(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-03-19
(45)【発行日】2025-03-28
(54)【発明の名称】リン含有化合物、その製造方法及び用途
(51)【国際特許分類】
C07F 9/11 20060101AFI20250321BHJP
C10M 137/04 20060101ALI20250321BHJP
C07K 2/00 20060101ALI20250321BHJP
C10N 30/00 20060101ALN20250321BHJP
C10N 30/10 20060101ALN20250321BHJP
【FI】
C07F9/11 CSP
C10M137/04
C07K2/00
C10N30:00 Z
C10N30:10
(21)【出願番号】P 2022523476
(86)(22)【出願日】2020-10-21
(86)【国際出願番号】 CN2020122396
(87)【国際公開番号】W WO2021078137
(87)【国際公開日】2021-04-29
【審査請求日】2023-07-24
(31)【優先権主張番号】201910997452.4
(32)【優先日】2019-10-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】503191287
【氏名又は名称】中国石油化工股▲ふん▼有限公司
(73)【特許権者】
【識別番号】509059424
【氏名又は名称】中国石油化工股▲ふん▼有限公司石油化工科学研究院
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】莊敏陽
(72)【発明者】
【氏名】鄭會
(72)【発明者】
【氏名】劉欣陽
(72)【発明者】
【氏名】劉偉
(72)【発明者】
【氏名】何懿峰
【審査官】三木 寛
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2014/0162906(US,A1)
【文献】米国特許第04333841(US,A)
【文献】国際公開第1998/008919(WO,A1)
【文献】中国特許出願公開第106046047(CN,A)
【文献】国際公開第2010/096291(WO,A1)
【文献】国際公開第2012/161951(WO,A1)
【文献】Phosphorus, Sulfur and Silicon,1993年,Vol.78(1-4),p.257-264
【文献】Chinese Journal of Organic Chemistry,2004年,Vol.24(6),p.650-653
【文献】Tetrahedron Letters,1988年,Vol.29(10),p.1145-1148
【文献】Chinese Journal of Chemistry,2004年,Vol.22(8),p.870-873
【文献】Phosphorus, Sulfur and Silicon,1995年,Vol.107(1-4),p.181-188
【文献】Helvetica Chimica Acta,1982年,Vol.65(5),p.1359-1367
【文献】Synthesis,1997年,Vol.(9),p.1098-1108
【文献】Journal of Organic Chemistry,1987年,Vol.52(9),p.1771-1779
【文献】Journal of the Chemical Society, Perkin Transactions 1: Organic and Bio-Organic Chemistry,1980年,Vol.(9),p.1965-1970
【文献】International Journal of Peptide & Protein Research,1995年,Vol.45(1),p.26-34
【文献】RN:1823439-51-5,DATABASE REGISTRY [ONLINE],2015年12月06日,Retrieved from STN
【文献】RN:1037528-40-7,DATABASE REGISTRY [ONLINE],2008年07月31日,Retrieved from STN
【文献】FEBS Letters,2016年,Vol.590(19),p.3323-3334
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07F
C10M
C07K
C10N
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(I)で示されるリン含有化合物であって、
【化1】
式(I)において、nは0、1、2、3又は4であり、n+1個のR基は互いに同一又は異なり、それぞれ独立してC
1~C
6アルキレン基から選ばれ、R
b基はH又はC
1~C
6直鎖又は分岐アルキル基であり、
各R
0基は、互いに同一又は異なり、それぞれ独立して、H、C
1~C
10直鎖又は分岐アルキル基及び
【化2】
から選ばれ、式(I)における少なくとも1つのR
0基は
【化3】
であり、
【化4】
において、xは0、1、2又は3であり、yは1、2又は3であり、x+yの合計≦Ar基上で置換可能な水素原子の数であり、x個R
1基は互いに同一又は異なり、それぞれ独立してH、C
1~C
6直鎖又は分岐アルキル基から選ばれ、各Ar基が互いに同一又は異なり、ベンゼン環から選ばれ、R
2基がC
1~C
6アルキレン基であり、
各A基が互いに同一又は異なり、それぞれ独立して、
【化5】
、
【化6】
で置換されたC
1~C
6直鎖又は分岐アルキル基から選ばれ、
X基がそれぞれ独立してOから選ばれ、aが1であり、R’がそれぞれ独立して、C
1~C
6直鎖又は分岐アルキル基から選ばれる。
【請求項2】
式(I)で示される化合物において、xは2であり、yは1であり、OHはR
2基のpara-位置に位置し、二つのR
1はそれぞれOHの二つortho-位置に位置し、R
1は、それぞれ独立して、C
1~C
4直鎖又は分岐アルキル基から選ばれることを特徴とする請求項1に記載のリン含有化合物。
【請求項3】
式(I)で示される化合物において、各A基はそれぞれ独立して
【化7】
、
【化8】
で置換されたC
1~C
4直鎖又は分岐アルキル基から選ばれることを特徴とする請求項1又は2に記載のリン含有化合物。
【請求項4】
前記リン含有化合物であって、
【化9】
から選ばれる1種又は2種以上であることを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載のリン含有化合物。
【請求項5】
リン含有化合物の製造方法であって、以下のステップを備え、
ステップ(1):式(II)で示される化合物及び/又はその無機酸塩と式(III)で示される化合物を反応させ、ステップ(1)の生成物を生成し、
【化10】
、
【化11】
式(II)において、nは0、1、2、3又は4であり、n+1個のR基は互いに同一又は異なり、それぞれ独立してC
1~C
6アルキレン基から選ばれ、R
b基はH又はC
1~C
6直鎖又は分岐アルキル基であり、
各R
0’基は、互いに同一又は異なり、それぞれ独立して、H及びC
1~C
10直鎖又は分岐アルキル基から選ばれ、少なくとも1つのR
0’基はHであり、
各A’基は、互いに同一又は異なり、それぞれ独立して、XA’’’、XA’’’で置換されたC
1~C
6直鎖又は分岐アルキル基及びHから選ばれ、A’’’基はHから選ばれ、X基はそれぞれ独立してOから選ばれ、少なくとも1つのA’基は、XA’’’、XA’’’で置換されたC
1~C
6直鎖又は分岐アルキル基から選ばれ、
式(II)で示される化合物の無機酸塩は、
【化12】
で示されて、Mは無機酸根であり、jは前記無機酸根の電荷数の絶対値であり、zは1~3の整数であり、その他の各基は式(II)と同じように定義され、式(II)で示される前記化合物の無機酸塩は、塩酸塩、硝酸塩、又は硫酸塩であり、
式(III)において、X基はそれぞれ独立してOから選ばれ、aは1であり、各R’’’は互いに同一又は異なり、それぞれ独立してC
1~C
6直鎖又は分岐アルキル基から選ばれ、
及びステップ(2):ステップ(1)の生成物を式(IV)で示される化合物と反応させ、ステップ(2)の生成物を生成し、
【化13】
式(IV)中、xは0、1、2又は3であり、yは1、2又は3であり、x+yの合計≦Ar基上で置換可能な水素原子の数であり、x個R
1基は互いに同一又は異なり、それぞれ独立してH、C
1~C
6直鎖又は分岐アルキル基から選ばれ、Ar基がベンゼン環であり、R
2基がC
1~C
6アルキレン基であり、X’は、F、Cl、Br、I又はOHであるリン含有化合物の製造方法。
【請求項6】
前記式(II)で示される化合物及び/又はその無機酸塩は、アミノ酸、アミノ酸の縮合物、アミノ酸の無機塩、アミノ酸の縮合物の無機塩から選ばれた1種以上であることを特徴とする請求項5に記載のリン含有化合物の製造方法。
【請求項7】
前記式(II)で示される化合物及び/又はその無機酸塩は、L-セリン及び/又はL-セリンエステル塩酸塩、L-ロイシン及び/又はL-ロイシンエステル塩酸塩、L-イソロイシン及び/又はL-イソロイシンエステル塩酸塩、グリシン及び/又はグリシンエステル塩酸塩、L-フェニルアラニン及び/又はL-フェニルアラニンエステル塩酸塩、L-バリン及び/又はL-バリンエステル塩酸塩から選ばれた1種以上であり、
