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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-03-19
(45)【発行日】2025-03-28
(54)【発明の名称】車載用ルーフボックスロック機構
(51)【国際特許分類】
   B60R 9/055 20060101AFI20250321BHJP
   E05B 83/00 20140101ALI20250321BHJP
【FI】
B60R9/055
E05B83/00 Z
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2022035250
(22)【出願日】2022-03-08
(65)【公開番号】P2023130770
(43)【公開日】2023-09-21
【審査請求日】2024-02-19
(73)【特許権者】
【識別番号】390005304
【氏名又は名称】PIAA株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100101247
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100098327
【弁理士】
【氏名又は名称】高松 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】可児 玄
【審査官】浅野 麻木
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-089329(JP,A)
【文献】特開平11-129824(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2007/0257075(US,A1)
【文献】特開平08-258630(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 9/055
E05B 83/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車載用ルーフボックスロック機構であって、
ルーフボックスのボトムケースと前記ボトムケースの上部開口を塞ぐカバーとの間に設けられ、前記ボトムケースに対する前記カバーの閉状態を保持するキャッチユニットと、
前記キャッチユニットと連結ロッドで連結されたロックユニットとを備えており、
前記キャッチユニットは、前記閉状態における前記ルーフボックスの内部に設けられており、前記ボトムケースに取り付けられたラッチと、前記カバーに取り付けられたストライカーとを有しており、
前記キャッチユニットが前記ルーフボックスの一辺に沿って離間して二つ設けられると共に、二つの前記キャッチユニットの間に前記ロックユニットが設けられており、
前記ロックユニットは、二つの前記キャッチユニットと前記連結ロッドによってそれぞれ連結されており、
前記ラッチが、前記ボトムケースに固定されたラッチブラケットと、前記ラッチブラケットに揺動可能に取り付けられると共にその揺動軸に沿って延在する前記連結ロッドの一端に固定されている係止爪とを有しており、
二つの前記連結ロッドは、互いに独立して前記揺動軸回りに回転可能であり、
前記ストライカーが、前記カバーに固定されたストライカーブラケットと、前記ストライカーブラケットに固定された被係止部材とを有しており、
前記ロックユニットが、前記ボトムケースに固定されたロックケースと、前記ロックケース内で前記連結ロッドの他端に固定された揺動可能なロックベースと、前記揺動軸に垂直なスライド方向にスライド可能に前記ロックケース内に収容されたロックボディとを有しており、
前記ロックボディが、前記ロックベースと係合され、かつ、そのスライド方向に対して垂直な面内で回転可能なロックプレートを有しており、
前記ロックベースと前記連結ロッドで連結された前記係止爪が前記被係止部材と係止している係止揺動位置にあるときにのみ前記ロックプレートが進入可能なスリットが、前記ロックベースに形成されている、車載用ルーフボックスロック機構。
【請求項2】
