(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-03-19
(45)【発行日】2025-03-28
(54)【発明の名称】化合物、液晶組成物及び高周波移相器
(51)【国際特許分類】
C07C 13/48 20060101AFI20250321BHJP
C07C 25/24 20060101ALI20250321BHJP
C07C 255/50 20060101ALI20250321BHJP
C07C 323/09 20060101ALI20250321BHJP
C09K 19/32 20060101ALI20250321BHJP
H01P 1/18 20060101ALI20250321BHJP
【FI】
C07C13/48
C07C25/24 CSP
C07C255/50
C07C323/09
C09K19/32
H01P1/18
(21)【出願番号】P 2021109973
(22)【出願日】2021-07-01
【審査請求日】2024-02-13
(31)【優先権主張番号】P 2020120472
(32)【優先日】2020-07-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】514007391
【氏名又は名称】石家庄▲誠▼志永▲華顕▼示材料有限公司
【氏名又は名称原語表記】SHIJIAZHUANG CHENGZHI YONGHUA DISPLAY MATERIAL CO., LTD.
【住所又は居所原語表記】No.606, East Huai’an Road, Shijiazhuang, Hebei, China
(74)【代理人】
【識別番号】110000291
【氏名又は名称】弁理士法人コスモス国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】池内 貴哉
(72)【発明者】
【氏名】林 正直
【審査官】▲来▼田 優来
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-189715(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C,C09K
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の一般式(I)
【化1】
(式中、R
1は水素原子、炭素原子数1から20の直鎖状アルキル基又は炭素原子数3から20の分岐状若しくは環状アルキル基を表し、当該アルキル基中の任意の水素原子がハロゲン原子に置換されていても良く、当該アルキル基中の1個又は2個以上の-CH
2-が各々独立して-O-、-S-、-CO-、-CS-、-COO-、-OCO-、-CO-S-、-S-CO-、-O-CO-O-、-CO-NH-、-NH-CO-、-CH=CH-、-CF=CF-又は-C≡C-に置き換えられても良いが、酸素原子同士が直接結合することはなく、
R
2は水素原子、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、ペンタフルオロスルファニル基、ニトロ基、シアノ基、イソシアノ基、アミノ基、ヒドロキシル基、メルカプト基、メチルアミノ基、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ジイソプロピルアミノ基、トリメチルシリル基、ジメチルシリル基、又は、1個の-CH
2-又は2個以上の-CH
2-が各々独立して-O-、-S-、-CO-、-CS-、-COO-、-OCO-、-CO-S-、-S-CO-、-O-CO-O-、-CO-NH-、-NH-CO-、-CH=CH-COO-、-CH=CH-OCO-、-COO-CH=CH-、-OCO-CH=CH-、-CH=CH-、-CF=CF-若しくは-C≡C-によって置換されていても良い炭素原子数1から20の直鎖状アルキル基又は炭素原子数3から20の分岐状若しくは環状アルキル基を表すが、酸素原子同士が直接結合することはなく、当該アルキル基中の任意の水素原子はフッ素原子に置換されていても良く、
A
1
及びA
2
は1,4-フェニレン基を表し、
L
1及びL
2は各々独立して水素原子、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、ペンタフルオロスルファニル基、ニトロ基、シアノ基、イソシアノ基、アミノ基、ヒドロキシル基、メルカプト基、メチルアミノ基、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ジイソプロピルアミノ基、トリメチルシリル基、ジメチルシリル基、チオイソシアノ基、又は、1個の-CH
2-又は2個以上の-CH
2-が各々独立して-O-、-S-、-CO-、-CS-、-COO-、-OCO-、-CO-S-、-S-CO-、-O-CO-O-、-CO-NH-、-NH-CO-、-CH=CH-COO-、-CH=CH-OCO-、-COO-CH=CH-、-OCO-CH=CH-、-CH=CH-、-CF=CF-若しくは-C≡C-によって置換されていても良い炭素原子数1から20の直鎖状アルキル基又は炭素原子数3から20の分岐状若しくは環状アルキル基を表すが、酸素原子同士が直接結合することはなく、当該アルキル基中の任意の水素原子はフッ素原子に置換されていても良く、
Z
1
は-C≡C-を表し、
n1は1から3の整数を表す。)で表される化合物。
【請求項2】
請求項
1に記載の化合物を含有する組成物。
【請求項3】
請求項
1に記載の化合物を含有する液晶組成物。
【請求項4】
屈折率異方性が0.15以上である、請求項
3に記載の液晶組成物。
【請求項5】
誘電率異方性が2以上である、請求項
3に記載の液晶組成物。
【請求項6】
誘電率異方性が2以下である、請求項
3に記載の液晶組成物。
【請求項7】
請求項
3から7のいずれか一項に記載の液晶組成物を使用した高周波移相器、フェーズドアレイアンテナ、画像認識装置、測距装置、液晶表示素子、液晶レンズ又は立体画像表示用複屈折レンズ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は化合物、当該化合物を含有する液晶組成物及び当該液晶組成物を使用した素子に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶組成物は、スマートフォンやタブレットデバイスなどのモバイル端末、TV、デジタルサイネージやウィンドウディスプレイなどのディスプレイ用途に用いられている。この液晶組成物の新規用途として、車等の移動体と通信衛星間で、電波の送受信を行うアンテナが注目されている。
【0003】
従来、衛星通信は、パラボラアンテナを用いているが、移動体で用いる場合、随時パラボラアンテナを衛星方向へ向けなければならず、大きな可動部が必要であった。しかし液晶組成物を用いたアンテナは、液晶が動作することにより、電波の送受信方向を変える事が出来るため、アンテナ自体を動かす必要が無く、アンテナの形状も平面にすることが出来る。
【0004】
これらの用途に求められる液晶組成物の屈折率異方性Δnは、例えば0.4程度であり、ディスプレイ用途に求められるΔnと比較して非常に大きい。そのため、液晶組成物に添加し使用される化合物には、大きなΔnを有し、さらには屋外での使用が可能なよう高い液晶相-等方相転移温度(Tni)を示す必要がある。従来、Δnが大きな化合物として、トラン構造を有する化合物が報告されていた。しかしながら、それらの化合物は、アンテナ用途の液晶組成物へ添加した場合に、Δnが必ずしも十分ではなく、またTniが十分に高くないという問題があった(特許文献1)。また、液晶相を示す化合物としてテトラリン(1,2,3,4-テトラヒドロナフタレン)構造を有する化合物が報告されているが(特許文献2)、それらの化合物は、必ずしも十分大きなΔnを示すものではなく、また、高周波数領域における誘電率異方性が低く、位相変調特性が不十分であった。さらに、これらの問題を解決する化合物としてアゾトラン構造を有する化合物が報告されているが(特許文献3)、信頼性が低いという問題があった。そのため、大きなΔnを有し、Tniが十分に高く、液晶組成物への相溶性が高く、高周波数領域において大きな誘電率異方性を示す化合物の開発が求められていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特表2014-514325号公報
【文献】特開2001-34197号公報
【文献】特開2013-103897号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、大きな屈折率異方性(Δn)を有し、Tniが十分に高く、液晶組成物への相溶性が高く、高周波数領域において大きな誘電率異方性(Δε)を示す化合物、当該化合物を含有する液晶組成物及び当該液晶組成物を使用した素子を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意研究を行った結果、特定の化合物の開発に至った。すなわち、本発明は下記の一般式(I)
