(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-03-19
(45)【発行日】2025-03-28
(54)【発明の名称】複合材料およびこれを用いた3Dプリンタ用のフィラメント、複合材料の製造方法
(51)【国際特許分類】
B29C 64/118 20170101AFI20250321BHJP
A61L 9/01 20060101ALI20250321BHJP
B33Y 70/00 20200101ALI20250321BHJP
B33Y 40/10 20200101ALI20250321BHJP
B29C 64/314 20170101ALI20250321BHJP
C08L 101/00 20060101ALI20250321BHJP
C08L 1/00 20060101ALI20250321BHJP
C08K 3/22 20060101ALI20250321BHJP
【FI】
B29C64/118
A61L9/01 B
B33Y70/00
B33Y40/10
B29C64/314
C08L101/00
C08L1/00
C08K3/22
(21)【出願番号】P 2023148542
(22)【出願日】2023-09-13
【審査請求日】2023-11-29
(73)【特許権者】
【識別番号】000002288
【氏名又は名称】三洋化成工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】593045341
【氏名又は名称】明和製紙原料株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000567
【氏名又は名称】弁理士法人サトー
(72)【発明者】
【氏名】中渕 敬士
(72)【発明者】
【氏名】寺西 覚
(72)【発明者】
【氏名】宮藤 久士
(72)【発明者】
【氏名】駒津 慎
【審査官】家城 雅美
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-194231(JP,A)
【文献】特開2019-147966(JP,A)
【文献】特表2021-517079(JP,A)
【文献】特開2009-227803(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 64/118
A61L 9/01
B33Y 70/00
B33Y 40/10
B29C 64/314
C08L 101/00
C08L 1/00
C08K 3/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性樹脂と、
古紙を由来とする繊維成分を含み、前記熱可塑性樹脂に分散する古紙材と、
酸化チタンを含み、前記熱可塑性樹脂と前記古紙材との混合によって生じる臭気を低減する
0より大きく0.1質量%以下の消臭剤と、
を含む、
複合材料。
【請求項2】
請求項1記載の複合材料で形成されている、
3Dプリンタ用のフィラメント。
【請求項3】
古紙を由来とする繊維成分を含む古紙材と、0より大きく0.1質量%以下の酸化チタンを含む消臭剤とを混合して、予混合物を生成する第一混合段階と、
前記第一混合段階で生成された前記予混合物と、熱可塑性樹脂とを、加熱しながら混合して、前記熱可塑性樹脂に前記予混合物が前記熱可塑性樹脂に分散した最終混合物を生成する第二混合段階と、
を含む複合材料の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本実施形態は、複合材料およびこれを用いた3Dプリンタ用のフィラメント、複合材料の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、複合材料として、熱可塑性樹脂に繊維材を添加したものが公知である(特許文献1)。このような複合材料は、天然のバイオマス材料の利用と、合成樹脂の使用量の低減の観点から、さらなる利用の拡大が求められている。例えば純粋なパルプやセルロース、これらを由来とするカーボンナノファイバー(CNF)を用いて複合材料を形成する場合、材料を精製するために多量の二酸化炭素の排出を招くという問題がある。また、これらの材料は精製度が高いことから、高価であるという問題がある。そこで、古紙などのように精製度が低く安価な繊維材の使用が求められている。
【0003】