前記式(III)で示される化合物は、亜リン酸、亜リン酸ジメチル、亜リン酸ジエチル、亜リン酸ジプロピル、亜リン酸ジイソプロピル、亜リン酸ジn-ブチル、亜リン酸ジイソブチル、亜リン酸ジtert-ブチル、亜リン酸ジ(2-エチルヘキシル)、亜リン酸ジベンジル、亜リン酸ジフェニル、チオ亜リン酸、チオ亜リン酸ジメチル、チオ亜リン酸ジエチル、チオ亜リン酸ジプロピル、チオ亜リン酸ジイソプロピル、チオ亜リン酸ジn-ブチル、チオ亜リン酸ジイソブチル、チオ亜リン酸ジtert-ブチル、チオ亜リン酸ジ(2-エチルヘキシル)、チオ亜リン酸ジベンジル、チオ亜リン酸ジフェニルから選ばれた1種以上であることを特徴とする請求項5又は6に記載のリン含有化合物の製造方法。
【請求項8】
ステップ(1)において、前記式(II)で示される化合物及び/又はその無機酸塩(XA’’換算として)と前記式(III)で示される化合物(P-H換算として)との反応モル当量比が、1:5~5:1であり、反応温度は-40~80℃であることを特徴とする請求項5-7の何れかに記載のリン含有化合物の製造方法。
【請求項9】
ステップ(1)において、前記式(II)で示される化合物及び/又はその無機酸塩と式(III)で示される化合物との反応に、溶媒を添加し、
触媒を添加し、
塩化物を添加し、
pH8~10で反応することを特徴とする請求項5-8の何れかに記載のリン含有化合物の製造方法。
【請求項10】
ステップ(1)において、前記式(II)で示される化合物及び/又はその無機酸塩と式(III)で示される化合物とを反応させた後、ステップ(1)の反応生成物を抽出処理、乾燥処理及び超音波処理から選ばれた少なくとも1種の処理に付し、
ステップ(1)の反応生成物を抽出する場合、酸性環境下、溶媒で反応生成物を抽出し、
ステップ(1)の反応生成物を超音波処理する場合、フラン系溶媒、クロロアルカン系溶媒、ケトン系溶媒、エステル系溶媒及びニトリル系溶媒から選ばれた1種以上の溶媒の存在下で、1~10hで処理することを特徴とする請求項5-9の何れかに記載のリン含有化合物の製造方法。
【請求項11】
ステップ(2)において、式(IV)で示される化合物は、3,5-ビス(tert-ブチル)-4-ヒドロキシフェニルアセチルクロライド、3,5-ビス(tert-ブチル)-4-ヒドロキシフェニルプロピオニルクロライド、p-ヒドロキシフェニルアセチルクロライド、3-ヒドロキシフェニルアセチルクロライド、2-ヒドロキシフェニルアセチルクロライド、3,4-ジヒドロキシフェニルアセチルクロライド、3,5-ジヒドロキシフェニルアセチルクロライド、3-メチル-4-ヒドロキシフェニルアセチルクロライド、3,5-ジメチル-4-ヒドロキシフェニルアセチルクロリド、2,4-ジヒドロキシフェニルプロピオニルクロリド、3,4-ジヒドロキシフェニルプロピオニルクロリド、2-ヒドロキシ-ナフチルアセチルクロリドから選ばれる一つ以上であることを特徴とする請求項5-10の何れかに記載のリン含有化合物の製造方法。
【請求項12】
ステップ(2)において、式(IV)で示される化合物(X’換算として)とステップ(1)の反応生成物(NH換算として)との反応モル当量比が5:1~1:5であり、反応温度は-40~60℃であることを特徴とする請求項5-11の何れかに記載のリン含有化合物の製造方法。
【請求項13】
請求項1-4の何れかに記載のリン含有化合
物を含むリン含有化合物の組成物。
【請求項14】
請求項1-4の何れかに記載のリン含有化合
物の潤滑油の生分解剤としての
使用。
【請求項15】
請求項1-4の何れかに記載のリン含有化合
物、及び請求項13に記載のリン含有化合物の組成物から選ばれる少なくとも1種と潤滑油基油とを含む潤滑油組成物であって、
前記リン含有化合物、リン含有化合物の部分脱水縮合反応又は完全脱水縮合反応により生成した生成物は、潤滑油組成物の全質量に対して、0.001~30%で含有する潤滑油組成物。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
〔技術分野〕
本発明は、リン含有化合物、特に潤滑油の生分解を促進することができるリン含有化合物、並びにその製造方法及び用途に関するものである。
【0002】
〔背景技術〕
潤滑油は、機械設備の正常な運転や材料の製造・加工に必要な作動媒介であり、産業の急速な発展に伴い、潤滑油の需要が増加しています。潤滑油の保管、輸送、使用において、どうしても漏れやこぼれ、不適切な排出があり、環境を汚染してしまうことがある。潤滑油の生物に対する急性毒性は少ないものの、環境に流入した潤滑油は生物分解性が悪いため、陸上や河川・湖沼を著しく汚染し、また環境中に蓄積すると、生態系バランスに影響を与えるため、潤滑油の生分解率を高める生分解促進剤が急務となっています。
【0003】
近年、廃棄したや漏洩した潤滑油の環境への影響が広く注目されており、この問題を解決するために、一方では生物分解性植物油やエステル系合成油を用いて潤滑油を製造することが行われており、例えばCN102408939Bにおいて、生物分解性潤滑油組成物とその製造方法が報告されて、CN105132104Aにおいて、生物分解性工業ギア油組成物が報告されていることなどが挙げられる。一方、潤滑油の生分解促進剤の開発も行われており、例えば、CN103642557Bにおいて、化学式C20H37NO3 のアミド型潤滑油生分解促進剤が報告されてます。しかし、潤滑油の生分解促進剤に関する研究報告はまだ多くないが実情である。
【0004】
〔発明の内容〕
本発明者らは鋭意研究を重ねた結果、本発明のような特定の構造を有するリン含有化合物が潤滑油の生分解を促進する良好な効果を達成できることを見出した。更に、本発明のリン含有化合物は、抗酸化性に優れ、潤滑油と組み合わせることで、潤滑油の酸化を抑制することもできる。
【0005】
特に、本発明は、以下の形態を提供する。
【0006】
本発明は、下記式(I)で示されるリン含有化合物を提供するものであり、
【0007】
【0008】
式(I)において、nは0~50の整数(好ましくは0~20の整数、より好ましくは0~10の整数、更に好ましくは0、1、2、3又は4)であり、n+1個のR基は互いに同一又は異なり、それぞれ独立してC1~C30ヒドロカルビレン基(好ましくはC1~C10アルキレン基、より好ましくはC1~C6アルキレン基、更に好ましくはC1~C4アルキレン基)から選ばれ、Rb基はH又はC1~C30炭化水素基(好ましくはH又はC1~C10炭化水素基、より好ましくはH又はC1~C6直鎖又は分岐アルキル基、更に好ましくはH又はC1~C4直鎖又は分岐アルキル基)であり、
各R0基は、互いに同一又は異なり、それぞれ独立して、H、C1~C30炭化水素基及び
【0009】
【0010】
(好ましくは、それぞれ独立してH、C1~C10直鎖又は分岐アルキル基及び
【0011】
【0012】
、より好ましくはH、C1~C4直鎖又は分岐アルキル基及び
【0013】
【0014】
)から選ばれ、好ましくは、式(I)における少なくとも1つのR0基は
【0015】
【0016】
であり、
【0017】
【0018】
において、xは0~5の整数(好ましくは0~4の整数、より好ましくは0、1、2又は3)であり、yは1~5の整数(好ましくは1~4の整数、より好ましくは1、2又は3)であり、x+yの合計≦Ar基上で置換可能な水素原子の数であり、x個R1基は互いに同一又は異なり、それぞれ独立してH、C1~C30炭化水素基(好ましくはH、C1~C10直鎖又は分岐アルキル基、より好ましくはH、C1~C6直鎖又は分岐アルキル基、更に好ましくはH、C1~C4直鎖又は分岐アルキル基)から選ばれ、各Ar基が互いに同一又は異なり、それぞれ独立してC3~C30環状基(好ましくはC6~C15芳香環基、より好ましくはベンゼン環、ナフタレン環及びアントラセン環)から選ばれ、R2基が単結合又はC1~C10アルキレン基(好ましくは単結合又はC1~C6アルキレン基、より好ましくは単結合又はC~C4アルキレン基)であり、
各A基が互いに同一又は異なり、それぞれ独立して、
【0019】
【0020】
、OH、任意に
【0021】
【0022】
で置換されたC1~C30炭化水素基(好ましくは任意に
【0023】
【0024】
で置換されたC1~C10直鎖又は分岐アルキル基、より好ましくは任意に
【0025】
【0026】
で置換されたC1~C6直鎖又は分岐アルキル基、更に好ましくは任意に
【0027】
【0028】
で置換されたC1~C4直鎖又は分岐アルキル基)、任意に
【0029】
【0030】
で置換されたC1~C30アルコキシ基(好ましくは任意に
【0031】
【0032】
で置換されたC1~C10直鎖又は分岐アルコキシ基、より好ましくは任意に
【0033】
【0034】
で置換されたC1~C6直鎖又は分岐アルコキシ基、更に好ましくは任意に
【0035】
【0036】
で置換されたC1~C4直鎖又は分岐アルコキシ基)及びHから選ばれ、式(I)において、少なくとも1つのA基が
【0037】
【0038】
で置換されたC1~C30炭化水素基(好ましくは
【0039】
【0040】
で置換されたC1~C10直鎖又は分岐アルキル基、より好ましくは
【0041】
【0042】
で置換されたC1~C6直鎖又は分岐アルキル基、更に好ましくは
【0043】
【0044】
で置換されたC1~C4直鎖又は分岐アルキル基)、
【0045】
【0046】
で置換されたC1~C30アルコキシ基(好ましくは
【0047】
【0048】
で置換されたC1~C10直鎖又は分岐アルコキシ基、より好ましくは
【0049】
【0050】
で置換されたC1~C6直鎖又は分岐アルコキシ基、更に好ましくは
【0051】
【0052】
