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  • 特許-唾液溶解性歯牙貼付シート 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-03-19
(45)【発行日】2025-03-28
(54)【発明の名称】唾液溶解性歯牙貼付シート
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/55 20060101AFI20250321BHJP
   A61Q 11/00 20060101ALI20250321BHJP
   A61K 8/02 20060101ALI20250321BHJP
   A61K 8/73 20060101ALI20250321BHJP
   A61K 8/365 20060101ALI20250321BHJP
   A61K 8/36 20060101ALI20250321BHJP
   A61K 8/362 20060101ALI20250321BHJP
【FI】
A61K8/55
A61Q11/00
A61K8/02
A61K8/73
A61K8/365
A61K8/36
A61K8/362
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020206559
(22)【出願日】2020-12-14
(65)【公開番号】P2021161107
(43)【公開日】2021-10-11
【審査請求日】2023-09-28
(31)【優先権主張番号】P 2020063972
(32)【優先日】2020-03-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000000918
【氏名又は名称】花王株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000084
【氏名又は名称】弁理士法人アルガ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】永田 亮輔
(72)【発明者】
【氏名】筒井 生
(72)【発明者】
【氏名】小野尾 信
【審査官】川嶋 宏毅
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2014/069595(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00-8/99
A61Q 1/00-90/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
歯牙又は歯牙周辺部に貼付する面を有する貼付層(X)を備える唾液溶解性歯牙貼付シートであって、
貼付層(X)が、フィチン酸又はその塩(a)、並びに水溶性高分子(b)を含有し、
唾液溶解性歯牙貼付シート中における成分(a)の含有量と全水分量との質量比((a)/水分)が、0.45であり、
唾液溶解性歯牙貼付シート中における成分(b)の含有量と成分(a)の含有量との質量比((b)/(a))が、2.5~12であり
唾液溶解性歯牙貼付シート単位面積あたりの成分(a)の質量が、0.3~13mg/cm2であり、かつ
引張応力が、20MPaでのひずみが2%以上である唾液溶解性歯牙貼付シート。
【請求項2】
貼付層(X)が有する歯牙又は歯牙周辺部に貼付する面の面積が、5~45cm2である請求項1に記載の唾液溶解性歯牙貼付シート。
【請求項3】
唾液溶解性歯牙貼付シート中における全水分量が、3~20質量%である請求項1又は2に記載の唾液溶解性歯牙貼付シート。
【請求項4】
成分(b)の20℃における水に対する溶解度が、10質量%以上である請求項1~3のいずれか1項に記載の唾液溶解性歯牙貼付シート。
【請求項5】
歯牙又は歯牙周辺部への貼付開始時から、貼付層(X)が全溶解するまでの時間が、3~30分である請求項1~4のいずれか1項に記載の唾液溶解性歯牙貼付シート。
【請求項6】
清掃後の歯牙又は歯牙周辺部へ貼付した後、3~30分間放置する請求項1~5のいずれか1項に記載の唾液溶解性歯牙貼付シートの使用方法。
【請求項7】
歯牙又は歯牙周辺部に貼付する面を有する貼付層(X)を備える唾液溶解性歯牙貼付シートであって、
貼付層(X)が、リンゴ酸、酢酸、乳酸、酒石酸、クエン酸、グリコール酸、コハク酸、及びこれらの塩から選択される1種又は2種以上の酸又はその塩(a’)、並びに水溶性高分子(b)を含有し、
唾液溶解性歯牙貼付シート中における成分(a’)の含有量と全水分量との質量比((a)/水分)が、0.45であり、
唾液溶解性歯牙貼付シート中における成分(b)の含有量と成分(a’)の含有量との質量比((b)/(a’))が、1.1~12であり