しかしながら、古紙は、例えば新聞紙、段ボールあるいは雑紙など多様な紙を由来とする。そのため、純粋なセルロース成分だけでなく、インクや表面のコーティング剤などの無機物および有機物を含んでいる。これら古紙に含まれる無機物や有機物は、熱可塑性樹脂に混合する際に分解や変性を生じる。その結果、古紙を混合した複合材料は、古紙を由来とする特有の臭気成分を含んでおり、実用には耐えがたい臭気を生じるという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで、含まれる臭気を大幅に低減し、安価で実用性が高い複合材料およびこれを用いた3Dプリンタ用のフィラメントを提供することを目的とする。
また、簡単な工程で含まれる臭気を大幅に低減し、実用性が高い複合材料の製造方法を提供することを他の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
一実施形態による複合材料は、消臭剤を含んでいる。熱可塑性樹脂に古紙を混合する場合、熱可塑性樹脂および古紙は、熱可塑性樹脂の溶融のために加熱される。そのため、古紙に含まれる有機物は、分解や変性し、悪臭成分を発生する。この悪臭成分は、生成した複合材料から生じ、複合材料の品質低下の要因となる。一実施形態による複合材料の場合、混合される熱可塑性樹脂および古紙に、消臭剤を加えることにより、加熱によって生じる悪臭成分は消臭剤によってさらに分解および吸収される。そのため、生成した複合材料から生じる悪臭成分は、大幅に低減される。また、繊維材として古紙を用いる場合でも、古紙の精製は不要である。したがって、含まれる臭気を大幅に低減することができ、安価で実用性を高めることができる。
【0007】
また、一実施形態による複合材料の製造方法では、古紙材と消臭剤とを混合して予混合物を生成している。これにより、熱可塑性樹脂に古紙材を加えて加熱しても、加熱によって生じる悪臭成分は消臭剤によって分解および吸収される。そのため、複合材料から発生する悪臭成分は、古紙材へ消臭剤の混合という簡単な工程で低減される。したがって、簡単な工程で含まれる臭気を大幅に低減し、実用性が高い複合材料の製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】一実施形態による複合材料に混合される古紙材の一例を示す写真に基づく図
【
図2】消臭の処理を施さない複合材料から発生する臭気を含むガスクロマトグラフを示す概略図
【
図3】一実施形態による複合材料の製造方法の流れを示す概略図
【
図4】一実施形態による複合材料の製造方法の流れを示す概略図
【
図5】一実施形態による複合材料の実施例および比較例の試験結果を示す概略図
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、複合材料の実施形態を図面に基づいて説明する。
複合材料は、熱可塑性樹脂、古紙材および消臭剤を含んでいる。熱可塑性樹脂は、汎用される各種の樹脂を用いることができる。熱可塑性樹脂は、例えばポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィンが用いられる。この他に、熱可塑性樹脂は、ポリスチレン樹脂やPET樹脂などの汎用樹脂を用いてもよい。複合材料は、例えば線状または棒状などに成形することにより、3Dプリンタのフィラメントとして用いられる。また、複合材料は、例えばチップ状やペレット状に粉砕して、樹脂成形の材料としてもよい。
【0010】
古紙材は、古紙を由来とする繊維成分を含んでいる。古紙材は、例えば家庭や事業体から、それらで消費された紙をリサイクルなどの目的で回収することによって得られる。回収された古紙は、例えば樹脂や金属などの紙成分以外の不純物を除去した後、破砕される。古紙材は、例えば
図1に示すように古紙を破砕した際に破砕機などに残留する細かな繊維状のものであり、埃に近似した外観を示す。ここで、具体的に、古紙とは、環境省「環境物品等の調達の推進に関する基本方針」(令和5年2月24日変更閣議決定)によれば、市中回収古紙と産業古紙とを含むものである。市中回収古紙とは、例えば店舗、事務所および家庭などから発生する使用済みの紙であって、紙製造事業者により再利用する紙の原料として使用されるものである。この場合、市中回収古紙は、商品として出荷され、流通段階を経て生産者に回収されるものも含まれる。また、産業古紙とは、原紙の製紙工程後の加工工程から発生するものであり、紙製造事業者により再利用する紙の原料として使用されるものである。したがって、古紙とは、例えば新聞紙、段ボール、雑紙、雑紙および飲料用紙パックなどを意味する。
【0011】
