IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ イビデン株式会社の特許一覧

<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-03-19
(45)【発行日】2025-03-28
(54)【発明の名称】微細藻類の成長促進剤
(51)【国際特許分類】
   C12N 1/12 20060101AFI20250321BHJP
   A01P 21/00 20060101ALI20250321BHJP
   A01N 37/06 20060101ALI20250321BHJP
   A01N 37/36 20060101ALI20250321BHJP
【FI】
C12N1/12 Z
A01P21/00
A01N37/06
A01N37/36
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2021109442
(22)【出願日】2021-06-30
(65)【公開番号】P2023006709
(43)【公開日】2023-01-18
【審査請求日】2023-12-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000000158
【氏名又は名称】イビデン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001896
【氏名又は名称】弁理士法人朝日奈特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】石野 暢好
(72)【発明者】
【氏名】高木 博子
【審査官】藤井 美穂
(56)【参考文献】
【文献】特開2021-095384(JP,A)
【文献】Energies,2017年,Vol.10, #1696
【文献】Renewable Energy,2020年05月,Vol.157,p.368-376
【文献】CCCryo, Fraunhofer, BBM Medium (Bold’s Basal Medium + soil extract + vitamins), [online],2020年06月,<URL: http://cccryo.fraunhofer.de/sources/files/medien/BBM.pdf>, [2024年11月22日検索]
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 1/00 - 7/08
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS/REGISTRY(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(1)オキソ脂肪酸またはその塩と、(2)水酸化脂肪酸またはその塩と、を含む微細藻類の成長促進剤であって、前記オキソ脂肪酸が、13-オキソ-9,11-オクタデカジエン酸であり、および、前記水酸化脂肪酸が、9,10,13-トリヒドロキシ-11-オクタデカエン酸および/または9,12,13-トリヒドロキシ-10-オクタデカエン酸である微細藻類の成長促進剤
【請求項2】
さらに不飽和脂肪酸(ただし、前記オキソ脂肪酸および前記水酸化脂肪酸を除く)を含む請求項1に記載の微細藻類の成長促進剤。
【請求項3】
前記不飽和脂肪酸が、炭素数10~20の不飽和脂肪酸である請求項2に記載の微細藻類の成長促進剤。
【請求項4】
前記不飽和脂肪酸が、オレイン酸、リノール酸、α-リノレン酸、γ-リノレン酸、アラキドン酸からなる一価または多価不飽和脂肪酸群より選択される不飽和脂肪酸である請求項2または3に記載の微細藻類の成長促進剤。
【請求項5】
前記不飽和脂肪酸が、リノール酸である請求項2~4のいずれか1項に記載の微細藻類の成長促進剤。
【請求項6】
前記不飽和脂肪酸に対する、前記オキソ脂肪酸またはその塩および前記水酸化脂肪酸またはそ塩の比率が、重量比で10%~90%となるように前記不飽和脂肪酸を含む請求項1~のいずれか1項に記載の微細藻類の成長促進剤。
【請求項7】
微細藻類の培地として使用される請求項1~のいずれか1項に記載の微細藻類の成長促進剤。
【請求項8】
前記微細藻類の成長促進剤が、ユーグレナ、クロレラ、またはスピルリナから選ばれる少なくとも1種以上に対して使用される請求項1~のいずれか1項に記載の微細藻類の成長促進剤。
【請求項9】
カリウムイオン、炭酸イオン、リン酸イオン、カルシウムイオン、またはナトリウムイオンから選ばれる少なくとも1種以上をさらに含む請求項1~のいずれか1項に記載の微細藻類の成長促進剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、微細藻類の成長促進剤に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、微細藻類を増殖させ、微細藻類の細胞内に燃料、飼料、健康食品などの原料となる脂質、または、タンパク質やビタミン等の有価物を生産・貯蔵させ、貯蔵した有価物を利用して燃料や食品等に利用することが行われている。
