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特許7653359位相差板、並びに、それを備えた円偏光板、液晶表示装置、及び有機EL表示装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-03-19
(45)【発行日】2025-03-28
(54)【発明の名称】位相差板、並びに、それを備えた円偏光板、液晶表示装置、及び有機EL表示装置
(51)【国際特許分類】
   G02B 5/30 20060101AFI20250321BHJP
   G02F 1/1335 20060101ALI20250321BHJP
   G02F 1/13363 20060101ALI20250321BHJP
   G09F 9/00 20060101ALI20250321BHJP
   G09F 9/30 20060101ALI20250321BHJP
   H10K 50/86 20230101ALI20250321BHJP
   H10K 59/10 20230101ALI20250321BHJP
【FI】
G02B5/30
G02F1/1335 510
G02F1/13363
G09F9/00 313
G09F9/30 365
H10K50/86
H10K59/10
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2021548915
(86)(22)【出願日】2020-09-23
(86)【国際出願番号】 JP2020035704
(87)【国際公開番号】W WO2021060247
(87)【国際公開日】2021-04-01
【審査請求日】2023-06-28
(31)【優先権主張番号】P 2019177691
(32)【優先日】2019-09-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004086
【氏名又は名称】日本化薬株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】520337477
【氏名又は名称】デジマ テック ビー.ブイ.
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】久住 貴大
(72)【発明者】
【氏名】中村 大輔
(72)【発明者】
【氏名】べネマ・ヤン・ウィレム
【審査官】吉川 陽吾
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-209220(JP,A)
【文献】特開2015-079230(JP,A)
【文献】特開2015-040904(JP,A)
【文献】特開2007-286141(JP,A)
【文献】国際公開第2019/182121(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 5/30
G02F 1/1335
G02F 1/13363
G09F 9/30
G09F 9/00
H05B 33/02
H10K 50/10
H10K 59/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
棒状液晶化合物が厚み方向を螺旋軸に配向し、1/2波長の面内位相差値(Re)を有する第1光学異方性層と、
棒状液晶化合物が厚み方向を螺旋軸に配向し、1/4波長の面内位相差値(Re)を有する第2光学異方性層と
を備える位相差板であって、
前記第1及び第2光学異方性層の間に下記式(1):

=n<n (1)

(式中n及びnは直交するプレート平面方向の屈折率、nはプレート平面方向に対して垂直方向の屈折率を示す)
を満足する第3光学異方性層を備える、
ことを特徴とする位相差板であり、
前記第3光学異方性層は垂直配向型液晶化合物を有する層であり、当該厚み方向位相差値(Rth)が-150~-80nmである、
位相差板。
【請求項2】
前記第1光学異方性層の捩れ角が26°又は26°であり、前記第2光学異方性層の捩れ角が、前記第1光学異方性層の捩れ角から78°又は78°にある、請求項1に記載の位相差板。
【請求項3】
偏光素子及び請求項1又は2に記載の位相差板を備えた円偏光板。
【請求項4】
前記偏光素子は二色性のアゾ染料を含み、その色相が無彩色である、請求項3に記載の円偏光板。
【請求項5】
請求項3又は4に記載の円偏光板を備えた有機EL表示装置。
【請求項6】
請求項3又は4に記載の円偏光板を備えた液晶表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶表示装置及び有機EL表示装置に有益な位相差板、並びに、それを備えた円偏光板、液晶表示装置、及び有機EL表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
円偏光板用位相差板はフラットパネルディスプレイの幅広い用途に使用されている。
【0003】
従来、画像表示パネル等に関して、画像表示パネルの表面に円偏光板を配置し、この円偏光板によって外来光の反射を低減する方法が提案されている。この円偏光板は、直線偏光板、1/4波長位相差板(以下λ/4板ともいう)により構成され、画像表示パネルの表示面に向かう外来光を直線偏光板により直線偏光に変換し、続く1/4波長位相差板により円偏光に変換する。ここで、この円偏光による外来光は、画像表示パネルの表面等で反射するが、この反射の際に円偏光の回転方向が逆転する。その結果、この反射光は到来時とは逆に、1/4波長位相差板及び直線偏光板により遮光される方向の直線偏光に変換された後、続く直線偏光板により遮光され、外部への反射光の露出が抑制される。
【0004】
