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特許7653356負極材料、並びにそれを含む電気化学装置及び電子装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-03-19
(45)【発行日】2025-03-28
(54)【発明の名称】負極材料、並びにそれを含む電気化学装置及び電子装置
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/38 20060101AFI20250321BHJP
   H01G 11/06 20130101ALI20250321BHJP
   H01G 11/30 20130101ALI20250321BHJP
   H01G 11/38 20130101ALI20250321BHJP
   H01M 4/36 20060101ALI20250321BHJP
   H01M 4/48 20100101ALI20250321BHJP
【FI】
H01M4/38 Z
H01G11/06
H01G11/30
H01G11/38
H01M4/36 B
H01M4/36 C
H01M4/36 E
H01M4/48
【請求項の数】 18
(21)【出願番号】P 2021536168
(86)(22)【出願日】2019-11-14
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-02-17
(86)【国際出願番号】 CN2019118582
(87)【国際公開番号】W WO2021092867
(87)【国際公開日】2021-05-20
【審査請求日】2021-06-21
【審判番号】
【審判請求日】2023-05-25
(73)【特許権者】
【識別番号】513054978
【氏名又は名称】寧徳新能源科技有限公司
【氏名又は名称原語表記】Ningde Amperex Technology Limited
【住所又は居所原語表記】No.1 Xingang Road, Zhangwan Town, Jiaocheng District, Ningde City, Fujian Province, 352100, People’s Republic of China
(74)【代理人】
【識別番号】100166338
【弁理士】
【氏名又は名称】関口 正夫
(72)【発明者】
【氏名】姜 道義
(72)【発明者】
【氏名】陳 志煥
(72)【発明者】
【氏名】崔 航
(72)【発明者】
【氏名】謝 遠森
【合議体】
【審判長】井上 信一
【審判官】須原 宏光
【審判官】篠原 功一
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-153006号公報(JP,A)
【文献】国際公開第12/077268(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 4/00- 4/62
H01M 10/05-10/0587
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケイ素複合体マトリックスを含む負極材料であって、前記ケイ素複合体マトリックスのDv50の範囲は2.5μm~15μmであり、且つ前記ケイ素複合体マトリックスの粒子径分布は0.1≦Dn10/Dv50≦0.6を満たし、
前記ケイ素複合体マトリックスの少なくとも一部を被覆する酸化物MeO層をさらに含み、ここで、MeはAl、Si、Ti、Mn、V、Cr、Co及びZrから選ばれる少なくとも一種を含み、yは0.5~3であり、且つ前記酸化物MeO層は炭素材料を含み、
X線回折パターンにおいて、2θが27.0°~30.0°の範囲にある最大強度値をIとし、2θが20.0°~22.0°の範囲にある最大強度値をIとし、0<I/I≦1を満たす、負極材料。
【請求項2】
前記ケイ素複合体マトリックスはSiOを含み、且つ0.6≦x≦1.5である、請求項1に記載の負極材料。
【請求項3】
前記ケイ素複合体マトリックスはナノSi結晶粒子、SiO、SiO、又はそれらの任意の組み合わせを含む、請求項1に記載の負極材料。
【請求項4】
前記ナノSi結晶粒子のサイズは100nm未満である、請求項3に記載の負極材料。
【請求項5】
前記酸化物MeO層の厚さは1nm~1000nmである、請求項1に記載の負極材料。
【請求項6】
前記負極材料の総重量に対して、Me元素の重量分率は0.01wt%~1wt%である、請求項1に記載の負極材料。
【請求項7】
前記負極材料の総重量に対して、前記酸化物MeO層における炭素の重量分率は0.05wt%~1wt%である、請求項1に記載の負極材料。
【請求項8】
前記酸化物MeO層の少なくとも一部を被覆するポリマー層をさらに含み、且つ前記ポリマー層は炭素材料を含む、請求項1に記載の負極材料。
【請求項9】
前記ポリマー層は、ポリフッ化ビニリデン及びその誘導体、カルボキシメチルセルロース及びその誘導体、カルボキシメチルセルロースナトリウム及びその誘導体、ポリビニルピロリドン及びその誘導体、ポリアクリル酸及びその誘導体、ポリスチレンブタジエンゴム、ポリアクリルアミド、ポリイミド、ポリアミドイミド、又はそれらの任意の組み合わせを含む、請求項8に記載の負極材料。
【請求項10】
前記酸化物MeO層に含まれる炭素材料または前記ポリマー層に含まれる炭素材料はそれぞれ独立し、カーボンナノチューブ、カーボンナノ粒子、カーボンファイバー、グラフェン、又はそれらの任意の組み合わせを含む、請求項8に記載の負極材料。
【請求項11】
前記負極材料の総重量に対して、前記ポリマー層の重量分率は0.1~10wt%である、請求項8に記載の負極材料。
【請求項12】
前記ポリマー層の厚さは2nm~100nmである、請求項8に記載の負極材料。
【請求項13】
X線回折パターンにおいて、2θが27.0°~30.0°の範囲にある最大強度値をIとし、2θが20.0°~22.0°の範囲にある最大強度値をIとし、0<I/I≦1を満たす、請求項8に記載の負極材料。
【請求項14】
比表面積が1~50m/gである、請求項1に記載の負極材料。
【請求項15】
請求項1~14のいずれか1項に記載の負極材料を含む、負極。
【請求項16】
請求項15に記載の負極を含む、電気化学装置。
【請求項17】
リチウムイオン電池である、請求項16に記載の電気化学装置。
【請求項18】
請求項16に記載の電気化学装置を含む、電子装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エネルギー貯蔵分野に関し、具体的に、負極材料、並びにそれを含む電気化学装置及び電子装置、特にリチウムイオン電池に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ノートパソコン、スマートフォン、タブレットPC、ポータブル電源及び無人航空機などの消費電子製品の普及に伴い、電気化学装置への要求はますます厳しくなる。例えば、電池には、軽量だけでなく、大容量で長寿命であることが要求されている。リチウムイオン電池は、高エネルギー密度、高安全性、メモリー効果なし、長寿命などの優れた利点により、市場で主流の地位を占めている。
【発明の概要】
【0003】
本発明の実施例は、せめてある程度に少なくとも一種の関連する分野に存在する問題を解決することを図り、負極材料及び当該負極材料を調製する方法を提供する。本発明の実施例はさらに、当該負極材料を使用する負極、電気化学装置及び電子装置を提供する。
