(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-03-19
(45)【発行日】2025-03-28
(54)【発明の名称】光伝送システム、受信器、およびデバイス、ならびに光信号を受信する方法
(51)【国際特許分類】
H04B 10/64 20130101AFI20250321BHJP
H04B 10/2513 20130101ALI20250321BHJP
【FI】
H04B10/64
H04B10/2513
(21)【出願番号】P 2022506851
(86)(22)【出願日】2020-08-07
(86)【国際出願番号】 IB2020057470
(87)【国際公開番号】W WO2021024227
(87)【国際公開日】2021-02-11
【審査請求日】2023-08-03
(32)【優先日】2019-08-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】521158451
【氏名又は名称】ビフレスト コミュニケーションズ アぺーエス
(74)【代理人】
【識別番号】110000659
【氏名又は名称】弁理士法人広江アソシエイツ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】サー,ラウ
(72)【発明者】
【氏名】ヴァルデカサ,ギルレーモ
(72)【発明者】
【氏名】アルタバス ナヴァッロ,ホセ アントニオ
(72)【発明者】
【氏名】イェンセン,イェスパー
(72)【発明者】
【氏名】スクアルテッキア,ミケーレ
【審査官】後澤 瑞征
(56)【参考文献】
【文献】特開昭63-318530(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 10/64
H04B 10/2513
H04B 10/079
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光受信器であって、
中心周波数を有する局部発振器光を提供する少なくとも1つの局部発振器と、
第1の入力と、第2の入力と、少なくとも1つの出力とを有する光合成器であって、前記光合成器は、前記第1の入力に提供される光信号中心周波数および前記第2の入力に提供される局部発振器光を合成し、合成された光信号を前記少なくとも1つの出力に提供する、光合成器と、
前記光合成器の前記少なくとも1つの出力に光学的に接続された入力と、無線周波数(RF)電気信号出力とを有する光電気変換器であって、前記光電気変換器は、前記合成された光信号をRF周波数でRF電気信号に変換する、光電気変換器と、
出力を有する前記RF電気信号を受信するように電気的に接続された電気フィルタであって、前記電気フィルタは、前記RF電気信号に群遅延変動を導入する、電気フィルタと、
前記RF電気信号を、情報を搬送するベースバンド電気信号に整流する、前記電気フィルタの前記出力と電気的に接続された入力を有する整流器と、を備え、
前記局部発振器光
の中心周波数が、前記RF電気信号の周波数を制御するために、前記光信号中心周波数に対して制御され、前記RF電気信号における群遅延変動が、前記
電気フィルタによって導入された前記群遅延変動によって少なくとも部分的にオフセットされる、光受信器。
【請求項2】
前記群遅延変動は、光ファイバリンクにおける波長分散補償の量に対応する、請求項1に記載の受信器。
【請求項3】
前記受信器のビット誤り率性能を低減するように前記局部発振器光
の中心周波数が調整される、請求項1に記載の受信器。
【請求項4】
前記電気フィルタは
、ハイパスフィルタ、バンドパスフィルタ、およびローパスフィルタ
のうちの少なくとも1つである、請求項1に記載の受信器。
【請求項5】
前記電気フィルタは、少なくとも部分的にトランスインピーダンス増幅器を介して実装され、前記RF電気信号の周波数は、前記RF電気信号の上側波帯および下側波帯のうちの一方の少なくとも一部をフィルタリングするように制御される、請求項4に記載の受信器。
【請求項6】
前記局部発振器
光の中心周波数は、前記RF電気信号に対して前記
電気フィルタの性能を調整するように制御される、請求項5に記載の受信器。
【請求項7】
中心周波数を有し、情報を搬送する光信号を受信する方法であって、
少なくとも1つの局部発振器を介して
、中心周波数
を有する局部発振器光を提供することと、
光合成器を介して、合成光信号を出力するために前記光信号を前記局部発振器光と合成することと、
光電気変換器を介して、前記合成光信号を、前記情報を搬送する上側波帯および下側波帯を有する対応する無線周波数(RF)電気信号にRF周波数で変換することと、
電気フィルタを介して、前記RF電気信号をフィルタリングすることであって、前記
電気フィルタが
周波数依存の群遅延変動を前記RF電気信号に導入する、フィルタリングすることと、
前記局部発振器光
の中心周波数を調整することであって、前記RF電気信号における群遅延変動が、前記電気フィルタによって導入された前記群遅延によって少なくとも部分的にオフセットされる、調整することと、
整流器を介して、前記RF電気信号を、前記情報を搬送するベースバンド電気信号に整流することと、
を含む、方法。
【請求項8】
光伝送システムであって、
中心周波数を有し、情報を搬送する光信号を送信する光送信器と、
前記光信号を受信する光受信器であって、前記光受信器が、
前記送信器から前記光信号を受信する光信号入力と、
中心周波数を有する局部発振器光を提供する少なくとも1つの局部発振器と、
前記光信号入力から第1の光入力に提供される前記光信号を、前記少なくとも1つの局部発振器から第2の入力に提供される前記局部発振器光と合成し、前記光信号および前記局部発振器光を含む合成光信号を出力する、光合成器と、
前記光合成器の出力から前記合成光信号を受信し、前記光信号中心周波数と前記局部発振
器光の中心周波数との間の周波数差に等しい無線周波数(RF)周波数を有するRF電気信号を出力する光信号入力を有する光電気変換器と、
前記RF電気信号の周波数の関数として前記RF電気信号を整形するために前記光電気変換器からの前記RF電気信号に電気的に接続されたフィルタと、
前記RF電気信号の周波数を制御するように前記局部発振器光
の中心周波数を調整する局部発振器コントローラであって、前記RF電気信号における群遅延変動が、前記フィルタによって導入された前記群遅延変動によって少なくとも部分的にオフセットされる、局部発振器コントローラと、
前記フィルタからの前記RF電気信号を、前記情報を搬送するベースバンド電気信号に整流する整流器と、を含む、光受信器と、
を備える、光伝送システム。
【請求項9】
前記フィルタは、前記RF電気信号の上側波帯および下側波帯のうちの一方を少なくとも実質的に除去し、残留側波帯信号(VSB)および単側波帯信号(SSB)RF信号のうちの一方を出力するための、ハイパスフィルタ、バンドパスフィルタ、またはローパスフィルタのうちの少なくとも1つであり、
