)のmRNA(オズバイオサイエンス製)を使用した。このmRNAを含むRNA溶液を、エタノール溶解脂質溶液((6)FFT10/DOTAP/DOPE/コレステロール/PEG-DMG=37/10.5/5.25/60/4mol)に加え、ピペッティングで懸濁した後、10mMのHEPES(pH7.3)を静かに添加し、この溶液を遠心式限外ろ過で洗浄及び濃縮してGFP-RNA内包キャリアを得た。当該核酸導入キャリアのRNA内包量は、QuantiFluor(登録商標)RNASystem(プロメガ製)で測定し、mRNAが十分な量で内包されていることを確認した。
【0143】
・PBMCの調製
ヒト末梢血単核細胞(PBMC)をTexMACS培地(ミルテニーバイオテク製)で培養し、遠心で細胞を回収した後、3.3×106細胞/mLとなるように新鮮なTexMACSに細胞を懸濁して、4ウェル培養ディッシュ(Matsunami)に、1.0×106細胞/ウェルとなるように、細胞懸濁液を300μL加えた。
【0144】
・DNA内包キャリア、RNA内包キャリアによる核酸の導入
その後、NanoLuc-DNA内包キャリアとGFP-DNA内包キャリアとをDNAが、2.4μgと2.4μgずつの合計4.8μg/ウェルとなるように上記の同じウェルに添加した(DNA×DNA共導入)。また、NanoLuc-DNA内包キャリアとGFP-RNA内包キャリアとをDNAとRNAとが、2.4μgと2.4μgずつの合計4.8μg/ウェルとなるように上記の同じウェルに添加した(DNA×RNA共導入)。細胞は、脂質粒子を添加後、37℃、5%CO2雰囲気で培養した。
【0145】
・NanoLuc発現量及びGFP発現量の測定
核酸導入キャリア添加の24時間後、培養プレートをインキュベータから取り出し、NanoLucの発光強度とGFPの蛍光強度とを、例1に記載した発光顕微鏡システムと蛍光活性化セルソーターとでそれぞれ測定した。
【0146】
・結果
図12に、NanoLuc発光強度の測定結果を、
図13にGFP蛍光強度の測定結果を示す。GFP遺伝子をRNA形態で共導入した場合(DNA×RNA共導入)、同遺伝子をDNAの形態で共導入した場合(DNA×RNA共導入)の約3倍のNanoLucの発光強度が得られた。また、GFP蛍光強度に関しても、DNA×RNA共導入の場合は、DNA×DNA共導入の場合の2倍以上の強度が得られた。この結果から、両方の遺伝子をDNAの形態で共導入するよりも、異なる2種の核酸(DNA及びRNA)の形態で共導入した方が、DNA及びRNAの発現量が高いことが明らかになった。
【0147】
例5.CAR-DNA内包キャリア及びPiggyBac mRNA内包キャリアの同時導入によるCAR遺伝子導入効率の評価
・CAR-DNA内包キャリアの調製
DNAとして、PiggyBac認識配列(5’ITR及び3’ITR)の間にサイトメガロウイルスプロモーターとCAR遺伝子を連結したCAR遺伝子発現カセットを組込んだプラスミドDNAを使用した。CAR-DNAを含むDNA溶液をエタノール溶解脂質溶液((14)FFT10/DOTAP/コレステロール/PEG-DMG=37/21/30/2mol)に加え、ピペッティングで懸濁した後、10mMのHEPES(pH7.3)を静かに添加し、この溶液を遠心式限外ろ過で洗浄及び濃縮してCAR-DNA内包キャリアを得た。
【0148】
・PiggyBac mRNA内包キャリアの調製
PiggyBac mRNAは、T7プロモーターにPiggyBac遺伝子を連結したインビトロ転写用プラスミドDNAから、市販のインビトロ転写RNA合成キット(CUGA7invitrotranscriptionkit、ニッポンジーン製)によりRNAを合成した。市販のキットで当該RNAの5’末端にCap構造を付加し、3’末端にポリA構造を付加し、PiggyBacmRNAを得た。mRNAの合成は、キット添付のマニュアルに従った。PiggyBacmRNAを含むRNA溶液をエタノール溶解脂質溶液((15)FFT10/DOPE/コレステロール/PEG-DMG=37/21/30/2mol)に加え、ピペッティングで懸濁した後、10mMのHEPES(pH7.3)を静かに添加し、この溶液を遠心式限外ろ過で洗浄及び濃縮してPiggyBac-RNA内包キャリアを得た。
