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特許7653436ゲーティングカメラ、車両用センシングシステム、車両用灯具
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-03-19
(45)【発行日】2025-03-28
(54)【発明の名称】ゲーティングカメラ、車両用センシングシステム、車両用灯具
(51)【国際特許分類】
   G01S 17/18 20200101AFI20250321BHJP
   G01S 17/894 20200101ALI20250321BHJP
   G01S 17/931 20200101ALI20250321BHJP
   G03B 15/03 20210101ALN20250321BHJP
   G03B 15/05 20210101ALN20250321BHJP
   H04N 23/56 20230101ALN20250321BHJP
   H04N 23/60 20230101ALN20250321BHJP
【FI】
G01S17/18
G01S17/894
G01S17/931
G03B15/03 V
G03B15/05
H04N23/56
H04N23/60 500
【請求項の数】 20
(21)【出願番号】P 2022536281
(86)(22)【出願日】2021-07-06
(86)【国際出願番号】 JP2021025500
(87)【国際公開番号】W WO2022014416
(87)【国際公開日】2022-01-20
【審査請求日】2024-04-24
(31)【優先権主張番号】P 2020120853
(32)【優先日】2020-07-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2020120854
(32)【優先日】2020-07-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2020134109
(32)【優先日】2020-08-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000001133
【氏名又は名称】株式会社小糸製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001416
【氏名又は名称】弁理士法人信栄事務所
(72)【発明者】
【氏名】加藤 大騎
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼橋 昌之
(72)【発明者】
【氏名】伊多波 晃志
(72)【発明者】
【氏名】種本 駿
【審査官】九鬼 一慶
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-282906(JP,A)
【文献】特開2010-071704(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第110018493(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01S 7/48 - 7/51
G01S 17/00 - 17/95
G03B 15/03
G03B 15/05
H04N 23/56
H04N 23/60
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
視野を奥行き方向について複数のレンジに区切り、前記複数のレンジに対応する複数のスライス画像を生成するゲーティングカメラであって、
プローブ光を照射する照明装置と、
露光により生画像を生成し、前記生画像を構成する複数のラインのうち、物標を含まない無効ラインに関する画像情報を圧縮して得られる圧縮画像を出力するイメージセンサと、
前記照明装置の発光タイミングと前記イメージセンサの露光のタイミングを制御するカメラコントローラと、
前記イメージセンサから前記圧縮画像を受信し、前記スライス画像を復元する画像処理装置と、
を備えることを特徴とするゲーティングカメラ。
【請求項2】
前記イメージセンサは、あるラインの全画素の画素値が所定のしきい値より小さいとき、当該ラインを、前記無効ラインとすることを特徴とする請求項1に記載のゲーティングカメラ。
【請求項3】
前記スライス画像において、前記無効ラインの画素値はゼロであることを特徴とする請求項1または2に記載のゲーティングカメラ。
【請求項4】
前記イメージセンサは、
前記無効ラインでない有効ラインについては、行番号と、値が第1値であるヘッダと、当該有効ラインに含まれる全画素の画素値と、を含むラインデータを伝送し、
前記無効ラインについては、行番号と、値が第2値であるヘッダと、を含むラインデータを伝送することを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載のゲーティングカメラ。
【請求項5】
前記画像処理装置は、受信した前記ラインデータの前記ヘッダの値が前記第2値であるとき、当該ラインの全画素値を0とすることを特徴とする請求項4に記載のゲーティングカメラ。
【請求項6】
視野を奥行き方向について複数のレンジに区切り、前記複数のレンジに対応する複数のスライス画像を生成するゲーティングカメラであって、
プローブ光を照射する照明装置と、
イメージセンサと、
前記照明装置の発光タイミングと前記イメージセンサの露光のタイミングを制御し、前記イメージセンサに、前記複数のレンジに対応する前記複数のスライス画像を発生させるカメラコントローラと、
前記イメージセンサから前記複数のスライス画像を受け、注目画素を選択し、前記注目画素において物体を含むスライス画像を有効画像とし、有効画像以外のスライス画像の注目画素の画素値にもとづいてノイズレベルを検出し、前記複数のスライス画像それぞれの注目画素の画素値を前記ノイズレベルにもとづいて補正する画像処理装置と、
を備えることを特徴とするゲーティングカメラ。
【請求項7】
前記ノイズレベルは、前記有効画像以外のスライス画像の注目画素の画素値の平均値であることを特徴とする請求項6に記載のゲーティングカメラ。
【請求項8】
前記画像処理装置は、前記注目画素の画素値が最も大きいスライス画像を、前記有効画像とすることを特徴とする請求項6または7に記載のゲーティングカメラ。
【請求項9】
前記画像処理装置は、あるスライス画像について、注目画素の画素値が所定のしきい値を超えるとき、当該スライス画像を前記有効画像とすることを特徴とする請求項6または7に記載のゲーティングカメラ。
【請求項10】
視野を奥行き方向について複数のレンジに区切り、前記複数のレンジに対応する複数のスライス画像を生成するゲーティングカメラであって、
プローブ光を照射する照明装置と、
イメージセンサと、
前記照明装置の発光タイミングと前記イメージセンサの露光のタイミングを制御し、前記イメージセンサに、前記複数のレンジに対応する複数のスライス画像を発生させるカメラコントローラと、
前記イメージセンサから前記複数のスライス画像を受け、注目画素を選択し、全スライス画像の注目画素の画素値にもとづいてノイズレベルを検出し、前記複数のスライス画像それぞれの注目画素の画素値を前記ノイズレベルにもとづいて補正する画像処理装置と、
を備えることを特徴とするゲーティングカメラ。
【請求項11】
前記ノイズレベルは、前記全スライス画像の注目画素の画素値の平均値であることを特徴とする請求項10に記載のゲーティングカメラ。
【請求項12】
奥行き方向について複数のレンジに区切り、前記複数のレンジに対応する複数のスライス画像を生成するゲーティングカメラであって、
プローブ光を照射する照明装置と、
イメージセンサと、
前記照明装置の発光タイミングと前記イメージセンサの露光のタイミングを制御し、前記イメージセンサに、前記複数のレンジに対応する複数の画像データを生成させるカメラコントローラと、
を備え、
前記カメラコントローラは、前記プローブ光の減衰係数と相関を有する視界情報を撮影パラメータに反映させることを特徴とするゲーティングカメラ。
【請求項13】
前記カメラコントローラは、前記プローブ光の前記減衰係数が大きいほど、1枚のスライス画像を生成するための露光回数を増加させることを特徴とする請求項12に記載のゲーティングカメラ。
【請求項14】
前記カメラコントローラは、レンジの番号と露光回数の関係を複数個、保持しており、前記視界情報に応じたひとつを選択することを特徴とする請求項13に記載のゲーティングカメラ。
【請求項15】
前記カメラコントローラは、前記減衰係数が大きい場合に、遠距離の撮影を諦めることと引き換えに、奥行き方向の分解能を高めることを特徴とする請求項12から14のいずれかに記載のゲーティングカメラ。
【請求項16】
前記カメラコントローラは、前記減衰係数が大きいほど、ひとつのレンジの長さを短くすることを特徴とする請求項12から15のいずれかに記載のゲーティングカメラ。
【請求項17】
前記カメラコントローラは、前記減衰係数が大きいほど、測定対象とするレンジの個数を奥側から順に減らすことを特徴とする請求項12から16のいずれかに記載のゲーティングカメラ。
【請求項18】
プローブ光を照射する照明装置とイメージセンサを備え、視野の奥行き方向について複数のレンジに分割して撮影するゲーティングカメラの制御方法であって、
視野における前記プローブ光の透過率と相関を有する視界情報を取得するステップと、
前記視界情報にもとづいて、撮影パラメータを決定するステップと、