唾液溶解性歯牙貼付シート単位面積あたりの成分(a’)の質量が、0.3~13mg/cm2であり、かつ
引張応力が、20MPaでのひずみが2%以上である唾液溶解性歯牙貼付シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、唾液溶解性歯牙貼付シートに関する。
【背景技術】
【0002】
人の歯牙は、歯石や歯垢のほか、お茶やコーヒー等の習慣的飲食や喫煙、加齢等が要因となって、その表面に種々の沈着汚れが付着する。こうした沈着汚れを放置すると、歯牙の本来の健康的な色合いや輝きを失うことになり、また口腔内疾患を引き起こす原因にもなりかねない。そのため、従来より種々の開発がなされている。
【0003】
例えば、特許文献1には、フィチン酸又はその塩とトリポリリン酸又はその塩とを特定合計含有量かつ質量比で含有する口腔用組成物が開示されており、沈着汚れの除去効果と付着防止効果との発揮を試みている。また、特許文献2には、pHが特定の値となる層(A)と、フィチン酸やヘキサメタリン酸等を含有しつつpHが特定の値になる層(B)とを有する歯牙用貼付シートが開示されており、歯の表面に付着した微小な固形生成物を除去することによって、歯の美白効果を高めている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2018-65801号公報
【文献】国際公開第2014/069595号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、洗口液や歯磨剤等の形態である上記特許文献1に記載の口腔用組成物であると、特に沈着汚れ付着防止効果を充分に発揮させるには至っておらず、未だ検討の余地がある。また特許文献2に記載の歯牙用貼付シートであると、貼付部位への追随性や密着性が不十分であり、フィチン酸等の酸又はその塩を貼付部位へ充分に作用させるには、さらなる改善を要する状況にある。
【0006】
すなわち、本発明は、フィチン酸等の酸又はその塩を充分に作用させ、歯牙において優れた沈着汚れの付着防止効果を発揮することができる唾液溶解性歯牙貼付シートに関する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
そこで本発明者は、種々検討したところ、歯牙又は歯牙周辺部に貼付する面を有する貼付層を備え、かかる貼付層において含有するフィチン酸等の酸又はその塩と水溶性高分子ととともに、シートの全水分量が特定の量的関係を有し、かつシートの一定面積あたりにフィチン酸等の酸又はその塩を特定量含有する唾液溶解性の歯牙貼付シートであれば、フィチン酸等の酸又はその塩をシート内に良好に包埋しつつ、貼付後のシートが唾液へ溶解するのに伴ってフィチン酸等の酸又はその塩を持続的に貼付部位へと放出しながら歯牙周辺へ滞留させ、効率的かつ有効にフィチン酸等の酸又はその塩を貼付部位に作用させることができることを見出した。
【0008】
したがって、本発明は、歯牙又は歯牙周辺部に貼付する面を有する貼付層(X)を備える唾液溶解性歯牙貼付シートであって、
貼付層(X)が、フィチン酸又はその塩(a)、並びに水溶性高分子(b)を含有し、
唾液溶解性歯牙貼付シート中における成分(a)の含有量と全水分量との質量比((a)/水分)が、0.3~6であり、
唾液溶解性歯牙貼付シート中における成分(b)の含有量と成分(a)の含有量との質量比((b)/(a))が、1.1~12であり、かつ
唾液溶解性歯牙貼付シート単位面積あたりの成分(a)の質量が、0.3~13mg/cm2である唾液溶解性歯牙貼付シートを提供するものである。
【0009】
本発明の別の態様は、歯牙又は歯牙周辺部に貼付する面を有する貼付層(X)を備える唾液溶解性歯牙貼付シートであって、
貼付層(X)が、リンゴ酸、酢酸、乳酸、酒石酸、クエン酸、グリコール酸、コハク酸、及びこれらの塩から選択される1種又は2種以上の酸又はその塩(a’)、並びに水溶性高分子(b)を含有し、
唾液溶解性歯牙貼付シート中における成分(a’)の含有量と全水分量との質量比((a)/水分)が、0.025~6であり、
唾液溶解性歯牙貼付シート中における成分(b)の含有量と成分(a’)の含有量との質量比((b)/(a’))が、1.1~12であり、かつ
唾液溶解性歯牙貼付シート単位面積あたりの成分(a’)の質量が、0.3~13mg/cm2である唾液溶解性歯牙貼付シートを提供するものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明の唾液溶解性歯牙貼付シートによれば、シート自体が優れた柔軟性を有することから、フィチン酸等の酸又はその塩をシート内に良好に包埋しつつ、歯牙又は歯牙周辺部への高い追随性及び密着性を発現することができる。そのため、歯牙又は歯牙周辺部に貼付した際、本発明の唾液溶解性歯牙貼付シートが歯牙又は歯牙周辺部に良好に密着したまま唾液に溶解するのに伴い、包埋していたフィチン酸等の酸又はその塩を持続的に貼付部位へと放出、滞留及び作用させることが可能となり、優れた沈着汚れの付着防止効果を備えることができる。