前記局部発振器コントローラは、前記フィルタの通過帯域に対して前記RF電気信号の周波数を制御するように前記局部発振
器光の中心周波数をさらに調整する、請求項8に記載のシステム。
【請求項10】
前記フィルタは、前記RF信号に群遅延
変動を導入するオールパスフィルタである、請求項9に記載のシステム。
【請求項11】
前記電気フィルタによって導入された前記群遅延変動は
RF周波数範囲にわたって単調である、請求項1に記載の受信機。
【請求項12】
前記電気フィルタによって導入された前記群遅延変動は
RF周波数範囲にわたって非線形である、請求項1に記載の受信機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願の相互参照]
本出願は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる、2019年8月7日に出願された米国仮特許出願第62/883,846号の利益および優先権を主張する。
【0002】
本発明は、一般に、性能を改善した通信システムおよび受信器に関する。より具体的には、本発明のシステムおよび受信器は、光信号から生成された電気信号の単側波帯を使用する標準(すなわち、両側波帯)変調光信号からの情報の受信を可能にし、ならびに/または、単側波帯もしくは両側波帯光信号の調整可能/同調可能な電気分散および他の歪み補償を提供する。
【背景技術】
【0003】
ネットワーク化された通信システムを介して情報を搬送する信号の効率的な生成、送信、受信は、現代社会を支えている。これらの通信システムの範囲および情報搬送容量を拡張する能力は、システムのコストに直接関係する。範囲および容量の継続的な拡張は、ネットワークを介した追加のサービスの配信を可能にし、これが追加の拡張を推進する。これらのシステムにおける情報伝送速度を増加させるために、システム内の情報チャネル内および情報チャネル間の干渉など、多種多様な伝送障害を克服する必要がある。
【0004】
伝送障害は、伝送速度が増加し、システム内の情報チャネルの数が増加するにつれて、より顕著になる。例えば、光学システムでは、標準シングル・モード・ファイバ(SSMF:standard single mode fiber)の材料および設計により、異なる波長の光が異なる群速度でファイバを伝搬し、これは、波長分散として知られている。
図1は、光通信システムにおいて最も一般的に使用される光ファイバ、標準シングル・モード・ファイバ(SSMF)において、波長分散が光波長とともにどのように変化するかを示し、これは通常、1310nmの波長付近にゼロ分散領域を有し、1550nmの波長付近のCバンドにおいて約17ps/(nm km)の分散値を有する。波長分散は、異なる光学構成要素が異なる時間に受信器に到達することにより、送信されたパルスの広がりにつながり、したがって、シンボル間干渉(ISI)を引き起こす。より高いシンボルレートは、より広いスペクトルを有し、これは、信号内のスペクトル成分間のより高い速度差につながる。加えて、各シンボルはより短いタイムスロットを割り当てられるため、受信信号品質に対してデクリメントになる前に許容され得るパルス広がりの量は、シンボルレートが高くなるにつれて減少する。
【0005】
図2Aは、パルス広がり効果およびISIを示す。
図2Bは、非特許文献1によって計算されるようにD=18ps/(nm km)およびλ=1550nmであると仮定して、10km、20km、30km、40km、50kmおよび100kmのSSMFの場合の強度変調/直接検出(IM/DD:intensity modulation/direct detection)リンクの周波数応答のプロットを示す。
【0006】
波長分散は、ロバストな通信システムを提供するために対処しなければならない伝送障害の1つにすぎない。通信システムにおいて使用される送信器、受信器、および他のデバイスは、多くの適用例において、障害を少なくとも部分的に補償するように設計され得るが、そのようなシステムのコストは経済的ではない。
【0007】
したがって、より大きい情報伝送容量を有するシステムをネットワーク全体に展開することを可能にするために、より低いコストおよびより高い性能を有する通信システムが継続的に必要とされている。この必要性は、高コスト、高性能システムの展開が財政的に実現不可能であるメトロネットワークおよびアクセスネットワークにおいて特に深刻である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、電気ドメインにおける光伝送障害を補償する受信器の使用を通してより低コストでより高性能なシステムを可能にする通信システム、デバイス、および方法を提供することによって、上記の必要性に対処する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
様々な実施形態では、光両側波帯信号が1つまたは複数の光送信器によって送信される光通信システムにおいて、1つまたは複数の光受信器が採用され得る。光受信器は、電気無線周波数両側波帯信号を生成するために光ヘテロダイン検波を採用し得る。一方の側波帯の存在を実質的に低減して残留側波帯信号(VSB)を得るか、または一方の側波帯の存在を本質的に排除して単側波帯信号(SSB)を生成するために、1つまたは複数の側波帯フィルタが受信器内に設けられ得る。側波帯のうちの一方の実質的な排除は情報搬送信号の一部を除去するが、本発明者らは、一方の側波帯の実質的な排除が、受信器およびシステムの性能に対する光伝送障害の悪影響を低減し得ることを見出した。
【発明の効果】
【0010】
様々な光学システムおよび光受信器の実施形態は、
・各々が局部発振器周波数において光を提供する、1つまたは複数の局部発振器と、
・合成光信号を提供するために、情報を搬送する上側波帯および下側波帯を有する中心周波数を有する光信号を局部発振器からの光と結合する、少なくとも1つの結合デバイスと、
・合成光信号を受信し、情報を搬送する上側波帯および下側波帯を有するRF電気信号を出力する、予め規定された周波数帯域幅を有する1つまたは複数の光電気変換器、例えばフォトダイオードと、
・さらに処理され得る情報を搬送する残留側波帯信号および単側波帯RF信号のうちの一方を生成するために、上側RF側波帯および下側RF側波帯のうちの一方を実質的にフィルタリングする、少なくとも1つのRF側波帯フィルタと
を含み得る。
【0011】
様々な実施形態では、光単側波帯信号または光両側波帯信号が1つまたは複数の光送信器によって送信される光通信システムにおいて、1つまたは複数の光受信器が採用され得る。光受信器は、光ヘテロダイン検波を採用し、光伝送障害を補償することを目的として受信器の伝達関数に群遅延変動が意図的に導入された特定の周波数帯域において対応する電気無線周波数信号を生成するように、光信号の中心波長と局部発振器光周波数との間の周波数差を制御し得る。ヘテロダイン信号への信号歪みの導入は、ダウンコンバージョンの一般的な意図に反しているが、本発明者らは、本発明の方法およびデバイスに従って実行される場合、信号歪みが光受信器およびシステムの性能を改善し得ることを見出した。