【0004】
一つの実施形態において、本発明は、ケイ素複合体マトリックスを含む負極材料であって、前記ケイ素複合体マトリックスのDv50の範囲は2.5μm~15μmであり、前記ケイ素複合体マトリックスの粒子径分布は0.1≦Dn10/Dv50≦0.6を満たす、負極材料を提供する。
【0005】
もう一つの実施形態において、本発明は、本発明の実施例に記載される負極材料を含む負極を提供する。
【0006】
もう一つの実施形態において、本発明は、本発明の実施例に記載される負極を含む電気化学装置を提供する。
【0007】
もう一つの実施形態において、本発明は、本発明の実施例に記載される電気化学装置を含む電子装置を提供する。
【0008】
本発明の負極活性材料は優れたサイクル特性を有し、且つ当該負極活性材料から調製されたリチウムイオン電池は、優れたレート特性及び低い膨張率を有する。
【0009】
本発明の実施例の追加の態様及び利点は、部分的に後続の説明で説明され、示されるか、又は本発明の実施例の実施を通じて説明される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
以下では、本発明の実施例を説明するために、本発明の実施例又は先行技術を説明するための必要な図面を概略に説明する。以下に説明される図面は、本発明の実施例の一部にすぎないことは自明である。当業者にとって、創造的労力をかけない前提で、依然としてこれらの図面に例示される構造により他の実施例の図面を得ることができる。
図1図1は、本発明の実施例2の負極活性材料の体積基準の粒度分布曲線を示す図面である。
図2図2は、本発明の比較例2の負極活性材料の体積基準の粒度分布曲線を示す図面である。
図3図3は、本発明の一つの実施例の負極活性材料の構造を示す模式図である。
図4図4は、本発明のもう一つの実施例の負極活性材料の構造を示す模式図である。
図5図5は、本発明の実施例25の負極活性材料のX線回折(XRD)パターンを示す図面である。
図6図6は、本発明の比較例3の負極活性材料のX線回折(XRD)パターンを示す図面である。
図7図7は、本発明の実施例25の負極活性材料の走査型電子顕微鏡(SEM)画像を示す図面である。
図8図8は、本発明の比較例3の負極活性材料の走査型電子顕微鏡(SEM)画像を示す図面である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施例を詳細に説明する。本発明の実施例は、本発明を限定するものとして解釈されるべきではない
【0012】
本発明において、Dv50は負極活性材料の累積体積百分率が50%となる時に対応する粒子径を指し、単位はμmである。
【0013】
本発明において、Dn10は負極活性材料の累積数量百分率が10%となる時に対応する粒子径を指し、単位はμmである。
【0014】
本発明において、ケイ素複合体は、ケイ素単体、ケイ素化合物、ケイ素単体とケイ素化合物との混合物、又は異なるケイ素化物の混合物を含む。
【0015】
なお、本文において、範囲の形式で量、比率及びその他の数値を表すことがある。理解すべきことは、このような範囲形式は、便利及び簡潔のために用いられ、柔軟に理解されるべく、明確的に指定される範囲に制限される数値を含むだけでなく、明確的に各数値及びサブ範囲を指定しているように、前記範囲内の全ての個別の数値又はサブ範囲を含む。
【0016】
具体的な実施形態及び請求の範囲において、用語「の一方」、「の一つ」、「の一種」、又は、他の類似な用語で接続される項のリストは、リストされる項目のいずれか一つを意味する。例えば、項目A及びBがリストされると、「A及びBの一つ」という短句は、Aのみ又はBのみを意味する。もう一つの実例において、項目A、B及びCがリストされると、「A、B及びCの一つ」という短句は、Aのみ、Bのみ又はCのみを意味する。項目Aは一つの素子、又は複数の素子を含んでもよい。項目Bは一つの素子、又は複数の素子を含んでもよい。項目Cは一つの素子、又は複数の素子を含んでもよい。
【0017】
具体的な実施形態及び請求の範囲において、用語「の少なくとも一方」、「の少なくとも一つ」、「の少なくとも一種」、又は、他の類似な用語で接続される項目のリストは、リストされる項目の任意の組み合わせを意味する。例えば、項目A及びBがリストされている場合、「A及びBの少なくとも一方」という短句は、Aのみ;Bのみ;又はA及びBを意味する。他の実例では、項目A、B、及びCがリストされている場合、「A、B、及びCの少なくとも一方」という短句は、Aのみ;Bのみ;Cのみ;A及びB(Cを除く);A及びC(Bを除く);B及びC(Aを除く);又はA、B、及びCのすべてを意味する。項目Aは一つの素子、又は複数の素子を含んでもよい。項目Bは一つの素子を、又は複数の素子を含んでもよい。項目Cは一つの素子を、又は複数の素子を含んでもよい。
【0018】
一、負極材料
本発明の実施例は、ケイ素複合体マトリックスを含む負極材料であって、前記ケイ素複合体マトリックスのDv50の範囲は2.5μm~15μmであり、前記ケイ素複合体マトリックスの粒子径分布は0.1≦Dn10/Dv50≦0.6を満たす、負極材料を提供する。
【0019】
いくつかの実施例において、前記ケイ素複合体マトリックスのDv50の範囲は、2.5μm~15μmである。いくつかの実施例において、前記ケイ素複合体マトリックスのDv50の範囲は、2.5μm~10μmである。いくつかの実施例において、前記ケイ素複合体マトリックスのDv50の範囲は、3μm~9μmである。いくつかの実施例において、前記ケイ素複合体マトリックスのDv50の範囲は、4μm~7μmである。
【0020】
いくつかの実施例において、前記ケイ素複合体マトリックスの粒子径分布は、0.3≦Dn10/Dv50≦0.5を満たす。いくつかの実施例において、前記ケイ素複合体マトリックスの粒子径分布は、Dn10/Dv50が0.35又は0.4であることを満たす。
【0021】
いくつかの実施例において、前記ケイ素複合体マトリックスはケイ素含有物質を含み、前記ケイ素複合体マトリックスにおける前記ケイ素含有物質は、前記負極材料における前記ケイ素含有物質以外の他の物質の一種又は複数種と複合体を形成してもよい。いくつかの実施例において、前記ケイ素複合体マトリックスは、リチウムイオンを挿入及び放出することができる粒子を含む。
【0022】
いくつかの実施例において、前記ケイ素複合体マトリックスはSiOを含み、且つ0.6≦x≦1.5である。
【0023】
いくつかの実施例において、前記ケイ素複合体マトリックスはナノSi結晶粒子、SiO、SiO又はそれらの任意の組み合わせを含む。
【0024】
いくつかの実施例において、前記ナノSi結晶粒子のサイズは100nm未満である。いくつかの実施例において、前記ナノSi結晶粒子のサイズは50nm未満である。いくつかの実施例において、前記ナノSi結晶粒子のサイズは20nm未満である。いくつかの実施例において、前記ナノSi結晶粒子のサイズは5nm未満である。いくつかの実施例において、前記ナノSi結晶粒子のサイズは2nm未満である。いくつかの実施例において、前記ナノSi結晶粒子のサイズは0.5nm未満である
【0025】
いくつかの実施例において、前記負極材料は、さらに前記ケイ素複合体マトリックスの少なくとも一部を被覆する酸化物MeO層を含み、MeはAl、Si、Ti、Mn、V、Cr、Co及びZrから選ばれる少なくとも一種を含み、ここで、yは0.5~3であり、且つ前記酸化物MeO層は炭素材料を含む。