前記ロックベースと係合する前記ロックボディのスライド動に伴って前記ロックベースが揺動され、前記ロックベースの揺動に伴って前記ロックベースと前記連結ロッドによって連結されている前記係止爪が前記係止揺動位置から移動される、請求項1に記載の車載用ルーフボックスロック機構。
【請求項3】
前記閉状態に前記カバーの周側壁が前記ボトムケースの周側壁の外側に位置し、
二つの前記キャッチユニット及び前記ロックユニットを備えた前記ロック機構が、前記一辺の対辺にも対称に設けられており、
各辺の二組の係止状態の前記キャッチユニットが前記カバーのヒンジ機構としても機能する、請求項1又は2に記載の車載用ルーフボックスロック機構。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、車載用ルーフボックスロック機構に関する。
【背景技術】
【0002】
車両のルーフ上に固定されるルーフボックスが利用されている。より詳しくは、車両の屋根にルーフキャリアが固定され、ルーフボックスはルーフキャリアのクロスバーに固定される。ルーフボックスは、ボトムケースとこのボトムケースの上部開口を塞ぐカバーとで構成されている。ルーフボックスはカバーの閉状態をロックするロック機構も備えている。
【0003】
下記特許文献1に開示されたルーフボックスは、車両搭載状態の右側に複数のヒンジが設けられている。また、ルーフボックスは、車両搭載状態の左側内部にロック機構が設けられている。ロック機構は、カバーの閉状態を維持するためのキャッチユニットを備えている。キャッチユニットは、ボトムケース側の一対のラッチと、カバーの閉状態でラッチに係止されるカバー側の一対のストライカーとを有している。
【0004】
キャッチユニットのラッチとストライカーとの係止状態を解除しつつカバーの車両左側を持ち上げると、車両右側のヒンジを中心にカバーを開くことができる。ここで、ロック機構は、キャッチユニットに加えて、キャッチユニットのラッチとストライカーとの係止状態をロックするロックユニットも備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特許第4943603号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に開示されたロック機構では、ストライカーにラッチが係止していないときにロック操作が行われてしまうことは望ましくない。しかし、例えば、ロックユニットとキャッチユニットとの組み合わせ構成によっては、係止解除時にロック操作が行われることを回避するためには、ロックユニットとキャッチユニットとを連結するロッド等の部材に対して加工精度が要求される。つまり、特許文献1に開示されたロック機構では、加工精度が劣る部材が採用された場合には、ロックの確実性が得られないこともあり得る。
【0007】
従って、本開示の目的は、確実にロックを行うことのできる、車載用ルーフボックスのロック機構を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示の一態様は、車載用ルーフボックスロック機構であって、ルーフボックスのボトムケースと前記ボトムケースの上部開口を塞ぐカバーとの間に設けられ、前記ボトムケースに対する前記カバーの閉状態を保持するキャッチユニットと、前記キャッチユニットと連結ロッドで連結されたロックユニットとを備えている。前記キャッチユニットは、前記閉状態における前記ルーフボックスの内部に設けられており、前記ボトムケースに取り付けられたラッチと、前記カバーに取り付けられたストライカーとを有している。前記ラッチは、前記ボトムケースに固定されたラッチブラケットと、前記ラッチブラケットに揺動可能に取り付けられると共にその揺動軸に沿って延在する前記連結ロッドの一端に固定されている係止爪とを有している。前記ストライカーは、前記カバーに固定されたストライカーブラケットと、前記ストライカーブラケットに固定された被係止部材とを有している。前記ロックユニットは、前記ボトムケースに固定されたロックケースと、前記ロックケース内で前記連結ロッドの他端に固定された揺動可能なロックベースと、前記揺動軸に垂直なスライド方向にスライド可能に前記ロックケース内に収容されたロックボディとを有している。前記ロックボディは、前記ロックベースと係合され、かつ、そのスライド方向に対して垂直な面内で回転可能なロックプレートを有している。前記ロックベースと前記連結ロッドで連結された前記係止爪が前記被係止部材と係止している係止揺動位置にあるときにのみ前記ロックプレートが進入可能なスリットが、前記ロックベースに形成されている。