【0003】
特許文献1には、POMEを含む培地を使用する、従属栄養性微細藻類の培養方法が記載されている。
【0004】
しかしながら、特許文献1ではPOMEというパーム油精製工場からの廃液を利用しなければならず、そのような廃液を東南アジアから輸入することは、コスト、原料供給の安定性の観点から望ましくない。また、非特許文献1によれば、POME中には、オレイン酸(C18:不飽和結合1)33%、パルミチン酸(C16:不飽和結合0)31%、リノール酸(C18:不飽和結合2)9%が含まれており、発明者らの知見では、このような直鎖の飽和、不飽和脂肪酸のみでは、微細藻類の成長の促進剤としての効果は十分ではないことが分かっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】国際公開第2020/026794号
【非特許文献】
【0006】
【文献】環境工学研究論文集・第40巻・2003(Environmental Engineering Research. Vol. 40, 2003)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記のような問題に鑑み、藻類を効率的に増殖させることができる微細藻類の成長促進剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、(1)オキソ脂肪酸またはその誘導体もしくはその塩、または(2)水酸化脂肪酸またはその誘導体もしくはその塩、から選ばれる少なくとも1種の化合物を含む微細藻類の成長促進剤に関する。
【0009】
前記微細藻類の成長促進剤が、不飽和脂肪酸(ただし、前記オキソ脂肪酸および前記水酸化脂肪酸を除く)をさらに含むことが好ましい。
【0010】
前記不飽和脂肪酸が、炭素数10~20の不飽和脂肪酸である微細藻類の成長促進剤が好ましい。
【0011】
前記不飽和脂肪酸が、オレイン酸、リノール酸、α-リノレン酸、γ-リノレン酸、アラキドン酸等からなる一価または多価不飽和脂肪酸群より選択される不飽和脂肪酸である微細藻類の成長促進剤が好ましい。
【0012】
前記不飽和脂肪酸が、リノール酸である微細藻類の成長促進剤が好ましい。
【0013】
前記オキソ脂肪酸またはその誘導体もしくはその塩が以下の式:
HOOC-(R1)-CH=CH-C(=O)-R2 (I)
(式中、
1:6個~12個の炭素原子を含む、直鎖または分岐の、飽和または不飽和の炭化水素基であり、
2:炭素数2~8のアルキル基であって、1つまたはそれ以上の分岐および/または二重結合を含んでいてもよい)
の構造式を有するオキソ脂肪酸またはその誘導体もしくはその塩である微細藻類の成長促進剤が好ましい。
【0014】
前記オキソ脂肪酸が、前記オキソ脂肪酸のR1の炭化水素基の炭素数が8~10であり、R2のアルキル基の炭素数が4~6であるオキソ脂肪酸である微細藻類の成長促進剤が好ましい。
【0015】
前記オキソ脂肪酸が、前記オキソ脂肪酸のR1が式(I)におけるカルボニル基のαおよびβ炭素の間の二重結合と共役二重結合を形成する二重結合を含むオキソ脂肪酸である微細藻類の成長促進剤が好ましい。
【0016】
前記オキソ脂肪酸が、前記オキソ脂肪酸のR1が、炭素数9の直鎖または分岐の炭化水素基であり、R2が、炭素数5のアルキル基であるオキソ脂肪酸である微細藻類の成長促進剤が好ましい。
【0017】
前記オキソ脂肪酸が、ケトオクタデカジエン酸である微細藻類の成長促進剤が好ましい。
【0018】
前記オキソ脂肪酸が、13-オキソ-9,11-オクタデカジエン酸である微細藻類の成長促進剤が好ましい。
【0019】
前記水酸化脂肪酸またはその誘導体もしくはその塩が、以下の式(II)および/または(III):
HOOC-(R3)-CH(OH)-CH(OH)-CH=CH-CH(OH)-R4 (II)
HOOC-(R3)-CH(OH)-CH=CH-CH(OH)-CH(OH)-R4 (III)
(式中、
3は、4個~12個の炭素原子を有する直鎖または分岐の炭化水素基であって、1つまたはそれ以上の二重結合および/またはOH基を含んでいてもよく、二重結合を含んでいる場合、二重結合の位置は限定されない、
4は、2個~8個の炭素原子を有する直鎖または分岐の炭化水素基であって、1つまたはそれ以上の二重結合および/またはOH基を含んでいてもよく、二重結合を含んでいる場合、二重結合の位置は限定されない)
の構造式を有する水酸化脂肪酸またはその誘導体もしくはその塩である微細藻類の成長促進剤が好ましい。
【0020】
前記水酸化脂肪酸が、R3の炭化水素基が6個~8個の炭素原子を有し、R4の炭化水素基が4個~6個の炭素原子を有する微細藻類の成長促進剤が好ましい。
【0021】