【0012】
様々な光学システムおよび光受信器の実施形態は、
・各々が局部発振器周波数において光を提供する、1つまたは複数の局部発振器と、
・合成光信号を提供するために、情報を搬送する中心周波数を有する光信号を局部発振器中心周波数を有する局部発振器からの光と合成する、少なくとも1つの合成器と、
・合成光信号を受信し、情報を搬送するRF電気信号を出力する、予め規定された周波数帯域幅を有する1つまたは複数の光電気変換器、例えばフォトダイオードと
を含んでもよく、
・ここで、局部発振器周波数は、局部発振器周波数と光信号中心波長との間の周波数差を生成し、ダウンコンバージョンによって生成されたRF信号の周波数を制御するように局部発振器コントローラによって調整され、これは、通過帯域フィルタ、トランスインピーダンス増幅器、および群遅延フィルタなど、受信器内のRF構成要素の性能に影響を及ぼす。例えば、周波数は、群遅延フィルタの使用などを通してファイバリンクにおける波長分散を補償するために、変換されたRF信号に群遅延を導入するように制御され得る。
【0013】
様々なシステムおよび受信器の実施形態は、VSB/SSBフィルタリングおよび電気信号歪み補償の一方または両方を含み得る。光受信器は、コヒーレント光伝送システムおよび準コヒーレント光伝送システムにおいて使用され得るものなど、様々な光ヘテロダイン受信器内に存在する他の構成要素を含み得る。
【0014】
加えて、本発明の様々な態様は、より低コストで高性能なシステムを提供するが、本発明の教示は、他のシステムにおいて、そのようなシステムの性能を改善するために採用され得る。例えば、本発明は、分散補償ファイバ(DCF)、ブラッグ格子など、様々な光波長分散補償デバイスを含む光学システムとともに採用され得る。
【0015】
したがって、本開示は、コストおよび性能を改善したシステムおよび受信器の継続的な必要性に対処する。
【0016】
添付の図面は、本発明を限定する目的ではなく、説明および理解を助けるために本発明の様々な態様を例示する目的で含まれる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】標準シングルモードファイバにおける波長分散を波長の関数として示す例示的なプロットを示す図である。
【0018】
【
図2A】光信号形状に対する波長分散の影響を示す図である。
【0019】
【
図2B】D=18ps/(nm km)およびλ=1550nmであると仮定して、10km、20km、30km、40km、50kmおよび100kmのSSMFの場合の強度変調/直接検出(IM/DD)リンクの周波数応答のプロットを示す図である。
【0020】
【
図3】例示的な光学システムの実施形態を示す図である。
【
図4】例示的な光学システムの実施形態を示す図である。
【
図5】例示的な光学システムの実施形態を示す図である。
【0021】
【
図6】例示的な光受信器の実施形態を示す図である。
【
図7】例示的な光受信器の実施形態を示す図である。
【
図8】例示的な光受信器の実施形態を示す図である。
【
図9】例示的な光受信器の実施形態を示す図である。
【
図10】例示的な光受信器の実施形態を示す図である。
【
図11】例示的な光受信器の実施形態を示す図である。
【
図12】例示的な光受信器の実施形態を示す図である。
【0022】
【
図13A】例示的なオールパスフィルタおよび周波数応答を示す図である。
【
図13B】例示的なオールパスフィルタおよび周波数応答を示す図である。
【0023】
【
図14A】例示的な受信器アイダイヤグラムを示す図である。
【
図14B】例示的な受信器アイダイヤグラムを示す図である。
【0024】
【
図15】例示的な光受信器の例示的な群遅延対周波数測定値を示す図である。
【0025】
【
図16A】27.5GHzの差周波数の場合の例示的なビット誤り率対受信器入力電力を示す図である。
【
図16B】30GHzの差周波数の場合の例示的なビット誤り率対受信器入力電力を示す図である。
【
図16C】32.5GHzの差周波数の場合の例示的なビット誤り率対受信器入力電力を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
図面および詳細な説明において、同じまたは類似の参照番号は、同じまたは類似の要素を識別し得る。特定の図中の実施形態に関して説明する実装形態、特徴などは、明記されていない限り、または不可能でない限り、他の図中の他の実施形態に関して実装され得ることが理解されよう。
【0027】
本発明の光学システム10は、線形、リング、メッシュ、および他のネットワークトポロジにおいてノードが展開されたポイントまたはマルチポイントツーポイントまたはマルチポイント構成であり得る、単方向または双方向システムにおける様々な既知の構成において採用され得る。一般に、システム10は自由空間および/または光ファイバを使用して展開され得るが、適用例の多くは光ファイバベースのシステムを伴い得ることを理解されたい。
【0028】
さらに、光学システム10は、一般に、光スペクトルにおける様々な範囲にわたってチャネルグリッドに配置され得る1つまたは複数の波長チャネルをサポートし得る。例えば、シングル・チャネル・システムは、1310nmおよび/または1550nm付近の波長チャネルとともに動作し得る。例えば、高密度波長分割多重化(DWDM)システムは、システム10の設計および適用例に応じて、名目上1490~1625nm(Sバンド、Cバンド、Lバンド)に及ぶ光スペクトルを、50GHz、100GHzなどの固定または可変帯域幅を有する数十の波長チャネルに分割し得る。例えば、システムは、ITUグリッド、
1647233310184_0.aspx?rec
=l1482に基づく波長チャネルに関して規定され得る。光信号は、それらの波長チャネルのうちの1つに入る波長において、システム10を通して送信され得る。チャネルグリッドは、チャネルエッジを共有する隣接するチャネルと連続し得るが、システム10は、チャネルエッジの近くに保護帯域を提供し得る。保護帯域は、光信号が送信されるべきでなく、最小の分離を保持することによって隣接するチャネル内の信号間の干渉量を低減するために使用されるべきでないチャネルエッジに隣接する波長範囲である。
【0029】
図3および
図4は、ノード間のポイント・ツー・マルチポイント・リンク(1)およびポイント・ツー・ポイント・リンク(2)における光学システム10の例示的な実施形態を示す。それらのリンクは、スタンドアロン光通信リンクであってもよいし、ノード11が、