前記撮影パラメータに応じて、前記照明装置および前記イメージセンサを制御するステップと、
を備えることを特徴とする制御方法。
【請求項19】
請求項1から17のいずれかに記載のゲーティングカメラと、
前記ゲーティングカメラが撮影する前記複数のスライス画像を処理する演算処理装置と、
を備えることを特徴とする車両用センシングシステム。
【請求項20】
請求項1から17のいずれかに記載のゲーティングカメラを備えることを特徴とする車両用灯具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゲーティングカメラに関する。
【背景技術】
【0002】
自動運転やヘッドランプの配光の自動制御のために、車両の周囲に存在する物体の位置および種類をセンシングする物体識別システムが利用される。物体識別システムは、センサと、センサの出力を解析する演算処理装置を含む。センサは、カメラ、LiDAR(Light Detection and Ranging、Laser Imaging Detection and Ranging)、ミリ波レーダ、超音波ソナーなどの中から、用途、要求精度やコストを考慮して選択される。
【0003】
一般的な単眼のカメラからは、奥行きの情報を得ることができない。したがって、異なる距離に位置する複数の物体が重なっている場合に、それらを分離することが難しい。
【0004】
奥行き情報が得られるカメラとして、TOFカメラが知られている。TOF(Time Of Flight)カメラは、発光デバイスによって赤外光を投光し、反射光がイメージセンサに戻ってくるまでの飛行時間を測定し、飛行時間を距離情報に変換したTOF画像を得るものである。
【0005】
TOFカメラに代わるアクティブセンサとして、ゲーティングカメラ(Gating CameraあるいはGated Camera)が提案されている(特許文献1,2)。ゲーティングカメラは、撮影範囲を複数のレンジに区切り、レンジ毎に露光タイミングおよび露光時間を変化させて、撮像する。これにより、対象のレンジ毎にスライス画像が得られ、各スライス画像は対応するレンジに含まれる物体のみを含む。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2009-257981号公報
【文献】国際公開WO2017/110417A1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
1. ゲーティングカメラは、イメージセンサと、イメージセンサの出力画像(センサ画像)を処理する画像処理装置を備える。ここでイメージセンサから画像処理装置の間は、シリアルインタフェースで接続される場合が多く、この間のセンサ画像の伝送速度がボトルネックとなり、1枚のスライス画像の生成に要する時間が長くなり、ゲーティングカメラのフレームレートが制限される。
【0008】
本開示のある態様は係る状況においてなされたものであり、その例示的な目的のひとつは、スライス画像の生成時間を短縮可能なゲーティングカメラの提供にある。
【0009】
2. 本発明者らは、日中の撮影が可能なゲーティングカメラについて検討し、以下の課題を認識するに至った。日中撮影するためには、太陽光の影響を受けにくくするために、使用する赤外光の波長を、長くする必要がある。しかしながら現実的に使用できる波長は1μm~1.3μmであり、この波長帯にも、太陽光のスペクトルは含まれる。
【0010】
したがって、ゲーティングカメラを日中に使用すると、スライス画像には、太陽光の影響で大きなバックグラウンドノイズが含まれることとなり、物体からの反射光すなわち信号成分が埋もれてしまう。
【0011】
本開示のある態様は係る状況においてなされたものであり、その例示的な目的のひとつは、バックグラウンドノイズの影響を除去可能なゲーティングカメラの提供にある。
【0012】
3. ゲーティングカメラのイメージセンサに入射する光は、ゲーティングカメラから放射され、物体に到達したプローブ光が、物体において反射/散乱されて戻ってきた光であるから、ゲーティングカメラと物体の間を1往復することとなる。濃霧や強い雨などの状況では、ゲーティングカメラと物体の間の透過率が低下するため、イメージセンサへの入射光の強度が低下する。したがって視界が悪い状況では、遠いレンジの撮影が難しくなる。
【0013】
本開示のある態様は係る状況においてなされたものであり、その例示的な目的のひとつは、視界の良否に応じて適切に動作可能なゲーティングカメラの提供にある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
1. 本開示のある態様は、視野を奥行き方向について複数のレンジに区切り、複数のレンジに対応する複数のスライス画像を生成するゲーティングカメラに関する。ゲーティングカメラは、プローブ光を照射する照明装置と、露光により生画像を生成し、生画像を構成する複数のラインのうち、物標を含まない無効ラインに関する画像情報を圧縮して得られる圧縮画像を出力するイメージセンサと、照明装置の発光タイミングとイメージセンサの露光のタイミングを制御するカメラコントローラと、イメージセンサから圧縮画像を受信し、スライス画像を復元する画像処理装置と、を備える。
【0015】
2. 本開示のある態様に係るゲーティングカメラは、プローブ光を照射する照明装置と、イメージセンサと、照明装置の発光タイミングとイメージセンサの露光のタイミングを制御し、イメージセンサに、複数のレンジに対応する複数のスライス画像を発生させるカメラコントローラと、イメージセンサから複数のスライス画像を受け、注目画素を選択し、注目画素において物体を含むスライス画像を有効画像とし、有効画像以外のスライス画像の注目画素の画素値にもとづいてノイズレベルを検出し、複数のスライス画像それぞれの注目画素の画素値をノイズレベルにもとづいて補正する画像処理装置と、を備える。
【0016】
本開示のある態様に係るゲーティングカメラは、プローブ光を照射する照明装置と、イメージセンサと、照明装置の発光タイミングとイメージセンサの露光のタイミングを制御し、イメージセンサに、複数のレンジに対応する前記複数のスライス画像を発生させるカメラコントローラと、イメージセンサから複数のスライス画像を受け、注目画素を選択し、全スライス画像の注目画素の画素値にもとづいてノイズレベルを検出し、複数のスライス画像の注目画素をノイズレベルにもとづいて補正する画像処理装置と、を備える。
【0017】
3. 本開示のある態様に係るゲーティングカメラは、プローブ光を照射する照明装置と、イメージセンサと、照明装置の発光タイミングとイメージセンサの露光タイミングを制御し、イメージセンサに、複数のレンジに対応する複数の画像データを生成させるカメラコントローラと、を備える。カメラコントローラは、プローブ光の減衰係数と相関を有する視界情報を撮影パラメータに反映させる。
【発明の効果】
【0018】
本開示のある態様によれば、スライス画像の生成時間を短縮できる。本開示のある態様によれば、バックグラウンドノイズの影響を除去できる。本開示のある態様によれば、視界の良否に応じた動作が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】実施形態1に係るセンシングシステムのブロック図である。
図2】ゲーティングカメラの基本動作を説明する図である。
図3図3(a)、(b)は、ゲーティングカメラにより得られるスライス画像を説明する図である。
図4】ある走行シーンを示す図である。
図5図5(a)~(c)は、図4の走行シーンにおける信号処理を示す図である。
図6】ゲーティングカメラの動作を示すフローチャートである。
図7図7(a)は、圧縮画像IMG_COMPを示す図であり、図7(b)は、ラインデータを示す図である。
図8】変形例1.3に係るゲーティングカメラの処理を説明する図である。
図9】実施形態2.1に係るセンシングシステムのブロック図である。
図10】ゲーティングカメラの基本動作を説明する図である。
図11図11(a)、(b)は、ゲーティングカメラにより得られるスライス画像を説明する図である。
図12】実施形態2.1に係るノイズ除去のフローチャートである。
図13】実施形態2.1に係るノイズ除去を説明する図である。
図14図14(a)、(b)は、実施形態2.1に係る補正処理を説明する図である。
図15図15(a)、(b)は、実施形態2.2に係る補正処理を説明する図である。
図16】実施形態3に係るセンシングシステムのブロック図である。
図17】ゲーティングカメラの動作を説明する図である。
図18図18(a)、(b)は、ゲーティングカメラにより得られる画像を説明する図である。
図19図16のゲーティングカメラにおける第1制御方法を説明する図である。
図20図20(a)、(b)は、図16のゲーティングカメラの第1制御方法の動作を示すタイムチャートである。
図21図21(a)、(b)は、図16のゲーティングカメラにおける第2制御方法を説明する図である。
図22図22(a)、(b)は、図21(a)の制御に対応する複数のレンジを示す図である。
図23図16のゲーティングカメラの第3制御方法に係る動作を説明する図である。
図24図24(a)~(c)は、第3制御方法における複数のレンジを示す図である。
図25】センシングシステムのブロック図である。
図26図26(a)、(b)は、ゲーティングカメラを備える自動車を示す図である。