【発明の効果】
【0009】
本開示によれば、確実にロックを行うことのできる、車載用ルーフボックスのロック機構を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】実施形態に係るロック機構を備えたルーフボックスの外観斜視図である。
図2】上記ルーフボックスの内部を示す斜視図である。
図3】上記ロック機構の斜視図である。
図4】上記ロック機構におけるキャッチユニットの拡大斜視図である。
図5】上記キャッチユニットのラッチの拡大斜視図である。
図6】上記キャッチユニットのロックユニットの拡大斜視図である。
図7】上記ロックユニットの内部を示す拡大斜視図である。
図8】上記ロックユニットの内部を示す拡大斜視図である。
図9】上記ロック機構の拡大斜視図である(ロック不可状態)。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、実施形態に係る車載用ルーフボックスロック機構について、図面を参照しつつ説明する。
【0012】
図1は、閉じられた状態のルーフボックス1の外観を示す斜視図である。図1中の左方が車両の前方である。車両には図示されないルーフキャリアが固定されており、ルーフボックス1は、そのクランプ機構2によってルーフキャリアの二本のクロスバーに固定される。クロスバーは、車両の横方向に延在しており、一本はルーフの前方部に位置し、もう一本はルーフの後方部に位置している。
【0013】
ルーフボックス1は、ボトムケース1aと、ボトムケース1aの上部開口を塞ぐカバー1bとを備えている。本実施形態のルーフボックス1は、車両の右側からでも左側からでもカバー1bを上方に開くことができる。本実施形態のルーフボックス1は、追って詳しく説明する図3に示されるロック機構を備えている。ロック機構は、ボトムケース1a内部の右側壁に沿って設けられていると共に、左側壁に沿っても設けられている。カバー1bを右側から開くときは左側のロック機構がヒンジとして機能し、カバー1bを左側から開くときは右側のロック機構がヒンジとして機能する。各ロック機構は、一対のキャッチユニット3と一対のキャッチユニット3の中央に配されるロックユニット4とを備えている。
【0014】
図2及び図3に示されるように、ボトムケース1a及びカバー1bの左右のサイドパネルの内面には、キャッチユニット3がそれぞれ取り付けられている。各キャッチユニット3は、ボトムケース1aとカバー1bとの間に設けられており、ボトムケース1aに取り付けられたラッチ30と、カバー1bに取り付けられたストライカー31とを有している。各キャッチユニット3は、カバー1bが閉状態であるときのルーフボックス1の内部に設けられており、ルーフボックス1が閉状態だとアクセスできなくなっており、荷物の盗難に関して安全性が確保されている。
【0015】
なお、図2には、カバー1bは示されておらず、カバー1bに固定されたストライカー31のみが示されている。また、図3には、ボトムケース1a及びカバー1bは示されておらず、カバー1bが閉じられたときのロック機構のみが示されている。さらに、図2には、上述したクランプ機構2のレール20のみが示されており、レール20にスライド可能に取り付けられるクランプユニットは図示されていない。図2に示されるように、ボトムケース1aの底板には、面剛性を向上させるためのビードがグリッド状に形成されている。なお、図1に示されるように、ルーフボックス1が閉状態のときに、カバー1bの周側壁がボトムケース1aの周側壁の外側に位置するように、ボトムケース1a及びカバー1bが形成されている。このため、雨などがルーフボックス1の内部に入るのが防止され、かつ、カバー1bの上方への開動作が円滑に行える。
【0016】