図5中のような、様々な物理および管理ネットワークアーキテクチャにおいて、光回線終端装置または再生器、光ネットワークユニット、光スイッチ、アド/ドロップマルチプレクサ(OADM)、光増幅器(OA)などを含み得る、前の段落で説明したより大きなネットワークの一部であってもよい。
【0030】
図3において、例示的な光学システム10の実施形態は、光回線終端装置または再生器(OLT)12を含み得る。OLT12は、1つまたは複数の光ファイバ14を介して1つまたは複数の光ネットワークユニット(ONU)16と単方向または双方向光通信を行っていてもよい。OLT12およびONU16は、ネットワーク実装形態に応じて光および/または電気であり得る1つまたは複数の入力/出力ライン18に接続され得る。
【0031】
図4は、2つのOLT12間のポイント・ツー・ポイント・リンクを含む例示的な光学システム10の実施形態を示す。
図3~
図5の実施形態は、ネットワーク構成に応じて光増幅器20を含んでもよいし、含まなくてもよい。
【0032】
図3~
図5の実施形態は、ネットワークのメトロ層およびアクセス層を含む、ネットワーク内の様々な層において展開され得る。フロントホールとバックホールとアグリゲーションとを含むアクセスネットワークでは、システム10は、受動光ネットワーク(「PON」)として動作し得るか、もしくはノード間の増幅を提供するライン増幅器20を含んでもよく、および/または、ノードは、ラマン増幅器などの分布増幅器を含んでもよい。
【0033】
図5は、システム10において2つ以上の送信器または受信器(OTRx)24が使用される場合に光信号を合成および/またはスプリットし得る光合成器/スプリッタ22を含み得る例示的なOLT12およびONU16ノードの実施形態を示す。
【0034】
光合成器/スプリッタ22は、受動合成器と、光学システムが単一波長および/または波長分割多重化システムとして展開されるかどうかに応じて波長固有マルチプレクサおよびデマルチプレクサとを含み得る。例えば、光学システム10は、本明細書でさらに説明するように、OLT12と通信する各ONU16が同じまたは異なる波長を使用し得る、時分割多重化(「TDM」)、波長分割多重化(「WDM」)、または時および波長分割多重化(「TWDM」)システムとして展開され得る。システム内のノードが1つのチャネルを送信および/または受信しているにすぎず、ノードを接続するファイバリンク14上にただ1つのチャネルが存在する場合、光合成器/スプリッタ22はノード内で使用され得ることが理解されよう。
【0035】
送信器または受信器(OTRx)24は、システム構成に応じて、送信器または受信器のみを含み得るか、別個の送信器と受信器とを含み得るか、あるいはトランシーバを含み得る。様々な実施形態では、コストを削減するために一体型トランシーバを採用することがコスト効果的であり得るが、他の実施形態では、別個の送信器と受信器とを採用すること、ならびに単に単方向通信を提供することが、より望ましい場合がある。
【0036】
OTRx24内の光送信器は、一般に、狭または広線幅レーザなど、1つまたは複数の固定または同調可能波長光源を含む。1つまたは複数の情報ストリーム中の情報は、1つまたは複数の波長/周波数に関する情報を搬送する光信号を生成するために、光源を直接変調すること、外部変調器を使用して光を変調すること、および/または情報を搬送する電気キャリアをアップコンバートすることなど、様々な方法を使用して、光源によって放射された光、すなわち光キャリアに付与され得る。
【0037】
情報は、振幅変調(AM)、周波数変調(FM)、位相変調(AM)、またはAM、FMおよびPMの任意の組合せを含む1つまたは複数の変調技術を使用して付与され得る。加えて、情報は、2つまたはそれ以上の変調レベル、例えば、「0」状態および「1」状態、RZ、NRZなどをサポートする様々な変調フォーマットを採用するアナログまたはデジタルフォーマットで付与され得る。送信されるシンボル当たりのより多くの情報ビットを可能にするために、または等価バイナリ信号帯域幅よりも小さい帯域幅を有する構成要素の使用を可能にするために、デュオバイナリおよび他の高次コンスタレーションなど、アドバンスト/高次/マルチレベル変調フォーマットが使用され得る。例えば、4つの振幅レベルを採用するシステムは、シンボル当たり2ビットを符号化することができ、4つの周波数レベルを採用するシステムは、シンボル当たり2ビットを符号化することができ、4つの振幅レベルおよび4つの周波数レベルを独立して採用するシステムは、シンボル当たり4ビットを符号化することができ、デュオバイナリまたは高次の他の部分応答システムは、低減された周波数スペクトルを使用してシンボル当たり1つまたは複数のビットを符号化することができる。振幅および周波数とは別に、情報はまた、キャリアの位相において、キャリアの偏波において、パルス幅および/または位置の変動としてなど、符号化され得る。
【0038】
前方誤り訂正(FEC)などの追加の信号処理が、光信号として送信する前に情報において実行され得ることがさらに理解されよう。様々な実施形態では、システム10内の様々な送信器および受信器を制御するためにフィードバックを提供するために、誤り訂正および/またはテスタが使用され得る。
【0039】
様々な実施形態では、信号は、周波数チャープレーザ、直接変調レーザ(DML)、外部変調レーザ(EML)、垂直共振器面発光レーザ(VCSEL)など、1つまたは複数の同時AMおよび/またはFMデバイスによって符号化され得る。DMLとVCSELの両方が、広い線幅を有し、一般に低コストである。様々な実施形態では、当技術分野で既知のように、多種多様なレーザを有する外部変調器の使用による信号変調のために、純粋なAMが使用され得る。
【0040】
AMおよび/またはFM信号がどのように生成されるかにかかわらず、周波数変調は、異なる周波数に変換される異なる状態に関与し、振幅変調は、振幅において異なる状態を分離することに関与し、それにより、好都合に、従来のシステムが含まないような異なる状態のさらなる情報を供給する。
【0041】
異なる周波数、すなわち異なる状態は、FMシフトとも呼ばれる周波数分離によって分離される。したがって、FMシフトは、周波数変調(FM)信号の2つの状態間の周波数分離として規定される。一例として、FMシフトは、合成AM-FM信号、すなわち光信号の「0」状態と「1」状態との間の差である。
【0042】
図6は、光送信器とは別個に、または光信号(OS)を受信するトランシーバの一部として、OTRx24において採用され得る、光受信器30の例示的な実施形態を示す。加えて、光学システム10において使用される他の光受信器は、
図6に示す実施形態とは異なっていてもよく、本発明の実施形態の有無にかかわらず使用され得ることが理解されよう。
【0043】