図27】物体検出システムを備える車両用灯具を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本開示のいくつかの例示的な実施形態の概要を説明する。この概要は、後述する詳細な説明の前置きとして、実施形態の基本的な理解を目的として、1つまたは複数の実施形態のいくつかの概念を簡略化して説明するものであり、発明あるいは開示の広さを限定するものではない。この概要は、考えられるすべての実施形態の包括的な概要ではなく、すべての実施形態の重要な要素を特定することも、一部またはすべての態様の範囲を線引きすることも意図していない。便宜上、「一実施形態」は、本明細書に開示するひとつの実施形態(実施例や変形例)または複数の実施形態(実施例や変形例)を指すものとして用いる場合がある。
【0021】
1. 一実施形態に係るゲーティングカメラは、視野を奥行き方向について複数のレンジに区切り、複数のレンジに対応する複数のスライス画像を生成する。ゲーティングカメラは、プローブ光を照射する照明装置と、露光により生画像を生成し、生画像を構成する複数のラインのうち、物標を含まない無効ラインに関する画像情報を圧縮して得られる圧縮画像を出力するイメージセンサと、照明装置の発光タイミングとイメージセンサの露光のタイミングを制御するカメラコントローラと、イメージセンサから圧縮画像を受信し、スライス画像を復元する画像処理装置と、を備える。
【0022】
イメージセンサにおいて得られる生画像について、ラインごとに、物標を含むか否かを判定し、物標を含まないラインについては、イメージセンサから画像処理装置への伝送量を圧縮することで、伝送時間を短くすることができ、スライス画像の生成時間を短縮できる。
【0023】
一実施形態において、イメージセンサは、それに含まれる全画素の画素値が所定のしきい値より小さいラインを無効ラインとしてもよい。
【0024】
一実施形態において、イメージセンサは、無効ラインでない有効ラインについては、行番号と、値が第1値であるヘッダと、当該有効ラインに含まれる全画素の画素値と、を含むラインデータを伝送し、無効ラインについては、行番号と、値が第2値であるヘッダと、を含むラインデータを伝送してもよい。
【0025】
一実施形態において、画像処理装置は、受信したラインデータのヘッダの値が第2値であるとき、当該ラインの全画素値を0としてもよい。
【0026】
2. 一実施形態に係るゲーティングカメラは、視野を奥行き方向について複数のレンジに区切り、複数のレンジに対応する複数のスライス画像を生成するゲーティングカメラであって、プローブ光を照射する照明装置と、イメージセンサと、照明装置の発光タイミングとイメージセンサの露光のタイミングを制御し、イメージセンサに、複数のレンジに対応する複数のスライス画像を発生させるカメラコントローラと、イメージセンサから複数のスライス画像を受け、注目画素を選択し、注目画素において物体を含むスライス画像を有効画像とし、有効画像以外のスライス画像の注目画素の画素値にもとづいてノイズレベルを検出し、複数のスライス画像それぞれの注目画素の画素値をノイズレベルにもとづいて補正する画像処理装置と、を備える。
【0027】
理想的なゲーティングカメラでは、ひとつの物体は、複数のスライス画像のうち1枚だけに写る。したがって、複数のスライス画像の同じ画素に注目すると、1枚のみ、物体からの反射に応じた画素値を有し、その他のスライス画像の画素値は、ノイズとみなすことができる。本実施形態によれば、ノイズレベルを測定するための撮影を行わずに、通常の撮影を行いながら、ノイズレベルを取得することができる。
【0028】
一実施形態において、ノイズレベルは、有効画像以外のスライス画像の注目画素の画素値の平均値であってもよい。
【0029】
一実施形態において、画像処理装置は、各画素について、あるスライス画像の注目画素の画素値が所定のしきい値を超えるとき、有効画像としてもよい。
【0030】
一実施形態において、画像処理装置は、各画素について、最も画素値が大きいスライス画像を、物体を含むスライス画像としてもよい。
【0031】
一実施形態に係るゲーティングカメラは、プローブ光を照射する照明装置と、イメージセンサと、照明装置の発光タイミングとイメージセンサの露光のタイミングを制御し、イメージセンサに、複数のレンジに対応する前記複数のスライス画像を発生させるカメラコントローラと、イメージセンサから複数のスライス画像を受け、注目画素を選択し、全スライス画像の注目画素の画素値にもとづいてノイズレベルを検出し、複数のスライス画像の注目画素をノイズレベルにもとづいて補正する画像処理装置と、を備える。
【0032】
レンジの数が多い、言い換えるとスライス画像の枚数が多い撮影では、有効画像の影響が小さくなるため、全スライス画像の画素値をノイズとして扱うことで、ノイズレベルの検出処理を簡素化できる。
【0033】
一実施形態において、ノイズレベルは、全スライス画像の注目画素の画素値の平均値であってもよい。
【0034】
一実施形態に係るゲーティングカメラは、プローブ光を照射する照明装置と、イメージセンサと、照明装置の発光タイミングとイメージセンサの露光タイミングを制御し、イメージセンサに、複数のレンジに対応する複数の画像データを生成させるカメラコントローラと、を備える。カメラコントローラは、プローブ光の減衰係数と相関を有する視界情報を撮影パラメータに反映させる。
【0035】
プローブ光の減衰係数に応じて、撮影パラメータを動的、適応的に制御することにより、視界の良否に応じた動作が可能となる。
【0036】
一実施形態において、カメラコントローラは、プローブ光の減衰係数が大きいほど、1枚のスライス画像を生成するための露光回数を増加させてもよい。プローブ光の減衰係数が大きい状況で、露光回数を増やすことで、物体からの反射/散乱光を多く積算することができ、スライス画像の画質を改善できる。
【0037】
一実施形態において、カメラコントローラは、レンジの番号と露光回数の関係を複数個、保持しており、視界情報に応じたひとつを選択してもよい。
【0038】
減衰係数が大きい場合には、遠距離の撮影を諦めることと引き換えに、奥行き方向の分解能を高めてもよい。
【0039】
一実施形態において、カメラコントローラは、プローブ光の減衰係数が大きいほど、測定対象とするレンジの個数を奥側から順に減らしてもよい。減衰係数が大きい場合には、遠距離の撮影を諦め、近距離を集中的にセンシングすることで、近いレンジのスライス画像のフレームレートを高めることができる。
【0040】
以下、好適な実施形態について、図面を参照しながら説明する。各図面に示される同一または同等の構成要素、部材、処理には、同一の符号を付するものとし、適宜重複した説明は省略する。また、実施の形態は、開示および発明を限定するものではなく例示であって、実施の形態に記述されるすべての特徴やその組み合わせは、必ずしも開示および発明の本質的なものであるとは限らない。
【0041】
(実施形態1)
図1は、実施形態1に係るセンシングシステム10のブロック図である。このセンシングシステム10は、自動車やバイクなどの車両に搭載され、車両の周囲に存在する物体OBJを検出する。
【0042】
センシングシステム10は、主としてゲーティングカメラ20を備える。ゲーティングカメラ20は、照明装置22、イメージセンサ24、カメラコントローラ26、画像処理装置28を含む。ゲーティングカメラ20による撮像は、視野を奥行き方向について複数N個(N≧2)のレンジRNG~RNGに区切って行われる。隣接するレンジ同士は、それらの境界において奥行き方向にオーバーラップしてもよい。
【0043】
照明装置22は、カメラコントローラ26から与えられる発光タイミング信号S1と同期して、プローブ光L1を車両前方に照射する。プローブ光L1は赤外光であることが好ましいが、その限りでなく、所定の波長を有する可視光や紫外光であってもよい。
【0044】
イメージセンサ24は、複数の画素を含み、カメラコントローラ26から与えられる露光タイミング信号S2と同期した露光制御が可能であり、複数の画素からなる生画像(RAW画像)を生成する。イメージセンサ24は、プローブ光L1と同じ波長に感度を有しており、物体OBJが反射した反射光(戻り光)L2を撮影する。i番目のレンジRNGに関してイメージセンサ24が生成するスライス画像IMGは、必要に応じて生画像あるいは一次画像と称して、ゲーティングカメラ20の最終的な出力であるスライス画像IMGsと区別する。
【0045】
カメラコントローラ26は、照明装置22によるプローブ光L1の照射タイミング(発光タイミング)と、イメージセンサ24による露光のタイミングを制御する。カメラコントローラ26は、CPU(Central Processing Unit)やMPU(Micro Processing Unit)、マイコンなどのプロセッサ(ハードウェア)と、プロセッサ(ハードウェア)が実行するソフトウェアプログラムの組み合わせで実装することができる。
【0046】
イメージセンサ24と画像処理装置28は、シリアルインタフェース30を介して接続されている。ここでイメージセンサ24において生成された生画像IMG_RAWの全画素を、一次画像IMGとして画像処理装置28に伝送すると、伝送時間が長くなり、センシング時間が長くなってしまう。
【0047】
そこで本実施形態では、イメージセンサ24は、生画像IMG_RAWから、無駄なラインを除去することにより得られる圧縮画像IMG_COMPを一次画像IMGとして画像処理装置28に送信する。
【0048】
具体的にはイメージセンサ24は、露光の結果得られた生画像IMG_RAWを構成する複数のラインの中から、物標すなわち検出対象の被写体を含まない無効ラインを検出する。そして生画像IMG_RAWから、無効ラインに関する画像情報を圧縮して、圧縮画像IMG_COMPを生成する。