で置換されたC1~C4直鎖又は分岐アルコキシ基)から選ばれ、X基がそれぞれ独立してO又はSから選ばれ、aが0又は1であり、R’がそれぞれ独立して、C1~C30炭化水素基(好ましくはC1~C10直鎖又は分岐アルキル基、より好ましくはC1~C6直鎖又は分岐アルキル基、更に好ましくはC1~C4直鎖又は分岐アルキル基)、任意にC1~C10直鎖又は分岐アルキル基で置換されたC7~C15アリールアルキル基(好ましくは任意にC1~C10直鎖又は分岐アルキル基で置換されたC7~C12アリールアルキル基、より好ましくは任意にC1~C10直鎖又は分岐アルキル基で置換されたベンジル基)、任意にC1~C10直鎖又は分岐アルキル基で置換されたC6~C15アリール基(好ましくは任意にC1~C10直鎖又は分岐アルキル基で置換されたC6~C10アリール基、より好ましくは任意にC1~C10直鎖又は分岐アルキル基で置換されたフェニル基)、
【0053】
【0054】
から選ばれ、R’’がC1~C30炭化水素基(好ましくはC1~C10直鎖又は分岐アルキル基、より好ましくはC1~C6直鎖又は分岐アルキル基、更に好ましくはC1~C4直鎖又は分岐アルキル基)、C1~C30アルコキシ基(好ましくはC1~C10直鎖又は分岐アルコキシ基、より好ましくはC1~C6直鎖又は分岐アルコキシ基、更にはC1~C4直鎖又は分岐アルキル基)から選ばれ、各R0基、R基、Rb基、nは前記のように定義される。
【0055】
また、本発明は、以下のステップを備えるリン含有化合物の製造方法を提供する。
【0056】
ステップ(1):式(II)で示される化合物及び/又はその無機酸塩と式(III)で示される化合物を反応させ、ステップ(1)の生成物を生成し、
【0057】
【0058】
式(II)において、nは0~50の整数(好ましくは0~20の整数、より好ましくは0~10の整数、更に好ましくは0、1、2、3又は4)であり、n+1個のR基は互いに同一又は異なり、それぞれ独立してC1~C30ヒドロカルビレン基(好ましくはC1~C10アルキレン基、より好ましくはC1~C6アルキレン基、更に好ましくはC1~C4アルキレン基)から選ばれ、Rb基はH又はC1~C30炭化水素基(好ましくはH又はC1~C10炭化水素基、より好ましくはH又はC1~C6直鎖又は分岐アルキル基、更に好ましくはH又はC1~C4直鎖又は分岐アルキル基)であり、
各R0’基は、互いに同一又は異なり、それぞれ独立して、H及びC1~C30炭化水素基(好ましくは、それぞれ独立してH及びC1~C10直鎖又は分岐アルキル基、より好ましくはH及びC1~C4直鎖又は分岐アルキル基)から選ばれ、好ましくは、少なくとも1つのR0’基はHであり、
各A’基は、互いに同一又は異なり、それぞれ独立して、XA’’’、任意にXA’’’で置換されたC1~C30炭化水素基(好ましくは任意にXA’’’で置換されたC1~C10直鎖又は分岐アルキル基、より好ましくは任意にXA’’’で置換されたC1~C6直鎖又は分岐アルキル基、更に好ましくは任意にXA’’’で置換されたC1~C4アルキル基)、任意にXA’’’で置換されたC1~C30アルコキシ基(好ましくは任意にXA’’’で置換されたC1~C10直鎖又は分岐アルコキシ基、より好ましくは任意にXA’’’で置換されたC1~C6直鎖又は分岐アルコキシ基、更に好ましくは任意にXA’’’で置換されたC1~C4アルコキシ基)及びHから選ばれ、A’’’基はF、Cl、Br、I、Hから選ばれ、X基はそれぞれ独立してO又はSから選ばれ、少なくとも1つのA’基は、XA’’’、XA’’’で置換されたC1~C30炭化水素基(好ましくはXA’’’で置換されたC1~C10直鎖又は分岐アルキル基、より好ましくはXA’’’で置換されたC1~C6直鎖又は分岐アルキル基、更に好ましくはXA’’’で置換されたC1~C4アルキル基)、XA’’’で置換されたC1~C30アルコキシ基(好ましくはXA’’’で置換されたC1~C10直鎖又は分岐アルコキシ基、より好ましくはXA’’’で置換されたC1~C6直鎖又は分岐アルコキシ基、更に好ましくはXA’’’で置換されたC1~C4アルコキシ基)から選ばれ、
式(II)で示される化合物の無機酸塩は、
【0059】
【0060】
で示されて、Mは無機酸根であり、jは前記無機酸根の電荷数の絶対値であり、zは1~10の整数(好ましくは1~6の整数、より好ましくは1~3の整数)であり、その他の各基は式(II)と同じように定義され(式(II)で示される前記化合物の無機酸塩は、好ましくは塩酸塩、硝酸塩、又は硫酸塩であり、最も好ましくは塩酸塩である)、
式(III)において、X基はそれぞれ独立してO又はSから選ばれ、aは0又は1であり、各R’’’は互いに同一又は異なり、それぞれ独立してA’’’、C1~C30炭化水素基(好ましくはC1~C10直鎖又は分岐アルキル基、より好ましくはC1~C6直鎖又は分岐アルキル基、更に好ましくはC1~C4直鎖又は分岐アルキル基)、任意にC1~C10直鎖又は分岐アルキル基で置換されたC7~C15アリールアルキル基(好ましくは任意にC1~C10直鎖又は分岐アルキル基で置換されたC7~C12アリールアルキル基、より好ましくは任意にC1~C10直鎖又は分岐アルキル基で置換されたベンジル基)、任意にC1~C10直鎖又は分岐アルキル基で置換されたC6~C15アリール基(好ましくは任意にC1~C10直鎖又は分岐アルキル基で置換されたC6~C10アリール基、より好ましくは任意にC1~C10直鎖又は分岐アルキル基で置換されたフェニル基)から選ばれ、
及び、任意的なステップ(2):ステップ(1)の生成物を式(IV)で示される化合物と反応させ、ステップ(2)の生成物を生成し、
【0061】
【0062】
式(IV)中、xは0~5の整数(好ましくは0~4の整数、より好ましくは0、1、2又は3)であり、yは1~5の整数(好ましくは1~4の整数、より好ましくは1、2又は3)であり、x+yの合計≦Ar基上で置換可能な水素原子の数であり、x個R1基は互いに同一又は異なり、それぞれ独立してH、C1~C30炭化水素基(好ましくはH、C1~C10直鎖又は分岐アルキル基、より好ましくはH、C1~C6直鎖又は分岐アルキル基、更に好ましくはH、C1~C4直鎖又は分岐アルキル基)から選ばれ、Ar基がC3~C30環状基(好ましくはC6~C15芳香環基、より好ましくはベンゼン環、ナフタレン環及びアントラセン環)であり、R2基が単結合又はC1~C10アルキレン基(好ましくは単結合又はC1~C6アルキレン基、より好ましくは単結合又はC1~C4アルキレン基)であり、X’は、F、Cl、Br、I又はOH(好ましくはCl、Br)である。
【0063】
本発明は、上記式(I)で示されるリン含有化合物又は上記リン含有化合物の製造方法により製造されたリン含有化合物の、潤滑油の生分解剤への使用を提供するものである。
【0064】
本発明は、潤滑油基油と、上記式(I)で示されるリン含有化合物、上記リン含有化合物の製造方法により製造されたリン含有化合物、及びリン含有化合物の部分脱水縮合反応又は完全脱水縮合反応により生成した生成物の中から選ばれた少なくとも1種とを含有する潤滑油組成物を提供するものである。
【0065】
〔発明の効果〕
本発明のリン含有化合物は、生物分解性、酸化防止性に非常に優れ、特に潤滑油製品の生分解を促進するのに好適である。更に、本発明のリン含有化合物は、抗酸化性に優れ、潤滑油と組み合わせることで、潤滑油の酸化を抑制することができる。
【0066】
また、本発明のリン含有化合物は、簡便かつ効率的な製造方法で、高い収率で製造することができる。本発明の製造方法により、生物分解性、抗酸化性に優れたリン含有化合物を製造することが可能である。
【0067】
〔発明を実施するための形態〕
以下、本発明の具体的な実施形態について詳細に説明するが、本発明の保護範囲はこれらの具体的な実施形態によって限定されるものではなく、添付の請求の範囲によって決定されるものである。
【0068】
本明細書で言及するすべての刊行物、特許出願、特許及びその他の参考文献は、本明細書に参考として引用される。本明細書で使用されるすべての技術用語及び科学用語は、他に定義されない限り、当業者によって従来から理解されている意味を有する。矛盾が生じた場合、本明細書の定義が優先されます。
【0069】
本明細書が、「当業者に知られている」、「先行技術」又は類似した用語で材料、物質、方法、工程(ステップ)、装置又は部品などを修飾した場合、これらの修飾された対象は、本出願が提出された時点で当該分野で一般的に使用されているものを対象とする。ただし、現在は一般的に使用されていないが、今後、同様の目的に適していることが認知されるようになるものも含まれる。
【0070】
本明細書において、明示的に記載されているもの以外の事項又は記載されていない事項については、当業分野の周知したものをそのまま適用される。更に、本明細書に記載された任意の実施形態は、本明細書に記載された1つ以上の他の実施形態と自由に組み合わせることができ、得られた形態又は形態発想は、当業者の見解において、組み合わせが明らかに不合理でない限り、本発明の当初の開示又は当初の説明の一部とみなされ、新規又は本明細書に開示又は予測されていないものとしてみなされるべきではない。
【0071】
本発明では、基の定義に「単結合」という用語を用いることがある。「単結合」とは、基が存在しないことを意味する。例えば、構造式-CH2-A-CH3、ここでA基は単結合及びメチル基から選ばれると定義されると、A基が単結合であれば、A基が存在しないことを意味し、従って、上記構造式は、-CH2-CH3と簡略化される。
【0072】