光受信器30は、一般に、光信号の中心周波数からオフセットし得る1つまたは複数の局部発振器中心周波数、すなわち、局部発振器(「LO」)周波数オフセットにおいてLO光を提供するために、様々な線幅のレーザなど、1つまたは複数の固定または同調可能LO光源32を含み得る。光局部発振器レーザ(LO)は、中間周波数IFと呼ばれることもある、周波数オフセットだけまたは周波数差(dF)だけ光信号中心周波数(Fc)からオフセットされた光周波数(Flo)において、光を放射すること。周波数差dFは、光信号からダウンコンバートされたRF電気信号の周波数である。LO光は、一般に、システム10を通して情報を搬送している光信号に対して狭い周波数スペクトルを占有し、情報は、RF電気信号上でダウンコンバートされる。
【0044】
様々な実施形態では、局部発振器32は、VCSEL、DFB、DBR、ECLまたは他のタイプのレーザなど、冷却または非冷却レーザであり得る。局部発振器32は、信号の周波数または波長に同調され得る。これは、帯域内構成または帯域外構成のいずれかであり得る。帯域内構成では、LOは、信号のスペクトル内の周波数または波長に同調される。帯域外構成では、LO32は、信号のスペクトル外の周波数または波長に同調される。このようにして、局部発振器32を使用して波長選択性が達成され得る。局部発振器32を波長選択器として使用することにより、システムは、光学フィルタ有りでまたは無しで動作することができる。
【0045】
合成器34は、入来光信号OSをLO光と合成し、1つまたは複数の合成光信号を、フォトダイオードなど、対応する数の光-電気(OE)変換器36に出力する。OE変換器36は、情報および他の信号特徴、例えば、帯域幅、歪みなどを含む光信号を、光信号と局部発振器光との間の中心周波数差における中心周波数を有するRF電気信号にダウンコンバートする。RF電気信号は、本明細書でさらに説明するように、情報を回復する電気処理ユニット38によって電気的に処理される。
【0046】
様々な実施形態では、本明細書で説明するように様々な受信器性能パラメータおよびユーザ入力に基づいて局部発振器中心周波数を制御するために、局部発振器コントローラ39が採用され得る。局部発振器中心周波数は、局部発振器32によって出力された局部発振器光の周波数、ならびに、ビット誤り率、信号電力、信号周波数などを計算することによる、電気処理ユニット38中など、受信器中の様々なポイントにおける様々な受信器および信号パラメータ/メトリックを監視することによって、制御され得る。
【0047】
局部発振器コントローラ39は、局部発振器32と一体化されるかまたは局部発振器32とは別個であり、本明細書で説明するように局部発振器中心周波数を変化させるようにとの命令を実行するために、1つまたは複数のプロセッサおよび関連するストレージ/メモリを採用し得る。命令は、受信器内もしくはその近くに局所的に、および/またはコントローラと通信しているシステム10内に遠隔で、1つまたは複数の一時的および/または非一時的コンピュータ可読媒体に記憶され得る。
【0048】
光信号と局部発振器との合成、および設計が2つ以上の合成信号を必要とする場合の合成光信号のスプリッティングは、別個のデバイスがより高い損失を伴い得ることを認識する受信器30内の一体型または別個の合成器40およびスプリッタ42として提供され得る。合成器40およびスプリッタ42は、自由空間または光ファイバあるいはそれらの組合せを使用する偏波または非偏波保持デバイスとして実装され得る。また、合成器34は、50/50カプラまたは他の合成比などの受動カプラとして、あるいは波長依存デバイスとして提供され得る。スプリッタ42は、合成器40によって提供された合成光信号を直交偏波合成光信号にスプリットする偏波ビームスプリッタ(PBS:polarization beam splitter)であり得る。したがって、各軸において、光データ信号およびLO信号は偏波整合される。入来光信号の未知の偏波を仮定すれば、2つ以上のOE変換器36を採用する設計における検出信号は、入来光信号によって搬送される情報を完全に回復するために、光検出後に合成される必要があり得る。1つのOE変換器36のみを採用する実施形態では、光信号との良好な混合を確実にするために、直線偏波以外の形態、例えば、偏波解消、直交偏波などの形態で局部発振器光を提供することが望ましい場合がある。
【0049】
図7および
図8は、光信号を受信するために2つ以上のOE変換器36を採用する例示的な受信器の実施形態を示す。
図7は、2つの合成光信号COS1およびCOS2を、LO周波数オフセットの周波数における対応するRF信号、例えばES1およびES2を出力する2つのOE変換器36に提供するために、2×2合成器/スプリッタ34を採用する、光受信器の実施形態を示す。対応する電気信号は電気処理ユニット38に提供されてもよく、電気処理ユニット38は、受信器内でのさらなる信号処理および/またはシステム10内でのもしくはシステム10外へのさらなる送信のために情報を整流し、出力ライン18上で電気信号として出力し得る。
【0050】
2つまたはそれ以上の光-電気変換器36、および光信号(OS)を処理するための様々な電気信号処理機能を採用する例示的な光受信器30は、2018年3月21日に出願された米国特許出願第15/927,792号、現在は米国特許第10,367,588号、2019年7月1日に出願された米国特許出願第16/459,604号、現在は米国特許第10,608,747号、および2017年3月21日に出願された米国仮特許出願第62/474,599号、ならびに、ENNING Bら、「Signal processing in an optical polarization diversity receiver for 560-Mbit/s ASK heterodyne detection」、JOURNAL OF LIGHTWAVE TECHNOLOGY、IEEE SERVICE CENTER、NEW YORK、NY、US、vol.7、no.3、1989年3月1日(1989-03-01)、459~464ページ、XP011479323、ISSN:0733-8724、DOI:10.1109/50.16881などの他の参考文献に記載されており、これらのすべては、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0051】
図8は、10Gbps(NRZ)ビットレート用の2つのOE変換器36および電気処理ユニット38が40GHz帯域幅で実装され得る様々な光受信器30の実施形態を示す。OE変換器36の帯域幅は、受信器のチャネル帯域幅と呼ばれることがある。光信号周波数は、割り当てられた波長チャネル内のどこにあってもよく、これにより、信号ビットレートおよび帯域幅による変動、チャープ、ならびに、経年変化および温度変動ならびにTDM、WDMおよびTWDMシステムにおける送信器間変動によるドリフトが可能になる。
【0052】