この円偏光板に用いられる位相差板は、従来、位相差値の波長依存性(波長分散)により、例えば有機EL表示装置の反射防止に用いられた際に、可視光領域の各波長帯に対してλ/4板として機能せず、暗状態(黒表示)で色付きが生じる問題がある。特に上記問題は表示装置に対して視野角をつけて観察した場合により顕著となる。これを防ぐために広帯域な波長帯においてほぼ1/4波長として機能し、広視野角で反射防止を実現できるような円偏光板用位相差板が求められている。上記位相差板には、一軸又は二軸延伸された位相差板が用いられている。さらに、捩れ配向したネマティック液晶層(ツイストネマティック液晶層)を1層以上用いる方法も開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2014-209220号公報
【文献】特開2014-224837号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
例えば、変性ポリカーボネイト(PC)系フィルムを二軸延伸したλ/4板は、広視野角化のための位相差板として知られている。しかしながら、当該位相差板及び後述するλ/4板と同λ/2板とを積層してなる位相差板では、可視光波長域に対する位相差値については逆波長分散性を示すものの、斜め方向から見た際の色付きの抑制は十分ではなかった。
【0007】
その他に、シクロオレフィン(COP)系フィルムを一軸延伸したλ/4板と同λ/2板とを積層してなる広視野角化された位相差板がある。しかしながら、当該積層位相差板では、偏光板の光軸に対して、それぞれの位相差板を所定の光軸角度となるように切り出した後、枚葉で粘着層等を用いて積層しなければならず、生産性に問題があった。
【0008】
また、特許文献1においては、捩れ角とΔnd(屈折率差(Δn)とフィルムの厚さ(d)の積)を制御した連続する2層の捩れ配向したネマティック液晶により、公知の一軸延伸されてなるλ/4板とλ/2板の位相差板よりも、より幅広い波長の直線偏光をより完全な円偏光に変換し得る広帯域λ/4板を実現することが記載されている。しかしながら、当該λ/4板を用いた円偏光板については、直上方向からの観察結果に留まっており、斜め方向から見たときの表示性(黒の再現性や色付き)については十分に議論されていない。
【0009】
また、上記位相差板に関し、斜め方向からの上記表示性の改善には、一般に、厚み方向の位相差値が所定の範囲である正Cプレート層を追加することが知られている。例えば、特許文献2においてはλ/2板とλ/4板の材料に正Cプレート層を追加することで斜め方向からの表示性の改善を図ろうとしている。
【0010】
以上の通り、従来からあるそれぞれλ/2板とλ/4板の機能を有する二層の捩れ配向したネマティック液晶層を用いた構成や延伸フィルムを組み合わせたのみの広帯域λ/4波長位相差板、さらに、正Cプレート層をも備えた円偏光板では、斜め方向からの見たときの表示装置の黒の再現性(黒輝度の低さ)や色付きに関する表示性は満足できるものではなく、さらなる改善が求められる。また、正Cプレート層は、厚み方向位相差値(Rth)や位相差板との最適な配置関係について未だ議論されていない。
【0011】
本願は、斜め方向から見たときの黒表示における黒輝度を低減する(良好な黒味が表示される)円偏光板用広帯域位相差板、それを備えた円偏光板、並びに前記円偏光板を備える液晶表示装置及び有機EL表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは上記課題を解決すべく、鋭意検討を行った。その結果、厚み方向に捩れ配向を持つ液晶層2層の間に正Cプレート層を用いることによって、斜め方向から見たときの黒表示における黒輝度を低減することに成功した。
【0013】
すなわち、本発明は、以下の発明に関するが、それらに限定されない。
[発明1]
棒状液晶化合物が厚み方向を螺旋軸に配向し、実質的に1/2波長の面内位相差値(Re)を有する第1光学異方性層と、
棒状液晶化合物が厚み方向を螺旋軸に配向し、実質的に1/4波長の面内位相差値(Re)を有する第2光学異方性層と
を備える位相差板であって、
前記第1及び第2光学異方性層の間に下記式(1):

≒n<n (1)

(式中n及びnは直交するプレート平面方向の屈折率、nはプレート平面方向に対して垂直方向の屈折率を示す)
を満足する第3光学異方性層を備える、
ことを特徴とする位相差板。
[発明2]
前記第1光学異方性層の捩れ角が実質的に26°又は実質的に-26°であり、前記第2光学異方性層の捩れ角が、前記第1光学異方性層の捩れ角から実質的に78°又は実質的に-78°にある、発明1に記載の位相差板。
[発明3]
前記第3光学異方性層は垂直配向型液晶化合物を有する層であり、当該厚み方向位相差値(Rth)が-150~-80nmである、発明2に記載の位相差板。
[発明4]
偏光素子及び発明1~3のいずれかに記載の位相差板を備えた円偏光板。
[発明5]
前記偏光素子は二色性のアゾ染料を含み、その色相が無彩色である、発明4に記載の円偏光板。
[発明6]
発明4又は5に記載の円偏光板を備えた有機EL表示装置。
[発明7]
発明4又は5に記載の円偏光板を備えた液晶表示装置。
【発明の効果】
【0014】
本願は、斜め方向から見た時の黒表示における黒輝度を低減する及び/又は色付きを低減する円偏光板用広帯域位相差板及びそれを備えた円偏光板、並びに、前記円偏光板を備える液晶表示装置(LCD)及び有機エレクトロルミネッセンス(EL)表示装置(有機発光ダイオード(OLED)表示装置)を提供できる。一態様において、正面から見たときに黒表示において良好な黒味が表示される表示装置を提供できる。一態様において、本願は薄型の位相差板を提供できる。一態様において、本願はLCD及びOLED表示装置の黒表示において、head-on(正面)の方位だけでなく、視野角を振ったより広い方位において、より低い輝度と色付きが非常に低減された黒を達成する。一態様において、本願は、枚葉貼合や斜め延伸等の複雑な工程を必要とせずロール・トゥ・ロールの貼りあわせのみで円偏光板を作製可能とする製造方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の1つの実施形態に係る位相差板の断面図である。