【0008】
【0009】
(式中、R1は水素原子、炭素原子数1から20の直鎖状アルキル基又は炭素原子数3から20の分岐状若しくは環状アルキル基を表し、当該アルキル基中の任意の水素原子がハロゲン原子に置換されていても良く、当該アルキル基中の1個又は2個以上の-CH2-が各々独立して-O-、-S-、-CO-、-CS-、-COO-、-OCO-、-CO-S-、-S-CO-、-O-CO-O-、-CO-NH-、-NH-CO-、-CH=CH-、-CF=CF-又は-C≡C-に置き換えられても良いが、酸素原子同士が直接結合することはなく、
R2は水素原子、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、ペンタフルオロスルファニル基、ニトロ基、シアノ基、イソシアノ基、アミノ基、ヒドロキシル基、メルカプト基、メチルアミノ基、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ジイソプロピルアミノ基、トリメチルシリル基、ジメチルシリル基、又は、1個の-CH2-又は2個以上の-CH2-が各々独立して-O-、-S-、-CO-、-CS-、-COO-、-OCO-、-CO-S-、-S-CO-、-O-CO-O-、-CO-NH-、-NH-CO-、-CH=CH-COO-、-CH=CH-OCO-、-COO-CH=CH-、-OCO-CH=CH-、-CH=CH-、-CF=CF-若しくは-C≡C-によって置換されていても良い炭素原子数1から20の直鎖状アルキル基又は炭素原子数3から20の分岐状若しくは環状アルキル基を表すが、酸素原子同士が直接結合することはなく、当該アルキル基中の任意の水素原子はフッ素原子に置換されていても良く、
A1及びA2は各々独立して置換されていてもよい炭素原子数3から16の炭化水素環又は複素環を表すが、A2が複数存在する場合それらは同一であっても異なっていても良く、
L1及びL2は各々独立して水素原子、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、ペンタフルオロスルファニル基、ニトロ基、シアノ基、イソシアノ基、アミノ基、ヒドロキシル基、メルカプト基、メチルアミノ基、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ジイソプロピルアミノ基、トリメチルシリル基、ジメチルシリル基、チオイソシアノ基、又は、1個の-CH2-又は2個以上の-CH2-が各々独立して-O-、-S-、-CO-、-CS-、-COO-、-OCO-、-CO-S-、-S-CO-、-O-CO-O-、-CO-NH-、-NH-CO-、-CH=CH-COO-、-CH=CH-OCO-、-COO-CH=CH-、-OCO-CH=CH-、-CH=CH-、-CF=CF-若しくは-C≡C-によって置換されていても良い炭素原子数1から20の直鎖状アルキル基又は炭素原子数3から20の分岐状若しくは環状アルキル基を表すが、酸素原子同士が直接結合することはなく、当該アルキル基中の任意の水素原子はフッ素原子に置換されていても良く、
Z1は各々独立して単結合、-CH=CH-、-CF=CF-、-C≡C-、-COO-、-OCO-、-OCOO-、-CH2O-、-OCH2-、-CF2O-、-OCF2-、-CH=CHCOO-、-OCOCH=CH-、-CH=C(CH3)COO-、-OCOC(CH3)=CH-、-CH2-CH(CH3)COO-、-OCOCH(CH3)―CH2-、-OCH2CH2O-、-CH=N-N=CH-、-CH=N-、-N=CH-又は炭素原子数2から20のアルキレン基を表し、当該アルキレン基中の1個又は2個以上の-CH2-は-O-、-COO-又は-OCO-で置換されてもよいが酸素原子同士が直接結合することはなく、Z1が複数存在する場合それらは同一であっても異なっていても良く、ここで存在するZ1のうち少なくとも一つは単結合以外の基を表し、
n1は1から3の整数を表す。)で表される化合物を提供し、当該化合物を含有する液晶組成物及び当該液晶組成物を使用した素子を提供する。
【発明の効果】
【0010】
本発明の化合物は、大きな屈折率異方性Δnを有し、十分に高いTniを示し、液晶組成物への相溶性が高く、高周波数領域において大きな誘電率異方性を示すことから、高周波移相器、フェーズドアレイアンテナ、画像認識装置、測距装置、液晶表示素子、液晶レンズ又は立体画像表示用複屈折レンズ等の素子用の材料として有用である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明は、一般式(I)で表される化合物、当該化合物を含有する液晶組成物及び当該液晶組成物を使用した素子を提供する。
【0012】
一般式(I)において、R1は水素原子、炭素原子数1から20の直鎖状アルキル基又は炭素原子数3から20の分岐状若しくは環状アルキル基を表し、当該アルキル基中の任意の水素原子がハロゲン原子に置換されていても良く、当該アルキル基中の1個又は2個以上の-CH2-が各々独立して-O-、-S-、-CO-、-CS-、-COO-、-OCO-、-CO-S-、-S-CO-、-O-CO-O-、-CO-NH-、-NH-CO-、-CH=CH-、-CF=CF-又は-C≡C-に置き換えられても良いが、酸素原子同士が直接結合することはない。液晶組成物への相溶性、屈折率異方性、電圧保持率、合成の容易さ及び原料の入手性の観点から、R1は水素原子、基中の任意の水素原子がハロゲン原子に置換されていても良く、基中の1個又は2個以上の-CH2-が各々独立して-O-、-S-、-CH=CH-、-CF=CF-又は-C≡C-に置き換えられても良い炭素原子数1から20の直鎖状又は分岐状アルキル基を表すことが好ましく、R1は基中の任意の水素原子がフッ素原子に置換されていても良く、基中の1個又は2個以上の-CH2-が各々独立して-O-、-CH=CH-又は-C≡C-に置き換えられても良い炭素原子数1から12の直鎖状又は分岐状アルキル基を表すことがより好ましく、R1は炭素原子数1から8のアルキル基、炭素原子数1から7のアルコキシ基、炭素原子数2から8のアルケニル基、炭素原子数2から7のアルケニルオキシ基又は炭素原子数2から8のアルキニル基を表すことがさらに好ましく、R1は炭素原子数2から5のアルキル基、炭素原子数1から4のアルコキシ基、炭素原子数2から5のアルケニル基又は炭素原子数3から7のアルキニル基を表すことが特に好ましい。
【0013】
一般式(I)において、R2は水素原子、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、ペンタフルオロスルファニル基、ニトロ基、シアノ基、イソシアノ基、アミノ基、ヒドロキシル基、メルカプト基、メチルアミノ基、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ジイソプロピルアミノ基、トリメチルシリル基、ジメチルシリル基、又は、1個の-CH2-又は2個以上の-CH2-が各々独立して-O-、-S-、-CO-、-CS-、-COO-、-OCO-、-CO-S-、-S-CO-、-O-CO-O-、-CO-NH-、-NH-CO-、-CH=CH-COO-、-CH=CH-OCO-、-COO-CH=CH-、-OCO-CH=CH-、-CH=CH-、-CF=CF-若しくは-C≡C-によって置換されていても良い炭素原子数1から20の直鎖状アルキル基又は炭素原子数3から20の分岐状若しくは環状アルキル基を表すが、酸素原子同士が直接結合することはなく、当該アルキル基中の任意の水素原子はフッ素原子に置換されていても良い。液晶組成物への相溶性、屈折率異方性、誘電率異方性、電圧保持率、合成の容易さ及び原料の入手性の観点から、R2はフッ素原子、塩素原子、ニトロ基、シアノ基、イソシアノ基又は基中の任意の水素原子がフッ素原子に置換されていても良く、基中の1個の-CH2-又は2個以上の-CH2-が各々独立して-O-、-S-、-CH=CH-、-CF=CF-若しくは-C≡C-によって置換されていても良い炭素原子数1から20の直鎖状アルキル基又は炭素原子数3から20の分岐状若しくは環状アルキル基を表すことが好ましく、R2はフッ素原子、シアノ基又は基中の任意の水素原子がフッ素原子に置換されていても良く、基中の-CH2-が-O-によって置換されていても良い炭素原子数1から10の直鎖状アルキル基又は炭素原子数3から10の分岐状若しくは環状アルキル基を表すことがより好ましく、R2はフッ素原子、シアノ基又は炭素原子数1から10の直鎖状アルキル基又は炭素原子数3から10の分岐状若しくは環状アルキル基を表すことがさらに好ましく、R2はフッ素原子、シアノ基又は炭素原子数1から8の直鎖状アルキル基を表すことが特に好ましい。
【0014】
一般式(I)において、A1及びA2は各々独立して置換されていてもよい炭素原子数3から16の炭化水素環又は複素環を表すが、A2が複数存在する場合それらは同一であっても異なっていても良い。液晶組成物への相溶性、屈折率異方性、誘電率異方性、電圧保持率、合成の容易さ及び原料の入手性の観点から、A1及びA2は各々独立して、無置換であるか又は1つ以上の置換基L3によって置換されていても良い、