本発明において、基の数は0である場合、その基が存在しないことを示し、基の両端に結合した基が結合している。あるいは、基が末端に位置する場合、基の数は0である場合、その基が結合している他の基がその基によって置換されていないことを示す。例えば、構造式-CH2-(A)n-CH3を仮定して、nが0であれば、構造式は-CH2-CH3となる。構造式-CH2-(A)nを仮定して、nが0であれば、-CH2-がAで置換されていないことを示し、上記構造式は-CH3と簡略化される。
【0073】
本発明の目的において、炭化水素基とは、炭化水素(アルカン、アルケン、アルキン、芳香族などを含むが、これらに限定されない)から1個以上の水素原子が除去されて形成された基を指す。炭化水素基は、炭化水素が置換できる水素原子数の上限を前提として、1価基、2価基、3価基などの必要に応じた高価基として任意に分類することができる。例えば、1価の基:CH3CH2-(エチル)、(CH3)2CH-(イソプロピル)、CH≡C-CH2-(2-プロピニル);2価の基:CH3CH=(エチリデン)、-CH=CH-(1,2-ビニリデン);3価の基:CH3C≡などが挙げられる。
【0074】
より具体的には、本発明において、C1~C30炭化水素基とは、炭素原子数1~30の炭化水素(アルカン、アルケン、アルキン、芳香族炭化水素等を含むが、これらに限定されない)の任意の炭素原子から1個水素原子又は所望により2個以上の水素原子を除去して得られる基であって、例えば、1価以上の直鎖又は分岐C1~C30アルキル基、1価以上の直鎖又は分岐C2~C30アルケニル基、1価以上の直鎖又は分岐C2~C30アルキニル基、1価以上のC6~C30アリール基が挙げられる。
【0075】
直鎖又は分岐C1~C30アルキル基として、直鎖又は分岐C1~C20アルキル基、直鎖又は分岐C1~C10アルキル基、直鎖又は分岐C1~C6アルキル基、直鎖又は分岐C1~C4アルキル基が含まれる。これらのアルキル基の具体例としては、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、tert-ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル、ウンデシル、ドデシル、セチル、オクタデシル、エイコシル、ドコシル及びこれらの基の異性体等が挙げられる。アルキレン基としては、上記アルキル基から更に1個水素原子を除去して得られる基が挙げられる。
【0076】
直鎖又は分岐C2~C30アルケニル基として、直鎖又は分岐C2~C20アルケニル基、直鎖又は分岐C2~C10アルケニル基、直鎖又は分岐C2~C6アルケニル基、直鎖又は分岐C2~C4アルケニル基が含まれる。好ましくは、1個、2個、3個又は4個の炭素-炭素二重結合を含むアルケニル基である。これらのアルケニル基の具体例としては、ビニル、プロペニル、ブテニル、2-ペンテニル、1-ヘキセニル、1-ヘプテニル、1-オクテニル及びこれらの異性体などが挙げられるが、これらに限られない。例えば、上記アルキル基の具体例に炭素-炭素二重結合を1個又は2個含有させて得られる基であってもよい。
【0077】
直鎖又は分岐C2~C30アルキニル基として、直鎖又は分岐C2~C20アルキニル基、直鎖又は分岐C2~C10アルキニル基、直鎖又は分岐C2~C6アルキニル基、直鎖又は分岐C2~C4アルキニル基が含まれる。好ましくは、1個、2個、3個又は4個の炭素-炭素三重結合を含むアルキニル基である。これらのアルキニル基の具体例としては、エチニル基、プロパルギル基、ブチニル基及びこれらの異性体が挙げられるが、これらに限られない。例えば、上記アルキル基の具体例に炭素-炭素三重結合を1個又は2個含有させて得られる基が挙げられる。
【0078】
本発明において、C6~C30芳香族炭化水素基(アリール基)としては、炭素原子数6~30の芳香族炭化水素から、化学上の価数を違反しないで水素原子を1個除去して形成される基である。なお、C6~C30アリール基には、全ての炭素原子が芳香環の環形成炭素原子である基、置換基としてのアルキル基、シクロアルキル基、アリール基を芳香環に結合させる基を含み、構造中に芳香環を有し且つ炭素原子数の合計が6~30の場合であればよい。C6~C30アリール基として、C6~C30アリール基、C6~C20アリール基、C6~C15アリール基、C6~C10アリール基が含まれていてもよい。これらのアリール基の具体例としては、フェニル、ナフチル、トリル、ジメチルフェニル、エチルフェニル、メチルナフチル、2-メチルナフチル、2-エチルナフチル、シクロヘキシルフェニル、ビフェニル等が挙げられ、これらに限られない。
【0079】
本発明において、C7~C15アリールアルキル基としては、炭素原子数7~15のアリールアルカンのアルキル部分から、化学上の価数を違反しないで1個水素原子を除去して形成される基である。なお、アルキル基の部分以外、他のアルキル基、シクロアルキル基、アリール基を置換基として芳香環に結合させることが可能であり、炭素原子数の合計が7~15であればよい。C7~C15アリールアルキル基として、C7~C12アリールアルキル基、C7~C10アリールアルキル基が挙げられる。これらのアリールアルキル基の具体例としては、ベンジル(フェニルメチル)、フェニルエチル、フェニルプロピル、ナフチルメチル、ナフチルエチルなどが挙げられるが、これらに限られない。
【0080】
C1~C30ヒドロカルビレン基は、化学上の価数を違反しないで上記C1~C30炭化水素基の任意の炭素原子から、更に1個水素原子を除去して得られる基である。C1~C30ヒドロカルビレン基の例としては、上記C1~C30炭化水素基として挙げられた基の炭素原子からさらに1個水素原子を除去して得られる基が挙げられる。C1~C30炭化水素基が他の置換基を有する場合、炭化水素基は、2価、3価又はそれ以上の価の炭化水素基であってもよい。
【0081】
本発明において、C3~C30環状基は、C、N、O、Sから選ばれる原子を環形成原子として3~30個有する基を表し、飽和でも不飽和(少なくとも1個の炭素-炭素二重結合及び/又は少なくとも1個の炭素-炭素三重結合を有する)でもよく、非方向性でも芳香性であってもよい。C3~C30環状基としては、C3~C25シクロアルキル基、C3~C20シクロアルキル基、C3~C10シクロアルキル基、C3~C6シクロアルキル基、C5~C6シクロアルキル基、C6~C20芳香環基、C6~C15芳香環基、C6~C10芳香環基が含まれる。これらの具体例として、シクロプロパンから誘導した基、シクロブタンから誘導した基、シクロペンテンから誘導した基、シクロヘキサンから誘導した基、ベンゼンから誘導した基、ナフタレンから誘導した基、アントラセンから誘導した基、フェナントレンから誘導した基が挙げられる。
【0082】
本発明において、C1~C30アルコキシ基とは、上記直鎖又は分岐C1~C30アルキル基が酸素原子と結合して形成した基であり、即ち直鎖又は分岐C1~C30アルキル-O-基のことである。直鎖又は分岐C1~C20アルコキシ、直鎖又は分岐C1~C10アルコキシ、直鎖又は分岐C1~C6アルコキシ、直鎖又は分岐C1~C4アルコキシなどが含まれる。
【0083】
本発明は、下記式(I)で示されるリン含有化合物を提供するものであり、
【0084】
【0085】
式(I)において、nは0~50の整数(好ましくは0~20の整数、より好ましくは0~10の整数、更に好ましくは0、1、2、3又は4)であり、n+1個のR基は互いに同一又は異なり、それぞれ独立してC1~C30ヒドロカルビレン基(好ましくはC1~C10アルキレン基、より好ましくはC1~C6アルキレン基、更に好ましくはC1~C4アルキレン基)から選ばれ、Rb基はH又はC1~C30炭化水素基(好ましくはH又はC1~C10炭化水素基、より好ましくはH又はC1~C6直鎖又は分岐アルキル基、更に好ましくはH又はC1~C4直鎖又は分岐アルキル基)であり、
各R0基は、互いに同一又は異なり、それぞれ独立して、H、C1~C30炭化水素基及び
【0086】
【0087】
(好ましくは、それぞれ独立してH、C1~C10直鎖又は分岐アルキル基及び
【0088】
【0089】
、より好ましくはH、C1~C4直鎖又は分岐アルキル基及び
【0090】
【0091】
)から選ばれ、好ましくは、式(I)における少なくとも1つのR0基は
【0092】
【0093】
であり、
【0094】
【0095】
において、xは0~5の整数(好ましくは0~4の整数、より好ましくは0、1、2又は3)であり、yは1~5の整数(好ましくは1~4の整数、より好ましくは1、2又は3)であり、x+yの合計≦Ar基上で置換可能な水素原子の数であり、x個R1基は互いに同一又は異なり、それぞれ独立してH、C1~C30炭化水素基(好ましくはH、C1~C10直鎖又は分岐アルキル基、より好ましくはH、C1~C6直鎖又は分岐アルキル基、更に好ましくはH、C1~C4直鎖又は分岐アルキル基)から選ばれ、各Ar基が互いに同一又は異なり、それぞれ独立してC3~C30環状基(好ましくはC6~C15芳香環基、より好ましくはベンゼン環、ナフタレン環及びアントラセン環)から選ばれ、R2基が単結合又はC1~C10アルキレン基(好ましくは単結合又はC1~C6アルキレン基、より好ましくは単結合又はC~C4アルキレン基)であり、
各A基が互いに同一又は異なり、それぞれ独立して、
【0096】
【0097】
、OH、任意に
【0098】
【0099】
で置換されたC1~C30炭化水素基(好ましくは任意に
【0100】
【0101】
で置換されたC1~C10直鎖又は分岐アルキル基、より好ましくは任意に
【0102】
【0103】
で置換されたC1~C6直鎖又は分岐アルキル基、更に好ましくは任意に
【0104】
【0105】
で置換されたC1~C4直鎖又は分岐アルキル基 )、任意に