【0149】
・CAR-DNA/PiggyBac-DNA内包キャリアの調製
比較対象として、CAR-DNA、及びサイトメガロウイルスプロモーターとPiggyBac遺伝子を連結したプラスミドDNAの混合溶液をエタノール溶解脂質溶液((14)FFT10/DOTAP/コレステロール/PEG-DMG=37/21/30/2mol)に添加し、更に10mMのHEPES(pH7.3)を静かに添加した後、遠心式限外ろ過で洗浄及び濃縮して、CAR-DNA/PiggyBac-DNA内包キャリアを得た。
【0150】
・細胞の調製及び核酸導入キャリアによる核酸の導入
凍結した市販のヒト末梢血単核細胞(PBMC、Lonza)を37℃の恒温槽で融解した後、遠心で細胞を回収した。細胞を2種類のサイトカイン(10ng/mLのIL-7、5ng/mLのIL-15(ミルテニー))を含むTexMACSに懸濁した後、6cm培養ディッシュに播種して、37℃、5%CO2雰囲気のインキュベータ内で培養した。1晩培養した後、インキュベータから培養ディッシュを取り出して、遠心で細胞を回収し、TexMACS(10ng/mLのIL-7、5ng/mLのIL-15を含む)に懸濁した後、CD3抗体(ミルテニー)及びCD28抗体(ミルテニー)でコーティングした48ウェル培養プレートで、37℃、5%CO2雰囲気で一晩培養した。
【0151】
細胞培養液に、CAR-DNA内包キャリア(4μg)及びPiggyBac-RNA内包キャリア(4μg)を添加し、ピペッティングで穏やかに混合した後、37℃、5%CO2雰囲気で培養を継続した。また、比較対象として、CAR-DNA/PiggyBac-DNA内包キャリア(4μg×4μg)を細胞培養液に添加し、ピペッティングで穏やかに混合した後、37℃、5%CO2雰囲気で培養を継続した。
【0152】
・CAR発現Tリンパ球細胞の検出
核酸導入キャリア添加から7日後、培養プレートをインキュベータから取り出し、遠心で細胞を回収し、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)に懸濁した後、抗ヒトIGG抗体(Fluorescein (FITC) F(ab')2 Fragment Goat Anti-Human IgG (H+L)、Jackson ImmunoResearch)及びCD3抗体(V450 マウス抗ヒトCD3、クローンUCHT1、BDバイオサイエンス製)を加えて細胞と反応させた。反応が終了した後、遠心で細胞を回収してウシ血清アルブミンを1%含むPBSで洗浄した後、1%BSAを含むPBSに再懸濁してFACSの測定試料とした。FACSでは、抗IGG抗体結合細胞(CAR発現細胞)及び抗CD3抗体結合細胞(Tリンパ球細胞)を、APCフィルターセット及びV450フィルターセットでそれぞれ検出した。
【0153】
・結果
結果を
図14に示す。
図14の(a)、(b)は、CAR-DNA内包キャリア及びPiggyBac-RNA内包キャリアを導入した結果を示す。
図14の(c)、(d)は、CAR-DNA/PiggyBac-DNA内包キャリアを導入した結果を示す。
【0154】
図14の(a)、(c)は、CD3及びIGGをそれぞれ縦軸と横軸にとった2カラードットプロットを示す。このドットプロットから、UR画分にCD3陽性(Tリンパ球細胞)かつIGG陽性(CAR発現細胞)の細胞が存在することが明らかとなった。この結果は、DNAが細胞に導入され、CAR遺伝子が発現したことを示している。
【0155】
図14の(b)、(d)は縦軸を細胞数(%)とし、横軸を蛍光標識抗体からの蛍光強度としたヒストグラムを示す。破線は、DNA及びRNAを導入していない細胞(コントロール)における結果を示し、実線は、核酸導入キャリアを添加した細胞における結果を示す。
図14(b)又は(d)のヒストグラムの破線の領域と重なっていない実線の領域の割合(図中、矢印で指す領域)は、CAR-T細胞、即ちCD3陽性かつCAR陽性細胞の割合を示す。この割合は、CAR-DNA内包キャリア及びPiggyBac-RNA内包キャリアを用いた場合では41%であった。対して、CAR-DNA内包キャリア及びPiggyBac-DNA内包キャリアを用いた場合では25%であった。したがって、PiggyBacをDNAの形態で細胞に導入するよりも、RNAの形態で細胞に導入した方がCAR-T細胞の製造効率がより高まることが明らかとなった。
