(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-03-19
(45)【発行日】2025-03-28
(54)【発明の名称】ランダム共重合体、クラムの製造方法、及び空気入りタイヤ
(51)【国際特許分類】
C08F 236/10 20060101AFI20250321BHJP
C08C 19/02 20060101ALI20250321BHJP
C08L 15/00 20060101ALI20250321BHJP
【FI】
C08F236/10
C08C19/02
C08L15/00
(21)【出願番号】P 2021081160
(22)【出願日】2021-05-12
【審査請求日】2024-02-13
(31)【優先権主張番号】P 2020122350
(32)【優先日】2020-07-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000000033
【氏名又は名称】旭化成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】松岡 大悟
(72)【発明者】
【氏名】菊地 章友
【審査官】尾立 信広
(56)【参考文献】
【文献】特開平07-238187(JP,A)
【文献】特開平10-330404(JP,A)
【文献】特開2020-012101(JP,A)
【文献】特開昭64-054016(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 1/00-101/14
C08K 3/00-13/08
C08F 6/00-246/00
C08F 2/00-2/60
B60C 1/00-19/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ランダム共重合体のクラムの製造方法であって、
芳香族ビニル化合物、及び共役ジエン化合物を
含むモノマーを、溶液中で重合
し、芳香族ビニル単量体単位、共役ジエン単量体単位、及びエチレン構造を有し、GPCによる分子量分布が単峰性であり、分子量分布が1.30~1.75である、ランダム共重合体を得る工程と、
前記ランダム重合体を含む溶液から脱溶剤することによりクラムを得る工程と、
を、有し、
メディアン径(D50)が6.0mm以上12.0mm以下である、クラムを得る、
クラムの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ランダム共重合体、クラムの製造方法、及び空気入りタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、自動運転技術の普及が予測されており、これに伴い、タイヤの交換頻度の低減化、すなわち、タイヤの耐久性の向上が求められている。特にブレーキ性能に関しては、乗員の安全性を担保するために、従来よりも長期間高性能を維持できることが求められている。
タイヤの耐久性を向上させるためには、タイヤの耐摩耗性の向上を図ることが不可欠であり、従来から、エチレン構造を含むポリマーをタイヤトレッドへ使用することにより、耐摩耗性の向上を図る技術が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
エチレン構造を含むポリマーを製造する方法としては、例えば、ブタジエンの構造単位を鎖中に有する共役ジエン重合体に水素を添加することによって製造する方法が挙げられる。例えば、特許文献1には、スチレン-ブタジエン共重合体を水添することによりエチレン構造を有する共重合体を得る方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載されている水添ポリマーは、タイヤ配合物とする際の加工性が悪い、という問題点を有している。特許文献1ではタイヤ配合物とする際の加工性をロールへの粘着性を指標として評価しているが、一般的に、ポリマーのロールへの粘着性評価は、ポリマーを製造する際の生産性評価にも相関している。具体的には、粘着性の低い水添ポリマーは、生産時のスチームストリッピング工程で得られるクラムの粘着性も低く、クラムが細かくなりやすい。細かいクラムは、前記スチームストリッピング工程に続く脱水工程において、脱水効率の低下を引き起こしやすく、最終的に得られる水添ポリマー製品中の含水率が高くなるという問題点を有している。
従って、特許文献1に記載されている水添ポリマーをタイヤ配合物とする際には、加工性が悪いこと、及び水添ポリマー製品の含水率が高くなることが解決すべき課題である。
【0006】
特許文献1に開示されている技術においては、タイヤ配合物とする際の加工性の悪さを、高分子水添ポリマーと低分子水添ポリマーの2種類をブレンドすることにより改善している。しかしながら、高分子水添ポリマーと低分子水添ポリマーを別々に製造しているため、高分子水添ポリマーの含水率が高すぎるという問題点は解決されていない。
そのため、水添ポリマーを生産する際の生産性の改善を図るべく、スチームストリッピング工程で得られるクラムの粒径の大きさを適切に制御し、かつ水添ポリマーの含水率を適切に制御する技術が望まれている。
【0007】
そこで本発明においては、上述した従来技術の問題点に鑑み、クラムの粒径の大きさ、及び含水率を適切に制御でき、生産性に優れたランダム共重合体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上述した従来技術の課題を解決するために鋭意検討した結果、特定構造を有するランダム共重合体が、上述した従来技術の課題を解決できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
すなわち、本発明は、以下の通りである。
【0009】
〔1〕
ランダム共重合体のクラムの製造方法であって、
芳香族ビニル化合物、及び共役ジエン化合物を含むモノマーを、溶液中で重合し、芳香族ビニル単量体単位、共役ジエン単量体単位、及びエチレン構造を有し、GPCによる分子量分布が単峰性であり、分子量分布が1.30~1.75である、ランダム共重合体を得る工程と、
前記ランダム重合体を含む溶液から脱溶剤することによりクラムを得る工程と、
を、有し、
メディアン径(D50)が6.0mm以上12.0mm以下である、クラムを得る、
クラムの製造方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、クラムの粒径及び含水率が適切に制御可能なランダム共重合を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を実施するための形態(以下、「本実施形態」という。)について詳細に説明する。
なお、以下の本実施形態は、本発明を説明するための例示であり、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。本発明は、その要旨の範囲内で適宜に変形して実施することができる。
【0012】
〔ランダム共重合体〕
本実施形態のランダム共重合体は、
芳香族ビニル単量体単位、共役ジエン単量体単位、及びエチレン構造を有し、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)による分子量分布が単峰性であり、分子量分布が1.30~1.75である。
本実施形態のランダム共重合体が上記の構成、特に、分子量分布を上記範囲に特定することにより、タイヤ組成物として好ましい重量平均分子量のランダム共重合体とする際、クラム粒径が細かくなりすぎず、これにより優れたクラムの脱水効率を達成できる。
分子量分布を上記特定の範囲とすることにより、クラム粒径の肥大化に効果的な低分子量成分の存在比率を増加させることができ、クラムが適度に肥大化し、クラム粒径が過度に細かくなることを防止できる。
【0013】
(ランダム共重合体のGPC曲線形状)
本実施形態のランダム共重合体のGPC曲線は単峰性である。
GPC曲線が単峰性とは、溶出時間を変化量とした際に溶出曲線の接線の傾きが一度のみ0°を示すことを意味している。
バッチ重合を行い、カップリング反応を行った場合、変性率が100%ではない限り、カップリング体とカップリング前の重合体とで複数のピークを示し、単峰性にはならない。他方、連続重合によって製造したポリマーは、GPC曲線のピークは一つになる。カップリング反応を行った場合に、低分子側にショルダーができることがあるものの、ピークが複数形成されることは無い。そのため、連続重合で製造した重合体は、異なる分子量領域のポリマーをブレンドしない限り、ランダム共重合体のGPC曲線を単峰性にすることができる。
ランダム共重合体の分子量分布は、重合反応器の内部の高さ(L)と直径(D)の比を調整することにより制御することができる。
【0014】
(ランダム共重合体の構成)
本実施形態のランダム共重合体は、芳香族ビニル単量体単位、共役ジエン単量体単位、及びエチレン構造を有する。
ここで、「エチレン構造」とは、エチレンモノマーを繰り返し単位とした構造であり、炭素同士が単結合を介して繋がった構造を有する。
なお、「エチレン構造」には、エチレンモノマーを重合して形成する場合に限定されず、後述するように、共役ジエン部に水素を添加することによりエチレン構造を形成する場合も含まれる。
本実施形態のランダム共重合体は、芳香族ビニル単量体単位である芳香族部と、共役ジエン単量体単位である共役ジエン部とを有する共重合体に、水素を添加することによってエチレン構造が形成された水添共重合体であることが商業生産の観点で好ましいが、芳香族ビニル化合物と共役ジエン化合物とエチレンとを共重合したランダム共重合体でもよい。
水添共重合体は、共役ジエン部中の二重結合部分に水素が添加されることで、共役ジエン部の一部又は全部がエチレン構造に変化したものであり、水素添加率を高くすることで、エチレン構造の含有量を高めることができる。
【0015】
なお、本実施形態のランダム共重合体が水添共重合体である場合は、共役ジエン化合物の主鎖の両端でポリマー鎖を形成するもの(例えば、1,3-ブタジエンをモノマーとした重合体の1,4-結合)に対して水素が添加されたものをエチレン構造とし、その他の形態(例えば、1,3-ブタジエンをモノマーとした重合体の1,2-結合(ビニル結合))に対して水素が添加されたものはエチレン構造に含めない。