図2】本発明の1つの実施形態に係る円偏光板の断面図である。
図3】本発明の「第1の態様例」の説明図である。
図4】実施例1の極角度0°~80°と方位角0°~360°に対する輝度の等値線図である。
図5】実施例2の極角度0°~80°と方位角0°~360°に対する輝度の等値線図である。
図6】実施例3の極角度0°~80°と方位角0°~360°に対する輝度の等値線図である。
図7】比較例1の極角度0°~80°と方位角0°~360°に対する輝度の等値線図である。
図8】比較例2の極角度0°~80°と方位角0°~360°に対する輝度の等値線図である。
図9】比較例3の極角度0°~80°と方位角0°~360°に対する輝度の等値線図である。
図10】比較例4の極角度0°~80°と方位角0°~360°に対する輝度の等値線図である。
図11】比較例5の極角度0°~80°と方位角0°~360°に対する輝度の等値線図である。
図12】比較例6の極角度0°~80°と方位角0°~360°に対する輝度の等値線図である。
図13】極角度(傾斜角)40°、方位角0~360°(45°刻み)における、実施例1~3の円偏光板の実験結果である。
図14】極角度(傾斜角)50°、方位角0~360°(45°刻み)における、実実施例1~3の円偏光板の実験結果である。
図15】極角度(傾斜角)60°、方位角0~360°(45°刻み)における、実施例1~3の円偏光板の実験結果である。
図16】極角度(傾斜角)40°、方位角0~360°(45°刻み)における、実施例1及び比較例1~3の円偏光板の実験結果である。
図17】極角度(傾斜角)50°、方位角0~360°(45°刻み)における、実施例1及び比較例1~3の円偏光板の実験結果である。
図18】極角度(傾斜角)60°、方位角0~360°(45°刻み)における、実施例1及び比較例1~3の円偏光板の実験結果である。
図19】極角度(傾斜角)40°、方位角0~360°(45°刻み)における、実施例1及び比較例4~6の円偏光板の実験結果である。
図20】極角度(傾斜角)50°、方位角0~360°(45°刻み)における、実施例1及び比較例4~6の円偏光板の実験結果である。
図21】極角度(傾斜角)60°、方位角0~360°(45°刻み)における、実施例1及び比較例4~6の円偏光板の実験結果である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態について説明する。
【0017】
(位相差板)
位相差板(波長板)とは、入射する直線偏光に所定の位相差を与える光学素子を意味する。本発明に係る位相差板はそれぞれλ/2板とλ/4板として二つの光学異方性層(第1及び第2光学異方性層)を備え、さらに、第1及び第2光学異方性層の間に、斜め方向から見たときの色づきを抑制する第3光学異方性層を備える。本発明に係る位相差板は円偏光板に適しており、特に広帯域円偏光板に適している。本発明の位相差板の作製方法は特に限定されず、例えばロール・トゥ・ロール等の公知の方法で作製できる。
位相差板において広帯域とは、一般に、直線偏光を入射すると可視光域(380nm~780nm)の全ての波長において、ほぼ一定の位相差を与える位相差板である。従って、円偏光板の作製に用いる位相差板においては、可視光域の全ての波長において、ほぼ1/4波長の位相差を与える。
【0018】
(第1及び第2光学異方性層)
本発明に係る第1光学異方性層は実質的に1/2波長の面内位相差値(Re)を有し、λ/2板として機能する。本発明の位相差板が円偏光板用に適する限りにおいて、前記Reは完全に1/2波長でなくてもよい。例えば、±20%、15%、10%、5%、2%、又は1%の数値範囲を含む。
本発明に係る第2光学異方性層は実質的に1/4波長の面内位相差値(Re)を有し、λ/4板として機能する。用語「実質的」については上記と同様である。
【0019】
第1及び第2光学異方性層を形成する液晶化合物は、一般的に、その形状から棒状タイプ(棒状液晶化合物)と円盤状タイプ(ディスコティック液晶化合物)に大別される。本発明は、棒状液晶化合物を用い、ツイストネマティック(TN)液晶層を形成することが好ましい。TN液晶層は、棒状の細長い形をした分子がおおよそ一定方向にそろって並んでいるネマティック液晶が、カイラリティにより当該分子方向が捩れた螺旋状に連続的に変化した液晶層である。
TN液晶層は、重合性基を有する棒状液晶化合物等が重合等によって固定されて形成された層であることが好ましく、この場合、層となった後は液晶性を示す必要はない。棒状液晶化合物に含まれる重合性基の種類は特に制限されず、付加重合反応が可能な官能基が好ましく、重合性エチレン性不飽和基または環重合性基が好ましい。より具体的には、(メタ)アクリロイル基、ビニル基、スチリル基、アリル基などが好ましく挙げられ、(メタ)アクリロイル基がより好ましい。本発明では、公知のTN液晶材料を使用できる。また、TN液晶層を形成する際に、必要に応じて、上記液晶化合物とともに、所望によりカイラル剤を使用していてもよい。カイラル剤は、液晶化合物を捩れ配向させるために添加される。
【0020】
また、位相差板に上述のような重合性液晶材料を用いることによって、一般に、50μm~100μmの膜厚を有するフィルム状の位相差板に比べ、当該厚みを5μm~20μmと薄型化をすることができる。
【0021】