キャッチユニット3は、カバー1bが不用意に開かないようにカバー1bの閉状態を維持するための機構であり、ロックユニット4と協働することでカバー1bの閉状態をロックするロック機構の一部でもある。カバー1bが閉じられると、ストライカー31がラッチ30に係止される。本実施形態では、ルーフボックス1の一辺(例えば、車両の右側の辺)に沿って離間して二つ設けられており、この二つのキャッチユニット3はロックユニット4を介して連結ロッド32によって連結されている。一対のキャッチユニット3の間には、カバー1bの閉状態をロックするためのロックユニット4が設けられている。二つのキャッチユニット3は連結ロッド32によってロックユニット4と連動可能となっている。ロックユニット4には、ラッチ30とストライカー31との係止状態を解除するプッシュボタン40aも設けられている。プッシュボタン40aには、ロックユニット4をロック操作する際に用いられる鍵41が挿入される鍵穴が設けられている。
【0017】
なお、本実施形態では、図2に示されるように、ルーフボックス1の前部及び後部には、カバー1bの開状態を保持するリンク5がボトムケース1aとカバー1bとの間に取り付けられている。リンク5には、ダンパーが組み込まれてもよい。
【0018】
本実施形態では、ロックユニット4及び一対のキャッチユニット3からなるロック機構は、ルーフボックス1の上述した一辺と対向する対辺(例えば、車両の左側の辺)にも対称に設けられている。各辺のロック機構は、カバー1bの開閉動作のヒンジとしても機能する。これにより、上述したように、車両の右側からでも左側からでもカバー1bを開くことができる。カバー1bを車両の右側から開くときは車両左側のロック機構がヒンジとして機能する。反対に、カバー1bを車両の左側から開くときは、車両右側のロック機構がヒンジとして機能する。ロック機構のキャッチユニット3によるヒンジ機能についても追って詳しく説明する。
【0019】
キャッチユニット3について、図4及び図5を参照しつつ詳しく説明する。なお、図4に示されるキャッチユニット3は、図3中の左側のキャッチユニット3を示しており、図5に示されるキャッチユニット3のラッチ30は、図3中の右側のラッチ30を示している。
【0020】
本実施形態の四つのキャッチユニット3は、同じ構成を備えている。ただし、ラッチ30に関しては、その設置位置によって上述した連結ロッド32の延出方向は異なる。また、ストライカー31に関しては、カバー1bとの干渉を回避するために、その上部の形状が一部異なる。まず、ラッチ30について説明する。図4及び図5中の右側にはボトムケース1aの側壁が存在するが、ボトムケース1aは示されていない。
【0021】
ラッチ30は、リベットでボトムケース1aに固定されたラッチブラケット30aと、ラッチブラケット30aに揺動可能に取り付けられた係止爪としてのフック30bとを有している。ラッチブラケット30aは、フック30bの先端以外の部分を覆う形状を有している。ラッチブラケット30aの各側板部には、後述するストライカー31の被係止部としてのバー31bを案内する、V字状の案内切欠部30a1が形成されている。
【0022】
フック30bは、上述した連結ロッド32を介して、ラッチブラケット30aに揺動可能に取り付けられている。即ち、フック30bは連結ロッド32の一端に回転不能に固定されており、連結ロッド32が回転可能にラッチブラケット30aに支持されている。連結ロッド32は、ロックユニット4に向けてラッチブラケット30aから延出されている。連結ロッド32の中心軸がフック30bの揺動軸に一致し、連結ロッド32はこの揺動軸に沿って延在している。フック30bの先端は、フック30bの揺動に応じて、上述した案内切欠部30a1内に突出されるか、案内切欠部30a1内から退避される。
【0023】
フック30bの内部には、その先端をボトムケース1aの側壁に向けて揺動させる付勢部材としてのねじりコイルばね(図示せず)が内蔵されている。ねじりコイルばねのコイル部分には、連結ロッド32が挿通されている。このため、フック30bとバー31bとが係止しておらず、かつ、ねじりコイルばねの付勢力以外の力が作用していなければ、フック30bの先端はバー31bとの係止位置(図5の位置)よりもさらにボトムケース1aの側壁寄りに位置する(図9の左側の状態)。以下、係止爪としてのフック30bと被係止部材としてのバー31bとが係止している図5に示される状態にあるときのフック30bの揺動位置を「係止揺動位置」と呼ぶ。後述するが、フック30bが一端に固定されている連結ロッド32の他端には、ロックユニット4のロックベース42が固定されている。フック30bの揺動と共にこのロックベース42も揺動するが、フック30bが係止揺動位置にあるときのロックベース42の揺動位置も「係止揺動位置」と呼ぶ。