(a)1,4-シクロへキシレン基(この基中に存在する1個の-CH2-又は隣接していない2個以上の-CH2-は-O-又は-S-に置き換えられても良い。)
(b)1,4-フェニレン基(この基中に存在する1個の-CH=又は隣接していない2個以上の-CH=は-N=に置き換えられても良い。)
(c)1,4-シクロヘキセニレン基、ビシクロ[2.2.2]オクタン-1,4-ジイル基、ナフタレン-2,6-ジイル基、ナフタレン-1,4-ジイル基、1,2,3,4-テトラヒドロナフタレン-2,6-ジイル基、5,6,7,8-テトラヒドロナフタレン-1,4-ジイル基、デカヒドロナフタレン-2,6-ジイル基、アントラセン-2,6-ジイル基、アントラセン-1,4-ジイル基、アントラセン-9,10-ジイル基、フェナントレン-2,7-ジイル基(これらの基中に存在する水素原子はフッ素原子又は塩素原子に置換されても良く、また、ナフタレン-2,6-ジイル基、ナフタレン-1,4-ジイル基、1,2,3,4-テトラヒドロナフタレン-2,6-ジイル基、5,6,7,8-テトラヒドロナフタレン-1,4-ジイル基、アントラセン-2,6-ジイル基、アントラセン-1,4-ジイル基、アントラセン-9,10-ジイル基又はフェナントレン-2,7-ジイル基中に存在する1個の-CH=又は2個以上の-CH=は-N=に置き換えられても良い。)
(d)チオフェン-2,5-ジイル基、ベンゾチオフェン-2,5-ジイル基、ベンゾチオフェン-2,6-ジイル基、ジベンゾチオフェン-3,7-ジイル基、ジベンゾチオフェン-2,6-ジイル基、チエノ[3,2-b]チオフェン-2,5-ジイル基(この基中に存在する1個の-CH=又は隣接していない2個以上の-CH=は-N=に置き換えられても良い。)
からなる群より選ばれる基を表すことが好ましく、A2は複数存在する場合それらは同一であっても異なっていても良い。また、A1及びA2は各々独立して無置換であるか又は1つ以上の置換基L3によって置換されていても良い、1,4-フェニレン基、ナフタレン-2,6-ジイル基、ナフタレン-1,4-ジイル基、5,6,7,8-テトラヒドロナフタレン-1,4-ジイル基、フェナントレン-2,7-ジイル基、ベンゾチオフェン-2,5-ジイル基、ベンゾチオフェン-2,6-ジイル基、ベンゾチアゾール-2,5-ジイル基、ベンゾチアゾール-2,6-ジイル基、ジベンゾチオフェン-3,7-ジイル基、ジベンゾチオフェン-2,6-ジイル基又はチエノ[3,2-b]チオフェン-2,5-ジイル基から選ばれる基を表すことがより好ましく、A2は複数存在する場合それらは同一であっても異なっていても良い。また、A1及びA2は各々独立して下記の式(A-1)から式(A-17)
【0015】
【0016】
(式中、破線は結合位置を表し、L3が複数存在する場合それらは同一であっても異なっていても良い。)から選ばれる基を表すことがさらに好ましく、A2は複数存在する場合それらは同一であっても異なっていても良く、各々独立して式(A-1)から式(A-7)、式(A-12)、式(A-15)及び式(A-17)から選ばれる基を表すことがさらにより好ましく、各々独立して式(A-1)、式(A-3)から式(A-7)から選ばれる基を表すことが特に好ましい。
【0017】
L3は水素原子、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、ペンタフルオロスルファニル基、ニトロ基、シアノ基、イソシアノ基、アミノ基、ヒドロキシル基、メルカプト基、メチルアミノ基、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ジイソプロピルアミノ基、トリメチルシリル基、ジメチルシリル基、チオイソシアノ基、又は、1個の-CH2-又は2個以上の-CH2-が各々独立して-O-、-S-、-CO-、-CS-、-COO-、-OCO-、-CO-S-、-S-CO-、-O-CO-O-、-CO-NH-、-NH-CO-、-CH=CH-COO-、-CH=CH-OCO-、-COO-CH=CH-、-OCO-CH=CH-、-CH=CH-、-CF=CF-若しくは-C≡C-によって置換されていても良い炭素原子数1から20の直鎖状アルキル基又は炭素原子数3から20の分岐状若しくは環状アルキル基を表すが、酸素原子同士が直接結合することはなく、当該アルキル基中の任意の水素原子はフッ素原子に置換されていても良い基を表す。液晶組成物への相溶性、屈折率異方性、誘電率異方性、電圧保持率、合成の容易さ及び原料の入手性の観点から、L3はフッ素原子、塩素原子又は基中の任意の水素原子がフッ素原子に置換されていても良く、基中の1個の-CH2-又は2個以上の-CH2-が各々独立して-O-、-S-、-CH=CH-、-CF=CF-若しくは-C≡C-によって置換されていても良い炭素原子数1から20の直鎖状アルキル基又は炭素原子数3から20の分岐状若しくは環状アルキル基を表すことが好ましく、L3はフッ素原子又は基中の任意の水素原子がフッ素原子に置換されていても良く、基中の-CH2-が-O-によって置換されていても良い炭素原子数1から10の直鎖状アルキル基又は炭素原子数3から10の分岐状若しくは環状アルキル基を表すことがより好ましく、L3はフッ素原子又は炭素原子数1から10の直鎖状アルキル基又は炭素原子数3から10の分岐状若しくは環状アルキル基を表すことがさらに好ましく、L3はフッ素原子又は炭素原子数1から8の直鎖状アルキル基を表すことが特に好ましい。
【0018】
一般式(I)において、Z1は各々独立して単結合、-CH=CH-、-CF=CF-、-C≡C-、-COO-、-OCO-、-OCOO-、-CH2O-、-OCH2-、-CF2O-、-OCF2-、-CH=CHCOO-、-OCOCH=CH-、-CH=C(CH3)COO-、-OCOC(CH3)=CH-、-CH2-CH(CH3)COO-、-OCOCH(CH3)―CH2-、-OCH2CH2O-、-CH=N-N=CH-、-CH=N-、-N=CH-又は炭素原子数2から20のアルキレン基を表し、当該アルキレン基中の1個又は2個以上の-CH2-は-O-、-COO-又は-OCO-で置換されてもよいが酸素原子同士が直接結合することはない構造が好ましい。ここで、Z1が複数存在する場合それらは同一であっても異なっていても良い。また、ここで存在するZ1のうち少なくとも一つは単結合以外の基を表すことが、Δnを上昇させる観点から好ましい。液晶組成物への相溶性、屈折率異方性、誘電率異方性、電圧保持率、合成の容易さ及び原料の入手性の観点から、Z1は各々独立して単結合、-CH=CH-、-CF=CF-、-C≡C-、-COO-、-OCO-、-OCOO-、-CH2O-、-OCH2-、-CF2O-、-OCF2-、-CH=CHCOO-、-OCOCH=CH-、-CH=C(CH3)COO-、-OCOC(CH3)=CH-、-CH=N-N=CH-、-CH=N-又は-N=CH-を表すことがより好ましい。また、Z1は各々独立して単結合、-CH=CH-、-CF=CF-、-C≡C-、-COO-、-OCO-、-OCOO-、-CH=CHCOO-、-OCOCH=CH-、-CH=C(CH3)COO-、-OCOC(CH3)=CH-、-CH=N-N=CH-、-CH=N-又は-N=CH-を表すことがさらに好ましく、各々独立して単結合、-CH=CH-、-CF=CF-、-C≡C-、-COO-、-OCO-、-CH=N-N=CH-、-CH=N-又は-N=CH-を表すことがさらに好ましく、各々独立して単結合、-CH=CH-、-CF=CF-、-C≡C-、-CH=N-N=CH-、-CH=N-又は-N=CH-を表すことがとりわけ好ましく、各々独立して単結合又は-C≡C-を表すことが最も好ましい。
【0019】
一般式(I)において、n1は1から3の整数を表すことが好ましく、1又は2の整数を表すことが更に好ましく、1であることが特に好ましい。
【0020】
なお、一般式(I)において、化合物の安定性の観点から、硫黄原子と硫黄原子及び/又は酸素原子と硫黄原子が直接結合することはないことが好ましい。
【0021】
上述の通り、n1は1から3の整数を表すことから、一般式(I)で表される化合物は構造中に環構造(単環又は縮合環)を3個以上含む。特に、環構造同士が連結し化合物全体で棒状の分子構造を形成する場合、液晶性が向上しTniが高くなることから、液晶組成物に添加した際には高い相溶性を維持しつつ液晶相温度範囲を効果的に広げることができる。さらに、環構造中のπ電子が、環同士の直接又は連結基を介して化合物全体に共役し広がる場合、Δnを効果的に高める共に、高周波数領域において大きな誘電率異方性を示すという優れた効果を示す。
【0022】
一般式(I)で表される化合物は、液晶相を示す温度範囲の広さ、液晶組成物への相溶性、屈折率異方性、誘電率異方性、電圧保持率、合成の容易さ及び原料の入手性の観点から、下記の一般式(I-i)
【0023】
【0024】
