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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-03-19
(45)【発行日】2025-03-28
(54)【発明の名称】給紙装置
(51)【国際特許分類】
   B65H 29/62 20060101AFI20250321BHJP
   B65H 7/12 20060101ALI20250321BHJP
【FI】
B65H29/62 Z
B65H7/12
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2021029484
(22)【出願日】2021-02-26
(65)【公開番号】P2022130849
(43)【公開日】2022-09-07
【審査請求日】2024-02-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000208743
【氏名又は名称】キヤノンファインテックニスカ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100097043
【弁理士】
【氏名又は名称】浅川 哲
(74)【代理人】
【識別番号】100197996
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 武彦
(72)【発明者】
【氏名】山本 幸治
【審査官】大山 広人
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-221518(JP,A)
【文献】特開2013-37208(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65H 29/62
B65H 7/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ートを案内する搬送経路と、
前記搬送経路に沿ってシートを搬送するシート搬送手段と、
ートが排出される排出部と、
前記搬送経路を搬送されるシートが前記搬送経路の途中に設けられた分岐位置の搬送方向下流に向かう方向と、前記搬送経路の前記分岐位置から前記排出部に向かう方向とにシートの経路を切り換える案内手段と、を備え、
シートの先端が前記分岐位置を通過して前記搬送経路に停止し、シートの先端と前記分岐位置との距離が所定の距離以内である場合に、シートの先端を前記シート搬送手段によって前記分岐位置の上流側に移動させ、前記案内手段によって前記排出部に向かう方向にシートの経路を切り換えた後、シートを前記シート搬送手段によって前記排出部に向けて搬送する給紙装置。
【請求項2】
先端が前記分岐位置を通過して前記搬送経路に停止したシートは、シートの搬送不良発生時に、前記搬送経路にて停止されたシートである請求項1に記載の給紙装置。
【請求項3】
前記分岐位置の上流に設けられ、シートの重送を検出する重送センサと、を備え
先端が前記分岐位置を通過して前記搬送経路に停止したシートは、前記重送センサによって重送が検出された重送したシートである請求項1に記載の給紙装置。
【請求項4】
前記分岐位置の上流側で前記搬送経路に沿って搬送されるシートを検出するシートセンサを備え、
前記シートセンサがシートの先端を検出したことに基づき、シートが前記分岐位置を通過した通過距離を特定する請求項1に記載の給紙装置。
【請求項5】
ートの先端が前記所定の距離を越えて搬送が停止した場合に、エラー情報を報知する報知手段を設けた請求項に記載の給紙装置。
【請求項6】
前記搬送経路における前記分岐位置の上流側に、前記シート搬送手段によって移動させたシートの撓みを収容するシート退避部を設けた請求項1に記載の給紙装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、重送等が検出されたシートを所定の排出部に排出する給紙装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、画像形成装置内に搭載される給紙装置や画像形成装置に連結されてシートを供給する給紙装置にあっては、紙詰まり(ジャム)が発生した際における搬送経路内の滞留シートやシートが重なった状態で搬送される重送シートを強制的に排出部(エスケープ部)に排出することで、重送シートや滞留シートを取り除く作業を解消するものが知られている。
【0003】
例えば、特許文献1、2には、重送を検出する重送検出センサと、重送したシートを画像形成装置に向かう搬送経路から排除するための専用の排出部と、画像形成装置に連通される給紙装置の出口側に設けられた分岐位置で搬送経路から分岐し、排出部にシートを案内する排出経路と、が設けられている。そして、重送検出センサで重送が検出された重送シートを、排出経路を介して排出部に排出している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2011-42469号公報