【0026】
いくつかの実施例において、前記酸化物MeOは、Al、SiO、TiO、Mn、MnO、CrO、Cr、CrO、V、VO、CoO、Co、Co、ZrO又はそれらの任意の組み合わせを含む。
【0027】
いくつかの実施例において、前記酸化物MeO層における炭素材料は、アモルファスカーボン、カーボンナノチューブ、カーボンナノ粒子、カーボンファイバー、グラフェン又はそれらの任意の組み合わせを含む。いくつかの実施例において、前記アモルファスカーボンは、炭素前駆体の高温焼結後に得られる炭素材料である。いくつかの実施例において、前記炭素前駆体は、ポリビニルピロリドン、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ポリビニルアルコール、ポリプロピレン、酸性フェノール樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン、ポリアクリル樹脂、又はそれらの任意の組み合わせを含む。
【0028】
いくつかの実施例において、前記酸化物MeO層の厚さは1nm~1000nmである。いくつかの実施例において、前記酸化物MeO層の厚さは10nm~900nmである。いくつかの実施例において、前記酸化物MeO層の厚さは20nm~800nmである。いくつかの実施例において、前記酸化物MeO層の厚さは1nm~20nmである。いくつかの実施例において、前記酸化物MeO層の厚さは2nm、5nm、10nm、15nm、20nm又は50nmである。
【0029】
いくつかの実施例において、前記負極材料の総重量に対して、Me元素の重量分率は0.01wt%~1wt%である。いくつかの実施例において、前記負極材料の総重量に対して、Me元素の重量分率は0.02wt%~1wt%である。いくつかの実施例において、前記負極材料の総重量に対して、Me元素の重量分率は0.03wt%~0.9wt%である。いくつかの実施例において、前記負極材料の総重量に対して、Me元素の重量分率は0.05wt%、0.1wt%、0.2wt%、0.3wt%、0.4wt%、0.5wt%、0.6wt%、0.7wt%又は0.8wt%である。
【0030】
いくつかの実施例において、前記負極材料の総重量に対して、前記酸化物MeO層における炭素材料の重量分率は0.05wt%~1wt%である。いくつかの実施例において、前記負極材料の総重量に対して、前記酸化物MeO層における炭素材料の重量分率は0.1wt%~0.8wt%である。いくつかの実施例において、前記負極材料の総重量に対して、前記酸化物MeO層における炭素材料の重量分率は0.2wt%~0.7wt%である。いくつかの実施例において、前記負極材料の総重量に対して、前記酸化物MeO層における炭素材料の重量分率は0.3wt%、0.4wt%、0.5wt%、0.6wt%、0.7wt%又は0.8wt%である。
【0031】
いくつかの実施例において、前記負極材料はさらに、前記酸化物MeO層の少なくとも一部を被覆するポリマー層を含み、且つ前記ポリマー層は炭素材料を含む。
【0032】
いくつかの実施例において、前記ポリマー層は、ポリフッ化ビニリデン及びその誘導体、カルボキシメチルセルロース及びその誘導体、カルボキシメチルセルロースナトリウム及びその誘導体、ポリビニルピロリドン及びその誘導体、ポリアクリル酸及びその誘導体、ポリスチレンブタジエンゴム、ポリアクリルアミド、ポリイミド、ポリアミドイミド又はそれらの任意の組み合わせを含む。
【0033】
いくつかの実施例において、前記ポリマー層における炭素材料は、カーボンナノチューブ、カーボンナノ粒子、カーボンファイバー、グラフェン又はそれらの任意の組み合わせを含む。
【0034】
いくつかの実施例において、前記負極材料の総重量に対して、前記ポリマー層の重量分率は0.1~10wt%である。いくつかの実施例において、前記負極材料の総重量に対して、前記ポリマー層の重量分率は0.2~8wt%である。いくつかの実施例において、前記負極材料の総重量に対して、前記ポリマー層の重量分率は0.3~7wt%である。いくつかの実施例において、前記負極材料の総重量に対して、前記ポリマー層の重量分率は1wt%、1.5wt%、2wt%、4wt%、5wt%又は6wt%である。
【0035】
いくつかの実施例において、前記ポリマー層の厚さは2nm~100nmである。いくつかの実施例において、前記ポリマー層の厚さは10nm~90nmである。いくつかの実施例において、前記ポリマー層の厚さは15nm~80nmである。いくつかの実施例において、前記ポリマー層の厚さは5nm、20nm、25nm、45nm、55nm又は75nmである。
【0036】
いくつかの実施例において、前記負極材料の比表面積は1~50m/gである。いくつかの実施例において、前述負極材料の比表面積は1~30m/gである。いくつかの実施例において、前述負極材料の比表面積は1~10m/gである。いくつかの実施例において、前記負極材料の比表面積は1/g、5/g又は10m/gである。
【0037】
いくつかの実施例において、前記負極材料は、X線回折パターンにおいて、2θが27.0°~30.0°の範囲にある最大強度値をIとし、2θが20.0°~22.0°の範囲にある最大強度値をIとし、0<I/I ≦1を満たす。
【0038】
いくつかの実施例において、前記負極材料は、X線回折パターンにおいて、2θが28.4°にある最大強度値をIとし、2θが21.0°の範囲内にある最大強度値をIとし、0.1<I/I ≦1を満たす。いくつかの実施例において、I/Iは0.2、0.4又は0.5である。
【0039】
二、負極材料の調製方法
本発明の実施例は、上記のいずれかの負極材料を調製する方法を提供し、前記方法は、ケイ素の酸化物SiOを分級して、粒子径分布が0.1≦Dn10/Dv50≦0.6を満たす負極材料を得ることを含み、ここで、0.6≦x≦1.5である。
【0040】
いくつかの実施例において、前記分級方法は、気流分級を含む。
【0041】
いくつかの実施例において、前記方法はさらに酸化物MeO層を被覆するステップを含み、前記酸化物MeO層を被覆するステップは、
(1)上記の分級後に得られた固体、炭素前駆体及び酸化物前駆体MeTを有機溶媒及び脱イオン水の存在下で混合溶液を形成すること;
(2)前記混合溶液を乾燥させて粉末を得ること;並びに、
(3)前記粉末を200~900℃で0.5~20h焼結し、表面に酸化物MeO層を有する負極材料を得ること;を含み、
ここで、yは0.5~3であり、
Meは、Al、Si、Ti、Mn、Cr、V、Co及びZrから選ばれる少なくとも一種を含み、
Tはメトキシ基、エトキシ基、イソプロポキシ基及びハロゲンから選ばれる少なくとも一種を含み、且つ、
nは1、2、3又は4である。
【0042】
いくつかの実施例において、前記酸化物前駆体MeTは、チタン酸イソプロピル、アルミニウムイソプロポキシド又はそれらの組み合わせを含む。
【0043】
いくつかの実施例において、前記炭素材料は、アモルファスカーボン、カーボンナノチューブ、カーボンナノ粒子、カーボンファイバー、グラフェン又はそれらの任意の組み合わせを含む。いくつかの実施例において、前記アモルファスカーボンは、炭素前駆体の高温焼結後に得られる炭素材料である。いくつかの実施例において、前記炭素前駆体は、ポリビニルピロリドン、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ポリビニルアルコール、ポリプロピレン、酸性フェノール樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン、ポリアクリル樹脂、又はそれらの任意の組み合わせを含む。