(式中、R11は水素原子、炭素原子数1から20の直鎖状又は分岐状アルキル基を表し、当該アルキル基中の任意の水素原子がハロゲン原子に置換されていても良く、当該アルキル基中の1個又は2個以上の-CH2-が各々独立して-O-、-S-、-CH=CH-、-CF=CF-又は-C≡C-に置き換えられても良く、
R21はフッ素原子、塩素原子、ニトロ基、シアノ基、イソシアノ基又は炭素原子数1から20の直鎖状アルキル基又は炭素原子数3から20の分岐状若しくは環状アルキル基を表し、当該アルキル基中の任意の水素原子がフッ素原子に置換されていても良く、当該アルキル基中の1個の-CH2-又は2個以上の-CH2-が各々独立して-O-、-S-、-CH=CH-、-CF=CF-若しくは-C≡C-によって置換されていても良く、
A11及びA21は各々独立して1,4-シクロへキシレン基、テトラヒドロピランー2,5-ジイル基、ジオキサン-2,5-ジイル基、1,4-フェニレン基、ナフタレン-2,6-ジイル基、ナフタレン-1,4-ジイル基、5,6,7,8-テトラヒドロナフタレン-1,4-ジイル基、フェナントレン-2,7-ジイル基、ベンゾチオフェン-2,5-ジイル基、ベンゾチオフェン-2,6-ジイル基、ベンゾチアゾール-2,5-ジイル基、ベンゾチアゾール-2,6-ジイル基、ジベンゾチオフェン-3,7-ジイル基、ジベンゾチオフェン-2,6-ジイル基又はチエノ[3,2-b]チオフェン-2,5-ジイル基を表すが、A21が複数存在する場合それらは同一であっても異なっていても良く、これらの基は無置換であるか又は1つ以上の置換基L31によって置換されていても良く、
L11及びL21は各々独立して水素原子、フッ素原子、塩素原子、炭素原子数1から20の直鎖状アルキル基又は炭素原子数3から20の分岐状若しくは環状アルキル基を表すが、当該アルキル基中の任意の水素原子がフッ素原子に置換されていても良く、当該アルキル基中の1個の-CH2-又は2個以上の-CH2-が各々独立して-O-、-S-、-CH=CH-、-CF=CF-若しくは-C≡C-によって置換されていても良く、
L31は各々独立してフッ素原子、塩素原子、炭素原子数1から20の直鎖状アルキル基又は炭素原子数3から20の分岐状若しくは環状アルキル基を表すが、当該アルキル基中の任意の水素原子がフッ素原子に置換されていても良く、当該アルキル基中の1個の-CH2-又は2個以上の-CH2-が各々独立して-O-、-S-、-CH=CH-、-CF=CF-若しくは-C≡C-によって置換されていても良く、L31が複数存在する場合それらは同一であっても異なっていても良く、
Z11は各々独立して単結合、-OCH2-、-CH2O-、-CH2CH2-、-CF2O-、-OCF2-、-CH=CH-、-CH=N-、-N=CH-、-CH=N-N=CH-、-CF=CF-又は-C≡C-を表すが、Z11が複数存在する場合それらは同一であっても異なっていても良く、ここで存在するZ11のうち少なくとも一つは単結合以外の基を表し、
n11は1から3の整数を表す。)で表される化合物であることがより好ましく、
下記の一般式(I-ii)
【0025】
【0026】
(式中、R12は炭素原子数1から12の直鎖状又は分岐状アルキル基を表し、当該アルキル基中の任意の水素原子がフッ素原子に置換されていても良く、当該アルキル基中の1個又は2個以上の-CH2-が各々独立して-O-、-CH=CH-又は-C≡C-に置き換えられても良く、
R22はフッ素原子、シアノ基又は炭素原子数1から10の直鎖状アルキル基又は炭素原子数3から10の分岐状若しくは環状アルキル基を表し、当該アルキル基中の任意の水素原子はフッ素原子に置換されていても良く、当該アルキル基中の1個又は2個以上の-CH2-は-O-によって置換されていても良く、
A12及びA22は各々独立して下記の式(A-ii-1)から式(A-ii-17)
【0027】
【0028】
(式中、破線は結合位置を表し、L32及びL42が複数存在する場合それらは同一であっても異なっていても良い。)から選ばれる基を表すが、A22が複数存在する場合それらは同一であっても異なっていても良く、
L12、L22、L32及びL42は、各々独立して水素原子、フッ素原子又は炭素原子数1から10の直鎖状アルキル基又は炭素原子数3から10の分岐状若しくは環状アルキル基を表し、当該アルキル基中の任意の水素原子がフッ素原子に置換されていても良く、当該アルキル基中の1個又は2個以上の-CH2-が-O-によって置換されていても良く、
Z12は各々独立して-CH=CH-、-CH=N-、-N=CH-、-CH=N-N=CH-、-CF=CF-又は-C≡C-を表すが、Z12が複数存在する場合それらは同一であっても異なっていても良く、
n12は1から3の整数を表す。)で表される化合物であることがさらに好ましい。
【0029】
一般式(I)で表される化合物として具体的には、下記の式(I-1)から式(I-25)
【0030】
【0031】
【0032】
【0033】
【0034】
【0035】
で表される化合物が挙げられる。
【0036】
本発明の化合物は以下の製法で製造することができる。
(製法1)下記式(s-5)で表される化合物の製造
【0037】
【0038】
(式中、R1s、R2s、A1s、L1s、L2s及びL3sは前記一般式(I)におけるR1、R2、A1、L1、L2及びL3と同じ意味を表す。)
一般式(s-1)で表される化合物を一般式(s-2)で表される化合物と反応させることにより一般式(s-3)で表される化合物を得ることができる。反応方法としては例えばパラジウム触媒、銅触媒及び塩基を用いた薗頭カップリング反応が挙げられる。パラジウム触媒の具体例としては[1,1’-ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン]パラジウム(II)ジクロリド、酢酸パラジウム(II)、ジクロロビス[ジ-tert-ブチル(p-ジメチルアミノフェニル)ホスフィノ]パラジウム(II)、ジクロロビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(II)、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)等が挙げられる。金属触媒として酢酸パラジウム(II)を使用する場合、トリフェニルホスフィン、2-ジシクロヘキシルホスフィノ-2’,4’,6’-トリイソプロピルビフェニル等の配位子を添加してもよい。銅触媒の具体例としてはヨウ化銅(I)が挙げられる。塩基の具体例としてはトリエチルアミン等が挙げられる。
一般式(s-3)で表される化合物を一般式(s-4)で表される化合物と反応させることにより一般式(s-5)で表される化合物を得ることができる。反応方法としては例えばパラジウム触媒、銅触媒及び塩基を用いた薗頭カップリング反応が挙げられる。パラジウム触媒、銅触媒及び塩基の具体例としては上記のものが挙げられる。
(製法2)下記式(s-10)で表される化合物の製造
【0039】
【0040】
(式中、R1s、R2s、A1s、L1s、L2s及びL3sは前記一般式(I)におけるR1、R2、A1、L1、L2及びL3と同じ意味を表す。)
一般式(s-6)で表される化合物を一般式(s-7)で表される化合物と反応させることにより一般式(s-8)で表される化合物を得ることができる。反応方法としては例えばパラジウム触媒、銅触媒及び塩基を用いた薗頭カップリング反応が挙げられる。パラジウム触媒、銅触媒及び塩基の具体例としては上記のものが挙げられる。
一般式(s-8)で表される化合物を一般式(s-9)で表される化合物と反応させることにより一般式(s-10)で表される化合物を得ることができる。反応方法としては例えばパラジウム触媒及び塩基を用いたヘック反応が挙げられる。パラジウム触媒及び塩基の具体例としては上記のものが挙げられる。
(製法3)下記式(s-15)で表される化合物の製造
【0041】
【0042】
(式中、R1s、R2s、A1s、L1s、L2s及びL3sは前記一般式(I)におけるR1、R2、A1、L1、L2及びL3と同じ意味を表す。)
一般式(s-11)で表される化合物を一般式(s-12)で表される化合物と反応させることにより一般式(s-13)で表される化合物を得ることができる。反応方法としては例えばパラジウム触媒、銅触媒及び塩基を用いた薗頭カップリング反応が挙げられる。パラジウム触媒、銅触媒及び塩基の具体例としては上記のものが挙げられる。
一般式(s-13)で表される化合物を一般式(s-14)で表される化合物と反応させることにより一般式(s-15)で表される化合物を得ることができる。反応方法としては例えばウィッティヒ反応が挙げられる。
(製法4)下記式(s-21)で表される化合物の製造
【0043】
【0044】
(式中、R1s、R2s、A1s、L1s、L2s及びL3sは前記一般式(I)におけるR1、R2、A1、L1、L2及びL3と同じ意味を表す。)
一般式(s-16)で表される化合物を一般式(s-17)で表される化合物と反応させることにより一般式(s-18)で表される化合物を得ることができる。反応方法としては例えばパラジウム触媒及び塩基を用いたヘック反応が挙げられる。パラジウム触媒及び塩基の具体例としては上記のものが挙げられる。