【0024】
フック30bの上面は湾曲凸面とされている。カバー1bを閉じる際には、ストライカー31のバー31bが上方から降りてきて案内切欠部30a1に案内される。案内されたバー31bはフック30bの湾曲凸面を押すことになり、フック30bは上述したねじりコイルばねの付勢力に抗して図5中で反時計回りに揺動される。バー31bが案内切欠部30a1の底に達すると、バー31bと湾曲凸面との当接が解消される。この結果、ねじりコイルばねの付勢力によってフック30bは再びその先端を案内切欠部30a1に突出させるように、即ち、図5に示される係止揺動位置に戻るように揺動する。このようにして、キャッチユニット3の係止状態が完了する。
【0025】
後述するロックユニット4のプッシュボタン40aが押されると、連結ロッド32がその中心軸回りに回転され、上述した係止状態が解除される。従って、プッシュボタン40aを押している間はバー31bを上方に移動させることができるので、カバー1bを開くことができる。なお、揺動するフック30bは、ラッチブラケット30aに覆われている。ボトムケース1aには荷物が積載されるが、フック30bがラッチブラケット30aに覆われているので、フック30bの揺動が荷物によって阻害されることが防止されている。
【0026】
一方、キャッチユニット3のストライカー31は、カバー1bにリベットで固定されたストライカーブラケット31aと、ストライカーブラケット31aに固定された被係止部材としてのバー31bとを有している。ストライカーブラケット31aは、逆L字形状を有しており、その先端は二股に分かれており、この二股部分を繋ぐようにバー31bが取り付けられている。二股部分の間の空間は、フック30bとの係止時にフック30bの揺動を許容するとともに、ラッチブラケット30aとの干渉を避けるために形成されている。
【0027】
次に、ロックユニット4について、図6図8を参照しつつ詳しく説明する。図6は、ロックユニット4を正面側から、即ち、ボトムケース1aの側壁側から見た図である。ただし、ボトムケース1aは図6には示されていない。一方、図7及び図8は、ロックユニット4を背面側から見た図である。ただし、ロックユニット4の内部構成を示すために、そのロックケース43は図7及び図8には示されていない。また、図7には一方の連結ロッド32も示されていないし、図8には他方の連結ロッド32及びロックベース42も示されていない。
【0028】
ロックユニット4は、プッシュボタン40aを有するロックボディ40と、一対のロックベース42と、ロックケース43とを備えている。ロックボディ40及び一対のロックベース42は、箱状のロックケース43内に収納されている。ロックケース43は、リベットでボトムケース1aに固定されている。
【0029】
ロックボディ40の後部には円形の穴が形成されており、付勢部材としてのコイルスプリング40cが収納されている。コイルスプリング40cは、ロックボディ40とロックケース43との間に縮められた状態で収納されている。このため、ロックボディ40は、常に前方に向けて(ルーフボックス1が搭載されている車両の側方に向けて)付勢されている。ロックボディ40の前面に形成されたプッシュボタン40aは、ボトムケース1aに形成されたボタン孔から外部に突出されている。プッシュボタン40aが押されていない場合は、プッシュボタン40a後方の段部がボタン孔の周囲でボトムケース1aと当接しており、ロックボディ40はその最前位置に位置する。
【0030】
また、ロックボディ40は、一対のロックベース42に支持された状態でスライド可能にロックケース43に収納されている。プッシュボタン40aが押されると、ロックボディ40全体がコイルスプリング40cの付勢力に抗して後方にスライドされる。ロックボディ40の後部側面からは、側方に向けて互いに反対方向にピン40dが突出されている。この一対のピン40dが後述する一対のロックベース42によって支持されることで、ロックボディ40がスライド可能にロックケース43内に保持されている。
【0031】