本発明の位相差板中の第1及び第2光学異方性層は、厚み方向を螺旋軸とする捩れ配向している。また、両液晶層の捩れ方向は同じである。また、第1光学異方性層の第3光学異方性層側の面内遅相軸は、第2光学異方性層の第3光学異方性層側の面内遅相軸と平行である。すなわち、第2光学異方性層の捩れ角は、第1光学異方性層の捩れ角を基準に配置される。当該捩れ角の正及び負(マイナス:-)は、偏光素子の吸収軸方向を0°とし、円偏光板の偏光素子が視認側のとき、当該吸収軸から反時計周りの方向を正、及び当該吸収軸から時計周りの方向を負で示す。
【0022】
本発明の位相差板で使用される第1光学異方性層の捩れ角度は、一態様において実質的に26°である。より具体的には、26±10°が好ましく、26±7°がより好ましく、26±5°がさらに好ましい。この場合、第2光学異方性層の捩れ角度は実質的に78°である。より具体的には、78±10°が好ましく、78±7°がより好ましく、78±5°がさらに好ましい。または、第1光学異方性層の捩れ角度は、他の態様において実質的に-26°である。より具体的には、-26±10°が好ましく、-26±7°がより好ましく、-26±5°がさらに好ましい。この場合、第2光学異方性層の捩れ角度は実質的に-78°である。より具体的には、-78±10°が好ましく、-78±7°がより好ましく、-78±5°がさらに好ましい。上記捩れ角度はフィルム検査装置(RETS-1100A、大塚電子社製)を用いて測定される。
【0023】
本発明の位相差板で使用される第1光学異方性層において、波長550nmにおける屈折率異方性Δn1と当該液晶層の厚みd1の積(Δn1・d1)である面債位相差値(Re)は、実質的に275nmであり、より具体的には、前記積(Δn1・d1)は275±30nmが好ましく、275±20nmがより好ましく、275±10nmがさらに好ましい。
【0024】
また、本発明の位相差板で使用される第2光学異方性層において、波長550nmにおける屈折率異方性Δn2と当該液晶層の厚みd2の積(Δn2・d2)である面債位相差値(Re)は実質的に137.5nmであり、より具体的には、前記積(Δn2・d2)は137.5±15nmが好ましく、137.5±10nmが好ましく、137.5±5nmがさらに好ましい。上記Δn1・d1及びΔn2・d2はフィルム検査装置(RETS-1100A、大塚電子社製)を用いて測定される。
【0025】
(第3光学異方性層)
本発明の位相差板が備える第3光学異方性層は、正Cプレートと称する位相差板の一種であり、プレート平面上にxy直交軸を、プレート平面に対して垂直方向にz軸を設定した際、各軸方向の屈折率n、n、nが、n≒n<nとなる位相差板を意味する。なお、「n≒n」はnとnが実質的に等しいことを表し、完全に等しい場合も含む。前記「nとnが実質的に等しい」とは、正Cプレートとして機能する限りにおいてnとnは異なってもよく、例えば、一方から見てもう一方が20%、15%、10%、5%、2%、又は1%の差異があってもよい。なお、「≒」の代わりに
【数1】

等の記号を用いてもよい。本発明では、公知の正Cプレートを使用できる。一態様において、本発明の位相差板が備える第3光学異方性層は、例えば、棒状液晶化合物が厚み方向(プレート平面)に対して垂直配向した液晶層である。前記垂直とは、当該液晶化合物の配向角がプレート平面に対して90°及びほぼ90°(影響を無視できる程度の差異、例えば±10°、±5°、±3°、又は±1°以内の差異を含む)の方向を含む。第3光学異方性層は、重合性基を有する棒状液晶化合物等が重合等によって固定されて形成された層であることが好ましく、この場合、層となった後は液晶性を示す必要はない。棒状液晶化合物に含まれる重合性基の種類は特に制限されず、付加重合反応が可能な官能基が好ましく、重合性エチレン性不飽和基または環重合性基が好ましい。より具体的には、(メタ)アクリロイル基、ビニル基、スチリル基、アリル基などが好ましく挙げられ、(メタ)アクリロイル基がより好ましい。
また、当該液晶層の厚さ方向位相差(Rth)の調整は、当該膜厚の調整によって行うことができる。当該膜厚は、特に限定されないが、一般に、好ましくは0.1μm~3μm、より好ましくは0.5μm~2μmの範囲で設けることができる。
他の態様においては、特開2016-108536号公報に記載のセルロース系樹脂材料を使用することができる。薄型化及び生産性の観点においては、前述の液晶化合物を用いることが好ましい。
【0026】
本発明の第3光学異方性層の厚さ方向位相差(Rth)は、ポアンカレ球理論に基づき決定される。ポアンカレ球上において直線偏光を示す赤道上の座標から北極または南極上の円偏光を示す座標への移動の軌跡を最小限とするため最適な値の範囲を設けることが好ましく、具体的には-150~-80nmの範囲が好ましく、-132~-112nmの範囲がより好ましく、-126~-120nmの範囲がさらにより好ましい。さらに、第3光学異方性層は、上述の第1光学異方性層と第2光学異方性層との間に配置することが好ましい。これにより、本発明の位相差板により生成される各波長の円偏光は、ポアンカレ球において北極あるいは南極上の円偏光を示す座標に集約され、各波長において理想に近い円偏光を形成することになる。従って、本発明の円偏光板が実装される表示装置等においては斜め方向から見た際の色づきを抑制することができる。
【0027】
(配向処理)
本発明の第1及び第2光学異方性層は、基材上に液晶化合物を配向させるための処理、または配向膜を設ける。液晶配向は、前記光学異方性層の配向方向を適切に規定し、本発明が所望の性能を奏することを妨げなければ、特に制限は無く、本分野で公知の配向技術を使用できる。基材の搬送方向に対して約0~50°方向に回転するラビングロールを用いて基材表面を物理的に異方性を形成させてもよいし、特開2003―014935号公報に開示された基材上に設けた樹脂層を前記ラビング処理する方法を用いてもよいし、高分子膜上に直線偏光の紫外線により異方性を持たせ配向膜を形成する光配向膜でもよい。