【0156】
例6.CAR-DNA及びPiggyBac-mRNAを内包し、生分解性脂質を含む脂質粒子を用いたCAR-T細胞の調製・CAR-DNA内包キャリアの調製
DNAとして、サイトメガロウイルスプロモーターの下流にCAR遺伝子(CD19.CAR遺伝子)を連結したプラスミドDNAを使用した。このDNAを含むDNA溶液にカチオン性ペプチドを加え、DNA-ペプチド凝縮体を形成した。次いで、それをエタノール溶解脂質溶液((16):FFT10/DOTAP/DOPE/コレステロール/PEG-DMG=37/5.25/10.5/60/4mol、(17):FFT20(前記式(1-02)の脂質化合物)/DOTAP/DOPE/コレステロール/PEG-DMG=37/10.5/5.25/60/4mol)に添加し、更に10mMのHEPES(pH7.3)を静かに添加した後、遠心式限外ろ過で洗浄及び濃縮して、DNA内包キャリアを得た。
【0157】
・RNA内包キャリアの調製
メッセンジャーRNA(mRNA)として、PiggyBac遺伝子のmRNAを使用した。このmRNAを含むRNA溶液を、2種のエタノール溶解脂質溶液((16):FFT10/DOTAP/DOPE/コレステロール/PEG-DMG=37/5.25/10.5/60/4mol、(17):FFT20/DOTAP/DOPE/コレステロール/PEG-DMG=37/10.5/5.25/60/4mol)に加え、ピペッティングで懸濁した後、10mMのHEPES(pH7.3)を静かに添加し、この溶液を遠心式限外ろ過で洗浄及び濃縮してRNA内包キャリアを得た。
【0158】
・PBMCの調製
ヒト末梢血単核細胞(PBMC)をTexMACS培地(ミルテニーバイオテク製)で培養し、遠心で細胞を回収した後、2.0×106細胞/mLとなるように新鮮なTexMACSに細胞を懸濁した。48ウェル培養プレートに、1.0×106細胞/ウェルとなるように、細胞懸濁液を500μL加えた。
【0159】
・DNA内包キャリア及びRNA内包キャリアによる核酸の導入
その後、DNA及びRNAが、それぞれ4.0μgずつの合計8.0μg/ウェルとなるように上記ウェルにDNA内包キャリアとRNA内包キャリアとを添加して、37℃、5%CO2雰囲気で培養した。
【0160】
・CAR発現量の測定
核酸導入キャリア添加から7日後及び14日後、各培養プレートをインキュベータから取り出し、遠心で細胞を回収し、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)に懸濁した後、抗ヒトIGG抗体(Fluorescein (FITC) F(ab')2 Fragment Goat Anti-Human IgG (H+L)、Jackson ImmunoResearch)及びCD3抗体(V450 マウス抗ヒトCD3、クローンUCHT1、BDバイオサイエンス製)を加えて細胞と反応させた。反応が終了した後、遠心で細胞を回収してPBSで洗浄し、PBSに再懸濁してFACSの測定試料とした。FACSでは、抗IGG抗体結合細胞(CAR発現細胞)及び抗CD3抗体結合細胞(Tリンパ球細胞)を、APCフィルターセット及びV450フィルターセットでそれぞれ検出した。
【0161】
・結果
測定結果を
図15及び
図16に示す。
図15は、(16)の脂質組成の脂質粒子を添加したPBMCの培養7日後及び14日後のCD3発現(CD3陽性)、及びCAR発現(IGG陽性)をそれぞれ縦軸と横軸にとったドットプロットを示す。
図16は、(17)の脂質組成の核酸導入キャリアを用いた場合の培養7日後及び14日後のドットプロットを示す。
【0162】
このドットプロットから、UR画分にCD3陽性(Tリンパ球細胞)かつIGG陽性の細胞(CAR発現細胞)、すなわちCAR-T細胞が存在することが明らかとなった。(16)の脂質粒子を使用した場合では、7日目でのCAR-T細胞の割合は15.0%であり、14日目でのCAR-T細胞の割合は、39.1%であった。(17)の脂質粒子の場合では7日目でのCAR-T細胞の割合は26.5%であり、14日目でのCAR-T細胞の割合は、17.1%であった。