【文献】特開2018-199565号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1、2に開示の装置にあっては、重送検出センサがシートの重送を検出時点で重送したシートの先端が排出部に案内する分岐位置を通過している場合がある。また、画像形成装置を含む搬送経路の分岐位置の流側でジャムが発生した際に、ジャムしたシートに後続するシートの先端が前記分岐位置を通過した状態で滞留している場合がある。このような場合、自動で排出部に排出する機能があったとしても、使用者はジャムしたシートや重送したシートに加えて搬送路内に滞留している全てのシートを取り除かなければならず、この取り除き作業が煩わしいといった問題があった。
【0006】
そこで本発明は、搬送経路内で生じた重送シートや滞留シートの取り除き作業を軽減化することのできる給紙装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る給紙装置は、シートを案内する搬送経路と、前記搬送経路に沿ってシートを搬送するシート搬送手段と、シートが排出される排出部と、前記搬送経路を搬送されるシートが前記搬送経路の途中に設けられた分岐位置の搬送方向下流に向かう方向と、前記搬送経路の前記分岐位置から前記排出部に向かう方向とにシートの経路を切り換える案内手段と、を備え、シートの先端が前記分岐位置を通過して前記搬送経路に停止し、シートの先端と前記分岐位置との距離が所定の距離以内である場合に、シートの先端を前記シート搬送手段によって前記分岐位置の上流側に移動させ、前記案内手段によって前記排出部に向かう方向にシートの経路を切り換えた後、シートを前記シート搬送手段によって前記排出部に向けて搬送する。
【発明の効果】
【0008】
上記給紙装置によれば、重送や滞留による特定のシートの先端が排出部への分岐位置を通過して停止した場合であっても、前記特定のシートを上流側に後退させることによって前記排出部に排出することができるので、重送や滞留による特定シートの取り除き作業を軽減化することができる。また、搬送不良による装置の停止を減少させて生産性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の給紙装置を備えた画像形成システムの全体構成を示す断面図である。
図2】画像形成システムにおける制御構成を示すブロック図である。
図3】給紙装置の主要構成を示す断面図である。
図4】給紙装置の各種センサの配置構成を示す断面図である。
図5】第1重送処理における通常排出動作を示す説明図である。
図6】第1重送処理における後退動作を示す説明図である。
図7】第1重送処理における後退後の排出動作を示す説明図である。
図8】重送シートの先端が許容距離内(a)及び許容距離外(b)に到達した状態を示す説明図である。
図9】第1ジャム処理の起動状態を示す説明図である。
図10】第1ジャム処理におけるシートの後退動作(a)及びシートの排出動作(b)を示す説明図である。
図11】第2重送処理におけるシートの後退動作を示す説明図である。
図12】第2重送処理におけるシートの排出動作を示す説明図である。
図13】第2ジャム処理におけるシートの後退動作を示す説明図である。
図14】第2ジャム処理におけるシートの排出動作を示す説明図である。
図15】後退動作に伴うシートのジャム防止構造を示す断面図である。
図16】重送やジャムによるシート処理のフローチャートである。
図17】シート退避部の他の実施形態の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、添付図面を参照しつつ本発明の実施の形態を詳細に説明する。図1は画像形成装置101と、この画像形成装置101に連結可能な本発明の給紙装置DKと、を備えた画像形成システム100の全体構成を示したものである。本実施形態では、前記給紙装置DKが下流側給紙ユニット(第1給紙ユニット)DK1と、上流側給紙ユニット(第2給紙ユニット)DK2との2段構成となっているが、独立した給紙ユニットを複数連結した構成でもよく、給紙ユニットの段数には限定されない。以下の説明では、画像形成装置101の一例として、電子写真方式を用いたレーザプリンタシステムについて説明する。なお、画像形成装置101は、プリンタ以外に複写機、ファクシミリ、複合機などであってもよく、電子写真方式に限らず、インクジェット方式などの他の方式であってもよい。
【0011】
前記第1給紙ユニットDK1及び第2給紙ユニットDK2には、それぞれ複数枚のシートを収納可能な収納部(収納庫)が複数備えられており、各収納庫から画像形成装置101に向けてシートを給紙することができる。なお、シートの種類としては、普通紙、薄紙、厚紙などの他、プラスチックシート等が使用できる。