古紙材に含まれる古紙繊維は、長さが主に30μm~1500μm程度である。古紙材に含まれる古紙繊維は、幅が5μm~100μm程度であり、大部分がアスペクト比の大きな線状の繊維である。古紙繊維は、一部に線状の繊維が凝集して形成された塊状の繊維を含んでいる。なお、古紙材は、主として古紙由来の繊維を含んでいればよく、古紙繊維に加えて、例えば新紙などを由来とする他の繊維を含んでいてもよい。
【0012】
消臭剤は、低分子量の無機系の無機消臭剤である。消臭剤は、粉末として供される。消臭剤は、複合材料の総重量に対して3質量%未満で添加される。消臭剤は、特に0.1質量%程度の添加量とすることが消臭に大きな効果を奏する。消臭剤は、無機消臭剤のうち、酸化チタンまたは酸化チタンを含む混合物であることが好ましい。一例として、消臭剤は、酸化チタン、ゼオライトと酸化チタンとの混合物などを用いることができる。
【0013】
熱可塑性樹脂に古紙材を加えた複合材料は、古紙を由来とする臭気成分を生成する。古紙材は、印刷やコーティングが施された古新聞紙や雑紙を由来とする古紙を含んでいる。このように印刷時のインクやコーティングなどに含まれる無機物や有機物は、熱可塑性樹脂との混合時における加熱によって変性または分解する。特に、有機物は、加熱による酸化の際に、臭気成分を生成する。このような悪臭の原因となる臭気成分は、アルコール類、アルデヒド類、エステル類、カルボ酸類、およびフェノール類などである。アルデヒド類としては、例えばエポキシデセナール、バニリン、ノネナール、ノナナールなどである。エステル類としては、ラクトンなどである。カルボン酸類としては、酪酸、吉草酸、ドデカン酸などである。フェノール類としては、プロピルフェノール、エチルフェノール、クレゾールなどである。
【0014】
複合材料は、分散剤を添加してもよい。分散剤は、熱可塑性樹脂に対する古紙や消臭剤などの各種添加物の均一な分散を促す。分散剤は、例えば三洋化成工業株式会社製の「UMEX 1010」などの市販のものが用いられる。また、分散剤は、複合材料の全体の組成のうち、1質量%以下の微量を添加することが好ましい。
【0015】
複合材料は、古紙を由来とする臭気を生成する。人間に官能的な臭気としては、古紙特有の古紙臭やタバコ臭、および上記で例示した臭気成分による悪臭などがある。本実施形態では、熱可塑性樹脂および古紙材に消臭剤を加えることにより、これら古紙臭、タバコ臭および臭気成分による悪臭の低減を図っている。一例として、
図2は、古紙を含む複合材料のうち、消臭剤を含まない比較例のガスクロマトグラフの結果を示している。この
図2に示すガスクロマトグラフと官能的な嗅覚とを比較すると、
図2におけるA1、A2、A3およびA4の領域において、嗅覚で感じる悪臭が検出された。このうち、A1は、主としてヘキサナールに起因する臭気である。また、A2は、主としてヘプタナールに起因する臭気である。A3は、主としてヘキサン酸に起因する臭気である。A4は、主として3-ヒドロキシピリジン、および5-ヒドロキシメチル-2-フルアルデヒドに起因する臭気である。このように、古紙を混入した複合材料は、適切な消臭処理を施さないと、古紙に起因する臭気を発生する。
【0016】
ガスクロマトグラフによる分析は、次のように行なっている。分析装置は、島津製作所製の「GCMS QP-2010plus」を用いた。カラムは、「ZB-WAX(長さ30m、内径0.25mm、膜厚0.25μm)」を用いた。温度条件は、40℃で5分間の保持を行なった後、毎分10℃で昇温し、230℃で10分間の保持を行なった。ガス圧力は、200kPaとした。サンプリングの条件は、複合材料の実施例および比較例の粉末を、専用の容器に投入して、200℃で10分間の温度調整を行なった後、この容器内の気体をサンプリングした。
図2は、上記の条件で分析したガスクロマトグラフの結果を示している。
【0017】
次に、複合材料の製造方法について
図3および
図4を用いて説明する。
図3に示す製造方法Aおよび
図4に示す製造方法Bは、選択する熱可塑性樹脂、消臭剤、古紙材および分散剤の組成などに基づいて、いずれかを任意に選択することができる。
【0018】
(製造方法A)
図3に示すように製造方法Aでは、熱可塑性樹脂および消臭剤は、加熱しながら混合される(S101)。この場合、熱可塑性樹脂と消臭剤との混合は、例えばプラストミルを用いて200℃で1分間ほど混練される。古紙は、この混合によって得られた混合物に投入される(S102)。混合物と古紙とは、200℃でさらに10分間ほど混練される。生成された最終混合物は、線状またはペレット状など、任意の形状に成形される(S103)。また、最終混合物は、例えば溶融した状態で射出することにより、任意の最終的な形状に成形してもよい。
【0019】
(製造方法B)