【0044】
いくつかの実施例において、焼結温度は250~800℃である。いくつかの実施例において、焼結温度は300~700℃である。いくつかの実施例において、焼結温度は400℃、500℃又は600℃である。
【0045】
いくつかの実施例において、焼結時間は1~18hである。いくつかの実施例において、焼結時間は1~16hである。いくつかの実施例において、焼結時間は1~12hである。いくつかの実施例において、焼結時間は1.5~6hである。いくつかの実施例において、焼結時間は1.5h、2.5h、3.5h、5h又は6.5hである。
【0046】
いくつかの実施例において、前記有機溶媒は、エタノール、メタノール、n-ヘキサン、N、N-ジメチルホルムアミド、ピロリドン、アセトン、トルエン、イソプロパノール及びn-プロパノールから選ばれる少なくとも一種を含む。いくつかの実施例において、前記有機溶媒は、エタノールである。
【0047】
いくつかの実施例において、ハロゲンは、F、Cl、Br又はそれらの組み合わせを含む。
【0048】
いくつかの実施例において、焼結は不活性ガスの保護下で行われる。いくつかの実施例において、前記不活性ガスは、窒素ガス、アルゴンガス又はそれらの組み合わせを含む。
【0049】
いくつかの実施例において、乾燥はスプレードライであり、乾燥温度は100~300℃である。
【0050】
いくつかの実施例において、前記方法はさらにポリマー層を被覆するステップを含み、前記ポリマー層を被覆するステップは、
(1)上記の分級後に得られた固体又は表面に酸化物MeO層を有する負極材料、炭素材料及びポリマーを溶媒で1~15h高速分散させ、懸濁液を得ること;並びに、
(2)前記懸濁液における溶媒を除去すること、を含む。
【0051】
いくつかの実施例において、前記ポリマーは、ポリフッ化ビニリデン及びその誘導体、カルボキシメチルセルロース及びその誘導体、カルボキシメチルセルロースナトリウム及びその誘導体、ポリビニルピロリドン及びその誘導体、ポリアクリル酸及びその誘導体、ポリスチレンブタジエンゴム、ポリアクリルアミド、ポリイミド、ポリアミドイミド又はそれらの任意の組み合わせを含む。
【0052】
いくつかの実施例において、前記炭素材料は、カーボンナノチューブ、カーボンナノ粒子、カーボンファイバー、グラフェン又はそれらの任意の組み合わせを含む。
【0053】
いくつかの実施例において、前記溶媒は、水、エタノール、メタノール、テトラヒドロフラン、アセトン、トリクロロメタン、N-メチルピロリドン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、トルエン、キシレン、又はそれらの任意の組み合わせを含む。
【0054】
いくつかの実施例において、前記ケイ素の酸化物SiOは、市販のケイ素の酸化物でもよく、本発明の方法で調製されたケイ素の酸化物SiOでもよく、本発明の方法で調製されたケイ素の酸化物SiOは、X線回折パターンにおいて、2θが27.0°~30.0°の範囲にある最大強度値をIとし、2θが20.0°~22.0°の範囲にある最大強度値をIとし、0<I/I ≦1を満たす。いくつかの実施例において、I/I は0.2、0.4又は0.5である。
【0055】
本発明において、0<I/I ≦1を満たすケイ素の酸化物SiOの調製方法は、
(1)二酸化ケイ素と金属ケイ素粉末とをモル比1:6~6:1で混合し、混合材料を得ること;
(2)1-4~10-1kPaの圧力範囲で、1100~1800℃の温度範囲で前記混合材料を1~25h加熱して、気体を得ること;
(3)得られた気体を凝縮して固体を得ること;
(4)固体を粉砕してふるい分けること;及び、
(5)400~1500℃の範囲で前記固体を0.5~24h熱処理し、熱処理された前記固体を冷却した後、0<I/I ≦1を満たすケイ素の酸化物SiOを得ること、を含む。
【0056】
いくつかの実施例において、前記二酸化ケイ素と金属ケイ素粉末のモル比は1:4~4:1である。いくつかの実施例において、前記二酸化ケイ素と金属ケイ素粉末のモル比は1:3~3:1である。いくつかの実施例において、前記二酸化ケイ素と金属ケイ素粉末のモル比は1:2~2:1である。いくつかの実施例において、前記二酸化ケイ素と金属ケイ素粉末のモル比は1:1、1.5:1又は2.5:1である。
【0057】
いくつかの実施例において、前記圧力範囲は1-4~10-1kPaである。いくつかの実施例において、前記圧力は1Pa、10Pa、20Pa、30Pa、40Pa、50Pa、60Pa、70Pa、80Pa、90Pa又は100Paである。
【0058】
いくつかの実施例において、前記加熱温度は1100~1500℃である。いくつかの実施例において、前記加熱温度は1150℃、1200℃、1250℃又は1400℃である。
【0059】
いくつかの実施例において、前記加熱時間は1~20hである。いくつかの実施例において、前記加熱時間は5~15hである。いくつかの実施例において、前記加熱時間は2、4、6、8、10h、12h、14h、16h又は18hである。
【0060】
いくつかの実施例において、混合は、ボールミル、V型ミキサー、3次元ミキサー、エアフローミキサー又は水平ミキサーによって行われる。
【0061】
いくつかの実施例において、加熱及び熱処理は不活性ガスの保護下で行われる。いくつかの実施例において、前記不活性ガスは、窒素ガス、アルゴンガス、ヘリウムガス又はそれらの組み合わせを含む。
【0062】
いくつかの実施例において、前記方法は、ふるい分け後にさらいに熱処理のステップを含む。
【0063】
いくつかの実施例において、前記熱処理の温度は500~1500℃である。いくつかの実施例において、前記熱処理の温度は400~1200℃である。いくつかの実施例において、前記熱処理の温度は600℃、800℃、又は1000℃である。
【0064】
いくつかの実施例において、前記熱処理の時間は1~24hである。いくつかの実施例において、前記熱処理の時間は2~12hである。いくつかの実施例において、前記熱処理の時間は5h、10h又は15hである。
【0065】
図1は、実施例2の負極活性材料の体積基準の粒度分布曲線である。図1より、実施例2の負極活性材料粒子の粒度分布はやや均一であり、分布がやや狭いことが分かる。実施例2の負極活性材料から調製されたリチウムイオン電池はやや満足するサイクル特性及び抗膨張特性を示す。
【0066】
図2は、比較例2の負極活性材料の体積基準の粒度分布曲線である。図2より、比較例2の負極活性材料にはある程度の小さな粒子があることにより、サイクル特性が悪いことが分かる。小さくて細い粒子の存在は、電解液の粒子へのエッチングを加速することにより、サイクル特性の劣化を加速する。一方、小さな粒子は電解液によって素早くエッチングされ、表面に大量の副生成物が生成されるため、当該負極活性材料から調製されたリチウムイオン電池の抗膨張特性は、実施例2の負極活性材料から調製されたリチウムイオン電池より、抗膨張特性が悪い。
【0067】
図3は、本発明の一つの実施例の負極活性材料の構造を示す模式図である。ここで、内層1はケイ素複合体マトリックスであり、外層2は炭素材料を含む酸化物MeO層である。
【0068】