なお、エチレン構造は、1H-NMRを測定して得られたスペクトルの共役ジエン化合物の1,4-結合由来の不飽和結合部のスペクトル減少率から算出することができる。
【0016】
芳香族ビニル単量体単位を形成するために用いる芳香族ビニル化合物としては、以下に限定されるものではないが、例えば、スチレン、4-メチルスチレン、α-メチルスチレン、1-ビニルナフタレン、3-ビニルトルエン、エチルビニルベンゼン、ジビニルベンゼン、4-シクロヘキシルスチレン、2,4,6-トリメチルスチレン等が挙げられる。これらは1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。これらの中で、モノマーの入手容易性等の実用面の観点でスチレンが特に好ましい。
【0017】
共役ジエン単量体単位を形成するために用いる共役ジエン化合物としては、以下に限定されるものではないが、例えば、1,3-ブタジエン、イソプレン、1,3-ペンタジエン、2,3-ジメチルブタジエン、2-フェニル-1,3-ブタジエン、1,3-ヘキサジエン等が挙げられる。これらは1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。これらの中で、モノマーの入手容易性等の実用面の観点から1,3-ブタジエン、イソプレンが好ましく、1,3-ブタジエンがより好ましい。
【0018】
本実施形態のランダム共重合体においては、芳香族ビニル単量体単位が8個以上連続した連鎖の含有量を長連鎖割合としたとき、当該長連鎖割合が、芳香族ビニル単量体単位全体に対して、10質量%以下であることが好ましい。
長連鎖割合が10質量%以下であると、優れた低燃費性が得られる傾向にある。
ここで、芳香族ビニル単量体単位が8個以上連続した長連鎖の含有量(長連鎖割合)は、ランダム共重合体を、重クロロホルムを溶媒として測定した1H-NMRスペクトルで、以下の(a)~(c)の各化学シフト範囲の積分値の合計に対する、(a)の範囲の積分値の割合を算出することにより得られる。
例えば、芳香族ビニルがスチレンの場合、(a)~(c)の各範囲の積分値の合計に対する(a)の範囲の積分値の割合を求め、その値を2.5倍することでスチレンの割合を計算できる。これにより、芳香族ビニル単量体単位の連鎖の状態を把握できる。
(a)芳香族ビニル化合物連鎖8以上: 6.00≦S<6.68
(b)芳香族ビニル化合物連鎖2~7: 6.68≦S<6.89
(c)芳香族ビニル化合物短連鎖 : 6.89≦S≦8.00
【0019】
また、本実施形態のランダム共重合体は、変性されていても非変性でもよいが、水添変性ランダム共重合体であることがブレーキ性能と耐摩耗性の観点で好ましい。
前述の変性とは、ランダム共重合体が窒素元素を有する化合物で官能基化されていることをいう。変性の種類は重合鎖末端を変性する鎖末端変性や、重合中に窒素元素を有する化合物を共重合させる主鎖変性のいずれでもよい。
【0020】
(ランダム共重合体のヨウ素価)
前記ランダム共重合体は、架橋性の観点から、ヨウ素価が、14以上であることが好ましく、より好ましくは30以上、さらに好ましくは70以上、さらにより好ましくは100以上である。
また、架橋密度の観点からから、好ましくは200以下であり、より好ましくは180以下、さらに好ましくは160以下である。
なお、ヨウ素価は、後述する実施例に記載の方法により測定できる。
本実施形態のランダム共重合体のヨウ素価は、ランダム共重合体における共役ジエン化合物と芳香族ビニル単量体の質量比、及び水素転化率を調整することにより、上記範囲に制御することができる。
具体的には、ランダム共重合体における芳香族ビニル単量体の質量比を30質量%にした際は、水素転化率を69%以下にすることでヨウ素価を100以上に制御することができる。
また水素転化率を70%にした際は、ランダム共重合体における芳香族ビニル単量体の割合を29質量%以下にすることとで、ヨウ素価を100以上に制御することができる。
【0021】
(ランダム共重合体の水素添加率)
本実施形態のランダム共重合体の水素添加率(共役ジエン部に対して水素添加された割合)は、架橋性の観点から、好ましくは50モル%以上、より好ましくは60モル%以上、さらに好ましくは70モル%以上である。また、架橋性の観点から、好ましくは95モル%以下、より好ましくは90モル%以下、さらに好ましくは85モル%以下である。
なお、水素添加率は、1H-NMRを測定して得られたスペクトルの不飽和結合部のスペクトル減少率から算出することができる。
【0022】
(ランダム共重合体の芳香族ビニル単量体単位の含有量)
本実施形態のランダム共重合体100質量%中、芳香族ビニル単量体単位の含有量は、タイヤに加工する場合のウェットグリップ性能の観点から、好ましくは10質量%以上、より好ましくは20質量%以上、さらに好ましくは30質量%以上であり、また、低燃費性の観点から、好ましくは60質量%以下、より好ましくは50質量%以下である。
なお、芳香族ビニル単量体単位の含有量は、後述する実施例に記載の方法により測定できる。
【0023】
(ランダム共重合体の重量平均分子量)
本実施形態のランダム共重合体の重量平均分子量(Mw)は、30万以上80万以下であることが好ましい。
本実施形態のランダム共重合体をタイヤ組成物に用いた際の耐摩耗性の観点から、好ましくは30万以上、より好ましくは40万以上、さらに好ましくは45万以上であり、ムーニー粘度の観点から、好ましくは80万以下、より好ましくは70万以下、さらに好ましくは60万以下、さらにより好ましくは55万以下である。
ランダム共重合体の重量平均分子量は、重合工程における単量体添加量、重合時間、重合温度等の重合条件を調整することにより、上記数値範囲に制御できる。
【0024】
(ランダム共重合体の分子量分布)
本実施形態のランダム共重合体の分子量分布(Mw/Mn)は、1.30以上1.75以下である。
ランダム共重合体の分子得分布は、ランダム共重合体の重合溶液をスチームストリッピングする際に生成するクラムの大きさに影響を及ぼす。
分子量分布が狭い場合、粘着性の強い低分子量成分の割合が少ないためクラムが細かくなり、スチームストリッピング工程に続く押出機による脱水工程で十分なせん断圧力がかからず脱水効率が低下する。また分子量分布が広すぎる場合、粘着性の強い低分子成分の割合が多くなり、その結果クラムが大きくなりすぎる。クラムが大きすぎる場合はホットボックスでの乾燥効率が悪化し、結果としてクラムの乾燥効率が悪化する。なお、粘着性の強い低分子成分のみに着目するのであれば、平均分子量が小さい場合にも低分子成分量が多くなるが、その場合、クラムが大きくなるものの、脱水効率が低下する傾向にあるため、生産効率の向上の観点からは、全体的な分子量を小さくするよりも、分子量分布を制御する方が適切である。
上述したことから、本実施形態のランダム共重合体の分子量分布は、スチームストリッピングした際に生成するクラムの平均粒径を大きくする観点から、1.30以上とし、好ましくは1.40以上、より好ましくは1.50以上であるものとする。
またクラムの平均粒径が大きくなりすぎることを防ぐ観点から、本実施形態のランダム共重合体の分子量分布は、1.75以下とし、1.70以下が好ましく、1.65以下がより好ましい。
【0025】
連続重合プロセスにおいて、ランダム共重合体の分子量分布を制御する手段としては、重合反応器の縦横比(L/D)を調整する方法、及び重合温度を調整する方法が挙げられる。
分子量分布を1.75以下に制御するために、重合反応器のL/Dは4.0以上とすることが好ましく、より好ましくは6.0以上であり、さらに好ましくは7.0以上である。
また同じく分子量分布を1.75以下に制御する観点から、重合反応器の温度は80℃以下が好ましく、より好ましくは75℃以下、さらに好ましくは72℃以下である。
他方で分子量分布を1.3以上に制御する観点から、連続重合プロセスにおいて、L/Dを1.0以上とすることが好ましく、2.0以上がより好ましく、3.0以上がさらに好ましい。
また分子量分布を制御するためには、定量的に重合が進行し副反応が起こりにくいモノマーを選択することが好ましい。副反応が起こりにくく定量的にアニオン重合を進行させ、分子量分布を制御する観点から共役ジエン化合物は1,3-ブタジエン、イソプレンが好ましい。
同じく分子量分布制御の観点から、芳香族ビニル化合物は、スチレン、4-メチルスチレンが好ましい。
なお、重量平均分子量(Mw)、数平均分子量(Mn)は、後述の実施例に記載の方法により測定される。
【0026】
(ランダム共重合体のガラス転移温度)
本実施形態のランダム共重合体のガラス転移温度(Tg)は、ブレーキ性能の観点から、-70℃以上が好ましく、-50℃以上がより好ましく、-40℃以上がさらに好ましく、-30℃以上がさらにより好ましい。また、タイヤの低温特性の観点から、-10℃以下が好ましく、-15℃以下がより好ましく、-20℃以下がさらに好ましく、-50℃以下がさらにより好ましい。
ランダム共重合体のTgは、芳香族ビニル単量体単位と共役ジエン単量体単位の組成比、ヨウ素価を調整することにより制御できる。
具体的には、芳香族ビニル単量体単位の組成比を増やすことによりランダム共重合体のTgを上げることができ、共役ジエン単量体単位中の1、2-結合量を増やすことによりランダム共重合体のTgを上げることができる。より具体的には、ランダム共重合体中の芳香族ビニル単量体単位の含有量が20質量%の場合、ヨウ素価を38~94程度にすることにより、Tgを-50℃以上にすることができる。他方、ヨウ素価を110に設定する場合は、芳香族ビニル単量体単位の含有量を20質量%以上にすることにより、Tgを-50℃以上にすることができる。
なお、ガラス転移温度(Tg)は、後述の実施例に記載する方法により測定できる。
【0027】
〔ランダム共重合体の製造方法〕
本実施形態のランダム共重合体は、重合工程、変性工程、水素添加工程を経て製造することができる。
【0028】
(重合工程)
ランダム共重合体の重合方法については特に制限はなく、溶液重合法、気相重合法、バルク重合法のいずれも用いることができるが、商業生産上の観点で、特に溶液重合法が好ましい。