【0106】
【0107】
で置換されたC1~C30アルコキシ基(好ましくは任意に
【0108】
【0109】
で置換されたC1~C10直鎖又は分岐アルコキシ基、より好ましくは任意に
【0110】
【0111】
で置換されたC1~C6直鎖又は分岐アルコキシ基、更に好ましくは任意に
【0112】
【0113】
で置換されたC1~C4直鎖又は分岐アルコキシ基)及びHから選ばれ、式(I)において、少なくとも1つのA基が
【0114】
【0115】
で置換されたC1~C30炭化水素基(好ましくは
【0116】
【0117】
で置換されたC1~C10直鎖又は分岐アルキル基、より好ましくは
【0118】
【0119】
で置換されたC1~C6直鎖又は分岐アルキル基、更に好ましくは
【0120】
【0121】
で置換されたC1~C4直鎖又は分岐アルキル基 )、
【0122】
【0123】
で置換されたC1~C30アルコキシ基(好ましくは
【0124】
【0125】
で置換されたC1~C10直鎖又は分岐アルコキシ基、より好ましくは
【0126】
【0127】
で置換されたC1~C6直鎖又は分岐アルコキシ基、更に好ましくは
【0128】
【0129】
で置換されたC1~C4直鎖又は分岐アルコキシ基)から選ばれ、X基がそれぞれ独立してO又はSから選ばれ、aが0又は1であり、R’がそれぞれ独立して、C1~C30炭化水素基(好ましくはC1~C10直鎖又は分岐アルキル基、より好ましくはC1~C6直鎖又は分岐アルキル基、更に好ましくはC1~C4直鎖又は分岐アルキル基)、任意にC1~C10直鎖又は分岐アルキル基で置換されたC7~C15アリールアルキル基(好ましくは任意にC1~C10直鎖又は分岐アルキル基で置換されたC7~C12アリールアルキル基、より好ましくは任意にC1~C10直鎖又は分岐アルキル基で置換されたベンジル基)、任意にC1~C10直鎖又は分岐アルキル基で置換されたC6~C15アリール基(好ましくは任意にC1~C10直鎖又は分岐アルキル基で置換されたC6~C10アリール基、より好ましくは任意にC1~C10直鎖又は分岐アルキル基で置換されたフェニル基)、
【0130】
【0131】
から選ばれ、R’’がC1~C30炭化水素基(好ましくはC1~C10直鎖又は分岐アルキル基、より好ましくはC1~C6直鎖又は分岐アルキル基、更に好ましくはC1~C4直鎖又は分岐アルキル基)、C1~C30アルコキシ基(好ましくはC1~C10直鎖又は分岐アルコキシ基、より好ましくはC1~C6直鎖又は分岐アルコキシ基、更にはC1~C4直鎖又は分岐アルキル基)から選ばれ、各R0基、R基、Rb基、nは前記のように定義される。
【0132】
更に、本発明の式(I)で示される化合物にNH及びCOOHが存在し、従って、本発明は、式(I)で示される化合物に存在するNHとCOOHとの間の部分的脱水縮合反応又は完全脱水縮合反応により生成した生成物を提供するものである。
【0133】
したがって、本発明の式(I)で示される化合物には、式(I)で示される化合物の純粋物、構造の異なる2種以上の式(I)で示される化合物の混合物、及び構造が同じ又は異なる2種以上の式(I)で示される化合物の脱水縮合反応により生成した生成物が含まれる。これにより、本発明の化合物(式(I)で示される化合物)は、混合物の形態を示す。
【0134】
式(I)で示される化合物において、好ましくは、少なくとも1つR0基が、
【0135】
【0136】
で示される基を表す。
【0137】
式(I)で示される化合物において、好ましくは、
【0138】
【0139】
において、Ar基は好ましくはベンゼン環であり、xは好ましくは2であり、yは好ましくは1であり、OHは好ましくはR2基のpara-位置に位置し、二つのR1は好ましくはそれぞれOHの二つのortho-位置に位置する。
【0140】
式(I)で示される化合物において、好ましくは、R1は、それぞれ独立して、C1~C4直鎖又は分岐アルキル基から選ばれ、好ましくはC3~C4分岐アルキル基から選ばれ、より好ましくはtert-butyl基である。
【0141】
式(I)で示される化合物において、好ましくは、各A基は、それぞれ独立して、
【0142】
【0143】
、OH、任意に
【0144】
【0145】
で置換されたC1~C10直鎖又は分岐アルキル基、任意に
【0146】
【0147】
で置換されたC1~C10直鎖又は分岐アルコキシ基及びHから選ばれ、少なくとも一つのA基は
【0148】
【0149】
で置換されたC1~C10直鎖又は分岐アルキル基、
【0150】
【0151】
で置換されたC1~C10直鎖又は分岐アルコキシ基から選ばれ(好ましくは各A基はそれぞれ独立して
【0152】
【0153】
、OH、任意に
【0154】
【0155】
で置換されたC1~C6直鎖又は分岐アルキル基、任意に
【0156】
【0157】
で置換されたC1~C6直鎖又は分岐アルコキシ基及びHから選ばれ、少なくとも一つのA基は
【0158】
【0159】
で置換されたC1~C6直鎖又は分岐アルキル基、
【0160】
【0161】
で置換されたC1~C6直鎖又は分岐アルコキシ基から選ばれ、より好ましくは各A基はそれぞれ独立して
【0162】
【0163】
、OH、任意に
【0164】
【0165】
で置換されたC1~C4直鎖又は分岐アルキル基、任意に
【0166】
【0167】
で置換されたC1~C4直鎖又は分岐アルコキシ基及びHから選ばれ、少なくとも一つのA基は
【0168】
【0169】
で置換されたC1~C4直鎖又は分岐アルキル基、
【0170】
【0171】
で置換されたC1~C4直鎖又は分岐アルコキシ基から選ばれる)。
【0172】
式(I)で示される化合物において、好ましくは、A基において、アルキル基、アルコキシ基が
【0173】
【0174】
で置換されている場合、
【0175】
【0176】
がアルキル基、アルコキシ基の末端に位置する。
【0177】
式(I)で示される化合物において、好ましくは、少なくとも1つのA基は、
【0178】
【0179】
で、pは1~4の整数である。
【0180】
式(I)で示される化合物において、好ましくは、R’はそれぞれ独立して、C1~C6直鎖又は分岐アルキル基、任意にC1~C10直鎖又は分岐アルキル基で置換されたベンジル基、任意にC1~C10直鎖又は分岐アルキル基で置換されたフェニル基から選ばれることができる。
【0181】
本発明では、リン含有化合物としては、以下に示す化合物の1種又は2種以上が挙げられる。
【0182】
【0183】
また、本発明は、以下のステップを備えるリン含有化合物の製造方法を提供する。
【0184】
ステップ(1):式(II)で示される化合物及び/又はその無機酸塩と式(III)で示される化合物を反応させ、ステップ(1)の生成物を生成し、
【0185】
【0186】
式(II)において、nは0~50の整数(好ましくは0~20の整数、より好ましくは0~10の整数、更に好ましくは0、1、2、3又は4)であり、n+1個のR基は互いに同一又は異なり、それぞれ独立してC1~C30ヒドロカルビレン基(好ましくはC1~C10アルキレン基、より好ましくはC1~C6アルキレン基、更に好ましくはC1~C4アルキレン基)から選ばれ、Rb基はH又はC1~C30炭化水素基(好ましくはH又はC1~C10炭化水素基、より好ましくはH又はC1~C6直鎖又は分岐アルキル基、更に好ましくはH又はC1~C4直鎖又は分岐アルキル基)であり、
各R0’基は、互いに同一又は異なり、それぞれ独立して、H及びC1~C30炭化水素基(好ましくは、それぞれ独立してH及びC1~C10直鎖又は分岐アルキル基、より好ましくはH及びC1~C4直鎖又は分岐アルキル基)から選ばれ、好ましくは、少なくとも1つのR0’基はHであり、
各A’基は、互いに同一又は異なり、それぞれ独立して、XA’’’、任意にXA’’’で置換されたC1~C30炭化水素基(好ましくは任意にXA’’’で置換されたC1~C10直鎖又は分岐アルキル基、より好ましくは任意にXA’’’で置換されたC1~C6直鎖又は分岐アルキル基、更に好ましくは任意にXA’’’で置換されたC1~C4アルキル基)、任意にXA’’’で置換されたC1~C30アルコキシ基(好ましくは任意にXA’’’で置換されたC1~C10直鎖又は分岐アルコキシ基、より好ましくは任意にXA’’’で置換されたC1~C6直鎖又は分岐アルコキシ基、更に好ましくは任意にXA’’’で置換されたC1~C4アルコキシ基)及びHから選ばれ、A’’’基はF、Cl、Br、I、Hから選ばれ、X基はそれぞれ独立してO又はSから選ばれ、少なくとも1つのA’基は、XA’’’、XA’’’で置換されたC1~C30炭化水素基(好ましくはXA’’’で置換されたC1~C10直鎖又は分岐アルキル基、より好ましくはXA’’’で置換されたC1~C6直鎖又は分岐アルキル基、更に好ましくはXA’’’で置換されたC1~C4アルキル基)、XA’’’で置換されたC1~C30アルコキシ基(好ましくはXA’’’で置換されたC1~C10直鎖又は分岐アルコキシ基、より好ましくはXA’’’で置換されたC1~C6直鎖又は分岐アルコキシ基、更に好ましくはXA’’’で置換されたC1~C4アルコキシ基)から選ばれ、
式(II)で示される化合物の無機酸塩は、
【0187】
【0188】
で示されて、Mは無機酸根であり、jは前記無機酸根の電荷数の絶対値であり、zは1~10の整数(好ましくは1~6の整数、より好ましくは1~3の整数)であり、その他の各基は式(II)と同じように定義され(式(II)で示される前記化合物の無機酸塩は、好ましくは塩酸塩、硝酸塩、又は硫酸塩であり、最も好ましくは塩酸塩である)、