また、本発明の唾液溶解性歯牙貼付シートの歯牙又は歯牙周辺部への貼付中においても、違和感や不快感が有効に低減されるため、口腔内にてシートが全溶解する間、及びフィチン酸等の酸又はその塩が充分に作用する間、快適な使用感を保持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】沈着汚れ付着抑制効果の評価において、Photoshopによる画像解析のために撮影した、実施例1のシートの写真である。
図2】沈着汚れ付着抑制効果の評価において、Photoshopによる画像解析のために撮影した、比較例1のシートの写真である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明の唾液溶解性歯牙貼付シートは、歯牙又は歯牙周辺部に貼付する面を有する貼付層(X)を備える唾液溶解性歯牙貼付シートであって、
貼付層(X)が、フィチン酸又はその塩(a)、並びに水溶性高分子(b)を含有し、
唾液溶解性歯牙貼付シート中における成分(a)の含有量と全水分量との質量比((a)/水分)が、0.3~6であり、
唾液溶解性歯牙貼付シート中における成分(b)の含有量と成分(a)の含有量との質量比((b)/(a))が、1.1~12であり、かつ
唾液溶解性歯牙貼付シート単位面積あたりの成分(a)の質量が、0.3~13mg/cm2である。
また、本発明の唾液溶解性歯牙貼付シートの別の態様では、歯牙又は歯牙周辺部に貼付する面を有する貼付層(X)を備える唾液溶解性歯牙貼付シートであって、
貼付層(X)が、リンゴ酸、酢酸、乳酸、酒石酸、クエン酸、グリコール酸、コハク酸、及びこれらの塩から選択される1種又は2種以上の酸又はその塩(a’)、並びに水溶性高分子(b)を含有し、
唾液溶解性歯牙貼付シート中における成分(a’)の含有量と全水分量との質量比((a)/水分)が、0.025~6であり、
唾液溶解性歯牙貼付シート中における成分(b)の含有量と成分(a’)の含有量との質量比((b)/(a’))が、1.1~12であり、かつ
唾液溶解性歯牙貼付シート単位面積あたりの成分(a’)の質量が、0.3~13mg/cm2である。
【0013】
なお、本明細書において、貼付層(X)に含有されるフィチン酸又はその塩を成分(a)と称し、リンゴ酸、酢酸、乳酸、酒石酸、クエン酸、グリコール酸、コハク酸、及びこれらの塩から選択される1種又は2種以上の酸又はその塩を成分(a’)と称する。また、これらフィチン酸又はその塩、並びにリンゴ酸、酢酸、乳酸、酒石酸、クエン酸、グリコール酸、コハク酸、及びこれらの塩から選択される1種又は2種以上の酸又はその塩を総称して、フィチン酸等の酸又はその塩((a)又は(a’))ともいう。
【0014】
すなわち、本発明の唾液溶解性歯牙貼付シートは、歯牙又は歯牙周辺部に貼付する面を有する貼付層(X)を備えており、かかる貼付層(X)は、フィチン酸等の酸又はその塩(a)又は(a’)、並びに水溶性高分子(b)を含有する。そして、本発明の唾液溶解性歯牙貼付シートに含まれる全水分量が、唾液溶解性歯牙貼付シート中でのフィチン酸等の酸又はその塩(a)又は(a’)の含有量との間で上記特定の質量比((a)又は(a’)/水分)を保持するとともに、成分(b)の含有量と成分(a)又は(a’)の含有量との間でも特定の質量比((b)/(a)又は(b)/(a’))を保持する。さらに、フィチン酸等の酸又はその塩(a)又は(a’)を、唾液溶解性歯牙貼付シート単位面積あたりに特定の量で含有する。これにより、フィチン酸等の酸又はその塩(a)又は(a’)を適切な量で確保しつつ、優れた追従性を有するシートにより歯牙等において高い密着性を発現させ、フィチン酸等の酸又はその塩(a)又は(a’)による沈着汚れ付着防止効果を充分に発揮することができる。
【0015】
ここで、歯牙周辺部とは、歯肉、いわゆる歯茎を含む歯牙の周辺に位置する口腔内の器官を意味し、本発明の唾液溶解性歯牙貼付シートは、歯牙のみ、歯牙周辺部のみ、或いは歯牙及び歯牙周辺部の双方にわたり貼付して用いるシートである。以下、「歯牙又は歯牙周辺部」を「歯牙等」と総称し、本発明の唾液溶解性歯牙貼付シートを「シート」とも略称する。
また、唾液溶解性歯牙貼付シートとは、かかるシートが唾液と接触した際に、貼付層(X)の少なくとも一部が唾液によって溶解し、唾液溶解性歯牙貼付シートにおける引張応力が20MPaでのひずみが上昇して、柔軟性が高まる性質を有するシートであることを意味する。