また、重合形式は、本実施形態では連続式が好ましい。
溶液重合法を用いた場合には、溶液中のモノマー濃度は、5質量%以上が好ましく、10質量%以上がより好ましい。溶液中のモノマー濃度が5質量%以上であることにより、得られるランダム共重合体の量が十分なものとなり、コストの観点から好ましい。また、溶液中のモノマー濃度は50質量%以下が好ましく、30質量%以下がより好ましい。溶液中のモノマー濃度が50質量%以下であると、溶液粘度が高くなりすぎことを防止でき、撹拌が容易に行われ、重合工程が実施しやすくなる傾向にある。
【0029】
<重合開始剤>
重合工程でアニオン重合を行う場合、重合開始剤としては特に制限はないが、有機リチウム化合物が好ましく用いられる。
有機リチウム化合物としては、炭素数2~20のアルキル基を有するものが好ましく、例えば、エチルリチウム、n-プロピルリチウム、イソプロピルリチウム、n-ブチルリチウム、sec-ブチルリチウム、tert-ブチルリチウム、tert-オクチルリチウム、n-デシルリチウム、フェニルリチウム、2-ナフチルリチウム、2-ブチルーフェニルリチウム、4-フェニル-ブチルリチウム、シクロヘキシルリチウム、シクロペンチルリチウム、ジイソプロペニルベンゼンとブチルリチウムとの反応生成物等が挙げられる。これらの中で、入手容易性、安全性等の観点からn-ブチルリチウム、sec-ブチルリチウムが好ましい。
重合工程で配位重合を行う場合、重合開始剤としては、例えば、特開2020-45500公報に記載の重合触媒組成物を使用することが好ましい。
【0030】
<重合の方法>
重合開始剤を用いてアニオン重合、または、配位重合し、ランダム共重合体を製造する方法としては、特に制限はなく、従来公知の方法を用いることができる。
具体的には、反応に不活性な有機溶剤、例えば脂肪族、脂環族、芳香族炭化水素化合物等の炭化水素系溶剤中において、例えばブチルリチウムを重合開始剤とし、必要に応じて、後述するランダマイザーの存在下で、スチレン、1,3-ブタジエン、エチレン等を重合させることにより、目的のランダム共重合体を得ることができる。
【0031】
<炭化水素系溶剤>
炭化水素系溶剤としては、炭素数3~8のものが好ましく、以下に限定されるものではないが、例えば、プロパン、n-ブタン、イソブタン、n-ペンタン、イソペンタン、n-ヘキサン、シクロヘキサン、プロペン、1-ブテン、イソブテン、トランス-2-ブテン、シス-2-ブテン、1-ペンテン、2-ペンテン、1-ヘキセン、2-ヘキセン、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン等が挙げられる。
これらは1種単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
【0032】
<アニオン重合におけるランダマイザー>
前記ランダマイザーとは、共重合体中の共役ジエン部分のミクロ構造制御、例えばブタジエンにおける1,2-結合、イソプレンにおける3,4-結合の増加等、あるいは共重合体におけるモノマー単位の組成分布の制御、例えばスチレンブタジエン共重合体におけるスチレン単位、ブタジエン単位のランダム化等の作用を有する化合物のことである。
このランダマイザーとしては、特に制限はなく、従来ランダマイザーとして一般に使用されている公知の化合物の中から任意のものを用いることができる。以下に限定されるものではないが、例えば、ジメトキシベンゼン、テトラヒドロフラン、ジメトキシエタン、ジエチレングリコールジブチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、2,2ージ(2ーテトラヒドロフリル)プロパン、トリエチルアミン、ピリジン、N-メチルモルホリン、N,N,N’,N’-テトラメチルエチレンジアミン、1,2-ジピペリジノエタン等のエーテル類及び第三級アミン類等が挙げられる。また、カリウム-t-アミレート、カリウム-t-ブトキシド等のカリウム塩類、ナトリウム-t-アミレート等のナトリウム塩類も用いることができる。
これらのランダマイザーは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
また、ランダマイザーの使用量は、重合開始剤である有機リチウム化合物1モル当たり、0.01モル当量以上が好ましく、0.05モル当量以上がより好ましい。ランダマイザーの使用量が0.01モル当量以上とすることにより、添加効果が得られ、ランダム化しやすくなる傾向にある。また、ランダマイザーの使用量は、有機リチウム化合物1モル当たり1000モル当量以下が好ましく、500モル当量以下がより好ましい。ランダマイザーの使用量が1000モル当量以下であることにより、モノマーの反応速度が大きく変化することを防止でき、ランダム化しやすくなる傾向にある。
【0033】
<反応温度>
重合の際の反応温度は、好適に反応が進行する限り特に限定されるものではないが、-10℃~100℃が好ましく、25℃~70℃がより好ましい。
【0034】
(変性工程)
重合工程により得られたランダム共重合体の活性末端と、シリカと相互作用する官能基を有する化合物とを反応させる工程により、ランダム共重合体の重合終了末端に、シリカと相互作用する官能基を導入することができる。これにより、重合終了末端が変性されたランダム共重合体が得られる。
変性反応(以下、末端変性反応ともいう。)に用いるランダム共重合体は、活性末端を有している限り、重合開始末端が未変性のものでもよいし、変性されたものでもよい。
また、変性工程に用いる化合物としては、シリカと相互作用する官能基を有し、かつ重合活性末端と反応し得る化合物であれば特に限定されないが、例えば、スズ原子又は窒素原子を含有する末端変性剤を用いることが好ましく、窒素原子を含有する末端変性剤を用いることがより好ましい。
【0035】
変性工程は、分子量の増加を伴うカップリング工程も含まれる。具体的には複数個の反応点を有するカップリング剤と活性末端を反応させることにより枝分かれ構造を有するランダム共重合体を得ることができる。
窒素を有するカップリング剤は変性剤と称されるように、変性剤としてカップリング機能を有する化合物を選択することにより、変性工程によってカップリング効果が得られる。
分子量の増加を伴う変性反応では、変性率(カップリング率)が分子量分布に影響を及ぼす。したがって、分子量分布を1.75以下に制御する観点から、変性率は60%以上が好ましく、70%以上がより好ましく、75%以上がさらに好ましい。
複数の官能基を有する変性剤を採用する場合、カップリングによって多分岐の重合体が生成するが、官能基の数によらず、変性率が高ければ分子量分布はシャープさを保ったままシフトする傾向にある。
変性剤の構造は分子量分布に与える影響が少ないことから、製造するランダム共重合体に期待する機能などに応じて、選択することが可能である。
なお、変性率は、後述の実施例に記載の方法により測定できる。
【0036】
窒素原子を含有する末端変性剤としては、重合生産性や高い変性率の観点から、イソシアナート化合物、イソチオシアナート化合物、イソシアヌル酸誘導体、窒素基含有カルボニル化合物、窒素基含有ビニル化合物、窒素基含有エポキシ化合物、窒素基含有アルコキシシラン化合物等が好ましいものとして挙げられる。
これらの窒素原子を含有する末端変性剤としては、重合生産性や高い変性率やタイヤにした時の引張強度の観点で、窒素基含有アルコキシシラン化合物がより好ましい。
【0037】
窒素基含有アルコキシシラン化合物としては、以下に限定されるものではないが、例えば、2,2-ジメトキシ-1-(3-トリメトキシシリルプロピル)-1-アザ-2-シラシクロペンタン、2,2-ジエトキシ-1-(3-トリエトキシシリルプロピル)-1-アザ-2-シラシクロペンタン、2,2-ジメトキシ-1-(4-トリメトキシシリルブチル)-1-アザ-2-シラシクロヘキサン、2,2-ジメトキシ-1-(5-トリメトキシシリルペンチル)-1-アザ-2-シラシクロヘプタン、2,2-ジメトキシ-1-(3-ジメトキシメチルシリルプロピル)-1-アザ-2-シラシクロペンタン、2,2-ジエトキシ-1-(3-ジエトキシエチルシリルプロピル)-1-アザ-2-シラシクロペンタン、2-メトキシ,2-メチル-1-(3-トリメトキシシリルプロピル)-1-アザ-2-シラシクロペンタン、2-エトキシ,2-エチル-1-(3-トリエトキシシリルプロピル)-1-アザ-2-シラシクロペンタン、2-メトキシ,2-メチル-1-(3-ジメトキシメチルシリルプロピル)-1-アザ-2-シラシクロペンタン、及び2-エトキシ,2-エチル-1-(3-ジエトキシエチルシリルプロピル)-1-アザ-2-シラシクロペンタン、トリス(3-トリメトキシシリルプロピル)アミン、トリス(3-メチルジメトキシシリルプロピル)アミン、トリス(3-トリエトキシシリルプロピル)アミン、トリス(3-メチルジエトキシシリルプロピル)アミン、トリス(トリメトキシシリルメチル)アミン、トリス(2-トリメトキシシリルエチル)アミン、及びトリス(4-トリメトキシシリルブチル)アミン、テトラキス[3-(2,2-ジメトキシ-1-アザ-2-シラシクロペンタン)プロピル]-1,3-プロパンジアミン、テトラキス(3-トリメトキシシリルプロピル)-1,3-プロパンジアミン、テトラキス(3-トリメトキシシリルプロピル)-1,3-ビスアミノメチルシクロヘキサン、及びN1-(3-(ビス(3-(トリメトキシシリル)プロピル)アミノ)プロピル)-N1-メチル-N3-(3-(メチル(3-(トリメトキシシリル)プロピル)アミノ)プロピル)-N3-(3-(トリメトキシシリル)プロピル)-1,3-プロパンジアミンが挙げられる。
【0038】
末端変性反応は、例えば、溶液反応として行うことができる。この溶液反応は、重合工程における重合反応の終了後の未反応モノマーを含む溶液を用いて行ってもよく、当該溶液に含まれる共重合体を単離し、シクロヘキサン等の適当な溶媒に溶解した上で行ってもよい。また、重合形式が連続式のため、末端変性反応も連続式が好ましい。
このとき、末端変性剤の添加方法は特に制限されず、一括して添加する方法、分割して添加する方法、連続的に添加する方法等が挙げられる。