前記ケイ素複合体マトリックスを被覆する酸化物MeO層はHFトラップ剤として機能することができ、前記酸化物は、電解液におけるHFと反応して、サイクル中で電解液におけるHFの含有量を低下させ、HFのケイ素材料の表面へのエッチングを低下させることによって、材料のサイクル特性をさらに向上させることができる。酸化物MeO層に炭素材料をドープすることで、初回充放電中でリチウム挿入後にリチウム導体を形成するに有利であり、イオン通路を実現するに有利である。なお、酸化物MeO層に一定の量の炭素をトープすることで、負極活性材料の導電性を向上させることができる。
【0069】
図4は、本発明のもう一つの実施例の負極活性材料の構造を示す模式図である。ここで、内層1はケイ素複合体マトリックスであり、中間層2は炭素材料を含む酸化物MeO層であり、外層3は炭素材料を含むポリマー層である。本発明の負極活性材料は、MeOを有せず、ケイ素複合体マトリックス及びポリマー層のみを有してもよい。即ち、本発明のポリマー層は、ケイ素複合体マトリックスの表面に直接被覆してもよい。
【0070】
カーボンナノチューブ(CNT)を含有するポリマー層は負極活性材料の表面に被覆し、ポリマーによってCNTを負極活性材料の表面に縛ることができ、CNTの負極活性材料の表面での界面安定性の向上に有利であり、それによって、サイクル特性を向上させる。
【0071】
図5は、本発明の実施例25の負極活性材料のX線回折(XRD)パターンを示す図面である。図5より、当該負極材料は、X線回折パターンにおいて、2θが28.0°~29.0°の範囲にある最大強度値をIとし、2θが20.5°~21.5°の範囲にある最大強度値をIとし、0<I/I≦1を満たす。I/I値の大きさは材料不均化の影響の程度を反映する。I/I値が大きいほど、負極活性材料の内部のナノケイ素結晶粒のサイズが大きくなる。I/I値が1を超えると、負極活性材料がリチウム挿入中で局所領域の応力を急激に増加させ、負極活性材料のサイクル中での構造劣化をもたらす。なお、ナノ結晶分布の生成により、イオン拡散中における結晶粒界拡散の能力が影響を受ける。本発明の発明者は、I/I値が0<I/I≦1を満たすと、負極活性材料が優れたサイクル特性を有し、そしてそれから調製されたリチウムイオン電池は優れた抗膨張特性を有することを見出した。
【0072】
図6は、本発明の比較例3の負極活性材料のX線回折(XRD)パターンを示す図面である。図6より、比較例3の負極活性材料のI/I値は明らかに1を超えている。実施例25の負極活性材料と比較すると、比較例3の負極活性材料のサイクル特性が悪く、それより調製されたリチウムイオン電池の膨張率が高く、レート特性が悪い。
【0073】
図7及び図8はそれぞれ、実施例25及び比較例3の負極活性材料の走査型電子顕微鏡(SEM)画像を示す。図7及び図8より、粒子のサイズ分布が明らかに見られる。図8より、比較例3の負極活性材料には一定の数の小さな粒子が存在することが示された。
【0074】
三、負極
本発明の実施例は負極を提供する。前記負極は、集電体及び当該集電体上に位置する負極活性材料層を含む。前記負極活性材料層は、本発明の実施例による負極材料を含む。
【0075】
いくつかの実施例において、負極活性材料層は粘着剤を含む。いくつかの実施例において、粘着剤は、ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ジアセチルセルロース、ポリ塩化ビニル、カルボキシル化されたポリ塩化ビニル、ポリフッ化ビニル、エチレンオキシを含むポリマー、ポリビニルピロリドン、ポリウレタン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン、ポリエチレン、ポリプロピレン、スチレンブタジエンゴム、アクリル酸(エステル)化されたスチレンブタジエンゴム、エポキシ樹脂又はナイロンを含むが、それらに限定されない。
【0076】
いくつかの実施例において、負極活性材料層は導電材料を含む。いくつかの実施例において、導電材料は、天然黒鉛、人造黒鉛、カーボンブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、炭素繊維、金属粉末、金属繊維、銅、ニッケル、アルミニウム、銀又はポリフェニレン誘導体を含むが、それらに限定されない。
【0077】
いくつかの実施例において、集電体は、銅箔、ニッケル箔、ステンレス鋼箔、チタン箔、発泡ニッケル、発泡銅、又は導電性金属被覆ポリマー基板を含むが、それらに限定されない。
【0078】
いくつかの実施例において、負極は、溶媒に活性材料、導電材料及び粘着剤を混合し、活性材料組成物を調製し、その活性材料組成物を集電体上に塗工する方法で、得られることができる。
【0079】
いくつかの実施例において、溶媒はN-メチルピロリドンを含んでもよいが、それに限定されない。
【0080】
四、正極
本発明の実施例に用いられる正極の材料、構成及びその製造方法は、先行技術に開示された任意の技術を含んでもよい。いくつかの実施例において、正極は米国特許出願US9812739Bに記載の正極であり、その全内容は援用して本発明に組み込まれる。
【0081】
いくつかの実施例において、正極は、集電体及びその集電体上に位置する正極活性材料層を含む。
【0082】
いくつかの実施例において、正極活性材料は、コバルト酸リチウム(LiCoO2)、リチウムニッケルコバルトマンガン(NCM)三元系材料、リン酸鉄リチウム(LiFePO4)又はマンガン酸リチウム(LiMn2O4)を含むが、それらに限定されない。
【0083】
いくつかの実施例において、正極活性材料層は、さらに粘着剤を含み、また、任意に導電材料を含む。粘着剤は、正極活性材料粒子同士の粘着を向上させ、また、正極活性材料の集電体との粘着をも向上させる。
【0084】
いくつかの実施例において、粘着剤は、ポリビニルアルコール、ヒドロキシプロピルセルロース、ジアセチルセルロース、ポリ塩化ビニル、カルボキシル化されたポリ塩化ビニル、ポリフッ化ビニル、エチレンオキシを含むポリマー、ポリビニルピロリドン、ポリウレタン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン、ポリエチレン、ポリプロピレン、スチレンブタジエンゴム、アクリル酸(エステル)化されたスチレンブタジエンゴム、エポキシ樹脂又はナイロン等を含むが、それらに限定されない。
【0085】
いくつかの実施例において、導電材料は、炭素による材料、金属による材料、導電重合体及びそれらの混合物を含むが、それらに限定されない。いくつかの実施例において、炭素による材料は、天然黒鉛、人造黒鉛、カーボンブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、カーボンファイバー、又はそれらの任意の組み合わせから選択される。いくつかの実施例において、金属による材料は、金属粉末、金属繊維、銅、ニッケル、アルミニウム、銀から選択される。いくつかの実施例において、導電重合体はポリフェニレン誘導体である。
【0086】
いくつかの実施例において、集電体はアルミニウムを含むが、それに限定されない。
【0087】
正極は、本分野に公知の調製方法によって調製されてもよい。例えば、正極は、溶媒に活性材料、導電材料及び粘着剤を混合し、活性材料組成物を調製し、その活性材料組成物を集電体上に塗工する方法により得られる。いくつかの実施例において、溶媒はN-メチルピロリドンを含んでもよいが、それに限定されない。