【0012】
図2は、前記画像形成システム100における画像形成装置101及び給紙装置DKの制御構成と相互の接続関係を示したブロック図である。画像形成装置101は、シートの搬送及び画像形成処理を実行制御する制御手段(制御部)CON0、操作部102及び報知手段(表示部)103を備えている。給紙装置DKを構成する第1給紙ユニットDK1及び第2給紙ユニットDK2には、シートの搬送給紙を制御する制御部(CON1、CON2)、搬送経路の所定位置に配置されてシートの搬送状態を検出するシート検出手段(シートセンサS1~S13及び重送センサDFS1~DFS3)、搬送モータM1~M14、昇降モータM15~M17、ソレノイドSOL等がそれぞれ備えられている。前記シートセンサS1~S13は、搬送中のシートの先端を検出し、前記重送センサDFS1~DFS3は、シートの重送の有無を検出する。給紙装置DK内では、第1給紙ユニットDK1の制御部CON1と第2給紙ユニットDK2の制御部CON2とが相互に電気的に接続されている。また、給紙装置DKと画像形成装置101とは、第1給紙ユニットDK1の制御部CON1と画像形成装置101の制御部CON0とを介して相互に電気的に接続されている。
【0013】
図1に示したように、画像形成装置101は、内部に備わる給紙部20(複数の給紙カセット21)や給紙装置DK(第1給紙ユニットDK1、第2給紙ユニットDK2)内の複数の収納庫から給紙される各種のシートを1枚ずつ分離した状態で画像形成部10に搬送する。そして、前記画像形成部10においてシートに画像形成した後、排出トレイ29から排出する。
【0014】
前記第1給紙ユニットDK1には、第2給紙ユニットDK2から給紙されるシートを画像形成装置101に中継搬送するスルーパス部TPが設けられている。
【0015】
前記操作部102では、画像形成部10に給紙するシートを前記給紙部20、第1給紙ユニットDK1又は第2給紙ユニットDK2から選択し、また、印刷方法や印刷部数等を指定する。また、前記表示部103では、給紙部20、第1給紙ユニットDK1及び第2給紙ユニットDK2のどの収納庫からシートが給紙されているか、シートが重送していないかを表示する。なお、前記操作部102を直接操作することなく、外部のPCやスマートフォン等の情報端末器から遠隔操作することも可能である。
【0016】
画像形成装置101に備わる画像読取装置2は、プラテン3上に載置された原稿に走査光学系光源による光を照射すると共に、反射光をCCDに入力することにより原稿画像を読み取る。また、画像読取装置2には、自動原稿送り装置(ADF)4を接続することができ、トレイ5上にセットされた原稿を自動的に画像読取装置2の読取部に搬送して、原稿画像を読み取ることも可能である。そして、読み取った原稿画像は電気信号に変換されて、後述する画像形成部10のレーザスキャナ13に伝送される。なお、レーザスキャナ13は、外部の端末機器等から送信されてくる画像データが入力される場合もある。
【0017】
給紙部20は、各種のシートを収納する複数の給紙カセット21と、ピックアップローラ22と、分離搬送ローラ対25等を備えている。前記給紙カセット21内に収納されているシートは、所定のタイミングで昇降動作して回転する前記ピックアップローラ22と分離搬送ローラ対25とによって1枚ずつ分離される。
【0018】
画像形成搬送経路TR00は、搬送ローラ対31、レジストローラ対33を備えている。搬送ローラ対31からレジストローラ対33によって導かれたシートは、所定のタイミングで画像形成部10に送り込まれる。また、前記給紙装置DKから給紙されるシートは、前記第1給紙ユニットDK1に備わる搬送ローラ対54及び接続路TR6を介して前記画像形成搬送経路TR00に合流して画像形成装置101内に搬送される。
【0019】
画像形成部10は、感光ドラム11、帯電器12、レーザスキャナ13、現像器14、転写器15、クリーナ17等を備えている。画像形成時には、感光ドラム11が回転駆動し、最初に帯電器12により感光ドラム11の表面が一様に帯電される。そして、画像信号に応じて発光されるレーザスキャナ13からのレーザ光が帯電された感光ドラム11に照射されることで、感光ドラム11上に静電潜像が形成される。さらに、このようにして感光ドラム11上に形成された静電潜像は、現像器14によってトナー像として顕像化される。
【0020】
その後、感光ドラム11上のトナー像は、転写器15によってシートに転写される。さらに、トナー像が転写されたシートは、定着器16に搬送されてトナー像の定着が行われ、その後、排出ローラ対19を介して排出トレイ29に排出される。
【0021】