前記水酸化脂肪酸が、R3が、-(CH2n-(nは4~12である整数)の構造であり、R4が、Cn2n+1-(nは2~8である整数)の構造である微細藻類の成長促進剤が好ましい。
【0022】
前記水酸化脂肪酸が、R3が、炭素数7のアルキレン基(-(CH27-)であり、R4が、炭素数5のアルキル基(CH3CH2CH2CH2CH2-)である微細藻類の成長促進剤が好ましい。
【0023】
前記水酸化脂肪酸が、ヒドロキシオクタデカエン酸である微細藻類の成長促進剤が好ましい。
【0024】
前記水酸化脂肪酸が、9,10,13-トリヒドロキシ-11-オクタデカエン酸である微細藻類の成長促進剤が好ましい。
【0025】
前記水酸化脂肪酸が、9,12,13-トリヒドロキシ-10-オクタデカエン酸である微細藻類の成長促進剤が好ましい。
【0026】
なお、「オクタデカエン酸」は慣用的な表記であり(例えば、特開平3-14539号公報等)、上述の「9,10,13-トリヒドロキシ-11-オクタデカエン酸」は、「9,10,13-トリヒドロキシオクタデカ-11-エン酸」または「9,10,13-トリヒドロキシ-11-オクタデセン酸」とも表記される。同様に、上述の「9,12,13-トリヒドロキシ-10-オクタデカエン酸」は、「9,12,13-トリヒドロキシオクタデカ-10-エン酸」または「9,12,13-トリヒドロキシ-10-オクタデセン酸」とも表記される。なお、実施例では、かっこ書きで製造元の表記も併記している。また、上記説明は、本明細書、特許請求の範囲および要約書中で使用される「オクタデカエン酸」全てに適用される。
【0027】
「9,10,13-トリヒドロキシ-11-オクタデカエン酸」の構造式は、下記構造式(1)で示されるものである。
【0028】
【化1】
【0029】
「9,12,13-トリヒドロキシ-10-オクタデカエン酸」の構造式は、下記構造式(2)で示されるものである。
【0030】
【化2】
【0031】
前記不飽和脂肪酸に対する、前記オキソ脂肪酸またはその誘導体もしくはその塩と前記水酸化脂肪酸またはその誘導体もしくはその塩とから選ばれる前記少なくとも1種の前記化合物の比率が、重量比で10%~90%となるように前記不飽和脂肪酸を含む微細藻類の成長促進剤が好ましい。
【0032】
なお、前記オキソ脂肪酸および水酸化脂肪酸の誘導体としては、それぞれ、オキソ脂肪酸および水酸化脂肪酸のエステルが望ましい。また、前記オキソ脂肪酸および水酸化脂肪酸の塩としては、後述されるが、例えばナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩などの塩を使用できる。
【0033】
前記微細藻類の成長促進剤は、微細藻類の培地として使用されることが望ましい。
【0034】
前記微細藻類の成長促進剤が、ユーグレナ、クロレラ、またはスピルリナから選ばれる少なくとも1種以上に対して使用されることが望ましい。
【0035】
さらに、微細藻類の成長促進剤が、カリウムイオン、炭酸イオン、リン酸イオン、カルシウムイオン、またはナトリウムイオンから選ばれる少なくとも1種以上を含むことが望ましい。
【発明の効果】
【0036】
本発明の微細藻類の成長促進剤は、微細藻類を効率的に増殖させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0037】
本発明の微細藻類の成長促進剤は、成長促進成分として、(1)オキソ脂肪酸またはその誘導体もしくはその塩、または(2)水酸化脂肪酸またはその誘導体もしくはその塩、から選ばれる少なくとも1種の化合物を含む。このようなオキソ脂肪酸や水酸化脂肪酸は、カルボキシ基以外のカルボニル構造や水酸基をもたない直鎖の飽和脂肪酸や不飽和脂肪酸に比べて、微細藻類の成長促進効果が高い。
【0038】
本発明において、微細藻類とは、主に水中に存在する単細胞性の生物群であって広義における藻類に分類される生物を意味しており、光合成を行うものが多い。微細藻類には、緑藻類、黄色鞭毛藻類、珪藻類、渦鞭毛藻類、単細胞真核藻類、淡水性単細胞緑藻類およびシアノバクテリア類に分類されるもの等が含まれ得る。一般的には顕微鏡サイズの藻であり、具体的には、光学顕微鏡を用いて観察した細胞の長軸径で細胞サイズが直径約1~500μmのものをいう。なお、微細藻類には、複数個の細胞が群体を形成するものも含まれる。本発明の微細藻類の成長促進剤は、当業者に公知の任意の微細藻類の成長促進に用いることができ、適用対象としての微細藻類の種類に特に制限はない。
【0039】
本発明の微細藻類の成長促進剤は、上述の有効成分、すなわちオキソ脂肪酸またはその誘導体もしくはその塩と水酸化脂肪酸またはその誘導体もしくはその塩とから選ばれる少なくとも1種の化合物に加えて、さらに不飽和脂肪酸を含んでいてもよい。なお、本発明の不飽和脂肪酸としては、オキソ脂肪酸および水酸化脂肪酸は除かれる。本発明の微細藻類の成長促進剤に含まれ得る前記不飽和脂肪酸は、前記微細藻類に対する前記オキソ脂肪酸や前記水酸化脂肪酸の吸収を促進させる効果がある。微細藻類の細胞膜は脂質で構成されており、前記不飽和脂肪酸を含んでいた方が、前記オキソ脂肪酸や前記水酸化脂肪酸が細胞膜を透過しやすいからである。