【0028】
(偏光素子)
本発明の円偏光板、液晶表示装置、及び有機EL表示装置を得るために用いられる偏光素子(偏光子又は偏光膜と称することもある)としては、特に制限はなく、用途に応じて公知の偏光素子を適切に選択し使用できる。例えば、水溶性の二色性染料及び/又は多ヨウ素イオン等の二色性色素を含浸させたポリビニルアルコール(PVA)系フィルムをホウ酸温水浴中で一軸延伸することにより得られる偏光素子や、ポリビニルアルコールフィルムを一軸延伸し、次いで脱水反応により、ポリエン構造を形成させて得られる偏光素子や、基材膜上に二色性色素を含む溶液を塗布して二色性色素を配向させて得られる偏光素子や、保護膜上にポリビニルアルコール層を設け、基材膜と共に一軸延伸後、二色性色素を含浸させて得られる基材一体型偏光素子等が挙げられる。加工性や光学特性の観点からは、代表的には、PVA系フィルムを一軸延伸し二色性色素を吸着配向させた偏光素子を好適に用いることができる。市販のPVA系フィルムとして、例えば、クラレ製VF-PS(厚さ75μm)が挙げられ、この場合、一般に、二色性色素を吸着配向後、25μm~35μmの厚さとなるまで一軸延伸して偏光素子を得る。
【0029】
二色性色素は、好ましくは、ヨウ素イオン又は二色性染料であり、いずれも本発明用の偏光素子を得るために用いることができる。二色性染料としては、アゾ系染料、アントラキノン系染料、及びテトラジン系染料などが挙げられ、色相設計および熱に対する耐久性の観点においては、2~3種以上のアゾ系染料を配合し用いることが好ましい。また、いずれの二色性色素を用いた場合において、偏光素子の光学特性は、実装する表示装置において反射防止能と優れた黒表示性を得る観点から、高透過率及び高偏光度(高い二色性ともいう)を有していることが好ましく、より詳細には、視感度補正単体透過率(Ys)は40%~45%、及び視感度補正偏光度(Py)は99%以上であることが好ましい。
【0030】
本発明の一態様において、無彩色な色相を有していることが好ましく、すなわち、当該偏光素子の単体透過率(Ts)が、可視光域(波長400nm~700nm、より好ましくは380nm~780nm)に亘ってほぼ均一であることが好ましい。L*a*b*表色系におけるa*及びb*値の絶対値が、偏光素子単体で測定したときにいずれも1以下であり、前記偏光素子2枚を吸収軸方向が互いに直交となるように重ねて測定したときに、a*値の絶対値が4以下、b*値の絶対値が8以下となる色相もまた、当該無彩色の具体的態様として好ましい。これにより、例えば、本発明の広帯域化された位相差板を備えた円偏光板により、表示装置からの反射光を可視光域に亘って色づきを抑えるだけでなく、偏光素子表面由来の反射光に対しても、可視光域に亘って色づきを抑えることができる。
【0031】
二色性を有するアゾ染料としては、例えば、C.I.Direct Yellow 12、C.I.Direct Yellow 28、 C.I.Direct Yellow 44、C.I.Direct Yellow 142、C.I.Direct Orange 26、C.I.Direct Orange 39、C.I.Direct Orange 71、C.I.Direct Orange 107、C.I.Direct Red 2、C.I.Direct Red 31、C.I.Direct Red 79、C.I.Direct Red 81、C.I.Direct Red 117、C.I.Direct Red 247、C.I.Direct Green 80、C.I.Direct Green 59、C.I.Direct Blue 71、C.I.Direct Blue 78、C.I.Direct Blue 168、C.I.Direct Blue 202、C.I.Direct Violet 9、C.I.Direct Violet 51、C.I.Direct Brown 106、C.I.Direct Brown 223等が挙げられる。その他に、公知の方法によって製造できる染料を使用してもよく、公知の方法としては、例えば、特開平3-12606号公報に記載の方法、又は特開昭59-145255号公報の記載の方法などが挙げられる。また、市販染料ではKayafect Violet P Liquid、KayafectYellow Y及びKayafect Orange G、Kayafect Blue KW及びKayafect Blue Liquid 400(全て日本化薬社製)等を挙げることができる。これらのアゾ染料を可視光域における各透過率が均一となるように2~3種以上配合して用いる。さらに、本発明に係る偏光素子においては、高透過率及び高偏光度の無彩色な偏光素子を得るためには、国際公開WO2017/146212号公報、国際公開WO2019/117131号公報等に開示されている無彩色な偏光素子の設計のために二色性が改善されたアゾ染料を好適に用いることができる。
【0032】
偏光素子は、偏光素子を保護するための基材(支持体、支持フィルムともいう)を含むことが好ましい。基材は、偏光素子の片面のみに配置されていてもよく、2枚の同一または異なる基材が偏光素子を挟持するように偏光素子の両面に配置されていてもよい。偏光素子に基材を有する構成を偏光板という。偏光素子に後述する基材を備える場合は、偏光素子と表示装置との間に配置される基材は、面内位相差値(Re)及び厚み方向位相差(Rth)は、0、またはほぼ0(数値として影響を無視できる程度、例えば-5nm~5nmの範囲)であることが好ましい。
【0033】
(基材)
本発明の位相差板、円偏光板(以後、本発明の物品ともいう)は基材を備えてもよい。基材として、所望の機械的強度や熱安定性などを有し、本発明が所望の性能を奏することを妨げなければ、特に制限は無く、本分野で公知の基材を使用できる。基材の厚さは適宜設計することができるが、50~200μmが好ましく、10~100μmがより好ましく、20~80μmがさらに好ましい。