前記シートの裏面にトナー像を形成する場合には、定着器16から排出されたシートをスイッチバック経路18に搬送する。そして、スイッチバック経路18により表裏を反転した状態で、シートを再度、画像形成部10の転写器15に搬送する。裏面にトナー像が転写されたシートは、定着器16に搬送され、トナー像の定着が行われた後、排出ローラ対19により排出トレイ29に排出される。なお、転写後に感光ドラム11上に残った転写残トナーは、クリーナ17により除去される。
【0022】
制御部CON0は、CPU、ROM、RAMを有している。CPUは、ROMに格納された制御手順に対応するプログラムを読み出しながら各部の制御を行う。また、RAMには、作業用データや入力データが格納されており、CPUは、前述のプログラム等に基づいてRAMに収納されたデータを参照して制御を行う。
【0023】
画像形成装置101に備わる操作部102では、画像形成条件、例えばシートサイズ指定、カラー・モノクロ印刷指定、プリント部数指定、片面・両面印刷指定、拡大・縮小印刷指定などの印刷条件が設定される。
【0024】
次に、図3及び図4に基づいて給紙装置DKの詳細について説明する。なお、第1給紙ユニットDK1と第2給紙ユニットDK2は、スルーパス部TPを除いて同一構成であるため、第1給紙ユニットDK1に基づいて説明する。
【0025】
第1給紙ユニットDK1は、複数の収納庫LO1~LO3、上流側から下流側に向けて延びる複数の搬送路TR1~TR5からなる第1搬送経路TR10、各搬送路に配置されている複数の搬送ローラ対からなるシート搬送手段、シートセンサS1~S13、重送センサDFS1~DFS3、モータM1~M17、スルーパス部TP等を備えている。本実施形態では、3つの収納庫LO1~LO3が上下方向に3段並べて配置されており、下段の収納庫LO3と中段の収納庫LO2との間にスルーパス部TPが設けられている。なお、第2給紙ユニットDK2には、前記スルーパス部TP及び重送センサDFS3は設けられていない。
【0026】
上段の収納庫LO1から給送されたシートは、搬送路TR1に搬送され、中段の収納庫LO2から給送されたシートは、搬送路TR1に合流する搬送路TR2に搬送され、下段の収納庫LO3から給送されたシートは、搬送路TR3に搬送される。前記スルーパス部TPを介して第2給紙ユニットDK2から搬送されたシートは、搬送路TR4に搬送される。また、搬送路TR1、TR3、TR4は、合流点J1で合流し、搬送路TR5を通って搬送ローラ対54に搬送され、接続路TR6を介して画像形成装置101内の画像形成搬送経路TR00に合流する。
【0027】
また、図4に示したように、搬送路TR2と合流後の搬送路TR1、スルーパス部TP、搬送路TR3には、それぞれシートの重送を検出する重送センサDFS1~DFS3が配置されている。そして、重送センサDFS1~DFS3によって重送が検出されたシート(以下、重送シートという)は、搬送路TR5まで搬送される。搬送路TR5の下方には、前記重送シートを排出する下流側の排出部(第1エスケープ部)ES1が設けられている。前記重送シートは、搬送路TR5に設けられた案内手段に備わる切換部材(フラッパ)FL1によって経路が切り換えられることで、前記第1エスケープ部ES1に排出される。重送が検出された場合の処理の詳細については、後述する。
【0028】
収納庫LO1~LO3から給送されるシートは、搬送路TR1、TR3、TR4を経由して接続路TR6に搬送される。また、第1給紙ユニットDK1は、制御部CON1により各部が制御される。制御部CON1は、CPU、ROM、RAMを有している。制御部CON1は、画像形成装置101の制御部CON0と通信可能であり、制御部CON0と通信することでシートの給送タイミングなどを制御する。
【0029】
図3に示したように、収納庫LO1は、画像形成装置101に向けてシートを給送するシート給送部40a、複数のシートが積載される積載トレイ44aを有する。積載トレイ44aは、昇降モータM15によって駆動される昇降機構45aにより上下方向に昇降可能である。積載トレイ44aは、シートを積載する際には所定位置まで下降し、積載されたシートが給送されると徐々に上昇していく。
【0030】
シート給送部40aは、ピックアップローラ43a、搬送ローラとリタードローラとから構成される分離搬送ローラ対41a、搬送ローラ対42a等からなる第1シート搬送手段を備えている。ピックアップローラ43a及び分離搬送ローラ対41aは、搬送モータM1によって回転駆動され、搬送ローラ対42aは、搬送モータM2によって回転駆動される。また、シート給送部40aには、分離搬送ローラ対41aの搬送方向下流側におけるシートの先端を検出するシートセンサS1と、搬送ローラ対42aの搬送方向上流側におけるシートの先端を検出するシートセンサS2とが配置されている。
【0031】