様々な実施形態では、電気信号プロセッサ38は、整流器48および合成器50を含み得る。整流は、デジタルまたはアナログ的に適用され得る。整流器を使用することにより、計算の複雑さおよび/またはハードウェアが低減し、したがって、全体的なコストを削減することができる。例えば、整流器は、アナログ/デジタル(A/D)変換器なしで使用され得る。整流は、信号の正の部分または負の部分のいずれかが除去されるように、半波整流として実行され得る。半波整流は、非線形伝達関数を有するゲートで可能であり得る。ゲートは、例えば信号の負の部分がゲートの閾値よりも低くなるようにバイアスされ得る。整流はまた、二乗要素などの全波整流として実行されてもよく、ここで、すべての負の値が正の値に変換され、ハードウェアまたはソフトウェアで実装され得る。ソフトウェアで実装される場合、アナログ/デジタル変換器が、デジタル信号プロセッサ(DSP)において処理される前に実装され得る。ただし、様々な他の解決策が可能であり得る。アナログ整流器の例としては、XORゲートおよびダイオードブリッジがある。XORゲートとダイオードブリッジの両方が、DSPを用いないリアルタイム信号処理を可能にし、したがって、DSPよりも好ましい場合がある。
【0053】
図8に示すように、整流器48は、包絡線検波器48として実装され得る。第1の包絡線検波器/整流器48Aは、フォトダイオードのうちの一方からの第1の電気信号を非反転非ゼロ復帰(NRZ)データ信号に変換する。第2の包絡線検波器/整流器48Bは、他方のフォトダイオードからの第2の電気信号を反転NRZデータ信号に変換する。反転電気信号と非反転電気信号とは、電気データ信号を提供するために合成される。合成器50は、信号を再合成するために減算を実行する差動増幅器、または当技術分野で既知であり得る他の減算器であり得る。次いで、合成電気信号は、光受信器30によってさらに処理され、および/または、システム10内でもしくはシステム10外にさらに送信され得る。
【0054】
図9は、光両側波帯信号が1つまたは複数の光送信器によって送信される光通信システム10において採用され得る光受信器30の例示的な態様を示す。光受信器は、上側波帯および下側波帯を有する電気無線周波数両側波帯信号を生成するために光ヘテロダイン検波を採用し得る。
【0055】
合成光信号(局部発振器光と合成された情報搬送光信号)は、光信号LO周波数差における中心周波数(IF)を有する、情報を搬送するRF信号を生成するために、フォトダイオードなどの光-電気変換器36によって受信され得る。電気処理部38は、電気信号を整形するトランスインピーダンス増幅器(TIA)50を含み得る。例えば、TIA50は、利得が低周波数値のものから低下する場合、より高いカットオフ周波数を示し得る。ロールオフ伝達関数の特定のカットオフ周波数および勾配は、特定のTIA実装形態(トポロジ、ステージ数、IC技術、パッケージングおよび寄生要素など)に依存する。TIA50のロールオフは、RF信号中心周波数(IF)をTIAのカットオフ周波数の近くに置くことによってRF信号の上側波帯を少なくとも部分的に抑制するために使用され得る。このようにして、VSB/SSBフィルタリングは、追加のVSB/SSBフィルタを必要とせずに、TIA50のロールオフによって提供され得る。局部発振器32から放射される光の周波数は、TIA50のカットオフ周波数に対してRF信号中心周波数を保持および/または調整するように制御され得る。
【0056】
電気信号の2つの側波帯のうちの一方を実質的に除去するかまたは除去して、それぞれ、残留側波帯信号(VSB)または単側波帯信号(SSB)のいずれかを得るために、1つまたは複数の通過帯域または阻止帯域を有する、ハイパス、バンドパス、またはローパスフィルタ(HPF/BPF/LPF)などの中間電気フィルタ52が使用され得る。中間電気フィルタ52から出力されたVSB/SSB電気信号は、説明するように、追加の電気処理部54に提供される。側波帯のうちの一方の実質的な排除は情報搬送信号の一部を除去するが、本発明者らは、受信器における一方の側波帯の実質的な排除が、受信器およびシステムの性能に対する光伝送障害の悪影響を低減し得ることを見出した。
【0057】
図9はまた、受信器の構成要素を通過するときの信号の一般的な形状を示す。中間フィルタ52の下に示されている異なる信号形状は、異なるフィルタタイプを使用して生成される異なる信号を示す。中間フィルタ52は、所望の信号形状を達成するために1つまたは複数のフィルタを使用して実装され得ることが理解されよう。TIA50の伝達関数とともに、中間フィルタ52は、USB/LSB/VSB動作を可能にする。
【0058】
図10は、電気処理部が1つまたは複数の入力フィルタ54および/または出力フィルタ56などの追加のフィルタを含み得る実施形態を示す。入力光電流は(差周波数dF付近で)バンドパス特性を有するので、ハイパスフィルタ(HPF)またはバンドパスフィルタ(BPF)が、TIA50の入力において実装され得る。これはまた、生成されたDC光電流のシンキング(DCオフセット補償)を可能にする。より低いカットオフ周波数およびフィルタ形状は、USB/VSB動作のために最適化され得る。フィルタカットオフに近いIFを選択することによって、下側波帯は効果的に抑制される。実際には、入力HPFは、同じ構成要素上でTIAと一体化され得る。
【0059】
出力フィルタ56は、復調ベースバンド信号を選択するために使用され得る。フィルタ56は、典型的には、出力されている信号をさらに整形するように調節され得る1つまたは複数のLPFとして実装される。
【0060】
図11は、
図10に示すものなど、実施形態において具体化され得る様々なオプションを示す。オプション1、2、4は、USB/LSB/VSB動作をサポートする。オプション3は、上側波帯抑制のみをサポートする。
【0061】
VSBフィルタリングの後のスペクトルの維持された部分は、依然として受信信号の位相情報を含むため、波長分散の障害は完全には除去されないが、大幅に軽減される。波長分散はよく理解されている現象であるため、送信器の距離を知ることにより、ファイバによって導入される位相歪みのかなり正確な計算が可能になる。例えば、動作波長が約1550nmであるほとんどの実際的適用例では、分散係数はD≒17ps/(nm・km)であり、これは、周波数領域において、D≒0.2ps/(GHz・km)でトランスレートする。
【0062】
光ヘテロダイン受信器では、分散係数の後者の規定は、波長分散によるIF信号の位相歪みを定量化するのに特に有用である。これはまた、ヘテロダイニングの後の電気ドメインにおける波長分散および他の信号歪み効果を補償する電気波長分散補償器(ECDC:electrical chromatic dispersion compensator)の設計のための仕様を提供する。
【0063】
例えば、IF信号の位相に対してのみ作用し、その振幅に影響を与えないこと、分散係数とは反対の指定された位相応答を有する、アナログ・オールパス・フィルタ60が採用され得る。