【0034】
また、偏光素子と表示装置との間に基材を配置する場合、当該基材の面内位相差値(Re)及び厚み方向位相差値(Rth)は、0、またはほぼ0であることが好ましい。市販の前記位相差値を有する基材としては、例えば、トリアセチルセルロース系樹脂フィルムZ-TAC(富士フイルム社製)、アクリル系樹脂フィルムOXISシリーズ(大倉工業社製)等が挙げられる。
【0035】
(粘着剤及び/又は接着剤)
本発明の物品において、ある層上に次の層を設けることにより積層を形成してもよく、複数の層を粘着剤及び/又は接着剤により貼り合わせることにより積層を形成してもよい。粘着剤又は接着剤としての機能を奏し、本発明が所望の性能を奏することを妨げなければ、特に制限は無く、本分野で公知の粘着剤又は接着剤を使用できる。粘着剤としては、代表的には、アクリル系樹脂が挙げられる。当該厚さは適宜設計することができるが、1~50μmが好ましく、層間の密着性及び粘着剤塗工及び積層の加工性の観点から5~25μmがより好ましい。接着剤としては、例えば、PVA系樹脂を主成分とする水系接着剤、熱硬化型または光硬化型樹脂を含む接着剤、プラズマ接合による方法等が挙げられる。
【0036】
本発明の光学異方性層の位相差値や捩れ角の値は、光学的に良好の効果を得る値である。それらの値は、実際の液晶化合物の配向特性や製品加工性を考慮すれば、限定されるものではなく、公差やマージンを含むものであってよい。
【0037】
(円偏光板)
本発明の円偏光板は広帯域円偏光板であり、偏光素子及び本発明の位相差板を備え、詳細には、偏光素子(または偏光板)、第1光学異方性層、第3光学異方性層、及び第2光学異方性層をこの順に備える。また、円偏光板の各光軸は、一態様において、偏光素子の吸収軸が0°の方向にあり、第1光学異方性層の捩れ角は、前記偏光素子の吸収軸に対して、実質的に26°の方向にあり、第2光学異方性層の捩れ角は、第1光学異方性層の捩れ角から実質的に78°の方向(すなわち、前記偏光素子の吸収軸に対して104°の方向)である。
【0038】
本発明の円偏光板の作製方法は特に限定されず、例えば、上述の各層のフィルムまたはシートを枚葉ごとに積層してもよいし、ロール状に作製された上述の各層をロール・トゥ・ロールにより連続して積層してもよい。特に、本発明の円偏光板は、位相差板を所定の光軸角度に合わせて切り出す必要がないため、後者のロール・トゥ・ロールによる積層を容易に実施することができる。従って、例えばCOP系フィルムのような一軸延伸フィルムを積層する従来の広帯域円偏光板の製造方法よりも生産性を向上させることができる。
【0039】
(円偏光板の製造方法)
本発明に係る位相差板及び円偏光板の製造方法は、以下第1~第2の態様例を挙げて説明するが、これらに限定されるものではない。また、各光学異方性層は、硬化後において液晶層と基材と剥離可能な基材上に形成し、後述の逐次積層する工程おいて、各基材を取り除いて円偏光板を形成してもよい。
【0040】
(第1の態様例)
第1の工程として、0°の方向(搬送方向)にラビング処理した基材のラビング面に、重合性を有するネマティック液晶相を示す液晶化合物とカイラル剤と光重合開始剤と希釈溶剤とを含む塗布用組成物を塗布し、その後乾燥工程を経て溶剤を除去し、光照射して塗膜を硬化することで、0°方向に配向軸を有し、捩れ角が26°、当該位相差値(Re@550nm)が275nmである第1の光学異方性層を得る。
第2の工程として、重合性を有するネマティック液晶相を示す液晶化合物と光重合開始剤と希釈溶剤とを含む組成物の塗布用組成物を基材に塗布し、その後乾燥工程を得て溶剤を除去し、光照射して塗膜を硬化することで、基材に対して垂直方向に配向した第3光学異方性層を得る。
第3の工程では、搬送方向に対して26°の方向にラビング処理した基材のラビング面に、TN液晶材料とカイラル剤と光重合開始剤と希釈溶剤とを含む塗布用組成物を塗布し、その後乾燥工程を得て溶剤を除去し、光照射して塗膜を硬化することで、26°の方向に配向軸を有し、捩れ角が78°、当該位相差値(Re@550nm)が137.5nmである第2光学異方性層を得る。
第4の工程として、図3に示す光軸関係となるように、偏光素子(または偏光板)、第1光学異方性層、第3光学異方性層及び第2光学異方性層を逐次積層することで本発明の円偏光板を得る。
【0041】
(第2の態様例)
前記第2の工程において、重合性を有するネマティック液晶相を示す液晶化合物と光重合開始剤と希釈溶剤とを含む組成物の塗布用組成物を前記第1の工程で得た第1光学異方性層の液晶面に塗布し、その後乾燥工程を経て溶剤を除去し、光照射して塗膜を硬化することで、当該液晶面に対して垂直方向に配向した第3光学異方性層を得る。その後、図3に示す光軸関係となるように、偏光素子(または偏光板)、第3光学異方性層が積層された第1光学異方性層、及び第2光学異方性層を逐次積層することで本発明の円偏光板を得ること以外は、第1の態様例と同じである。
【0042】
(表示装置)
本発明の円偏光板は、液晶表示装置(LCD)、有機エレクトロルミネッセンス(EL)表示装置(有機発光ダイオード(OLED)表示装置)等の種々の表示装置の視認側に好ましく適用できる。さらに、当該表示装置は、設計に応じて、タッチパネル、防眩層や反射防止層、透光カバー(前面板ともいう)等を含む構成でもよい。また、前記透光カバーは、平面形状でもよいし、曲面形状を有してもよい。本発明の表示装置の作製方法は特に限定されず、公知の方法で作製できる。
【0043】
本発明の液晶表示装置は、透過型または半透過型と称する液晶パネルとバックライトユニットを備える構成でもよいし、反射型と称する液晶パネルと反射層を備える構成でもよい。
【0044】