なお、本発明の唾液溶解性歯牙貼付シートを製造するために用いる原液以外、各質量については、乾燥処理後の状態(製品としての態様)での質量(乾燥質量)とする。
【0016】
本発明の唾液溶解性歯牙貼付シートは、歯牙等に貼付する面を有する層として、フィチン酸等の酸又はその塩(a)又は(a’)、並びに水溶性高分子(b)を含有する貼付層(X)を備える。かかる唾液溶解性歯牙貼付シートは、貼付層(X)が有する歯牙等に貼付する面を歯牙等に直接貼付して用いるものであり、歯牙等に貼付した際、貼付層(X)が歯牙等へ良好に密着しつつ次第に唾液へと溶解する性質を有するシートである。
【0017】
本発明の唾液溶解性歯牙貼付シートが備える貼付層(X)は、成分(a)として、フィチン酸又はその塩を含有する。また、成分(a’)として、リンゴ酸、酢酸、乳酸、酒石酸、クエン酸、グリコール酸、コハク酸及びこれらの塩から選択される1種又は2種以上の酸又はその塩を含有する。かかる成分(a)又は成分(a’)は、本発明の唾液溶解性歯牙貼付シートに存在することにより、沈着汚れ付着防止効果を充分に発揮することができる。
フィチン酸は、別名myo-イノシトール6リン酸とも称されるリン酸化合物である。フィチン酸の塩としては、ナトリウムやカリウム等のアルカリ金属塩やアンモニウム塩等が挙げられる。
【0018】
本発明の唾液溶解性歯牙貼付シート中における成分(a)の含有量と全水分量との質量比((a)/水分)は、シートの追従性を確保しつつ、成分(a)をシート内に良好に包埋し、シートが溶解するのに伴って成分(a)を持続的に放出させ、かつ歯牙又は歯牙周辺部へ滞留させる観点から、0.3~6であって、好ましくは0.45~4であり、より好ましくは0.6~3であり、さらに好ましくは0.8~2である。
本発明の唾液溶解性歯牙貼付シート中における成分(a’)の含有量と全水分量との質量比((a’)/水分)は、シートの追従性を確保しつつ、成分(a’)をシート内に良好に包埋し、シートが溶解するのに伴って成分(a’)を持続的に放出させ、かつ歯牙又は歯牙周辺部へ滞留させる観点から、0.025~6であって、好ましくは0.3~6であり、より好ましくは0.45~4であり、さらに好ましくは0.6~3であり、よりさらに好ましくは0.8~2である。
なお、成分(a)又は成分(a’)における、フィチン酸等の酸又はその塩の含有量とは、酸換算量での値を意味する。
【0019】
なお、唾液溶解性歯牙貼付シートの全水分量とは、貼付層(X)を含めた本発明の唾液溶解性歯牙貼付シートが備える層全体、すなわち乾燥処理後の状態(製品としての態様)である唾液溶解性歯牙貼付シート全体中に含まれる水分の合計量であり、カールフィッシャー法を利用した水分計(例えば平沼自動水分測定装置AQV-300シリーズ)を用いた測定方法に基づき、得られる値を意味する。
具体的には、唾液溶解性歯牙貼付シートの全水分量は、唾液溶解性歯牙貼付シート100質量%中に、好ましくは3~20質量%であり、より好ましくは7~15質量%であり、さらに好ましくは9~14質量%である。
【0020】
本発明の唾液溶解性歯牙貼付シート単位面積(1cm2)あたりの成分(a)の質量は、本発明の唾液溶解性歯牙貼付シートの貼付中にわたり、優れた沈着汚れ付着防止効果とを発揮させるうえで、口腔内において作用させるべき成分(a)を適切な量で確保する観点から、0.3~13mg/cm2であって、好ましくは0.4~9.2mg/cm2であり、より好ましくは0.68~5.6mg/cm2であり、さらに好ましくは1~1.6mg/cm2である。
本発明の唾液溶解性歯牙貼付シート単位面積(1cm2)あたりの成分(a’)の質量は、本発明の唾液溶解性歯牙貼付シートの貼付中にわたり、優れた沈着汚れ付着防止効果を発揮させるうえで、口腔内において作用させるべき成分(a’)を適切な量で確保する観点から、0.3~13mg/cm2であって、好ましくは0.4~9.2mg/cm2であり、より好ましくは0.68~5.6mg/cm2であり、さらに好ましくは1~1.6mg/cm2である。
なお、成分(a)又は(a’)フィチン酸又はその塩の質量とは、酸換算量での値を意味する。
【0021】
成分(a)の含有量は、優れた沈着汚れ付着防止効果を充分に図り、これらの効果を効率よく発揮させる観点から、唾液溶解性歯牙貼付シート中に、酸換算量で好ましくは3~35質量%であり、より好ましくは8~22質量%であり、さらに好ましくは11~14質量%である。
成分(a’)の含有量は、優れた沈着汚れ付着防止効果を充分に図り、これらの効果を効率よく発揮させる観点から、唾液溶解性歯牙貼付シート中に、酸換算量で好ましくは0.5~35質量%であり、より好ましくは3~35質量%であり、さらに好ましくは8~22質量%であり、よりさらに好ましくは11~14質量%である。
【0022】