【0049】
画像処理装置28は、イメージセンサ24から圧縮画像IMG_COMPを一次画像IMGとして受信する。そして圧縮画像IMG_COMPから、スライス画像IMGsを復元する。
【0050】
以上がゲーティングカメラ20の構成である。続いてその動作を説明する。
【0051】
図2は、ゲーティングカメラ20の基本動作を説明する図である。図2にはi番目のレンジRNGを興味レンジ(ROI:Range Of Interest)としてセンシングするときの様子が示される。照明装置22は、発光タイミング信号S1と同期して、時刻t~tの間の発光期間τの間、発光する。最上段には、横軸に時間、縦軸に距離をとった光線のダイアグラムが示される。ゲーティングカメラ20から、レンジRNGの手前の境界までの距離をdMINi、レンジRNGの奥側の境界までの距離をdMAXiとする。
【0052】
ある時刻に照明装置22を出発した光が、距離dMINiに到達してその反射光がイメージセンサ24に戻ってくるまでのラウンドトリップ時間TMINiは、
MINi=2×dMINi/c
である。cは光速である。
【0053】
同様に、ある時刻に照明装置22を出発した光が、距離dMAXiに到達してその反射光がイメージセンサ24に戻ってくるまでのラウンドトリップ時間TMAXiは、
MAXi=2×dMAXi/c
である。
【0054】
レンジRNGに含まれる物体OBJのみを撮影したいとき、カメラコントローラ26は、時刻t=t+TMINiに露光を開始し、時刻t=t+TMAXiに露光を終了するように、露光タイミング信号S2を生成する。これが1回の露光動作である。
【0055】
i番目のレンジRNGを撮影する際に、発光および露光を複数セット、行ってもよい。この場合、カメラコントローラ26は、所定の周期τで、上述の露光動作を複数回にわたり繰り返せばよい。
【0056】
図3(a)、(b)は、ゲーティングカメラ20により得られるスライス画像を説明する図である。図3(a)の例では、レンジRNGに物体(歩行者)OBJが存在し、レンジRNGに物体(車両)OBJが存在している。図3(b)には、図3(a)の状況で得られる複数のスライス画像IMG~IMGが示される。スライス画像IMGを撮影するとき、イメージセンサはレンジRNGからの反射光のみにより露光されるため、スライス画像IMGにはいかなる物体像も写らない。
【0057】
スライス画像IMGを撮影するとき、イメージセンサはレンジRNGからの反射光のみにより露光されるため、スライス画像IMGには、物体像OBJのみが写る。同様にスライス画像IMGを撮影するとき、イメージセンサはレンジRNGからの反射光のみにより露光されるため、スライス画像IMGには、物体像OBJのみが写る。このようにゲーティングカメラ20によれば、レンジ毎に物体を分離して撮影することができる。
【0058】
続いて、図4および図5(a)~(c)を参照して、図1のゲーティングカメラ20における画像圧縮および伝送を説明する。図4は、ある走行シーンを示す図である。RNGがセンシング対象のレンジ(興味レンジ)である。図5(a)~(c)は、図4の走行シーンにおける信号処理を示す図である。図5(a)には、図4の走行シーンにおいて得られる生画像IMG_RAWが示される。この生画像IMG_RAWには、レンジRNGに含まれる物標が写っている。この例では、物標は生画像IMG_RAWの中央の範囲Yに存在している。上方の範囲Yは空であり、いかなる物標も含まれない。
【0059】
またこの例では、生画像IMG_RAWの下側の範囲Yは、ひとつ前のレンジRNGi-1の地面に相当する部分であり、この範囲Yにも、物標は含まれない。
【0060】
イメージセンサ24は、範囲YおよびYに含まれるラインを無効ラインと判定する。たとえばイメージセンサ24は、生画像IMG_RAWのラインを順にスキャンしていき、各ラインについて、全画素が所定のしきい値より小さいとき、当該ラインを無効ラインとする。
【0061】
無効ラインと有効ラインの判定は、センシング周期ごとに行ってもよい。1回のセンシング周期は、複数のレンジRNG~RNGの撮影全体の周期を意味する。
【0062】
あるいは複数回のセンシング周期に1回の割合で、無効ラインと有効ラインの判定を行ってもよい。この場合、1回、無効ラインと判定されたラインについては、次の判定結果が得られるまでは無効ラインとして扱われる。
【0063】
図5(b)は、図5(a)の生画像IMG_RAWから得られる圧縮画像IMG_COMPを示す。圧縮画像IMG_COMPは、生画像IMG_RAWの範囲YおよびYに含まれるラインに関して画像情報を含まないように圧縮したものである。
【0064】
図5(c)は、図5(b)の圧縮画像IMG_COMPを復元して得られる最終的なスライス画像IMGsを示す。圧縮画像IMG_COMPを受信した画像処理装置28は、画像情報を含まない無効ラインについては、所定値(たとえば値0)の画素で置き換えることにより、スライス画像IMGsを再生する。
【0065】
図6は、ゲーティングカメラ20の動作を示すフローチャートである。はじめに変数iが1に初期化される(S100)。変数iは、興味レンジを示す変数である。たとえばi=1は、1番目のレンジRNGが測定対象であることを示す。
【0066】
続いて変数iに関して、ループS102が実行される。はじめに、i番目のレンジRNGをターゲットとして、照明装置22による発光およびイメージセンサ24による露光が行われ、生画像IMG_RAWを生成する(S104)。
【0067】
続いて生画像IMG_RAWに関して、それに含まれる各ラインの有効、無効が判定される。はじめに変数jが1に初期化される(S106)。変数jは、生画像IMG_RAWの判定対象の行番号を示す。そして変数jに関してループS108が実行される。
【0068】
生画像IMG_RAWのj番目のラインの全画素の画素値がしきい値より小さいか否かを判定する(S110)。そして、全画素値がしきい値より小さい場合(S110のY)、j番目のラインは無効ラインと判定される(S112)。そうでない場合(S110のN)、j番目のラインは有効ラインと判定される。そして、変数jがインクリメントされる。変数jが、生画像IMG_RAWのライン数YMAX(垂直方向解像度)より小さい間、ループS108が繰り返される。変数jが、生画像IMG_RAWのライン数YMAXを超えると、ループS108を抜ける。
【0069】
ループS108を抜けると、変数iがインクリメントされ(S118)、次のレンジが測定対象となる。変数iが、レンジの最大数Nより小さい間、ループS02が繰り返される。変数iが最大数Nを超え、すべてのレンジRNG~RNGの撮影が終了すると、処理を終了する。
【0070】
続いて画像の圧縮方法について説明する。図7(a)は、圧縮画像IMG_COMPを示す図であり、図7(b)は、ラインデータを示す図である。圧縮画像IMG_COMPは、複数のラインデータLD~LDVMAXを含む。ラインデータLDは、それが有効ラインであるか無効ラインであるかによって、異なる情報を含む。この例では、1行目と2行目が無効ライン、残りが有効ラインであるとする。有効ラインのラインデータ50は、行番号52、ヘッダ54およびそのラインの全画素の画素値56を含む。無効ラインのラインデータ50’は、行番号52、ヘッダ54を含み、画素値56は含まない。ヘッダ54は、有効ラインか無効ラインかを示す識別子を含んでおり、たとえば有効ラインのヘッダ54の値は1、無効ラインのヘッダ54は値0を格納する。
【0071】
図7の圧縮画像IMG_COMPでは、無効ラインについては、画像情報が完全に除去される。したがって、無効ラインの伝送に要する時間は、行番号52とヘッダ54の伝送時間となり、大幅に短縮することができる。
【0072】
図7の圧縮画像IMG_COMPは、画像処理装置28において以下のように復元することができる。画像処理装置28は、ラインデータ50のヘッダ54を参照する。そして値が1であるとき、それに続く画素値56を、スライス画像IMGの対応するラインの画素値とする。ヘッダ54の値が0であるとき、スライス画像IMGの対応するラインの画素値に0で埋める。
【0073】
以上、本発明について、実施形態をもとに説明した。この実施形態は例示であり、それらの各構成要素や各処理プロセスの組み合わせにいろいろな変形例が可能なこと、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは当業者に理解されるところである。以下、こうした変形例について説明する。
【0074】
(変形例1.1)
圧縮画像IMG_COMPは、有効ラインのラインデータのみを含んでもよい。この場合、有効ラインは、行番号とそれに続く全画素の画素値を含む。画像処理装置28は、受信したラインデータに含まれない行番号については0で埋める。
【0075】
(変形例1.2)
これまでの例では、無効ラインについては画素情報を伝送しないこととしたが、画像情報を伝送してもよい。たとえば、無効ラインについては、画素を間引いて伝送してもよい。水平方向に隣接するM画素に1画素の割合で伝送することとすれば、伝送時間を1/M倍に短縮できる。画像処理装置28は、隣接するM画素については、同一画素値としてスライス画像IMGを復元すればよい。
【0076】
(変形例1.3)
実施形態1では、ラインごとに、物標を含むか否かを判定することとしたが、その限りでなく、レンジ毎に、生画像IMG_RAWの所定のラインを予め無効ラインとして定めておいてもよい。