【0040】
本発明のオキソ脂肪酸またはその誘導体もしくはその塩としては、以下の式:
HOOC-(R1)-CH=CH-C(=O)-R2 (I)
(式中、
1:6個~12個の炭素原子を含む、直鎖または分岐の、飽和または不飽和の炭化水素基であり
2:炭素数2~8のアルキル基であって、1つまたはそれ以上の分岐および/または二重結合を含んでいてもよい)
の構造式を有するオキソ脂肪酸またはその誘導体もしくはその塩が好適に使用され得る。
【0041】
本発明の一実施形態において、上記オキソ脂肪酸におけるR1の炭化水素基の炭素数は8~10であり、R2のアルキル基の炭素数は4~6である。また、別の一実施形態において、上記オキソ脂肪酸におけるR1は式(I)におけるカルボニル基のαおよびβ炭素の間の二重結合と共役二重結合を形成する二重結合を含んでいる。さらに、別の一実施形態において、上記オキソ脂肪酸におけるR1は、炭素数9の直鎖または分岐の炭化水素基であり、R2は、炭素数5のアルキル基であることが好ましい。
【0042】
本発明のオキソ脂肪酸としては、具体的には、ケトオクタデカジエン酸が挙げられる。例えば、ケトオクタデカジエン酸としては、これらに限定される訳ではないが、9-オキソ-10,12-オクタデカジエン酸(9-oxoODA)、13-オキソ-9,11-オクタデカジエン酸(13-oxoODA)、5-オキソ-6,8-オクタデカジエン酸、6-オキソ-9,12-オクタデカジエン酸、8-オキソ-9,12-オクタデカジエン酸、10-オキソ-8,12-オクタデカジエン酸、11-オキソ-9,12-オクタデカジエン酸、12-オキソ-9,13-オクタデカジエン酸および14-オキソ-9,12-オクタデカジエン酸ならびにそれらの異性体等が挙げられる。
【0043】
なお、オキソ脂肪酸の誘導体としては、エステルが望ましい。本発明のオキソ脂肪酸のエステルとしては、これらに限定されるものではないが、メチルエステル、エチルエステル、プロピルエステル、ブチルエステル、ペンチルエステル、イソペンチルエステル、オクチルエステル等を挙げることができる。また、オキソ脂肪酸の塩としては、例えばアンモニウム塩、テトラメチルアンモニウム塩等のアルキルアンモニウム塩などのアンモニウム塩、例えばカルシウム塩、マグネシウム塩などのアルカリ土類金属塩や例えばナトリウム塩、リチウム塩、カリウム塩などのアルカリ金属塩、コバルト塩、マンガン塩などの金属塩等が挙げられる。
【0044】
本発明の水酸化脂肪酸またはその誘導体もしくはその塩としては、以下の式(II)および/または(III)
HOOC-(R3)-CH(OH)-CH(OH)-CH=CH-CH(OH)-R4 (II)
HOOC-(R3)-CH(OH)-CH=CH-CH(OH)-CH(OH)-R4 (III)
(式中、
3は、4個~12個の炭素原子を有する直鎖または分岐の炭化水素基であって、1つまたはそれ以上の二重結合および/またはOH基を含んでいてもよく、二重結合を含んでいる場合、二重結合の位置は限定されない、
4は、2個~8個の炭素原子を有する直鎖または分岐の炭化水素基であって、1つまたはそれ以上の二重結合および/またはOH基を含んでいてもよく、二重結合を含んでいる場合、二重結合の位置は限定されない)
の構造式を有する水酸化脂肪酸またはその誘導体もしくはその塩が好適に使用され得る。
【0045】
本発明の一実施形態において、上記水酸化脂肪酸におけるR3の炭化水素基は6個~8個の炭素原子を有し、R4の炭化水素基は4個~6個の炭素原子を有する。また、別の一実施形態において、上記水酸化脂肪酸におけるR3は、-(CH2n-(nは4~12である整数)の構造であり、R4は、Cn2n+1-(nは2~8である整数)の構造である。さらに、別の一実施形態において、上記水酸化脂肪酸におけるR3は、炭素数7のアルキレン基(-(CH27-)であり、R4は、炭素数5のアルキル基(CH3CH2CH2CH2CH2-)であることが好ましい。
【0046】
本発明の水酸化脂肪酸としては、具体的には、ヒドロキシオクタデカエン酸が挙げられる。例えば、ヒドロキシオクタデカエン酸としては、これらに限定される訳ではないが、9,10,13-トリヒドロキシ-11-オクタデカエン酸および/または9,12,13-トリヒドロキシ-10-オクタデカエン酸およびそれらの異性体が挙げられる。
【0047】
なお、水酸化脂肪酸の誘導体としては、エステルが望ましい。本発明の水酸化脂肪酸のエステルとしては、これらに限定されるものではないが、メチルエステル、エチルエステル、プロピルエステル、ブチルエステル、ペンチルエステル、イソペンチルエステル、オクチルエステル等を挙げることができる。また、水酸化脂肪酸の塩としては、例えばアンモニウム塩、テトラメチルアンモニウム塩等のアルキルアンモニウム塩などのアンモニウム塩、例えばカルシウム塩、マグネシウム塩などのアルカリ土類金属塩や例えばナトリウム塩、リチウム塩、カリウム塩などのアルカリ金属塩、コバルト塩、マンガン塩などの金属塩等が挙げられる。