【0088】
五、電解液
本発明の実施例に使用される電解液は、先行技術で公知の電解液であってもよい。
【0089】
いくつかの実施例において、前記電解液は、有機溶媒、リチウム塩及び添加剤を含む。本発明による電解液の有機溶媒は、電解液の溶媒として使用できる先行技術で公知の任意の有機溶媒であってもよい。本発明による電解液に使用される電解質は、特に制限されなく、先行技術で公知の任意の電解質であってもよい。本発明による電解液の添加剤は、電解液の添加剤として使用できる先行技術で公知の任意の添加剤であってもよい。
【0090】
いくつかの実施例において、前記有機溶媒は、エチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート(PC)、ジエチルカーボネート(DEC)、エチルメチルカーボネート(EMC)、ジメチルカーボネート(DMC)、プロピレンカーボネート又はエチルプロピオネートを含むが、それらに限定されない。
【0091】
いくつかの実施例において、前記リチウム塩は、有機リチウム塩または無機リチウム塩の少なくとも一種を含む。
【0092】
いくつかの実施例において、前記リチウム塩は、ヘキサフルオロリン酸リチウム(LiPF)、テトラフルオロホウ酸リチウム(LiBF)、ジフルオロリン酸リチウム(LiPO)、リチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドLiN(CFSO(LiTFSI)、リチウムビス(フルオロスルホニル)イミドLi(N(SOF))(LiFSI)、リチウムビス(オキサラート)ホウ酸LiB(C(LiBOB)又はジフルオロ(オキサラト)ホウ酸リチウムLiBF(C)(LiDFOB)を含むが、それらに限定されない。
【0093】
いくつかの実施例において、前記電解液におけるリチウム塩の濃度は、0.5~3mol/L、0.5~2mol/L又は0.8~1.5mol/Lである。
【0094】
六、セパレータ
いくつかの実施例において、正極と負極の間には、短絡を防止するためにセパレータが設けられる。本発明の実施例に使用されるセパレータの材料と形状は、特に制限されなく、先行技術で開示された任意の技術であってもよい。いくつかの実施例において、セパレータは、本発明の電解液に対して安定な材料で形成された重合体又は無機物等を含む。
【0095】
例えば、セパレータは、基材層及び表面処理層を含んでもよい。基材層は、多孔質構造を有する、不織布、膜又は複合膜であり、基材層の材料は、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート及びポリイミドから選択される少なくとも一つである。具体的に、ポリプロピレン多孔質膜、ポリエチレン多孔質膜、ポリプロピレン不織布、ポリエチレン不織布又はポリプロピレン-ポリエチレン-ポリプロピレン多孔質複合膜を選択して使用してもよい。
【0096】
基材層の少なくとも一つの表面に表面処理層が設けられ、表面処理層は、ポリマー層又は無機物層であってもよく、ポリマーと無機物を混合して得られた層であってもよい。
【0097】
無機物層は、無機粒子とバインダーを含み、無機粒子は、アルミナ、シリカ、酸化マグネシウム、酸化チタン、二酸化ハフニウム、酸化スズ、酸化セリウム、酸化ニッケル、酸化亜鉛、酸化カルシウム、酸化ジルコニウム、酸化イットリウム、炭化ケイ素、ベーマイト、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、及び硫酸バリウムから選択される一つ又は複数の組み合わせである。バインダーは、ポリフッ化ビニリデン、フッ化ビニリデン-ヘキサフルオロプロピレン共重合体、ポリアミド、ポリアクリロニトリル、ポリアクリル酸エステル、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸塩、ポリビニルピロリドン、ポリビニルエーテル、ポリメチルメタクリレート、ポリテトラフルオロエチレン及びポリヘキサフルオロプロピレンから選択される一つ又は複数の組み合わせである。
【0098】
ポリマー層は、ポリマーを含み、ポリマーの材料は、ポリアミド、ポリアクリロニトリル、アクリル酸エステル重合体、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸塩、ポリビニルピロリドン、ポリビニルエーテル、ポリフッ化ビニリデン、ポリ(フッ化ビニリデン-ヘキサフルオロプロピレン)から選択される少なくとも一種である。
【0099】
七、電気化学装置
本発明の実施例は電気化学装置を提供し、前記電気化学装置は電気化学反応が発生する任意の装置を含む。
【0100】
いくつかの実施例において、本発明の電気化学装置は、金属イオンを吸蔵、放出することができる正極活性材料を有する正極、本発明の実施例に記載の負極、電解液、及び正極と負極の間に設けられるセパレータを含む。
【0101】
いくつかの実施例において、本発明の電気化学装置は、全ての種類の、一次電池、二次電池、燃料電池、太陽電池又はコンデンサを含むが、それらに限定されない。
【0102】
いくつかの実施例において、前記電気化学装置はリチウム二次電池である。
【0103】
いくつかの実施例において、リチウム二次電池は、リチウム金属二次電池、リチウムイオン二次電池、リチウムポリマー二次電池又はリチウムイオンポリマー二次電池を含むが、それらに限定されない。
【0104】
八、電子装置
本発明の電子装置は、本発明の実施例による電気化学装置を使用する任意の装置であってもよい。
【0105】
いくつかの実施例において、前記電子装置は、ノートコンピューター、ペン入力型コンピューター、モバイルコンピューター、電子ブックプレーヤー、携帯電話、携帯型ファクシミリ、携帯型コピー機、携帯型プリンター、ステレオヘッドセット、ビデオレコーダー、液晶テレビ、ポータブルクリーナー、携帯型CDプレーヤー、ミニCD、トランシーバー、電子ノートブック、計算機、メモリーカード、ポータブルテープレコーダー、ラジオ、バックアップ電源、モーター、自動車、オートバイ、補助自転車、自転車、照明器具、おもちゃ、ゲーム機、時計、電動工具、閃光灯、カメラ、大型家庭用ストレージバッテリー、又はリチウムイオンコンデンサーなどを含むが、これらに限定されない。
【0106】
以下では、例としてリチウムイオン電池を挙げ、具体的な実施例を参照してリチウムイオン電池の調製を説明するが、当業者は、本発明に記載された調製方法が単なる例示であり、他の好適な調製方法が本発明の範囲内にあることを理解すべきである。
【0107】
実施例
以下では、本出願によるリチウムイオン電池の実施例及び比較例を説明し、特性評価を行う。
【0108】
一、負極活性材料の特性評価方法
1、負極活性材料の粉末特性の測定方法
(1)粉末粒子のミクロ形態の観察:走査型電子顕微鏡で粉末のミクロ形態観察を行い材料表面の被覆状況を確認する。使用された測定装置はOXFORD EDS(X-max-20mm)であり、加速電圧は15KVであり、焦点距離を調整し、50Kの観測倍率から高倍率で観察し、500~2000という低い倍率で粒子の凝集状況を主に観察する。
【0109】
(2)比表面積の測定:一定の低温で、異なる相対圧力で固体表面へのガスの吸着量を測定した後、Brownauer-Emmett-Teller吸着理論とその公式(BET公式)でサンプルの単分子層吸着量を求め、固体の比表面積を計算する。