【0077】
図8は、変形例1.3に係るゲーティングカメラの処理を説明する図である。図中、一点鎖線80は、想定される物標の最も高い位置を示す。レンジにかかわらず、イメージセンサ24の垂直方向の画角θが一定であるとする。近いレンジRNG,RNGで撮影する場合には、一点鎖線80より下の範囲のみが撮影される。一方、遠いレンジRNGについては、この一点鎖線より高い範囲82が撮影範囲(イメージセンサの画角θ)に含まれるが、この範囲82にセンシング対象の物標が含まれる可能性は低いと言える。そこで、生画像IMG_RAWに関して、この一点鎖線80に対応するラインより上側の範囲82については、無効ラインとして定めることができる。
【0078】
(実施形態2.1)
図9は、実施形態1に係るセンシングシステム10のブロック図である。このセンシングシステム10は、自動車やバイクなどの車両に搭載され、車両の周囲に存在する物体OBJを検出する。
【0079】
センシングシステム10は、主としてゲーティングカメラ20を備える。ゲーティングカメラ20は、照明装置22、イメージセンサ24、カメラコントローラ26、画像処理装置28を含む。ゲーティングカメラ20による撮像は、視野を奥行き方向について複数N個(N≧2)のレンジRNG~RNGに区切って行われる。隣接するレンジ同士は、それらの境界において奥行き方向にオーバーラップしてもよい。
【0080】
照明装置22は、カメラコントローラ26から与えられる発光タイミング信号S1と同期して、プローブ光L1を車両前方に照射する。プローブ光L1は赤外光であることが好ましいが、その限りでなく、所定の波長を有する可視光や紫外光であってもよい。本実施形態に係るゲーティングカメラ20は、夜間のみでなく日中もセンシング可能であり、したがって0.9μmより長い波長が選択される。
【0081】
イメージセンサ24は、複数の画素を含み、カメラコントローラ26から与えられる露光タイミング信号S2と同期した露光制御が可能であり、複数の画素からなるスライス画像IMGを生成する。イメージセンサ24は、プローブ光L1と同じ波長に感度を有しており、物体OBJが反射した反射光(戻り光)L2を撮影する。i番目のレンジRNGに関してイメージセンサ24が生成するスライス画像IMGは、必要に応じて生画像あるいは一次画像と称して、ゲーティングカメラ20の最終的な出力であるスライス画像IMGsと区別する。
【0082】
カメラコントローラ26は、照明装置22によるプローブ光L1の照射タイミング(発光タイミング)と、イメージセンサ24による露光のタイミングを制御し、イメージセンサ24に、複数のレンジRNG~RNGに対応する複数のスライス画像IMG~IMGを発生させる。カメラコントローラ26は、CPU(Central Processing Unit)やMPU(Micro Processing Unit)、マイコンなどのプロセッサ(ハードウェア)と、プロセッサ(ハードウェア)が実行するソフトウェアプログラムの組み合わせで実装することができる。
【0083】
イメージセンサ24と画像処理装置28は、シリアルインタフェース30を介して接続されており、複数のレンジRNG~RNGにおいて得られた複数のスライス画像(一次画像)IMG~IMGは画像処理装置28に伝送される。一次画像IMGは、生画像IMG_RAWそのものであってもよいし、生画像IMG_RAWを加工した画像であってもよい。
【0084】
以上がゲーティングカメラ20の基本構成である。続いてその動作を説明する。
【0085】
図10は、ゲーティングカメラ20の基本動作を説明する図である。図10にはi番目のレンジRNGを興味レンジ(ROI:Range Of Interest)としてセンシングするときの様子が示される。照明装置22は、発光タイミング信号S1と同期して、時刻t~tの間の発光期間τの間、発光する。最上段には、横軸に時間、縦軸に距離をとった光線のダイアグラムが示される。ゲーティングカメラ20から、レンジRNGの手前の境界までの距離をdMINi、レンジRNGの奥側の境界までの距離をdMAXiとする。
【0086】
ある時刻に照明装置22を出発した光が、距離dMINiに到達してその反射光がイメージセンサ24に戻ってくるまでのラウンドトリップ時間TMINiは、
MINi=2×dMINi/c
である。cは光速である。
【0087】
同様に、ある時刻に照明装置22を出発した光が、距離dMAXiに到達してその反射光がイメージセンサ24に戻ってくるまでのラウンドトリップ時間TMAXiは、
MAXi=2×dMAXi/c
である。
【0088】
レンジRNGに含まれる物体OBJのみを撮影したいとき、カメラコントローラ26は、時刻t=t+TMINiに露光を開始し、時刻t=t+TMAXiに露光を終了するように、露光タイミング信号S2を生成する。これが1回の露光動作である。
【0089】
i番目のレンジRNGを撮影する際に、発光および露光を複数セット、行ってもよい。この場合、カメラコントローラ26は、所定の周期τで、上述の露光動作を複数回にわたり繰り返せばよい。
【0090】
図11(a)、(b)は、ゲーティングカメラ20により得られるスライス画像を説明する図である。図11(a)の例では、レンジRNGに物体(歩行者)OBJが存在し、レンジRNGに物体(車両)OBJが存在している。図11(b)には、図11(a)の状況で得られる複数のスライス画像IMG~IMGが示される。スライス画像IMGを撮影するとき、イメージセンサはレンジRNGからの反射光のみにより露光されるため、スライス画像IMGにはいかなる物体像も写らない。
【0091】
スライス画像IMGを撮影するとき、イメージセンサはレンジRNGからの反射光のみにより露光されるため、スライス画像IMGには、物体像OBJのみが写る。同様にスライス画像IMGを撮影するとき、イメージセンサはレンジRNGからの反射光のみにより露光されるため、スライス画像IMGには、物体像OBJのみが写る。このようにゲーティングカメラ20によれば、レンジ毎に物体を分離して撮影することができる。
【0092】
図9に戻る。上述のように、ゲーティングカメラ20は日中もセンシングを行うことから、イメージセンサ24には、太陽光が入射する。太陽光は、ゲーティングカメラ20の使用波長にスペクトル成分を含むため、バックグラウンドノイズとなり、画像のS/N比を低下させる。そこで画像処理装置28は、複数のスライス画像IMG~IMGからバックグラウンドノイズを除去する機能を備える。以下、ノイズ除去機能について説明する。
【0093】
画像処理装置28は、イメージセンサ24から複数のスライス画像IMG~IMGを受信する。i番目(1≦i≦N)のスライス画像IMGのj番目の画素を、IMG(j)と表記する。画像処理装置28は、複数のスライス画像IMG~IMGについて、1画素ずつ注目画素として選択し、注目画素ごとにノイズレベルを検出する。
【0094】
画像処理装置28は、複数のスライス画像IMG~IMGのj番目の画素を注目画素とする。そして複数のスライス画像IMG~IMGのうち、注目画素の位置に物体を含むスライス画像を、有効画像とする。たとえば画像処理装置28は、複数の画素IMG(j)~IMG(j)のうち、最大の画素値を含むスライス画像を、有効画像とする。IMG(j)の値が最大であるとき、M番目のスライス画像IMGが有効画像とされる。
【0095】
そして、画像処理装置28は、有効画像IMG以外の複数のスライス画像(非有効画像という)の画素IMG(j)~IMGM-1(j),IMGM+1(j)~IMG(j)の値にもとづいてノイズレベルN(j)を検出する。そして複数のスライス画像IMG~IMGの画素IMG(j)~IMG(j)の画素値を、ノイズレベルN(j)にもとづいて補正する。画像処理装置28は、補正後のスライス画像を、最終的なスライス画像IMGsとして出力する。
【0096】
ここでは説明の容易化のため、すべてのレンジRNG~RNGの奥行きが等しい、言い換えると、すべてのレンジにおける露光時間が等しいものと仮定する。この場合、ノイズレベルN(j)は、非有効画像IMG(k=1~N、ただしk≠M)の注目画素の画素値の単純平均を採ればよく、ノイズレベルN(j)は式(1)で表される。
N(j)=Σ k≠MIMG(j)/(N-1) …(1)
【0097】
また補正は、スライス画像IMG(j)からノイズレベルN(j)を減算すればよい。補正後のスライス画像IMG’(j)の画素値は、式(2)で表される。
IMG’(j)=IMG(j)-N(j) …(2)
画像処理装置28は、全画素について同じ処理を繰り返す。ただし、補正後の画素値は0を下回らないよう処理される。
【0098】
図12は、ノイズ除去のフローチャートである。iはスライス画像の番号を示す変数であり、jは注目画素の位置を示す変数である。
【0099】
はじめにjが初期化される(S100)。そして画素ごとにループS102を繰り返す。
【0100】
複数のスライス画像IMG~IMGそれぞれのj番目の注目画素IMG(j)~IMG(j)を参照し、それらの値にもとづいて、有効画像IMGを検出する(S104)。そして、有効画像IMG以外の画像IMG~IMGM-1,IMGM+1~IMGのj番目の画素IMG(j)~IMGM-1(j),IMGM+1(j)~IMG(j)にもとづいて、ノイズレベルN(j)を算出する(S106)。
【0101】
続いて、変数iが初期化され(S108)、ループS110が実行される。具体的には、i番目のスライス画像IMGの対応する画素IMG(j)からノイズレベルN(j)が減算される(S112)。そして、変数iがインクリメントされる(S114)。i≦Nであれば、処理S112に戻り、i>Nであれば、ループS110を抜ける。