本発明の唾液溶解性歯牙貼付シートが備える貼付層(X)は、成分(b)として、水溶性高分子を含有する。成分(b)の含有により、歯牙等の表面における凹凸への追随性及び密着性を付与しつつ、唾液に対する良好な溶解性を発揮させることができるが、本発明の唾液溶解性歯牙貼付シートでは、上記質量比((a)/水分)又は質量比((a’)/水分)とともに後述する質量比((b)/(a))又は質量比((b)/(a’))が特定の値を示すため、シートの追従性を一層高めてより優れた密着性を発現し、シート内に所定量で存在する成分(a)により、沈着汚れ付着防止効果を充分に発揮させることができる。
【0023】
成分(b)としては、唾液に対する良好な溶解性を確保する観点、及び歯牙等への追随性及び密着性を高める観点から、20℃における水に対する溶解度が10質量%以上の水溶性高分子、すなわち20℃において飽和水溶液100質量%中の溶解量が10質量%以上の水溶性高分子であるのが好ましい。
【0024】
かかる成分(b)としては、より具体的には、プルラン、デキストリン、可溶性デンプン、ヒドロキシアルキルデンプン、酢酸デンプン等のデンプン分解物或いはデンプン誘導体;
メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース等のセルロース誘導体;
ゼラチン、寒天、ペクチン、キサンタンガム、ローカストビーンガム、ジェランガム、トラガントガム、アラビアガム、グルコマンナン、グアガム、HPグアガム、チューベロース多糖体等の天然高分子又はその誘導体から選ばれる1種又は2種以上が挙げられる。
なかでも、シート内に上記質量比((a)/水分)又は質量比((a’)/水分)を満たす水分量が存在するなかで、成分(a)又は成分(a’)をシート内に良好に包埋しつつ、シートの優れた追従性及び成分(a)又は成分(a’)の歯牙周辺への滞留性を確保する観点から、プルラン、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、グアガム、ゼラチン、タマリンドガム、ペクチン、アラビアガム、キサンタンガム、トラガントガム、ローカストビーンガム、デキストリン、デキストラン、寒天、澱粉、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、及びヒドロキシエチルセルロースから選ばれる1種又は2種以上が好ましく、プルランがより好ましい。
【0025】
本発明の唾液溶解性歯牙貼付シート中における成分(b)の含有量と成分(a)又は成分(a’)の含有量との質量比((b)/(a))又は((b)/(a’))は、シートの優れた追従性を確保してシート内に成分(a)又は成分(a’)を良好に包埋しつつ、シートの良好な密着性によって成分(a)又は成分(a’)の持続的な放出を可能にしつつ歯牙周辺へ良好に滞留させる観点から、1.1~12であって、好ましくは1.5~10であり、より好ましくは2.5~8であり、さらに好ましくは3~7であり、またさらに好ましくは3.5~5である。
【0026】
成分(b)の含有量は、シートの優れた追従性を確保しつつ、沈着汚れ付着防止効果を効率よく充分に発揮させる観点から、唾液溶解性歯牙貼付シート中に、好ましくは30~60質量%であり、より好ましくは38~56質量%であり、さらに好ましくは42~54質量%であり、またさらに好ましくは45~53質量%である。
【0027】
本発明の唾液溶解性歯牙貼付シートが備える貼付層(X)は、成分(a)又は成分(a’)及び成分(b)の分散性・拡散性を高め、シートに良好な柔軟性を付与しつつ、歯牙又は歯牙周辺部に貼付する面全域にわたって成分(a)又は成分(a’)による作用を充分に発揮させる観点から、さらにノニオン界面活性剤(c)を含有するのが好ましい。かかるノニオン界面活性剤(c)としては、ポリオキシエチレン硬化ひまし油、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレン共重合体、ショ糖脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビット脂肪酸エステル、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレングリコール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンフィトステロール及びフィトスタノール、ポリオキシエチレンラノリン及びラノリンアルコール、ポリオキシエチレンアルキルアミン及び脂肪酸アミド、ポリオキシエチレンアルキルフェニルホルムアルデヒド縮合物、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル及び脂肪酸エタノールアミド等から選ばれる1種又は2種以上が挙げられる。なかでも、ポリオキシエチレン硬化ひまし油、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル及びポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルから選択される1種又は2種が好ましく、ポリオキシエチレン硬化ひまし油及びポリグリセリン脂肪酸エステルのいずれか1種を含有するのがより好ましく、ポリオキシエチレン硬化ひまし油及びポリグリセリン脂肪酸エステルの両方を含有するのがさらに好ましい。