一般式(s-18)で表される化合物を水素と反応させることにより一般式(s-19)で表される化合物を得ることができる。反応方法としては例えば金属触媒存在下、水素添加させる方法が挙げられる。金属触媒の具体例としては10%パラジウム炭素等が挙げられる。
一般式(s-19)で表される化合物を一般式(s-20)で表される化合物と反応させることにより一般式(s-21)で表される化合物を得ることができる。反応方法としては例えばパラジウム触媒、銅触媒及び塩基を用いた薗頭カップリング反応が挙げられる。パラジウム触媒、銅触媒及び塩基の具体例としては上記のものが挙げられる。
【0045】
各工程において記載した以外の反応条件として、例えば実験化学講座(日本化学会編、丸善株式会社発行)、Organic Syntheses(A John Wiley & Sons,Inc.,Publication)、Beilstein Handbook of Organic Chemistry(Beilstein-Institut fuer Literatur der Organischen Chemie、Springer-Verlag Berlin and Heidelberg GmbH & Co.K)、Fiesers’ Reagents for Organic Synthesis(John Wiley & Sons,Inc.)等の文献に記載のもの又はSciFinder(Chemical Abstracts Service,American Chemical Society)、Reaxys(Elsevier Ltd.)等のデータベースに収載のものが挙げられる。
【0046】
各工程において必要に応じて官能基を保護することができる。保護基としては、例えば、GREENE’S PROTECTIVE GROUPS IN ORGANIC SYNTHESIS((Fourth Edition)、PETER G.M.WUTS、THEODORA W.GREENE共著、A John Wiley & Sons,Inc.,Publication)等に記載の保護基が挙げられる。
【0047】
また、各工程において必要に応じて精製を行うことができる。精製方法としてはクロマトグラフィー、再結晶、蒸留、昇華、再沈殿、吸着、分液処理等が挙げられる。精製剤の具体例としてはシリカゲル、アルミナ、活性炭等が挙げられる。
【0048】
一般式(I)で表される化合物は、液晶組成物へ添加し使用されることが好ましい。液晶組成物が一般式(I)で表される化合物を含有する場合、一般式(I)で表される1つの化合物を含有しても良く、一般式(I)で表される複数の化合物を含有しても良い。本発明の液晶組成物が一般式(I)で表される化合物を含有する場合、液晶組成物における一般式(I)で表される化合物の含有量の合計が、5質量%以上であることが好ましく、10質量%以上であり95質量%以下であることがより好ましく、15質量%以上であり90質量%以下であることがさらに好ましく、20質量%以上であり85質量%以下であることが特に好ましい。ここで、「一般式(I)で表される化合物の含有量の合計」とは、液晶組成物が一般式(I)で表される1つの化合物を含有する場合、一般式(I)で表される化合物の含有量を意味し、液晶組成物が一般式(I)で表される複数の化合物を含有する場合、一般式(I)で表される複数の化合物の含有量の合計を意味する。
【0049】
一般式(I)で表される化合物を含有する液晶組成物は、屈折率異方性(Δn)が0.15以上であり1.00以下であることが好ましい。液晶組成物の液晶相温度範囲、駆動電圧、回転粘度及び弾性率の観点から、屈折率異方性(Δn)は0.20以上であり0.95以下であることが好ましく、0.25以上であり0.90以下であることがより好ましく、0.30以上であり0.85以下であることがさらに好ましく、0.35以上であり0.80以下であることが特に好ましい。
【0050】
一般式(I)で表される化合物を含有する液晶組成物を、高周波移相器、フェーズドアレイアンテナ、画像認識装置、測距装置、液晶表示素子、液晶レンズ又は立体画像表示用複屈折レンズに使用する場合、一般式(I)で表される化合物を含有する液晶組成物は、1kHzにおける誘電率異方性(Δε(1kHz))が2以上であり60以下であることが好ましい。液晶組成物の液晶相温度範囲、保存安定性、耐候性、駆動電圧、回転粘度及び弾性率の観点から、1kHzにおける誘電率異方性(Δε(1kHz))は2.5以上であり50以下であることが好ましく、3以上であり40以下であることがより好ましく、3.5以上であり30以下であることが特に好ましい。
【0051】
一般式(I)で表される化合物を含有する液晶組成物は、高周波数素子に使用することが好ましい。周波数範囲としては、1MHz以上であり1THz以下であることが好ましく、1GHz以上であり500GHz以下であることがより好ましく、2GHz以上であり300GHz以下であることがさらに好ましく、5GHz以上であり150GHz以下であることが特に好ましい。また、一般式(I)で表される化合物を含有する液晶組成物は、画像認識装置及び測距装置に用いることも好ましく、とりわけライダー(Light Detection and Ranging、Laser Imaging Detection and Ranging。以下LiDARと略記)に使用することが好ましい。周波数範囲としては、50THz以上であり1000THz以下であることが好ましく、100THz以上であり500THz以下であることがさらに好ましく、150THz以上であり350THz以下であることが特に好ましい。すなわち、LiDARに用いられる光は赤外光であることが好ましく、波長は800~2000nmであることが好ましく、905n m又は1550nmの波長の赤外レーザが特に好ましい。用いる光検出器のコストや全天候における感度を重視する場合は905nmの赤外レーザが好ましく、人間の視覚に関する安全性を重視する場合には1550nmの赤外レーザが好ましい。
【0052】
一般式(I)で表される化合物を含有する液晶組成物は、下記の一般式(IV)
【0053】
【0054】
(式中、R6は炭素原子数1から8のアルキル基、炭素原子数1から7のアルコキシ基、炭素原子数2から8のアルケニル基又は炭素原子数2から7のアルケニルオキシ基を表し、
A6は下記の式(A6-1)から式(A6-8)
【0055】
【0056】
(式中、破線は結合位置を表す。)から選ばれる基を表すが、A6が複数存在する場合それらは同一であっても異なっていても良く、
Z4は-O-、-S-、-OCH2-、-CH2O-、-CH2CH2-、-CO-、-COO-、-OCO-、-CO-S-、-S-CO-、-O-CO-O-、-CO-NH-、-NH-CO-、-OCO-NH-、-NH-COO-、-NH-CO-NH-、-NH-O-、-O-NH-、-SCH2-、-CH2S-、-CF2O-、-OCF2-、-CF2S-、-SCF2-、-CH=CH-COO-、-CH=CH-OCO-、-COO-CH=CH-、-OCO-CH=CH-、-COO-CH2CH2-、-OCO-CH2CH2-、-CH2CH2-COO-、-CH2CH2-OCO-、-COO-CH2-、-OCO-CH2-、-CH2-COO-、-CH2-OCO-、-CH=CH-、-N=N-、-CH=N-、-N=CH-、-CH=N-N=CH-、-CF=CF-、-C≡C-又は単結合を表すが、Z4が複数存在する場合それらは同一であっても異なっていても良く、
m6は1から4の整数を表し、
Ayは下記の式(Ay-1)及び式(Ay-2)
【0057】
【0058】
(式中、破線は結合位置を表し、Y7、Y9、Y10及びY12は各々独立して水素原子、フッ素原子又は塩素原子を表し、Y8及びY11は各々独立してフッ素原子、塩素原子、シアノ基、チオイソシアノ基、ニトロ基、ペンタフルオロスルファニル基、任意の水素原子がフッ素原子に置換された炭素原子数1から8のアルキル基、任意の水素原子がフッ素原子に置換された炭素原子数1から7のアルコキシ基、任意の水素原子がフッ素原子に置換された炭素原子数2から8のアルケニル基又は任意の水素原子がフッ素原子に置換された炭素原子数2から7のアルケニルオキシ基を表すが、ここで1個の-CH2-又は2個以上の-CH2-が各々独立して-O-、-S-、-CO-、-COO-、-OCO-、-CO-S-、-S-CO-、-O-CO-O-、-CO-NH-、-NH-CO-、-CH=CH-COO-、-CH=CH-OCO-、-COO-CH=CH-、-OCO-CH=CH-、-CH=CH-、-CF=CF-若しくは-C≡C-によって置換されていても良い。)から選ばれる基を表す。)で表される化合物を含有することが好ましい。液晶組成物の液晶相温度範囲、屈折率異方性、誘電率異方性、回転粘度及び弾性率の観点から、一般式(VI)で表される化合物は下記の一般式(VI-i)
【0059】
【0060】
(式中、R61は炭素原子数1から5のアルキル基、炭素原子数1から4のアルコキシ基、炭素原子数2から5のアルケニル基又は炭素原子数2から4のアルケニルオキシ基を表し、