末端変性反応に使用する化合物の量は、反応に使用する化合物の種類に応じて適宜設定すればよいが、重合開始剤が有する重合反応に関与する金属原子に対し、好ましくは0.1モル当量以上、より好ましくは0.3モル当量以上である。0.1モル当量以上とすることにより、変性反応を充分に進行させることができ、シリカの分散性を好適に改良することができる。
末端変性反応の温度は、通常、前記重合反応の温度と同じであり、-20~150℃であることが好ましく、0~120℃であることがより好ましく、20~100℃であることがさらに好ましい。変性反応の温度が低いと、変性共重合体の粘度が上昇する傾向にある。
一方、変性反応の温度が高いと、重合活性末端が失活しやすくなる。変性反応の反応時間は、好ましくは1分~5時間であり、より好ましくは2分~1時間である。
【0039】
(反応停止工程)
アニオン重合は、公知の反応停止剤の添加により、停止させることができる。そのような反応停止剤としては、以下に限定されるものではないが、例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール等のアルコール、酢酸等の活性プロトンを有する極性溶媒、及びこれらの混液、又はそれらの極性溶媒とヘキサン、シクロヘキサン等の無極性溶媒との混液が挙げられる。
反応停止剤の添加量は、通常、アニオン重合開始剤に対し、同モル量もしくは2倍モル量程度で充分である。
【0040】
(水素添加工程)
本実施形態のランダム共重合体を水添共重合体とする場合、水素添加の方法、反応条件については特に限定はなく、公知の方法、公知の条件で水素添加すればよい。
通常は、20~150℃、0.1~10MPaの水素加圧下、水添触媒の存在下で実施される。
なお、水素添加率は、水添触媒の量、水添反応時の水素圧力、反応時間等を調整することにより、制御できる。
水添触媒として、通常は、元素周期表4~11族金属のいずれかを含む化合物を用いることができる。以下に限定されるものではないが、例えば、Ti、V、Co、Ni、Zr、Ru、Rh、Pd、Hf、Re、Pt原子を含む化合物を水添触媒として用いることができる。より具体的は、Ti、Zr、Hf、Co、Ni、Pd、Pt、Ru、Rh、Re等のメタロセン化合物;Pd、Ni、Pt、Rh、Ru等の金属をカーボン、シリカ、アルミナ、ケイソウ土等の担体に担持させた担持型不均一系触媒;Ni、Co等の金属元素の有機塩又はアセチルアセトン塩と有機アルミニウム等の還元剤とを組み合わせた均一系チーグラー型触媒;Ru、Rh等の有機金属化合物又は錯体;水素を吸蔵させたフラーレンやカーボンナノチューブ等が挙げられる。
これらのうち、Ti、Zr、Hf、Co、Niのいずれかを含むメタロセン化合物は、不活性有機溶媒中、均一系で水添反応できる観点ぁら好ましい。さらに、Ti、Zr、Hfのいずれかを含むメタロセン化合物が好ましい。
水添触媒は、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0041】
本実施形態のランダム共重合体を得る好ましい製造方法は、溶液重合し、得られた重合体溶液をそのまま用いて必要に応じて変性処理を行い、次いで必要に応じて水添工程に供することである。
本実施形態のランダム共重合体は、上記で得られた重合体溶液から、脱溶剤し、重合体を単離して得られる。ランダム共重合体を単離する方法として、例えば、スチームストリッピング等の公知の脱溶媒方法、及び脱水押出機、乾燥押出機、コンベアを使用した熱処理等の乾燥操作によって単離する方法等が挙げられる。
【0042】
(クラムの製造方法)
本実施形態のランダム共重合体は、重合溶液から脱溶剤し、クラムとして単離することができる。
具体的には、スチームストリッピング工程で脱溶剤を行い、クラムを得る。
得られるクラムの粒径は、脱溶剤工程に続く脱水押出行程、乾燥押出工程、コンベア工程での乾燥能力に影響を及ぼす。クラムの平均粒径が大きすぎると乾燥コンベアでの脱水効率が下がり、製品ベール中の含水率が上がってしまう。一方において、クラム平均粒径が細かすぎる場合は、脱水押出機や乾燥押出機で十分なせん断圧力がかからず、脱水効率が下がり製品ベール中の含水率が上がってしまう。
クラムの粒径が大きくなりすぎることを防ぐ観点から、スチームストリッピングの温度は70℃以上が好ましく、80℃以上がより好ましく、90℃以上がさらに好ましい。
またスチーム使用量の観点から、スチームストリッピングの温度は110℃以下が好ましく、100℃以下がより好ましく、95℃以下がさらに好ましい。
【0043】
<クラムの粒径>
クラムの平均粒径は、クラムの粒度分布で決定することが好ましい。特にクラムの粒径の中央値であるメディアン径(D50)が乾燥工程には重要な値となる。
クラムの粒径には分布があり、クラム全体の脱水効率には粒径の大きいクラムと粒径の細かいクラムの存在比率が大きく影響する。そのため中央値であるD50の数値が、クラム全体の乾燥効率の指標になる。
クラムのD50は、上述の通り、ランダム共重合体の分子量分布を1.30~1.75に調整することで制御することができる。
クラムの脱水押出機での脱水効率の観点から、本実施形態のランダム共重合体のクラムのメディアン径(D50)は、6.0mm以上であることが好ましく、8.0mm以上であることがより好ましく、さらに好ましくは8.5mm以上、さらにより好ましくは9.0mm以上である。
クラムの乾燥コンベアでの脱水効率の観点から、本実施形態のランダム共重合体のクラムのD50は、12.0mm以下が好ましく、より好ましくは11mm以下、さらに好ましくは10mm以下である。
クラムのD50は後述の実施例に記載の方法により測定できる。
【0044】
〔ゴム組成物〕
本実施形態のランダム共重合体と、当該ランダム共重合体以外のその他のゴム成分、可塑剤成分、充填剤成分、必要に応じてその他の添加剤等と組み合わせることにより、ゴム組成物が得られる。
<その他のゴム成分>
前記ゴム組成物は、本実施形態のランダム共重合体以外のゴム成分として、公知のポリマーブレンドを含んでもよい。上記ポリマーブレンド以外にも、一般的なタイヤ用ゴム組成物に汎用されているものを使用可能であり、例えば、天然ゴム(NR)、イソプレンゴム(IR)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、ブタジエンゴム(BR)等が挙げられる。
これらは、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記ゴム組成物は、充填剤成分の含有量(A)、可塑剤成分の含有量(B)は、特に限定されず、ゴム組成物全体を100質量%として、充填剤成分の含有量は、20~50質量%が好ましく、可塑剤成分の含有量は、10~40質量%が好ましい。
【0045】
<充填剤成分>
充填剤成分は、ゴムの補強を目的にゴム組成物に配合されるものであり、以下に限定されるものではないが、例えば、シリカ、炭酸カルシウム、雲母、水酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム、クレー、タルク、アルミナ、酸化チタン、マイカ等の白色充填剤(無機充填剤)や、カーボンブラック等が挙げられる。これらは、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。特に、シリカ、カーボンブラックが好ましく、これらの併用がより好ましい。
【0046】
シリカとしては、特に限定されず、例えば、乾式法シリカ(無水シリカ)、湿式法シリカ(含水シリカ)等が挙げられるが、シラノール基が多いという理由から、湿式法シリカが好ましい。
シリカの窒素吸着比表面積(N2SA)は、耐摩耗性の観点から、好ましくは60m2/g以上、より好ましくは120m2/g以上であり、低燃費性の観点から、好ましくは300m2/g以下、より好ましくは200m2/g以下である。
なお、シリカの窒素吸着比表面積は、ASTM D3037-81に準じてBET法で測定される値である。
シリカの含有量は、低燃費性の観点から、本実施形態のランダム共重合体及びその他のゴム成分を含むゴム成分100質量部に対して、好ましくは30質量部以上、より好ましくは50質量部以上であり、また、ムーニー粘度の観点から、好ましくは120質量部以下、より好ましくは100質量部以下である。
【0047】
カーボンブラックとしては、例えば、SAF、ISAF、HAF、MAF、FEF、SRF、GPF、APF、FF、CF、SCF及びECFのようなファーネスブラック(ファーネスカーボンブラック);アセチレンブラック(アセチレンカーボンブラック);FT及びMTのようなサーマルブラック(サーマルカーボンブラック);EPC、MPC及びCCのようなチャンネルブラック(チャンネルカーボンブラック);グラファイト等が挙げられる。これらは1種または2種以上組み合わせて用いることができる。
カーボンブラックの窒素吸着比表面積(N2SA)は、通常5~200m2/gであり、耐摩耗性の観点から、好ましくは50m2/g以上、より好ましくは80m2/g以上であり、また、低燃費性の観点から、好ましくは150m2/g以下、より好ましくは120m2/g以下である。
また、カーボンブラックのジブチルフタレート(DBP)吸収量は、通常5~300mL/100gであり、下限は80mL/100g、上限は180mL/100gであることが好ましい。
当該窒素吸着比表面積は、ASTM D4820-93に従って測定でき、該DBP吸収量は、ASTM D2414-93に従って測定できる。
カーボンブラックの含有量は、耐摩耗性の観点から、本実施形態のランダム共重合体及びその他のゴム成分を含むゴム成分100質量部に対して、好ましくは1質量部以上、より好ましくは3質量部以上であり、また、低燃費性の観点から、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは30質量部以下、より好ましくは15質量部以下である。
【0048】