【0048】
例えば、本発明の微細藻類の成長促進剤は、ケトオクタデカジエン酸またはその誘導体もしくはその塩とヒドロキシオクタデカエン酸またはその誘導体もしくはその塩とから選ばれる少なくとも1種の化合物を含み得る。例えば、本発明の微細藻類の成長促進剤は、13-オキソ-9,11-オクタデカジエン酸および/または9-オキソ-10,12-オクタデカジエン酸から選ばれる少なくとも一つのオキソ脂肪酸またはその誘導体もしくはその塩と、9,10,13-トリヒドロキシ-11-オクタデカエン酸および/または9,12,13-トリヒドロキシ-10-オクタデカエン酸から選ばれる少なくとも一つの水酸化脂肪酸またはその誘導体もしくはその塩とから選ばれる少なくとも1種の化合物とを含んでいてもよい。
【0049】
本発明の不飽和脂肪酸としては、特に限定されないが、炭素数10~20程度の不飽和脂肪酸は、前記微細藻類に対する前記オキソ脂肪酸や前記水酸化脂肪酸の吸収を促進させる効果がある。微細藻類の細胞膜は脂質で構成されており、前記炭素数10~20程度の不飽和脂肪酸を含んでいた方が、前記オキソ脂肪酸や前記水酸化脂肪酸が細胞膜を透過しやすいからである。例えば、炭素数18の不飽和脂肪酸が好ましい。また、本発明の不飽和脂肪酸において、その分子構造中の不飽和結合数は限定されるものではなく、一価不飽和脂肪酸であってもよく、多価不飽和脂肪酸であってもよい。例えば、不飽和脂肪酸としては、これらに限定される訳ではないが、オレイン酸、リノール酸、オレイン酸、α-リノレン酸、γ-リノレン酸、アラキドン酸等の不飽和脂肪酸が挙げられる。また、不飽和脂肪酸としては、遊離脂肪酸、その塩(一般的に使用可能な塩であって、例えば上記に例示されている塩)のいずれの状態でもよく、このうちから1種または2種以上を選択することができる。本発明の不飽和脂肪酸としては、市販品を使用すればよく、また、市販化合物からの合成品であってもよい。また、不飽和脂肪酸として、1種の不飽和脂肪酸を用いてもよく、2種以上を用いてもよい。
【0050】
なお、本明細書において例示されている化合物に異性体が存在する場合、特に記載のない限り、存在し得る全ての異性体が本発明において使用可能である。
【0051】
本発明の微細藻類の成長促進剤の具体例として、少なくとも一つのオキソ脂肪酸またはその誘導体もしくはその塩と少なくとも一つの水酸化脂肪酸またはその誘導体もしくはその塩とから選ばれる少なくとも1種の化合物、および、少なくとも一つの不飽和脂肪酸(ただし、オキソ脂肪酸および水酸化脂肪酸を除く)を含む場合について説明する。
【0052】
すなわち、本発明において使用され得る前記不飽和脂肪酸は、いずれか特定の種類のオキソ脂肪酸またはその誘導体もしくはその塩または水酸化脂肪酸またはその誘導体もしくはその塩との適合性に限定されるものではなく、広範囲にわたる不飽和脂肪酸が、本発明の微細藻類の成長促進剤においてオキソ脂肪酸またはその誘導体もしくはその塩や水酸化脂肪酸またはその誘導体もしくはその塩と共に用いられ得る。例えば、本発明の微細藻類の成長促進剤は、13-oxoODA、9-oxoODAから選ばれる少なくとも一つのオキソ脂肪酸またはその誘導体もしくはその塩と9,10,13-トリヒドロキシ-11-オクタデカエン酸および/または9,12,13-トリヒドロキシ-10-オクタデカエン酸から選ばれる少なくとも一つの水酸化脂肪酸またはその誘導体もしくはその塩とから選ばれる少なくとも1種の化合物、および、オレイン酸、リノール酸、α-リノレン酸、γ-リノレン酸、アラキドン酸から選ばれる少なくとも一つの不飽和脂肪酸を含んでいてもよい。例えば、本発明の微細藻類の成長促進剤は、ケトオクタデカジエン酸またはその誘導体もしくはその塩とヒドロキシオクタデカエン酸またはその誘導体もしくはその塩とから選ばれる少なくとも1種の化合物、および、オレイン酸、リノール酸、α-リノレン酸、γ-リノレン酸、アラキドン酸から選ばれる少なくとも一つの不飽和脂肪酸を含み得る。例えば、本発明の微細藻類の成長促進剤は、13-オキソ-9,11-オクタデカジエン酸またはその誘導体もしくはその塩とリノール酸とを含んでいてもよく、9,10,13-トリヒドロキシ-11-オクタデカエン酸および/または9,12,13-トリヒドロキシ-10-オクタデカエン酸またはその誘導体もしくはその塩とリノール酸とを含んでいてもよく、13-オキソ-9,11-オクタデカジエン酸および/または9,10,13-トリヒドロキシ-11-オクタデカエン酸および/または9,12,13-トリヒドロキシ-10-オクタデカエン酸またはその誘導体もしくはその塩とリノール酸とを含んでいてもよい。
【0053】