図12に示すように、ECDC60は、中間フィルタ52の直後かつ、
図8中のような信号整流の前に置かれ得る。代替的に、ECDC60を中間フィルタ52の前に置くことができるか、または、中間フィルタ52を所望の群遅延特性を有するように設計することができ、それにより、中間フィルタ52およびECDC60の機能を単一の構成要素内で実行することができる。
【0064】
図13Aは、
図13Bに示すような群遅延(GD)変動を有するように同調され得るLCネットワークからなる、採用され得るオールパスフィルタ60の例示的な実施形態を示す。周波数の関数としての群遅延の勾配は、SSMFとともに使用するために、20~38GHzの範囲内でGD(f)=2ps/GHzになるように設計され得る。他のオールパスフィルタの設計が当業者によって採用されてもよく、例えば、参照により本明細書に組み込まれる、「Design of cascaded all pass network with monotonous group delay response for broadband radio frequency applications」、IET IET Microwaves,Antennas&Propagation、2016、Vol.10、第7号、808~815ページを参照されたい。
【0065】
1550nmにおける分散係数Dの既知の値によれば、このGDプロファイルは、10kmファイバリンクにおいて発生する波長分散を補償するのによく適している。加えて、シミュレーション結果は、フィルタ60が他の距離を補償するようにさらに同調され得ることを示している。フィルタ60の同調は、当技術分野で既知のように、フィルタ内の1つまたは複数の構成要素のインピーダンスを変化させることによって実行され得る。フィルタ同調の制御は、様々な受信器性能パラメータ/メトリックおよびユーザ入力に基づいて別個のコントローラによって実行されてもよく、ならびに/または局部発振器コントローラ39を介して制御されてもよい。
【0066】
図14Aおよび
図14Bは、
図13AのオールパスフィルタECDC60無しまたは有りでの20km送信について報告される、信号とLOとの間の25Gbpsおよび30GHzオフセットにおいて動作するヘテロダイン受信器のアイダイヤグラムを示す。分かるように、ECDC60は、一般にシステム性能の改善につながる追加のアイ開口を提供する。
【0067】
残念なことに、オールパスフィルタは、一般に、オールパスフィルタが特定の分散量、例えば特定のファイバの特定の長さを補償するように設計され、分散量の範囲にわたって同調可能でなければならないという点で制限されているため、これらのフィルタは、一般的に展開可能ではなく、特定の適用範囲のために設計され得る。オールパスフィルタまたは調整可能フィルタのバンクが考慮され得るが、これらの解決策は、いくつかの適用例に関して法外なコストがかかる場合がある。しかしながら、ECDCを採用する本発明のVSB/SSB実施形態の別の利点は、一方の側波帯の一部または全部を除去すると、信号帯域幅が本質的に約50%低減することである。したがって、両側波帯信号と比較して信号帯域幅の約50%の分散を補償すればよいため、オールパスフィルタなどのECDC60のダイナミックレンジが拡大される。
【0068】
様々な実施形態では、単側波帯光信号または両側波帯光信号が1つまたは複数の光送信器によって送信される光通信システム10において、1つまたは複数の光受信器30が採用され得る。光受信器30は、光ヘテロダイン検波を採用し、本明細書ではヘテロダイン分散補償と呼ばれる、分散などの光伝送障害を補償することを目的として、指定された群遅延変動が電気RF信号の帯域幅にわたって導入された対応する電気RF信号を生成するように、光信号の中心波長と局部発振器光周波数との間の周波数差dFまたは中間周波数IFを調整可能に制御するために、局部発振器内にあるかまたは局部発振器と通信している局部発振器コントローラを採用し得る。ヘテロダイン信号への信号歪みの導入は、光受信器の一般的な意図に反しているが、本発明者らは、本発明の方法およびデバイスに従って実行される場合、光ヘテロダイニングを介した信号歪みが光受信器30およびシステム10の性能を改善し得ることを見出した。
【0069】
局部発振器コントローラは、光受信器性能データおよび/またはユーザ入力に基づいて、指定された群遅延変動特性に一致するように、IF、したがってRF電気信号の周波数を調整し得る。例えば、ユーザは、光受信器が使用されている送信リンクの長さおよびファイバタイプに基づいて、ターゲットの指定された群遅延を入力し得る。光受信器は、動作中に指定された群遅延を調整してもよいし、調整しなくてもよい。例えば、光受信器は、1つまたは複数のプロセッサを介して、指定された群遅延を調整するために使用され得る局部発振器コントローラに、ビット誤り率(BER)などの性能データを提供することができる。
【0070】
図6~
図12中の実施形態など、光ヘテロダイニングを採用する様々な光受信器の実施形態では、局部発振器32の中心周波数は、光信号の中心周波数に対して制御されてもよく、そのような差周波数dFにより、ダウンコンバートされたRF信号における周波数領域において信号歪みが導入されることになる。
【0071】
周波数歪みは、ファイバリンク内の波長分散によって導入される群遅延と概して反対の群遅延の形態である。群遅延変動の周波数依存性は、非線形であり得る。したがって、受信されている光信号と局部発振器との間の周波数差を同調させることによって、波長分散補償を同調させることができる。
【0072】
図15は、光ヘテロダイン受信器の測定された群遅延を示す。20GHz付近の周波数オフセットを選択することによって、非常に平坦な群遅延が観察され、これは、短いリンクまたはバックツーバックのケースに好適である。一方、代わりに35GHz付近の周波数オフセットを選択すると、信号帯域幅にわたってより急勾配の群遅延変動が生じ、これは、より長いリンクを補償するように調節され得る。
【0073】
図16A~
図16Cは、バックツーバック(B2B)で送信された25Gbps信号、および光信号の中心波長において16ps/(nm*km)の波長分散を有する20kmのファイバを介して送信された25Gbps信号の受信について、差周波数がそれぞれ27.5、30、および32.5GHzにおいて設定された、ビット誤り率(BER)対受信器入力電力プロットを示す。
図16Aでは、LOは、周波数オフセットが27.5GHzになるように同調される。この場合、バックツーバック性能は、20km送信のケースよりも明らかに優れている。
図16Bでは、30GHzオフセットが選択され、これにより、B2B送信と20km送信との間で同様の性能が得られる。