【0163】
この結果より、生分解性脂質を主成分として含む脂質粒子によってCARを発現するCAR-T細胞を調整できることが明らかになった。
【0164】
例7.CAR-DNA及びPiggyBac-mRNAを内包し、生分解性脂質を含む脂質粒子を用いて調整したCAR-T細胞の抗腫瘍効果の評価・CAR-DNA内包キャリアの調製
DNAとして、サイトメガロウイルスプロモーターの下流にCAR遺伝子(CD19.CAR遺伝子)を連結したプラスミドDNAを使用した。このDNAを含むDNA溶液にカチオン性ペプチドを加え、DNA-ペプチド凝縮体を形成した。次いで、それをエタノール溶解脂質溶液((14)FFT10/DOTAP/コレステロール/PEG-DMG=37/21/30/2mol)に添加し、更に10mMのHEPES(pH7.3)を静かに添加した後、遠心式限外ろ過で洗浄及び濃縮して、DNA内包キャリアを得た。
【0165】
・RNA内包キャリアの調製
メッセンジャーRNA(mRNA)として、PiggyBac遺伝子のmRNAを使用した。このmRNAを含むRNA溶液を、エタノール溶解脂質溶液((15)FFT10/DOPE/コレステロール/PEG-DMG=37/21/30/2mol)に加え、ピペッティングで懸濁した後、10mMのHEPES(pH7.3)を静かに添加し、この溶液を遠心式限外ろ過で洗浄及び濃縮してRNA内包キャリアを得た。
【0166】
・PBMCの調製
ヒト末梢血単核細胞(PBMC)をTexMACS培地(ミルテニーバイオテク製)で培養し、遠心で細胞を回収した後、2.0×106細胞/mLとなるように新鮮なTexMACSに細胞を懸濁した。48ウェル培養プレートに、1.0×106細胞/ウェルとなるように、細胞懸濁液を500μL加えた。
【0167】
・DNA内包キャリア、RNA脂質粒子による核酸の導入
その後、DNA及びRNAが4.0μgずつの合計8.0μg/ウェルとなるように上記ウェルにDNA内包キャリアとRNA内包キャリアとを添加して、37℃、5%CO2雰囲気で培養した。
【0168】
・CAR発現量の測定
脂質粒子添加から14日後、培養プレートをインキュベータから取り出し、遠心で細胞を回収し、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)に懸濁した後、抗ヒトIGG抗体(Fluorescein (FITC) AffiniPure F(ab')2 Fragment Goat Anti-Human IgG (H+L), Jackson ImmunoResearch inc)及び抗CD3抗体(CD3-APC human monoclonal, Miltenyi Biotec)を加えて細胞と反応させた。反応が終了した後、遠心で細胞を回収してPBSで洗浄した後、PBSに再懸濁してFACSの測定試料とした。FACSでは、抗IGG抗体結合細胞(CAR発現細胞)及び抗CD3抗体結合細胞(Tリンパ球細胞)を、FITCフィルターセット及びAPCフィルターセットでそれぞれ検出した。
【0169】
・結果
CAR発現量の結果を
図17に示す。この結果から、UR画分にCD3陽性(Tリンパ球細胞)かつIGG陽性の細胞(CAR発現細胞)、すなわちCAR-T細胞が22.9%含まれることが明らかとなった。
【0170】
・SUSR細胞との共培養
ターゲット細胞として、CD19陽性腫瘍細胞株であるSU/SR細胞を使用した。エフェクター細胞として、14日間培養したCAR-T細胞(CD19.CAR-T cell)、及びコントロールとして脂質粒子未添加T細胞を使用した。
【0171】
エフェクター細胞:ターゲット細胞は、1:10で混合し、次のように共培養を行った。ターゲット細胞5.0×105個/wellに対し、エフェクター細胞を5.0×104個/wellとして、48ウェル培養プレートで10%FBSを加えたRPMI-1640培地1mLを用いて培養した。5日間共培養を行った後、培養プレートをインキュベータから取り出し、遠心で細胞を回収し、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)に懸濁した後、抗CD19抗体(CD19-PE human monoclonal, Miltenyi Biotec)及び抗CD3抗体(CD3-APC human monoclonal, Miltenyi Biotec)を加えて細胞と反応させた。反応が終了した後、遠心で細胞を回収してPBSで洗浄し、PBSに再懸濁してFACSの測定試料とした。FACSでは、抗CD19抗体結合細胞(SUSR細胞、ターゲット細胞)及び抗CD3抗体結合細胞(CAR-T細胞、エフェクター細胞)を、PEフィルターセット及びAPCフィルターセットでそれぞれ検出した。CAR-T細胞の抗腫瘍活性は、FACSのデータから、SUSR細胞の生存率として算出した。