また、有機EL表示装置は、一般に、当該表示パネル部に金属電極を備えるため、OLED(有機EL表示装置)そのものは、液晶パネルよりも高い反射率を有する。これは、例えば、日中の屋外等の外光が多い環境で使用した場合では、当該電極からの外光反射により表示性を損ねてしまう原因となる。そのため、有機EL表示装置の視認側には、外光反射を抑制するため、一般に、円偏光板が付される。従って、有機EL表示装置の表示特性は、円偏光板の光学特性にも依存することになる。本発明の円偏光板は従来の円偏光板よりも広い視野角特性を有しているから、広い視聴角を必要とする有機EL表示装置に好適に用いることができる。
【0045】
ここまで本発明の実施形態について述べたが、本発明は以上の実施形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想に基づいて各種の変形及び変更が可能である。
【実施例
【0046】
以下、実施例により、本発明を具体的に説明するが、本発明はこれら実施例によって限定されない。
【0047】
円偏光板を理想的な反射板に貼ったと仮定して、下記方位角及び傾斜角(極角度)における黒輝度(単位は規格化された値)を、液晶シミュレーションソフトLCDmaster(シンテック社製)を用いて計算を行った。円偏光板の構成及び計算条件は次の通りである。表1は以下の計算条件と光学異方性層の配置関係の一覧を示す。面内位相差値(Re)及び厚み方向位相差値(Rth)は、波長550nmにおける値を示す。また、表1において、配置した光学異方性層は、入射光側から順に、第1層、第2層及び第3層の欄に示す。
円偏光板の構造:
実施例1:(入射光側から順に)偏光素子、第1光学異方性層、第3光学異方性層1、第2光学異方性層、反射板
実施例2:(入射光側から順に)偏光素子、第1光学異方性層、第3光学異方性層2、第2光学異方性層、反射板
実施例3:(入射光側から順に)偏光素子、第1光学異方性層、第3光学異方性層3、第2光学異方性層、反射板
実施例4:(入射光側から順に)偏光素子、第1光学異方性層、第3光学異方性層4、第2光学異方性層、反射板
実施例5:(入射光側から順に)偏光素子、第1光学異方性層、第3光学異方性層5、第2光学異方性層、反射板
比較例1:(入射光側から順に)偏光素子、第1光学異方性層、第2光学異方性層、第3光学異方性層1、反射板
比較例2:(入射光側から順に)偏光素子、第3光学異方性層1、第1光学異方性層、第2光学異方性層、反射板
比較例3:(入射光側から順に)偏光素子、第1光学異方性層、第2光学異方性層、反射板
比較例4:(入射光側から順に)偏光素子、一般的な1/2波長板1、第3光学異方性層6、一般的な1/4波長板1、反射板
比較例5:(入射光側から順に)偏光素子、一般的な1/2波長板2、第3光学異方性層7、一般的な1/4波長板2、反射板
比較例6:(入射光側から順に)偏光素子、一般的な1/2波長板1、一般的な1/4波長板1、第3光学異方性層8、反射板
第1光学異方性層:
液晶層:ZLI-4792(メルク社製)
生じる位相差=1/2λ
Δn1・d1=275nm
プレツイスト角度=0°
ツイスト角度=-26°
液晶層の厚み=2.136μm
第2光学異方性層:
液晶層:ZLI-4792(メルク社製)
生じる位相差=λ/4
Δn2・d2=137.5nm
プレツイスト角度=-26°
ツイスト角度=-78°
液晶層の厚み=1.068μm
第3光学異方性層:
液晶層:重合性垂直配向型液晶化合物(メルク社製)
=1.5283
=1.5283
=1.6725
液晶層の厚み=0.60μm~1.45μm
Rth:以下当該1~8に記載
第3光学異方性層1:
Rth=-120nm
第3光学異方性層2:
Rth=-115nm
第3光学異方性層3:
Rth=-130nm
第3光学異方性層4:
Rth=-80nm
第3光学異方性層5:
Rth=-150nm
第3光学異方性層6:
Rth=-174nm
第3光学異方性層7:
Rth=-209nm
第3光学異方性層8:
Rth=-133nm
偏光素子:JET-12(ポラテクノ社製、視感度補正単体透過率Ys=41.5%及び視感度補正偏光度Py=99.99%である分光データを使用、支持体層は有しない)
反射板:
材質:理想的な反射板
一般的な1/2波長板(HWP)1:
材質:シクロオレフィンポリマー(COP)
Nz係数=1.0
一般的な1/4波長板(QWP)1:
材質:シクロオレフィンポリマー(COP)
Nz係数=1.0
一般的な1/2波長板(HWP)2:
材質:シクロオレフィンポリマー(COP)
Nz係数=1.5
一般的な1/4波長板(QWP)2:
材質:シクロオレフィンポリマー(COP)
Nz係数=1.5
入射光:自然光(波長範囲:380nm~780nm)
傾斜角(極角度)θ=40°、50°、及び60°)
方位角Φ=0°~360°(各5°刻み)
【0048】
上記試験条件において、Nz係数は、屈折率成分n、n及びnの大小関係を示す指標の一つとして、以下の式(2)によって示される値である。
【数2】
【0049】
上記計算条件において、ZLI-4792(メルク社製)及びシクロオレフィンポリマー(COP)は、LCDmasterに付属する標準データを用いた。また、重合性垂直配向型液晶化合物(メルク社製)を用いた第3光学異方性層のn、n、及びnは、当該液晶化合物を製膜して得た試験片をアッベ屈折計(DR-M2 ATAGO社製)により測定した。
【表1】
【0050】
表2は、実施例1~5及び比較例1~6の黒輝度値の評価結果を示す。
実施例1~5及び比較例1~6の計算において、極角度θ=0°(head-on)における黒輝度値は0.1以下を示しており、偏光素子から入射した光は、円偏光板によって反射板からの反射を十分に抑制していることを確認した。この極角度θ=0°における黒輝度値を基準に評価を行った。なお、この黒輝度値が0またはほぼ0であることは、円偏光板が入射光の反射を抑え、理想的に機能していることを示す。