図16Cでは、32.5GHzオフセットが選択され、これは、20km送信のケースに優れた性能を与える。分かるように、ヘテロダイン分散補償は、ヘテロダイン光受信器内に同調可能波長分散補償器として展開され得る。補償は、より長い送信距離、異なる分散値を有するファイバ、および異なるビットレートに適用され得る。
【0074】
様々なシステムおよび受信器の実施形態は、VSB/SSBフィルタリングおよびヘテロダイン分散補償の一方または両方を含み得る。光受信器は、コヒーレント光伝送システムおよび準コヒーレント光伝送システムにおいて使用され得るものなど、様々な光ヘテロダイン受信器内に存在する他の構成要素を含み得る。
【0075】
加えて、本発明の様々な態様は、より低コストで高性能なシステムを提供するが、本発明の教示は、よりコストの高いシステムにおいて、そのようなシステムの性能を改善するために採用され得る。例えば、本発明は、分散補償ファイバ(DCF)、ブラッグ格子など、様々な光波長分散補償デバイスを含む光学システムとともに採用され得る。
【0076】
前述の開示は、本発明の例、例示および説明を提供するものであり、網羅的なものでも、開示した正確な形態に実装形態を限定するものでもない。変更および変形が、上記の開示に照らして可能であるか、または実装形態の実践から取得され得る。本発明のこれらおよび他の変形および変更は、可能であり、企図され、前述の明細書および以下の特許請求の範囲がそのような変更および変形を包含することが意図される。
【0077】
本明細書で使用される、構成要素という用語は、ハードウェア、ファームウェア、および/またはハードウェアとソフトウェアの組合せとして広く解釈されるものとする。本明細書で説明したシステムおよび/または方法は、ハードウェア、ファームウェア、またはハードウェアとソフトウェアの組合せの異なる形態で実装され得ることが明らかになろう。これらのシステムおよび/または方法を実装するために使用される実際の専用の制御ハードウェアまたはソフトウェアコードは、実装形態を限定するものではない。したがって、システムおよび/または方法の動作および挙動は、特定のソフトウェアコードを参照することなく本明細書で説明されており、ソフトウェアおよびハードウェアが本明細書の説明に基づいてシステムおよび/または方法を実装するように設計され得ることが理解される。
【0078】
システムの様々な要素は、様々なレベルのフォトニック、電気的、および機械的統合を採用し得る。複数の機能は、システム10内の1つまたは複数の棚またはラック内に収容されている1つまたは複数のモジュールまたはラインカード上で統合され得る。
【0079】
ハードウェア・プロセッサ・モジュールは、例えば、汎用プロセッサおよびCPUから、フィールド・プログラマブル・ゲート・アレイ(FPGA)、特定用途向け集積回路(ASIC)まで及び得る。(ハードウェア上で実行される)ソフトウェアモジュールは、C、C++、Java(商標)、Javascript、Rust、Go、Scala、Ruby、Visual Basic(商標)、FORTRAN、Haskell、Erlang、ならびに/または他のオブジェクト指向、手続き型、もしくは他のプログラミング言語および開発ツールを含む、様々なソフトウェア言語(例えば、コンピュータコード)で表現され得る。コンピュータコードは、マイクロコードまたはマイクロ命令、コンパイラによって生成されるような機械命令、ウェブサービスを生成するために使用されるコード、ならびに、インタープリタを使用するコンピュータによって実行され、制御信号、暗号化されたコード、および圧縮されたコードを採用する上位レベルの命令を含むファイルを含み得る。
【0080】
いくつかの実装形態は、閾値に関して本明細書で説明される。本明細書で使用される、閾値を満たすことは、閾値よりも大きい値、閾値を超える値、閾値よりも高い値、閾値以上の値、閾値よりも小さい値、閾値未満の値、閾値よりも低い値、閾値以下の値、閾値に等しい値などの値を指すことができる。
【0081】
特定のユーザインターフェースが、本明細書で説明され、および/または図に示されている。ユーザインターフェースは、グラフィカル・ユーザ・インターフェース、非グラフィカル・ユーザ・インターフェース、テキストベースのユーザインターフェースなどを含み得る。ユーザインターフェースは、表示するための情報を提供し得る。いくつかの実装形態では、ユーザは、表示のためのユーザインターフェースを提供するデバイスの入力構成要素を介して入力を提供することなどによって、情報と対話し得る。いくつかの実装形態では、ユーザインターフェースは、デバイスおよび/またはユーザによって構成可能であり得る(例えば、ユーザは、ユーザインターフェースのサイズ、ユーザインターフェースを介して提供される情報、ユーザインターフェースを介して提供される情報の位置などを変更し得る)。追加または代替として、ユーザインターフェースは、標準構成、ユーザインターフェースが表示されるデバイスのタイプに基づく特定の構成、ならびに/あるいはユーザインターフェースが表示されるデバイスに関連する能力および/または仕様に基づく構成のセットに事前構成され得る。
【0082】
特徴の特定の組合せが特許請求の範囲に記載され、および/または本明細書に開示されているが、これらの組合せは、可能な実装形態の開示を限定するものではない。実際、これらの特徴の多くは、特許請求の範囲に具体的に記載されていない、および/または本明細書に開示されていない方法で組み合わされてもよい。以下に列挙する各従属請求項は、1つの請求項のみに直接従属し得るが、可能な実装形態の開示は、請求項セット内の他のすべての請求項と組み合わせて各従属請求項を含む。
【0083】
本明細書で使用される要素、行為、または命令は、そのように明示的に記載されていない限り、重要または必須であると解釈されるべきではない。また、本明細書で使用される、冠詞「a」および「an」は、1つまたは複数の項目を含むものであり、「1つまたは複数」と互換的に使用され得る。さらに、本明細書で使用される、「セット」という用語は、1つまたは複数の項目を含むものであり、「1つまたは複数」と互換的に使用され得る。1つの項目のみが意図される場合、「1つの」という用語または同様の言い回しが使用される。また、本明細書で使用される、「有する(has)」、「有する(have)」、「有する(having)」などの用語は、オープンエンドな用語であるものとする。さらに、「に基づいて」という句は、別段に明記されていない限り、「に少なくとも部分的に基づいて」を意味するものとする。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0084】
【文献】Netoら、「Simple Estimation of Fiber Dispersion and Laser Chirp Parameters Using the Downhill Simplex Fitting Algorithm」、J.Lightwave Technol.31、334~342(2013)