【0102】
続いて変数jがインクリメントされる(S116)。j≦X×Yであれば、処理S102に戻り、次の画素について同様の処理を繰り返す。j>X×Yであれば、ループS102を抜け、処理を終了する。X×Yは、スライス画像の全画素数である。
【0103】
図13は、ノイズ除去を説明する図である。図13には、1回の撮影で得られるN枚のスライス画像IMG~IMGが示され、各スライス画像は、X×Y画素を含み、j番目の注目画素にハッチングを付している。
【0104】
図14(a)、(b)は、N枚のスライス画像IMG~IMGの注目画素の補正前および補正後の画素値を示す図である。ここではN=6であり、M=4が有効画像である。
【0105】
理想的なゲーティングカメラでは、ひとつの物体は、複数のスライス画像IMG~IMGのうち1枚だけに写る。したがって、複数のスライス画像IMG~IMGの同じ画素に注目すると、1枚のみ(ここではM=4枚目のスライス画像IMG)、物体からの反射に応じた大きな画素値を有し、その他の非有効画像IMG,IMG,IMG,IMG,IMGの画素値は、バックグラウンドノイズとみなすことができる。したがって、非有効画像IMG,IMG,IMG,IMG,IMGの注目画素IMG(j),IMG(j),IMG(j),IMG(j),IMG(j)の画素値を処理することにより、ノイズレベルN(j)を取得できる。
【0106】
そして、各スライス画像IMG~IMGの注目画素の画素値から、ノイズレベルN(j)を減ずることにより、補正後の画素値を得ることができる。
【0107】
以上がゲーティングカメラ20におけるノイズ除去である。本実施形態に係るゲーティングカメラ20の利点は、比較技術との対比によって明確となる。
【0108】
比較技術では、N枚のスライス画像の撮影とは別に、照明装置22を発光させずに、イメージセンサ24において露光を行い、バックグラウンドノイズを撮影する。比較技術では、1回の撮影サイクルあたり、N+1回の撮影が必要となり、撮影周期が長くなる。
【0109】
これに対して本実施形態によれば、ノイズレベルを測定するための撮影を行わずに、通常のN回の撮影と並行して、ノイズレベルを取得することができ、したがって、撮影周期が長くなるのを防止できる。
【0110】
(実施形態2.2)
実施形態2.1では、注目画素ごとに、複数のスライス画像IMG~IMGから有効画像を検出し、それ以外の非有効画像の注目画素の画素値にもとづいてノイズレベルを検出した。実施形態2.2では、有効画像の検出は行わずに、ノイズレベルを検出する。
【0111】
実施形態2.2に係るゲーティングカメラ20の構成は、図9のブロック図と同様であり、画像処理装置28の処理が、実施形態2.1と異なっている。以下、実施形態2.2におけるノイズ除去処理を説明する。
【0112】
画像処理装置28は、全スライス画像IMG~IMGの注目画素の画素値にもとづいてノイズレベルN(j)を検出する。そして複数のスライス画像それぞれの注目画素の画素値を、ノイズレベルN(j)にもとづいて補正する。
【0113】
すべてのレンジの露光時間が等しい場合、ノイズレベルN(j)は式(3)で算出してもよい。
N(j)=Σ k=1:NIMG(j)/N …(3)
【0114】
また補正は、スライス画像IMG(j)からノイズレベルN(j)を減算すればよい。補正後のスライス画像IMG’(j)の画素値は、式(4)で表される。これは式(2)と同一である。
IMG’(j)=IMG(j)-N(j) …(4)
【0115】
図15(a)、(b)は、実施形態2.2に係る補正処理を説明する図である。図15(a)は、N枚のスライス画像IMG~IMGの注目画素の補正前の画素値を、図15(b)は、補正後の画素値を示す図である。ここではN=8であるとする。
【0116】
以上が実施形態2.2に係る補正処理である。実施形態2.2の補正処理によれば、実施形態2.1と同様に、ノイズレベルを検出するためだけの露光が不要であるため、撮影周期を短くできる。
【0117】
また実施形態2.2では、有効画像を検出する必要がないため、実施形態2.1に比べて、画像処理装置28の演算負荷を減らすことができる。一方で、実施形態2.2では、物体の反射光もノイズ成分として扱っているため、実施形態2.1に比べると、ノイズレベルの検出精度は劣ることとなるが、レンジの数Nが大きい場合には、必要十分な精度でノイズレベルを検出できる。
【0118】
実施形態2.1,2.2に関連する変形例を説明する。
【0119】
(変形例2.1)
実施形態2.1に関する変形例2.1を説明する。上の説明では、注目画素において、最大値を有するスライス画像を有効画像としたが、その限りでない。たとえば所定のしきい値を定めておき、注目画素の画素値がしきい値を超えるスライス画像を、有効画像として扱ってもよい。この場合、有効画像は複数、存在しても構わない。実施形態2.1で説明した手法は、N枚のスライス画像IMG~IMGの撮影が完了しないと、有効画像を決定できないが、変形例2.1は、N枚のスライス画像IMG~IMGの撮影完了を待たずに、ノイズレベルの計算処理を実行できるという利点がある。
【0120】
(変形例2.2)
実施形態2.1では、注目画素のノイズレベルを算出する際に、単純平均を用いたが、算出手法はそれに限定されない。単純平均は、すべてのレンジの奥行き方向の長さが等しい場合、言い換えると露光時間が等しい場合には有効であるが、レンジごとに露光時間が異なる場合には、露光時間に応じた係数で重み付けした加重平均値を取ればよい。
【0121】
i番目のレンジにおける露光時間をTとする。そして、実施形態2.1でのノイズレベルは、式(5)にもとづいて算出してもよい。このノイズレベルは単位露光時間のノイズ量を表す。
N(j)={Σ k≠MIMG(j)/T}/(N-1) …(5)
【0122】
また、補正処理は式(6)にもとづいて行ってもよい。
IMG’(j)=IMG(j)-N(j)・T …(6)
【0123】
(変形例2.3)
実施形態2.2において、露光時間Tがレンジ毎に異なる場合、ノイズレベルN(j)は式(7)にもとづいて算出してもよい。
N(j)={Σ k=1:NIMG(j)/T}/N …(7)
【0124】
また、補正処理は式(8)にもとづいて行ってもよい。
IMG’(j)=IMG(j)-N(j)・T …(8)
【0125】
(変形例2.4)
変形例2.2や2.3では、有効画像IMGを先に検出した後に、重み付けによる補正処理を行っているが、その限りでない。先に、スライス画像IMG~IMGの全画素を、式(9)のように、露光時間Tに応じた係数A(∝T -1)で補正してもよい。
IMG”=A×IMG …(9)
【0126】
実施形態2.1の場合、補正後のスライス画像IMG”~IMG”について、注目画素ごとに有効画像を検出し、式(1’)にもとづいてノイズレベルを算出してもよい。
N(j)=Σ k≠MIMG”(j)/(N-1) …(1’)
実施形態2.2の場合、式(3’)にもとづいてノイズレベルを算出してもよい。
N(j)=Σ k=1:NIMG”(j)/N …(3’)
【0127】
そして、式(10)にもとづいて、補正処理を行ってもよい。
IMG’(j)=IMG(j)”-N(j) …(10)
【0128】
(変形例2.5)
理想的には、あるレンジに含まれる物体は、それに対応するスライス画像にのみ写るが、現実的には、そのレンジと隣接するレンジのスライス画像にも物体が写り込む場合がある。そこで、注目画素において、最大の画素値を有するスライス画像に加えて、それと隣接する1枚(あるいは2枚)のスライス画像を、有効画像としてもよい。この場合、それら以外の(N-2)枚のスライス画像(もしくはN-3枚のスライス画像)が、非有効画像として処理される。
【0129】
(変形例2.6)
実施形態2.1では、有効画像以外のN-1枚の非有効画像の有効画素の画素値にもとづいてノイズレベルを算出したがその限りでない。たとえば、N-1枚の非有効画像の有効画素の画素値のうち、最大値と最小値を除外し、残りのN-3個の画素値にもとづいて、ノイズレベルを計算してもよい。
【0130】
実施形態2.2に関しても同様であり、全スライス画像の有効画素の画素値のうち、最大値と最小値を除外し、残りの(N-2)個の画素値にもとづいて、ノイズレベルを計算してもよい。
【0131】
(変形例2.7)
さらに言えば、ノイズレベルの算出方法は、平均処理に限定されない。たとえば実施形態2.1では、非有効画像の注目画素の画素値の中央値をノイズレベルとしてもよい。実施形態2.2では、全スライス画像の注目画素の画素値の中央値をノイズレベルとしてもよい。
【0132】
(変形例2.8)
上述の説明では、全画素を順に注目画素として、ノイズレベルを検出したがその限りでなく、スライス画像を複数のエリアに分割し、エリアごとに1個の注目画素を選択して、ノイズレベルを検出し、同じエリア内の画素については、共通のノイズレベルを用いて補正してもよい。
【0133】
(変形例2.9)
上述したノイズ除去処理は、太陽光の影響が無視できない状況のみで行い、太陽光の影響がない夜間や、曇天時には、ノイズ除去処理を省略してもよい。
【0134】
(変形例2.10)
上の説明では、日中および夜間の利用を想定したゲーティングカメラ20について説明したが、本発明に係るノイズ除去処理の適用はそれに限定されず、夜間のみ使用されるゲーティングカメラ20にも適用可能である。
【0135】
(実施形態3)