図4に示すように製造方法Bでは、古紙材および消臭剤は、予め混合して、予混合物として生成される(S201)。上述のように古紙材は、繊維状の集合体であるとともに、消臭剤は、粉末である。そのため、古紙材と消臭剤とは、乾式で混合することにより、容易に予混合物として混合される。
【0020】
予混合物は、熱可塑性樹脂に混合される(S202)。このとき、熱可塑性樹脂は、例えば200℃程度に加熱することにより、流動性を有する程度に溶融する。予混合物は、軟化した熱可塑性樹脂に加えることにより、熱可塑性樹脂と混練される。これにより、予混合物と熱可塑性樹脂とは混合され、熱可塑性樹脂に古紙材および消臭剤が分散した最終混合物が生成される。生成された最終混合物は、線状またはペレット状など、任意の形状に成形される(S203)。また、最終混合物は、例えば溶融した状態で射出することにより、任意の最終的な形状に成形してもよい。
【0021】
以下、実施例および比較例について説明する。
図5に示すように試料1~試料9を調製して、官能的な臭気の検査を行なった。臭気は、古紙臭、タバコ臭、およびこれら以外の悪臭として不快臭の有無を検証した。不快臭は、古紙臭またはタバコ臭とは異なるものの、嗅覚に対して不快に感じられる臭気である。臭気は、各試料を調製して3日間(72時間)が経過した後に残存する臭気に基づいて行なった。「○」は、臭気が低減し、臭気がないか、または気にならない程度のかすかな臭気が残っていたことを示している。「△」は、臭気が低減したものの、明りょうな臭気が残っていたことを示している。「×」は、臭気の低減がなかったことを示している。
【0022】
実施例および比較例は、上述の「製造方法A」または「製造方法B」で製造し、臭気を確認した。臭気の確認では、最終生成物をシート状にした後、粒径3~5mm程度の粒子状に粉砕した。粉砕した粒子は、容積が約200mlのアルミパックに封入した。封入する粒子は、50gとした。臭気の確認は、予め設定した所定期間が経過した後、アルミパックを開封して行なった。熱可塑性樹脂は、ポリプロピレン(サンアロマー社製 PL500A)を用いた。
【0023】
(試料1)
試料1は、比較例である。試料1は、ポリプロピレンおよび古紙材を含んでいる。試料1は、消臭剤やその他の成分を含んでいない。試料1は、製造方法Aで調製した。臭気を確認したところ、試料1は、古紙臭が確認された。試料1は、消臭剤が添加されていないため、古紙臭の低減ができなかったと考えられる。
【0024】
(試料2)
試料2は、比較例である。試料2は、ポリプロピレンおよび古紙材を含んでいる。試料2は、消臭剤やその他の成分を含んでいない。試料2は、製造方法Bで調製した。臭気を確認したところ、試料2は、古紙臭が確認された。試料2は、消臭剤が添加されていないため、古紙臭の低減ができなかったと考えられる。また、試料1との比較から、製造方法の相違は、古紙臭の低減に影響を与えないことが分かる。
【0025】
(試料3)
試料3は、比較例である。試料3は、ポリプロピレンおよび古紙材を含んでいる。試料3は、消臭剤として有機系低分子の消臭剤であるアミノグアニジン塩酸塩を添加した。試料3は、製造方法Aで調製した。臭気を確認したところ、試料3は、古紙臭が低減したものの、タバコ臭が確認された。試料3は、消臭剤によって古紙臭の低減が図られるものの、異なる別の臭気が確認されることが分かる。これは、消臭剤による古紙臭のマスキングの効果によるものか、または古紙材に含まれる微量成分と消臭剤との相互作用によるもののいずれかまたは双方と考えられる。
【0026】
(試料4)
試料4は、比較例である。試料4は、ポリプロピレンおよび古紙材を含んでいる。試料4は、無機系低分子の消臭剤として、株式会社エルムジャパン製の「エルムプラス」を用いた。この消臭剤は、ゼオライト、酸化亜鉛、酸化アルミニウム、酸化チタンなどを含んでいる。試料4は、製造方法Aで調製した。試料4の場合、消臭剤は、3質量%を添加した。臭気を確認したところ、試料4は、古紙臭が低減したものの、不十分であった。
【0027】
(試料5)
試料5は、比較例である。試料5は、ポリプロピレンおよび古紙材を含んでいる。試料5は、試料4と同一の無機系低分子の消臭剤を添加した。試料5は、製造方法Bで調製した。試料5の場合、消臭剤は、3質量%を添加した。臭気を確認したところ、試料5は、古紙臭が低減したものの、不十分であった。また、試料4との比較から、製造方法の相違は、古紙臭の低減に影響を与えないことが分かる。
【0028】
(試料6)