【0028】
かかるノニオン界面活性剤(c)の含有量は、シートに良好な柔軟性を付与する観点、及び成分(a)又は成分(a’)による作用を充分に発揮させる観点から、唾液溶解性歯牙貼付シート中に、好ましくは1~20質量%であり、より好ましくは2~10質量%であり、さらに好ましくは3~5質量%である。
【0029】
本発明の唾液溶解性歯牙貼付シートが備える貼付層(X)は、貼付後のシートが唾液へ溶解するのに伴ってフィチン酸等の酸又はその塩が持続的に貼付部位へと放出されつつ歯牙周辺へ滞留させて、フィチン酸等の酸又はその塩による作用を充分に発揮させる観点から、縮合リン酸の含有を制限するのが好ましい。
かかる縮合リン酸としては、具体的には、例えばピロリン酸、トリポリリン酸、テトラポリリン酸等の直鎖状のポリリン酸、トリメタリン酸、テトラメタリン酸等の環状のポリリン酸が挙げられ、その塩としては、ナトリウム塩、カリウム塩等が挙げられる。
縮合リン酸又はその塩の含有量は、優れた沈着汚れ付着防止効果を充分に発揮させる観点から、唾液溶解性歯牙貼付シート中に、0.05質量%未満であって、好ましくは0.03質量%以下であり、より好ましくは0.01質量%以下であり、或いは貼付層(X)は、縮合リン酸又はその塩を実質的に含有しないのが好ましい。
【0030】
本発明の唾液溶解性歯牙貼付シートの水分量は、唾液溶解性歯牙貼付シートの全水分量を確保して上記質量比((a)/水分)又は質量比((a’)/水分)を所定の範囲で保持する観点から、唾液溶解性歯牙貼付シート中に、好ましくは1~25質量%であり、より好ましくは3~20質量%であり、さらに好ましくは7~18質量%である。
【0031】
本発明の唾液溶解性歯牙貼付シートが備える貼付層(X)は、上記成分のほか、本発明の効果を損なわない限りにおいて、上記以外の成分として、例えば、グリチルリチン酸、グリチルレチン酸及びこれらの塩、硝酸カリウム、フッ素等の成分(a)又は成分(a’)以外の薬用成分;上記ノニオン界面活性剤以外の界面活性剤;香料;水酸化ナトリウム等のpH調整剤;グリセリン等の湿潤剤;サッカリンナトリウムやスクラロール等の甘味料;色素;保存料等を含有することができる。
【0032】
貼付層(X)が有する歯牙又は歯牙周辺部に貼付する面の面積は、優れた沈着汚れ付着防止効果を発揮させるうえで、口腔内において作用させるべき成分(a)又は成分(a’)を適切な量で確保する観点から、好ましくは5~45cm2であり、より好ましくは10~35cm2であり、さらに好ましくは15~25cm2である。
【0033】
本発明の唾液溶解性歯牙貼付シートが備える貼付層(X)の厚みは、優れた追従性を確保して歯牙等への密着性を高めて、成分(a)又は成分(a’)の持続的な放出及び滞留を可能とし、沈着汚れ付着防止効果を充分に発揮させる観点から、好ましくは20~500μmであり、より好ましくは40~300μmであり、さらに好ましくは60~70μmである。
【0034】
本発明の唾液溶解性歯牙貼付シートは、貼付層(X)が有する歯牙又は歯牙周辺部に貼付する面とは反対側の面に、貼付層(X)よりも唾液への溶解性が低い保護層(Y)を備えることができる。これにより、本発明の唾液溶解性歯牙貼付シートの取り扱い性を高めることができる。加えて、本発明の唾液溶解性歯牙貼付シートを歯牙等に貼付した際、貼付層(X)に比べて唾液への溶解性が低い保護層(Y)が、先に唾液へと溶解する貼付層(X)を被覆・保護しつつ、シートの溶解に伴う成分(a)又は成分(a’)の持続的な放出及び滞留を可能とする。
【0035】
かかる保護層(Y)は、貼付層(X)よりも唾液への溶解性を低める観点から、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートサクシネート、セルロースアセテートフタレート、ヒプロメロースフタル酸エステル、セラック、ポリビニルアセテート、ポリメチルメタクリレート、メタクリロイルエチルベタイン/メタクリレート共重合体、メタクリル酸共重合体、アミノアルキルメタクリレート共重合体及び寒天から選ばれる1種又は2種以上の水不溶性高分子を含有するのが好ましい。なかでも、本発明の唾液溶解性歯牙貼付シートの良好な柔軟性を確保しつつ、歯牙又は歯牙周辺部への貼付中において、違和感や不快感を有効に低減する観点から、エチルセルロース及びセラックから選ばれる1種又は2種が好ましく、エチルセルロースがより好ましい。