ピックアップローラ43aは、積載トレイ44aの上方に設けられ、上昇した積載トレイ44aに積載されたシートの最上位シートと当接して給送する。このためにピックアップローラ43aは、シート搬送方向に対してシートの先端近傍に、積載トレイ44a上の最上位シートに適宜の力で圧接可能となるように配置されている。そして、回転することで、最上位シートを送り出す。
【0032】
分離搬送ローラ対41aは、ピックアップローラ43aから2枚以上のシートが重なって給送された場合、つまり2枚以上のシートが重送された場合に、分離して1枚のみのシートを搬送する。
【0033】
前記分離搬送ローラ対41aによって分離搬送されたシートは、搬送ローラ対42aにより搬送路TR1に搬送される。搬送路TR1には、搬送モータM7、M8によって回転駆動される複数の搬送ローラ対が配置されている。また、図4に示したように、搬送路TR1には、搬送方向上流側におけるシートの先端を検出するシートセンサS7と、搬送方向下流側におけるシートの先端を検出するシートセンサS8が配置されている。
【0034】
収納庫LO2、LO3は、画像形成装置101に向けてシートを給送するシート給送部40b、40cと、複数のシートが積載される積載トレイ44b、44cと、昇降機構45b、45cと、を有する。なお、シート給送部40b、40cの構成及び搬送モータM3~M6については、シート給送部40aと同様であり、また、昇降機構45b、45cの構成及び昇降モータM16、M17については、昇降機構45aと同様であるので説明は省略する。
【0035】
スルーパス部TPでは、搬送モータM14によって回転駆動されるコンベア50によってシートが装置内を搬送される。また、スルーパス部TPには、コンベア50よりも搬送方向上流側に、スルーパス部TPに2枚以上のシートが重送されているか否かを検出する重送センサDFS3が配置されている。
【0036】
コンベア50によって搬送されたシートは、搬送モータM12によって回転駆動される搬送ローラ対51と、搬送モータM13によって回転駆動される搬送ローラ対52と、によって搬送路TR4内に搬送される。
【0037】
搬送路TR4には、搬送ローラ対51の搬送方向上流側におけるシートの先端を検出するシートセンサS12と、搬送ローラ対52の搬送方向上流側におけるシートの先端を検出するシートセンサS13と、が配置されている。
【0038】
搬送路TR1、TR3、TR4は、合流点J1で合流し、搬送路TR5に接続される。搬送路TR5には、搬送モータM10によって回転駆動される搬送ローラ対53、搬送モータM11によって回転駆動される搬送ローラ対54が配置されており、搬送ローラ対54によって送り出されたシートが、接続路TR6を経由して画像形成装置101に搬送される。
【0039】
また、搬送路TR5には、搬送ローラ対53の上流側近傍におけるシートの先端を検出するシートセンサS10と、搬送ローラ対54の上流側近傍におけるシートの先端を検出するシートセンサS11とが配置されている。搬送路TR5にはフラッパFL1が配置されている。このフラッパFL1は、画像形成装置101に通じる接続路TR6を遮断して第1エスケープ部ES1を開放する分岐位置DPに設けられ、ソレノイドSOLのON/OFFによって、前記接続路TR6を遮断する位置と第1エスケープ部ES1を開放する開放位置とに切り換わる。
【0040】
第1エスケープ部ES1は、収納庫LO3からのシートを画像形成装置101に搬送するための搬送路TR3、TR5と、接続路TR6の下方及び搬送路TR1、TR2、TR3との合流点J1の下方に設けられている。第1エスケープ部ES1は、図3に示したように、搬送路TR3、TR5を搬送されるシートの搬送方向における重送されたシートの排出領域が、画像形成装置101に隣り合う位置から収納庫LO3に隣り合う位置までの広い範囲となっている。つまり、第1エスケープ部ES1のうち搬送路TR3、TR5を通るシートの搬送方向の長さは、搬送路TR3から合流点J1、フラッパFL1を介して接続路TR6に至るまでの長さとなっている。
【0041】
第2給紙ユニットDK2は、複数の収納庫LO1~LO3、上流側から下流側に向けて延びる複数の搬送路TR1~TR5からなる第2搬送経路TR20、各搬送路に配置されている複数の搬送ローラ対からなる第2シート搬送手段、シートセンサS1~S13、重送センサDFS1、DFS2及びモータM1~M17等を備えている。前記第2搬送経路TR20は、下流側の接続路TR26を介して第1搬送経路TR10に合流している。第2エスケープ部ES2は、第1給紙ユニットDK1に連結される接続路TR26の下方に設けられており、フラッパFL2を切り換えることによって重送やジャムしたシートが排出される。なお、収納庫LO1~LO3、各搬送路に配置されている複数の搬送ローラ対、シートセンサS1~S13、重送センサDFS1、DFS2、モータM1~M17等の構成及び配置は、第1給紙ユニットDK1と共通となっている。
【0042】