粉末サンプル1.5~3.5gを量り、TriStar II 3020の測定用サンプルチューブに入れ、200℃で120min脱気してから測定する。
【0110】
(3)粒度の測定:50mlのきれいなビーカーに粉末サンプル0.02gを入れ、脱イオン水20mlを入れ、さらに数滴の1%の界面活性剤を滴下し、粉末を完全に水に分散させ、120Wの超音波クリーナーで5分間超音波処理し、MasterSizer 2000で粒度分布を測定する。
【0111】
(4)炭素含有量の測定:サンプルは、酸素が豊富な条件下で高周波炉による高温加熱で燃焼され、炭素と硫黄がそれぞれ二酸化炭素と二酸化硫黄に酸化され、それらのガスは処理後、対応する吸収プールに入り、対応する赤外線輻射が吸収され、検出器によって対応するシグナルに変換される。このシグナルはコンピューターでサンプリングされ、直線性校正を行った後、二酸化炭素及び二酸化硫黄の濃度と比例する値に変換され、そして分析プロセス全体の値が累積され、分析完了後、コンピューターでこの累積値は重量値で割り、校正係数を掛け、ブランクを差し引くと、サンプル中の炭素と硫黄の含有量分率が得られる。高周波赤外炭素硫黄分析装置(Shanghai Dekai HCS-140)でサンプルの測定を行う。
【0112】
(5)XRD測定:サンプル1.0~2.0gを秤量し、ガラスサンプルホルダーの溝に注いで、ガラス板で圧密し、平滑化し、X線回折装置(Bruker、D8)より、JS K 0131-1996「X線回折分析の一般規則」に準拠し、測定を行い、測定電圧を40kVにし、電流は30mAであり、走査角度範囲は10~85°であり、走査のステップ幅は0.0167°であり、各ステップ幅で設定された時間は0.24s、XRD回折パターンが得られる。図面から、2θが28.4°にある最大強度値I及び2θが21.0°にある最大強度値Iが得られ、そして、I/Iの比を計算する。
【0113】
(6)金属元素の測定:一定の量のサンプルを量り、一定の量の濃硝酸を加えてマイクロ波分解して溶液を得る。得られた溶液と濾過残留物を数回洗浄し、一定の体積に定容し、ICP-OESでその中の金属元素のプラズマの強度を測定し、測定された金属の検量線により、溶液中の金属含有量を計算し、それによって材料に含まれる金属元素の量を計算する。
【0114】
以下の表における各物質の重量分率はいずれも負極活性材料の総重量に基づいて計算されたものである。
【0115】
二、負極活性材料の電気的特性の測定方法
1、ボタン電池の測定方法
乾燥したアルゴンガス雰囲気で、プロピレンカーボネート(PC)、エチレンカーボネート(EC)、ジエチルカーボネート(DEC)(重量比1:1:1)を混合してなる溶媒にLiPFを入れ、均一まで混合し、LiPFの濃度は1.15mol/Lであり、さらに7.5wt%のフルオロエチレンカーボネート(FEC)を入れ、均一まで混合して電解液を得る。
【0116】
実施例及び比較例で得られた負極活性材料、導電性カーボンブラック及びバインダーPAA(変性ポリアクリル酸、PAA)を重量比80:10:10で脱イオン水に入れ、撹拌してスラリーとなり、ドクターブレードで厚さが100μmであるコーティングを形成するように塗工し、真空乾燥オーブンで85℃で12時間乾燥させた後、乾燥環境で打ち抜き機を使用して直径1cmのウェーハにカットし、グローブボックスで、金属リチウムシートを対向電極とし、ceglard複合フィルムをセパレータとし、電解液を入れてボタン電池を組み立てる。ランド(LAND)シリーズバッテリーテスターにより、電池の充放電測定を行い、充放電容量を測定し、その初回クーロン効率は放電容量に対する充電容量の比である。
【0117】
2、フルセルの測定
(1)リチウムイオン電池の調製
正極の調製
LiCoO、導電性カーボンブラック及びポリフッ化ビニリデン(PVDF)を重量比95%:2.5%:2.5%で、N-メチルピロリドン溶媒系で十分に撹拌し、均一まで混合し、正極スラリーを調製する。調製された正極スラリーを正極集電体であるアルミ箔上に塗布し、乾燥し、コールドプレスし、正極を得る。
【0118】
負極の調製
黒鉛、実施例及び比較例によって調製された負極活性材料、導電剤(導電性カーボンブラック、Super P(登録商標))及びバインダーPAAを重量比70%:15%:5%:10%で混合し、適量の水を入れ、固形分の含有量が55wt%~70wt%で混練する。適量の水を入れ、スラリーの粘度を4000~6000Pa・sとなるように調整し、負極スラリーを調製する。
調製された負極スラリーを負極集電体である銅箔上に塗布し、乾燥し、コールドプレスし、負極を得る。
【0119】
電解液の調製
乾燥したアルゴンガス雰囲気で、プロピレンカーボネート(PC)、エチレンカーボネート(EC)、ジエチルカーボネート(DEC)(重量比1:1:1)を混合してなる溶媒にLiPFを入れ、均一まで混合し、LiPFの濃度は1.15mol/Lであり、さらに7.5wt%のフルオロエチレンカーボネート(FEC)を入れ、均一まで混合して電解液を得る。
【0120】
セパレータの調製
セパレータとして、PE多孔質ポリマーフィルムが使用される。
【0121】
リチウムイオン電池の調製
セパレータが正極と負極との間に介在して隔離の役割を果たすように、正極、セパレータ、負極を順に重ねる。巻取り、ベアセルを得る。ベアセルを外装に置き、電解液を注入し、パッケージングする。化成(formation)、脱気、トリミング等の工程を経て、リチウムイオン電池を得る。
【0122】
(2)サイクル特性の測定
測定温度は25/45℃であり、0.7Cの定電流で4.4Vまで充電し、定電圧で0.025Cまで充電し、5分間放置し、0.5Cで3.0Vまで放電する。当該ステップで得られた容量を初期容量にし、0.7Cの充電/0.5Cの放電でサイクル測定を行い、初期容量に対するステップごとの容量の比率で、容量減衰曲線を作成する。25℃で容量維持率が90%になるまでサイクルするサイクル数を電池の室温サイクル特性にし、45℃で容量維持率が80%になるまでサイクルするサイクル数を電池の高温サイクル特性にし、上記の二つの場合のサイクル数を比較することで、材料のサイクル特性を比較する。
【0123】
(3)放電レートの測定
25℃で、0.2Cで3.0Vまで放電し、5min放置し、0.5Cで4.45Vまで充電し、定電圧で0.05Cまで充電してから5分間放置し、放電レートを調整し、それぞれ0.2C、0.5C、1C、1.5C、2.0Cで放電測定を行い、それぞれの放電容量が得られ、各レートで得られた容量を0.2Cで得られた容量と比較し、2Cでと0.2Cでの比を比較することでレート特性を比較する。
【0124】
(4)電池の満充電膨張率の測定
スパイラルマイクロメータで半充電(50%充電状態(SOC))時の新品電池の厚さを測定し、400サイクルになった時、電池が満充電(100%SOC)状態にあり、スパイラルマイクロメータでさらにこの時の電池の厚さを測定し、初期半充電(50%SOC)時の新品電池の厚さと比較することで、この時の満充電(100%SOC)電池膨張率が得られる。
【0125】
三、負極活性材料の調製
1、市販で購入されたケイ素の酸化物SiO(0.6≦x≦1.5,Dv50は5μmである)を分級して、実施例1~3及び比較例1~2の負極活性材料を調製する。
表1-1及び表1-2には実施例1~3並びに比較例1及び2の負極活性材料の特性測定結果を示した。
【0126】
【表1】
【0127】
【表2】
【0128】