【0036】
保護層(Y)の厚みは、本発明の唾液溶解性歯牙貼付シートの良好な柔軟性を確保する観点から、好ましくは0.4~10μmであり、より好ましくは0.6~5μmであり、さらに好ましくは0.8~1.6μmである。
【0037】
本発明の唾液溶解性歯牙貼付シートは、上記貼付層(X)及び保護層(Y)のほか、さらに貼付層(X)と保護層(Y)の層間において形成される中間層(M)を備えることができる。これにより、例えば貼付層(X)から成分(a)又は成分(a’)を徐々に放出させつつ歯牙周辺へ滞留させ、続いて中間層(M)が含有する所望の成分を口腔内に放出させることが可能となり、また段階的かつ継続的な溶解性を付与することも容易となる。中間層(M)が含有する所望の成分としては、例えば、グリチルリチン酸、グリチルレチン酸及びこれらの塩、硝酸カリウム、フッ素等の薬用成分等が挙げられる。
かかる中間層(M)の材質としては、貼付層(X)と同様の水溶性高分子(b)を用いることができる。
【0038】
本発明の唾液溶解性歯牙貼付シートは、歯牙等の表面に存在し得る大小様々な凹凸への貼付に対しても優れた追従性を発現させる観点から、引張応力が20MPaでのひずみが、好ましくは2%以上であり、より好ましくは3%以上であり、さらに好ましくは4%以上である。
なお、ひずみとは、レオメーターにて、20MPaの引張応力に対するひずみを測定した結果に基づき得られる値を意味する。
ひずみを測定するにあたっては、測定治具としてユニバーサル伸長測定システム(UXF12/UNI)を使用し、レオメーター(AntonPaar製、MCR502)を用いてひずみの測定を行い、解析ソフトとしてRheoplus32を使用する。
具体的には、測定対象のシートを測定治具にセットし、室温環境下(約25℃)にて測定時間30秒とし、引張応力を1ポイント/1秒で線形的に制御して1~20MPaまで変化させ、ひずみを計測する。そして、回転式ドラムと固定ドラムに挟まれたシートの初期長さからの変化量を%で示し、20MPaの引張応力に対するひずみの値とする。
【0039】
本発明の唾液溶解性歯牙貼付シートのシート厚み(総厚み)は、引張応力20MPaでのひずみが上記値を示すのが好ましく、優れた追従性を確保して、歯牙等への密着性を有効に高める観点から、好ましくは20~500μmであり、より好ましくは40~300μmであり、さらに好ましくは60~70μmである。
なお、本発明において「唾液溶解性歯牙貼付シートのシート厚み」とは、「全体の厚みの平均値」を意味し、具体的には、マイクロゲージにて厚みを3~5点測定し、それらの測定値から算出した平均値とする。
【0040】
本発明の唾液溶解性歯牙貼付シートは、常法にしたがって、貼付層(X)、及び必要に応じて保護層(Y)や中間層(M)の単一層からなるシートを各々形成した後、これらを積層して製造してもよく、また基材の上に順次積層して製造してもよい。これらの層は、いずれも所定の成分を含有する原液を用いて層状にした後、乾燥工程及び圧着工程を経ることにより形成することができる。
【0041】
なお、貼付層(X)が有する歯牙等に貼付する面上に、さらに剥離層(Z)を設け、剥離層(Z)と本発明の唾液溶解性歯牙貼付シートとが積層されてなるシートとするのが好ましい。シートの使用時には、剥離層(Z)を剥離して貼付層(X)を露出させ、歯牙等に貼付する面を歯牙等に当接するよう貼付すればよい。
これにより、本発明の唾液溶解性歯牙貼付シートを製造する際には、剥離層(Z)を基材として用いることができ、貼付層(X)や保護層(Y)等を順次担持させつつ積層することが可能となる。また、シートの製造後から使用時までには、貼付層(X)の過度な乾燥や外界への曝露等による不要な溶解を防止するための保護層としても、活用することができる。
【0042】
本発明の唾液溶解性歯牙貼付シートを歯牙等に貼付した際、貼付開始時から、貼付層(X)が唾液に全溶解するまでの時間は、好ましくは3~30分であり、より好ましくは5~20分であり、さらに好ましくは8~12分である。このように、本発明の唾液溶解性歯牙貼付シートにおける貼付層(X)は、長時間かけて徐々に唾液に溶解することにより、シートに歯牙等へ良好に密着したまま包埋されている成分(a)又は成分(a’)を持続的に放出及び滞留させることができるので、成分(a)又は成分(a’)による作用を充分に行き渡らせ、優れた沈着汚れ付着防止効果を発揮させることができる。
【0043】
本発明の唾液溶解性歯牙貼付シートの使用方法としては、上顎及び下顎に位置する歯牙等の表裏双方に貼付し、放置すればよい。放置時間は、歯牙等への貼付開始時から貼付層(X)の全溶解までにかかる時間に左右されるが、貼付直後から、好ましくは3~30分であり、より好ましくは5~20分であり、さらに好ましくは8~12分である。