シリカは、シランカップリング剤と併用することが好ましい。シランカップリング剤としては、従来から公知のものを用いることができる。以下に限定されるものではないが、例えば、ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(2-トリエトキシシリルエチル)テトラスルフィド、ビス(3-トリメトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(2-トリメトキシシリルエチル)テトラスルフィド、ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)トリスルフィド、ビス(3-トリメトキシシリルプロピル)トリスルフィド、ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィド、ビス(3-トリメトキシシリルプロピル)ジスルフィド、3-トリメトキシシリルプロピル-N,N-ジメチルチオカルバモイルテトラスルフィド、3-トリメトキシシリルプロピルベンゾチアゾリルテトラスルフィド、3-トリエトキシシリルプロピルベンゾチアゾールテトラスルフィド、3-トリエトキシシリルプロピルメタクリレートモノスルフィド、3-トリメトキシシリルプロピルメタクリレートモノスルフィド等のスルフィド系、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリエトキシシラン、2-メルカプトエチルトリメトキシシラン、2-メルカプトエチルトリエトキシシラン等のメルカプト系、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン等のビニル系、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-(2-アミノエチル)アミノプロピルトリエトキシシラン、3-(2-アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン等のアミノ系、γ-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン等のグリシドキシ系、3-ニトロプロピルトリメトキシシラン、3-ニトロプロピルトリエトキシシラン等のニトロ系、3-クロロプロピルトリメトキシシラン、3-クロロプロピルトリエトキシシラン、2-クロロエチルトリメトキシシラン、2-クロロエチルトリエトキシシラン等のクロロ系が挙げられる。
なお、前記のシランカップリング剤は、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。特に、シランカップリング剤によるカップリング効果、加工性、コストの観点から、スルフィド系シランカップリング剤が好ましく、ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィドがより好ましい。
シランカップリング剤の含有量は、低燃費性、耐摩耗性の観点から、シリカ100質量部に対して、好ましくは3質量部以上、より好ましくは5質量部以上であり、また、ムーニー粘度の観点から、シリカ100質量部に対して、好ましくは15質量部以下、より好ましくは10質量部以下である。
【0049】
<可塑剤成分>
可塑剤成分としては、以下に限定されるものではないが、例えば、オイル、樹脂、老化防止剤、ワックス、ステアリン酸、加硫促進剤等が挙げられる。これらは、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
オイルとしては、例えば、アロマチック系鉱物油(粘度比重恒数(V.G.C.値)0.900~1.049)、ナフテン系鉱物油(V.G.C.値0.850~0.899)、パラフィン系鉱物油(V.G.C.値0.790~0.849)等が挙げられる。伸展油の多環芳香族含有量は、好ましくは3質量%未満であり、より好ましくは1質量%未満である。当該多環芳香族含有量は、英国石油学会346/92法に従って測定される。また、伸展油の芳香族化合物含有量(CA)は、好ましくは20質量%以上である。これらの伸展油は、2種以上組み合わせて用いてもよい。
オイルの含有量は、ゴム組成物のムーニー粘度の観点から、本実施形態のランダム共重合体及びその他のゴム成分を含むゴム成分100質量部に対して、好ましくは5質量部以上、より好ましくは10質量部以上であり、また、低燃費性の観点から、本実施形態のランダム共重合体及びその他のゴム成分を含むゴム成分100質量部に対して、好ましくは50質量部以下、より好ましくは40質量部以下である。
樹脂としては、以下に限定されるものではないが、例えば、C5系石油樹脂、C9系石油樹脂、クマロンインデン樹脂、インデン樹脂、フェノール系樹脂、α-メチルスチレン及び/又はスチレンの共重合体等が挙げられる。
これらは、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。特に、クマロンインデン樹脂、フェノール系樹脂(特に、テルペンフェノール樹脂)、α-メチルスチレン及び/又はスチレンの共重合体が好ましく、α-メチルスチレン及びスチレンの共重合体がより好ましい。
樹脂の含有量は、ゴム組成物のウェットグリップ性能の観点から、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは1質量部以上、より好ましくは3質量部以上であり、また、低燃費性の観点から、本実施形態のランダム共重合体及びその他のゴム成分を含むゴム成分100質量部に対して、好ましくは20質量部以下、より好ましくは10質量部以下である。
【0050】
<添加剤>
ゴム組成物には、上記の他、老化防止剤、ワックス、ステアリン酸、加硫促進剤等の添加剤を配合してもよい。
老化防止剤としては、以下に限定されるものではないが、例えば、フェニル-α-ナフチルアミン等のナフチルアミン系老化防止剤;オクチル化ジフェニルアミン、4,4′-ビス(α,α′-ジメチルベンジル)ジフェニルアミン等のジフェニルアミン系老化防止剤;N-フェニル-N’-イソプロピル-p-フェニレンジアミン、N-(1,3-ジメチルブチル)-N′-フェニル-p-フェニレンジアミン、N,N′-ジ-2-ナフチル-p-フェニレンジアミン等のp-フェニレンジアミン系老化防止剤;2,2,4-トリメチル-1,2-ジヒドロキノリンの重合物等のキノリン系老化防止剤;2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェノール、スチレン化フェノール等のモノフェノール系老化防止剤;テトラキス-[メチレン-3-(3′,5′-ジ-t-ブチル-4′-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン等のビス、トリス、ポリフェノール系老化防止剤等が挙げられる。これらは1種単独で用いてもよいし、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。特に、p-フェニレンジアミン系老化防止剤が好ましく、N-フェニル-N’-イソプロピル-p-フェニレンジアミンがより好ましい。老化防止剤の含有量は、本実施形態のランダム共重合体及びその他のゴム成分を含むゴム成分100質量部に対して、好ましくは0.1~5質量部、より好ましくは0.2~4質量部である。
ワックスとしては、以下に限定されるものではないが、例えば、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス等の石油系ワックス;植物系ワックス、動物系ワックス等の天然系ワックス;エチレン、プロピレン等の重合物等の合成ワックス等が挙げられる。
これらは、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。特に、石油系ワックスが好ましく、パラフィンワックスがより好ましい。ワックスの含有量は、本実施形態のランダム共重合体及びその他のゴム成分を含むゴム成分100質量部に対して、好ましくは0.1~5質量部、より好ましくは0.2~4質量部である。
ステアリン酸としては、従来公知のものを使用でき、例えば、日油(株)、NOF社、花王(株)、和光純薬工業(株)、千葉脂肪酸(株)等の製品を使用できる。これらは、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。ステアリン酸の含有量は、本実施形態のランダム共重合体及びその他のゴム成分を含むゴム成分100質量部に対して、好ましくは0.1~5質量部、より好ましくは0.2~4質量部である。
加硫促進剤としては、以下に限定されるものではないが、例えば、2-メルカプトベンゾチアゾール、ジベンゾチアジルジサルファイド、N-シクロヘキシル-2-ベンゾチアジルスルフェンアミド等のチアゾール系加硫促進剤;テトラメチルチウラムモノスルフィド、テトラメチルチウラムジスルフィド等のチウラム系加硫促進剤;N-シクロヘキシル-2-ベンゾチアゾールスルフェンアミド、N-t-ブチル-2-ベンゾチアゾールスルフェンアミド、N-オキシエチレン-2-ベンゾチアゾールスルフェンアミド、N-オキシエチレン-2-ベンゾチアゾールスルフェンアミド、N,N’-ジイソプロピル-2-ベンゾチアゾールスルフェンアミド等のスルフェンアミド系加硫促進剤;ジフェニルグアニジン、ジオルトトリルグアニジン、オルトトリルビグアニジン等のグアニジン系加硫促進剤が挙げられる。これらは、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。特に、本発明の効果がより好適に得られるという理由から、スルフェンアミド系加硫促進剤が好ましく、N-シクロヘキシル-2-ベンゾチアゾールスルフェンアミドがより好ましい。また、更にグアニジン系加硫促進剤を併用することも好ましい。加硫促進剤の含有量は、本実施形態のランダム共重合体及びその他のゴム成分を含むゴム成分100質量部に対して、好ましくは0.1~5質量部、より好ましくは0.2~4質量部である。
【0051】
<加硫剤、加硫活性化剤、有機過酸化物、加工助剤、老化防止剤>
前記ゴム組成物には、前記成分以外にも、硫黄等の加硫剤;酸化亜鉛等の加硫活性化剤;有機過酸化物;滑剤等の加工助剤;老化防止剤等の従来ゴム工業で使用される配合剤を用いることができる。