【0172】
・結果
結果を
図18に示す。SUSR細胞のみの場合(a)、99.7%の割合で抗CD19抗体結合細胞(SUSR細胞)が検出されたが、CAR-T細胞と共培養した場合(c)では、抗CD19抗体結合細胞(SUSR細胞)は、1.44%のみであった。このことは、CAR-T細胞の存在により、SUSR細胞の生存率が98.5%も低下したことを示している。したがって、実施形態に従うCAR-T細胞は、優れた抗腫瘍活性を有することが明らかとなった。
以下に、出願当初の特許請求の範囲に記載された発明を付記する。
[1]
キメラ抗原受容体(CAR)を発現する遺伝子改変T細胞(CAR-T細胞)を製造する方法であって、
T細胞を含む細胞集団を、前記T細胞を活性化する抗体で刺激する刺激工程、
前記刺激工程の後、前記細胞集団に、中空体である脂質粒子と、前記脂質粒子の内腔に内包された、CAR遺伝子を含む第1核酸及びトランスポゼース遺伝子を含む第2核酸とを含む核酸導入キャリアを接触させる遺伝子導入工程、及び
前記遺伝子導入工程の後、前記細胞集団を培養する培養工程
を含み、
前記第1核酸及び前記第2核酸は互いに核酸の種類が異なる、製造方法。
[2]
前記脂質粒子を構成する脂質化合物は第1の脂質化合物を含み、
前記第1の脂質化合物は、式Q-CHR
2
(式中、
Qは、3級窒素を2つ以上含み、酸素を含まない含窒素脂肪族基であり、
Rは、それぞれ独立に、C
12
~C
24
の脂肪族基であり、
少なくとも一つのRは、その主鎖中または側鎖中に、-C(=O)-O-、-O-C(=O)-、-O-C(=O)-O-、-S-C(=O)-、-C(=O)-S-、-C(=O)-NH-、および-NHC(=O)-からなる群から選択される連結基LRを含む)で表される、[1]に記載の方法。
[3]
前記第1の脂質化合物は、下記式(1-01)~(1-21)
【化3-1】
【化3-2】
【化3-3】
の群から選択される少なくとも1つで表される、[2]に記載の方法。
[4]
前記脂質粒子は、前記第1の脂質化合物として前記式1-01及び/又は前記式1-02の化合物を含む、[3]に記載の方法。
[5]
前記脂質粒子は、前記核酸導入キャリアの表面電荷を調整する脂質と、前記核酸導入キャリア同士の凝集を抑制する脂質との少なくとも1つを更に含む、[1]~[4]の何れか1つに記載の方法。
[6]
前記脂質粒子の酸解離定数が6.5~8.0である、[1]~[5]の何れか1つに記載の方法。
[7]
前記第1核酸及び前記第2核酸は、DNA、RNA、PNA又はこれらの何れかの誘導体である、[1]~[6]の何れか1つに記載の方法。
[8]
前記第1核酸及び前記第2核酸は、一本鎖又は二本鎖の、環状、直鎖又は分岐鎖核酸である、[1]~[7]の何れか1つに記載の方法。
[9]
前記第1核酸及び前記第2核酸は、一緒に前記脂質粒子に内包されているか、或いは、別々の前記脂質粒子に内包されている、[1]~[8]の何れか1つに記載の方法。
[10]
前記トランスポゼースは、PiggyBacである、[1]~[9]の何れか1つに記載の方法。
[11]
前記核酸導入キャリアは、前記第1核酸が第1の脂質粒子に内包されている第1のサブ核酸導入キャリアと、前記第2核酸が第2の脂質粒子に内包されている第2のサブ核酸導入キャリアとを含み、
前記第1の脂質粒子と、前記第2の脂質粒子とが、互いに同じ又は異なる組成を有する、[1]~[10]の何れか1つに記載の方法。
[12]
前記遺伝子導入工程において、前記第1のサブ核酸導入キャリアと、前記第2のサブ核酸導入キャリアとを同時に接触させる、[11]に記載の方法。
[13]