一方、ロックボディ40の前部には、互いに反対方向に突出する一対のロックプレート40bが設けられている。ロックボディ40の内部にはキーシリンダが内蔵されており、ロックプレート40bは、プッシュボタン40aに形成された鍵穴に挿入された鍵41を回すことで回転する。その回転は、図6に示される状態から時計回りに90°である。図6に示されるアンロック状態では、一対のロックプレート40bは垂直に延出されるが、図6に示される状態から時計回りに90°回転されたロック状態では、一対のロックプレート40bは水平に延出される。なお、鍵41によって回転するのはキーシリンダ及びロックプレート40bであり、ロックボディ40自体は回転しない。
【0032】
ロックプレート40bは、ロックボディ40のスライド方向に対して垂直な面内で回転可能である。ただし、ロックケース43の内部には、ロックボディ40が上述した最前位置にあるときにのみロックプレート40bの回転を許容する一対のパーティション43aが設けられている。言い換えれば、一対のパーティション43aは、プッシュボタン40aが押されてロックボディ40が最前位置に位置していないときは、ロックプレート40bと干渉してロックプレートの回転を阻止する。
【0033】
一方、ロックボディ40が最前位置に位置し、かつ、一対のロックベース42が上述した係止揺動位置にある場合は、ロックプレート40bはパーティション43aと干渉せずに回転できる。また、鍵41によってロックボディ40のロックプレート40bが90°回転されてロック状態とされると、ロックプレート40bはロックベース42の後述するスリット42b内に進入する。この状態でプッシュボタン40aが押そうとすると、ロックプレート40bはパーティション43aの前縁及びスリット42bの内面と当接し、プッシュボタン40aを押すことができない。なお、連結ロッド32は、ロックケース43のサイドパネルに形成された挿通孔に回転可能に保持されている。また、パーティション43aは、ピン40dと長孔42aとの係合を阻害することのない形状を有している。
【0034】
次に、ロックベース42について詳しく説明する。パーティション43aとロックケース43のサイドパネルとの間には、厚板状のロックベース42がそれぞれ揺動可能に配されている。ロックベース42は、連結ロッド32の他端に回転不能に取り付けられている。また、ロックベース42の中央には、ピン40dが挿入される長孔42aが形成されている。ロックベース42が揺動し、かつ、ロックボディ40がスライドしても、ピン40dが長孔42a内に保持されるように、長孔42aは湾曲して形成されている。また、ロックベース42の前側には、ロックプレート40bが挿入され得る上述したスリット42bも形成されている。
【0035】
キャッチユニット3が係止状態にない状態では、ロックベース42はフック30b内のねじりコイルスプリングの付勢力により、最もボトムケース1aの側壁寄りに揺動する(図9の左側の状態)。このとき、最前位置に位置するロックボディ40のピン40dは、長孔42a内の最も後側(図7及び図8の手前側)に位置する。キャッチユニット3が係止される際には、フック30bと連結ロッド32で連結されているロックベース42は大きく後方に揺動した後に再度前方に揺動して係止状態となる。ロックベース42が大きく後方に揺動した際には、ピン40dは、長孔42a内の最も前側(図7及び図8の奥側)に達する。キャッチユニット3が係止状態のときは、ピン40dは、長孔42a内の中央と後端との間に位置する。この状態からプッシュボタン40aが押されてロックボディ40が後方にスライドされると、ピン40dが長孔42a内の後側で内面と当接し、ロックベース42を後方に揺動させる。即ち、フック30bがアンラッチ方向に揺動され、係止状態を解除してカバー1bを開くことができる。
【0036】
図7及び図8に示されるように、一方のロックベース42の連結ロッド32と他方のロックベース42の連結ロッド32とは、ロックケース43の内部で、連結部材32aで連結されている。一方の連結ロッド32に挿入される連結部材32aの突起32a1(図7参照)は、筒状の連結ロッド32の孔形状と同じであり、一方の連結ロッド32は連結部材32aに対して回転不能である。しかし、他方の連結ロッド32に挿入される連結部材32aの突起32a2(図8参照)は、筒状の連結ロッド32の孔形状に対して所定角度範囲内での回転を許容する形状とされている。従って、他方の連結ロッド32は連結部材32aに対して所定角度範囲内で回転可能である。この結果、一対のロックベース42は、所定角度範囲内ではあるが、互いに独立して揺動することができる。即ち、一対のフック30bも、所定角度範囲内で互いに独立して揺動することができる。所定角度範囲は、フック30b(及びロックベース42)の揺動可能範囲に対応している。