加硫剤としては、特に限定されないが、硫黄を好適に使用できる。硫黄の含有量は、本実施形態のランダム共重合体及びその他のゴム成分を含むゴム成分100質量部に対して、好ましくは0.5~5質量部、より好ましくは1~3質量部である。これにより、本発明の効果がより好適に得られる。
【0052】
(ゴム組成物の製造方法)
前記ゴム組成物は、一般的な方法で製造される。すなわち、バンバリーミキサーやニーダー、オープンロール等で前記各成分を混練りし、その後加硫する方法等により製造できる。
【0053】
(ゴム組成物の用途)
前記本実施形態のランダム共重合体を含有するゴム組成物は、タイヤの各部材(トレッド、サイドウォール、カーカス、ベルト、ビード、クリンチ、チェーファー等)に使用でき、特に、トレッドとして好適に用いられる。2層構造のトレッドの場合には、表面層(キャップトレッド)及び内面層(ベーストレッド)から構成される。
多層構造のトレッドは、シート状にしたものを、所定の形状に貼り合わせる方法や、2本以上の押出し機に装入して押出し機のヘッド出口で2層以上に形成する方法により製造できる。
【0054】
<空気入りタイヤ>
本実施形態のランダム共重合体を含有するゴム組成物は、空気入りタイヤの原料として好適である。空気入りタイヤは、前記ゴム組成物を用いて、公知の方法により製造できる。すなわち、ゴム成分、可塑剤成分、充填剤成分、及びその他必要に応じて各種の添加剤を配合し、未加硫の段階でトレッド等の各タイヤ部材の形状に合わせて押し出し加工し、他のタイヤ部材とともに、タイヤ成型機上にて成形することにより、未加硫タイヤが形成でき、この未加硫タイヤを加硫機中で加熱加圧することで、空気入りタイヤが得られる。
本実施形態の空気入りタイヤは、乗用車用タイヤ、トラック・バス用タイヤ、二輪車用タイヤ、競技用タイヤ等として好適に用いられ、特に乗用車用タイヤとして好適に用いられる。
【実施例】
【0055】
以下、具体的な実施例及び比較例を挙げて、本実施形態を更に詳しく説明するが、本実施形態は以下の実施例及び比較例により何ら限定されるものではない。
実施例及び比較例における各種の物性は下記に示す方法により測定した。
【0056】
(ランダム共重合体の重量平均分子量(Mw)、分子量分布)
ポリスチレン系ゲルを充填剤としたカラムを3本連結したGPC測定装置を使用して、クロマトグラムを測定し、標準ポリスチレンを使用した検量線に基づいて、ランダム共重合体の重量平均分子量(Mw)、及び分子量分布(Mw/Mn)を求めた。
溶離液は5mmol/Lのトリエチルアミン入りTHF(テトラヒドロフラン)を使用した。
カラムは、ガードカラム:東ソー社製の商品名「TSKguardcolumn SuperH-H」、カラム:東ソー社製の商品名「TSKgel SuperH5000」、「TSKgel SuperH6000」、「TSKgel SuperH7000」を使用した。
オーブン温度40℃、THF流量0.6mL/分の条件で、RI検出器(東ソー社製の商品名「HLC8020」)を用いた。
測定用の試料10mgを20mLのTHFに溶解して測定溶液とし、測定溶液20μLをGPC測定装置に注入して測定した。
【0057】
(ランダム共重合体の分子量分布の単峰性確認)
GPC曲線が単峰性とは、ランダム共重合体をGPCにより分析した場合に、溶出時間を変化量とした際の、溶出曲線の接線の傾きが一度のみ0°を示すことを意味する。
後述する製造例で得られたランダム共重合体の溶出曲線を微分した微分溶出曲線を描き、単峰性の確認を行った。
【0058】
(ランダム共重合体の変性率)
ランダム共重合体を測定用試料として、シリカ系ゲルを充填剤としたGPCカラムに、変性した塩基性重合体成分が吸着する特性を応用することにより、クロマトグラムを測定した。
前記測定用試料及び低分子量内部標準ポリスチレンを含む測定用試料溶液を、ポリスチレン系カラムで測定したクロマトグラムと、シリカ系カラムで測定したクロマトグラムと、の差分よりシリカ系カラムへの吸着量を測定し、変性率を求めた。
具体的には、以下に示すとおりである。
測定用試料溶液の調製:
前記測定用試料10mg及び標準ポリスチレン5mgを20mLのTHF(テトラヒドロフラン)に溶解させて、測定用試料溶液とした。
ポリスチレン系カラムを用いたGPC測定条件:
東ソー社製の商品名「HLC-8320GPC」を使用して、THFを溶離液として用い、測定用試料溶液10μLを装置に注入し、カラムオーブン温度40℃、THF流量0.35mL/分の条件で、RI検出器を用いてクロマトグラムを得た。カラムは、東ソー社製の商品名「TSKgel SuperMultiporeHZ-H」を3本接続し、その前段にガードカラムとして東ソー社製の商品名「TSKguardcolumn SuperMP(HZ)-H」を接続して使用した。
シリカ系カラムを用いたGPC測定条件:
東ソー社製の商品名「HLC-8320GPC」を使用して、THFを溶離液として用い、測定用試料溶液50μLを装置に注入し、カラムオーブン温度40℃、THF流量0.5mL/分の条件で、RI検出器を用いてクロマトグラムを得た。カラムは、商品名「Zorbax PSM-1000S」、「PSM-300S」、「PSM-60S」を接続して使用し、その前段にガードカラムとして商品名「DIOL 4.6×12.5mm 5micron」を接続して使用した。
変性率の計算方法:
ポリスチレン系カラムを用いたクロマトグラムのピーク面積の全体を100として、試料のピーク面積をP1、標準ポリスチレンのピーク面積をP2、シリカ系カラムを用いたクロマトグラムのピーク面積の全体を100として、試料のピーク面積をP3、標準ポリスチレンのピーク面積をP4として、下記式より変性率(質量%)を求めた。
変性率(質量%)=[1-(P2×P3)/(P1×P4)]×100
(上記式において、P1+P2=P3+P4=100とする。)
【0059】
(ランダム共重合体の結合スチレン量)
試料100mgを、クロロホルムで100mLにメスアップし、溶解して測定サンプルとした。スチレンのフェニル基による紫外線吸収波長(254nm付近)の吸収量により、試料であるランダム共重合体100質量%に対しての結合スチレン量(質量%)を測定した(測定装置:島津製作所社製の分光光度計「UV-2450」)。
【0060】
(ランダム共重合体のブタジエン部分の1,2-ビニル結合量)
試料であるランダム共重合体50mgを、10mLの二硫化炭素に溶解して測定サンプルとした。溶液セルを用いて、赤外線スペクトルを600~1000cm-1の範囲で測定して、所定の波数における吸光度によりハンプトンの方法(R.R.Hampton,Analytical Chemistry 21,923(1949)に記載の方法)の計算式に従い、ブタジエン部分のミクロ構造、すなわち、1,2-ビニル結合量(mol%)を求めた(測定装置:日本分光社製のフーリエ変換赤外分光光度計「FT-IR230」)。
【0061】
(ランダム共重合体の水添率及びエチレン構造量)
水添反応後のランダム共重合体の溶液に、大量のメタノールを添加することで、水素添加前の共役ジエン系重合体及び水添共役ジエン系重合体を沈殿させて回収した。
次いで、水添共役ジエン系重合体をアセトンで抽出し、水添共役ジエン系重合体を真空乾燥した。これを、1H-NMR測定のサンプルとして用いて、水添率及びエチレン構造量を測定した。
条件を以下に記す。
(測定条件)
測定機器 :JNM-LA400(JEOL製)
溶媒 :重水素化クロロホルム
測定サンプル :ポリマーを水素添加する前後の抜き取り品
サンプル濃度 :50mg/mL
観測周波数 :400MHz
化学シフト基準:TMS(テトラメチルシラン)
パルスディレイ:2.904秒
スキャン回数 :64回
パルス幅 :45°
測定温度 :26℃
【0062】
(ランダム共重合体のヨウ素価)
「JIS K 0070:1992」に記載の方法に準じて、ランダム共重合体のヨウ素価を算出した。
【0063】
(ランダム共重合体のガラス転移温度:Tg)
ランダム共重合体を試料として、ISO 22768:2006に準拠して、マックサイエンス社製の示差走査熱量計「DSC3200S」を用い、ヘリウム50mL/分の流通下、-100℃から20℃/分で昇温しながらDSC曲線を記録し、DSC微分曲線のピークトップ(Inflection point)をガラス転移温度とした。
【0064】
(ランダム共重合体のクラムのサイズ)
<クラムの製造方法>
後述する製造例に記載の方法で得られたランダム共重合体の重合溶液を、スチームストリッピング法により溶媒を除去し、クラムを得た。
当該クラムを得る作業をクラミングと称する。
クラミングの条件を以下に記す。
水温: 90℃
水量: 8kg
攪拌槽: 30Lの攪拌翼付き攪拌槽
攪拌翼:タービン翼2枚
攪拌翼回転速度:500rpm
クラミングに用いる重合体量: 200g
重合体溶液のクラミング槽への添加速度:30g/分
【0065】
<クラムのメディアン径(D50)評価>
クラミングで得られたクラムを金属製網ふるい(JIS Z 8801-1:2000、株式会社 奥谷金属製作所製)を用いて振るい、各目開きに対応するクラムに分離した。
用いた金属製網ふるいの目開きサイズを以下に記す。
22.4mm、19mm、16mm、13.2mm、9.5mm、8mm、6.7mm、4mm、3.35mm、1.7mm
各目開きのふるいに引っ掛かったクラムの質量をそれぞれ測定し、D50を算出した。
【0066】
〔水添触媒の調製〕
後述する実施例及び比較例において、ランダム共重合体を調製する際に用いる水添触媒を、下記の方法により調製した。
窒素置換した反応容器に、乾燥及び精製したシクロヘキサン1リットルを仕込み、ビス(η5-シクロペンタジエニル)チタニウムジクロリド100ミリモルを添加し、十分に攪拌しながらトリメチルアルミニウム200ミリモルを含むn-ヘキサン溶液を添加して、室温にて約3日間反応させ水添触媒を得た。
【0067】
〔製造例1(ランダム共重合体1の製造)〕
内容積が10Lで、内部の高さ(L)と直径(D)との比(L/D)が4.0であり、底部に入口、頂部に出口を有し、攪拌機付槽型反応器である攪拌機及び温度制御用のジャケットを有する槽型圧力容器を重合反応器として2基連結した。