A61は上記の式(A6-1)から式(A6-6)から選ばれる基を表すが、A61が複数存在する場合それらは同一であっても異なっていても良く、
Z41は-OCH2-、-CH2O-、-CH2CH2-、-COO-、-OCO-、-CF2O-、-OCF2-、-CH=CH-COO-、-OCO-CH=CH-、-CH=CH-、-CH=N-N=CH-、-CF=CF-、-N=N-、-C≡C-又は単結合を表すが、Z41が複数存在する場合それらは同一であっても異なっていても良く、
m61は1から3の整数を表し、
Ay1は下記の式(Ay-1-i)及び式(Ay-2-i)
【0061】
【0062】
(式中、破線は結合位置を表し、Y71、Y91、Y101及びY121は各々独立して水素原子、フッ素原子又は塩素原子を表し、Y81及びY111は各々独立してフッ素原子、塩素原子、シアノ基、チオイソシアノ基、ニトロ基、ペンタフルオロスルファニル基、任意の水素原子がフッ素原子に置換されていてもよい炭素原子数1から8のアルキル基、任意の水素原子がフッ素原子に置換されていてもよい炭素原子数1から7のアルコキシ基、任意の水素原子がフッ素原子に置換されていてもよい炭素原子数2から8のアルケニル基又は任意の水素原子がフッ素原子に置換されていてもよい炭素原子数2から7のアルケニルオキシ基を表す。)から選ばれる基を表す。)で表される化合物であることが好ましく、一般式(VI)で表される化合物は下記の一般式(VI-ii)
【0063】
【0064】
(式中、R62は炭素原子数1から5のアルキル基、炭素原子数1から4のアルコキシ基、炭素原子数2から5のアルケニル基又は炭素原子数2から4のアルケニルオキシ基を表し、
A62は上記の式(A6-1)から式(A6-5)から選ばれる基を表すが、A62が複数存在する場合それらは同一であっても異なっていても良く、
Z42は-CF2O-、-OCF2-、-CH=CH-、-CF=CF-、-N=N-、-C≡C-又は単結合を表すが、Z42が複数存在する場合それらは同一であっても異なっていても良く、
m62は1、2又は3を表し、
Y72及びY92は各々独立して水素原子、フッ素原子又は塩素原子を表し、Y82はフッ素原子、塩素原子、シアノ基、チオイソシアノ基、ニトロ基、ペンタフルオロスルファニル基、任意の水素原子がフッ素原子に置換されていてもよい炭素原子数1から8のアルキル基、任意の水素原子がフッ素原子に置換されていてもよい炭素原子数1から7のアルコキシ基、任意の水素原子がフッ素原子に置換されていてもよい炭素原子数2から8のアルケニル基又は任意の水素原子がフッ素原子に置換されていてもよい炭素原子数2から7のアルケニルオキシ基を表す。)で表される化合物であることがより好ましく、一般式(VI)で表される化合物は下記の一般式(VI-iii)
【0065】
【0066】
(式中、R63は炭素原子数1から5のアルキル基、炭素原子数1から4のアルコキシ基又は炭素原子数2から5のアルケニル基を表し、
A63は上記の式(A6-1)から式(A6-5)から選ばれる基を表すが、A63が複数存在する場合それらは同一であっても異なっていても良く、
Z43は-CF2O-、-OCF2-、-N=N-、-C≡C-又は単結合を表すが、Z43が複数存在する場合それらは同一であっても異なっていても良く、
m63は1、2又は3を表し、
Y73及びY93は各々独立して水素原子、フッ素原子又は塩素原子を表し、Y83はフッ素原子、塩素原子、シアノ基又はチオイソシアノ基を表す。)で表される化合物であることがさらに好ましく、一般式(VI)で表される化合物は下記の一般式(VI-iv-1)から一般式(VI-iv-21)
【0067】
【0068】
【0069】
【0070】
【0071】
【0072】
(式中、R614は炭素原子数1から5のアルキル基、炭素原子数1から4のアルコキシ基又は炭素原子数2から5のアルケニル基を表す。)で表される化合物であることが特に好ましい。
【0073】
一般式(I)で表される化合物を含有する液晶組成物は、下記の一般式(III)
【0074】
【0075】
(式中、R31及びR32は各々独立して炭素原子数1から8のアルキル基、炭素原子数1から7のアルコキシ基、炭素原子数2から8のアルケニル基又は炭素原子数2から7のアルケニルオキシ基を表し、
A31及びA32は各々独立して下記の式(A3-1)から式(A3-8)
【0076】
【0077】
(式中、破線は結合位置を表す。)から選ばれる基を表すが、A32が複数存在する場合それらは同一であっても異なっていても良く、
m31は1から4の整数を表す。)で表される化合物を含有してもよい。液晶組成物の液晶相温度範囲、屈折率異方性、誘電率異方性、回転粘度及び弾性率の観点から、一般式(III)で表される化合物は下記の一般式(III-i)
【0078】
【0079】
(式中、R311及びR321は各々独立して炭素原子数1から5のアルキル基、炭素原子数1から4のアルコキシ基、炭素原子数2から5のアルケニル基又は炭素原子数2から4のアルケニルオキシ基を表し、
A311及びA321は各々独立して下記の式(A31-1)から式(A31-6)
【0080】
【0081】
(式中、破線は結合位置を表す。)から選ばれる基を表すが、A321が複数存在する場合それらは同一であっても異なっていても良く、
m311は1から3の整数を表す。)で表される化合物であることが好ましく、一般式(III)で表される化合物は下記の一般式(III-ii)
【0082】
【0083】
(式中、R312及びR322は各々独立して炭素原子数1から5のアルキル基、炭素原子数1から4のアルコキシ基、炭素原子数2から5のアルケニル基又は炭素原子数2から4のアルケニルオキシ基を表し、
A312及びA322は各々独立して下記の式(A32-1)から式(A32-4)
【0084】
【0085】
(式中、破線は結合位置を表す。)から選ばれる基を表すが、A322が複数存在する場合それらは同一であっても異なっていても良く、
m312は1又は2を表す。)で表される化合物であることがより好ましく、一般式(III)で表される化合物は下記の一般式(III-iii)
【0086】
【0087】
(式中、R313及びR323は各々独立して炭素原子数1から5のアルキル基、炭素原子数1から4のアルコキシ基又は炭素原子数2から5のアルケニル基を表し、
A313及びA323は各々独立して下記の式(A33-1)及び式(A33-2)
【0088】
【0089】
(式中、破線は結合位置を表す。)から選ばれる基を表すが、A323が複数存在する場合それらは同一であっても異なっていても良く、
m313は1又は2を表す。)で表される化合物であることがさらに好ましい。
ここで、一般式(III)で表される化合物は、具体的には下記の一般式(III-iv-1)から一般式(III-iv-10)
【0090】
【0091】
【0092】
(式中、R314及びR324は各々独立して炭素原子数1から5のアルキル基、炭素原子数1から4のアルコキシ基又は炭素原子数2から5のアルケニル基を表す。)で表される化合物であることが特に好ましい。
【0093】
また、一般式(I)で表される化合物は、誘電率異方性(Δε)が中性又は負である液晶組成物へ添加して使用しても良い。その場合、一般式(I)で表される化合物を含有する液晶組成物は、誘電率異方性(Δε)が-20以上であり2以下であることが好ましい。液晶組成物の液晶相温度範囲、保存安定性、耐候性、駆動電圧、回転粘度及び弾性率の観点から、誘電率異方性(Δε)は-15以上であり1.5以下であることが好ましく、-10以上であり1以下であることがより好ましく、-5以上であり0.5以下であることが特に好ましい。
【0094】
一般式(I)で表される化合物を含有する液晶組成物の誘電率異方性(Δε)が中性又は負である場合、液晶組成物は下記の一般式(IV)
【0095】
【0096】
(式中、R41及びR42は各々独立して炭素原子数1から8のアルキル基、炭素原子数1から7のアルコキシ基、炭素原子数2から8のアルケニル基又は炭素原子数2から7のアルケニルオキシ基を表し、
A41及びA42は各々独立して下記の式(A4-1)から式(A4-11)
【0097】
【0098】
(式中、破線は結合位置を表す。)から選ばれる基を表すが、A41が複数存在する場合それらは同一であっても異なっていても良く、A42が複数存在する場合それらは同一であっても異なっていても良く、
Z41及びZ42は各々独立して-O-、-S-、-OCH2-、-CH2O-、-CH2CH2-、-CO-、-COO-、-OCO-、-CO-S-、-S-CO-、-O-CO-O-、-CO-NH-、-NH-CO-、-OCO-NH-、-NH-COO-、-NH-CO-NH-、-NH-O-、-O-NH-、-SCH2-、-CH2S-、-CF2O-、-OCF2-、-CF2S-、-SCF2-、-CH=CH-COO-、-CH=CH-OCO-、-COO-CH=CH-、-OCO-CH=CH-、-COO-CH2CH2-、-OCO-CH2CH2-、-CH2CH2-COO-、-CH2CH2-OCO-、-COO-CH2-、-OCO-CH2-、-CH2-COO-、-CH2-OCO-、-CH=CH-、-N=N-、-CH=N-、-N=CH-、-CH=N-N=CH-、-CF=CF-、-C≡C-又は単結合を表すが、Z41が複数存在する場合それらは同一であっても異なっていても良く、Z42が複数存在する場合それらは同一であっても異なっていても良く、