図16は、実施形態3に係るセンシングシステム10のブロック図である。このセンシングシステム10は、自動車やバイクなどの車両に搭載され、車両の周囲に存在する物体OBJを検出する。
【0136】
センシングシステム10は、主としてゲーティングカメラ20を備える。ゲーティングカメラ20は、照明装置22、イメージセンサ24、カメラコントローラ26、画像処理装置28を含む。ゲーティングカメラ20による撮像は、視野を奥行き方向について複数N個(N≧2)のレンジRNG~RNGに区切って行われる。隣接するレンジ同士は、それらの境界において奥行き方向にオーバーラップしてもよい。
【0137】
照明装置(投光器)22は、カメラコントローラ26から与えられる発光タイミング信号S1と同期して、プローブ光L1を車両前方に照射する。プローブ光L1は赤外光であることが好ましいが、その限りでなく、所定の波長を有する可視光であってもよい。照明装置22は、たとえばレーザダイオード(LD)やLEDを用いることができる。
【0138】
イメージセンサ24は、カメラコントローラ26から与えられる露光タイミング信号S2と同期した露光制御が可能であり、スライス画像IMGを生成可能に構成される。イメージセンサ24は、プローブ光L1と同じ波長に感度を有しており、物体OBJが反射した反射光(戻り光)L2を撮影する。
【0139】
カメラコントローラ26は、レンジRNGごとに、発光タイミング信号S1と露光タイミング信号S2を変化させて、照明装置22による発光と、イメージセンサ24の露光の時間差を変化させる。発光タイミング信号S1は、発光開始のタイミングと発光時間を規定する。露光タイミング信号S2は、露光開始のタイミング(発光との時間差)と、露光時間を規定する。
【0140】
ゲーティングカメラ20は、複数のレンジRNG~RNGに対応する複数のスライス画像IMG~IMGを生成する。i番目のスライス画像IMGには、対応するレンジRNGに含まれる物体のみが写ることとなる。
【0141】
画像処理装置28は、CPU(Central Processing Unit)やMPU(Micro Processing Unit)、マイコン、GPU(Graphics Processing Unit)などのプロセッサ(ハードウェア)と、プロセッサ(ハードウェア)が実行するソフトウェアプログラムの組み合わせで実装することができる。画像処理装置28はハードウェアのみで構成してもよい。画像処理装置28は、イメージセンサ24の生成する画像を処理し、最終的なスライス画像を出力する。なお、イメージセンサ24の出力をそのままスライス画像として用いる場合、画像処理装置28は省略することができる。
【0142】
図17は、ゲーティングカメラ20の動作を説明する図である。図17にはi番目のレンジRNGを測定するときの様子が示される。照明装置22は、発光タイミング信号S1と同期して、時刻t~tの間の発光期間τの間、発光する。最上段には、横軸に時間、縦軸に距離をとった光線のダイアグラムが示される。ゲーティングカメラ20から、レンジRNGの手前の境界までの距離をdMINi、レンジRNGの奥側の境界までの距離をdMAXiとする。
【0143】
ある時刻に照明装置22を出発した光が、距離dMINiに到達してその反射光がイメージセンサ24に戻ってくるまでのラウンドトリップ時間TMINiは、
MINi=2×dMINi/c
である。cは光速である。
【0144】
同様に、ある時刻に照明装置22を出発した光が、距離dMAXiに到達してその反射光がイメージセンサ24に戻ってくるまでのラウンドトリップ時間TMAXiは、
MAXi=2×dMAXi/c
である。
【0145】
レンジRNGに含まれる物体OBJのみを撮影したいとき、カメラコントローラ26は、時刻t=t+TMINiに露光を開始し、時刻t=t+TMAXiに露光を終了するように、露光タイミング信号S2を生成する。これが1回の露光動作である。
【0146】
i番目のレンジRNGを撮影する際に、複数回の露光を行ってもよい。この場合、カメラコントローラ26は、所定の周期τで、上述の照射と露光の動作のセットを複数回にわたり繰り返せばよい。イメージセンサ24は、複数回の露光によって積算されたスライス画像を出力する。
【0147】
本実施形態において、露出(スライス画像内の物体像の輝度値)がレンジごとにばらつかないように、ゲーティングカメラ20は、レンジ毎に、シャッタースピード(露光時間)、露光回数、感度、プローブ光の照射強度など(撮影パラメータ)が最適化されている。
【0148】
図18(a)、(b)は、ゲーティングカメラ20により得られる画像を説明する図である。図18(a)の例では、レンジRNGに物体(歩行者)OBJが存在し、レンジRNGに物体(車両)OBJが存在している。図18(b)には、図18(a)の状況で得られる複数のスライス画像IMG~IMGが示される。スライス画像IMGを撮影するとき、イメージセンサはレンジRNGからの反射光のみにより露光されるため、スライス画像IMGにはいかなる物体像も写らない。
【0149】
スライス画像IMGを撮影するとき、イメージセンサはレンジRNGからの反射光のみにより露光されるため、スライス画像IMGには、物体像OBJのみが写る。同様にスライス画像IMGを撮影するとき、イメージセンサはレンジRNGからの反射光のみにより露光されるため、スライス画像IMGには、物体像OBJのみが写る。このようにゲーティングカメラ20によれば、レンジ毎に物体を分離して撮影することができる。
【0150】
図16に戻り、ゲーティングカメラの視界が悪い状況における処理を説明する。なお、ゲーティングカメラは、赤外光などをプローブ光として用いることから、「ゲーティングカメラの視界」は、必ずしも人間の目で見たときの視界の良否と一致するものではない。視界は、霧や雨などの天候の影響で変化し、あるいは砂塵などの要因によっても変化する。
【0151】
本実施形態において、カメラコントローラ26には、プローブ光の減衰係数σ[m-1]と相関を有する視界情報INFO_FOVが入力される。減衰係数σ、伝搬距離r、透過率Tの間には、式(1)が成り立つ。
T=exp(-σr) …(1)
【0152】
視界情報INFO_FOVの生成方法は特に限定されない。たとえば画像処理装置28における画像処理にもとづいて、減衰係数σあるいは透過率Tを算出して、それを視界情報INFO_FOVとしてもよい。
【0153】
ゲーティングカメラ20とは別に設けられたセンサによって、減衰係数σや透過率を測定あるいは推定してもよい。あるいは、ユーザが、視界の良否を判断して、ゲーティングカメラ20に対して視界情報INFO_FOVを与えてもよい。可視光に関しては、視界の良否の指標として、視程が知られており、それに対応する情報を視界情報INFO_FOVとすることができる。
【0154】
あるいは、減衰係数σは、雨量や霧の濃さに依存するから、雨量や霧の有無(あるいは濃さ)をセンサによって検出し、あるいはユーザから受け付けるようにし、それを視界情報INFO_FOVとして用いてもよい。
【0155】
カメラコントローラ26は、視界情報INFO_FOVを、撮影パラメータに反映させる。以下、撮影パラメータの制御について、いくつかの例を説明する。
【0156】
(第1制御方法)
カメラコントローラ26は、視界情報INFO_FOVにもとづいて、1枚のスライス画像を生成するための露光回数を変化させる。具体的には、減衰係数σが大きいほど、露光回数増加させる。
【0157】
図19は、図16のゲーティングカメラ20における第1制御方法を説明する図である。横軸は、レンジの位置(レンジ番号)すなわち距離を、縦軸は、露光回数を示す。物体までの距離が遠いほど、式(1)の距離rが大きくなるから透過率Tが低下するから、イメージセンサ24への入射強度は低下する。これを補うために、レンジが遠いほど、露光回数が多くなるように撮影パラメータが規定される。
【0158】
本実施形態において、レンジ番号と露光回数の関係は、減衰係数σごとに規定される。この例では、減衰係数σは、3段階で表現され、σ<σ<σの関係が成り立っており、減衰係数σが大きいほど、レンジ番号と露光回数の関係は、上側にシフトする。たとえば図19の関係が、ルックアップテーブルあるいは演算式としてカメラコントローラ26に不揮発的に保存されており、カメラコントローラ26は、視界情報INFO_FOVに応じたひとつの関係にもとづいて、露光回数を決定する。ここでは、レンジ番号と露光回数の関係を曲線として示すが、直線で規定されてもよいし、折れ線で規定されてもよい。
【0159】
図20(a)、(b)は、図16のゲーティングカメラ20の第1制御方法の動作を示すタイムチャートである。図20(a)は、視界が良好であるとき、つまり減衰係数σが小さいときの動作を示す。この例では、1番目のレンジRNG,2番目のレンジRNGの露光回数は2回であり、N番目のレンジRNGの露光回数は4回である。近いレンジほど、発光と露光の時間差は短い。ここでは、発光の時間間隔は、レンジによらず、また視界の良否(減衰係数σ)によらずに、一定であるものとする。なお、発光の時間間隔は、レンジごとに異なっていてもよいし、視界の良否に応じて異なっていてもよい。
【0160】
図20(b)は、視界が悪いとき、つまり減衰係数σが大きいときの動作を示す。この例では、1番目のレンジRNG,2番目のレンジRNGの露光回数が、2回から3回に増えており、N番目のレンジRNGの露光回数は4回から6回に増えている。
【0161】