次に、本発明におけるシート処理の詳細について説明する。シート処理には、重送が検出された場合に対応した重送処理と、重送以外にジャムが発生した場合に対応したジャム処理とがある。
【0043】
重送処理には、重送が検出された特定のシート(以下、重送シートという)PPがエスケープ部への分岐位置DPを通過して停止した場合に、重送シートPPの先端のみを搬送方向とは逆方向に後退させた後にエスケープ部に排出する第1重送処理と、重送シートPP全体を搬送方向とは逆方向に後退させた後にエスケープ部に排出する第2重送処理とがある。前記重送シートPPは、先送りされる先シートPaと、この先シートPaに後シートPbが重なった状態であるものとする。
【0044】
ジャム処理は、画像形成装置101に搬送されたシートが何らかの原因でシート詰まり(ジャム)が発生し、シートセンサS1~S13によって搬送中のシートの停止が検出された際の処理である。このジャム処理には、ジャムが発生した際に搬送が停止された特定のシート(以下、滞留シートという)が給紙装置DKのエスケープ部への分岐位置DPを通過して停止した場合に、滞留シートの先端のみを搬送方向とは逆方向に後退させた後にエスケープ部に排出する第1ジャム処理と、滞留シート全体を搬送方向とは逆方向に後退させた後にエスケープ部に排出する第2ジャム処理とがある。
【0045】
上記重送処理及びジャム処理は、画像形成装置101、第1及び第2給紙ユニットDK1、DK2に備わる制御部CON0、CON1、CON2によってそれぞれ実行される。以下、第1給紙ユニットDK1におけるシート処理について説明するが、第2給紙ユニットDK2においても同様である。
【0046】
図5乃至図8の状態図及び図16のフローチャートに基づいて、第1重送処理について説明する。なお、図5は搬送路TR1又はTR2を経由して重送が検出された場合を示しているが、搬送路TR3を経由して重送が検出された場合も同様である。
【0047】
図5(a)に示すように、第1重送処理では、通常の搬送方向にシートを送る正回転と、搬送方向とは逆方向にシートを送る逆回転との切換が可能な搬送モータM10によって搬送ローラ対53が駆動される。また、前記搬送ローラ対53によるシートのニップ位置RP1の上流側の搬送路TR12、TR3に、重送が検出されたシートの先端を一時的に後退して退避させるためのシート退避部LP1、LP2が設けられている。このシート退避部LP1、LP2は、後退させたシートの先端を撓ませた状態で収容可能となるような収容スペースを有している。前記収容スペースは、搬送路を形成している搬送ガイド(図示せず)の一部を外側に突出させることによって形成することができる。
【0048】
以下、重送センサDFS1がシートの重送を検出した場合の処理について説明する。最初に、フラッパFL1の上流側近傍に配置されているシートセンサS10がOFFか否か、すなわち重送した先シートPaの先端を検出しているか否かを判定する(ST01)。シートセンサS10がOFF(ST01でYes)であれば、図5(a)に示したように、先シートPaの先端が分岐位置DPに到達しておらず、フラッパFL1の上流側にあると判定される。このような状態であれば、図5(b)に示すように、前記分岐位置DPに配置されているフラッパFL1によって、接続路TR6への搬送方向TD1を遮断して、第1エスケープ部ES1に向けた搬送方向TD2に切り換える。このようにして、前記重送シートPPを第1エスケープ部ES1に排出する(ST02)。その際、前記重送シートPPの上流側の搬送経路に滞留したシート(滞留シート)がある場合(ST03でNo)は、続けて滞留シートも第1エスケープ部ES1に排出する(ST02)。その後、滞留しているシートが存在しなくなった場合(ST03でYes)は、第1エスケープ部ES1への搬送及び排出動作を停止する(ST04)。
【0049】
一方、重送センサDFS1によって重送が検出された後、シートセンサS10がON(ST01でNo)であれば、図6(a)に示すように、先シートPaの先端が既にフラッパFL1が配置されている分岐位置DPを越えた下流側に到達していると判定され、重送シートPPの搬送を停止する。そして、前記先シートPaの先端が前記分岐位置DPの上流側まで後退動作が可能か否かを判定する後退動作判定処理を行う(ST05)。この後退動作判定処理では、図8に示すように、先シートPaの先端が搬送ローラ対53のニップ位置RP1から下流側の到達位置RP2までの通過距離EDが所定の範囲(許容距離)AD以内であれば、後退動作可能と判定し、前記到達位置RP2がさらに下流側となり、前記通過距離EDが前記許容距離ADを越えていれば後退動作不可と判定する。なお、前記通過距離EDは、シートセンサS10による先シートPaの先端を検出してから到達位置RP2に到達するまでの搬送ローラ対53の回転駆動量を基に算出することができる。
【0050】