本発明においては、少なくとも一つのオキソ脂肪酸またはその誘導体もしくはその塩と少なくとも一つの水酸化脂肪酸またはその誘導体もしくはその塩とから選ばれる少なくとも1種の化合物、および、少なくとも一つの不飽和脂肪酸を混合する際に、これらを均一混合させるために、前記少なくとも一つのオキソ脂肪酸またはその誘導体もしくはその塩、少なくとも一つの水酸化脂肪酸またはその誘導体もしくはその塩とから選ばれる少なくとも1種の化合物、および、少なくとも一つの不飽和脂肪酸を水中にエマルジョンとして安定的に存在させるための安定化剤(乳化剤)を使用することが望ましい。
【0054】
前記安定化剤(乳化剤)としては、炭酸カリウムおよびリン酸水素二カリウムから選ばれる少なくとも1種以上を使用することができる。
【0055】
本発明の微細藻類の成長促進剤において、不飽和脂肪酸(オキソ脂肪酸および水酸化脂肪酸を除く)を含む場合は、前記不飽和脂肪酸に対する、オキソ脂肪酸またはその誘導体もしくはその塩と水酸化脂肪酸またはその誘導体もしくはその塩とから選ばれる少なくとも1種の化合物の比率が、重量比で90%以下程度で含まれることが好ましい。前記不飽和脂肪酸に対する、オキソ脂肪酸またはその誘導体もしくはその塩と水酸化脂肪酸またはその誘導体もしくはその塩とから選ばれる少なくとも1種の化合物の比率が90%より大きいと、微細藻類の成長促進剤中の不飽和脂肪酸の含有量が少なく、微細藻類に対するオキソ脂肪酸や水酸化脂肪酸の吸収促進効果が十分期待できないと考えられるからである。
【0056】
また、微細藻類の成長促進剤中の前記不飽和脂肪酸に対する、オキソ脂肪酸またはその誘導体もしくはその塩と水酸化脂肪酸またはその誘導体もしくはその塩とから選ばれる少なくとも1種の化合物の比率が、重量比で10%以上程度で含まれることが好ましい。前記不飽和脂肪酸に対する、オキソ脂肪酸またはその誘導体もしくはその塩と水酸化脂肪酸またはその誘導体もしくはその塩とから選ばれる少なくとも1種の化合物の比率が10%より小さいと、微細藻類の成長促進剤中の成長促進の効果のための有効成分量が少なく、微細藻類の成長促進効果が不十分となる恐れがある。
【0057】
本発明の微細藻類の成長促進剤は、液剤、粉末剤、顆粒剤、または錠剤等いかなる剤形のものとしてもよい。例えば、微細藻類への投与の容易性を重視して本剤を液状のもの(すなわち液剤)としてもよく、また、運搬や保存の容易性を鑑みて本剤を固体状のもの(すなわち粉末剤、顆粒剤、または錠剤)としてもよい。本発明の微細藻類の成長促進剤はまた、通常の乾燥法を用いて粉末形状とされた乾燥物であってもよい。好ましくは、乾燥は例えば凍結乾燥法により行われ得る。好ましくは、本発明の微細藻類の成長促進剤は、凍結乾燥物の粉末状物であり得る。また、本発明の微細藻類の成長促進剤は、凍結乾燥物の粉砕物または破砕物であってもよい。
【0058】
本発明の微細藻類の成長促進剤には、必要に応じて、微細藻類に付与するに適した賦形剤、結合剤、崩壊剤などの添加剤または担体が含有されていてもよい。
【0059】
本発明の微細藻類の成長促進剤は、微細藻類の培地として使用されることができる。したがって、本発明は、本発明の微細藻類の成長促進剤を用いて微細藻類を培養することを特徴とする、微細藻類の培養方法にも関する。本発明の微細藻類の成長促進剤を培地として使用する場合には、少なくとも一つのオキソ脂肪酸またはその誘導体もしくはその塩と少なくとも一つの水酸化脂肪酸またはその誘導体もしくはその塩とから選ばれる少なくとも1種の化合物、および、必要に応じて添加される少なくとも一つの不飽和脂肪酸(ただし、オキソ脂肪酸および水酸化脂肪酸を除く)を含む培地に様々な添加物を適量添加することにより、当該培地が、微細藻類の種類に応じた培養に適した組成となるように調製されてもよい。当該添加物としては、これらに限定される訳ではないが、糖類、有機酸、無機酸、有機塩基、無機塩基、ビタミン、アミノ酸、ペプチド、タンパク質、各種イオン(天然海水、人工海水等も含む)が挙げられる。
【0060】
当該培地は、微細藻類の種類に応じた通常培養工程における培地として使用され得る。通常培養と同様に、本発明の微細藻類の成長促進剤を培地として用いる培養でも、培養条件として、例えば光量(光の照射強度)、温度やCO2および栄養素の供給が、培養対象となる微細藻類の種類に応じて変更され得る。例えば、微細藻類の種類によって光の至適照射強度は異なり得るが、培養される微細藻類に適した強度で光を照射すればよい。二酸化炭素はある条件が好ましい場合もあるが、微細藻類の種類によって糖や有機酸を利用し増殖できるため、二酸化炭素がない条件でも良い。培養温度も、培養する微細藻類に適した条件で行えばよい。また、必要に応じて、培養している微細藻類を含む培養液を適切な強度で撹拌または循環させてもよい。培養時間は、特に制限されないが、例えば、1~30日間であってよい。
【0061】
さらに、当該培地は、必要であれば適当な酸または塩基を加えることにより適宜そのpHが調整され得る。培地の好適なpHは培養する微細藻類の種類に依存し、例えば、pH6~pH7に調整してもよい。
【0062】