【0037】
なお、各ロックベース42には、長孔42a、スリット42b及び連結ロッド32の三つの透孔が形成されているが、長孔42aの外側部分は一部厚さが薄くされているだけで透孔にはされていない。ただし、十分な強度及び剛性が確保できるのであれば、長孔42aの外側の薄い部分を透孔にしてしまってもよい。
【0038】
以上の構成から、フック30b及びロックベース42が係止揺動位置にあるとき、即ち、フック30bとバー31bとが係止し、かつ、ロックボディ40が最前位置にあるときにのみ、ロックプレート40bを回転させてロック機構をロックすることができる。フック30b及びロックベース42は二組あるが、図9に示されるように、一方が係止揺動位置にあっても、他方が係止揺動位置になければ、ロックすることができない。例えば、ルーフボックス1内の荷物によって、カバー1bが正常に閉められておらず、一対のキャッチユニット3の一方が正常に係止状態となっていないような場合は、ロック操作を行えない。
【0039】
このような場合、上述したように、一対の連結ロッド32は互いに独立して揺動可能であるので、他方は正常に係止状態となることができる。そこで、正常に係止状態となっていないキャッチユニット3に対してカバー1bを上から押すなどして正常な係止状態とすれば、ロック操作が可能となる。従って、ルーフボックス1の使い勝手が非常によくなる。
【0040】
一対のキャッチユニット3及びそれらの間に設けられたロックユニット4を備える図3に示されるロック機構は、ルーフボックス1の一辺に沿って設けられている。二つのキャッチユニット3が離間して設けられているので、当該一辺側からカバー1bを開閉する際には、開放辺を確実にキャッチすることができると共に、連結ロッド32による二つのキャッチユニット3の連動によって簡単にカバー1bを開くことができる。
【0041】
このように一辺側からカバー1bを開閉する際には、この一辺の対辺側のロック機構は係止状態(ロック状態を含む)にあり、係止状態にある二つのキャッチユニット3がヒンジとして機能する。逆に、対辺側からカバー1bを開閉する際には、一辺側のロック機構がヒンジ機構として機能する。即ち、カバー1bの両開きが可能となる。
【0042】
また、キャッチユニット3以外にカバー1bの開状態を維持する上述したリンク5の解除も必要になるが、本実施形態では、四つのキャッチユニット3の係止状態を同時に解除することで、カバー1bをボトムケース1aから完全に分離することも可能である。カバー1bをボトムケース1aから完全に分離できると、ルーフボックス1の清掃が行いやすくなるし、ルーフボックス1のルーフキャリアへの固定及びルーフキャリアからの取り外しも行いやすくなる。
【0043】
本実施形態のロック機構によれば、ロック機構は、連結ロッド32で連結されたキャッチユニット3とロックユニット4とで構成される。キャッチユニット3は、閉状態におけるルーフボックスの内部に設けられており、ボトムケース1aに取り付けられたラッチ30と、カバー1bに取り付けられたストライカー31とを有している。ラッチ30は、ボトムケース1aに固定されたラッチブラケット30aと、ラッチブラケットに揺動可能に取り付けられると共にその揺動軸に沿って延在する連結ロッド32の一端に固定されているフック(係止爪)30bとを有している。一方、ストライカー31は、カバー1bに固定されたストライカーブラケット31aと、ストライカーブラケット31aに固定されたバー(被係止部材)31bとを有している。
【0044】
さらに、ロックユニット4は、ロックケース43と、ロックケース43内で連結ロッド32の他端に固定された揺動可能なロックベース42と、揺動軸に垂直なスライド方向にスライド可能にロックケース43内に収容されたロックボディ40とを有している。ロックボディ40は、ロックベース42と係合され、かつ、そのスライド方向に対して垂直な面内で回転可能なロックプレート40bを有している。ここで、ロックベース42と連結ロッド32で連結されたフック(係止爪)30bがバー(被係止部材)31bと係止している「係止揺動位置」にあるときにのみロックプレート40bが進入可能なスリット42bが、ロックベース42に形成されている。