前記後退動作可能と判定されると後退動作が実行される(ST06)。この後退動作では、図6(b)に示すように、搬送ローラ対53を通常の搬送方向と逆方向、すなわちシートを上流側に戻す方向に前記通過距離EDに相当する駆動量回転させる。これによって、先シートPaの先端は搬送ローラ対53のニップ位置RP1に戻される。このとき、前記先シートPaの後退によって生じた撓み部分は、前記シート退避部LP1に一旦収容される。その後、図7に示すように、フラッパFL1を第1エスケープ部ES1に向けた搬送方向TD2に切り換えた後、重送シートPPを排出する(ST02)。なお、滞留シートも続けて排出する。
【0051】
後退動作判定処理(ST05)において、後退動作不可と判断されると、重送シートPPの搬送動作を停止し(ST07)、重送シートPPをジャムとして画像形成装置101の表示部103に表示、あるいは、警報音を発するなどの手段によって使用者にエラー情報を報知する(ST08)。なお、前記ジャムとなった場合には、所定の搬送路の搬送ガイド(図示せず)を開閉することによって、ジャムした重送シートPPや滞留しているシートを取り除く。
【0052】
本実施形態での後退動作判定処理では、許容距離ADを約20mmに設定している。つまり、シート退避部LP1は、シートが20mm程度撓んでも支障がないような収容スペースを有している。なお、前記許容距離ADは一例であり、これに限定されることはなく、搬送経路の長さやシートセンサの位置等によって適宜設定することができる。また、前記許容距離ADに応じてシート退避部LP1の収容スペースが設定される。
【0053】
なお、重送センサDFS2によって収納庫LO3から給紙されたシートの重送が検出された場合は、搬送路TR3に形成されているシート退避部LP2を介して上記第1重送処理が実施される。
【0054】
図9及び図10は、上記構成において、第1給紙ユニットDK1から画像形成装置101に給送されたシートP1が搬送経路TR00上でジャムした場合のジャム処理を示したものである。図9は、画像形成装置101内でジャムが発生して搬送動作が停止した際に、第1給紙ユニットDK1で停止した後続のシート(滞留シート)P2の先端P2aがフラッパFL1による分岐位置DPを通過して停止した状態を示したものである。この状態において、図8に示したように、前記滞留シートP2の先端P2aが分岐位置DPを通過して停止した場合の通過距離EDが前記許容距離AD以内であれば、図10(a)に示すように、搬送ローラ対53を通常の搬送方向と逆方向、すなわち滞留シートP2を上流側に戻す方向に前記通過距離EDに相当する分逆回転させる。このとき、前記搬送ローラ対53の上流側の搬送ローラ対55は滞留シートP2をニップした状態となっている。これによって、滞留シートP2の先端P2aは搬送ローラ対53のニップ位置RP1に戻され、戻された分の撓みは、シート退避部LP1に一旦収容される。その後、図10(b)に示すように、フラッパFL1の切り換えによって搬送路TR6を遮断することで第1エスケープ部ES1に滞留シートP2を排出することができる。
【0055】
一方、前記滞留シートP2の先端P2aが前記許容距離ADを越えていた場合は、後退動作不可と判定され、所定の搬送路を開放するなどして滞留シートP2を取り除く。
【0056】
次に、第2重送処理及び第2ジャム処理を図11乃至図14に基づいて説明する。上記第1重送処理及び第1ジャム処理は、第1エスケープ部ES1に向けて排出できなかった重送シート又は滞留シートの先端側のみを、フラッパFL1の上流側に一旦後退させてから第1エスケープ部ES1に排出させるものであった。これに対して、第2重送処理及び第2ジャム処理では、第1エスケープ部ES1に排出できなかったシート全体を所定量上流側にスライドするように後退させてから第1エスケープ部ES1に向けて排出させる。
【0057】
図11乃至図14に示したように、第2重送処理及び第2ジャム処理では、搬送ローラ対53の他に、接続路TR6上に配置されている搬送ローラ対54、搬送路TR12上に配置される搬送ローラ対55,56がそれぞれ正回転及び逆回転可能となるように搬送モータM11、搬送モータM8によって駆動される。なお、第2重送処理及び第2ジャム処理においては、シート全体を後退させるため、上述したようなシート退避部LP1、LP2を設ける必要はない。
【0058】
第2重送処理では、重送センサDFS1によって重送が検出され、シートセンサS10がOFFであれば、重送シートPPのうちの少なくとも先シートPaの先端がフラッパFL1による分岐位置DPを通過していないと判定される。この判定によって、フラッパFL1が搬送路TR6を遮断する方向に切り換えられ、重送シートPPを第1エスケープ部ES1に排出する。
【0059】