当該培地に添加され得る糖類としては、限定されないが、例えば、グルコース、ガラクトース、フルクトース、マルトース、シュクロース、ラクトース、オリゴ糖、およびグリセロール等の糖アルコール、等から選択される1または複数の糖類が挙げられる。
【0063】
当該培地は、培養装置の培養槽中に設けられてもよい。当該培養槽は、攪拌装置、振動装置、温度制御装置、pH調節装置、濁度測定装置、光制御装置、O2、CO2等の特定気体濃度測定装置および圧力測定装置から選択される1または複数の装置を備えていてもよい。微細藻類の培養は、回分培養法、半回分培養法(流加培養法)、連続培養法(灌流培養法)等の任意の適切な液体培養法で行われ得る。
【0064】
本発明の微細藻類の成長促進剤を使用することができる微細藻類は、特に限定されるものではないが、培養された微細藻類から有価物を取り出せることから、糖、タンパク質、オイル、または化合物等を産生する能力を有する微細藻類、および/または、それ自体が食品用途や化粧品用途を有する微細藻類が好ましく、油脂を貯蔵物質として蓄積する微細藻類に対して適用することが有益であると考えられる。微細藻類を効率的に増殖させることができ、有価物の収量が増大され得る。このような微細藻類としては、ユーグレナ藻、トレボウクシア藻網に属する緑藻、シアノバクテリア門に属する藻類などが例示され、本発明の微細藻類の成長促進剤はこれらの微細藻類に良好に適用されて、効率的に増殖させ得る。例えば、本発明の微細藻類の成長促進剤は、ユーグレナ類の藻類(ユーグレナなど)、クロレラ属の藻類(クロレラなど)、またはユレモ属のラン藻類(スピルリナなど)から選ばれる少なくとも1種以上に対して使用され得るが、これらに限定されるものではない。本発明の微細藻類の成長促進剤を用いて培養する微細藻類としては、特定の一種類の微細藻類に限定せずに、多種類の微細藻からなる集団である植物プランクトンが対象とされてもよい。また、微細藻類として、遺伝子組換えしたシアノバクテリアや微細藻類を用いることもできる。
【0065】
有価物は、培養された微細藻類から抽出、精製されることによって得られ得る。このような物質としては、医薬品、化粧品、健康食品等の原料や最終生成物、炭化水素化合物やトリグリセリドなどのオイル、アルコール化合物、エネルギー代替物質、酵素、タンパク、核酸、糖、脂質化合物、カロテノイドなどが挙げられ得、本発明の微細藻類の成長促進剤を用いることにより、培養された微細藻類からのこれら有価物の収量を増大させることができると考えられる。したがって、本発明は、本発明の微細藻類の成長促進剤を用いて培養した微細藻類が産生した生産物を利用することを特徴とする、有価物の製造方法にも関する。なお、微細藻類から、有価物を取り出す方法としては、本技術分野において一般的に用いられ得る精製、抽出、分画方法等を適宜用いることができる。
【0066】
本発明の一実施形態において、本発明の微細藻類の成長促進剤は、カリウムイオン、炭酸イオン、リン酸イオン、カルシウムイオン、またはナトリウムイオンから選ばれる少なくとも1種以上を含む。これらのイオンは、微細藻類の成長促進に寄与するからである。
【0067】
本発明の微細藻類の成長促進剤がこれらイオンを含む場合、各イオンの濃度は、カリウムイオンについては、10mg/L以上、炭酸イオンについては、5mg/L以上、リン酸イオンについては、5mg/L以上、カルシウムイオンについては、5mg/L以上、ナトリウムイオンについてはmg/L以上であることが望ましい。
【0068】
これらのイオンは、前述した安定剤(乳化剤)に由来するものであってもよく、また、オキソ脂肪酸や水酸化脂肪酸の塩に由来するものであってもよい。さらに、これらのイオンは、本発明の微細藻類の成長促進剤に対して付加的な添加物として加えられているものであってもよい。
【実施例
【0069】
本発明を実施例に基づいて説明するが、本発明は実施例のみに限定されるものではない。
【0070】
[実施例1]
オキソ脂肪酸またはその誘導体もしくはその塩として、ケトオクタデカジエン酸である13-オキソ-9,11-オクタデカジエン酸(13-oxoODA)((9Z,11E)-13-オキソ-9,11-オクタデカジエン酸、ケイマンケミカル社製)を用いた。また、水酸化脂肪酸またはその誘導体もしくはその塩として、ヒドロキシオクタデカエン酸である、9,10,13-トリヒドロキシ-11-オクタデカエン酸(ラローダンファインケミカルズ社製、9(S),10(S),13(S)-トリヒドロキシ-11(E)-オクタデカエセン酸(英語表記で9(S),10(S),13(S)-trihydroxy-11(E)-octadecenoic acid))、および、9,12,13-トリヒドロキシ-10-オクタデカエン酸(ラローダンファインケミカルズ社製、9(S),12(S),13(S)-トリヒドロキシ-10(E)-オクタデカエセン酸(英語表記で9(S),12(S),13(S)-trihydroxy-10(E)-octadecenoic acid))を2:1で混合した混合物を用いた。不飽和脂肪酸として、リノール酸(富士フイルム和光純薬(株)製の一級リノール酸)を用いた。1gのリノール酸に、13-oxoODAを0.1g、9,10,13-トリヒドロキシ-11-オクタデカエン酸を0.02g、9,12,13-トリヒドロキシ-10-オクタデカエン酸を0.01g、およびリン酸水素二カリウムを0.5g加えて混合した。この混合物を水に分散させて、2Lの水溶液(水分散液)を成長促進剤液として調製した。