【0045】
従って、フック(係止爪)30b及びバー(被係止部材)31bが正常な係止状態にあるとき、即ち、「係止揺動位置」にあるときにしか、ロックプレート40bがスリット42b内に侵入してフック(係止爪)30b及びロックベース42の揺動を規制できない。言い換えれば、キャッチユニット3が正常なラッチ状態にあり、フック(係止爪)30b及びロックベース42が「係止揺動位置」にあるときのみロック機構を作動させて、確実なロックを行うことができる。正常な係止状態になければロック機構を作動させられないため、不十分なロックが行われることがない。
【0046】
また、本実施形態のロック機構によれば、ロックベース42と係合するロックボディ40のスライド動に伴ってロックベース42が揺動される。そして、このロックベース42の揺動に伴って連結ロッド32によってロックベース42と連結されているフック(係止爪)30bが係止揺動位置から移動される。即ち、ロックボディ40をスライドさせることでキャッチユニット3の係止状態を容易に解除させることができ、簡単にカバー1bを開くことができる。
【0047】
また、本実施形態のロック機構によれば、キャッチユニット3がルーフボックスの一辺に沿って離間して二つ設けられると共に、二つの当該キャッチユニット3の間にロックユニット4が設けられる。ロックユニット4は、二つのキャッチユニット3と連結ロッド32によってそれぞれ連結されており、二つの連結ロッド32は、互いに独立して揺動軸回りに回転可能である。このため、ルーフボックス1の一辺の閉状態を二つのキャッチユニット3で確実に保持することができる。その一方で、ロックユニット4を介して連結ロッド32によって二つのキャッチユニット3を連動させることができるので、ルーフボックス1の一辺を開く操作も行いやすい。さらに、二つのキャッチユニットはそれぞれ独立して動作が可能であり、カバー1bの開閉操作を行いやすくできる。例えば、二つのキャッチユニット3を同時に正常に係止させないとカバー1bの正常な閉状態を維持させることができないわけではなく、二つのキャッチユニット3を一つずつ係止させることも可能となる。この結果、確実な係止状態を実現して確実なロックを行うこともできる。
【0048】
ここで、本実施形態のロック機構によれば、カバー1bの閉状態にはカバーの周側壁がボトムケース1aの周側壁の外側に位置し、二つのキャッチユニット3及びロックユニット4を備えたロック機構が、上述した一辺の対辺にも対称に設けられている。各辺の二組の係止状態のキャッチユニット3がカバー1bのヒンジ機構としても機能する。閉状態にカバー1bの周側壁がボトムケース1aの周側壁の外側に位置しているので、雨などがルーフボックス1の内部に入るのが防止され、かつ、カバー1bの上方への開動作が円滑に行える。さらに、二つのキャッチユニット3が、上述した一辺の対辺にも対称に設けられており、各辺の二組の係止状態のキャッチユニット3が、カバーのヒンジ機構としても機能する。従って、ルーフボックス1は一辺側からでも対辺側からでも開くことができる。
【0049】
以上、実施形態を説明したが、上記開示内容に基づいて実施形態の修正又は変形をすることが可能である。上記実施形態のすべての構成要素、及び、請求の範囲に記載されたすべての特徴は、それらが互いに矛盾しない限り、個々に抜き出して組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0050】
1 ルーフボックス
1a ボトムケース
1b カバー
3 キャッチユニット
30 ラッチ
30a ラッチブラケット
30b フック(係止爪)
31 ストライカー
31a ストライカーブラケット
31b バー(被係止部材)
32 連結ロッド
4 ロックユニット
40 ロックボディ
40b ロックプレート
42 ロックベース
42b スリット
43 ロックケース
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9