m41及びm42は各々独立して0から3の整数を表すが、m41+m42は1から3の整数を表す。)で表される化合物を含有しても良い。液晶組成物の液晶相温度範囲、屈折率異方性、誘電率異方性、回転粘度及び弾性率の観点から、一般式(IV)で表される化合物は下記の一般式(IV-i)
【0099】
【0100】
(式中、R411及びR421は各々独立して炭素原子数1から5のアルキル基、炭素原子数1から4のアルコキシ基、炭素原子数2から5のアルケニル基又は炭素原子数2から4のアルケニルオキシ基を表し、
A411及びA421は各々独立して上記の式(A4-1)から式(A4-9)から選ばれる基を表すが、A411が複数存在する場合それらは同一であっても異なっていても良く、A421が複数存在する場合それらは同一であっても異なっていても良く、
Z411及びZ421は各々独立して-OCH2-、-CH2O-、-CH2CH2-、-COO-、-OCO-、-CF2O-、-OCF2-、-CH=CH-COO-、-OCO-CH=CH-、-CH=CH-、-CH=N-N=CH-、-CF=CF-、-C≡C-又は単結合を表すが、Z411が複数存在する場合それらは同一であっても異なっていても良く、Z421が複数存在する場合それらは同一であっても異なっていても良く、
m411及びm421は各々独立して0から3の整数を表すが、m411+m421は1から3の整数を表す。)で表される化合物であることが好ましく、一般式(IV)で表される化合物は下記の一般式(IV-ii)
【0101】
【0102】
(式中、R412及びR422は各々独立して炭素原子数1から5のアルキル基、炭素原子数1から4のアルコキシ基、炭素原子数2から5のアルケニル基又は炭素原子数2から4のアルケニルオキシ基を表し、
A412及びA422は各々独立して上記の式(A4-1)から式(A4-7)から選ばれる基を表すが、A412が複数存在する場合それらは同一であっても異なっていても良く、A422が複数存在する場合それらは同一であっても異なっていても良く、
Z412及びZ422は各々独立して-OCH2-、-CH2O-、-CH2CH2-、-COO-、-OCO-、-CF2O-、-OCF2-又は単結合を表すが、Z412が複数存在する場合それらは同一であっても異なっていても良く、Z422が複数存在する場合それらは同一であっても異なっていても良く、
m412及びm422は各々独立して0、1又は2を表すが、m412+m422は1又は2を表す。)で表される化合物であることがより好ましく、一般式(IV)で表される化合物は下記の一般式(IV-iii)
【0103】
【0104】
(式中、R413及びR423は各々独立して炭素原子数1から5のアルキル基、炭素原子数1から4のアルコキシ基又は炭素原子数2から5のアルケニル基を表し、
A413及びA423は各々独立して上記の式(A4-1)から式(A4-5)から選ばれる基を表すが、A413が複数存在する場合それらは同一であっても異なっていても良く、A423が複数存在する場合それらは同一であっても異なっていても良く、
Z413及びZ423は各々独立して-OCH2-、-CH2O-、-CH2CH2-又は単結合を表すが、Z413が複数存在する場合それらは同一であっても異なっていても良く、Z423が複数存在する場合それらは同一であっても異なっていても良く、
m413及びm423は各々独立して0、1又は2を表すが、m413+m423は1又は2を表す。)で表される化合物であることがさらに好ましく、一般式(IV)で表される化合物は下記の一般式(IV-iv-1)から一般式(IV-iv-8)
【0105】
【0106】
【0107】
(式中、R414及びR424は各々独立して炭素原子数1から5のアルキル基、炭素原子数1から4のアルコキシ基又は炭素原子数2から5のアルケニル基を表す。)で表される化合物であることが特に好ましい。
【0108】
一般式(I)で表される化合物を含有する液晶組成物は、その保存安定性を向上させるために、安定剤を添加することもできる。使用できる安定剤としては、例えば、ヒドロキノン類、ヒドロキノンモノアルキルエーテル類、第三ブチルカテコール類、ピロガロール類、チオフェノール類、ニトロ化合物類、β-ナフチルアミン類、β-ナフトール類、ニトロソ化合物等が挙げられる。安定剤を使用する場合の添加量は、組成物に対して0.005質量%から1質量%の範囲が好ましく、0.02質量%から0.8質量%がより好ましく、0.03質量%から0.5質量%がさらに好ましい。また、1種類の安定剤を用いても良く、2種類以上の安定剤を併用して用いても良い。安定剤としては下記の一般式(X1)
【0109】
【0110】
(式中、Spx1は1個の-CH2-又は隣接していない2個以上の-CH2-が各々独立して-O-、-S-、-CO-、-COO-、-OCO-、-CO-S-、-S-CO-、-O-CO-O-、-CO-NH-、-NH-CO-、-CH=CH-COO-、-CH=CH-OCO-、-COO-CH=CH-、-OCO-CH=CH-、-CH=CH-、-CF=CF-又は-C≡C-によって置換されても良い炭素原子数1から20のアルキレン基又は単結合を表し、Ax1は下記の式(Ax1-1)から式(Ax1-8)
【0111】
【0112】
(式中、破線は結合位置を表す。)から選ばれる基を表すが、Ax1が複数存在する場合それらは同一であっても異なっていても良く、
Zx1は-O-、-S-、-OCH2-、-CH2O-、-CH2CH2-、-CO-、-COO-、-OCO-、-CO-S-、-S-CO-、-O-CO-O-、-CO-NH-、-NH-CO-、-OCO-NH-、-NH-COO-、-NH-CO-NH-、-NH-O-、-O-NH-、-SCH2-、-CH2S-、-CF2O-、-OCF2-、-CF2S-、-SCF2-、-CH=CH-COO-、-CH=CH-OCO-、-COO-CH=CH-、-OCO-CH=CH-、-COO-CH2CH2-、-OCO-CH2CH2-、-CH2CH2-COO-、-CH2CH2-OCO-、-COO-CH2-、-OCO-CH2-、-CH2-COO-、-CH2-OCO-、-CH=CH-、-N=N-、-CH=N-、-N=CH-、-CH=N-N=CH-、-CF=CF-、-C≡C-又は単結合を表すが、Zx1が複数存在する場合それらは同一であっても異なっていても良く、
mx1は0又は1を表し、
mx2は0から4の整数を表す。)で表される化合物が挙げられる。電圧保持率、液晶組成物への相溶性の観点から、一般式(X1)で表される化合物は下記の一般式(X1-i)
【0113】
【0114】
(式中、Spx11は1個の-CH2-又は隣接していない2個以上の-CH2-が各々独立して-O-、-COO-又は-OCO-によって置換されても良い炭素原子数1から20のアルキレン基又は単結合を表し、Ax11は下記の式(Ax11-1)及び式(Ax11-2)
【0115】
【0116】
(式中、破線は結合位置を表す。)から選ばれる基を表すが、Ax11が複数存在する場合それらは同一であっても異なっていても良く、
Zx11は-COO-、-OCO-、-OCO-CH2CH2-、-CH2CH2-COO-又は単結合を表すが、Zx11が複数存在する場合それらは同一であっても異なっていても良く、
mx11は0又は1を表し、
mx21は0又は1を表す。)で表される化合物であることが好ましく、一般式(X1)で表される化合物は下記の一般式(X1-ii-1)から一般式(X1-ii-4)
【0117】
【0118】
(式中、Spx12は炭素原子数1から20のアルキレン基又は単結合を表す。)で表される化合物であることが特に好ましい。
【0119】
また、安定剤の他の例としては、下記の一般式(X2)
【0120】
【0121】
(式中、Rx21、Rx22、Rx23及びRx24は各々独立して水素原子、酸素原子、ヒドロキシル基、炭素原子数1から20のアルキル基又は炭素原子数1から20のアルコキシ基を表し、
Spx21、Spx22、Spx23及びSpx24は各々独立してスペーサー基又は単結合を表し、
mx21は0又は1を表し、
mx22は0又は1を表し、
mx23は0又は1を表す。)で表される化合物が挙げられる。電圧保持率、液晶組成物への相溶性の観点から、一般式(X2)で表される化合物は下記の一般式(X2-i)
【0122】
【0123】
(式中、Rx211、Rx221、Rx231及びRx241は各々独立して水素原子、酸素原子、ヒドロキシル基、炭素原子数1から10のアルキル基又は炭素原子数1から10のアルコキシ基を表し、
Spx211、Spx221、Spx231及びSpx241は各々独立して、基中の任意の水素原子がフッ素原子に置換されても良く、1個の-CH2-又は隣接していない2個以上の-CH2-が各々独立して-O-、-S-、-CO-、-COO-、-OCO-、-CO-S-、-S-CO-、-O-CO-O-、-CO-NH-、-NH-CO-、-CH=CH-、-CF=CF-又は-C≡C-に置き換えられても良い炭素原子数1から20の直鎖状又は分岐状アルキレン基又は単結合を表し、