式(III)において、X基はそれぞれ独立してO又はSから選ばれ、aは0又は1であり、各R’’’は互いに同一又は異なり、それぞれ独立してA’’’、C1~C30炭化水素基(好ましくはC1~C10直鎖又は分岐アルキル基、より好ましくはC1~C6直鎖又は分岐アルキル基、更に好ましくはC1~C4直鎖又は分岐アルキル基)、任意にC1~C10直鎖又は分岐アルキル基で置換されたC7~C15アリールアルキル基(好ましくは任意にC1~C10直鎖又は分岐アルキル基で置換されたC7~C12アリールアルキル基、より好ましくは任意にC1~C10直鎖又は分岐アルキル基で置換されたベンジル基)、任意にC1~C10直鎖又は分岐アルキル基で置換されたC6~C15アリール基(好ましくは任意にC1~C10直鎖又は分岐アルキル基で置換されたC6~C10アリール基、より好ましくは任意にC1~C10直鎖又は分岐アルキル基で置換されたフェニル基)から選ばれ、
及び、任意的なステップ(2):ステップ(1)の生成物を式(IV)で示される化合物と反応させ、ステップ(2)の生成物を生成し、
【0189】
【0190】
式(IV)中、xは0~5の整数(好ましくは0~4の整数、より好ましくは0、1、2又は3)であり、yは1~5の整数(好ましくは1~4の整数、より好ましくは1、2又は3)であり、x+yの合計≦Ar基上で置換可能な水素原子の数であり、x個R1基は互いに同一又は異なり、それぞれ独立してH、C1~C30炭化水素基(好ましくはH、C1~C10直鎖又は分岐アルキル基、より好ましくはH、C1~C6直鎖又は分岐アルキル基、更に好ましくはH、C1~C4直鎖又は分岐アルキル基)から選ばれ、Ar基がC3~C30環状基(好ましくはC6~C15芳香環基、より好ましくはベンゼン環、ナフタレン環及びアントラセン環)であり、R2基が単結合又はC1~C10アルキレン基(好ましくは単結合又はC1~C6アルキレン基、より好ましくは単結合又はC1~C4アルキレン基)であり、X’は、F、Cl、Br、I又はOH(好ましくはCl、Br)である。
【0191】
本発明の製造方法によれば、前記式(II)で示される化合物の無機酸塩は、式(II)で示される化合物と無機酸とを反応させることにより製造することができる。
【0192】
本発明の製造方法によれば、前記式(II)で示される化合物及び/又はその無機酸塩は、アミノ酸、アミノ酸の縮合物(部分的縮合又は完全縮合により形成されたポリペプチド)、アミノ酸の無機塩、アミノ酸の縮合物(部分的縮合又は完全縮合により形成されたポリペプチド)の無機塩から選ばれた1種以上である。前記式(II)で示される化合物及び/又はその無機酸塩は、以下の具体的な化合物から1つ以上選択することができる:L-セリン及び/又はL-セリンエステル塩酸塩、L-ロイシン及び/又はL-ロイシンエステル塩酸塩、L-イソロイシン及び/又はL-イソロイシンエステル塩酸塩、グリシン及び/又はグリシンエステル塩酸塩、L-フェニルアラニン及び/又はL-フェニルアラニンエステル塩酸塩、L-バリン及び/又はL-バリンエステル塩酸塩。
【0193】
本発明の製造方法によれば、式(III)で示される化合物は、亜リン酸、ホスファイト、チオ亜リン酸、チオホスファイトから選択でき、具体的には、亜リン酸、亜リン酸ジメチル、亜リン酸ジエチル、亜リン酸ジプロピル、亜リン酸ジイソプロピル、亜リン酸ジn-ブチル、亜リン酸ジイソブチル、亜リン酸ジtert-ブチル、亜リン酸ジ(2-エチルヘキシル)、亜リン酸ジベンジル、亜リン酸ジフェニル、チオ亜リン酸、チオ亜リン酸ジメチル、チオ亜リン酸ジエチル、チオ亜リン酸ジプロピル、チオ亜リン酸ジイソプロピル、チオ亜リン酸ジn-ブチル、チオ亜リン酸ジイソブチル、チオ亜リン酸ジtert-ブチル、チオ亜リン酸ジ(2-エチルヘキシル)、チオ亜リン酸ジベンジル、チオ亜リン酸ジフェニルの一つ又は二つ以上が挙げられる。
【0194】
本発明に係る製造方法は、ステップ(1)において、前記式(II)で示される化合物及び/又はその無機酸塩(XA’’換算として)と前記式(III)で示される化合物(P-H換算として)との反応モル当量比が、好ましくは1:5~5:1であり、より好ましくは1:3~3:1である。反応温度は、好ましくは-40~80℃であり、より好ましくは-20~40℃である。反応時間は、反応効率を高めるために、一般にできるだけ長く、好ましくは0.5~30時間、より好ましくは1~8時間である。
【0195】
本発明に係る製造方法は、ステップ(1)において、前記式(II)で示される化合物及び/又はその無機酸塩と式(III)で示される化合物との反応に、好ましくは溶媒を添加してもよいし、添加しなくてもよい。前記溶媒は、好ましくはプロトン系溶媒、炭化水素系溶媒、フラン系溶媒から選ばれた1種以上であり、例えばヘキサン、ベンゼン、トルエン、テトラヒドロフラン、塩化メチレン、メタノール、エタノール、イソプロパノール、水から選ばれる1種以上、より好ましくはプロトン系溶媒であり、例えばメタノール、エタノール、イソプロパノール、水の1種以上である。前記溶媒の添加量は、反応が円滑に進行するように添加すればよく、特に限定されるものではない。
【0196】
本発明に係る製造方法は、ステップ(1)において、前記式(II)で示される化合物及び/又はその無機酸塩と式(III)で示される化合物との反応に、好ましくは触媒を添加してもよいし、添加しなくてもよい。前記触媒は、相間移動触媒であってもよい。前記相間移動触媒は、第4級アンモニウム塩及び/又はクラウンエーテル、好ましくはテトラヒドロカルボニルアンモニウムハライド、例えば臭化テトラブチルアンモニウム、塩化トリオクチルアンモニウム、臭化セチルトリメチルアンモニウム、塩化トリエチルベンジルアンモニウム及び18-クラウン-6から選ばれる1以上であり、より好ましくは臭化テトラブチルアンモニウムである。前記触媒は、前記式(II)で示される化合物及び/又はその無機酸塩に対して、0.1質量%~10質量%の量で添加されることが好ましい。
【0197】
本発明に係る製造方法は、ステップ(1)において、前記式(II)で示される化合物及び/又はその無機酸塩は、式(III)で示される化合物と反応させる際に塩化物を添加することが好ましい。前記塩化物は、次亜塩素酸塩及び/又はクロロアルカンであることが好ましく、前記次亜塩素酸塩は、次亜塩素酸ナトリウム、次亜塩素酸カリウム及び次亜塩素酸カルシウムの1種又は2種以上であることがより好ましい。次亜塩素酸塩は、水溶液の形で使用することができる。前記塩素化アルカンは、クロロメタンであることが好ましく、例えば、一塩化炭素、二塩化炭素、三塩化炭素、四塩化炭素の1種又は2種以上を用いることができる。前記塩化物は、好ましくは次亜塩素酸塩の水溶液であり、水溶液の濃度は好ましくは5%~80%であり、より好ましくは次亜塩素酸ナトリウムの水溶液である。前記塩化物は、式(II)で示される化合物及び/又はその無機酸塩に対して、30~100mL/100mmolの量で添加されることが好ましい。
【0198】
本発明に係る製造方法は、ステップ(1)において、前記式(II)で示される化合物及び/又はその無機酸塩と式(III)で示される化合物との反応が、好ましくはpH8~10(好ましくは8.5~9.5)で行う。pHは、アルカリ性物質を添加することにより調整でき、前記アルカリ性物質は、好ましくはアルカリ性溶液であり、前記アルカリ性溶液は、好ましくは水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム及び水酸化カルシウムの1種又は2種以上の水溶液である。
【0199】
本発明に係る製造方法は、ステップ(1)において、前記式(II)で示される化合物及び/又はその無機酸塩と式(III)で示される化合物とを反応させた後、反応生成物を任意の抽出処理、任意の乾燥処理及び任意の超音波処理に付すことができる。好ましくは、超音波処理を行うことである。
【0200】
ステップ(1)の反応生成物を抽出する場合、好ましくは溶媒で反応生成物を抽出し、より好ましくは酸性環境下で抽出する。前記溶媒は、エーテル系溶媒、エステル系溶媒、クロロアルカン系溶媒、炭化水素系溶媒から選ばれた1種以上が好ましく、例えば、石油エーテル、エチルエーテル、酢酸エチル、塩化メチレン、クロロホルム、トルエンの中から1種以上が挙げられる。前記抽出処理は、好ましくは1~3回である。前記酸性環境は、酸溶液を添加して反応生成物が存在する系のpHを調整することにより得られ、前記pHは好ましくは2~5、より好ましくは2.5~3.5であり、前記酸溶液は塩酸、酢酸、硝酸及び硫酸の1種以上の水溶液が好ましく、前記酸溶液の濃度は好ましくは1~10mol/Lである。好ましくは、抽出効率を向上させるために、前記抽出処理を行う際に無機塩類を添加する。前記無機塩は、塩化ナトリウム、塩化カリウム、硫酸ナトリウム、硫酸カリウムから選ばれる1種以上であることが好ましい。
【0201】
ステップ(1)の反応生成物を乾燥させる場合、好ましくは乾燥剤を添加して乾燥させる。前記乾燥剤は、無水塩化マグネシウム及び/又は無水硫酸ナトリウムであってもよい。
【0202】
ステップ(1)の反応生成物を超音波処理する場合、好ましくは溶媒の存在下で処理する。前記溶媒は、例えばフラン系溶媒、クロロアルカン系溶媒、ケトン系溶媒、エステル系溶媒及びニトリル系溶媒から選ばれた1種以上であり、より好ましくはテトラヒドロフラン、塩化メチレン、クロロホルム、アセトン、酢酸エチル及びアセトニトリルの1種以上である。テトラヒドロフラン、ジクロロメタン、アセトニトリルから選ばれる1つ以上であることがより好ましい。前記超音波処理の時間は、好ましくは1~10h、より好ましくは2~8hである。
【0203】