前記遺伝子導入工程において、前記第2のサブ核酸導入キャリアを前記第1のサブ核酸導入キャリアよりも先に接触させる、[11]に記載の方法。
[14]
前記刺激工程における前記抗体が、抗CD3抗体、抗CD28抗体の少なくともどちらか1つを含む、[1]~[13]の何れか1つに記載の方法。
[15]
T細胞にCAR遺伝子を導入するための核酸導入キャリアであって、
中空体である脂質粒子と、前記脂質粒子の内腔に内包されたCAR遺伝子を含む第1核酸及び/又はトランスポゼース遺伝子を含む第2核酸とを含み、
前記第1核酸及び前記第2核酸は互いに核酸の種類が異なる、核酸導入キャリア。
[16]
前記脂質粒子を構成する脂質化合物は、第1の脂質化合物を含み、
前記第1の脂質化合物は、式Q-CHR
2
(式中、
Qは、3級窒素を2つ以上含み、酸素を含まない含窒素脂肪族基であり、
Rは、それぞれ独立に、C
12
~C
24
の脂肪族基であり、
少なくとも一つのRは、その主鎖中または側鎖中に、-C(=O)-O-、-O-C(=O)-、-O-C(=O)-O-、-S-C(=O)-、-C(=O)-S-、-C(=O)-NH-、および-NHC(=O)-からなる群から選択される連結基LRを含む)で表される、[15]に記載の核酸導入キャリア。
[17]
前記第1の脂質化合物は、下記式(1-01)~(1-21)
【化4-1】
【化4-2】
【化4-3】
の群から選択される1つで表される、[16]に記載の核酸導入キャリア。
[18]
前記第1の脂質化合物は、前記式(1-01)又は(1-02)で表される、[17]に記載の核酸導入キャリア。
[19]
前記脂質粒子は、前記核酸導入キャリアの酸解離定数を調整する脂質と、前記核酸導入キャリア同士の凝集を抑制する脂質との少なくとも1つを更に含む、[14]~[18]の何れか1つに記載の核酸導入キャリア。
[20]
前記脂質粒子の酸解離定数が6.5~8.0である、[14]~[19]の何れか1つに記載の核酸導入キャリア。
[21]
前記第1核酸及び前記第2核酸は、DNA、RNA、PNA又はこれらの何れかの誘導体である、[14]~[20]の何れか1つに記載の核酸導入キャリア。
[22]
前記第1核酸及び前記第2核酸は、一本鎖又は二本鎖の、環状、直鎖又は分岐鎖核酸である、[14]~[21]の何れか1つに記載の核酸導入キャリア。
[23]
前記核酸導入キャリアが前記第1核酸及び前記第2核酸の両方を含む場合、
前記第1核酸及び前記第2核酸は、一緒に前記脂質粒子に内包されているか、或いは、別々の前記脂質粒子に内包されている、[14]~[22]の何れか1つに記載の核酸導入キャリア。
[24]
前記トランスポゼースは、PiggyBacである、[14]~[23]の何れか1つに記載の核酸導入キャリア。
[25]
前記核酸導入キャリアは、前記第1核酸が第1の脂質粒子に内包されている第1のサブ核酸導入キャリアと、前記第2核酸が第2の脂質粒子に内包されている第2のサブ核酸導入キャリアとを含み、
前記第1の脂質粒子と、前記第2の脂質粒子とが、互いに同じ又は異なる組成を有する、[14]~[24]の何れか1つに記載の核酸導入キャリア。
[26]
中空体である脂質粒子と、前記脂質粒子の内腔に内包されている、CAR遺伝子を含む第1核酸及び/又はトランスポゼース遺伝子を含む第2核酸とを備える核酸導入キャリア、及び
前記核酸導入キャリアの保管安定性を向上させる物質
を少なくとも含み、
前記第1核酸及び前記第2核酸は互いに核酸の種類が異なる、CAR-T細胞を製造するためのキット。
[27]
前記核酸導入キャリアが、固相に直接又は間接的に付着又は固定されている、[26]に記載のキット。
[28]
前記固相が、金属、樹脂、ゲル又は繊維を材料とする容器、プレート又はシートである、[27]に記載のキット。
【符号の説明】
【0173】
1…脂質粒子、1b…内腔、1c…第1の脂質粒子、1d…第2の脂質粒子、2…第1核酸、2a…CAR遺伝子配列、2b…第1のトランスポゼース認識配列、2c…第2のトランスポゼース認識配列、3…第2核酸、3a…トランスポゼース遺伝子配列、5…核酸凝縮ペプチド、10…核酸導入キャリア、20…核酸導入キャリア、21…核酸導入キャリア、22…第1のサブ核酸導入キャリア、23…第2のサブ核酸導入キャリア、25…細胞集団、26…抗体
【配列表】