予め水分除去した、1,3-ブタジエンを22.0g/分、スチレンを3.9g/分、n-ヘキサンを175.0g/分の条件で混合した。この混合溶液を反応基の入口に供給する配管の途中に設けたスタティックミキサーにおいて、残存不純物不活性処理用のn-ブチルリチウムを6.0mg/分で添加、混合した後、反応基の底部に連続的に供給した。
更に、極性物質として2,2-ジ(2-テトラヒドロフリル)プロパンを0.34mg/分の速度で、重合開始剤としてn-ブチルリチウムを23.8mg/分の速度で、攪拌機で激しく混合する1基目反応器の底部へ供給し、反応器内温を67℃に保持した。
1基目反応器頂部より重合体溶液を連続的に抜き出し、2基目反応器の底部に連続的に供給し70℃で反応を継続し、さらに2基目の頂部よりスタティックミキサーへ供給した。スタティックミキサーでは、変性剤として2,2-ジメトキシ-1-(3-(トリメトキシシリル)プロピル)-1,2-アザシロリジンを24.2mg/分の速度で加え、成長末端を変性した。
次いで、重合溶液を内容積が20Lで、内部の高さ(L)と直径(D)との比(L/D)が4.0である攪拌機付槽型反応器である攪拌機及び温度制御用のジャケットを有する槽型圧力容器に重合溶液を10L移送し、内温を80℃にして系内に水素を導入した。
次いで、水添触媒を仕込みモノマー量に対してチタン基準で60ppm添加し、水素圧0.8MPa、平均温度85℃で水添反応させた。所定の水素積算流量に到達後、反応液を常温、常圧に戻して反応容器より抜き出し、重合体溶液を得た。
得られた重合体溶液を前述のクラミングの条件でクラミングをすることで、ランダム共重合体1のクラムを得た。クラムを金属製網ふるいで粒径ごとに分離し、各目開きにおける質量分率を測定することでD50を算出した。クラムのD50を算出後、クラムを90℃に加熱した真空乾燥機で2時間乾燥させることでランダム共重合体1の分析サンプルを得た。
ランダム共重合体1の重合処方、物性及び特性を、表1に示す。
【0068】
〔製造例2(ランダム共重合体2の製造)〕
内容積が10Lで、内部の高さ(L)と直径(D)との比(L/D)が7.0であり、底部に入口、頂部に出口を有し、攪拌機付槽型反応器である攪拌機及び温度制御用のジャケットを有する槽型圧力容器を重合反応器として2基連結した。
予め水分除去した、1,3-ブタジエンを22.0g/分、スチレンを3.9g/分、n-ヘキサンを175.0g/分の条件で混合した。この混合溶液を反応基の入口に供給する配管の途中に設けたスタティックミキサーにおいて、残存不純物不活性処理用のn-ブチルリチウムを6.0mg/分で添加、混合した後、反応基の底部に連続的に供給した。
更に、極性物質として2,2-ジ(2-テトラヒドロフリル)プロパンを0.24mg/分の速度で、重合開始剤としてn-ブチルリチウムを19.6mg/分の速度で、攪拌機で激しく混合する1基目反応器の底部へ供給し、反応器内温を67℃に保持した。
1基目反応器頂部より重合体溶液を連続的に抜き出し、2基目反応器の底部に連続的に供給し70℃で反応を継続し、さらに2基目の頂部よりスタティックミキサーへ供給した。スタティックミキサーでは、変性剤として2,2-ジメトキシ-1-(3-(トリメトキシシリル)プロピル)-1,2-アザシロリジンを19.9mg/分の速度で加え、成長末端を変性した。
次いで、重合溶液を内容積が20Lで、内部の高さ(L)と直径(D)との比(L/D)が4.0である攪拌機付槽型反応器である攪拌機及び温度制御用のジャケットを有する槽型圧力容器に重合溶液を10L移送し、内温を80℃にして系内に水素を導入した。
次いで、水添触媒を仕込みモノマー量に対してチタン基準で60ppm添加し、水素圧0.8MPa、平均温度85℃で水添反応させた。所定の水素積算流量に到達後、反応液を常温、常圧に戻して反応容器より抜き出し、重合体溶液を得た。
得られた重合体溶液を前述のクラミングの条件でクラミングをすることで、ランダム共重合体1のクラムを得た。クラムを金属製網ふるいで粒径ごとに分離し、各目開きにおける重量分率を測定することでD50を算出した。クラムのD50を算出後、クラムを90℃に加熱した真空乾燥機で2時間乾燥させることでランダム共重合体2の分析サンプルを得た。
ランダム共重合体2の重合処方、物性及び特性を、表1に示す。
【0069】
〔製造例3(ランダム共重合体3の製造)〕
重合開始剤のn-ブチルリチウムの添加速度を33.5mg/分とし、極性物質の2,2-ジ(2-テトラヒドロフリル)プロパンの添加速度を0.75mg/分とし、変性剤の2,2-ジメトキシ-1-(3-(トリメトキシシリル)プロピル)-1,2-アザシロリジンの添加速度を34.0mg/分に変更した以外は、前記〔製造例1〕のランダム共重合体1と同様の手法で重合した。
得られたランダム共重合体3の重合処方、物性及び特性を、表1に示す。
【0070】
〔製造例4(ランダム共重合体4の製造)〕
重合開始剤のn-ブチルリチウムの添加速度を27.5mg/分とし、極性物質の2,2-ジ(2-テトラヒドロフリル)プロパンの添加速度を0.51mg/分とし、変性剤の2,2-ジメトキシ-1-(3-(トリメトキシシリル)プロピル)-1,2-アザシロリジンの添加速度を28.0mg/分に変更した以外は、前記〔製造例2〕のランダム共重合体2と同様の手法で重合した。
得られたランダム共重合体4の重合処方、物性及び特性を、表1に示す。
【0071】
〔製造例5(ランダム共重合体5の製造)〕
水素添加量を変更した以外の重合条件は、前記〔製造例1〕と同様にして、ランダム共重合体5を得た。
得られたランダム共重合体5の重合処方、物性及び特性を、表1に示す。
【0072】
〔製造例6(ランダム共重合体6の製造)〕
水素添加量を変更した以外の重合条件は、前記〔製造例2〕と同様にして、ランダム共重合体6を得た。
得られたランダム共重合体6の重合処方、物性及び特性を、表2に示す。
【0073】
〔製造例7(ランダム共重合体7の製造)〕
スチレンの添加速度を1.3g/分とし、ブタジエンの添加速度を25g/分とし、重合開始剤のn-ブチルリチウムの添加速度を20.1mg/分とし、極性物質の2,2-ジ(2-テトラヒドロフリル)プロパンの添加速度を0.26mg/分、変性剤の2,2-ジメトキシ-1-(3-(トリメトキシシリル)プロピル)-1,2-アザシロリジンの添加速度を20.4mg/分に変更した以外は、前記〔製造例1〕のランダム共重合体1と同様の手法で重合した。
得られたランダム共重合体7の重合処方、物性及び特性を、表2に示す。
【0074】
〔製造例8(ランダム共重合体8の製造)〕
水素添加量以外の重合条件は、前記〔製造例1〕と同様にして、ランダム共重合体8を得た。
得られたランダム共重合体8の重合処方、物性及び特性を、表2に示す。
【0075】
〔製造例9(ランダム共重合体9の製造)〕
水素添加量以外の重合条件は、前記〔製造例2〕と同様にして、ランダム共重合体9を得た。
得られたランダム共重合体9の重合処方、物性及び特性を、表2に示す。
【0076】
〔製造例10(ランダム共重合体10の製造)〕
重合開始剤のn-ブチルリチウムの添加速度を39.8mg/分とし、極性物質の2,2-ジ(2-テトラヒドロフリル)プロパンの添加速度0.91mg/分、変性剤の2,2-ジメトキシ-1-(3-(トリメトキシシリル)プロピル)-1,2-アザシロリジンの添加速度を40.3mg/分に変更した以外は、前記〔製造例1〕のランダム共重合体1と同様の手法で重合した。
得られたランダム共重合体10の重合処方、物性及び特性を、表2に示す。
【0077】
〔製造例11(ランダム共重合体11の製造)〕
重合開始剤のn-ブチルリチウムの添加速度を15.1mg/分とし、極性物質の2,2-ジ(2-テトラヒドロフリル)プロパンの添加速度を0.14mg/分、変性剤の2,2-ジメトキシ-1-(3-(トリメトキシシリル)プロピル)-1,2-アザシロリジンの添加速度を15.3mg/分に変更した以外は、前記〔製造例1〕のランダム共重合体1と同様の手法で重合した。
得られたランダム共重合体11の重合処方、物性及び特性を、表3に示す。
【0078】
〔製造例12(ランダム共重合体12の製造)〕
水素添加量以外の重合条件は、前記〔製造例1〕と同様として、ランダム共重合体12を得た。
得られたランダム共重合体12の重合処方、物性及び特性を、表3に示す。
【0079】
〔製造例13(ランダム共重合体13の製造)〕
水素添加量以外の重合条件は、前記〔製造例1〕と同様として、ランダム共重合体13を得た。
得られたランダム共重合体13の重合処方、物性及び特性を、表3に示す。
【0080】
〔製造例14(ランダム共重合体14の製造)〕
重合開始剤のn-ブチルリチウムの添加速度を13.2mg/分とし、極性物質の2,2-ジ(2-テトラヒドロフリル)プロパンの添加速度を0.11mg/分とし、変性剤の2,2-ジメトキシ-1-(3-(トリメトキシシリル)プロピル)-1,2-アザシロリジンの添加速度を13.4mg/分に変更した以外は、前記〔製造例1〕のランダム共重合体1と同様の手法で重合した。
得られたランダム共重合体14の重合処方、物性及び特性を、表3に示す。
【0081】
〔製造例15(ランダム共重合体15の製造)〕
重合開始剤のn-ブチルリチウムの添加速度を10.2mg/分、極性物質の2,2-ジ(2-テトラヒドロフリル)プロパンの添加速度を0.07mg/分に変更し、変性剤を添加していないこと以外は、前記〔製造例1〕のランダム共重合体1と同様の手法で重合した。
得られたランダム共重合体15の重合処方、物性及び特性を、表3に示す。
【0082】
〔製造例16(ランダム共重合体16の製造)〕
内容積が10Lで、内部の高さ(L)と直径(D)との比(L/D)が4.0であり、底部に入口、頂部に出口を有し、攪拌機付槽型反応器である攪拌機及び温度制御用のジャケットを有する槽型圧力容器を重合反応器として2基連結した。
予め水分除去した、1,3-ブタジエンを22.0g/分、スチレンを3.9g/分、n-ヘキサンを175.0g/分の条件で混合した。この混合溶液を反応基の入口に供給する配管の途中に設けたスタティックミキサーにおいて、残存不純物不活性処理用のn-ブチルリチウムを6.0mg/分で添加、混合した後、反応基の底部に連続的に供給した。更に、極性物質として2,2-ジ(2-テトラヒドロフリル)プロパンを0.34mg/分の速度で、重合開始剤としてn-ブチルリチウムを23.8mg/分の速度で、攪拌機で激しく混合する1基目反応器の底部へ供給し、反応器内温を67℃に保持した。