本発明に係る製造方法は、ステップ(1)において、前記式(II)で示される化合物及び/又はその無機酸塩と式(III)で示される化合物とを反応させた後、ステップ(1)の反応生成物を更に精製工程に付すことが好ましい。前記精製工程は、従来技術で知られている乾燥法、蒸発法、洗浄法、蒸留法、再結晶法及び遠心分離法の1つ又は複数の組み合わせを含んでいる。
【0204】
本発明の製造方法は、任意的なステップ(2)において、前記式(IV)で示される化合物は、従来技術で公知の方法を用いて製造することができ、特に限定されるものではない。
【0205】
好ましくは、式(IV)で示される化合物において
【0206】
【0207】
Ar基は好ましくはベンゼン環であり、xは好ましくは2であり、yは好ましくは1であり、OHは好ましくはR2基のpara-位置に位置し、二つのR1はそれぞれOHの二つortho-位置に位置し、X’は好ましくはCl又はBrである。
【0208】
好ましくは、式(IV)で示される化合物において、R1は、それぞれ独立して、C1~C4直鎖又は分岐アルキル基から選ばれ、好ましくはC3~C4分岐アルキル基から選ばれ、より好ましくはtert-butyl基である。
【0209】
式(III)で示される化合物において、好ましくは、R’’’は、それぞれ独立して、C1~C6直鎖又は分岐アルキル基、任意にC1~C10直鎖又は分岐アルキル基で置換されたベンジル基、任意にC1~C10直鎖又は分岐アルキル基で置換されたフェニル基から選ばれる。
【0210】
式(II)で示される化合物において、好ましくは、A’基は、アルキル基、アルコキシ基がXA’’’基で置換された場合、XA’’’基は、アルキル、アルコキシ基の末端に位置する。
【0211】
式(II)で示される化合物において、好ましくは、少なくとも1つのA’基は、
【0212】
【0213】
であり、pは1~4の整数である。
【0214】
式(IV)で示される化合物は、当技術分野で既知の方法を用いて合成することができ、又は市販されているものを使用することができる。
【0215】
式(IV)で示される化合物としては、具体的には、3,5-ビス(tert-ブチル)-4-ヒドロキシフェニルアセチルクロライド、3,5-ビス(tert-ブチル)-4-ヒドロキシフェニルプロピオニルクロライド、p-ヒドロキシフェニルアセチルクロライド、3-ヒドロキシフェニルアセチルクロライド、2-ヒドロキシフェニルアセチルクロライド、3,4-ジヒドロキシフェニルアセチルクロライド、3,5-ジヒドロキシフェニルアセチルクロライド、3-メチル-4-ヒドロキシフェニルアセチルクロライド、3,5-ジメチル-4-ヒドロキシフェニルアセチルクロリド、2,4-ジヒドロキシフェニルプロピオニルクロリド、3,4-ジヒドロキシフェニルプロピオニルクロリド、2-ヒドロキシ-ナフチルアセチルクロリドから選ばれる一つ以上である。
【0216】
本発明の製造方法は、任意的なステップ(2)において、前記式(IV)で示される化合物(X’換算として)とステップ(1)の反応生成物(NH換算として)との反応モル当量比が、好ましくは5:1~1:5、より好ましくは1:2~2:1であり、反応温度が好ましくは-40~60℃、より好ましくは-20~20℃である。反応時間は、反応効率を向上させるために、好ましくは1~20時間、より好ましくは3~8時間である。
【0217】
本発明の製造方法は、任意的なステップ(2)において、式(IV)で示される前記化合物(X’換算として)とステップ(1)の反応生成物(NH換算として)との反応に、溶媒を添加してもよいし、添加しなくてもよく、好ましくは溶媒を添加する。前記溶媒は、好ましくはプロトン系溶媒、エーテル系溶媒、エステル系溶媒、クロロアルカン系溶媒、フラン系溶媒、ケトン系溶媒と炭化水素系溶媒から選ばれる1種以上であり、例えば水、メタノール、エタノール、イソプロパノール、塩化メチレン、クロロホルム、エチルエーテル、テトラヒドロフラン、酢酸エチル、アセトン、トルエンから選ばれた1種以上、更に好ましくは水、エタノール、エチルエーテル、テトラヒドロフラン、アセトンから選ばれる1種以上である。前記溶媒の添加量は、反応が円滑に進行するように添加すればよく、特に限定されるものではない。
【0218】
本発明の製造方法は、任意的なステップ(2)において、反応生成物の純度を向上させるために、式(IV)で示される前記化合物(X’換算として)とステップ(1)の反応生成物(NH換算として)との反応後、ステップ(2)の反応生成物を洗浄処理に付すことができる。好ましくは、ステップ(2)の反応生成物を酸溶液を用いて洗浄する。前記酸溶液は、塩酸、硫酸、硝酸から選ばれる1種以上の水溶液であることが好ましく、前記酸溶液の濃度は、1~12mol/lであることが好ましい。本発明の製造方法は、任意的なステップ(2)において、式(IV)で示される前記化合物(X’換算として)とステップ(1)の反応生成物(NH換算として)との反応に続いて、ステップ(2)の反応生成物を精製処理に付すことができる。前記精製工程は、従来技術で知られている洗浄法、蒸留法、再結晶法及び遠心分離法のうちの1つ又は複数の組み合わせを含むことができる。
【0219】
本発明のリン含有化合物は、潤滑油の生分解剤として使用することができる。
【0220】
本発明のリン含有化合物の製造方法により製造されたリン含有化合物は、潤滑油の生分解剤として使用することができる。
【0221】
本発明は、本発明の上記リン含有化合物、本発明の製造方法により製造されたリン含有化合物、上記リン含有化合物の部分脱水縮合反応又は完全脱水縮合反応により生成した生成物から選ばれる1種又は2種以上の混合物を含むリン含有化合物の組成物を提供するものである。
【0222】
本発明は、本発明の上記リン含有化合物、本発明の製造方法により製造されたリン含有化合物、及び本発明の上記リン含有化合物の組成物から選ばれる少なくとも1種と潤滑油基油を含む潤滑油組成物を提供するものである。
【0223】
本発明の潤滑油組成物において、前記リン含有化合物、上記リン含有化合物の部分脱水縮合反応又は完全脱水縮合反応により生成した生成物は、潤滑油組成物の全質量に対して、0.001~30%、好ましくは0.01~20%、より好ましくは0.1~10%で含有する。
【0224】
本発明のリン含有化合物は、生物分解性、抗酸化性に非常に優れ、特に潤滑油製品の生分解を促進するのに好適である。本発明のリン含有化合物の製造方法により、簡便かつ効率的に、高い収率でリン含有化合物を製造することができる。
【0225】
〔実施例〕
以下、本発明を具体的な実施例により説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0226】
以下の実施例で説明する実験方法は、特に限定がなければ、従来のものであり、特に限定がなければ、試薬や材料は市販されているものである。
【0227】
以下に、実施例における略語の意味を示す。
【0228】
Me:メチル
iPr:イソプロピル
Bn:ベンジル
実施例1
O-ジメチルオキシホスホリル-N-3,5-ビス(tert-ブチル)-4-ヒドロキシフェニルプロピオニル-L-セリンの合成
(1)L-セリン(式II-a)(100mmol,10.5g)、水40mLを反応器に順次に加え、0℃に冷却し、水酸化ナトリウムでpH=9.0に調整し、亜リン酸ジメチル(式III-a)(130mmol,14.3g)及びテトラブチルアンモニウムブロミド(1mmol,0.32g)を加え、50mlの12%次亜塩素酸ナトリウム溶液を撹拌しつつ滴下した。4時間後、反応物をエーテルで2回抽出し、水層を塩酸でpH=3に調整し、塩化ナトリウム8gを加え、有機相を酢酸エチルで2回抽出し、有機相を合わせて無水塩化マグネシウムで乾燥し、減圧下蒸留で溶媒を除去して無色オイルを得た。無色のオイルを60mLのアセトニトリルに溶解し、室温で5時間超音波処理した後、ろ過して白色の固体を得た。
【0229】
(2)上記白色固体(47.6mmol,10.2g)、40mLアセトン、20mL水、水酸化ナトリウム(95.2mmol,10g)の混合物を0℃に冷却し、3,5-ビス(tert-ブチル)-4-ヒドロキシフェニルプロピオニルクロリド(47.6mmol,14.1g)を添加した。5時間後に6mol/l塩酸水溶液を用いてpH2まで酸性化し、白色固体が多量に出現し、ろ過し、得られたケーキを水と石油エーテルで洗浄し、ステップ(2)の反応生成物を得た。その構造及び反応スキームは以下に示し、ステップ(2)の反応生成物は反応スキームにおける式I-aで示された。
【0230】
【0231】
3,5-ビス(tert-ブチル)-4-ヒドロキシフェニルプロピオン酸(81mmol,22.5g)を150mLのクロロホルムに溶解し、ジクロロスルホキシド(124mmol,14.8g)を加えて4時間還流し、溶剤と過剰のジクロロスルホキシドをロータリーエバポレーションで取り除いて、淡黄色の固体(即ちステップ(2)で使った3,5-ビス(tert-ブチル)-4-ヒドロキシフェニルプロピオニルクロリド)を得た。
【0232】
ステップ(2)の反応生成物の同定:
1H NMR(400MHz,CDCl3)δ12.19(br,1H),8.71(s,1H),6.96(s,2H),5.97(br,1H),4.66(d,J=6.4Hz,2H),4.07(t,J=6.8Hz,1H),3.79(s,6H),2.87(t,J=6.8Hz,2H),2.49(t,J=6.8Hz,2H),1.31(s,18H);
HRMS(FT-ICRMS)calcd for C22H35NO8P-(M-H):472.2106,found:472.2109.