第1制御方法によれば、視界が悪い状況下では、露光回数を増やすことで、イメージセンサ24に入射するトータルの光量を増やすことができ、それにより、視界が良い状況と遜色のない画質を得ることができる。
【0162】
なお、複数露光にもとづく1枚のスライス画像の生成方法は特に限定されない。たとえば、多重露光可能なイメージセンサ24を用いる場合、複数回の露光の総光量を積算して、1枚のスライス画像を生成することができる。
【0163】
イメージセンサ24が多重露光をサポートしない場合には、露光ごとに生画像を生成し、後段の画像処理装置28において、複数の露光に対応する複数の生画像を合成することにより、1枚のスライス画像を生成してもよい。
【0164】
(第2制御方法)
第2制御方法においてカメラコントローラ26は、視界情報INFO_FOVにもとづいて、レンジの奥行き長さを変化させる。具体的には、減衰係数σが大きいほど、レンジの長さを短くする。
【0165】
図21(a)、(b)は、図16のゲーティングカメラ20における第2制御方法を説明する図である。横軸はレンジの位置(レンジ番号)すなわち距離を、縦軸は、各レンジの奥行き長さを示す。
【0166】
図21(a)は、すべてのレンジの奥行き長さが等しい場合を示している。この例では、奥行き長さは、減衰係数σに応じて2段階で制御され、N=4であるとする。減衰係数σが小さい場合(σ)には、各レンジの奥行きは50mとされる。つまり、一番近いレンジRNGは、0~50mであり、2番目のレンジRNGは、50~100mであり、3番目のレンジRNGは100~150mであり、4番目のレンジRNGは、150~200mである。
【0167】
減衰係数σが大きい場合(σ)には、各レンジの奥行きは25mとされる。つまり、一番近いレンジRNGは、0~25mであり、2番目のレンジRNGは、25~50mであり、3番目のレンジRNGは50~75mであり、4番目のレンジRNGは、75~100mである。
【0168】
図22(a)、(b)は、図21(a)の制御に対応する複数のレンジを示す図である。図22(a)は、減衰係数σが小さい視界の良好な状況下での複数のレンジを示す。図22(b)は、霧が発生しており、減衰係数σが大きく、悪視界での複数のレンジを示す。
【0169】
図21(b)に示すように、レンジ毎に奥行き長さが異なっていてもよい。たとえば減衰係数σの値σ,σ,σ,σごとに、レンジ番号と奥行き長さの関係を定めておき、現在の減衰係数に応じた関係を選択してもよい。
【0170】
第2制御方法では、減衰係数σが大きい場合には、各レンジの長さを短くして、遠距離の撮影を諦めることと引き換えに、奥行き方向の分解能を高めることができる。
【0171】
なお、複数のレンジのうち、いくつかのレンジの奥行き長さは一定としておき、いくつかのレンジの奥行き長さを、減衰係数σに応じて変化させてもよい。
【0172】
(第3制御方法)
第3制御方法においてカメラコントローラ26は、視界情報INFO_FOVにもとづいて、測定対象とするレンジの個数Nを変化させる。具体的には、減衰係数σが大きいほど、測定対象とするレンジの個数を奥側から順に減らしていく。
【0173】
図23は、図16のゲーティングカメラ20の第3制御方法に係る動作を説明する図である。横軸は減衰係数σを、縦軸は、測定対象のレンジの個数Nを示す。
【0174】
図24(a)~(c)は、第3制御方法における複数のレンジを示す図である。ここでは、すべてのレンジの奥行き長さは等しいものとする。図24(a)は視界が良好な状況を示しており、N=8個のレンジについて測定が行われる。図24(b)は、雨が降っており、視界がやや悪化した状況であり、測定対象のレンジがN=6個に減らされる。図24(c)では、霧が発生しており、視界が悪く、測定対象のレンジがN=4個に減らされている。
【0175】
第3制御方法では、減衰係数σが大きい場合には、遠距離の撮影を諦め、近距離を集中的にセンシングすることとした。これにより、視界が悪い状況では、露光回数が多く、センシングに時間がかかる遠距離の撮影を省略されるため、近いレンジのスライス画像のフレームレートを高めることができる。
【0176】
なお、第1制御方法~第3制御方法は、単独で用いてもよいし、複数を任意に組み合わせてもよい。
【0177】
上述のゲーティングカメラ20の用途を説明する。
【0178】
(用途)
図25は、センシングシステム10のブロック図である。センシングシステム10は、上述のゲーティングカメラ20に加えて演算処理装置40を備える。このセンシングシステム10は、自動車やバイクなどの車両に搭載され、車両の周囲に存在する物体OBJの種類(カテゴリ、あるいはクラスともいう)を判定する物体検出システムである。
【0179】
ゲーティングカメラ20により、複数のレンジRNG~RNGに対応する複数のスライス画像IMGs~IMGsが生成される。i番目のスライス画像IMGsには、対応するレンジRNGに含まれる物体のみが写る。
【0180】
演算処理装置40は、ゲーティングカメラ20によって得られる複数のレンジRNG~RNGに対応する複数のスライス画像IMGs~IMGsにもとづいて、物体の種類を識別可能に構成される。演算処理装置40は、機械学習によって生成された学習済みモデルにもとづいて実装される分類器42を備える。演算処理装置40は、レンジ毎に最適化された複数の分類器42を含んでもよい。分類器42のアルゴリズムは特に限定されないが、YOLO(You Only Look Once)、SSD(Single Shot MultiBox Detector)、R-CNN(Region-based Convolutional Neural Network)、SPPnet(Spatial Pyramid Pooling)、Faster R-CNN、DSSD(Deconvolution -SSD)、Mask R-CNNなどを採用することができ、あるいは、将来開発されるアルゴリズムを採用できる。
【0181】
演算処理装置40は、CPU(Central Processing Unit)やMPU(Micro Processing Unit)、マイコンなどのプロセッサ(ハードウェア)と、プロセッサ(ハードウェア)が実行するソフトウェアプログラムの組み合わせで実装することができる。演算処理装置40は、複数のプロセッサの組み合わせであってもよい。あるいは演算処理装置40はハードウェアのみで構成してもよい。演算処理装置40の機能と、画像処理装置28の機能を、同じプロセッサに実装してもよい。
【0182】
図26(a)、(b)は、ゲーティングカメラ20を備える自動車300を示す図である。図26(a)を参照する。自動車300は、ヘッドランプ(灯具)302L,302Rを備える。
【0183】
図26(a)に示すように、ゲーティングカメラ20の照明装置22は、左右のヘッドランプ302L,302Rの少なくとも一方に内蔵されてもよい。イメージセンサ24は、車両の一部、たとえばルームミラーの裏側に取り付けることができる。あるいはイメージセンサ24は、フロントグリルやフロントバンパーに設けてもよい。カメラコントローラ26は、車室内に設けてもよいし、エンジンルームに設けてもよいし、ヘッドランプ302L,302Rに内蔵してもよい。
【0184】
図26(b)に示すように、イメージセンサ24は、左右のヘッドランプ302L,302Rのいずれかに、照明装置22とともに内蔵してもよい。
【0185】
図27は、センシングシステム10を備える車両用灯具200を示すブロック図である。車両用灯具200は、車両側ECU310とともに灯具システム304を構成する。車両用灯具200は、灯具側ECU210およびランプユニット220を備える。ランプユニット220は、ロービームあるいはハイビームであり、光源222、点灯回路224、光学系226を備える。さらに車両用灯具200には、センシングシステム10が設けられる。
【0186】
センシングシステム10が検出した物体OBJに関する情報は、車両用灯具200の配光制御に利用してもよい。具体的には、灯具側ECU210は、センシングシステム10が生成する物体OBJの種類とその位置に関する情報にもとづいて、適切な配光パターンを生成する。点灯回路224および光学系226は、灯具側ECU210が生成した配光パターンが得られるように動作する。センシングシステム10の演算処理装置40は、車両用灯具200の外部、すなわち車両側に設けられてもよい。
【0187】
またセンシングシステム10が検出した物体OBJに関する情報は、車両側ECU310に送信してもよい。車両側ECU310は、この情報を、自動運転や運転支援に利用してもよい。
【0188】
実施形態にもとづき、具体的な語句を用いて本発明を説明したが、実施形態は、本発明の原理、応用の一側面を示しているにすぎず、実施形態には、請求の範囲に規定された本発明の思想を逸脱しない範囲において、多くの変形例や配置の変更が認められる。
【産業上の利用可能性】
【0189】
本開示は、ゲーティングカメラに関する。
【符号の説明】
【0190】
10 センシングシステム
20 ゲーティングカメラ
22 照明装置
24 イメージセンサ
26 カメラコントローラ
28 画像処理装置
40 演算処理装置
42 分類器
200 車両用灯具
210 灯具側ECU
220 ランプユニット
222 光源
224 点灯回路
226 光学系
300 自動車
302L ヘッドランプ
304 灯具システム
310 車両側ECU
L1 プローブ光
S1 発光タイミング信号
S2 露光タイミング信号
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25
図26
図27