mx211は0又は1を表し、
mx221は0又は1を表し、
mx231は0又は1を表す。)で表される化合物であることが好ましく、一般式(X2)で表される化合物は下記の一般式(X2-ii)
【0124】
【0125】
(式中、Rx212及びRx222は各々独立して水素原子、炭素原子数1から10のアルキル基又は炭素原子数1から10のアルコキシ基を表し、
Spx212及びSpx222は各々独立して、1個の-CH2-又は隣接していない2個以上の-CH2-が各々独立して-O-、-COO-又は-OCO-に置き換えられても良い炭素原子数1から10の直鎖状アルキレン基又は単結合を表し、
mx212は0又は1を表す。)で表される化合物であることがより好ましく、一般式(X2)で表される化合物は下記の一般式(X2-iii)
【0126】
【0127】
(式中、Rx213及びRx223は各々独立して水素原子、炭素原子数1から10のアルキル基又は炭素原子数1から10のアルコキシ基を表し、
Spx213は1個の-CH2-又は隣接していない2個以上の-CH2-が各々独立して-COO-又は-OCO-に置き換えられても良い炭素原子数1から10の直鎖状アルキレン基を表す。)で表される化合物であることが特に好ましい。
【0128】
本願発明において、1,4-シクロヘキシレン基、デカヒドロナフタレン-2,6-ジイル基及び1,3-ジオキサン-2,5-ジイル基に含まれる環構造は、各々トランス体及びシス体のいずれであっても良いが、液晶性の観点から、各々トランス体の含有率がシス体の含有率よりも多いことが好ましく、環構造におけるトランス体の含有率が80%以上であることがより好ましく、環構造におけるトランス体の含有率が90%以上であることがさらに好ましく、環構造におけるトランス体の含有率が95%以上であることがさらにより好ましく、環構造におけるトランス体の含有率が98%以上であることが特に好ましい。また、本願発明において下記の表記(CY-1)
【0129】
【0130】
(式中、破線は結合位置を表す。)は1,4-シクロヘキシレン基のトランス体及び/又はシス体を意味する。
【0131】
また、本願発明において、各元素は同じ元素の同位体に置き換えられていても良い。
【実施例】
【0132】
以下、実施例を挙げて本発明を更に記述するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。また、以下の実施例及び比較例の組成物における「%」は『質量%』を意味する。各工程において酸素及び/又は水分に不安定な物質を取り扱う際は、窒素ガス、アルゴンガス等の不活性ガス中で作業を行うことが好ましい。各化合物の純度はUPLC(Waters ACQUITY UPLC、BEH C18(100×2.1mm×1.7μm)、アセトニトリル/水又は0.1%ギ酸含有アセトニトリル/水、PDA、カラム温度40℃)、GPC(島津製作所 HPLC Prominence、Shodex KF-801(300mm×8mm×6μm)+KF-802(300mm×8mm×6μm)、テトラヒドロフラン、RI、UV(254nm)、カラム温度40℃)、GC(Agilent 6890A、J&W DB-1、30m×0.25mm×0.25μm、キャリアガス He、FID、100℃(1分)→昇温10℃/分→300℃(12分))又は1H NMR(JEOL、400MHz)によって決定した。
(実施例1)式(I-1)で表される化合物の製造
【0133】
【0134】
窒素雰囲気下、反応容器に式(I-1-1)で表される化合物10.0g、ヨウ化銅(I)0.3g、ビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(II)ジクロリド0.5g、トリエチルアミン25mL、テトラヒドロフラン50mLを加えた。室温で攪拌しながら、式(I-1-2)で表される化合物9.9gをテトラヒドロフラン50mLに溶解させた溶液を滴下し、室温で1時間攪拌した。反応液に10%塩酸を注ぎ、トルエンで抽出した。有機層を食塩水で洗浄した後、カラムクロマトグラフィー(シリカゲル、トルエン)及び再結晶(トルエン/ヘキサン)により精製を行うことによって、式(I-1-3)で表される化合物9.0gを得た。
【0135】
窒素雰囲気下、反応容器に式(I-1-3)で表される化合物9.0g、ヨウ化銅(I)0.2g、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)0.5g、トリエチルアミン36mL、N,N-ジメチルホルムアミド18mLを加えた。75℃で加熱しながら、式(I-1-4)で表される化合物3.6gをN,N-ジメチルホルムアミド18mLに溶解させた溶液を滴下し、75℃で2時間攪拌した。ろ取、再結晶(トルエン/ヘキサン)及び再結晶(アセトン/メタノール)により精製を行うことによって、式(I-1)で表される化合物8.1gを得た。
MS(EI):m/z=438
(実施例2)式(I-2)で表される化合物の製造
【0136】
【0137】
実施例1において式(I-1-4)で表される化合物を式(I-2-2)で表される化合物に置き換えた以外は同様の方法によって、式(I-2)で表される化合物を製造した。
MS(EI):m/z=435
(実施例3)式(I-3)で表される化合物の製造
【0138】
【0139】
実施例1において式(I-1-4)で表される化合物を式(I-3-2)で表される化合物に置き換えた以外は同様の方法によって、式(I-3)で表される化合物を製造した。
MS(EI):m/z=456
(実施例4)式(I-4)で表される化合物の製造
【0140】
【0141】
実施例1において式(I-1-4)で表される化合物を式(I-4-2)で表される化合物に置き換えた以外は同様の方法によって、式(I-4)で表される化合物を製造した。
MS(EI):m/z=456
(実施例5)式(I-5)で表される化合物の製造
【0142】
【0143】
実施例1において式(I-1-1)で表される化合物を式(I-5-1)で表される化合物に置き換えた以外は同様の方法によって、式(I-5)で表される化合物を製造した。
MS(EI):m/z=452
(実施例6)式(I-6)で表される化合物の製造
【0144】
【0145】
実施例1において式(I-1-2)で表される化合物を式(I-6-1)で表される化合物に置き換えた以外は同様の方法によって、式(I-6)で表される化合物を製造した。
MS(EI):m/z=402
(液晶組成物の調製と評価)
以下の物性値を示す母体液晶(LC-1)を調製した。値はいずれも実測値である。
【0146】
Tni(ネマチック相-等方性液体相転移温度):74.0℃
Δε(25℃における誘電率異方性) :5.11
Δn(25℃における屈折率異方性) :0.141
γ1 (25℃における回転粘性係数):107
この母体液晶(LC-1)に対して、実施例1~6で得た化合物(I-1)~(I-6)、及び特許文献1に記載の式(C-1)、(C-2)で表される化合物のいずれかをそれぞれ0%、5%、10%加えた液晶組成物を調製した。
【0147】
【0148】
最小二乗法を用いた100%における外挿値を以下に示す。実施例7~12及び比較例1~2を比較する事により、本願化合物は高いΔn及び高いTniを示すことから、液晶組成物に添加した際にΔnおよびTniを効果的に上昇させる事が判明した。
【0149】
【0150】
次に母体液晶(LC-1)に対して、実施例1~6で得た化合物(I-1)~(I-6)、及び特許文献3に記載の式(C-3)で表される化合物を10%加えた液晶組成物を調製し、以下の通りに特性を測定した。
【0151】
【0152】
配向膜を具備した第一の基板(共通電極基板)と、アクティブ素子により駆動される透明画素電極を有する画素電極層を有する配向膜を具備した第二の基板(画素電極基板)とを作製した。第一の基板上にシール材を塗布し、第二の基板上で挟持し、シール材を常圧で120℃1時間の条件で硬化させ、セルギャップ3.2μmの液晶セルを得た。液晶セルに液晶組成物を注入した後、封止し、10V、100Hzの矩形交流波を印加しながら、高圧水銀ランプを用いて、365nmにおける照度が100mW/cm2であるUV光を200秒間照射しセルを作成した。その液晶セルのVHR:周波数60Hz,印加電圧1Vの条件下で60℃における電圧保持率(%)を3段階評価した。
【0153】
A:95~100%
B:85~95%
C:85%以下
耐光VHR:液晶組成物に対して、厚さ0.5mmのガラスを介してLCDに用いるバックライトランプを1週間照射した。照射後の液晶の電圧保持率を上述のVHR測定と同様の方法で測定し評価は以下の3段階で行った。
【0154】
A:95~100%
B:85~95%
C:85%以下
【0155】
【0156】
実施例13~18及び比較例3を比較する事により、本願化合物は高い信頼性を有することが判明した。