同定した結果、反応生成物はO-ジメチルオキシホスホリル-N-3,5-ビス(tert-ブチル)-4-ヒドロキシフェニルプロピオニル-L-セリン(式I-a)であることが分かった。
【0233】
実施例2
O-ジイソプロピルオキシホスホリル-N-3,5-ビス(tert-ブチル)-4-ヒドロキシフェニルプロピオニル-L-セリンの合成
(1)L-セリン(式II-a)(100mmol,10.5g)、水40mLを反応器に順次に加え、0℃に冷却し、水酸化ナトリウムでpH=9.0に調整し、亜リン酸ジイソプロピル(式III-b)(130mmol,21.7g)及びテトラブチルアンモニウムブロミド(1mmol,0.32g)を加え、50mlの12%次亜塩素酸ナトリウム溶液を撹拌しつつ滴下した。4時間後、反応物をエーテルで2回抽出し、水層を塩酸でpH=3に調整し、塩化ナトリウム8gを加え、有機相を酢酸エチルで2回抽出し、有機相を合わせて無水塩化マグネシウムで乾燥し、減圧下蒸留で溶媒を除去して無色オイルを得た。無色のオイルを60mLのアセトニトリルに溶解し、室温で5時間超音波処理した後、ろ過して白色の固体を得た。
【0234】
(2)上記白色固体(47.6mmol,12.8g)、40mLアセトン、20mL水、水酸化ナトリウム(95.2mmol,10g)の混合物を0℃に冷却し、3,5-ビス(tert-ブチル)-4-ヒドロキシフェニルプロピオニルクロリド(47.6mmol,14.1g)を添加した。5時間後に6mol/l塩酸水溶液を用いてpH2まで酸性化し、白色固体が多量に出現し、ろ過し、得られたケーキを水と石油エーテルで洗浄し、ステップ(2)の反応生成物を得た。その構造及び反応スキームは以下に示し、ステップ(2)の反応生成物は反応スキームにおける式I-bで示された。
【0235】
【0236】
3,5-ビス(tert-ブチル)-4-ヒドロキシフェニルプロピオン酸(81mmol,22.5g)を150mLのクロロホルムに溶解し、ジクロロスルホキシド(124mmol,14.8g)を加えて4時間還流し、溶剤と過剰のジクロロスルホキシドをロータリーエバポレーションで取り除いて、淡黄色の固体(即ちステップ(2)で使った3,5-ビス(tert-ブチル)-4-ヒドロキシフェニルプロピオニルクロリド)を得た。
【0237】
ステップ(2)の反応生成物の同定:
1H NMR(400MHz,CDCl3)δ12.10(br,1H),8.55(s,1H),6.88(s,2H),5.85(br,1H),4.61(d,J=6.4Hz,2H),4.09(t,J=6.8Hz,1H),3.99-3.89(m,2H),2.81(t,J=6.8Hz,2H),2.44(t,J=6.8Hz,2H),1.31(s,18H),1.25(s,12H);
HRMS(FT-ICRMS)calcd for C26H43NO8P-(M-H):528.2732,found:528.2737.
同定した結果、反応生成物はO-ジイソプロピルオキシホスホリル-N-3,5-ビス(tert-ブチル)-4-ヒドロキシフェニルプロピオニル-L-セリン(式I-b)であることが分かった。
【0238】
実施例3
O-ジフェニルメトキシホスホリル-N-3,5-ビス(tert-ブチル)-4-ヒドロキシフェニルプロピオニル-L-セリンの合成
(1)L-セリン(式II-a)(100mmol,10.5g)、水40mLを反応器に順次に加え、0℃に冷却し、水酸化ナトリウムでpH=9.0に調整し、亜リン酸ジベンジル(式III-c)(130mmol,34.0g)及びテトラブチルアンモニウムブロミド(1mmol,0.32g)を加え、50mlの12%次亜塩素酸ナトリウム溶液を撹拌しつつ滴下した。4時間後、反応物をエーテルで2回抽出し、水層を塩酸でpH=3に調整し、塩化ナトリウム8gを加え、有機相を酢酸エチルで2回抽出し、有機相を合わせて無水塩化マグネシウムで乾燥し、減圧下蒸留で溶媒を除去して無色オイルを得た。無色のオイルを60mLのアセトニトリルに溶解し、室温で5時間超音波処理した後、ろ過して白色の固体を得た。
【0239】
(2)上記白色固体(47.6mmol,17.4g)、40mLアセトン、20mL水、水酸化ナトリウム(95.2mmol,10g)の混合物を0℃に冷却し、3,5-ビス(tert-ブチル)-4-ヒドロキシフェニルプロピオニルクロリド(47.6mmol,14.1g)を添加した。5時間後に6mol/l塩酸水溶液を用いてpH2まで酸性化し、白色固体が多量に出現し、ろ過し、得られたケーキを水と石油エーテルで洗浄し、ステップ(2)の反応生成物を得た。その構造及び反応スキームは以下に示し、ステップ(2)の反応生成物は反応スキームにおける式I-cで示された。
【0240】
【0241】
3,5-ビス(tert-ブチル)-4-ヒドロキシフェニルプロピオン酸(81mmol,22.5g)を150mLのクロロホルムに溶解し、ジクロロスルホキシド(124mmol,14.8g)を加えて4時間還流し、溶剤と過剰のジクロロスルホキシドをロータリーエバポレーションで取り除いて、淡黄色の固体(即ちステップ(2)で使った3,5-ビス(tert-ブチル)-4-ヒドロキシフェニルプロピオニルクロリド)を得た。
【0242】
ステップ(2)の反応生成物の同定:
1H NMR(400MHz,CDCl3)δ12.27(br,1H),8.64(s,1H),7.55-7.26(m,10H),6.91(s,2H),5.71(br,1H),5.17(s,4H),4.61(d,J=6.4Hz,2H),4.01(t,J=6.8Hz,1H),2.81(t,J=6.8Hz,2H),2.44(t,J=6.8Hz,2H),1.32(s,18H);
HRMS(FT-ICRMS)calcd for C34H43NO8P-(M-H):624.2732,found:624.2730.
同定した結果、反応生成物はO-ジフェニルメトキシホスホリル-N-3,5-ビス(tert-ブチル)-4-ヒドロキシフェニルプロピオニル-L-セリン(式I-c)であることが分かった。
【0243】
実施例4
O-ジメチルオキシホスホリル-N-3,5-ビス(tert-ブチル)-4-ヒドロキシフェニルプロピオニル-L-セリン-メチルエステルの合成
(1)L-セリンメチルエステル塩酸塩(式II-b)(100mmol,15.5g)、水40mLを反応器に順次に加え、0℃に冷却し、水酸化ナトリウムでpH=9.0に調整し、亜リン酸ジメチル(式III-a)(130mmol,14.3g)及びテトラブチルアンモニウムブロミド(1mmol,0.32g)を加え、50mlの12%次亜塩素酸ナトリウム溶液を撹拌しつつ滴下した。4時間後、反応物をエーテルで2回抽出し、水層を塩酸でpH=3に調整し、塩化ナトリウム8gを加え、有機相を酢酸エチルで2回抽出し、有機相を合わせて無水塩化マグネシウムで乾燥し、減圧下蒸留で溶媒を除去して白色の固体を得た。白色の固体を60mLのアセトニトリルに溶解し、室温で5時間超音波処理した後、ろ過して白色の固体を得た。
【0244】
(2)上記白色固体(47.6mmol,10.8g)、40mLアセトン、20mL水、水酸化ナトリウム(95.2mmol,10g)の混合物を0℃に冷却し、3,5-ビス(tert-ブチル)-4-ヒドロキシフェニルプロピオニルクロリド(47.6mmol,14.1g)を添加した。5時間後に6mol/l塩酸水溶液を用いてpH2まで酸性化し、白色固体が多量に出現し、ろ過し、得られたケーキを水と石油エーテルで洗浄し、ステップ(2)の反応生成物を得た。その構造及び反応スキームは以下に示し、ステップ(2)の反応生成物は反応スキームにおける式I-dで示された。
【0245】
【0246】
3,5-ビス(tert-ブチル)-4-ヒドロキシフェニルプロピオン酸(81mmol,22.5g)を150mLのクロロホルムに溶解し、ジクロロスルホキシド(124mmol,14.8g)を加えて4時間還流し、溶剤と過剰のジクロロスルホキシドをロータリーエバポレーションで取り除いて、淡黄色の固体(即ちステップ(2)で使った3,5-ビス(tert-ブチル)-4-ヒドロキシフェニルプロピオニルクロリド)を得た。
【0247】
ステップ(2)の反応生成物の同定:
1H NMR(400MHz,CDCl3)δ8.54(s,1H),6.91(s,2H),5.77(br,1H),4.60(d,J=6.4Hz,2H),4.11(t,J=6.8Hz,1H),3.73(s,6H),3.61(s,3H),2.80(t,J=6.8Hz,2H),2.52(t,J=6.8Hz,2H),1.35(s,18H);
HRMS(FT-ICRMS)calcd for C23H37NO8P-(M-H):486.2262,found:486.2268.
同定した結果、反応生成物はO-ジメチルオキシホスホリル-N-3,5-ビス(tert-ブチル)-4-ヒドロキシフェニルプロピオニル-L-セリン-メチルエステル(式I-d)であることが分かった。
【0248】
実施例5
上記リン含有化合物をそれぞれ1質量%の割合で異なる種類の潤滑油に添加し、OECD302B法に従って生物分解性を測定し、結果を表1に示した。
【0249】
【0250】
上記リン含有化合物をそれぞれ1質量%の割合で異なる種類の潤滑油に添加し、酸素圧500kPa、200℃の条件下で示差走査熱量計(PDSC法)を用いて、潤滑油の酸化誘導期間を測定し、結果を表2に示した。
【0251】
【0252】
以上の結果から明らかなように、本発明のリン含有化合物は、潤滑油の生物分解性を向上させることができる。更に、本発明のリン含有化合物は、抗酸化性に優れ、潤滑油と組み合わせることで、潤滑油の酸化を抑制することができる。
【0253】
本明細書に記載された実施形態は単なる例示であり、本発明の範囲内で他の様々な置換、変更及び改良を行うことができることについて、当業者は理解すべきである。したがって、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、請求の範囲によってのみ限定されるものである。