【0044】
なかでも、本発明の唾液溶解性歯牙貼付シートによる優れた沈着汚れ付着防止効果を充分かつ有効に活用する観点から、清掃後の歯牙等の表裏双方に貼付するのが好ましい。このように、本発明の唾液溶解性歯牙貼付シートを使用することにより、清掃によって沈着汚れが有効に除去された後の歯牙等に対し、本発明が奏する効果を一層有効に及ぼすことができ、貼付層(X)の全溶解後において、沈着汚れが付着するのを長時間にわたって防止することが可能となる。
【実施例
【0045】
以下、本発明について、実施例に基づき具体的に説明する。なお、表中に特に示さない限り、各成分の含有量は質量%を示す。
【0046】
[実施例1~11、比較例1~7]
表1~2に示す貼付層(X)が得られるよう、各成分を混合して原液(X)を調製した。
次いで、厚みを勘案しつつ、得られた原液(X)を剥離層(Z)フィルム上に塗工し、乾燥させて貼付層(X)を形成し、剥離層(Z)上に唾液溶解性歯牙貼付シートを形成した。
得られたシートを用い、下記方法にしたがった各測定及び評価を行った。
なお、表1~2に示す実施例のシートにおける、引張応力が20MPaでのひずみは2%以上であった。
結果を表1~2に示す。
【0047】
《シートの全水分量の測定》
得られたシートを用い、上記記載の方法にしたがって、シートの全水分量を測定した。
【0048】
《シートにおける、引張応力が20MPaでのひずみ》
得られたシートを用い、上記記載の方法にしたがって、各シートにおける、引張応力が20MPaでのひずみを測定した。
【0049】
《シート貼付後からの放置時間(分)》
HAPペレット(APP-100、HOYA社製)10mm×10mmの表面を水を含ませた脱脂綿で軽く擦り湿らせた後、得られたシートをHAPペレット表面に貼付し、貼付開始から10分間放置した。
【0050】
《得られた唾液溶解性歯牙貼付シートの面積、及びシート単位面積あたりの成分(a)の質量(mg/cm2)の測定》
得られたシートの面積を測定し、唾液溶解性歯牙貼付シート中の成分(a)の含有量を元に換算した。
【0051】
《沈着汚れ付着抑制効果の評価》
HAPペレット(APP-100、HOYA社製)10mm×10mmを粒度#400の耐水研磨紙で表面を荒らした。その後、水を含ませた脱脂綿で軽く擦り湿らせたHAP板の表面に、剥離層(Z)から剥離した各シートの貼付層(X)を貼付し、10分間放置した後、ブラッシングを行ってシートをHAP板の表面から除去し、イオン交換水にて洗浄した。
次いで、0.01M CaCl2(pH8.0)、0.01M K2HPO4(pH8.0)、1%ウシ血清由来アルブミン(pH5.2)を混合して調製した沈着汚れモデル溶液に、洗浄後のHAP板を1時間浸漬した後、紅茶(日東紅茶、三井農林社製)抽出液にて40℃環境下で15時間付着した沈着汚れを染色した。沈着汚れの付着度合いを数値化するため、染色したHAP板を写真撮影し、Photoshopによる画像解析によりHAP板表面のa*値を算出した。
なお、シートを貼付しなかったHAP板についても同様の処理を行い、HAP板表面のa*値を算出して対照とした。
HAP板表面のa*値の減少分を対照のa*値を100%とする百分率の値(%)で求めて沈着汚れ付着抑制率の値(%)とし、得られた値を沈着汚れ付着抑制効果の評価の指標とした。具体的には、沈着汚れ付着抑制率が50%以上である場合を「〇」、10%以上50%未満である場合を「△」、10%未満である場合を「×」として、沈着汚れ付着抑制効果を評価した。
【0052】
《シートの取り扱い性の評価》
剥離層(Z)から剥離したシートの貼付層(X)をヒトの上下の前歯に貼付し、主として「剥離層(Z)からの剥離性」、「貼付の際のフィルムの取り扱い性」、及び「貼付後の歯面への密着性」について評価し、「シートの取り扱い性」の評価の指標とした。
シートの取り扱い性の具体的な評価としては、取り扱い性の高いものを「○」、やや取り扱い性は悪いが許容範囲であるものを「△」、取り扱い性の悪いものを「×」とした。
【0053】
【表1】
【0054】
【表2】
【0055】
[実施例12]
表3に示す貼付層(X)が得られるよう、実施例1と同様にして貼付層(X)を形成した。次いで、表3に示す貼付層(Y)が得られるよう、エタノールを溶媒として用いつつ、エチルセルロース及びプロピレングリコールを混合して原液(Y)を調製した後、貼付層(X)の上から原液(Y)を塗工して乾燥させ、貼付層(X)及び貼付層(Y)が積層された唾液溶解性歯牙貼付シートを形成した。
得られたシートを用い、実施例1と同様にして各測定及び評価を行った。
なお、実施例12のシートにおける、引張応力が20MPaでのひずみは2%以上であった。
結果を表3に示す。
【0056】
【表3】
図1
図2