【0071】
ユーグレナ培養液(藤めだか製)5mLを水で250mLに希釈した溶液を透明の100mL容ガラス瓶に50mL分注し、上記成長促進剤液を1.0mL添加し、本培養液とした。成長促進剤液の代わりに水1.0mLを加えたものを比較培養液とした。本培養液および比較培養液を室温25℃に調整した部屋にて常時点灯した蛍光灯下静置し、1日に1回転倒混和を行い、分光光度計(BioSpec-mini:(株)島津製作所製、セル長1cm)にて波長660nmにおける各培養液の吸光度を測定し、微細藻類の増殖速度を評価した。
【0072】
培養4日目の本培養液の濁度は0.0421となり、比較培養液の濁度は0.0296となった。本発明の微細藻類の成長促進剤にて細胞増殖が1.4倍程度促進された。
【0073】
[比較例1]
リノール酸1gを水2Lに分散させた溶液A、オレイン酸(富士フイルム和光純薬(株)製の一級オレイン酸)1gを水2Lに分散させた溶液B、リン酸水素二カリウム0.5gを水2Lに分散させた溶液Cを調製した。これを実施例1と同様に調製したユーグレナ培養希釈液50mL/100mL容ガラス瓶3本に対して各1.0mLずつ添加し、実施例1の条件で培養後、濁度を測定した。
【0074】
培養4日目の溶液A添加培養液の濁度は0.0257(比較培養液対比0.9)、溶液B添加培養液の濁度は0.0301(比較培養液対比1.0)、溶液C添加培養液の濁度は0.0291(比較培養液対比1.0)となった。各培養液の濁度は実施例1の比較培養液と同等の値を示し、リノール酸、オレイン酸、リン酸水素二カリウムのみでは成長促進効果が見られなかった。
【0075】
[実施例2]
実施例1と同様に成長促進剤液を調製した。クロレラ培養液(めだか学園製)0.5mLを水で500mLに希釈した溶液を透明の100mL容ガラス瓶に50mL分注し、上記成長促進剤液を0.5mL添加し、本培養液とした。成長促進剤液の代わりに水0.5mLを加えたものを比較培養液とした。本培養液および比較培養液を室温25℃に調整した部屋にて常時点灯した蛍光灯下静置し、1日に1回転倒混和を行い、分光光度計にて各培養液の濁度を測定し、微細藻類の増殖速度を評価した。
【0076】
培養4日目の本培養液の濁度は0.4559となり、比較培養液の濁度は0.4061となった。本発明の微細藻類の成長促進剤にて細胞増殖が1.1倍程度促進された。
【0077】
[比較例2]
比較例1と同様に溶液A、BおよびCを調製した。これを実施例2と同様に調製したクロレラ培養希釈液50mL/100mL容ガラス瓶3本に対して各0.5mLずつ添加し、実施例2の条件で培養後、濁度を測定した。
【0078】
培養4日目の溶液A添加培養液の濁度は0.4082(比較培養液対比1.0)、溶液B添加培養液の濁度は0.4141(比較培養液対比1.0)、溶液C添加培養液の濁度は0.4099(比較培養液対比1.0)となった。各培養液の濁度は実施例2の比較培養液と同等の値を示し、リノール酸、オレイン酸、リン酸水素二カリウムのみでは成長促進効果が見られなかった。
【0079】
[実施例3]
実施例1と同様に成長促進剤液を調製した。スピルリナ培養液(藤めだか製)10mLを水で250mLに希釈した溶液を透明の100mL容ガラス瓶に50mL分注し、上記成長促進剤液を0.05mL添加し、本培養液とした。成長促進剤液の代わりに水0.05mLを加えたものを比較培養液とした。本培養液および比較培養液を室温25℃に調整した部屋にて常時点灯した蛍光灯下静置し、1日に1回転倒混和を行い、分光光度計にて各培養液の濁度を測定し、微細藻類の増殖速度を評価した。
【0080】
培養4日目の本培養液の濁度は0.5234となり、比較培養液の濁度は0.4434となった。本発明の微細藻類の成長促進剤にて細胞増殖が1.2倍程度促進された。
【0081】
[比較例3]
比較例1と同様に溶液A、BおよびC液を調製した。これを実施例3と同様に調製したスピルリナ培養希釈液50mL/100mL容ガラス瓶3本に対して各0.05mLずつ添加し、実施例2の条件で培養後、濁度を測定した。
【0082】
培養4日目の溶液A添加培養液の濁度は0.4265(比較培養液対比1.0)、溶液B添加培養液の濁度は0.4345(比較培養液対比1.0)、溶液C添加培養液の濁度は0.4539(比較培養液対比1.0)となった。各培養液の濁度は実施例3の比較培養液と同等の値を示し、リノール酸、オレイン酸、リン酸水素二カリウムのみでは成長促進効果が見られなかった。
【0083】
以上の結果より、本発明の微細藻類の成長促進剤が、微細藻類を効率的に増殖させることができる高い成長促進効果をもつ成長促進剤であることがわかる。