1基目反応器頂部より重合体溶液を連続的に抜き出し、2基目反応器の底部に連続的に供給し70℃で反応を継続し、さらに2基目の頂部よりスタティックミキサーへ供給した。スタティックミキサーでは、変性剤として2,2-ジメトキシ-1-(3-(トリメトキシシリル)プロピル)-1,2-アザシロリジンを24.2mg/分の速度で加え、成長末端を変性した。
得られた重合溶液を前述のクラミングの条件でクラミングをすることで、ランダム共重合体16のクラムを得た。クラムを金属製網ふるいで粒径ごとに分離し、各目開きにおける重量分率を測定することでD50を算出した。クラムのD50を算出後、クラムを90℃に加熱した真空乾燥機で2時間乾燥させることでランダム共重合体16の分析サンプルを得た。
ランダム共重合体16の重合処方、物性及び特性を、表4に示す。
【0083】
〔製造例17(ランダム共重合体17の製造)〕
内容積が10Lで、内部の高さ(L)と直径(D)との比(L/D)が3.0であり、底部に入口、頂部に出口を有し、攪拌機付槽型反応器である攪拌機及び温度制御用のジャケットを有する槽型圧力容器を重合反応器として2基連結した。
予め水分除去した、1,3-ブタジエンを22.0g/分、スチレンを3.9g/分、n-ヘキサンを175.0g/分の条件で混合した。この混合溶液を反応基の入口に供給する配管の途中に設けたスタティックミキサーにおいて、残存不純物不活性処理用のn-ブチルリチウムを6.0mg/分で添加、混合した後、反応基の底部に連続的に供給した。更に、極性物質として2,2-ジ(2-テトラヒドロフリル)プロパンを0.24mg/分の速度で、重合開始剤としてn-ブチルリチウムを25.2mg/分の速度で、攪拌機で激しく混合する1基目反応器の底部へ供給し、反応器内温を67℃に保持した。
1基目反応器頂部より重合体溶液を連続的に抜き出し、2基目反応器の底部に連続的に供給し70℃で反応を継続し、さらに2基目の頂部よりスタティックミキサーへ供給した。スタティックミキサーでは、変性剤として2,2-ジメトキシ-1-(3-(トリメトキシシリル)プロピル)-1,2-アザシロリジンを25.6mg/分の速度で加え、成長末端を変性した。
次いで、重合溶液を内容積が20Lで、内部の高さ(L)と直径(D)との比(L/D)が4.0である攪拌機付槽型反応器である攪拌機及び温度制御用のジャケットを有する槽型圧力容器に重合溶液を10L移送し、内温を80℃にして系内に水素を導入した。
次いで、水添触媒を仕込みモノマー量に対してチタン基準で60ppm添加し、水素圧0.8MPa、平均温度85℃で水添反応させた。所定の水素積算流量に到達後、反応液を常温、常圧に戻して反応容器より抜き出し、重合体溶液を得た。
得られた重合体溶液を前述のクラミングの条件でクラミングをすることで、ランダム共重合体17のクラムを得た。クラムを金属製網ふるいで粒径ごとに分離し、各目開きにおける重量分率を測定することでD50を算出した。クラムのD50を算出後、クラムを90℃に加熱した真空乾燥機で2時間乾燥させることでランダム共重合体17の分析サンプルを得た。
ランダム共重合体17の重合処方、物性及び特性を、表4に示す。
【0084】
〔製造例18(ランダム共重合体18の製造)〕
内容積が40Lで、内部の高さ(L)と直径(D)との比(L/D)が4.0であるオートクレーブ反応器に、ノルマルヘキサン25800g、極性物質の2,2-ジ(2-テトラヒドロフリル)プロパン3.1g、スチレン645g、1,3-ブタジエン2814gを仕込んだ。反応器内容物の温度を40℃に調整した後、n-ブチルリチウム2.9gを含むシクロヘキサン溶液を添加して重合を開始し、断熱条件で実施した。
重合転化率が99%に達した時点で、追添ブタジエン840gを追加し、さらに5分重合させ、重合体を含む反応液を得た。そして、変性剤として2,2-ジメトキシ-1-(3-(トリメトキシシリル)プロピル)-1,2-アザシロリジン2.9gを加え、前記重合体の活性点に30分間反応させた。
次いで、反応液を80℃にして系内に水素を導入した。
次いで、水添触媒を仕込みモノマー量に対してチタン基準で60ppm添加し、水素圧0.8MPa、平均温度85℃で水添反応させた。所定の水素積算流量に到達後、反応液を常温、常圧に戻して反応容器より抜き出し、重合体溶液を得た。
得られた重合溶液を前述のクラミングの条件でクラミングをすることで、ランダム共重合体18のクラムを得た。クラムを金属製網ふるいで粒径ごとに分離し、各目開きにおける重量分率を測定することでD50を算出した。クラムのD50を算出後、クラムを90℃に加熱した真空乾燥機で2時間乾燥させることでランダム共重合体18の分析サンプルを得た。
ランダム共重合体18の重合処方、物性及び特性を、表5に示す。
【0085】
〔製造例19(ランダム共重合体19の製造)〕
水素添加量以外の重合条件は、前記〔製造例17〕と同様にして、ランダム共重合体19を得た。
得られたランダム共重合体19の重合処方、物性及び特性を、表4に示す。
【0086】
〔製造例20(ランダム共重合体20の製造)〕
水素添加量以外の重合条件は、前記〔製造例18〕と同様にして、ランダム共重合体20を得た。
得られたランダム共重合体20の重合処方、物性及び特性を、表5に示す。
【0087】
〔製造例21(ランダム共重合体21の製造)〕
変性剤をN,N-ビス(トリエトキシシリルプロピル)アミノプロピル-1-イミダゾルに変更して、その他の条件は、前記〔製造例17〕と同様にして、ランダム共重合体21を得た。
得られたランダム共重合体21の重合処方、物性及び特性を、表4に示す。
【0088】
〔製造例22(ランダム共重合体22の製造)〕
内容積が10Lで、内部の高さ(L)と直径(D)との比(L/D)が7.0であり、底部に入口、頂部に出口を有し、攪拌機付槽型反応器である攪拌機及び温度制御用のジャケットを有する槽型圧力容器を重合反応器として2基連結した。
予め水分除去した、1,3-ブタジエンを21.0g/分、スチレンを5.2g/分、n-ヘキサンを175.0g/分の条件で混合した。
この混合溶液を反応基の入口に供給する配管の途中に設けたスタティックミキサーにおいて、残存不純物不活性処理用のn-ブチルリチウムを6.0mg/分で添加、混合した後、反応基の底部に連続的に供給した。
更に、極性物質として2,2-ジ(2-テトラヒドロフリル)プロパンを1.20mg/分の速度で、重合開始剤としてn-ブチルリチウムを23.8mg/分の速度で、攪拌機で激しく混合する1基目反応器の底部へ供給し、反応器内温を67℃に保持した。
1基目反応器頂部より重合体溶液を連続的に抜き出し、2基目反応器の底部に連続的に供給し70℃で反応を継続し、さらに2基目の頂部よりスタティックミキサーへ供給した。スタティックミキサーでは、変性剤として2,2-ジメトキシ-1-(3-(トリメトキシシリル)プロピル)-1,2-アザシロリジンを24.2mg/分の速度で加え、成長末端を変性した。
次いで、重合体溶液を内容積が20Lで、内部の高さ(L)と直径(D)との比(L/D)が4.0である攪拌機付槽型反応器である攪拌機及び温度制御用のジャケットを有する槽型圧力容器に重合溶液を10L移送し、内温を80℃にして系内に水素を導入した。
次いで、水添触媒を仕込みモノマー量に対してチタン基準で60ppm添加し、水素圧0.8MPa、平均温度85℃で水添反応させた。所定の水素積算流量に到達後、反応液を常温、常圧に戻して反応容器より抜き出し、重合体溶液を得た。
得られた重合体溶液を、前述のクラミングの条件でクラミングをすることで、ランダム共重合体22のクラムを得た。
クラムを金属製網ふるいで粒径ごとに分離し、各目開きにおける重量分率を測定することでD50を算出した。クラムのD50を算出後、クラムを90℃に加熱した真空乾燥機で2時間乾燥させることでランダム共重合体22の分析サンプルを得た。
得られたランダム共重合体22の重合処方、物性及び特性を、表3に示す。
【0089】
上述した製造例1~15、22のランダム共重合体1~15、22を用いて、〔実施例1~15、16〕の製品含水率(VM)評価用ベールを製造した。
同様に、上述した製造例16~21のランダム共重合体16~21を用いて、〔比較例1~6〕の製品含水率(VM)評価用ベールを製造した。
VM評価用ベールの製造方法を下記に示す。
<VM評価用ベールの製造>
製造例1~22で得られた含水状態のクラムを、それぞれ300gを用いてVM評価用ベールの製造に用いた。
クリアランスを2mmに設定した80℃に加熱された6インチロールに、ランダム共重合体のクラムを10回通すことで脱水した。続けて脱水されたクラムを110℃に加熱された6インチロールに、15回通すことで乾燥させた。
寸法が長辺42mm、短辺21mm、深さ40mmの直方型容器に、上記方法で調製されたクラム35gを60℃に加温した後に充填し、シリンダーで3.5MPaの圧力を10秒間かけて圧縮することでVM評価用ベールを得た。
<評価>
次に、実施例1~16、比較例1~6の評価として、脱水効率を製品含水率(VM)で評価した。
VMの評価方法を下記に記す。
110℃に加熱したハロゲンヒータに、VM評価用ベール10gを仕込み、20分間加熱した。
加熱後の質量変化から、サンプル中の含水率(VM)を算出した。
VMの算出式は以下の通りである。
VM(wt%)=(加熱前のサンプル質量―加熱後のサンプル質量)/加熱前のサンプル質量×100
ランダム共重合体を用いたゴム組成物をタイヤ製品に加工する際に水が気化して混練り機の圧力上昇を防ぐ観点から、VMは0.75wt%以下であれば、実用上良好であると判断した。
実施例1~16と比較例1~6におけるVMを表6~表9に示す。
【0090】
【0091】
【0092】
【0093】
【0094】
【0095】
【0096】
【0097】
【0098】
【0099】
表6~表9より、実施例のランダム共重合体を用いたベールは、VMが改善されたことが明らかとなった。
【産業上の利用可能性】
【0100】
本実施形態のランダム共重合体は、タイヤ部材、自動車の内装及び外装品、防振ゴム、ベルト、履物、発泡体、各種工業用品用途等の分野において産業上の利用可能性がある。