一方、重送センサDFS1によって重送が検出された後、シートセンサS10がONであれば、図11(a)に示したように、先シートPaの先端が既に分岐位置DPを越えた下流側に到達していると判定され、重送シートPPの搬送を停止する。そして、前記先シートPaの先端が前記分岐位置DPの上流側まで後退動作が可能か否かを判定する後退動作判定処理を行う。この後退動作判定処理では、図8に示したように、先シートPaの先端が許容距離AD内にあれば、後退動作可能と判定される。
【0060】
前記後退動作可能と判定されると後退動作が実行される。この後退動作では、図11(b)に示すように、搬送ローラ対53、55、56を通常の搬送方向と逆方向、すなわち先シートPaを上流側に戻す方向に前記通過距離EDに相当する分逆回転させる。これによって、先シートPaと後シートPbとが重なった状態の重送シートPPの全体が搬送ローラ対53、55、56の逆回転に伴って搬送方向とは逆方向にそのままスライドするように後退する。その後、図12に示すように、第1エスケープ部ES1側にフラッパFL1が切り換えられ、搬送ローラ対53、55、56が逆回転から正回転に切り換わることで、先シートPaと後シートPbと重なった状態の重送シートPPが排出される。
【0061】
第2ジャム処理は、第1給紙ユニットDK1から画像形成装置101に搬送されたシートP1が搬送経路TR00上でジャムした場合の処理である。図13(a)に示したように、画像形成装置101でジャムが発生して搬送動作が停止したときに、シートP2の先端P2aが分岐位置DPを通過して停止した場合に、図8に示したように、シートP2の先端P2aが許容距離AD内にあれば、図13(b)に示すように、搬送ローラ対53を通常の搬送方向と逆方向、すなわちシートを上流側に戻す方向に前記通過距離EDに相当する分逆回転させる。これによって、シートP2全体が前記通過距離ED分上流側に戻される。その後、図14に示すように、第1エスケープ部ES1側にフラッパFL1が切り換えられ、搬送ローラ対53、55、56が逆回転から正回転に切り換わることで、シートP2が排出される。
【0062】
第2重送処理及び第2ジャム処理においては、重送やジャムしたシート全体を所定量後退させるため、後続のシートとすれ違う場合がある。このようなすれ違いによるジャムを防止するため、例えば、図15に示すように、搬送ローラ対56の一方のローラを離間させて、搬送路TR12を広げることで、前記搬送路TR12に到達している後続のシートとのすれ違いをスムーズに行うことができる。他の搬送ローラ対53、55についても同様である。
【0063】
上記の実施の形態では、搬送ローラ対53によるシートのニップ位置RP1の上流側の搬送路TR12、TR3に、重送が検出されたシートの先端を一時的に後退して退避させるためのシート退避部LP1、LP2を設けた。この2つのシート退避部LP1、LP2を設ける代わりに、図17に示すように、搬送路TR12と搬送路TR3の合流点J1の下流側で、かつ搬送ローラ対53の手前に共有の1つのシート退避路LP3を設けるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0064】
DK 給紙装置
DK1 第1給紙ユニット
DK2 第2給紙ユニット
CON0、CON1、CON2 制御部
ES1 第1エスケープ部
ES2 第2エスケープ部
M1~M14 搬送モータ
M15~M17 昇降モータ
S1~S13 シートセンサ
DFS1~DFS3 重送センサ
TR00 画像形成搬送経路
TR10 第1搬送経路
TR20 第2搬送経路
TR1~TR5 搬送路
TR6、TR26 接続路
J1 合流点
TP スルーパス部
FL1、FL2 フラッパ(切換部材)
LO1、LO2、LO3 収納庫
DP 分岐位置
TD1、TD2 搬送方向
P1、P2 シート
PP 重送シート
Pa 先シート
Pb 後シート
LP1、LP2、LP3 シート退避部
AD 許容距離
ED 通過距離
RP1 ニップ位置
RP2 到達位置
19 排出ローラ対
20 給紙部
21 給紙カセット
22 ピックアップローラ
25 分離搬送ローラ対
29 排出トレイ
31 搬送ローラ対
33 レジストローラ対
40a、40b、40c シート給送部
41a 分離搬送ローラ対
42a 搬送ローラ対
43a ピックアップローラ
44a、44b、44c 積載トレイ
45a、45a、45c 昇降機構
50 コンベア
51~56 搬送ローラ対
100 画像形成システム
101 画像形成装置
102 操作部
103 表示部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
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図8
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図10
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図17