試料6は、比較例である。試料6は、ポリプロピレンおよび古紙材を含んでいる。試料6は、消臭剤として、株式会社日本抗菌総合研究所、古河産業株式会社、アルバファインテック株式会社製の「VSC-MB」を用いた。この消臭剤は、異臭成分となる揮発性硫黄化合物(Volatile Sulfur Compounds)を分解する機能を有するとともに、各種の異臭成分の消臭に対応するものである。試料6は、製造方法Aで調製した。試料6の場合、消臭剤は、3質量%を添加した。臭気を確認したところ、試料6は、古紙臭が低減したものの、不十分であった。
【0029】
(試料7)
試料7は、比較例である。試料7は、ポリプロピレンおよび古紙材を含んでいる。試料7は、無機系低分子の消臭剤として、テイカ株式会社製の「AMT100」を用いた。この消臭剤は、酸化チタンの微粒子を主成分として含んでいる。試料7は、製造方法Aで調製した。試料7の場合、消臭剤は、3質量%を添加した。臭気を確認したところ、試料7は、古紙臭が低減したものの、古紙臭ともタバコ臭とも異なる不快臭が生じた。試料7は、消臭剤によって古紙臭の低減が図られるものの、異なる別の臭気が確認されることが分かる。これは、消臭剤による古紙臭のマスキングの効果によるものか、または古紙材に含まれる微量成分と消臭剤との相互作用によるもののいずれかまたは双方と考えられる。
【0030】
(試料8)
試料8は、実施例である。試料8は、ポリプロピレンおよび古紙材を含んでいる。試料8は、分散剤として「UMEX 1010」を添加するとともに、無機系低分子の消臭剤として試料7と同様に「AMT100」を添加した。試料8は、分散剤を添加したため、製造方法Bで調製した。試料8の場合、消臭剤は、0.1質量%を添加した。臭気を確認したところ、試料8は、古紙臭が低減した。また、試料8は、古紙臭やタバコ臭とも異なる不快臭も確認されなかった。このように、実施例である試料8は、試料7との比較から、適切な量の消臭剤によって古紙臭の低減が図られることが分かる。
【0031】
(試料9)
試料9は、実施例である。試料9は、ポリプロピレンおよび古紙材を含んでいる。試料9は、分散剤を添加することなく、無機系低分子の消臭剤である酸化チタンを添加した。試料9は、試料8との比較のため製造方法Bで調製した。試料9の場合、消臭剤は、0.1質量%を添加した。臭気を確認したところ、試料9は、古紙臭が低減した。また、試料9は、古紙臭やタバコ臭とも異なる不快臭も確認されなかった。このように、実施例である試料9は、適切な量の消臭剤によって古紙臭の低減が図られることが分かる。また、分散剤の添加は、古紙臭の低減に影響を与えないことが分かる。
【0032】
以上説明したように、本実施形態による複合材料は、消臭剤を含んでいる。これにより、加熱によって生じる悪臭成分は、消臭剤によって分解および吸収される。そのため、生成した複合材料から生じる悪臭成分は、大幅に低減される。また、繊維材として古紙を用いる場合でも、古紙の精製は不要である。したがって、含まれる臭気を大幅に低減することができ、安価で実用性を高めることができる。
【0033】
また、一実施形態の複合材料は、質量において50%程度が熱可塑性樹脂に代えて古紙材としている。そのため、石油を由来とする熱可塑性樹脂の消費の低減が図られるとともに、収集された古紙の再利用が促される。そして、複合材料は、熱可塑性樹脂に古紙を混合しつつ、適切な量の消臭剤を加えることにより、熱可塑性樹脂の代替品として用いられる。したがって、投入するエネルギーの増大を招くことなく、資源の有効活用を図ることができる。
【0034】
さらに、一実施形態による複合材料の製造方法では、古紙材と消臭剤とを混合して予混合物を生成している。これにより、熱可塑性樹脂に古紙材を加えて加熱しても、加熱によって生じる悪臭成分は消臭剤によって分解および吸収される。そのため、複合材料から発生する悪臭成分は、古紙材へ消臭剤の混合という簡単な工程で低減される。したがって、簡単な工程で含まれる臭気を大幅に低減し、実用性が高い複合材料の製造することができる。
【0035】
以上説明した本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々の実施形態に適用可能である。
【要約】
【課題】含まれる臭気を大幅に低減し、安価で実用性が高い複合材料およびこれを用いた3Dプリンタ用のフィラメントを提供する。
【解決手段】複合材料は、熱可塑性樹脂と、古紙材と、消臭剤とを含む。古紙材は、古紙を由来とする繊維成分を含み、前記熱可塑性樹脂に分散する。消臭剤は、低分子量の無機系の材料であり、前記熱可塑性樹脂と前記古紙材との混合によって生じる臭気を低減する。消臭剤は、3質量%未満が添加される。
【選択図】なし