Dn10/Dv50値は、レーザー散乱粒子サイズアナライザーによる測定で得られた体積基準分布において累計が50%になる直径Dv50に対する数量基準分布において累計が10%になる直径Dn10の比であり、その値が大きいほど、材料における小さな粒子の数量が少なくなる。
【0129】
実施例1~3並びに比較例1及び2の測定結果より、0.1≦Dn10/Dv50≦0.6を満たす負極活性材料から調製されたリチウムイオン電池のサイクル特性及び抗膨張特性はいずれもDn10/Dv50<0.1又は0.6<Dn10/Dv50である負極活性材料から調製されたリチウムイオン電池より優れることが分かる。
【0130】
2、表面に酸化物MeO層を有する負極活性材料の調製
以下の方法で実施例4~12の負極活性材料を調製する。
(1)上記実施例2における負極活性材料、炭素前駆体及び酸化物前駆体MeTをエタノール150mL及び脱イオン水1.47mLに入れ、均一の懸濁液が形成されるまで4時間撹拌し;
(2)前記懸濁液をスプレードライ(入口温度220℃、出口温度110℃)して粉末が得られ;並びに、
(3)前記粉末を200900℃で0.5~20h焼結し、表面に酸化物MeO層を有する負極活性材料が得られる。
【0131】
表2-1には実施例4~12の負極活性材料を調製するプロセス条件を示した。
【0132】
【表3】
【0133】
表2-2及び表2-3には実施例2及び実施例4~12の負極活性材料の特性測定結果を示した。
【0134】
【表4】
【0135】
【表5】
【0136】
実施例2及び実施例4~12の測定結果より、0.1≦Dn10/Dv50≦0.6という条件を満たす負極活性材料を酸化物MeO層で被覆することで、さらにリチウムイオン電池のサイクル特性及びレート特性を向上させることができ、初回効率及び電池膨張率には有意な変化がないことが分かる。
【0137】
3、表面にポリマー層を有する負極活性材料の調製
以下の方法で実施例13~17及び20~21の負極活性材料を調製する。
(1)炭素材料(単層カーボンナノチューブ(SCNT)及び/又は多層カーボンナノチューブ(MCNT))並びにポリマーを水中で12h高速分散させ、均一に混合されたスラリーが得られ;
(2)実施例4における負極活性材料を(1)で均一に混合されたスラリーに入れ、4時間撹拌し、均一に混合された分散液が得られ;並びに、
(3)前記分散液をスプレードライ(入口温度200℃、出口温度110℃)して粉末が得られる。
【0138】
ここで、実施例18及び19の負極活性材料の調製方法は、実施例18及び19のステップ1の溶媒がN-ビニルピロリドンであること以外、上記の方法と同様である。
表3-1には実施例13~21の負極活性材料の組成を示した。
【0139】
【表6】
【0140】
表3-1における英語略語の正式名は以下の通りである。
表3-1における英語略語の日本語正式名は以下の通りである。
SCNT:単層カーボンナノチューブ
MCNT:多層カーボンナノチューブ
CMC-Na:カルボキシメチルセルロースナトリウム
PVP:ポリビニルピロリドン
PVDF:ポリフッ化ビニリデン
PAANa:ポリアクリル酸ナトリウム
【0141】
表3-2には実施例4及び実施例13~21の負極活性材料の特性測定結果を示した。
【表7】
【0142】
実施例4及び実施例13~21の測定結果より、実施例4における負極活性材料を基準にし、一定の量のCNTを含有するポリマー層で被覆することで、リチウムイオン電池のサイクル特性及びレート特性を著しく向上させることができることが分かる。
【0143】
4、以下の方法で実施例22~24及び比較例3の負極活性材料を調製する。
(1)二酸化ケイ素と金属ケイ素粉末とをモル比1:1でそれぞれ機械的ドライミックス及びボールミルミックスにより混合して、混合材料が得られ;
(2)Ar雰囲気で、1-3~10-1kPaの圧力範囲、1100~1800℃の温度範囲で前記混合材料を1~25h加熱して、気体が得られ;
(3)得られた気体を凝縮して固体が得られ;
(4)固体を粉砕してふるい分け;並びに
(5)400~1500℃の範囲で、窒素ガス雰囲気で、前記固体を0.5~24h熱処理し、熱処理された前記固体を冷却し、分級処理を行い;
(6)分級処理後に得られた固体の表面に炭素材料を含有する酸化物MeO層を被覆し、具体的な被覆ステップは上記表面に酸化物MeO層を有する負極活性材料の調製方法を参照し;
(7)ステップ(6)で得られた固体をさらに炭素材料を含有するポリマー層を被覆し、具体的な被覆ステップは上記表面にポリマー層を有する負極活性材料の調製ステップを参照する。
【0144】
表4-1にはステップ(1)~(5)における具体的なプロセスパラメータを示し、表4-2にはステップ(6)における具体的なプロセスパラメータを示した。
【表8】
【0145】
【表9】
【0146】
表4-3には実施例22~24及び比較例3の負極活性材料の組成を示した。
【表10】
【0147】
表4-4には実施例22~24及び比較例3の負極活性材料から調製されたリチウムイオン電池の特性パラメータを示した。
【表11】
【0148】
実施例22~24及び比較例3の測定結果より、ケイ素の酸化物が0.1≦Dn10/Dv50≦0.6を満たす条件で、さらに0<I/I≦1を満たすケイ素の酸化物を選択し、金属酸化物層による被覆及びポリマー層による被覆を行うことで、リチウムイオン電池のサイクル特性及びレート特性をさらに向上させることができることが分かる。
【0149】
5、以下の方法で実施例25~27及び比較例4の負極活性材料を調製する。
実施例25~27及び比較例4の負極活性材料の調製方法は、ステップ(7)を含まない以外、それぞれ実施例22~24及び比較例3の調製方法と同様である。即ち、実施例25~27及び比較例4の負極活性材料はポリマー被覆層を有せず、金属酸化物被覆層のみを有する。
【0150】
表5-1には実施例25~27及び比較例4の負極活性材料の組成を示した。
【表12】
【0151】
表5-2には実施例25~27及び比較例4の負極活性材料の特性測定結果を示した。
【表13】
【0152】
実施例25~27及び比較例4の測定結果より、ケイ素の酸化物が0.1≦Dn10/Dv50≦0.6を満たす条件で、さらに0<I/I≦1を満たすケイ素の酸化物を選択し、金属酸化物層による被覆を行うことで、リチウムイオン電池のサイクル特性及びレート特性をさらに向上させることができることが分かる。
【0153】
明細書全体では、「一部の実施例」、「いくつかの実施例」、「一つの実施例」、「他の例」、「例」、「具体例」、又は「いくつかの例」の引用については、本発明の少なくとも一つの実施例又は例は、当該実施例又は例に記載の特定の特徴、構造、材料又は特性を含むことを意味する。したがって、明細書全体の各場所に記載された、例えば「一部の実施例において」、「実施例において」、「一つの実施例において」、「他の例において」、「一つの例において」、「特定の例において」又は「例」は、必ずしも本発明での同じ実施例又は例を引用するわけではない。また、本文の特定の特徴、構造、材料、又は特性は、一つ又は複数の実施例又は例において、あらゆる好適な形態で組み合わせることができる。
【0154】
例示的な実施例が開示及び説明されているが、当業者は、上述実施例が本発明を限定するものとして解釈されることができなく、且つ、本発明の技術思想、原理、及び範囲から逸脱しない場合に実施例を改変、置換及び変更することができること、を理解すべきである。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8