【0051】
上記の計算結果を用いて、中心が極角度θ=0°(head-on)とし、極角度θ=0°~80°の範囲に対する方位角Φ=0°~360°の黒輝度の分布を等値線図(コンター図)で示した。このとき、黒輝度は、最小0の値から最大10の値の範囲に固定して示した。図4~6は実施例1~3、及び図7~12は比較例1~6のコンター図をそれぞれ示す。実施例1~3のコンター図は、極角度θが0°から80°へ(図の円中心から外円端へ)シフトさせた際の最大輝度値を示す等値線は1.6~1.8であり、これは各比較例よりも小さい値であることから、より広い視野角を示すことが分かった。なお、比較例5の場合では、最大輝度値は10を超えていた。
【0052】
さらに斜め方向から見たときの黒輝度の改善効果を定量的に比較するために、上記の計算結果から、以下の記載する極角度θ及び方位角Φの条件で黒輝度値を抽出した。このときの黒輝度値を方位角Φに対してプロットした結果を図13~21に示す。
極角度θ=θ=40°、50°、60°
方位角Φ=0°~360°(45°刻み)
【0053】
実施例1~3について前記条件でプロットした結果を図13~15に示す。詳細には、第3光学異方性層のRthの範囲が-130nm~-115nmである実施例1~3において、それぞれ、極角度θ=40°、50°、及び60°の黒輝度値には差が殆どなく、前記の各極角度における方位角Φ=0°~360°(45°刻み)の黒輝度の平均値(B)は、0.26~0.68であった。これは、黒輝度が極角度θ=0°(A)に対して、極角度θ=40°、50°、及び60°の斜め方向から見たときの黒輝度が2.7倍~7.6倍に増加すると見積ることができた。また、第3光学異方性層のRthの範囲が-80nm及び-150nmである実施例4及び5の場合について上記同様に計算を行ったところ、黒輝度の増加は、3.2倍~10.0倍であった。このことから、第3光学異方性層のRthの範囲は、好ましくは-130nm~-115nmとすることで斜め方向から見たときの黒輝度をより低下させることできることが分かった。
【0054】
比較例1~3について前記条件でプロットした結果を図16~18に示す。第3光学異方性層のRthを-120nmに固定し、当該第3光学異方性層の配置を第2光学異方性層の後、あるいは第1光学異方性層の前に配置し、または当該第3光学異方性層を無しとした比較例1~3において、それぞれ、極角度θ=40°、50°、及び60°の黒輝度値は、実施例1~5の場合よりも、いずれも大きい値を示した。また、前記と同様に求めた各極角度における方位角の黒輝度の平均値(B)は、比較例1~2では0.59~1.72、比較例3では1.27~3.88であった。これは、黒輝度が極角度θ=0°(A)に対して、極角度θ=40°、50°、及び60°の斜め方向からの見たときの黒輝度が、比較例1~2は6.3倍~18.2倍、比較例3は13.4倍~41.1倍に増加すると見積ることができた。この結果より、実施例1~5の構成は、従来の比較例1~3よりも視野角特性が向上することが示された。
【0055】
比較例4~6において、当該条件の位相差板を備えた円偏光板を備えた表示体が最も広視野角化するときのRth値(比較例4:-174nm、比較例5:-209nm、及び比較例6:-133nm)を有する第3光学異方性層を用いた。実施例1~5と同様に、それぞれ、極角度θ=40°、50°、及び60°の黒輝度値を求め、プロットした結果を図19~21に示す。いずれの条件において、黒輝度値は、実施例1~5だけでなく比較例1~3に対しても、大きい値を示しており、従来のCOP系フィルムを用いる比較例4~6の構成では、第3光学異方性層を配置しても広視野角化を図ることができなかった。
【0056】
【表2】
【0057】
以上の結果より、本発明の円偏光板の構成において、円偏光板の広帯域化は、第3光学異方性層の有無及びそのRth値の最適化だけでなく、第1光学異方性層と第2光学異方性層とに対する第3光学異方性層の配置を選定することにより、従来構成の円偏光板よりも広帯域化することができる。そのため、本発明により、例えば、有機EL表示装置等の黒表示において斜め方向から見たときの光抜けの少ない黒表示を得ることができる。
【0058】
また、本発明の位相差板は、極角度0°における黒輝度をさらに低下させるために、最適な波長分散特性(位相差の波長依存性を意味する)を有する第1及び第2光学異方性層を備えてもよい。同様に、第3光学異方性層においては、当該波長分散特性を負の分散(逆波長分散)とすることで、斜め方向から見たときの黒表示における黒輝度をさらに低減することができる。
【産業上の利用可能性】
【0059】
本願は、斜め方向から見た時の黒表示における色付き又は反射率を低減する位相差板、それを備えた円偏光板、並びに前記円偏光板を備える液晶表示装置及び有機EL表示装置を提供できる。例えば、有機EL表示装置は、より広い視聴角を与えることができるから、表示装置の設置と視聴場所が固定される車載等に好適に用いることができる。また、ロール・トゥ・ロールの貼りあわせのみで円偏光板を作製可能とする製造方法を提供できるから、大型の表示装置用の円偏光板の製造にも対応することができる。
【符号の説明】
【0060】
101 本発明の位相差板
102 第1光学異方性層
103 第2光学異方性層
104 第3光学異方性層
105 本発明の円偏光板
106 偏光素子(偏光板)
107 捩れネマティック液晶
108 基材1(配向膜)
109 基材2(配向膜)
201 吸収軸方向(0°)
202 ラビング方向(配向方向)(0°)
203 捩れ角方向(26°)
204 ラビング方向(配向方向)(26°)
205 捩れ角方向(104°)
206 201に平行を示す
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21